JP2018088517A - シリコン含有膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性の向上と膜質の改善とを両立させることが可能なシリコン含有膜の形成方法を提供すること。【解決手段】一実施形態のシリコン含有膜の形成方法は、基板が収容された処理室内に、一般式XSiCl3(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給し、前記基板の表面にシリコン含有ガスを吸着させる吸着工程と、前記処理室内に、前記シリコン含有ガスと反応する反応ガスを供給し、前記基板の表面に吸着した前記シリコン含有ガスと前記反応ガスとを反応させる反応工程と、を有する。【選択図】図6

Description

本発明は、シリコン含有膜の形成方法に関する。
従来から、吸着工程と窒化工程とを繰り返すALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて半導体ウエハにシリコン窒化膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ALD法を用いて半導体ウエハにシリコン窒化膜を形成する場合、例えばプロセス温度を高くして原料ガスの吸着効率を高める方法や1サイクルの時間を短くする方法により、成膜時間を短くして生産性の向上を図っている。
特開2007−299776号公報
しかしながら、プロセス温度を高くする方法では、CVD反応により均一性が悪化する虞がある。1サイクルの時間を短縮する方法では、1サイクルあたりの反応時間が短くなるため、吸着反応や窒化反応が不十分となり膜質が悪化する虞がある。このように、従来の方法では、生産性の向上と膜質の改善とを両立させることが困難であった。
そこで、本発明の一態様では、生産性の向上と膜質の改善とを両立させることが可能なシリコン含有膜の形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るシリコン含有膜の形成方法は、基板が収容された処理室内に、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給し、前記基板の表面にシリコン含有ガスを吸着させる吸着工程と、前記処理室内に、前記シリコン含有ガスと反応する反応ガスを供給し、前記基板の表面に吸着した前記シリコン含有ガスと前記反応ガスとを反応させる反応工程と、を有する。
開示のシリコン含有膜の形成方法によれば、生産性の向上と膜質の改善とを両立させることができる。
本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を実施するのに好適な成膜装置の概略断面図 図1の成膜装置の概略斜視図 図1の成膜装置の真空容器内の構成を示す概略平面図 図1の成膜装置の回転テーブルの同心円に沿った真空容器の概略断面図 図1の成膜装置の別の概略断面図 本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を示すフローチャート シリコン窒化膜の成膜速度のサイクル時間依存性を示す図 シリコン窒化膜のリーク電流特性を示す図 ウエハの温度とローディング効果との関係を示す図 本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を実施するのに好適な成膜装置の別の例の概略図(1) 本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を実施するのに好適な成膜装置の別の例の概略図(2) 第2実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を説明するための図 ウエハの温度とシリコン窒化膜のサイクルレートとの関係を示す図 ウエハの温度とシリコン窒化膜の膜厚の面内均一性との関係を示す図 ウエハの温度とインキュベーションサイクルとの関係を示す図 結合エネルギーを説明するための図 シリコン含有ガスの吸着メカニズムを説明するための図 SONOS構造の3次元NANDフラッシュメモリの一例を示す図
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
〔第1実施形態〕
第1実施形態では、本発明のシリコン含有膜の形成方法の一例として、回転テーブル上に載置した複数枚のウエハに対して一括して成膜処理を行うセミバッチ式の成膜装置を用いてシリコン窒化膜を形成する場合を例に挙げて説明する。
(成膜装置)
まず、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を実施するのに好適な成膜装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を実施するのに好適な成膜装置の概略断面図である。図2は、図1の成膜装置の概略斜視図である。図3は、図1の成膜装置の真空容器内の構成を示す概略平面図である。
図1から図3までを参照すると、成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリング等のシール部材13(図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は、真空容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22(図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。ケース体20は、その上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示されるように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を載置可能な円形状の凹部24が設けられている。なお、図3には便宜上、1個の凹部24だけにウエハWを示す。凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWが凹部24に収容されると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
図2及び図3は、真空容器1内の構造を説明する図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略している。図2及び図3に示されるように、回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなる反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向(図3の矢印A))に互いに間隔をおいて配置されている。図示の例では、後述の搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び反応ガスノズル32がこの順番で配列されている。これらのノズル31、32、41、42は、各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42a(図3)を容器本体12の外周壁に固定することにより、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して水平に伸びるように取り付けられている。
反応ガスノズル31は、不図示の配管及び流量制御器等を介して、シリコン含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。反応ガスノズル32は、不図示の配管及び流量制御器等を介して、窒素含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量制御バルブ等を介して、分離ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスとしては、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)等の希ガスや窒素(N)ガス等の不活性ガスを用いることができる。本実施形態では、Nガスを用いる。
反応ガスノズル31、32には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔35が、反応ガスノズル31、32の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31の下方領域は、シリコン含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着されたシリコン含有ガスを窒化させる第2の処理領域P2となる。
図2及び図3を参照すると、真空容器1内には2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、分離ガスノズル41、42と共に分離領域Dを構成するため、後述のとおり、回転テーブル2に向かって突出するように天板11の裏面に取り付けられている。また、凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
図4は、反応ガスノズル31から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示している。図示のとおり、天板11の裏面に凸状部4が取り付けられているため、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在する。天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、溝部43に分離ガスノズル41が収容されている。また、高い天井面45の下方の空間に反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられている。これらの反応ガスノズル31、32は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、図4に示されるように、高い天井面45の下方の右側の空間48に反応ガスノズル31が設けられ、高い天井面45の下方の左側の空間49に反応ガスノズル32が設けられる。
また、凸状部4の溝部43に収容される分離ガスノズル41、42には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔41h(図4参照)が、分離ガスノズル41、42の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。
天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガスノズル42の吐出孔42hからNガスが供給されると、Nガスは、分離空間Hを通して空間48及び空間49へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間48及び49の容積よりも小さいため、Nガスにより分離空間Hの圧力を空間48及び49の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間48及び49の間に圧力の高い分離空間Hが形成される。また、分離空間Hから空間48及び49へ流れ出るNガスが、第1の処理領域P1からのシリコン含有ガスと、第2の処理領域P2からの窒素含有ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、第1の処理領域P1からのシリコン含有ガスと、第2の処理領域P2からの窒素含有ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、真空容器1内においてシリコン含有ガスと窒素含有ガスとが混合し、反応することが抑制される。
なお、回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜時の真空容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度、供給する分離ガス(Nガス)の供給量等を考慮し、分離空間Hの圧力を空間48及び49の圧力に比べて高くするのに適した高さに設定することが好ましい。
一方、天板11の下面には、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5(図2及び図3)が設けられている。突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が天井面44と同じ高さに形成されている。
先に参照した図1は、図3のI−I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられている領域を示している。一方、図5は、天井面44が設けられている領域を示す断面図である。図5に示されるように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制して、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては、図4に示されるように、屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されている。これに対し、分離領域D以外の部位においては、図1に示されるように、例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、概ね矩形の断面形状を有する窪んだ部分を排気領域と記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域を第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する領域を第2の排気領域E2と記す。第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1から図3に示されるように、それぞれ、第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示されるように、各々、排気管63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。また、真空ポンプ64と排気管63との間に、圧力制御器65が設けられる。
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、図1及び図5に示されるように、加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWが、プロセスレシピで決められた温度に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から第1の排気領域E1、第2の排気領域E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画して回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている(図5)。カバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられる。内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これらの狭い空間はケース体20に連通している。そして、ケース体20にはパージガスであるNガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また、真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(図5には一つのパージガス供給管73を示す。)。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは、例えば石英で作製することができる。
また、真空容器1の天板11の中心部には、分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるNガスを供給するように構成されている。空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い空間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は、分離ガスにより空間48及び空間49よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるシリコン含有ガスと第2の処理領域P2に供給される窒素含有ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
さらに、真空容器1の側壁には、図2及び図3に示されるように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。搬送口15は、図示しないゲートバルブにより開閉される。また、回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24は搬送口15と対向する位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われる。このため、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
また、本実施形態に係る成膜装置には、図1に示されるように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられている。制御部100のメモリ内には、後述するシリコン窒化膜の形成方法を制御部100の制御の下に成膜装置に実施させるプログラムが格納されている。プログラムは、後述のシリコン窒化膜の形成方法を実行するようにステップ群が組まれている。プログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の媒体102に記憶され、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
(シリコン窒化膜の形成方法)
次に、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法について説明する。本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法は、吸着工程と窒化工程とを繰り返すALD(Atomic Layer Deposition)法を用いてウエハWの表面にシリコン窒化膜を形成する方法である。吸着工程は、ウエハWが収容された真空容器1内に、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給し、ウエハWの表面にシリコン含有ガスを吸着させる工程である。シリコン含有ガスとしては、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるものであればよく、例えばトリクロロシラン(HSiCl)、BrSiCl、ISiClが挙げられる。窒化工程は、真空容器1内に窒素含有ガスを供給し、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応生成物の原子層又は分子層を堆積させる工程である。
以下、前述の成膜装置を用いる場合を例に挙げて、図6に基づき説明する。なお、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法は、他の成膜装置を用いて実施することも可能である。図6は、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、ウエハWを回転テーブル2に載置する。具体的には、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10(図3)により搬送口15(図2及び図3)を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。ウエハWの受け渡しは、凹部24が搬送口15に対向する位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内にそれぞれウエハWを載置する。
続いて、ゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により到達可能真空度にまで真空容器1内を排気する。その後、ステップS2にて、分離ガスノズル41、42からNガスを所定の流量で供給し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73からもNガスを所定の流量で供給する。これに伴い、圧力制御器65(図1)により真空容器1内を予め設定した処理圧力に制御する。次いで、回転テーブル2を時計回りに例えば20rpmの回転速度で回転させながらヒータユニット7によりウエハWを所定の温度(例えば400℃〜850℃)に加熱する。
この後、ステップS3において、反応ガスノズル31(図2及び図3)から一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給し、反応ガスノズル32から窒素含有ガス(例えばアンモニア(NH))を供給する。回転テーブル2の回転により、ウエハWは、第1の処理領域P1、分離領域D(分離空間H)、第2の処理領域P2、及び分離領域D(分離空間H)をこの順に通過していく(図3)。まず、第1の処理領域P1において、反応ガスノズル31からのシリコン含有ガスがウエハWに吸着する(吸着工程)。次に、ウエハWが、Nガス雰囲気となっている分離空間H(分離領域D)を通って第2の処理領域P2に至ると、ウエハWに吸着したシリコン含有ガスが、反応ガスノズル32からの窒素含有ガスと反応し、ウエハWにシリコン窒化膜が成膜される(窒化工程)。そして、ウエハWは、分離領域D(Nガス雰囲気の分離空間H)へ至る。回転テーブル2を所定の回数だけ回転させ、このサイクルを複数回繰り返す。このように、ステップS3においては、ウエハWの表面には、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとが交互に供給される。
この間、反応ガスノズル31からのシリコン含有ガスと、反応ガスノズル32からの窒素含有ガスの供給が、所定の時間行われたか否かが判定される(ステップS4)。所定の時間は、ウエハWの表面に成膜するシリコン窒化膜の目標膜厚に応じて設定される。目標膜厚が定まれば、回転テーブル2の回転速度、シリコン含有ガス及び窒素含有ガスの流量、ウエハ温度等の条件を考慮して、シリコン窒化膜を成膜する工程の時間を適切に定めることができる。
ステップS4において、所定の時間が経過していないと判定された場合には、ステップS3に戻りシリコン窒化膜の成膜プロセス(吸着工程及び窒化工程)を継続する。一方、所定の時間が経過した場合には、シリコン含有ガス及び窒素含有ガスの供給を停止し、成膜を終了する。
以上に説明したように、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法では、吸着工程において、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給し、ウエハWの表面にシリコン含有ガスを吸着させる。これにより、ウエハWの表面にSi含有ガスを吸着させたとき、XSiClにおけるSi−X結合がSi−Cl結合よりも弱いため、Si−X結合が切断される。即ち、3つの官能基がクロロ基(Cl−)となる。このため、シリコン含有ガスが吸着した表面は、シリコン原子(Si)上の電子密度が低下し、求電子的に窒素原子(N)との結合を作りやすい構造となるため、NH等の窒素含有ガスにより容易に窒化されやすくなる。その結果、吸着工程の後に行われる窒化工程において、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応速度が向上し、生産性が向上する。また、SiNの3次元構造が形成されやすくなるため、膜質が向上する。
また、吸着速度や窒化速度が速くなることで、ウエハW表面の未反応結合サイトが減少するので、ウエハW面内での成膜速度のばらつきが小さくなり、面内均一性が向上する。
さらに、SiNの3次元構造が形成されやすいので、樹木状に膜が成長する。これにより、シリコン含有ガスの吸着及びシリコン含有ガスの窒化が行われる反応表面が拡大するので、ウエハWの表面上に膜が成長し始めるまでの時間(インキュベーション時間)が短縮される。
(実施例)
次に、前述のシリコン窒化膜の効果を確認するために行った実施例及び比較例について説明する。実施例及び比較例では、以下のプロセス条件にてシリコン窒化膜を形成した。また、実施例及び比較例で形成したシリコン窒化膜の特性を評価した。
・実施例
シリコン含有ガス:トリクロロシラン(HSiCl)(以下「TrCS」とも称する。)
窒素含有ガス:アンモニア(NH
圧力:4.0Torr(533Pa)
ウエハの温度:760℃
回転テーブルの回転速度:2rpm、5rpm、10rpm、30rpm、60rpm
・比較例
シリコン含有ガス:ジクロロシラン(HSiCl)(以下「DCS」とも称する。)
窒素含有ガス:アンモニア(NH
圧力:4.0Torr(533Pa)
ウエハの温度:760℃
回転テーブルの回転速度:2rpm、10rpm、30rpm
図7は、シリコン窒化膜の成膜速度のサイクル時間依存性を示す図である。図7において、横軸はサイクル時間[sec]及び回転速度[rpm]、縦軸はサイクルレート[nm/cycle]を示している。サイクル時間とは、回転テーブル2が1回転する時間である。回転速度とは、回転テーブル2の回転速度である。サイクルレートとは、回転テーブル2が1回転する間に成膜される膜厚である。また、図7中、シリコン含有ガスとしてTrCSを用いた場合のシリコン窒化膜(実施例)のサイクルレートを特性線α、シリコン含有ガスとしてDCSを用いた場合のシリコン窒化膜(比較例)のサイクルレートを特性線βで示している。
図7に示されるように、特性線αで示されるTrCSを用いた場合には、サイクル時間を長くしてもサイクルレートはほとんど変化していない。この結果から、TrCSは熱分解することなく、ALD反応による原子層ごとの堆積によりシリコン窒化膜が形成されていると考えられる。
一方、特性線βで示されるDCSを用いた場合には、サイクル時間を長くすると、サイクル時間の増加と共にサイクルレートが速くなっている。この結果から、DCSの熱分解が生じ、CVD反応によるシリコン窒化膜が形成されていると考えられる。
図8は、シリコン窒化膜のリーク電流特性を示す図であり、シリコン窒化膜に電界を印加したときの電流密度の電界強度依存性を示している。図8において、横軸は電界強度Eg[MV/cm]、縦軸は電流密度Jg[A/cm]を示している。電界強度とは、シリコン窒化膜の膜厚方向に印加する電界強度である。電流密度とは、シリコン窒化膜の膜厚方向に電界を印加したときに流れる1cmあたりの電流である。図8中、シリコン含有ガスとしてTrCSを用いた場合のシリコン窒化膜(実施例)のJg−Eg特性を特性線α、シリコン含有ガスとしてDCSを用いた場合のシリコン窒化膜(比較例)のJg−Eg特性を特性線βで示している。また、バッチ式の熱処理装置を用いたCVD法(ウエハの温度770℃)により形成したシリコン窒化膜のJg−Eg特性を特性線γで示している。
図8に示されるように、特性線αで示されるTrCSを用いた場合には、特性線βで示されるDCSを用いた場合と比較して、電流密度Jgが低くなっている。具体的には、特性線αで示されるTrCSを用いて形成したシリコン窒化膜に3[MV/cm]の電界を印加した場合の電流密度Jgは1.7×10−6[A/cm]である。これに対し、特性線βで示されるDCSを用いて形成したシリコン窒化膜に3[MV/cm]の電界を印加した場合の電流密度Jgは1.0×10−3[A/cm]である。即ち、TrCSを用いて形成したシリコン窒化膜は、DCSを用いて形成したシリコン窒化膜よりもリーク電流が小さく、絶縁性に優れた膜である。また、バッチ式の熱処理装置を用いたCVD法により形成したシリコン窒化膜に3[MV/cm]の電界を印加した場合の電流密度Jgよりも低い電流密度である。
図9は、ウエハの温度とローディング効果との関係を示す図である。図9において、横軸はウエハの温度[℃]、縦軸はローディング効果[%]を示している。図9におけるローディング効果とは、ベア(鏡面)ウエハの表面に形成されるシリコン窒化膜の膜厚に対する、表面に凹凸パターンが形成されたウエハ(パターン付ウエハ)の表面に形成されるシリコン窒化膜の膜厚の割合[%]である。図9中、シリコン含有ガスとしてTrCSを用いた場合の結果を丸印、DCSを用いた場合の結果を三角印で示している。
図9に示されるように、ウエハの温度が760℃、シリコン含有ガスがTrCSである場合のローディング効果は10%程度であるのに対し、ウエハの温度が760℃、シリコン含有ガスがDCSである場合のローディング効果は30%程度である。即ち、シリコン含有ガスとしてTrCSを用いることで、高温下(例えば760℃)でのローディング効果を抑制することができる。
なお、上記の実施形態において、真空容器1は処理室の一例である。また、反応ガスノズル31は第1の処理ガス供給手段の一例であり、反応ガスノズル32は第2の処理ガス供給手段の一例である。また、分離領域Dは不活性ガス供給領域の一例であり、窒化工程は反応工程の一例である。
〔第2実施形態〕
第2実施形態では、本発明のシリコン含有膜の形成方法の別の例として、ウエハボートに載置された多数枚のウエハにより1つのバッチを構成し、1つのバッチ単位で成膜処理を行うバッチ式の成膜装置を用いてシリコン窒化膜を形成する場合を例に挙げて説明する。
(成膜装置)
まず、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を実施するのに好適な成膜装置について説明する。図10及び図11は、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を実施するのに好適な成膜装置の別の例の概略図であり、図10は成膜装置の縦断面を示し、図11は成膜装置の横断面を示す。
図10に示されるように、第2実施形態の成膜装置は、天井を有し、下端が開口した円筒体状の処理容器210を備えている。処理容器210は、処理室の一例である。処理容器210は、例えば石英により形成されている。処理容器210内の天井側は、石英製の天板212により封止されている。処理容器210の下端の開口部には、フランジ部214が設けられている。なお、処理容器210の下端にステンレス鋼製のマニホールドを設けるように構成してもよい。
処理容器210の下端の開口部では、複数枚のウエハWを上下方向に所定間隔を有して略水平に保持する基板保持具であるウエハボート220の搬入、搬出が行われる。
ウエハボート220は、図11に示されるように、例えば3本の支柱222を備えており、ウエハWの外縁部を支持して、複数枚(例えば125枚)のウエハWを、所定間隔を有して略水平に保持する。ウエハボート220は、石英製の保温筒224を介してテーブル226上に載置されている。テーブル226は、ステンレス鋼製の蓋体230を貫通する回転軸232に支持されている。処理容器210の開口部を介してウエハボート220を処理容器210内に搬入し、所定の高さ位置まで上昇させると、開口部が蓋体230によって気密に閉じられる。
回転軸232が蓋体230を貫通する位置には、処理容器210内の気密性を保ちつつ、回転軸232を回転自在に保持するための、例えば磁性流体シールを備えた軸受部234が設けられている。蓋体230の周辺部と処理容器210のフランジ部214との間には、例えばOリングが介設されており、処理容器210内の気密性を保っている。
回転軸232は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム236の先端に取り付けられており、ウエハボート220及び蓋体230等を一体的に昇降させて処理容器210内への搬入、搬出を行うことができる。
処理容器210の側壁の一部には、プラズマ生成機構240が設けられている。プラズマ生成機構240は、処理容器210の側壁に形成された上下に細長い開口部216を覆うようにして、断面凹部状の例えば石英製の区画壁218を処理容器210の外壁に気密に接合することにより構成される。開口部216は、ウエハボート220に支持されている全てのウエハWをカバーできるように上下方向に長く形成されている。
区画壁218の両側壁の外側面には、その長さ方向(上下方向)に沿って互いに対向する一対のプラズマ電極242が設けられている。プラズマ電極242には、給電ライン244を介してプラズマ発生用の高周波電源246が接続されている。プラズマ電極242に対し、例えば13.56MHzの高周波電圧を印加することによりプラズマを発生し得るようになっている。また、区画壁218の外側には、区画壁218を覆うように、例えば石英製の絶縁保護カバー248が取り付けられている。
処理容器210の下部には、シリコン含有ガスを供給するためのガス供給管250が挿入されている。ガス供給管250の先端部には、処理容器210内を上方向へ延びるように、例えば2本のガスノズル252が設けられている。ガスノズル252は石英管よりなり、図11に示されるように、プラズマ生成機構240の開口部216を挟んで両側に配置されている。ガスノズル252には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔254が所定の間隔を隔てて形成されている。ガス供給管250の基端側は、シリコン含有ガス供給源256に接続されている。ガス供給管250には、マスフローコントローラ257、バルブ258等が介設されている。
また、処理容器210の下部には、窒素含有ガスを供給するためのガス供給管260が挿入されている。ガス供給管260の先端部には、石英管よりなるガスノズル262が設けられている。図10及び図11に示されるように、ガスノズル262は、処理容器210内を上方向へ延び、途中で屈曲してプラズマ生成機構240内に配置されている。また、ガスノズル262には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔264が所定の間隔を隔てて形成されている。ガス供給管260の基端側は、窒素含有ガス供給源266に接続されている。ガス供給管260には、マスフローコントローラ267、バルブ268等が介設されている。
また、処理容器210の下部には、不活性ガスを供給するための直管状の石英製のガス供給管270が挿入されている。ガス供給管270の基板部は、不活性ガス供給源276に接続されている。ガス供給管270には、マスフローコントローラ277、バルブ278等が介設されている。
なお、図10においては、図示の便宜上、ガスノズル252、ガスノズル262、及びガス供給管270は、処理容器210の下部側の側壁を貫通して処理容器210内に挿入されるように表されているが、実際にはフランジ部214を介して挿入されている。
処理容器210の周囲には、処理容器210の側周面を外方から囲むようにして、筒状のヒータ280が設けられている。ヒータ280は、処理容器210内のウエハWを所定の温度(例えば400℃〜850℃)に加熱する。
また、処理容器210の下方側の側壁面には、排気口219が形成されている。排気口219には排気手段290が設けられる。排気手段290は、排気口219に接続された排気通路292を有する。排気通路292には、圧力調整弁294及び真空ポンプ等の排気装置296が順次介設されて、処理容器210内を真空に排気する。
また、成膜装置は、図10に示されるように、制御部300を有する。制御部300は、図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には後述するシリコン窒化膜の形成方法の動作についてのステップ群が組み込まれたプログラムが記録されている。プログラムは、記憶媒体に格納され、記憶媒体からコンピュータにインストールされる。
(シリコン窒化膜の形成方法)
次に、第2実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法について説明する。第2実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法は、第1実施形態と同様に、吸着工程と窒化工程とを繰り返すALD(Atomic Layer Deposition)法を用いてウエハWの表面にシリコン窒化膜を形成する方法である。吸着工程は、ウエハWが収容された真空容器内に、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガス(原料ガス)を供給し、ウエハWの表面にシリコン含有ガスを吸着させる工程である。シリコン含有ガスとしては、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるものであればよく、例えばトリクロロシラン(HSiCl)、BrSiCl、ISiClが挙げられる。窒化工程は、真空容器内に窒素含有ガス(反応ガス)を供給し、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応生成物の原子層又は分子層を堆積させる工程である。
以下、前述の成膜装置を用いる場合を例に挙げて、図12に基づき説明する。なお、第2実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法は、他の成膜装置を用いて実施することも可能である。図12は、第2実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法を説明するための図である。
図12に示されるように、シリコン窒化膜の形成方法では、パージ工程、吸着工程、パージ工程、及び窒化工程により構成されるサイクルを1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで、所望の膜厚のシリコン窒化膜を形成する。吸着工程では、ガスノズル252(図10)から一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給する。窒化工程では、ガスノズル262(図10)から窒素含有ガス(例えばNH)を供給する。パージ工程では、ガス供給管270(図10)から不活性ガス(例えばN)を供給する。
以上に説明したように、第2実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法では、吸着工程において、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給し、ウエハWの表面にシリコン含有ガスを吸着させる。これにより、ウエハWの表面にSi含有ガスを吸着させたとき、XSiClにおけるSi−X結合がSi−Cl結合よりも弱いため、Si−X結合が切断される。即ち、3つの官能基がクロロ基(Cl−)となる。このため、シリコン含有ガスが吸着した表面は、シリコン原子(Si)上の電子密度が低下し、求電子的に窒素原子(N)との結合を作りやすい構造となるため、NH等の窒素含有ガスにより容易に窒化されやすくなる。その結果、吸着工程の後に行われる窒化工程において、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応速度が向上し、生産性が向上する。また、SiNの3次元構造が形成されやすくなるため、膜質が向上する。
また、吸着速度や窒化速度が速くなることで、ウエハW表面の未反応結合サイトが減少するので、ウエハW面内での成膜速度のばらつきが小さくなり、面内均一性が向上する。
さらに、SiNの3次元構造が形成されやすいので、樹木状に膜が成長する。これにより、シリコン含有ガスの吸着及びシリコン含有ガスの窒化が行われる反応表面が拡大するので、ウエハWの表面上に膜が成長し始めるまでの時間(インキュベーション時間)が短縮される。
(実施例)
次に、実施例及び比較例について説明する。実施例及び比較例では、以下のプロセス条件にてシリコン窒化膜を形成した。また、実施例及び比較例で形成したシリコン窒化膜の特性を評価した。
・実施例
シリコン含有ガス:TrCS
窒素含有ガス:NH
ウエハの温度:700℃、750℃、800℃
・比較例
シリコン含有ガス:DCS
窒素含有ガス:NH
ウエハの温度:640℃、660℃、700℃
図13は、ウエハの温度とシリコン窒化膜のサイクルレートとの関係を示す図である。図13において、横軸はウエハの温度[℃]を示し、縦軸はサイクルレート[Å/cycle]を示している。また、図13中、シリコン含有ガスとしてTrCSを用いた場合のシリコン窒化膜(実施例)のサイクルレートを丸印、シリコン含有ガスとしてDCSを用いた場合のシリコン窒化膜(比較例)のサイクルレートを三角印で示している。
図13に示されるように、TrCSを用いた場合、ウエハを800℃まで加熱してもサイクルレートはほとんど変化していない。この結果から、ウエハを800℃まで加熱してもTrCSは熱分解することなく、ALD反応による原子層ごとの堆積によりシリコン窒化膜が形成されていると考えられる。一方、DCSを用いた場合、ウエハの温度が640℃の場合にはTrCSの場合と同様のサイクルレートが得られているが、ウエハの温度が高くなるにしたがって、サイクルレートが高くなっている。この結果から、ウエハの温度を640℃よりも高くすると、DCSの熱分解が生じ、CVD反応によるシリコン窒化膜が形成されていると考えられる。
図14は、ウエハの温度とシリコン窒化膜の膜厚の面内均一性との関係を示す図である。図14において、横軸はウエハの温度〔℃〕を示し、縦軸はシリコン窒化膜の膜厚の面内均一性〔±%〕を示している。図14では、ウエハの中央部で膜厚が厚く外周部で膜厚が薄い凸形状の面内分布を正の値で示し、ウエハの中央部で膜厚が薄く外周部で膜厚が厚い凹形状の面内分布を負の値で示している。図14中、シリコン含有ガスとしてTrCSを用いた場合のシリコン窒化膜(実施例)の膜厚の面内均一性を丸印、シリコン含有ガスとしてDCSを用いた場合のシリコン窒化膜(比較例)の膜厚の面内均一性を三角印で示している。また、黒色で塗りつぶされた印はベア(鏡面)ウエハの表面にシリコン窒化膜を形成した場合の結果を示し、白抜き印は表面積が40倍である凹凸パターンが形成されたウエハの表面にシリコン窒化膜を形成した場合の結果を示している。
図14に示されるように、TrCSを用いた場合、ウエハの温度が750℃、800℃のいずれの場合においても、ウエハの表面積によらず、±1%以下の良好な面内均一性が得られていることが確認できた。一方、DCSを用いた場合、ウエハの温度が640℃、700℃のいずれの場合においても、ウエハの表面積に依存して、ウエハ面内のシリコン窒化膜の成膜量が変動していることが確認できた。この結果から、TrCSを用いることで、DCSを用いる場合と比較して、ウエハ上の表面積に依存してウエハ面内の成膜量が変動する、所謂ローディング効果を抑制することができると考えられる。
図15は、ウエハの温度とインキュベーションサイクルとの関係を示す図である。図15において、横軸はウエハの温度〔℃〕を示し、縦軸はインキュベーションサイクル〔cycle〕を示している。図15中、シリコン含有ガスとしてTrCSを用いた場合のインキュベーション時間を丸印、シリコン含有ガスとしてDCSを用いた場合のインキュベーション時間を三角印で示している。
図15に示されるように、TrCSを用いることで、DCSを用いる場合と比較してインキュベーションサイクル(時間)を半分以下に短縮できることが確認できた。
〔吸着メカニズム〕
次に、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法におけるシリコン含有ガスの吸着メカニズムについて、シリコン含有ガスとしてSiHClを用いる場合を例に挙げて説明する。
図16は、結合エネルギーを説明するための図である。図16に示されるように、Si−Si結合、Si−H結合、及びSi−Cl結合の結合エネルギーは、それぞれ222kJ/mol、299kJ/mol、及び406kJ/molである。そして、Si−H結合は、400℃〜500℃以上の温度範囲で熱分解されて水素原子(H)が脱離する。また、Si−Cl結合は、800℃〜850℃以上の温度範囲で熱分解されて塩素(Cl)が脱離する。
図17は、シリコン含有ガスの吸着メカニズムを説明するための図である。図17(a)はシリコン含有ガスとしてSiHCl(DCS)を用いた場合の吸着メカニズムを示し、図17(b)はシリコン含有ガスとしてSiHCl(TrCS)を用いた場合の吸着メカニズムを示している。
図17(a)に示されるように、SiHClでは、ウエハの温度をSi−H結合から水素原子(H)が脱離する温度範囲(400℃〜500℃以上)に加熱すると、2つの水素原子(H)が脱離して2つの未結合手(ダングリングボンド)が生じる。このとき、一方のダングリングボンドは、ウエハの表面の窒素原子(N)と結合して吸着し、他方のダングリングボンドは、他のSiHCl分子と結合する。即ち、1サイクルの間に複数層のシリコンが吸着する過剰吸着が生じ得る。
これに対し、図17(b)に示されるように、SiHClでは、ウエハの温度をSi−H結合から水素原子(H)が脱離する温度範囲(例えば400℃〜500℃以上)であって、Si−Cl結合から塩素(Cl)の脱離が生じない温度(800℃〜850℃以下)に加熱すると、1つの水素原子(H)が脱離して1つのダングリングボンドが生じる。このとき、ダングリングボンドは、ウエハの表面の窒素原子(N)と結合することで吸着する。また、別のダングリングボンドが存在しないため、SiHClが吸着した表面に別のSiHClが到達しても新たな吸着反応は進行しない。即ち、1サイクルの間に複数層のシリコンが吸着する過剰吸着が生じることを防止することができる。その結果、理想的なALD成膜が実現でき、高品質で面内均一性の良好なシリコン窒化膜を形成することができる。以上のことから、吸着工程では、ウエハの温度を400℃〜850℃に加熱することが好ましく、500℃〜800℃に加熱することがより好ましい。
〔シリコン窒化膜の適用例〕
本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の適用例について説明する。本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜は、Si−SiO−SiN−SiO−Si構造(以下「SONOS構造」という。)の3次元NANDフラッシュメモリに用いられる電荷蓄積層(チャージトラップ層)として好適に用いることができる。
図18は、SONOS構造の3次元NANDフラッシュメモリの一例を示す図である。図18に示されるように、SONOS構造の3次元NANDフラッシュメモリは、積層体510と、柱状体520とを有する。
積層体510は、シリコン層512とシリコン酸化膜514とが交互に積層されて形成される。積層体510には、積層体510の積層方向に貫通する貫通孔516が形成され、貫通孔516内には、柱状体520が形成される。なお、図18では、貫通孔516の一部を示している。
柱状体520は、柱状絶縁体522と、チャネル層524と、トンネル絶縁膜526と、電荷蓄積層528と、ブロック絶縁膜530とを有する。
柱状絶縁体522は、柱状体520の中心に形成される。柱状絶縁体522は、例えばシリコン酸化膜により形成される。
チャネル層524は、柱状絶縁体522の外面と貫通孔516の内面との間に形成される。チャネル層524は、例えばシリコン等の半導体により形成される。
トンネル絶縁膜526は、貫通孔516の内面とチャネル層524との間に形成される。トンネル絶縁膜526は、例えばシリコン酸化膜により形成される。
電荷蓄積層528は、貫通孔516の内面とトンネル絶縁膜526との間に形成される。電荷蓄積層528は、例えばシリコン窒化膜により形成される。電荷蓄積層528がシリコン窒化膜により形成される場合、膜中の電荷トラップサイトが多くなるため好ましい。また、電荷蓄積層528がシリコン窒化膜により形成される場合、トンネル絶縁膜526及びブロック絶縁膜530を構成するシリコン酸化膜に対して高いバンド障壁を形成することができるため好ましい。
ブロック絶縁膜530は、貫通孔516の内面と電荷蓄積層528との間に形成される。ブロック絶縁膜530は、例えばシリコン酸化膜により形成される。
ところで、SONOS構造の3次元NANDフラッシュメモリに用いられる電荷蓄積層528には、高品質で面内均一性の良好なシリコン窒化膜が求められる。また、パターンの微細化による表面積増大に伴い、ローディング効果の小さいシリコン窒化膜が求められる。
高品質なシリコン窒化膜を形成する方法としては、高温下(例えば700℃以上)でのALD法による成膜が有効である。しかしながら、従来から原料ガスとして使用されるSiHCl(DCS)、Si(HCD)等のシリコン含有ガスは、高温下において自己分解してSiの過剰吸着が生じるため、良好な面内均一性が得られない。
これに対し、本発明の実施形態に係るシリコン窒化膜の形成方法では、原料ガスとしてSiHCl(TrCS)を用いる。これにより、Si吸着時のダングリングボンドを1つに限定し、Siの過剰吸着や物理吸着を防ぐことができる。その結果、理想的なALD成膜を実現し、高品質で面内均一性の良好なシリコン窒化膜を形成することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
上記の実施形態では、基板として半導体ウエハを例に挙げて説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
上記の実施形態では、セミバッチ式及びバッチ式の成膜装置を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば1枚ずつ成膜処理を行う枚葉式の成膜装置であってもよい。
上記の実施形態では、シリコン含有膜の一例としてシリコン窒化膜を形成する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シリコン酸化膜やシリコン酸窒化膜を形成する場合にも本発明を適用することができる。シリコン酸化膜を形成する場合には、反応ガスとして窒素含有ガスに代えて酸素、オゾン等の酸素含有ガスを用いることができる。また、シリコン酸窒化膜を形成する場合には、反応ガスとして窒素含有ガス及び酸素含有ガスを用いることができる。
1 真空容器
2 回転テーブル
31 反応ガスノズル
32 反応ガスノズル
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
210 処理容器
220 ウエハボート

Claims (12)

  1. 基板が収容された処理室内に、一般式XSiCl(式中、XはSiとの結合エネルギーがSi−Cl結合よりも小さな元素である。)で表されるシリコン含有ガスを供給し、前記基板の表面にシリコン含有ガスを吸着させる吸着工程と、
    前記処理室内に、前記シリコン含有ガスと反応する反応ガスを供給し、前記基板の表面に吸着した前記シリコン含有ガスと前記反応ガスとを反応させる反応工程と、
    を有する、
    シリコン含有膜の形成方法。
  2. 前記吸着工程では、前記基板の温度を400℃〜850℃に加熱する、
    請求項1に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  3. 前記シリコン含有ガスは、HSiCl、BrSiCl、ISiClのいずれかである、
    請求項1又は2に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  4. 前記シリコン含有ガスは、HSiClである、
    請求項1又は2に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  5. 前記反応ガスは、窒素含有ガスである、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  6. 前記窒素含有ガスは、NHである、
    請求項5に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  7. 前記吸着工程と前記反応工程とを交互に繰り返すことにより、前記基板の表面に前記シリコン含有ガスと前記反応ガスとの反応生成物を堆積させてシリコン含有膜を形成する、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  8. 前記吸着工程と前記反応工程との間に行われ、前記基板に不活性ガスを供給するパージ工程を有する、
    請求項7に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  9. 前記基板は、回転可能な回転テーブルの上面に、前記回転テーブルの周方向に沿って載置され、
    前記回転テーブルの回転方向に沿って、前記回転テーブルの上面に向けて前記シリコン含有ガスを供給可能な第1の処理領域と、前記回転テーブルの上面に向けて前記反応ガスを供給可能な第2の処理領域とが、互いに離間して設けられ、
    前記回転テーブルを回転させ、前記基板に前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを順に通過させることで、前記吸着工程と前記反応工程とを実行する、
    請求項8に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  10. 前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との間には、前記不活性ガスを供給する不活性ガス供給領域が設けられ、
    前記基板に前記不活性ガス供給領域を通過させることで、前記パージ工程を実行する、
    請求項9に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  11. 前記基板は、基板保持具に、上下方向に所定間隔を有して略水平に保持され、
    前記処理室内に、前記シリコン含有ガスと前記反応ガスとを間欠的に供給することで、前記吸着工程と前記反応工程とを実行する、
    請求項8に記載のシリコン含有膜の形成方法。
  12. 前記基板の表面には窪みが形成されており、前記シリコン含有膜は前記窪みに形成される、
    請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシリコン含有膜の形成方法。
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