JP2018083420A - 繊維強化プラスチックの製造方法 - Google Patents

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浩明 松谷
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成道 佐藤
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Abstract

【課題】部材の形状や大きさ、材料の制限が少なく、また繊維強化基材の変形特性を低コスト・高精度で推定して寸法誤差を低減する繊維強化プラスチックの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物が含浸した強化繊維を含む繊維強化基材から繊維強化プラスチックを製造するに際し、シミュレーションによって寸法誤差を低減する成形温度条件を決定することを特徴とするものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材を、成形完了時の寸法誤差が許容範囲内になるよう成形温度条件を決定する工程と、当該成形温度条件によって加熱または冷却する工程とを有する繊維強化プラスチックの製造方法に関する。
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから産業用途においても注目され、航空機、宇宙機、自動車、鉄道、船舶、電化製品、スポーツ等の構造用途に展開され、その需要は年々高まりつつある。
これら繊維強化プラスチックの製造方法の中でもボイド等の少ない高品質な成形法として、オートクレーブ成形やプレス成形がある。これらの手法は、圧力を加えることで樹脂の含浸を促し、ボイドを低減するとともに、加熱することで熱硬化性樹脂を硬化させたり、熱可塑性樹脂を溶融させたりし、その後冷却して、熱可塑性樹脂はこの過程で固化させ、型から外す。しかし、この成形過程において、強化繊維及び熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂は膨張・収縮するとともに、圧力が掛けられているため、内部に残留ひずみが蓄積される。特に、熱硬化性樹脂の硬化や結晶性の熱可塑性樹脂の結晶化は、発熱と収縮を伴う反応であり、基材内の温度を不均一にさせるとともに、残留ひずみを増大させる要因となる。また、非晶性の熱可塑性樹脂は、硬化や結晶化のような発熱や収縮を伴う変化はないが、他の樹脂と同様に温度による膨脹・収縮が生じる。その結果、出来上がった繊維強化プラスチックは脱型すると反りなどの変形が生じ、設計した形状から誤差が生じる。この寸法誤差は別の部材と組み合わせる際に障害となるが、繊維強化プラスチックは金属と違って成形完了後に寸法誤差を修正することは難しく、寸法誤差によって生じる隙間を埋めるために充填材を挟むなど、時間・費用と言ったコストの増加と重量の増加という問題が生じる。
そこで近年、プレス成形においては、圧力を段階的に変化させることで寸法誤差の発生を低減する試みがなされている(特許文献1)。また、膨張係数の異なる部材を組み合わせることで、生じる変形を相殺する試みもある(特許文献2)。
繊維強化プラスチックの寸法誤差を予測する手法としては、繊維軸方向と直交方向で熱膨張・収縮や硬化収縮の影響が異なることから、ある層の繊維軸方向を0°として、0°層数層の上に90°層数層を積層した薄板を成形し、繊維強化プラスチックを弾性体として扱って、その反り量を予測する手法が研究されている(非特許文献1)。また、高分子は弾性と粘性という2つの特徴を合わせた粘弾性特性を持つことから、その高分子であるプラスチックを母材とする繊維強化プラスチックも粘弾性特性を持つため、繊維と樹脂からなる単位セルモデルを用いて繊維強化プラスチック全体の粘弾性特性を予測する手法も研究されている(非特許文献2)。
特許第5163279号公報 特開2006−44260号公報
Composites Part A、Vol.80、pp.72〜81 Composites Part A、Vol.33、pp.399〜409
熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から、プレス成形で圧力を段階的に変化させて繊維強化プラスチックを製造する方法は、プレス機で作製できる形状、大きさに限定されるとともに、基材内を真空引きしていないため、ボイドが抜けにくい。また、膨張係数の異なる部材を組み合わせることで、生じる変形を相殺する繊維強化プラスチックの製造方法は、材料の種類が限定され、汎用性に乏しい。
繊維強化プラスチックの寸法誤差を予測するには、繊維強化基材の変形特性を正しく数値モデル化する必要がある。そのため、母材である樹脂の粘弾性特性を考慮して、基材全体も弾性体ではなく粘弾性体として扱う。また、基材の粘弾性特性は、基材そのものを測定することも考えられるが、測定中に強化繊維がずれるなどの変形が生じ、正しく測定することは難しい。そのため、樹脂と強化繊維の特性から計算する手法があるが、微視的モデルと単位セルを用いた計算では、計算コストがかかるとともに、成形後の繊維強化プラスチックを対象にすると成形中の加熱・冷却時に生じる熱膨張・収縮や熱硬化性樹脂組成物の硬化または結晶性の熱可塑性樹脂組成物の結晶化による収縮を考慮していないため、成形中の基材全体の変形特性を正しくモデル化できない。
そこで本発明の課題は、かかる背景技術に鑑み、部材の形状や大きさ、材料の制限が少なく、また繊維強化基材の変形特性を低コスト・高精度で推定して寸法誤差を低減する繊維強化プラスチックの製造方法を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1) 熱硬化性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から繊維強化プラスチックを製造する方法であって、
熱硬化性樹脂組成物の硬化特性を用いた熱伝導方程式に基づいて、基材内の温度と硬化度の分布を計算する工程、
前記分布及び基材の変形特性を用いて基材内に生じる残留ひずみを計算する工程、
前記残留ひずみに起因する寸法誤差を低減する加熱または冷却による成形温度条件を決定する工程(以下、条件決定工程、という)、及び、
当該成形温度条件によって基材を加熱または冷却する工程を有し、
さらに前記基材の変形特性を求めるために、熱硬化性樹脂組成物の変形特性及び強化繊維の変形特性から直接計算する工程を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
(2) 結晶性の熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から繊維強化プラスチックを製造する方法であって、
結晶性の熱可塑性樹脂組成物の結晶化特性を用いた熱伝導方程式に基づいて、基材内の温度と結晶化度の分布を計算する工程、
前記分布及び基材の変形特性を用いて基材内に生じる残留ひずみを計算する工程、
前記条件決定工程、及び、
当該成形温度条件によって基材を加熱または冷却する工程を有し、
さらに前記基材の変形特性を求めるために、結晶性の熱可塑性樹脂組成物の変形特性及び強化繊維の変形特性から直接計算する工程を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
(3) 非晶性の熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から繊維強化プラスチックを製造する方法であって、
熱伝導方程式に基づいて、基材内の温度の分布を計算する工程、
前記分布及び基材の変形特性を用いて基材内に生じる残留ひずみを計算する工程、
前記条件決定工程、及び、
当該成形温度条件によって基材を加熱または冷却する工程を有し、
さらに前記基材の変形特性を求めるために、非晶性の熱可塑性樹脂組成物の変形特性及び強化繊維の変形特性から直接計算する工程を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
本発明によれば、成形可能な部材の形状、大きさ、材料の制限が少なく、寸法誤差が小さい繊維強化プラスチック製品を歩留まりよく製造することができる。
熱硬化性樹脂の硬化特性または結晶性の熱可塑性樹脂の結晶化特性を考慮した熱伝導解析と基材の変形特性を考慮した力の釣合とを解くことで繊維強化プラスチックの変形を計算し、変形が解消される方向に成形温度条件を決定する手順の一例を示すフローチャートである。 実施例、比較例で用いた積層体の形状を表す図である。 実施例、比較例で用いた加熱領域を表す図である。 実施例1と比較例1の端部反り量の時間変化を表すグラフである。 実施例1と比較例2の端部反り量の時間変化を表すグラフである。
本発明者らは、部材の形状や大きさ、材料の制限が少なく、寸法誤差の小さい高品質な繊維強化プラスチック製品を歩留まりよく製造するため、鋭意検討した。
熱硬化性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から繊維強化プラスチックを製造する方法であって、熱硬化性樹脂組成物の硬化特性を用いた熱伝導方程式に基づいて、基材内の温度と硬化度の分布を計算する工程、前記分布及び基材の変形特性を用いて基材内に生じる残留ひずみを計算する工程、前記残留ひずみに起因する寸法誤差を低減する加熱または冷却による成形温度条件を決定する工程(以下、条件決定工程、という。樹脂組成物として熱可塑性樹脂組成物を用いる場合についても同じ。)、及び、当該成形温度条件によって基材を加熱または冷却する工程を有し、さらに前記基材の変形特性を求めるために、熱硬化性樹脂組成物の変形特性及び強化繊維の変形特性から直接計算する工程を有することを特徴とする方法により、かかる課題を解決することを究明したのである。また、熱硬化性樹脂組成物に替えて熱可塑性樹脂組成物を用いることができ、この場合、熱伝導方程式は、熱可塑性樹脂組成物が結晶性であればその結晶化特性を用いることとなる。加えて、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂組成物と結晶性の熱可塑性樹脂組成物の混合物の場合、両方を考慮することとなる。なお、以下において、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材のことを、繊維強化基材と記すことがある。
本発明によれば、成形品の形状や大きさ、材料に制限を設ける必要はなく、事前に温度や硬化度または結晶化度を予測するため、樹脂の発熱蓄積による温度超過や硬化や結晶化が不十分といった現象が起きにくくなり、歩留まりよく製造できる。
基材内の温度と硬化度または結晶化度の分布を計算する工程について記す。熱硬化性樹脂組成物の硬化反応に伴う発熱や結晶性の熱可塑性樹脂組成物の結晶化反応に伴う発熱の時間変化は、示差走査熱量計(DSC)を用いることで測定でき、測定結果から(A)硬化度または結晶化度、(B)硬化速度または結晶化速度の時間変化、(C)総発熱量が分かる。硬化速度は温度や硬化度の関数として、結晶化速度は温度や結晶化度の関数として、それぞれ数値モデル化し、総発熱量を掛け合わせることで、樹脂組成物の発熱の数値モデルを作成できる。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂組成物と結晶性の熱可塑性樹脂組成物の混合物の場合、混合物の測定結果からモデル化しても良いし、それぞれを個別に測定、モデル化して重量比で配分しても良い。そして、数値モデル化した樹脂組成物の発熱を熱伝導方程式に組み込み、加熱または冷却による成形温度条件を与えることで、繊維強化基材内の温度及び硬化度または結晶化度の分布が予測できる。温度や硬化度または結晶化度の分布を予測することで、前記のように、樹脂組成物の発熱蓄積による温度超過や硬化または結晶化が不十分といった現象を回避し、歩留まりよく繊維強化プラスチックを製造できる。
残留ひずみを計算する工程及び条件決定工程について記す。繊維強化基材の変形は、強化繊維及び樹脂組成物の熱による膨張及び収縮と、樹脂組成物の硬化または結晶化による収縮と、粘弾性特性の変化に起因する。そこで、これらの変形を複合した繊維強化基材の変形特性も数値モデル化し、さらに前記の予測された基材内の温度と硬化度または結晶化度の分布を使うことで、基材内に蓄積される残留ひずみやその結果生じる変形、寸法誤差も予測することが出来る。この予測手法を用いて、繊維強化基材の表面を複数の区画に分割し、区画ごとに昇温速度や保持温度、保持時間、冷却速度といった加熱または冷却による成形温度条件を変えることで、寸法誤差を許容範囲内に収める、つまり寸法誤差を低減する成形温度条件を決定する。
条件決定工程で導出した成形温度条件を実施する、つまり条件決定工程で導出した成形温度条件によって基材を加熱するには、オートクレーブやオーブンなどの雰囲気加熱や赤外線ヒーターなどの非接触加熱と、ラバーヒーターやプレートヒーターなどの接触加熱を単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、基材を冷却するには、オートクレーブやオーブンなどにおいて加熱を弱めるか止めたり、チラー等の装置を用いたりして雰囲気温度を下げる非接触冷却や、低温物体を直接接触させる接触冷却を単独で用いてもよいし、併用してもよい。非接触加熱を単独で用いる場合、繊維強化基材の表面に断熱材を配置したり、熱伝導率や表面積が大きい物体を配置したりすることで、基材表面への熱伝導を制御し、基材表面の温度を位置ごとに変化させてもよい。なお、本発明において「接触加熱」や「接触冷却」とは、繊維強化基材に直接触れた加熱または冷却であってもいいし、繊維強化基材と接触している型やバグフィルム、副資材に触れた加熱または冷却でもいい。後者の場合、繊維強化基材に間接に触れる加熱・冷却源になる。位置ごとに温度の異なる局所加熱・冷却を用いることで、形状や肉厚、材料に適した加熱・冷却を行うことができ、寸法誤差を低減するだけでなく、成形時間を短縮することも出来る。
繊維強化基材の変形特性は、繊維強化基材から測定してもよいが、基材は熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物と強化繊維という特性の異なる材料から成り、異方性があるため、正確な測定は難しい。そこで本発明では、基材の変形特性を求めるために、強化繊維と熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の変形特性を個別に測定し、これらを異方性線形粘弾性理論に基づいて組み合わせることで、精度良く効率的に繊維強化基材の変形特性を直接計算する。ここで、直接計算する、とは、上記変形特性の値を用いて、例えば微視的モデルや単位セルを用いたシミュレーションを介することなく、そのまま基材の変形特性を求めるための計算に用いることを意味する。
本発明の好ましい実施態様として、基材の任意の点における厚さ方向の温度分布を求めた際に、繊維強化基材の内部の温度と前記基材の表面の温度の差が、50℃以下となるように前述の条件決定工程において成形温度条件を決定するのがよい。熱硬化性樹脂組成物は、高温で成形すると冷却後にき裂が入ったり、分解反応を起こしてガスを発生させ、内部に空隙が生じたりする。また、熱可塑性樹脂組成物も、高温では分解してガスを発生させ、内部に空隙が生じる可能性がある。その結果、出来上がった繊維強化プラスチックの品質が低下する。従って、熱硬化性樹脂組成物の硬化や熱可塑性樹脂組成物の結晶化による発熱の影響が最も小さい基材の表面の温度を基準として、成形中の基材の内部の最高温度は、表面の温度を大きく上回らないことが好ましい。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、強化繊維の変形特性を表すパラメータが弾性率、ポアソン比、及び熱膨張・収縮率を含むのがよい。強化繊維の変形は、成形中の加熱による膨張、加熱完了後の冷却による収縮が主であり、その変形量は半径方向と繊維軸方向で異なるため、繊維強化基材の変形の異方性の要因となる。強化繊維の変形が、熱硬化性樹脂組成物の場合は硬化、熱可塑性樹脂組成物の場合は固化によって基材内に蓄積されると、型から外す際に基材全体が変形し、寸法誤差が発生する。従って、寸法誤差を予測するには、強化繊維の熱膨張・収縮率が重要であり、また、その変形の結果生じる応力を計算するため、弾性率が重要である。更に、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物から力を受けることでも強化繊維は変形するが、力による変形はポアソン効果によって力を受けた方向とは別方向の変形も生じるため、その変形の比率であるポアソン比も重要である。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の変形特性を表すパラメータが弾性率、ポアソン比、熱膨張・収縮率、及び、熱硬化性樹脂組成物が含まれる場合は硬化収縮率、結晶性の熱可塑性樹脂組成物が含まれる場合は結晶化収縮率を含むのがよい。強化繊維と同様に、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物も加熱中に膨張、冷却中に収縮し、力を受ければポアソン効果を含んだ変形をする。それに加えて、熱硬化性樹脂組成物の場合は硬化反応による収縮、結晶性の熱可塑性樹脂組成物の場合は結晶化反応による収縮も生じる。生じた変形は、力として強化繊維に伝わるため、変形を力に変換するために弾性率を用いる。熱硬化性樹脂組成物は温度と硬化によって、熱可塑性樹脂組成物は温度と固化によってそれぞれ特性が変化するため、変形特性は温度と硬化度または結晶化度の関数とすることが好ましい。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の変形特性を表すパラメータの1つである弾性率が緩和弾性率であるのがよい。熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物は粘弾性体であり、一定の変位に対して時間と共に応力が減少する応力緩和や、一定の荷重に対して時間と共に変位が増加するクリープといった現象が生じる。これらの現象を考慮し、より精度良く寸法誤差を予測するため、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の弾性率は時間や温度による変化を考慮した緩和弾性率であることが好ましく、硬化度または結晶化度による変化も考慮することがさらに好ましい。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物、強化繊維及び基材の弾性率及びポアソン比から成る三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を表すS(t)を、
Figure 2018083420
というN個の独立した剛性またはクリープコンプライアンスを表すCj(t)と、6×6の定数行列Ajの和で表現することを特徴とすることが好ましい。剛性は弾性率と形状から計算され、物体のひずみを掛けることで物体にかかる応力を計算するための係数、クリープコンプライアンスは剛性の逆数に相当し、物体にかかる応力を掛けることで物体のひずみを計算するための係数である。式(1)の形式とすることで、N=2で等方性、N=5で横等方性、N=9で直交異方性の粘弾性特性を表すことができ、樹脂組成物、強化繊維、繊維強化基材の粘弾性を同じ形式で表すことができる。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を、N=2として記述することを特徴とすることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物の単体または熱可塑性樹脂組成物の単体や熱硬化性樹脂組成物と熱可塑性樹脂組成物の混合物は、方向に依らず粘弾性特性が等方性であるため、N=2として、2つの独立した剛性またはクリープコンプライアンスで粘弾性特性を記述することが好ましい。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、強化繊維の三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を、N=5として記述することを特徴とすることが好ましい。強化繊維は繊維軸方向と半径方向で弾性特性が異なる横等方性であるため、N=5として、5つの独立した剛性またはクリープコンプライアンスで弾性特性を記述することが好ましい。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、基材の三次元剛性行列またはコンプライアンス行列をN=5として記述するとともに、独立した5個の剛性を熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維の剛性と基材内の繊維体積含有率から直接計算するか、または、独立した5個のクリープコンプライアンスを熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維のクリープコンプライアンスと基材内の繊維体積含有率から直接計算することを特徴とすることが好ましい。強化繊維をシート状に引き揃え、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物を含浸させたプリプレグは、繊維軸方向、面内直交方向、面外直交方向で粘弾性特性の異なる直交異方性を持つが、面内直交方向と面外直交方向の粘弾性特性の差は繊維軸方向に比べると小さく、等方とすることで横等方性と見なせるので、N=5として、5つの独立した剛性またはクリープコンプライアンスで粘弾性特性を記述することが好ましい。繊維強化基材の粘弾性特性は、直接測定することも出来るが、測定中に繊維が変形したり、プリプレグ同士がずれたりして正しい測定結果を得ることが難しい。そこで、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物と強化繊維それぞれの粘弾性特性を、繊維体積含有率を用いて足し合わせることで、繊維強化基材の粘弾性特性を計算することが好ましい。
さらに、本発明の好ましい実施態様として、前記基材の三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を表す式(1)の5個の定数行列Ajが剛性行列の場合、
Figure 2018083420
であり、コンプライアンス行列の場合、
Figure 2018083420
という成分(Sym.は対称行列を表す)を有することが好ましい。前記のように、繊維強化基材を横等方弾性体と見なすと、繊維強化基材の変形は繊維軸方向と直交方向それぞれの伸縮、せん断、ポアソン効果という6種の現象に起因する。しかし、等方として扱われる直交方向は3種の現象を表す引張弾性率、せん断弾性率、ポアソン比が関連づけられ、3つの変形特性の内1つを残り2つの係数で表すことができる。そのため、1種の現象が省略され、この5個の行列で表す。
以下に、本発明における熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物と強化繊維の変形特性から繊維強化基材の変形特性を直接計算する方法の一例を示すが、計算方法はこれに限定されるものではない。
繊維強化基材の積層体の変形、即ち内部に蓄積されるひずみの計算には、応力からひずみを計算するための係数であるコンプライアンス行列で変形特性をモデル化することが好ましいため、ここではコンプライアンス行列の計算方法を説明する。そのため、式(1)の形式で表す際、係数CをコンプライアンスJとして、記号を変更している。
熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の粘弾性特性は方向に依らず等方的であり、引張弾性率Emとせん断弾性率Gmの2つの弾性率で記述できる。そのため、コンプライアンス行列は、
Figure 2018083420
となり、式(1)の形式ではN=2として、
Figure 2018083420
と表される(添字mは樹脂組成物を示す)。熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物を粘弾性体として扱う場合、弾性率Eは緩和弾性率となり、時間の変数となる。緩和弾性率は一般化Maxwellモデルを用いて、Prony級数
Figure 2018083420
で近似することができる。nは任意で、大きくすることで近似の精度を上げることが出来る。パラメータE∞、Ei、λiは熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の粘弾性測定の結果から決定するのが好ましい。また、クリープコンプライアンスは一般化Voigtモデルを用いると、Prony級数
Figure 2018083420
で近似できる。パラメータk0、η0、ki、τiを測定結果から直接求めることは極めて難しいので、本特許では式(6)の緩和弾性率から求める手法を考案した。その方法は、式(6)をラプラス変換すると
Figure 2018083420
となり、式(7)もラプラス変換して逆数をとると、
Figure 2018083420
となることから、この2式の係数を比較することで求めるというものであり、これをJm1とJm2のそれぞれで行う。クリープコンプライアンスのモデル化には一般化Voigtモデルを用いることが好ましいが、測定結果から得られる緩和弾性率は一般化Maxwellモデルを用いることが好ましいため、式(6)〜式(9)で表されるような手順とした。
炭素繊維の弾性特性は、時間変化しない定数かつ繊維軸方向と半径方向で異なる横等方性であり、コンプライアンス行列は、
Figure 2018083420
となる(添字fは強化繊維、1は繊維軸方向、2は半径方向を示す)。式(1)の形式ではN=5として、行列Af1〜Af5は式(3)と同じとなりJf1〜Jf5は、
Figure 2018083420
となる。ここで、
Figure 2018083420
の関係式を使うことで、ポアソン比νf22を消している。
そして、繊維強化基材の粘弾性特性は、面内と面外の直交方向を等方とすると横等方性と見なせるため、コンプライアンス行列は、
Figure 2018083420
となる(添字cは繊維強化基材を示す)。式(1)の形式ではN=5として、強化繊維と同様に、行列Ac1〜Ac5は式(3)の通りであり、Jc1〜Jc5は、
Figure 2018083420
となる。ここで、式(12)と同じく、
Figure 2018083420
の関係式を使うことで、ポアソン比νc22を消している。
繊維強化基材の緩和弾性率及びポアソン比と、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の緩和弾性率及びポアソン比、強化繊維の弾性率及びポアソン比の関係は、
Figure 2018083420
である。ただし、
Figure 2018083420
である。ここで、Vfは繊維強化基材の体積含有率である。また、式(12)、(15)と同様に、
Figure 2018083420
の関係式を用いることで、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の緩和弾性率Em、Gmとポアソン比νmは3つの内2つが分かれば、残り1つは計算出来る。式(16)をコンプライアンスの形式に書き直すと、
Figure 2018083420
となる。
更に、温度変化による膨張・収縮のパラメータである熱膨張率と熱硬化性樹脂組成物の硬化収縮または熱可塑性樹脂の結晶化収縮に伴う収縮係数も、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維の特性と強化繊維の体積含有率Vfから計算出来る。熱膨張率βは、
Figure 2018083420
となり、硬化または結晶化収縮係数γは、
Figure 2018083420
となる。
以上のように、熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物と強化繊維の変形特性と繊維の体積含有率Vfから、繊維強化基材の変形特性を直接計算出来る。
本発明に用いる強化繊維は、ガラス繊維、ケブラー繊維、炭素繊維、グラファイト繊維またはボロン繊維等であってもよい。この内、比強度及び比弾性率の観点からは、炭素繊維が好ましい。強化繊維の形状や配向としては、一方向に引き揃えた長繊維、二方向織物、多軸織物、不織布材料、マット、編物、組紐等が挙げられる。用途や使用領域によってこれらを自由に選択できる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂は特に制限されず、熱硬化性樹脂が熱により架橋反応を起こし、少なくとも部分的な三次元架橋構造を形成するものであればよい。これらの熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を2種以上ブレンドした樹脂を用いることもできる。また、これらの熱硬化性樹脂は熱により自己硬化する樹脂であってもよいし、硬化剤や硬化促進剤等と併用してもよい。
これらの熱硬化性樹脂の内、耐熱性、力学特性及び炭素繊維への接着性のバランスに優れていることから、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。特に、アミン、フェノール及び炭素−炭素二重結合を持つ化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましく用いられる。具体的には、アミンを前駆体とする、アミノフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアニリン型エポキシ樹脂及びテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニル、トリグリシジル−p−アミノフェノール及びトリグリシジルアミノクレオソール等が挙げられる。高純度テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂である平均エポキシド当量(EEW)が100〜115の範囲のテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂、及び高純度アミノフェノール型エポキシ樹脂である平均EEWが90〜104の範囲のアミノフェノール型エポキシ樹脂が、得られる繊維強化複合材料にボイドを発生させる恐れのある揮発性成分を抑制するために好ましく用いられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンは耐熱性に優れており、航空機の構造部材の複合材料用樹脂として好ましく用いられる。
また、前駆体としてフェノールを用いるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も、熱硬化性樹脂として好ましく用いられる。これらのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレオソールノボラック型エポキシ樹脂及びレゾルシノール型エポキシ樹脂が挙げられる。高純度ビスフェノールA型エポキシ樹脂である平均EEWが170〜180の範囲のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び高純度ビスフェノールF型エポキシ樹脂である平均EEWが150〜65の範囲のビスフェノールF型エポキシ樹脂が、得られる繊維強化複合材料にボイドを発生させる恐れのある揮発性成分を抑制するために好ましく用いられる。
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂は、粘度が低いため他のエポキシ樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
また、室温(約25℃)で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、室温(約25℃)で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と比較すると硬化樹脂中の架橋密度が低い構造となるため、硬化樹脂の耐熱性はより低くなるが靭性はより高くなり、そのためグリシジルアミン型エポキシ樹脂、液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、耐熱性が高い硬化樹脂となる。また、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂及びフェニルフッ素型エポキシ樹脂も好ましく用いることができる。
ウレタン変性エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂は、破壊靭性と伸度の高い硬化樹脂となるため、好ましく用いることができる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし必要に応じて複数種合わせて使用してもよい。2官能、3官能またはそれ以上のエポキシ樹脂を添加すると、出来上がる樹脂はプリプレグとしての取り扱い易さや含浸用の樹脂フィルムとする際の加工のし易さを備えるとともに、繊維強化複合体としての湿潤条件下における耐熱性も提供できるため好ましい。特に、グリシジルアミン型とグリシジルエーテル型エポキシの組合せは、加工性、耐熱性及び耐水性を達成することができる。また、少なくとも1種の室温で液体のエポキシ樹脂と少なくとも1種の室温で固体のエポキシ樹脂とを併用することは、プリプレグに好適なタック性とドレープ性の両方を付与するのに有効である。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレオソールノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性、耐水性の高い硬化樹脂となる。これらのフェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレオソールノボラック型エポキシ樹脂を用いることによって、耐熱性、耐水性を高めつつプリプレグのタック性及びドレープ性を調節することができる。
エポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ基と反応し得る活性基を有するいずれの化合物であってもよい。アミノ基、酸無水物基またはアジド基を有する化合物が硬化剤として好適である。硬化剤のより具体的な例としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、他のカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体及び他のルイス酸錯体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独または組み合わせて用いることができる。
硬化剤として芳香族ジアミンを用いることにより、耐熱性の良好な硬化樹脂を得ることができる。特に、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好な硬化樹脂が得られるため最も好適である。芳香族ジアミンの硬化剤の添加量は、化学量論的に樹脂のエポキシ基に対して当量であることが好ましいが、場合によっては、エポキシ基に対して約0.7〜0.9の当量比とすることにより高弾性率の硬化樹脂を得ることができる。
また、イミダゾール、またはジシアンジアミドと尿素化合物(例えば、3−フェノール−1,1−ジメチル尿素、3−(3−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−トルエンビスジメチル尿素、2,6−トルエンビスジメチル尿素)との組合せを硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながらも高い耐熱性及び耐水性を達成することができる。さらに、これらの硬化剤の内の1つを形成する可能性を有する物質、例えばマイクロカプセル化物質を用いることにより、プリプレグの保存安定性を高めることができ、特に、タック性及びドレープ性が室温放置しても変化しにくくなる。
また、これらのエポキシ樹脂と硬化剤、またはそれらを部分的に予備反応させた生成物を組成物に添加することもできる。場合によっては、この方法は粘度調節や保存安定性向上に有効である。
マトリックスに用いる熱硬化性樹脂組成物では、熱可塑性樹脂を前記熱硬化性樹脂に混合し、溶解させておくことが好ましい。このような熱可塑性樹脂は、通常は炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合及びカルボニル結合より選択される結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましいが、部分的に架橋構造を有していても構わない。
また、熱可塑性樹脂は結晶性を有していてもいなくてもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル及びポリベンズイミダゾールからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を熱硬化性樹脂にブレンドし溶解させることが好ましい。
これらの熱可塑性樹脂は、市販のポリマーでもよいし、市販のポリマーより分子量の低いいわゆるオリゴマーであってもよい。オリゴマーとしては、熱硬化性樹脂と反応し得る官能基を末端または分子鎖中に有するオリゴマーが好ましい。
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物をマトリックスとして用いる場合、これらの一方のみを用いた場合よりも結果は良好なものとなる。熱硬化性樹脂の脆さを熱可塑性樹脂の靭性でカバーすることができ、また熱可塑性樹脂の成形の困難さを熱硬化性樹脂でカバーすることができるため、バランスのとれた主剤とすることができる。熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との比(質量部)は、前記各特性のバランスの点で100:2〜100:50(熱硬化性樹脂:熱可塑性樹脂)の範囲が好ましく、100:5〜100:35の範囲がより好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は特に制限されず、加熱による軟化と冷却による固化が生じるものであればよく、結晶性、非晶性を問わない。これらの熱可塑性樹脂としては、上述したものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂を2種以上ブレンドした樹脂を用いることもできる。また、これらの熱可塑性樹脂は可塑剤等と併用してもよいし、上述の通り、熱硬化性樹脂と混合してもよい。
以下、熱伝導方程式と変形特性による残留ひずみの計算を、熱硬化性樹脂組成物の場合を用いて、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるものではない。
基材の残留ひずみの計算手順は以下の通りである。
(1)対象となる基材の形状、物性値、ヒーター位置、ヒーターと基材の間の熱伝達係数といった条件を入力する。
(2)熱硬化性樹脂組成物の硬化則モデルから硬化速度を計算する。本実施例では、
Figure 2018083420
という硬化則モデルと表1に示す値を用いた。ここで、αは硬化度、Rは気体定数(8.31J/mol・K)、Tは絶対温度(K)である。計算した硬化速度から、次時間ステップの硬化度を計算する。
Figure 2018083420
(3)熱伝導方程式
Figure 2018083420
に(2)で計算した硬化速度を代入し、次時間ステップの温度を計算する。ここで、ρは基材の密度(kg/m)、Cは基材の比熱(J/kg・K)、kは基材の熱伝導率(W/m・K)、ρは熱硬化性樹脂組成物の密度(kg/m)、Hは熱硬化性樹脂組成物の硬化発熱量(J/kg)を表し、本実施例では熱伝導率以外は表1、表2に示す値を用いた。
Figure 2018083420
熱伝導率は温度の関数として、繊維軸方向は、
Figure 2018083420
直交方向(面内、厚さ)は、
Figure 2018083420
とした。ここで、温度は絶対温度(K)である。
(4)計算した硬化度と温度から、熱硬化性樹脂組成物の緩和弾性率を、式(6)に対してゲル化前後での変化を考慮して、
Figure 2018083420
を用いて計算する。式(26)中で使用したパラメータを表3に示す。また、Prony級数の項数はn=26として、各パラメータを表4に示す。更に、B.Wang、G.Fang、J.Liang及びZ.Wang著、Applied Composite Materials 第19巻(2012)、529−544頁より引用した表5に示す強化繊維の変形特性と、式(4)〜(21)で示した方法から基材のコンプライアンス行列、熱膨張率、硬化収縮係数といった変形特性を計算し、更に、計算した変形特性と硬化度、温度から基材内の残留ひずみを計算する。
Figure 2018083420
Figure 2018083420
Figure 2018083420
(5)上記手順(2)〜(4)を繰り返して時間を進め、各時間における基材内の硬化度、温度、残留ひずみの分布を計算する。
本実施例では形状を、長さ277mm、幅50mmの長方形で、長さ方向を0°として、90°層4枚の上に0°層2枚を積層した非対称クロスプライ積層体とし、厚さが1.14mm、対称性からその4分の1モデルを採用した(図2)。ヒーターの加熱条件は以下の3通りの組み合わせである。
(a)24℃から180℃まで78分で昇温し、120分保持後、78分で24℃まで降温し、120分保持。
(b)24℃から190℃まで78分で昇温し、120分保持後、78分で24℃まで降温し、120分保持。
(c)24℃から200℃まで78分で昇温し、120分保持後、78分で24℃まで降温し、120分保持。
加熱領域を図3に示すように積層体の長さ方向に3等分に分け(4分の1モデルのため、実際には長さ方向に6等分)、図3の通りに順に領域1、領域2、領域3として、各領域を(a)〜(c)に示す条件で加熱した。
(実施例1)
領域1を(a)、領域2を(b)、領域3を(c)の条件で加熱、冷却した。結果、硬化度は90〜94%の分布になり、端部の反り量は45.3mmとなった。反り量の時間変化は図4の通りである。比較例1や比較例2の結果に比べて、端部の反り量が低減されており、加熱条件によって寸法誤差を低減できた。
(比較例1)
実施例1と同じ積層体、物性値で、領域1〜3を全て(b)の条件で加熱、冷却した。結果、硬化度は92%均一となり、端部の反り量は49.7mmとなった。反り量の時間変化は図4の通りである。オートクレーブのような雰囲気加熱や一般的なヒーターのような均一加熱を模擬しており、実施例1に比べると寸法誤差が10%程度大きい。
(比較例2)
実施例1と同じ積層体、物性値で、領域1〜3を全て(a)の条件で加熱、冷却した。結果、硬化度は90%均一となり、端部の反り量は49.2mmとなった。反り量の時間変化は図4の通りである。比較例1よりも低温で硬化させ、冷却時の熱収縮の影響を抑えたが、均一加熱であるため、硬化収縮の影響を抑えられず、比較例1とほとんど差が見られなかった。
1:非対称クロスプライ積層体
2:計算対象領域
3:加熱領域1
4:加熱領域2
5:加熱領域3

Claims (12)

  1. 熱硬化性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から繊維強化プラスチックを製造する方法であって、
    熱硬化性樹脂組成物の硬化特性を用いた熱伝導方程式に基づいて、基材内の温度と硬化度の分布を計算する工程、
    前記分布及び基材の変形特性を用いて基材内に生じる残留ひずみを計算する工程、
    前記残留ひずみに起因する寸法誤差を低減する加熱または冷却による成形温度条件を決定する工程(以下、条件決定工程、という)、及び、
    当該成形温度条件によって基材を加熱または冷却する工程を有し、
    さらに前記基材の変形特性を求めるために、熱硬化性樹脂組成物の変形特性及び強化繊維の変形特性から直接計算する工程を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
  2. 結晶性の熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から繊維強化プラスチックを製造する方法であって、
    結晶性の熱可塑性樹脂組成物の結晶化特性を用いた熱伝導方程式に基づいて、基材内の温度と結晶化度の分布を計算する工程、
    前記分布及び基材の変形特性を用いて基材内に生じる残留ひずみを計算する工程、
    前記条件決定工程、及び、
    当該成形温度条件によって基材を加熱または冷却する工程を有し、
    さらに前記基材の変形特性を求めるために、結晶性の熱可塑性樹脂組成物の変形特性及び強化繊維の変形特性から直接計算する工程を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
  3. 非晶性の熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維を含む基材から繊維強化プラスチックを製造する方法であって、
    熱伝導方程式に基づいて、基材内の温度の分布を計算する工程、
    前記分布及び基材の変形特性を用いて基材内に生じる残留ひずみを計算する工程、
    前記条件決定工程、及び、
    当該成形温度条件によって基材を加熱または冷却する工程を有し、
    さらに前記基材の変形特性を求めるために、非晶性の熱可塑性樹脂組成物の変形特性及び強化繊維の変形特性から直接計算する工程を有することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
  4. 前記条件決定工程において、基材の任意の点における厚さ方向の温度分布を求めた際に、基材の内部の温度と基材の表面の温度の差が、50℃以下となるように成形温度条件を決定する、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  5. 前記強化繊維の変形特性を表すパラメータが、弾性率、ポアソン比、及び熱膨張・収縮率を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  6. 前記熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の変形特性を表すパラメータが、弾性率、ポアソン比、熱膨張・収縮率、及び、熱硬化性樹脂組成物が含まれる場合は硬化収縮率、結晶性の熱可塑性樹脂組成物が含まれる場合は結晶化収縮率を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  7. 前記熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の変形特性を表すパラメータの1つである弾性率が、緩和弾性率である、請求項6に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  8. 熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物、強化繊維、及び基材の弾性率及びポアソン比から成る三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を表すS(t)を、
    Figure 2018083420
    というN個の独立した剛性またはクリープコンプライアンスを表すCj(t)と、6×6の定数行列Ajの和で表現することを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  9. 熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の前記三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を、N=2として記述することを特徴とする、請求項8に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  10. 強化繊維の前記三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を、N=5として記述することを特徴とする、請求項8または9に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  11. 基材の前記三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を、N=5として記述するとともに、
    独立した5個の剛性を熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維の剛性と基材内の繊維体積含有率から直接計算する、または、独立した5個のクリープコンプライアンスを熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物及び強化繊維のクリープコンプライアンスと基材内の繊維体積含有率から直接計算することを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  12. 前記基材の三次元剛性行列またはコンプライアンス行列を表す式(1)の5個の定数行列Ajが、剛性行列の場合、
    Figure 2018083420
    であり、コンプライアンス行列の場合、
    Figure 2018083420
    という成分(Sym.は対称行列を表す)を有する、請求項11に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
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