以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、被検眼Eの軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向とする。眼底の表面方向をXY方向として考えてもよい。
図1を参照して、本実施形態に係る眼科撮影装置10の概略構成について説明する。本実施形態の眼科撮影装置(光コヒーレンストモグラフィーデバイス)10は、OCT光学系100と、観察光学系200と、固指標投影ユニット300と、制御部70とを主に備える。
<OCT光学系>
OCT光学系100は、被検眼Eの組織(例えば、眼底Ef)の断層画像を取得するための光干渉光学系であり、光断層干渉計(OCT:Optical Coherence Tomography)の構成を備える。具体的には、OCT光学系100は、測定光源102、カップラー(光分割器)104、測定光学系106、参照光学系110、および検出器(受光素子)120を主に備える。
測定光源102は、断層画像を取得するための光を出射する。カップラー104は、測定光源102から出射された光を、測定光(試料光)と参照光に分割する。また、カップラー104は、眼底Efによって反射された測定光と、参照光学系110によって生成された参照光とを合成し、検出器120に受光させる。
測定光学系106は、カップラー104によって分割された測定光を、眼Eの眼底Efに導く。詳細には、測定光学系106は、瞳孔と略共役な位置に光スキャナ108を備える。測定光学系106は、駆動機構50によって光スキャナ108を駆動することで、測定光を眼底Ef上で二次元方向に走査させる。その結果、眼底Ef上における断層画像の撮影位置が決定される。つまり、光スキャナ108によって走査される測定光の横断位置が、断層画像の撮影位置となる。光スキャナ108には、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)、音響光学素子(AOM)等、光を偏向させる各種デバイスを用いることができる。
参照光学系110は、参照光を生成する。前述したように、参照光は、眼底Efによる測定光の反射光と合成される。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであってもよい。本実施形態では、参照光学系110は、参照ミラー等を備えた反射光学系によって、カップラー104から導かれた光を反射させる。反射された光は、参照光としてカップラー104に再び戻される。なお、参照光学系110の構成は変更できる。例えば、参照光学系110は、カップラー104から導かれた光を反射させずに、光ファイバー等の透過光学系によって検出器120へ透過させてもよい。
OCT光学系100は、測定光と参照光の光路長差を変更する構成を有する。本実施形態のOCT光学系100は、参照光学系110が備える光学部材(具体的には参照ミラー)を光軸方向に移動させることで、光路長差を変更する。なお、光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。
検出器120は、測定光と参照光の干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合には、干渉光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって、所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。眼科撮影装置10には、種々のOCTを採用できる。例えば、Spectral−domain OCT(SD−OCT)、Swept−source OCT(SS−OCT)、Time−domain OCT(TD−OCT)等のいずれを眼科撮影装置10に採用してもよい。
<観察光学系>
観察光学系200は、被検眼Eの組織(本実施形態では眼底Ef)の正面画像を取得するために設けられている。本実施形態の観察光学系200は、いわゆる眼科用走査型レーザ検眼鏡(SLO)の構成を備える。より詳細には、観察光学系200は、光スキャナおよび受光素子(図示せず)を備える。光スキャナは、光源から発せられた測定光(例えば、赤外光)を眼底Ef上で二次元方向に走査させる。受光素子は、眼底Efと略共役な位置に配置された共焦点開口を介して、眼底Efによる測定光の反射光を受光する。
なお、観察光学系200には、赤外光等を広範囲に照射して静止画および動画の正面画像を取得する構成(いわゆる眼底カメラタイプの構成)を用いてもよい。また、OCT光学系100が観察光学系200を兼用してもよい。つまり、眼科撮影装置10は、断層画像を生成するためにOCT光学系100によって取得されたデータを用いて、組織の正面画像を取得してもよい。より具体的には、眼科撮影装置10は、三次元断層画像の深さ方向への積算画像、XY方向の各位置でのスペクトルデータの積算値、一定の深さ方向におけるXY方向の各位置での輝度データ、および、網膜表層画像等を用いて正面画像を取得してもよい。
後述する制御部70は、観察光学系200によって取得された正面画像と、OCT光学系100によって取得された画像(例えば、三次元画像の深さ方向のデータを積算して得られる正面方向からの二次元の画像)との位置合わせ(マッチング)を行うこともできる。この場合、制御部70は、三次元画像と正面画像とを対応付けて、表示・解析等の処理を行うことができる。
<固指標投影ユニット>
固指標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するために設けられている。本実施形態では、固指標投影ユニット300は、可視光を発生させる可視光源を有し、可視光源によって示される指標の呈示位置を変更する。その結果、被検眼Eの視線方向が変更されて、眼底Efの撮影部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固指標が呈示されると、眼底Efの中心部が撮影部位となる。撮影光軸に対して固指標が上方に呈示されると、眼底Efの上部が撮影部位となる。固指標投影ユニット300には種々の構成を採用できる。例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置によって固視位置を調整する構成を採用できる。また、光スキャナを用いて可視光を走査させる構成を採用してもよい。固指標投影ユニット300は、装置の内部から固指標を表示する内部固視灯タイプであってもよいし、装置の外部に固指標を表示する外部固視灯タイプであってもよい。
<制御部>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部70のCPUは、眼科撮影装置10の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、眼科撮影装置10の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。
制御部70には、不揮発性メモリ72、操作部74、および表示部75等が電気的に接続されている。不揮発性メモリ72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、眼科撮影装置10に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を不揮発性メモリ72として使用することができる。不揮発性メモリ72には、眼科撮影装置10による正面画像および断層画像の撮影を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、不揮発性メモリ72には、撮影された二次元の断層画像、三次元画像、正面画像、断層画像の撮影位置の情報等、撮影に関する各種情報が記憶される。操作部74には、検者による各種操作指示が入力される。
操作部74は、入力された操作指示に応じた信号を制御部70に出力する。操作部74には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。表示部75は、眼科撮影装置10の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。表示部75には、眼科撮影装置10によって撮影された断層画像および正面画像を含む各種画像が表示される。
なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。例えば、PCに設けられた設定制御部と、OCT光学系100等の動作を制御する動作制御部とによって、眼科撮影装置10の制御部70が構成されてもよい。この場合、例えば、PCの設定制御部は、PCに接続された操作部の操作に基づいて断層画像の撮像位置等を設定し、設定した内容を動作制御部に指示すればよい。動作制御部は、設定制御部からの指示に従って、眼科撮影装置10の各構成による撮影動作を制御すればよい。また、受光信号に基づいて画像を生成(取得)する処理は、動作制御部および設定制御部のいずれで行ってもよい。
図2を参照して、本実施形態における画像撮影の概要について説明する。本実施形態の眼科撮影装置10は、被検眼Eの組織(例えば、眼底Ef)における特定の方向に対して、断層画像の取得位置(つまり、測定光の横断位置)を所定の角度に適切に設定することができる。組織の特定の方向に対して横断位置を所定の角度に設定することで、診断に有用な断層画像が得られる場合がある。例えば、近年では、乳頭7と黄斑8(図2参照)を通過するラインを境界として眼底Efを分け、網膜厚の対称性等の構造上の変化と、病変との関係等に言及した研究結果が発表されている。仮に、乳頭7と黄斑8を通過するラインに対して横断位置を交差させると、検者は、ラインを境界とした組織の対称性を容易に断層画像から判断できる。また、血管9(図2参照)に横断位置を交差させた場合、検者は、血管径、血流速度、血流量等を断層画像から容易に判断できる。病変部位に応じて横断位置の角度を設定することで、検者にとって有用な情報が得られる場合もある。さらに、組織の方向に対して平行に横断位置を設定することで有用な情報が得られる場合もある。
図2に示すように、本実施形態の眼科撮影装置10は、横断位置30を設定する基準となる基準ライン20を正面画像2上に設定する。設定した基準ライン20に対する角度が所定角度である横断位置30を設定する。設定した横断位置30に対応する組織上に測定光を走査させて、眼底画像5を取得する。従って、眼科撮影装置10は、組織における特定の方向に対して所定角度となる横断位置30を、適切に設定することができる。その結果、診断に有用な断層画像5が容易に得られる。
本実施形態の眼科撮影装置10が実行可能な撮影のモードについて説明する。眼科撮影装置10は、「指定部位診断モード」、「血管診断モード」、および「通常モード」を実行することができる。「指定部位診断モード」では、検者が指定した部位に直線状の基準ライン20が設定され、設定された基準ライン20に基づいて横断位置30の角度が設定される。従って、検者は、所望の部位に所望の方向の基準ライン20を設定するだけで、好適な角度の横断位置30を容易に設定することができる。「血管診断モード」では、血管9に沿って基準ライン20が設定され、設定された基準ライン20に基づいて横断位置30の角度が設定される。従って、「血管診断モード」によると、検者は血管9に関する診断を容易に行うことができる。「通常モード」では、基準ライン20を設定せずに横断位置30が設定される。以下では、「通常モード」の説明は簡略化する。
図3から図5を参照して、眼科撮影装置10の制御部70が実行するモード設定処理について説明する。モード設定処理では、「指定部位診断モード」、「血管診断モード」、および「通常モード」のいずれかが検者によって選択される。さらに、選択されたモードを実行するための撮影の条件が、検者の指示に応じて設定される。制御部70は、撮影のモードを設定する指示が操作部74に入力されると、不揮発性メモリ72に記憶された撮影制御プログラムに従って、図3に示すモード設定処理を実行する。
モード設定処理が開始される場合、撮影のモードを検者に選択させるための選択画面(図示せず)が表示部75に表示される。検者は、操作部74(例えば、タッチパネル、マウス等)を操作することで、モードの選択指示を入力する。選択されたモードが「指定部位診断モード」であれば(S1:YES)、指定部位撮影条件設定処理が行われて(S2)、モード設定処理は終了する。また、選択されたモードが「指定部位診断モード」でなく(S1:NO)、「血管診断モード」であれば(S4:YES)、血管撮影条件設定処理が行われて(S5)、モード設定処理は終了する。「通常モード」が選択されると(S4:NO)、通常撮影条件設定処理が行われて(S6)、処理は終了する。
図4に示すように、指定部位撮影条件設定処理(S2)では、指定部位撮影条件設定画面15が表示部75に表示される。指定部位撮影条件設定画面15には、基準ライン設定方法選択欄と、相対角度選択欄と、横断位置設定方法選択欄と、基準ライン上の撮影の有無選択欄とが設けられている。検者は、操作部74を操作することで、各欄における複数の選択肢のいずれかを選択する。制御部70は、検者による選択に応じて撮影の条件を設定する。
基準ライン設定方法とは、基準ライン20を正面画像2上で設定する方法である。本実施形態の基準ライン設定方法には、「乳頭・黄斑自動設定」、「直接手動設定」、および「通過点手動設定」がある。「乳頭・黄斑自動設定」では、乳頭7と黄斑8を通過する基準ライン20が自動的に設定される。「直接手動設定」では、検者は、正面画像2に重畳表示される基準指標を移動させることで、所望の位置に所望の角度の基準ライン20を手動で設定できる。「通過点手動設定」では、検者は、正面画像2上に2つの通過点を手動で設定することで、2つの通過点を通過する基準ライン20を設定することができる。
相対角度とは、基準ライン20に対する横断位置30の角度である。本実施形態では、検者は「垂直」および「任意指定」のいずれかを選択できる。検者が「垂直」を選択すると、基準ライン20に垂直な横断位置30が設定される。検者が「任意指定」を選択すると、さらに角度が入力可能な状態となり、入力された角度が相対角度に設定される。
横断位置設定方法とは、基準ライン20に基づいて横断位置30を設定する方法である。本実施形態では、「手動」、「本数指定」、および「間隔指定」のいずれかを選択できる。「手動」では、検者は、基準ライン20に対する角度が相対角度となる横断位置30を、所望の位置に所望の本数だけ手動で設定できる。「本数指定」では、検者が横断位置30の本数を指定すると、指定された本数の横断位置30が等間隔で設定される。「間隔指定」では、検者によって指定された間隔で、基準ライン20上に設定される2つの端点間に複数本の横断位置が設定される。
基準ライン上の撮影の有無は、基準ライン20上に横断位置30を設定するか否かを示す。「あり」が選択されると、基準ライン20に交差する横断位置30に加えて、基準ライン20上にも横断位置30が設定される。「なし」が選択されると、基準ライン20に沿った横断位置30は設定されない。
図5に示すように、血管撮影条件設定処理(S5)では、血管撮影条件設定画面16が表示部75に表示される。血管撮影条件設定画面16には、相対角度選択欄と、横断位置設定方法選択欄と、表示方法選択欄とが設けられている。相対角度選択欄および横断位置設定方法選択欄は、指定部位撮影条件設定画面15(図4参照)と同じである。表示方法は、血管9の断層画像の表示方法である。検者は、「動画」および「静止画」のいずれかの表示方法を選択できる。
図6から図11を参照して、制御部70が実行する指定部位撮影処理について説明する。指定部位撮影処理では、「指定部位診断モード」による眼底Efの撮影が行われる。制御部70は、モード設定処理(図3参照)において「指定部位診断モード」が選択されると、不揮発性メモリ72に記憶された撮影制御プログラムに従って、図6に示す指定部位撮影処理を実行する。
まず、観察光学系200(図1参照)による眼底Efの正面画像2の撮影が開始されて、表示部75に動画でリアルタイムに表示される(S11)。検者によって選択された基準ライン設定方法が「乳頭・黄斑自動設定」であれば(S12:YES)、第一基準ライン設定処理が行われて(S13)、処理はS18へ移行する。「直接手動設定」が選択されていれば(S12:NO、S14:YES)、第二基準ライン設定処理が行われて(S15)、処理はS18へ移行する。「通過点手動設定」が選択されていれば(S14:NO)、第三基準ライン設定処理が行われて(S16)、処理はS18へ移行する。
図7に示すように、第一基準ライン設定処理では、撮影された最新の正面画像2の静止画が基準画像として取得され、RAMに記憶される(S31)。基準画像に対して公知の画像処理が行われることで、乳頭7の位置および黄斑8の位置(図11参照)が検出される(S32)。画像処理のアルゴリズムには、エッジ検出、ハフ変換等の種々のアルゴリズムのいずれを用いてもよい。次いで、検出された乳頭7と黄斑8を共に通過する直線状の基準ライン20が、基準画像上に設定される(S33)。処理は指定部位撮影処理(図6参照)に戻る。以上の処理によって、乳頭7と黄斑8を通過する基準ライン20が自動的に設定される。
図8に示すように、第二基準ライン設定処理では、基準ライン20を設定するための指標となる基準指標が、正面画像2上に重畳表示される(S41)。本実施形態では、一例として、図2に示す基準ライン20の表示態様と同様に、破線で基準指標が表示される。次いで、検者による基準指標のドラッグ操作が開始されたか否かが判断される(S42)。本実施形態では、検者が操作部74のマウスを操作し、ポインタを基準指標に合わせてドラッグすることで、基準指標が移動する。ただし、基準指標を移動させる方法が変更できることは言うまでもない。ドラッグ操作が行われるまで(S42:NO)、待機状態となる。なお、制御部70は、操作部74の所定の操作(例えば、マウスの右クリックの操作、ホイールの回転操作、キーボードの操作等)に基づいて、正面画像2上に表示させている基準指標を回転させる。
ドラッグ操作が開始されると(S42:YES)、動画で表示されていた正面画像2が、最新の静止画で停止される(S44)。操作部74の操作に応じて、静止画の正面画像2上で基準指標が移動される(S45)。従って、検者は、固視微動等の影響を受けることなく容易に静止画上で基準ライン20を設定することができる。ドラッグ操作が終了するまで(S46:NO)、S45の処理が継続される。ドラッグ操作が終了すると(S46:YES)、移動した基準指標上に基準ライン20が設定される(S48)。静止画で表示されていた正面画像2が動画像に切り換えられて(S49)、処理は指定部位撮影処理(図6参照)に戻る。以上の処理によって、直線状の基準ライン20が検者の手動で直接設定される。例えば、検者は、図11に示す基準ライン20を設定したい場合、乳頭7と黄斑8を共に通過する位置に基準指標を移動させればよい。
図9に示すように、第三基準ライン設定処理では、動画で表示されていた正面画像2が最新の静止画に切り換えられる(S51)。本実施形態では、検者は、静止画の正面画像2上に表示されているポインタをマウスで移動させてクリックすることで、基準ライン20の通過点の位置を指定する。制御部70は、クリック動作が行われると、クリック動作で指定された地点を通過点に設定する(S52)。2つの通過点の設定が完了するまで(S54:NO)、S52の処理が繰り返される。2つの通過点の設定が完了すると(S54:YES)、2つの通過点を共に通過する基準ライン20が設定される(S55)。静止画で表示されていた正面画像2が動画像に切り換えられて(S56)、処理は指定部位撮影処理(図6参照)に戻る。以上の処理によって、検者は、正面画像2上の所望の位置に2つの通過点を手動で設定するだけで、基準ライン20を設定することができる。例えば、検者は、図11に示す基準ライン20を設定したい場合、乳頭7と黄斑8の各々に通過点を設定すればよい。また、検者は、病変部位等を所定の方向に横切る基準ライン20を設定することも容易である。
図6の説明に戻る。基準ライン20が設定されると、設定された基準ライン20が正面画像2上に重畳表示される(S18)。次いで、基準ライン追尾処理が開始される(S19)。基準ライン追尾処理とは、動画で表示されている正面画像2上で、基準ライン20の位置を正しい位置に追尾(トラッキング)させる処理である。本実施形態では、基準ライン20が設定された際の静止画の正面画像2に対する、基準ライン20設定後の正面画像2(つまり、最新の正面画像2)の位置ずれが、前述した画像処理によって検出される。検出される位置ずれのパラメータには、方向、距離、および角度が含まれる。制御部70は、検出した方向に、検出した距離だけ基準ライン20の位置を移動させると共に、検出した角度だけ基準ライン20を回転させる。その結果、基準ライン20が正しい位置に追尾される。
なお、制御部70は、位置ずれを検出する場合、連続して撮影される正面画像2の全てを、基準ライン20が設定された際の正面画像2と直接比較する必要は無い。例えば、制御部70は、最新の正面画像2と、その直前に撮影された正面画像2との位置ずれを繰り返し検出してもよい。この方法でも、基準ライン20が設定された際の正面画像2に対する最新の正面画像2の位置ずれを検出できる。また、制御部70は、静止画の正面画像2が所定枚数撮影される毎に、比較対象とする正面画像2を変更してもよい。また、制御部70は、正面画像2上の特徴点に対する基準ライン20の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置が維持されるように基準ライン20を追尾させてもよい。
次いで、横断位置設定処理が行われる(S20)。横断位置設定処理では、S12〜S16で設定された基準ライン20に基づいて、測定光の横断位置30(つまり、断層画像の撮影位置)が設定される。
図10に示すように、横断位置設定処理が開始されると、モード設定処理(図3参照)で設定された相対角度が取得される(S61)。前述したように、相対角度とは、基準ライン20に対する横断位置30の角度である。本実施形態では、検者は、相対角度として「垂直」を選択してもよいし、「任意指定」で所望の相対角度を指定してもよい。次いで、モード設定処理で設定された横断位置設定方法が「手動」であるか否かが判断される(S62)。
「手動」が設定されていれば(S62:YES)、まず、基準ライン20に相対角度で交差する走査指標(例えば、図2の横断位置30を示す指標)が、正面画像2上に重畳表示される(S64)。走査指標は、基準指標(例えば、図2の基準ライン20を示す指標)の表示態様とは異なる表示態様で表示されるのが望ましい。この場合、検者は2つの指標を容易に見分けることができる。また、走査指標は、基準ライン20に対する角度を、設定された相対角度に固定された状態で、且つ、基準ライン20上を移動可能な状態で表示される。さらに、制御部70は、直線状の走査指標の中心を、基準ライン20上で移動させることが望ましい。この場合、断層画像の中心に基準ライン20が位置する。よって、検者は基準ライン20を中心とした診断を容易に行うことができる。
次いで、ドラッグ操作が開始されたか否かが判断される(S65)。本実施形態では、検者が操作部74のマウスを操作し、ポインタを走査指標に合わせてドラッグすることで、走査指標が移動する。なお、制御部70は、ポインタの移動方向のうち、基準ライン20が延びる方向(基準ライン20が曲線の場合には、走査指標が表示されている位置における基準ライン20の接線方向)と平行な成分の移動量に基づいて走査指標を移動させる。従って、検者は、基準ライン20の方向とポインタの移動方向とを正確に一致させなくとも、走査指標を容易に所望の方向に移動させることができる。ドラッグ操作が開始されていなければ(S65:NO)、処理はS71の判断へ移行する。ドラッグ操作が開始されると(S65:YES)、動画で表示されていた正面画像2が最新の静止画に切り換えられる(S66)。制御部70は、ドラッグ操作に応じて、静止画である正面画像2上の走査指標を移動させる(S67)。従って、検者は、固視微動等の影響を受けることなく容易に走査指標を所望の位置に移動させることができる。ドラッグ操作が終了するまで(S68:NO)、S67の処理が継続される。
ドラッグ操作が終了すると(S68:YES)、移動した走査指標上に横断位置30が設定される(S69)。図11に示すように、設定された横断位置30は正面画像2上に表示される。次いで、横断位置30の設定を完了させる指示が操作部74から入力されたか否かが判断される(S71)。例えば、検者は、複数の横断位置30を設定する場合、設定を完了させる指示を入力せずに、次のドラッグ操作を行えばよい。設定を完了させる指示が入力されていなければ(S71:NO)、処理はS65の判断へ戻る。設定を完了させる指示が入力されると(S71:YES)、処理はS75の判断へ移行する。
また、モード設定処理(図3から図5参照)で設定された横断位置設定方法が「本数指定」または「間隔指定」であれば(S62:NO)、設定された方法で横断位置30が設定されて(S73)、処理はS75の判断へ移行する。具体的には、「本数指定」が設定されていれば、基準ライン20上の2つの端点間に、指定された本数の横断位置30が設定される(図11参照)。本実施形態では、「本数指定」で複数本の横断位置30が設定される場合、各横断位置30の中心が等間隔に配置される。よって、検者は効率よく組織の診断を行うことができる。また、「間隔指定」が設定されていれば、基準ライン20上の2つの端点間に、指定された間隔で複数の横断位置30が配置される。なお、本実施形態における間隔は、「本数指定」の場合と同様に各横断位置30の中心の間隔である。しかし、制御部70は、各横断位置30の垂直方向の距離を、検者によって指定された間隔に設定してもよい。なお、基準ライン20上の2つの端点は適宜設定すればよい。例えば、「乳頭・黄斑自動設定」の場合には、乳頭7の中心と黄斑8の中心の各々に2つの端点を設定すればよい。「通過点手動設定」の場合には、2つの通過点をそのまま端点に設定すればよい。「直接手動設定」の場合、制御部70は、検者に2つの端点を指定させてもよいし、自動で端点を設定してもよい。
次いで、基準ライン上の撮影の有無が「あり」に設定されているか否かが判断される(S75)。「なし」に設定されていれば(S75:NO)、処理はそのまま指定部位撮影処理(図6参照)に戻る。「あり」に設定されていれば(S75:YES)、基準ライン20上にも横断位置30が設定されて(S76)、処理は指定部位撮影処理に戻る。
図6の説明に戻る。横断位置設定処理(S20)が終了すると、横断位置30のトラッキングが開始される(S22)。横断位置30のトラッキング処理では、前述した基準ライン20の追尾処理と同様に、過去に取得された正面画像2に対する最新の正面画像2の位置ずれが、画像処理によって検出される。検出された位置ずれに基づいて横断位置30が補正されることで、横断位置30のトラッキングが行われる。次いで、トラッキングが行われている横断位置30に測定光が走査される(S23)。その結果、設定された横断位置30における断層画像5(図2参照)が取得される。撮影された断層画像5が、設定に応じて動画または静止画で表示部75に表示されて(S24)、処理は終了する。なお、制御部70は、断層画像5を動画で表示させる場合には、同一の横断位置30に複数回連続して測定光を走査させて、表示部75に画像を連続して表示させればよい。
図12および図13を参照して、制御部70が実行する血管撮影処理について説明する。血管撮影処理では、「血管診断モード」による眼底Efの撮影が行われる。制御部70は、モード設定処理(図3参照)において「血管診断モード」が選択されると、不揮発性メモリ72に記憶された撮影制御プログラムに従って、図12に示す血管撮影処理を実行する。なお、図12におけるS18〜S24の処理は、前述した指定部位撮影処理のS18〜S24の処理と同様である。よって、S18〜S24の説明は省略または簡略化する。
まず、観察光学系200(図1参照)による眼底Efの正面画像2の撮影が実行されて、静止画の正面画像2が表示部75に表示される(S81)。表示されている正面画像2に対して、公知の血管抽出アルゴリズムによる血管の抽出処理が行われる(S82)。図13に示す例では、乳頭7から放射状に延びる4本の血管9が抽出される。検者は、操作部74を操作することで、抽出された1または複数の血管9の中から、診断する血管9を選択する。選択する血管9の本数は、1本でも複数本でもよい。選択が完了するまで(S83:NO)、待機状態となる。血管9の選択が完了すると(S83:YES)、選択された血管9上に(つまり、血管9の方向に沿って)基準ライン20が設定される(S84)。図13に示すように、多くの血管9は曲線状となるため、基準ライン20も曲線状となる。正面画像2が静止画から動画に切り換えられる(S85)。
次いで、血管9上に設定された基準ライン20が正面画像2上に表示されて(S18)、基準ライン20の追尾処理が開始される(S19)。横断位置設定処理(図10参照)によって横断位置30が設定される(S20)。図13は、手動で3箇所に横断位置30が設定された場合を例示している。手動の場合、検者が走査指標を移動させるための操作を行うと、制御部70は、曲線状の基準ライン20に対する角度を保った状態で走査指標を移動させる。よって、検者は、曲線状の部位(この場合は血管9)に対して所定の角度となる横断位置30を、容易且つ確実に設定することができる。次いで、横断位置30のトラッキングが開始され(S22)、横断位置30に対する測定光の走査が行われる(S23)。撮影された断層画像5が、設定に応じて動画または静止画で表示部75に表示されて(S24)、処理は終了する。
なお、制御部70は、断層画像5を動画で表示させる設定が行われている場合、静止画の断層画像5を連続して複数取得することで、血管9を含む組織における動画の断層画像5を生成する。よって、検者は血管9に対する様々な診断を容易に行うことができる。
以上説明したように、本実施形態の眼科撮影装置10は、横断位置30の角度を、検者からの指示に応じて設定した基準ライン20に対して所定角度とする。従って、検者は、被検眼Eの組織の方向に応じて基準ライン20を設定するだけで、組織における特定の方向に対して所定角度となる横断位置30を適切に設定することができる。よって、検者は、画像上の特徴部位に対して基準ライン20を設定するだけで、容易に適切な診断を行うことができる。
本実施形態の眼科撮影装置10は、基準ライン20に所定角度で交差する横断位置30を設定する。従って、検者は、組織の方向に応じた断層画像5によって、被検眼Eの診断を容易且つ適切に行うことができる。例えば、乳頭7と黄斑8を通る基準ライン20を設定することで、基準ライン20を中心とした対称性を容易に断層画像5によって確認することができる。また、検者は、血管9に沿って基準ライン20を設定することで、血管径、血流速度、血流量等を容易に把握できる。
本実施形態の眼科撮影装置10は、基準ライン20に垂直に交差する横断位置30を設定することができる。この場合、検者は、基準ライン20に対する組織の対称性をより正確に把握することができる。また、眼科撮影装置10は、基準ライン20に対する横断位置30の角度(相対角度)を検者に指定させることもできる。よって、検者は、より自由且つ正確に所望の断層画像5を眼科撮影装置10に撮影させて診断を行うことができる。一例として、左右眼の比較を行う場合、および、複数の被検者の被検眼Eを比較する場合等にも、組織の特定の方向に対する角度が正確に一致した断層画像5を用いて比較を行うことができる。より具体的には、本実施形態の眼科撮影装置10は、左右眼の比較が行われる場合、一方の眼の撮影時に設定された横断位置30の相対角度を記憶する。次いで、他方の眼を撮影する際に、記憶されている相対角度を左右方向に反転させて、反転させた相対角度で横断位置30を設定する。従って、検者は正確に左右眼を比較することができる。なお、左右眼の比較を行う場合、組織に対する基準ライン20の角度についても、横断位置30の相対角度と同様に処理してもよい。
本実施形態の眼科撮影装置10は、検者の操作指示に従って基準指標を移動させることで、基準ライン20を設定することができる。この場合、検者は、表示部75に表示された正面画像5を見ながら容易に所望の基準ライン20を設定することができる。
本実施形態の眼科撮影装置10は、基準ライン20の位置を示す基準指標とは異なる態様で、走査指標を正面画像2上に重畳表示させる。次いで、眼科撮影装置10は、基準ライン20に対する角度を固定した状態で、検者の操作指示に従って走査指標を移動させると共に、移動させた走査指標上に横断位置30を設定することができる。この場合、検者は、基準指標と走査指標を容易に見分けて正確に横断位置30を設定することができる。さらに、検者は、基準ライン20に対する角度が所定角度となる横断位置30を、所望の位置に自由且つ正確に設定することができる。また、眼科撮影装置10は、設定した基準ライン20を正面画像2上に重畳表示させる。従って、検者は、適切な位置に基準ライン20が設定されたか否かを、正面画像2上で容易且つ確実に確認することができる。
本実施形態の眼科撮影装置10は、少なくとも基準ライン20を設定するための検者からの指示入力が受け付けられている間、静止画の正面画像2を表示部75に表示させる。従って、固視微動、被検者の呼吸等によって被検眼Eが動いても、検者は、静止した正面画像2上で容易且つ確実に基準ライン20を設定することができる。
本実施形態の眼科撮影装置10は、正面画像2の撮影範囲のずれに基づいて、正面画像2上の基準ライン20の位置を移動(追尾)させることができる。つまり、基準ライン20が設定された後に、固視微動等によって正面画像2の撮影範囲が変化しても、撮影された被検眼Eの組織に対する基準ライン20の位置が維持される。従って、検者は、被検眼Eが動いた場合でも基準ライン20の設定をやり直す必要が無い。
本実施形態の眼科撮影装置10は、走査の中心位置が基準ライン20上に位置するように横断位置30を設定する。この場合、検者は、基準ライン20上を中心とした断層画像5を容易に確認することができる。特に、基準ライン20に対する横断位置30の角度を垂直とした場合には、検者は、基準ライン20上を中心とする組織の対称性をより正確に把握することができる。
本実施形態の眼科撮影装置10は、被検眼Eの眼底Efにおける血管9の方向に沿って基準ライン20を設定することができる。この場合、検者は、血管9の方向を基準とした断層画像5を容易に確認して診断を行うことができる。詳細には、本実施形態の眼科撮影装置10は、血管抽出アルゴリズムによる血管9の検出処理を行い、検出した血管9の方向に沿って基準ライン20を設定することができる。従って、眼科撮影装置10は、検者に多くの操作等を行わせることなく、血管9の方向に沿った基準ライン20を正確に設定することができる。
本実施形態の眼科撮影装置10は、断層画像5を連続して複数取得することで、血管9を含む組織における動画の断層画像5を生成することができる。従って、検者は、血管9を含む組織を動画で確認することができる。よって、検者は、血管9の血流状態(例えば、血流速度、血流量)を、簡易な操作で的確に把握することができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、様々な変形が可能であることは勿論である。上記実施形態の眼科撮影装置10は、OCT光学系100を用いて断層画像5を撮影する。しかし、本発明が適用できるのは、OCT光学系100を備えた装置に限定されない。つまり、断層画像5と正面画像2を撮影できる眼科撮影装置であれば、本発明を適用できる。
上記実施形態では、被検眼Eの眼底Efを撮影する場合を例示して説明を行った。しかし、眼底Ef以外の部位(例えば、前眼部)の断層画像5を撮影する場合にも、本発明は適用できる。また、本発明は、眼以外の被検物(例えば、内臓、半導体等)を撮影する装置にも適用できる。より具体的には、製造された半導体の対称性を確認する場合等に、対称性を確認する部位の中心を横断するように基準ライン20を設定すれば、作業者は容易に有用な検査を行うことができる。
上記実施形態では、「指定部位診断モード」が選択されると直線状の基準ライン20が設定され、「血管診断モード」が選択されると血管9に沿った基準ライン20が設定される。しかし、基準ライン20の態様はこれらに限定されない。例えば、眼科撮影装置10は、円弧状、多角形状等の他の形状の基準ライン20を設定してもよい。この場合でも、基準ライン20に対する角度が所定角度となる横断位置30を設定すればよい。
上記実施形態の眼科撮影装置10は、基準ライン20に所定角度で交差するように横断位置30を設定する。従って、検者は、基準ライン20を交差する方向の断層画像5を容易に把握することができる。しかし、眼科撮影装置10は、基準ライン20と横断位置30とを交差させずに、基準ライン20に対する横断位置30の角度のみを規定してもよい。この場合でも、検者は、組織の特定の方向に対して所定角度となる横断位置30を適切に設定することができる。よって、眼科撮影装置10は、基準ライン20に対して平行となる横断位置30等を設定することも可能である。また、基準ライン20が曲線である場合、眼科撮影装置20は、基準ライン20の接線方向に横断位置30を設定してもよい。基準ライン20に対する横断位置30の角度を垂直で固定してもよい。また、上記実施形態の眼科撮影装置10は、走査の中心位置が基準ライン20上に位置するように横断位置30を設定する。従って、検者は、基準ライン20を中心とした断層画像5を容易に確認することができる。しかし、走査の中心位置を基準ライン20上に位置させなくても、本発明は実現できる。
上記実施形態の眼科撮影装置10は、「乳頭・黄斑自動設定」、「直接手動設定」、および「通過点手動設定」のいずれの方法でも基準ライン20を設定できる。しかし、眼科撮影装置10は、基準ライン20を設定する処理を少なくとも1つ実行できればよい。また、上記実施形態では、乳頭と黄斑を共に通過する基準ライン20を設定する場合について説明を行った。しかし、基準ライン20を設定する位置を変更することも可能である。例えば、病変部位と乳頭を通過する基準ライン20を設定してもよい。病変部位と黄斑を通過する基準ライン20を設定してもよい。病変部位が画像処理によって識別できる場合には、病変部位を通過する基準ライン20を、画像処理を用いて自動的に設定してもよい。
上記実施形態では、撮影のモードが最初に選択され、選択されたモードに従って基準ライン20の設定等の処理が実行される。しかし、基準ライン20の設定方法は、撮影の途中で設定・変更されてもよい。同様に、上記実施形態では、基準ライン設定方法、相対角度、横断位置設定方法、基準ライン上の撮影の有無、および表示方法が予め設定された後で、基準ライン20の設定等の処理が実行される(図4および図5参照)。しかし、各種設定を行うタイミングが適宜変更できることは言うまでもない。例えば、眼科撮影装置10は、基準ライン20を設定した後で相対角度を設定または変更してもよい。眼科撮影装置10は、横断位置設定処理(図10参照)において横断位置設定方法を自由に変更できてもよい。眼科撮影装置10は、表示方法(動画または静止画)を、検者からの操作指示に応じて任意のタイミングで切り替えてもよい。また、横断位置設定方法も変更できる。例えば、「手動」が選択されている場合でも、検者が横断位置の本数または間隔を指定できてもよい。
基準ライン20の具体的な設定方法は、適宜変更できる。例えば、眼科撮影装置10は、「直接手動設定」と「通過点手動設定」のいずれかを予め検者に選択させることなく基準ライン20を設定してもよい。この変形例では、眼科撮影装置10は、例えば基準指標がドラッグされた場合に第二基準ライン設定処理(図8参照)を行い、クリックによって通過点が指定された場合に第三基準ライン設定処理(図9参照)を行うことも可能である。また、眼科撮影装置10は、検者の操作指示に基づく基準ライン20の設定を、「直接手動設定」および「通過点手動設定」以外の方法で行うことも可能である。例えば、制御部70は、クリック動作等によって指定された1点を基準指標の通過点とし、基準指標が通過点を通過することを条件として基準指標の角度等を変更することで、走査ライン20を設定してもよい。
上記実施形態の眼科撮影装置10は、表示部75の表示領域全体を横断するように、直線状の基準指標および基準ライン20を正面画像2上に表示させる。従って、検者は、正面画像2上で距離が大きく離れた2点を通過するように基準ライン20を設定する場合でも、画像を見ながら正確に操作を行うことができる。しかし、基準指標および基準ライン20は、一定の長さを有するラインであってもよい。
上記実施形態の眼科撮影装置10は、設定した基準ライン20を正面画像2上に表示させる。従って、検者は、基準ライン20が正確に設定されたか否かを容易に確認できる。しかし、基準ライン20を表示せずに横断位置30を設定することも可能である。つまり、眼科撮影装置10は、内部的に取得された正面画像2上で基準ライン20を設定してもよい。また、基準指標の表示態様と、設定された基準ライン20の表示態様とを別の態様とすれば、検者はより容易に設定内容を確認できる。同様に、走査指標と、設定された横断位置30とを別の表示態様で表示させてもよい。
上記実施形態の眼科撮影装置10は、静止画の正面画像2上で基準ライン20の位置の指定を受け付ける。従って、検者は、被検眼が動いた場合でも容易且つ確実に基準ライン20を設定することができる。しかし、動画の正面画像2上で基準ライン20の位置の指定を受け付けることも可能である。この場合でも、基準ライン20の設定後に基準ライン20の位置を追尾させる処理を行えば、検者の操作負担を軽減することができる。また、眼科撮影装置10は、基準ライン20の設定中だけでなく、その後に実行される横断位置30の設定中まで静止画の表示を継続させてもよい。また、上記実施形態では、1つの基準ライン20が設定される場合について例示した。しかし、正面画像2上に複数の基準ライン20が設定されてもよい。また、眼科撮影装置10は、一旦設定した基準ライン20を、検者の操作指示等に応じて調整してもよい。調整の処理方法は、前述したS45の処理方法と同様の方法を採用できる。
上記実施形態の眼科撮影装置10は、血管9を自動検出し、検出した血管9に沿って基準ライン20を設定することができる。よって、検者は、正確且つ容易に血管9上に基準ライン20を設定できる。しかし、血管9上に基準ライン20を設定する方法は変更することも可能である。例えば、眼科撮影装置10は、検者の操作指示に応じて移動させたポインタの軌跡を血管9の形状と判断し、軌跡上に基準ライン20を設定してもよい。また、眼科撮影装置10は、タッチパネル上に描かれた軌跡に従って基準ライン20を設定してもよい。また、上記実施形態の眼科撮影装置10は、複数の血管9が自動検出された場合、基準ライン20を設定する1または複数の血管9を検者に選択させる。従って、検者は所望の血管9の診断を容易に行うことができる。しかし、眼科撮影装置10は、自動検出された血管9の全てに基準ライン20を設定してもよい。
設定された基準ライン20が1本の直線でない場合(例えば、血管9に沿う曲線である場合)、眼科撮影装置10は、各横断位置が交差しないように複数の横断位置を設定してもよい。具体的には、眼科撮影装置10は、隣接する複数の横断位置の間隔を調整することで、横断位置の交差を防止してもよい。横断位置の長さを調整して交差を防止してもよい。横断位置の交差を防止することで、同一の箇所が複数の断層画像に表れることが無くなり、診断の効率が向上する。
上記実施形態の眼科撮影装置10は、断層画像の撮影前に基準ライン20を設定し、設定した基準ライン20に対する角度が所定角度となるように、測定光を走査させる位置である横断位置30を設定する。しかし、上記実施形態における「撮影」を「表示」に変更することで、既に取得された被検物の三次元データから所定の横断位置の断層画像を表示させる場合の利便性を向上させることもできる。つまり、既に取得されている被検物の三次元データを用いて、所定の角度(例えば、被検物の対称性を確認することが容易な角度)の横断位置における断層画像を表示させる場合に、上記実施形態を変形させて実施することが可能である。
本変形例の一実施形態を例示する。断層画像を処理する画像処理装置(例えば、眼科撮影装置10、PC等)は、測定光のラスタースキャン等を行うことで得られる被検物の三次元データ(三次元画像)を予め取得しておく。図6の処理を変形した指定部位「表示」処理では、S23で測定光が走査される代わりに、設定された横断位置の断層画像が三次元データから取得される。取得された断層画像は、S24で表示される。なお、本変形例では、S11で表示される正面画像は静止画でよい。基準ライン20の追尾(S18)、および、横断位置のトラッキング(S22)は、実行しなくてもよい。また、横断位置設定処理(図10参照)等の他の処理は、上記実施形態で例示した処理を概ね適用すればよい。
本変形例の画像処理装置が実行する画像処理プログラムは、以下のように表すこともできる。『被検物の三次元データから、前記被検物の二次元の断層画像を取得する画像処理装置において実行される画像処理プログラムであって、前記画像処理装置のプロセッサによって実行されることで、前記三次元データを取得する三次元データ取得ステップと、前記被検物の正面画像を表示手段に表示させる表示制御ステップと、検者からの指示の入力を受け付ける指示受付ステップと、前記指示受付ステップにおいて受け付けられた指示に応じて、前記断層画像を取得する位置である横断位置を設定する基準となる基準ラインを、前記正面画像上に設定する基準ライン設定ステップと、前記基準ライン設定ステップにおいて設定された前記基準ラインに対する角度が所定角度である前記横断位置を設定する横断位置設定ステップと、前記横断位置設定ステップにおいて設定された前記横断位置の前記断層画像を、前記三次元データ取得ステップにおいて取得された前記三次元データから取得する断層画像取得ステップと、を前記画像処理装置に実行させることを特徴とする画像処理プログラム。』
上記実施形態では、眼科撮影装置10に設けられた制御部70が、眼科撮影装置10の動作の全てを制御する。しかし、眼科撮影装置10の動作の一部を制御するデバイスを、眼科撮影装置10とは別に使用してもよい。例えば、眼科撮影装置10にPCを接続し、基準ライン20の設定、横断位置30の設定等の処理の少なくとも一部をPCに実行させてもよい。この場合、PCは、前述した撮影制御プログラムの少なくとも一部をプロセッサによって実行すればよい。