以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡装置を示すブロック図である。
図1に示すように、内視鏡装置1は、撮像素子25を有する内視鏡2と、内視鏡2が着脱自在に接続され所定の信号処理を行うビデオプロセッサ3と、内視鏡2が着脱自在に接続され内視鏡2に対して照明光を供給する光源装置4と、ビデオプロセッサ3により生成された画像信号を内視鏡画像として表示する表示装置としてのモニタ5と、を備える。
内視鏡2は、体腔内に挿入される細長の挿入部6を有する。挿入部6の後端には、操作部7が設けられており、この操作部7からはユニバーサルコード8が延出されている。ユニバーサルコード8によって、撮像素子25において撮像された撮像信号が伝送される。また、ユニバーサルコード8の延出端部には光源用コネクタ11が設けられており、この光源用コネクタ11が光源装置4に着脱自在に接続される。また、光源用コネクタ11の側部には、電気ケーブル9が延出されており、電気ケーブル9は、延出端に配設された電気コネクタ12によってビデオプロセッサ3に着脱自在に接続される。
挿入部6、操作部7およびユニバーサルコード8内には照明光を伝送するライトガイド13が挿通されている。そして、光源用コネクタ11を光源装置4に接続することにより、光源装置4からの照明光をライトガイド13により伝送し、挿入部6の先端部14に設けられた照明窓に取り付けられたライトガイド先端面13aから、伝送した照明光を出射する。
先端部14には照明窓に隣接して観察窓が設けられ、観察窓には照明された患部等の被写体の光学像を入光するレンズ装置21が配設されている。また、レンズ装置21の後端には撮像素子25が配設されており、レンズ装置21は、被写体光学像を撮像素子25の撮像面に結像させるようになっている。
撮像素子25は、たとえばCCDイメージセンサにより構成され、挿入部6、ユニバーサルコード8及び電気ケーブル9内に挿通されたケーブルを経たのち電気コネクタ12を介してビデオプロセッサ3に接続される。
ビデオプロセッサ3は、各種回路の制御を行う制御部31と、撮像素子25等の動作に必要な複数の電源電圧の電源を発生する図示しない電源回路と、撮像素子25から出力される撮像信号に対する所定の信号処理を行う信号処理回路(画像処理部32および前処理部33等)と、内視鏡2の撮像素子25を駆動するCCD駆動回路34と、を有する。
前処理部33は、制御部31に制御されて、撮像素子25からの撮像信号に対して所定の前信号処理を施すものであり、公知の信号増幅部、プロセス回路、A/Dコンバータ、ホワイトバランス回路等により構成される。
画像処理部32は、制御部31の制御下に、前処理部33からの出力信号に対して所定の画像処理を施し、モニタ5に表示するための画像信号を出力するようになっている。モニタ5は、ビデオプロセッサ3から供給された内視鏡画像を表示画面上に表示するようになっている。
本実施の形態においては、内視鏡2には、レンズ装置21を駆動制御するための制御部29が設けられている。制御部29は、信号線26a,27a及び26b,27bを介してレンズ装置21に電力を供給してレンズ装置21を駆動することができるようになっている。更に、本実施の形態においては、信号線27a,27b上には電流検出回路28が設けられており、電流検出回路28は、信号線27a,27bに流れる電流を検出して、検出結果を制御部29に供給することができるようになっている。
図2は図1中のレンズ装置21、電流検出回路28及び制御部29によって構成されるレンズ駆動装置20の具体的な構成の一例を示す説明図である。
レンズ装置21の外観は、略円柱形状であり、図2は円柱の中心軸を含む平面によって切断した形状を示すものである。レンズ装置21は、内視鏡2の挿入部6に対して固定された円筒形状の外枠41を有する。外枠41の先端側が挿入部6の先端側に配置される。図2では紙面左側を先端側、右側を後端側というものとする。外枠41には、先端側の外周に沿って磁石42aが配設されている。磁石42aは例えば先端側がN極で後端側がS極である。この磁石42aの後端側の外枠41外周には、第1のコイル43aが巻回されている。この第1のコイル43aから所定距離離間した後端側の外枠41外周には、第2のコイル43bが巻回されている。第2のコイル43bの後端側の外枠41外周には磁石42bが配設されている。磁石42bも例えば先端側がN極で後端側がS極である。
これらの磁石42a,42b並びに第1及び第2のコイル43a,43bによって、レンズ位置を変化させるアクチュエータユニットが構成される。
外枠41の内周には、先端側において内周側に突出した先端規制部44aが設けられており、この先端規制部44aの後端(以下、遠端規制端という)から所定距離離間した後端側において内周側に突出した後端規制部44bが設けられている。この後端規制部44bの先端(以下、近端規制端という)と遠端規制端との間の外枠41内周に沿って、円筒形のスライダ45が配設されている。レンズ保持枠であるスライダ45の内周には、レンズ46が配設されており、レンズ46の光軸は外枠41の円柱中心軸と平行になっている。
スライダ45は、光軸方向の長さが遠端規制端と近端規制端との間の距離よりも短く、光軸方向に外枠41内周を摺動自在である。スライダ45が遠端規制端に当接している場合のレンズ46の位置(レンズ位置)及びスライダ45の位置を遠端位置といい、スライダ45が近端規制端に当接している場合のレンズ位置及びスライダ45の位置を近端位置というものとする。図2に示すように、遠端規制端近傍に磁石42aと第1のコイル43aとの境界が位置し、近端規制端近傍に第2のコイル43bと磁石42bとの境界が位置する。スライダ45は、磁石42a,42bに引き寄せられる磁性材料によって構成される。
第1のコイル43aの一端には信号線26aが接続され、他端には信号線27aが接続される。制御部29は駆動回路47を備えており、駆動回路47は信号線26a,27aを介して第1のコイル43aに駆動電流を流すことができるようになっている。また、第2のコイル43bの一端には信号線26bが接続され、他端には信号線27bが接続される。駆動回路47は信号線26b,27bを介して第2のコイル43bに駆動電流を流すことができるようになっている。
本実施の形態においては、駆動回路47は、駆動電流を第1のコイル43a又は第2のコイル43bに切換えて流すことができる。内視鏡2の操作部7にはフォーカスを制御するためのフォーカススイッチ30が配設されている。アクチュエータ操作部としてのフォーカススイッチ30は、ユーザ操作に基づいて、レンズ46を遠端位置又は近端位置に設定するための操作信号を発生する。例えば、駆動回路47は、フォーカススイッチ30の操作等に基づいて、遠端位置が設定された場合には第1のコイル43aに選択的に駆動電流を流し、近端位置が設定された場合には第2のコイル43bに選択的に駆動電流を流すようになっている。
磁石42aは磁束51aを発生し、磁石42bは磁束51bを発生する。磁石42a,42bによるこれらの磁束51a,51bによる磁力は比較的小さく、磁石42aは遠端規制端に当接したスライダ45を遠端位置に維持する程度の磁力しか有しておらず、また、磁石42bは近端規制端に当接したスライダ45を近端位置に維持する程度の磁力しか有していない。
これに対し、第1のコイル43a及び第2のコイル43bに駆動電流を流した場合には、これらのコイル43a,43bに生じる磁力は比較的大きく、これらのコイル43a,43bに発生した磁力によって、スライダ45をコイル43a近傍の遠端規制端又はコイル43b近傍の近端規制端に強制的に当接させることができるようになっている。
例えば磁石42a,42bのいずれかの磁力によってスライダ45が遠端位置又は近端位置のいずれかの位置に位置する場合でも、駆動回路47によって第1のコイル43aに駆動電流を流した場合には、スライダ45は遠端規制端に当接した遠端位置に位置することになる。また、磁石42a,42bのいずれかの磁力によってスライダ45が遠端位置又は近端位置のいずれかの位置に位置する場合でも、駆動回路47によって第2のコイル43bに駆動電流を流した場合には、スライダ45は近端規制端に当接した近端位置に位置することになる。
本実施の形態においては、第1のコイル43aの他端に接続された信号線27a及び第2のコイル43bの他端に接続された信号線27bは電流検出回路28を介して制御部29に接続されるようになっている。電流検出回路28は、信号線27a,27bに流れる電流を検出して検出結果を制御部29に出力する。
本実施の形態においては、第1のコイル43aに発生した磁束が第2のコイル43bに与える影響は十分に小さくなるように構成されている。また、第2のコイル43bに発生した磁束が第1のコイル43aに与える影響は十分に小さくなるように構成されている。これに対し、本実施の形態においては、磁性体であるスライダ45が第1のコイル43a内を移動すると相互誘導により電流が発生し、第1のコイル43aに流れる電流の変化が比較的大きくなる。電流検出回路28は、スライダ45が第1のコイル43a内を移動したことを信号線27aに流れる電流の変化によって検出することができるようになっている。また、同様に、スライダ45が第2のコイル43b内を移動すると相互誘導により電流が発生し、第2のコイル43bに流れる電流の変化は比較的大きくなり、電流検出回路28は、スライダ45が第2のコイル43b内を移動したことを信号線27bに流れる電流の変化によって検出することができるようになっている。
電流検出回路28は、信号線27a,27bに流れる電流変化の検出結果を制御部29内の判定部48に出力するようになっている。判定部48は、検出結果をメモリ49に記憶させることができるようになっている。判定部48は、駆動回路47が信号線26a,26bに適宜駆動電流を流した場合における電流検出回路28の検出結果に基づいて、レンズ位置が遠端位置であるか近端位置であるかの判定及びレンズ駆動に異常が生じているか否かを判定することができるようになっている。この場合において、判定部48は、メモリ49に記憶された検出結果の履歴を用いて、判定を行ってもよい。
判定部48は、レンズ駆動に異常が生じているものと判定した場合には、コイル駆動を停止させるための制御信号を発生して駆動回路47に供給することができるようになっている。駆動回路47は、レンズ駆動に異常が生じている場合には、判定部48からの制御信号によって、コイル43a,43bへの駆動電流の供給を停止するようになっている。
次に、このように構成された実施の形態の作用について図3乃至図7を参照して説明する。図3は実施の形態におけるレンズ位置検出の原理を説明するための説明図である。
図3は第1のコイル43aに駆動電流を流した場合の磁束の変化を示している。図3の例は、駆動回路47が信号線26aを介して第1のコイル43aに駆動電流を流したことによって、磁石42aによる磁束を第1のコイル43aによる磁束が強めて比較的大きな磁束密度の磁束52aが遠端規制端近傍において生じたことを示している。一方、この場合には、磁石42bによる磁束に殆ど変化はなく、近端規制端近傍においては比較的小さい磁束密度の磁束52bが生じている。この状態では、スライダ45は、近端位置に位置していた場合でも、遠端規制端側に引き寄せられて、遠端位置に移動する。
なお、逆に、駆動回路47が信号線26bを介して第2のコイル43bに駆動電流を流した場合には、磁石42bによる磁束を第2のコイル43bによる磁束が強めて比較的大きな磁束密度の磁束が近端規制端近傍において生じる。一方、この場合には、磁石42aによる磁束に殆ど変化はなく、遠端規制端近傍においては比較的小さい磁束密度の磁束が生じる。従ってこの状態では、スライダ45は、遠端位置に位置していたとしても、近端規制端側に引き寄せられて、近端位置に移動する。
また、スライダ45が第1のコイル43a内を移動すると、この移動に伴って、信号線27aに流れる電流が変化して電流検出回路28においてこの電流変化が検出される。同様に、スライダ45が第2のコイル43b内を移動すると、この移動に伴って、信号線27bに流れる電流が変化して電流検出回路28においてこの電流変化が検出される。
判定部48は、第1のコイル43aに駆動電流を流した場合において、第2のコイル43bに接続された信号線27bに流れる電流の変化を電流検出回路28の検出結果によって調べることで、スライダ45が第2のコイル43b内を移動したか否かを判定する。同様に、判定部48は、第2のコイル43bに駆動電流を流した場合において、第1のコイル43aに接続された信号線27aに流れる電流の変化を電流検出回路28の検出結果によって調べることで、スライダ45が第1のコイル43a内を移動したか否かを判定する。
従って、判定部48は、レンズ駆動が正常に行われている場合には、レンズ46の初期のレンズ位置(以下、初期位置という)が遠端位置であるか近端位置であるかが既知であれば、電流検出回路28の検出結果によって、レンズ位置を判定することができる。
更に、初期位置が不明である場合でも、第1及び第2のコイル43a,43bに切替えながら駆動電流を流すと共に電流検出回路28の検出結果を判定することで、最終的にレンズ46が遠端位置と近端位置のいずれに位置するかを判定することができる。
例えば、判定部48は、駆動回路47を制御して、第1のコイル43a及び第2のコイル43bに1回ずつ駆動電流を流して、各コイル43a,43bを駆動する。この場合において、これらの2回の駆動のうち、1回でも相互誘導による電流の変化を検出できれば、レンズ駆動の異常の有無に拘わらず、スライダの位置は最後に駆動電流を流したコイルに基づくものとなる。以後、判定部48は、この位置を初期位置として確定して用いればよい。
ところで、レンズ駆動に何らかの異常が発生している場合でも、術者はこの異常に気付かないことがある。例えば、第2のコイル43bに断線が生じて電流が流れない異常が発生しているものとする。この場合において、術者が近端位置にレンズ46を移動させる操作を行うものとする。しかし、この場合には、レンズ46の初期位置が遠端位置に位置する場合でも、第2のコイル43bに電流が流れないのでレンズ位置は変化せず、モニタ5に表示される画像の焦点は変化しない。しかし、術者は、モニタ5の画像に変化がないことから、操作前からレンズ46は近端位置に位置していたものと誤判断する可能性がある。
本実施の形態においては、判定部48は、このようなレンズ駆動の異常を検出することができる。判定部48は、レンズ駆動の異常を検出すると、駆動回路47によるコイル駆動を停止させると共に、異常を告知するために例えばモニタ上に警告表示を表示させることができる。
例えば、判定部48は、駆動回路47を制御して、第1のコイル43a及び第2のコイル43bに1回ずつ駆動電流を流して、各コイル43a,43bを駆動することによって異常を判定する。この場合において、これらの2回の駆動のいずれにおいても、相互誘導による電流を検出できなければ、異常と判断することができる(初期位置不明)。
本実施の形態においては、判定部48は、初期位置判定及びレンズ駆動の異常判定を所定のタイミングに行うようになっている。
先ず、正常時における初期位置判定(確定)について図4を参照して具体的に説明する。図4は正常時における初期位置判定の動作を説明するための図表である。
(正常時の初期位置確定動作)
判定部48は、第1のコイル43a、第2のコイル43b、第1のコイル43aの順に駆動するか、又は、第2のコイル43b、第1のコイル43a、第2のコイル43bの順に駆動することで、初期位置を確定するようになっている。
図4は、左側に、第1のコイル43a、第2のコイル43b、第1のコイル43aの順に駆動することによって初期位置を確定する例を示すものであり、右側に、第2のコイル43b、第1のコイル43a、第2のコイル43bの順に駆動することによって初期位置を確定する例を示すものである。なお、図4において、「コイル1」は第1のコイル43aを示し、「コイル2」は第2のコイル43bを示している。
いま、仮に、初期位置が遠端位置であるものとする。この場合において、図4の(1)に示すように、先ず、第1のコイル43aに駆動電流を流すものとする。これにより、スライダ45は、遠端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合には元々初期位置は遠端位置であるので、(2)に示すように、スライダ45は移動しない。従って、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出しない(3)。
次に、判定部48は、(4)に示すように、第2のコイル43bを駆動する。これにより、スライダ45は、近端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合には元々初期位置は遠端位置であるので、(5)に示すように、スライダ45は近端位置に移動する。従って、電流検出回路28は、第1のコイル43aに接続された信号線27aによって誘導電流による電流の変化を検出する(6)。
次に、判定部48は、(7)に示すように、再び第1のコイル43aに駆動電流を流す。これにより、スライダ45は、遠端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合にはスライダ45は、近端位置に位置しているので、(8)に示すように、遠端位置に移動する。従って、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出する(9)。
即ち、この時点で、レンズ46は遠端位置に位置するので、遠端位置を初期位置として確定する。
次に、仮に、初期位置が近端位置であるものとする。この場合において、図4の(1)に示すように、先ず、第1のコイル43aに駆動電流を流すものとする。これにより、スライダ45は、遠端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合には元々初期位置が近端位置であるので、(2)に示すように、スライダ45は遠端位置に移動する。従って、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出する(3)。
次に、判定部48は、(4)に示すように、第2のコイル43bを駆動する。これにより、スライダ45は、近端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合にはスライダ45は遠端位置にあるので、(5)に示すように、近端位置に移動する。従って、電流検出回路28は、第1のコイル43aに接続された信号線27aによって誘導電流による電流の変化を検出する(6)。
次に、判定部48は、(7)に示すように、再び第1のコイル43aに駆動電流を流す。これにより、スライダ45は、遠端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合にはスライダ45は、近端位置に位置しているので、(8)に示すように、遠端位置に移動する。従って、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出する(9)。
即ち、この時点で、レンズ46は遠端位置に位置するので、遠端位置を初期位置として確定する。
このように、判定部48が、第1のコイル43a、第2のコイル43b、第1のコイル43aの順に駆動電流を流した場合には、正常時には、レンズは最終的には遠端位置に移動するので、遠端位置を初期位置として確定すればよい。
同様に、判定部48が、第2のコイル43b、第1のコイル43a、第2のコイル43bの順に駆動するものとする。この場合には、コイル駆動が正常である場合には、図4に示すように、レンズの初期位置が遠端位置、近端位置のいずれの場合でも、最終的には、レンズ位置は近端位置に位置する。従って、この場合には、近端位置を初期位置として確定すればよい。
以後、判定部48は、電流検出回路28の検出結果に基づいて、レンズ位置を判定すればよい。なお、第1のコイル43aから先に駆動するか、第2のコイル43bから先に駆動するかは、最終的な初期位置をいずれにするかに応じて決めればよい。
(異常時の判定)
次に、図5及び図6の図表を参照して、上述したコイル43a,43b,43aの順に駆動するか又はコイル43b,43a,43bの順に駆動することによって、初期位置を確定することができるだけでなく、異常の検出が可能であることを説明する。
図5は第1のコイル43a、第2のコイル43b、第1のコイル43aの順に駆動することによって異常の検出が可能であることを示すものであり、図6は第2のコイル43b、第1のコイル43a、第2のコイル43bの順に駆動することによって異常の検出が可能であることを示すものである。なお、図5及び図6においても、「コイル1」は第1のコイル43aを示し、「コイル2」は第2のコイル43bを示している。
異常の態様としては、スライダ45の遠端位置から近端位置への移動に際して異常により移動不能の場合と、スライダ45の近端位置から遠端位置への移動に際して異常により移動不能の場合とが考えられる。
図5の左側は遠端位置から近端位置への移動不能の場合を示している。この場合において、仮に、初期位置が遠端位置であるものとする。この場合には、図5の(1)に示すように、第1のコイル43aに駆動電流を流すと、スライダ45は、遠端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合には元々初期位置は遠端位置であるので、(2)に示すように、スライダ45は移動しない。従って、(3)に示すように、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字1)。
次に、判定部48は、(4)に示すように、第2のコイル43bを駆動する。これにより、スライダ45は、正常であれば近端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合には元々初期位置は遠端位置であるので、遠端位置から近端位置への移動が可能であれば、スライダ45は近端位置に移動する。しかしながら、何らかの異常によって遠端位置から近端位置への移動が不能である場合には、(5)に示すように、スライダ45は移動しない。従って、(6)に示すように、電流検出回路28は、第1のコイル43aに接続された信号線27aによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字2)。
即ち、この例では、遠端への駆動制御及び近端への駆動制御のいずれについてもスライダ45の移動が行われなかったことになり、判定部48は、レンズ駆動の制御に何らかの異常が発生していることを判定することができる。
次に、初期位置が近端位置であるものとする。この場合において、図5の(1)に示すように、先ず、第1のコイル43aに駆動電流を流すものとする。これにより、スライダ45は、遠端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合には元々初期位置が近端位置であるので、(2)に示すように、スライダ45は遠端位置に移動する。従って、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出する(3)。
次に、判定部48は、(4)に示すように、第2のコイル43bを駆動する。これにより、スライダ45は、正常であれば、近端規制端に引き寄せられる。即ち、この場合にはスライダ45は遠端位置にあるので、正常ならば近端位置に移動する。しかしながら、何らかの異常によって遠端位置から近端位置への移動が不能である場合には、(5)に示すように、スライダ45は移動しない。従って、(6)に示すように、電流検出回路28は、第1のコイル43aに接続された信号線27aによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字1)。
次に、判定部48は、(7)に示すように、再び第1のコイル43aに駆動電流を流す。これにより、スライダ45は、遠端規制端に引き寄せられる。しかし、この場合にはスライダ45は、遠端位置に位置しているので、(8)に示すように、移動しない。従って、(9)に示すように、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字2)。
即ち、この例では、遠端への駆動制御、近端への駆動制御及び遠端への駆動制御のうち、2回の駆動においてスライダ45の移動が行われなかったことになる。図4から明らかなように、レンズ駆動が正常な場合には、3回の駆動制御のうち移動が行われない場合は1回か又は0回である。判定部48は、2回の移動が行われなかったことによって、レンズ駆動の制御に何らかの異常が発生していることを判定することができる。
図5の右側は近端位置から遠端位置への移動不能の場合を示している。この場合において、仮に、初期位置が遠端位置であるものとする。この場合には、(1)に示すように、第1のコイル43aに駆動電流を流しても、スライダ45は移動しない(2)。従って、(3)に示すように、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字1)。
次に、判定部48は、(4)に示すように、第2のコイル43bを駆動する。これにより、スライダ45は、近端規制端に引き寄せられて、近端位置に移動する(5)。従って、(6)に示すように、電流検出回路28は、第1のコイル43aに接続された信号線27aによって誘導電流による電流の変化を検出する。
次に、判定部48は、(7)に示すように、第1のコイル43aを駆動する。これにより、スライダ45は、正常であれば、遠端規制端に引き寄せられる。しかしながら、何らかの異常によって近端位置から遠端位置への移動が不能である場合には、(8)に示すように、スライダ45は移動しない。従って、(9)に示すように、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字2)。
即ち、この例では、遠端への駆動制御、近端への駆動制御及び遠端への駆動制御のうち、2回の駆動制御が正常に行われなかったことになり、判定部48は、レンズ駆動の制御に何らかの異常が発生していることを判定することができる。
次に、初期位置が近端位置であるものとする。この場合において、図5の(1)に示すように、先ず、第1のコイル43aに駆動電流を流すと、スライダ45は、正常であれば、遠端規制端に引き寄せられる。しかしながら、何らかの異常によって近端位置から遠端位置への移動が不能である場合には、(2)に示すように、スライダ45は移動しない。従って、(3)に示すように、電流検出回路28は、第2のコイル43bに接続された信号線27bによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字1)。
次に、判定部48は、(4)に示すように、第2のコイル43bを駆動する。これにより、スライダ45は、近端規制端に引き寄せられる。しかし、この場合にはスライダ45は近端位置から移動していないので、(5)に示すように、スライダ45は移動しない。従って、(6)に示すように、電流検出回路28は、第1のコイル43aに接続された信号線27aによって誘導電流による電流の変化を検出しない(丸数字2)。
即ち、この例では、遠端への駆動制御及び近端への駆動制御のいずれについてもスライダ45の移動が行われなかったことになり、判定部48は、レンズ駆動の制御に何らかの異常が発生していることを判定することができる。
同様に、判定部48が、第2のコイル43b、第1のコイル43a、第2のコイル43bの順に駆動するものとする。図6はこの場合の例を示している。図6の例においても、レンズ駆動に異常がある場合には、斜線枠に示すように、本来移動すべきスライダ45の移動が行われない。これにより、レンズの初期位置が遠端位置、近端位置のいずれの場合でも、3回のコイル駆動において電流変化が検出されない回数が2回以上となる。これにより、判定部48は、レンズ駆動に異常が生じていることを判定することができる。
次に、図7のフローチャートを参照して、判定部48におけるレンズの初期位置の確定処理及び異常の判定処理について説明する。なお、図7において、「コイル1」は第1のコイル43aを示し、「一方のコイル」は第1のコイル43a又は第2のコイル43bであり、「他方のコイル」は第2のコイル43b又は第1のコイル43aである。
図7のステップS1において、判定部48は、先ず、第1のコイル43a及び第2のコイル43bのうちの一方のコイルに駆動電流を流す。図4の左欄及び図5の(2)に示すように、スライダ45は、移動する場合もあり、逆に移動しない場合もある。判定部48は、ステップS2において他方のコイルに流れる電流変化が電流検出回路28によって検出されたか否かを判定する。判定部48は、電流変化が検出された場合には処理をステップS4に移行し、電流変化が検出されなかった場合には、検出無しの回数を1増加させ、その情報をメモリ49に記憶させ(ステップS3)た後、処理をステップS4に移行する。
次に、判定部48は、ステップS4において、3回のコイル駆動を行ったか否かを判定し、行っていない場合には処理をステップS5に移行して、駆動するコイルを切換えてステップS1に処理を戻す。こうして、判定部48は、駆動するコイルを第1のコイル43aと第2のコイル43bとで切替ながら3回のコイル駆動を行う。
ステップS1〜S3の処理を3回繰返すと、判定部48は、処理をステップS4からステップS6に移行して、電流変化の検出が行われなかった回数が1以下であるか否かを判定する。電流変化の検出が行われなかった回数が2回以上の場合には、図5及び図6に示すようにレンズ駆動に何らかの異常が発生しているので、判定部48は、ステップS7において異常判定を行って処理を終了する。
判定部48は、電流変化の検出が行われなかった回数が1以下である場合には、ステップS8において、最初に駆動した一方のコイルが第1のコイル43aであるか否かを判定する。判定部48は、最初に駆動した一方のコイルが第1のコイル43aである場合には、初期位置を遠端位置に確定し(ステップS9)、そうでない場合には初期位置を近端位置に確定する(ステップS10)。
なお、判定部48は、コイル駆動の異常の発生を検出した場合には、駆動回路47にコイル駆動を停止させる。また、この場合には、判定部48は、異常が発生したことを示す警告を発生させるようになっていてもよい。例えば、判定部48は、異常を知らせるメッセージ表示や音声を図示しないモニタ等から出力させたり、ビデオプロセッサ3を経由してモニタ5から出力させるようになっていてもよい。
このように本実施の形態においては、遠端用と近端用の2個のコイルを用いてレンズ位置を遠端と近端との2箇所に制御する場合でも、レンズ位置検出用のコイルを設けることなく、確実にレンズ位置を検出することができ、また、レンズ駆動に異常が発生していることも検出することができる。
(第2の実施の形態)
図8は第2の実施の形態を示すブロック図である。図8において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態は、内視鏡2内に設けた電流検出回路28及び制御部29にそれぞれ代えて、ビデオプロセッサ70内に電流検出回路71及び制御部72を設けた点が第1の実施の形態と異なる。内視鏡60は、電流検出回路28及び制御部29が省略された点が内視鏡2と異なる。
本実施の形態においては、信号線26a,26b,27a,27bは、内視鏡60の挿入部6、操作部7を挿通され、ユニバーサルコード8及び電気ケーブル9内に配線されて、電気コネクタ12を介してビデオプロセッサ70内の各部に接続される。また、フォーカススイッチ30からの信号線は、操作部7からユニバーサルコード8及び電気ケーブル9内に配線されて、電気コネクタ12を介してビデオプロセッサ70内の制御部72に接続される。
信号線27a,27bはビデオプロセッサ70内の電流検出回路71に接続される。電流検出回路71は、図2の電流検出回路28と同様に動作して、信号線27a,27bに流れる電流の変化を検出して検出結果を制御部72に出力する。制御部72は、図2の駆動回路47、判定部48及びメモリ49と同様の構成を備えており、制御部29と同様に動作する。制御部72の駆動回路は、信号線26a,26bに接続されて、レンズ装置21の第1のコイル43a又は第2のコイル43bに駆動電流を供給する。
このように構成された実施の形態においても、制御部72の判定部が、図7のフローチャートに従って動作することによって、レンズ位置の初期位置の確定することができると共に、レンズ駆動に異常が生じていることを検出することができる。
他の作用は第1の実施の形態と同様である。
このように本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
図9は第3の実施の形態を示すブロック図である。図9において図2と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態は、電流検出回路28を用いたレンズ装置21に代えて、電圧検出回路81を用いたレンズ装置80を採用した点が第1又は第2の実施の形態と異なる。電圧検出回路81は、信号線27aを介して第1のコイル43aに接続されて、第1のコイル43aに流れる電流の変化を電圧の変化として検出することができるようになっている。また、電圧検出回路81は、信号線27bを介して第2のコイル43bに接続されて、第2のコイル43bに流れる電流の変化を電圧の変化として検出することができるようになっている。電圧検出回路81は、検出結果を制御部29の判定部48に出力する。
他の構成及び作用は第1又は第2の実施の形態と同様である。
このように本実施の形態においても、上記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。
なお、ここで説明した技術のうち、主にフローチャートで説明した制御に関しては、プログラムで設定可能であることが多く、半導体やその他の記録媒体や記録部に収められる場合もある。この記録媒体、記録部への記録の仕方は、製品出荷時に記録してもよく、配布された記録媒体を利用してもよく、インターネットを介してダウンロードしたものでもよい。