JP2018082253A - 超音波素子及び超音波センサー - Google Patents

超音波素子及び超音波センサー Download PDF

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Abstract

【課題】受信感度を向上させた超音波素子及び超音波センサーを提供する。
【解決手段】振動板50と、該振動板上に設けられた第1電極14及び第2電極16と、これら第1電極及び第2電極の間に配置される圧電体層15とを備えた超音波素子であって、第1電極及び第2電極に電圧を印加して圧電体層が変位した際の応力の中立面が圧電体層内に位置するように設定され、圧電体層は、第1電極側の第1圧電体層15aと、第2電極側の第2圧電体層15bからなり、第2圧電体層は、分極軸が膜厚方向の沿った第1方向である結晶からなり、第1圧電体層は、分極軸が第1方向とは交差する第2方向である結晶からなる。
【選択図】図6

Description

本発明は、超音波素子及び超音波センサーに関する。
従来、圧電素子の電気機械変換特性を利用した超音波センサーがある。この超音波センサーでは、圧電素子に電気信号を供給して圧電素子を駆動することで、超音波(送信超音波)が送信される。また、測定対象物から反射された超音波(反射超音波)を圧電素子が受けることで、圧電素子が駆動して電気信号が得られる。超音波センサーを搭載する超音波デバイスでは、これらの電子信号、すなわち、送信超音波や反射超音波の波形信号に基づき、測定対象物に関する情報(位置や形状等)が検出される。
ここで、超音波の波形信号を分離解析できる能力(分解能)の向上を目的の一つとし、複数の開口部が形成された基部と、基部に設けられ開口部を閉塞する振動板と、開口部の各々に対応して振動板に設けられた圧電体と、を有して超音波センサーユニットを構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、アクティブな振動子(圧電素子)の隣に、電気制御から分離された非アクティブなダミー振動子を設けることが提案されている。
この種の超音波センサーには、超音波の送信に最適化させた専用送信型と、超音波の受信に最適化させた受信専用型と、超音波の送信及び受信の両方に最適化させた送受信一体型と、等の分類があるが、超音波の送信及び受信の両方に最適化させた送受信一体型とした方が、デバイスの設計が煩雑にならずに好ましい。
特開2010−164331号公報
しかしながら、薄膜の圧電体層を用いた超音波素子を送受信一体型とする場合、一般的には、送信能力は十分であるが、受信応力が十分ではないという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、受信感度を向上させた超音波素子及び超音波センサーを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、振動板と、該振動板上に設けられた第1電極及び第2電極と、これら第1電極及び第2電極の間に配置される圧電体層とを備えた超音波素子であって、前記第1電極及び第2電極に電圧を印加して前記圧電体層が変位した際の応力の中立面が前記圧電体層内に位置するように設定され、前記圧電体層は、前記第1電極側の第1圧電体層と、前記第2電極側の第2圧電体層からなり、前記第2圧電体層は、分極軸が膜厚方向の沿った第1方向である結晶からなり、前記第1圧電体層は、分極軸が前記第1方向とは交差する第2方向である結晶からなる、ことを特徴とする超音波素子にある。
かかる態様では、反射波を受信した際の変位に対応して発生する起電力は第2圧電体層で発生し、中立面より下側の第1圧電体層では第2圧電体層の起電力を打ち消す起電力が発生せず、結果として受信感度が向上した超音波素子とすることができる。
ここで、前記中立面は、前記第1圧電体層と前記第2圧電体層との境界に位置することが好ましい。これによれば、第2圧電体層で発生する起電力の一部が受信能力を低下させることがなくなる。
また、前記第2方向は、前記第1方向と直交する方向から、直交する方向から35°傾斜する方向の間の何れかの方向であることが好ましい。これによれば、第1圧電体層では、受信の起電力を低下させる起電力を生じることがない。
また、所定の変形を受けた場合の分極量は、前記第1圧電体層の分極量が前記第2圧電体層の分極量よりも小さいことが好ましい。これによれば、第2圧電体層で受信の起電力を低下させる起電力が生じても小さいので、影響を最低限にとどめることができる。
また、前記第2圧電体層が単斜晶系で(100)配向のPZTであることが好ましい。これによれば、送受信性能をさらに向上させることができる。
また、前記第1圧電体層が、正方晶系で(100)配向のPZT系圧電材料からなることが好ましい。これによれば、受信の際に起電力の発生しない第1圧電体層とすることができる。
また、前記第1圧電体層が、正方晶系又は斜方晶系で(100)配向のKNN系圧電材料からなることが好ましい。これによれば、素子容量を低下させることができるとともに、受信の際に起電力の発生しない第1圧電体層とすることができる。
また、前記第1圧電体層が、菱面体晶系で(100)配向のBFM−BT系圧電材料からなることが好ましい。これによれば、素子容量をさらに低下させることができるとともに、受信の際に起電力の発生しない第1圧電体層とすることができる。
本発明の他の態様は、上記態様の超音波素子を具備することを特徴とする超音波センサーにある。
かかる態様では、反射波を受信した際の変位に対応して発生する起電力は第2圧電体層で発生し、中立面より下側の第1圧電体層では第2圧電体層の起電力を打ち消す起電力が発生せず、結果として受信感度が向上した超音波センサーを提供できる。
本発明によれば、反射波を受信した際の変位に対応して発生する起電力は第2圧電体層で発生し、中立面より下側の第1圧電体層では第2圧電体層の起電力を打ち消す起電力が発生せず、結果として受信感度が向上した超音波センサーを提供できる。
超音波センサーを搭載する超音波センサー用圧電デバイスの構成例を示す断面図。 超音波センサーの構成例を示す分解斜視図。 超音波センサーの構成例を示す平面図。 図3のA−A′線断面図。 図3のB−B′線断面図。 超音波素子の模式図。 図6に示す超音波素子を構成する積層体を曲げたときの断面図。 受信特性を示す模式図。 受信特性を示す模式図。 実施例1、2、比較例1、2の受信の際の起電力の大きさを求めた結果。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
(超音波センサー用圧電デバイス)
図1は、本発明の実施形態にかかる超音波センサーを搭載した超音波センサー用圧電デバイスの構成例を示す断面図である。本実施形態では、超音波センサー用圧電デバイスとして超音波プローブを例示して説明する。図示するように、超音波プローブIは、CAV面型の超音波センサー1と、超音波センサー1に接続されたフレキシブルプリント基板(FPC基板2)と、図示しない装置端末から引き出されたケーブル3と、FPC基板2及びケーブル3を中継ぎする中継基板4と、超音波センサー1、FPC基板2及び中継基板4を保護する筐体5と、筐体5及び超音波センサー1の間に充填された耐水性樹脂6とを具備して構成されている。また、詳細は後述するが、超音波センサー1は、超音波素子10、音響整合層30、レンズ部材31及び包囲板40を含んで構成されている。なお、超音波プローブIは、上記の構成に限定されず、必要に応じて他の要素を含んで構成されてもよい。
超音波プローブIに搭載された超音波センサー1は、送受信一体型に構成されている。この超音波センサー1では、超音波センサー1の繰り返し発信周期に応じ、送信超音波が、音響整合層30及びレンズ部材31を通じて送信される。送信超音波が所定の間隔で送信されるなかで、測定対象物から反射された反射超音波が、音響整合層30及びレンズ部材31を通って受信される。これらの送信超音波や反射超音波の波形信号に基づき、超音波プローブIの装置端末において、測定対象物に関する情報(位置や形状等)が検出される。
このような超音波センサー1によれば、後述のように、送受信感度のばらつきを抑制し、受信感度の向上化を図ることができる。従って、超音波プローブIに超音波センサー1を搭載することで、検出感度に優れた超音波センサー用圧電デバイスとなる。超音波センサー1は、送受信一体型に限定されず、送信専用型や受信専用型等にも適用できる。超音波センサー1を搭載可能な超音波センサー用圧電デバイスは、超音波プローブIに限定されない。
また、超音波センサー1は、詳細は後述するが、振動板50の圧電素子17とは反対側が超音波の通過領域となる型(CAV面型)に限定されず、振動板50の圧電素子17側が超音波の通過領域となる型(ACT面型)にも適用できる。CAV面型の超音波センサー1は、ACT面側の超音波センサーと比べて、測定対象物に対して超音波素子10を構成する圧電素子17が離れた位置にある。従って、外部からの水分が圧電素子17に極めて到達し難い構成となり、使用時の電気的安全性に優れる超音波センサー1となる。しかも、圧電素子17が薄膜である場合、製造時のハンドリング性も向上させることができるので、超音波センサー1の取り扱いが容易となる。なお、圧電素子17の詳細については、後述する。
(超音波センサー)
図2は、超音波センサーの分解斜視図である。図1及び図2に示すように、超音波センサー1は、超音波素子10、音響整合層30、レンズ部材31及び包囲板40を含んで構成されている。図2において、包囲板40と支持部材41とは別体に示されているが、実際には、図1に示すように、両者は一体的に構成されている。なお、超音波センサー1は、上記の構成に限定されず、他の要素を含んで構成されてもよい。
超音波センサー1がCAV面型に構成されていることから、音響整合層30は、空間20内に設けられている。音響整合能を有する樹脂等が基板11の空間20内等に充填されて音響整合層30を構成することで、超音波素子10及び測定対象物の間で音響インピーダンスが急激に変化することを防止でき、その結果、超音波の伝播効率の低下を防止することができる。音響整合層30は、例えば、シリコーンオイル、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムから構成できるが、前記の例に限定されず、超音波センサー1の用途等に応じた材料を適宜選択して用いることができる。なお、基板11及び空間20の詳細については、後述する。
レンズ部材31は、基板11上の振動板50とは反対側に設けられている。レンズ部材31は、超音波を収束させる役割を有している。超音波を電子フォーカス法で収束させる場合等には、レンズ部材31は省略可能である。また、レンズ部材31は、超音波の収束機能を有しない保護板等に代替させることも可能である。本実施形態では、上記の音響整合層30が、レンズ部材31と基板11との接着機能も有している。レンズ部材31と基板11との間に音響整合層30を介在させ、超音波センサー1が構成されている。なお、振動板50の詳細については、後述する。
包囲板40は、振動板50の第2面50b側に設けられている。包囲板40の中央には凹部(圧電素子保持部32)が形成され、この圧電素子保持部32の周囲は、包囲板40の縁部40a及び面40bで囲われている。圧電素子保持部32によって、超音波素子10の周囲の領域(超音波素子10の上面及び側面を含む領域)が覆われる。従って、超音波素子10の上面は包囲板40の面40bで覆われ、側面は縁部40aで覆われることになる。
圧電素子保持部32のZ方向の長さは約80μmであるが、前記の値に限定されない。圧電素子保持部32の長さは、超音波素子10の駆動を阻害しない程度のスペースが確保される値であればよい。また、圧電素子保持部32は、空気で満たされていてもよく、樹脂で満たされていてもよい。
包囲板40は、縁部40a及び後述する支持部材41を介して、振動板50と接着又は接合されている。包囲板40の接着又は接合には、接着剤等を用いることができるが、前記の例に限定されない。包囲板40の厚さは約400μmであるが、前記の値に限定されない。
超音波センサー1には、包囲板40の面40bと振動板50の第2面50bとの間、且つ、超音波素子10と重ならない位置に、支持部材41が設けられており、この支持部材41により振動板50を支持できる。このため、例えば、レンズ部材31を超音波素子10に実装する際や、超音波素子10とレンズ部材31の密着性を確保する際に、レンズ部材31を音響整合層30側に押圧することがある。レンズ部材31を具備していない場合や、レンズ部材31の代わりに他の部材を設けた場合にも、各部材の密着性を確保するため、音響整合層30側から振動板50に押圧力を付すこともある。超音波センサー1では、支持部材41を具備して構成されているため、上記の通り、所定の外圧が振動板50に加わったとしても、構造歪みが生じることを抑制でき、高い信頼性を確保できる。
また、支持部材41が超音波素子10と重ならない位置に設けられているため、圧電素子17が支持部材41によって過度に拘束されることが回避される。よって、支持部材41を設けていない場合と比べて、超音波の送信効率や受信効率が過度に低下することも防止される。
ここで、超音波素子10と重ならない位置とは、超音波素子10をZ方向から見たとき、後述する能動部(超音波素子10を構成する第1電極14と第2電極16とで挟まれた部分に重ならない位置である。特に、超音波センサー1では、後述する隔壁19よりも狭い幅を有している支持部材41が、X方向に沿って整列する超音波素子10間に設けられている。つまり、超音波センサー1では、超音波素子10をZ方向から見たとき、支持部材41が、後述する可動部(振動板50の第2面50b側のうち空間20に対応する部分)にすら重なっていない。このため、支持部材41を設けていない場合と比べ、超音波送信効率や受信効率が過度に低下することが確実に防止される。支持部材41は、接着剤等により超音波素子10側に接着又は接合されているが、この手法は前の例に限定されない。
支持部材41は、Y方向に沿って延びる梁形状を有している。これによれば、Y方向に亘る広い範囲で振動板50を支持できる。梁形状の支持部材41は、Y方向ではなく、X方向に沿って延在していてもよい。梁形状の支持部材41は、延在する片方の端部が包囲板40の縁部40aから離れていてもよい。延在方向の少なくとも片方の端部が包囲板40の縁部40aに接していれば、本発明の梁形状の支持部材41に含まれる。
勿論、支持部材41は、梁形状を有していなくてもよい。支持部材41は、延在方向に直線状でなくてもよい。支持部材41の作製手法によっては、支持部材41のXY平面の断面積がZ方向に応じて異なる態様となる場合があるものの、かかる態様も、振動板50を支持できる限り、本発明の支持部材41に含まれる。
圧電素子保持部32の中心部分は、包囲板40の縁部40aから比較的離れている。従って、振動板50において、圧電素子保持部32の中心部分に対応する中心箇所Cでは、支持部材41がない場合に剛性が低くなりやすい。そこで、支持部材41は、そのような振動板50の中心箇所Cを支持するように、圧電素子保持部32の中心部分に設けられている。これにより、より高い信頼性を確保できる。
超音波センサー1において、支持部材41の数、配置、形状等は種々に選択が可能である。例えば、支持部材41は複数であってもよい。その場合、支持部材41は、圧電素子保持部32内に、等間隔に設けられることが好ましい。これによれば、振動板50を万遍なく支持できる。従って、振動板50の数は、3つ以上の奇数であることが好ましい。これは、圧電素子保持部32内に支持部材41を等間隔に設けたとき、その真ん中の支持部材41が、振動板50の中心箇所Cの近傍に位置し得るためである。例えば、支持部材41の数は、3つ程度であるとバランスがよい。勿論、支持部材41は、振動板50の中心箇所Cからずれた部分のみに設けられてもよい。
梁形状の支持部材41は、包囲板40をウェットエッチングすることで作製されたものである。このように、支持部材41は、包囲板40の構成材料を活かして作製されており、包囲板40と同一の構成を有している。ウェットエッチングは、例えばドライエッチングに比べ、加工精度は劣るものの、短時間で多くの領域を削ることができるため、梁形状の支持部材41を作製するのには好適な手法である。
超音波素子10は、基板11、振動板50及び圧電素子17を含んで構成されている。なお、超音波素子10は、上記の構成に限定されず、他の要素を含んで構成されてもよい。
基板11には、複数の隔壁19が形成されている。この複数の隔壁19により、X方向及びY方向に沿って、複数の空間20(キャビティ)が区画されている。空間20は、Z方向に基板11を貫通するように形成されている。つまり、基板11には、その振動板50側に開口した開口部18が形成されている。開口部18(空間20)は、二次元状、即ち、X方向に複数且つY方向に複数形成されている。開口部18(空間20)の配列や形状は、種々に変形が可能である。例えば、開口部18(空間20)は、一次元状、即ち、X方向及びY方向の何れか一方の方向に沿って複数形成されてもよい。また、開口部18(空間20)は、超音波素子10をZ方向から見たときに、正方形状(X方向とY方向との長さの比が1:1)に形成されてもよいし、長方形状(X方向とY方向との長さの比が1:1以外)に形成されてもよい。
基板11は、例えばシリコン(Si)単結晶基板を用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、SOI基板やガラス基板等を用いてもよい。
振動板50は、開口部18(空間20)を塞ぐように基板11上に設けられており、基板11上に形成された弾性膜12と、弾性膜12上に形成された絶縁体膜13とによって構成されている。以降、振動板50の基板11側の面を第1面50aと称し、第1面50aに対向する面を第2面50bと称する。振動板50は、この場合、弾性膜12によって第1面50aが構成され、絶縁体膜13によって第2面50bが構成される。
本実施形態では、二酸化シリコン(SiO)等からなる弾性膜12と、酸化ジルコニウム(ZrO)等からなる絶縁体膜13とで振動板50を構成したが、これに限定されるものではない。例えば、弾性膜12又は絶縁体膜13の何れか一方でもよく、又は他の膜としてもよい。或いは、振動板50を設けずに、後述する第1電極14のみが振動板として機能するようにしてもよい。基板11上に第1電極14を直接設ける場合には、第1電極14を絶縁性の保護膜等で保護することが好ましい。また、弾性膜12は、基板11と別部材でなくてもよい。基板11の一部を薄く加工し、これを弾性膜12として使用してもよい。
ここで、振動板50の第2面50b側のうち、空間20に対応する部分を可動部と称する。可動部は、圧電素子17の変位によって振動が生じる部分である。例えば、圧電素子17に電圧を印加したとき、可動部に振動が生じる。この振動によって空間20内の媒質である音響整合層30に圧力変動が生じ、この圧力変動に応じて超音波センサー1から送信超音波が送信され、或いは、受信超音波が受信される。
振動板50は、空間20に対応する領域(可動部)が、圧電素子17に電圧を印加していない状態で、空間20とは反対側に凸(即ち上凸)となる撓みを有している。かかる撓みを有する振動板50となるように、超音波センサー1、特に圧電素子17が構成されている。本明細書において、空間20とは反対側(+Z方向側)に凸であることは「上凸」で表される。また、空間20側(−Z方向側)に凸であることは「下凸」で表される。超音波センサー1の型によって圧電素子17近傍の構成が異なるが、振動板50の空間20に対向する側に圧電素子17が設けられている超音波センサー1であれば、何れの型でも、上記のように「上凸」及び「下凸」と解釈される。
図3は、超音波センサーの構成例を示す平面図であり、図4は、図3のA−A′線断面図であり、図5は、B−B′線断面図である。なお、これらの各図においては、開口部18(空間20)がZ方向から見たときに長方形状(X方向とY方向との長さの比が1:2)に形成された超音波センサー1を例示した。
図示するように、圧電素子17は、弾性膜12及び絶縁体膜13からなる振動板50上に設けられており、振動板50の開口部18(空間20)に対向する位置に設けられている。圧電素子17は、第1電極14、圧電体層15及び第2電極16を含んで構成されている。この圧電素子17に対応する領域には開口部18(空間20)が形成され、これは隔壁19により区切られている。圧電素子17のうち、第1電極14と第2電極16とがZ方向で重なった部分を能動部と称する。能動部は、選択された第1電極14と第2電極16による電圧の印加により駆動される領域であり、上述した可動部内に存在する。
圧電素子17は、第1電極14と圧電体層15と第2電極16とを含む部分であり、圧電素子17をZ方向から見たとき、開口部18の内側の領域にある。即ち、圧電素子17のX方向及びY方向は、何れも開口部18より短い。ただし、圧電素子17のX方向が開口部18より長い場合や、圧電素子17のY方向が開口部18より長い場合も、本発明に含まれる。
図示しないものの、圧電素子17と振動板50との間に、他の層が設けられてもよい。例えば、圧電素子17と振動板50との間に、密着性を向上させるための密着層が設けられてもよい。このような密着層は、例えば、酸化チタン(TiO)層、チタン(Ti)層、窒化シリコン(SiN)層等から構成できる。
ここで、本実施形態では、圧電素子17と、弾性膜12及び絶縁体膜13からなる振動板50とを合わせてアクチュエーター装置と称する。このアクチュエーター装置では、圧電素子17を構成する第1電極14及び第2電極16が、図示しない駆動回路に電気的に接続されており、この駆動回路から第1電極14及び第2電極16に電気信号(駆動信号)が入力されることで、圧電素子17に電圧が印加され、圧電体層15に分極が生じて圧電素子17及び振動板50が変位する。また、圧電素子17が変位すると、圧電体層15に分極が生じて表面電荷が発生する。表面電荷は、駆動回路にて電圧として検出される。
超音波センサー1は、送受信一体型に構成されているが、圧電素子17は、送信専用型、受信専用型、送受信一体型等の何れの型にも適用でき、CAV型、AVT型、送信専用型、受信専用型、送受信一体型等に応じて、高い検出感度を有するように設計することが可能である。
圧電素子17を構成する圧電体層15は、空間20(開口部18)毎にパターニングして構成されている。この圧電体層15は、電気機械変換能力を有しており、厚さが3μm以下、好ましくは0.3μm以上1.5μm以下の薄膜である。ただし、この膜厚に限定されない。
圧電体層15は、後述するように、二層構造になっているが、詳細は後述する。いずれにしても、電気機械変換能力を有していればよく、必要に応じて構成材料を適宜選定することができる。
次に、超音波センサー1の各電極の配置について説明する。通常、超音波センサーでは、超音波素子をX方向及びこれに直交するY方向に、二次元的に並設しており、X方向をスキャン方向、Y方向をスライス方向とする。本実施形態の構成例では、スライス方向であるY方向に、16個の超音波素子10が並設され、スキャン方向であるX方向に、64個の超音波素子10が並設されているが、図3及び図4には、それぞれその一部のみを示している。このような超音波センサー1では、スキャン方向(X方向)にスキャンしながら、スライス方向(Y方向)に延びる列毎に駆動、即ち、超音波の送信及び受信を行うことにより、スライス方向のセンシング情報を、スキャン方向に連続して取得することができる。
また、通常、圧電素子を駆動する場合、何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極を個別電極とする。しかしながら、本実施形態では、Y方向を一列とし、X方向に3列ずつ配置された超音波素子10毎にグループ化され、当該グループ毎に駆動して、X方向にスキャンすることが行われるので、何れか一方が共通電極で他方が個別電極という区別は現実的ではない。何れにしても、超音波素子を二次元的に並列させた態様とする場合には、圧電素子を構成する第1電極を一方向に亘るように設け、第2電極を前記一方向に直交する方向に亘るように設け、共通化された共通電極と信号電極との間に電圧を印加することにより、グループ毎に圧電素子を駆動することが一般的に行われる。
本実施形態では、第1電極14は、Y方向に延びた列が3列毎に束ねられて共通化されている。これを仮に1チャンネルと呼び、このチャンネルはX方向に亘って複数設けられている。つまり、第1電極14は、3列毎に共通化され、3列1チャンネル毎に駆動可能となっている。本実施形態では、共通化された電極を共通電極(コモン電極(COM)とも呼ばれる)と呼称し、グループ毎に共通化された電極を信号電極(シグナル電極(SIG)とも呼ばれる)と呼称する。
一方、第2電極16は、X方向に沿って一列に連続して設けられ、Y方向に沿って複数列設けられている。このような構成においては、第2電極16を1列毎に共通化して、1チャンネル内の全ての圧電素子17を同時に駆動し、順次各チャンネルを駆動すると、X方向に沿った1次元のデータが取得できる。また、第2電極16を1列毎又は複数列毎に共通化し、1チャンネル内の圧電素子17をグループ毎に順次駆動し、順次各チャンネルを駆動すると、XY方向の二次元データが取得できる。
(超音波素子の設計)
本発明の超音波素子10を図6に示す模式図を参照して詳細に説明する。
上述した超音波素子10では、超音波の送信特性を大きくするために、第1電極14及び第2電極16に印加した電圧により変位した際に、変位により発生する応力の中立面が圧電体層15の直下、すなわち、圧電体層15と第1電極14との境界か、第1電極14内にあるように設計されていたが、本発明では、応力の中立面Zを圧電体層15内に位置するように設計している。この点が本発明の第1の特徴となる。
また、圧電体層15は、第1電極側の第1圧電体層15aと、第2電極側の第2圧電体層15bとを積層して構成しており、これは第2の特徴であるが、この点の詳細は後述する。
本実施形態では、中立面Zより下側に第1圧電体層15aが位置し、中立面Zより上側に第2圧電体層15bが位置するようにしている。なお、中立面Zが第1圧電体層15aと第2圧電体層15bとの境界に正確に位置しなければならない訳ではなく、中立面Zが境界より上下に多少ずれても、以下に説明する本発明の作用効果を得ることができる。
ここで、中立面の求め方を説明する。図7は、図6に示す超音波素子10を構成する積層体Lを曲げたときの断面を示す。
積層体Lを曲げたときの応力は、断面に垂直な面に作用し、中立面Zより上側では圧縮の応力が生じ、下側では引っ張りの応力が生じる。そして、応力の中立線では、応力が釣り合って0となり、この中立線が存在する面を中立面Zとする。
変形した積層体Lの曲率は積層体Lの任意の点で等しいとし、中立面Zでの引っ張りの力と圧縮の力の釣り合いの式を立てると、以下の式となる。なお、引張の力は引張応力を作用する断面で積分したものであり、圧縮の力は圧縮応力を作用する断面で積分したものである。なお、式中、dは積層体Lの総膜厚であり、中立線が存在する仮想位置を原点に取り、原点からの距離をyとした。また、tは原点から積層体L表面までの距離を表す。また、Eはヤング率であり、積層体Lを構成する各層の組成毎に異なるため、yに依存する形式とした。
積分した値が0になる様に原点を設定した時、その時のtの値が積層体Lの表面から中立面Zまでの距離となる。よって、下記式を用いて、中立面Zが圧電体層15の内部に位置するように、好ましくは、第1圧電体層15aと第2圧電体層15bとの境界に位置するように設定することができる。
上述したように、圧電体層15の内部に中立面Zが位置するようにするためには、組成にもよるが、圧電体層15の膜厚を増大することが必要であるが、この場合、第1電極14や弾性膜12及び絶縁体膜13の膜厚を薄くすれば、積層体を変形する際の抗力となる全体の曲げ剛性を変えずに、圧電体層15の膜厚を大きくすることができ、送信特性の大きな変化を避けることができる。
また、本発明の第2の特徴として、圧電体層15を第1圧電体層15aと、第2圧電体層15bとを積層して構成している点を説明したが、第2圧電体層15bは、分極方向が膜厚方向である第1方向であるものとし、第1圧電体層15aは、分極方向が前記第1方向とは交差する面内方向か又は分極方向は第1方向であるが分極量が第2圧電体層15bの分極量よりも小さいものとしている。
ここで、第2圧電体層15bを構成する、分極方向が膜厚方向である圧電材料は、従来から圧電体層に用いられているものであり、代表的には、菱面体晶で(100)配向のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のペロブスカイト構造を有する複合酸化物(ペロブスカイト型複合酸化物)を用いることができる。PZTの組成としては、チタンよりもジルコニウムがリッチな組成が用いられる。このような第2圧電体層15bは、圧電素子17の変位量の確保に寄与する。また、この他に、鉛(Pb)、マグネシウム(Mg)、ニオブ(Nb)及びTiを含むPMN−PT系やPMN−PZT系の多成分系の複合酸化物等も適用できる。
例えば、PZTとしては、例えば、Zr/(Zr+Ti)が0.5〜0.8であり、単斜晶系、または菱面体晶系で(100)配向のものを挙げることができる。
また、第2圧電体層15bとしては、鉛を含まない非鉛系材料、例えば、ビスマス(Bi)及び鉄(Fe)を含むBFO系の複合酸化物、Bi、バリウム(Ba)、Fe及びTiを含むBF−BT系の複合酸化物、Bi、Fe、マンガン(Mn)、Ba及びTiを含むBFM−BT系の複合酸化物、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びNbを含むKNN系の複合酸化物等のペロブスカイト型複合酸化物を用いることもできる。これによれば、環境への負荷が少ない非鉛系材料を用いて超音波素子10を実現できる。
一方、第1圧電体層15aは、分極方向が前記第1方向とは交差する面内方向か又は分極方向は第1方向であるが分極量が第2圧電体層15bの分極量よりも小さいもので構成される。
ここで、分極方向が前記第1方向とは交差する面内方向の圧電材料としては、正方晶の結晶系の圧電材料を用い、結晶を面内方向に横にするように成膜すればよい。具体的には、ジルコニウムよりもチタンがリッチで正方晶のPZTや、正方晶または斜方晶のKNN系圧電材料、正方晶のBFM−BT系の圧電材料を挙げることができる。
また、分極方向は第1方向であるが分極量が第2圧電体層15bの分極量よりも小さいものとしては、後述するような菱面体晶系のBFM−BTを挙げることができる。この場合、分極軸が面内方向から約30°傾くことになるので、脱分極し易い構造として、分極量が小さくなるような組成とする。またPbx(ZryTi(1−y))Oにおいて、x<1.0であるPZTを挙げることができる。x<1.0の範囲では、電界印加によって生じた分極は、電界が印加され続けた状況下であっても減少する。すなわち所謂脱分極状態になる。従って第1方向の分極量を減じる作用を有しない。
なお、第1圧電体層15a及び第2圧電体層15bは、前記の例に制限されず、他の元素を含んで構成してもよく、例えば、Mnを更に含むことが好ましい。これによれば、リーク電流を抑制しやすくなり、例えば非鉛系材料として信頼性の高い超音波素子10を実現できる。このような他の元素を含む圧電体層15である場合も、複合酸化物がペロブスカイト構造を有するように構成されることが好ましい。
ペロブスカイト型複合酸化物は、例えば、一般式ABOで示される。この場合、Aサイトは酸素(O)原子が12配位しており、BサイトはO原子が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。なお、ペロブスカイト型複合酸化物がペロブスカイト構造を取り得る限りにおいて、格子不整合、酸素欠損・過剰等による不可避な化学量論の組成のずれは勿論のこと、元素の一部置換等も許容され、これらは本実施形態のペロブスカイト型複合酸化物に含まれる。
例えば、BF−BT系の複合酸化物は、その組成式は(Bi、Ba)(Fe、Ti)Oとして表され、AサイトにBi及びBaが、BサイトにFe及びTiが位置している。代表的な組成としては、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとの混晶として表される。かかる混晶は、X線回折パターンで、鉄酸ビスマスやチタン酸バリウムが単独では検出できないものをいう。ただし、特に断りが無い限り、BF−BT系の複合酸化物は、混晶の組成から外れる組成も含むものである。
また、BF−BT系の複合酸化物は、そのAサイトのBiをリチウム(Li)、サマリウム(Sm)、セリウム(Ce)等で置換するようにしてもよく、BサイトのFeをアルミニウム(Al)、コバルト(Co)等で置換するようにしてもよい。これによれば、各種特性を向上させて構成や機能の多様化を図りやすくなる。
ここで、第1圧電体層15aとして用いられる、分極方向が前記第1方向とは交差する面内方向の圧電材料を、さらに具体的に説明する。
まず、正方晶系のPZTとしては、以下の組成で(100)配向のPZTを挙げることができる。
Pb(ZrTi(1−y))O
0.9≦x≦1.1、0.4≦y≦0.48
PZTでは、yが0.48以下であれば、結晶系は必ず正方晶系となる。また、配向を(100)に設定すると、基板からの引張応力の作用で、結晶軸の長軸は面内方向を向く。これにより、分極軸の方向は面内方向を向く。また、yの値は小さければ小さい程、結晶の長軸と短軸の比が大きくなり、より正方晶系の特徴が顕著になる。但し、第2圧電体層15bの圧電材料との結晶軸の長さとの乖離が大きくなって、第1圧電体層15aの(100)配向上に第2圧電体層15bの(100)配向を得難くなる。よって、0.4≦y≦0.48が好ましい。
更に、Pb過剰比xを1未満に設定すると、脱分極を生じる、すなわち、分極の大きさが短時間に間に減少するか、又は分極量を維持しないようになる。すなわち、第1圧電体層15a内の分極量が小さいため、分極軸が第1方向を向いたPZT膜であっても応力の印加で発生する分極の変化量、ΔPを小さくすることができる。
また、第1圧電体層15aに用いることができるKNN系圧電材料としては、以下の組成で、正方晶系か斜方晶系の(100)配向のものを挙げることができる。
(KNa(1−p)NbO
0.3≦p≦0.7、0.9≦q≦1.2
KNNの結晶系は正方晶系か斜方晶系かの何れかになる。基板からの引張応力の作用によって、いずれの結晶系の場合も長軸は面内方向を向く。すなわち、分極軸は面内方向を向く。
また、かかる(100)配向KNNからなる第1圧電体層15aは、第2圧電体層15b、例えば、(100)配向のPZTと連続する必要があるが、pの範囲が上述の範囲外にあると結晶格子定数の乖離が大きくなって、PZTの(100)配向制御が困難になる。
また、第1圧電体層15aに用いることができるBFO−BT系圧電材料としては、以下の組成で、菱面体晶系の(100)配向のものを挙げることができる。
αBi(Fe,Mn)O−(1−α)BaTiO
0.6≦α≦0.7、0.85≦m,n≦1.0
BFM−BTの結晶系は菱面体系であるから、配向を(100)にした場合、分極軸の方向は膜厚方向(基板法線方向)から略35°傾斜した方向を向く。尚、(100)配向とする理由は、この上に積層する第2圧電体層15bとなる、PZT膜の配向を(100)に保つためである。また、この場合、分極軸が面内方向から約35°傾くことになるので、脱分極し易い構造として、分極量が小さくなるような組成とするのが好ましい。具体的には、組成式のm、nを1以下にする。
(送受信特性)
次に、上述したように設計された超音波素子10における送受信特性について説明する。
まず、送信特性を考えると、送信能力は、第2圧電体層15bの特性に依存し、第1圧電体層15aは送信には寄与しない。よって、全体を第2圧電体層15bとした場合より特性は低下するが、この点は、駆動波形を調整することにより補完することができる。
また、上述したように、超音波素子10の全体の曲げ剛性を変えないように、第1電極14や弾性膜12及び絶縁体膜13の膜厚を設計すれば、全体を第2圧電体層15bとした場合と比較して送信特性の大きな変化を避けることができる。
受信特性については、図8及び図9に示す模式図を参照しながら説明する。
受信特性は、反射波を受信したときに圧電体層15の内部で発生する起電力ΔVで評価することがき、ΔVは以下の式で表される。ここで、dは第1圧電体層15aと第2圧電体層15bとの総厚であり、εは真空の誘電率、εは第1圧電体層15aと第2圧電体層15bとの合計誘電率、ΔPは圧電体層15内で反射波を受信した時に発生する新たな分極である。
ΔV=d・ΔP/εε
図8に示すように、中立面Zの両側を、分極が膜厚方向である第2圧電体層15bで構成した場合において、積層体が変形した場合の圧電体層内に発生する新たな分極を、中立面Zの下側がΔP1、上側がΔP2とする。この場合、中立面Zの上下側では発生する応力が逆になるので、分極ΔP1とΔP2とは極性が逆になる。図8では、中立面Zの上側では引っ張り応力、下側では圧縮応力が発生したとしたので、分極ΔP2<0、ΔP1>0となる。よって、両者は打ち消し合い、ΔP=ΔP1+ΔP2は極めて小さくなり、大きなゲインは見込めない。
一方、本発明の場合は、図9の状態となる。すなわち、中立面Zの上側が分極が膜厚方向の第2圧電体層15bであり、下側が分極が面内方向の第1圧電体層15aであるので、反射波を受信して、第2圧電体層15bに引っ張り応力が、第1圧電体層15aに圧縮応力が発生したとすると、第2圧電体層15bでは図8と同様な起電力ΔP2が発生するが、第1圧電体層15aでは起電力が発生せず、ΔP1=0となる。よって、ΔP2がそのまま残るので、図8と比較して大きなゲインを得ることができる。
なお、第1圧電体層15aが、分極が面内方向ではなく、膜厚方向であるが、分極量が第2圧電体層15bと比較して極めて小さい場合には、ΔP1>0とはなるが、値が極めて小さくなるので、ΔP2との打ち消しが小さく、同様に大きなゲインが得られることになる。
以下、実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
下層から、酸化シリコンからなる弾性膜12(SiO)、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜13(ZrO)、白金からなる第1電極14(BE(Pt))、正方晶系で(100)配向のPZTからなる第1圧電体層15a(PZT1)、単斜晶系で(100)配向のPZTからなる第2圧電体層15b(PZT2)、イリジウムからなる第2電極16(TE(Ir))を、下記表1に示す膜厚で積層した。なお、PZT1の組成は、上述した組成から選定した。
中立面Z(y=0)からの膜厚をtとし、各膜のヤング率Eがtの内部で一定であるとし、各層の応力を、以下の式の第1項及び第2項の和として求めた。
計算結果を表1に示す。中立面Zの位置は、第1項+第2項の値が中立面Zの上下で一致する位置となる。本実施例の場合には、PZT1とPZT2との間が中立面Zとなることがわかる。
本実施例では、容量を決定する素子膜厚は、PZT1+PZT2=2230nmであり、容量低下による起電力向上を図ることができる。
また、第1圧電体層15aにおいては、受信の際に分極の発生がないので、圧電体層15全体としての発生分極量に影響を与えず、結果として、全体の起電力は膜厚を上昇した分だけ向上する。
一方、第2圧電体層15bの発生分極量は、過剰Pbの組成とすることにより向上することができる。
(実施例2)
第1圧電体層15aを200nmの正方晶系で(100)配向のKNNとした以外は、実施例1と同様とした。なお、KNNの組成は、上述した組成から選定した。
実施例1と同様に、各層の応力を求めた結果を表2に示す。
中立面Zの位置は、本実施例の場合にも、KNNとPZT2との間となることがわかる。
本実施例では、第2圧電体層15bの膜厚は2040nmであるが、第1圧電体層15aのKNNは比誘電率がPZTより小さいので、容量をさらに小さく設定でき、起電力は実施例1より大きくなる。
(実施例3)
第1圧電体層15aを200nmの菱面体晶系で(100)配向のBFM−BTとした以外は、実施例1と同様とした。なお、BFM−BTの組成は、上述した組成から選定した。
実施例1と同様に、各層の応力を求めた結果を表3に示す。
中立面Zの位置は、本実施例の場合にも、BFM−BTとPZT2との間となることがわかる。
本実施例では、第2圧電体層15bの膜厚は2030nmであるが、第1圧電体層15aのBFM−BTは比誘電率がPZTやKNNより小さいので、容量をさらに小さく設定でき、起電力は実施例1、2よりさらに大きくなる。
(比較例1)
第1圧電体層15aを省略し、第2圧電体層15bのみとした、従来構造とした。
実施例1と同様に、各層の応力を求めた結果を表4に示す。
中立面Zの位置は、本実施例の場合には、PZT2と第1電極14との間となる。
PZTの膜厚は1760nmである。
(比較例2)
第1圧電体層15aを第2圧電体層15bと同様な組成で形成した以外は、実施例1と同様とした。
実施例1と同様に、各層の応力を求めた結果を表5に示す。
PZTは同一組成で総厚が2000nmとなったものとなる。中立面Zの位置は、本実施例の場合にも、PZT1とPZT2との間となるが、同一組成なので、圧電体層の第1電極14との境界から上方100nmの位置である。この場合、素子容量は比較例1より低下するが、受信の際に中立面Zより下方に位置する圧電体層で発生する分極は、起電力を低下する方向に作用するので、膜全体の起電力は低下する。
(試験例)
実施例1、2、比較例1、2について、受信の際の起電力の大きさを求めた結果を図10に示す。図10に示すように、実施例1、2の起電力は、比較例1、2と比較して著しく向上していることがわかる。これにより、実施例1、2の超音波素子は、受信感度が向上することがわかる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明した。しかし、本発明の基本的構成は上記の態様に限定されない。本発明は、圧電素子の電気機械変換特性を利用した超音波センサー全般を対象としており、送信専用型、受信専用型、送受信一体型、ACT面型及びCAV面型等の何れの超音波センサーにも適用できる。
本発明の超音波センサーは、種々の超音波デバイスに適用できる。特にCAV面型の超音波センサーは、ACT面型の超音波センサーに比べ、使用時の電気的安全性に優れている。従って、CAV面型の超音波センサーは、安全性等の点からリーク電流を特に嫌う医療用の機器、例えば超音波診断装置、血圧計及び眼圧計にも好適に使用できる。
本発明の超音波センサーは、種々の圧力センサーとして用いることができる。例えば、プリンター等の液体噴射装置において、インクの圧力を検知するセンサーとしても適用できる。また、本発明の超音波センサーの構成は、超音波モーター、圧電トランス、振動式ダスト除去装置、圧力電気変換機、超音波発信機及び加速度センサー等に好適に応用できる。この種の超音波センサーの構成を利用して得られた完成体、例えば、上記の超音波センサーを搭載したロボット等も、超音波デバイスに含まれる。
図面において示す構成要素、すなわち、各部の形状や大きさ、層の厚さ、相対的な位置関係、繰り返し単位等は、本発明を説明する上で誇張して、又は一部省略して示されている場合がある。
I…超音波プローブ、1…超音波センサー、2…FPC基板、3…ケーブル、4…中継基板、5…筐体、6…耐水性樹脂、10…超音波素子、11…基板、12…弾性膜、13…絶縁体膜、14…第1電極、15…圧電体層、15a…第1圧電体層、15b…第2圧電体層、16…第2電極、17…圧電素子、18…開口部、19…隔壁、20…空間、30…音響整合層、31…レンズ部材、32…圧電素子保持部、40…包囲板、41…支持部材、50…振動板

Claims (9)

  1. 振動板と、該振動板上に設けられた第1電極及び第2電極と、これら第1電極及び第2電極の間に配置される圧電体層とを備えた超音波素子であって、
    前記第1電極及び第2電極に電圧を印加して前記圧電体層が変位した際の応力の中立面が前記圧電体層内に位置するように設定され、
    前記圧電体層は、前記第1電極側の第1圧電体層と、前記第2電極側の第2圧電体層からなり、前記第2圧電体層は、分極軸が膜厚方向の沿った第1方向である結晶からなり、前記第1圧電体層は、分極軸が前記第1方向とは交差する第2方向である結晶からなる、ことを特徴とする超音波素子。
  2. 前記中立面は、前記第1圧電体層と前記第2圧電体層との境界に位置する
    ことを特徴とする請求項1に記載の超音波素子。
  3. 前記第2方向は、前記第1方向と直交する方向から、直交する方向から35°傾斜する方向の間の何れかの方向である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波素子。
  4. 所定の変形を受けた場合の分極量は、前記第1圧電体層の分極量が前記第2圧電体層の分極量よりも小さい
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波素子。
  5. 前記第2圧電体層が単斜晶系で(100)配向のPZTである
    ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波素子。
  6. 前記第1圧電体層が、正方晶系で(100)配向のPZT系圧電材料からなる
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波素子。
  7. 前記第1圧電体層が、正方晶系又は斜方晶系で(100)配向のKNN系圧電材料からなる
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波素子。
  8. 前記第1圧電体層が、菱面体晶系で(100)配向のBFM−BT系圧電材料からなる
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波素子。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載の超音波素子を具備することを特徴とする超音波センサー。

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