JP2018076249A - 化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】性能の均一性に優れ、光吸収特性に優れ、動作安定性に優れる化合物、その製造方法、及びその使用方法を提供する。
【解決手段】
カチオンとアニオンとを含む化合物であって、
前記カチオンのうち10モル%以上49モル%以下が第14族元素カチオンであり、
前記カチオンの51モル%以上90モル%以下が対カチオンであり、ここで、当該対カチオンのうち、91モル%以上100モル%以下が、単一種類の、炭素数が1以上2以下かつ窒素数が2以上4以下である有機分子カチオンであり、
前記アニオンのうち30モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンであり、
前記化合物の結晶構造における最大の面間隔が8Å以上30Å以下である、化合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、化合物、その製造方法、及びそれらの使用に関する。
近年、有機無機金属ハロゲン化物が、太陽電池用途などの、様々な用途で注目されている。非特許文献1では、有機アンモニウムとしてホルムアミジニウムカチオン(CH(NH22 +)、鉛カチオン(Pb2+)、及びヨウ素アニオン(I-)からなる、組成比が、CH(NH22:Pb:I=1:1:3である(CH(NH22)PbI3は、100℃程度の加熱温度で製造すると、黄色のバンドギャップが大きい(CH(NH22)PbI3化合物になることが記載されている。
非特許文献2では、(CH(NH22)PbI3化合物を、170℃以上で加熱することで、吸収端約820nmであり、黒色の(CH(NH22)PbI3化合物となることが記載されている。なお、ホルムアミジニウムカチオン、鉛カチオン、及びハロゲンアニオンのみから構成される化合物として知られているのは、非特許文献1や非特許文献2で開示されている、(CH(NH22)PbI3のみである。
一方、有機鉛ハロゲン化物は、炭素数が3よりも大きく、嵩高いアンモニウムカチオンを含むことで、層状構造を有することが知られており、非特許文献3には、ノルマルブチルアンモニウムカチオン(:BA、炭素数4)と、メチルアンモニウムカチオン(:MA)と、鉛カチオンと、ヨウ素アニオンを、BA:MA:Pb:I=2:1:2:7、2:2:3:10、2:3:4:13とする4成分系(カチオン3種類、アニオン1種類)の化合物を100℃程度の加熱温度で製造できることが開示されている。また、非特許文献3には、層状構造を有することで、比較的簡易な製造方法でも、平たく、被覆率の高い薄膜などの化合物とできる優位点があることが記されている。
J. Phys. Chem. Lett. 2015, 6, 1249. J. Phys. Chem. C 2014, 118, 16458. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 7843.
しかしながら、非特許文献1に記載の化合物は、吸収端が短波長であり、バンドギャップがより小さいことが望まれる。例えば、太陽光に多く含まれる、より長波長の光を利用し、光吸収特性を向上させるためには、よりバンドギャップの小さな材料の開発が求められている。
非特許文献2に記載の化合物は、製造するために高温を必要とする、高温安定相である材料のために、室温での使用時、例えば、電圧を印加された際、光励起キャリアを生成した際などに相転移などの、物性の変化を伴う化合物の変化を生じる可能性がある。動作安定性の観点から、より低温で製造できる化合物の開発が求められている。
前記優位性を有するだけでなく、性能の均一性にも優れるためには、化合物は層状構造を有することが望ましい。しかし、非特許文献1や非特許文献2に記載の技術では、有機アンモニウムカチオンがホルムアミジウムカチオンのみである、すなわち、イオン半径が小さすぎることに起因して、層状構造を形成できないという問題がある。非特許文献3に記載の化合物は層状構造を有するが、製造がより容易になり、大面積化の際に組成の分布が生じにくくなるなど、より性能の均一性に優れるためには、化合物の大部分を構成するカチオンやアニオンの種類がより少ないことが望ましい。特に、イオン半径が大きく拡散が難しい観点から、化合物を構成する全カチオンにおいて、非特許文献3に記載の化合物よりも少ない、2種類のカチオンが大部分を占めることが望ましい。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、性能の均一性に優れ、光吸収特性に優れ、動作安定性に優れる化合物、その製造方法、及びその使用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、所定のカチオンと所定のアニオンを、所定の組成含む化合物とすることで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は下記のとおりのものである。
[1]
カチオンとアニオンとを含む化合物であって、
前記カチオンのうち10モル%以上49モル%以下が第14族元素カチオンであり、
前記カチオンの51モル%以上90モル%以下が対カチオンであり、ここで、当該対カチオンのうち、91モル%以上100モル%以下が、単一種類の、炭素数が1以上2以下かつ窒素数が2以上4以下である有機分子カチオンであり、
前記アニオンのうち30モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンであり、
前記化合物の結晶構造における最大の面間隔が8Å以上30Å以下である、化合物。
[2]
前記対カチオンのうち、95モル%以上100モル%以下が前記有機分子カチオンである、[1]に記載の化合物。
[3]
前記有機分子カチオンの窒素数が2以上3以下である、[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]
前記有機分子カチオンの炭素数が1である、[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]
前記有機分子カチオンがアンモニウム基及び/又はアミン基を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]
前記有機分子カチオンがホルムアミジウムカチオンを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の化合物。
[7]
前記カチオンのうち、55モル%以上85モル%以下が対カチオンである、[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物。
[8]
前記カチオンのうち、15モル%以上45モル%以下が第14族元素カチオンである、[1]〜[7]のいずれかに記載の化合物。
[9]
前記第14族元素カチオンが、錫カチオン及び/又は鉛カチオンである、[1]〜[8]のいずれかに記載の化合物。
[10]
前記アニオンのうち、55モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンである、[1]〜[9]のいずれかに記載の化合物。
[11]
前記第17族元素のアニオンが、塩化物アニオン、臭化物アニオン及びヨウ化物アニオンからなる群より選択される少なくとも1つである、[1]〜[10]のいずれかに記載の化合物。
[12]
前記化合物が(CH(NH222PbX4(ここで、XはCl、Br又はIからなる群より選択される少なくとも1つである。)で表される化合物である、[1]〜[11]のいずれかに記載の化合物。
[13]
前記化合物が(CH(NH223PbX5(ここで、XはCl、Br又はIからなる群より選択される少なくとも1つである。)で表される化合物である、[1]〜[11]のいずれかに記載の化合物。
[14]
前記化合物の結晶構造がペロブスカイト構造である、[1]〜[13]のいずれかに記載の化合物。
[15]
形態が粒子である、[1]〜[14]のいずれかに記載の化合物。
[16]
形態が薄膜である、[1]〜[14]のいずれかに記載の化合物。
[17]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物の前駆体となる組成物であって、
非プロトン性極性有機溶剤と、前記第14族元素カチオンと、前記有機分子カチオンと、前記第17族元素アニオンと、を含み、
前記組成物における、前記第14族元素カチオンの含有量が0.05モル/L以上、3.0モル/L以下であり、前記有機分子カチオンの含有量が0.05モル/L以上3.0モル/L以下であり、前記第17族元素アニオンの含有量が0.05モル/L以上10.0モル/L以下である、組成物。
[18]
前記組成物に含まれる、前記有機分子カチオンと前記第14族元素カチオンの比(有機分子カチオン/第14族元素カチオン)が1.1以上4以下である、[17]に記載の組成物。
[19]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物を製造するための方法であって、
[17]又は[18]に記載の組成物を0℃以上160℃以下の温度で加熱する工程を含む、化合物の製造方法。
[20]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物の半導体材料としての使用。
[21]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物の太陽電池材料としての使用。
[22]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物の太陽電池の光吸収層としての使用。
[23]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物の光センサーとしての使用。
[24]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物の発光材料としての使用。
[25]
[1]〜[16]のいずれかに記載の化合物の、ペロブスカイト構造を有する(CH(NH22)PbX3(ここで、XはCl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1つである。)の前駆体としての使用。
本発明に係る化合物は、性能の均一性、光吸収特性及び動作安定性に優れる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
(化合物)
本実施形態の化合物は、カチオンとアニオンとを含む化合物であって、前記カチオンのうち10モル%以上49モル%以下が第14族元素カチオンであり、前記カチオンの51モル%以上90モル%以下が対カチオンであり、ここで、当該対カチオンのうち、91モル%以上100モル%以下が、単一種類の、炭素数が1以上2以下かつ窒素数が2以上4以下である有機分子カチオンであり、前記アニオンのうち30モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンであり、前記化合物の結晶構造における最大の面間隔が8Å以上30Å以下である。このように構成されているため、本実施形態の化合物は、性能の均一性に優れ、光吸収特性に優れ、動作安定性に優れる。
なお、本明細書において、「性能の均一性に優れる」とは、層状構造を有し、かつ該化合物を構成する主な対カチオンが、単一種類の、炭素数が1以上2以下かつ窒素数が2以上4以下である有機分子カチオンに限られることなどを意味する。
前記「層状構造を有する」とは、前記最大の面間隔が8Å以上30Å以下であることを意味し、前記「主な対カチオン単一種類に限られる」とは、前記該有機分子カチオンが対カチオンのうち91モル%以上である、すなわち、不純物を除く対カチオンが全て前記有機分子カチオンであることなどを意味する。
「光吸収特性に優れる」とは、材料の吸収端が460nm以上1000nm以下であることなどを意味する。
また、「動作安定性に優れる」とは、0℃以上160℃以下で調製できることなどを意味する。
本実施形態の化合物は、上記のとおり、前記カチオンのうち10モル%以上49モル%以下が第14族元素カチオンである。このように構成されることが、層状構造を形成する観点、光吸収特性を向上させる観点、及び動作安定性を向上させる観点から重要である。光吸収特性に有利となる、及び化合物の結晶化に有利となる観点から、前記14族元素カチオンの含有量は15モル%以上が好ましく、20モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。また、対カチオンを多く含むことができる観点から、第14族元素カチオンの含有量は45モル%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。
前記14族元素カチオンは、特に限定されないが、例えば、Si4+、Ge2+、Ge4+、Sn2+、Sn4+、Pb2+が挙げられ、前記第14族元素カチオンと前記第17族元素のアニオンとの八面体構造の形成に有利である観点、前記第14族元素カチオンとアニオンとの共有結合性を大きくすることで、それぞれの状態密度を広げることなどに有利である観点から、2価のカチオンであることが好ましく、具体的には、Ge2+、Sn2+、Pb2+などが好ましい。また、酸化に対して比較的安定である観点から、Sn2+、Pb2+がより好ましく、Pb2+がさらに好ましい。上記のとおり、本実施形態においては、第14族元素カチオンが、錫カチオン及び鉛カチオンの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
本実施形態における化合物には、含まれるカチオンうち、51モル%以上90モル%以下の、前記第14族元素カチオンかつ3周期以降の元素カチオン以外のカチオン(本明細書中、「対カチオン」とも表記する)が含まれる。このように構成されることが、層状構造を形成する観点、光吸収特性を向上させる観点、及び動作安定性を向上させる観点から重要である。前記第14族元素カチオンの配列に有利である観点から、化合物に含まれる対カチオンは、55モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。また、前記第14族元素カチオンを多く含むことができる観点から、85モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、75モル%以下がさらに好ましい。
本実施形態において、対カチオンの91モル%以上100モル%以下が、単一種類の、炭素数が1以上2以下かつ窒素数が2以上4以下である有機分子カチオンである。このように構成されることで、該化合物は性能の均一性に優れる。特に、比較的炭素数が少なく、窒素数が多い有機カチオンの比率を増やすことで、共役の形成に有利となることから、有機分子カチオンを形成する結合の強化、及び正に帯電する部位のカチオン性の強化に有利となり、有機分子カチオン自体や該化合物の熱安定性に有利とできる。性能の均一性に優れる観点から、上記有機分子カチオンは、対カチオンのうち、95モル%以上100モル%以下が好ましく、98モル%以上100モル%以下がより好ましく、99モル%以上100モル%以下がさらに好ましい。一方、原料の精製が容易である観点から、上記有機分子カチオンの含有量は、99.999モル%以下が好ましく、99.99モル%以下がより好ましく、99.9モル%以下がさらに好ましい。前記有機分子カチオンを構成する炭素数は、有機分子カチオンを形成する結合の強化、及び正に帯電する部位のカチオン性の強化に有利となる観点から、1であることが好ましい。また、対カチオンに含まれる窒素数は、該化合物の結晶構造の形成に有利である観点から、2以上3以下であることが好ましく、2が最も好ましい。前記有機分子カチオンには、該化合物の形成に有利である観点から、アンモニウム基及び/又はアミン基を有することが好ましい。前記有機分子カチオンの具体例としては、以下に限定されないが、ホルムアミジニウムカチオン、アセトアミジニウムカチオン、グアニジウムカチオン、及びこれらの異性体などが挙げられ、該化合物の結晶構造の形成に有利である観点から、ホルムアミジニウムカチオン、グアニジウムカチオンが好ましく、ホルムアミジニウムカチオンが最も好ましい。
本実施形態において、化合物の対カチオンに、無機物カチオンを含むことができる。無機物カチオンには、金属クラスターカチオンや、単一元素カチオンが挙げられ、製造が容易である観点から、単一元素カチオンであることが好ましい。例えば、前記対カチオンに含まれる単一元素カチオンは、耐熱性に有利である観点、ぺロブスカイト構造の歪みを緩和できる観点から、化合物を構成する対カチオンのうち、1モル%以上含むことができる。ペロブスカイト構造の形成に有利である観点から、第1族元素、第2族元素、及び第3族元素からなる群より選択されるいずれかの元素が好ましく、第1族元素からなる群より選択されるいずれかの元素がより好ましい。具体的には、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、スカンジウムなどが挙げられ、ペロブスカイト構造形成に有利である観点から、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、などが好ましく、ルビジウム、セシウムがさらに好ましく、セシウムが最も好ましい。
化合物のカチオンの種類は、性能の均一性に優れる観点から、少ないことが好ましい。例えば、全カチオンのうち1種類の第14族カチオンと、1種類の対カチオンとの計2種類のみから構成される化合物であることが最も好ましい。
化合物を構成するアニオンは、結晶性の向上に有利である観点から、含まれるアニオンの総量に対して、第17族元素のアニオンを30モル%以上100モル%以下含むことが好ましい。結晶性の向上に有利である観点から、55モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、70モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましく、80モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましい。具体的な第17族元素としては、特に限定されないが、例えば、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素等が挙げられ、バンドギャップを小さくすることに有利である観点から、ヨウ素、臭素、塩素が好ましく、ヨウ素、臭素がより好ましく、ヨウ素がさらに好ましい。また、分子アニオンを含むことができ、具体的な分子アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、炭素と窒素を含む分子アニオンや無機分子アニオンなどが挙げられる。具体的には、シアン化物アニオン、シアネートアニオン、チオシアネートアニオン、セレノシアネートアニオン、BF4 -アニオン、PF6 -アニオン、CF3COO-アニオンなどが挙げられる。
本実施形態の化合物の結晶構造における最大の面間隔は8Å以上30Å以下である。このような結晶構造となることで、性能の均一性に優れる。性能の均一性により優れる観点から、化合物の結晶構造における最大の面間隔は10Å以上が好ましく、12Å以上がより好ましい。また、吸収端を長波長にし、バンドギャップを小さくすることに有利である観点から、20Å以下が好ましく、15Å以下がより好ましい。化合物の結晶構造における最大の面間隔は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、例えば、後述する好ましい化合物の製造方法を採用すること等により、化合物の結晶構造における最大の面間隔を上記範囲に調整することができる。
該化合物は、電子や正孔などのキャリアの拡散に有利である観点や、バンドギャップを小さくすることに有利である観点や、光などによる励起キャリア(電子や正孔など)の長寿命化に有利である観点から、ペロブスカイト構造を有することが好ましい。ペロブスカイト構造を有する化合物は、Aサイト及びBサイトのカチオンと、Xサイトのアニオンとから構成される。そのような化合物の例としては、一般式がA2BX4を挙げることができ、この例において、例えばAサイトのカチオンはCH(NH22 +に、BサイトのカチオンはPb2+に、XサイトのアニオンはI-に、それぞれとして対応する。Bサイトのカチオンは、Xサイトのアニオンに6配位で結合しており、対称又は非対称な8面体を形成しており、この8面体構造は平面構造に、又は3次元構造に頂点共有している。
この結晶構造ないし結晶子径は、X線結晶構造解析や透過型電子顕微鏡像の格子像などにより評価することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に基づいて評価することができる。また、上記結晶構造は、例えば、後述する好ましい化合物の製造方法に従う等により得ることができる。ペロブスカイト構造であるかの評価の方法として、例えば、Pb2+カチオンとI-カチオンとによる八面体構造の頂点共有した面間隔由来のXRDの回折角である2θ=14〜15°の回折ピークなどから判定できる。
化合物のバンドギャップは、太陽光などに多く含まれる長波長の可視光を利用できる観点から、小さいことが好ましい。特に、太陽光の利用のためには、長波長の光の利用が重要となる。具体的には、2.6eV以下が好ましく、2.5eV以下がより好ましく、2.4eV以下がさらに好ましい。一方、光励起キャリアの起電圧が小さくなる観点から、バンドギャップは、1.0eV以上が好ましく、1.2eV以上がより好ましく、1.4eV以上がさらに好ましい。
化合物の吸収端は、太陽光などに多く含まれる長波長の可視光を利用できる観点から、長波長であることが好ましい。特に、太陽光の利用のためには、長波長の光の利用が重要となる。具体的には、460nm以上が好ましく、480nm以上がより好ましく、500nm以上がさらに好ましく、530nm以上が最も好ましい。
本実施形態の化合物は、様々な形態をとりうるが、取り扱いが容易である観点や、積層構造に有利である観点から、粒子や薄膜の形態であることが好ましい。
(化合物の製造方法)
本実施形態の化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する所定の原料を用い、所定の工程を経るものとすることができる。本実施形態の化合物の原料としては、該化合物を構成する元素を含む物質であれば特に限定されず、種々の物質を原料として用いることができる。特に、低温相の化合物を得ることができ、動作安定性に優れる化合物を得られる観点から、本実施形態の化合物の前駆体となる組成物であって、所定の濃度及びモル比率の前記カチオンと前記アニオンとを含む組成物を調製する工程を含むことが好ましく、さらに前記組成物を比較的低温で加熱する工程を含むことがより好ましい。より具体的には、上記組成物は、非プロトン性極性有機溶剤と、前記第14族元素カチオンと、前記有機分子カチオンと、前記第17族元素アニオンと、を含み、前記組成物における、前記第14族元素カチオンの含有量が0.05モル/L以上、3.0モル/L以下であり、前記有機分子カチオンの含有量が0.05モル/L以上3.0モル/L以下であり、前記第17族元素アニオンの含有量が0.05モル/L以上10.0モル/L以下であることが好ましい。また、前記組成物に含まれる、有機分子カチオンと第14族元素カチオンの比(有機分子カチオン/第14族元素カチオン)が1.1以上4以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の化合物の製造方法としては、上述の組成物を0℃以上160℃以下で加熱する工程を含むことが、さらに好ましい。化合物の結晶構造に8Å以上30Å以下の層状構造を含ませるためには、前駆体に所定の濃度及びモル比率の前記カチオンと前記アニオンとを含むことが重要となる。前記所定の前駆体によれば、該化合物を0℃以上160℃以下で加熱する工程を含むことで製造できる。すなわち、動作安定性に優れるようになる。
上記の他、本実施形態の化合物を製造するための原料として、金属ハロゲン化物を用いることができる。金属ハロゲン化物の具体例としては、以下に限定されないが、塩化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛などが挙げられ、得られる本実施形態の化合物の形成に有利である観点、バンドギャップを小さくするために有利である観点から、臭化鉛、ヨウ化鉛が好ましく、ヨウ化鉛がより好ましい。
本実施形態の化合物の原料とすることが好ましい塩は、所定の酸と塩基から得ることができ、当該酸がハロゲン化水素などであり、当該塩基が炭素数1以上2以下かつ窒素数2以上4以下である有機アミンに由来する成分である塩等が挙げられる。
また、前記有機アミンに由来する成分としては、得られる本実施形態の化合物の結晶構造の形成が容易になり、性能の均一性に優れる観点から、当該有機アミンの炭素数が1であることがより好ましく、当該有機アミンの窒素数が2以上3以下であることがより好ましく、2であることが最も好ましい。
上記塩基とハロゲン化水素との塩の具体例としては、以下に限定されないが、ホルムアミジン・塩化水素塩、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩、ホルムアミジン・臭化水素塩、アセトアミジン・塩化水素塩、アセトアミジン・ヨウ化水素塩、アセトアミジン・臭化水素塩、グアニジン・塩化水素塩、グアニジン・ヨウ化水素塩、グアニジン・臭化水素塩、などが挙げられ、該化合物の形成が容易になる観点から、ホルムアミジン・塩化水素塩、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩、ホルムアミジン・臭化水素塩、が好ましい。
本実施形態の化合物は、溶剤を用いない方法、又は溶剤を用いる方法により製造することもできる。溶剤を用いない方法として、以下に限定されないが、例えば、蒸着法、固相法などが挙げられる。組成が均一な化合物を製造する観点から、本実施形態の化合物は、溶剤を用いる方法、すなわち、前記原料を溶剤に溶解させた溶液から、溶剤を除去することで結晶化させる方法で製造することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る化合物の製造方法は、上述した所定のカチオンとアニオンとを含む物質を、非プロトン性有機溶剤に溶解させて溶液を得る工程と、当該溶液から溶剤を除去する工程と、を含むことが好ましい。上記において、本実施形態の化合物の好適な原料である第14族元素ハロゲン化物の溶解に有利である観点から、溶剤として非プロトン性有機溶剤を用いる。具体的には、ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記す。)、ジメチルスルホキシド(以降、DMSOと記す。)、γブチロラクトンなどが好ましく、第14族元素ハロゲン化物の溶解に優れる観点から、DMF、DMSOがより好ましい。
前記原料を用いて、該化合物の前駆体となる組成物を調製する工程を含むことが好ましい。かかる組成物としては、具体的には、非プロトン性極性有機溶剤と、前記第14族元素カチオンと、前記有機分子カチオンと、前記第17族元素アニオンと、を含み、前記組成物における、前記第14族元素カチオンの含有量が0.05モル/L以上、3.0モル/L以下であり、前記有機分子カチオンの含有量が0.05モル/L以上3.0モル/L以下であり、前記第17族元素アニオンの含有量が0.05モル/L以上10.0モル/L以下であるものなどが挙げられる。該組成物は、前記条件を満たすことで、原料の溶剤への溶解性にも優れるため、製造条件制御の必要性を緩和することや、製造する化合物の均一性を向上することができる。該化合物の性能の均一性に優れ、光吸収特性に優れ、動作安定性に優れる観点から、前記組成物に含まれる第14族元素カチオンは、0.2モル/L以上2.0モル/L以下がより好ましく、0.5モル/L以上1.5モル/L以下がさらに好ましく、前記有機分子カチオンが、0.2モル/L以上2.0モル/L以下がより好ましく、0.5モル/L以上1.5モル/L以下がさらに好ましく、前記第17族元素アニオンが0.5モル/L以上7.0モル/L以下がより好ましく、1.0モル/L以上4.0モル/L以下がさらに好ましい。また、前記原料の溶解性に優れる観点、該化合物の形成に有利である観点から、前記非プロトン性有機溶剤は、γブチロラクトン、DMF、DMSOなどが好ましい。
性能の均一性に優れ、光吸収特性に優れ、動作安定性に優れる観点から、前記組成物に含まれる、有機分子カチオンと第14族元素カチオンの比(有機分子カチオン/第14族元素カチオン)が1.2以上4以下であることがより好ましく、1.3以上3以下であることがさらに好ましい。
上記のように調製された溶液から溶剤を除く工程をさらに実施することで化合物を製造する方法がとりわけ好ましい。前記溶液から溶剤を除く工程としては、特に限定されないが、例えば、加熱により溶剤を蒸発除去する工程、貧溶媒と接触や混合することで、良溶媒である溶剤を除去する工程が挙げられる。
動作安定性に優れる観点から、前記前駆体の加熱温度は、0℃以上160℃以下であることが好ましい。反応速度に有利である観点から、前記加熱温度は、20℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。動作安定性に優れる観点から、140℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましい。
該化合物を製造するための原料の固定化、例えば薄膜形態の化合物の製造方法としては、以下に限定されないが、溶液を用いた、スピンコート法、スプレー法、液相反応法などが挙げられる。溶液の引火などの危険性が少ない、及び/又は調製方法の調整が容易である観点から、スピンコート法が好ましい。また、過剰な溶媒の除去や、核生成を促進する観点から、貧溶媒を用いて結晶生成をすることが好ましい。貧溶媒は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
該化合物を製造する雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気中や不活性雰囲気中で調製できるが、より簡便に調製できる観点から、大気中で調製することが好ましい。
(用途)
本実施形態の化合物は、半導体材料として利用することができる。本実施形態における半導体材料とは、価電子帯上端と伝導帯下端とのエネルギー差を有する材料などが挙げられる。
該化合物は、他の用途に用いることもできる。具体的には、電子又は正孔又はイオンを伝導する材料や、光吸収による光励起キャリアの生成を利用する材料、及びその再結合による発光を利用する材料などであり、より具体的には、太陽電池材料用、太陽電池の光吸収層用、光センサー用、光触媒用、発光材料、イオン伝導材料、導電性材料、圧電素子、パワーデバイスなどである。本実施形態でのイオンとは、該材料を構成するカチオン又はアニオンのことを指す。太陽光に含まれる波長の光を吸収できる観点から、太陽電池の光吸収層用の化合物であることが好ましい。また、層状構造により励起子の束縛エネルギーが大きくなっているため、発光に有利である観点から、発光材料としての利用が好ましい。さらに、特定波長の光を利用できる観点から、光センサーとして利用することが好ましい。
本実施形態の化合物は、優れた光吸収特性を有するため、該化合物を含む太陽電池セル、特光吸収層に該化合物を含む太陽電池セルとして適用することが好ましく、さらに、光電流密度、開放電圧、フィルファクターの少なくとも一つを向上させることができる。さらに、当該化合物が有する光吸収特性と前記太陽電池セルとしての各パラメーターの向上と相俟って太陽光変換効率を向上させることができる。
本実施形態の化合物は、ペロブスカイト構造の(CH(NH22)PbI3の前駆体とすることもできる。例えば、本実施形態の化合物を165℃以上250℃以下、1分以上5時間以下で加熱することで、PbI2などの不純物の少ない、ペロブスカイト構造の(CH(NH22)PbI3を製造することができる。前記加熱温度は、相転移の反応速度を向上させる観点から、175℃以上が好ましく、185℃以上がより好ましく、化合物を構成する成分の過剰な分解を制御する観点から、220℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。また、前記加熱時間は、十分に相転移を進行させる観点から、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、化合物を構成する成分の過剰な分解を制御する観点から、2時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましい。
(構成)
本実施形態の化合物は、キャリア移動の異方性に優れる観点から、電子輸送材と接触していることが好ましい。ここでいう電子輸送材とは、電子の有効質量の方が、正孔のものよりも小さい半導体などであり、電子の輸送に有利な材料などである。該化合物が薄膜のとき、接触面積を大きくすることで電子の移動に有利となる観点から、接触している電子輸送材も薄膜であることが好ましい。電子輸送材には、有機物や無機物を含む態様が挙げられるが、強度が高いことで、該化合物と合わせた強度が高くなる観点から、電子輸送材は無機物を含むことが好ましく、物性の調整が比較的容易である観点から、金属化合物であることがより好ましい。大気中で比較的容易に製造、及び保存できる観点から、電子輸送材は金属酸化物であることが、さらに好ましい。金属酸化物の具体例としては、以下に限定されないが、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどを挙げることができ、電子の有効質量が小さい観点から、酸化チタン及び酸化ニオブが好ましく、材料が豊富で安価である観点から、酸化チタンがとりわけ好ましい。電子輸送材のピンホールなどの欠陥を少なくする観点から、電子輸送材に、前駆体材料を吸着、反応させる処理を施すことが好ましい。具体的には、塩化チタン種を電子輸送材に吸着後、加水分解させ酸化チタンを結着させる処理(以降、TiCl4処理と記す。)を施すことが好ましい。
本実施形態の化合物は、キャリア移動の異方性を有することができる観点から、正孔輸送材と接触していることが好ましい。ここでいう正孔輸送材とは、正孔の有効質量の方が電子のものよりも小さい半導体などであり、正孔の輸送に有利な材料などである。該化合物が薄膜のとき、接触面積を大きくすることで電子の移動に有利となる観点から、接触している正孔輸送材も薄膜であることが好ましい。正孔輸送材は、有機物や無機物を含むことが挙げられるが、材料が柔らかいことで、曲りによる膜の欠陥を形成しにくくなる観点から、正孔輸送材は有機物を含むことが好ましく、有機物の具体例としては、有機分子の集合体や、有機高分子が挙げられる。より具体的には、Spiro−OMeTAD、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(:P3HT)、ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン](:PTAA)、N,N−ビス(3−メチルフェニル)―N,N−ジフェニルベンジジン(:TPD)、N,N−ジ[(1−ナフチル)―N,N−ジフェニル]−1,1−ビフェニル)−4,4−ジアミン(:NPD)、トリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミン(:TCTA)、ポリ(9−ビニルカルバゾール)(:PVK)、4,4−ビス(N−カルバゾリル)−1,1−ビフェニル(:CBP)などが挙げられ、などが挙げられ、HOMOの準位が比較的深く、p型材料とオーミックコンタクトを形成することに有利であることや、キャリア密度を高くでき、正孔の輸送に有利とできることや、起電圧を大きくできる観点から、Spiro−OMeTADが好ましい。Spiro−OMeTADはLiTFSIや酸化材を混合するなどして、ドープ処理を施したものが、導電性に優れる観点から好ましい。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、これらの実施例と比較例によって何ら限定されるものではない。後述する実施例及び比較例における物性、反応条件、及び生成物の同定は、以下に示す方法により、測定及び設定した。
(含カチオン量と含アニオン量)
化合物に含まれる第14族カチオン量、対カチオン量及びハロゲンアニオン量は、試料をSEM−EDX(SEM:SU−70,日立製作所社製、EDX:EMAX X−max,堀場製作所社製)により評価することによって求めた。
(結晶構造)
薄膜及び粉末サンプルの結晶構造は、X線回折装置(D8・ブルカー社製)を用いて測定したX線回折(XRD)パターンから評価した。特に、ペロブスカイト構造を有していることは、I-に対し6配位のPb2+による八面体が頂点共有した構造に由来する回折ピークに帰属される2θ=14〜15°(d=6.3〜5.9Å)が存在することから評価した。結晶構造中最大d値(化合物の結晶構造における最大の面間隔)は、XRDパターンにおける最低角の回折ピークのd値から算出した。
(バンドギャップ)
各例で調製された薄膜に対して下記のように測定された吸光度を縦軸とし、横軸を波長としたグラフのベースラインと減衰曲線の接線の交点をこの材料の吸収端とし、この吸収端の波長から、下記の式からバンドギャップエネルギーを算出した。
(バンドギャップエネルギー)=1240/(吸収端の波長)
なお、薄膜の吸光度は、スペクトロフォトメーター U4100(日立製作所社製)を用いて、スキャン速度300nm/分で測定を行った。
(太陽電池特性評価)
作製したセルの太陽電池特性評価は、下記の装置、及び評価方法により評価した。
[装置]
(疑似太陽光)
疑似太陽光は、ソーラーシミュレーター(MP−160、英弘精機社製)を用い、フォトダイオードで照射量を100mW/cm-2に調整して用いた。照射セルへの照射面積は、いずれのセルでも、0.02cm-2であった。
(直流電源)
セルに電圧印加、光電流値の評価、印加電圧の掃引操作は、ソースメーター(6242、ADCMT社製)を用いて行った。
[評価方法]
(短絡電流密度)
短絡電流は、作製したセルに電圧を印加せずに、前記疑似太陽光を照射した際に流れた光電流密度について、一枚のうち後述の作製した三か所の独立した電極構造での、平均の値から算出した。
(開放電圧)
開放電圧は、前記疑似太陽光を照射した際に、電流値が0となるセルへの印加電圧について、一枚のうち後述の作製した三か所の独立した電極構造での、平均の値から算出した。
(フィルファクター)
フィルファクター(以降、「F.F.」とも表記する。)は、前記疑似太陽光を照射しながら、印加電圧を掃引した際に、電力が最大となる値(実電力最大値)を、短絡電流密度と開放電圧を積算した値で除算した、以下の式から求めた。
(F.F.)= (実電力最大値)/((短絡電流密度)×(開放電圧))
この値について、一枚のうち後述の作製した三か所の独立した電極構造での、平均の値を実施例でのフィルファクターとした。
(太陽光エネルギー変換効率)
太陽光エネルギー変換効率(以降、変換効率とも表記する。)は、以下の式から求めた。
(変換効率)=(実電力最大値(mW cm-2))/100mW cm-2
この値について、一枚のうち後述の作製した三か所の独立した電極構造での、平均の値を実施例での変換効率とした。
(光センサー機能)
光センサー機能は、作製したセルに疑似太陽光(100mW/cm-2)を照射した際に、光起電力を生じた際には光センサー機能を有するものとして「○」と、光起電力を生じなかった際には光センサー機能を有さないものとして「×」と、それぞれ評価した。
(不純物)
実施例にて調製したサンプルのXRDパターンについて、前記ペロブスカイト由来の2θ=14〜15°における回折ピークの強度に対して、2割以上の強度のペロブスカイト構造以外の化合物由来の回折ピークが存在する場合は不純物量が多いとして「×」と、存在しない場合は、不純物量が少ないとして「○」と、それぞれ評価した。
下記に示すとおり、実施例1〜5及び比較例1に係る薄膜を調製し、その物性の評価を行った。
(実施例1)
ホルムアミジン・ヨウ化水素塩と、ヨウ化鉛がそれぞれ1.33M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液1)を調製した。窒素雰囲気中、室温の石英板上に溶液1を滴下し、3000rpmで30秒スピンコートして得られた薄膜を、100℃で30分加熱した。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩と、ヨウ化鉛がそれぞれ1.5M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液2)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩と、ヨウ化鉛がそれぞれ2.0M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液3)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩と、ヨウ化鉛がそれぞれ2.5M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液4)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩と、ヨウ化鉛がそれぞれ3.0M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液5)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩と、ヨウ化鉛がそれぞれ1MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液6)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表1に示す。
実施例1〜5の結果から、得られた化合物は、いずれも、最大d値が8Å以上の結晶構造、及びバンドギャップを有する、カチオンの数が少ないことがわかり、性能の均一性に優れ、光吸収特性に優れ、動作安定性に優れ、半導体材料、例えば太陽電池材料、光センサー、発光材料などとして好適に利用できることが示された。
実施例1〜5及び比較例1の結果の比較から、構成するカチオン及びアニオンを所定のモル比率とすることで、最大d値が8Å以上の結晶構造を有する様になり、性能の均一性に優れるようになることが示された。また、この最大d値は、実施例1〜4のモル比率とすることでより大きくなることが示された。
実施例1〜5及び比較例1の結果の比較から、構成するカチオン及びアニオンを所定のモル比率とすることで、吸収端は長波長になり、かつバンドギャップが小さくなることが示された。特に、本実施形態の範囲で対カチオンのモル比率を小さく、第14族カチオンのモル比率を大きくすることで、バンドギャップを小さくすることができることが示された。
(実施例6)
実施例3の石英板の代わりに、25mm角のFTO(フッ素ドープ酸化スズ)を堆積したガラスのFTO面上に、電子輸送材として50nmのTiO2の緻密層、さらにその上に粒子径30nmのTiO2粒子が堆積し、TiCl4処理を施した膜厚800nmの多孔質膜層が堆積された基板(TiO2/FTOガラス)を用い、溶液3を基板上に滴下後、3000rpmで30秒スピンコートして得られた薄膜を、100℃で30分加熱し、室温に冷却後、0.0059mmolのspiro−OMETAD、0.0317molのLiTFSI、0.0058mmolのCo(4−t−Butylpyridyl−2−1H−pyrazole)・3TFSI、0.195mmolのt−ブチルピリジンをクロロベンゼンに溶解させた溶液(溶液7)を滴下し、4000rpmでスピンコートし、70℃で30分間乾燥した。この上から金を、面内で等間隔かつ三か所に0.15mm2の面積で100nmの膜厚で真空蒸着することでセルを得た。このセルに疑似太陽光照射下で評価した結果を、表2に示す。
(比較例2)
実施例6の溶液3の代わりに溶液6を用いた以外は同様に操作を行った。結果を表2に示す。
実施例6の結果から、本実施形態における化合物は、光吸収層などの太陽電池材料、及び光センサーとして好適に利用できることが示された。特に、本実施形態を満たすことで、光吸収特性に優れ、性能の均一性に優れるために、太陽電池材料として、短絡電流密度や、フィルファクターについて、顕著に優れることが示された。
(実施例7)
実施例3にて調製したサンプルを窒素雰囲気中、185℃で30分加熱することで、サンプルを得た。結果を表3に示す。
(比較例3)
実施例3にて調製したサンプルの代わりに比較例1のサンプルを用いた以外は、実施例7と同様に操作を行った。結果を表3に示す。
実施例7と比較例3を比較すると、本実施形態の化合物を185℃などの高温で加熱することで、約820nm長波長に吸収端を有するペロブスカイト構造の化合物を、不純物が少なく調製することに有利であることが示された。すなわち、本実施形態の化合物は、ペロブスカイト構造を有する化合物であって高純度のものの前駆体として、好適に使用できることが示された。

Claims (25)

  1. カチオンとアニオンとを含む化合物であって、
    前記カチオンのうち10モル%以上49モル%以下が第14族元素カチオンであり、
    前記カチオンの51モル%以上90モル%以下が対カチオンであり、ここで、当該対カチオンのうち、91モル%以上100モル%以下が、単一種類の、炭素数が1以上2以下かつ窒素数が2以上4以下である有機分子カチオンであり、
    前記アニオンのうち30モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンであり、
    前記化合物の結晶構造における最大の面間隔が8Å以上30Å以下である、化合物。
  2. 前記対カチオンのうち、95モル%以上100モル%以下が前記有機分子カチオンである、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記有機分子カチオンの窒素数が2以上3以下である、請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記有機分子カチオンの炭素数が1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 前記有機分子カチオンがアンモニウム基及び/又はアミン基を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
  6. 前記有機分子カチオンがホルムアミジウムカチオンを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
  7. 前記カチオンのうち、55モル%以上85モル%以下が対カチオンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 前記カチオンのうち、15モル%以上45モル%以下が第14族元素カチオンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
  9. 前記第14族元素カチオンが、錫カチオン及び/又は鉛カチオンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
  10. 前記アニオンのうち、55モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
  11. 前記第17族元素のアニオンが、塩化物アニオン、臭化物アニオン及びヨウ化物アニオンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
  12. 前記化合物が(CH(NH222PbX4(ここで、XはCl、Br又はIからなる群より選択される少なくとも1つである。)で表される化合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
  13. 前記化合物が(CH(NH223PbX5(ここで、XはCl、Br又はIからなる群より選択される少なくとも1つである。)で表される化合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
  14. 前記化合物の結晶構造がペロブスカイト構造である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
  15. 形態が粒子である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
  16. 形態が薄膜である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の前駆体となる組成物であって、
    非プロトン性極性有機溶剤と、前記第14族元素カチオンと、前記有機分子カチオンと、前記第17族元素アニオンと、を含み、
    前記組成物における、前記第14族元素カチオンの含有量が0.05モル/L以上、3.0モル/L以下であり、前記有機分子カチオンの含有量が0.05モル/L以上3.0モル/L以下であり、前記第17族元素アニオンの含有量が0.05モル/L以上10.0モル/L以下である、組成物。
  18. 前記組成物に含まれる、前記有機分子カチオンと前記第14族元素カチオンの比(有機分子カチオン/第14族元素カチオン)が1.1以上4以下である、請求項17に記載の組成物。
  19. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を製造するための方法であって、
    請求項17又は18に記載の組成物を0℃以上160℃以下の温度で加熱する工程を含む、化合物の製造方法。
  20. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の半導体材料としての使用。
  21. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の太陽電池材料としての使用。
  22. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の太陽電池の光吸収層としての使用。
  23. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の光センサーとしての使用。
  24. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の発光材料としての使用。
  25. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の、ペロブスカイト構造を有する(CH(NH22)PbX3(ここで、XはCl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1つである。)の前駆体としての使用。
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