以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図1及至図11を参照して、本実施形態の印刷装置100およびインクカセット300について説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置100および印刷装置100に用いられるインクカセット300の外観構成を示す図である。
図1に示すように、印刷装置100は、その側面に開閉可能に支持されたカセットカバー111−1を備え、該カセットカバー111−1内のシャ−シ110に設けられた開口部であるインク装着部110−1を介してインクカセット300を矢印A方向に着脱可能としている。インクカセット300には、昇華性インクが塗布されているインクリボン114が収納されており、印刷装置に配された動力によりインクリボン114が搬送され、印画に用いられる。インクカセット300の構造詳細については後述する。
印刷装置の本体ケース101の上部には、表示部102及び各種スイッチ及び釦で構成された操作部103が配されている。また、印刷装置100には不図示のUSB端子やSDカードコネクタ等のインターフェースを備えており、画像データの入ったSDカードを装着する事や、USBケーブルで外部メモリ機器と接続する事により画像データを受信出来るように構成されている。表示部102はLCD等の表示手段から構成され、印刷される画像データを表示したり、印刷に必要な設定データを入力するためのメニューを表示したりする。操作部103は、印刷装置の電源のON/OFFを指示する電源スイッチ104と、表示部102に表示された各種メニューを選択するための選択スイッチ105とを備える。更に、選択スイッチ105の近傍には、表示部102に表示されたカーソルを所望の位置に移動させるための上下左右スイッチ106と、印刷スイッチ107とが配されている。上下左右スイッチ106により所望の画像が選択されると、ユーザにより印刷スイッチ107が押下され、印刷装置100は印刷を開始する。
印刷装置100正面には開閉可能に軸支されたトレイカバー111−2が配され、トレイカバー111−2を開状態にする事で用紙トレイ112を装着可能としている。用紙トレイ112には、規定の尺にカットされた印画用紙113が予めユーザによりセットされて居り、印刷時には印刷装置100に配された給紙機構により、用紙トレイ112から一枚のみ引き出され、インクリボン114に塗布されたイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色インク及び印画面を保護する為の無色透明のオーバーコート(OC)が印刷装置のサーマルヘッドにより転写され、フルカラー印画が行われる。トレイ上カバー112−1は用紙トレイ112に回動可能に支持されたカバーで在り、印刷装置100へ装着される場合は予めユーザにより開方向へ回動されている。トレイ上カバー112−1は印刷装置100へ装着されている状態では、印画終了後に印刷装置100から排出された印画用紙113を積載する機能を有している。
次に図2を用いてインクリボン114の構成について説明する。図2は本実施形態におけるインクリボン114の展開図である。インクリボン114はイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を並べたインクリボンであり、印画用紙113にそれぞれの色を重ねて印画する事によりフルカラーの画像を形成可能とする。イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を印刷しフルカラーの画像を形成した後、更に印画表面を保護する為、インクリボンには続けて無色透明のオーバーコート(OC)面が設けられている。イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を印画したフルカラー画像上全面に、オーバーコート(OC)の印画(転写)が行われる。各色の間には各色の先頭位置を検出する為の黒帯状の印刷で有るマーキング114−1が施されて居り、イエロー(Y)面の先頭を示すマーキングは他の色と区別する為マーキングが2本施されている。本実施形態における昇華式のインクリボンでは、厚さ2〜10数ミクロン程度のポリエチレンテフタレートフィルム等耐熱性の高いフィルムを基材とし、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色は該フィルム上に染料とバインダー、可塑剤、粘結剤等を混合して作製された昇華性インクを0.2〜5μm程度の厚さに塗布し、無色透明のオーバーコート面はスチロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、バインダー等を0.5〜5μm程度の厚さに塗布し形成されて居る。また、インクが塗布された面の反対側の面には、摺動部との摩擦抵抗を小さくしインクリボンの走行を安定化させる為の潤滑材や、サーマルヘッド表面を研磨清掃する為の研磨剤などが塗布されている。
次に印刷装置100の印刷動作を、図3乃至図4を用いて説明する。図3は本実施形態に係る印刷装置100の動作を示す断面図であり、図4は本実施形態に係る印刷動作のフローチャートを示した図である。図3(a)は印画待機状態を示し、図3(b)は給紙状態を示し、図3(c)はインクリボン114の頭出し状態を示し、図3(d)は印画動作中の状態を示している。ユーザにより、インクカセット300及び印画用紙113をセットされた用紙トレイ112が印刷装置100に装着され、電源スイッチ104を押下されると、印刷装置は図3(a)の印画待機状態となる。不図示のSDカード等により供給された画像データが印刷装置に読み込まれ、表示部102に表示された後、選択スイッチ105や上下左右スイッチ106を用いて印刷する画像データが指定される。印刷装置100にはプラテンローラ203及びサーマルヘッド201が備えられており、サーマルヘッド201はサーマルヘッド回動軸202に回動可能に支持され、コイルバネ204にて図中時計回り方向へ付勢されている。印画待機状態においては、インクカセット300と挿抜時干渉しない様に、サーマルヘッド201はコイルバネ204の付勢力により図中時計回りに回動し、プラテンローラ203との距離を最大限広く取った位置に規制されている。
次いで印刷スイッチ107が押下されると、印刷装置100は印刷動作を開始する(S101)。印刷動作を開始すると、印刷装置100に備えられたサーマルヘッド201は、不図示の動力源によりコイルバネ204の付勢力に抗してサーマルヘッド回動軸202を中心に図中反時計回りに回動させる。そして、図3(b)に示す様に待機位置とプラテンローラ203とニップする印刷位置との間となる中間位置へ移動する(S102)。サーマルヘッド201の移動が完了すると、印刷装置100は給紙動作を開始する(S103)。給紙動作を開始すると、印刷装置100に備えられた加圧板205が不図示の動力により加圧板回動軸207を中心に図中時計回りに回動し、用紙トレイ112内に積載された印画用紙113を押し上げ給紙ローラ206へ押し付ける。給紙ローラ206は不図示の動力により図中反時計方向へ回転し、積載された印画用紙113を印刷装置100の内部へ向かって搬送する。印画用紙113は印刷装置100に備えられた分離板208に当接し、最上部に積載された一枚の印画用紙113のみを搬送する。続いて、搬送された印画用紙113は用紙検出センサ209に検出され、給紙動作不良の無い事が確認される。給紙動作不良の無い事が確認されると、用紙トレイ112内の用紙が誤って印刷装置100内に搬送される事が無いように、加圧板205は不図示の動力により図3(a)に示す、待機状態の位置へ回動する。引き続き給紙ローラ206により搬送された印画用紙113は、切換板回動軸210により回動可能に支持された切換板211を押す事により図中反時計方向へ回動させ、搬送ローラ212と搬送従動ローラ213のニップ間へ突入する。搬送ローラ212には印画用紙100の裏面に突き刺さる微小な突起が複数形成されており、印画用紙113を正確に搬送する事が可能となっている。また、搬送ローラ212は不図示のステッピングモータにより駆動され、正確な送り量の制御が可能となっている。印画用紙113は、搬送ローラ212及び搬送従動ローラ213により搬送が継続され、印画用紙113の後端が用紙検出センサ209を通過した後、所定量搬送され、印画開始位置にて停止する(S104)。給紙動作が完了し、印画用紙113が印画開始位置へ停止すると、インクリボン114のイエロー(Y)頭出し動作が成される(S105)。以下、リボン頭出し動作を説明する。
図3(c)に示した位置まで用紙が搬送され、印画開始位置への搬送が完了すると、インクカセット300に収納されているインクリボン114が巻き上げられる。即ち、インクカセット300内に配された巻取りボビン301の回転軸301−3の先端が印刷装置100に備えられた係合部と係合し、不図示の動力により図中反時計回りに回動され、供給ボビン302に巻き回されているインクリボン114が巻取りボビン301に巻き取られて行く。図2で示したように、インクリボン114の各色先頭には黒帯が設けられており、特にイエロー(Y)の先頭には黒帯が2本設けられている。印刷装置100には反射式光学センサであるインクリボンセンサ214が備えられており、インクリボン114に設けられた黒帯で反射光がさえぎられる事を検出する事によりインクリボンの搬送を停止し、頭出しを行っている。イエロー(Y)の頭出しの際には、二本の黒帯を検出可能か判断される(S106)。イエロー(Y)頭出し動作時に一本または規定時間内に黒帯が検出出来なかった場合はインクカセット300の異常としてエラーを表示部102に表示し(S107)、サーマルヘッド201を図3(a)に示された待機位置へ移動し(S127)印刷動作を終了する。
リボン頭出し動作時には、印画に掛る時間を短縮する為印画よりも早い速度でインクリボンが搬送される。即ち、供給ボビン302が回転する速度は大きくなり慣性は大きい物となる。前述したように、インクリボン114に設けられた黒帯を検知するとインクリボン114の搬送は停止されるが、供給ボビン302は自身の重量及び巻き回されたインクリボン114の重量による慣性により回転を継続しようとする。供給ボビン302の回転が継続してしまうと、不要なインクリボン114が繰り出される事になり、インクリボンジャム等の不具合の原因となってしまう。これを防止するため、供給ボビン302には微小な回転抵抗が発生するように摺動部が設けられている。供給ボビン302に設けられた微小な回転抵抗を発生する摺動部に関しての詳細は後述する。
イエロー(Y)の頭出しが完了すると、サーマルヘッド201はサーマルヘッド回動軸202を中心に更に図中反時計回りに回動し、インクリボン114と印画用紙113をプラテンローラ203との間に挟持する印画位置へ移動する(S108)。サーマルヘッド201が印画位置までの移動を完了すると、図3(d)に示される様に印刷用紙113及びインクリボン114はサーマルヘッド201とプラテンローラ203に挟持されたまま、図中矢印Bで示される印刷方向へ搬送される。印刷用紙113及びインクリボン114を搬送するとともに、インクリボン114に塗布されたインクがサーマルヘッド201により加熱されて印刷用紙113へ転写され、印画が行われる(S109)。印画動作中は前述の通りインクリボン114と印刷用紙113は同速度にて搬送される。このため、印刷装置100に備えられたインクリボン搬送機構には一定トルク以上の負荷が掛かるとスリップをする不図示のトルクリミッタ機構が組み込まれている。インクリボン114と印刷用紙113はサーマルヘッド201による加熱で印刷が成されると、一定の距離だけ密着状態を保持したまま搬送され、その後互いに離間する方向へ搬送される。即ち、印刷用紙113は搬送ローラ212により矢印Aの方向へ搬送され、インクリボン114はサーマルヘッド201に一体的に配された剥離板215に摺動しながらインクカセット300内に配されたガイド軸303に向かい搬送される。インクリボン114はサーマルヘッド201による印画のための加熱により印刷用紙113に貼りついているが、剥離板215の位置まで搬送され印刷用紙113より引き剥がされる事となる。印刷される画像が高階調である場合では、高濃度が求められる為より多くの染料を印刷用紙113に拡散移動すべく多くの熱量がサーマルヘッド201から与えられる。
インクリボン114は熱量が加えられると、前述したようにポリエチレンテフタレートフィルムで構成されている為収縮が起きる。特に高諧調領域を印画する場合、多くの熱量がインクリボン114に加えられ大きく収縮する。すると、供給ボビン302に巻き回されているインクリボンが収縮により引き出され、リボンの捩れや、弛み、シワ等の原因となる。捩れやシワが発生すると、色抜け等の不具合が発生し印画品質の低下を招いてしまう。この様な印画品質を低下させる事象を防止するためには、供給側のインクリボン114が収縮等の比較的微小な力の作用で容易に引き出されないように、供給側軸に適切な回転抵抗を生じさせる構成が有効である。前述したように、供給軸には微小な回転抵抗が生じる構成とされている。この様な回転抵抗を生じさせる構成はインクリボン114の頭出し動作停止時の緩み防止のみならずシワ耐性を向上させる機能も担っている。
剥離板215のサーマルヘッド201上に配された発熱体との距離は、インクリボン114上から印刷用紙113上に拡散移動した染料が充分冷却され定着する為に必要な値へ適正化されている。
印刷用紙113へのイエロー画像の印画領域への印画が完了すると、不図示の印刷装置100に備えられた動力が駆動し、サーマルヘッド201を回動させ図3(c)に示される位置に退避させる(S110)。その後、図3(c)に示される、位置まで印刷用紙113を印画動作とは逆方向に搬送させ印画開始位置へ移動させる(S111)。その後、イエロー(Y)印画動作同様にインクリボン114を、マーカー114−1Mを検出する事により印画開始位置まで搬送停止しマゼンダ(M)の印画を行う(S112〜116)。同様にマーカー114C及び114OCを検出しリボン頭出しを行い、シアン(C)及びオーバーコート(OC)の印画を行う(S117〜125)。OC迄の印画が終了すると、図3(d)中矢印Aで示される方向に印刷用紙113を更に搬送し、用紙後端が搬送ローラ212を抜けた後は給紙ローラ206の搬送力により印刷装置110の外である、用紙トレイ112上に排紙する(S126)。排紙が完了すると、サーマルヘッド201を不図示の動力により図3(a)に示された待機位置まで回動し、印刷を終了する(S127)。
以上により、イエロー、マゼンタ、シアン、オーバーコート層の順にインクが重ねられて転写される印画動作が完了する。
次に、図5を参照してインクカセット300の構成詳細を説明する。図5は本実施形態に係るインクカセット300の詳細図である。図5に示す通り、インクリボン114は供給ボビン302に巻き回され、他端を巻取りボビン301に貼り付けられた状態でカセットケース304に収納されている。カセットケース304はABS等の汎用成型材料やPC等のエンジニアリングプラスチックが用いられる。巻取りボビン301、供給ボビン302は同じ形状の部品であり、ABSやPS等の汎用樹脂の高摺動材料を用いた射出成型品である。カセットケース304は二つの略半円筒を繋げた形状を有しており、該半円筒をそれぞれ供給側ケース305と巻取り側ケース306で覆い、略円筒形状の供給軸収納部及び巻取り軸収納部を形成している。供給側ケース305及び巻取り側ケース306はそれぞれ供給側ケース係合爪305−1及び巻取り側ケース係合爪306−1にてカセットケース304に係合し一体化されている。また、供給側ケース305と巻取り側ケース306はカセットケース304同様の樹脂射出成型品である。供給ボビン302及び巻取りボビン301はそれぞれカセットケース304と供給側ケース305及び巻取り側ケース306で構成された略円筒形状の収納部内に収納あされている。そして、供給ボビン302及び巻取りボビン301は、収納部内に配置された軸受部により回転可能に支持されている。インクリボン114は、カセットケース304に回転可能に支持されたガイド軸303にてインクリボンの搬送経路が屈曲し、供給側ケース305及び巻取り側ケース306とカセットケース304間に設けられた開口部を通るように配置されている。ガイド軸303は強度の高い樹脂であるPBT−G30%の射出成型にて製作され、インクリボン114と接触する大径部303−2と同軸に大径部303−2の両端に設けられた小径部303−1にて構成されている。巻取りボビン301及び供給ボビン302は、先端にフランジ301−1が設けられている。フランジ301−1には回転軸301−3と同心円状且つフランジ301−1に対し回転軸301−3の軸方向へ凸形状とした複数の突起301−2が設けられている。尚、供給ボビン302にも巻取りボビン301と同様にフランジ、突起、回転軸が設けられている。巻取りボビン301と供給ボビン302は同形状のため、供給ボビン302についても巻取りボビン301と同じ符号(フランジ301−1、突起301−2、回転軸301−3)を用いて説明する。
図6(a)は、インクカセット300の上面図であり、図5においてカセットを組み立てた場合に、矢印Cからインクカセット300を見たときの図である。図6(b)は、図6(a)中E−Eで定義された位置の断面を矢印D側から見たときの斜視図である。なお、図6(a)、(b)ではインクカセット300が印刷装置100に装着されていない状態を示している。図6(b)に示す通り、巻取りボビン301の回転軸301−3は、カセットケース304の軸受部304−2と巻取り側ケース306の軸受部306−2とにより回転可能に指示されている。また、供給ボビン302の回転軸301−3は、カセットケース304の軸受部304−2と供給側ケース305の軸受部305−2とにより回転可能に指示されている。そして、カセットケース304には弾性変形可能な樹脂バネ308が一体に設けられている。樹脂バネ308は巻取りボビン301の収納部及び供給ボビン302の収納部それぞれに1つずつ設けられている。樹脂バネ308は、略U字形状をしており、一端がカセットケース304に固定されている。巻取りボビン301側の樹脂バネ308は、供給ボビン302側の樹脂バネ308に対し、巻取りボビン301と供給ボビン302の中心を結ぶ線中央部において、直交した線に対し略鏡面反射した形状とされている。即ち、樹脂バネ308は巻取りボビン301及び供給ボビン302の間内側が自由端とされ、それぞれの軸の外側が固定端とされた形状となっている。前述したように樹脂バネ(308)はカセットケース304と一体に設けられているため、カセットケース304と同じ材質である。本実施例に係るカセットケース304は、合成樹脂であるPC(ポリカーボネート)を射出成型する事で形成されている。一般に、合成樹脂で形成された形状は応力による変形が長時間加わると、変形が生じ応力を解除しても変形が完全には戻らなくなる現象が知られている。これは、クリープ現象と呼ばれ、高温環境や加わる応力が大きい程変形量が増加する事も知られている。前述したように、樹脂バネ308はカセットケース304と一体形成されているため、射出成型で形状が形成可能な様に最小限必要な厚さが確保されている。ある一定以下の厚さに設定してしまうと、可塑化され金型中に射出された樹脂が細部迄到達できず形状が形成できない。これは、一般的にはショートモールドと呼ばれる現象であり、射出成型の不良として知られている。本実施例に係る樹脂バネ308は、ショートモールドの発生しない最低限の0.8mmの厚さに設定され、前述した様に略U字形状とされている。そして、略U字形状の自由端側308−1が、スライド部材307に当接して、スライド部材307を付勢するように構成している。これは、これは、発生する応力を極力小さくし変形量(クリープ量)を抑える為である。即ち、インクカセット300及び印刷装置100を大型化しない範囲内で、出来る限り長い形状で変形する様構成する事によりバネ乗数を小さくしている。また、この様に略U字形状の樹脂バネ308をカセットケース304と一体形成する事により、金属製のコイルバネ等部材を追加する必要がない為、コスト低減にも寄与している。
巻取りボビン301及び供給ボビン302間にはスライド部材307が配されており、スライド部材307には突起301−2間に入り込み両軸の回転を規制する規制部307−1が設けられている。規制部307−1は巻取りボビン301及び供給ボビン302に対しそれぞれ1か所設けられている。樹脂バネ308の自由端308−1がそれぞれの規制部307−1の近傍に接している。つまり、樹脂バネ308はスライド部材307を、図中矢印Bで示された方向、つまり、巻取りボビン301及び供給ボビン302の回転軸と平行であり、フランジ301−1側へ向かう方向へ付勢している。スライド部材307は、摺動性が良く硬度の高いポリアセタール樹脂で形成されている。スライド部材307はカセットケース304と供給側ケース305及び巻取り側ケース306により挟持され、矢印C及びFで示された方向(巻取りボビン301及び供給ボビン302の回転軸と平行な方向)へ移動可能に保持されている。
また、スライド部材307は、インクカセット300を印刷装置100へ装着した際に、印刷装置の当接面110−2と当接する被当接面307−2を有している。スライド部材307は、被当接面307−2から規制部307−1に向かって腕部307−3が設けられており、腕部307−3は、供給側と巻取り側とにそれぞれ設けられている。カセットケース304のガイド部304−3と供給側ケース305のガイド部305−3及び巻取り側ケース306のガイド部306−3との間に腕部307−3が挟まれるように嵌合しており、図中矢印Cで示された方向へ移動可能に保持されている。
図7(a)はインクカセット300を印刷装置100へ装着する途中を示している。また、図7(b)は図7(a)の状態における巻取りボビン301(供給ボビン302)とスライド部材307の状態を示している。また、図8は、図7の状態における、インクカセット300の内部を示す図である。図8では、図7の矢印Gの方向からインクカセット300を見た場合の図であり、内部の状態を示すために、供給側ケース305及び巻き取り側ケース306を省いている。図7、図8に示された状態では、スライド部材307は、樹脂バネ308の自由端側の当接部308−1に当接してフランジ301−1側に付勢され、規制部307−1が複数の突起301−2間に入り込む。樹脂バネ308、規制部307−1、突起301−2は、巻取りボビン301側、及び、供給ボビン302側の両方にそれぞれ設けられている。また、規制部307−1は、巻取りボビン301及び供給ボビン302の間に設けられている。これは、1つのスライド部材307に、供給側の規制部307−1と巻き取り側の307−1とが設けられているため、スライド部材307をより小さく構成するためである、また、規制部307−1を、巻取りボビン301及び供給ボビン302の間に配置されるように構成することにより、巻取りボビン301及び供給ボビン302の回転によってスライド部材307に与えられる力の影響も少なくなるようにしている。このように、印刷装置100にインクカセット300が装着されていない状態では、規制部307−1が複数の突起301−2間に入り込んでいるため、巻取りボビン301及び供給ボビン302の回転方向の移動は規制される。巻取りボビン301及び供給ボビン302に外力が加えられても、規制部307−1と突起301−2が干渉する事により両軸が回転する事は無い。この様に、巻取りボビン301及び供給ボビン302が回転しない為、インクリボン114が引き出される事は無く、緩み等不具合を生じさせる状態になる事は無い。また、巻取りボビン301及び供給ボビン302のフランジ301−1は、規制部307−1を介して樹脂バネ308に回転軸方向に付勢されているため、通常であれば回転軸方向にも移動することはない。
図9(a)はインクカセット300を印刷装置100へ装着した状態を示している。また、図9(b)は図9(a)の状態における巻取りボビン301(供給ボビン302)とスライド部材307の状態を示している。また、図10は、図9の状態における、インクカセット300の内部を示す図である。図10では、図9の矢印Gの方向からインクカセット300を見た場合の図であり、内部の状態を示すために、供給側ケース305及び巻き取り側ケース306を省いている。
インクカセット300が、図7,8の状態から、図9,10の状態となるように、ユーザにより印刷装置100に装着されて行くと、先ず巻取りボビン301と供給ボビン302先端に設けられた不図示の凹形状と印刷装置100に備えられた巻き取り係合部216及び供給係合部217が係合する。巻き取り係合部216及び供給係合部217は、それぞれ巻き取り係合部バネ216−1及び供給係合部バネ217−1により矢印Fのインクカセット300を印刷装置100より排出する方向へ付勢されている。樹脂バネ308は比較的小さな部品であるスライド部材307を移動可能に設定されているため、発生する荷重は小さい。本実施形態では、樹脂バネ308による荷重は、規制部307−1がフランジ301−1に当接している状態で約30gf程度に設定されている。対して、巻き取り係合部バネ216−1及び供給係合部バネ217−1は、インクカセット300を印刷装置100より排出させる為の付勢力を担ってもいるため比較的大きな荷重とされる。本実施形態では、図7で示される、インクカセット300が装着されていない状態で、巻き取り係合部バネ216−1及び供給係合部バネ217−1は、巻き取り係合部216及び供給係合部217をそれぞれ200gf程度で付勢している。インクカセット300は、ユーザにより巻き取り係合部バネ216−1及び供給係合部バネ217−1の付勢力に抗して挿入されて行く。巻き取り係合部バネ216−1及び供給係合部バネ217−1の付勢力は樹脂バネ308による付勢力より充分に大きい。このため、巻取りボビン301及び供給ボビン302は樹脂バネ308の付勢力に抗して矢印Fの方向に移動する。巻取りボビン301及び供給ボビン302のフランジ301−1が、カセットケースの軸受部304−2、供給側ケースの軸受部305−2、巻き取り側ケースの軸受部306−2に当接することにより、巻取りボビン301及び供給ボビン302の位置が規制される。即ち、巻取りボビン301と供給ボビン302は回転可能に保持する為の最小限の軸方向隙間が付与された状態で保持されているが、印刷装置100に装着する事によりカセット300内において片寄せされた状態になる。
インクカセット300が更に挿入されて行くと、スライド部材307の被当接面307−2とシャーシ110の一部である当接面110−2が当接する。当接面110−2はインク装着部110−1の一部を兼ねている。
スライド部材307は巻取りボビン301と供給ボビン302間に配置されている。巻取りボビン301と供給ボビン302の距離は前述したようにサーマルヘッド201が印画の為に侵入可能な距離に設定されており、比較的大きい。この為、スライド部材307はシャーシ110と比較的大きな面で当接が可能であり、安定的に姿勢が保持される。スライド部材307の被当接面307−2が当接面110−2に当接する事により位置が規制された後、インクカセット300はユーザにより更に矢印D方向に挿入されて行く。スライド部材307は当接面110−2により位置規制が成されているため、カセットケース304に一体に設けられた樹脂バネ308の付勢力に抗することになる。つまり、スライド部材307は、樹脂バネ308の付勢力に抗して樹脂バネ308を変形させながら、カセット300に対して、矢印F方向へ移動する。
更にインクカセット300を矢印D方向に移動させ、スライド部材307がインクカセットに対して矢印F方向に移動していくと、やがてスライド部材307に設けられた規制部307−1はフランジ301−1に対し離間し、突起301−2からも離間していく。規制部307−1はスライド部材307と一体形成されており、巻取りボビン301と供給ボビン302に対する移動距離は略同じであるため、略同時に巻取りボビン301と供給ボビン302への回転規制が解除される事となる。即ち、巻取りボビン301と供給ボビン302のどちらか一方のみが長時間ロック又はロック解除となる事が無い。
図9、図10のように、インクカセット300が印刷装置100に完全に装着されると、規制部307−1は突起301−2から完全に離間する。インクカセット300の装着途中において、巻取りボビン301と供給ボビン302のフランジ301−1が、軸受部304−2、305−2、306−2により位置規制され、巻取りボビン301と供給ボビン302が片寄される。ここで、スライド部材307は、規制部307−1が、軸受部304−2、305−2、306−2のフランジ301−1と当接する面よりも、突起301−2と離間する側まで移動可能となるように構成されている。そのため、図10に示されるように、インクカセット300が印刷装置100に完全に装着された状態において、規制部307−1は、軸受部304−2、305−2、306−2のフランジ301−1と当接する面よりも、矢印F側まで移動する。そのため、規制部307−1は、フランジ301−1から完全に離間する。そのため、樹脂バネ308の付勢力は巻取りボビン301と供給ボビン302へ作用しない。印画動作において供給ボビン302が回転する際には供給係合部バネ217−1による力のみで摩擦による回転抵抗が生じるようになる。図9、図10で示された、インクカセット300が印刷装置100に完全に装着された状態では、樹脂バネ308の変形量は装着されて居ない状態よりも大きくなる。つまり、樹脂バネ308により発生する応力は比較的大きくなる。また、図9、図10で示される様に、樹脂バネ308は巻取りボビン301及び供給ボビン302それぞれに対し配置されており、且つスライド部材307は両軸間の比較的広い面積で当接部110−2に支持されて居る。そのため、スライド部材307は樹脂バネ308により大きな力で押圧されて居ても安定的に姿勢が保持される。図11(a)はインクカセット300が印刷装置100へ完全に装着された状態の側面図であり、インクカセット300と印刷装置100の要部のみ示している。また、図11(b)は、図11(a)中H−Hで示された位置での断面図である。図511(a)に示された状態では、カセットケース304に設けられた係合部304−3が印刷装置100に設けられた係止部材218と係合し、インクカセット300を印刷装置100内の規定の位置にて保持する。より詳細には、係止部材218はシャーシ110に対し矢印C及びG方向に移動可能に支持され、係止バネ218−1により矢印C方向、つまり、インクカセット300側に付勢されている。カセットケース304は、係止バネ218−1の付勢力に抗し係止部材218を押し上げながら印刷装置100へ挿入される。図511(b)の位置までインクカセット300が挿入されると、係止バネ218−1の付勢力により係止部材218が矢印C方向に移動し、インクカセット300の位置が規制される。インクカセット300が印刷装置100内の規定の位置にて保持された状態(図9、図10の状態)では、規制部307−1は突起301−2に対し供給ボビン302の軸方向に完全に離間している。そのため、巻取りボビン301及び供給ボビン302が受ける力は、それぞれ、巻き取り係合部バネ216−1又は供給係合部バネ217−1による力のみとなる。即ち、それぞれ一つのバネの力で摺動抵抗を生じさせる事となり、付勢力のばらつきが小さくなる。この為、巻き取り係合部216及び供給係合部217に付与する回転抵抗の管理が容易となり、安定的に印画品質向上が可能となる。
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザはインクカセット300を印刷装置100へ挿入する操作のみで巻取りボビン301、供給ボビン302のロックを解除する事が可能である。また、本実施形態のインクカセット300においては、巻取りボビン301、供給ボビン302の回転を規制するための規制部307−1を付勢するために、樹脂バネ308を用いている。樹脂バネ308は、インクカセット300を構成するカセットケース304に一体的に設けているため、部品数を少なくすることができる。
インクカセット300は、印刷装置100に備えられた係止部材218をユーザに操作される事により印刷装置100から抜去可能となる。ユーザによりインクカセット300が印刷装置100より抜去されると、前述した装着時と逆の順で、巻取りボビン301、供給ボビン302、スライド部材307がカセットケース304、供給側ケース305、巻き取り側ケース306に対し相対的に移動し、規制部307−1が突起301−2と係合する。即ち、ユーザは何ら特別な操作を行わずしてインクカセット300を印刷装置100から取り外す事により巻取りボビン301、供給ボビン302の回転をロックする事が可能となる。
また、前述したように印刷装置100は印刷用紙113を搬送する為のローラを支持する為の機構や用紙トレイ112を保持するための機構が備えられている。これらの機構は印刷用紙113の幅方向より外へ配置せざるを得ない。つまり、印刷装置100の幅方向の大きさはこれら用紙トレイ112の保持機構等により決定されている。インクカセット300に備えられたスライド部材307やフランジ301−1、回転軸301−3は、印刷装置100の幅寸法が拡大しない範囲で配置されている。即ち、巻取りボビン301及び供給ボビン302の回転をロックする為の機構は、印刷装置100の幅方向の大きさに影響しない。
図12は、インクカセット300を、印刷装置100に装着していない場合の断面図を示しており、図6(a)中E−Eで定義された位置の断面図を示している。ただし、説明のため、樹脂バネ308を省略している。
インクカセット300に外力が加わり、巻取りボビン301が回動しようとした場合、まず巻取りボビン301の突起301−2がロック部307−1に干渉する。ロック部307−1の回転外周方向の近傍には、腕部307−3が存在し、この腕部307−3は、カセットケース304のガイド部304−3と巻取り側ケース306のガイド部306−3との間に挟まれて保持されてしている。そのため、ロック部307−1が巻取りボビン301から受けた力は、近傍の腕部307−3を介してカセットケース304のガイド部304−3又は巻取り側ケース306のガイド部306−3が受けることになる。ロック部307−1が突起301−2から外れようと、樹脂バネ308を押し戻す方向へと変形するのを防ぎ、信頼性の高いロック機構を実現できる。
例えば、図12の矢印J方向に巻き取り軸が回転した場合、巻取りボビン301側の突起301−2がロック部307−1に干渉し、巻き取り側のロック部307−1は矢印C方向の力を受ける。巻き取り側のロック部307−1の近傍に設けられている巻き取り側の腕部307−3にも矢印C方向の力が働くため、巻取り側ケース306のガイド部306−3が、矢印C方向の力を受ける。スライド部材307全体としては、巻取り側ケース306のガイド部306−3との接触部を支点として回転力が働くため。供給側の腕部307−3に矢印G方向の力が働き、カセットケース304の供給側のガイド部304−3がこの力を受ける。そのため、スライド部材307の姿勢が大きく変動してロック部が外れるようなことはない。
逆に、図12の矢印K方向に巻き取り軸が回転した場合、巻取りボビン301側の突起301−2がロック部307−1に干渉し、巻き取り側のロック部307−1は矢印G方向の力を受ける。巻き取り側のロック部307−1の近傍に設けられている巻き取り側の腕部307−3にも矢印G方向の力が働くため、カセットケース304の巻取り側のガイド部304−3が、矢印G方向の力を受ける。スライド部材307全体としては、カセットケース304の巻取り側のガイド部304−3との接触部を支点として回転力が働くため。供給側の腕部307−3に矢印C方向の力が働き、供給側ケース305のガイド部305−3がこの力を受ける。そのため、スライド部材307の姿勢が大きく変動してロック部が外れるようなことはない。
供給ボビン302が回転した場合についても、巻き取り軸の場合と同様である。巻取りボビン301または供給ボビン302が回転しても、カセットケース304の巻取り側及び供給側のガイド部304−3、巻取り側ケース306のガイド部、供給側ケース305のガイド部305−3により、信頼性の高いロック機構を実現できる。
このように、2つのリボン軸のどちらか一方に働いた力を、回転があった側のケースだけでなく、他方の側のケースでもスライド部材を受ける構成にしていることで、信頼性の高いロック機構を実現できる。
スライド部307の大型化を防ぐため、カセットケース304の巻取り側及び供給側のガイド部材304−3、巻取り側ケース306のガイド部、供給側ケース305のガイド部305−3は、巻き取り軸および供給軸の間に配置されるようにしている。ロック部307−1は、フランジ301−1に設けられた突起301−2と、巻き取り側および供給軸の間において係合することにより巻き取りボビン301及び供給ボビン302をロックしている。そのため、巻き取りボビン301と供給ボビン302の間に、カセットケース304の巻取り側及び供給側のガイド部304−3、巻取り側ケース306のガイド部、供給側ケース305のガイド部305−3を設けることにより、更に、スライド部材307を小型化することができる。また、スライド部材307を小さくすることで、スライド部材307に回転力が加わったときの力の影響を少なくすることができる。
また、スライド部材307の腕部307−3は、被当接部307−2から、ロック部307−1と連結させ、そして、スライド部材のスライド方向に延在した形状をしている。この腕部307−3が、カセットケース304のガイド部304−3と巻取り側ケース306のガイド部306−3もしくは供給側ケースのガイド部305−3と、被当接部の板厚以上の幅をもって嵌合している。スライド方向に被当接部の板厚以上の幅をもって嵌合していることで、図12で示したI方向にスライド部材307が倒れるのを防止することができる。また、カセットケース304のガイド部304−3、巻取り側ケース306のガイド部306−3、供給側ケースのガイド部305−3について、スライド部材のスライド可能な幅を持たせてもよい。スライド可能な幅を持たせることにより、ガイド部材304−3、306−3、305−3により、スライド部材307のスライド移動をガイドするとともに、安定したスライド移動をさせることができるようになる。
また、カセットケース304の巻取り側ガイド部304−3と巻取り側ケース306のガイド部306−3は、巻取り側ケース係合爪306−1によるカセットケース304と巻取り側ケース306の係合部の近傍に設けられている。そして、カセットケース304の供給側ガイド部304−3と供給側ケース305のガイド部305−3は、供給側ケース係合爪305−1によるカセットケース304と供給側ケース305の係合部の近傍に設けられている。係合部近傍は、カセットケース304と、巻取り側ケース306または供給側ケース305との係合する力が強い。そのため、リボン軸の回転による力が働いた場合に、カセットケース304と、巻取り側ケース306、供給側ケース305への影響を少なくすることができる。このように、インクカセット300が印刷装置に装着されていない場合には、巻取りボビン301及び供給ボビン302が回転しないため、インクリボン114が引き出される事は無く、緩み等不具合を生じさせる状態になる事は無い。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。