JP2018070970A - 高強度低合金油井用継目無鋼管及びその製造方法 - Google Patents

高強度低合金油井用継目無鋼管及びその製造方法 Download PDF

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【課題】耐水素脆化特性に優れた高強度低合金油井用継目無鋼管を提供する。【解決手段】高強度低合金油井用継目無鋼管は、化学組成が、質量%で、C:0.20〜0.50%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.1〜1.0%、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.10〜1.20%、Mo:1.1〜2.5%、Ti:0.002〜0.020%、Nb:0.050%以下、V:0.01〜0.30%、B:0.0050%以下等を含有し、1103〜1206MPaの降伏強度を有し、前記化学組成が下記式(1)及び式(2)を満たし、結晶粒度番号で8.5以上の旧オーステナイト粒を有する。Vc90≦1.0 (1)Mo/Cr≧2.0 (2)ただし、logVc90=2.94−0.75(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.45Cu+0.8Cr+2Mo)【選択図】図2

Description

本発明は、高強度低合金油井用継目無鋼管及びその製造方法に関し、より詳しくは、耐水素脆化特性に優れた高強度低合金油井用継目無鋼管及びその製造方法に関する。
油井用鋼管は、油井やガス井でケーシング又はチュービングとして使用される。以下、油井とガス井とを総じて油井と称する。油井用鋼管としては、従来95〜125ksi(655〜862MPa)級の降伏強度を有する鋼管が使用されている。
石油や天然ガス等のエネルギー確保の必要性から、油田開発は高深度化が進んでいる。油田開発に用いられる油井用鋼管は、地中で連結されて使用されるが、地中数千メートルの深度に達する場所での開発が行われており、深度が増すにつれて油井用鋼管にかかる外圧も増加する。そのため、油井用鋼管の降伏強度を高める必要があり、従来使用されてきた95〜125ksi級を超える、160ksi(1103MPa)級の高強度を有する油井用鋼管にニーズが生じつつある。
一方で、160ksi以上の高強度にした場合、鋼中への水素の侵入量が増加するため、遅れ破壊に代表される水素脆化の発生が懸念される。一般に硫化水素を含まないとされる環境であっても水素の影響は少なからずあり、水素脆化への対策は必須である。すなわち、目標とする降伏強度と、耐水素脆化特性とを両立させることが課題となる。
特開昭61−64815号公報には、所定の化学組成の鋼をオーステナイト粒度が8.5以上となるように調整して焼入れし、焼戻しパラメータPLMが16800以上となる条件で焼戻しをする高強度鋼の製造方法が記載されている。同公報によれば、この製造方法で製造された鋼は、150ksiを超える降伏強度を有し、かつ遅れ破壊性にも優れるとされている。
特開昭62−40345号公報には、(Mo×1/16+V×3/17)/C=Xなる式におけるXが0.5≦X≦1.5を満足する高張力油井用鋼管が記載されている。同公報によれば、この油井用鋼管は、150ksiを超える降伏強度を有し、かつ遅れ破壊性にも優れるとされている。
特開昭61−64815号公報 特開昭62−40345号公報 特開2001−271134号公報
特開昭61−64815号公報や特開昭62−40345号公報に記載された技術をもってしても、降伏強度を安定して確保しつつ、さらに降伏強度と耐水素脆化特性とを両立させることは困難な場合がある。
本発明の目的は、耐水素脆化特性に優れた高強度低合金油井用継目無鋼管及びその製造方法を得ることである。
本発明の一実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管は、化学組成が、質量%で、C:0.20〜0.50%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.10〜1.20%、N:0.01%以下、Mo:1.1〜2.5%、Ti:0.002〜0.020%、Nb:0.050%以下、V:0.01〜0.30%、B:0.0050%以下、O:0.0050%以下、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、REM:0〜0.0050%、Cu:0〜1.0%、Ni:0〜1.0%、Co:0〜1.0%、W:0〜1.0%、残部:Fe及び不純物であり、1103〜1206MPaの降伏強度を有し、前記化学組成が下記式(1)及び式(2)を満たし、ASTM E112−10に準拠したオーステナイト結晶粒度番号で8.5以上の旧オーステナイト粒を有する。
Vc90≦1.0 (1)
Mo/Cr≧2.0 (2)
ただし、logVc90=2.94−0.75(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.45Cu+0.8Cr+2Mo)
上記式中の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。logは常用対数である。
本発明の一実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法は、化学組成が、質量%で、C:0.20〜0.50%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.10〜1.20%、N:0.01%以下、Mo:1.1〜2.5%、Ti:0.002〜0.020%、Nb:0.050%以下、V:0.01〜0.30%、B:0.0050%以下、O:0.0050%以下、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、REM:0〜0.0050%、Cu:0〜1.0%、Ni:0〜1.0%、Co:0〜1.0%、W:0〜1.0%、残部:Fe及び不純物である鋼素材を準備する工程と、前記鋼素材を熱間加工して鋼素管とする工程と、前記鋼素管を空冷以上の速度で室温まで冷却する工程と、前記冷却した鋼素管を焼戻しする工程と、前記焼戻しされた鋼素管をAc変態点以上1000℃以下の温度に再加熱して焼入れする工程と、前記焼入れされた鋼素管を再び焼戻しする工程とを備え、前記化学組成が下記式(1)及び式(2)を満たし、前記再び焼戻しする工程において、下記式(3)で定義される焼戻しパラメータTPが18200〜18400である。
Vc90≦1.0 (1)
Mo/Cr≧2.0 (2)
TP=(T+273)(log(t)+20) (3)
ただし、logVc90=2.94−0.75(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.45Cu+0.8Cr+2Mo)
上記式中の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。logは常用対数である。式(3)において、Tは焼戻し温度、tは焼戻し保持時間である。Tの単位は℃であり、tの単位は時間である。
本発明によれば、耐水素脆化特性に優れた高強度低合金油井用継目無鋼管及びその製造方法が得られる。
図1は、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法の一例を示すフロー図である。 図2は、焼戻しパラメータTPと降伏強度YSとの関係を示す散布図である。 図3は、降伏強度YSと割れ長さ率CLRとの関係を示す散布図である。
本発明者らは、160ksi(1103MPa)以上の高強度を有する低合金油井用継目無鋼管の耐水素脆化特性について検討した。
安定して高い降伏強度を得る方法として、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ組織の体積分率の高い組織とすることが考えられる。
また、耐水素脆化特性を向上させる方法として、焼戻し温度を高くしたり焼戻し時間を長くしたりすることが考えられる。焼戻し温度を高くしたり焼戻し時間を長くしたりすることで、炭化物を球状化できるとともに、水素のトラップサイトである転位の密度を減らせるためである。一方、転位は、鋼の高強度化にも寄与するため、単純に焼戻し温度を高くしたり焼戻し時間を長くしたりすれば、必要な降伏強度を維持できなくなる。
Moは、鋼の焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を向上させる元素として知られている。しかし、1.0質量%を超えてMoを含有させると、針状のMC型の合金炭化物が析出し、耐水素脆化特性が低下すると考えられている(例えば、特開2001−271134号公報を参照。)。
本発明者らは、Mo含有量をさらに高くし、かつCr含有量との比を適正にすることで、炭化物の形態を制御できることに着目した。具体的には、Mo含有量を1.1質量%以上にし、かつMo/Crを2.0以下にすることで、MC型の合金炭化物に代えて、MoC等のMC型の合金炭化物を析出させることができる。MC型の合金炭化物は、水素をトラップし、耐水素脆化特性を改善する。そのため、焼戻し軟化抵抗向上による降伏強度の向上と、耐水素脆化特性の向上とを実現することができる。
以上の知見に基づいて、本発明は完成された。以下、本発明の一実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管を詳述する。
[化学組成]
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管は、以下に説明する化学組成を有する。以下の説明において、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
C:0.20〜0.50%
炭素(C)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。C含有量が0.20%未満では、この効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.50%を超えると、鋼の焼割れ感受性が高くなる。したがって、C含有量は、0.20〜0.50%である。C含有量の下限は、好ましくは0.22%である。C含有量の上限は、好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Si:0.05〜1.00%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が0.05%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Si含有量が1.00%を超えると、鋼の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜1.00%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.20%である。Si含有量の上限は、好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.50%である。
Mn:0.1〜1.0%
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。Mn含有量が0.1%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が1.0%を超えると、鋼の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Mn含有量は0.1〜1.0%である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.3%である。Mn含有量の上限は、好ましくは0.8%であり、さらに好ましくは0.6%である。
P:0.030%以下
燐(P)は不純物である。Pは粒界に偏析して、鋼の耐水素脆化特性を低下させる。したがって、P含有量は0.030%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は、好ましくは0.020%以下である。
S:0.0050%以下
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の耐水素脆化特性を低下させる。したがって、S含有量は0.0050%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量は、好ましくは0.0020%以下である。
Al:0.005〜0.1%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が0.005%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Al含有量が0.1%を超えると、介在物が粗大化して鋼の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.1%である。Al含有量の下限は、好ましくは0.01%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.06%である。本明細書におけるAl含有量は、酸可溶Al(いわゆるSol.Al)の含有量を意味する。
Cr:0.10〜1.20%
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。Crはまた、適切な量のMoとともに含有されれば、炭化物を球状化する作用を有し、耐水素脆化特性の向上に寄与する。Cr含有量が0.10%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が1.20%を超えると、MC型の合金炭化物の析出が妨げられる。したがって、Cr含有量は0.10〜1.20%である。Cr含有量の下限は、好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.40%である。Cr含有量の上限は、好ましくは1.0%であり、さらに好ましくは0.8%である。
N:0.01%以下
窒素(N)は不純物である。Nは窒化物系介在物を形成し、鋼の耐水素脆化特性を低下させる。したがって、N含有量は0.01%以下である。N含有量はなるべく少ない方が好ましい。N含有量の上限は、好ましくは0.006%であり、さらに好ましくは0.006%である。コストの観点から、N含有量の下限は、好ましくは0.001%である。
Mo:1.1〜2.5%
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。Moはさらに、鋼の焼戻し軟化抵抗を高める。Moはまた、MC型の合金炭化物として析出し、鋼の耐水素脆化特性を向上させる。Mo含有量が1.1%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が2.5%を超えると、析出物が過剰になって耐水素脆化特性が低下する。したがって、Mo含有量は1.1〜2.5%である。Mo含有量の下限は、好ましくは1.15%であり、さらに好ましくは1.2%である。Mo含有量の上限は、好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1.8%である。
Ti:0.002〜0.020%
チタン(Ti)は、窒化物又は炭窒化物を形成し、ピン止め効果によって結晶粒の微細化に寄与する。Ti含有量が0.002%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Ti含有量が0.020%を超えると、窒化物系介在物が粗大化し、鋼の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Ti含有量は0.002〜0.020%である。Ti含有量の下限は、好ましくは0.003%である。Ti含有量の上限は、好ましくは0.009%である。
Nb:0.050%以下
ニオブ(Nb)は、炭化物を形成し、ピン止め効果によって結晶粒の微細化に寄与する。Nbが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、Nb含有量が0.020%を超えると、窒化物系介在物が粗大化し、鋼の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Nb含有量は0.2%以下である。Nb含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
V:0.01〜0.30%
バナジウム(V)は、微細な合金炭化物を形成し、鋼の焼戻し軟化抵抗を高める。V含有量が0.01%未満では、この効果が十分に得られない。一方、V含有量が0.30%を超えると、析出物が過剰になって耐水素脆化特性が低下する。したがって、V含有量は0.01〜0.30%である。V含有量の下限は、好ましくは0.04%であり、さらに好ましくは0.06%である。V含有量の上限は、好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
B:0.0050%以下
ボロン(B)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。Bが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、B含有量が0.0050%を超えると、窒化物系介在物が形成され、鋼の耐水素脆化特性が低下する。したがって、B含有量は0.0050%以下である。B含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。B含有量の上限は、好ましくは0.0040%である。
O:0.0050%以下
酸素(O)は不純物である。Oは酸化物を形成して鋼の耐水素脆化特性や靱性を低下させる。したがって、O含有量は0.0050%以下である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。O含有量は、好ましくは0.0030%以下である。
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップから混入される元素、あるいは製造過程の環境等から混入される元素をいう。
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、以下に説明する元素を含有してもよい。以下に説明する元素は、すべて選択元素である。すなわち、本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の化学組成は、以下の元素の一部又は全部を含有していなくてもよい。
Ca:0〜0.0050%
Mg:0〜0.0050%
REM:0〜0.0050%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、及び希土類元素(REM)は、硫化物を細粒化し、耐水素脆化特性の向上に寄与する。これらの元素が少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、これらの元素の各々の含有量が0.0050%を超えると、酸化物系介在物が形成され、鋼の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Ca、Mg、及びREMのそれぞれの含有量は0〜0.0050%である。これらの元素の各々の含有量の下限は、好ましくは0.001%である。これらの元素の各々の含有量の上限は、好ましくは0.0025%である。
なお、REMとは、ランタノイドの15元素にY及びScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種以上を含有させることができる。REM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
Cu:0〜1.0%
Ni:0〜1.0%
銅(Cu)及びニッケル(Ni)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。これらの元素が少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、これらの元素の各々の含有量が1.0%を超えると、耐水素脆化特性が低下する。したがって、Cu及びNiのそれぞれの含有量は0〜1.0%である。これらの元素の各々の含有量の下限は、好ましくは0.01%である。これらの元素の各々の含有量の上限は、好ましくは0.5%であり、さらに好ましくは0.1%である。
Co:0〜1.0%
W :0〜1.0%
コバルト(Co)及びW(タングステン)は、腐食速度を低減し、鋼の耐水素脆化特性を高める。これらの元素が少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、これらの元素の各々の含有量が1.0%を超えると、効果が飽和するとともに、コストが増加する。したがって、Co及びWのそれぞれの含有量は0〜1.0%である。これらの元素の各々の含有量の下限は、好ましくは0.01%である。これらの元素の各々の含有量の上限は、好ましくは0.8%である。
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の化学組成は、さらに、下記式(1)及び式(2)を満たす。
Vc90≦1.0 (1)
Mo/Cr≧2.0 (2)
ただし、logVc90=2.94−0.75(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.45Cu+0.8Cr+2Mo)
上記式中の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。logは常用対数である。
[式(1)について]
Vc90は焼入れ性の指標であり、具体的には、体積率で90%以上のマルテンサイト組織を得るための臨界冷却速度(℃/秒)である。本実施形態では、Vc90が1.0以下になる化学組成とする。Vc90が1.0よりも大きい化学組成では、焼入れ性が十分ではなく、必要な降伏強度を得ることが困難になる。Vc90は、好ましくは0.8以下である。
[式(2)について]
本実施形態では、Cr含有量及びMo含有量を上述の範囲にするとともに、質量%で表したCr含有量に対するMo含有量の比率Mo/Crを2.0以上にする。Moは、上述のようにMoCを形成して耐水素脆化特性の向上に寄与する。しかし、Cr含有量が増加すると、MoCの形成が妨げられる。Mo/Crが2.0未満では、Crの影響によって、MoCの形成が不十分になる。Mo/Crの値は、好ましく2.3以上である。
[組織、降伏強度、耐水素脆化特性]
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の組織は、好ましくは、体積分率で90%以上の焼戻しマルテンサイトを有し、さらに焼戻し中に析出した炭化物を含む。高強度低合金油井用継目無鋼管の組織は、窒化物や炭窒化物等の炭化物以外の析出物、介在物、並びに残留オーステナイトを含んでいてもよい。ただし、残留オーステナイトは強度のばらつきを生じさせるため、体積分率で5%以下であることが好ましい。
残留オーステナイトの体積分率は、次のように測定する。鋼管の厚さ方向の中央部を含む試験片を採取する。採取した試験片の表面を研磨する。研磨した試験片に対して、CoKα線を入射X線として使用し、X線回折を実施する。α相の(220)面、(200)面、(111)面の積分強度と、オーステナイトの(220)面、(200)面、(111)面の積分強度とから、残留オーステナイトの体積分率を定量する。
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の組織はさらに、ASTM E112−10に準拠した結晶粒度番号で8.5以上の旧オーステナイト粒を有する。旧オーステナイト粒が結晶粒度番号で8.5未満の粗粒の場合、必要な耐水素脆化特性を得ることができない。旧オーステナイト粒は、好ましくは結晶粒度番号で9.0以上である。
旧オーステナイト粒の結晶粒度番号は、鋼管の長さ方向(製管方向)に垂直な断面が被検面になるように、各鋼管から試験片を切り出して樹脂に埋め込み、ピクリン酸飽和水溶液で腐食するBechet-Beaujard法によって旧オーステナイト粒界を現出させ、ASTM E112−10に準じて測定する。
旧オーステナイト粒の結晶粒度番号は、焼入れ後、焼戻し前の鋼材(いわゆる焼入れまま材)を用いて測定しても良いし、焼戻しされた鋼材を用いて測定しても良い。いずれの鋼材を用いても、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号はほとんど変わらない。
なお、焼戻し後の鋼材に対しては、電子線後方散乱回折法(EBSD)等の方法を用いて、結晶の方位関係から旧オーステナイト結晶粒のASTM粒度番号を求めることもできる。この場合、焼戻し後の継目無鋼管の金属組織をEBSDによって、次のように測定する。焼戻し後の継目無鋼管の横断面(継目無鋼管の軸方向と垂直な断面)の肉厚中央位置からサンプルを採取する。採取したサンプルを用いて500×500μmの観察範囲でEBSDによって結晶方位解析を行い、Misorientation Angleが15〜51°の範囲にある粒同士の境界を旧オーステナイト粒界と定義して、線描画させ、その描画図を元に、ASTM E112−10に準拠して結晶粒度番号を求める。
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管は、160ksi(1103MPa)〜175ksi(1206MPa)の降伏強度を有する。本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の降伏強度の下限は、好ましくは165ksi(1138MPa)である。
本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管は、優れた耐水素脆化特性を有する。本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管は、好ましくは、4℃の環境下において、solution B液に分圧0.1barのHSガスを飽和させた試験液中に96時間浸漬した後のCLRが5%以下である。
[製造方法]
以下、本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法の一例を説明する。この製造方法はあくまでも一例であり、本実施形態による高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法は、これに限定されない。
図1は、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法の一例を示すフロー図である。この製造方法は、鋼素材を準備する工程(ステップS1)、鋼素材を熱間加工して鋼素管にする工程(ステップS2)、鋼素管を補熱する工程(ステップS3)、鋼素管を冷却する工程(ステップS4)、冷却された鋼素管を焼戻しする工程(ステップS5)、並びに、再加熱焼入れ及び焼戻しをさらに1回以上行う工程(ステップS6〜S9)を備えている。以下、各工程を詳述する。
[鋼素材準備工程(ステップS1)]
上述の化学組成の鋼を溶製し、周知の方法で精錬する。続いて、溶鋼を連続鋳造法によって連続鋳造材にする。連続鋳造材は例えば、スラブ、ブルーム、又はビレットである。溶鋼を造塊法によってインゴットにしてもよい。スラブ、ブルーム、又はインゴットは、熱間加工によってビレットにする。
[熱間加工工程(ステップS2)]
連続鋳造又は熱間加工によって得られたビレットを熱間加工して鋼素管を製造する。熱間加工は例えば、マンネスマン法である。他の熱間加工によって鋼素管を製造してもよい。
[補熱工程(ステップS3)]
熱間加工工程(ステップS2)後、冷却工程(ステップS4)の前に、鋼素管をAc変態点以上の温度に補熱する(ステップS3)。補熱工程(ステップS3)は、任意の工程である。すなわち、補熱工程(ステップS3)を実施せずに、冷却工程(ステップS4)を実施してもよい。補熱工程(ステップS3)を実施すれば、鋼素管の温度を均一にすることができ、より均一な組織を得ることができる。
[冷却工程(ステップS4)]
熱間加工された鋼素管、又は補熱された鋼素管を、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却する(ステップS4)。冷却方法は、水冷が好ましい。すなわち、熱間加工によって形成された鋼素管を水冷する直接焼入れを実施するか、補熱後に水冷するインライン焼入れを実施することが好ましい。鋼素管を焼入れすることで、組織が焼入れ組織になる。このとき得られた焼入れ組織が、再加熱焼入れの際の昇温時にオーステナイトに逆変態することで、結晶粒をより微細にすることができる。
[焼戻し工程(ステップS5)]
冷却された鋼素管を焼戻しする(ステップS5)。焼戻し温度は、好ましくはAc変態点以下である。
[再加熱焼入れ工程及び焼戻し工程(ステップS6〜S9)]
焼戻し工程(ステップS5)後の鋼素管に対して、再加熱焼入れ及び焼戻しを1回以上実施する(ステップS6〜S9)。図1には、2回の再加熱焼入れ及び焼戻しを実施する場合を示しているが、再加熱焼入れ焼戻しの回数は1回でもよく、また、3回以上であってもよい。再加熱焼入れ焼戻しの回数を多くするほど、結晶粒をより微細にすることができる。
最終の焼入れ工程(ステップS8)の焼入れ温度は、Ac変態点以上1000℃以下である。焼入れ温度がAc変態点未満であると、マルテンサイト組織の体積率の高い組織が得られない。また、焼入れ温度が1000℃よりも高いと、オーステナイト粒が粗大化し、微細な組織が得られない。
最終の焼入れ工程(ステップS8)以外の焼入れ工程(ステップS6)の条件は特に限定されないが、最終の焼入れ工程(ステップS8)と同様、焼入れ温度がAc変態点以上1000℃以下であることが好ましい。
最終の焼戻し工程(ステップS9)では、下記式(3)で定義される焼戻しパラメータTPが18200〜18400になるようにする。
TP=(T+273)(log(t)+20) (3)
式(3)において、Tは焼戻し温度、tは焼戻し保持時間、logは常用対数である。Tの単位は℃であり、tの単位は時間である。
焼戻しパラメータTPが18200未満であると、必要な耐水素脆化特性を得るのが困難になる。一方、焼戻しパラメータTPが18400を超えると、必要な降伏強度を得るのが困難になる。
最終の焼戻し工程(ステップS9)における、焼戻し温度Tの上限は、好ましくはAc変態点であり、より好ましくは700℃である。焼戻し温度Tの下限は、好ましくは600℃であり、さらに好ましくは650℃である。
最終の焼戻し工程(ステップS9)以外の焼戻し工程(ステップS7)の条件は特に限定されないが、最終の焼戻し工程(ステップS9)と同様に、焼戻し温度はAc変態点以下であることが好ましい。
以上、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法の一例を説明した。この製造方法によれば、1103〜1206MPaの降伏強度を有し、ASTM E112−10に準拠した結晶粒度番号で8.5以上の旧オーステナイト粒を有し、耐水素脆化特性に優れた高強度低合金油井用継目無鋼管が得られる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Gの鋳片に対し、1250℃×30分の加熱後、熱間製管を実施し、外径244.48mm、肉厚13.84mmの継目無鋼管を製造した。表1の「−」は、該当する元素の含有量が不純物レベルであることを示す。
Figure 2018070970
熱間加工によって製造された継目無鋼管に対して、補熱炉で950℃に補熱してから水冷するインライン焼入れを実施し、その後、550℃で30分間焼戻した。その後さらに、表2に記載の熱処理を実施した。
Figure 2018070970
表2に示すように、No.1〜4、8〜15、及び18では、インライン焼入れ、焼戻しの後、さらに1回の再加熱焼入れ及び焼戻しを実施した。No.5〜7、16、及び17では、インライン焼入れ、焼戻しの後、さらに2回の再加熱焼入れ及び焼戻しを実施した。表2の「TP」の欄には、最終の焼戻しの焼戻しパラメータTPの値が記載されている。
[旧オーステナイト粒度測定]
最終の焼入れ後、最終の焼戻し前の各継目無鋼管に対して、実施形態で説明したBechet−Beaujard法を適用して旧オーステナイト粒を現出させ、ASTM E112−10に準じて粒度番号を調査した。
[引張試験]
最終の焼戻し後の各継目無鋼管から、API 5CTの規定に準拠してAPI丸棒試験片(試験片サイズ:平行部径8.9mm、G.L.36.5mm)を採取し、引張試験を実施して、降伏強度(YS)及び引張強度(TS)を求めた。0.2%オフセット耐力を降伏強度とした。
[HIC試験]
最終の焼戻し後の各継目無鋼管の耐水素脆化特性をNACE−TM0284に準拠したHIC試験を実施して評価した。具体的には、最終の焼戻し後の各継目無鋼管から、厚さ13.84mm(素材肉厚と同じ)、幅(円周方向)20mm、長さ100mmの試験片を採取した。試験片を4℃の温度環境下で、Solution B液(5.0wt%NaCl+2.5wt%CHCOOH+0.41wt%CHCOONa、ph:3.5)に分圧0.1barのHSガスを飽和させた試験液中に96時間(4日間)浸漬した。
試験後の試験片に対して超音波探傷(UT)を実施して最大割れ箇所を特定し、その部位を切断した。断面は、試験片の肉厚×幅(円周方向)の断面であった。切断された試験片を用いて、割れ長さ率CLR(=割れ長さ(mm)/試験片の幅(mm))を求めた。CLRが5%以下であることを目標とした。
なお、HIC試験では環境温度が低いほど、鋼中の水素濃度は高くなる。したがって、4℃の温度環境下で実施した本実施例のHIC試験は、室温でのHIC試験よりも過酷な環境での試験である。
結果を表3に示す。
Figure 2018070970
表3に示すように、製造した継目無鋼管は、いずれも焼戻しマルテンサイト相を主相とする組織を有していた。表3の「旧γ粒度」の欄には、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号が記載されている。また、「CLR」の欄が「−」となっているものは、HIC試験を実施しなかったことを示す。
表3に示すとおり、No.2、3、6、9及び12の継目無鋼管は、1103MPa以上の降伏強度を有し、かつCLRが5%以下であった。
No.1、5、8、及び11の継目無鋼管は、CLRが5%を超えた。これは、焼戻しパラメータTPの値が小さすぎ、降伏強度が高すぎたためと考えられる。
No.4、7、10、及び13の継目無鋼管は、降伏強度が1103MPa未満であった。これは、焼戻しパラメータTPの値が大きすぎたためと考えられる。
No.14〜17は、降伏強度が1103MPa未満であるか、CLRが5%を超えた。これらの鋼管は、化学組成が適切ではなかったため、降伏強度と耐水素脆化特性を両立できる焼戻し条件が存在しなかった。No.18(鋼G)は、Vを含有しなかったため、他の継目無鋼管と比較して焼戻しパラメータTPを大幅に低くしなければ、降伏強度を1103MPa以上にできなかった。
図2は、焼戻しパラメータTPと降伏強度YSとの関係を示す散布図である。白抜きの四角(□)は鋼A〜Dから製造された継目無鋼管のものであり、中実の丸(●)は鋼E、Fから製造された継目無鋼管のものである。図2から、鋼A〜Dから製造された継目無鋼管を焼戻しパラメータTPが18200〜18400になる条件で焼戻しすれば、降伏強度を1103〜1206MPaにできることがわかる。また、鋼A〜Dから製造された継目無鋼管は、鋼E、Fから製造された継目無鋼管と比較して、同じ水準の焼戻しパラメータで処理されたものであっても、より高い降伏強度が得られていることがわかる。
図3は、降伏強度YSと割れ長さ率CLRとの関係を示す散布図である。白抜きの丸(○)は鋼A〜Dから製造された継目無鋼管のものであり、中実の四角(■)は鋼E、Fから製造された継目無鋼管のものである。図3から、鋼A〜Dから製造された継目無鋼管の降伏強度を1206MPa以下にすれば、CLRを5%以下にできることがわかる。また、鋼A〜Dから製造された継目無鋼管は、鋼E、Fから製造された継目無鋼管と比較して、同じ水準の降伏強度であっても、より優れた耐水素脆化特性が得られていることがわかる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (10)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.20〜0.50%、
    Si:0.05〜1.00%、
    Mn:0.1〜1.0%、
    P :0.030%以下、
    S :0.0050%以下、
    Al:0.005〜0.1%、
    Cr:0.10〜1.20%、
    N :0.01%以下、
    Mo:1.1〜2.5%、
    Ti:0.002〜0.020%、
    Nb:0.050%以下、
    V :0.01〜0.30%、
    B :0.0050%以下、
    O :0.0050%以下、
    Ca:0〜0.0050%、
    Mg:0〜0.0050%、
    REM:0〜0.0050%、
    Cu:0〜1.0%、
    Ni:0〜1.0%、
    Co:0〜1.0%、
    W :0〜1.0%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    1103〜1206MPaの降伏強度を有し、
    前記化学組成が下記式(1)及び式(2)を満たし、
    ASTM E112−10に準拠したオーステナイト結晶粒度番号で8.5以上の旧オーステナイト粒を有する、耐水素脆化特性に優れた高強度低合金油井用継目無鋼管。
    Vc90≦1.0 (1)
    Mo/Cr≧2.0 (2)
    ただし、logVc90=2.94−0.75(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.45Cu+0.8Cr+2Mo)
    上記式中の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。logは常用対数である。
  2. 請求項1に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0010〜0.0050%、
    Mg:0.0010〜0.0050%、及び
    REM:0.0010〜0.0050%、
    からなる群から選択される1又は2以上の元素を含有する、高強度低合金油井用継目無鋼管。
  3. 請求項1又は2に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.01〜1.0%、及び
    Ni:0.01〜1.0%
    からなる群から選択される1又は2の元素を含有する、高強度低合金油井用継目無鋼管。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Co:0.01〜1.0%、及び
    W :0.01〜1.0%
    からなる群から選択される1又は2の元素を含有する、高強度低合金油井用継目無鋼管。
  5. 化学組成が、質量%で、C:0.20〜0.50%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.0050%以下、Al:0.005〜0.1%、Cr:0.10〜1.20%、N:0.01%以下、Mo:1.1〜2.5%、Ti:0.002〜0.020%、Nb:0.050%以下、V:0.01〜0.30%、B:0.0050%以下、O:0.0050%以下、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、REM:0〜0.0050%、Cu:0〜1.0%、Ni:0〜1.0%、Co:0〜1.0%、W:0〜1.0%、残部:Fe及び不純物である鋼素材を準備する工程と、
    前記鋼素材を熱間加工して鋼素管とする工程と、
    前記鋼素管を空冷以上の速度で室温まで冷却する工程と、
    前記冷却した鋼素管を焼戻しする工程と、
    前記焼戻しされた鋼素管をAc変態点以上1000℃以下の温度に再加熱して焼入れする工程と、
    前記焼入れされた鋼素管を再び焼戻しする工程とを備え、
    前記化学組成が下記式(1)及び式(2)を満たし、
    前記再び焼戻しする工程において、下記式(3)で定義される焼戻しパラメータTPが18200〜18400である、耐水素脆化特性に優れた高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法。
    Vc90≦1.0 (1)
    Mo/Cr≧2.0 (2)
    TP=(T+273)(log(t)+20) (3)
    ただし、logVc90=2.94−0.75(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.45Cu+0.8Cr+2Mo)
    上記式中の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。logは常用対数である。式(3)において、Tは焼戻し温度、tは焼戻し保持時間である。Tの単位は℃であり、tの単位は時間である。
  6. 請求項5に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0010〜0.0050%、
    Mg:0.0010〜0.0050%、及び
    REM:0.0010〜0.0050%、
    からなる群から選択される1又は2以上の元素を含有する、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法。
  7. 請求項5又は6に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.01〜1.0%、及び
    Ni:0.01〜1.0%
    からなる群から選択される1又は2の元素を含有する、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法。
  8. 請求項5〜7のいずれか一項に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Co:0.01〜1.0%、及び
    W :0.01〜1.0%
    からなる群から選択される1又は2の元素を含有する、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法。
  9. 請求項5〜8のいずれか一項に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法であって、
    前記熱間加工後、前記室温まで冷却する工程の前に、前記鋼素管をAc変態点以上の温度に補熱する工程をさらに備える、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法。
  10. 請求項5〜9のいずれか一項に記載の高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法であって、
    前記焼戻しする工程後、前記再加熱して焼入れする工程の前に、前記鋼素管を焼入れ焼戻しをする工程をさらに備える、高強度低合金油井用継目無鋼管の製造方法。
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