JP2018070834A - 樹脂成形体および樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

樹脂成形体および樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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雄 森田
泰行 高田
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泰行 高田
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信之 名畑
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Miki Masuda
幹 増田
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Katsumi Watanabe
克己 渡辺
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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、少量の導電材料で実用上十分な導電性、帯電防止特性を有した樹脂成形体を得ることである。
【解決手段】前記課題は、熱可塑性樹脂(A)とカーボンナノチューブ(B)とを含む樹脂成形体であって、樹脂成形体が厚さ3mmのプレートである際に、プレートの体積抵抗率が102〜107Ω・cmであり、プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から54〜63μmの範囲におけるカーボンナノチューブの占める面積率が5〜15%の範囲内であることを特徴とする樹脂成形体によって解決される。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブを含んでなる樹脂成形体およびその製造方法に関する。
従来から、電子・電気部材用の容器や、その他の包装材料としては、成形性に優れた樹脂材料が広く用いられている。しかしながら、このような樹脂材料である高分子材料は、一般的に絶縁特性を有しているため、静電気を帯びやすく、精密電気部材、特に半導体材料の導電回路に、電気放電による切断等の悪影響を及ぼす恐れがあることが知られている。そのため、電子・電気部材用の容器や包装材料には、導電性や帯電防止性を付与することが必要とされてきた。
樹脂材料に導電性を付与する方法として、金属を添加する方法が挙げられる。具体的には、金属を金属粉や金属繊維の形態で添加する方法が提案されているが、金属が腐食することにより電気・電気部材に悪影響を及ぼし、外観特性や表面平滑性を悪化させる問題があった。
このような問題を解決すべく、カーボン材料を導電材として樹脂材料に混合した複合材料が提案されてきた。従来広く使用されているカーボン材料としては、比較的太いカーボン繊維、粒子又はその集合体のカーボンブラック等が挙げられる。しかし、これらのカーボン材料は、十分な導電特性や帯電防止特性を得るためには、かなり多量に添加することが必要であり、多量に添加することにより分散性が悪化して、脱落を生じたり、導電性にムラが生じたり、放電したりするという問題を生じる。一方、添加量が少なすぎると、不均一性が増して導電性が得られなくなる問題を生じる。
特に、従来公知の比較的径の大きいカーボン繊維や、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等を用いると、十分な導電特性や帯電防止特性を確保しながら同時にカーボン材料の脱落を防止することは困難であった。
そこで、カーボン材料の不均一性を解消するための技術として、カーボンナノチューブを含有させた樹脂組成物が提案されている。しかし、カーボンナノチューブはアスペクト比が非常に大きく、複雑に絡み合った二次粒子の状態のものが多い。そのため分散の難易度が高く、特にプラスチック中への分散は非常に困難である。そして、カーボンナノチューブの分散に、顔料の分散で一般的なワックスを用いた分散方法を適用した場合、カーボンナノチューブが低濃度のときは、分散できるが、高濃度のときはワックスがカーボンナノチューブの絡まりの中に保持されてしまい、カーボンナノチューブを樹脂中に分散できなかった。そのため、低濃度の樹脂組成物しか作製することができなかった。
カーボンナノチューブを樹脂中に分散させる技術としては、カーボンナノチューブをプラズマで処理することにより絡まりをほぐし樹脂へ分散させる方法が知られている。(特許文献1参照)。また、カーボンナノチューブとシリコン樹脂の混合物を樹脂へ分散させる技術も知られている(特許文献2、3参照)。イオン性液体とカーボンナノチューブを主成分とし導電性を発現させる技術(特許文献4参照)や、マトリックスポリマーと電子導電性繊維状充填剤とイオン性液体を成分とし電子導電性繊維状充填剤の分散性に優れ、かつ、電気抵抗のばらつきが小さくする技術も知られている(特許文献5参照)。
また、カーボンナノチューブを配合した樹脂組成物は射出成形した場合、導電性が出にくい問題がある。射出成形ではどうしても成形体表面に樹脂の存在比率が高い層(スキン層)が形成されてしまう問題がある。一方、カーボンナノチューブの成形物中の高濃度化は、コストアップや加工の難易度が増大してしまう問題がある。例えば、溶融したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂100部中にカーボンナノチューブを8部(高濃度)混練した場合、樹脂中にカーボンナノチューブが均一に分散しづらく、成形体の物性が低下してしまう。そこで、成形条件等による問題解決が図られている。金型温度の高温化、成形温度の高温化、射出速度の低速度化等である。しかしながら、成形サイクル長期化、表面光沢の消失、物性が劣化する等の様々な問題が発生してしまう。また、ポリマーアロイ系をつくり2種の樹脂を海島構造もしくは共連続状態の連続層へカーボンナノチューブを選択的に配合することで低濃度でも導電性の発現をすることができ、射出成形においても高い導電性を発現する技術等が知られている(特許文献6、7参照)。しかしながら、この方法ではポリマーアロイを形成する2種以上の樹脂が非相溶である必要性があるため物性の低下が著しく、またカーボンナノチューブを如何にして分散させるかについては全く考慮されていない。
特開2003−306607号公報 特開2007−154100号公報 特開2007−231219号公報 特開2004−255481号公報 特開2005−220316号公報 特開2005−187811号公報 特開2010−024261号公報
上述した従来技術においては、十分な導電特性を得ながら、カーボンナノチューブを均一に樹脂中に分散することができなかった。そこで、本発明においては少量の導電材料で実用上十分な導電性、帯電防止特性を有した樹脂成形体を得ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブを含む樹脂成形体の深さ方向におけるカーボンナノチューブの存在比率が高い樹脂成形体を作製することにより、少量のカーボンナノチューブで導電性に優れた樹脂成形体を得ることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は熱可塑性樹脂(A)とカーボンナノチューブ(B)とを含む樹脂成形体であって、樹脂成形体が厚さ3mmのプレートである際に、プレートの体積抵抗率が102〜107Ω・cmであり、プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から54〜63μmの範囲におけるカーボンナノチューブの占める面積率が5〜15%の範囲内であることを特徴とする樹脂成形体に関する。
また、本発明はさらに、水不溶性有機表面改質剤(C)を含むことを特徴とする前記樹脂成形体に関する。
また、本発明は熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、水不溶性有機表面改質剤(C)が0.05〜1.5質量部含まれることを特徴とする前記樹脂成形体に関する。
また、本発明は熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、カーボンナノチューブ(B)が1〜5質量部含まれることを特徴とする前記樹脂成形体に関する。
また、本発明はカーボンナノチューブ(B)の直径が8〜20nmの範囲内であることを特徴とする前記樹脂成形体に関する。
また、本発明は熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、水不溶性有機表面改質剤(C)とを含み、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、水不溶性有機表面改質剤(C)を0.05〜1.5質量部含む樹脂組成物を50〜350℃で成形することを特徴とする樹脂成形体の製造方法に関する。
本発明の樹脂成形体により、少量の導電材料で実用上十分な導電性、帯電防止特性を有した樹脂成形体を得ることができる。したがって、樹脂の成形性や樹脂成形体の機械的特性を損なうことなく、優れた帯電防止性、導電性樹脂成形体を実現することができる。
図1は、カーボンナノチューブの占める面積率を評価する際の概略図を示す。
以下、本発明の樹脂成形体について詳しく説明する。
熱可塑性樹脂(A)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)はカーボンナノチューブ(B)を分散安定化する能力があり、成形可能なものであれば特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂(A)は、単独または2種以上を併用できる。
カーボンナノチューブ(B)
カーボンナノチューブ(B)は、グラファイトの1枚面を巻いて円筒状にした形状を有しており、そのグラファイト層が1層で巻いた構造を持つ単層カーボンナノチューブ、2層またはそれ以上で巻いた多層カーボンナノチューブでも、これらが混在するものであっても良いが、コスト面や着色効果の面から多層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、カーボンナノチューブ(B)の側壁がグラファイト構造ではなく、アモルファス構造をもったカーボンナノチューブ(B)を用いることもできる。
カーボンナノチューブ(B)の形状は、針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン、カップ積層型)、トランプ状(プレートレット)、コイル状の形態などいずれの形態を有するものであってもよい。具体的には、例えばグラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ、カーボンナノファイバーなどを挙げることができる。これらの形態として1種または2種以上を組み合わせた形態において使用することができる。本発明は魚骨状(フィッシュボーン、カップ積層型)、トランプ状(プレートレット)、コイル状以外の形態であることが好ましい。魚骨状、トランプ状の場合は、樹脂組成物・成形体の製造時に発生するせん断応力によりカップ・トランプ状グラファイトシートの積層面(x−y面)よりカーボンナノチューブ(B)の切断が起こり、樹脂中に十分なネットワーク構造を形成できず、導電性の低下に繋がる恐れがある。コイル状の場合も同様に、製造時にその3次元構造が破壊されやすく、導電性が低下する可能性がある。
本発明に用いられるカーボンナノチューブ(B)は、一般にレーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法、燃焼法などで製造できるが、どのような方法で製造したカーボンナノチューブ(B)でも構わない。例えば、触媒を用いて、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気中、500〜1000℃にて、炭素源として炭化水素および/またはアルコールとを接触反応させてカーボンナノチューブ(B)を製造することができる。
カーボンナノチューブ(B)の炭素源としての原料ガスは、従来公知の任意のものを使用でき、例えば、炭素を含むガスとしてメタン、エチレン、プロパン、ブタンやアセチレン等の炭化水素や一酸化炭素、アルコールなどを用いることができるが、特に使いやすさの理由により、炭化水素やアルコールを用いることが望ましい。
触媒は、必要に応じて、還元性ガス雰囲気下で活性化した後、又は還元性ガスと共に、酸素濃度1体積%以下の雰囲気中、炭素源としての原料ガスと接触反応させて製造することが好ましい。酸素濃度1体積%以下の雰囲気は特に制限はないが、アルゴンガスのような希ガスや窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気が好ましい。活性化に使用する還元性ガスとしては、水素、アンモニア等を用いることができるが、特に水素が好ましい。
触媒としては、従来公知の様々な金属酸化物を使用することができる。例えば、コバルト、ニッケルや鉄等の活性成分を含む金属とマグネシウム、アルミニウム等の担持成分を含む金属を組み合わせた触媒が挙げられる。
カーボンナノチューブ(B)の直径は、分散の容易さや色相の観点から、1〜500nmが好ましく、8〜20nmがより好ましい。
カーボンナノチューブ(B)の直径は、走査透過電子顕微鏡によって、カーボンナノチューブ(B)を観測し、観測写真において、任意の100個のカーボンナノチューブ(B)を選び、それぞれの外径を計測し、その数平均値を求めることにより算出することができる。
カーボンナノチューブ(B)の繊維長は、分散の容易さや色相の観点から、0.1〜150μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
カーボンナノチューブ(B)の炭素純度は、カーボンナノチューブ(B)100質量部中、85質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上がさらに好ましい。
本発明でカーボンナノチューブ(B)は、一般的に二次粒子として存在している。この二次粒子形状は、例えば一般的な一次粒子であるカーボンナノチューブ(B)が複雑に絡み合っている状態でもよく、ほぐれ易くカーボンナノチューブ(B)を直線状にしたものの集合体であっても良い。直線状のカーボンナノチューブ(B)の集合体である二次粒子は絡み合っているものと比べると分散性が良いので好ましい。
カーボンナノチューブ(B)は、表面処理を行ったものや、カルボキシル基などの官能基を付与させたカーボンナノチューブ誘導体であってもよい。また、有機化合物や金属原子、フラーレン等を内包させたカーボンナノナノチューブ(B)等も用いることができる。
樹脂成形体(D)中のカーボンナノチューブ(B)の量は、用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、カーボンナノチューブ(B)が0.01〜30質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲である。特に斯かる範囲であれば、導電性に優れた樹脂成形体が得られる。
樹脂成形体(D)には、本発明の目的を阻害しない範囲であればカーボンナノチューブ(B)とカーボンブラックとを併用することができる。カーボンブラックの具体例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック並びにナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下で部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生するカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理したカーボンブラックなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独でも2種類以上併用しても良い。
カーボンブラックの使用量はカーボンナノチューブ(B)100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜25質量部がさらに好ましい。
カーボンナノチューブ(B)は水不溶性有機表面改質剤(C)で被覆されていることが好ましい。カーボンナノチューブ(B)の被覆処理は、カーボンナノチューブ(B)に水不溶性有機表面改質剤(C)を添加し、撹拌混合を行うことにより得られる。カーボンナノチューブ(B)が微細な状態で存在するカーボンナノチューブ(B)の水系スラリーに水不溶性有機表面改質剤(C)を添加するのが、水不溶性有機表面改質剤(C)を均質、かつ、効果的に被覆できるため好ましい。撹拌混合の温度は常温から水の沸点までの間で任意に設定できる。撹拌混合後、水不溶性有機表面改質剤(C)によっては、pHを酸性、あるいは、アルカリ性にし、あるいは、金属塩、アミン塩とし、水不溶性有機表面改質剤(C)を顔料に均質に析出させ被覆するのが好ましいが、この操作を用いなくても、物理吸着により十分効果的に被覆が可能である。被覆処理後は、常法による濾過、水洗工程で回収する。水不溶性有機表面改質剤(C)で被覆されたカーボンナノチューブ(B)はペースト状で使用しても良いが、乾燥、粉砕を行い、粉末状で使用することが好ましい。
水不溶性有機表面改質剤(C)
本発明に用いられる水不溶性有機表面改質剤(C)は熱可塑性樹脂(A)よりも軟化点の低い水に不溶性の樹脂である。樹脂成形体の作製時に熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(A)よりも軟化点の低い水不溶性有機表面改質剤(C)を使用すると、部分非相溶になる。その結果、カーボンナノチューブは軟化点の低い水不溶性有機表面改質剤(C)中に偏在しやすい。
水不溶性有機表面改質剤(C)としては、軟化点が60〜100℃のポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体に代表される汎用プラスチックを熱可塑性樹脂(A)として用いた場合、成形時の加工温度が160〜280℃程度であるため、軟化点が50〜100℃の範囲にある天然樹脂やロジン誘導体を使用することが好ましい。軟化点が100〜150℃のポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール樹脂、ポリエステル系樹脂に代表されるエンジニアリングプラスチックを熱可塑性樹脂(A)として用いた場合、成形時の加工温度が230〜300℃であるため、軟化点が50〜250℃の範囲にある脂肪族系カルボン酸もしくはこれらのアミン塩もしくはアルキルエステル、芳香族系カルボン酸もしくはこれらのアミン塩もしくはアルキルエステル、合成樹脂、天然樹脂、ロジン誘導体、ワニス類、高分子分散剤、有機顔料誘導体等から選ばれる少なくとも1種を水不溶性有機表面改質剤(C)として使用することができる。
軟化点が150〜350℃のポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックを熱可塑性樹脂(A)として用いた場合、成形時の加工温度が250〜400℃であるため、軟化点が50〜250℃の範囲にある脂肪族系カルボン酸もしくはこれらのアミン塩もしくはアルキルエステル、芳香族系カルボン酸もしくはこれらのアミン塩もしくはアルキルエステル、合成樹脂、天然樹脂、ロジン誘導体、ワニス類、高分子分散剤、有機顔料誘導体等から選ばれる少なくとも1種を水不溶性有機表面改質剤(C)として使用することができる。
水不溶性有機表面改質剤(C)は、常温において液体でも固体でもよいが、加熱により液体となるものが好ましく、低粘度になるものがより好ましい。
有機顔料誘導体としては、下記一般式(2)で表される酸性官能基を有する有機色素誘導体及び、下記一般式(1)で表される酸性官能基を有するトリアジン誘導体が挙げられる。
一般式(1)
Figure 2018070834
式中の記号は下記の意味を表す。
1;有機色素残基、またはアントラキノン残基、または置換基を有していてもよい複素環、または置換基を有していてもよい芳香族環
1:−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基、−X1−R3、−X2−Y1−Z1(R2は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基を表す。)
1;−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X3−Y1−X4−(X3及びX4はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表す。)
2;−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−または−NHSO2
1;炭素数1〜20で構成された置換基を有してもよいアルキレン基、あるいは置換基を有してもよいアルケニレン基、あるいは置換基を有してもよいアリーレン基
1;−SO3M、−COOM(Mは1〜3価のカチオンの1当量を表す。)
上記一般式(1)のQ1における有機色素残基としてはフタロシアニン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、トリフェニルメタン系色素等の顔料または染料が挙げられる。
上記一般式(1)のQ1における複素環または芳香族環としては例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン等が挙げられる。
一般式(2)
2−(−X5−Z2n
式中の記号は下記の意味を表す。
2;有機色素残基またはアントラキノン残基
5;直接結合、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X6−Y2−X7−(X6及びX7はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表し、Y2は置換基を有していてもよいアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
2;−SO3M、−COOM(Mは1〜3価のカチオンの1当量を表す。)
n;1〜4の整数
上記一般式(2)のQ2における有機色素残基としてはフタロシアニン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジコ系色素、イソインドリノン系色素、トリフェニルメタン系色素等の顔料または染料が挙げられる。
合成樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン系アイオノマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ABS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系プラスチック、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイト、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、アニリン重合体等がある。
天然樹脂の例としては、天然ゴム、ゼラチン、ロジン、セラック、多糖類、ギルソナイト等が挙げられる。
ロジン誘導体の例としては、重合ロジン、ロジンアミン、ロジンエステル、酸化ロジン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノール等が挙げられる。ロジンアルキレンオキシド付加物としては、一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
一般式(3)
Q−(CH2−CHR−O−)p−H
(ただし、式中、Qはロジン残基、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、pは1〜30の整数を表す。)
ロジンアルキレンオキシド付加物のロジンとしては、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジンが挙げられる。また、アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシドあるいはこれらの混合物が好ましい。アルキレンオキシドの付加モル数はロジンのカルボキシル基1当量当たり1〜30モルが好ましい。
ロジンアルキド付加物としては、一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
一般式(4)
Q−(A)q−H
(ただし、式中、Qはロジン残基、Aはアルキド樹脂残基、qは1〜30の整数を表す。)
ロジンアルキド付加物のロジンとしては、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジンが挙げられる。また、アルキドとしては、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、無水フタル酸、無水マレイン酸等の多価カルボン酸、および、アマニ油、桐油、大豆油等の乾性油からなるポリエステルで常法により合成されたものが挙げられる。アルキドの付加モル数は、ロジンのカルボキシル基1当量当り1〜30モルが好ましい。
ロジン変性フェノールとしては、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジンで例示されるロジン類、フェノール、p−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、クレゾール、ビスフェノールA等で例示されるアルデヒド類、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール等で例示される多価カルボン酸類を常法により200〜300℃で縮合して得られるものである。
不均化ロジンは、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンの不均化反応生成物である。本発明で用いる不均化ロジンは、原料ロジンを公知の不均化反応に供することにより容易に製造できる。即ち、ロジンを不均化触媒の存在下に加熱反応させることにより行う。不均化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等の各種公知のものを用いることができる。該触媒の使用量は、ロジンに対して通常0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%であり、反応温度は100〜300℃、好ましくは150〜290℃である。不均化ロジンとして、例えば、ロンヂス(不均化ロジン、R、荒川化学株式会社製)、ロンヂス(不均化ロジン、K25、荒川化学株式会社製)、ロンヂス(不均化ロジン、K80、荒川化学株式会社製)、ロンヂス(不均化ロジン、N18、荒川化学株式会社製)が使用できる。
ワニス類としては、オフセットインキワニス、グラビアインキワニス、塗料ワニス、水系カラー用ワニス等が挙げられる。具体的には、オフセットインキワニスとしては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂、または、これらの乾性油変性樹脂等20〜50質量部と、アマニ油、桐油、大豆油等の乾性油0〜30質量部、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α―オレフィン等の溶剤10〜60質量部からなるものが挙げられる。
グラビアインキワニスとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エチレン―酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ギルソナイト、ダンマル、セラック等またはこれらの混合物、あるいは上記樹脂またはこれらの混合物を水溶性化した水溶性樹脂、またはエマルション樹脂10〜50質量部と炭化水素、アルコール、ケトン、エーテルアルコール、エーテル、エステル、水等の溶剤30〜80質量部からなるものが挙げられる。
塗料ワニスとしては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ゴム、塩化ビニル、合成樹脂エマルション、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等またはこれらの混合物、あるいは上記樹脂またはこれらの混合物を水溶性化した水溶性樹脂、またはエマルション樹脂20〜80質量部と炭化水素、アルコール、ケトン、エーテルアルコール、エーテル、エステル、水等の溶剤10〜60質量部からなるものが挙げられる。
高分子分散剤の例としては、スルホン酸アミド系高分子分散剤、ヒドロキシステアリン酸系高分子分散剤、ε―カプロラクタム系高分子分散剤等が挙げられる。具体的には、12−ヒドロキシステアリン酸縮合物、ルーブリゾール社製ソルスパーズ3000、170000、24000、ビックケミー社製BYK−160、161、162、181等が挙げられる。
樹脂成形体(D)
本発明の樹脂成形体(D)は熱可塑性樹脂(A)とカーボンナノチューブ(B)を含む成形体である。また、必要に応じて、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、分散剤などの添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
樹脂成形体(D)は熱可塑性樹脂(A)とカーボンナノチューブ(B)とを混合や溶融混練等の分散を行った後、成形加工することが好ましい。
混合装置としては、例えばヘンシェルミキサー、タンブラーやディスパー等で混合し、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等を挙げることができる。本発明では二軸押出機を用いることが好ましい。
樹脂成形体(D)は水不溶性有機表面改質剤(C)が含まれていることが好ましい。樹脂成形体(D)中の水不溶性有機表面改質剤(C)の量は、樹脂成形体(D)の用途に合わせ特に制限はないが、通常は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、水不溶性有機表面改質剤(C)が0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜1.5質量部がさらに好ましい。
本発明の樹脂成形体(D)は、カーボンナノチューブ(B)を高濃度に含有し、成形時に被成形樹脂(ベース樹脂)で希釈されるマスターバッチであっても良いし、カーボンナノチューブ(B)の濃度を低濃度に含有し、被成形樹脂で希釈せずにそのままの組成で成形されるコンパウンドであっても良い。また、これらを加工した、板状、棒状、繊維、チューブ、パイプ、ボトル、フィルム等の成形体であっても良い。
樹脂成形体(D)は熱可塑性樹脂(A)、カーボンナノチューブ(B)と必要に応じて、さらに被成形樹脂を配合し、50〜350℃に設定した成形機にて溶融混合後に成形体の形状を形成し冷却することで得ることができる。成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、フィルム成形、カレンダー成形、紡糸等を用いることができる。
本発明の樹脂成形体(D)を製造する場合、例えば射出成形する場合、水不溶性有機表面改質剤(C)は、比較的金属への親和性が高く、溶融粘度が低いため、金型付近に偏在しやすい。そのため、成形後は成形体の表面に水不溶性有機表面改質剤(C)が偏在しやすい。その結果、水不溶性有機表面改質剤(C)中に偏在しているカーボンナノチューブ(B)が、成形体の表面付近に偏在するため、導電性が向上しやすい。
本発明の樹脂成形体(D)深さ1μmの部分におけるカーボンナノチューブの占める面積率は樹脂成形体(D)の断面積の5〜15%であり、7〜10%であることが好ましい。
カーボンナノチューブの占める面積率(以下、カーボンナノチューブ面積率と記す。)は、樹脂成形体(D)を厚さ3mmのプレートにし、ミクロトームを用いて、表面から1°傾斜で切削して表出させた前記プレートの切削開始点から54〜63μmの範囲を走査型電子顕微鏡にて、1万倍の倍率にて観察して求めた深さ方向1μmの部分における直径1μm未満の繊維形状部をCNTとし、画像解析ソフトでCNTの画素数を測定領域全体の画素数で除した後100倍することにより計算することができる。
カーボンナノチューブ面積率=(直径1μm未満の繊維状部の画素数)÷(測定領域全体の画素数)×100(%)
本発明の樹脂成形体(D)の体積抵抗率は102〜107Ω・cmである。特に斯かる範囲であれば、導電性や帯電防止特性に優れた樹脂成形体(D)が得られる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。例中、特に断わりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味する。また、「カーボンナノチューブ」を「CNT」、「カーボンブラック」を「CB」と略記することがある。
<物性の測定方法>
後述の各実施例及び比較例において使用された射出プレートの物性(体積抵抗率、CNT面積率、カーボンブラックの占める面積率)、カーボンナノチューブの直径およびカーボンブラックの平均粒径は、以下の方法により測定した。
<体積抵抗率>
射出成形した各プレートの幅50mm×長さ75mm×厚さ3mmの試験片を、絶乾状態(水分率0.1%以下)で測定に供した。体積抵抗率はJIS K 7194に準拠し、三菱化学社製(ロレスターGP装置)を用いて測定した。測定用プローブとしては、三菱化学社製の四探針プローブ(ESPプローブ、MCP−TP08P)を用いた。体積抵抗率が高く、上記三菱化学社製(ロレスターGP装置)により測定不能な場合については、三菱化学社製(ハイレスターUP装置)を用いて測定した。測定用プローブとしては、2ピンタイプのUVプローブ(MCP−HTP11)を用いた。
<CNT面積率>
射出プレートをミクロトームを用いて、表面から1°傾斜で切削して表出させた平滑な断面部位を走査透過電子顕微鏡にて観察し、直径1μm未満の繊維形状部をCNTとし、画像解析ソフト(WinRooF、三谷商事株式会社)でCNTの画素数を測定領域全体の画素数で除した後、100倍して射出プレート表面から深さ1μm部分における表出したCNT面積率を計算した。
<カーボンブラックの占める面積率(以下、カーボンブラック面積率と記す。)>
射出プレートをミクロトームを用いて、表面から1°傾斜で切削して表出させた平滑な断面部位を走査透過電子顕微鏡にて観察し、粒径100nm未満の粒状部をカーボンブラックとし、画像解析ソフト(WinRooF、三谷商事株式会社)でカーボンブラックの画素数を測定領域全体の画素数で除した後、100倍して射出プレート表面から深さ1μm部分における表出したカーボンブラック面積率を計算した。
<カーボンナノチューブの直径>
走査透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−6700M)によって、得られたカーボンナノチューブを観測した。観測写真において、任意の100個のカーボンナノチューブを選び、それぞれの外径を計測し、その数平均値を求めることによりカーボンナノチューブの直径(nm)を算出した。
<カーボンブラックの平均粒径>
走査透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−6700M)によって、カーボンブラックを観測した。観測写真において、任意の100個のカーボンブラックを選び、それぞれの外径を計測し、その数平均値を求めることにより、カーボンブラックの平均粒径(nm)を算出した。
<カーボンナノチューブ合成用触媒およびカーボンナノチューブの製造例>
後述の各実施例及び比較例において使用されたカーボンナノチューブ合成用触媒およびカーボンナノチューブは以下の方法により作製した。
<カーボンナノチューブ合成用触媒(A)の作製>
水酸化コバルト74部、担持成分としての酢酸マグネシウム・四水和物172部および助触媒成分としての炭酸マンガン10部をビーカーに秤取り、均一になるまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、190±5℃の温度で30分間乾燥させて水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(A)の前駆体を得た。得られたカーボンナノチューブ合成用触媒(A)の前駆体100部を耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500±5℃雰囲気下で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(A)を得た。
<カーボンナノチューブ合成用触媒(B)の作製>
水酸化コバルト74部、担持成分としての酢酸マグネシウム・四水和物172部および助触媒成分としての酢酸マンガン・四水和物20部をビーカーに秤取り、均一になるまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、190±5℃の温度で30分間乾燥させて水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(B)の前駆体を得た。得られたカーボンナノチューブ合成用触媒(B)の前駆体100部を耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500±5℃雰囲気下で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(B)を得た。
<カーボンナノチューブ合成用触媒(C)の作製>
酢酸コバルト・四水和物200部、担持成分としての酢酸マグネシウム・四水和物172部、助触媒成分として酢酸マンガン・四水和物20部をビーカーに秤取り、均一になるまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、190±5℃の温度で30分間乾燥させて水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(C)の前駆体を得た。得られたカーボンナノチューブ合成用触媒(C)の前駆体100部を耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500±5℃雰囲気下で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(C)を得た。
<カーボンナノチューブ(A)の作製>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ合成用触媒(A)1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積%以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心部温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、毎分0.1Lの流速で1分間、水素ガスを反応管内に導入し、触媒を活性化処理した。その後、炭素源としてエチレンガスを毎分1Lの流速で反応管内に導入し、1時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、反応管内の温度を100℃以下になるまで冷却し、得られたカーボンナノチューブを採取した。得られたカーボンナノチューブは、80メッシュの金網で粉砕ろ過した。
<カーボンナノチューブ(B)の作製>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ合成用触媒(B)1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積%以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心部温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、毎分0.1Lの流速で1分間、水素ガスを反応管内に導入し、触媒を活性化処理した。その後、炭素源としてエチレンガスを毎分1Lの流速で反応管内に導入し、1時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、反応管内の温度を100℃以下になるまで冷却し、得られたカーボンナノチューブを採取した。得られたカーボンナノチューブは、80メッシュの金網で粉砕ろ過した。
<カーボンナノチューブ(C)の作製>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ合成用触媒(C)1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積%以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心部温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、毎分0.1Lの流速で1分間、水素ガスを反応管内に導入し、触媒を活性化処理した。その後、炭素源としてエチレンガスを毎分1Lの流速で反応管内に導入し、1時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、反応管内の温度を100℃以下になるまで冷却し、得られたカーボンナノチューブを採取した。得られたカーボンナノチューブは、80メッシュの金網で粉砕ろ過した。
<ロジン処理カーボンナノチューブ(AR5)の作製>
カーボンナノチューブ(A)5部、水不溶性有機表面改質剤(C)としてロンヂス(不均化ロジン、K−25(不揮発分24.5〜25.5%)、軟化点70〜80℃、荒川化学株式会社製)1.05部、イオン交換水443.95部を450mLのSMサンプル瓶(株式会社三商製)に秤りとり、超音波ホモジナイザー(Advanced Digital Sonifer(登録商標)、MODEL 450DA、BRANSON社製)を使用し、振幅50%で2分間処理を行った。ペースト状になったCNT分散液を500mLのガラスビーカーに移し、スターラーで撹拌しながら25%塩酸を5部滴下した。その後、ビフネルロートを用いて、ペーストの吸引濾過を行った。得られた固形物を1Lのガラスビーカーに移し、イオン交換水1000部を投入し、スターラーで15分間撹拌した。再度ビフネルロートを用いて、ペーストの吸引濾過を行い、濾過後の固形物にイオン交換水200部を注いだ。得られた固形物を樹脂性のバットに移し、80℃の熱風オーブンで2時間乾燥した。乾燥後の粉末を80メッシュの金網で粉砕し、ロジン処理カーボンナノチューブ(AR5)とした。
<ロジン処理カーボンナノチューブ(AR10)の作製>
カーボンナノチューブ(A)5部、水不溶性有機表面改質剤(C)としてロンヂス(不均化ロジン、K−25(不揮発分24.5〜25.5%)、軟化点70〜80℃、荒川化学株式会社製)2.22部、イオン交換水442.78部を450mLのSMサンプル瓶(株式会社三商製)に秤りとり、超音波ホモジナイザー(Advanced Digital Sonifer(登録商標)、MODEL 450DA、BRANSON社製)を使用し、振幅50%で2分間処理を行った。ペースト状になったCNT分散液を500mLのガラスビーカーに移し、スターラーで撹拌しながら25%塩酸を5部滴下した。その後、ビフネルロートを用いて、ペーストの吸引濾過を行った。得られた固形物を1Lのガラスビーカーに移し、イオン交換水1000部を投入し、スターラーで15分間撹拌した。再度ビフネルロートを用いて、ペーストの吸引濾過を行い、濾過後の固形物にイオン交換水200部を注いだ。得られた固形物を樹脂性のバットに移し、80℃の熱風オーブンで2時間乾燥した。乾燥後の粉末を80メッシュの金網で粉砕し、ロジン処理カーボンナノチューブ(AR10)とした。
<ロジン処理カーボンナノチューブ(AR25)の作製>
カーボンナノチューブ(A)5部、水不溶性有機表面改質剤(C)としてロンヂス(不均化ロジン、K−25(不揮発分24.5〜25.5%)、軟化点70〜80℃、荒川化学株式会社製)6.67部、イオン交換水438.33部を450mLのSMサンプル瓶(株式会社三商製)に秤りとり、超音波ホモジナイザー(Advanced Digital Sonifer(登録商標)、MODEL 450DA、BRANSON社製)を使用し、振幅50%で2分間処理を行った。ペースト状になったCNT分散液を500mLのガラスビーカーに移し、スターラーで撹拌しながら25%塩酸を5部滴下した。その後、ビフネルロートを用いて、ペーストの吸引濾過を行った。得られた固形物を1Lのガラスビーカーに移し、イオン交換水1000部を投入し、スターラーで15分間撹拌した。再度ビフネルロートを用いて、ペーストの吸引濾過を行い、濾過後の固形物にイオン交換水200部を注いだ。得られた固形物を樹脂性のバットに移し、80℃の熱風オーブンで2時間乾燥した。乾燥後の粉末を80メッシュの金網で粉砕し、ロジン処理カーボンナノチューブ(AR25)とした。
(実施例1)
カーボンナノチューブ(A)4部、および熱可塑性樹脂としてPET樹脂(エチレングリコール―テレフタル酸共重合体、MA−2101、軟化点100〜150℃、ユニチカ社製)100部をスーパーミキサー(カワタ社製)に投入し、25℃にて1分間撹拌して混合物を得た。次いで、前記混合物を二軸押出し機(日本プラコン社製)に投入し、250℃で押出し、ペレタイザーでカットした。その後、射出成形機(東芝機械製IS−100F型)を用いて射出成形を行い、縦100mm×横100mm×厚さ3mmの射出プレートを作製し、樹脂成形体1とした。
(実施例2〜7)
実施例1で使用したカーボンナノチューブ(A)の替わりに、表1に記載したカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの添加量に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、樹脂成形体2〜7を作製した。
Figure 2018070834
(実施例8〜14)
表2に実施例1〜7で作製した樹脂成形体の評価結果を示す。導電性は体積抵抗率が1.0×102〜9.9×104Ω・cmかつCNT面積率が5.0〜15.0%のものを++(優良)、体積抵抗率が1.0×105〜1.0×107Ω・cmかつCNT面積率が5.0〜15.0%のものを+(良好)とした。
Figure 2018070834
(比較例1)
ケッチェンブラックEC300J(カーボンブラック、ライオン社製)4部、およびP
ET樹脂(エチレングリコール―テレフタル酸共重合体、MA−2101、ユニチカ社製)100部をスーパーミキサー(カワタ社製)に投入し、25℃にて1分間撹拌して混合物を得た。次いで、前記混合物を二軸押出し機(日本プラコン社製)に投入し、250℃で押出し、ペレタイザーでカットした。その後、射出成形機(東芝機械製IS−100F型)を用いて射出成形を行い、縦100mm×横100mm×厚さ3mmの射出プレートを作製し、樹脂成形体8とした。
(比較例2〜4)
比較例1で使用したケッチェンブラックEC300J(カーボンブラック、ライオン社
製)の添加量を表3に記載した値に変更した以外は比較例1と同様の方法により、樹脂成形体9〜11を作製した。
Figure 2018070834
(比較例5〜8)
表4に比較例1〜4で作製した樹脂成形体の評価結果を示す。導電性は体積抵抗率が1.0×102〜9.9×104Ω・cmかつカーボンブラック面積率が5.0〜15.0%のものを++(優良)、体積抵抗率が1.0×105〜1.0×107Ω・cmかつカーボンブラック面積率が5.0〜15.0%のものを+(良好)とした。体積抵抗率が1.0×102〜1.0×107Ω・cmの範囲から外れるもの、またはカーボンブラック面積率が5.0〜15.0%の範囲から外れるものを−(不良)とした。
Figure 2018070834
上記実施例では、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブを含む樹脂成形体を用いた。比較例では、カーボンブラックを使用した樹脂成形体を用いた。実施例では比較例に比べて、少量で高い導電性を有する樹脂成形体が得られた。以上により、本発明は少量の導電材料で実用上十分な導電性、帯電防止特性を有した樹脂成形体を得られることが明らかとなった。
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
1 プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から0〜9μmの範囲における部分
2 プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から9〜18μmの範囲における部分
3 プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から18〜27μmの範囲における部分
4 プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から27〜36μmの範囲における部分
5 プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から36〜45μmの範囲における部分
6 プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から45〜54μmの範囲における部分
7 プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から54〜63μmの範囲における部分

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂(A)とカーボンナノチューブ(B)とを含む樹脂成形体であって、樹脂成形体が厚さ3mmのプレートである際に、プレートの体積抵抗率が102〜107Ω・cmであり、プレートの表面から1°傾斜で切削して表出させた断面の切削開始点から54〜63μmの範囲におけるカーボンナノチューブの占める面積率が5〜15%の範囲内であることを特徴とする樹脂成形体。
  2. さらに、水不溶性有機表面改質剤(C)を含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体。
  3. 熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、水不溶性有機表面改質剤(C)が0.05〜1.5質量部含まれることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形体。
  4. 熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、カーボンナノチューブ(B)が1〜5質量部含まれることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の樹脂成形体。
  5. カーボンナノチューブ(B)の直径が8〜20nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の樹脂成形体。
  6. 熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、水不溶性有機表面改質剤(C)とを含み、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、水不溶性有機表面改質剤(C)を0.05〜1.5質量部含む樹脂組成物を50〜350℃で成形することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
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