以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る音発生器の外観斜視図である。本実施の形態に係る音発生器は、スマートフォン等の携帯電話機10と、圧電振動部60と、弾性部材70とを有する。後述するように、携帯電話機10は、圧電振動部60に荷重を与える錘(音発生器の錘)として作用するものである。携帯電話機10は、外観形状が概略長方形状を成す筐体20を備える。筐体20には、携帯電話機10の前面側にパネル30及び入力部40が配置されており、パネル30の下側に図1にパネル30の一部を切り欠いて示すように、表示部50が保持されている。また、筐体20の裏面側は、バッテリパックやカメラユニット等が搭載されて、バッテリリッド21で覆われている。
パネル30は、接触を検出するタッチパネル、または表示部50を保護するカバーパネル等からなり、例えばガラス、又はアクリル等の合成樹脂により形成される。パネル30は、例えば長方形状である。パネル30は、平板であってもよいし、表面が滑らかに傾斜する曲面パネルであってもよい。パネル30は、タッチパネルである場合、利用者の指、ペン、又はスタイラスペン等の接触を検出する。タッチパネルの検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(又は超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式を用いることができる。本実施の形態では、説明の便宜上、パネル30は、タッチパネルとする。
入力部40は、利用者からの操作入力を受け付けるものであり、例えば、操作ボタン(操作キー)から構成される。なお、パネル30も利用者からの接触を検出することにより、利用者からの操作入力を受け付けることができる。
表示部50は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は無機ELディスプレイ等の表示デバイスである。
本実施の形態に係る音発生器は、携帯電話機10の筐体20の一方の長辺の側面20a側に、音発生器用の圧電振動部60と、シート状の弾性部材70とを備える。弾性部材70は、例えばゴム、シリコーン、ポリウレタン等から成る。携帯電話機10は、側面20a側を下方にして机等の水平な載置面上に載置された際、すなわち携帯電話機10が横向きに立てられた際に、圧電振動部60及び弾性部材70によって載置面上に2点で支持される。圧電振動部60及び弾性部材70の配置については、後に詳述する。
図2は、図1の携帯電話機10の裏面側を分解して示す要部の概略斜視図である。筐体20の裏面側には、バッテリパック80やカメラユニット90等が搭載される。本実施の形態に係る携帯電話機10は、筐体20の裏面側に、圧電振動部60を収納保持する保持部100を備える。保持部100は、筐体20の短手方向に沿って延在し、側面20aに開口する一様な幅を有するスリット101を有する。
圧電振動部60は、圧電素子61と、防水用のOリング62と、被覆部材である絶縁性のキャップ63とを備える。圧電素子は、電気信号(電圧)を印加することで、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮または屈曲する素子である。これらの素子は、例えばセラミックや水晶からなるものが用いられる。圧電素子は、ユニモルフ、バイモルフまたは積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した(例えば16層または24層積層した)積層型バイモルフ素子や、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配置された電極層との積層構造体から構成されるスタックタイプのものがある。ユニモルフは電気信号が印加されると伸縮し、バイモルフは電気信号が印加されると屈曲し、スタックタイプの積層型圧電素子は電気信号が印加されると積層方向に沿って伸縮する。
本実施の形態では、圧電素子61がスタックタイプの積層型圧電素子からなる。積層型圧電素子61は、例えば、図3(a)及び(b)に拡大した断面図及び平面図を示すように、例えばPZT等のセラミックスからなる誘電体61aと、断面櫛歯状の内部電極61bとが交互に積層されて構成される。内部電極61bは、第1側面電極61cと接続されるものと、第2側面電極61dに接続されるものとが交互に積層されて、それぞれ第1側面電極61c又は第2側面電極61dに電気的に接続される。
図3(a)及び(b)に示した積層型圧電素子61は、一方の端面に、第1側面電極61cに電気的に接続された第1リード接続部61eと、第2側面電極61dに電気的に接続された第2リード接続部61fとが形成されている。第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fには、それぞれ第1リード線61g及び第2リード線61hが接続される。また、第1側面電極61c、第2側面電極61d、第1リード接続部61e、及び第2リード接続部61fは、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fに、それぞれ第1リード線61g及び第2リード線61hが接続された状態で、絶縁層61iで覆われている。
積層型圧電素子61は、積層方向の長さが例えば5mm〜120mmである。また、積層型圧電素子61の積層方向と直交する方向の断面形状は、例えば2mm角〜10mm角の略正方形状や、正方形状以外の任意の形状とすることができる。なお、積層型圧電素子61の積層数や断面積は、錘となる携帯電話機10の重量(携帯電子機器の場合は、例えば80g〜800g)に応じて、圧電振動部60が接触する机等の接触面から発生する音の音圧あるいは音質が十分確保できるように、適宜決定される。
積層型圧電素子61には、圧電素子駆動部120を介して、制御部130から音信号(再生音信号)が供給される。換言すれば、積層型圧電素子61には、圧電素子駆動部120を介して、制御部130から音信号に応じた電圧が印加される。制御部130から印加される電圧が交流電圧の場合には、第1側面電極61cに正の電圧が印加されるときには、第2側面電極61dには負の電圧が印加される。反対に、第1側面電極61cに負の電圧が印加されるときには、第2側面電極61dには正の電圧が印加される。第1側面電極61c及び第2側面電極61dに電圧が印加されると、誘電体61aに分極が起こり、積層型圧電素子61は電圧が印加されない状態から伸縮する。積層型圧電素子61の伸縮の方向は、誘電体61aと内部電極61bの積層方向にほぼ沿っている。あるいは、積層型圧電素子61の伸縮方向は、誘電体61aと内部電極61bの積層方向とほぼ一致している。積層型圧電素子61は、積層方向にほぼ沿って伸縮するため、伸縮方向の振動伝達効率がよいという利点がある。
このような積層型圧電素子61は、従来より自動車の燃料噴射制御に用いられていた。本発明者は、このような積層型圧電素子61が、音発生器が机等に接触する接触面から音響を発生させるための振動素子として十分有効に動作することを、今回実験により確認した。
なお、図3(a)及び(b)において、第1側面電極61c及び第2側面電極61dは、内部電極61bに交互に接続され、かつ第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fにそれぞれ接続されたスルーホールとすることもできる。また、図3(a)及び(b)において、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fは、図4に示すように、積層型圧電素子61の一端部において第1側面電極61c及び第2側面電極61dに形成してもよい。
積層型圧電素子61は、図5に部分拡大断面図を示すように、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fを有する一端部側面が、筐体20の保持部100のスリット101に接着剤102(例えば、エポキシ樹脂)を介して固定される。また、積層型圧電素子61の他端部には、キャップ63が挿入されて、接着剤102により固定される。
キャップ63は、積層型圧電素子61による伸縮振動を、机等の載置面(接触面)に確実に伝達できる材質、例えば硬質プラスチック等により形成される。なお、載置面の傷つきを抑制したい場合には、キャップ63は、硬質プラスチックではなく、比較的軟らかいプラスチックであっても良い。キャップ63には、積層型圧電素子61に装着された状態で、スリット101内に位置する進入部63aと、筐体20から突出する突出部63bとが形成されており、スリット101内に位置する進入部63aの外周に防水用のOリング62が配置される。Oリング62は、例えばシリコーンによって形成される。Oリング62によって、スリット101の内部に水又は塵が侵入しにくくなる。また、突出部63bは、先端部が半球形状に形成されている。なお、突出部63bの先端部は、半球形状に限らず、机等の載置面(接触面)に確実に点接触又は面接触して、積層型圧電素子61による伸縮振動を伝達できる形状であれば任意の形状とすることができる。また、図5において、Oリング62と、積層型圧電素子61のスリット101への接着部との間の隙間に、ゲル等を充填して防水効果をより高めることもできる。圧電振動部60は、保持部100に装着され、筐体20にバッテリリッド21が装着された状態で、キャップ63の突出部63bが筐体20の側面20aから突出する。また、キャップ63の突出部63bは、筐体20の側面20aと対向する面である対向面63cを有する。図5に示すように、積層型圧電素子61に電圧が印加されておらず積層型圧電素子61が伸縮しない状態で、対向面63cは、側面20aから長さdだけ離間している。
図6は、本実施の形態に係る携帯電話機10の要部の機能ブロック図である。携帯電話機10は、上述したパネル30、入力部40、表示部50及び積層型圧電素子61の他に、無線通信部110、圧電素子駆動部120及び制御部130を備える。パネル30、入力部40、表示部50及び無線通信部110は、制御部130に接続される。積層型圧電素子61は、圧電素子駆動部120を介して制御部130に接続される。
無線通信部110は、公知の構成からなり、基地局等を介して通信ネットワークに無線接続される。制御部130は、携帯電話機10の全体の動作を制御するプロセッサである。制御部130は、圧電素子駆動部120を介して積層型圧電素子61に再生音信号(通話相手の音声または着信メロディもしくは音楽を含む楽曲等の再生音信号に応じた電圧)を印加する。なお、再生音信号は、内部メモリに記憶された音楽データに基づくものでもよいし、外部サーバ等に記憶されている音楽データがネットワークを介して再生されるものであってもよい。
圧電素子駆動部120は、例えば図7に示すように、信号処理回路121、昇圧回路122及びローパスフィルタ(LPF)123を備える。信号処理回路121は、例えばイコライザやA/D変換回路等を有するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等で構成され、制御回路130からのデジタル信号に対して、イコライジング処理やD/A変換処理等の所要の信号処理を行って、アナログの再生音信号を生成し、昇圧回路122に出力する。なお、信号処理回路121の機能は、制御回路130に内蔵させてもよい。
昇圧回路122は、入力されたアナログの再生音信号の電圧を昇圧して、LPF123を介して積層型圧電素子61に印加する。ここで、昇圧回路122により積層型圧電素子61に印加する再生音信号の最大電圧は、例えば10Vpp〜50Vppとすることができるが、かかる範囲に限定されず、携帯電話機10の重量や積層型圧電素子61の性能に応じて適宜調整可能である。なお、積層型圧電素子61に印加される再生音信号は、直流電圧がバイアスされてもよく、そのバイアス電圧を中心に最大電圧が設定されてもよい。
また、積層型圧電素子61に限らず、圧電素子は、一般に高周波ほど電力損失が大きいため、LPF123は、10kHz〜50kHz程度以上の周波数成分の少なくとも一部を減衰又はカットする周波数特性、あるいは漸次に又は段階的に減衰率が高くなる周波数特性を有するように設定される。図8は、一例として、カットオフ周波数を約20kHzとした場合のLPF123の周波数特性を示す。このように高周波成分を減衰又はカットすることにより、消費電力を抑制できると共に、積層型圧電素子61の発熱を抑制することができる。
次に、図9を用いて、圧電振動部60及び弾性部材70の配置について説明する。図9は、携帯電話機10が、側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置された様子を示す。ここで、机は、本発明の被接触部材の一例であり、載置面150は、音発生器が接触する接触面(載置面)の一例である。図9に示すように、携帯電話機10は、圧電振動部60及び弾性部材70によって載置面150上に2点で支持される。点Gは、携帯電話機10の重心である。すなわち、点Gは、音発生器の錘の重心である。
図9において、弾性部材70は、最下端部701を有する。最下端部701は、弾性部材70のうち、携帯電話機10が側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき載置面150と当接する箇所である。
圧電振動部60は、最下端部601を有する。最下端部601は、圧電振動部60のうち、携帯電話機10が側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき載置面150と当接する箇所である。最下端部601は、例えばキャップ63の先端部である。
携帯電話機10は、最下端部101を有する。最下端部101は、携帯電話機10のうち、携帯電話機10が側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたときに、圧電振動部60が存在しないと仮定した場合に載置面150と当接する箇所である。携帯電話機10の最下端部101は、例えば筐体20の角部であるが、これに限られない。側面20aに、側面20aから突出する突出部が設けられている場合には、その突出部が携帯電話機10の最下端部101となってもよい。突出部は、例えばサイドキー又はコネクタキャップ等である。
図9において、点線Lは、携帯電話機10が側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき、携帯電話機10の重心Gを通り載置面150に垂直な線(仮想の線)である。また、一点鎖線Iは、圧電振動部60が存在しないと仮定した場合に、弾性部材70の最下端部701と携帯電話機10の最下端部101とを結ぶ線(仮想の線)である。
図9において、領域R1は、携帯電話機10において点線Lによって区切られる一方側の領域である。また、領域R2は、携帯電話機10において点線Lによって区切られる他方側の領域である。弾性部材70は、側面20aにおいて、領域R1側に設けられる。また、圧電振動部60は、側面20aにおいて、領域R2側に設けられる。
圧電振動部60は、側面20aの領域R2側において、点線Lにできるだけ近い位置に設けられることが好ましい。これにより、圧電振動部60にかかる荷重が、圧電振動部60が側面20aの領域R2側において点線Lから離間した位置に設けられる場合に比べて、大きくなる。これにより、携帯電話機10を音発生器の錘として有効に活用することができる。
弾性部材70は、側面20aの領域R1側において、点線Lからできるだけ遠い位置に設けられることが好ましい。これにより、圧電振動部60を点線Lにできるだけ近い位置に設けた場合にも、弾性部材70と圧電振動部60との間の距離が十分確保され、音発生器を安定して載置面150に載置することができる。
圧電振動部60の最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から最も伸びたとき或いは積層型圧電素子61の最大振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に位置するとよい。すなわち、最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から最も伸びたとき或いは積層型圧電素子61の最大振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に突出しているとよい。これにより、圧電振動部60により載置面150を適切に振動させることができる。
また、圧電振動部60の最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から積層型圧電素子61が最も縮んだとき或いは積層型圧電素子61の最小振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に位置するとよい。すなわち、最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から積層型圧電素子61が最も縮んだとき積層型圧電素子61の最小振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に突出しているとよい。これにより、携帯電話機10の最下端部101が載置面150に接触しにくくなり、例えば、筐体20の塗装の種類によっては、塗装が剥がれにくくなる。また、最下端部101と載置面150との間で異音が発生しにくくなる。
なお、携帯電話機10は、例えば筐体20に市販のスタンド等が取り付けられて、側面20a側を下方にして机等の載置面上に立てられてもよい。この場合、携帯電話機10は、側面20aが圧電振動部60及び弾性部材70により2点支持され、さらに、スタンドによって支持される。
図10(a)、(b)及び(c)は、本実施の形態に係る携帯電話機10による音発生器としての動作を説明するための概略図である。携帯電話機10を音発生器として機能させる場合、携帯電話機10は、図10(a)に示すように、筐体20の側面20a側を下方にして、圧電振動部60のキャップ63及び弾性部材70が机等の載置面(接触面)150に接触するように横置きに立てて載置される。これにより、圧電振動部60には、携帯電話機10の重量が荷重として与えられる。つまり、携帯電話機10は、本発明に係る音発生器の錘として作用する。なお、図10(a)に示す状態では、積層型圧電素子61は、電圧が印加されていないため、伸縮しない。
その状態で、圧電振動部60の積層型圧電素子61が再生音信号により駆動されると、積層型圧電素子61は、図10(b)及び(c)に示すように、弾性部材70の載置面(接触面)150への接触部分を支点として、キャップ63が載置面(接触面)150から離間することなく、再生音信号に応じて伸縮振動する。なお、下端部101が載置面150に接触して異音が発生する等の不都合がなければ、多少離間してもよい。積層型圧電素子61の最も伸びたときの長さと最も縮んだときの長さとの差は、例えば0.05μm〜50μmである。これにより、積層型圧電素子61の伸縮振動がキャップ63を通して載置面150に伝達されて載置面150が振動し、載置面150が振動スピーカとして機能して載置面150から音が発生する。なお、最も伸びたときの長さと最も縮んだときの長さとの差が0.05μm未満だと、載置面を適切に振動させられないおそれがあり、一方、50μmを超えると、振動が大きくなり音発生器ががたつくおそれがある。
ここで、上述したように、キャップ63の先端部は、積層型圧電素子61が最も伸びたときに、圧電振動部60が存在しないと仮定した場合に、弾性部材70の最下端部701と携帯電話機10の最下端部101とを結ぶ線(図9の一点鎖線I)よりも載置面150側に位置するとよい。また、キャップ63の先端部は、積層型圧電素子61が最も縮んだときに、上記仮想線よりも載置面150側に位置するとよい。
また、図5に示す側面20aとキャップ63の対向面63cとの間の距離dは、積層型圧電素子61に電圧が印加されておらず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から最も縮んだ状態となったときの変位量よりも長いとよい。これにより、積層型圧電素子61が最も縮んだ状態(図10(c)に示す状態)でも、筐体20の側面20aとキャップ63とが接触しにくくできる。したがって、キャップ63が圧電素子61から脱落しにくくなる。
圧電素子部60の側面20aにおける配置箇所、積層型圧電素子61の積層方向の長さ、キャップ63の寸法等は、上記の条件を満たすように適宜決定される。
本実施の形態に係る音発生器によると、圧電素子を振動源として利用しているので、ダイナミックスピーカ構造を有する従来の振動発生装置と比較して、部品点数を削減でき、少ない部品点数で簡便に構成できる。また、圧電素子として、スタックタイプの積層型圧電素子61を用いて、再生音信号により積層方向に沿って伸縮振動させ、その伸縮振動を載置面(接触面)150に伝達するので、載置面(接触面)150に対する伸縮方向(変形方向)の振動伝達効率が良く、載置面(接触面)150を効率良く振動させることができる。しかも、キャップ63を介して積層型圧電素子61を載置面(接触面)150に接触させるので、積層型圧電素子61の破損も防止できる。また、携帯電話機10を横置きに立てて、圧電振動部60のキャップ63を載置面(接触面)150に接触させると、キャップ63に携帯電話機10の重量が荷重としてかかるので、キャップ63を載置面(接触面)150に確実に接触させて、圧電振動部60の伸縮振動を載置面(接触面)150に効率良く伝達することができる。
また、本実施の形態に係る音発生器は、主として積層型圧電素子の振動を直接的に接触面(載置面)に伝達させることができるため、積層型圧電素子の振動を他の弾性体に伝える従来技術と異なり、音を発生させる際に他の弾性体が振動可能な高周波側の限界周波数に依存することがない。なお、他の弾性体が振動可能な高周波側の限界周波数は、他の弾性体が圧電素子により変形させられてから再度変形可能な状態に戻るまでの時間のうち最も短い時間の逆数となる。このことを考慮すると、本実施の形態に係る音発生器の錘は、圧電素子の変形により湾曲変形をしない程度の剛性(曲げ強度)を有するものであるとよい。
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。図11を用いて、本発明の他の実施の形態に係る音発生器について説明する。図11は、本発明の他の実施の形態に係る音発生器の外観斜視図である。以下、図1乃至図10に示す実施の形態と同じ点については説明を省略し、異なる点について説明を行う。
本発明に係る音発生器は、図11に示すように、筐体20の側面20aに、弾性部材71を備えていても良い。弾性部材71は、弾性部材70と同様に、シート状である。弾性部材71は、弾性部材70と同様に、例えばゴム、シリコーン、ポリウレタン等から成る。
次に、図12を用いて、圧電振動部60、弾性部材70及び弾性部材71の配置について説明する。図12は、図9と同様に、携帯電話機10が、側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置された様子を示す。図12に示すように、携帯電話機10は、圧電振動部60、弾性部材70及び弾性部材71によって載置面150上に3点で支持される。点Gは、携帯電話機10の重心である。すなわち、点Gは、音発生器の錘の重心である。
図12において、点線Lは、図9と同様に、携帯電話機10が側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき、携帯電話機10の重心Gを通り載置面150に垂直な線(仮想の線)である。点線L1は、弾性部材70を通り載置面に垂直な線(仮想の線)である。点線L2は、弾性部材71を通り載置面に垂直な線(仮想の線)である。点線L1は、水平方向で点線Lから長さD1離間している。点線L2は、水平方向で点線Lから長さD2離間している。
図12において、領域R1は、携帯電話機10において点線Lによって区切られる一方側の領域である。また、領域R2は、携帯電話機10において点線Lによって区切られる他方側の領域である。弾性部材70は、側面20aにおいて、領域R1側に設けられる。弾性部材70は、側面20aにおいて、圧電振動部60から水平方向に長さD1離間して配置される。弾性部材71は、側面20aにおいて、領域R2側に設けられる。弾性部材71は、側面20aにおいて、圧電振動部60から水平方向に長さD2だけ離間して配置される。
圧電振動部60は、側面20aにおいて、点線L上に設けられる。すなわち、圧電振動部60は、携帯電話機10が側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき、携帯電話機10の重心Gを通り載置面150に垂直な線上に配置される。これにより、錘としての携帯電話機10の重量を荷重として圧電振動部60に与えることができ、圧電振動部60の伸縮振動を載置面(接触面)150に効率良く伝達することができる。なお、D1=D2のとき、すなわち弾性部材70と弾性部材71が、圧電振動部60を挟んで水平方向で対称な位置に設けられると、音発生器を安定して載置面150に載置することができる。
圧電振動部60は、積層型圧電素子61が再生音信号により駆動されると、キャップ63が載置面(接触面)150から離間することなく、再生音信号に応じて伸縮振動する。なお、弾性部材70及び弾性部材71の下端部が載置面150に接触して異音が発生する等の不都合がなければ、多少離間してもよい。
弾性部材70及び弾性部材71は、携帯電話機10が、側面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されると、携帯電話機10の重量が荷重として与えられ、弾性変形する。すなわち、弾性部材70及び弾性部材71は、携帯電話機10の重量によって載置面150と垂直な方向に縮む。積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態における弾性部材70及び弾性部材71の弾性変形量は、積層型圧電素子61の、電圧が印加されず伸縮しない状態から最も伸びたときの変位量よりも大きいとよい。これにより、積層型圧電素子61が最も伸びた時に弾性部材70及び弾性部材71が載置面150から離間しにくくなり、音発生器が安定して載置面150に載置される。
また、圧電振動部60を保持部100に対して固定する構造は、図5に示すものに限られない。例えば、図13(a)〜(c)に示すように、圧電振動部60を保持部100に保持してもよい。図13(a)に示す保持部100は、側面20aに開口する幅広のスリット101aと、該スリット101aに連続する幅狭のスリット101bとを有する。積層型圧電素子61は、一端部が幅狭のスリット101bに配置されて側面が接着剤102を介してスリット101bに固定される。また、幅広のスリット101aには、積層型圧電素子61との隙間に、積層型圧電素子61の伸縮動作の妨げとならないシリコーンゴムやゲル等の充填剤103が充填される。このように圧電振動部60を保持部100に保持すれば、Oリング等の防水パッキンを用いることなく、携帯電話機10をより確実に防水することができる。また、積層型圧電素子61の側面20aから突出する部分に絶縁性のキャップを被せることにより、積層型圧電素子61の絶縁も確実に行うことができる。
図13(b)に示す保持部100は、側面20aに向けて拡開するテーパ状スリット101cと、該テーパ状スリット101cに連続する幅狭のスリット101dとを有する。積層型圧電素子61は、一端部が幅狭のスリット101dに配置されて側面が接着剤102を介してスリット101dに固定される。また、テーパ状スリット101cには、積層型圧電素子61との隙間に、積層型圧電素子61の伸縮動作の妨げとならないシリコーンゴムやゲル等の充填剤103が充填される。このように構成すれば、図13(a)の保持部100と同様の効果が得られる他、テーパ状スリット101cを有しているので、積層型圧電素子61の保持部100への組み付けが容易にできる利点がある。
図13(c)に示す保持部100は、上記実施の形態と同様に、一様な幅のスリット101を有するが、積層型圧電素子61は、一端部側の端面が接着剤102を介してスリット101に固定されている。また、スリット101内で積層型圧電素子61の適宜の箇所には、防水用のOリング62が配置されている。このような積層型圧電素子61の保持態様は、特に、積層型圧電素子61が、図4に示したように、リード線の接続部が側面電極に形成されている場合に、リード線の引き回し等の点で有利となる。
また、上記実施の形態や図13(a)〜(c)の変形例において、圧電振動部60は、キャップ63を省略し、積層型圧電素子61の先端面を直接、あるいは絶縁部材等からなる振動伝達部材を介して接触面に接触させてもよい。また、圧電素子は、上述したスタックタイプの積層型圧電素子に限らず、ユニモルフ、バイモルフあるいは積層型バイモルフ素子を用いてもよい。図14は、バイモルフを用いた場合の要部の概略構成を示す図である。バイモルフ65は、長尺の矩形状をなし、筐体20の側面20aに一方の表面65aが露出して長尺の両端部が保持部100に保持される。保持部100は、バイモルフ65を保持する開口部101eを有し、開口部101eのバイモルフ65の裏面65b側の内面が湾曲して形成される。かかる構成によれば、バイモルフ65が載置面に接触するように筐体20を載置面に載置して、バイモルフ65を再生音信号により駆動すると、バイモルフ65が屈曲(湾曲)振動する。これにより、バイモルフ65の振動が載置面(接触面)に伝達されて、載置面(接触面)が振動スピーカとして機能して載置面(接触面)から再生音が発生する。なお、バイモルフ65の表面65aには、ポリウレタン等の被覆層が形成されていてもよい。
更に、図7において、信号処理回路121と昇圧回路122との間に、LPF123と同様の特性を有するLPFを設けてもよい。また、図7において、LPF123の機能を信号処理回路121のイコライザ等に持たせて、LPF123を省略してもよい。
また、上記の実施形態では、圧電振動部60が筐体20の側面20aに配置され側面20aから突出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。筐体20の寸法及び圧電振動部60の寸法によっては、圧電振動部60は、例えば、バッテリリッド21から突出していてもよい。
また、上記の実施形態では、被接触部材が机であり、接触面が机の水平な載置面であるとして説明を行ったが、本発明はこれに限定されない。接触面は水平な面でなくともよい。接触面は、例えば机の地面に垂直な面であってもよい。地面に垂直な面を有する被接触部材としては、例えば空間を区切るためのパーティションが挙げられる。
また、上記実施の形態では、音発生器を携帯電話機10に搭載して、携帯電話機10を錘として機能させたが、錘はこれに限られない。例えば、携帯型ミュージックプレイヤ、据え置き型テレビ、電話会議システム、ノートパソコン、プロジェクタ、壁掛け時計/壁掛けテレビ、目覚まし時計、フォトフレーム等の多岐にわたる任意の電子機器を錘として、これらの電子機器に音発生器を搭載することもできる。また、錘は電子機器に限らず、例えば花瓶、椅子等であってもよい。さらに、本発明は、音発生器に限らず、圧電素子を有する音発生器用圧電振動部として構成することもできるし、音発生器と該音発生器が接する接触面を有する被接触部材とを備える音発生システムとしても構成することができ、これらも本発明の範囲に包含されるものと理解されたい。