以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る音発生器の外観斜視図である。本実施の形態に係る音発生器は、スマートフォン等の携帯電話機10と、圧電振動部60とを有する。後述するように、携帯電話機10は、圧電振動部60に荷重を与える錘(音発生器の錘)として作用するものである。本実施の形態に係る音発生器は、携帯電話機10の本体20の一方の長辺である下面20a側に、音発生器用の圧電振動部60を備える。下面20aは、携帯電話機10を横置きに机等の接触面に載置したときに接触面と対向する。
本体20には、携帯電話機10の前面側にパネル30、入力部31、スピーカ40及びマイク71が配置されており、パネル30の下側に図1にパネル30の一部を切り欠いて示すように、表示部50が保持されている。また、本体20には、下面20aの逆側に位置する上面20b側に、近接センサ72が配置されている。スピーカ40、マイク71及び近接センサ72は、携帯電話機10において、2つの状態を検出する検出部を構成する検出機構である。検出部が検出する2つの状態及びその具体的な検出方法については後述する。本体20の裏面側は、バッテリパックやカメラユニット等が搭載されて、バッテリリッド21で覆われている。
パネル30は、接触を検出するタッチパネル、または表示部50を保護するカバーパネル等からなり、例えばガラス、またはアクリル等の合成樹脂により形成される。パネル30は、例えば長方形状である。パネル30は、平板であってもよいし、表面が滑らかに傾斜する曲面パネルであってもよい。パネル30は、タッチパネルである場合、利用者の指、ペン、またはスタイラスペン等の接触を検出する。タッチパネルの検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(または超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式を用いることができる。本実施の形態では、説明の便宜上、パネル30は、タッチパネルとする。
入力部31は、利用者からの操作入力を受け付けるものであり、例えば、操作ボタン(操作キー)から構成される。なお、パネル30も表示部50に表示されるソフトキー等への利用者からの接触を検出することにより、利用者からの操作入力を受け付けることができる。
表示部50は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または無機ELディスプレイ等の表示デバイスである。
スピーカ40は、例えばダイナミックスピーカやコンデンサスピーカ等の音出力デバイスであり、携帯電話機10が備える制御部から印加された音信号に基づいて音を出力する。
マイク71は、通話中は利用者の音声を検出し、圧電振動部60による音発生中は接触面から発生する音を検出する。また、近接センサ72は、検出対象物の存在を非接触で検出するセンサであり、例えば、カメラ、赤外線センサまたは音波センサ等とすることができる。
図2は、図1の携帯電話機10の裏面側を分解して示す要部の概略斜視図である。本体20の裏面側には、バッテリパック80やカメラユニット81等が搭載される。また、携帯電話機10は、本体20の内部に、圧電振動部60の後述する圧電素子の傾きを検出する傾き検出センサ73と、携帯電話機10に与えられる振動を検出する振動検出センサ74と、無線通信部75とを備える。傾き検出センサ73及び振動検出センサ74は、2つの状態を検出する検出部を構成する検出機構であり、例えば加速度センサにより構成される。また、無線通信部75は、携帯電話機10としての公知の通信機能を有し、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能による位置情報を取得したり、WiFi(Wireless Fidelity)のアクセスポイントの接続情報を取得したりすることによって、携帯電話機10の位置に関する情報を取得することができる。
携帯電話機10は、本体20の裏面側に、圧電振動部60を収納保持する保持部100を備える。保持部100は、本体20の短手方向に沿って延在し、下面20aに開口する一様な幅を有するスリット101を有する。
圧電振動部60は、圧電素子61と、Oリング62と、被覆部材である絶縁性のキャップ63とを備える。圧電素子は、電気信号(電圧)を印加することで、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮または屈曲する素子である。これらの素子は、例えばセラミックや水晶からなるものが用いられる。圧電素子は、ユニモルフ、バイモルフまたは積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した(例えば8層から40層程度積層した)積層型バイモルフ素子や、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配置された電極層との積層構造体から構成されるスタックタイプのものがある。ユニモルフは電気信号が印加されると伸縮し、バイモルフは電気信号が印加されると屈曲し、スタックタイプの積層型圧電素子は電気信号が印加されると積層方向に沿って伸縮する。
本実施の形態では、圧電素子61がスタックタイプの積層型圧電素子からなる。積層型圧電素子61は、例えば、図3(a)及び(b)に拡大した断面図及び平面図を示すように、例えばPZT等のセラミックスからなる誘電体61aと、断面櫛歯状の内部電極61bとが交互に積層されて構成される。内部電極61bは、第1側面電極61cと接続されるものと、第2側面電極61dに接続されるものとが交互に積層されて、それぞれ第1側面電極61cまたは第2側面電極61dに電気的に接続される。
図3(a)及び(b)に示した積層型圧電素子61は、一方の端面に、第1側面電極61cに電気的に接続された第1リード接続部61eと、第2側面電極61dに電気的に接続された第2リード接続部61fとが形成されている。第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fには、それぞれ第1リード線61g及び第2リード線61hが接続される。また、第1側面電極61c、第2側面電極61d、第1リード接続部61e、及び第2リード接続部61fは、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fに、それぞれ第1リード線61g及び第2リード線61hが接続された状態で、絶縁層61iで覆われている。
積層型圧電素子61は、積層方向の長さが例えば5mm〜120mmである。また、積層型圧電素子61の積層方向と直交する方向の断面形状は、例えば2mm角〜10mm角の略正方形状や、正方形状以外の任意の形状とすることができる。なお、積層型圧電素子61の積層数や断面積は、錘となる携帯電話機10の重量(携帯電子機器の場合は、例えば80g〜800g)に応じて、圧電振動部60が接触する机等の接触面150から発生する音の音圧あるいは音質が十分確保できるように、適宜決定される。
積層型圧電素子61には、図7において後述するように、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)120を介して、制御部130から音信号(再生音信号)が供給される。換言すれば、積層型圧電素子61には、DSP120を介して、制御部130から音信号に応じた電圧が印加される。制御部130から印加される電圧が交流電圧の場合には、第1側面電極61cに正の電圧が印加されるときには、第2側面電極61dには負の電圧が印加される。反対に、第1側面電極61cに負の電圧が印加されるときには、第2側面電極61dには正の電圧が印加される。第1側面電極61c及び第2側面電極61dに電圧が印加されると、誘電体61aに分極が起こり、積層型圧電素子61は電圧が印加されない状態から伸縮する。積層型圧電素子61の伸縮の方向は、誘電体61aと内部電極61bの積層方向にほぼ沿っている。あるいは、積層型圧電素子61の伸縮方向は、誘電体61aと内部電極61bの積層方向とほぼ一致している。積層型圧電素子61は、積層方向にほぼ沿って伸縮するため、伸縮方向の振動伝達効率がよいという利点がある。
なお、図3(a)及び(b)において、第1側面電極61c及び第2側面電極61dは、内部電極61bに交互に接続され、かつ第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fにそれぞれ接続されたスルーホールとすることもできる。また、図3(a)及び(b)において、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fは、図4に示すように、積層型圧電素子61の一端部において第1側面電極61c及び第2側面電極61dに形成してもよい。
積層型圧電素子61は、図5に部分拡大断面図を示すように、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fを有する一端部側面が、本体20の保持部100のスリット101に接着剤102(例えば、エポキシ樹脂)を介して固定される。また、積層型圧電素子61の他端部には、キャップ63が挿入されて、接着剤102により固定される。
キャップ63は、積層型圧電素子61による伸縮振動を、机等の接触面150に確実に伝達できる材質、例えば硬質プラスチック等により形成される。なお、接触面150の傷つきを抑制したい場合には、キャップ63は、硬質プラスチックではなく、比較的軟らかいプラスチックであっても良い。キャップ63には、積層型圧電素子61に装着された状態で、スリット101内に位置する進入部63aと、本体20から突出する突出部63bとが形成されており、スリット101内に位置する進入部63aの外周にOリング62が配置される。Oリング62は、例えばシリコーンゴムによって形成される。Oリング62は、積層型圧電素子61の可動保持用であると同時に、スリット101の内部に水分または塵を侵入しにくくする。また、突出部63bは、先端部が半球形状に形成されている。なお、突出部63bの先端部は、半球形状に限らず、机等の接触面150に確実に点接触または面接触して、積層型圧電素子61による伸縮振動を伝達できる形状であれば任意の形状とすることができる。また、図5において、Oリング62と、積層型圧電素子61のスリット101への接着部との間の隙間に、ゲル等を充填して防塵防水効果をより高めることもできる。圧電振動部60は、保持部100に装着され、本体20にバッテリリッド21が装着された状態で、キャップ63の突出部63bが本体20の下面20aから突出する。また、キャップ63の突出部63bは、本体20の下面20aと対向する面である対向面63cを有する。図5に示すように、積層型圧電素子61に電圧が印加されておらず積層型圧電素子61が伸縮しない状態で、対向面63cは、下面20aから長さdだけ離間している。
再び図2を参照すると、携帯電話機10は、バッテリリッド21つまり本体20に、開閉可能なスタンド90を備える。スタンド90は、脚部91と、開閉時の支点となる取付部92とを有する。本実施の形態においては、スタンド90は、本体20への収納状態において、本体20の下面20aと逆側の上面20b側に取付部92を有し、本体20の短手方向に沿って下面20a側に延在する脚部91を有する。携帯電話機10の本体20には、バッテリリッド21が備えるスタンド90を収納するための空間82が設けられている。携帯電話機10は、下面20a側を下方にして机等の水平な接触面150上に載置された際、すなわち携帯電話機10が横置きに立てられた際に、少なくとも脚部91及び圧電振動部60が接触面150上に接して支持される。スタンド90は、好ましくは、携帯電話機10が横置きに立てられた際に、パネル30の傾斜角度が調整可能なように設けられる。
また、スタンド90は、上述の形態に限られない。例えば、スタンド90は、図6(a)に示すように、本体20への収納状態において、本体20の下面20a側に取付部92を有し、本体20の短手方向に沿って上面20b側に延在するように脚部91が構成されていてもよい。また、例えば、スタンド90は、図6(b)に示すように、本体20への収納状態において、本体20の一方の側面側に取付部92を有し、本体の長手方向に沿って他方の側面側に脚部91が延在するように構成されていてもよい。また、携帯電話機10は、例えば図6(c)のように、複数のスタンド90を備えていてもよい。
図7は、携帯電話機10の要部の機能ブロック図である。携帯電話機10は、上述したパネル30、入力部31、スピーカ40、表示部50、積層型圧電素子61、マイク71、近接センサ72、傾き検出センサ73、振動検出センサ74及び無線通信部75の他に、DSP120及び制御部130を備える。マイク71、近接センサ72、傾き検出センサ73、振動検出センサ74及び無線通信部75は、検出部70を構成する検出機構の例である。なお、検出部70は、図7に示す5つの検出機構を全て備えていることは必ずしも必要ではなく、少なくとも1つの検出機構を備えていればよい。パネル30、入力部31、表示部50及び各検出機構71乃至75は、制御部130に接続される。また、スピーカ40及び積層型圧電素子61は、DSP120を介して制御部130に接続される。DSP120は、制御部130に内蔵させてもよい。
制御部130は、携帯電話機10の全体の動作を制御するプロセッサである。制御部130は、検出部70が検出する2つの状態に応じて、DSP120を介してスピーカ40または積層型圧電素子61に印加する再生音信号(通話相手の音声または着信メロディもしくは音楽を含む楽曲等の再生音信号に応じた電圧)を制御する。なお、再生音信号は、内部メモリに記憶された音楽データに基づくものでもよいし、外部サーバ等に記憶されている音楽データがネットワークを介して再生されるものであってもよい。
ここで、検出部70が各検出機構を使用して行う2つの状態の検出について説明する。検出部70は、いずれかの検出機構を使用して、圧電素子61の駆動を許容する駆動許容状態と、圧電素子61の駆動を拒否する駆動拒否状態との2つの状態を検出する。
まず、検出機構としてマイク71を使用する場合について説明する。携帯電話機10を、例えば布団等の上に載置して使用した場合、圧電素子61の振動は、接触面150である柔らかい布団により吸収される。そのため、接触面150からは良好な音が得にくい。従って、圧電素子61を駆動することにより音を発生させようとする場合、横置きに立てられた携帯電話機10の接触面150は、所定の設定値以上の音量が発生される硬質の材料であることが好ましい。また、接触面150が柔らかい場合には、圧電素子61を駆動するのではなく、スピーカ40から音を発生させるのがよい。従って、接触面150から発生する音の音量に応じて、制御部130が圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御することが好ましい。
そこで、まずマイク71が、接触面150から発生する音を取得し、検出部70が、取得された音の音量が設定値以上であるか否かに基づき、駆動許容状態と駆動拒否状態とを検出する。そして、検出部70が検出した状態に応じて、制御部130は圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御する。具体的には、携帯電話機10の利用者が再生しようとしている音を出力する前に、制御部130は、まず圧電素子61に音信号として一定レベルの純音スイープ信号を印加し、圧電素子61を振動させることによって接触面150から音を発生させる。そして、接触面150が発生する音をマイク71により取得し、取得された音の音量が設定値以上の場合、検出部70は駆動許容状態であることを検出する。一方、取得された音の音量が設定値未満の場合、検出部70は駆動拒否状態であることを検出する。状態を検出するために使用される音量の設定値は、任意の値に設定することができ、例えば40dbとすることができる。なお、純音スイープ信号は、人間の耳に聞こえにくい周波数域の信号であってもよい。
検出部70が駆動許容状態を検出した場合、制御部130は、圧電素子61への音信号の印加を行う。一方、検出部70が駆動拒否状態を検出した場合、制御部130は、圧電素子61への音信号の印加を行わず、または既に音信号を印加している場合には、音信号の印加を停止する。圧電素子61への音信号の印加を行わない場合、制御部130は、スピーカ40への音信号の印加を行ってもよい。なお、検出部70が駆動許容状態または駆動拒否状態を検出した後の、かかる制御部の動作は、後述する他の検出機構の場合も同様である。
マイク71を使用した2つの状態の検出は、音信号の印加前に1度のみ行うものであってもよく、また、圧電素子61への音信号の印加を行っている間にも引き続いて行うものであってもよい。また、後述する振動検出センサ74により、携帯電話機10の移動が検出された場合に、マイク71を使用した状態の検出を行ってもよい。圧電素子61への音信号の印加を行う間に、引き続き検出部70にて状態を検出する場合には、検出部70は、圧電素子61への音信号の印加により接触面150から発生している音をマイク71から取得して、取得した音の音量が設定値以上であるか否かに基づいて、状態を検出しても良い。この検出は、継続的に行ってもよく、また、定期的または不定期的に行ってもよい。また、圧電素子61に印加された音信号により接触面150から発生している音に基づいて状態の検出を行う場合、2つの状態を検出するために使用する音量の設定値は、純音スイープ信号により状態の検出を行う場合の設定値と異なるものとすることができる。例えば、利用者が携帯電話機10から出力される音量を大きく設定している場合には、状態の検出に使用される音量の設定値を大きくすることができる。
また、マイク71は、接触面150から発生している音の他に、周囲の騒音を取得する場合がある。騒音の影響による状態の誤検出を防ぐために、携帯電話機10は、制御部130からの音信号の出力が低い場合または出力がない場合に、周囲の音をマイク71から取得して携帯電話機10の図示しない記憶部に記憶し、状態の検出を行う際に、マイク71から取得された音から、記憶された騒音に相当する音をキャンセルする処理を行った後、状態の検出を行ってもよい。
次に、検出機構として近接センサ72を使用する場合について説明する。例えば、圧電素子61に音信号を印加して接触面150から発生する音を利用者が聞いている場合であっても、利用者が一時的に携帯電話機10から離れる場合がある。その場合には、音を聞こうとする利用者が携帯電話機10の周囲にいないため、音を発生させる必要はない。従って、利用者が携帯電話機10から離れた場合に自動的に音を停止させることができれば好都合である。すなわち、周囲に人がいるか否かに応じて、制御部130が圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御することが好ましい。
そこで、近接センサ72が周囲に人がいるか否かに関する情報を取得し、検出部70が、取得した情報に基づいて駆動許容状態と駆動拒否状態とを検出し、検出した状態に応じて、制御部130は圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御する。具体的には、近接センサ72が、携帯電話機10の周囲に検出対象物が存在することを確認した状態である場合、検出部70は、駆動許容状態であることを検出し、近接センサ72が、携帯電話機10の周囲に検出対象物が存在することを確認していない状態である場合、検出部70は、駆動拒否状態であることを検出する。すなわち、人という検出対象物が携帯電話機10の周囲に存在することを近接センサ72が確認すると、検出部70は駆動許容状態であることを検出するため、制御部130は、圧電素子61への音信号の印加を行う。一方、近接センサ72が携帯電話機10の周囲に人がいないことを確認すると、検出部70は駆動拒否状態であることを検出し、圧電素子61への音信号の印加を停止することができる。
近接センサ72は、常時携帯電話機10の周囲における検出対象物の有無を確認していてもよく、また、定期的または不定期的に確認してもよい。また、上述の例では、近接センサ72が検出対象物の存在を確認した場合に検出部70が駆動許容状態を確認し、近接センサ72が検出対象物の存在を確認していない場合に検出部70が駆動拒否状態を確認するとして説明したが、検出部70が駆動許容状態と駆動拒否状態との検出を逆転させるように構成してもよい。すなわち、近接センサ72が検出対象物の存在を確認していない場合に、検出部70が駆動許容状態を確認し、制御部130が圧電素子61への音信号の印加を行ってもよい。反対に、近接センサ72が、検出対象物の存在を確認した場合に、検出部70が駆動拒否状態を確認し、制御部130が圧電素子61への音信号の印加を停止してもよい。
次に、検出機構として傾き検出センサ73を使用する場合について、図8を用いて説明する。図8は、携帯電話機10が、スタンド90を使用して机等の水平な接触面150上に載置した様子を示す。図8に示すように、携帯電話機10は、圧電振動部60及びスタンド90(脚部91)によって接触面150上に支持される。携帯電話機10は、最下端部201を有する。最下端部201は、携帯電話機10のうち、携帯電話機10が下面20a側を下方にして机等の水平な接触面150上に載置されたときに、圧電振動部60が存在しないと仮定した場合に接触面150と当接する箇所である。携帯電話機10の最下端部201は、例えば本体20の角部であるが、これに限られない。下面20aに、下面20aから突出する突出部が設けられている場合には、その突出部が携帯電話機10の最下端部201となってもよい。突出部は、例えばサイドキーまたはコネクタキャップ等である。
図8(a)に示すように、携帯電話機10を横置きに載置した際に、圧電素子61が鉛直方向に対してなす角θ(傾きθ)が所定の角度θ0未満の場合(図8(a)におけるθ1の場合)には、圧電振動部60に、錘としての携帯電話機10からの荷重が十分に与えられる。これにより、圧電振動部60は接触面150を適切に振動させることができ、接触面150から良好な音が発生する。一方、図8(b)に示すように、圧電素子61が鉛直方向に対してなす角θ(傾きθ)が所定の角度θ0以上の場合(図8(b)におけるθ2の場合)には、携帯電話機10から圧電振動部60に充分な荷重が与えられない。その結果、接触面150から良好な音が発生しにくくなる。また、圧電素子61の角がθ2の場合には、圧電素子61の角がθ1の場合と比較して、圧電素子61が振動して接触面150に与える力の反作用として、携帯電話機10の本体20が受ける水平成分の力が大きくなる。そのため、携帯電話機10が横滑りして移動する場合がある。携帯電話機10が移動した場合、携帯電話機10が、例えば机等に載置されていると、携帯電話機10が机から落下して、落下の衝撃により携帯電話機10または圧電振動部60が故障するおそれがある。また、角θ2が大きく、最下端部201が接触面150に接触すると、圧電素子61が振動した場合に、最下端部201と接触面150との間で異音が発生する場合がある。従って、圧電素子61の傾きθに応じて、圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御することが好ましい。
そこで、傾き検出センサ73が圧電素子61の傾きを検出し、検出部70が、圧電素子61の傾きθに基づいて、駆動許容状態と駆動拒否状態とを検出する。そして、検出部70が検出した状態に応じて、制御部130は圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御する。具体的には、圧電素子61の傾きθが所定の角度θ0未満の場合、検出部70は駆動許容状態であることを検出する。一方、圧電素子61の傾きθが所定の角度θ0以上の場合、検出部70は駆動拒否状態であることを検出する。所定の角度θ0は、例えば、携帯電話機10及び圧電振動部60の大きさ、携帯電話機10の重さ、スタンド90の長さ及び配置等に基づいて、適宜定めることができ、例えば、30度とすることができる。
次に、検出機構として振動検出センサ74を使用する場合について説明する。携帯電話機10を、例えば布団等の上に載置して使用した場合、圧電素子61の振動は、接触面150である柔らかい布団により吸収される。そのため、接触面150からは良好な音が得にくい。従って、圧電素子61を駆動することにより音を発生させようとする場合、横置きに立てられた携帯電話機10の接触面150は、圧電素子61の振動が充分に伝達される硬質の材料であることが好ましい。また、接触面150が柔らかい場合には、圧電素子61を駆動するのではなく、スピーカ40から音を発生させるのがよい。従って、接触面150が硬質の材料であるか否か応じて、制御部130が圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御することが好ましい。ここで、圧電素子61が駆動して接触面150から音を発生させる場合、接触面150が充分に硬いと、携帯電話機10は、圧電素子61が振動して接触面150に与える力の反作用としての振動を受け、圧電素子61の振動に応じた振幅で振動する。すなわち、振動検出センサ74が携帯電話機10の振動を検出することにより、接触面150が硬質の材料であるか否かを判断することができる。
そこで、振動検出センサ74が携帯電話機10の振動を検出し、検出部70が、携帯電話機10の振動に基づいて、駆動許容状態と駆動拒否状態とを検出する。そして、検出部70が検出した状態に応じて、制御部130は圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御する。具体的には、振動検出センサ74は、携帯電話機10の振動波形を取得する。接触面150が充分に硬質で圧電素子61の振動を吸収しない場合、携帯電話機10は、圧電素子61の振動による振幅と同じ振幅で振動することとなるが、接触面150の材質が充分に硬質でない場合には、その材質に応じて吸収された圧電素子61の振動の分、携帯電話機10の振幅も減少する。従って、検出部70は、圧電素子61の振動の振幅に対する携帯電話機10の振動の振幅の比率が、所定の比率以上であるか否かにより、2つの状態を検出する。圧電素子61の振幅に対する携帯電話機10の振幅の比率が、所定の比率以上である場合、検出部70は駆動許容状態を検出し、所定の比率未満である場合、検出部70は駆動拒否状態を検出する。この所定の比率は、任意に定めることができ、例えば50%とすることができる。所定の比率を50%とした場合、例えば圧電素子61の伸び量(振幅)が10μmであるとすると、携帯電話機10の振幅が、5μm以上のときに、検出部70は駆動許容状態を検出し、5μm未満のときに、検出部70は駆動拒否状態を検出する。
なお、振動検出センサ74を用いることによって、携帯電話機10が圧電素子61の振動の反作用として受ける振動の振幅を検出できるだけでなく、携帯電話機10の移動を検出することもできる。携帯電話機10の移動の検出は、振動検出センサ74が携帯電話機10の振動周波数を検出することにより行われる。例えば、振動検出センサ74が、人間が歩行するときの振動周波数である1〜2kHzの周波数の振動を検出したとする。この場合、検出部70は、携帯電話機10が移動しており、接触面150上に載置されていないと認識し、駆動拒否状態を検出する。振動検出センサ74がかかる周波数の振動を検出しない場合には、検出部70は、駆動許容状態を検出することができる。
次に、検出機構として無線通信部75を使用する場合について説明する。ここでは、無線通信部75は、携帯電話機10の位置に関する情報として、GPS機能による位置情報を取得するとして説明する。携帯電話機10を用いて音を発生するに際し、例えば図書館のような公共施設等、音を発生させるのに相応しくない場所が存在する。このような場所においては、携帯電話機10が自動的に音を停止させることができれば好都合である。すなわち、携帯電話機10の位置する場所応じて、制御部130が圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御することが好ましい。
そこで、無線通信部75がGPS機能を使用して位置情報を取得し、検出部70が、位置情報に基づいて駆動許容状態と駆動拒否状態とを検出し、検出した状態に応じて、制御部130は圧電素子61またはスピーカ40への音信号の印加を制御する。具体的には、例えば携帯電話機10から音を出力するのが不適切である場所を、利用者が予め検出部70に登録しておく。そして、無線通信部75が取得した位置情報に基づき、携帯電話機10が予め登録された位置にあることが検出部70により確認されると、検出部70は駆動拒否状態を検出する。この場合、制御部130は、音信号の印加を停止することができる。一方、携帯電話機10が予め登録された位置にないことが検出部70により確認された場合には、検出部70は駆動許容状態を検出する。この場合、制御部130は、音信号の印加を行うことができる。
上述の例では、携帯電話機10から音を出力するのが不適切である場所を、予め検出部70に登録するとして説明したが、携帯電話機10から音を出力することが許容される場所を、予め検出部70に登録してもよい。例えば、自宅等の利用者の私的な場所を予め検出部70に登録する。そして、無線通信部75が取得した位置情報に基づき、携帯電話機10が予め登録された位置にあることが検出部70により確認されると、検出部70は駆動許容状態を検出する。この場合、制御部130は、音信号の印加を行うことができる。反対に、携帯電話機10が予め登録された位置にないことが検出部70により確認された場合には、検出部70は駆動拒否状態を検出する。この場合、制御部130は、音信号の印加を停止することができる。
携帯電話機10は、以上説明した検出部70及び制御部130の動作に基づいて、音を出力する。図9は、携帯電話機10が行う音出力の動作手順を示すフローチャートである。
まず、携帯電話機10において、検出部70のいずれかの検出機構が、2つの状態を判断するための情報を取得する(ステップS101)。2つの状態を判断するための情報は、例えば、検出機構がマイク71の場合は、接触面150から発生する音であり、検出機構が近接センサ72の場合は、検出対象物が周囲に存在するか否かに関する情報である。続いて、検出部70は、検出機構が取得した情報に基づいて、携帯電話機10が駆動許容状態または駆動拒否状態のいずれであるかを検出する(ステップS102)。
検出部70が駆動許容状態を検出した場合(ステップS102の駆動許容状態)、制御部130は、圧電素子61への音信号の印加を決定する(ステップS103)。そして、制御部130は、圧電素子61へ音信号を印加する(ステップS106)。一方、検出部70が駆動拒否状態を検出した場合(ステップS102の駆動拒否状態)、制御部130は、スピーカ40を駆動するか否かを判断する(ステップS104)。
例えば、近接センサ72が周囲に人がいないことを検出したことにより、検出部70が駆動拒否状態を検出している場合、携帯電話機10はスピーカ40から音を出力する必要がない。かかる場合、制御部130は、スピーカを駆動しないと判断することができる。また、例えば、無線通信部75が、携帯電話機10が図書館にいることを検出したことにより、検出部70が駆動拒否状態を検出している場合、携帯電話機10のスピーカ40から音を出力するのは適当ではない。かかる場合、制御部130は、スピーカを駆動しないと判断することができる。このように、制御部130がスピーカ40を駆動するか否かの判断は、各検出機構の情報に基づき判断することができる。しかしながら、制御部130の判断は、これに限定されることなく、さらに異なる判断基準やアルゴリズムを設けることによって行ってもよい。
制御部130がスピーカ40を駆動すると判断した場合(ステップS104のYes)、制御部130は、スピーカ40への音信号の印加を決定する(ステップS105)。そして、制御部130は、スピーカ40へ音信号を印加する(ステップS106)。一方、制御部130がスピーカ40を駆動しないと判断した場合(ステップS104のNo)、制御部130は、音信号を印加せず、このフローを終了する。検出部70が定期的または不定期的に2つの状態を検出することにより、携帯電話機10はこのフローを繰り返してもよい。
携帯電話機10がこのフローを繰り返すことにより、音信号の印加先が圧電素子61及びスピーカ40の間で切り替わることにより音の出力先が切り替わった場合、携帯電話機10は、音の出力先が切り替わったことを利用者に通知してもよい。この利用者への通知は、種々の方法により行うことができ、例えば、携帯電話機10の表示部50に音の出力先を表示してもよい。また、例えば、音の出力先が切り替わったときに、出力先が切り替わったことを示す通知音を、出力する音に挿入してもよい。
また、例えば、検出部70が駆動拒否状態を検出している場合、携帯電話機10は、駆動拒否状態であることを利用者に通知してもよい。駆動拒否状態であることの通知は種々の方法により行うことができ、例えば、携帯電話機の表示部50に表示したり、携帯電話機10に別途LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を設けて、このLEDを点灯させたりすることにより行うことができる。
再び図7を参照すると、DSP120は、制御部130からのデジタル信号に対して、イコライジング処理、D/A変換処理、昇圧処理、フィルタ処理等の所要の信号処理を行って、スピーカ40及び圧電素子61に所要の音信号を印加する。
積層型圧電素子61に印加する再生音信号の最大電圧は、例えば10Vpp〜50Vppとすることができるが、かかる範囲に限定されず、携帯電話機10の重量や積層型圧電素子61の性能に応じて適宜調整可能である。また、積層型圧電素子61に印加される音信号は、直流電圧がバイアスされてもよく、そのバイアス電圧を中心に最大電圧が設定されてもよい。
また、積層型圧電素子61に限らず、圧電素子は、一般に高周波ほど電力損失が大きい。そのため、DSP120による積層型圧電素子61への音信号のフィルタ処理は、10kHz〜50kHz程度以上の周波数成分の少なくとも一部を減衰またはカットする周波数特性、あるいは漸次にまたは段階的に減衰率が高くなる周波数特性を有するように設定される。図10は、一例として、カットオフ周波数を約20kHzとした場合の周波数特性を示す。このように高周波成分を減衰またはカットすることにより、消費電力を抑制できる。
次に、図11を用いて、圧電振動部60及び脚部91の配置について説明する。図11は、携帯電話機10が、下面20a側を下方にして机等の水平な接触面150上に載置された様子を示す。ここで、机は、被接触部材の一例であり、接触面150は、音発生器が載置される接触面の一例である。図11に示すように、携帯電話機10は、少なくとも脚部91及び圧電振動部60が接触面150上に接して支持される。点Gは、携帯電話機10の重心である。すなわち、点Gは、音発生器の錘の重心である。
図11において、脚部91は、最下端部911を有する。最下端部911は、脚部91のうち、携帯電話機10が下面20a側を下方にして机等の水平な接触面150上に載置されたとき接触面150と当接する箇所である。
圧電振動部60は、最下端部601を有する。最下端部601は、圧電振動部60のうち、携帯電話機10が下面20a側を下方にして机等の水平な接触面150上に載置されたとき接触面150と当接する箇所である。最下端部601は、例えばキャップ63の先端部である。
図11において、点線Lは、携帯電話機10が下面20a側を下方にして机等の水平な接触面150上に載置されたとき、携帯電話機10の重心Gを通り接触面150に垂直な線(仮想の線)である。一点鎖線Iは、圧電振動部60が存在しないと仮定した場合に、脚部91の最下端部911と携帯電話機10の最下端部201とを結ぶ線(仮想の線)である。また、点線L1は、最下端部601を通り接触面150に垂直な線(仮想の線)である。点線L2は、最下端部911を通り接触面150に垂直な線(仮想の線)である。点線L1は、水平方向で点線Lから長さD1離間している。点線L2は、水平方向で点線Lから長さD2離間している。
図11において、領域R2は、携帯電話機10において点線Lによって区切られる一方側の領域である。また、領域R1は、携帯電話機10において点線Lによって区切られる他方側の領域である。脚部91は、領域R2側に設けられる。また、圧電振動部60は、下面20aにおいて、領域R1側に設けられる。
圧電振動部60は、領域R1側において、点線Lにできるだけ近い位置に設けられることが好ましい。これにより、圧電振動部60にかかる垂直方向の荷重が、圧電振動部60が領域R1側において点線Lから離間した位置に設けられる場合に比べて、大きくなる。これにより、携帯電話機10を音発生器の錘として有効に活用することができる。
脚部91の最下端部911は、領域R2側において、点線Lからできるだけ遠い位置に設けられることが好ましい。これにより、圧電振動部60を点線Lにできるだけ近い位置に設けた場合にも、最下端部911と圧電振動部60との間の距離が十分確保され、音発生器を安定して接触面150に載置することができる。
圧電振動部60の最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から最も伸びたとき或いは積層型圧電素子61の最大振幅時に、一点鎖線Iよりも接触面150側に位置するとよい。すなわち、最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から最も伸びたとき或いは積層型圧電素子61の最大振幅時に、一点鎖線Iよりも接触面150側に突出しているとよい。これにより、圧電振動部60により接触面150を適切に振動させることができる。
また、圧電振動部60の最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から積層型圧電素子61が最も縮んだとき或いは積層型圧電素子61の最小振幅時に、一点鎖線Iよりも接触面150側に位置するとよい。すなわち、最下端部601は、積層型圧電素子61に電圧が印加されず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から積層型圧電素子61が最も縮んだとき積層型圧電素子61の最小振幅時に、一点鎖線Iよりも接触面150側に突出しているとよい。これにより、携帯電話機10の最下端部201が接触面150に接触しにくくなり、例えば、本体20の塗装の種類によっては、塗装が剥がれにくくなる。また、最下端部201と接触面150との間で異音が発生しにくくなる。
図12(a)、(b)及び(c)は、携帯電話機10による音発生器としての動作を説明するための概略図である。携帯電話機10を音発生器として機能させる場合、携帯電話機10は、図12(a)に示すように、本体20の下面20a側を下方にして、圧電振動部60のキャップ63及び脚部91が机等の接触面150に接触するように横置きに立てて載置される。これにより、圧電振動部60には、携帯電話機10の重量が荷重として与えられる。つまり、携帯電話機10は、本発明に係る音発生器の錘として作用する。なお、図12(a)に示す状態では、積層型圧電素子61は、電圧が印加されていないため、伸縮しない。
その状態で、圧電振動部60の積層型圧電素子61が再生音信号により駆動されると、積層型圧電素子61は、図12(b)及び(c)に示すように、脚部91の接触面150への接触部分を支点として、キャップ63が接触面150から離間することなく、再生音信号に応じて伸縮振動する。なお、最下端部201が接触面150に接触して異音が発生する等の不都合がなければ、多少離間してもよい。積層型圧電素子61の最も伸びたときの長さと最も縮んだときの長さとの差は、例えば0.05μm〜50μmである。これにより、積層型圧電素子61の伸縮振動がキャップ63を通して接触面150に伝達されて接触面150が振動し、接触面150が振動スピーカとして機能して接触面150から音が発生する。なお、最も伸びたときの長さと最も縮んだときの長さとの差が0.05μm未満だと、接触面を適切に振動させられないおそれがあり、一方、50μmを超えると、振動が大きくなり音発生器ががたつくおそれがある。
ここで、上述したように、キャップ63の先端部は、積層型圧電素子61が最も伸びたときに、圧電振動部60が存在しないと仮定した場合に、脚部91の最下端部911と携帯電話機10の最下端部201とを結ぶ線(図11の一点鎖線I)よりも接触面150側に位置するとよい。また、キャップ63の先端部は、積層型圧電素子61が最も縮んだときに、上記仮想線よりも接触面150側に位置するとよい。
また、図5に示す下面20aとキャップ63の対向面63cとの間の距離dは、積層型圧電素子61に電圧が印加されておらず積層型圧電素子61が伸縮しない状態から最も縮んだ状態となったときの変位量よりも長いとよい。これにより、積層型圧電素子61が最も縮んだ状態(図12(c)に示す状態)でも、本体20の下面20aとキャップ63とが接触しにくくできる。したがって、キャップ63が圧電素子61から脱落しにくくなる。
圧電振動部60の下面20aにおける配置箇所、積層型圧電素子61の積層方向の長さ、キャップ63の寸法等は、上記の条件を満たすように適宜決定される。
本実施の形態に係る音発生器によると、状況に応じて良好な音を出力することができる。具体的には、携帯電話機10は、検出部70が駆動許容状態を検出した場合に圧電素子を使用して音を出力することができる。この圧電素子として、スタックタイプの積層型圧電素子61を用いて、再生音信号により積層方向に沿って伸縮振動させ、その伸縮振動を接触面150に伝達するので、接触面150に対する伸縮方向(変形方向)の振動伝達効率が良く、接触面150を効率良く振動させることができる。しかも、キャップ63を介して積層型圧電素子61を接触面150に接触させるので、積層型圧電素子61の破損も防止できる。また、携帯電話機10を横置きに立てて、圧電振動部60のキャップ63を接触面150に接触させると、キャップ63に携帯電話機10の重量が荷重としてかかるので、キャップ63を接触面150に確実に接触させて、圧電振動部60の伸縮振動を接触面150に効率良く伝達することができる。このように、検出部70が駆動許容状態を検出した場合には、圧電素子を使用して良好な音を発生させることができる。
また、本実施の形態に係る音発生器によると、検出部70が、各検出機構を使用して圧電素子61の駆動許容状態と駆動拒否状態との2つの状態を検出し、検出された状態に応じて圧電素子61またはスピーカ40に音信号が印加される。従って、例えば、圧電素子61から音を発生させる必要がない状況または圧電素子61から音を発生させることが不適切である状況において、圧電素子61への音信号の印加を停止したり、代わりにスピーカ40に音信号を印加したりすることができる。このようにして、本実施の形態に係る音発生器は、状況に応じた音信号の印加を行い、音を出力することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態において、検出部70は、いずれかの検出機構を使用して2つの状態を検出するとして説明したが、本発明はこの形態に限られない。すなわち、検出部70は、2以上の検出機構を使用して2つの状態を検出してもよい。検出部70が2以上の検出機構を使用して2つの状態を検出する場合、検出部70が、2つの状態を検出するために使用した全ての検出機構において駆動許容状態を検出すると、制御部130は、圧電素子61への音信号の印加を実行することができる。一方、検出部70が、2つの状態を検出するために使用した検出機構のいずれかにおいて駆動拒否状態を検出すると、制御部130は、圧電素子61への音信号の印加を停止することができる。このとき、制御部130は、スピーカ40に音信号を印加してもよい。
ここで、検出部70が2つの検出機構を使用して2つの状態を検出する場合について、具体的に説明する。ここでは、第1の検出機構としてマイク71を、第2の検出機構として近接センサ72を使用する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1及び第2の検出機構として、任意の検出機構を使用することができる。図13は、検出部70が2つの検出機構を使用して2つの状態を検出する場合における、携帯電話機10が行う音出力の動作手順を示すフローチャートである。
まず、携帯電話機10において、第1の検出機構であるマイク71が、2つの状態を判断するための情報、すなわち接触面150から発生する音を取得する(ステップS201)。次に、検出部70は、第1の検出機構が取得した情報に基づいて、携帯電話機10が駆動許容状態または駆動拒否状態のいずれであるかを検出する(ステップS202)。検出部70が駆動許容状態を検出した場合(ステップS202の駆動許容状態)、第2の検出機構である近接センサ72が、2つの状態を判断するための情報、すなわち検出対象物が周囲に存在するか否かに関する情報を取得する(ステップS203)。そして、検出部70は、第2の検出機構が取得した情報に基づいて、携帯電話機10が駆動許容状態または駆動拒否状態のいずれであるかを検出する(ステップS204)。検出部70が駆動許容状態を検出した場合(ステップS204の駆動許容状態)、制御部130は、圧電素子61への音信号の印加を決定する(ステップS205)。そして、制御部130は、圧電素子61へ音信号を印加する(ステップS208)。
一方、検出部70が、第1及び第2の検出機構のいずれかが取得した情報に基づいて駆動拒否状態を検出した場合(ステップS202の駆動拒否状態またはステップS204の駆動拒否状態)、制御部130は、スピーカ40を駆動するか否かを判断する(ステップS206)。制御部130は、例えば、第1の検出機構のマイク71が取得した情報に基づいて検出部70が駆動拒否状態を検出した場合にスピーカ40を駆動すると判断し、第2の検出機構の近接センサ72が取得した情報に基づいて検出部70が駆動拒否状態を検出した場合にスピーカ40を駆動しないと判断することができる。
制御部130がスピーカ40を駆動すると判断した場合(ステップS206のYes)、制御部130は、スピーカ40への音信号の印加を決定する(ステップS207)。そして、制御部130は、スピーカ40へ音信号を印加する(ステップS208)。一方、制御部130がスピーカ40を駆動しないと判断した場合(ステップS206のNo)、制御部130は、音信号を印加せず、このフローを終了する。検出部70が定期的または不定期的に2つの状態を検出することにより、携帯電話機10はこのフローを繰り返してもよい。また、検出部70が3つ以上の検出機構を使用して2つの状態を検出する場合においても、携帯電話機10は、同様の動作手順で音出力を行うことができる。
このように、検出部70が、2つ以上の検出機構を使用して圧電素子61の駆動許容状態と駆動拒否状態との2つの状態を検出し、制御部130が、検出された状態に応じて圧電素子61またはスピーカ40に音信号を印加することにより、複数の異なる状況に応じて音信号の印加を行い、音を出力することができる。
また、上記実施の形態において、圧電振動部60を保持部100に対して固定する構造は、図5に示すものに限られない。図14(a)〜(c)に示すように、圧電振動部60を保持部100に保持してもよい。図14(a)に示す保持部100は、下面20aに開口する幅広のスリット101aと、該スリット101aに連続する幅狭のスリット101bとを有する。積層型圧電素子61は、一端部が幅狭のスリット101bに配置されて側面が接着剤102を介してスリット101bに固定される。また、幅広のスリット101aには、積層型圧電素子61との隙間に、積層型圧電素子61の伸縮動作の妨げとならないシリコーンゴムやゲル等の充填剤103が充填される。このように圧電振動部60を保持部100に保持すれば、Oリング等の防水パッキンを用いることなく、携帯電話機10をより確実に防水することができる。また、積層型圧電素子61の下面20aから突出する部分に絶縁性のキャップを被せることにより、積層型圧電素子61の絶縁も確実に行うことができる。
図14(b)に示す保持部100は、下面20aに向けて拡開するテーパ状スリット101cと、該テーパ状スリット101cに連続する幅狭のスリット101dとを有する。積層型圧電素子61は、一端部が幅狭のスリット101dに配置されて側面が接着剤102を介してスリット101dに固定される。また、テーパ状スリット101cには、積層型圧電素子61との隙間に、積層型圧電素子61の伸縮動作の妨げとならないシリコーンゴムやゲル等の充填剤103が充填される。このように構成すれば、図14(a)の保持部100と同様の効果が得られる他、テーパ状スリット101cを有しているので、積層型圧電素子61の保持部100への組み付けが容易にできる利点がある。
図14(c)に示す保持部100は、上記実施の形態と同様に、一様な幅のスリット101を有するが、積層型圧電素子61は、一端部側の端面が接着剤102を介してスリット101に固定されている。また、スリット101内で積層型圧電素子61の適宜の箇所には、Oリング62が配置されている。このような積層型圧電素子61の保持態様は、特に、積層型圧電素子61が、図4に示したように、リード線の接続部が側面電極に形成されている場合に、リード線の引き回し等の点で有利となる。
また、上記実施の形態や図14(a)〜(c)の変形例において、圧電振動部60は、キャップ63を省略し、積層型圧電素子61の先端面を直接、あるいは絶縁部材等からなる振動伝達部材を介して接触面150に載置してもよい。また、圧電素子は、上述したスタックタイプの積層型圧電素子に限らず、ユニモルフ、バイモルフあるいは積層型バイモルフ素子を用いてもよい。図15は、バイモルフを用いた場合の要部の概略構成を示す図である。バイモルフ65は、長尺の矩形状をなし、本体20の下面20aに一方の表面65aが露出して長尺の両端部が保持部100に保持される。保持部100は、バイモルフ65を保持する開口部101eを有し、開口部101eのバイモルフ65の裏面65b側の内面が湾曲して形成される。かかる構成によれば、バイモルフ65が接触面150に接触するように本体20を接触面150に載置して、バイモルフ65を再生音信号により駆動すると、バイモルフ65が屈曲(湾曲)振動する。これにより、バイモルフ65の振動が接触面150に伝達されて、接触面150が振動スピーカとして機能して接触面150から再生音が発生する。なお、バイモルフ65の表面65aには、ポリウレタン等の被覆層が形成されていてもよい。
また、上記実施の形態において、検出機構は、マイク71、近接センサ72、傾き検出センサ73、振動検出センサ74及び無線通信部75に限られない。検出機構は、検出部70が2つの状態を検出するために使用する検出機構であれば、如何なるものであってもよい。
例えば、本体20の下面20aにカメラを設け、検出部70は、このカメラを検出機構として使用することができる。カメラは、定期的または不定期的に圧電振動部60の先端部に該当する最下端部601の画像を撮影し、圧電振動部60が接触面150と接触しているか否かを検出する。検出部70は、カメラが撮影した画像に基づき、圧電振動部60と接触面150とが接触していることを確認した場合、駆動許容状態を検出し、接触していないこと確認した場合、駆動拒否状態を検出する。また、例えば、カメラの撮影した画像に変化があった場合、検出部70は、携帯電話機10が移動したと認識し、駆動拒否状態を検出してもよい。このようにして、携帯電話機10は、圧電振動部60が接触面に接触している場合に圧電素子61を駆動したり、携帯電話機10が移動している場合に圧電素子61の駆動を停止したりすることができる。
また、例えば、検出部70は、携帯電話機10が備える時計を検出機構として使用することができる。時計を検出機構として使用するに際し、利用者は圧電素子61に音信号を印加しない時間帯を予め検出部70に登録しておく。時計が予め登録された時間帯の時間を示す場合、検出部70は、圧電素子61に音信号を印加しない時間帯であることを認識し、駆動拒否状態を検出する。一方、時計が予め登録された時間帯以外の時間を示す場合、検出部70は、圧電素子61に音信号を印加する時間帯であることを認識し、駆動許容状態を検出する。なお、時計を検出機構として使用するに際しては、利用者は圧電素子61に音信号を印加する時間帯を予め検出部70に登録してもよい。この場合、時計が予め登録された時間帯の時間を示す場合、検出部70は駆動許容状態を検出し、時計が予め登録された時間帯以外の時間を示す場合、検出部70は駆動拒否状態を検出する。時計を検出機構として使用することにより、例えば、深夜に圧電素子61を使用して音を発生させないようにしたり、日中の特定の時間にのみ圧電素子61を使用して音を発生させるようにしたりすることができる。
また、携帯電話機10は、再生するコンテンツを認識するコンテンツ認識部を備え、検出部70は、コンテンツ認識部を検出機構として使用することができる。コンテンツ認識部は、例えば所定のアルゴリズムに基づいて、再生するコンテンツが利用者以外の他者と共有してもよいコンテンツであるか否かを認識する。また、例えば、利用者が、利用者以外の他者と共有してもよいコンテンツを、予めコンテンツ認識部に登録しておく。そして、携帯電話機10から音を出力する際に、コンテンツ認識部は、その音が利用者以外の他者と共有してもよいコンテンツであるかを認識する。コンテンツ認識部が、共有してもよいコンテンツであると認識した場合、検出部70は駆動許容状態を検出し、共有してもよいコンテンツではないと認識した場合、検出部70は駆動拒否状態を検出する。共有してもよいコンテンツは、例えば、映画やテレビ番組の音等とすることができる。一方、共有してもよいコンテンツに該当しないコンテンツは、例えば、留守番電話の録音のように、利用者の個人に係る情報が含まれている可能性のある音等とすることができる。このようにして、利用者の個人に係る情報が、圧電素子61を使用した音出力によって他者に漏洩することを防ぐことができる。
また、携帯電話機10は、電池残量を検出する電池残量検出部を備え、検出部70は、電池残量検出部を検出機構として使用することができる。電池残量検出部が、携帯電話機10の電池残量が所定の値以上であることを検出した場合、例えば電池残量が電池容量の10%以上であることを検出した場合、検出部70は、駆動許容状態を検出する。一方、電池残量検出部が、携帯電話機10の電池残量が所定の値未満であることを検出した場合、例えば電池残量が電池容量の10%未満であることを検出した場合、検出部70は、駆動拒否状態を検出する。このようにして、携帯電話機10は、電池残量が少ない場合に、圧電素子61の駆動を停止したり、電池消費量が圧電素子61よりも小さいスピーカ40を駆動したりすることができる。
また、携帯電話機10は、操作検出部を備え、検出部70は、操作検出部を検出機構として使用することができる。すなわち、操作検出部が利用者から携帯電話機10への操作を認識した場合、検出部70は駆動拒否状態を検出し、操作検出部が携帯電話機10への操作を認識しない場合、検出部70は駆動許容状態を検出する。このようにして、利用者が携帯電話機10を操作している間に、例えば圧電素子61が振動しないようにすることによって、利用者による携帯電話機10の操作を妨げないようにすることができる。この操作検出部を使用した状態の検出において、上述の説明では如何なる操作がされていても、検出部70は駆動拒否状態を検出するとして説明したが、所定の操作については、検出部70が駆動許容状態を検出するように、携帯電話機10を構成してもよい。例えば、音量調節操作等、利用者が音に関する操作をする場合には、携帯電話機10から音が出力されていれば好都合である。そのため、所定の操作については、例えば予め操作検出部に登録すること等により、検出部70が駆動許容状態を検出するように、携帯電話機10を構成してもよい。
また、検出部70は、スタンド90を検出機構として使用することができる。例えば、スタンド90が本体20に収納されている場合、検出部70は、圧電素子61を使用した音出力が使用されないと認識し、駆動拒否状態を検出することができる。一方、スタンド90が本体20から引き出されている場合、検出部70は、圧電素子61を使用した音出力が使用されると認識し、駆動許容状態を検出することができる。以上のように、検出部70は、様々な検出機構を使用して2つの状態を検出することが可能である。
また、上述の実施形態では、携帯電話機10は、スピーカ40を備えるものとして説明したが、携帯電話機10は、スピーカ40を備えないものであってもよい。この場合、携帯電話機10は、検出部70が駆動許容状態を検出した場合には、圧電素子61に音信号を印加することにより音を発生させ、駆動拒否状態を検出した場合には、音信号を印加せず、音を発生させないように構成することができる。このように携帯電話機10がスピーカ40を備えない場合には、ダイナミックスピーカ構造を有する携帯電話機と比較して、部品点数を削減できるため、携帯電話機10を少ない部品点数で簡便に構成できる。そのため、携帯電話機10を、より小型な構成とすることができる。
また、上記の実施形態では、非接触部材が机であり、接触面150が机の水平な載置面であるとして説明を行ったが、本発明はこれに限定されない。接触面150は水平な面でなくともよい。例えば、接触面150は、机の地面に垂直な面であってもよい。地面に垂直な面を有する被接触部材としては、例えば空間を区切るためのパーティション等が挙げられる。
また、上記実施の形態では、音発生器を携帯電話機10に搭載して、携帯電話機10を錘として機能させたが、錘はこれに限られない。例えば、携帯型ミュージックプレイヤ、据え置き型テレビ、電話会議システム、ノートパソコン、プロジェクタ、壁掛け時計/壁掛けテレビ、目覚まし時計、フォトフレーム等の多岐にわたる任意の電子機器を錘として、これらの電子機器に音発生器を搭載することもできる。