JP2018058745A - ダイヤモンド多結晶体の製造方法、ダイヤモンド多結晶体、切削工具、耐摩工具および研削工具 - Google Patents

ダイヤモンド多結晶体の製造方法、ダイヤモンド多結晶体、切削工具、耐摩工具および研削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を提供する。【解決手段】ダイヤモンド多結晶体の製造方法は、高圧相炭素の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上で熱処理することにより熱処理炭素材を得る第1工程と、上記熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る第2工程と、を備える。【選択図】なし

Description

本発明は、ダイヤモンド多結晶体の製造方法、ダイヤモンド多結晶体、切削工具、耐摩工具および研削工具に関する。
従来のダイヤモンド工具で使用されるダイヤモンド焼結体は、焼結助剤や結合材として、コバルト(Co)などの金属や、炭化ケイ素(SiC)などのセラミックスが用いられている。また、焼結助剤として炭酸塩を用いる方法が、たとえば特開平4−074766号公報(特許文献1)および特開平4−114966号公報(特許文献2)に示されている。これらは、ダイヤモンドの粉末を焼結助剤や結合材とともにダイヤモンドが熱力学的に安定な高温高圧条件下(通常、5〜8GPa、温度1300〜2200℃)で焼結することにより得られる。一方、天然に産出するダイヤモンド多結晶体(カーボナードやバラス)も知られ、一部掘削ビットとして使用されているが、材質のバラツキが大きく、また産出量も少ないため、工業的にはあまり使用されていない。
一方、グラファイト、無定形炭素などの非ダイヤモンド炭素を、超高圧高温下で、触媒および/または溶媒を用いずに直接にダイヤモンドに変換させると同時に焼結させる方法(直接変換焼結法)がある。たとえば、J. Chem. Phys., 38 (1963) 631-643(非特許文献1)、Japan. J. Appl. Phys., 11 (1972) 578-590(非特許文献2)、および、Nature 259 (1976) 38(非特許文献3)は、グラファイトを出発物質として、14〜18GPa、3000K以上の超高圧高温下でダイヤモンド多結晶体が得られることを示す。
さらに、硬度や強度を高める観点から、New Diamond and Frontier Carbon Technology, 14 (2004) 313(非特許文献4)およびSEIテニクカルレビュー165(2004)68(非特許文献5)は、高純度のグラファイトを原料とし、12GPa以上、2200℃以上の超高圧高温下で間接加熱による直接変換焼結法により、緻密で高純度なダイヤモンド多結晶体を得る方法を示す。
特開平4−074766号公報 特開平4−114966号公報
J. Chem. Phys., 38 (1963) 631-643 Japan. J. Appl. Phys., 11 (1972) 578-590 Nature 259 (1976) 38 New Diamond and Frontier Carbon Technology, 14 (2004) 313 SEIテニクカルレビュー165(2004)68
しかしながら、特許文献1および特許文献2に示すような焼結助剤を用いたダイヤモンド多結晶体は、用いた焼結助剤が多結晶体に含まれることから、焼結助剤がダイヤモンドの黒鉛化を促す触媒として作用するため、耐熱性に劣る。また、焼結助剤を用いたダイヤモンド多結晶体は、熱を加えると焼結助剤とダイヤモンドとの熱膨張差による微細クラックが入りやすく、機械的特性が低下する。
ダイヤモンド多結晶体の耐熱性を上げるために、ダイヤモンド粒子の粒界の金属を除去したものも知られており、この方法により耐熱温度は約1200℃と向上するが、多結晶体が多孔質となるため強度がさらに低下する。また、結合材としてSiCを用いたダイヤモンド多結晶体は、耐熱性に優れるが、ダイヤモンド粒子同士は結合が無いため、強度は低い。
また、非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3におけるダイヤモンド多結晶体の製造においては、いずれもグラファイトなどの導電性のある非ダイヤモンド炭素に直接電流を流すことで加熱する直接通電加熱法を用いているため、かかる方法で得られたダイヤモンド多結晶体は、グラファイトなどの非ダイヤモンド炭素が残留しており、さらにダイヤモンドの結晶粒径が不均一であったため、硬度や強度が不十分であった。
また、非特許文献4および非特許文献5におけるダイヤモンド多結晶体の製造においては、超精密加工など小さい粒径のダイヤモンド多結晶体を得るために、焼結温度を低くすると、焼結性が低くなり多結晶体の強度が低くなった。また、ダイヤモンド粒子の粒径が小さくなると靭性が低くなり、工具が欠けやすくなった。
そこで、上記の問題を解決して、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を製造できるダイヤモンド多結晶体の製造方法、ダイヤモンド多結晶体、切削工具、耐摩工具および研削工具を提供することを目的とする。
本発明の一態様にかかるダイヤモンド多結晶体の製造方法は、高圧相炭素の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上で熱処理することにより熱処理炭素材を得る第1工程と、上記熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る第2工程と、を備える。
本発明の一態様にかかるダイヤモンド多結晶体は、ダイヤモンドを含み、ダイヤモンドは15nm以下の平均粒径を有し、含有水素濃度が500ppma以下であり、23℃±5℃における試験荷重4.9Nのヌープ硬度測定において、ヌープ圧痕の対角線の長い方の対角線の長さaと短い方の対角線の長さbとの比b/aが0.05以下である。
本発明の一態様にかかる切削工具、耐摩工具および研削工具は、上記ダイヤモンド多結晶を備える。
上記によれば、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を製造できるダイヤモンド多結晶体の製造方法、ダイヤモンド多結晶体、切削工具、耐摩工具および研削工具を提供できる。
ヌープ圧痕を説明する説明図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
[1]本発明の一態様にかかるダイヤモンド多結晶体の製造方法は、高圧相炭素の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上で熱処理することにより熱処理炭素材を得る第1工程と、上記熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る第2工程と、を備える。かかる構成により、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を製造できる。
[2]上記第1工程において、2100℃以下で熱処理することができる。これにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を効率よく製造できる。
[3]上記高圧相炭素は、ダイヤモンドおよび六方晶ダイヤモンドの少なくとも1つからなることができる。これにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を効率よく製造できる。
[4]上記ダイヤモンド多結晶体の製造方法は、高圧相炭素の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上2100℃以下で熱処理することにより熱処理炭素材を得る第1工程と、上記熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る第2工程と、を備え、上記高圧相炭素は、ダイヤモンドおよび六方晶ダイヤモンドの少なくとも1つからなることができる。これにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体をさらに効率よく製造できる。
[5]本発明の一態様にかかるダイヤモンド多結晶体は、ダイヤモンドを含み、ダイヤモンドは15nm以下の平均粒径を有し、含有水素濃度が500ppma以下であり、23℃±5℃における試験荷重4.9Nのヌープ硬度測定において、ヌープ圧痕の対角線の長い方の対角線の長さaと短い方の対角線の長さbとの比b/aが0.05以下である。かかる構成により、ダイヤモンド多結晶体は、微細な組織を有しかつ強靭となる。
[6]上記ヌープ硬度測定において、ヌープ硬度を100GPa以上140GPa以下とすることができる。これにより、微細な組織を有しかつより強靭なダイヤモンド多結晶体が得られる。
[7]本発明の一態様にかかる切削工具は、上記ダイヤモンド多結晶体を備える。これにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を備えた切削工具が得られる。かかる切削工具は、各種材料の切削に有用である。
[8]本発明の一態様にかかる耐摩工具は、上記ダイヤモンド多結晶体を備える。これにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を備えた耐摩工具が得られる。かかる耐摩工具は、各種材料の加工に有用である。
[9]本発明の一態様にかかる研削工具は、上記ダイヤモンド多結晶体を備える。これにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を備えた研削工具が得られる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)についてさらに詳細に説明する。ここで、本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるものではない。本明細書において「粒径」は、特段の規定がなければ、平均粒径を意味する。
≪実施形態1:ダイヤモンド多結晶体の製造方法≫
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、高圧相炭素の粒子が直接結合している高圧相炭素多結晶体を所定の温度で熱処理することにより熱処理炭素材を得て、この熱処理炭素材を出発物質としてダイヤモンドに変換しかつ焼結することにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体の製造方法は、高圧相炭素の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上で熱処理することにより熱処理炭素材を得る第1工程と、上記熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る第2工程と、を備える。かかる製造方法により得られるダイヤモンド多結晶体は、それを構成するダイヤモンドの粒径が微細となり、かつ強靭となる。
ここで、本明細書において、「高圧相炭素」とは、高圧下で熱力学的に安定または準安定な炭素をいう。具体的には、炭素について一般的に知られているP(圧力)−T(温度)相図において、グラファイト−ダイヤモンド平衡線よりも高圧側の領域であるダイヤモンド安定領域内で熱力学的に安定または準安定な炭素をいう。より具体的には、ダイヤモンド、六方晶ダイヤモンドおよび圧縮グラファイトをいう。
ダイヤモンドは、各炭素原子がsp3混成軌道により互いに結合しており、炭素原子で形成される六員環がすべていす型配座をとり、立方晶系の結晶構造を有する。六方晶ダイヤモンドは、ロンズデーライトとも呼ばれ、各炭素原子がsp3混成軌道により互いに結合しており、炭素原子で形成される六員環の一部がふね型配座および残部がいす型配座をとり、六方晶系の結晶構造を有する。圧縮グラファイトは、通常のグラファイト(上記熱処理をしていないグラファイトをいい、これは後述する常圧相炭素に含まれる。)と同様に各炭素原子がsp2混成軌道により互いに結合して六方晶系の結晶構造を有するが、(002)面の面間隔(d値)が通常のグラファイトに比べて98%以下と小さい、c軸方向に圧縮された結晶構造を有する。
これに対して、後述する「常圧相炭素」とは、常圧下で熱力学的に安定または準安定な炭素をいう。具体的には、上述した炭素についてのP−T相図において、グラファイト−ダイヤモンド平衡線よりも低圧側の領域であるグラファイト安定領域内で安定な炭素をいう。より具体的には、グラファイト(上記の通常のグラファイト)、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、アモルファス(非晶質)カーボンなどが含まれる。
<第1工程>
第1工程は、高圧相炭素(たとえば、ダイヤモンド、六方晶ダイヤモンドおよび圧縮グラファイトの少なくとも1つ)の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上で熱処理することにより熱処理炭素材を得る熱処理工程である。第1工程において、高圧相炭素多結晶体を1300℃以上で熱処理することにより、高圧相炭素が常圧相炭素(以下、「熱処理後の常圧相炭素」ともいう。)に変換されて、熱処理炭素材(すなわち、上記熱処理後の常圧相炭素材)が得られる。
上記熱処理炭素は、上記熱処理により形成された常圧相炭素であり、通常の常圧相炭素(上記熱処理をしていない常圧相炭素をいう。以下同じ。)とは異なり、球状または頂点が丸みを帯びた多面体状の形状を有する。さらに、熱処理炭素は、上記の球状または多面体状の形状をとり、ダングリングボンドが実質的にないため、グラファイトおよび無定形炭素などの通常の常圧相炭素に比べて、窒素、酸素および水分などの大気成分が吸着しにくい。このため、熱処理炭素の粉末は、上記通常の常圧相炭素に比べて、品質管理が容易となる。これらのことから、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を効率的に製造することができる。特に、バルク体である高圧相炭素多結晶体を使用する場合は、高圧相炭素粉末を使用する場合に比べて、大気に触れる表面積が小さいため大気成分の吸着が少なく、ダイヤモンド多結晶体をより効率的に製造することができる。
第1工程において、高圧相炭素多結晶体は、高圧相炭素の粒子が互いに直接結合しており、バインダー、焼結助剤および触媒などを実質的に含んでいない。このため、純度の高い熱処理炭素材が得られる。また、高圧相炭素多結晶体は、高圧相炭素の粒子が互いに直接結合していれば足り、純度の高い熱処理炭素材が得られる限り、上記の常圧相炭素を含んでいてもよい。ここで、高圧相炭素多結晶体中の常圧相炭素の含有量は5体積%以下が好ましく、1体積%以下がより好ましい。また、不純物の少ないダイヤモンド多結晶体を得る観点から、高圧相炭素多結晶体の炭素以外の不純物の含有量は、水素が500ppma以下、窒素が200ppma以下、酸素が20ppma以下が好ましい。
上記高圧相炭素多結晶体の形状は、大気に触れる表面積を小さくして、水素、窒素、酸素などの不純物の混入を抑制する観点から、単位体積に対する表面積が小さい球状、正多面体状、およびそれらに近い形状が好ましい。上記高圧相炭素多結晶体の大きさは、大気に触れる表面積を小さくして、水素、窒素、酸素などの不純物の混入を抑制する観点から、球状の場合直径が好ましくは1mm以上より好ましくは1cm以上であり、立方体の場合一辺が好ましくは1mm以上より好ましくは1cm以上である。
高圧相炭素多結晶体を構成する高圧相炭素の粒径は、特に制限はないが、製造上の理由により10nm以上100μm以下が好ましい。熱処理温度は、高圧相炭素多結晶体中の高圧相炭素の粒径により異なっており、粒径が小さい程熱処理温度が低くなるが、1300℃より低い温度ではどの粒径の高圧相炭素も上記常圧相炭素に変換しない。熱処理炭素材を構成する熱処理炭素は、熱処理温度により球状または丸みを帯びた多面体状の形状をとる。2100℃よりも高い温度で熱処理した熱処理炭素は、グラファイトの構造に近づき、粒成長するため、熱処理温度は2100℃以下が好ましい。1300℃以上2100℃以下で熱処理された熱処理炭素の粒径は、熱処理前の高圧相炭素の粒径とほほ同じである。
また、熱処理する際の雰囲気は、真空中、アルゴン中など酸素が少ない雰囲気あるいは酸素がない雰囲気で行うのが好ましい。大気中など酸素が多い雰囲気下で熱処理を行うと、熱処理炭素に酸素が吸着する。このため、次の第2工程において、ダイヤモンドへの変換が阻害されるとともに、得られるダイヤモンド多結晶体の強度が低くなる。
第1工程における熱処理時間は、特に制限はないが、高圧相炭素から熱処理炭素への変換を促進する観点から、1分以上が好ましく、グラファイト化および粒子の成長を抑制する観点から、120分(2時間)以下が好ましい。
また、第1工程においては、高圧相炭素が完全になくなるまで熱処理することが好ましいが、熱処理炭素材には、高圧相炭素が一部残留していてもよい。熱処理炭素最中の高圧相炭素の許容残留量は、成形されるダイヤモンド多結晶体のダイヤモンドの粒径および熱処理炭素材の熱処理炭素の粒径によって異なり、粒径数十nm以下の微粒のダイヤモンド多結晶体を形成する場合には、粒径が10nmより大きく100nm以下の熱処理炭素で構成される熱処理炭素材では50体積%以下が好ましく、粒径が100nmより大きく5μm以下の熱処理炭素で構成される熱処理炭素材では30体積%以下が好ましく、粒径が5μmより大きい熱処理炭素で構成される熱処理炭素材では10体積%以下が好ましい。
上記高圧相炭素は、ダイヤモンドおよび六方晶ダイヤモンドの少なくとも1つからなることが好ましい。高圧相炭素がダイヤモンドおよび六方晶ダイヤモンドのすくなくとも1つからなることにより、微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体を効率的に製造することができる。
ここで、高圧相炭素および熱処理炭素の同素体組成は、X線回折法により確認することができ、たとえばX線回折装置(商品名:「X’pert」、スペクトリス社製)を用いることができる。このときの該装置の条件はたとえば、以下のとおりとすればよい。
特性X線: Cu−Kα(波長1.54Å)
管電圧: 45kV
管電流: 40mA
フィルター: 多層ミラー
光学系: 集中法
X線回折法: θ−2θ法。
高圧相炭素および熱処理炭素の不純物の含有量は、たとえば二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定できる。SIMSを用いて不純物の含有量を測定する場合、たとえば以下の条件で分析することができる。
測定装置: 商品名(品番):「IMS−7f」、CAMECA社製
一次イオン種: セシウム(Cs+
一次加速電圧: 15kV
検出領域: 30(μmφ)
測定精度: ±40%(2σ)。
高圧相炭素多結晶体中の高圧相炭素の粒径(平均粒径)および熱処理炭素材中の熱処理炭素の粒径(平均粒径)は、以下の走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた切断法により求めることができる。SEMは1000倍〜50000倍の倍率で観察するときに好適であり、TEMは50000倍を超える倍率で観察するときに好適である。具体的には、まず、SEMまたはTEMを用いて、高圧圧相炭素多結晶体および熱処理炭素材のそれぞれの任意に特定される断面を1000倍〜30000倍の倍率で観察し、SEM画像またはTEM画像を得る。
次に、切断法により粒子の粒径を求める。具体的には、上記SEM画像またはTEM画像に円を描き、その円の中心から8本の直線を放射状、かつ各直線間の交差角度がほぼ等しくなるように円の外周まで引く。このとき、上記の観察倍率および円の直径は、上記直線1本あたり炭素の粒子(結晶粒)が10〜50個程度載るように設定することが好ましい。
さらに、それぞれの直線毎に炭素の粒子の結晶粒界が横切る数を数え、直線の長さをその横切る数で除することにより平均切片長さを求める。続いて、その平均切片長さに1.128を乗じて得られる数値を平均粒径とする(かかる切断法は、ASTM規格の公称粒径を算出する方法に準じている)。
高圧相炭素および熱処理炭素の平均粒径は、上記SEM画像またはTEM画像を3枚用い、各画像毎に上記方法で炭素の粒子の平均粒径を求め、その平均粒径の平均値によることが好ましい。熱処理炭素材中の熱処理炭素の結晶粒の形状は、上記SEM画像またはTEM画像を用いることにより特定することができる。
<第2工程>
第2工程は、熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る焼結工程である。第2工程において、第1工程の熱処理がされた熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結をすることにより、熱処理炭素材中の熱処理炭素がダイヤモンドに変換されるとともに微細化して、ダイヤモンドの粒径が微細で微細な組織を有しかつ強靭なダイヤモンド多結晶体が得られる。
第2工程において、焼結圧力および焼結温度は、12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下である必要がある。焼結圧力が12GPa未満であると、ダイヤモンド多結晶体に未変換の熱処理炭素が多く残留し、後述するダイヤモンド多結晶体の物性としてのヌープ圧痕の対角線の比b/aが0.05以下であることを満たさなくなる傾向がある。焼結圧力の上限を限定する必要はないが、装置(超高圧高温発生装置)の技術的な理由により25GPaを上限とする。また、焼結温度が1200℃未満であるとダイヤモンド多結晶体に未変換の熱処理炭素が多く残留し、後述するダイヤモンド多結晶体の物性としてのヌープ圧痕の対角線の比b/aが0.05以下であることを満たさなくなる傾向がある。焼結温度が2300℃を超えるとダイヤモンドの粒成長が進むため微細な組織が得られない傾向がある。
第2工程において、焼結時間は、1分以上20分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。焼結時間が1分未満であると焼結が不十分となる。焼結時間を20分より長くしても焼結状態に差はなく経済的に不利となる。
第2工程は、第1工程により得られる上記熱処理炭素材中の熱処理炭素を、ダイヤモンドに変換し、かつ焼結する工程である。本工程では、焼結助剤および/または触媒を用いることなく、上記熱処理炭素を直接ダイヤモンドに変換する。通常、第2工程においてダイヤモンドへの変換は、焼結と同時に進む。
ダイヤモンド多結晶体において、その組織の微細性および強靭性を阻害しない範囲で、未変換の熱処理炭素および/または六方晶ダイヤモンドが含まれていてもよい。ダイヤモンド多結晶体の組織の微細性および強靭性を阻害しない観点から、ダイヤモンド多結晶体中の未変換の熱処理炭素の含有量は0.5体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましい。ダイヤモンド多結晶体中の六方晶ダイヤモンドの含有量に制限はなく、六方晶ダイヤモンドの含有量の如何を問わず、ダイヤモンド多結晶体の組織の微細性および強靭性が維持される。
≪ダイヤモンド多結晶体≫
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、ダイヤモンドを含み、ダイヤモンドは15nm以下の平均粒径を有し、含有水素濃度が500ppma以下であり、23℃±5℃における試験荷重4.9Nのヌープ硬度測定において、ヌープ圧痕の対角線の長い方の対角線の長さaと短い方の対角線の長さbとの比b/aが0.05以下である。本実施形態のダイヤモンド多結晶体は、上記の構成により、微細な組織を有しかつ強靭となる。
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、バインダー、焼結助剤および触媒などを実質的に含んでいない。このため、従来のダイヤモンド焼結体のバインダー、焼結助剤および触媒の少なくともいずれかを含むことによるデメリットを解消することができる。本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、焼結体である。しかしながら焼結体は、通常バインダーを含むことが意図される。このため、本明細書では、バインダーを含むものと明確に区別するため、焼結体という用語に代えて、「多結晶体」という用語を用いる。
また、ダイヤモンド多結晶体は、微細な組織および強靭さが阻害されない範囲において、上記常圧相炭素を含んでいてもよい。ダイヤモンド多結晶体の微細な組織および強靭さを阻害しない観点から、ダイヤモンド多結晶体中の常圧相炭素の含有量は、0.5体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましい。
また、ダイヤモンド多結晶体は、微細な組織および強靭さが阻害されない範囲において、上記六方晶ダイヤモンドを含んでいてもよい。ダイヤモンド多結晶体中の六方晶ダイヤモンドの含有量に制限はなく、六方晶ダイヤモンドの含有量の如何を問わず、ダイヤモンド多結晶体の組織の微細性および強靭性が維持される。
ダイヤモンド多結晶体の組成および各組成の含有量は、X線回折法により確認することができ、たとえば、上述のX線回折装置(商品名:「X’pert」、スペクトリス社製)を用いて測定することができる。このときの該装置の条件はたとえば、以下のとおりとすればよい。
特性X線: Cu−Kα(波長1.54Å)
管電圧: 45kV
管電流: 40mA
フィルター: 多層ミラー
光学系: 集中法
X線回折法: θ−2θ法。
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体の製造方法は、特に制限はないが、ダイヤモンド多結晶体を効率よく製造する観点から、上述のダイヤモンド多結晶体の製造方法が好ましい。
<ダイヤモンド>
ダイヤモンドは、ダイヤモンド多結晶体の組織を微細にする観点から、15nm以下の平均粒径を有する。かかる観点から、ダイヤモンドは、10nm以下の平均粒径を有することが好ましい。また、ダイヤモンドの平均粒径は、小さくなればなるほど好ましいため、その下限を特定する必要はない。ただし、非晶質炭素と識別する観点から、ダイヤモンドの平均粒径の下限は1nmとすることが好ましい。ダイヤモンド多結晶体は、ダイヤモンドを含むことにより、高硬度となり、かつ熱的安定性および化学的安定性にも優れる。さらに、ダイヤモンドが15nm以下の小さい粒径を有することにより、ダイヤモンド多結晶体は、緻密な組織を有しかつ強靭となり、工具などに用いる場合に負荷の大きな用途および/または微細加工用途など広範囲にわたって適用することができる。
ダイヤモンドの粒径は、応力集中が無く高強度になるという観点から均一であることが好ましい。このため、ダイヤモンドのそれぞれの粒径は、偏差の小さい正規分布を示すことが好ましい。粒径の偏差が大きく、または粒径が不均一となる場合、そこに応力が集中してしまい強度が低くなる。なお、本願において、単にダイヤモンドの粒径という場合は、ダイヤモンド多結晶体を構成するダイヤモンドの結晶粒の粒径を示すものとする。
ダイヤモンドの粒径(平均粒径)は、SEMまたはTEMを用いた切断法により求めることができる。具体的には、まず、SEMまたはTEMを用いて、ダイヤモンド多結晶体の任意に特定される断面を1000倍〜50000倍(SEMの場合)または200000倍〜500000倍(TEMの場合)の倍率で観察し、SEM画像またはTEM画像を得、上記SEM画像またはTEM画像に円を描いた後は、上述の高圧相炭素および熱処理炭素の平均粒径の測定方法と同様にして、ダイヤモンドの平均粒径を求めることができる。ダイヤモンドの平均粒径についても、上記SEM画像またはTEM画像を3枚用い、各画像毎に上記方法で平均粒径を求め、その平均粒径の平均値によることが好ましい。
<含有水素濃度>
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体の含有水素濃度は、ダイヤモンドの粒界の強度の低下を抑制することによりダイヤモンド多結晶体の靱性の低下を抑制する観点から、500ppma以下であり、200ppma以下が好ましい。ダイヤモンドの含有水素濃度は、少ない程好ましいため、その下限を規定すべきではない。ただし、測定装置の検出限界の観点から、その下限は0.1ppmaとすることが好ましい。含有水素濃度が少ないダイヤモンドを含むことにより、本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、硬度および強度により優れる。これにより、ダイヤモンド多結晶体を工具などに用いる場合に、負荷の大きな用途、微細加工用途などのより広範囲にわたって適用することが可能となる。
ダイヤモンド多結晶体は、上述のとおり含有水素濃度が500ppm以下である必要があるが、ダイヤモンドを含む限り、微細な組織および強靭さが阻害されない範囲において、不純物を含んでいてもよい。不純物としては、たとえば上述の水素(H)をはじめ、窒素(N)、酸素(O)などを挙げることができる。水素以外の不純物の含有量は、それぞれの成分が1000ppma未満(parts per million atomic)であって、かつこれらの合計で2000ppma未満であることが好ましい。不純物の含有量の合計が2000ppmaを超えるダイヤモンド多結晶体は、不純物に基づく空隙が多結晶体内に生じることにより、その強度が低下する。さらに、第2工程において得られるダイヤモンド多結晶体を大気中(すなわち、窒素、酸素および水分含有雰囲気下)に放置すると、不純物の含有量の合計が2000ppmaを超える傾向がある。たとえば、大気中で相対湿度が60%以上の環境下でダイヤモンド多結晶体を1日放置すると、不純物の含有量の合計が2000ppmaを超える。
不純物の含有量は、たとえば二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定できる。SIMSを用いて不純物の含有量を測定する場合、たとえば以下の条件で分析することができる。
測定装置: 商品名(品番):「IMS−7f」、CAMECA社製
一次イオン種: セシウム(Cs+
一次加速電圧: 15kV
検出領域: 30(μmφ)
測定精度: ±40%(2σ)。
<ヌープ硬度>
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、23℃±5℃における試験荷重4.9Nのヌープ硬度測定において、ヌープ圧痕の対角線の長い方の対角線の長さaと短い方の対角線の長さbとの比b/aが0.05以下である。さらに、上記ヌープ硬度測定において、ヌープ硬度が100GPa以上140GPa以下であることが好ましい。
ヌープ硬度測定は、たとえばJIS Z 2251:2009で規定され、工業材料の硬さを表す尺度の一つとして公知である。ヌープ硬度測定は、所定の温度および所定の荷重(試験荷重)でヌープ圧子を被測定材料へ押圧することにより、被測定材料の硬度を求めるものである。
ヌープ圧子とは、底面が菱型の四角柱の形状を有するダイヤモンド製の圧子をいう。底面の菱型は、対角線の長い方の対角線の長さaと短い方の対角線の長さbとの比b/aが0.141と規定されている。ヌープ圧痕とは、上記温度および試験荷重でヌープ圧子を被測定材料へ押圧した直後に、該ヌープ圧子をリリースした箇所に残る痕跡をいう。
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、ヌープ圧痕の上記比b/a(0.05以下)が本来のヌープ圧子の比b/a(0.141)よりも小さくなることを特徴の一つとしている。これは被測定材料(すなわち本実施形態ではダイヤモンド多結晶体)が弾性的に振る舞い、圧痕が弾性的に元に戻ろうとする回復(弾性回復)が生じていることを意味する。
以下、ヌープ圧痕を概念的に示した図1を用いて、上記の現象を説明する。たとえば、被測定材料が全く弾性回復を示さない場合、ヌープ圧子の断面とヌープ圧痕とは等しい形状となり、図1中の「本来のヌープ圧痕」として破線で示した菱形となる。その一方で、本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、図1中の矢印の方向に弾性回復が生じやすいため、本実施形態のヌープ圧痕は、図1中の実線で示した菱型となる。すなわち、図1中の矢印の方向の戻りが大きくなれば、比b/aの値は小さくなり、この値が小さいほど弾性回復(弾性的性質)が大きいことを示している。
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、ヌープ圧痕の比b/aが0.05以下であるので、大きな弾性回復力を有する。弾性回復が大きければ靭性は高くなり、もって強靭となる。以上のように、本実施形態におけるヌープ圧痕の比b/aは、ダイヤモンド多結晶体の弾性回復の多寡を示す指標とすることができる。
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体において、ヌープ圧痕の比b/aは、小さくなればなるほど弾性回復が大きくなることから好ましい。さらに、弾性回復が大きいと弾性的性質が大きくなり、超精密であることが要求される切削の場合に、刃先が弾性的に変形するため、鏡面の加工などで問題となる切削痕に起因する回折現象(所謂虹目模様)が発生しにくくなる点においても好ましい。このため、比b/aの下限を特定する必要はないが、弾性回復が大きくなり過ぎると、工具として使用した場合に、加工中の弾性変形が大きくなって加工性が悪化する傾向がある。かから観点から、比b/aの下限は0.030とすることが好ましい。本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体において、ヌープ圧痕の比b/aは、好ましくは0.04以上0.05以下である。
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体において、ヌープ硬度は、工具としての性能を保持するために高硬度、高耐摩耗性および強靭性を有する観点から、100GPa以上が好ましく、120GPa以上がより好ましい。また、ヌープ硬度は、測定技術上の観点から140GPa程度が上限であるため、140GPa以下がより好ましい。
≪切削工具、耐摩工具および研削工具≫
本実施形態にかかるダイヤモンド多結晶体は、ダイヤモンドの結晶粒の粒径が微細であり、かつ強靭となるため、切削工具、耐摩工具、研削工具などに用いることが好適である。すなわち、本実施形態にかかる切削工具、耐摩工具および研削工具は、それぞれ上記ダイヤモンド多結晶体を備えることが好ましい。
本実施形態にかかる切削工具、耐摩工具および研削工具はそれぞれ、その全体がダイヤモンド多結晶体で構成されていても良いし、その一部(たとえば切削工具の場合、刃先部分)のみがダイヤモンド多結晶体で構成されていてもよい。さらに、各工具の表面にコーティング膜が形成されていてもよい。
本実施形態にかかる切削工具としては、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、切削バイトなどを挙げることができる。本実施形態に係る耐摩工具としては、ダイス、スクライバー、スクライビングホイール、ドレッサーなどを挙げることができる。本実施形態に係る研削工具としては、研削砥石などを挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪実施例1〜9≫
1.熱処理炭素材の作製
実施例1〜9にかかるダイヤモンド多結晶体を製造するため、以下の方法により熱処理炭素材を作製した。まず、表1に示す種々の組成および平均粒径からなる高圧相炭素多結晶体を、表1に示す温度で真空中において1時間保持することにより熱処理した。これにより、表1において原料A〜Eで示す熱処理炭素材を作製した(第1工程)。得られた熱処理炭素材中の熱処理炭素の形状および平均粒径を表1にまとめた。
2.ダイヤモンド多結晶体の作製
次いで、原料A〜Eをそれぞれ高融点金属(材質:タンタル)からなるカプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表2に示す温度および圧力において20分間保持することにより、原料A〜Eをダイヤモンドに変換しかつ焼結させた(第2工程)。これにより、実施例1〜9のダイヤモンド多結晶体を得た。
Figure 2018058745
Figure 2018058745
≪比較例1〜2≫
比較例1および2のダイヤモンド多結晶体を以下の方法で作製した。すなわち、表2に示すように、原料Aを上記カプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表2に示す温度および圧力において20分間保持することにより、原料Aをダイヤモンドに変換し、かつ焼結した。これにより、比較例1および2のダイヤモンド多結晶体を得た。
ここで上記実施例1〜9および比較例1〜2に用いた高圧相炭素多結晶体中の炭素同素体の組成は、上述した方法、すなわちX線回折装置を用いたX線回折法により特定した。また、上記実施例1〜9および比較例1〜2に用いた高圧相炭素の平均粒径、熱処理炭素の形状および平均粒径は、上述したSEMまたはTEMを用いた切断法により求めた。
≪比較例3≫
比較例3のダイヤモンド多結晶体を以下の方法で作製した。まず、実施例1〜9の熱処理炭素の粉末に代わる原料として、平均粒径5μmの市販のグラファイト粉末(以下、表2に記載する場合を含めて「粗粒グラファアイト粉末」とも記す。)を準備した。
次いで、この粗粒グラファイト粉末を高融点金属からなるカプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表2に示す温度および圧力において20分間保持することにより、粗粒グラファイト粉末をダイヤモンドに変換し、かつ焼結した。これにより、比較例3のダイヤモンド多結晶体を得た。
≪比較例4≫
比較例4のダイヤモンド多結晶体を以下の方法で作製した。まず、実施例1〜9の熱処理炭素の粉末に代わる原料として、平均粒径20nmの市販のカーボンナノチューブの粉末(以下、表2に記載する場合を含めて「カーボンナノチューブ」とも記す。)を準備した。
次いで、このカーボンナノチューブの粉末を高融点金属からなるカプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表2に示す温度および圧力において20分間保持することにより、カーボンナノチューブの粉末をダイヤモンドに変換し、かつ焼結した。これにより、比較例4のダイヤモンド多結晶体を得た。
≪比較例5≫
比較例5のダイヤモンド焼結体を以下の方法で作製した。まず、実施例1〜9の熱処理炭素の粉末に代わる原料として、平均粒径2μmのダイヤモンド粉末とCo系の金属結合材粉末(以下、表2に記載する場合を含めて「ダイヤモンド粉末/金属結合材粉末」と記す。)を準備した。
次いで、このダイヤモンド粉末/金属結合材粉末を上記カプセルに入れ、超高圧高温発生装置を用いて表2に示す温度および圧力において20分間保持することにより焼結した。これにより、比較例5のダイヤモンド焼結体を得た。
≪評価≫
上記の様にして得られた実施例1〜9および比較例1〜4のダイヤモンド多結晶体、比較例5のダイヤモンド焼結体の組成、ダイヤモンドの平均粒径、含有水素濃度、ヌープ硬度、ヌープ圧痕の比b/aを下記の手法で測定した。
<組成>
実施例1〜9および比較例1〜4のダイヤモンド多結晶体および比較例5のダイヤモンド焼結体に含まれるダイヤモンドおよびグラファイトの組成およびそれらの含有量(体積%)を、それぞれX線回折装置(商品名:「X’pert」、スペクトリス社製)により上述した条件により測定および同定した。すなわち、この装置のX線の線源はCuであり、波長1.54ÅのKα線であった。その結果を表2の「組成」の欄に示した。比較例5においては、ダイヤモンド焼結体に占める金属結合材の含有量(体積%)を考慮することなく、上記の各炭素同素体の組成を算出した。
さらに、実施例1〜9および比較例1〜4のダイヤモンド多結晶体に対し、それぞれ不純物の含有濃度を上述したSIMSを用いた方法により測定した。比較例5のダイヤモンド焼結体は焼結体内に金属結合材を含むため、SIMSによる分析を行なわなかった。実施例1〜9および比較例1〜3のダイヤモンド多結晶体における含有水素濃度を表2の「含有水素濃度」の欄に示した。
<粒径>
実施例1〜9および比較例1〜4のダイヤモンド多結晶体および比較例5のダイヤモンド焼結体に含まれるダイヤモンドの平均粒径を、上述した多結晶体または焼結体の上述したSEMまたはTEMを用いた切断法により求めた。実施例1〜9、比較例2および4のダイヤモンド多結晶体においては、TEMの倍率を200000倍とした。その理由は、200000倍未満の倍率では、1視野内に現れる結晶粒の数が多すぎて正確な平均粒径が算出できないからである。また、200000倍を超える倍率では、円内の粒の数が少なすぎて、正確な平均粒径が算出できないからである。ただし、比較例1および3のダイヤモンド多結晶体においては、これらの粒径が大きいことから、SEMの倍率を50000倍とした。比較例5のダイヤモンド焼結体においては、比較例1および3のダイヤモンド多結晶体に比べて、ダイヤモンドの粒径がさらに大きいことから、SEMの倍率を3000倍とした。
さらに、各実施例および各比較例毎に、1つの試料に対して別々の箇所を撮影した3枚のSEM画像またはTEM画像を使用し、各SEM画像またはTEM画像毎に上記の方法で平均粒径を求め、得られた3つの平均粒径の平均値を平均粒径とした。その結果を表2の「ダイヤモンドの平均粒径」の欄に示した。
<ヌープ硬度およびヌープ圧痕の比b/a>
実施例1〜9および比較例1〜4のダイヤモンド多結晶体および比較例5のダイヤモンド焼結体について、ヌープ硬度とヌープ圧痕の比b/aを以下の条件で測定した。
すなわち、ヌープ圧子としてはマイクロヌープ圧子(対稜角が172.5°および130°、底面の菱形の対角線長比が1:7.11)を使用し、23℃±5℃において4.9Nの試験荷重で、ヌープ硬度の測定を5回行なった。5回測定した結果のうち、一番小さな値と大きな値を除いた3つの値の平均値を求め、各実施例および各比較例におけるヌープ硬度とした。その結果を表2の「ヌープ硬度」の欄に示した。
さらに、各測定毎にヌープ圧痕の対角線の長い方の対角線の長さaと短い方の対角線の長さbとの比b/aをレーザー顕微鏡(商品名:「ols3000」、オリンパス株式会社製)を用いて測定し、その平均値をヌープ圧痕の比b/aとした。その結果を表2の「比b/a」の欄に示した。ヌープ圧痕についても5回測定した結果のうち、最も小さな値と最も大きな値を除いた3つの値の平均値により求めた。
表2に示すように、実施例1〜9におけるダイヤモンドの平均粒径は3〜14nmであった。このとき、実施例1〜9におけるヌープ硬度は98〜140GPaで、ヌープ圧痕の比b/aは0.032〜0.050であった。このことから実施例1〜9のダイヤモンド多結晶体は、微細な組織を有し、かつ強靭となることが分かった。特に、実施例1〜8におけるヌープ硬度は100GPa以上であり、ダイヤモンドの平均粒径およびヌープ圧痕の比b/aの結果と併せて、より強靭となることが分かった。
これに対し、比較例1におけるダイヤモンドの平均粒径は50nmと実施例1〜9に比べて大きく、ヌープ圧痕の比b/aは0.060であり実施例1〜9に比べて弾性回復が小さかった。
比較例2は、ダイヤモンド多結晶体中に熱処理炭素であるグラファイトがダイヤモンドに変換されずに0.1体積%より多く含まれていた。また、比較例2におけるヌープ圧痕の比b/aは0.098であり実施例1〜9に比べて弾性回復が小さかった。
比較例3は、平均粒径5μmの粗粒グラファイト粉末を原料としており、ダイヤモンド多結晶体中のダイヤモンドの平均粒径が70nmで実施例1〜9と比較して大きかった。比較例3においては、ヌープ圧痕の比b/aは0.065であり実施例1〜9に比べて弾性回復が小さかった。
比較例4は、平均粒径20nmのカーボンナノチューブを原料としており、ダイヤモンド多結晶体中のダイヤモンドの平均粒径が8nmで実施例1〜9と同程度であった。比較例4においては、ヌープ圧痕の比b/aは0.055であり実施例1〜9に比べて弾性回復が小さかった。これはカーボンナノチューブが水素を含んだガスから生成されるため、製造上水素が多量に含まれており、今回用いた原料についてもSIMS分析から水素を3000ppma以上含有しており、そのためにダイヤモンドの粒界の強度が低くなったものと考えられた。
比較例5は、ダイヤモンド粉末と結合材を原料としており、ヌープ圧痕の比b/aは0.111であり施例1〜9に比べて弾性回復が小さかった。
≪切削性能≫
実施例1〜9および比較例1〜4のダイヤモンド多結晶体および比較例5のダイヤモンド焼結体を先端径0.5mmのボールエンドミル工具の先端に取り付け、切削性能について評価を行なった。具体的には、被削材としてコバルト(Co)を12質量%含んだ超硬合金を準備し、回転数60000rpm、切削速度120mm/min、切り込み量5μm、送り量5μmの条件で、24mの切削を行なった。切削終了時の工具の摩耗量を実施例1における摩耗量に対する各実施例または各比較例における摩耗量の相対比(以下、工具摩耗相対比)を表3に示した。工具摩耗相対比が小さいほど、そのダイヤモンド多結晶体およびダイヤモンド焼結体が強靭であると評価できる。
Figure 2018058745
実施例1〜9についての工具摩耗相対比は1〜2であった。これに対し、比較例2と4については、それぞれ切削長15m、10mの段階で大きな欠けが発生し、加工を中止した。また比較例1、3および5についての工具摩耗相対比は、それぞれ11、16、22で、実施例1〜9に比べて大きく摩耗していた。このため、実施例1〜9のダイヤモンド多結晶体が比較例1〜4のダイヤモンド多結晶体および比較例5のダイヤモンド焼結体に比し、強靭であることが確認された。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (9)

  1. 高圧相炭素の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上で熱処理することにより熱処理炭素材を得る第1工程と、
    前記熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る第2工程と、を備える、ダイヤモンド多結晶体の製造方法。
  2. 前記第1工程において2100℃以下で熱処理する、請求項1に記載のダイヤモンド多結晶体の製造方法。
  3. 前記高圧相炭素は、ダイヤモンドおよび六方晶ダイヤモンドの少なくとも1つからなる、請求項1または請求項2に記載のダイヤモンド多結晶体の製造方法。
  4. 高圧相炭素の粒子が互いに直接結合している高圧相炭素多結晶体を1300℃以上2100℃以下で熱処理することにより熱処理炭素材を得る第1工程と、
    前記熱処理炭素材を12GPa以上25GPa以下かつ1200℃以上2300℃以下の条件で焼結することによりダイヤモンド多結晶体を得る第2工程と、を備え、
    前記高圧相炭素は、ダイヤモンドおよび六方晶ダイヤモンドの少なくとも1つからなる、ダイヤモンド多結晶体の製造方法。
  5. ダイヤモンドを含み、
    前記ダイヤモンドは、15nm以下の平均粒径を有し、
    含有水素濃度が500ppma以下であり、
    23℃±5℃における試験荷重4.9Nのヌープ硬度測定において、ヌープ圧痕の対角線の長い方の対角線の長さaと短い方の対角線の長さbとの比b/aが0.05以下である、ダイヤモンド多結晶体。
  6. 前記ヌープ硬度測定において、ヌープ硬度が100GPa以上140GPa以下である、請求項5に記載のダイヤモンド多結晶体。
  7. 請求項5または請求項6に記載のダイヤモンド多結晶体を備えた切削工具。
  8. 請求項5または請求項6に記載のダイヤモンド多結晶体を備えた耐摩工具。
  9. 請求項5または請求項6に記載のダイヤモンド多結晶体を備えた研削工具。
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