JP2018057182A - 同期回転電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転子に界磁巻線を必要とせず、電機子巻線に鎖交する磁束の大きさを電機子巻線に流す電機子電流による起磁力で変化させる。
【解決手段】同期回転電機10は、電機子巻線11aを含む電機子11と、周方向に複数の永久磁石13mが間隔をあけて回転子鉄心13aに埋め込まれる回転子13とを有する。回転子鉄心13aは、周方向に隣り合う永久磁石13mの間に設けられて、磁束が流れる継鉄部13cを有する。複数の永久磁石13mは、周方向に対向する永久磁石13mの間では異なる極性となるように全て一定方向に磁化される。電機子巻線11aに電機子電流を流すか否かに応じて、永久磁石13mから生じる磁束の流れを異ならせる。この構成によれば、部品点数を減らしてコストを低減でき、体格を小さく抑制できる。永久磁石13mから生じる磁束を電機子電流によって変化させることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、電機子と回転子とを有し、界磁巻線を有しない同期回転電機に関する。
高性能の永久磁石モータとして、Surface Permanent Magnet(以下では「SPM」と呼ぶ)モータや、Interior Permanent Magnet(以下では「IPM」と呼ぶ)モータが用いられてきた。SPMモータは回転子の表面に永久磁石を貼り付けるのに対して、IPMモータは回転子の内部に磁石を埋め込む点で構造的に相違する。
SPMモータは、常に永久磁石から生じる磁束(以下では「磁石磁束」と呼ぶ)が電機子巻線に影響するため、回転数の高まりとともに電機子巻線に発生する起電力が増加する。起電力の増加によって、電機子巻線に流そうとする電機子電流が抑制されることになり、結果として出力が低下するという課題があった。
これに対してIPMモータは、SPMモータに比べて電機子巻線に影響する磁石磁束が小さいので、弱め界磁制御ができる。弱め界磁制御を行うことで、電機子巻線に発生する起電力が抑えられる分だけ高い回転数になっても出力は低下しない。したがって、回転数が広い可変速運転を必要とする場合には、IPMモータを用いるのが主流となっている。
このIPMモータは、SPMモータと比べて、回転子から電機子に流れる磁石磁束のうちで電機子巻線に鎖交する磁束(以下では「主磁束」と呼ぶ)を抑制して起電力を小さくできる。その反面、当該磁石磁束が主磁束以外の成分になって電機子鉄心内に残り、鉄損を発生させるなどの悪影響を伴うという課題があった。
例えば下記の特許文献1において、ロータ(すなわち回転子)がステータ(すなわち固定子)から軸方向に露出したとき、ロータの露出部分からの磁束がステータへ軸方向に漏れることを防止することを目的とする可変磁束モータに関する技術が開示されている。この可変磁束モータは、ステータに対するロータの軸方向の相対位置を変更して、コイルと鎖交する磁石の磁束を調整するアクチュエータを備える。ロータは、少なくとも磁石よりも径方向におけるステータ側に、軸方向の磁束を遮蔽する磁束遮蔽部を備える。
特開2012−080615号公報
IPMモータに含まれる上記可変磁束モータは、それぞれがV字状に配置された複数組の永久磁石がロータに埋め込まれている。回転子鉄心に相当するロータ本体部は、各組の永久磁石に挟まれ、かつ、ステータに対向する部位が磁極(すなわちN極またはS極)で磁化される。「対向」には対面の意味を含む。この構成によれば、SPMモータと同様に、磁極で磁化された部位から常に流れる磁束が電機子巻線に影響する。よって、回転数の高まりとともに起電力が増加し、電機子巻線に流そうとする電機子電流が抑制され、出力が低下してしまうという課題が残る。
上記可変磁束モータにおいて、ロータ本体部に界磁巻線を設ける構成が考えられる。この構成によれば、界磁巻線に流す電流によって発生させる磁束(以下では「界磁磁束」と呼ぶ)と、磁石磁束とを混成的に制御する制御装置などを要するためにコスト高になるという課題がある。また、磁石磁束は界磁磁束よりも強いため、界磁巻線に流す電流を大きくしても、磁石磁束が十分に弱まらないという課題もある。磁石磁束と同等以上の界磁磁束を発生させるには、界磁巻線の巻数を多くしたり、界磁巻線の断面積を大きくしたりする必要があるので、結果としてモータの体格が大きくなるという課題もある。
本開示はこのような点に鑑みてなしたものであり、回転子に界磁巻線を必要とすることなく、電機子巻線に鎖交する磁束の大きさを電機子巻線に流す電機子電流による起磁力で変化させ得る同期回転電機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、電機子巻線(11a)を含む電機子(11)と、周方向に複数の永久磁石(13m,M1,M2)が間隔をあけて回転子鉄心(13a)に埋め込まれるとともに前記電機子に対向して設けられる回転子(13)とを有する同期回転電機(10)において、前記回転子鉄心は、周方向に隣り合う前記永久磁石の間に設けられて、磁束が流れる継鉄部(13c)を有し、前記複数の永久磁石は、周方向に対向する前記永久磁石の間では異なる極性となるように全て一定方向(D)に磁化され、前記電機子巻線に電機子電流を流すか否かに応じて、前記永久磁石から生じる磁束の流れを異ならせる。
この構成によれば、回転子には界磁巻線を必要としないので、部品点数を減らしてコストを低減でき、同期回転電機の体格を小さく抑制できる。また、電機子巻線に鎖交する磁束の大きさを電機子巻線に流す電機子電流による起磁力で変化させることができる。常に回転子から電機子に磁束が流れる従来技術と比べて、電機子巻線に鎖交する磁束が抑制されて起電力を小さくでき、起磁力によって電機子巻線に鎖交する磁束を増やしてトルクを向上させることができる。
第2の発明は、前記電機子巻線に前記電機子電流を流さないときは、前記永久磁石から生じる磁束が前記継鉄部を経て前記回転子の周方向に沿って前記回転子鉄心を循環し、前記電機子巻線に前記電機子電流を流すときは、前記電機子巻線に生じる起磁力によって前記永久磁石から生じる磁束の一部が前記継鉄部を経て前記電機子に流れる。
この構成によれば、電機子巻線に電機子電流を流さないときは、永久磁石から生じる磁束は回転子鉄心を循環して流れる第1磁気回路を形成する。第1磁気回路は、磁路に電機子を含まないので、電機子鉄心内に残らず、鉄損が発生しない。一方、電機子巻線に電機子電流を流すときは、起磁力によって永久磁石から生じる磁束の一部が電機子に流れる第2磁気回路を形成する。第2磁気回路は、磁路に電機子を含むので、電機子巻線に流す電機子電流によって発生する磁束に、永久磁石から生じる磁束の一部が加わるのでトルクが向上する。
第3の発明は、前記回転子鉄心は、前記継鉄部から前記電機子側に突出し、前記電機子との間で磁束が流れる複数の磁極部(13b)を有する。この構成によれば、磁極部を通じて回転子と電機子との間で磁束が流れるので、リラクタンストルクが高められ、出力も向上する。
第4の発明は、前記磁極部の先端面における両角部の間の角度ピッチをθaとし、周方向に隣り合う前記永久磁石の角度ピッチをθbとするとき、2/5≦(2θa/θb)≦1/2の関係を満たす。この構成によれば、従来よりも高いトルクを得ることができる。また、極弧比である(2θa/θb)を1/2以下に設定すると、磁極部に順突極性を持たせることができる。
第5の発明は、前記回転子鉄心は、前記継鉄部の一部が径方向に狭められる狭窄部(13e)を有する。この構成によれば、回転子鉄心を流れる磁束の量を制限するとともに、電機子巻線に電機子電流を流して生じる起磁力によって磁束を電機子に向かわせ易くなる。
第6の発明は、前記狭窄部は、前記狭窄部の径方向幅(Wa)を前記継鉄部の径方向幅(Wb)で除した比率である狭窄比をWrとするとき、1/6≦Wr≦4/6の関係を満たす。この構成によれば、回転子鉄心を流れる磁束の量をより確実に制限するとともに、電機子巻線に電機子電流を流して生じる起磁力によって磁束をさらに電機子に向かわせ易くなる。
第7の発明は、前記複数の永久磁石は、断面が矩形状の角柱状であり、長辺が径方向に沿うように前記回転子鉄心に放射状に埋め込まれる。この構成によれば、周方向に隣り合う永久磁石の間で継鉄部を磁束が流れ易い。また、一般的な永久磁石を用いることができ、回転子鉄心への埋め込みも容易になるので作業効率が高まる。
なお、「電機子巻線」は固定子巻線と同義であり、一本状の巻線でもよく、複数の導体線やコイル等を電気的に接続して一本状にしたものでもよい。電機子巻線の相数は、三相以上であれば問わない。「磁極部」は、継鉄部よりも電機子側に突出し、かつ、電機子との間で磁束が流れることを条件として、どのような形状でもよい。「同期回転電機」は、シャフトとも呼ぶ回転軸を有すれば任意の機器を適用でき、例えば発電機,電動機,電動発電機等が該当する。発電機には電動発電機が発電機として作動する場合を含み、電動機には電動発電機が電動機として作動する場合を含む。
同期回転電機の構成例を模式的に示す断面図である。 図1における矢印II−II線の一部を示す断面図である。 磁極角と継鉄周方向角を説明する模式図である。 電機子電流を流さないときにおける磁束の流れを示す模式図である。 電機子電流を流すときにおける磁束の流れを示す模式図である。 電気角と主磁束との関係例を示すグラフ図である。 極弧比とトルクとの関係例を示すグラフ図である。 狭窄比とトルクとの関係例を示すグラフ図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。英数字の連続符号は記号「〜」を用いて略記する。「巻装」は巻いた状態に装うことを意味し、巻き回す意味の「巻回」と同義である。「電流」は、d軸電流等のように特に明示しない限り、「電機子電流」を意味する。
図1に示す同期回転電機10は、電機子11,回転子13,軸受14,回転軸15などをフレーム12内に有する。この同期回転電機10は、インナーロータ型の回転電機であって、IPMモータに相当する。フレーム12の内部または外部には、同期回転電機10の回転制御を司る制御部20が設けられる。
筐体やハウジングなどに相当するフレーム12は、電機子11,回転子13,軸受14,回転軸15などを収容できれば、形状や材質等を問わない。このフレーム12は、少なくとも電機子11を支持して固定するとともに、軸受14を介して回転軸15を回転自在に支持する。本形態のフレーム12は、非磁性体のフレーム部材12a,12bなどを含む。フレーム部材12a,12bは一体成形してもよく、個別に成形した後に固定してもよい。固定は、例えばボルト,ネジ,ピン等のような締結部材を用いる締結や、母材を溶かして溶接を行う接合などが該当する。
「ステータ」や「固定子」などに相当する電機子11は、電機子巻線11a,電機子鉄心11b,複数のスロット11sなどを含む。「固定子鉄心」や「ステータコア」などに相当する電機子鉄心11bは、図2に示す複数のスロット11sを含む。電機子鉄心11bは磁束が流れればよく、本形態では軟磁性体である多数の電磁鋼板を軸方向に積層して構成する。スロット11sは、「鉄心溝」とも呼ばれ、電機子巻線11aを収容して巻装するために電機子鉄心11bに設けられた空間部位である。
「固定子巻線」や「ステータコイル」などに相当する電機子巻線11aは、スロット11sに収容して巻装される。電機子巻線11aの相数は、本形態では三相とする。電機子巻線11aの巻き方は、例えば全節巻,分布巻,集中巻,短節巻などが該当する。電機子巻線11aの断面形状は、例えば平角線の四角形状や、丸線の円形状、三角線の三角形状などが該当する。一例として、平角線を複数層(例えば4層など)でスロット11sに積層して収容する場合がある。この場合には、所要の角度ピッチでスロット11sを跨ぎ、途中で径方向に曲げられるクランク部位を含めるとよい。
「ロータ」に相当する回転子13は、電機子鉄心11bに対向して内径側に設けられるとともに、回転軸15に固定される。すなわち、回転子13と回転軸15は一体的に回転する。回転子13の構成例については後述する。回転子13と電機子11との間には、ギャップGが設けられる。ギャップGには、回転子13と電機子11との間で磁束が流れるような数値を設定してよい。
制御部20は、例えば力行時において電機子巻線11aに流す多相交流を制御したり、回生時において電機子巻線11aで発生した起電力の利用(例えば蓄電や供給等)を制御したりする。多相交流の相数は、電機子巻線11aの相数と等しくするとよい。
図2は、電機子11と回転子13の構成例を示す要部断面図であり、図面の上下方向に対称である。電機子11は、上述したように電機子巻線11a,電機子鉄心11b,スロット11sなどを含む。
回転子13は、界磁巻線を含まず、回転子鉄心13a,永久磁石13mなどを有する。回転子鉄心13aは、複数の永久磁石13mが間隔をあけて埋め込まれ、磁極部13b,継鉄部13c,ハブ部13dなどを有する。回転子鉄心13aは、磁束が流れればどのように構成してもよい。本形態では、多数の電磁鋼板を軸方向に積層して構成するので、磁極部13b,継鉄部13c,ハブ部13dなどが一体に構成される。図1に示す回転子鉄心13aの厚さは軸方向に積層厚13tである。
複数の永久磁石13mは、断面が矩形状の角柱状であり、長辺が径方向に沿うように回転子鉄心13aに放射状に埋め込まれる。周方向に対向する永久磁石13mの周方向端面の間では、異なる極性となるように全て一定方向(例えば図2では矢印D方向)に磁化される。回転子鉄心13aに埋め込む永久磁石13mの数は、同期回転電機10の定格や仕様等に応じて適切に設定してよく、本形態では「8」とする。
磁極部13bは、継鉄部13cから電機子11(具体的には電機子鉄心11b)側に突出して設けられる凸状部位である。磁極部13bの形態は、同期回転電機10の定格や仕様等に応じて適切に設定してよい。本形態では、磁極部13bの数(すなわち磁極数)を「16」とし、磁極部13bの先端面にかかる周方向の角度ピッチを磁極角θaとする。図3に示す磁極角θaの適切な設定値については後述する。磁極部13bが磁極として機能する場合には、周方向にN極とS極が交互にあらわれる。
継鉄部13cは、周方向に隣り合う永久磁石13mの周方向端面の間に設けられて磁束が流れる部位である。この継鉄部13cは、磁極部13bの根元部で連接する部位でもある。本形態の継鉄部13cは、周方向の角度ピッチを図3に示す継鉄角θbとし、径方向幅(すなわち径方向の幅)を図2に示す継鉄幅Wbとする。継鉄角θbと継鉄幅Wbの適切な設定値については後述する。
継鉄部13cには、一部が径方向に狭められる狭窄部13eを有する。狭窄部13eは、結果として周方向に隣り合う永久磁石13mの間に設けられ、磁路を狭めて継鉄部13cを流れる磁束の磁束量を制限する。本形態の狭窄部13eは、継鉄部13cの径方向幅を狭窄幅Waとする。狭窄幅Waの適切な設定値については後述する。
ハブ部13dは、回転子13を回転軸15に固定する円筒状の固定部位や、当該固定部位から放射状に延びて継鉄部13cに連接する扇形状のスポーク部位などを有する。
空間部13fは、継鉄部13cが狭窄部13eを有し、ハブ部13dがスポーク部位を有するために設けられる部位である。この空間部13fは磁束が流れなければ、空間のままとしてもよく、例えば樹脂などのような非磁性体で埋めてもよい。
図3には、磁極角θaと継鉄角θbの設定例を示す。磁極角θaは、磁極部13bの先端面(すなわち径方向端面)を規定する角度ピッチである。磁極角θaの矢印が指す線分は、磁極部13bの先端面における周方向の両角部と、回転子13の中心Pとを通る。継鉄角θbは、継鉄部13cを規定する角度ピッチであるとともに、電気角の一周期(つまり360度)に相当する角度ピッチでもある。継鉄角θbの矢印が指す線分は、周方向に隣り合うそれぞれの永久磁石13mの中心と、回転子13の中心Pとを通る。
次に、電機子巻線11aに電流を流すか否かで永久磁石13mから生じる磁束の流れを異ならせる例について、図4と図5を参照しながら説明する。図4と図5では、機械角で90度分を模式的に示す。また、永久磁石M1,M2は説明の都合上のために付した符号であり、いずれも永久磁石13mに相当する。
図4において、電機子巻線11aに電流を流さない場合は、電機子巻線11aに起磁力が生じない。回転子鉄心13aに埋め込まれた永久磁石M1,M2は、同じ矢印D方向に磁化されている。永久磁石M2から生じた磁束は、継鉄部13cを流れて永久磁石M1に向かう。永久磁石M1から生じた磁束は、継鉄部13cを流れて図4の左側に埋め込まれた永久磁石に向かう。こうして、全ての永久磁石13mから生じた磁束は、回転子鉄心13aを循環する循環磁束φcになる。この場合の循環磁束φcは「磁石磁束」に相当し、循環磁束φcが流れる磁路は「第1磁気回路」に相当する。
一方、永久磁石13mから生じた磁束が電機子鉄心11bに流れるのは、漏れ磁束に相当する磁束に過ぎない程度に弱い。したがって、回転子13から電機子11に流れた磁束が電機子鉄心11bに及ぼして発生させる起磁力は無視できる。
図5において、電機子巻線11aに電流を流す場合は、電機子巻線11aに起磁力が生じる。当該起磁力の発生に伴って、電機子11と回転子13との間には、d軸電流に従うd軸磁束φdや、q軸電流に従うq軸磁束φqが流れる。
永久磁石M1,M2から生じた磁束は、循環磁束φcと分流磁束φsとを含む。循環磁束φcは、電機子巻線11aに電流を流さない場合と同様に回転子鉄心13aを循環する。循環磁束φcの磁束量は、電機子巻線11aに電流を流さない場合に比べて、分流磁束φsが生じる分だけ少なくなる。分流磁束φsは、永久磁石M1,M2から生じた磁束の一部である。例えば永久磁石M2から生じた分流磁束φsは、継鉄部13cや磁極部13bを経て電機子鉄心11bに流れ、さらに磁極部13bや継鉄部13cを経て永久磁石M1に流れる。永久磁石M1から生じた分流磁束φsについても同様である。こうして、全ての永久磁石13mから生じた磁束は、循環磁束φcと分流磁束φsとになる。この場合の循環磁束φcと分流磁束φsは「磁石磁束」に相当する。分流磁束φsが流れる磁路は「第2磁気回路」に相当する。
上述した分流磁束φsが生じる要因は、電機子巻線11aに電流を流して生じる起磁力である。つまり、電機子巻線11aに生じた起磁力によって、永久磁石13mから生じた磁束が引き込まれ、継鉄部13cや磁極部13bを経て電機子鉄心11bに流れる。また、電機子巻線11aに流す電流の大きさを変化させると起磁力も変化するので、電機子鉄心11bに引き込む分流磁束φsの磁束量も変化させることができる。
電機子鉄心11bを流れる分流磁束φsは、電機子巻線11aに鎖交して起電力を発生させる反面、電機子鉄心11bと磁極部13bとの間を流れてトルク(具体的にはマグネットトルク)を発生させる。電機子巻線11aに鎖交する磁束である主磁束φmは、d軸磁束φdに分流磁束φsが加わる。すなわち、φm=φd+φsが成り立つ。
上述した同期回転電機10の磁束特性について、図6を参照しながら説明する。図6には、横軸を電気角θ、縦軸を主磁束φmとして、一周期における主磁束φmの変化を示す。一周期は、電気角をθとすると、0度≦θ<360度である。
図6において、特性線L1は電機子巻線11aに電流を流す場合の変化を示し、特性線L2は電機子巻線11aに電流を流さない場合の変化を示す。特性線L1の主磁束φmが最大となる電気角θmにおいて、電機子巻線11aに電流を流すと磁束φ2になり、電機子巻線11aに電流を流さないと磁束φ1になる。
例えば、同期回転電機10の外径を128[mm]とし、回転子13の積層厚13tを32[mm]とし、電流を100[Arms]とする。この構成例における磁束可変比φrは、φr=φ2/φ1≒20が得られた。特許文献1に記載されたモータを含めた従来のモータでは、φr≦2に過ぎない。本発明の同期回転電機10では、φr>2が容易に得られる。
次に、同期回転電機10のトルク特性について、図7と図8を参照しながら説明する。図7には、横軸を極弧比θr、縦軸をトルクTとして、極弧比θrに対するトルクTの変化を実線の特性線Ltaで示す。極弧比θrに対するリラクタンストルクTrの変化は、一点鎖線の特性線Lraで示す。極弧比θrに対するマグネットトルクTmの変化は、二点鎖線の特性線Lmaで示す。
極弧比θrは、図3に示す磁極角θaを2倍し、かつ、継鉄角θbで除した比率である。式で表すと、θr=2θa/θbになる。トルクTは、リラクタンストルクTrとマグネットトルクTmとの和に比例する。式で表すと、Ta∝Tr+Tmになる。
リラクタンストルクTrは、d軸磁束φdとq軸磁束φqの差分に比例する。式で表すと、Tr∝φd−φqになる。このリラクタンストルクTrは、極弧比θrが小さいときに微増するものの、極弧比θrが増加するにつれて減少してゆく。
マグネットトルクTmは、電機子巻線11aに鎖交する磁束である主磁束φmに比例する。式で表すと、Tm∝φm(ただしφm=φd+φs)になる。このマグネットトルクTmは、極弧比θrが増加するにつれて増えてゆくものの、極弧比θrが1/2を超えると周辺への漏れも増えるために緩やかに減少してゆく。
図7に示す極弧比θrは、2/5≦θr≦1/2の関係を満たすと、高いトルクTが得られる。この範囲に限らず、トルクTが閾値Ttha以上になる所定範囲Exを満たしてもよい。所定範囲Exの下限値は2/5に限られず、同じく上限値は1/2に限られない。こうすれば、閾値Ttha以上のトルクTが確実に得られる。また、極弧比θrを1/2以下に設定することによって、磁極部13bに順突極性を持たせることができる。
図8には、横軸を狭窄比Wr、縦軸をトルクTとして、トルクTの変化を実線の特性線Ltbで示す。狭窄比Wrは、図2に示す狭窄幅Waを継鉄幅Wbで除した比率である。式で表すと、Wr=Wa/Wbになる。
狭窄比Wrに対するリラクタンストルクTrの変化は、一点鎖線の特性線Lrbで示す。このリラクタンストルクTrは、狭窄比Wrが増加するにつれて増えてゆく。
狭窄比Wrに対するマグネットトルクTmの変化は、二点鎖線の特性線Lmbで示す。このマグネットトルクTmは、狭窄比Wrが増加するにつれて減ってゆく。
図8に示す狭窄比Wrは、1/6≦Wr≦4/6の関係を満たすと、高いトルクTが得られる。この範囲に限らず、トルクTが閾値Tthb以上になる範囲を満たしてもよい。当該範囲は、0<W1<W2の下で、図8ではW1≦Wr≦W2である。なお、図8ではW1=1/6,W2=4/6であるが、同期回転電機10の定格や仕様等に応じてW1≠1/6,W2≠4/6を設定してもよい。いずれにせよ、W1≦Wr≦W2の関係を満たせば、閾値Tthb以上のトルクTが確実に得られる。
上述した実施の形態によれば、以下に示す各作用効果を得ることができる。
(1)同期回転電機10は、電機子巻線11aを含む電機子11と、周方向に複数の永久磁石13mが間隔をあけて回転子鉄心13aに埋め込まれる回転子13とを有する。回転子鉄心13aは、周方向に隣り合う永久磁石13mの間に設けられて、磁束が流れる継鉄部13cを有する。複数の永久磁石13mは、周方向に対向する永久磁石13mの間では異なる極性となるように全て一定方向に磁化される。電機子巻線11aに電流を流すか否かに応じて、永久磁石13mから生じる磁束の流れを異ならせる。この構成によれば、回転子13には界磁巻線を必要としないので、部品点数を減らしてコストを低減でき、同期回転電機10の体格を小さく抑制できる。また、電機子巻線11aに鎖交する磁束の大きさを電機子巻線11aに流す電流による起磁力で変化させることができる。常に回転子13から電機子11に磁束が流れる従来技術と比べて、電機子巻線11aに鎖交する磁束が抑制されて起電力を小さくでき、起磁力によって電機子巻線11aに鎖交する磁束を増やしてトルクTを向上させることができる。
(2)電機子巻線11aに電流を流さないときは、永久磁石13mから生じる磁束が継鉄部13cを経て回転子13の周方向に沿って回転子鉄心13aを循環する。電機子巻線11aに電流を流すときは、電機子巻線11aに生じる起磁力によって永久磁石13mから生じる磁束の一部が継鉄部13cを経て電機子11に流れる。この構成によれば、電機子巻線11aに電流を流さないときは、永久磁石13mから生じる磁束は回転子鉄心13aを循環して流れる第1磁気回路を形成する。第1磁気回路は、磁路に電機子11を含まないので、電機子鉄心11b内に残らず、鉄損が発生しない。一方、電機子巻線11aに電流を流すときは、起磁力によって永久磁石13mから生じる磁束の一部が電機子11に流れる第2磁気回路を形成する。第2磁気回路は、磁路に電機子11を含むので、電機子巻線11aに流す電流によって発生する磁束(すなわちd軸磁束φd)に、永久磁石13mから生じる磁束(すなわち分流磁束φs)の一部が加わるのでトルクTが向上する。
(3)回転子鉄心13aは、継鉄部13cから電機子11側に突出し、電機子11との間で磁束が流れる複数の磁極部13bを有する。この構成によれば、磁極部13bを通じて回転子13と電機子11との間で磁束が流れるので、リラクタンストルクが高められ、出力も向上する。
(4)極弧比θrは、磁極部13bの先端面における両角部の間の角度ピッチをθaとし、周方向に隣り合う永久磁石13mの角度ピッチをθbとするとき、2/5≦(2θa/θb)≦1/2の関係を満たす。この構成によれば、従来よりも高いトルクTを得ることができる。
(5)回転子鉄心13aは、継鉄部13cの一部が径方向に狭められる狭窄部13eを有する。この構成によれば、回転子鉄心13aを流れる磁束の量を制限できる。また、電機子巻線11aに電流を流して生じる起磁力によって、永久磁石13mから生じる磁束の一部である分流磁束φsを電機子11に向かわせ易くなる。
(6)狭窄部13eは、狭窄部13eの狭窄幅Waを継鉄部13cの継鉄幅Wbで除した比率である狭窄比をWrとするとき、1/6≦Wr≦4/6の関係を満たす。この構成によれば、回転子鉄心13aを流れる磁束の量をより確実に制限するとともに、電機子巻線11aに電流を流して生じる起磁力によって磁束をさらに電機子11に向かわせ易くなる。
(7)複数の永久磁石13mは、断面が矩形状の角柱状であり、長辺が径方向に沿うように回転子鉄心13aに放射状に埋め込まれる。この構成によれば、周方向に隣り合う永久磁石13mの周方向端面の間で継鉄部13cを磁束が流れ易い。また、一般的な永久磁石13mを用いることができ、回転子鉄心13aへの埋め込みも容易になるので作業効率が高まる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
上述した実施の形態では、図1に示すように、インナーロータ型の同期回転電機10に適用する構成とした。この形態に代えて、アウターロータ型の同期回転電機に適用する構成としてもよい。アウターロータ型では、電機子11を内径側に配置し、回転子13を外径側に配置する。電機子11と回転子13の配置が相違するに過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態では、図1に示すように、ラジアルギャップ型の同期回転電機10に適用する構成とした。この形態に代えて、アキシャルギャップ型の同期回転電機に適用する構成としてもよい。アキシャルギャップ型では、電機子11と回転子13とをアキシャル方向(すなわち軸方向)に配置する。電機子11と回転子13の配置が相違するに過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態では、永久磁石13mの数を「8」とし、磁極部13bの数を「16」とする構成である。この形態に代えて、永久磁石13mの数を1以上で設定してもよい。磁極部13bの数を2以上で設定してもよい。単に永久磁石13mや磁極部13bの数が相違するに過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態では、断面が矩形状の永久磁石13mを長辺が径方向に沿うように回転子鉄心13aに放射状に埋め込む構成とした。この形態に代えて、他の断面形状の永久磁石13mを埋め込む構成としてもよく、他の姿勢で永久磁石13mを埋め込む構成としてもよい。他の断面形状は、例えば四角形状以外の多角形状(すなわち三角形状や五角形状以上の形状)、円や楕円を含む円形状、複数の形状を合成して得られる合成形状などが該当する。他の姿勢は、長辺が周方向に沿う姿勢や、長辺が径方向と交差する方向に沿う姿勢などが該当する。要するに、電機子巻線11aに電流を流さない場合には図4に示す循環磁束φcが生じ、電機子巻線11aに電流を流す場合には図5に示す循環磁束φcおよび分流磁束φsが生じればよい。単に永久磁石13mの断面形状や姿勢が相違するに過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。また、循環磁束φcの流れに合わせた断面形状にすることによって、マグネットトルクを向上させることができる。
上述した実施の形態では、回転子鉄心13aに埋め込む複数の永久磁石13mを単体で構成した。この形態に代えて、複数の永久磁石13mのうちで一以上の永久磁石13mは、複数の分割磁石を含む複合体で構成してもよい。複合体の永久磁石は、全体として単体の永久磁石と同様に機能する。一以上の永久磁石13mが単体であるか複合体であるかの相違に過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態では、電機子巻線11aと多相交流の相数を三相とする構成とした。この形態に代えて、例えば四相,六相,十二相などのように、四相以上としてもよい。ただし、多くても数十相である。相数が相違するに過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態では、回転子13に含まれるハブ部13dと、回転軸15とは別体に備える構成とした。この形態に代えて、回転軸15が非磁性体である場合には、ハブ部13dに対応する部位を回転軸15で代用してもよい。言い換えると、回転軸15とハブ部13dとを一体化する。一体化した場合におけるハブ部13dに相当する部位は、必ずしもスポーク部位を持つ必要はなく、円柱形状でもよい。別体か一体かの相違に過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。
10…同期回転電機、11…電機子、11a…電機子巻線、11b…電機子鉄心、11s…スロット、12…フレーム、12a,12b…フレーム部材、13…回転子、13a…回転子鉄心、13b…磁極部、13c…継鉄部、13d…ハブ部、13e…狭窄部、13f…空間部、13t…積層厚、13m…永久磁石、14…軸受、15…回転軸、20…制御部、φd…d軸磁束、φq…q軸磁束、φc…循環磁束、φs…分流磁束、φm…主磁束、φr…磁束可変比、θ…電気角、T…トルク、Ttha,Tthb…閾値、θa…磁極角、θb…継鉄角、Wa…狭窄幅、Wb…継鉄幅、L1,L2,Lta,Lra,Lma,Ltb,Lrb,Lmb…特性線、Ex…所定範囲、θr…極弧比、Wr…狭窄比

Claims (7)

  1. 電機子巻線(11a)を含む電機子(11)と、周方向に複数の永久磁石(13m,M1,M2)が間隔をあけて回転子鉄心(13a)に埋め込まれるとともに前記電機子に対向して設けられる回転子(13)とを有する同期回転電機(10)において、
    前記回転子鉄心は、周方向に隣り合う前記永久磁石の間に設けられて、磁束が流れる継鉄部(13c)を有し、
    前記複数の永久磁石は、周方向に対向する前記永久磁石の間では異なる極性となるように全て一定方向(D)に磁化され、
    前記電機子巻線に電機子電流を流すか否かに応じて、前記永久磁石から生じる磁束の流れを異ならせる同期回転電機。
  2. 前記電機子巻線に前記電機子電流を流さないときは、前記永久磁石から生じる磁束が前記継鉄部を経て前記回転子の周方向に沿って前記回転子鉄心を循環し、
    前記電機子巻線に前記電機子電流を流すときは、前記電機子巻線に生じる起磁力によって前記永久磁石から生じる磁束の一部が前記継鉄部を経て前記電機子に流れる請求項1に記載の同期回転電機。
  3. 前記回転子鉄心は、前記継鉄部から前記電機子側に突出し、前記電機子との間で磁束が流れる複数の磁極部(13b)を有する請求項1または2に記載の同期回転電機。
  4. 前記磁極部の先端面における両角部の間の角度ピッチをθaとし、周方向に隣り合う前記永久磁石の角度ピッチをθbとするとき、2/5≦(2θa/θb)≦1/2の関係を満たす請求項3に記載の同期回転電機。
  5. 前記回転子鉄心は、前記継鉄部の一部が径方向に狭められる狭窄部(13e)を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の同期回転電機。
  6. 前記狭窄部は、前記狭窄部の径方向幅(Wa)を前記継鉄部の径方向幅(Wb)で除した比率である狭窄比をWrとするとき、1/6≦Wr≦4/6の関係を満たす請求項5に記載の同期回転電機。
  7. 前記複数の永久磁石は、断面が矩形状の角柱状であり、長辺が径方向に沿うように前記回転子鉄心に放射状に埋め込まれる請求項1から6のいずれか一項に記載の同期回転電機。
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