JP2018053351A - 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法 - Google Patents

亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018053351A
JP2018053351A JP2016194470A JP2016194470A JP2018053351A JP 2018053351 A JP2018053351 A JP 2018053351A JP 2016194470 A JP2016194470 A JP 2016194470A JP 2016194470 A JP2016194470 A JP 2016194470A JP 2018053351 A JP2018053351 A JP 2018053351A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zinc
iron
solid
raw material
leaching
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016194470A
Other languages
English (en)
Inventor
万里子 篠田
Mariko Shinoda
万里子 篠田
山口 東洋司
Toyoji Yamaguchi
東洋司 山口
村井 亮太
Ryota Murai
亮太 村井
鷲見 郁宏
Ikuhiro Sumi
郁宏 鷲見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2016194470A priority Critical patent/JP2018053351A/ja
Publication of JP2018053351A publication Critical patent/JP2018053351A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Abstract

【課題】鉄および亜鉛を含有する原料物質から亜鉛を分離する方法、亜鉛材料を製造する方法および鉄材料を製造する方法を提案する。【解決手段】鉄および亜鉛を含有する原料物質に酸を添加して原料物質を含む酸のpHを1.0以上に調整し、原料物質に含まれる亜鉛を酸に浸出させる亜鉛浸出工程(ステップS1)と、該亜鉛浸出工程で得られた第1処理液を固液分離する第1固液分離工程(ステップS2)と、該第1固液分離工程で得られた第2処理液に第1アルカリおよび硫化剤を添加して亜鉛を沈殿させる亜鉛沈殿工程(ステップS3)と、該亜鉛沈殿工程で得られた第3処理液を固液分離する第2固液分離工程(ステップS4)とを含むことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法に関する。
代表的なベースメタルである鉄は、多様な産業分野で用いられている。鉄は、レアメタルと呼ばれる希少金属に比べると資源量は潤沢なものの、新興国の台頭に伴い、需給バランスが急激に変化している。その結果、良質な鉄鉱石資源が枯渇し、品位の劣る鉱石を使わざるを得ない状況になりつつある。
このような状況を鑑み、鉄鉱石を精錬するのみならず、鉄を含む多成分の金属で構成される産業廃棄物や製鉄所副生成物等を、鉄源として再資源化する試みがなされている。例えば、高炉ダスト、転炉ダスト、電炉ダスト等の製鉄ダストには鉄、亜鉛、炭素等が含まれ、製鉄原料として再資源化されている。しかし、製鉄ダスト中の亜鉛は高炉内で付着物を形成し、高炉操業に悪影響を及ぼすため、製鉄ダストの再資源化量は制限されてきた。
上記問題を解決するために、製鉄ダストから亜鉛を分離回収する技術が求められており、このような技術は乾式法と湿式法に大別される。ここで、乾式法は、製鉄ダストを高温で還元し、亜鉛を揮発させて分離回収する技術である(例えば、特許文献1参照)。
これに対して、湿式法による亜鉛の分離回収方法では、製鉄ダストを酸で処理した後、マグネシウム系アルカリで中和して亜鉛を回収する方法が行われている(例えば、特許文献2参照)。特許文献3および4では、亜鉛を高濃度で回収するべく、亜鉛とともに溶解した鉄を除去した後、アルカリによる中和を行い亜鉛を回収する方法が示されている。また、特許文献5では、酸で処理した製鉄ダストを磁力により磁着物および非磁着物に分離した後、非磁着物に含まれる亜鉛を硫化物として回収する方法が記載されている。
特開昭52−61108号公報 特開平7-216470号公報 特開昭53−004705号公報 特開昭61−261446号公報 特開2010−001524号公報
特許文献1をはじめとする乾式法による亜鉛の分離回収では、大規模な高温還元装置が必要であり、亜鉛の含有量が数%程度の高炉ダストや転炉ダストでは、経済的に成立しないという課題があった。
また、特許文献2の亜鉛回収方法は、浸出した亜鉛を回収する際に、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等に比べ高価であるマグネシウム系アルカリを使用する必要があり、コストの面で問題がある。
さらに、特許文献3および4の亜鉛回収方法は、高濃度で亜鉛を回収するためには酸により亜鉛とともに溶けだした鉄の除去が必要であり、処理工程が煩雑であることが課題である。
さらに、特許文献5の亜鉛回収方法は、磁力による選別が必要で処理工程が煩雑であることが課題である。また、回収した亜鉛の濃度について言及がないことから、亜鉛材料として価値を有する濃度で亜鉛が回収できるかどうか不明瞭である。
このように、鉄および亜鉛を含有する原料物質から簡便かつ低コストで亜鉛を分離することができる技術の提案が望まれている。そこで、本発明の目的は、簡便かつ低コストで鉄および亜鉛を含有する原料物質から亜鉛を分離することができる亜鉛の分離方法、亜鉛の製造方法および鉄材料の製造方法を提案することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。その結果、亜鉛を酸に浸出させる亜鉛浸出工程において、鉄および亜鉛を含有する原料物質を含む酸のpHを1.0以上に調整して行う亜鉛浸出工程の後に、酸に浸出した亜鉛を硫化物として沈殿させる亜鉛沈殿工程を行うことが極めて有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)鉄および亜鉛を含有する原料物質に酸を添加して前記原料物質を含む前記酸のpHを1.0以上に調整し、前記原料物質に含まれる亜鉛を前記酸に浸出させる亜鉛浸出工程と、該亜鉛浸出工程で得られた第1処理液を固液分離する第1固液分離工程と、該第1固液分離工程で得られた第2処理液に第1アルカリおよび硫化剤を添加して亜鉛を沈殿させる亜鉛沈殿工程と、該亜鉛沈殿工程で得られた第3処理液を固液分離する第2固液分離工程とを含むことを特徴とする亜鉛の分離方法。
(2)前記亜鉛浸出工程は、前記原料物質を含む前記酸のpHを2.0以上3.0以下に調整して行う、前記(1)に記載の亜鉛の分離方法。
(3)前記亜鉛浸出工程における、前記原料物質に含まれる亜鉛を前記酸に浸出させる時間を15分以上120分以下とする、前記(1)または(2)に記載の亜鉛の分離方法。
(4)前記亜鉛沈殿工程は、前記第1アルカリおよび硫化剤が添加された前記第2処理液のpHを2.0以上5.0以下に調整して行う、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
(5)前記第2固液分離工程で得られた第4処理液に第2アルカリを添加して鉄を沈殿させる鉄沈殿工程と、該鉄沈殿工程で得られた第5処理液を固液分離する第3固液分離工程とをさらに含む、前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
(6)前記鉄沈殿工程は、前記第4処理液のpHを8.0以上にして行う、前記(5)に記載の亜鉛の分離方法。
(7)鉄および亜鉛を含有する原料物質から、前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により亜鉛を分離して回収することを特徴とする亜鉛材料の製造方法。
(8)鉄および亜鉛を含有する原料物質から、前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により鉄を分離して回収することを特徴とする鉄材料の製造方法。
本発明によれば、簡便かつ低コストで鉄および亜鉛を含有する原料物質から亜鉛を分離することができる。
本発明の一実施形態による亜鉛の分離方法のフローチャートを示す図である。 走査型電子顕微鏡による高炉ダストの観察画像、並びに亜鉛および鉄の元素マッピングを示す図である。 25℃の水溶液中における亜鉛の酸化還元電位とpHの状態図である。 25℃の水溶液中における鉄の酸化還元電位とpHの状態図である。 本発明の別の実施形態による亜鉛の分離方法のフローチャートを示す図である。 硫酸のpHと鉄および亜鉛の浸出率との関係を示す図である。 硫酸浸出前後の亜鉛化合物の割合を示す図である。 亜鉛沈殿工程のpHと亜鉛および鉄の沈殿率との関係を示す図である。 比較例の亜鉛の分離方法のフローチャートを示す図である。
(亜鉛の分離方法)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、鉄および亜鉛を含有する原料物質が製鉄所で発生する製鉄ダストである場合を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。図1は、本発明の一実施形態による亜鉛の分離方法のフローチャートを示している。本発明による亜鉛の分離方法は、製鉄ダストに酸を添加して前記製鉄ダストを含む前記酸のpHを1.0以上に調整し、前記製鉄ダストに含まれる亜鉛を前記酸に浸出させる亜鉛浸出工程(ステップS1)と、該亜鉛浸出工程で得られた第1処理液を固液分離する第1固液分離工程(ステップS2)と、該第1固液分離工程で得られた第2処理液に第1アルカリおよび硫化剤を添加して亜鉛を沈殿させる亜鉛沈殿工程と(ステップS3)、該亜鉛沈殿工程で得られた第3処理液を固液分離する第2固液分離工程(ステップS4)とを含むことを特徴とする。
本発明者らは、製鉄ダストに含まれる亜鉛を簡便かつ低コストで分離できる方途について鋭意検討した。そのためにまず、製鉄ダストに含まれる亜鉛について詳細に調査した。図2は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)による高炉ダストの観察画像、並びに亜鉛および鉄の元素マッピングを示している。この図において、上の3つの画像は、径が1−20μm程度までの高炉ダスト粒子について、下の3つの画像は、20μmを超える高炉ダスト粒子についてそれぞれ示している。
これらの画像から、亜鉛は、高炉ダスト微粒子または高炉ダスト粒子の内部にはほとんど存在せず、表面に濃化して分散していることが分かる。また、特開平10−267910号公報に記載された方法に基づき、ダストを塩化鉄(III)溶液とクエン酸の混合溶液中で撹拌し、溶解した亜鉛を定量することにより高炉ダスト粒子に含まれるZnOの割合を求めた結果、亜鉛の70%程度がZnO態の酸化亜鉛として存在することが判明した。このZnO態の酸化亜鉛は、フェライトに含まれる亜鉛を溶かす場合に比べて弱い酸で溶かすことができる。
後の実施例で示すように、亜鉛の浸出率は、酸のpHの低下とともに上昇し、pH=2で70%に達し、ZnO態の酸化亜鉛のほぼ全ての亜鉛が浸出する。また、pHを2から1にさらに低減させても浸出率は増加せず、亜鉛の浸出率はpH=2で飽和する。こうした傾向は、転炉ダストの場合も同様であった。
また、上述のように、特許文献2に記載された技術においては、酸に浸出した亜鉛を沈殿させる際に、高価なマグネシウム系のアルカリを添加することにより、酸を効率よく中和して亜鉛を沈殿させている。また、特許文献4および5に記載された技術においては、酸に浸出した亜鉛を沈殿させる際に、亜鉛とともに浸出した鉄を事前に除去する前処理を行っている。本発明者らは、上述のような高価なアルカリを用いることなく、また前処理を行うことなく効率よく亜鉛を沈殿させる方途について鋭意検討した。その結果、亜鉛浸出工程の後に、アルカリ(第1アルカリ)および硫化剤を添加して該亜鉛浸出工程で得られた処理液に含まれる亜鉛を硫化物として沈殿させる亜鉛沈殿工程を行うことにより、上記第1アルカリとして水酸化ナトリウム等の安価なアルカリを使用でき、しかも前処理を行うことなく亜鉛を資源として再利用するのに十分な濃度に高めて分離できることを見出した。
すなわち、亜鉛浸出工程においては、亜鉛を酸に浸出させることを目的としているが、鉄の浸出を完全に防ぐことは困難であり、第1固液分離工程で得られた第2処理液には、亜鉛イオンのみならず鉄イオンも含まれる。後述のように、亜鉛浸出工程において酸に浸出した亜鉛は、酸のpHを、例えば2.0〜4.0に調整することにより硫化物として沈殿する一方、鉄はイオンとして存在する。そこで、第1固液分離工程に続いて、第2処理液に含まれる亜鉛イオンを硫化物として沈殿させることにより、亜鉛中に鉄が混入することを抑制できるため、第2処理液から事前に鉄を除去する必要がない。また、上記第1アルカリはあくまでpHの調整が目的であるため、マグネシウムアルカリに限らず、一般的なアルカリを用いることができる。
このように、本発明者らは、製鉄ダストに酸を添加して製鉄ダストを含む酸のpHを1.0以上に調整し、亜鉛を硫化物として回収する亜鉛沈殿工程行うことにより、簡便かつ低コストに亜鉛を分離できることを見出し、本発明を完成させたのである。以下、各工程について説明する。
まず、ステップS1において、製鉄所で発生する製鉄ダストに酸を添加して製鉄ダストを含む酸のpHを1.0以上に調整し、製鉄ダストに含まれる亜鉛を上記酸に浸出させる亜鉛浸出工程を行う。本工程は、鉄および亜鉛を含有する原料物質である製鉄ダストから酸により亜鉛のみを選択的に浸出する工程である。この際、鉄の浸出をできる限り抑制しつつ、亜鉛のみを選択的に浸出させることが肝要である。
本発明における製鉄ダストは、高炉、転炉、電炉等から発生した製鉄ダストである。中でも、転炉ダストまたは高炉ダストを用いることが好ましい。これらは、亜鉛の含有率が数質量%と低いが、鉄の表面に分散した亜鉛のうち、約70%程度がZnO態の酸化鉄として存在し、上述のように、pHが2以上の弱い酸で亜鉛を浸出させることができ、しかも亜鉛含有率が低いにもかかわらず、亜鉛沈殿工程において得られた亜鉛の含有率は、原料として再利用可能な程度の高純度なものとすることができる。
また、亜鉛の浸出のために使用する酸は、亜鉛を浸出させることができれば特に限定されない。例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の一般的な酸を用いることができる。
浸出時の酸のpHは1.0以上に調整する。pHが1.0を下回る場合には、鉄の浸出が増加してしまい、また薬剤の消費量が増加して処理コストが増加するためである。また、後述する実施例の図6に示すように、亜鉛の浸出率は、pHが2.0で飽和して2.0を下回っても増加せず、薬剤の消費量のみが増加する。そこで、pHは2.0以上とすることが好ましい。一方、pHが5.0を上回ると、亜鉛が浸出しにくくなるため、5.0以下とすることが好ましい。また、3.0以下であれば、浸出率は60%程度となり、原料として再利用するのに十分な濃度の亜鉛を浸出させることができる。そこで、亜鉛の浸出率と処理コストの点で、酸のpHを2.0以上3.0以下に調整することが特に好ましい。また、製鉄ダストと水分の固液比は、均一な混合ができれば任意の比率とすることができる。
また、浸出時間は、15分以上120分以下とすることが好ましい。ここで、浸出時間が、15分以上とすることにより、亜鉛を十分に浸出させることができる。一方、浸出時間を120分以下とすることにより、鉄の浸出量を抑制しつつ亜鉛の浸出を効果的に行うことができる。なお、反応温度については、水が凝固あるいは蒸発しない温度域で任意に設定することができる。
次いで、ステップS2において、亜鉛浸出工程で得られた第1処理液を固液分離する第1固液分離工程を行う。本工程は、主に亜鉛イオンを含むろ液と、亜鉛浸出工程における亜鉛浸出残渣とを固液分離する工程である。
上記亜鉛浸出工程において生じた亜鉛浸出残渣の主な成分は鉄であり、第1処理液中に亜鉛が浸出したことから、焼結工程を経て製鉄原料として資源として再利用することができる。
固液分離手法については特に限定されず、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス等の任意の手法を選択できる。
続いて、ステップS3において、上記第1固液分離工程で得られた第2処理液にアルカリ(第1アルカリ)および硫化剤を添加して、第2処理液に含まれる亜鉛を沈殿させる亜鉛沈殿工程を行う。亜鉛浸出工程は、酸に亜鉛を浸出させることを目的としているが、一部の鉄が浸出するのを防止することは困難である。そのため、第2処理液には、亜鉛イオン以外に鉄イオンも含まれ、酸に亜鉛を浸出させた残渣に含まれる鉄の含有率が低下し、製鉄原料としての再資源化率も低下する。また、上記第2処理液に第1アルカリのみを添加し亜鉛を回収すると、亜鉛だけでなく鉄も同時に沈殿するため、鉄の混入により亜鉛原料としての価値が下がり、非経済的である点も課題である。
そこで、本発明においては、第1固液分離工程の後に、第2処理液に含まれる亜鉛のみを沈殿させる亜鉛沈殿工程を行う。亜鉛だけを選択的に沈殿させるので鉄の事前除去が不要であり、処理工程が少なくて済む。しかも資源として再利用するのに十分な純度の亜鉛を分離することができる。
本発明者らは、上記第2処理液から亜鉛のみを沈殿して分離させる条件について鋭意検討した結果、第2処理液に、第1アルカリに加えて硫化剤を添加することすることにより、第2処理液に浸出した亜鉛のみを沈殿させることができることを見出した。以下、上記知見を得るに至った詳細について説明する。
USGS(アメリカ地質調査所、United States Geological Survey)が一般公開している地球化学コードであるPHREEQCを使用し、25℃の水溶液中のおける亜鉛および鉄の酸化還元電位(ORP)とpHの状態図を導出した。図3は、得られた25℃の水溶液中における亜鉛の酸化還元電位(ORP)とpHの状態図を示している。また、図4は、鉄に関する状態図を示している。ここで、図3において太線で囲んだ部分は、亜鉛が硫化物として沈殿する領域を示しており、図4において太線で囲んだ部分は、鉄が硫化物として沈殿する領域を示している。
本発明者らは、図3の網掛け部分の領域では、主に亜鉛が沈殿することに着目した。そして、亜鉛および鉄を含有する上記第2処理液のpHとORPを、図3の網掛け部分のpHとORPに調整することにより、亜鉛のみを沈殿させることができることに想到した。
本発明者らはさらに検討を進め、亜鉛沈殿工程における第2処理液の好適なpHは2.0以上5.0以下であることを見出した。ここで、pHを2.0以上とすることにより、亜鉛を効率的に沈殿させることができる。また、pHを5.0以下とすることにより、鉄を沈殿させることなく亜鉛のみを効率的に沈殿させることができる。より好ましくは、2.0以上4.0以下、さらに好ましくは、2.0以上3.0以下である。
また、図3から明らかなように、亜鉛沈殿工程は、第1アルカリおよび硫化剤が添加された前記第2処理液のpHに応じて、酸化還元電位を制御して行うことが好ましい。
第2処理液を還元的雰囲気にする方法は、任意の還元剤を添加すればよい。還元剤の添加量は、第2処理液のpHにより変動することから、第2処理液のpHに応じた適切な量を実験的に調べて規定することが好ましい。
また、第2処理液に添加する第1アルカリについては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の一般的なアルカリを使用することができる。こうしたアルカリは安価に入手できるため、処理コストを低減することができる。
硫化剤については、任意の硫化剤を用いることができる。例えば水硫化ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素等があげられる。
反応温度については、第2処理液が凝固あるいは蒸発しない温度域で任意に設定することができる。反応時間については、亜鉛の沈殿形成時間と処理効率とを鑑み、15分以上120分以下とすることが好ましい。
続いて、ステップS4において、亜鉛沈殿工程で得られた第3処理液を固液分離する第2固液分離工程を行う。本工程は、主に鉄イオンを含むろ液と、亜鉛沈殿工程において沈殿した固形分(亜鉛沈殿物)とを固液分離する工程である。
亜鉛沈殿工程において生じた固形分は高純度の亜鉛を含んでおり、亜鉛原料として再資源化可能である。
固液分離手法については特に限定されず、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス等の任意の手法を選択できる。
第2固液分離工程を経て得られた第4処理液については、一般的な廃水処理設備で処理が可能である。すなわち、既設の排水処理設備を流用することが可能であり、経済的である。また、第4処理液には主として鉄イオンが含まれるため、図5に示すように、上記第4処理液にアルカリ(第2アルカリ)を添加して第4処理液に含まれる鉄を沈殿させる鉄沈殿工程(ステップS5)と、該鉄沈殿工程で得られた第5処理液を固液分離する第3固液分離工程(ステップS6)を行うことが好ましい。これにより、鉄の再資源化率をさらに向上することができる。
ステップS5の鉄沈殿工程で用いる第2アルカリについては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の入手が容易な一般的なアルカリを使用することができる。
第4処理液のpHについては、8.0以上とすることが好ましい。ここで、pHを8.0以上とすることにより、鉄を効率的に沈殿させることができる。また、鉄を沈殿させる点では、第4処理液のpHの上限はないが、pHが12.0を超えると薬剤使用量が著しく増加する一方、鉄の沈殿効率は変わらない点から12.0以下とすることが好ましい。
また、反応温度については、第4処理液が凝固あるいは蒸発しない温度域で任意に設定することができる。さらに、反応時間については、鉄の沈殿形成時間と処理効率を鑑み、15分以上120分以下とすることが好ましい。
ステップS6の第3固液分離工程は、鉄沈殿工程で得られた第5処理液と固形分(鉄沈殿物)を固液分離する工程である。第1および第2固液分離工程と同様に、固液分離手法については特に限定されず、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス等の任意の手法を選択できる。
なお、上述の説明においては、鉄および亜鉛を含有する原料物質が製鉄ダストである場合について説明したが、製鉄ダスト以外の鉄および亜鉛を含有する原料物質からも同様に亜鉛を簡便かつ低コストで分離することができる。よって、本発明は製鉄ダストに限定されない。
(亜鉛材料の製造方法)
本発明による亜鉛材料の製造方法は、鉄および亜鉛を含有する原料物質から、上記亜鉛の分離方法により亜鉛を分離して回収することを特徴とする。これにより、鉄および亜鉛を含有する原料物質に含まれる亜鉛を濃縮して、亜鉛含有率40%以上の亜鉛材料を製造することができる。
(鉄材料の製造方法)
本発明による鉄材料の製造方法は、鉄および亜鉛を含有する原料物質から、上記亜鉛の分離方法により鉄を分離して回収することを特徴とする。これにより、鉄および亜鉛を含有する原料物質に含まれる鉄を再資源化することができる。
<亜鉛および鉄の浸出率>
表1に示す組成を有する高炉ダストに水を加えて、高炉ダスト:水=1:10(重量比)になるように調整した後、3mol/Lの硫酸をpH=1、2、3、4、5になるように添加し、60分間撹拌した後、鉄および亜鉛の浸出率を調査した。なお、実験中の反応pHは、pHコントローラにより一定になるように制御した。
図6に、硫酸のpHと鉄および亜鉛の浸出率との関係を示す。図6から、鉄および亜鉛の浸出率は、硫酸のpHの低下とともに上昇し、pH=2でそれぞれ7%、70%に達することが分かる。図7に、硫酸浸出前後の亜鉛化合物の割合を示す。一般に、亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、亜鉛-鉄複合酸化物(ZnFe)のうち、酸に可溶な物質は、亜鉛および酸化亜鉛であるが、酸浸出後に高炉ダスト中の酸化亜鉛の割合が大きく減少し、ほぼ全量溶解した。したがって、特に好適なpHは2.0以上3.0以下であることが分かる。
pH=2で浸出後、固液分離工程(第1固液分離工程)を行って得られた亜鉛浸出残渣の成分分析結果を表2に示す。この表に示すように、亜鉛の含有率は、一般に製鉄原料として再資源化可能といわれる0.4%を下回っていることから、製鉄原料として全量再資源化可能であることが分かる。
<亜鉛および鉄の沈殿率>
まず、表1に示した組成を有する高炉ダストに水を加えて、高炉ダスト:水=1:10(重量比)になるように調整した後、3mol/Lの硫酸をpH=2.0に調整し、高炉ダストに含まれる亜鉛を浸出させた。次いで、2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpH2、3、4、5になるように添加しつつ、10%水硫化ナトリウムを添加した。水硫化ナトリウムの添加量は、第2処理液中の亜鉛濃度をあらかじめ定量し、全ての亜鉛イオンと反応するだけの量を添加し、60分間撹拌した。
図8に第2処理液のpHと亜鉛および鉄の沈殿率を示す。亜鉛はいずれのpHでも100%近く沈殿しているが、pHが5になると鉄も32%沈殿する。したがって、より好適なpHは2.0以上4.0以下である。
(発明例)
図1に示したフローに従って高炉ダストから亜鉛を分離した。すなわち、まず、表1に示した組成を有する高炉ダストに水を加えて、高炉ダスト:水=1:10(重量比)になるように調整した後、3mol/Lの硫酸をpH=2.0に調整し、高炉ダストに含まれる亜鉛を浸出させた(ステップS1)。次いで、亜鉛浸出工程で得られた第1処理液に対して、第1固液分離工程を行った(ステップS2)。続いて、第1固液分離工程により得られた第2処理液に対して、亜鉛沈殿工程を行い(ステップS3)、2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpH=3.0になるように添加しつつ、10%水硫化ナトリウム水溶液を添加し、第2処理液に含まれる亜鉛を沈殿させた。その後、第2固液分離工程を行い(ステップS4)、亜鉛沈殿工程で得られた第3処理液を固液分離し、沈殿した亜鉛を分離した。
(比較例)
発明例と同様に高炉ダストから亜鉛を分離した。図9に示したフローに基づき、第1固液分離工程で得られた第2処理液に対してアルカリ処理工程(ステップS23)を行い、2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をpH=9.0になるように添加した。その後、固液分離工程(第4固液分離工程、ステップS24)を行い、沈殿物を回収した。なお、図9におけるステップS21およびステップS22は、図1におけるステップ1およびステップS2とそれぞれ同じ処理である。
<亜鉛含有率>
亜鉛沈殿工程(発明例)で得られた沈殿物とアルカリ処理工程(比較例)で得られた沈殿物の亜鉛および鉄の含有率を表3に示す。発明例では亜鉛が46.7%まで濃縮されており、亜鉛原料としての回収価値が高いとされる亜鉛含有率40%を上回っており、製鉄ダストより分離した亜鉛を亜鉛原料として再資源化できることが分かる。それに対し、比較例では鉄の混入により、亜鉛濃度が8.1%と低く亜鉛原料として価値が低いことが分かった。このように、本発明により、製鉄ダストから簡便に亜鉛を分離することが可能となった。
本発明によれば、簡便かつ低コストで製鉄ダストから亜鉛を分離することができるため、製鉄業において有用である。

Claims (8)

  1. 鉄および亜鉛を含有する原料物質に酸を添加して前記原料物質を含む前記酸のpHを1.0以上に調整し、前記原料物質に含まれる亜鉛を前記酸に浸出させる亜鉛浸出工程と、該亜鉛浸出工程で得られた第1処理液を固液分離する第1固液分離工程と、該第1固液分離工程で得られた第2処理液に第1アルカリおよび硫化剤を添加して亜鉛を沈殿させる亜鉛沈殿工程と、該亜鉛沈殿工程で得られた第3処理液を固液分離する第2固液分離工程とを含むことを特徴とする亜鉛の分離方法。
  2. 前記亜鉛浸出工程は、前記原料物質を含む前記酸のpHを2.0以上3.0以下に調整して行う、請求項1に記載の亜鉛の分離方法。
  3. 前記亜鉛浸出工程における、前記原料物質に含まれる亜鉛を前記酸に浸出させる時間を15分以上120分以下とする、請求項1または2に記載の亜鉛の分離方法。
  4. 前記亜鉛沈殿工程は、前記第1アルカリおよび硫化剤が添加された前記第2処理液のpHを2.0以上5.0以下に調整して行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
  5. 前記第2固液分離工程で得られた第4処理液に第2アルカリを添加して鉄を沈殿させる鉄沈殿工程と、該鉄沈殿工程で得られた第5処理液を固液分離する第3固液分離工程とをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法。
  6. 前記鉄沈殿工程は、前記第4処理液のpHを8.0以上にして行う、請求項5に記載の亜鉛の分離方法。
  7. 鉄および亜鉛を含有する原料物質から、請求項1〜6のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により亜鉛を分離して回収することを特徴とする亜鉛材料の製造方法。
  8. 鉄および亜鉛を含有する原料物質から、請求項1〜6のいずれか一項に記載の亜鉛の分離方法により鉄を分離して回収することを特徴とする鉄材料の製造方法。
JP2016194470A 2016-09-30 2016-09-30 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法 Pending JP2018053351A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016194470A JP2018053351A (ja) 2016-09-30 2016-09-30 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016194470A JP2018053351A (ja) 2016-09-30 2016-09-30 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018053351A true JP2018053351A (ja) 2018-04-05

Family

ID=61835481

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016194470A Pending JP2018053351A (ja) 2016-09-30 2016-09-30 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018053351A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Orhan Leaching and cementation of heavy metals from electric arc furnace dust in alkaline medium
CA3025458C (en) Method for the extraction and recovery of vanadium
JP6125458B2 (ja) 廃乾電池からの資源の回収方法および分離、回収設備
JP6070898B2 (ja) 廃乾電池からの有価成分の回収方法および回収設備
JP6219325B2 (ja) 金属マンガンの製造方法
JP5800255B2 (ja) 製鉄用ヘマタイトの製造方法
CN102719675A (zh) 一种从锌冶炼废渣中综合回收锌铅银的方法
CN111647754A (zh) 一种钢铁厂含锌尘泥的综合利用方法
Sheng et al. Preparation of electronic grade manganese sulfate from leaching solution of ferromanganese slag
Xia et al. Hydrometallurgical stepwise recovery of copper and zinc from smelting slag of waste brass in ammonium chloride solution
Liu et al. Selective leaching of cobalt and iron from cobalt white alloy in sulfuric acid solution with catalyst
JP6648674B2 (ja) 金属マンガンの製造方法
JP2002511527A (ja) 湿式処理による製鋼所塵埃の処理方法
CN100586617C (zh) 从含锌粉料中回收并制取超细锌粉的方法
JP6493423B2 (ja) 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法
US20090272229A1 (en) Chemical process for recovery of metals contained in industrial steelworks waste
JP6172526B2 (ja) ニッケル塩素浸出工程における塩素浸出液の銅濃度の調整方法
JP6743858B2 (ja) 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法
Mukongo et al. Zinc recovery from the water-jacket furnace flue dusts by leaching and electrowinning in a SEC-CCS cell
JPH0797638A (ja) 製鉄所で発生するダスト類の処理方法
EP2980024A1 (en) Method for manufacturing hematite for iron manufacture
JPWO2018168471A1 (ja) 金属マンガンの製造方法
JP2018053351A (ja) 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法
CN110036123A (zh) 在湿法冶金工艺中经由磁铁矿的形成来控制铁的方法
JP7396340B2 (ja) 亜鉛の分離方法、亜鉛材料の製造方法および鉄材料の製造方法