JP2018053211A - 低反射易引裂性フィルム及び鑑識用補助シート - Google Patents

低反射易引裂性フィルム及び鑑識用補助シート Download PDF

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Abstract

【課題】 低反射性に優れる上に、ミシン目等のきっかけが無くても、横方向にどこからでも手で切り取ることが出来る低反射易引裂性フィルムを提供する。【解決手段】 環状オレフィン系樹脂(a)、ポリエチレン系樹脂(b)及び炭酸カルシウムを含む単層又は多層フィルムであって、環状オレフィン系樹脂(a)がフィルム全体に対して1〜40重量%含まれ、かつ表面に露出する層の少なくとも一つが、ポリエチレン系樹脂(b)と炭酸カルシウムの2成分を含み、該表面に露出する層全体に対して炭酸カルシウムが15〜60重量%含まれる、低反射易引裂性フィルムである。【選択図】 なし

Description

本発明は、低反射易引裂性フィルムに関し、さらに詳しくは、低反射性に優れる上に、横方向への易引裂性を兼ね備えた低反射易引裂性フィルムに関するものである。
現在の犯罪捜査では、科学捜査としてDNA鑑定が頻繁に行われるようになっている。DNA鑑定は、鑑定対象物に僅かな異物が混入したり、犯罪と無関係な人の指紋が事後的に付着したりすると、正確な鑑定が出来なくなるため、コンタミネーションには細心の注意が払われている。
上記コンタミネーションを防止するために、従来から、鑑定対象物はテーブル等に直置きするのではなく、コンタミネーション防止に配慮した布シートを介してテーブル上に載せるようにしていた。
しかし従来の布シートは、クリーンな状態を保つ必要があり、洗浄、保管に手間がかかるため価格が高いという難点があった。近年は、クリーンな状態で保管でき、しかも安価なポリエチレン製シートが用いられるようになってきている。
上記のポリエチレン製シートは、半切状で二つ折りにされた状態で保管されるため、折り込み内面は外部からのコンタミネーションを防止することが出来、クリーンな状態を保つことが可能となる。
また、長手方向に等間隔にミシン目などの切り取り線を入れることで、ハサミなどの刃物を使用せずにカットし、使用することが出来ることが知られている(特許文献1)。
特開2014−144573号公報
しかしながら、上記のようなポリエチレン製シートは、従来の布シートと比較して表面光沢度が高いため、鑑定対象物を撮影する際に、背景となるポリエチレン製シートにカメラのフラッシュが反射してしまい、きれいな画像が撮影できないなどの問題がある。また、鑑識対象物のサイズは大小様々であり、所定の間隔で切り取り線が入れられている場合、鑑識対象物のサイズに最適な長さにシートを切り取ることが出来ず、ロスが増える可能性がある。さらに、任意の長さに切り取りたい場合は、ハサミ等の刃物が必要となり、刃物作業による危険性や作業効率低下、切りくずなどの異物混入に繋がる可能性がある。
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を鑑み、低反射性に優れる上に、ミシン目等のきっかけが無くても、横方向にどこからでも手で切り取ることが出来る低反射易引裂性フィルムを提供することにある。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、環状オレフィン系樹脂(a)、ポリエチレン系樹脂(b)及び炭酸カルシウムを含む単層又は多層フィルムであって、
環状オレフィン系樹脂(a)がフィルム全体に対して1〜40重量%含まれ、かつ
表面に露出する層(以下、単に「表面層」ということがある)の少なくとも一つが、ポリエチレン系樹脂(b)と炭酸カルシウムの2成分を含み、該表面に露出する層全体に対して炭酸カルシウムが15〜60重量%含まれるフィルムにより低反射易引裂性フィルムが提供される。
また、第2の発明によれば、第1の発明において、環状オレフィン系樹脂(a)2〜60重量%とポリエチレン系樹脂(b−1)40〜98重量%からなる第1層、及び、ポリエチレン系樹脂(b−2)40〜85重量%と炭酸カルシウム15〜60重量%からなる第2層を含み、第2層が前記表面に露出する層である、少なくとも2層の層からなる、低反射易引裂性フィルムが提供される。
また、第3の発明によれば、第1又は2の発明において、少なくとも一方のフィルム表面において入射角60°におけるグロス値が10%以下であり、該フィルム全体のエルメンドルフ引裂強度が、横方向(TD)において25N/mm以下である、低反射易引裂性フィルムが提供される。
また、第4の発明によれば、第1〜3の何れかの発明において、顔料をさらに含む低反射易引裂性フィルムが提供される。
また、第5の発明によれば、第1〜4の何れかの発明の低反射易引裂性フィルムを含み、炭酸カルシウムを含む最表面層が、フィルムを二つ折りにした際に、内側に来る層であることを特徴とする鑑識用補助シートが提供される。
本発明の低反射易引裂性フィルムによれば、第1の発明においては、フィルムが環状オレフィン系樹脂(a)、ポリエチレン系樹脂(b)及び炭酸カルシウムとを含む単層又は多層フィルムであって、環状オレフィン系樹脂(a)がフィルム全体に対して1〜40重量%含まれ、かつ、
表面に露出する層の少なくとも一つが、ポリエチレン系樹脂(b)と炭酸カルシウムの2成分を含み、該表面に露出する層全体に対して炭酸カルシウムが15〜60重量%含まれることにより、フィルム表面の低反射性に優れ、しかも横方向の易引裂性に優れる。
また、第2の発明においては、フィルムが環状オレフィン系樹脂(a)2〜60重量%とポリエチレン系樹脂(b−1)40〜98重量%からなる第1層、及び、ポリエチレン系樹脂(b−2)40〜85重量%と炭酸カルシウム15〜60重量%からなる第2層を含み、第2層が前記表面に露出する層である、少なくとも2層以上の層からなることにより、フィルム最表面の低反射性に優れ、しかも横方向の易引裂性に優れる。
また、第3の発明においては、少なくとも一方のフィルム表面において入射角60°におけるグロス値が10%以下であり、該フィルム全体のエルメンドルフ引裂強度が、横方向(TD)において25N/mm以下であることにより、低反射性に優れ、しかも横方向の易引裂性に優れる。
また、第4の発明においては、第1〜3の何れかの発明において、顔料をさらに含むため、低反射性に優れる。
第5の発明によれば、第1〜4の発明の低反射易引裂性フィルムを含み、炭酸カルシウムを含む最表面層が、フィルムを二つ折りにした際に、内側に来る層であることを特徴とする鑑識用補助シートであるため、低反射性に優れる上に、易引裂性に優れ、さらに内側のクリーン性に優れる。
以下、本発明の低反射易引裂性フィルムについて、項目ごとに詳細を説明する。
本発明の低反射易引裂性フィルムは、環状オレフィン系樹脂(a)とポリエチレン系樹脂(b)と炭酸カルシウムとを含むことを特徴とする。
1. 低反射易引裂性フィルムを構成する成分
(1)環状オレフィン系樹脂(a)
本発明の低反射易引裂性フィルムに用いる環状オレフィン系樹脂(a)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」ともいう。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」ともいう。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も用いることができる。
COCとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンなどの直鎖状モノマーとテトラシクロドデセン、ノルボルネンなどの環状モノマーとから得られた環状オレフィン共重合体が挙げられる。さらに具体的には上記直鎖状モノマーと炭素数が3〜20のモノシクロアルケンやビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)及びこの誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1.2,5.17,10]−3−ドデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン及びこの誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン等及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン及びこの誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン及びこの誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセン及びこの誘導体等の環状オレフィンとの共重合体からなる環状オレフィン共重合体などが挙げられる。直鎖状モノマー及び環状モノマーは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。また、このような環状オレフィン共重合体は単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、環状オレフィン系樹脂(a)に、前記COPとCOCを併用することもできる。その場合は、COPとCOCのそれぞれの異なった性能を付与することができる。
本発明においては、ポリエチレンに対する分散性の理由により、環状オレフィン系樹脂(a)はCOCであることが好ましい。また、COCとしては、直鎖状モノマーがエチレンである、エチレン・環状オレフィン共重合体であることが好ましい。さらには、環状モノマーは、ノルボルネン等であることが好ましい。
また、本発明においては、エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15/85〜40/60のものであることが好ましい。より好ましくは30/70〜40/60のものである。エチレンが15重量%未満であると、剛性が高くなりすぎ、インフレーション成形性及び製袋適性を悪化させるため好ましくない。一方、エチレンが40重量%以上であると、十分な易引裂性、剛性が得られないため好ましくない。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、引き裂き性、加工安定性、衝撃強度が向上するため好ましい。
さらにまた、エチレン・環状オレフィン共重合体は、ガラス転移点が60℃以上であることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点は70℃以上である。環状オレフィンの含有量が上記範囲を下回ると、ガラス転移点が前記範囲を下回るようになり、十分な剛性が得られず、易引裂性を低下させる等の恐れがある。一方、環状オレフィンの含有量が上記範囲を上回ると、ガラス転移点が高くなりすぎ、共重合体の溶融成形性やオレフィン系樹脂との接着性が低下する恐れがあり好ましくない。
また、環状オレフィン系樹脂(a)の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
環状オレフィン系樹脂(a)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス株式会社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。本発明においては、ノルボルネン系単量体の含有比率が、前述の範囲にあること、加工性等の理由から、TOPASのグレード8007が好ましい。また、環状オレフィン樹脂(a)としては、予め調製したものを用いることもできる。環状オレフィン樹脂(a)の原料や配合割合等は上記の原料、範囲を採用することができ、調製に用いる触媒や反応条件は、当業者に公知である。
(2)ポリエチレン系樹脂(b)
本発明の低反射易引裂性フィルムに用いるポリエチレン系樹脂(b)としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂(b−1)を構成する樹脂は、上述のLDPE、LLDPE、HDPE、EVA等の単独で構成されてもよいし、2種以上のブレンド物から構成されてもよい。なお、本発明で「ポリエチレン系樹脂」はポリエチレンが主成分である樹脂組成物を意味し、重量分率でポリエチレンが50重量%以上含まれる樹脂組成物を意味する。
前記低密度ポリエチレン(LDPE)は、密度が0.910〜0.930g/cmの範囲のポリエチレンであり、例えば、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により製造されるものが挙げられる。エチレンと酢酸ビニルを同法で共重合すると、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が得られる。
また、前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、密度が0.890〜0.940g/cmの範囲のポリエチレンであり、メタロセン系触媒、Ziegler系触媒等を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することで得られる。通常は炭素数3〜8のα−オレフィンが用いられ、具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。
前記高密度ポリエチレン(HDPE)は、密度が0.940〜0.970g/cmの範囲のポリエチレンであり、メタロセン系触媒、チーグラー系触媒、フィリップス系触媒等を用いて、エチレンの単独重合(ホモ)もしくはエチレンとα−オレフィンを共重合することで得られる。通常は炭素数3〜8のα−オレフィンが用いられ、具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。
前記ポリエチレン系樹脂(b)においては、優れた製膜安定性を得るために、メルトフローレート(MFR)が、190℃において0.05〜30g/10分であることが好ましい。なお、本発明におけるメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210により測定したメルトインデックス値である。
本発明の低反射易引裂性フィルムは、2層以上の多層構造からなるフィルムとすることができ、各々の層にポリエチレン系樹脂を用いることができる。例えば低反射性易引裂性フィルムが2層構造である場合には、各々の層に用いられるポリエチレン系樹脂(b−1)及び(b−2)としては、前記ポリエチレン系樹脂(b)と同様のものを各々独立して用いることができる。また、ポリエチレン系樹脂(b−1)及び(b−2)は、前記ポリエチレン系樹脂(b)で列記したポリエチレン樹脂であれば、各々同じポリエチレン系樹脂を用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
(3)炭酸カルシウム
本発明の低反射易引裂性フィルムに用いる炭酸カルシウムとしては、平均粒子径Dswが0.5〜5.0μmのものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径Dswが1.0〜3μmである。平均粒子径Dswが0.5μ以下になると、光の散乱効果が低減するため、低反射性が悪化する恐れがある。また、平均粒子径Dswが5.0μmを超えると、ポリエチレン系樹脂との相溶性が悪化し、分散性が悪くなる恐れがある。
さらに、ポリエチレンとの分散性の観点から、表面処理された炭酸カルシウムが好ましい。表面処理に用いる処理薬品には、脂肪酸、ワックス等があるが、ポリエチレンとの分散性を向上させるためには脂肪酸により表面処理された炭酸カルシウムが好ましい。
本発明において、当該低反射易引裂性フィルム中には、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、耐候剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
2. 低反射易引裂性フィルム
本発明の低反射易引裂性フィルムは、前述したように、環状オレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂と、炭酸カルシウムから構成されるものである。
低反射易引裂性フィルム全体の厚さとしては、30〜150μmのものが好ましい。フィルムの厚さが30μm以下であると、インフレーション成形性と2次加工性を悪化させるため好ましくない。フィルムの厚さが150μmを超えると、フィルムとしての引裂強度が大きくなり過ぎて、ノッチ等の引裂開始部分無しでは、手で引裂くことが難しくなるため好ましくない。本発明の低反射易引裂性フィルムが多層構造をとる場合には、各々の層の厚さは、フィルム全体の厚さが上記範囲を満たし、後述する各成分の重量割合が所定の範囲に収まるものであれば、特に制限されない。フィルムの反射度をより抑制することができる点から、フィルムの表面に露出する層のうち炭酸カルシウムを含む層の厚みが、フィルム全体の厚みの10%以上であることが好ましい。
本発明の低反射易引裂性フィルムには、環状オレフィン樹脂(a)がフィルム全体に対して1〜40重量%含まれる。本発明の低反射易引裂性フィルムを多層構成にした場合には、環状オレフィン系樹脂(a)の量は低反射易引裂フィルム全体を基準として1重量%〜40重量%となればよく、各々の層で上記範囲内である必要はなく、環状オレフィン樹脂(a)が含まれない層があってもよい。フィルム全体としての環状オレフィン系樹脂(a)の量が1重量%未満であると、剛性が低下し、易引裂性が悪化するため好ましくない。また、フィルム全体としての環状オレフィン系樹脂(a)の量が40重量%を超えると、剛性が高くなり過ぎ、インフレーション成形性を悪化させるため好ましくない。本発明の低反射易引裂性フィルムが多層構造をとる場合には、環状オレフィン樹脂(a)が含まれる層における環状オレフィン樹脂(a)の量は、フィルム全体で1重量%〜40%の範囲内となるように、各々2重量%〜60重量%であることが好ましく、2重量%〜40重量であることがより好ましい。
本発明の低反射易引裂性フィルムには、ポリエチレン系樹脂(b)がフィルム全体に対して1重量%〜84重量%含まれる。本発明の低反射易引裂性フィルムを多層構成にした場合には、ポリエチレン系樹脂(b)の量は低反射易引裂フィルム全体を基準として1重量%〜84重量%となればよく、各々の層で上記範囲内である必要はなく、ポリエチレン系樹脂(b)が含まれない層があってもよい。フィルム全体としてのポリエチレン系樹脂(b)の量が1重量%未満であると、フィルムとしての柔軟性が失われるため成形性が悪化するため好ましくない。また、フィルム全体としてのポリエチレン系樹脂(b)の量が84重量%を超えると、フィルムとしての機能である低反射性と易引裂性を両立することが出来ないため好ましくない。ポリエチレン系樹脂(b)の量は、各層における環状オレフィン系樹脂(a)及び炭酸カルシウムの適切な量に応じて、上記範囲内で適宜設計することができる。また、本発明の低反射易引裂性フィルムが多層構造をとる場合には、環状オレフィン系樹脂(a)2〜60重量%とポリエチレン系樹脂(b−1)40〜98重量%からなる第1層、及び、ポリエチレン系樹脂(b−2)40〜85重量%と炭酸カルシウム15〜60重量%からなる第2層を含むことが好ましい。
本発明の低反射易引裂性フィルムにおいては、フィルムの表面層の少なくとも一方に炭酸カルシウムが15重量%〜60重量%含まれる。ここで、本明細書において「表面に露出する層(表面層)」とは、フィルムと空気との界面をなす層を意味し、フィルムが単層構造をとるときには、フィルムの表面層はフィルム全体と同じ意味を有する。すなわち、フィルムが単層構造をとるときには、炭酸カルシウムはフィルム全体に対して15重量%〜60重量%含まれる。本発明の低反射易引裂性フィルムにおいては、フィルムが多層構造をとっており、少なくとも一方のフィルム表面層に炭酸カルシウムが15〜60重量%含まれることが好ましい。フィルム表面層に含まれる炭酸カルシウムの量が15重量%以下であると、フィルム表面の光沢度が高くなり、低反射性が悪化する可能性があるため好ましくない。また、炭酸カルシウムが60重量%を超えると、インフレーション成形性が悪化するだけでなく、層密度が高くなることによりフィルムのカールが発生する恐れがある。低反射性、成形性をより向上させ、カールの発生を抑制できる点から、表面層における炭酸カルシウムの含有量は25〜60重量%であることがより好ましく、35〜55重量%であることがさらに好ましい。
低反射易引裂性フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、押出機で加熱溶融させ、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する方法が挙げられる。また、低反射易引裂性フィルムを多層構成にする際には、各層の樹脂をそれぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、同様に、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状にする共押出法が挙げられる。この、共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生面に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。
本発明の低反射易引裂性フィルムは、少なくとも一方のフィルム表面に炭酸カルシウムが15〜60重量%含まれる層が露出しており、当該層表面において、入射角60°におけるグロス値が10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下である。ここで本明細書におけるグロス値は、JIS Z8741に基づき測定した値である。
また、本発明の低反射易引裂性フィルムは、そのエルメンドルフ引裂強度が、横方向(TD)において25N/mm以下であることが好ましい。より好ましくは、15N/mm以下である。ここで本明細書におけるエルメンドルフ引裂強度は、JIS K7128−2に基づき測定した値である。
3. 鑑識用補助シート
本発明の低反射易引裂性フィルムを用いて、鑑識用補助シートが得られる。鑑識用補助シートは、例えば共押出インフレーション成形法により、環状ポリオレフィンが含まれる層と炭酸カルシウムが含まれる層を、別々の押出機で加熱溶融させた後、炭酸カルシウムが含まれる層がインフレーションチューブ内側面に露出するように積層されたチューブ状フィルムにおいて、折りたたまれたインフレーションチューブの片側をスリット加工することにより得られる半切状の鑑識用補助シートが挙げられる。当該鑑識用補助シートは、折りたたまれた半切状シートの内側面に、炭酸カルシウムが含まれる層が露出し、その他の層に環状オレフィン系樹脂が含まれる層が含まれていればよく、前述した層以外の層における樹脂組成や、積層させる層の数は限定されない。
当該鑑識用補助シートは、鑑定対象を載せる際、コンタミネーションを防止するために半切状であることが好ましい。半切状であれば、折りたたまれたシート内側面は使用時まで外部からのコンタミネーションを防止できる。
また、鑑定対象物のサイズを計測することや、鑑定対象物のサイズに合わせたシートを切り取るために、半切状シート内側面において少なくとも一方のシート面にスケールを印刷することが好ましい。
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、これによって限定されるものではない。
なお、実施例における各種物性の測定は、下記要領に従った。
<測定方法>
(1) 光沢度(グロス値)
JIS Z8741に基づき、下記装置、条件にて測定した。なお、測定前に黒色標準板(角度60°、光沢度92.4%)で校正を実施した。
装置:スガ試験機株式会社製 UGV−4D
入射光角度:60°
測定環境:温度23℃、湿度50%
(2) エルメンドルフ引裂強度
JIS K7128−2に基づき、以下の装置を用いてエルメンドルフ引裂強度を評価した。なお、TDは垂直方向(TD:Transverse Direction)の値である。
装置:デジタルエルメンドルフ引裂試験機 型式SA(株式会社東洋精機製作所製)
測定環境:温度23℃、湿度50%
<使用原料>
(1)環状オレフィン系樹脂(a)
COC:TOPAS8007F−600(MVR=2cm/10min@190℃−2.16kg, 密度=1010kg/m) , ポリプラスチックス株式会社製
(2)ポリエチレン系樹脂(b)
LDPE−1:LF405M(MFR=2g/10min, 密度=0.919g/cm),日本ポリエチレン株式会社製
LDPE−2:LF440B(MFR=2.8g/10min, 密度=0.925g/cm), 日本ポリエチレン株式会社製
LLDPE−1:UF320(MFR=0.9g/10min, 密度=0.922g/cm), 日本ポリエチレン株式会社製
LLDPE−2:UF421(MFR=0.9g/10min, 密度=0.926g/cm), 日本ポリエチレン株式会社製
MB(1):炭酸カルシウム52重量%MB(MB(マスターバッチ):添加剤高濃度含有樹脂)
[実施例及び比較例]
(実施例1〜3)
前述の特定の原料を用いて、3種3層インフレーション成形機により、厚み50μmのインフレーションフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(比較例1、2)
前述の特定の原料を用いて、3種3層インフレーション成形機により、厚み50μmのインフレーションフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(比較例3、4)
前述の特定の原料を用いて、単層インフレーション成形機により、厚み50μmのインフレーションフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
Figure 2018053211
表1から明らかなように、比較例1、4は、環状オレフィン系樹脂と炭酸カルシウムが含まれていないため、低反射性とTD易引裂性に劣り、比較例2、3は、環状オレフィン系樹脂は含まれるが、炭酸カルシウムが含まれていないため、TD易引裂性には優れるものの、低反射性は劣る。その中で、実施例1〜3については、環状オレフィン系樹脂を含み、さらに内層に炭酸カルシウムを規定量含むことにより、低反射性に優れるだけでなく、TD易引裂性にも優れる。したがって当該実施例については、低反射易引裂性フィルムとして好適な原料構成であり、特に、鑑識用補助シート用途には好適と判断できる。

Claims (5)

  1. 環状オレフィン系樹脂(a)、ポリエチレン系樹脂(b)及び炭酸カルシウムを含む単層又は多層フィルムであって、
    環状オレフィン系樹脂(a)がフィルム全体に対して1〜40重量%含まれ、かつ
    表面に露出する層の少なくとも一つが、ポリエチレン系樹脂(b)と炭酸カルシウムの2成分を含み、該表面に露出する層全体に対して炭酸カルシウムが15〜60重量%含まれる、低反射易引裂性フィルム。
  2. 環状オレフィン系樹脂(a)2〜60重量%とポリエチレン系樹脂(b−1)40〜98重量%からなる第1層、及び、ポリエチレン系樹脂(b−2)40〜85重量%と炭酸カルシウム15〜60重量%からなる第2層を含み、炭酸カルシウムが15〜60重量%含まれる第2層が前記表面に露出する層である、少なくとも2層以上の層からなることを特徴とする請求項1記載の低反射易引裂性フィルム。
  3. 少なくとも一方のフィルム表面において入射角60°におけるグロス値が10%以下であり、該フィルム全体のエルメンドルフ引裂強度が、横方向(TD)において25N/mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の低反射易引裂性フィルム。
  4. 顔料をさらに含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の低反射易引裂性フィルム。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の低反射易引裂性フィルムを含み、炭酸カルシウムを含む最表面層が、フィルムを二つ折りにした際に、内側に来る層であることを特徴とする、鑑識用補助シート。
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