JP2018053107A - インクジェット捺染インク組成物 - Google Patents

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裕成 池田
福本 浩
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福本  浩
信一 内藤
Shinichi Naito
信一 内藤
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Abstract

【課題】芳香環を有する二量体に由来する異物が生じにくく、かつ高い充填性を有するインクジェット捺染インク組成物を提供することを目的とする。【解決手段】分散剤Aと、界面活性剤Bと、芳香環を有する二量体Cと、水と、を少なくとも含み、前記分散剤Aの含有量aに対する前記芳香環を有する二量体Cの含有量cの比(c/a)が、0.001以上0.045以下であり、前記界面活性剤Bの含有量bに対する前記分散剤Aの含有量aの比(a/b)が、7以上50以下である、インクジェット捺染インク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット捺染インク組成物に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、吐出安定性等について種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、大気開放系であっても吐出安定性が良好であり、気液界面における異物の発生を抑制でき、記録装置不使用時にノズルのキャップを閉めて放置した場合の回復性(以下、「Cap閉放置回復性」ともいう。)に優れる、捺染用インクジェットインク組成物を提供することを目的として、分子量が350以下であり、かつ分子構造中にアミノ基を1つ以上有する分散染料と、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物と、シリコーン系界面活性剤と、アルキルスルホコハク酸塩と、を含み、大気開放系で使用されるものである、捺染用インクジェットインク組成物が開示されている。
特開2015−83630号公報
特許文献1に記載されるように、芳香族スルホン酸は分散剤として汎用的に用いられている。芳香族スルホン酸は単に色材を分散させるだけでなく、近年主流になりつつある継ぎ足し式インクタンク搭載のプリンターでの使用を可能にしている。それは、当該分散剤が分子内にスルホン酸を有しており、大気開放されたタンク内でインクの水分蒸発が起こった際にも十分な水溶性を発揮する為、異物となることなく、色材の分散安定に優れ吐出安定性を確保できる。
また、継ぎ足しタイプのプリンターでは、インク補充の際に、気泡が混入しやすい。混入した気泡によって、充填性等の吐出に不具合を引き起こすため、界面活性剤を加えることでこの不具合を解消しようとしていた。
しかしながら、芳香族スルホン酸系の分散剤は、製造上の不純物(副生成物)として芳香環を有する二量体を含有していることが多い。当該二量体は芳香族スルホン酸系分散剤の合成の際の芳香族のスルホン化の段階で副次的に生成してしまうものであり、多いものでは分散剤中に数%の割合で含有されることがある。このような芳香環を有する二量体は主成分の芳香族スルホン酸とは異なり電離基をもたない為、水溶性が極めて低いことが特徴である。したがってインクの製造時に分散剤を水溶化させた後、温度変化などにより芳香環を有する二量体が水溶性を失い再結晶化することがある。そして、その結果、再結晶物は異物としてプリンターのノズルやフィルターを詰まらせてしまうという不具合を引き起こす。このような芳香族二量体を、精製により除去することも考えられるが、高純度に精製するためには高いコストを要したり、生成時に使用する有機溶剤の残留等による弊害がある場合があるため、改善が求められていた。
さらに、残留気泡による充填性を改善するために含有する界面活性剤が、二量体の再結晶化を促進することが分かった。このような背景から、二量体Cの異物化を抑制し、かつ充填性に優れることが望まれていた。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、芳香環を有する二量体に由来する異物が生じにくく、かつ高い充填性を有するインクジェット捺染インク組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、分散剤、界面活性剤、及び芳香環を有する二量体の組成比を所定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、分散剤Aと、界面活性剤Bと、芳香環を有する二量体Cと、水と、を少なくとも含み、前記分散剤Aの含有量aに対する前記芳香環を有する二量体Cの含有量cの比(c/a)が、0.001以上0.045以下であり、前記界面活性剤Bの含有量bに対する前記分散剤Aの含有量aの比(a/b)が、7以上50以下である、インクジェット捺染インク組成物である。
また、表面張力が30mN/m以下であることが好ましく、芳香環を有する二量体Cが、下記式(1):R−SO2−R(式中、Rは、各々独立して、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、クリセン、又はフルオレンを示す。)で表される化合物であることが好ましく、芳香環を有する二量体Cの含有量cが、インクジェット捺染インク組成物の総量に対して、0.001以上0.6質量%以下であることが好ましく、分散剤Aが、ナフタレンスルホン酸化合物のホルマリン縮合物、又はリグニンスルホン酸化合物のホルマリン縮合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、界面活性剤Bが、ノニオン系界面活性剤を含むことが好ましく、分散染料をさらに含むことが好ましく、分散染料が、C.I.ディスパースレッド60であることが好ましい。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔インクジェット捺染インク組成物〕
本実施形態のインクジェット捺染インク組成物は、分散剤Aと、界面活性剤Bと、芳香環を有する二量体Cと、水と、を少なくとも含み、前記分散剤Aの含有量aに対する前記芳香環を有する二量体Cの含有量cの比(c/a)が、0.001以上0.045以下であり、前記界面活性剤Bの含有量bに対する前記分散剤Aの含有量aの比(a/b)が、7以上50以下である。
分散剤に混入する芳香環を有する二量体は水溶性が低いため、インク組成物の温度変化などによって芳香環を有する二量体が水溶性を失いインク組成物中で再結晶化することがある。そして、その結果、再結晶物は異物としてプリンターのノズルやフィルターを詰まらせてしまうという不具合を引き起こす。このような芳香環を有する二量体を、精製により除去する方法の一つとしては、トルエンなどの有機溶剤を使用して分離抽出する方法が考えられるが、このような精製をしても芳香環を有する二量体を完全に除くことはできず、かえってインク組成物中にトルエンが残留することなどによるその他の弊害が懸念される。また、分散剤の温度条件等の合成条件を制御することにより、芳香環を有する二量体が副生することを抑制する方法ことも考えられるが、この方法でも芳香環を有する二量体の副生を完全に抑制することは困難である。また、インクジェットプリンターの吐出ノズル径は約20μmと小さいため、非常に少量の異物発生でも正常な吐出を妨げてしまう。よって根本的に異物を発生させないことがインク設計思想として求められる。
これに対して、本実施形態においては、インク組成物の組成を調整することにより、芳香環を有する二量体Cに由来する異物の発生が抑制されることに着目し、芳香環を有する二量体Cと、芳香環を有する二量体Cに由来する異物の発生を促進する成分(界面活性剤B)と、抑制する成分(分散剤A)と、の関係を見出して、これらを制御することにより、芳香環を有する二量体Cに由来する異物の発生を制御する。
〔分散剤A〕
本発明のインクは、分散剤Aを含む。分散剤Aは、色材としての分散染料を主溶媒である水に安定的に分散させたり、二量体Cを分散させ異物として析出することを抑制したり、するために用いることができる。
分散剤Aとしては、特に制限されないが、例えば、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、高分子分散剤が挙げられる。このなかでも、アニオン系分散剤が好ましい。
アニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸のホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸のホルマリン縮合物、β−ナフトールスルホン酸のホルマリン縮合物、メチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ブチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物等のアルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物;β−ナフタレンスルホン酸とβ−ナフトールスルホン酸との混合物のホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸と2−ナフトール−6−スルホン酸との混合物のホルマリン縮合物、及びリグニンスルホン酸のホルマリン縮合物が挙げられ、市販品としては、デモールN(花王株式会社製)、デモールT45(花王株式会社製)、デモールSNB(花王株式会社製)、ラベリンFM45(第一工業製薬株式会社製)、ラベリンFD40(第一工業製薬株式会社製)、ラベリンAN40(第一工業製薬株式会社製)、ラベリンW40(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
このなかでも、ナフタレンスルホン酸化合物のホルマリン縮合物、又はリグニンスルホン酸化合物のホルマリン縮合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。このような分散剤Aを用いることにより、芳香環を有する二量体Cに由来する異物の発生を制御できる傾向にある。特に、このような分散剤Aを用いることにより、インク組成物と大気とが接した場合においてもその気液界面で異物が発生することをより抑制することができ、大気開放系記録装置により適したインク組成物となる傾向にある。「大気開放系記録装置」とは、インク組成物と大気とが接するような構造を有するインク収容容器を備える記録装置をいう。さらに言えば、大気開放系記録装置は、インク組成物を液体で補充できるような開放系(常に新鮮な空気に触れている)であり、従来のインクカートリッジのようにインク組成物の補充ができない機構になっている(完全に密閉系になっているか、もしくは空気層はあるが体積的には極めて小さく、かつ直接的な空気の出入りがない状態のもの)とは区別される。大気開放系記録装置では、インク組成物と大気とが接するため、インクの乾燥などにより、特に気液界面で異物が発生しやすい。そのため、本発明が特に有用となる。
ノニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
高分子分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物等が挙げられる。
分散剤Aの含有量aは、インクジェット捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは2〜16質量%であり、より好ましくは4〜14質量%であり、さらに好ましくは6〜12質量%である。分散剤Aの含有量aが、2質量%以上であることにより、分散染料の分散安定性を確保したり、芳香環を有する二量体Cに由来する異物の発生がより抑制される傾向にある。また、分散剤Aの含有量aが、16質量%以下であることにより、インクの粘度を小さく抑えたり、分散染料を溶解させすぎることがなかったり、分散剤Aの添加に伴いインク組成物に混入する芳香環を有する二量体Cの量がより抑制される傾向にある。また、分散剤Aの重量平均分子量は2000〜12000の範囲であることが分散染料の分散安定性やインク低粘度化の観点から好ましい。
〔界面活性剤B〕
本発明のインクは界面活性剤Bを含む。界面活性剤Bは、継ぎ足しタイプのプリンターにおいて、インク流路中に混入した気泡によって生じるインク充填の不具合に対し、消泡性の向上や、インクと部材との濡れ性を向上して混入気泡の排出を促し、充填性を改善する効果がある。
界面活性剤Bとしては、特に限定されないが、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。このなかでも、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤を用いることにより、表面張力が低下し、記録装置のインク流路へのインク組成物の濡れ性がより向上する傾向にある。
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤、多環フェニルエーテル系界面活性剤、ソルビタン誘導体、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。この中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤は、他のノニオン系界面活性剤と比較して、表面張力及び界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する。特にアセチレングリコール系界面活性剤はインク供給路に対して良好な親和性(濡れ性)を示すため、洗浄液としても適する。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール465やサーフィノール61(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S−144、S−145(旭硝子株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(Dupont社製);FT−250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
界面活性剤Bの含有量bは、インクジェット捺染インク組成物の総質量に対し、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.2〜3質量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。界面活性剤Bの含有量bが0.1質量%以上であることにより、表面張力が低下し、インク流路へのインク組成物の濡れ性がより向上し、インクジェット法により適したインク性状となる傾向にある。また、界面活性剤Bの含有量bが5質量%以下であることにより、分散剤Aにより分散安定していた芳香環を有する二量体Cが、界面活性剤Bの働きにより分散剤Aから脱着し芳香環を有する二量体Cに由来する異物を生じてしまう、ことをより抑制できる傾向にある。
〔芳香環を有する二量体C〕
本発明のインクは芳香環を有する二量体Cを含む。芳香環を有する二量体Cは上述した分散剤Aの混入物としてインク組成物に添加される場合や、過剰な分散剤Aが色材である分散染料を溶かしてしまい色材由来の異物を生じさせることを抑制する目的でインク組成に添加する場合がある。一方で、この芳香環を有する二量体Cは、電離基が有しないために水溶性に乏しく、微量でも異物を生じやすい。そのため、分散剤Aと二量体Cとの含有量を調整しないまま、インク組成物に含有すると、二量体C由来の異物が生じて吐出不良を招く場合があるが、本発明のように、後述する分散剤Aと二量体Cとの比率c/aの範囲で二量体Cの量を調整することで、二量体C由来の異物の発生を抑制することができるため、本発明が特に有用である。
芳香環を有する二量体Cとしては、特に制限されないが、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
R−SO2−R ・・・(1)
(式中、Rは、各々独立して、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、クリセン、又はフルオレンを示す。)
芳香環を有する二量体Cの含有量cは、インクジェット捺染インク組成物の総質量に対し、好ましくは0.001〜0.6質量%であり、より好ましくは0.005〜0.2質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.2質量%である。芳香環を有する二量体Cの含有量cが0.001質量%以上であることにより、色材由来の異物発生を抑制できる。特に制限されないが、分散安定性の観点から色材と分散剤Aの含有量が調整された系において、色材と同じ疎水性を持つ二量体Cは所定の含有量範囲においては謂わば緩衝剤のように作用をし、分散剤Aが色材に対して過剰に存在するような場合にはその過剰量の分散剤Aを吸着し、色材由来の異物発生を抑制するという効果を発揮し得る。また、二量体Cの含有量cが0.6質量%以下であれば、分散剤Aの乳化効果により二量体Cの異物発生を抑制することができる。なお、芳香環を有する二量体Cは、分散剤Aの混入物としてインク組成物に添加されうるものであるため、分散剤Aの含有量を減らすことにより芳香環を有する二量体Cの含有量cを低減することができる。分散剤Aを予め精製して上記範囲内となるように調整したり、後述する方法で作成した二量体Cを上記範囲内となるようにインクに含有させたり、この両方を組み合わせたりすることで、調整可能である。
分散剤Aの含有量aに対する芳香環を有する二量体Cの含有量cの比(c/a)は、0.001以上0.045以下であり、好ましくは0.001以上0.04以下であり、より好ましくは0.002以上0.03以下である。比(c/a)が0.001以上であることにより、二量体Cがインク中の過剰の分散剤Aを吸着させ、色材由来の異物発生を抑制できる。比(c/a)が0.045以下であることにより、分散剤Aが芳香環を有する二量体Cをより安定的に分散させることができるため、芳香環を有する二量体Cに由来する異物の発生がより抑制される。
界面活性剤Bの含有量bに対する分散剤Aの含有量aの比(a/b)は、7以上50以下であり、好ましくは10以上40以下であり、より好ましくは12以上30以下であり、さらに好ましくは15以上30以下である。比(a/b)が7以上であることにより、芳香環を有する二量体Cを安定的に分散させる分散剤Aが芳香環を有する二量体Cの分散安定性を低下させ得る界面活性剤Bよりも多くなり、それにより、芳香環を有する二量体Cに由来する異物の発生がより抑制される。また、比(a/b)が50以下であることにより、インク組成物の濡れ性に寄与する界面活性剤Bの量が相対的に多くなり、インクジェット法で本実施形態のインク組成物を用いた場合の充填性をはじめ、吐出安定性、ブリード抑制等の種々のインク特性がより向上する。
〔水〕
本発明のインクは水を含む。水は、本実施形態のインクジェット捺染用インクの主な媒体である。水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水、ならびに超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものを用いることができる。また、紫外線照射や過酸化水素の添加などによって滅菌した水を使用すると、インクを長期間保存する場合に、カビやバクテリアの発生を抑制することができる。インクに含まれる水の含有量は、特に限定されないが、インクの全質量に対して、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは60〜90質量%であり、さらに好ましくは70〜80質量%である。
〔分散染料〕
本実施形態のインク組成物は、分散染料を含んでもよい。分散染料とは、ポリエステル、ナイロン、アセテート等の疎水性合成繊維の染着に好適に用いられる染料であり、水に不溶または難溶の化合物である。
本実施形態に係るインク組成物に用いられる分散染料としては、特に制限されないが、具体的には以下に例示するものが挙げられる。
イエロー分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232が挙げられる。
オレンジ分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142が挙げられる。
レッド分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースレッド1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328が挙げられる。
バイオレット分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77が挙げられる。
グリーン分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースグリーン9が挙げられる。
ブラウン分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブラウン1、2、4、9、13、19が挙げられる。
ブルー分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブルー3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、360が挙げられる。
ブラック分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブラック1、3、10、24が挙げられる。
上記で例示した分散染料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた混色として用いてもよい。
本実施形態に係るインク組成物は、上記例示した分散染料の中でも、分子量が380以下の分散染料が好適である。この分散染料の分子量は、好ましくは340以下であり、より好ましくは270以上340以下であり、特に好ましくは280以上340以下である。分子量が380以下の分散染料であると、昇華転写式で用いた場合に転写先への染料の転写を効率よく行うことができる。
分子量が380以下の分散染料としては、例えばC.I.ディスパースレッド11、53、55、59、60;C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71;C.I.ディスパースオレンジ1、20、25;C.I.ディスパースブルー19、26、56、72、81、359;C.I.ディスパースバイオレット8、17、27、28等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。
分散染料の含有量は、インク組成物の総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは1.0〜7.5質量部であり、さらに好ましくは2.5〜7.5質量部である。分散染料の含有量が0.1質量部以上であることにより、発色性がより向上する傾向にある。また、分散染料の含有量が10質量部以下であることにより、分散染料由来の異物や、気液界面の異物がより生じにくい傾向にある。
〔その他の溶剤〕
本実施形態のインク組成物は、水以外の溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、水溶性有機溶媒が挙げられ、例えば、グリコール系やグリコールエーテル系の化合物である。
水溶性有機溶剤の例としては、1,2−ペンタンジオール、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコ−ルモノプロピルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2−メチル−3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール、3−(3−メチルフェノキシ)−1,2−プロパンジオール、3−ヘキシルオキシ−1,2−プロパンジオール、及び、2−ヒドロキシメチル−2−フェノキシメチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類が挙げられる。また、水溶性有機溶剤は、複数種を混合して用いてもよい。
水溶性有機溶剤の配合量は、インク組成物の全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
〔保湿剤〕
本実施形態のインクジェット捺染インク組成物は、保湿剤(湿潤剤)をさらに含むことが好ましい。保湿剤としては、一般にインクジェットインクに用いられるものであれば特に制限されることなく使用可能である。保湿剤の沸点は、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは200℃以上である。沸点が上記範囲内であることにより、インク組成物に良好な保水性及び湿潤性を付与することができる。
このような保湿剤の具体例として、特に限定されないが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、メソエリスリトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ヒドロキシエチルピロリドン等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類及びこれらの糖類の誘導体、グリシン、トリメチルグリシンのベタイン類などが挙げられる。
保湿剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のインク組成物に保湿剤を配合する場合の配合量としては、インク組成物の全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
〔浸透剤〕
本実施形態のインクジェット捺染インク組成物は、浸透剤をさらに含有することが好ましい。浸透剤としては、特に限定されないが、例えば、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテル類)及びアルキルジオール類が好ましく挙げられる。
グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
また、上記アルキルジオール類としては、特に限定されないが、例えば、1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、及び1,8−オクタンジオール等が挙られる。
浸透剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
浸透剤の配合量は、インク組成物の全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
〔pH調整剤〕
本実施形態のインクジェット捺染インク組成物は、pH調整剤を含むことが好ましい。pH調整剤は、インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク、乳酸等)、pH緩衝液として、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。
pH調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
〔その他の成分〕
本実施形態で用いるインク組成物は、必要に応じて、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
〔表面張力〕
インクジェット捺染インク組成物の表面張力は、30mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは28mN/m以下であり、さらに好ましくは25mN/m以下である。表面張力が30mN/m以下であることにより、インクジェット法で本実施形態のインク組成物を用いた場合の充填性をはじめ、吐出安定性、ブリード抑制等の種々のインク特性がより向上する。また、表面張力の下限値は特に限定されないが、好ましくは10mN/m以上であり、より好ましくは15mN/m以上であり、さらに好ましくは17mN/m以上である。なお、表面張力は実施例に記載の方法により測定することができる。
また、同様の観点から、インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上5mPa・s以下であることがより好ましく、2mPa・s以上3.8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
〔インクジェット記録装置〕
上記本実施形態のインク組成物は、インクジェット記録装置に好適に用いることができる。インクジェット記録装置は、上述のインク組成物を収容するインク収容容器(カートリッジ、タンク等)及びこれに接続される記録ヘッドを少なくとも有し、上述のインク組成物を記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を形成することができれば、特に限定されない。
本実施形態のインクジェット記録装置としては、シリアル型およびライン型のいずれでも使用することができる。これらの型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドが搭載されており、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、記録ヘッドのノズル孔からインク組成物の液滴を所定のタイミングで(間欠的に)かつ所定の体積(質量)で吐出させ、記録媒体にインク組成物を付着させて所定の画像を形成することができる。
ここで一般に、シリアル型のインクジェット記録装置では、記録媒体の搬送方向と、記録ヘッドの往復動作の方向が交差しており、記録ヘッドの往復動作と記録媒体の搬送動作(往復動作も含む)との組み合わせによって、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。またこの場合、一般的には、記録ヘッドには複数のノズル孔(インク組成物を吐出する孔)が配置され、記録媒体の搬送方向に沿ってノズル孔の列(ノズル列)が形成されている。また、記録ヘッドには、インク組成物の種類や数に応じて、複数のノズル列が形成される場合もある。
また、一般に、ライン型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドは往復動作を行わず、記録媒体の搬送によって記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させて、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。この場合においても、一般的には、記録ヘッドには、ノズル孔が複数配置され、記録媒体の搬送方向に交差する方向に沿って該ノズル孔の列(ノズル列)が形成されている。
インクジェット記録方式は、上述したようなシリアル型またはライン型のインクジェット記録装置を用いるものであるが、方式としては、インク組成物を微細なノズル孔より液滴として吐出して該液滴を記録媒体に付着させることができれば、特に制限されない。例えば、インクジェット記録方式としては、静電吸引方式、ポンプ圧力によりインク滴を噴射させる方式、圧電素子を用いる方式、インク液を微小電極で加熱発泡させインク滴を噴射させる方式、などを挙げることができる。
本実施形態で用いられるインクジェット記録装置には、例えば、加熱ユニット、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置などの公知の構成を制限無く採用することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[インク組成物用の材料]
下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔分散染料〕
DR60
〔分散剤〕
デモールNL(花王ケミカル社製製品名、固形分41%、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物)
〔二量体〕
下記化合物1
〔界面活性剤〕
BYK348(BYK社製商品名、ポリシロキサン系界面活性剤)
〔保湿剤〕
GL(グリセリン)
〔浸透剤〕
MTG(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)
〔pH調整剤〕
TEA(トリエタノールアミン)
[インク組成物の調製]
各材料を下記の表1〜3に示す組成で混合し、1時間攪拌してから、メンブレンフィルター(孔径5μm)を用いて濾過することで、各インク組成物を得た。なお、下記の表1〜3中、数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。また、二量体は、下記方法により合成し、インク組成物に対して混合した。
〔二量体Cの合成方法〕
ナフタレン1モルに対し、硫酸を3モル加え、150℃で5時間程度反応させた。その後、水と、硫酸の添加モル量に対応した炭酸カルシウムを加え中和を行い、水洗した。その後更に、0.5気圧・150℃状況下にて揮発させることにより未反応成分及び余剰な水を除去して、下記化合物1を得た。なお、二量体Cの含有量は、高速液体クロマトグラフィーを用いて常法により測定することができる。
〔表面張力の測定方法〕
協和界面科学(株)製の表面張力計「CBVP−Z」を用いて、Wilhelmy法に従って、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を測定した。以下、Wilhelmy法について説明する。測定子(白金プレート)が液体の表面に触れると、液体が測定子に対してぬれ上がる。このとき、測定子の周辺に沿って表面張力がはたらき、測定子を液中に引き込もうとする。この引き込む力を読み取り、表面張力を測定した。
〔芳香族二量体由来の異物〕
上記のように得られたインク組成物20gを50mL容量のガラス容器に封入しフタをした。その後、60℃環境で120時間放置した後、インク組成物を金属メッシュフィルター(孔径10μm)で濾過し、金属メッシュフィルターに残留した異物の1mm四方あたりの個数を数えた。得られた個数に基づいて、下記評価基準により、インク組成物の気液界面における異物の発生を評価した。なお、インク組成物の乾燥固化物(※)としては、インク組成物1mLをシャーレに滴下し、常温環境下に三日放置し、十分水分蒸発させて乾固させたものを用いた。ここで見られる異物は、芳香族二量体の結晶物であり、針状など結晶形状の異物として観察された。
(評価基準)
A:異物個数が10個以下
B:異物個数が11個以上〜30個以下
C:異物個数が31個以上(許容できないレベル)
〔充填性〕
上記のように得られたインク組成物を充填したインクカートリッジを、インクジェットプリンター(製品名SC−F6000、セイコーエプソン社製)のマゼンタインクカートリッジ装着部に装着した。SC−F6000の定める初期充填シーケンスに従い、ヘッドへの初期充填動作を行った。この後、マゼンタの全ノズルからインクが吐出できるかどうかを確認するため、ノズルチェックを実施した。その結果に基づき、以下の評価基準により充填性を評価した。インク流路への濡れ性付与が不十分の場合には、インク流路内に残留気泡が発生し、それに起因して不吐出ノズルが発生していた。
(評価基準)
A:充填直後のノズルチェックで、全ノズルが正常吐出する。
B:充填直後のノズルチェックでは不吐出ノズルが認められるが、そのまま1日放置した後のノズルチェックでは全ノズルで正常吐出する。
C:充填直後のノズルチェックでは不吐出ノズルが認められ、そのまま1日放置した後でも不吐出ノズルが認められる。

Claims (8)

  1. 分散剤Aと、界面活性剤Bと、芳香環を有する二量体Cと、水と、を少なくとも含み、
    前記分散剤Aの含有量aに対する前記芳香環を有する二量体Cの含有量cの比(c/a)が、0.001以上0.045以下であり、
    前記界面活性剤Bの含有量bに対する前記分散剤Aの含有量aの比(a/b)が、7以上50以下である、
    インクジェット捺染インク組成物。
  2. 表面張力が30mN/m以下である、請求項1に記載のインクジェット捺染インク組成物。
  3. 前記芳香環を有する二量体Cが、下記式(1)で表される化合物である、
    請求項1又は2に記載のインクジェット捺染インク組成物。
    R−SO2−R ・・・(1)
    (式中、Rは、各々独立して、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、クリセン、又はフルオレンを示す。)
  4. 前記芳香環を有する二量体Cの含有量cが、前記インクジェット捺染インク組成物の総量に対して、0.001以上0.6質量%以下である、
    請求項1〜3に記載のインクジェット捺染インク組成物。
  5. 前記分散剤Aが、ナフタレンスルホン酸化合物のホルマリン縮合物、又はリグニンスルホン酸化合物のホルマリン縮合物の少なくともいずれかを含む、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット捺染インク組成物。
  6. 前記界面活性剤Bが、ノニオン系界面活性剤を含む、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット捺染インク組成物。
  7. 分散染料をさらに含む、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット捺染インク組成物。
  8. 前記分散染料が、C.I.ディスパースレッド60である、
    請求項7に記載のインクジェット捺染インク組成物。
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