JP2018044774A - 振動発生体の状態を推定するシステム、装置、プログラム及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体の状態を、当該振動を測定することによって推定することができるシステムを提供する。【解決手段】本状態推定システムは、状態推定対象の振動発生体の内部、表面又は周囲に配置される振動検出器と、振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成する発生振動情報生成部と、振動発生体における状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、振動発生体の状態に係る情報を決定する状態決定部とを有する。ここで、振動検出部は、振動発生体の内部、表面又は周囲における互いに異なる複数の位置の各々に配置されることも好ましい。さらに、振動発生体は発酵品の製造過程物であって、振動は、製造過程物内部での発泡によって発生する振動であることも好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、振動を測定して当該振動に係る情報を取得する技術に関する。
現在、IOT(Internet Of Things)技術の進展に伴い、対象物の状態に係る情報を取得するセンシング技術が見直されている。例えば、様々な製造装置の発する異常な音や熱を捉えて工場での設備管理に生かしたり、ウェアラブル(wearable)端末に搭載されたセンサによってユーザの人体情報を取得して健康管理を行ったりする技術が注目されている。
従来、例えば生産・製造現場や病院等において、生産・製造物や設備の状態、又は心臓や肺といった診断対象の状態は、少なくともその当初、熟練の技術者や医師等が自らの視覚や聴覚等を用いて診断することによって判断されてきた。現在、このような人の技能による診断に代え、進展したセンシング技術を用いて自動的に状態判断を行うシステムの開発が、様々な分野で進められている。
例えば、特許文献1には、従来の技術者による視覚及び聴覚での判断に代え、ビール等の泡持ちの程度を、レーザ測定工程及びCCDカメラ測定工程によって判断する技術が開示されている。この技術では、具体的に、測定するビール等を測定容器に入れ泡立てる泡立て工程と、レーザ光線を泡の上部で移動させるように照射し、泡の上部が時間とともに下降していく状態を測定するレーザ測定工程と、泡立て工程後にCCDカメラ測定装置によって初期の泡厚および泡崩壊による液面上昇を測定するCCDカメラ測定工程と、CCDカメラ測定工程で得られたデータとレーザ測定工程で得られたデータとを用いて時間経過における実際の泡の高さ寸法が得られるように処理を行うデータ処理工程とを有している。
また、特許文献2には、従来の医師による聴診に代えて、マイクロフォンを用いて心音を捉えて心音信号を取得し、この心音信号から心音波形を抽出して解析することにより、心疾患の診断を行う技術が開示されている。この技術では、具体的に、抽出された抽出波形が相互に一致するようにこの抽出波形の位相を合わせる位相合わせ手段と、位相を合わせられた抽出波形を加算する加算手段と、加算された抽出波形に基づいて、代表的抽出波形を決定する代表的抽出波形決定手段と、抽出された抽出波形と代表的抽出波形との差から外雑音波形を算出する外雑音算出手段とを有している。
特開2002−55099号公報 特開2007−144229号公報
現在、センシングの一項目として、様々な対象から発生する振動を検出することが非常に注目されている。例えば、生産・製造設備の発する異常振動を測定することによって設備における故障の発生を検知することも可能となると考えられる。特に、その状態を知りたい対象が継続して、その状態に合わせた振動を発生させている場合、この振動を直接測定することによって当該対象の状態に関する情報を取得することができると考えられる。
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に記載された技術のような従来技術では、振動発生体の発生させている振動そのものを検出して、当該振動発生体の状態を推定することまでは想定されていない。例えば、特許文献1に記載された技術では、泡の状態を、人間の視覚や聴覚に代えて、レーザ測定及びCCD測定で判断しているだけである。
さらに、特許文献2に記載された技術では、人間の聴覚に代えて心音をマイクロフォンで捉えることで、心臓の状態を判断しているのみである。すなわち、心臓の振動そのものを直接検出して心疾患の診断に生かすことまでは想定されていない。特に、この特許文献2の技術のように音を検出対象とする場合、測定・判断結果が、音声や環境音等の周囲に存在する様々な雑音の影響を受けてしまう問題も生じ得る。
また、従来、日本酒等の発酵品の製造(醸造)現場において、例えば製造過程物である醪(もろみ)の状態の判断は、杜氏等の熟練技術者が自らの視覚、聴覚や、味覚等を用いて醪を診断することによって行われてきた。例えば、杜氏が、アルコール発酵の過程で発生する泡によって生じる発砲音を聞き分けることにより、長年の経験に基づいて発酵の進展の度合い、すなわち醪の状態を判断してきた経緯がある。このような現場では、例えば、醪の発生させる振動を直接センサで捉えて解析するといった取り組みは、一切なされてこなかった。
そこで、本発明は、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を、当該振動を測定することによって推定することができる状態推定システム、装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定するシステムであって、
当該振動発生体の内部、表面又は周囲に配置される少なくとも1つの振動検出器と、
当該振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成する発生振動情報生成部と、
当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する状態決定部と
を有する状態推定システムが提供される。
この本発明による状態推定システムにおいて、当該振動検出部は、当該振動発生体の内部、表面又は周囲における互いに異なる複数の位置の各々に配置されることも好ましい。
また、上記の複数の振動検出部を配置する実施形態において、発生振動情報生成部は、互いに異なる位置に設置された複数の振動検出器によって出力された信号から、当該振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つにおける位置による差異に係る振動差異情報を含む発生振動情報を生成し、
状態決定部は、生成された当該振動差異情報を含む発生振動情報から、当該振動発生体の状態を特徴付ける現象若しくは性質の生じている位置又は位置分布を決定することも好ましい。
さらに、本発明による状態推定システムにおいて、当該振動態様に係る情報は、機械学習の推定モデルに係る情報であり、
状態決定部は、当該推定モデルを含む推定器に対し、生成された当該発生振動情報を入力して得られた出力を、当該振動発生体の状態に係る情報に決定することも好ましい。
また、本発明による状態推定システムの一実施形態として、当該振動発生体は発酵品の製造過程物であって、当該振動は、当該製造過程物の内部での発泡によって発生する振動であり、
当該振動検出器は、当該製造過程物の内部の位置、当該製造過程物の入った容器の位置、又は当該容器に近接する位置に配置されており、
発生振動情報生成部は、当該振動検出器によって出力された信号から、当該発泡に起因する振動のエネルギー、強度及び振動数のうちの少なくとも1つに係る発泡振動情報を含む発生振動情報を生成し、
状態決定部は、当該製造過程物における発酵の進展状況に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された当該発泡振動情報を含む発生振動情報から、当該製造過程物の発酵の進展状況に係る情報を決定することも好ましい。
さらに、上記の発酵品の製造過程物に係る実施形態において、状態推定システムは、当該振動検出器の近傍に配置された、当該製造過程物の温度及び/又は圧力を検出する温度検出器及び/又は圧力検出器を更に有し、
発生振動情報生成部は、当該温度検出器及び/又は圧力検出器によって出力された信号から、当該製造過程物の温度及び/又は圧力に係る情報を更に生成し、
状態決定部は、当該製造過程物における発酵の進展状況に応じて予め設定された温度及び/又は圧力態様に係る情報と当該振動態様に係る情報とに基づき、生成された当該温度及び/又は圧力に係る情報と当該発泡振動情報を含む発生振動情報とから、当該製造過程物の発酵の進展状況に係る情報を決定することも好ましい。
また、上記の温度及び/又は圧力検出に係る実施形態において、状態推定システムは、振動検出部と、温度検出部及び/又は圧力検出部とを内部に収納しており、各検出部から出力される信号を有線又は無線で取り出すことが可能であって、当該製造過程物の内部の位置、又は当該製造過程物の入った容器の内壁、内底面、外壁、若しくは外底面の位置に設置される検出器ボックスを有することも好ましい。
さらに、本発明による状態推定システムの他の実施形態として、当該振動発生体は、人間又は動物の臓器若しくは体内部位であり、
当該振動検出器は、当該臓器又は体内部位の周囲となる互いに異なる身体位置の各々に配置されており、
発生振動情報生成部は、当該振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成し、
状態決定部は、当該臓器又は体内部位における状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該臓器又は体内部位の状態に係る情報を決定することも好ましい。
また、上記の臓器又は体内部位に係る実施形態における1つの具体例として、当該振動発生体は心臓であり、
当該振動検出器は、当該心臓の周囲となる互いに異なる身体位置の各々に配置されており、
発生振動情報生成部は、互いに異なる身体位置に設置された複数の振動検出器によって出力された信号から、当該心臓に起因する振動のエネルギー、強度及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つにおける位置による差異に係る心音差異情報を含む発生振動情報を生成し、
状態決定部は、当該心臓における異常若しくは疾患に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された当該心音差異情報を含む発生振動情報から、当該心臓における異常若しくは疾患の生じている位置若しくは位置分布、及び/又は当該異常若しくは疾患の種別を決定することも好ましい。
さらに、本発明による状態推定システムにおいて、発生振動情報生成部及び状態決定部を含む状態推定装置が設けられており、
状態推定装置は、当該振動検出器によって出力された信号に係る情報を、近距離無線通信網又は赤外線通信網を介して受信可能であって、決定された当該振動発生体の状態に係る情報を、少なくとも携帯電話通信網又は無線LAN(Local Area Network)を介してユーザの端末宛てに送信可能な通信インタフェースを有することも好ましい。
また、この通信インタフェースを備えた実施形態において、本状態推定システムは、当該端末からの指示信号を受信し、当該振動発生体に対して当該指示信号に応じた作用を及ぼすフィードバック制御部を更に有することも好ましい。
本発明によれば、また、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定する装置であって、
当該振動発生体の内部、表面又は周囲に配置された少なくとも1つの振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成する発生振動情報生成手段と、
当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する状態決定手段と
を有する状態推定装置が提供される。
本発明によれば、さらに、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該振動発生体の内部、表面又は周囲に配置された少なくとも1つの振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成する発生振動情報生成手段と、
当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する状態決定手段と
してコンピュータを機能させる状態推定プログラムが提供される。
本発明によれば、さらにまた、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定する方法であって、
当該振動発生体の内部、表面又は周囲に少なくとも1つの振動検出器を配置し、
当該振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成し、
当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する
ことを特徴とする状態推定方法が提供される。
本発明の状態推定システム、装置、プログラム及び方法によれば、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を、当該振動を測定することによって推定することが可能となる。
本発明による状態推定システムの一実施形態を示す模式図である。 本発明による状態推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。 振動発生体としての醪の状態の推移を、概略的に説明するための模式図である。 醪の状態を示すボーメ度、アルコール度及びBMD値と留後日数との一般的な関係を示すグラフである。 醪の発泡振動測定及び圧力増分測定の実施例を示すグラフである。 本発明による状態推定システムの他の実施形態を示す模式図である。 心臓の状態を示す心音振動の測定・解析を説明するための模式図である。 心音振動に並行して測定される心電図の一実施形態を示すグラフである。 本発明による状態推定システムにおける更なる他の実施形態を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
[状態推定システム]
図1は、本発明による状態推定システムの一実施形態を示す模式図である。
図1によれば、本実施形態の状態推定システムは、醸造タンクに仕込まれている、日本酒の製造過程物である醪(もろみ)の状態を推定するシステムである。本状態推定システムは、
(a)醪から発生する「醪の状態に対応する振動」を検出する振動センサ31を含むセンサボックス3と、
(b)センサボックス3からのセンサ出力信号を取得して取りまとめ、センサ出力信号に係る情報を、通信ネットワークを介して管理パーソナルコンピュータ(PC)1宛てに送信する情報取得装置2と、
(c)本発明による状態推定装置であって、受信したセンサ出力信号に係る情報から醪(振動発生体)の状態に係る情報を決定し、インターネットを含む通信ネットワークを介して当該情報を管理サーバ4宛てに送信する管理PC1と、
(d)受信した醪(振動発生体)の状態に係る情報を、インターネットを含む通信ネットワークを介してユーザ(例えば杜氏や酒造業者)の所持する端末5に通知する管理サーバ4と、
(e)管理サーバ4又はユーザの端末5で生成された、醪(振動発生体)に対する指示信号を、インターネットを含む通信ネットワークを介して受信し、この指示信号に応じて醪に対し追水や加熱・冷却といった調整を行う調整装置6と
を備えている。
ここで、本実施形態において、振動発生体としての醪を収めた醸造タンクは2つ設けられているが、これに限定されるものではなく1つ又は3つ以上設けられていてもよい。また、1つの(醪を収めた)醸造タンクに設置されたセンサボックス3の数も2つとなっているが、これに限定されるものではなく1つ又は3つ以上であってもよい。さらに、複数の醸造タンクの1つ1つに情報取得装置2を設置してもよいが、これらの醸造タンクからのセンサ出力信号を、1つの情報取得装置2で取りまとめることも可能である。
同じく図1において、上記(a)のセンサボックス3は、本実施形態において、密封・防水可能な筐体内に振動センサ31と、水圧センサ32と、温度計(温度センサ)33とを備えている。各センサ(検出器)からのセンサ出力信号は、センサボックス3から伸長した有線を介して情報取得装置2へ出力される。変更態様として、センサボックス3が無線通信インタフェースを有し、又は無線通信インタフェースと接続されて、センサ出力信号を、一部又は全部無線を介して情報取得装置2宛てに送信してもよい。また、センサボックス3は、醪の内部の位置、又は醪の入った醸造タンクの内壁や内底面(容器内側の底面)、若しくは容器の外壁や外底面(容器内側の底面)の位置に設置することができる。
振動センサ31は、圧電(ピエゾ)素子を用い圧電効果を利用して振動を検出するものとすることができる。または、磁石、可撓部や、振り子の動きを、検出コイルによって、静電容量の変化として又は機械的に計測するタイプの検出器であってもよい。さらに、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて形成された素子を用いたセンサとすることも可能である。いずれにしても公知である種々の振動検出器を採用することができる。振動センサ31は、例えば、センサボックス3の筐体の内面に貼り付ける形で設置することができ、また、醪(振動発生体)の内部、表面又は周囲となる位置に配置される形となってもよく、さらに、醪(振動発生体)の入った醸造タンク(容器)の位置、又は醸造タンク(容器)に近接する位置に配置される形とすることも可能である。
また、水圧センサ32は、例えば、水圧を受けたダイアフラム等の変形を、このダイアフラム上に形成されたピエゾ抵抗ゲージからの電気信号によって検出するタイプのものとすることができる。当然、これに代えて、公知である種々の水圧検出器を採用することが可能である。いずれにしても、水圧センサ32の感圧部が醪に直接接触するように、センサボックス3の筐体にはこの感圧部と接続した開口部が設けられることも好ましい。また、水圧センサ32の筐体をフッ素樹脂等で表面加工し、例えば醪に浸漬されても醪に悪影響を及ぼさないようにすることも好ましい。
温度計33は、例えば、熱電対を利用したものとすることができる。また、バイメタルや液体等の温度膨張体における膨張の度合いを検知するタイプのものや、赤外線を検知するタイプのもの等、公知である種々の温度検出器を採用することが可能である。いずれにしても、温度計33の温度感知部は、センサボックス3の筐体の内面に近接、接触若しくは接地させられるか、又は筐体外に露出させられることが好ましい。
ちなみに、本実施形態における醪の状態の推定処理では、センサボックス3に収納された3種のセンサのうち、振動センサ31を必須とする。ただし、水圧センサ32及び温度計33によるセンサ出力信号も合わせて利用することによって、後述するように、より的確な推定処理を行うことができる。しかも、水圧センサ32及び温度計33は、同じセンサボックス3内に収納されることによって振動センサ31の近傍に配置されることになるので、醪における振動検出位置付近での圧力や温度に係る情報を確実に取得することができるのである。
情報取得装置2は、本実施形態において、信号変換部201と、情報処理部202と、通信インタフェース(I/F)203とを有する。信号変換部201は、センサボックス3から入力したセンサ出力信号を、情報処理部202での情報処理が可能な形に変換する。例えば、交流信号(であるセンサ出力信号)を直流信号に変換したり、アナログ信号(であるセンサ出力信号)をデジタル信号に変換したりする。1つの例として、振動センサ31からの振動センサ出力信号を整流して電力値相当に変換し、この電力値の時間変化のデータを、送信する信号としてもよい。
また、情報処理部202は、変換されたセンサ出力信号を、通信インタフェース203によって送信可能なフォーマットの信号に変換してもよい。また、変更態様として、変換されたセンサ出力信号に基づいて、振動エネルギー、振動強度、振動数、及び振動の立ち上がり時点のうちの少なくとも1つについての「振動についての情報」(発生振動情報)や、水圧値等の水圧についての情報、さらには温度等の温度に係る情報を生成し、さらにこれらの情報を、通信インタフェース203によって送信可能なフォーマットの信号に変換してもよい。いずれにしても通信インタフェース203は、この送信可能なフォーマットに変換された信号を管理PC1宛てに送信するのである。
同じく図1において、情報取得装置2と管理PC1との間の通信ネットワークは、例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信のネットワーク、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN、又は赤外線通信ネットワークとすることができる。また、このような通信ネットワークが、調整装置6と管理サーバ4との間の通信ネットワークの一部を構成していてもよい。さらに変更態様として、情報取得装置2と管理PC1との間に、有線の通信ネットワークを採用することも可能である。
ここで、ZigBee(登録商標)等の近距離無線通信ネットワークを採用する場合、この近距離無線通信の送信時間単位(送信速度の逆数)をTとし、振動センサ31、水圧センサ32及び温度計33からのセンサ出力信号の送信時間単位をそれぞれ、T、T及びTとし、その他のデータ信号の送信時間単位をTとし、情報取得装置2やAP(アクセスポイント)等の通信中継装置での処理時間単位の総和をTとすると、T>T+T+T+T+Tの関係が成立するように、送信時間単位T、T及びTが調整・設定されることも好ましい。
また、管理PC1と管理サーバ4との間の、管理サーバ4と端末5との間の、さらには管理サーバ4と調整装置6との間の通信ネットワークは、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN又は携帯電話網等のアクセスネットワーク(事業者通信網)と、インターネットとを含むネットワークとすることができる。さらに、光ファイバを用いた光有線通信網等の有線の通信ネットワークを採用することも可能である。
ここで、本状態推定システムの重要な構成要素である状態推定装置としての管理PC1は、
(A)センサボックス3(の少なくとも振動センサ31)から出力されたセンサ出力信号(を送信可能な形に変換した信号)から、少なくとも、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る「発生振動情報」を生成し、
(B)振動発生体(本実施形態では醪)における状態に応じて予め設定された「振動態様に係る情報」(醪の場合、後に詳述するBMD値と振動エネルギー(又は振動強度)との関係)に基づき、生成された「発生振動情報」から、「振動発生体(醪)の状態に係る情報」であるアルコール発酵の進展度合いを決定する
との特徴を有している。
なお、上述したように、情報取得装置2の情報処理部202が、変換されたセンサ出力信号に基づいて「発生振動情報」を生成する場合、管理PC1の上記構成(A)は省略することができる。また、管理PC1は、必ずしもPCである必要はなく、上記(A)及び(B)の機能構成を実現可能なコンピュータであれば、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ノート型コンピュータ等、種々の機器や端末を用いることが可能である。
ここで、上記(B)の「BMD値」は、後に詳細に説明するが留置日数とボーメ度との積として定義され、アルコール発酵の段階に対応する値となる。また、本願発明者等による実験の結果、アルコール発酵の過程で発生する泡によって生じる発砲振動を振動センサ31で測定したところ、所定の振動数(周波数)範囲にある振動のエネルギー(又は振動強度)と、アルコール発酵の段階に対応するこのBMD値との間に所定の関係の存在することが認められた。上記(B)では、この所定の関係が、発酵の進展状況に応じて予め設定された「振動態様に係る情報」となっている。また、上記(A)では、発泡に起因する振動のエネルギー、強度及び振動数のうちの少なくとも1つに係る発泡振動情報が「発生振動情報」となっている。ちなみに、従来醸造の現場では、杜氏等の熟練技術者が、アルコール発酵の過程で発生する泡によって生じる発砲音を聞き分けることにより、長年の経験に基づいて発酵の進展度合いを判断してきた経緯がある。
このように、本状態推定システムの管理PC1(状態推定装置)によれば、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体(醪)における当該状態を、予め設定された「振動態様に係る情報」(醪の場合、BMD値と振動エネルギー(又は振動強度)との関係)に基づき、当該振動を測定することによって推定することができる。本実施形態における醪の場合、従来、その発酵の進展度合い(さらにはそれから予想される上槽期日/醪日数)は、杜氏等の熟練技術者が自らの視覚、聴覚や、味覚等を用いて醪を診断することによって判断されてきた。これに対し、管理PC1(状態推定装置)によれば、このような熟練の技に頼ってきた判断を、客観的な振動測定によって簡便に遂行することが可能となる。
また、本実施形態では、醪(振動発生体)の内部、表面又は周囲における互いに異なる複数の位置(図1では、醪内部における鉛直方向中間位置、及び醸造タンクの底面位置)の各々に、振動センサ31(センサボックス3)が配置されている。これにより、醪の内部における発酵進展度合いのばらつきや分布を把握することが可能となり、発酵進展度合いや上槽期日の判断を総合的に且つより的確に行うことができる。
さらに、管理PC1は、図1に示すように、例えば1つの醸造現場に設置された複数の醸造タンク(の情報取得装置2)から、センサ出力信号に係る情報を受信し、醸造タンク毎に、醪(振動発生体)の状態に係る情報を決定することも好ましい。この場合、醸造タンク間の発酵進展度合いを比較し、醸造タンクの設置された環境等による醪への影響を調査して対応することも可能となる。
次いで、管理PC1は、「振動発生体(醪)の状態に係る情報」であるアルコール発酵の進展度合いの情報を、管理サーバ4を介して端末5宛てに送信することができる。この情報を受信した端末5のユーザ(例えば杜氏や酒造業者)は、この情報を、例えば、所定の醪管理アプリケーション・プログラムによって、醪におけるアルコール発酵の進展度合いをまさに「見える化」したグラフィック表示をもって確認することも可能である。さらに、このように確認したアルコール発酵の進展度合いの情報に基づいて、例えば、醪に対し追水や加熱・冷却といった調整を行う必要があると判断し、追水動作や温度調節動作を行う指示を端末5に入力することもできる。
端末5は、ユーザによるこのような入力指示を受けた際、管理サーバ4を介して調整装置6宛てに、追水動作や加熱・冷却動作の指示信号を送信する。この指示信号を受信した調整装置6は、この指示信号に応じて醪に対し、追水部61をもって追水を行ったり、温度調節器62をもって加熱・冷却といった温度調節を行ったりする。このように、調整装置6は、端末5からの指示信号を受信し、醪(振動発生体)に対してこの指示信号に応じた作用を及ぼすフィードバック制御部となっている。
このような調整装置6を含む本状態推定システムを用いることによって、ユーザ(例えば杜氏や酒造業者)は、例え醸造現場から遠隔した位置にあっても、自動的に生成された「醪(振動発生体)の状態に係る情報」であるアルコール発酵の進展度合いの情報を入手し、醪(振動発生体)に対して、その状態に合った適切な処理(調整)を実施することができるのである。
ちなみに、本発明に係る振動発生体は、当然に醪に限定されるものではない。本発明に係る振動発生体として、日本酒以外のビール、ワイン等の発酵酒を含む発酵品の製造過程物を採用することも可能である。また、後に図6を用いて詳述するが、心臓や肺といった人間や動物の各種内蔵や身体部位も、本発明に係る振動発生体と捉えることができる。いずれにしても、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体であって、当該振動を振動検出器によって検出可能であるものならば、様々なものが該当するのである。
ここで、振動発生体から生じた振動が周囲の空気を媒体として伝播することで生じる音を、例えばマイクロフォンで検出することで、振動検出とすることも可能である。しかしながら、例えば本実施形態の振動センサ31は、いわゆる空気を伝播する音を検出するものではなく、あくまで醪という物質中を伝播する「振動」を検出している。音を検出する場合、検出結果が、音声や環境音等の周囲に存在する様々な雑音の悪影響を受けやすいのに比べ、このような「振動」の検出は、振動ノイズの種別が通常は音ほど多様ではないことから、比較的容易に且つより正確に実施することができる。なお、勿論、音の検出によって「振動」検出と同様の的確な結果を容易に得られるのであれば、この音の検出を「振動発生体」から発生した振動の検出と見なすことも可能である。
[状態推定装置構成]
図2は、本発明による状態推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
図2によれば、状態推定装置である管理PC1は、通信インタフェース101と、振動態様情報蓄積部102と、推定状態情報蓄積部103と、ディスプレイ及びキーボード(DP・KB)104と、プロセッサ・メモリとを有する。このプロセッサ・メモリは、管理PC1に搭載されたコンピュータを機能させる状態推定プログラムを実行することによって、状態推定機能を実現させる。
また、プロセッサ・メモリは、振動差異情報生成部111aを含む発生振動情報生成部111と、位置・分布決定部112a及び種別・段階決定部112bを含む状態決定部112と、LAN(Local Area Network)側制御部121a及びWAN(Wide Area Network)側制御部121bを含む通信制御部121と、入出力制御部122として機能する。ここで、図2に示したような、これらの機能構成部を接続した矢印によって表される処理の流れは、本発明による状態推定方法の一実施形態として理解される。
図2において、通信インタフェース101は、情報取得装置2から、ZigBee(登録商標)等のLAN側通信ネットワークを介し、振動センサ31(図1)による振動センサ出力信号に係る情報を含むセンサ出力情報を受信し、このセンサ出力情報を、通信制御部121のLAN側制御部121aを介して発生振動情報生成部111に出力する。また、通信制御部121のWAN側制御部121bは、状態決定部112で決定された振動発生体(例えば醪)の状態に係る情報(例えば醪の発酵進展度合いの情報)を、通信インタフェース101からWAN側通信ネットワークを介して管理サーバ4へ送信する。
さらに、通信制御部121は、外部のサーバから、通信インタフェース101を介して、本発明に係る状態推定アプリケーション・プログラムをダウンロードしてもよい。このアプリケーション・プログラムを起動させることによって、本明細書で説明するような振動発生体の状態推定処理を確実に実行することができる。
発生振動情報生成部111は、入力したセンサ出力情報から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発泡振動情報を含む発生振動情報を生成する。また、入力したセンサ出力情報が水圧センサ32及び/又は温度計33(図1)からのセンサ出力信号に係る情報も含む場合、当該情報から、振動発生体(例えば醪)の温度及び/又は圧力に係る情報を生成することも好ましい。
また、図1に示す実施形態のように、振動センサ31(センサボックス3)が振動発生体(醪)の内部、表面又は周囲における互いに異なる複数の位置の各々に配置されている場合、発生振動情報生成部111の振動差異情報生成部111aは、互いに異なる位置に設置された複数の振動センサ31に係る複数のセンサ出力情報から、振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つにおける位置による差異に係る振動差異情報を含む発生振動情報を生成する。
同じく図2において、状態決定部112は、振動発生体(例えば醪)における状態に応じて予め設定された「振動態様に係る情報」(醪の場合、後に詳述するBMD値と振動エネルギー(又は振動強度)との関係)に基づき、生成された発生振動情報から、振動発生体(醪)の状態に係る情報(発酵の進展度合いに係る情報)を決定する。ここで、発生振動情報生成部111から温度及び/又は圧力に係る情報も入力した場合、状態決定部112は、振動発生体(醪)の発酵の進展状況に応じて予め設定された「温度及び/又は圧力態様に係る情報」と、「振動態様に係る情報」とに基づき、生成された温度及び/又は圧力に係る情報と発泡振動情報を含む発生振動情報とから、振動発生体(醪)の状態に係る情報(発酵の進展度合いに係る情報)を決定してもよい。
さらに、状態決定部112の位置・分布決定部112aは、振動差異情報を含む発生振動情報を入力した場合、この振動差異情報から、振動発生体(例えば醪)の状態を特徴付ける現象若しくは性質の生じている位置又は位置分布を決定する。特に、後に詳細に説明するように、振動発生体が心臓である場合、この心臓における異常若しくは疾患に応じて予め設定された「振動態様に係る情報」に基づき、位置・分布決定部112a(状態決定部112)は、生成された振動差異情報(心音差異情報)を含む発生振動情報から、
(a)この心臓における異常若しくは疾患の生じている位置若しくは位置分布、及び
(b)この心臓における異常又は疾患の種別
の両方又はいずれか一方を決定することができる。
ちなみに、1つの実施形態として、状態決定部112が、機械学習の推定モデルを含む推定器(識別器)を備えており、この推定器を用いて、振動発生体の状態に係る情報を決定することも好ましい。この場合、「振動態様に係る情報」(と、必要であれば「温度及び/又は圧力態様に係る情報」と)は、機械学習の推定モデルに係る情報(例えばモデルを構成する各種パラメータ値)となり、予めの学習によって形成される情報となる。
具体的には、学習済みの推定器に対し、発生振動情報(と、存在すれば「温度及び/又は圧力に係る情報」と)を入力して得られた出力を、振動発生体の状態に係る情報に決定することができる。推定器(識別器)としては、例えば、サポートベクタマシン(SVM)、ニューラルネットワーク(バックプロパゲーション)、ナイーブベイズ、決定木等の教師有り学習器を採用することが可能である。
なお、決定・推定に使用される「振動態様に係る情報」や「温度及び/又は圧力態様に係る情報」は、振動態様情報蓄積部102に予め保存・準備しておくことも好ましい。また、状態決定部112で決定された「振動発生体の状態に係る情報」(例えば、醪における発酵の進展度合いに係る情報)は、推定状態情報蓄積部103に出力されて保存・管理されることも好ましい。推定状態情報蓄積部103に保存・管理された「振動発生体の状態に係る情報」から、当該状態の時系列での推移(変化)の情報を生成することも可能となる。例えば、振動発生体が醪の場合、当該醪における(後に説明する)BMD曲線を決定することもできるのである。
入出力制御部122は、状態決定部112で決定された「振動発生体の状態に係る情報」(例えば、醪における発酵の進展度合いに係る情報)を、ディスプレイ(DP)104に表示し、例えば管理者に当該情報を通知する。また、例えば管理者がキーボード(KB)104を介して入力した指示内容に応じて、状態決定部112(及び発生振動情報生成部111)での処理を制御する。
図3は、振動発生体としての醪の状態の推移を、概略的に説明するための模式図である。図3(A)〜(C)には、日本酒の醸造過程が模式的に示されている。なお、以下の各図面を用いた説明に出てくる種々の数値は、1つの典型値であってあくまで醸造過程の理解のために提示されたものである。
図3(A)によれば、最初に、仕込みとして蒸米と麹と酵母とが水に投入される。この仕込み開始直後の状態を状態Aとする。ここで、米には発酵を行うのに必要な糖分がほとんど含まれていないので、麹を用い、麹に含まれる酵素によって米の澱粉を糖分(ぶどう糖)に変える糖化が行われる。また、この糖化によって生じた糖分(ぶどう糖)に酵母を作用させて、アルコール(エタノール)や芳香化合物を生成するアルコール発酵が行われるのである。ちなみに、このように糖化とアルコール発酵とを同じ醸造タンクで並行して進行させる製法は、並行複発酵製法と言われる。
この図3(A)における仕込み当初の状態Aでは、内直径3mの醸造タンクに入れられた水に(蒸米+麹+酵母)1トン(容積:約1818リットル)が投入されることによって、水位が投入前のL0=3mからL1=約3.26mへ増加している。また、(蒸米+麹+酵母)は投入当初なお、固形状態にあるので、タンク内容物の液状体としての比重は1.0であってボーメ度は0(ゼロ)である。
ここで、ボーメ度とは、比重の実用単位の1つである。単位は°Be'である。醪のボーメ度には、重液(水より比重の大きい液体)用の重ボーメ度が使用される。日本ではこの重ボーメ度として、純水での値を0°Be'、15%食塩水での値を15°Be'とし、この両値の間を15等分して中間となる1〜14°Be'を決め、さらに等分した間隔を延長して15°Be'を超える値を決めている。
さらに、状態Aにおいて、全体の重量は水のみの状態から増大しているのであるから、醸造タンク底部にける圧力(水圧)も、増分Δg=26g/cmだけ高くなっている。
次いで、図3(B)に、仕込み後5日の醪の状態Bを示す。状態Bでは、水に対する(蒸米+麹+酵母)の溶解が完了し、醪としての体積は減少するので、水位L2は減少する(L2<L1)。また、比重は増大して1.051となり、ボーメ度は7°Be'に達する。醸造過程において、ここでのボーメ度が最大となる。
さらに、状態Bにおいて、水位L2の減少した分だけ(仕込み前の水位L0での底部圧力を基準とした)圧力増分Δgは小さくなり、Δg=15g/cmとなる。
次いで、図3(C)に、仕込み後2週間の醪の状態Cを示す。状態Cでは、アルコール醸造過程が進行してアルコール(エタノール)や芳香化合物の濃度が増大し、さらに、炭酸ガス(CO)が放出される。この状態C以降の醪は、熟成醪とも呼ばれる。状態Cでは、醪中の水に溶けるアルコールの割合が増えるので、水位L3はさらに減少する(L3<L2)。また、比重も減少して1.021となり、ボーメ度は3°Be'に低下する。この後の醸造過程において、ボーメ度はゼロに向けて低減を続ける。ちなみに、一般に、このボーメ度がゼロに至った日を、仕込みを終了して醪を圧搾し酒と酒粕とに分離する「上槽期日」とするのである。
さらに、状態Cにおいて、水位L3の減少した分だけ(仕込み前の水位L0での底部圧力を基準とした)圧力増分Δgはより小さくなり、Δg=6g/cmとなる。
以上に述べた状態Aから状態Cへの変化は、醪に対する判断事項を非常に簡略化した上で説明したものである。実際には、杜氏は、上槽期日を判断するため、当然にボーメ度計や温度計を用いてボーメ度(BMD値)や醪温度の目安を得たりもするが、最終的には、例えば発酵過程の醪内で発生する泡の様子を視覚で確認したり、当該泡から生じる音を聴覚で聞き分けたりして、糖化の度合いやアルコール発酵の度合いを総合的に割り出してきた。また、その中で、発酵の早い/遅いや異常を察知し、醸造タンクを冷やす/温める、追水を行う等を実施して発酵状態を管理してきたのである。
実際、醪の発酵状態は、毎年仕込みを行う毎に変動し、例えば、その年の酒米の豊作・凶作や出来にも大きく依存する。このように食品としての品質安定が非常に難しい醪の状態は、従来結局、杜氏の長年の優れた経験に依存して把握・管理されてきたのである。
図4は、醪の状態を示すボーメ度、アルコール度及びBMD値と、留後日数との一般的な関係を示すグラフである。ここで、留後日数とは、留仕込の完了日を1日目として以後1日経過毎に日数を加算した値のことである。
図4(A)によれば、図3(A)〜(C)を用いて説明したように、ボーメ度は、通常、留後日数5日あたりでピークとなり、その後、(上槽期日での値である)ゼロ値に向けて減少していく。一方、アルコール度は通常、留仕込後、日数経過とともに増大していく。
ここで、従来、杜氏が醪の状態把握において最も重要視してきた値の1つであるBMD値を説明する。BMD値は、次式
(1) (BMD値)=(留後日数)×(ボーメ度)
で定義される醪状態の指標である。例えば、留後日数10日におけるボーメ度が4°Be'である場合、BMD値は40となる。
従来、醸造現場では、このBMD値を留仕込後継続して算出し、図4(B)に示すようなBMD曲線を決定して、醪の管理に利用してきた。BMD曲線は、横軸に留後日数をとり、縦軸にBMD値をとったグラフにおける曲線であり、通常、図4(B)に示すように、ある留後日数で極大を示す緩やかなピーク形状をなしている。このBMD曲線の形状(例えばピーク幅やピークとなる留後日数等)は、醪の性質・特性や環境温度等によって変化するが、その種別として、前高後低、標準、前低後高等を挙げることができる。
杜氏は、従来、留仕込毎に、このBMD曲線を決定・更新して醪を管理し、上槽期日の予想や発酵の進展度合いの把握を行ってきた。ここで、確実に醪の管理を行うことを考えると、人手による例えば1日単位のボーメ度(BMD値)の測定に代えて、BMD値を自動的に測定して記録し、その結果を杜氏によって常時確認可能とする(見える化する)ことは、生産管理上非常に好ましい。特に、杜氏が外出先において又は夜間自宅において、BMD値を例えば端末5(図1)でチェックできることは、非常に便利であり大きな利点となる。
このような状況の下、本願発明者等は、実際に、醪のアルコール発酵の過程で発生する泡によって生じる発砲振動を振動センサ31(図1)で測定し、この測定結果から、所定の振動数(周波数)範囲にある振動の強度IvとBMD値との間に成り立つ関係式として、次式
(2) (BMD値)=α1・Iv N1+β1
を導出した。ここで、α1、β1及びN1は、仕込んだ醪毎に決定される数値であり、仕込んだ蒸米、麹、酵母の状況や仕込み環境(温度等)に依存する値となることが分かっている。また、同様に、振動のエネルギーをEvとした場合に、次式
(2') (BMD値)=α2・Ev N2+β2
が成立することも分かっている。ここで、α2、β2及びN2も、仕込んだ醪毎に決定される数値である。
従って、仕込んだ醪毎に発泡振動を測定し、この測定結果から上式(2)又は(2')を決定することによって、BMD曲線を、適宜決定・更新することができるのである。ちなみに、上式(2)又は(2')の関係がまさに、予め設定された「振動態様に係る情報」となっている。ちなみに、振動のエネルギーEvは、振動の強度Ivの測定結果から換算して(例えば二乗して)求めることも可能であるが、直接測定することもできる。例えば、振動センサ31(図1)内に、2つ以上のピエゾ素子と、電荷(電気エネルギー)の保存及び放出が可能なコンデンサ回路とを設け、ピエゾ素子に振動(圧力変化)が加わることで生じた起電力によって発生する双方向の電流による電荷を保存し、所定時間保存した後に放出された電気エネルギー量を、振動のエネルギーEvとすることができる。
本来、醪の発泡振動は、醪のアルコール発酵で生成される炭酸ガス(CO)の発泡によって生じる振動である。従って、この発泡振動の強度(エネルギー)は、アルコール発酵が最も活発化する状況(例えば、図3の状態B又はその前後)において放出される炭酸ガス(CO)の量が極大化することでピーク値をとると考えられる。また、醪中の糖分がなくなってアルコール発酵が終了すると、発泡振動は消滅する。このことから、発泡振動とBMD値との間に、上式(2)又は(2')で表されるような強い相関関係が生じるものと考えられる。
図5は、醪の発泡振動測定及び圧力増分測定の実施例を示すグラフである。
図5(A)の上段には、振動センサ31(図1)を用いて実際に測定された、醪の発泡振動の波形が示されている。横軸は時間であり、縦軸は振動強度である。また、図5(A)の下段には、この測定された発泡振動の周波数スベクトルが示されている。横軸は周波数(振動数)であり、縦軸は振動強度である。
実際に、発酵過程にある醪において、図5(A)上段に示すような発泡振動の検出されることが理解される。また、この発泡振動は、図5(A)下段に示すように、特定の周波数(振動数)範囲において特定の強度を有する(特定の周波数成分を有する)振動となっていることが分かる。このように特定された周波数(振動数)範囲での振動を、特定された強度範囲を検出可能なセンサを使ってモニタすることによって、醪における発酵進展度合いを推定するのに利用可能な発泡振動を確実に捉えることができるのである。
ちなみに、検出された振動信号(センサ出力信号)に対し、例えば、発生振動情報生成部111(図1)においてウェーブレット信号処理や、異常・逸脱信号の抽出が可能な広域パスフィルタを利用した公知の各種周波数解析処理を行い、様々な種類の振動が混入している可能性のある振動信号から、所望の発泡振動に係る信号成分を取り出すことも好ましい。ここで、ウェーブレット信号処理は、ウェーブレット関数を用いた周波数解析の一処理手法である。微小波(ウェーブレット)を拡大・縮小、平行移動する基本操作によって入力波形を表現する。フーリエ信号処理では周波数特性を求める際に時間領域の情報が失われるのに対し、このウェーブレット信号処理では、周波数に合わせてウェーブレットの幅が変化するので、周波数解像度が向上する。
なお、図1に示すように、複数の醸造タンクからの発泡振動信号に対し、ウェーブレット信号処理を施し、醸造タンクにおける平均値から逸脱している異常な振動信号を抽出することも可能である。この場合、振動信号に異常がある醸造タンクの情報を、例えばユーザ(例えば杜氏や酒造業者)の所持する端末5(図1)に通知することも好ましい。これにより、ユーザは、対処の必要な醸造タンクに対して的確な処理を速やかに行うことも可能となる。
また、図5(B)には、水圧センサ32を用いて振動検出と並行して実施された、醪の入った醸造タンク底部における圧力測定の結果が示されている。横軸は留後日数であり、縦軸は圧力増分Δgである。
図5(B)によれば、図3(B)及び(C)を用いて説明したように、留後日数が5日以後では、実際に、圧力増分Δgは減少していくことが理解される。図5(B)に示した測定例では、留後日数が20日において圧力増分Δgはほぼゼロとなり、この時点ですでにアルコール発酵が概ね完了していることを示している。
本願発明者等は、このような水圧測定実験の結果、圧力増分Δgとボーメ度との間に、次式
(3) (ボーメ度)=α'・Δg+β'
の関係が存在することを見いだした。ここで、α'及びβ'は、仕込んだ醪毎に決定される数値であり、仕込んだ蒸米、麹、酵母の状況や仕込み環境(温度等)に依存する値となることが分かっている。
ここで、仕込んだ醪毎に、圧力増分Δgを測定し、この測定結果から上式(3)を決定してボーメ度を算出することによって、BMD曲線を、適宜決定・更新することができる。ちなみに、上式(3)の関係がまさに、予め設定された「圧力態様に係る情報」となっている。このように導出された上式(3)は、上式(2)又は(2')によるBMD曲線決定の補助として、または、上式(2)又は(2')によって決定されたBMD曲線の確認のために使用されることも好ましい。また、発泡振動の検出に障害が生じた際の、BMD曲線決定のための代替手法として使用してもよい。さらには、BMD値を、上式(2)又は(2')からの算出結果と上式(3)からの算出結果との所定の重み付けのもとでの平均値とすることも可能である。
以上、センサボックス3(図1)における振動センサ31及び水圧センサ32による測定結果の実際の利用について説明した。次に、残りの温度計33による温度測定について説明する。
一般に、醪の留仕込完了から上槽期日までの日数は、醪日数と呼ばれている。この醪日数は、麹や酵母の状態、仕込み水の硬度、仕込みの配合や、原料米の精米歩合等の影響を受けるが、当然に、醪の温度の経過や、醸造タンクの設置された部屋の温度の影響も大きく受けて変動する。特に、醪の品温の影響が非常に大きい。例えば、一般に品温が低いほど醪日数は長くなる。従って、上槽期日/醪日数を予測するために、醪の温度を温度計33で継続的に測定すること、及び(図示されていないが)室内温度を併せて継続して測定することは非常に重要となる。
ここで、例えば、留仕込開始日での醪の温度と、醪日数に対する重み係数との関係を、過去の経験から予め設定して、「温度態様に係る情報」とすることができる。この醪日数に対する重み係数は、標準醪温度におけるBMD曲線から決定される醪日数に掛け算して、醪日数の値を温度補正するための係数となっている。例えば、醪温度が予め設定された標準値よりも小さい場合、上槽期日は先に延びるので、この重み係数は1を超える値となる。また、醸造タンクの設置された部屋の温度と、同様の重み係数との関係を同じく過去の経験から予め設定して、「温度態様に係る情報」とすることが可能である。なお、当然に、「温度態様に係る情報」は、上記のものに限定されるものではない。「振動態様に係る情報」から算出される発行進展度合いに対する温度補正を行うものならば、「温度態様に係る情報」として種々のパターンの設定が可能である。
さらに、図1に示すように、1つの醸造タンク内に、振動センサ31、水圧センサ32及び温度計33を含むセンサボックス3が複数(図1では2つ)設置されている場合、例えば、醸造タンク内における発泡振動の分布、圧力(水圧)の分布や、温度分布を測定し、例えばアルコール発酵の進展度合いのタンク内でのばらつきに係る情報を取得することも可能となる。
例えば、アルコール発酵の反応がより進行している醪部分では、相当の発泡振動が発生するとともに、反応熱による温度上昇分がより大きくなっている。従って、タンクの深さ方向(鉛直方向)における発泡振動分布や温度分布を測定することによって、より詳細に発酵進展の状況を把握することができ、より適切な管理が可能となるのである。ちなみに、このような処理は、管理PC1(図2)における振動差異情報生成部111a及び位置・分布決定部112aによって実施することができる。
以上、(糖化とアルコール発酵とが同時に進行する)並行複発酵で製造される日本酒についての本発明に係る実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、当然に、並行複発酵で製造されるその他の醸造体や、(糖化とアルコール発酵とが別途進行する)「単行複発酵」で製造されるビール等の醸造体、さらには(糖化の必要がなくアルコール発酵が進行する)「単発酵」で製造されるワイン等の醸造体に対しても適用可能である。
[状態推定における他の実施形態]
図6は、本発明による状態推定システムの他の実施形態を示す模式図である。
図6によれば、本実施形態の状態推定システムは、人間(ユーザ)の心臓の状態を推定するシステムである。本状態推定システムは、
(a)人体(ユーザ)の心臓の周囲における互いに異なる複数の皮膚上の位置の各々に取り付けられており、心臓から発生する「心臓の状態に対応する振動」を検出し、センサ出力信号に係る情報を、無線通信ネットワークを介して又は有線をもって管理端末7宛てに送信する振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3と、
(b)本発明による状態推定装置であって、受信したセンサ出力信号に係る情報から(ユーザの)心臓の状態に係る情報を決定し、インターネットを含む通信ネットワークを介して当該情報を管理サーバ8宛てに送信する(ユーザの所持する)管理端末7と、
(c)受信した(ユーザの)心臓の状態に係る情報を蓄積して管理し、例えば過去所定期間における発生した異常(疾患)の種別及びその後の経緯に係る情報を、例えば管理端末7(ユーザ)からのリクエストに応じて管理端末7宛てに通知する管理サーバ8と
を備えている。ここで、上記(c)の管理サーバ8は、複数のユーザの所持する管理端末7から受信した、個別のユーザ毎の心臓の状態に係る情報を、当該ユーザIDに紐づけて蓄積・管理することも好ましい。
上記(a)の振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3は、各々、
(a1)心臓より発生する、心臓の心音に相当する振動(以後、心音振動と略称)を検出可能な振動センサと、
(a2)図1に示した情報取得装置2と同様の機能を果たす情報取得部と
を備えている。ここで、(a1)の振動センサも、図1を用いて説明した振動センサ31と同様に、ピエゾ素子を利用したもの等、種々のタイプのセンサとすることができる。
また、状態推定装置である管理端末7も、図2を用いて詳細に説明した管理PC1の各機能構成部に対応した機能構成部を備えている。具体的には、図6に示すように、通信インタフェース701と、振動態様情報蓄積部702と、推定状態情報蓄積部703と、タッチパネル・ディスプレイ(TP・DP)704と、振動差異情報生成部711aを含む発生振動情報生成部711と、位置・分布決定部712a及び種別・段階決定部712bを含む状態決定部712と、通信制御部721と、入出力制御部722とを備えている。このうち、タッチパネル・ディスプレイ704は、管理PC1のディスプレイ及びキーボード104に対応する入出力デバイスである。
また、発生振動情報生成部711の振動差異情報生成部711aは、互いに異なる身体位置に設置された振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3から送信されたセンサ出力信号に係る情報から、心音振動のエネルギー、強度及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つにおける位置による差異に係る「心音差異情報」を含む発生振動情報を生成する。
さらに、状態決定部712の位置・分布決定部712aは、心臓における異常若しくは疾患に応じて予め設定された「心音振動態様に係る情報」に基づき、生成された「心音差異情報」を含む発生振動情報から、心臓における異常若しくは疾患の生じている位置若しくは位置分布を決定する。また、状態決定部712の種別・段階決定部712bは、この予め設定された「心音振動態様に係る情報」に基づき、生成された「心音差異情報」を含む発生振動情報から、心臓における異常若しくは疾患の種別を決定する。
ここで、振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3(及び後述する心電図生成用の電極デバイス)と、管理端末7との間の通信経路として、Bluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)等の近距離無線通信ネットワークを採用する場合を考える。この近距離無線通信の送信時間単位(送信速度の逆数)をT'とし、VD1、VD2及びVD3からの振動センサ出力信号の送信時間単位をそれぞれ、T'、T'及びT'とし、後述する心電図生成用の電極デバイスからの電位出力信号の送信時間単位をT'とし、通信に係る処理時間単位の総和をT'とすると、例えば、T'>T'+T'+T'+T'+T'の関係が成立するように、送信時間単位T'、T'及びT'が調整・設定される。
図7は、心臓の状態を示す心音振動の測定・解析を説明するための模式図である。
図7には、振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3から(それぞれチャネルCH1〜CH3を介して)送信されたセンサ出力信号である心音振動が示されている。これらの心音振動は、VD1、VD2及びVD3のそれぞれにおいて同時に並行して測定されたものであり、同図において、同一の時間軸(横軸)のもとで表されている。なお、本実施形態において、チャネルCH1〜CH3に対応する振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3はそれぞれ、図6に示すような心臓に対する位置に取り付けられるように予め取り決められているものとする。
図7に示した各チャネルの心音振動(センサ出力信号)において、I音は、心室が収縮する際に房室弁が閉じ、血流が遮断されることに起因して発生する振動である。心音振動では、このI音が最も大きい振動となる。また、II音は、心室の拡張時に動脈弁が閉じることに起因して発生する振動である。さらに、III音は、拡張早期に心房から勢いよく出てきた血液が心室壁を振動させることに起因して発生する振動である。また、IV音は、心房収縮時の血液流入に起因して発生する振動である。図7に示すように、I音〜IV音は心臓の鼓動に合わせ、繰り返し発生するが、I音から次のI音までの心音周期は、通常1秒前後となる。
本実施形態では、これらのI音〜IV音における隣り合う2つのなす区間、例えばI音と隣接するII音とのなす区間、のそれぞれにおいて、心臓の異常又は疾患に対応する心雑音に係る振動(心雑音振動)が混入していないかどうかをモニタし、当該異常又は疾患の診断を行う。ここで、心雑音振動とは、I音〜IV音の間に出現する血流の乱流によって生じる振動である。
具体的に、図7に示す心音振動にはいずれも、I音と隣接するII音との間に心雑音振動が生じている。このうち、I音に関係する僧帽弁(図6)に最も近い位置に取り付けられた振動センサデバイスVD3(CH3)からの心音振動における心雑音振動では、その立ち上がり時点が最も早く、その振幅も最大となっている。また、僧帽弁に2番目に近い位置のVD1(CH1)からの心音振動での心雑音振動では、立ち上がり時点も振幅も3つのうちの中間となっており、僧帽弁から最も遠い位置に取り付けられたVD2(CH2)からの心音振動における心雑音振動では、その立ち上がり時点が最も遅く、その振幅も最小となっている。
管理端末7(図6)の振動差異情報生成部711aは、以上に説明したような、心音振動の振幅(強度)及び立ち上がり時点における、振動検出位置による差異に係る「心音差異情報」を生成し、状態決定部712に出力するのである。ちなみに、この立ち上がり時点は、心雑音振動の波形の立ち上がりそのものを検知して決定してもよく、または、心雑音振動の電力値(エネルギー値)を算出し、その電力曲線の立ち上がり時点から決定してもよい。
次いで、上述した「心音差異情報」を入力した位置・分布決定部712aは、この「心音差異情報」における、VD1〜VD3での心雑音振動の振幅(強度)の差異及び立ち上がり時点の差異に基づいて、「異常又は疾患の位置は僧帽弁の位置である」旨の情報を決定する。また、同じくこのような「心音差異情報」を入力した位置・分布決定部712aは、当該心雑音振動の振幅(強度)の差異及び立ち上がり時点の差異に基づいて、「以上又は疾患の種別は僧帽弁閉鎖不全症である」旨の情報を決定することができるのである。
ちなみに、振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3からの心雑音振動の立ち上がり時点をそれぞれ(図7に示すように)T1、T2及びT3とすれば、VD1、VD2及びVD3の設置位置から異常又は疾患に係る心雑音振動の発生源までの距離L1、L2及びL3は、心雑音発生時点をT0、振動伝播速度をV(=約1.5km/秒)として、それぞれ
(4) L1=(T1−T0)・V, L2=(T2−T0)・V, L3=(T3−T0)・V
となる。従って、距離L1、L2及びL3を半径とし、いずれにも含まれる1つの点(交点)を有する3つの球面ができるようにT0を決定し、確定された3つの球面の1つの交点を求めることによって、この交点の位置を、異常又は疾患の位置とすることができる。
さらに、振動センサデバイスVD1、VD2及びVD3からの心音振動に対してウェーブレット信号処理を行い、周波数スペクトルの時間変化を測定することによって、心雑音振動の立ち上がり時点を決定することも可能である。
なお、位置・分布決定部712a及び種別・段階決定部712bは、心臓における異常又は疾患に応じて予め設定された「振動態様に係る情報」に基づき、上述したような情報を決定することができる。ここで、この「振動態様に係る情報」は、例えば、予め設置位置が取り決められているVD1〜VD3からの各心音振動において発生する(a)心雑音振動の発生位置(立ち上がり時点)の範囲、及び(b)心雑音振動の振幅(強度)の範囲と、予め想定される異常/疾患の位置/種別とを対応付けて記録したテーブル情報とすることができる。
また、1つの実施形態として、状態決定部712が、図2を用いて説明した管理PC1の状態決定部112と同じく、機械学習の推定モデルを含む推定器(識別器)を備えており、この推定器を用いて、心臓の異常又は疾患に係る情報を決定することも好ましい。この場合、「振動態様に係る情報」は、機械学習の推定モデルに係る情報(例えばモデルを構成する各種パラメータ値)となり、予めの学習によって形成される情報となる。具体的には、学習済みの推定器に対し、例えば、上述したような「心音差異情報」を入力して得られた出力を、心臓の異常又は疾患に係る情報に決定することができる。
以上に説明したように、管理端末7を含む本状態推定システムによれば、心臓における異常や疾患の発生といった状態を、振動を測定することによって推定することができる。特に、複数の振動検出器(振動センサデバイス)を用いることによって、異常又は疾患の位置や種別を決定することも可能となるのである。さらに、ユーザは所持する管理端末7を介して自らの心臓の状態についての情報を得ることができるので、例えば家庭や職場等にあっても自身の病状データを確認することができる。また、管理サーバ8を介することによって、自身の長期にわたる心臓状態の経過情報を確認したり、さらには、(閲覧が許可された)家族等の病状データを確認したりすることも可能となる。
また、従来、心疾患の検査は、医師による聴診により行われてきた。そのため、医師の技量・能力に依存して診断が変わることもあり、診断の客観性及び定量性に欠けることが問題となっていた。これに対し、管理端末7を含む本状態推定システムによれば、より客観性及び定量性の高い診断を行うことができるのである。さらに、心音を医師の聴覚やマイクロフォンによって捉えることと比べると、人体を伝播する振動を検知するので、診察環境における音ノイズの影響をほとんど受けることなく、安定した確実な診断が可能となる。
図8は、心音振動に並行して測定される心電図の一実施形態を示すグラフである。
図8には、
(a)振動センサデバイスVD1〜VD3から、それぞれチャネルCH1〜CH3を介して送信されたセンサ出力信号である心音振動と、
(b)当該心音振動と同時に並行して測定された、心筋活動電位の波形である心電図と
のグラフが示されている。同図では、これら両グラフは同一の時間軸(横軸)のもとで表されている。
上記(b)の心電図は、心臓の周囲となる皮膚上の位置に(図示していない)複数の電極を取り付け、これらの電極が接続された公知の心電計によって心筋の活動電位を計測し、計測された心筋活動電位の時間変化をグラフにしたものである。図8に示すように、心電図は、P、Q、R、S、T等と名付けられた棘波を有している。このうち、心房の収縮はP波、心室の収縮はQRS波、及び心室の収縮終了はT波として捉えられる。
例えば、左心室内において心臓の収縮で発生する電流が一時的にきれた状態である左脚ブロックが起きると、心不全の可能性が疑われる。また、細かい揺れのような波形が生じる場合、心房の筋肉が不規則に収縮していると考えられ、心房中隔欠損症、心筋梗塞、拡張型心筋症による心不全等の可能性が疑われる。さらに、波長に異常が生じる場合において、不整脈、心不全、心臓偏位、心臓弁膜症、狭心症等、それぞれの疾患に特有の波形が見られることもある。
さらに、図8に示した、Q棘波とII音との時間間隔であるQ−II時間は、その長さの異常がある場合、種々の疾患の可能性が考えられる。このように、心電図と心音振動との両データを合わせることによって心臓の異常又は疾患に係る重要な情報が読み取れる場合も少なくない。
以上述べたように、振動センサデバイスVD1〜VD3だけでなく、公知の電極・心電計をも併用することによって、より適切且つより詳細な心臓の状態(異常又は疾患)に係る情報を取得することが可能となる。
さらに、1つの実施形態として、状態決定部712(図6)が、上述したように機械学習の推定モデルを含む推定器(識別器)を備えている場合、上述した「心音差異情報」だけでなく、心電図波形の結果をも特徴量化し、正解データとしての異常又は疾患の具体名のデータを用いてこの推定器に学習を行わせることもできる。次いで、この学習済みの推定器に対し、状態推定対象の心臓における「心音差異情報」と心電図波形とを表現した特徴量を入力し、その出力を、この心臓の異常又は疾患に係る情報に決定することも好ましい。
以上、図6及び図7を用いて、人間の心臓の状態推定処理について説明したが、本発明に係る状態推定における振動発生体として、当然、人間以外の動物の心臓を採用することも可能である。また、その他、人間又は動物における種々の臓器若しくは体内部位を振動発生体とし、その状態を推定することもできる。例えば、脳や特定の血管部位を含む、様々な臓器や体内部位は、血流に起因する振動を発生させる。ここで、疾患等の原因で血流に異常が生じた場合、この振動をモニタすることによって、その異常や疾患に係る情報を得ることが可能となるのである。ちなみに、人体や動物の体はその多くが水で構成されているので、発生した振動は、例えば約1.5km/秒といった高速度で伝播する。例えば、心臓から1.5cm離隔した位置には10マイクロ秒程度で心音振動が到達する。従って、信号の立ち上がり時点の差異から振動発生位置(異常・疾患箇所)を算出する際の計算も容易となる。
さらに、トンネル等の内壁や建造物等の外壁の内側となる内部の劣化・異常箇所(例えば内側層の剥がれ、浮きや、腐食等)も上記の心臓と同じく振動発生体となり得る。具体的には、当該劣化・異常箇所に振動波を与えた際に反射して帰ってくる振動(波)を、当該劣化・異常箇所から発生した振動とみなして検出し、当該劣化・異常箇所の位置や劣化・異常の状態(程度)を推定することができる。さらには、与えた振動波が途中で経験する(空洞等での)減衰や、(弾性率が異なる部分等での)屈折、伝播速度の変化、及び位相の変化を、複数の振動センサをもって測定し、劣化・異常個所についての位置の分布や、位置の関数としての劣化・異常の状態(程度)を推定することも可能となる。なお、このような実施形態においても、心臓を振動発生体とした場合と同じく、1つ又は複数の振動センサは、あり得るとされる振動発生体(劣化箇所)の外側周囲、例えばトンネルや建造物の内外壁表面の位置に設置することができる。
[状態推定における更なる他の実施形態]
図9は、本発明による状態推定システムにおける更なる他の実施形態を示す模式図である。
図9によれば、管理PC1’、管理サーバ4’及び端末5’が、図1に示した状態推定システムと同様のシステムを構成している。ここで、管理PC1’は、公園、駐車場等の所定の区域、又は道路沿いや河川沿い等の所定の地域・領域に設置されていて振動センサを搭載した複数の独立電源型環境測定装置8から、振動センサ出力信号を受信する。
独立電源型環境測定装置8は、例えば、本出願人による別の出願に係る特開2015−195084号公報に開示されているような装置であって、太陽電池、蓄電池、照明装置及び無線通信部を備えており、さらに、本実施形態において振動センサを搭載している。
独立電源型環境測定装置8は、例えば、設置位置近辺を通過する通行人や自転車、自動車等、又は出没する野生動物等によって生じる振動を、搭載した振動センサで検出し、通信部を用いてその振動センサ出力信号を管理PC1’宛てに送信する。
管理PC1’は、通行人、動物、自転車、自動車等の移動する振動発生体毎に、振動波形の典型パターンを予め記憶している。ここで、振動センサ出力信号を受信した際、公知の波形類似度算出手段を用いて、この振動センサ出力信号の振動波形と最も類似する典型パターンを割り出し、移動する振動発生体の種別を決定することができる。また、種別を決定した自動車等の振動発生体に対し、追跡のための識別IDを付与してもよい。
さらに、管理PC1’は、複数の独立電源型環境測定装置8の地理的な設置位置の情報をも保持している。従って、これらの装置8の各々から刻々と送信されてくる振動センサ出力信号を解析し、所定の識別IDを付与した追跡対象(振動発生体)がいずれの地理的位置にいて、どの程度の移動速度で移動しているかに係る情報(振動発生体の状態に係る情報)を決定することもできるのである。
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体(例えば醪のような醸造過程物等や心臓のような臓器等)における状態を、振動を測定して発生振動情報を生成することによって推定することができる。また、振動を測定する振動検出器を、互いに異なる位置の各々に設置する実施形態においては、振動差異情報を生成することによって、振動発生体の状態を特徴付ける現象若しくは性質の生じている位置又は位置分布を決定したり、当該現象若しくは性質の種別又は段階を決定したりすることも可能となる。
特に、今後ますます発展することが期待されるIOT技術において、様々な振動発生体から発生する振動に係る情報を(通信ネットワークを介して)収集し解析することで、当該振動発生体の状況・状態を推定する本発明に係る技術は、大いに重要となると考えられる。
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
1、1’ 管理PC(状態推定装置)
101、701 通信インタフェース
102、702 振動態様情報蓄積部
103、703 推定状態情報蓄積部
104 ディスプレイ及びキーボード(DP・KB)
111、711 発生振動情報生成部
111a、711a 振動差異情報生成部
112、712 状態決定部
112a、712a 位置・分布決定部
112b、712b 種別・段階決定部
121、721 通信制御部
121a LAN側制御部
121b WAN側制御部
122、722 入出力制御部
2 情報取得装置
201 信号変換部
202 情報処理部
203 通信インタフェース(I/F)
3 センサボックス
31 振動センサ
32 水圧センサ
33 温度計
4、4’、8 管理サーバ
5、5’ 端末
6 調整装置
61 追水部
62 温度調節器
7 管理端末(状態推定装置)
704 タッチパネル・ディスプレイ(TP・DP)
8 独立電源型環境測定装置

Claims (14)

  1. 自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定するシステムであって、
    当該振動発生体の内部、表面又は周囲に配置される少なくとも1つの振動検出器と、
    当該振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成する発生振動情報生成部と、
    当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する状態決定部と
    を有することを特徴とする状態推定システム。
  2. 当該振動検出部は、当該振動発生体の内部、表面又は周囲における互いに異なる複数の位置の各々に配置されることを特徴とする請求項1に記載の状態推定システム。
  3. 前記発生振動情報生成部は、互いに異なる位置に設置された複数の振動検出器によって出力された信号から、当該振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つにおける位置による差異に係る振動差異情報を含む発生振動情報を生成し、
    前記状態決定部は、生成された当該振動差異情報を含む発生振動情報から、当該振動発生体の状態を特徴付ける現象若しくは性質の生じている位置又は位置分布を決定する
    ことを特徴とする請求項2に記載の状態推定システム。
  4. 当該振動態様に係る情報は、機械学習の推定モデルに係る情報であり、
    前記状態決定部は、当該推定モデルを含む推定器に対し、生成された当該発生振動情報を入力して得られた出力を、当該振動発生体の状態に係る情報に決定する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の状態推定システム。
  5. 当該振動発生体は発酵品の製造過程物であって、当該振動は、当該製造過程物の内部での発泡によって発生する振動であり、
    当該振動検出器は、当該製造過程物の内部の位置、当該製造過程物の入った容器の位置、又は当該容器に近接する位置に配置されており、
    前記発生振動情報生成部は、当該振動検出器によって出力された信号から、当該発泡に起因する振動のエネルギー、強度及び振動数のうちの少なくとも1つに係る発泡振動情報を含む発生振動情報を生成し、
    前記状態決定部は、当該製造過程物における発酵の進展状況に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された当該発泡振動情報を含む発生振動情報から、当該製造過程物の発酵の進展状況に係る情報を決定する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の状態推定システム。
  6. 前記状態推定システムは、当該振動検出器の近傍に配置された、当該製造過程物の温度及び/又は圧力を検出する温度検出器及び/又は圧力検出器を更に有し、
    前記発生振動情報生成部は、当該温度検出器及び/又は圧力検出器によって出力された信号から、当該製造過程物の温度及び/又は圧力に係る情報を更に生成し、
    前記状態決定部は、当該製造過程物における発酵の進展状況に応じて予め設定された温度及び/又は圧力態様に係る情報と当該振動態様に係る情報とに基づき、生成された当該温度及び/又は圧力に係る情報と当該発泡振動情報を含む発生振動情報とから、当該製造過程物の発酵の進展状況に係る情報を決定する
    ことを特徴とする請求項5に記載の状態推定システム。
  7. 前記状態推定システムは、
    前記振動検出部と、前記温度検出部及び/又は圧力検出部とを内部に収納しており、各検出部から出力される信号を有線又は無線で取り出すことが可能であって、当該製造過程物の内部の位置、又は当該製造過程物の入った容器の内壁、内底面、外壁、若しくは外底面の位置に設置される検出器ボックス
    を有することを特徴とする請求項6に記載の状態推定システム。
  8. 当該振動発生体は、人間又は動物の臓器若しくは体内部位であり、
    当該振動検出器は、当該臓器又は体内部位の周囲となる互いに異なる身体位置の各々に配置されており、
    前記発生振動情報生成部は、当該振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成し、
    前記状態決定部は、当該臓器又は体内部位における状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該臓器又は体内部位の状態に係る情報を決定する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の状態推定システム。
  9. 当該振動発生体は心臓であり、
    当該振動検出器は、当該心臓の周囲となる互いに異なる身体位置の各々に配置されており、
    前記発生振動情報生成部は、互いに異なる身体位置に設置された複数の振動検出器によって出力された信号から、当該心臓に起因する振動のエネルギー、強度及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つにおける位置による差異に係る心音差異情報を含む発生振動情報を生成し、
    前記状態決定部は、当該心臓における異常若しくは疾患に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された当該心音差異情報を含む発生振動情報から、当該心臓における異常若しくは疾患の生じている位置若しくは位置分布、及び/又は当該異常若しくは疾患の種別を決定する
    ことを特徴とする請求項8に記載の状態推定システム。
  10. 前記発生振動情報生成部及び前記状態決定部を含む状態推定装置が設けられており、
    前記状態推定装置は、当該振動検出器によって出力された信号に係る情報を、近距離無線通信網又は赤外線通信網を介して受信可能であって、決定された当該振動発生体の状態に係る情報を、少なくとも携帯電話通信網又は無線LAN(Local Area Network)を介してユーザの端末宛てに送信可能な通信インタフェースを有する
    ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の状態推定システム。
  11. 当該端末からの指示信号を受信し、当該振動発生体に対して当該指示信号に応じた作用を及ぼすフィードバック制御部を更に有することを特徴とする請求項10に記載の状態推定システム。
  12. 自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定する装置であって、
    当該振動発生体の内部、表面又は周囲に配置された少なくとも1つの振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成する発生振動情報生成手段と、
    当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する状態決定手段と
    を有することを特徴とする状態推定装置。
  13. 自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
    当該振動発生体の内部、表面又は周囲に配置された少なくとも1つの振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成する発生振動情報生成手段と、
    当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する状態決定手段と
    してコンピュータを機能させることを特徴とする状態推定プログラム。
  14. 自らの状態に応じた振動を発生させる振動発生体における当該状態を推定する方法であって、
    当該振動発生体の内部、表面又は周囲に少なくとも1つの振動検出器を配置し、
    当該振動検出器によって出力された信号から、検出された振動のエネルギー、強度、振動数及び立ち上がり時点のうちの少なくとも1つに係る発生振動情報を生成し、
    当該振動発生体における当該状態に応じて予め設定された振動態様に係る情報に基づき、生成された発生振動情報から、当該振動発生体の状態に係る情報を決定する
    ことを特徴とする状態推定方法。
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