JP2018042991A - 味覚電気刺激装置及び味覚電気刺激方法 - Google Patents

味覚電気刺激装置及び味覚電気刺激方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電気刺激によって持続的な味覚増強等の味覚調整を可能にする。【解決手段】味覚電気刺激装置20は、ヒト1の首筋10に設置する陽極電極23と、舌の付近に設置する陰極電極25、陽極電極23と陰極電極25との間に直流成分の電気信号を印加する刺激信号発生部21とを備える。刺激信号発生部21は、所定の周波数で連続矩形波信号を出力する。これにより、印加中味覚増強効果が得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、電気刺激によって味覚を調整する味覚電気刺激装置及び味覚電気刺激方法に関する。
従来、塩分や糖分の摂りすぎが健康被害の誘因となっている。特に塩分の過剰摂取は、生活習慣病である高血圧などの重大な健康被害をもたらす。近年、味呈示物質の摂取量を増加させることなく、味の変化を与えることができる技術が報告されている。例えば、視覚情報と嗅覚情報によって対象物の味を変化させるメタクッキーが挙げられる。しかしながら、これにはHMD(Head Mount Display)を装着する必要があるため、快適な食事の妨げとなり、食事に対する充足感を低下させることが考えられる。
一方、軽量・安価な電気刺激装置のみで快適な食事を妨げず、味の変化をもたらす方法として舌への電気刺激が挙げられる。この方法は、大きく2つに分類することができる。ひとつは、舌に陽極を設置した陽極電気刺激である。この方法では電気味と呼ばれる味が強く惹起される。Ranashngheらは、この陽極刺激を利用した刺激パターンを設計することで、塩味等様々な味を惹起する手法を提案している(非特許文献1)。しかし、この手法は塩味を惹起することができたとしても電気味あるいは金属味も併せて惹起されるため、味質の詳細なコントロールが困難である。また、この手法では、味強度の面でも十分な味強度を得ることは確認できていない。このため、濃い味を知覚しながら、おいしいと感じられ、充足感の得られる食事をとることは困難であると考えられる。
もうひとつは、舌に陰極を設置した陰極電気刺激である。陰極電気刺激は、刺激印加中に味が弱く感じられる味覚抑制効果と、刺激停止後に一時的に物質の味強度が強くなったように感じる味覚増強効果の2つの効果を持つ刺激である(非特許文献2,3)。また、陰極電流刺激は、陽極電気刺激に比して電気味がほとんど知覚されないという特徴を持つ(非特許文献4)。陰極電気刺激による味覚増強効果を利用することで、味物質を少量しか使わない薄い味付けの食事でも、濃い味付けの食事であるかのように錯覚させ、満足できる食事体験をさせることができると考えられる。
また、電気刺激のための電極の形態として、非特許文献1には、舌を電極で挟み込むことで味を惹起させるTongue Mounted Displayが提案されている。また、非特許文献5には、フォークを電極の代わりとして利用して、舌に電気を印加することで食べ物の味を変化させる手法が提案されている。さらに、非特許文献6には、ストロー内部に電極を設置し、ストローを通って口腔内に流れ込む水溶液から人体に通電することで、水溶液の呈す塩味や旨味を抑制あるいは増強する手法が提案されている。
N. Ranasinghe, A. Cheok,R.Nakatsu, E. Yi-Luen Do:Simulating the sensation of tastefor immersive experiences, ImmersiveMe ’13 ACM international workshop onImmersive media experiences pp.29-34, 2013 H. Nakamura, H. Miyashita:Controlling saltiness without salt: evaluation of taste changeby applying and releasing cathodal current, 5th international workshop onMultimedia for cooking & eating activities, pp.9-14, 2013. T.P. Hettinger, M.E. Frank:Salt taste inhibition by cathodal current, Brain ResearchBulletin , Vol.80, No.3, pp.107-115, 2009. 冨田, 少名子, 山田, 都川:電気味覚計(Elgustometer):2,3の基礎的問題, 日本耳鼻咽喉科学会会報, Vol.72, No.4, pp.868-875, 1969. 中村裕美、宮下芳明"一極型電気味覚付加装置の提案と極性変化による味覚変化の検討"情報処理学会論文誌、Vol.54, No.4, pp.1442-1449, 2013. 櫻井悟、青山一真、宮本靖久、古川正紘、前田太郎、安藤英由樹:電気刺激による塩味および旨味を呈する塩の味覚抑制、日本バーチャルリアリティー学会論文誌、Vol.20, No.3, pp.239-242, 2015.
しかしながら、この味覚増強効果を、摂食制限をサポートするインタフェースとして利用しようとする場合、陰極電流停止後に生じる味覚増強効果が短時間しか見られないことが問題となる。これでは、一時的には味覚の増強が引き起こされたとしても、食事中にその効果が切れてしまうため、薄い味付けの食事を濃い味付けの食事のように継続的に錯覚させることは困難である。そのため、咀嚼し、嚥下するまでの一連の食事動作、乃至は一回の食事中、増強効果を持続的に得られるような継続的な味覚増強方法が求められていた。
また、従来の電極の形態としては、非特許文献1,5,6に示すように、フォークやストロー等の食器を利用した電極等を口腔内に入れておかなくてはならないものがあり、実際の食事シーンを考えると、フォークやストロー等を利用して食事をしても、それらが口腔内にある時間は限られており、食器を口腔外に移動させてからも食事は続く。このため、食事中を通じて味覚を変化させることは困難であり、十分な食体験を修飾するには更なる工夫が要請される。
また、従来の技術における味覚の提示手法においては、電極の付近でのみ味が提示される。これは、刺激電極の付近では電流密度が高く、舌上の味覚の神経を十分に発火させることができるが、電極から遠ざかって電流密度が著しく低下すると、神経発火を引き起こせないためである。しかしながら、味覚の神経は舌のみではなく、口腔内壁や咽喉などにも存在する。実際の食事のリアリティを考えると、嚥下中の食べ物が喉周辺の神経を刺激するプロセスが食事の体験に及ぼす影響は無視できない。これは「のどごし」等の、のどで味わう食体験が多く存在するためである。よって、口腔内の舌付近のみではなく、それ以外の部位への味覚提示の要請もある。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、持続的な味覚増強等の味覚調整を可能にする味覚電気刺激装置及びその方法を提供するものである。
本発明に係る味覚電気刺激装置は、人体の後頭部及び頸部背側の一方の部位に装着される陽極と、口腔及び顎周辺の一方の部位に設置される陰極と、前記陽極と陰極との間に電気信号を印加する電気信号発生部とを備え、前記電気信号発生部は、凸状波形を有する信号を所定の周波数で出力することを特徴とするものである。
また、本発明に係る味覚電気刺激方法は、人体の後頭部及び頸部背側の一方の部位に陽極を装着し、口腔及び顎周辺の一方の部位に陰極を設置した状態で、電気信号発生部から前記陽極と陰極との間に、凸状波形を有する電気信号を所定の周波数で印加するものである。
かかる発明によれば、人体の後頭部及び頸部背側の一方の部位に陽極を装着し、一方、陰極を口腔及び顎周辺の一方の部位に設置した状態で、あるいは電解質を含有する飲食物を経由し得るように(舌の付近に)設置して、電気信号発生部から前記陽極と陰極間に、凸状波形を有する電気信号を所定の周波数で印加することで、味覚の印加中増強効果が発生する。なお、電気信号発生部としては、定電流出力制御式の回路であることが好ましい。
味覚は、電気刺激によって、調整対象の味が増強され、あるいは相対的に味覚増強効果の低い電気刺激を与えることで相対的な味覚増強調整が可能となる。従って、味呈示物質の摂取量を変化させることなく、好みに応じた味覚での食事が可能となり、または塩分取りすぎを防止するなどの健康を考慮して、飲食物を濃い味になるように増強刺激に変えることで、薄い味付けの料理の摂取抑制が可能となる。また、好みでない味覚に変えるなどの味覚増強効果によって摂取量を積極的に減らすことも可能となる。さらに、食べ物の好き嫌いをなくすために、好きな味覚を増強し、あるいは嫌いな味覚を抑制して(相対的に増強効果を抑制して)、摂食を容易にすることができる。
なお、味覚には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが該当し、五基本味と位置づけられているが、ここでは、基本味以外の、辛味物質、アルコール、炭酸飲料などの化学的刺激や、舌触り(つぶつぶ感、柔らかさ、硬さ、滑らかさ)などの物理的刺激も適宜基本味と合わせて総合的な味覚として扱ってもよい。
また、前記陰極が舌に装着されることで、舌を直接陰極にすることが可能となる。例えば舌表面に貼着可能な接着剤を採用することで可能となる。
また、前記陰極は、下顎に装着され、好ましくは、顎下に装着されることで、少なくとも味覚刺激のために、口腔内に電極を設置する態様に比べて、手軽であるという点と心理抵抗が低いという点で工学的価値が高いものとなる。また、喉に味を感じさせる刺激は、「のどごし」などが重視される食体験の修飾手法として独創性の高いものであり、同時に工学的な価値も高い。
また、前記陽極は、後頭部及び頸部背側の一方の部位の皮膚に接着されることで、刺激電流が陽極から口腔内の舌や喉の奥を通して陰極側に効果的に流れる。
また、前記凸状波形を矩形波とすることで、信号幅を狭くできるため、より周波数の高い電気信号が生成容易となる。
また、前記凸状波形を三角波とすることで、立ち上がり時の触覚感触が抑制される。この場合、立ち下がり側の傾斜を急峻にすることで、増強効果が維持される。
また、前記電気信号発生部は、前記周波数の調整を可能とすることを特徴とするものである。この構成によれば、各種の味呈示イオンの移動速度等に応じた周波数が設定されるので、効果的な増強効果(相対的な増強抑制含む)が調整可能となる。
また、前記電気信号発生部は、前記凸状波形の振幅を調整可能である。この構成によれば、各種の味呈示イオンの移動速度等に応じた周波数が設定されるので、効果的な増強効果(相対的な増強抑制含む)が調整可能となる。
本発明によれば、電気刺激によって持続的な味覚増強等の味覚調整が可能となる。
本発明に係る味覚電気刺激の実験装置の一例を示す図で、(a)は構成図、(b)は単発矩形波刺激信号の波形図、(c)は連続矩形波刺激信号の波形図である。 カウンター現象を説明するための図である。 電流印加時間と停止後増強効果の持続時間との関係を示す図である。 電流印加時間と印加中増強効果の持続時間との関係を示す図である。 電流印加時間に対する停止後増強効果の増強強度の関係を示す図である。 周波数に対する停止中増強効果の持続時間の関係を示す図である。 周波数に対する印加後増強効果の持続時間の関係を示す図である。 周波数に対する印加中増強効果の増強強度の関係を示す図である。 印加中増強強度と停止後増強強度との増強持続時間を比較する図である。 陰極電極の他の配置例を示す図である。 ストロー電極及び下顎への電気刺激による味覚惹起を示す図で、(a)は味覚惹起位置を示し、(b)は味覚惹起確率を示している。 ストロー電極及び下顎への電気刺激における味強度と等価な味強度に調整した資料の濃度を示す図である。 下顎への刺激における周波数に対する印加中増強効果の持続時間の関係を示す図である。
まず、陰極電気刺激が及ぼす味覚増強効果の機序について説明する。陰極電気刺激による味覚抑制効果の機序については、イオン化した味物質が電気泳動することによって味覚受容器から遠ざかることに起因すると考えられている(鳴海,谷川,梶波,廣瀬:メタクッキー:感覚間相互作用を用いた味覚ディスプレイの検討, 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, Vo.15, No.4,pp.579-588, 2010.)。一方で、味覚増強効果の機序については、本発明者らは、予備実験としてイオン化しない砂糖等の物質に陰極電気刺激を印加し、その結果、陰極刺激終了後に味覚増強効果が得られないことなどを確認した。このことから、味覚増強効果の機序としてカウンター仮説(カウンター現象)を考える。
陰極刺激の引き起こしたイオン泳動によって、味覚受容器が味を呈するイオンが疎な状態に順応する。電流印加終了後には電流印加中に各極の周辺に集まったイオンの電気的引力と偏った濃度の拡散により、一時的に舌周辺の陽イオン濃度が急上昇する。これにより、急激な味細胞の発火を誘発し味が強まった様に感じる。
さらに、カウンター現象に則って考えると、味覚の増強効果を強く、長く持続させるためには、(i)舌から呈味イオンを遠ざけ、十分順応を引き起こすことで、一度の増強効果を長く続ける手法と、(ii)味覚の増強効果を断続的に引き起こし、継続的な味覚の増強を引き起こす手法とが考えられる。
(i)に関しては、電流の印加時間を操作することで十分順応を引き起こす時間を確保し、味覚の増強効果の持続時間を変化させることができると考えられる。また、(ii)に関しては、陰極電流刺激とそれを停止する周期的な刺激を印加することで、味覚の増強効果の持続中に舌から呈味イオンを引き離し、増強効果が終了するタイミングで次の増強効果を引き起こすイオンの泳動パターンを形成すれば、継続的な味覚増強が実現できると考えられる。
以下では、(i)の手法による継続的増強効果を実験で検証するために、図1(b)に示す単発矩形波刺激信号を用いる。また、(ii)の手法による効果を検証するために、図1(c)に示す連続矩形波刺激信号を用いた。さらに、ここで2つの味覚増強効果を定義する。一つは従来の報告にあるような、陰極電気刺激停止後に起こる増強効果であり、停止後増強効果とする。もうひとつは、連続矩形波刺激を与えた際に、陰極電流印加中にもかかわらず生じる増強効果で、印加中増強効果とする。
図1は、本発明に係る味覚電気刺激の実験装置の一例を示す図で、(a)は構成図、(b)は単発矩形波刺激信号の波形図、(c)は連続矩形波刺激信号の波形図である。
味覚電気刺激装置20は、刺激信号発生部21を備える。味覚電気刺激装置20は、実験装置としても適用される。刺激信号発生部21は、図1(b),(c)の電気信号が選択的に出力可能である。なお、刺激信号発生部21は、後述する実験I,IIにおいて使用される刺激信号を切り替えて出力する。具体的には、出力時間(印加時間)、出力周波数が調整可能である。
刺激信号発生部21の正極端子には導線22が接続され、その先端に陽極電極23が設けられている。陽極電極23は、ヒト1の身体部位の適所に設置可能であるが、図1では、首筋に貼着している。また、刺激信号発生部21の負極端子には導線24が接続され、その先端側は陰極電極25として機能する。
本例では、味覚調整対象となる試料30として水溶液が適用され、容器41内に入れられている。なお、試料30については後述する。ヒト1はストロー42を介して容器41内の試料30を口腔内に導き、口腔内に一時的に溜める等して飲み込む。陰極電極25は、本例ではストロー42の途中まで内挿されて、試料30に浸漬するようにされている。陰極電極25は、種々の態様が採用可能であり、前記の試料30に直接接触させる態様の他、口腔内の適所に接着剤を介して貼着したり、口腔内と接する食器(例えば、導電製のスプーンの適所、少なくとも口元側が導電製のストロー)に接続したりする態様でもよい。
次いで、カウンター現象について、図2を用いて説明する。図2は、図1(a)の一部であって、ヒト1の口腔11付近を拡大して示したものである。試料30としての水溶液は、NaClを含有する塩水である。塩は水中で分離し、イオン化する電解質である。図2に示すように、塩水を口腔11内に含むと舌12の上面側に溜まる。この状態で、図1(b)又は(c)に示す刺激信号が、舌12側を陰極にして印加されると、舌12上に首側(喉側)から舌先側に向かう電界が発生する。この状態で、図2の矢印で示すように、Naイオン(味呈示イオン)は、クーロン力を受けて舌12上で舌先側に移動し、一方、Clイオン(味呈示イオン)は、クーロン力を受けて舌12上で喉奥側に移動する。
一方、刺激信号の印加が終了すると、舌先側に集まったNaイオン、及び喉側に集まったClイオンは、破線の矢印で示すように、イオンの電気的引力と偏った濃度の拡散(いわゆるカウンター現象)により、一時的に舌12上の中央側に向けて移動することで陽イオン濃度が急上昇し、舌12上の味受容体との反応が増大するものと考えられる。
続いて、実験I、実験IIを行い、カウンター現象、実用性について検証する。
(1)実験I
<単発矩形波刺激による味覚増強効果の検証・比較>
(1−1)実験内容
従来の陰極電気刺激手法では、単発矩形波刺激が利用されてきた(図1(b))。本実験では、単発矩形波刺激の及ぼす味覚増強効果が、食事を通して味覚が増強できる持続時間を持つかどうかを検証することを目的とし、前記カウンター現象での継続的増強手法(i)に基づき、単発矩形波刺激の電流印加時間と、味覚増強効果の持続時間、増強強度との関係を調査する。
(1−2)実験方法
精製水を用いて作成した1.0%のNaCl水溶液を試料として用意した。被験者には、知覚した味強度に応じた変化をスライドバーにより表現させた。スライドバーは、中心部を試料濃度(1.0%)、左端を精製水、右端を3.0%のNaCl水溶液の呈する味強度とし、実験開始時に被験者にそれぞれを飲んで確認するように指示した。被験者に単発矩形波刺激(図1(b))を印加し、知覚した味強度に応じたスライドバーの操作を行わせた。刺激電流は電流量1.0mAで、印加時間は、0,25,50,100,500,1000,2000,3000,4000,5000(単位:ms)の10条件で検証した。1人の被験者に対して、各条件での試行を3回ずつ行った。実験参加者は、20代の男性5名であり、体に電気を流すことを実験前に十分に説明し、合意の上で実験を行った。
電気刺激は、導線22の先端の陽極側の陽極電極23として、首の後ろにゲル電極(フクダ電子製、NIPRODE II)を使用し、陰極側は、被験者が導線24を予め通したストロー42(径 6mm,長さ 200mm)で、容器41内の試料30を口に含むことで、試料30に浸漬した部分を陰極電極25とした。
(1−3)実験結果
図3、図4に、単発矩形波刺激の電流印加時間に対する2つの増強効果の持続時間の平均値を示す。図3及び図4において、電流印加時間(横軸)は対数目盛である。図中の*は、Kruskal-Wallis ANOVAとScheffeの多重比較法により認められた有意差(p<.05)を示しており、エラーバーは標準誤差を示している。
図3より、単発矩形波刺激の停止後増強効果では、電流印加時間100ms〜500msの間で急激に増強の持続時間が長くなった。また、この停止後増強効果電流印加時間と線形ではないが、相関があることが認められる。一方で、図4から、単発矩形波刺激時には印加中増強効果は生起されなかった。
図5に、電流印加時間に対する停止後増強効果の増強度の平均値を示す。なお、増強度は、被験者ごとのスライドバーの最大値、すなわち最も味を強く知覚したときの移動量で割ることで標準化した。図5において、電流印加時間(横軸)は対数目盛である。図中の*は、Kruskal-Wallis ANOVAとScheffeの多重比較法により認められた有意差(p< .05)を示しており、エラーバーは標準誤差を示している。図5から、電流印加時間1000msから、味覚の増強が強く見られ、それより長時間の電流印加時間では増強強度は大きくは変わらなかった。
(1−4)考察
図3〜図5より、印加中増強効果の持続時間が得られていないことから、単発矩形波刺激は電流印加中には塩味の増強を引き起こさないが、停止後増強効果では、味強度、持続時間ともに塩味の増強みられたため、電流印加停止後には塩味を増強することが示された。
停止後増強効果において、5000ms以下の矩形波電流刺激では、得られる平均持続時間は全ての条件について2500ms以下であった。また、有意差が認められた印加時間3000ms以上の条件では、持続時間と増強度ともに大きな変化は見られず、これ以上長い、あるいは強い停止後増強効果は得られないと考えられる。
次いで、この単発矩形波刺激の及ぼす増強効果が、摂食制限のサポートインタフェースとして利用できるかどうかを考える。この単発矩形波刺激の及ぼす塩味の増強効果は、最も長い条件でも2000ms程度しか増強が持続していない。そのため、停止後増強効果では、摂取制限者に満足のいく食事体験を実現させるために必要な持続時間を持つ、すなわち実用的といえる増強効果は得られない。
(2)実験II
<連続矩形波刺激による味覚増強効果の検証・比較>
(2−1)実験内容
実験Iから、単発矩形波刺激の及ぼす味覚増強効果である停止後増強効果の持続時間が短時間であり、食事を通しての継続的な塩味の増強は困難であることが確認された。そこで、実験IIでは、前記カウンター現象に則り、味覚の増強効果を断続的に引き起こすことで継続的な味覚増強効果を得る手法について検証する。実験IIでは、図1(c)に示すような周期的な連続矩形波刺激を用いたときに生じると考えられる味覚増強効果の、刺激周波数に対する持続時間と増強度を調査した。
(2−2)実験方法
精製水を用いて作成した1.0%のNaCl水溶液を試料として用意した。被験者には、知覚した味強度に応じた変化をスライドバーにより表現させた。スライドバーは、中心部を試料濃度(1.0%)、左端を精製水、右端を3.0%のNaCl水溶液の呈する味強度とし、実験開始時に被験者にそれぞれを飲んで確認するように指示した。被験者には、連続矩形波刺激を印加し、知覚した味強度に応じたスライドバーの操作を行わせた。刺激電流は電流量1.0mAで、刺激パターンの周波数条件を変えることで得られる増強効果に差異があると考えられるため、周波数条件として0,1,5,10,20,50,100,200,500,1000(単位:Hz)の10条件で効果を検証した。但し、周波数0Hzは、電流もゼロのコントロール条件を指す。なお、刺激時間は全条件共通で5000msである。1人の被験者に対して、各条件での試行を3回ずつ行った。実験参加者は、20代の男性5名であり、体に電気を流すことを実験前に十分に説明し、合意の上で実験を行った。なお、電極配置は実験Iの場合と同様である。
(2−3)実験結果
図6、図7に、連続矩形波刺激の周波数に対する2つの増強効果の持続時間の平均値を示す。なお、図6及び図7は、周波数軸(横軸)が対数目盛であり、図中の*は、Kruskal-Wallis ANOVAとScheffeの多重比較法により認められた有意差(p<.05)を示しており.**は、有意傾向(p < .1)を示している。また、エラーバーは標準誤差を示している。
図6から、連続矩形波刺激により印加中増強効果の生起が認められた。図6に示す印加中増強効果で得られる増強持続時間の方が、全体的に図7に示す停止後増強効果で得られる増強持続時間より長くなった。なお、ある条件(例えば、略100Hz以上)によっては、図7に示す停止後増強効果が、図6に示す印加中増強効果で得られる増強持続時間の方より長いときが存在した。
図8に、連続矩形波刺激の周波数に対する印加中増強効果の増強度の平均値を示す。なお、増強度は、被験者ごとのスライドバーの最大値、つまり最も味を強く知覚したときの移動量で割ることで標準化した。図8において、周波数軸(横軸)が対数目盛である。図中の*は、Kruskal-Wallis ANOVAとScheffeの多重比較法により認められた有意差(p < .05)を示しており、**は、有意傾向(p < .10)を示している。また、エラーバーは標準誤差を示している。図8から、1Hzの条件で最も強い印加中増強効果が感じられていることが認められた。また、高周波になると印加中増強効果の増強度が低くなった。
(2−4)考察
実験IIにより、連続矩形波刺激が刺激印加中に塩味を増強すること(印加中増強効果)が示された。また、塩味の増強時間が最も長いのは20Hz程度の刺激であり、最も増強の強度が高いのは1Hz程度の刺激であった。
この印加中増強効果が、摂食制限をサポートするインタフェースとして利用できるかどうかを考える。実験IIで得られた連続矩形波刺激が及ぼす塩味の増強効果の持続時間は、最大で約4000msであった。また、実験の結果得られた連続矩形波刺激の及ぼす印加中増強効果と単発矩形波刺激の及ぼす停止後増強効果との最大の平均持続時間を比較した結果を図9に示す。連続矩形波刺激の印加中増強効果と単発矩形波刺激の停止後増強効果との間には、ウィルコクソンの順位和検定により、有意差(p < .05)が認められ、連続矩形波刺激の印加中増強効果は、単発矩形波電流刺激の停止後増強効果に比して、有意に長い時間、塩味の増強効果を得られることが示された。
実験IIで示した連続矩形波刺激の及ぼす印加中増強効果の持続時間は、最大で4000ms程度であるが、刺激時間を長くすることで、より長時間にわたる継続的な味覚増強が可能となると考えられる。また、印加中増強効果の機序には、味呈示イオンの移動が関係していると考えられることから、味物質を変更した場合、その味呈示イオンの質量等に応じた周波数特性を利用することで、各味物質に応じた印加中増強効果を提供することが可能となる。さらに、味呈示イオンの周波数特性は、連続矩形波刺激のデューティ比を変えることでも変化することが考えられる。従って、例えば2つ以上の味質を含む試料から狙った味質のみを呈示するといった応用ができる可能性もある。
さらに、本発明は、印加中増強効果を実用的にするべく、以下の種々の態様を含めることができる。以上では、味呈示イオンとして塩味を例にして説明したが、本発明は、五味を呈示する電解質である各物質についても同様に適用可能である。例えば、五味の受容体としては、甘味受容体(例えば、糖、グリシン、D−アミノ酸等と反応)、うま味受容体(例えば、グルタミン酸ナトリウム、酸性L−アミノ酸等と反応)、苦味受容体(例えば、塩化マグネシウム、アルカドイド類、タンニン等と反応)、酸味受容体(例えば、クエン酸、酸類、水素イオン等と反応)や塩味受容体(金属塩(ナトリウムイオン等の陽イオン)と反応)が想定される。
また、本発明は、五味の他、渋味、刺激味、無味、脂身味、アルカリ味、金属味、電気味にも同様に適用可能である。例えば炭酸飲料などの化学的刺激の場合、三叉神経を直接刺激するものと考えられ、この味覚は、刺激電流を調整することで制御可能と考える。
試料30としては、ジュース等の飲料物、スープなどの流動食的(ゲル状)な料理が採用可能であり、また、咀嚼することで流動容易になるような食物も含むことができる。
本例では、刺激電流として、1.0mAの定電流で説明したが、1.0mAに限定されず、味呈示イオンの種類によってカウンター現象における、特にイオンの復帰速さが変わることから、味呈示イオンに対応させて電流レベルを調整することで、味毎の増強効果を調整することが可能となる。また、複数の味が混ざった状態で、特定の味のみを増強させる電流レベル、周波数を調整設定することで、調整対象の味以外の味を相対的に薄くし、所望の味に変えることができる。これによって摂食抑制が可能となり、また、嫌いな食物を別の味見に変えることで摂食を可能にすることができる。
連続的刺激電流波形は、矩形波の他、三角波(のこぎり波含む)、半波の正弦波等の、直流成分からなる凸状波形が採用可能である。矩形波は、幅を短くできることから、その分、より高い周波数が生成し易いという利点がある。また、波形の立ち上がりに傾斜を持たせることで触覚の感触を抑制することが可能となる。また、立ち下がり勾配を急峻にすることでカウンター現象の効果を高めることができると考えられる。刺激電流の波形は、各味に対する増強効果に影響すると考えられることから、好適な波形を採用することが望ましい。また、刺激電流の印加では、印加時間と休止期間とによって刺激の増強持続時間、増強度が異なることから、連続印加においてデューティを調整することで、増強効果を調整することが可能と考えられる。
一方、各味が混ざった飲食物に対して、特定の味覚に対して、増強効果が見られない刺激信号(波形、レベル、周波数、デューティ等)を利用することで、特定の味覚を相対的に抑制することができるという利点がある。
以上より、刺激信号発生部21を種々の電気信号が出力可能に構成して、選択した電気信号を出力可能にすることができる。種々の電気信号を出力可能とすることで、例えば、味覚が混ざった料理について、選択的にある味覚を増強し、あるいは逆に、ある味覚の増強継続時間を短かくしたり増強度を低くしたりすることができて、1つの料理を種々の味覚の料理に変えることができる。この場合、味覚タイプに応じた刺激信号の情報を予め登録する記憶部と、刺激信号発生部21に備えられる操作部と、この操作部を介して指定された味覚タイプ毎に刺激信号発生部21から刺激信号が出力されるよう構成することで、同一料理でありながら、容易に種々の味覚タイプの料理を味わうことが可能となる。
次に、電極を口腔内に代えて口腔外に設置することで、同様に味覚の調整、すなわち味覚の増強、又は抑制、提示が可能となる実施形態について、図10〜図13を用いて説明する。
前述したように、味覚の神経は舌のみではなく、口腔内壁や咽喉などにも存在する。そこで、下顎部から頸部の適所に電極、例えば陰極電極を設置し、この電極による電気刺激により、口腔から咽喉までの広範囲の神経を選択的に刺激することで、口腔内に電極を設置する場合と同じよう、食べ物の味を増強、抑制等するものである。また、喉を選択的に刺激することで喉の奥で味を感じさせる電気刺激も可能となる。この実施形態は、口腔内に実質的に電極を設置する前記した実施態様(図1、図2参照)と比較して、手軽であるという点と心理抵抗が低いという点で工学的価値が非常に高いものである。また、喉に味を感じさせる刺激は、「のどごし」などが重視される食体験の修飾手法として非常に独創性の高いものであり、同時に工学的な価値も高い。
前述したように、電気刺激による味覚の抑制や増強は、口腔内のイオン泳動によるものであることを示した。これをより深く考察すると、舌上の味細胞近傍での味を呈するイオンの濃度が十分量低ければ味の抑制が起こり、その抑制効果を急激に失うことで味覚の増強効果が起こると考えられる。味細胞近傍でのイオン濃度は、口腔内の食べ物(例えば水溶液)に対して、舌表面の電位が十分に低ければ、味を呈するイオンを舌近傍から遠ざけることが可能であると考えられる。すなわち、口腔外に電極を設置しても、舌表面の電位が口腔内の食べ物に比べて電位が高い状態を形成することができればよいということになる。また、喉の味細胞を電気刺激で発火させるためには、喉に十分な量の電流を印加することができ、かつ舌表面に向かって味を呈する電流が抑止されればよいと考えられる。
図10は、陰極電極の他の配置例を示す図である。図10では、陰極電極の配置位置として3箇所の態様を示している。第1の設置態様は、下顎13の顎先131に陰極電極251を装着し、頸部背側に陽極電極23を装着したものである。陰極電極251と陽極電極23との間で舌部分を主体にして刺激電流I1が流れることによって、口腔内の味覚提示、増強、抑制が可能となる。第2の設置態様は、下顎13の顎下132に陰極電極252を装着し、頸部背側に陽極電極23を装着したものである。陰極電極252と陽極電極23との間で舌の奥側〜喉の範囲を主体にして刺激電流I2が流れることによって、口腔内の味覚提示、増強、抑制が可能となる。第3の設置態様は、咽頭隆起14に陰極電極253を装着し、頸部背側に陽極電極23を装着したものである。陰極電極253と陽極電極23との間に刺激電流I3が流れることによって、嘔吐き(えずき)乃至嗚咽の誘発が可能となる。
次に、フォークを電極として兼用した場合、下顎に電極を設置した場合における電気刺激の実験IIIについて説明する。図11は、実験IIIの結果を示す。
(3)実験III
<連続矩形波刺激による味覚惹起の検証・比較>
(3−1)実験内容
実験IIIでは、周期的な連続矩形波刺激を用いたときに生じる味覚刺激の惹起及び強度を計測した。
(3−2)実験方法
フォークを電極として兼用したフォーク電極を陽極(A:フォーク陽極)、負極(B:フォーク陰極)として電気刺激を与えた場合、顎下132に電極を装着して陽極(C:顎下部陽極)、負極(D:顎下部陰極)として電気刺激を与えた場合における味覚惹起の確率と位置とを調査した。口腔内に1%の食塩水50mlを含み、5000ms、2.5mAの方形波(図1(c)参照)刺激を印加した。実験参加者は、20代の男性5名(被験者1〜5)であり、体に電気を流すことを実験前に十分に説明し、合意の上で実験を行った。
(3−3)実験結果
図11(a)に示すように、被験者1〜5の識別は必ずしも明確ではないものの、概ね、フォーク電極を陽極、陰極とした態様では、領域z1,z2に示すように、いずれも舌の先側で味覚惹起が認められた。また、顎下132に電極を装着した態様では、口腔内全域(舌中央〜喉の奥部)に亘って味覚惹起が認められた。また、図11(b)に示すように、フォーク電極の場合には、陰極(−)、陽極(+)双方において100%の味覚が惹起されたが、顎下132電極の場合も陰極(−)、陽極(+)に大きな差が見られなかった。全体として、いずれの場合にも、ほぼ味覚惹起が認められた。
次に、ストローを利用した場合、下顎13に電極を設置した場合における電気刺激の実験IVについて説明する。図12は、実験IVの結果を示す。
(4)実験IV
<連続矩形波刺激による味覚惹起強度の検証・比較>
(4−1)実験内容
実験IVでは、周期的な連続矩形波刺激を用いたときに生じる味覚刺激の惹起及び強度を調査した。
(4−2)実験方法
ストローを利用して口腔内に1%の食塩水を含み、ストロー側が陰極となるように、5000ms、2.5mAの方形波(図1(c)参照)陰極刺激を印加した時の、電流印加中の味強度(ストロー印加中)、電流印加直後の味強度(ストロー印加後)と、口腔内に1%の食塩水50mlを含み、下顎が陰極電極からの電気刺激を5000ms間印加した時に被験者が感じた電流印加中の味強度(顎印加中)、電流印加直後の味強度(顎印加後)とをそれぞれ記憶して貰い、それらの味強度と等価な強度の食塩水を調整させたときの調整した試料の濃度を測定した。実験参加者は、20代の男性5名であり、体に電気を流すことを実験前に十分に説明し、合意の上で実験を行った。
(4−3)実験結果
図12に示すように、元の1%濃度に対して、「ストロー印加中」では半分程度の味覚刺激に抑制され、「ストロー印加後」では、1.5倍程度の味覚刺激に増強されたことが認められた。また、「顎印加中」では元の濃度と同等の味覚刺激であり、「顎印加後」では1.3倍程度の味覚刺激に増強されたことが認められた。なお、図中の*は、Kruskal-Wallis ANOVAとScheffeの多重比較法により認められた有意差(p<.05)を示しており、エラーバーは標準誤差を示している。
次に、下顎への刺激における周波数に対する印加中増強効果の持続時間の関係についての実験Vを説明する。図13は、実験Vの結果を示す。
(5)実験V
<下顎への刺激における周波数に対する印加中増強効果の持続時間の検証・比較>
実験Vでは、周期的な連続矩形波刺激を用いたときに生じる味覚刺激の惹起及び強度を調査した。実験内容及び実験方法は、実験IIと同様である。但し、陰極電極25は、(図10の陰極電極252参照)顎下132に装着され、刺激電流は電流量2.5mAとした。
図13は、下顎13(顎下132)への刺激における周波数に対する印加中増強効果の持続時間の関係を示す図である。図13から、連続矩形波刺激により印加中増強効果の生起が認められた。特に、周波数が30Hz以下では、全体的に長い増強持続時間(3,000ms)が得られている。全体的な特性は図6と同様な傾向を示している。従って、実験IIの場合と同様に、下顎13への陰極電気刺激により得られる印加中増強効果も、摂食制限をサポートするインタフェースとして利用できるといえる。
これらのことから、塩分等を摂りすぎないように、味覚を増強するといった福祉工学的な利用方法が期待される。また、薄い味付けの食事でも濃い味のように感じさせることで少量でも満足させ得るため、ダイエットなどにも有効である。例えば、カロリーの高い甘物を摂りすぎないようにする方法として有効となる。
なお、陰極電極は、顎先131から咽頭隆起14付近までに亘る長尺型でもよい。これによれば、口腔から咽頭近くまでの広範囲での電気刺激が可能となる。逆に、陰極電極及び陽極電極の少なくとも一方の形状を工夫することで、喉の奥部を含めた口腔内のどの箇所に主に電気刺激を与えるかを調整することが可能となる。また、陰極電極は、下顎の他、さらに頬の部位(以上をまとめて、顎周辺という)に装着する態様でもよい。
さらに、従来は提示できなかった、喉の奥への味覚提示が可能であり、咽頭隆起への電気刺激によって嘔吐き乃至嗚咽を誘発することもできる。嘔吐き等を引き起こす電気刺激は、誤嚥時などの対処方法として利用可能であるほか、食事体験に嘔吐きというネガティブな体験を組み込むことで,食べすぎの防止などの福祉工学的な観点から役立つものであると考えられる。この場合、電気味の有無は問題とならないので、咽頭隆起には陰極電極、陽極電極のいずれ側を設置してもよい。
20 味覚電気刺激装置
21 刺激信号発生部
23 陽極電極(陽極)
25 陰極電極(陰極)
251,252,253 陰極電極(陰極)

Claims (10)

  1. 人体の後頭部及び頸部背側の一方の部位に装着される陽極と、
    口腔及び顎周辺の一方の部位に設置される陰極と、
    前記陽極と陰極との間に電気信号を印加する電気信号発生部とを備え、
    前記電気信号発生部は、凸状波形を有する信号を所定の周波数で出力することを特徴とする味覚電気刺激装置。
  2. 前記陰極は、舌に装着される請求項1に記載の味覚電気刺激装置。
  3. 前記陰極は、下顎に装着される請求項1に記載の味覚電気刺激装置。
  4. 前記陰極は、顎下に装着される請求項3に記載の味覚電気刺激装置。
  5. 前記陽極は、皮膚に接着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の味覚電気刺激装置。
  6. 前記凸状波形は、矩形波である請求項1〜5のいずれかに記載の味覚電気刺激装置。
  7. 前記凸状波形は、三角波である請求項1〜6のいずれかに記載の味覚電気刺激装置。
  8. 前記電気信号発生部は、前記周波数の調整を可能とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の味覚電気刺激装置。
  9. 前記電気信号発生部は、前記凸状波形の振幅が調整可能である請求項1〜7のいずれかに記載の味覚電気刺激装置。
  10. 人体の後頭部及び頸部背側の一方の部位に陽極を装着し、口腔及び顎周辺の一方の部位に陰極を設置した状態で、電気信号発生部から前記陽極と陰極との間に、凸状波形を有する電気信号を所定の周波数で印加する味覚電気刺激方法。
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