JP2018037393A - Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法 - Google Patents

Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法 Download PDF

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毅彦 杉原
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大誠 井上
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Abstract

【課題】Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の熱安定性を簡易かつ正確に評価する方法を得る。【解決手段】少なくともLi、Ni、及びCoを含むリチウム複合酸化物からなる正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法で、正極活物質粒子粉末を含む正極と負極と電解質を含む電解液とで構成される非水電解質二次電池を所定電圧まで充電した後、非水電解質二次電池から分取した正極と電解液とを用いてDSC測定を行い、加熱温度と熱流との関係を示すDSC曲線αを求める第1ステップと、DSC曲線αにある複数の変曲点を検出後、複数の変曲点に基づき、ガウス関数とローレンツ関数との組み合わせによる畳み込みを行ってDSC曲線αの各ピークを分離し、複数のカーブβ1〜βN(Nは変曲点数、β1〜βNは順に最低温側〜最高温側の変曲点由来のピークの分離によるカーブ)を求める第2ステップとを少なくとも備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、示差走査熱量測定による、Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の簡易な熱安定性評価方法に関する。
AV機器やパソコン等の電子機器の駆動用電源として、小型、軽量で高エネルギー密度を有し、充放電電圧が高く、充放電容量も大きいといった長所を有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
リチウムイオン二次電池には、通常、主に可燃性の有機溶媒が電解液として用いられており、このようなリチウムイオン二次電池を高温状態に放置すると、電池内部で化学反応が起こり、発熱する恐れがある。また、内部短絡、過充電等によって異常な発熱を生じる場合もあり、安全性に優れたリチウムイオン二次電池の開発が進められている。
リチウムイオン二次電池の安全性を高めるための手段の1つとして、正極活物質粒子粉末の熱安定性の向上が挙げられる。従来、正極活物質粒子粉末の熱安定性を評価する際には、示差走査熱量(以下、DSCともいう)測定が行われている。具体的には、正極活物質粒子粉末を正極に用いた電池を所定の電圧まで充電した後、電池から分取した正極のDSC測定を行い、得られたDSC曲線から、正極活物質粒子粉末の発熱ピーク強度や総発熱量を求め、その熱安定性を評価している(特許文献1、2、及び3)。
一方、リチウムイオン二次電池の直接的な安全性試験として、通常、過充電試験、加熱試験、釘刺し試験等が行われている。例えば過充電試験では、具体的には、リチウムイオン二次電池を所定の電圧まで充電した後、満充電状態に調整し、さらに充電を行って過充電状態とする。そして、当初の電池の厚みと過充電状態の電池の厚みとの差(厚みの増加量)からガス発生量を求め、その安全性を評価している(特許文献4)。
国際公開番号WO2009/060603号公報 特開2010−097835号公報 特開2001−291518号公報 特開2014−143108号公報
正極活物質としては、近年、Ni、Co及びMnを含む活物質が汎用されており、Niの含有率が高いほど、正極活物質の熱安定性が低下する傾向であることが知られている。そのような中で、Ni含有率が高い材料(電池容量が大きい材料)が求められるようになり、そのためNi含有率が高い材料特有の熱安定性が低下する傾向が見られるようになってきた。現在、熱安定性を向上させることが重要となってきているが、前記のごとくDSC曲線から正極活物質の総発熱量を求めただけでは、発熱が起こるに至るメカニズムが分からない。そのため、リチウムイオン二次電池の熱暴走が起こってきた。よって、DSC曲線から得た総発熱量を調査するといった従来の方法のみでは、正極活物質の熱安定性の評価方法として実用上不充分となった。
また、DSC曲線から正極活物質の総発熱量を求めるだけの従来の方法で正極活物質の熱安定性を評価した結果は、例えば前記のごとき過充電試験によってリチウムイオン二次電池の安全性を評価した結果との整合性が低い。よって、やはりこのような従来の評価方法は、実用上満足し得るものではない。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の熱安定性を簡易かつ正確に評価する方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明では主として、Niを含む正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法を、充電後の非水電解質二次電池から分取した正極の示差走査熱量曲線についてピークの分離を行い、ピークごとの複数の新たなカーブを求めるステップにより構成した。
具体的に、本発明に係る熱安定性評価方法は、少なくともLi、Ni、及びCoを含むリチウム複合酸化物からなる正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法であり、
前記正極活物質粒子粉末を含む正極と、負極と、電解質を含む電解液とから構成される非水電解質二次電池を所定の電圧まで充電した後、該非水電解質二次電池から分取した正極と、電解液とを用いて示差走査熱量測定を行い、加熱温度と熱流との関係を示す示差走査熱量曲線αを求める第1ステップと、
前記示差走査熱量曲線αに存在する複数の変曲点を検出した後、該複数の変曲点に基づき、ガウス関数とローレンツ関数との組み合わせによる畳み込みを行って該示差走査熱量曲線αの各ピークを分離し、複数のカーブβ、β、β……、及びβ(ただし、Nは変曲点の数であり、β、β、β……、及びβは、順に、最低温側の変曲点由来のピークの分離によるカーブ、低温側から2番目の変曲点由来のピークの分離によるカーブ、低温側から3番目の変曲点由来のピークの分離によるカーブ……、及び最高温側の変曲点由来のピークの分離によるカーブを示す)を求める第2ステップと
を少なくとも備えることを特徴とする。
なお、本発明に係る熱安定性評価方法において、複数のカーブβ、β、β……、及びβを、総称してカーブβともいう。
本発明に係る熱安定性評価方法では、好適には、前記複数の変曲点の検出を、前記示差走査熱量曲線αの微分曲線を求めて行う。
本発明に係る熱安定性評価方法では、好適には、前記リチウム複合酸化物のNi含有率が異なる2種以上の正極活物質粒子粉末について、各々ピークを分離して前記複数のカーブβ、β、β……、及びβを求めた後、
各正極活物質粒子粉末の前記リチウム複合酸化物のNi含有率と、
カーブβ、β、β……、及びβのうち、190℃〜250℃の温度範囲に存在するピークに基づいて、前記示差走査熱量曲線αのピークを分離して求めたカーブβ190−250℃における発熱量HV190−250℃又はピークトップの温度T190−250℃との関係
から、リチウム複合酸化物のNi含有率の変化に基づく発熱量HV190−250℃の変化又は温度T190−250℃の変化を調べる。
本発明に係る熱安定性評価方法では、好適には、前記リチウム複合酸化物のNi含有率が異なる2種以上の正極活物質粒子粉末について、各々ピークを分離して前記複数のカーブβ、β、β……、及びβを求めた後、
各正極活物質粒子粉末の前記リチウム複合酸化物のNi含有率と、該各正極活物質粒子粉末の示差走査熱量曲線αから求めた総発熱量HVとの関係から、リチウム複合酸化物のNi含有率の変化に基づく総発熱量HVの変化を調べる。
このような構成を有する本発明に係る熱安定性評価方法により、Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の熱安定性を、簡易かつ正確に評価することができる。本発明に係る評価方法では、正極活物質粒子粉末の材料(リチウム複合酸化物の組成やその製造方法)の観点から、正極活物質粒子粉末の熱安定性を議論することができる。また、本発明に係る評価方法で評価した熱安定性は、非水電解質二次電池の安全性を直接的に評価した結果との整合性に優れている。
本発明に係る熱安定性評価方法により、Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の熱安定性を、簡易かつ正確に評価することができる。
実施例2における正極活物質粒子粉末の、温度による相転移を示すグラフである(TP−XRDを用いた)。 実施例3における正極活物質粒子粉末から求めたDSC曲線α及びDSC曲線αの各ピークを分離して求めたカーブβである。 実施例1〜6における正極活物質粒子粉末に基づく、リチウム複合酸化物のNi含有率と、DSC曲線αのピークを分離して求めたカーブβ190−250℃における発熱量HV190−250℃との関係を示すグラフである。 同Ni含有率である[Li1.01(Ni0.80Co0.15Al0.05)O]において、NiCo前駆体合成後にAlを乾式混合により添加(乾式添加)したとき(実施例3)と、前駆体合成時にNi及びCoと共にAlを添加(湿式添加)したとき(実施例4)とで、発熱量HV190−250℃の大きさを比較したグラフである。 実施例1〜6における正極活物質粒子粉末に基づく、リチウム複合酸化物のNi含有率と、DSC曲線αのピークを分離して求めたカーブβ190−250℃におけるピークトップの温度T190−250℃との関係を示すグラフである。 実施例1〜6における正極活物質粒子粉末に基づく、リチウム複合酸化物のNi含有率と、総発熱量HVとの関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
<190℃〜250℃の温度範囲におけるカーブβ190−250℃の熱流や発熱量について>
本発明者らは、充電した非水電解質二次電池から取り出した正極活物質電極を、高温粉末X線回折装置を用いた分析(TP−XRD)や加熱発生ガス分析(TPD−MS)に供して、充電状態の正極活物質の温度安定性について評価した(後述のとおり、図1にTP−XRDによる結果を示す)。
その結果、Niを50%以上含有する正極活物質を充電状態で加熱すると、以下の式(1)、式(2)で示されるように、特定の温度範囲で、結晶状態が、初期の層状岩塩構造(R−3m)からスピネル構造(Fd−3m)、岩塩構造(Fm3m)に相転移することが分かった。各相転移は、式(1)、式(2)で明らかなように、酸素ガスを発生させながら進行する。
式(1):190℃〜250℃
Li1−x−δNiO(層状岩塩構造 R−3m)
→{(1−x−δ)/(1−δ)}Li1−δNiO(層状岩塩構造1 R−3m)
+{x/3(1−δ)}Ni(スピネル構造 Fd−3m)
+{x/3(1−δ)}O
式(2):250℃〜310℃
・{(1−x−δ)/(1−δ)}Li1−δNiO(層状岩塩構造1 R−3m)
→(1−x−δ)LiNiO(層状岩塩構造2 R−3m)
+{δ(1−x−δ)/(1−δ)}NiO(岩塩構造1 Fm3m)
+{δ(1−x−δ)/2(1−δ)}O
・{x/3(1−δ)}Ni(スピネル構造 Fd−3m)
→{x/3(1−δ)}NiO(岩塩構造2 Fm3m)
+{x/6(1−δ)}O
なお、本来はR−3mにおける「−」は3の上に付記されるものであるが、便宜上本記載のとおりとする。同様に、Fd−3mについても「−」は3の上に付記されるものであるが、便宜上本記載のとおりとする。
本発明者らは、この酸素ガスの発生が充電された非水電解質二次電池の熱安定性に重大な影響を及ぼすと考えており、特に、温度範囲190℃〜250℃付近で起こる層状岩塩構造からスピネル構造に相転移する反応が、トリガー反応として重要であると考えている。
充電状態の非水電解質二次電池が過熱されて温度が上昇すると、まず式(1)の反応で発生した酸素ガスにより、主として非水電解質二次電池の中の有機電解液が酸化(燃焼を含む)する。この反応は発熱反応であるため、さらに該非水電解質二次電池の温度が上昇し、式(2)のように層状岩塩構造及びスピネル構造から岩塩構造に相転移して、この反応で発生する酸素ガスでさらに電解液が酸化されて発熱し、温度が上昇して制御不能な熱暴走に至る。
温度の上昇は、非水電解質二次電池で単位時間あたりに発生する熱量と、該非水電解質二次電池から単位時間あたりに散逸する熱量との差に比例する。よって、トリガー反応である式(1)で発熱する熱量及び熱流が少なければ、温度上昇が抑制され、制御不能な熱暴走に至る可能性を有する式(2)の反応に到達せず、より安全であると考えられる。
したがって、充電した非水電解質二次電池から分取した正極活物質を電解液と共にDSC測定に供し、それから式(1)に相当する発熱を正確に評価することが最も重要であると思慮される。
本発明では、以上のように非水電解質二次電池が熱暴走や発火を起こす現象について、DSC測定の小さいセルを用いて判別することができる。よって本発明は、正極活物質の評価方法として有用である。
<同Ni含有率で製造方法が異なる正極活物質粒子粉末と発熱量との関係について>
本発明に係る熱安定性評価方法では、前記のとおり、リチウム複合酸化物のNi含有率が異なる2種以上の正極活物質粒子粉末について、各々ピークを分離して複数のカーブβ、β、β……、及びβを求めた後、各正極活物質粒子粉末のリチウム複合酸化物のNi含有率と、前記相転移を引き起こす190℃〜250℃の温度範囲にピークトップを有するカーブβ190−250℃における発熱量HV190−250℃との関係について調査することで、Ni含有率が同じで製造方法が異なる正極活物質粒子粉末の発熱量の違いを観測することができる。
例えば、組成式:Li(NiCoAl)Oで表される基本組成を有する正極活物質粒子粉末を得る際に、前駆体合成時にNi及びCoと共にAlを添加した場合(湿式添加)と、NiCo前駆体合成後にAlを乾式混合により添加した場合(乾式添加)とでは、層状岩塩構造の相転移における発熱量HV190−250℃が異なることが分かる(後述のとおり、図4に製造方法の違いによる発熱量HV190−250℃の違いを示す)。本発明では、湿式添加の方が発熱量は小さいことから、乾式添加よりも安全性に優れることが示唆される。
つまり、本発明により、同Ni含有率である正極活物質粒子粉末がどの程度改善されたかについて論じることができ、材料開発への議論を高めることができる。
[正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法]
本発明の一実施形態に係る正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法について説明する。該正極活物質粒子粉末は、非水電解質二次電池の正極に用いられる。
本実施形態に係る熱安定性評価方法の評価対象となるのは、少なくともLi、Ni、及びCoを含むリチウム複合酸化物からなる正極活物質粒子粉末である。このような正極活物質粒子粉末の熱安定性を評価する方法は、少なくとも、以下の第1ステップ及び第2ステップを備える。
<第1ステップ>
第1ステップでは、前記正極活物質粒子粉末を含む正極と、負極と、電解質を含む電解液とから構成される非水電解質二次電池を所定の電圧まで充電した後、該非水電解質二次電池から分取した正極と電解液とを用いてDSC測定を行い、加熱温度と熱流との関係を示すDSC曲線αを求める。
(正極活物質粒子粉末)
本実施形態に係る熱安定性評価方法に用いられる正極活物質粒子粉末は、少なくともLi、Ni、及びCoを含むリチウム複合酸化物から得られるものであればよい。例えば、組成式:Li(NiCo)Oで表される基本組成を有するリチウム複合酸化物から得られる正極活物質粒子粉末が好適に利用され得る。
前記組成式中、Mは、例えばMn、Al、Mg、P、Ca、Ti、Y、Sn、Bi、Ce、Zr、La、Mo、Sc、W、及びNb等から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましく、Mn及び/又はAl、並びに、任意にMgも存在することが、非水電解質二次電池の正極用の活物質としてより好ましい。
前記組成式中、aは、リチウム複合酸化物において(Ni+Co+M)1モルに対するLiの量(モル)である。aの範囲は、0.96≦a≦1.15であることが好ましい。
前記組成式中、pは、前記(Ni+Co+M)におけるNiの量(モル)である。pの範囲は、0.30<p≦0.97であることが好ましく、実用上、0.50≦p≦0.97であることがより好ましい。前記及び後述のとおり、正極活物質粒子粉末において、Niの含有率と熱安定性との間には密接な関係があると考えられ、Ni起因の分解反応での発熱量を見積ることが、熱安定性のより正確な評価をもたらす。
前記組成式中、qは、前記(Ni+Co+M)におけるCoの量(モル)である。qの範囲は、0<q≦0.50であることが好ましい。
前記組成式中、rは、前記(Ni+Co+M)におけるNi及びCo以外の金属Mの量(モル)である。金属Mの量は、金属Mの種類とNi及びCoとの組合せを考慮して適宜決定すればよい。
例えば、MがMnを含む場合、rの範囲は、0<r≦0.50であることが好ましく、MがAlやMgを含む場合、rの範囲は、0<r≦0.30であることが好ましい。
正極活物質粒子粉末の製造方法には特に限定がなく、例えば、ニッケル化合物と、コバルト化合物と、金属Mの化合物とを用いて複合化合物前駆体を調製した後、該複合化合物前駆体にリチウム化合物を混合して得た混合物を酸化性雰囲気中で焼成する、一般的な方法を採用することができる。
(非水電解質二次電池)
非水電解質二次電池は、例えば前記のごとき正極活物質粒子粉末を含む正極と、負極活物質を含む負極と、電解質を含む電解液とから構成される。
前記正極は、特に限定がないが、通常、正極活物質粒子粉末、導電剤、及び結着剤を混練して得られる。該導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンブラック、及び黒鉛等が挙げられる。該結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
前記負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/スズ合金、ケイ素、ケイ素/カーボン複合体、及びグラファイト等が挙げられる。
前記電解質としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)以外に、過塩素酸リチウム(LiClO)及び四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)等のリチウム塩の少なくとも1種類が挙げられ、これらを溶媒に溶解して電解液とすることができる。
前記電解液の溶媒としては、例えば、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との組み合わせ以外に、炭酸プロピレン(PC)、及び炭酸ジメチル(DMC)等を基本構造としたカーボネート類や、ジメトキシエタン(DME)等のエーテル類の少なくとも1種類を含む有機溶媒を用いることができる。
(DSC測定及びDSC曲線α)
DSC測定は、温度変化に伴う試料と基準物質との熱量変化を温度の関数として測定するものであり、非水電解質二次電池を所定の電圧まで充電した後、該非水電解質二次電池から分取した正極と電解液とを用いて行う。
非水電解質二次電池に対して、まず、例えば25℃前後の環境下で、4V程度〜4.5V程度まで初期充電を行った後、グローブボックスのような大気非暴露雰囲気(例えばAr雰囲気)内で充電状態の非水電解質二次電池を解体して正極を分取する。次いで、分取した正極をDEC、DMC等の有機溶媒にて10分間程度洗浄し、真空下で乾燥した後、電解液とアルミニウム集電体から剥ぎ取って所定量秤量した正極とを、耐圧密閉容器に封入し、かしめる。これを大気中に取り出し、DSC測定装置にてDSC測定を行う。
DSC測定条件は、特に限定されるものではないが、例えば、到達温度を350℃程度〜460℃程度に、昇温速度を5℃/min程度〜10℃/min程度に設定し、大気中で、もしくは場合に応じてN中又はAr中で測定を行うことが好ましい。
DSC測定の際には、正極活物質粒子粉末が熱分解・相転移し、発生した酸素が電解液を酸化させることで燃焼し、発熱ピークとなって現れる。その発熱ピークを、加熱温度の上昇に対して連続して変化させ、DSC測定におけるDSC曲線αを得ることができる。
例えば前記のごとき条件にてDSC測定を行って求めたDSC曲線αは、前記発熱ピークにより、上に凸の形状を有する(図2参照)。
<第2ステップ>
第2ステップでは、前記DSC曲線αに存在する複数の変曲点を検出した後、該複数の変曲点に基づき、ガウス関数とローレンツ関数との組み合わせによる畳み込みを行って該DSC曲線αの各ピークを分離し、複数のカーブβ、β、β……、及びβ(ただし、Nは変曲点の数であり、β、β、β……、及びβは、順に、最低温側の変曲点由来のピークの分離によるカーブ、低温側から2番目の変曲点由来のピークの分離によるカーブ、低温側から3番目の変曲点由来のピークの分離によるカーブ……、及び最高温側の変曲点由来のピークの分離によるカーブを示す。すなわち、総称してカーブβである)を求める。
ガウス関数とローレンツ関数との組み合わせによる畳み込みを行ってピークを分離して得た、低温側の変曲点に基づくカーブβ〜カーブβには、前記したように、正極活物質粒子粉末由来の相転移による酸素放出を伴う、DSCにおける発熱のトリガーとなる反応に相当するカーブが存在する。そのため、例えば、Ni起因の相転移による分解反応の度合を比較及び評価するために、DSC曲線αの各ピークを分離する意義がある。
なお、DSC曲線αの各ピークを分離する際に使用するガウス関数とローレンツ関数との組み合わせによる畳み込みにおいて、計算値と実測値との合わせ込みは、残差二乗和(=(実測値−計算値))が最小になるように行えばよい。
(2種以上の正極活物質粒子粉末のDSC曲線α及びカーブβ)
前記のとおり、本実施形態に係る熱安定性評価方法では、ある1種の正極活物質粒子粉末(ある種の組成を有する、又はある種の製造方法で得られたリチウム複合酸化物からなる正極活物質粒子粉末)について、前記のごとき第1ステップ及び第2ステップに供して、その熱安定性を簡易かつ正確に評価することが可能である。これに加えて、本実施形態に係る熱安定性評価方法では、2種以上の正極活物質粒子粉末について、各々同様に、第1ステップに供してDSC曲線αを求め、第2ステップに供してDSC曲線αの各ピークを分離してカーブβを求めて、正極活物質粒子粉末を構成するリチウム複合酸化物の組成及び製造方法と、DSC曲線αの各ピークを分離して求めたカーブβの特性(カーブの発熱量、ピークトップの温度等)との関係を調べることが可能である。そして、リチウム複合酸化物の組成や製造方法が変化することにより、DSC曲線αの各ピークを分離して求めたカーブβの特性がどのように変化するかを詳細に調べることができる。
前記のとおり、Niの含有率が高い正極活物質粒子粉末ほど、熱安定性が低下する(総発熱量HVが大きくなる)傾向があることが知られている。しかしながら、該正極活物質粒子粉末でNiの含有率が同じであったとしても、従来は、正極活物質粒子粉末を改善することによって総発熱量HVに基づいて熱安定性を見分けることが困難であった。
これに対して、本実施形態に係る熱安定性評価方法では、正極活物質粒子粉末について、DSC曲線αだけでなく、該DSC曲線αの各ピークを分離してカーブβも求めている。しかも、リチウム複合酸化物のNi含有率が異なる2種以上の正極活物質粒子粉末について、各々DSC曲線αだけでなく、190℃〜250℃の温度範囲に存在するピークに基づいて、DSC曲線αのピークを分離して190℃〜250℃にピークのあるカーブβ190−250℃も求め、リチウム複合酸化物のNi含有率の変化に基づく、該カーブβ190−250℃における発熱量HV190−250℃の変化又はピークトップの温度T190−250℃の変化を調べることにより、リチウム複合酸化物中の層状化合物における相転移による電解液の酸化反応での発熱量の見積り(発熱のトリガーとなる反応の定量化)が可能である。その結果、Ni含有率と熱安定性との関係性を充分に把握することができ、正極活物質粒子粉末の熱安定性と該正極活物質粒子粉末の改善についての議論を高めることができる。
[作用]
本発明において重要な点は、本発明に係る熱安定性評価方法を採用することにより、Niを含む非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の熱安定性を、簡易かつ正確に評価することができるということである。
すなわち、本発明に係る熱安定性評価方法は、正極活物質粒子粉末についてDSC曲線αを求めるだけでなく、DSC曲線αの複数の変曲点に基づいて各ピークの分離を行い、複数のカーブβも求めることを特徴とする。そして、このように、DSC曲線αだけでなく、別途複数のカーブβを得ることで、種々のNi含有率であるリチウム複合酸化物の関係性を調べることができ、材料の観点から、正極活物質粒子粉末の熱安定性を議論することができる。
以下に、本発明の代表的な実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(正極活物質粒子粉末の組成)
正極活物質粒子粉末の組成は、1.0gの試料を25mlの20%塩酸溶液中で加熱溶解させ、冷却後100mlメスフラスコに移し、純水を入れて調整液を作製した。測定にはICAP[Optima8300、(株)パーキンエルマー製]を用い、各元素を定量して決定した。
(コインセルの作製)
DSC測定に供するコインセルは、以下のように作製した。まず、後に説明する各参考例で得られた正極活物質粒子粉末(リチウム複合酸化物粒子粉末)90重量%と、導電剤としてアセチレンブラック3重量%及びグラファイト3重量%と、結着剤としてN−メチルピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン4重量%とを混合した後、Al金属箔に塗布し、120℃にて乾燥してシートを作製した。このシートを14mmΦに打ち抜いた後、1.5t/cmで圧着したものを正極とした。負極は、16mmΦに打ち抜いた厚さ500μmの金属リチウムとした。電解液は、1mol/LのLiPFを溶解したECとDMCとを、EC:DMC=1:2(体積比)で混合した溶液とした。これら正極、負極、及び電解液を用いて、2032型コインセルを作製した。
<参考例1>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、及びアルミン酸ナトリウムを、各元素の割合(Ni/Co/Mn/Al)がモル比で8.7/1.1/0.1/0.1となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、及びアルミン酸ナトリウムを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
次に、水酸化リチウム・一水和物と、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co、Mn及びAlとの割合[Li/(Ni+Co+Mn+Al)]が1.02となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸素雰囲気において、740℃で10時間保持して焼成し、[Li1.02(Ni0.87Co0.11Mn0.01Al0.01)O]である、正極活物質粒子粉末としてのリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
<参考例2>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを、各元素の割合(Ni/Co/Mn)がモル比で8.0/1.0/1.0となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
次に、水酸化リチウム・一水和物と、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びMnとの割合[Li/(Ni+Co+Mn)]が1.01となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸素雰囲気において、790℃で10時間保持して焼成し、[Li1.01(Ni0.80Co0.10Mn0.10)O]である、正極活物質粒子粉末としてのリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
<参考例3>
羽根型攪拌機を具備した反応器内に、pHが12.0の水酸化ナトリウム水溶液を入れ、これにアンモニア濃度が0.8mol/Lのアンモニア水溶液を滴下した。次いで、硫酸ニッケルと硫酸コバルトとの混合水溶液を、各元素の割合(Ni/Co)がモル比で8.0/1.5となるように、連続的に反応器内に供給した。この間、反応溶液のpHが12.0、アンモニア濃度が0.8mol/Lとなるように、水酸化ナトリウム水溶液及びアンモニア水溶液を連続的に供給して、複合遷移金属の沈殿物を含む懸濁液を得た。
反応後、取り出した懸濁液を水洗・乾燥し、複合化合物前駆体を得た。次いで、水酸化リチウム・一水和物と、水酸化アルミニウムと、該ニッケル・コバルト複合化合物粒子とを、各元素の割合(Ni/Co/Al)がモル比で8.0/1.5/0.5となるように、また、Liと、Ni、Co及びAlとの割合[Li/(Ni+Co+Al)]が1.01となるようにして混合した。これを、酸素雰囲気において、740℃で10時間保持して焼成し、[Li1.01(Ni0.80Co0.15Al0.05)O]である、正極活物質粒子粉末としてのリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
<参考例4>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及びアルミン酸ナトリウムを、各元素の割合(Ni/Co/Al)がモル比で8.0/1.5/0.5となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及びアルミン酸ナトリウムを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
次に、水酸化リチウム・一水和物と、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びMnとの割合[Li/(Ni+Co+Al)]が1.01となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸素雰囲気において、750℃で10時間保持して焼成し、[Li1.01(Ni0.80Co0.15Al0.05)O]である、正極活物質粒子粉末としてのリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
<参考例5>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを、各元素の割合(Ni/Co/Mn)がモル比で7.0/2.0/1.0となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
次に、水酸化リチウム・一水和物と、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びMnとの割合[Li/(Ni+Co+Mn)]が1.02となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸素雰囲気において、850℃で10時間保持して焼成し、[Li1.02(Ni0.70Co0.20Mn0.10)O]である、正極活物質粒子粉末としてのリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
<参考例6>
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを、各元素の割合(Ni/Co/Mn)がモル比で6.0/2.0/2.0となるように秤量し、これらを水に溶解させて水溶液を得た。この水溶液に沈殿剤として苛性ソーダ溶液とアンモニア溶液との混合物を添加して撹拌混合し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンを湿式で共沈反応させた。オーバーフローさせることにより反応物を得た後、水洗・乾燥して、複合化合物前駆体を得た。
次に、水酸化リチウム・一水和物と、得られた複合化合物前駆体とを、Liと、Ni、Co及びMnとの割合[Li/(Ni+Co+Mn)]が1.02となるようにして、乳鉢にて1時間混合し、均一な混合物を得た。得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、酸素雰囲気において、880℃で10時間保持して焼成し、[Li1.02(Ni0.60Co0.20Mn0.20)O]である、正極活物質粒子粉末としてのリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
<実施例1〜6>
各々参考例1〜6で得られた正極活物質粒子粉末を用い、前記方法に従ってコインセルを製造した。このコインセルに対して、25℃の環境下で、4.3Vまで0.1Cレートの充電密度で初期充電(cc−cv)を行った後、グローブボックス内で充電状態のコインセルを解体して正極を分取した。分取した正極をDMCにて10分間洗浄し、真空下で乾燥した。
次いで、電解液(1mol/LのLiPFを溶解したECとDECとを、EC:DEC=1:1(体積比)で混合した溶液)と、アルミニウム集電体から剥ぎ取って所定量秤量した正極とを、耐圧密閉容器に封入し、かしめた。これを大気中に取り出し、DSC測定装置(DSC60A、(株)島津製作所製)にて以下の条件でDSC測定を行い、DSC曲線αを求めた。
(DSC測定条件)
リファレンス:酸化アルミニウムを封入し、かしめた耐圧密閉容器
到達温度:400℃
昇温速度:10℃/min
測定環境:大気中
次に、得られたDSC曲線αの微分曲線を求め、複数の変曲点を検出した。検出した複数の変曲点に基づき、DSC曲線αの各ピークを分離し、ガウス関数とローレンツ関数との組み合わせによる畳み込みを行い、カーブβを求めた。なお、DSC曲線αの各ピークを分離する際に、計算値と実測値との合わせ込みは、残差二乗和(=(実測値−計算値))が最小になるように行った。図1〜6に、実施例1〜6に基づいて得られた結果を示す。
図1は、実施例2における正極活物質粒子粉末を、高温粉末X線回折装置を用いた分析(TP−XRD)に供して得られた、正極活物質粒子粉末の温度による相転移を示すグラフである。各用語は各々以下の構造を示す。
Layer :層状岩塩構造
Spinel :スピネル構造
Rock salt:岩塩構造
図2は、実施例3における正極活物質粒子粉末から求めたDSC曲線α及び各ピークを分離して求めたカーブβである。各線の種類は以下のとおりである。
実線 :DSC曲線α
点線 :ピークを分離して求めたカーブβ
短破線 :ピークを分離して求めたカーブβ
一点鎖線:ピークを分離して求めたカーブβ
二点鎖線:ピークを分離して求めたカーブβ
図3は、実施例1〜6における正極活物質粒子粉末に基づく、リチウム複合酸化物のNi含有率と、ピークを分離して求めたカーブβ190−250℃における発熱量HV190−250℃との関係を示すグラフである。図3中、「Al乾式添加」とあるのは、実施例3のデータであり、「Al湿式添加」とあるのは、実施例4のデータである。
図4は、同Ni含有率である[Li1.01(Ni0.80Co0.15Al0.05)O]において、NiCo前駆体合成後にAlを乾式混合により添加(乾式添加)したとき(実施例3)と、前駆体合成時にNi及びCoと共にAlを添加(湿式添加)したとき(実施例4)とで、発熱量HV190−250℃の大きさを比較したグラフである。
図5は、実施例1〜6における正極活物質粒子粉末に基づく、リチウム複合酸化物のNi含有率と、ピークを分離して求めたカーブβ190−250℃におけるピークトップの温度T190−250℃との関係を示すグラフである。
図6は、実施例1〜6における正極活物質粒子粉末に基づく、リチウム複合酸化物のNi含有率と、総発熱量HVとの関係を示すグラフである。
また、以下の表1に、実施例1〜6におけるリチウム複合酸化物の組成、Ni含有率、発熱量HV190−250℃、温度T190−250℃、及び総発熱量HVを纏めて示す。
図2及び表1に示すように、DSC曲線αを求めるだけではなく、検出した複数の変曲点に基づいてDSC曲線αの各ピークを分離し、複数のカーブβを求めることにより、各ピークトップの温度、発熱量等が明らかになる。
さらに、リチウム複合酸化物のNi含有率が正極活物質粒子粉末の熱安定性に影響を与えることから、特に、190℃〜250℃の温度範囲に存在するピークに基づいてDSC曲線αのピークを分離して求めたカーブβ190−250℃に着目した。これにより、図3〜5に示すように、リチウム複合酸化物のNi含有率と、190℃〜250℃の範囲にある発熱量HV190−250℃やピークトップの温度T190−250℃との関係が明らかになる。さらには、図6に示すように、Ni含有率と総発熱量HVとの関係も明らかになる。
リチウム複合酸化物のNi含有率が増大するにつれて、ピークトップの温度T190−250℃は二次曲線的に小さくなっており、Ni含有率が大きくなることで発熱が示唆される。加えて、発熱量HV190−250℃は直線的に増大する傾向があり、トリガー反応はNi含有量に比例することが分かる。また、Ni含有率が増大するにつれて、総発熱量HVも増大していることが分かる。ただし、図6のグラフからは、同Ni含有率の正極活物質粒子粉末の安定性の差を精度よく観察することができないことがわかっているため、本発明に係る方法を採用することが重要である。よって、リチウム複合酸化物のNi含有率が低くならないようにすると共に発熱量を低減させることで、高容量でありながら高熱安定性である正極活物質粒子粉末を指向することができると推測される。
このように、本実施形態に係る熱安定性評価方法により、リチウム複合酸化物の組成や製造方法の観点から、正極活物質粒子粉末の熱安定性を議論することができる。
また、Ni含有率が同じであっても熱流や発熱量が小さくなるように、正極活物質粒子粉末を設計することができたか否かの確認が簡易である点で、190℃〜250℃の温度範囲に存在する変曲点に基づいてDSC曲線αのピークを分離して求めたカーブβ190−250℃は、重要なパラメータになるといえる。特に、今後はNi含有率が高くなる正極活物質粒子粉末が研究される傾向があるため、その安全性を簡便に確認することができる本発明の熱安定性評価方法は、材料の設計において重要な手法となると考えられる。
本発明に係る熱安定性評価方法は、正極活物質粒子粉末の熱安定性の評価、ひいては、該正極活物質粒子粉末を正極に用いた非水電解質二次電池の安全性の評価に好適である。

Claims (4)

  1. 少なくともLi、Ni、及びCoを含むリチウム複合酸化物からなる正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法であって、
    前記正極活物質粒子粉末を含む正極と、負極と、電解質を含む電解液とから構成される非水電解質二次電池を所定の電圧まで充電した後、該非水電解質二次電池から分取した正極と、電解液とを用いて示差走査熱量測定を行い、加熱温度と熱流との関係を示す示差走査熱量曲線αを求める第1ステップと、
    前記示差走査熱量曲線αに存在する複数の変曲点を検出した後、該複数の変曲点に基づき、ガウス関数とローレンツ関数との組み合わせによる畳み込みを行って該示差走査熱量曲線αの各ピークを分離し、複数のカーブβ、β、β……、及びβ(ただし、Nは変曲点の数であり、β、β、β……、及びβは、順に、最低温側の変曲点由来のピークの分離によるカーブ、低温側から2番目の変曲点由来のピークの分離によるカーブ、低温側から3番目の変曲点由来のピークの分離によるカーブ……、及び最高温側の変曲点由来のピークの分離によるカーブを示す)を求める第2ステップと
    を少なくとも備えることを特徴とする、正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法。
  2. 前記複数の変曲点の検出を、前記示差走査熱量曲線αの微分曲線を求めて行う、請求項1に記載の正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法。
  3. 前記リチウム複合酸化物のNi含有率が異なる2種以上の正極活物質粒子粉末について、各々ピークを分離して前記複数のカーブβ、β、β……、及びβを求めた後、
    各正極活物質粒子粉末の前記リチウム複合酸化物のNi含有率と、
    カーブβ、β、β……、及びβのうち、190℃〜250℃の温度範囲に存在するピークに基づいて、前記示差走査熱量曲線αのピークを分離して求めたカーブβ190−250℃における発熱量HV190−250℃又はピークトップの温度T190−250℃との関係
    から、リチウム複合酸化物のNi含有率の変化に基づく発熱量HV190−250℃の変化又は温度T190−250℃の変化を調べる、請求項1又は2に記載の正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法。
  4. 前記リチウム複合酸化物のNi含有率が異なる2種以上の正極活物質粒子粉末について、各々ピークを分離して前記複数のカーブβ、β、β……、及びβを求めた後、
    各正極活物質粒子粉末の前記リチウム複合酸化物のNi含有率と、該各正極活物質粒子粉末の示差走査熱量曲線αから求めた総発熱量HVとの関係から、リチウム複合酸化物のNi含有率の変化に基づく総発熱量HVの変化を調べる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極活物質粒子粉末の熱安定性評価方法。

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