JP2018035056A - グラフェンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】グラフェン、特に光線や熱などの外的刺激によってそれ自体が起電力を生じ、発電が可能となる発電性組成物を構成する導電助剤の主成分としてのグラフェンの製造方法の提供。
【解決手段】アルカリ金属の水酸化物の溶液中に粉状グラファイトを投入しS11、1対の電極を所定の間隔だけ離して前記溶液中に沈降したグラファイト層に差し込むように配置し、当該電極間に直流電圧を継続的に印加するS15とともに、前記溶液全体に継続的に振動を加えS14、前記溶液中に浮遊してくる剥離グラフェンを分離しS16、乾燥するS19グラフェンの製造方法。前記アルカリ金属は、カリウムが好ましく、また、前記直流電圧は、1.5〜1.7Vの範囲に設定するのがよいグラフェンの製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、グラフェン、特に光線や熱などの外的刺激によってそれ自体が起電力を生じ、発電が可能となる発電性組成物を構成する導電助剤の主成分としてのグラフェンの製造方法に関する。
光線や赤外線を直接電気に変換する素子や装置は、さまざまな方式が考案され、一部は実用化されている。例えば、2種類の金属又は半導体を組み合わせた熱電変換素子は、その両端に温度差を設けると、ゼーベック効果により起電力が生じるものであり、ビスマス・テルル系、鉛・テルル系、シリコン・ゲルマニウム系などが現在実用化されている。このような熱電変換素子は、レアアースやレアメタル、あるいは環境負荷の大きい鉛などを主原料とするため適用分野が制限され、コスト面でも不利であった。
近年、この熱電変換素子として、ナノカーボンを原料とするものの研究開発が進められている。例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)では、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」という。)及びC60フラーレンで構成されたカーボン電池に関し提案している。しかし、このカーボン電池は、その発電効率が太陽光発電パネルの評価基準では0.1%と非常に低く、実用化までにさらに長時間を要する。
一方、太陽光や風力などの自然エネルギーによる発電装置として、シリコン単結晶、アモルファスシリコン、有機化合物などを用いた太陽光発電パネルや風車に発電機を連結した風力発電機などが普及しつつある。しかし、何れの装置も実際の運用に際しては天候や季節、一日の時間帯で発電効率が大幅に変動するため、大規模なNAS電池やリチウムイオン電池、鉛蓄電池、大容量電気二重層キャパシタなどの蓄電装置を負荷との間に設置する必要がある。そのため、化石燃料や原子力をエネルギー源として活用する発電システムに比べて導入及び運用コストの高騰を招いている。
特に、メガソーラと呼ばれる大規模太陽光発電システムは、必要な発電量を得るために広大な設置面積を要するので、戸建て住宅や集合住宅、ビル、工場などの屋根や休耕地などの空き地を活用したとしても十分な設置面積を得ることは困難である。加えて、太陽光発電パネルの特性から太陽光を効率良く受けるためにパネル面を最適な日照条件に合わせて調整する必要があり、結果として設置場所は平面である条件も加わり、更に適切な設置場所を得ることが困難である。
太陽光発電パネルは太陽光を受けると、電流が流れて発電が可能となる。しかし、自らの内部抵抗によりジュール熱が発生し、周囲の気温が約25℃を越える場合にはそれ自体で放熱ができないため、発電パネルの内部抵抗が更に高くなり、結果として負荷に供給する電力が大幅に減少する問題を抱えている。この問題に対して、発電パネル素子を自己の電力あるいは外部電力を用いて空冷ファン、液冷装置などにより冷却することは可能である。しかし、この場合には、発電効率の低下や外部電力使用によるコスト増のため一般的には適用されず、太陽光発電パネルの前記問題は未だ効果的な解決方法を得ていない。
さらに、特に2次電池の技術分野においても、正極又は負極の活物質にグラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブなどのナノカーボン材料が活物質として使用されてきている。ナノカーボン材料の活用により、このような2次電池の性能の向上は著しいが、ナノカーボン材料の製膜などの工程を必要とし、セパレータ及び所定の電解質を必須の構成とするため、サイズや形状等について制約があるという問題がある。
なお、本明細書において、用語「発電性」を赤外光、可視光、紫外線などの光線や熱などの外的刺激によってそれ自体が起電力を生じ、発電する性質の意味で使用する。
特開平7−14573号公報 特開2014−33170号公報
多賀 友則、"磁性体微粒子内包カーボンナノカプセルの合成とその磁気特性"、[online]、平成14年度、三重大学工学部、[平成25年3月1日検索]、インターネット〈URL:http://www.ne.phen.mie-u.ac.jp/thesis/2003/taga.pdf〉
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、グラフェン、特に光線や熱などの外的刺激によってそれ自体が起電力を生じ、発電が可能となる発電性組成物を構成する導電助剤の主成分としてのグラフェンの製造方法を提供することを目的とする。
前記目的は、本発明の一局面によれば、アルカリ金属の水酸化物の溶液中に粉状グラファイトを投入し、1対の電極を所定の間隔だけ離して前記溶液中に沈降したグラファイト層に差し込むように配置し、当該電極間に直流電圧を継続的に印加するとともに、前記溶液全体に継続的に振動を加え、前記溶液中に浮遊してくる剥離グラフェンを分離し乾燥することを特徴とするグラフェンの製造方法によって達成される。
本発明のグラフェンの製造方法によれば、粉状グラファイトをアルカリ金属水酸化物の溶液中にて電気泳動を行いつつ超音波振動を加えてグラフェンを製造することとした。これにより、グラフェンを安価に製造することができる。また、このようにして得られたグラフェンを主成分とする導電助剤をナノカーボン−導電性材料結合体と混合することで、少なくとも平衡含水率となる程度の水分を含んだ状態で、起電力及び電流出力を生じる発電素子として機能するようになり、さらにはこの発電素子を1対の電極の間に挟み込むことで、発電装置を構成できる。
また、前記発電素子を正極材として用い、この正極材と、蓄電用電極材料からなる負極材との積層体を電解液を含んだ状態で、1組の集電極で挟んで形成された蓄発電装置は、発電だけでなく、蓄電も可能となる。
ナノカーボン−導電性材料結合体の製造方法の一例を示すフロー図である。 本発明のグラフェンの製造方法の一例を示すフロー図である。 発電装置の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 蓄発電装置の一例を示す図である。 蓄発電装置の別の例として、蓄発電セルを示しており、(a)は平面図、(b)は断面側面図である。 蓄発電装置のさらに別の例として、蓄発電セルモジュールを示す図である。 本発明の蓄発電セルモジュールが太陽光発電の補助発電機能を果たすことを説明するための図である。 図3に示す発電装置において1.3kΩの抵抗を有するテスト回路に接続した場合の電流出力を示すグラフである。
以下に、本発明のグラフェンの製造方法の一実施形態について詳細に説明する。本発明のグラフェンの製造方法の一例を図2に示す。この図に示すように、まずアルカリ金属水酸化物の水溶液に粉状グラファイトを投入し撹拌する(S11)。ここで、アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウムなどが好ましく、とりわけカリウムがより好ましい。また、水溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は特に制限はないが、5〜15質量%に設定するのが好ましい。さらにまた、粉状グラファイトは、その最大粒径について特に制限はない。
このグラファイトが沈降堆積した水溶液を適宜の乳化装置を用いてグラファイトが懸濁した状態にし(S12)、その状態で速やかにジェットミルなどの従来公知の粉砕機を用いて湿式粉砕する(S13)。粉砕後のグラファイトの最大粒径は、前記と同様に設定できる。その後、例えば超音波などを用いて水溶液全体を継続して振動させる(S14)。
次に、1対の電極を所定の間隔離して前記水溶液中に浸漬していき沈降したグラファイトの堆積層に差し込むように配置し、当該電極間に直流電圧を継続的に印加する(S15)。このときの直流電圧を適宜設定できるが、本発明においては1.5〜1.7Vの範囲に設定するのが好ましい。この状態で、電気泳動により液中を陰極側に移動するカリウムイオンがグラファイトの層間に入りこみ(インターカレート)、グラファイトの層間の結合力に抗してグラファイトの層を剥離させる。そうして、剥離した単層から4層程度のグラフェンは液中を浮遊してくるので、この浮遊物を分離、ろ過する(S16)。
ろ過した浮遊物に適宜の量の純水を加えて湯洗する(S18)。湯洗時間については、アルカリ分を除去できれば特に制限はないが、3〜5時間、好ましくは4〜5時間程度に設定できる。その後、ろ過により固液を分離し固形分を乾燥する(S19)。かくして、単層〜4層程度のグラフェンが得られる。
前記一連の工程を経ることで、グラフェン粉末を安価に安定して製造することができる。得られるグラフェン粉末の最大粒径は、3〜50μmの範囲に含まれるはずであるが、適宜粒径測定を行い、最大粒径が前記範囲を超える場合には、さらに粉砕し最大粒径が前記範囲(5〜50μm、好ましくは8〜30μm、より好ましくは10〜20μmの範囲)に入るようにするのが好ましい。アルカリ金属の水酸化物の水溶液や粉状グラファイトを補給を行うことで、グラフェンを連続的に製造することも可能となる。前記したグラフェンの製造工程でグラフェンとして分離されなかったグラファイトは、これを回収し、洗浄・乾燥することで、導電助剤として使用することもできる。
次に、本発明のグラフェン粉末を用いた発電性組成物、当該組成物を用いた発電素子、発電装置及び蓄発電装置のそれぞれの例について説明する。
発電性組成物
以下、本発明のグラフェンを用いる発電性組成物の一例について詳細に説明する。この例に示す発電性組成物は、粉状のナノカーボン−導電性材料結合体と、グラフェン粉末を主成分とする導電助剤と、金属水酸化物粉末とを必須成分とする混合物からなる。
(1)ナノカーボン−導電性材料結合体
ナノカーボン−導電性材料結合体は、導電性材料とナノカーボン素材とを結合させたものである。結合の形態は、特に制限されず、両者の重量基準の混合比などによっても変化すると考えられる。例えば、ナノカーボン素材の表面の一部又は全面に導電性材料が何等かの結合をして当該表面の一部の面又は全面を導電性材料で被覆した形態となっていてもよく、あるいはその逆に導電性材料の表面の一部又は全面にナノカーボン素材が何らかの結合をして導電性材料の一部の面又は全面を被覆した形態となっていてもよい。以下、それぞれの構成成分について説明した後、両者の結合形態について説明する。
(1−1)導電性材料
導電性材料としては、遷移金属や遷移金属の化合物などが挙げられる。具体的には、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、タングステン、イリジウム、白金、金の群から選択された1種若しくは2種以上の遷移金属、又はその酸化物、水酸化物などが挙げられる。これらの中で、遷移金属としてはクロム、鉄若しくはニッケル、又はこれらのうちの少なくとも2種の組み合わせを用いるのが好ましい。また、遷移金属の化合物としては水酸化ニッケル、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄、水酸化リチウム、二酸化マンガンなどが好ましい。
(1−2)ナノカーボン素材
ナノカーボン素材としては、フラーレン、CNT若しくはグラフェンを単独で、又はこれらの少なくとも2種の混合物を使用できる。フラーレンは、C60に限定されず、C70あるいはさらに高次のものであってもよい。これらのうち、単独の場合にはフラーレンを用いるのが好ましく、混合物の場合にはフラーレンを主成分としこれとCNTやグラフェンとの混合物を使用するのが好ましい。なお、フラーレンやそのCNTやグラフェンなどとの混合物は、市販品を用いてもよく、後述するように従来公知の方法により調製してもよい。前者の市販品として、例えばフロンティアカーボン株式会社のナノムパープルやナノムミックスなどのシリーズが挙げられる。
ナノカーボン素材は、グラファイトを出発原料として従来公知の方法により調製できる。ここで、出発原料としてのグラファイトは市販品、例えば伊藤黒鉛工業株式会社や昭和電工株式会社などの人造黒鉛などを用いることができる。また、原料となる煤(グラファイト)を予め生成することもできる。
この煤を得る方法としては、2000℃以上に維持された火炎中で黒鉛を完全に燃焼させた後、有機溶媒を用いたソックスレー抽出法や液体クロマトグラフィーにより煤を分離する高温燃焼法と、高温燃焼法の場合よりも相対的に低い温度の火炎中で黒鉛を燃焼させた後に煤を分離する低温燃焼法とが知られている。本発明においては、高温燃焼法、低温燃焼法のいずれの方法をも採用できる。
好ましくは、煤を得るのに、低温燃焼法を採用するのがよく、原料となる炭化水素に、金属系触媒及び燃焼助剤を添加し十分に撹拌混合した後に、約600〜800℃の温度範囲にて燃焼させるのが特に好ましい。原料としての炭化水素としては、トルエン又はベンゼンなどの不飽和炭化水素が挙げられる。なお、低温燃焼法における環境条件としては、湿度と気圧とが重要である。湿度条件は、相対湿度30%以下、好ましくは28%以下に設定するのが好ましい。また、気圧条件は、101325Pa以下に設定するのが好ましい。
添加する金属触媒としては、鉄、コバルト、銅、ニッケル、銀、金、プラチナ、ルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群のうちの少なくとも1種の金属又はその化合物などを用いることができる。これらの金属触媒のうち、鉄のシクロペンタジエニル錯体であるフェロセン及び硝酸鉄の2種類を用いるのが好適である。また、燃焼助剤としては、2−プロパノールなどの低分子量のアルコールを用いることができる。
これら三者の混合比率については特に制限はないが、通常、炭化水素70重量%、金属触媒2重量%(フェロセン1重量%、硝酸鉄1重量%)、燃焼助剤(2−プロパノール)28重量%に設定される。この混合比率を参考に、金属触媒の混合比率を一定にして炭化水素及び燃焼助剤の混合比率(バランス)を変更することができる。
煤からナノカーボンを抽出するには、煤を何度もn−ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒内に潜らせることで、有機溶媒中のナノカーボン濃度を高め、この有機溶媒をロータリーエバポレータなどの装置でさらに濃縮する方法などを採用できる。さらに、C60の純度を高めるためには得られたナノカーボン粒子を真空チャンバー内で約400℃の温度で加熱することで、C60のみが昇華し、それを基板で受けて冷却すると、99.99%の高純度のフラーレンを得ることができる。
次に、このようにして得られたナノカーボン素材を用い、ナノカーボン−導電性材料結合体を調製する。図1は、特にフラーレンからなるナノカーボン素材を用いたナノカーボン−導電性材料結合体の製造方法の一例を示すフロー図である。この図に示すように、フラーレンを粉砕機を用いて粉砕する(S01)。粉砕機は、例えばジェットミルなどの微粉砕可能なものであれば制限なく使用できる。
フラーレンは、粉砕により、その最大粒径が5〜50μm、好ましくは8〜30μm、より好ましくは10〜20μmの範囲となるように粉砕される。ここで、最大粒径の測定は通常用いられる粒径測定法によることができる。このような粒径測定法の具体例としては、顕微鏡、SEM又はTEMを用いた画像解析法、コールター法、遠心沈降法、レーザー回折散乱法などが挙げられ、これらのいずれも好適に使用できる。
純水中に前記導電性材料を従来公知の方法にてイオンの形態にて適量存在させ、当該液を所定量、得られた粉砕産物に加えて撹拌する(S02)。液中に導電性材料のイオンを存在させる方法としては特に制限はなく、例えば前記導電性材料が水に可溶である場合、それを純水中に溶解させたものであってもよい。
続いて、液中に1組の電極を浸し、48Vの直流電圧を印加する(S03)。そうして直流電圧を印加するのは、前記ナノカーボン素材と前記導電性材料とを結合させるためである。使用電極は、前記二者の結合反応が進むように、イオン化傾向などを考慮して従来公知の各種の電極の中から選択して使用できる。
なお、前記した導電性材料のイオンが存在する溶液を用いる方法とは別に、純水中に前記粉砕産物を所定量加えた後、(1)前記導電性材料、(2)該導電性材料を含有する導体又は(3)該導電性材料で表面を被服した導体のいずれかよりなる電極を対にして用い、前記と同様に直流電圧を印加してもよい。電極の外形形状としてはとくに限定されず、棒状体、帯状体、網状体などの中から適宜選択して使用できる。電極の具体例としては、前記(1)の場合、鉄製、銅製又は白金製の棒状体や帯状体など、前記(2)の場合、ステンレス製の帯状体や網状体など、前記(3)の場合、前記(1)導体の表面にニッケルやクロムなどの鍍金を施したものなどが挙げられる。ここで、網状体は、懸濁液と電極との接触面積を大きくとる場合に好適に用いられる。直流電圧の印加時間の適宜設定でき、特に制限はないが、10〜40時間、好ましくは12〜30時間に設定するのが好ましい。
この直流電圧の印加により、ナノカーボン素材粒子表面と導電性材料のイオンとがイオン結合により錯体を形成するなどして結合体を得ることができる。図1に示した製造方法によれば、液相中に生成されるナノカーボン−導電性材料結合体は、ナノカーボン素材粒子表面が導電性材料にてコーティングされた状態となっているものと推測される。その後、懸濁液を濾過した後(S04)、乾燥することで、粉状のナノカーボン−導電性材料結合体を得ることができる。
以上、グラファイト由来のナノカーボン素材の製造方法の一例について説明したが、この方法に限定されず、従来公知の方法によりフラーレンなどのナノカーボン素材を製造してもよい。このような方法の一例として、トルエンやベンゼンなどの不飽和炭化水素を真空に近い減圧下で1000℃以上の高温で不完全燃焼させる方法などが挙げられる。
(2)導電助剤
本発明における導電助剤は、グラフェン粉末を主成分とする。ここで、用語「主成分」とは、導電助剤の大半をグラフェン粉末が占める場合だけでなく、グラフェン粉末単独で導電助剤を構成する場合をも含む意味で使用している。以下では、まずグラフェン粉末について説明し、その後にグラフェン粉末以外の導電助剤について説明する。
(2−1)グラフェン粉末
本発明におけるグラフェン粉末は前記の通りである。発電性組成物におけるグラフェンは、単層グラフェンないし多層グラフェンの粉砕品を使用できる。多層グラフェンについては、その層数に特に制限はないが、好ましくは4層程度までに調製されたものを用いるのがよい。なお、グラフェン粉末は、本発明のグラフェンに代えて、例えばグラファイトを出発原料として従来公知の方法で製造して用いてもよく、グラフェンが市販されている場合には、その市販品を用いてもよい。
グラフェンの従来公知の製造方法としては、へき開法、SiC熱分解法及びCVD(化学蒸着)法などが挙げられる。へき開法は、グラファイトの表面からグラフェンを機械的物理的に剥離させるものである。また、SiC熱分解法は、SiC単結晶基板表面を加熱し、ケイ素原子を蒸発させることにより、基板表面に炭素原子を析出させ、当該表面に沿ってグラフェンをエピタキシャルに成長させる方法である。さらに、CVD法は、バルク金属ばどの表面にて炭化水素ガスを熱分解させることで、当該表面でグラフェンを成長させる方法である。
(2−2)グラフェン粉末以外の導電助剤
グラフェン粉末以外の導電助剤としては、例えば種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック)、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、コークス、活性炭、炭素繊維(PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維)、カーボンナノチューブなどの炭素材料などが挙げられる。
前記したグラフェン粉末以外の導電助剤のうちでは、グラファイトを好適に使用できる。 グラファイトとしては、従来公知の方法で製造したものや市販品を前記方法により最大粒径の範囲(5〜50μm、好ましくは8〜30μm、より好ましくは10〜20μmの範囲)となるように粉砕したものを使用できる。また、前記したナノカーボン素材の出発原料であるグラファイトを粉砕したものも使用できる。
(3)金属水酸化物粉末
金属水酸化物粉末を混合するのは、前記した必須成分が光線や熱などの外的刺激により活発な電子の移動が生じた場合に、平衡含水率の水分存在下に金属水酸化物の表面で還元反応が生じ、これにより電子の移動が促進されるためである。金属水酸化物としては、前記した遷移金属の水酸化物を使用できる。その中でも、オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルト、オキシ水酸化鉄、オキシ水酸化マンガンなどのオキシ水酸化物が好適に使用できる。とりわけ、リチウム二次電池用正極材料として従来から用いられているオキシ水酸化ニッケル(III)(NiO(OH))がより好適に使用できる。
オキシ水酸化ニッケルは、従来公知の各種方法によって製造できる。その一例としては、水酸化ニッケルを水系分散媒中に分散させ、例えば次亜塩素酸などの酸化剤を用いて酸化させることで、オキシ水酸化ニッケルは得られる。
2Ni(OH)+O→2NiO(OH)+O+H2O
そうして、これを適当な粉砕機を用いて前記したナノカーボン−導電性材料結合体や導電助剤と同様の粒度になるように、即ち最大粒径が3〜50μm、好ましくは8〜30μm、より好ましくは10〜20μmの範囲となるように粉砕するのがよい。
金属水酸化物の混合比率は、35〜75重量部、好ましくは45〜74重量部、より好ましくは55〜72重量部の範囲に設定できる。前記範囲を超えて金属水酸化物を添加した場合及び前記範囲未満の場合の双方とも、前記必須成分の発電性を阻害する方向に働く。
発電性組成物は、これら必須成分を任意の比率で混合することで、光線や熱などの外的刺激により熱電変換作用若しくは光電変換作用又はその双方の作用を示す結果、起電力を生じ、発電が可能となるものである。必須成分の混合比率は、以下の通りである。粉状のナノカーボン−導電性材料結合体は3〜50重量部、好ましくは5〜40重量部、より好ましくは7〜25重量部に設定するのがよい。また、グラフェン粉末は3〜50重量部、好ましくは4〜30重量部、より好ましくは5〜15重量部に設定するのがよい。
発電性組成物には、前記必須成分に必要に応じて水素ガス発生抑制剤を適宜含有することができる。
(4)水素ガス発生抑制剤粉末
水素ガス発生抑制剤粉末は、発電性組成物(必須成分)においてナノカーボン−導電性材料結合体における導電性材料として鉄、ニッケル、コバルトなどの金属が用いられている場合、当該必須成分と前記金属水酸化物との反応により水素ガスが発生する場合があり得るので、ガス化前の水素イオンを吸着(吸収)して水素ガスの発生を未然に防止するために添加するものである。この水素ガス発生抑制剤粉末は、特に発電性組成物を後述するセルなどの密閉容器内に封入するような場合に発電性組成物に混合しておく必要があり、密閉しないような場合には混合の必要はない。
このような水素ガス発生抑制剤の具体例としては、二酸化マンガンや水素吸蔵合金などの粉末が挙げられる。これらはいずれも前記の最大粒径の範囲(5〜50μm、好ましくは8〜30μm、より好ましくは10〜20μm)に収まるように粉砕されたものであるのがよい。水素吸蔵合金は、LaNi、MmN1などのAB2型、TiMn1.5、ZrMnなどのAB5型、TiFe、TiNiなどのAB型、Ti−Fe系、V系、Mg合金、Pd系、Ca系合金のいずれの種類をも使用できる。
金属水酸化物粉末を混合する場合、その混合比率は、0.05〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜7重量部未満の範囲に設定できる。混合比率が0.05重量部未満の場合、水素ガス発生を抑制できず、また15重量部を超えた場合、水素ガス発生抑制の能力は頭打ちとなり、ほとんど変わらないためである。
発電素子
発電性組成物は、その任意の量を適宜の圧力下にて加圧成形して適宜の外形形状の成形体を形成することで、当該成形体内の微小部分において、熱電変換作用(光電変換作用)により電子の移動が生じ、それにより正極、負極が形成され、結果として微小の起電力及び電流出力が連続して求められるようになる。この成形体は、試験室内の平衡含水率下の吸湿により微量の水分を含有することで、起電力及び電流出力の上昇が再現性良く認められるようになる。
また、発電性組成物は、これに加水混合してペースト状にし、適宜の外形形状の成形体を形成することで、さらに高い起電力及び電流出力を生じる。このとき、加えるのは純水又は超純水でよく、その添加量は、発電性組成物100重量部に対し、5〜20重量部、好ましくは7〜18重量部、より好ましくは9〜16重量部の範囲に設定される。また、この成形体を乾燥させることで、乾燥度合に伴い起電力及び電流出力は小さくなるが、その後の吸湿などによる水分変動に応じて起電力及び電流出力は再現性良く変化することが確認される。
発電装置
発電性組成物を加圧成形し、又は加水混合した上で成形して得られる例えば短円柱状の成形体を1対の金属製の電極板により挟み込んでそれぞれの電極板が前記成形体に接触するようにする。この1対の電極板を含む開いた回路において、当該電極板間に起電力が生じ、連続して電流を流すことができる。図3は、このような発電装置の一例を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。また、図中、符号1は発電性組成物(発電素子)、2は発電装置、3は不導体の樹脂シート、4、5は電極、6は電流計、7は電圧計、8は負荷である。
図3に例示する発電装置は、適宜の厚さの不導体の樹脂シート3の中央領域に設けられた表裏に貫通する貫通穴(その直径は適宜設定できる)に、加水し練合わせてペースト状にした発電性組成物1を充填し、樹脂シートの表裏から当該組成物を1対の電極板4、5で挟み込み、かつ電極板4,5のそれぞれが発電性組成物1に密着するようにしたものである。図3に示すように、これらの電極板4、5を介して電流計6、電圧計7、負荷8を接続することで、起電力及び当該回路を流れる電流を連続的に測定でき、前記発電装置の発電性能を確認できる。なお、樹脂シート面の貫通穴が必要であり、樹脂シート自体は必須の構成要素ではないので、例えば、樹脂製などの不導体で形成されたリングなどを用いてもよい。
発電装置は、図3に示す例に限定されない。例えば、発電性組成物をそのまま直線状の帯状又は棒状に成形し、その両端にこれを挟むように電極板をそれぞれ配置した形態とすることもできる。要するに、発電性組成物をそのまま又は加水混練して適宜の外形形状の成形体に成形し、その異なる2点にそれぞれ電極を接触させつつ配置することで、発電装置を形成できる。
蓄発電装置
適宜の外形形状及びサイズに成形した発電素子を正極材に、また後述する蓄電用電極材料を負極材に用い、電解液の存在下にこれらを2枚の集電極で挟持させることで、蓄発電装置が得られる。蓄発電装置は、前記のような構成とすることで、2枚の集電極間における電子及びイオンの移動が活発になり、結果として発電及び蓄電が可能となる。なお、蓄発電装置には、さらに前記正極材と前記負極材との間にこれらを隔離するセパレータを設けてもよい。
蓄発電装置の一例を図4に示す。この図おいて、符号1は発電素子(正極材)、10は蓄発電装置、11は正極材、12はセパレータ、13は負極材、4及び5は集電極(電極板)、6は電流計、7は電圧計である。図4に示す例は、正極材11と負極材13との間にこれらを隔離するセパレータ12を備えるが、前記の通りセパレータ12は必須の構成ではない。なお、正極材11を構成する発電素子についてはすでに説明したので、重複した説明は省略する。また、図4では、電解液を図示していないが、正極材11、セパレータ12及び負極材13に含浸させているものとする。
[セパレータ12]
セパレータ12は、これを図4に示す例のように用いる場合、薄板状乃至フィルム状を呈し、必要に応じて湾曲させることができる絶縁性多孔体であり、正負両極の短絡を防止するために使用されるものである。その素材や形態について特に限定されないが、例えば、セルロース、ガラス繊維、又は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムなどを使用できる。また、逆浸透膜として使用される公知の微多孔性プラスチックフィルムで構成してもよい。
[負極材13]
負極材13は、耐食性を備えていれば、その素材の種類については特に制限されず、例えば、金属粒子や導電ポリマーなども使用できる。例えば負極材12を多孔質金属薄膜及び導電助剤の混合物で構成してもよい。この場合、多孔質金属薄膜としては、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、導電助剤は多孔質金属薄膜の間隙を充填するためのものであり、前記した発電用電極材料に使用されたものを使用できる。両者の配合比率については特に制限がない。
[電解液]
電解液は、正極材11、セパレータ12及び負極材13中に含浸させて正極材11の還元反応により生じた電解質中のカチオン分子の駆動を容易にするものである。このような電解液としては、例えば適宜の濃度の水酸化カリウム水溶液などの従来公知の各種電解質を含有する水溶液のほか、イオン液体なども使用できる。また、電解質を含有しない純水(逆浸透膜を通したRO水、脱イオン水、蒸留水などを含む)や超純水などの電解質を極力又は略完全に除去した水を用いることもできる。
蓄発電装置10は、電解液の存在下に正極材11として発電素子を用い、これと負極材13との間にセパレータ12を介在させた積層体を2枚の集電極の間に形成することとしたので、光線(特に赤外光)の照射などの外的刺激に起因する還元反応により正極から負極側へのカチオン分子の移動を促し、当該カチオン分子が負極側材表面で吸着されることで電気二重層が形成される。その結果、この蓄発電装置に負荷を接続することで、それ自体で発電とともに蓄電が可能となる。このように、蓄発電装置10は、赤外光により蓄発電が可能であることから、天候、季節、一日の時間帯に影響されず発電できるようになる。
前記蓄発電装置は、蓄発電セルとして構成することもできる。図5は、蓄発電装置の別の例として、蓄発電セルを示す断面側面図である。この図に示す例の蓄発電セル15は、セル容器16内に収容されている。セル容器16は、有底円筒状の導電性容器17と、円筒状をなし、導電性容器17の開口端に嵌合する鍔部が開口方向一端に設けられた絶縁性の蓋材18とからなる。蓋材18における円筒の鍔のない端部の外径は導電性容器17の開口の直径よりも僅かに小さく設定されており、この端部が導電性容器17内に内嵌するようになっている。また、蓋材18の鍔部を有する端部は2枚の集電極21、22によって閉塞されている。図5に示す例の蓄発電セル15の場合、これらの集電極21,22が正極側であり、導電性容器17が負極側集電極となる。なお、正極側となる集電極は必要な厚さが確保できれば、前記のように2枚で構成する必要はなく、1枚又は3枚以上の適宜の枚数で構成することができる。また、セル容器16の導電性容器17及び蓋材18は前記の外形形状及び構造に限定されず、例えば現在常用されているボタン電池のような外形形状および構造とすることもできる。
セル容器10の内部には、導電性容器11の底から負極材13、セパレータ12、キャップ材18の内部に配置された正極材11及び正極側集電極22、21の順に積層されている。また、負極材13、セパレータ12及び正極材11の内部には電解液(不図示)が注入され、これら各層は電解液を含んだ状態とされている。さらに正極側集電極21の表面には、銅箔テープからなる赤外線吸収膜19が形成されている。
このような構成の蓄発電セル15の赤外線吸収膜19に光線(主に赤外線)が照射され、伝熱により熱が正電極22を経て正極材11に吸収されると、その内部の発電性組成物における電子の移動が活発になり、電解質との界面で還元反応が生じる。これにより電解質中のカチオン分子が電解液中を正電極から負電極(導電性容器17)側に向けて駆動され、負極材4の表面に吸着されるため、電気二重層が形成される。この状態で、正電極22と負電極である導電性容器17との間に負荷を接続すると、導電性容器11(負極側集電極)を介して電子の移動が発生し、電流が流れ発電が起こる。なお、セル容器の外形形状及び構造は、導電性容器(負極側集電極)17と、蓋材18の正極側集電極とが直接接触して短絡することがないように、不導体を介して両者が嵌合、螺合、接着固定などされていれば、図5に示す例に限定されない。
蓄発電セル15を複数個、例えばアクリル板などの基板に縦横に配列し、それぞれ並列接続してモジュール化することができる。図6は、そのような蓄発電セルモジュールの一例を示す平面図である。この図に例示する64セル型蓄発電セルモジュール24では、4セル型蓄発電セルモジュール23が縦横各4個、合計16個配列されている。蓄発電セルモジュール23は、4個の蓄発電セル16を1単位として基板上に配列したものである。この蓄発電セルモジュール24の場合、少なくとも5W程度の出力を持つ発電装置として機能する。このようにモジュール化して、隣接する蓄発電セル6,6、・・・同士を適宜並列接続又は直列接続することで、高電圧又は大電流を取り出すことができる。
蓄発電セルモジュールは、これをさらに複数配列してパネル状に形成し、太陽光発電パネルの排熱吸収や補助発電装置として活用できる。具体的には、パネル状に形成した蓄発電セルモジュールを太陽光発電パネルの裏面に設置して太陽光発電パネルから放射される赤外線を吸収させ、太陽光発電パネル自体の温度上昇を抑えると同時に、太陽光発電パネルの発電電力に加えてパネルから補助的に電力を得ることができる。
図7は、蓄発電セルモジュールが太陽光発電の補助発電機能を果たすことを説明するための図である。この図において、太陽光パネル及び蓄発電セルモジュールについてのデータはそれぞれ、東京での3月ごろの気候として、天候晴れ、最高気温22℃、最低気温10℃、湿度35〜40%の条件を想定して算出したものである。また、図4は、比較のために最大出力をそれぞれ100%としで発電電力の比率で表示している。本発明の蓄発電セルモジュールは、太陽光パネルにて発電できない時間帯においても発電が可能であり、十分に太陽光パネルの補助発電装置として機能することは図4から明らかであろう。
蓄発電セルモジュールはまた、前記と同様の方法により工場などの排熱を利用して更に大きな電力を得ることもできる。さらに、蓄発電セルモジュールは、携帯電話端末やパソコンなどの電源として組込むことも可能である。
以上では、蓄発電装置及び蓄発電セル(モジュール)は、活性エネルギー線として主に赤外線を吸収して発電する方式について説明した。これは、赤外線より相対的に波長の短い可視光や紫外光などは強い指向性があるので、発電装置を放射源に対して正対させることが必要であるが、相対的に波長の長い赤外光の場合、蓄発電セルモジュールを放射源に正対させる必要がないという利点があるためである。つまり、あらゆる方向から赤外光は入射するので、蓄発電セルモジュールを任意の方向に設置でき、これを積み重ねるなどしても発電効率に影響がないのである。しかし、活性エネルギー線としては、太陽光などの可視光、紫外線などの赤外線以外の光、電磁波などを含めることができる。さらに、空気の振動や磁界の変化などをエネルギー源とした発電にも適用可能であり、電気二重層キャパシタ(EDLC)などのように蓄電に特化して適用することもできる。
また、蓄発電セルモジュールには、上記したような太陽光をエネンルギー源として発電する装置などを混在して実装することで、さらに設置環境の各種条件に最適な蓄発電機能を果たすようにすることもできる。その場合、必要なら、DC−DCコンバーター、DC−ACコンバーター、平滑化コンデンサなどを含む従来公知の回路を用い、蓄発電セルモジュール及び上記発電装置の組み合わせ体の出力電圧の昇圧や出力電流の増大を図ってもよい。
次に、参考例などに基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明のグラフェンの評価は、これを用いた発電性組成物や当街組成物を用いた発電素子などの発電性能によって行った。
[原材料及びその調製方法]
(1)粉状ナノカーボン−導電性材料結合体
フラーレン(商品名ナノムパープル、フロンティアカーボン社製)40gをジェットミルで粉砕して粉砕産物を得た。この粉砕産物に水酸化ニッケル水溶液200mlを加え撹拌して得られる懸濁液に1対のステンレス製の網状体からなる電極を差し込み、これら電極間に48Vの直流電圧を48時間印加した。その後、懸濁液を濾過し乾燥することで、ナノカーボン−導電性材料結合体を得た。その最大粒径をSEM観察により確認したところ、13μmであった。
(2)グラフェン粉末
図2に示した製造方法により、グラフェン粉末を製造した。具体的には、低温燃焼法(燃焼条件:600℃、触媒:フェロセン及び硝酸鉄、原料:トルエン試薬(和光純薬工業株式会社製))によって得られたグラファイト粉末を水酸化カリウム水溶液(濃度10質量%)に投入し、撹拌した後、ホーミライザを用いて懸濁させた。そうして得られた懸濁液をジェットミルに通して粉砕した。この懸濁液全体を超音波を印加して振動させながら、当該懸濁液中に1組のステンレス製の電極を浸漬し、直流電圧1.7Vを4.5時間印加した。これにより、インターカレーションにより剥離した単層又は多層のグラフェンが浮上するので、この浮遊物を含む上澄み液を濾過した、分離した固形物に400ccの純水を加え、4.5時間湯洗し水酸化かリムを除去した後に乾燥することで、グラフェン粉末を得た。このグラフェン粉末をSEM観察に基づきその最大粒径を計測したところ、13μmであった。
(3)オキシ水酸化ニッケル(金属水酸化物)粉末
水酸化ニッケル試薬(純正化学株式会社製)を純水中に分散させ、酸化材として次亜塩素酸を用いて酸化させ、オキシ水酸化ニッケルを得た。このオキシ水酸化ニッケルをジェットミルで粉砕し、SEM観察により最大粒径が13μmとなるようにした。
(4)グラファイト粉末(導電助剤)
グラフェン製造時に調製した懸濁液中のグラファイト粉末をろ過し、グラフェンの場合と同様に湯洗を行い、水酸化カリウムを除去した上で乾燥してグラファイト粉末を得た。この粉末のSEM観察による最大粒径は13μmであった。
(5)二酸化マンガン粉末(水素ガス発生抑制材)
純度99.5%、和光純薬工業株式会社製。ジェットミルにて粉砕した。前記と同様の測定方法により最大粒径が13μmとなることを確認した。
[参考例1〜8]
表1に示す各成分を同表に示した混合比率で計量して容器内に投入するとともに、これら紛体分の全量に対して15重量%となるように計量した純水を当該容器に加えて混合し、実施例1〜8の8種類のペースト状の発電性組成物を得た。
[参考例9〜11]
表2に示す各成分を同表に示した混合比率で計量して容器内に投入するとともに、これら紛体分の全量に対して表2に示した混合比率の純水を外割で容器内に加えて混合し、比較例1〜3の3種類のペースト状の組成物を得た。
[起電力及び初期電流の計測方法]
図3に示した発電装置と同様と同様の試験回路を11個作製した。この試験回路では、電流計及び電圧計の内部抵抗(不図示)が図3に示した負荷8に相当する。実施例1〜5及び比較例1〜7の組成物をそれぞれ調製後速やかに、樹脂シート(厚さ0.5mm)3の中央領域に設けられた表裏に貫通する貫通穴(直径8mm)に充填し、樹脂シートの表裏から当該組成物を前記試験回路の1対の銅製の電極板で押さえつけるように挟み込み、電圧計の示す値(起電力)及び電流計の示す値(初期電流)を読み取った。実施例1〜9の結果を表1に、また、比較例1〜7の結果を表2に示す。
Figure 2018035056
Figure 2018035056
表1の結果によれば、必須の3成分を広範な混合比率にて混合した本発明の発電性組成物は、それ自体発電性を示すことが明らかである。そして、表1の結果からはまた、良好な発電性を示す混合比率の範囲が存在することも明らかである。
それに対し、表2の結果によれば、必須の3成分のうち1成分を欠くことで、その混合物はそれ自体発電性を示さなくなることが示された。
[発電素子の電流出力値の経時変化の測定]
次に、実施例5において、樹脂シートの貫通穴内に充填されたペースト状の発電性組成物を上下から電極で抑えることで成形された発電素子を図3に示す発電装置と同様の試験回路の電極板間に配置し、含水率の時間経過に伴う電流出力値の変化を求めた。その結果を図8に示す。この図は負荷として1.3kΩの抵抗を接続して測定した結果をプロットしたものであり、試験時間中、0.2〜1.4mVの起電力が観測された。ただし、この測定は、発電素子調製より2日経過後から開始したものである(2日間の時間経過は、発電素子輸送によるものである。)。
このように、乾燥による発電性組成物の水分率の低下に伴い、電流出力は低下するが、発電素子と外部環境との間で水分が平衡状態(平衡含水率のレベル)に達しても、電流出力は0にならず微小な値を示すことが明らかである。また、これらの試験回路における乾燥した発電性組成物にその全量100重量部に対し15重量部の純水を加えることで、電流出力値は再現性良く元の値まで上昇することが確認できた。
本発明のグラフェンは、光線や熱などの外的刺激によってそれ自体が起電力を生じ、発電が可能となる発電性組成物を構成する導電助剤として有効に使用できる。これを用いる発電性組成物及び発電素子は、従来の熱電変換素子又は光電変換素子の代替物として使用可能であり、種々の形態をとり得るので、発電可能なインクや部材として利用可能である。また、発電装置及び蓄発電装置は、太陽光発電装置などを補完するものとして又は蓄電池の代替物として利用可能である。
1・・・発電性組成物(発電素子)、 2・・・発電装置、 3・・・樹脂シート、 4、5・・・電極板(集電極)、 6・・・電流計、 7・・・電圧計、 8・・・負荷、 11・・・正極材、 12・・・セパレータ、 13・・・負極材、 15・・・蓄発電セル、 16・・・セル容器、 17・・・導電性容器(負極側集電極)、 18・・・キャップ材、 19・・・赤外線吸収膜、 21、22・・・正極側集電極、 23・・・4セル型蓄発電セルモジュール、 24・・・64セル型蓄発電セルモジュール

Claims (3)

  1. アルカリ金属の水酸化物の溶液中に粉状グラファイトを投入し、1対の電極を所定の間隔だけ離して前記溶液中に沈降したグラファイト層に差し込むように配置し、当該電極間に直流電圧を継続的に印加するとともに、前記溶液全体に継続的に振動を加え、前記溶液中に浮遊してくる剥離グラフェンを分離し乾燥することを特徴とするグラフェンの製造方法。
  2. 前記アルカリ金属は、カリウムである請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
  3. 前記直流電圧は、1.5〜1.7Vの範囲に設定される請求項1又は2に記載のグラフェンの製造方法。


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