JP6608789B2 - 発電性組成物及びこれを用いた発電素子、発電装置及び蓄発電装置 - Google Patents

発電性組成物及びこれを用いた発電素子、発電装置及び蓄発電装置

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Description

本発明は、ナノカーボン及びグラフェンを用い、光や熱などの外的刺激を受けることにより起電力を生じ発電が可能となる発電性組成物並びにこれを用いた発電素子、発電装置及び蓄発電装置に関する。
光線や赤外線を直接電気に変換する素子や装置は、さまざまな方式が考案され、一部は実用化されている。例えば、2種類の金属又は半導体を組み合わせた熱電変換素子は、その両端に温度差を設けると、ゼーベック効果により起電力が生じるものであり、ビスマス・テルル系、鉛・テルル系、シリコン・ゲルマニウム系などが現在実用化されている。このような熱電変換素子は、レアアースやレアメタル、あるいは環境負荷の大きい鉛などを主原料とするため適用分野が制限され、コスト面でも不利であった。
近年、この熱電変換素子として、ナノカーボンを原料とするものの研究開発が進められている。例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)では、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」という。)及びC60フラーレンで構成されたカーボン電池に関し提案している。しかし、このカーボン電池は、その発電効率が太陽光発電パネルの評価基準では0.1%と非常に低く、実用化までにさらに長時間を要する。
一方、太陽光や風力などの自然エネルギーによる発電装置として、シリコン単結晶、アモルファスシリコン、有機化合物などを用いた太陽光発電パネルや風車に発電機を連結した風力発電機などが普及しつつある。しかし、何れの装置も実際の運用に際しては天候や季節、一日の時間帯で発電効率が大幅に変動するため、大規模なNAS電池やリチウムイオン電池、鉛蓄電池、大容量電気二重層キャパシタなどの蓄電装置を負荷との間に設置する必要がある。そのため、化石燃料や原子力をエネルギー源として活用する発電システムに比べて導入及び運用コストの高騰を招いている。
特に、メガソーラと呼ばれる大規模太陽光発電システムは、必要な発電量を得るために広大な設置面積を要するので、戸建て住宅や集合住宅、ビル、工場などの屋根や休耕地などの空き地を活用したとしても十分な設置面積を得ることは困難である。加えて、太陽光発電パネルの特性から太陽光を効率良く受けるためにパネル面を最適な日照条件に合わせて調整する必要があり、結果として設置場所は平面である条件も加わり、更に適切な設置場所を得ることが困難である。
太陽光発電パネルは太陽光を受けると、電流が流れて発電が可能となる。しかし、自らの内部抵抗によりジュール熱が発生し、周囲の気温が約25℃を越える場合にはそれ自体で放熱ができないため、発電パネルの内部抵抗が更に高くなり、結果として負荷に供給する電力が大幅に減少する問題を抱えている。この問題に対して、発電パネル素子を自己の電力あるいは外部電力を用いて空冷ファン、液冷装置などにより冷却することは可能である。しかし、この場合には、発電効率の低下や外部電力使用によるコスト増のため一般的には適用されず、太陽光発電パネルの前記問題は未だ効果的な解決方法を得ていない。
さらに、特に2次電池の技術分野においても、正極又は負極の活物質にグラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブなどのナノカーボン材料が活物質として使用されてきている。ナノカーボン材料の活用により、このような2次電池の性能の向上は著しいが、ナノカーボン材料の製膜などの工程を必要とし、セパレータ及び所定の電解質を必須の構成とするため、サイズや形状等について制約があるという問題がある。
このような状況下、本発明者はナノカーボンやグラフェンを含む発電性組成物、これを用いた発電素子、発電装置及び蓄発電装置について特許出願を行った(特許文献3)。特許文献3における発電性組成物は、粉状の電着結合体と、グラフェン粉末を主成分とする導電助剤と、金属水酸化物粉末との混合物からなる。この混合物にはさらに必要に応じて水素ガス抑制剤粉末を添加できる。各構成成分は必要であれば粉砕され、それぞれの最大粒径が略同等となるようにしている。この発電性組成物をそのまま又は加水混合して適宜の外形形状に成形した成形体は発電素子として働く。また、同文献における発電装置は、発電素子を挟むように1対の電極を配置することで得られるものである。さらに、同文献における蓄発電装置は、発電素子を正極材とし、電解液の存在下にこれをセパレータ及び負極材と積層し、正極材及び負極材にそれぞれ集電極を接触させて配置することで得られるものである。
なお、本明細書において、用語「発電性」を赤外光、可視光、紫外線などの光線や熱などの外的刺激によってそれ自体が起電力を生じ、発電する性質の意味で使用する。また、本明細書中の用語「水素ガス発生抑制剤」は通常、電池の分野にて使用されるものではあるが、本明細書においても、この用語の範疇に属する薬剤を用いる場合があるため、説明の便宜上この用語を使用することとする。
特開平7−14573号公報 特開2014−33170号公報 特開2016−60887号公報
多賀 友則、"磁性体微粒子内包カーボンナノカプセルの合成とその磁気特性"、[online]、平成14年度、三重大学工学部、[平成25年3月1日検索]、インターネット〈URL:http://www.ne.phen.mie-u.ac.jp/thesis/2003/taga.pdf〉
本発明者は、特許文献3の発電性組成物についてさらに検討を重ねた結果、ナノカーボンと、導電性材料と、グラフェンを主成分とする導電助剤との電解法による電着結合体を得て、これに金属水酸化物粉末などを加えることで、前記発電性組成物と少なくとも同等程度の発電性能を有するとの知見を得、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、発電性を有する新規な発電性組成物、並びに当該発電性組成物を用いた新規な発電素子、発電装置及び蓄発電装置を提供することを目的とする。
前記目的は、本発明の一局面によれば、ナノカーボン、導電性材料及びグラフェンを含む導電助剤の電着結合体の粉末と、金属水酸化物の粉末及び/又は水素ガス発生抑制剤の粉末との混合物からなることを特徴とする発電性組成物導電性材料によって達成される。
前記電着結合体、前記金属水酸化物及び水素ガス発生抑制剤のそれぞれの粉末の最大粒径はそれぞれ1〜50μmの範囲に設定できる。これら各成分は、必要であれば、最大粒径を揃えるために粉砕できる。前記結合体の粉末は、光線や熱などの外的刺激を受けることによりその内部に活発な電子の移動が生じる。また、この結合体の粉末中に金属水酸化物及び/又は水素ガス発生抑制を含有することで、平衡含水率の水分存在下であっても当該金属水酸化物の表面で還元反応が生じ、これにより前記した電子の移動がさらに促進される。その結果、これら3成分を任意の含有率で混合することで、本発明の発電性組成物は、大小ばらつきはあるがそれ自体発電性を示すようになる。本発明の発電性組成物の発電量の大きさに着目した場合、前記各成分の混合比率は、電着結合体を7〜30体積部、金属水酸化物粉末を55〜90体積部、また水素ガス発生抑制剤粉末を3〜15体積部の範囲にそれぞれ設定するのが好ましい。前記導電助剤には、グラファイトが含まれていてもよい。
本発明の発電性組成物は、これをそのまま、或いはさらに加水混合してペースト状として使用することができる。このように加水混合することで、本発明の発電性組成物の発電性は向上する。このとき、加えるのは例えば純水、超純水又は電解液のいずれでもよく、その添加量は、本発明の発電性組成物100重量部に対し、5〜20重量部、好ましくは7〜18重量部、より好ましくは9〜16重量部の範囲に設定できる。添加量が5重量部未満の場合、本発明の発電性組成物の発電性の向上は認められず、また添加量が20重量部を超えると、水分過多により成形できなくなるためである。
前記目的はまた、前記発電性組成物を粉状のまま又は加水混合し、所定の外形形状に成形した成形体からなることを特徴とする発電素子によって達成される。本発明の発電素子は、加水混合後に成形した成形体を乾燥させた乾燥体であってもよい。
前記目的はまた、本発明の別の局面によれば、前記発電素子が1対の電極板の間にてそれぞれの電極板と接触状態に配置されてなることを特徴とする発電装置によって達成される。
前記目的はまた、本発明のさらに別の局面によれば、前記発電素子からなる正極材と、蓄電用電極材料からなる負極材との積層体が電解液を含んだ状態とされ、1組の集電極の間に形成されてなることを特徴とする蓄発電装置によって達成される。
前記蓄発電装置には、さらに前記正極材と前記負極材との間にこれらを隔離するセパレータを設けることもできる。前記蓄電用電極材は、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金の群から選択される少なくとも1種の多孔質金属薄膜と前記発電性組成物における前記導電助剤との混合物を含んだものとすることができる。
本発明の発電性組成物は、ナノカーボン、導電性材料及びグラフェンを含む導電助剤の電着結合体と、金属水酸化物の粉末若しくは水素ガス発生抑制剤の粉末又はこれら双方の粉末との混合物で構成することとしたので、起電力及び電流出力を生じる発電素子として機能する。そのため、本発明の発電素子は、これを1対の電極の間に挟み込むことで、発電装置を構成できる。
また、本発明の蓄発電装置は、前記発電素子を正極材として用い、この正極材と、蓄電用電極材料からなる負極材との積層体を電解液を含んだ状態とされ、1組の集電極の間に形成することとしたので、それ自体で発電が可能となるだけでなく、蓄電も可能となる。
導電助剤としてのグラフェンの製造方法の一例を示すフロー図である。 本発明の電着結合体の製造方法の一例を示すフロー図である。 本発明の発電装置の一実施形態のを示す平面図である。 本発明の発電装置の一実施形態のを示す側面図である。 本発明の発電装置の実施形態の別の例を示す図である。 本発明の蓄発電装置の一実施形態を示す図である。 本発明の蓄発電装置の実施形態の別の例として、蓄発電セルの平面図である。 図6Aに示す蓄発電セルの断面側面図である。 本発明の蓄発電装置の実施形態のさらに別の例として、蓄発電セルモジュールを示す図である。 本発明の蓄発電セルモジュールが太陽光発電の補助発電機能を果たすことを説明するための図である。 図3Aに示す発電装置において1.3kΩの抵抗を有するテスト回路に接続した場合の電流出力を示すグラフである。 図3Aに示す発電装置の表面温度と発電電圧出力との関係を示すグラフである。 図3Aに示す発電装置の発電電圧の経時変化を示すグラフである。
発電性組成物
以下、本発明の発電性組成物の実施形態について詳細に説明する。本発明の発電性組成物は、粉状の電着結合体と、金属水酸化物粉末若しくは水素ガス発生抑制剤粉末、又はこれら双方との混合物である。
(1)電着結合体
本発明における電着結合体は、ナノカーボンと、導電性材料と、グラフェンを主成分とする導電助剤とを泳動電着により(電解法)結合させたものである。これら3成分の結合の形態は、特に制限されず、これらの混合比、混合順、電極間に印加する電圧及び通電時間などによっても変化すると考えられる。例えば、3成分のいずれかの表面の一部又は全面に残りの成分が電着結合させることができる。以下、それぞれの構成成分について説明した後、本発明の電着結合体の調整方法について説明する。
(1−1)導電性材料
本発明における導電性材料としては、遷移金属や遷移金属の化合物などが挙げられる。具体的には、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、タングステン、イリジウム、白金、金の群から選択された1種若しくは2種以上の遷移金属、又はその酸化物、水酸化物などが挙げられる。これらの中で、遷移金属としてはクロム、鉄若しくはニッケル、又はこれらのうちの少なくとも2種の組み合わせを用いるのが好ましい。また、遷移金属の化合物としては水酸化ニッケル、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄、水酸化リチウム、二酸化マンガンなどが好ましい。
(1−2)ナノカーボン
本発明におけるナノカーボンとしては、フラーレン、CNT若しくはグラフェンを単独で、又はこれらの少なくとも2種の混合物を使用できる。フラーレンは、C60に限定されず、C70あるいはさらに高次のものであってもよい。これらのうち、単独の場合にはフラーレンを用いるのが好ましく、混合物の場合にはフラーレンを主成分としこれとCNTやグラフェンとの混合物を使用するのが好ましい。なお、フラーレンやそのCNTやグラフェンなどとの混合物は、市販品を用いてもよく、後述するように従来公知の方法により調製してもよい。前者の市販品として、例えばフロンティアカーボン株式会社のナノムパープルやナノムミックスなどのシリーズが挙げられる。
ナノカーボンは、グラファイトを出発原料として従来公知の方法により調製できる。ここで、出発原料としてのグラファイトは市販品、例えば伊藤黒鉛工業株式会社や昭和電工株式会社などの人造黒鉛などを用いることができる。また、原料となる煤(グラファイト)を予め生成することもできる。
この煤を得る方法としては、2000℃以上に維持された火炎中で黒鉛を完全に燃焼させた後、有機溶媒を用いたソックスレー抽出法や液体クロマトグラフィーにより煤を分離する高温燃焼法と、高温燃焼法の場合よりも相対的に低い温度の火炎中で黒鉛を燃焼させた後に煤を分離する低温燃焼法とが知られている。本発明においては、高温燃焼法、低温燃焼法のいずれの方法をも採用できる。
好ましくは、煤を得るのに、低温燃焼法を採用するのがよく、原料となる炭化水素に、金属系触媒及び燃焼助剤を添加し十分に撹拌混合した後に、約600〜800℃の温度範囲にて燃焼させるのが特に好ましい。原料としての炭化水素としては、トルエン又はベンゼンなどの不飽和炭化水素が挙げられる。なお、低温燃焼法における環境条件としては、湿度と気圧とが重要である。湿度条件は、相対湿度30%以下、好ましくは28%以下に設定するのが好ましい。また、気圧条件は、101325Pa以下に設定するのが好ましい。
添加する金属触媒としては、鉄、コバルト、銅、ニッケル、銀、金、プラチナ、ルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群のうちの少なくとも1種の金属又はその化合物などを用いることができる。これらの金属触媒のうち、鉄のシクロペンタジエニル錯体であるフェロセン及び硝酸鉄の2種類を用いるのが好適である。また、燃焼助剤としては、2−プロパノールなどの低分子量のアルコールを用いることができる。
これら三者の混合比率については特に制限はないが、通常、炭化水素55〜75重量%、金属触媒1〜5重量%(フェロセン1重量%、硝酸鉄1重量%)、燃焼助剤(2−プロパノール)20〜44重量%に設定される。この混合比率を参考に、金属触媒の混合比率を一定にして炭化水素及び燃焼助剤の混合比率(バランス)を変更することができる。
煤からナノカーボンを抽出分離するには、まず煤を有機溶媒内に少なくとも1回通し、溶媒中のナノカーボン濃度を高めるようにする。このような有機溶媒として、フラーレンを抽出分離するのに用いられる公知のアルカン類、ハロアルカン類、極性分子類、ベンゼン類、ナフタレン類その他の溶媒の中から選択した少なくとも1種を使用できる。ここで、アルカン類としては、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカン、デカリン、シス−デカリン、トランス−デカリンなどが挙げられる。また、ハロアルカン類としては、シクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−プロモエタン,トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロジフルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどが挙げられる。また、極性分子類としては、メタノール、エタノール、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトン、アセトニトリル、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。さらにまた、ベンゼン類としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソ−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、キシレン、о−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン,テトラリン、0−クレゾール、ベンゾニトリル、フルオロベンゼン、ニトロベンゼン、ヨードベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、アニソール、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、1,2,4−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。さらにまた、ナフタレン類としては、1−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、1−フェニルナフタレン、1−クロロナフタレン、1−ブロモ−2−メチルナフタレンなどが挙げられる。さらにその他の溶媒としては、二硫化炭素、2−メチルチオフェン、ピリジン、キノリン、チオフェンなどが挙げられる。
次に、このナノカーボン濃度が高い溶媒をロータリーエバポレータなどの装置でさらに濃縮する方法などを採用できる。さらに、ナノカーボンが例えばフラーレンC60である場合、その純度を高めるためには得られたナノカーボン粒子を真空チャンバー内で約400℃の温度で加熱することで、C60のみが昇華し、それを基板で受けて冷却すると、99.99%の高純度のフラーレンを得ることができる。
(1−3)導電助剤
本発明における導電助剤は、グラフェン粉末を主成分とする。ここで、用語「主成分」とは、導電助剤の大半をグラフェン粉末が占める場合だけでなく、グラフェン粉末単独で導電助剤を構成する場合をも含む意味で使用している。以下では、まずグラフェン粉末について説明し、その後にグラフェン粉末以外の導電助剤について説明する。
(1−3−1)グラフェン粉末
本発明におけるグラフェン粉末としては、単層グラフェンないし多層グラフェンの粉砕品を使用できる。多層グラフェンについては、その層数に特に制限はないが、好ましくは4層程度までに調製されたものを用いるのがよい。このようなグラフェン自体は、例えばグラファイトを出発原料として従来公知の方法で製造して用いてもよく、グラフェンが市販されている場合には、その市販品を用いてもよい。
グラフェンの従来公知の製造方法としては、へき開法、SiC熱分解法及びCVD(化学蒸着)法などが挙げられる。へき開法は、グラファイトの表面からグラフェンを機械的物理的に剥離させるものである。また、SiC熱分解法は、SiC単結晶基板表面を加熱し、ケイ素原子を蒸発させることにより、基板表面に炭素原子を析出させ、当該表面に沿ってグラフェンをエピタキシャルに成長させる方法である。さらに、CVD法は、バルク金属などの表面にて炭化水素ガスを熱分解させることで、当該表面でグラフェンを成長させる方法である。本発明においては、グラフェンを製造するのに、これら公知の方法のいずれを用いてもよい。
また、本発明においては、さらに以下に示す別の方法によりグラフェンを製造することもできる。このグラフェンの製造方法の一例を図1に示す。この図に示すように、まず適当な容器内のアルカリ金属水酸化物の水溶液中に粉状グラファイトを投入する(S01)。ここで、アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウムなどが好ましく、とりわけカリウムが好ましい。また、水溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は特に制限されないが、5〜15質量%程度に設定するのが好ましい。投入量は特に制限されないが、400mlの水溶液に対して10〜50g程度に設定できる。さらにまた、粉状グラファイトは、その最大粒径について特に制限はないが、通常50μm以下の最大粒径のものを用いるのがよい。
このグラファイトが沈降堆積した水溶液に対して継続して超音波を印加して振動を与える(S02)。また同時に、この純水中に1対の電極を所定の間隔離して浸漬し、沈降したグラファイトの堆積層に差し込むように配置し(S03)、電解法に従い当該電極間に直流電圧を継続的に印加する(S04)。直流電圧は適宜設定できるが、本発明においては1〜10Vの範囲に設定するのが好ましい(このとき流れる電流値は通常、1〜100mAを示す。)。2〜100時間程度この状態を継続することで、水道水中のカリウムイオンなどの各種イオンがグラファイトの層間に入りこみ(インターカレート)、グラファイトの層間の結合力に抗してグラファイトの層を剥離させる。そうして、剥離した単層から数層程度のグラフェンは液中を浮遊してくるので、この浮遊物を分離、ろ過する(S05)。
ろ過した浮遊物に適宜の量の純水を加えて湯洗する(S06)。湯洗時間については、アルカリ分を除去できれば特に制限はないが、3〜5時間、好ましくは4〜5時間程度に設定できる。その後、ろ過により固液を分離し固形分を乾燥する(S07)。
乾燥した粉末を粉砕する(S08)。このとき、粉砕産物の最大粒径が1〜50μmの範囲に含まれるようにする。この粉砕産物について適宜粒径測定を行い、最大粒径が前記範囲を超える場合には、さらに粉砕し最大粒径が前記範囲(0.1〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmの範囲)に入るようにするのが好ましい。このような一連の工程を経ることで、単層〜4層程度のグラフェン粉末を安価に得ることができる。この調製方法の場合、グラファイト及びアルカリ金属水酸化物水溶液の補給を行うことで、グラフェンを連続的に製造することも可能となると考えられる。前記したグラフェンの製造工程でグラフェンとして分離されなかったグラファイトは、これを回収し、洗浄・乾燥することで、導電助剤として使用することもできる。
(1−3−2)グラフェン粉末以外の導電助剤
グラフェン粉末以外の導電助剤としては、例えば種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック)、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、コークス、活性炭、炭素繊維(PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維)、カーボンナノチューブなどの炭素材料などが挙げられる。
前記したグラフェン粉末以外の導電助剤のうちでは、グラファイトを好適に使用できる。グラファイトとしては、従来公知の方法で製造したものや市販品を前記方法により最大粒径の範囲(0.1〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmの範囲)となるように粉砕したものを使用できる。また、前記したナノカーボンの出発原料であるグラファイトを粉砕したものも使用できる。
次に、図2を参照しながら、ナノカーボンとして煤を用いる本発明の電着結合体の調製方法について詳細に説明する。図2は、本発明の電着結合体の調製方法の一例を示すフロー図である。この図に示す本発明の電着結合体の調製方法は、ナノカーボンと導電性材料とを電着させた上で、さらにこれをグラフェンと電着結合させるものである。なお、図2に示す方法では、煤由来のナノカーボンを用いるが、これに代えてナノカーボンとして市販のフラーレンなどを用い、これに導電性材料を電着させてもよい。
適当な容器内の二硫化炭素の上に煤を投入する(S11)。その上に、さらに二硫化炭素と同等又は1.5倍量の水溶液を投入する(S12)。この水溶液は、予め前記導電性材料を従来公知の方法にてイオンの形態にて適量存在させたものである。具体的には、純水に、従来公知の方法で導電性材料を溶解させることで得られる。この状態で、超音波を印加して容器中の液に振動を与える(S13)。この超宇音波の印加時間は、数分から数十時間の間で設定できるが、二硫化炭素からのナノカーボンの溶液中への移動を考慮すると、この時間の中で可能な限り長く設定するのが好ましい。設定した印加時間経過後に、二硫化炭素の層の上側の固形分(ナノカーボン)が浮遊する溶液部分を分取する(S14)。
続いて、分取した溶液中に1組の電極を浸して設置し(S15)、1〜80Vの直流電圧を印加して(S03)、ナノカーボンと導電性材料とを電着結合させる(S16)。
使用する電極は、前記二者の結合反応が進むように、イオン化傾向などを考慮して従来公知の各種の電極の中から選択して使用できる。電極の外形形状としてはとくに限定されず、棒状体、帯状体、網状体などの中から適宜選択して使用できる。電極の具体例としては、前記(1)の場合、鉄製、銅製又は白金製の棒状体や帯状体など、前記(2)の場合、ステンレス製の帯状体や網状体など、前記(3)の場合、前記(1)導体の表面にニッケルやクロムなどの鍍金を施したものなどが挙げられる。ここで、網状体は、懸濁液と電極との接触面積を大きくとる場合に好適に用いられる。直流電圧の印加時間の適宜設定でき、特に制限はないが、10〜40時間、好ましくは12〜30時間に設定するのが好ましい。
この直流電圧の印加により、ナノカーボン粒子表面と導電性材料のイオンとがイオン結合などして電着結合体を得ることができる。この段階では、おそらく液相中に生成される結合体は、ナノカーボン粒子表面が導電性材料にてコーティングされた状態となっているものと推測される。
その後、液相中にグラフェン粉末を投入する(S17)。ここで、投入するグラフェンは、前記したいずれのおのであってもよい。そうして、さらに直流電圧を印加して、グラフェンと前記結合体とを電着結合させる(S18)。このときの直流電圧は1〜80V(電流では1〜20A)に設定できる。また、印加時間は適宜設定でき、特に制限はないが、グラフェンと前記結合体とを十分に電着結合させるために、2時間以上で(2〜100時間程度で)極力長く設定するのが好ましい。こうして得られた電着結合体を溶液中から分離した上で、湯洗し(S19)乾燥させる(S20)。
(2)金属水酸化物粉末
金属水酸化物粉末を混合するのは、前記した必須成分が光線や熱などの外的刺激により活発な電子の移動が生じた場合に、平衡含水率の水分存在下に金属水酸化物の表面で還元反応が生じ、これにより電子の移動が促進されるためである。金属水酸化物としては、前記した遷移金属の水酸化物を使用できる。その中でも、オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルト、オキシ水酸化鉄、オキシ水酸化マンガンなどのオキシ水酸化物が好適に使用できる。とりわけ、リチウム二次電池用正極材料として従来から用いられているオキシ水酸化ニッケル(III)(NiO(OH))がより好適に使用できる。
オキシ水酸化ニッケルは、従来公知の各種方法によって製造できる。その一例としては、水酸化ニッケルを水系分散媒中に分散させ、例えば次亜塩素酸などの酸化剤を用いて酸化させることで、オキシ水酸化ニッケルは得られる。
2Ni(OH)+O→2NiO(OH)+O+H
そうして、これを適当な粉砕機を用いて前記した電着結合体と同様の粒度になるように、即ち最大粒径が0.1〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmの範囲となるように粉砕されたものを用いるのがよい。
(3)水素ガス発生抑制剤粉末
水素ガス発生抑制剤粉末は、本発明の発電性組成物中の電着結合体に導電性材料として鉄、ニッケル、コバルトなどの金属が用いられている場合、本発明の発電性組成物を純水などで加水混合してペースト状にする場合に、これらの金属と前記金属水酸化物との反応により水素ガスが発生する場合があり得るので、ガス化前の水素イオンを吸着(吸収)して水素ガスの発生を未然に防止するために添加するものである。また、理論はまだ解明されていないが、本発明の発電性組成物を乾式で用いる場合にも、この水素剥ガス発生抑制剤粉末の存在は発電性組成物の発電性に有利に作用すると思われるため、水素ガス発生抑制剤粉末を添加することが好ましい。さらに、この水素ガス発生抑制剤粉末は、特に本発明の発電性組成物をそのまま(乾式)、又はペースト状として後述するセルなどの密閉容器内に封入するような場合には、特に本発明の発電性組成物に混合しておくことが好ましい。
このような水素ガス発生抑制剤の具体例としては、二酸化マンガンや水素吸蔵合金などの粉末が挙げられる。これらはいずれも前記の最大粒径の範囲(0.1〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μm)に収まるように粉砕されたものであるのがよい。水素吸蔵合金は、LaNi、MmN1などのAB2型、TiMn1.5、ZrMnなどのAB5型、TiFe、TiNiなどのAB型、Ti−Fe系、V系、Mg合金、Pd系、Ca系合金のいずれの種類をも使用できる。
本発明の発電性組成物を調整するには、前記電着結合体の粉末と、前記金属水酸化物粉末及び/又は前記水素ガス発生抑制剤粉末とを混合する。前記電着結合体の粉末に、前記金属水酸化物粉末及び前記水素ガス発生抑制剤粉末を混合して混合物とする場合、
(1) 電着結合体の粉末 7〜30体積部、好ましくは10〜25体積部、より好ましくは15〜25体積部
(2) 金属水酸化物粉末 55〜90体積部、好ましくは60〜85体積部、より好ましくは65〜80体積部
(3) 水素ガス発生抑制剤粉末 3〜15体積部、好ましく5〜15体積部、より好ましくは5〜10体積部
の範囲の任意の比率に設定できる。ここで、金属水酸化物としてはオキシ水酸化ニッケルを、水素ガス発生抑制剤としては二酸化マンガンを用いるのが好適である。
こうして得られる混合物は、その最大粒径が0.1〜50μmの範囲に収まるように、さらに粉砕することができる。このようにさらに混合物を粉砕することで、さらに高い発電性能を示すようになる。
本発明の発電性組成物が光線や熱などの外的刺激を受けることで、熱電変換作用若しくは光電変換作用又はその双方の作用を示し、その結果起電力を生じ、発電性を示すようになる。本発明の発電性組成物の示す発電性についてはその詳細を現在検証中でありまだ不明な点が多いが、金属水酸化物としてオキシ水酸化ニッケルを、水素ガス発生抑制剤として二酸化マンガンを用いる場合、電着結合体中のグラフェンと二酸化マンガンとが蓄積した電子を電着結合体を介して放出し、オキシ水酸化ニッケルがこれらに電子を供給する機能を果たしているのではないかと推測される。
発電素子
本発明の発電性組成物は、その任意の量を適宜の圧力下にて加圧成形して適宜の外形形状の成形体を形成することで、当該成形体内の微小部分において、熱電変換作用(光電変換作用)により電子の移動が生じ、それにより正極、負極が形成され、結果として微小の起電力及び電流出力が連続して得られるようになる。
また、本発明の発電性組成物は、これに加水混合してペースト状にし、適宜の外形形状の成形体を形成することで、さらに高い起電力及び電流出力を生じる。このとき、加える液体として純水、超純水又は後述 する電解液などが使用でき、その添加量は、本発明の発電性組成物100重量部に対し、5〜20重量部、好ましくは7〜18重量部、より好ましくは9〜16重量部の範囲に設定される。また、この成形体を乾燥させることで、乾燥度合に伴い起電力及び電流出力は小さくなるが、その後の吸湿などによる水分変動に応じて起電力及び電流出力は再現性良く変化することが確認される。
発電装置
本発明の発電性組成物を加圧成形し、又は加水混合した上で成形して得られる例えば短円柱状の成形体を1対の金属製の電極板(箔)により挟み込んでそれぞれの電極板が前記成形体に接触するようにする。このような電極板(箔)としては特に制限されず、例えば銅、アルミニウム、鉄、銀などの従来公知の導電性金属製のものを使用できる。この1対の電極板を含む開いた回路において、当該電極板間に起電力が生じ、連続して電流を流すことができる。図3Aは、このような発電装置の実施形態の一例の平面図を、図3Bはその側面図である。また、これらの図において、符号1は本発明の発電性組成物(発電素子)、2は本発明の発電装置、3は不導体の樹脂シート、4、5は電極、6は電流計、7は電圧計、8は負荷である。
図3A及び図3Bに例示する発電装置は、適宜の厚さの不導体の樹脂シート3の中央領域に設けられた表裏に貫通する貫通穴(その直径は適宜設定できる)に、加水し練合わせてペースト状にした本発明の発電性組成物1を充填し、樹脂シートの表裏から当該組成物を1対の電極板4、5で挟み込み、かつ電極板4、5のそれぞれが本発明の発電性組成物1に密着するようにしたものである。図3に示すように、これらの電極板4、5を介して電流計6、電圧計7、負荷8を接続することで、起電力及び当該回路を流れる電流を連続的に測定でき、本実施形態の発電装置の発電性能を確認できる。なお、樹脂シート面の貫通穴が必要であり、樹脂シート自体は必須の構成要素ではないので、例えば、樹脂製などの不導体で形成されたリングなどを用いてもよい。
また、図4は、本発明の発電装置の別の例としてのボタン型セルの断面図を示しているこの図において、ボタン型セル10は本発明の発電性組成物(発電素子)1と、セル電極11及び12と、不導体部13とから構成されている。このようなボタン型セルも十分に本発明の発電装置となり得る。
図3A(図3B)に示す発電装置における電極4,5や図4に示す発電装置における電極12、13には、予め電解法によりその内面に本発明の発電性組成物を電着結合させておくこともできる。これにより、さらに本発明の発電装置は、高い発電性を示すようになる。
本発明の発電装置は、図3A(図3B)及び図4に示す例に限定されない。例えば、本発明の発電性組成物をそのまま直線状の帯状又は棒状に成形し、その両端にこれを挟むように電極板をそれぞれ配置した形態とすることもできる。要するに、本発明の発電性組成物をそのまま又は加水混練して適宜の外形形状の成形体に成形し、その異なる2点にそれぞれ電極を接触させつつ配置することで、本発明の発電装置を形成できる。
蓄発電装置
適宜の外形形状及びサイズに成形した本発明の発電素子を正極材に、また後述する蓄電用電極材料を負極材に用い、電解液の存在下にこれらを2枚の集電極で挟持させることで、本発明の蓄発電装置が得られる。本発明の蓄発電装置は、前記のような構成とすることで、2枚の集電極間における電子及びイオンの移動が活発になり、結果として発電及び蓄電が可能となる。なお、本発明の蓄発電装置には、さらに前記正極材と前記負極材との間にこれらを隔離するセパレータを設けてもよい。
本発明の蓄発電装置の実施形態の一例を図5に示す。この図おいて、符号15は本発明の蓄発電装置、16は正極材(本発明の発電素子)、17はセパレータ、18は負極材、4及び5は集電極(電極板)、6は電流計、7は電圧計である。図5に示す実施形態は、正極材16と負極材18との間にこれらを隔離するセパレータ17を備えるが、前記の通りセパレータは必須の構成ではない。なお、正極材16を構成する発電素子についてはすでに説明したので、重複した説明は省略する。また、図5では、電解液を図示していないが、正極材16、セパレータ17及び負極材18に含浸させているものとする。
[セパレータ17]
セパレータ17は、これを図5に示す実施形態のように用いる場合、薄板状乃至フィルム状を呈し、必要に応じて湾曲させることができる絶縁性多孔体であり、正負両極の短絡を防止するために使用されるものである。その素材や形態について特に限定されないが、例えば、セルロース、ガラス繊維、又は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムなどを使用できる。また、逆浸透膜として使用される公知の微多孔性プラスチックフィルムで構成してもよい。
[負極材18]
負極材18は、耐食性を備えていれば、その素材の種類については特に制限されず、例えば、金属粒子や導電ポリマーなども使用できる。本発明においては、例えば負極材18を多孔質金属薄膜及び導電助剤の混合物で構成してもよい。この場合、多孔質金属薄膜としては、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、導電助剤は多孔質金属薄膜の間隙を充填するためのものであり、前記した発電用電極材料に使用されたものを使用できる。両者の配合比率については特に制限がない。
[電解液]
電解液は、正極材16、セパレータ17及び負極材18中に含浸させて正極材16の還元反応により生じた電解質中のカチオン分子の駆動を容易にするものである。このような電解液としては、例えば適宜の濃度の水酸化カリウム水溶液などの従来公知の各種電解質を含有する水溶液のほか、イオン液体なども使用できる。また、純水(逆浸透膜を通したRO水、脱イオン水、蒸留水などを含む)や超純水などの電解質を極力又は略完全に除去した水を用いることもできる。
本発明の蓄発電装置15は、電解液の存在下に正極材16として本発明の発電素子を用い、これと負極材18との間にセパレータ17を介在させた積層体を2枚の集電極の間に形成することとしたので、光線(特に赤外光)の照射などの外的刺激に起因する還元反応により正極から負極側へのカチオン分子の移動を促し、当該カチオン分子が負極側材表面で吸着されることで電気二重層が形成される。その結果、この蓄発電装置に負荷を接続することで、それ自体で発電とともに蓄電が可能となる。このように、本発明の蓄発電装置15は、赤外光により蓄発電が可能であることから、天候、季節、一日の時間帯に影響されず発電できるようになる。
前記蓄発電装置は、蓄発電セルとして構成することもできる。図6A及び図6Bは、本発明の蓄発電装置の実施形態の別の例として、蓄発電セルを示す断面側面図である。これらの図に示すように、本実施形態の蓄発電セル20は、セル容器22内に収容されている。セル容器22は、有底円筒状の導電性容器23と、円筒状をなし、導電性容器23の開口端に嵌合する鍔部が開口方向一端に設けられた絶縁性の蓋材24とからなる。蓋材24における円筒の鍔のない端部の外径は導電性容器23の開口の直径よりも僅かに小さく設定されており、この端部が導電性容器23内に内嵌するようになっている。また、蓋材24の鍔部を有する端部は2枚の集電極27、28によって閉塞されている。図6A及び図6Bに示す例の蓄発電セル20の場合、これらの集電極27、28が正極側であり、導電性容器23が負極側集電極となる。なお、正極側となる集電極は必要な厚さが確保できれば、前記のように2枚で構成する必要はなく、1枚又は3枚以上の適宜の枚数で構成することができる。また、セル容器22の導電性容器23及び蓋材24は前記の外形形状及び構造に限定されず、例えば現在常用されているボタン電池(図3参照)のような外形形状および構造とすることもできる。
セル容器22の内部には、導電性容器23の底から負極材18、セパレータ17、キャップ材24の内部に配置された正極材16及び正極側集電極28、27の順に積層されている。また、負極材18、セパレータ17及び正極材16の内部には電解液(不図示)が注入され、これら各層は電解液を含んだ状態とされている。さらに正極側集電極27の表面には、銅箔テープからなる赤外線吸収膜25が形成されている。
このような構成の蓄発電セル20の赤外線吸収膜27に光線(主に赤外線)が照射され、伝熱により熱が正電極28を経て正極材16に吸収されると、その内部の発電性組成物における電子の移動が活発になり、電解質との界面で還元反応が生じる。これにより電解質中のカチオン分子が電解液中を正電極から負電極(導電性容器23)側に向けて駆動され、負極材18の表面に吸着されるため、電気二重層が形成される。この状態で、正電極28と負電極である導電性容器23との間に負荷を接続すると、導電性容器16(負極側集電極)を介して電子の移動が発生し、電流が流れ発電が起こる。なお、セル容器の外形形状及び構造は、導電性容器(負極側集電極)23と、蓋材24の正極側集電極とが直接接触して短絡することがないように、不導体を介して両者が嵌合、螺合、接着固定などされていれば、図6A及び図6Bに示す実施形態に限定されない。
蓄発電セル20を複数個、例えばアクリル板などの基板に縦横に配列し、それぞれ並列接続してモジュール化することができる。図7は、そのような蓄発電セルモジュールの一実施形態を示す平面図である。この図に例示する64セル型蓄発電セルモジュール31では、4セル型蓄発電セルモジュール30が縦横各4個、合計16個配列されている。蓄発電セルモジュール30は、4個の蓄発電セル22を1単位として基板上に配列したものである。この蓄発電セルモジュール31の場合、少なくとも5W程度の出力を持つ発電装置として機能する。このようにモジュール化して、隣接する蓄発電セル22、22、・・・同士を適宜並列接続又は直列接続することで、高電圧又は大電流を取り出すことができる。
本発明の蓄発電セルモジュールは、これをさらに複数配列してパネル状に形成し、太陽光発電パネルの排熱吸収や補助発電装置として活用できる。具体的には、パネル状に形成した本発明の蓄発電セルモジュールを太陽光発電パネルの裏面に設置して太陽光発電パネルから放射される赤外線を吸収させ、太陽光発電パネル自体の温度上昇を抑えると同時に、太陽光発電パネルの発電電力に加えて本発明のパネルから補助的に電力を得ることができる。
図8は、本発明の蓄発電セルモジュールが太陽光発電の補助発電機能を果たすことを説明するための図である。この図において、太陽光パネル及び本発明の蓄発電セルモジュールについてのデータはそれぞれ、東京での3月ごろの気候として、天候晴れ、最高気温22℃、最低気温10℃、湿度35〜40%の条件を想定して算出したものである。また、図8は、比較のために最大出力をそれぞれ100%としで発電電力の比率で表示している。本発明の蓄発電セルモジュールは、太陽光パネルにて発電できない時間帯においても発電が可能であり、十分に太陽光パネルの補助発電装置として機能することは図8から明らかであろう。
本発明の蓄発電セルモジュールはまた、前記と同様の方法により工場などの排熱を利用して更に大きな電力を得ることもできる。さらに、本発明の蓄発電セルモジュールは、携帯電話端末やパソコンなどの電源として組込むことも可能である。
以上では、本発明の蓄発電装置及び蓄発電セル(モジュール)は、活性エネルギー線として主に赤外線を吸収して発電する方式について説明した。これは、赤外線より相対的に波長の短い可視光や紫外光などは強い指向性があるので、発電装置を放射源に対して正対させることが必要であるが、相対的に波長の長い赤外光の場合、蓄発電セルモジュールを放射源に正対させる必要がないという利点があるためである。つまり、あらゆる方向から赤外光は入射するので、蓄発電セルモジュールを任意の方向に設置でき、これを積み重ねるなどしても発電効率に影響がないのである。しかし、活性エネルギー線としては、太陽光などの可視光、紫外線などの赤外線以外の光、電磁波などを含めることができる。さらに、空気の振動や磁界の変化などをエネルギー源とした発電にも適用可能であり、電気二重層キャパシタ(EDLC)などのように蓄電に特化して適用することもできる。
また、本発明の蓄発電セルモジュールには、上記したような太陽光をエネンルギー源として発電する装置などを混在して実装することで、さらに設置環境の各種条件に最適な蓄発電機能を果たすようにすることもできる。その場合、必要なら、DC−DCコンバーター、DC−ACコンバーター、平滑化コンデンサなどを含む従来公知の回路を用い、本発明の蓄発電セルモジュール及び上記発電装置の組み合わせ体の出力電圧の昇圧や出力電流の増大を図ってもよい。
次に、実施例により本発明をより詳細に説明する。
[原材料及びその調製方法]
(1)電着結合体
触媒にフェロセン及び硝酸鉄を用い、炭化水素原料としてトルエン試薬(和光純薬工業株式会社製)を低温燃焼法(燃焼条件:600℃)によって燃焼させ煤を得た。各成分の混合量は、トルエン75体積部、硝酸鉄5体積部、2−プロパノール20体積部である。得られた煤0.1gをビーカー内の100mlのニ硫化炭素の上に投入し、その上にニッケルイオンを所定量含有する水溶液150mlを加え、超音波を印加して液相を振動させるとともに、1対のステンレス製の網状体からなる電極を差し込み、これら電極間に48Vの直流電圧を2時間印加して煤由来のナノカーボンと導電性材料とを電着結合させた。その後、この液相に市販のグラフェン30gを投入し、再度直流電圧48Vを48時間印加することで、グラフェンと前記したナノカーボン及び導電性材料の結合体とを電着結合させた。そうして得られた電着結合体を分離、湯洗後、乾燥した上で、粉砕した。こうして得られた電着結合体の最大粒径をSEM観察により確認したところ、12μmであった。
(2)オキシ水酸化ニッケル(金属水酸化物)粉末
水酸化ニッケル試薬(純正化学株式会社製)を純水中に分散させ、酸化材として次亜塩素酸を用いて酸化させ、オキシ水酸化ニッケルを得た。
(3)二酸化マンガン粉末(水素ガス発生抑制材)
純度99.5%、和光純薬工業株式会社製。
[実施例1]
前記した(1)及び(2)の成分を以下の混合比率で計量して粉砕混合して実施例1の試料を得た。得られた試料の最大粒径を同様にSEM観察により確認したところ、10μmであった。
(1)電着結合体 20体積部
(2)オキシ水酸化ニッケル 70体積部
[実施例2]
前記した(1)及び(3)の成分を以下の混合比率で計量して粉砕混合して実施例2の試料を得た。得られた試料の最大粒径を同様にSEM観察により確認したところ、11μmであった。
(1)電着結合体 20体積部
(3)二酸化マンガン 10体積部
[実施例3]
前記した(1)〜(3)の3成分を以下の混合比率で計量して粉砕混合して実施例3の試料を得た。得られた試料の最大粒径を同様にSEM観察により確認したところ、10μmであった。
(1)電着結合体 20体積部
(2)オキシ水酸化ニッケル 70体積部
(3)二酸化マンガン 10体積部
[比較例1]
前記した(2)及び(3)の成分を以下の混合比率で計量して粉砕混合して比較例1の試料を得た。得られた試料の最大粒径を同様にSEM観察により確認したところ、11μmであった。
(2) オキシ水酸化ニッケル 70体積部
(3) 二酸化マンガン 10体積部
前記した実施例1〜3及び比較例1の試料の適量を図3に示すように不導体の貫通孔内に充填した上で、それぞれアルミ製電極板(0.1mm厚)と銅製電極板(0.1mm厚)との間に押圧した状態で挟み込み、図3と同様の方法で時間経過に伴う解放電圧及び電流値を各3回測定した。そうして、解放電圧及び電流についてそれぞれ求めた平均値を乗じて得られる電力の大きい順に以下のように評価した。発電し最大電力を示すもの:◎、発電するも電力は小さいもの:○、発電せず:×。
(結果)
実施例1、2:○
実施例3:◎
比較例1:×
実施例3の試料で制作した発電装置を用いた時間経過に伴う解放電圧及び電流値を測定結果を表1に示す。なお、この測定では、テスターの内部抵抗を2kΩに設定したが、テスター測定子と発電装置との間の接触抵抗などの要因により、負荷抵抗は全体として約4〜4.5kΩ程度であると推測される。
Figure 0006608789
[実施例4〜8]
表2に示す3成分を同表に示す混合比率で混合粉砕して、実施例4〜8の試料を得た。これらの試料の最大粒径は、7〜11μmであった。これらについて、実施例1〜3と同様にして開放電圧及び電流を求めた。その結果を表2に示す。
Figure 0006608789
表2に示すように、電着結合体、オキシ水酸化ニッケル及び二酸化マンガンの3成分を混合した場合でも、各成分の混合比率によって発電性の測定結果に優劣があることが判明した。即ち、実施例7及び8の解放電圧及び電流はそれぞれ、実施例4〜6のそれらと比較して小さく、時間経過によって解放電圧及び電流の測定値が減少する傾向が認められた。
[実施例9]
実施例3の試料に、その全量に対して15重量%となるように計量した純水を当該容器に加えて混合し、ペースト状の発電性組成物を得た。この組成物を図4に示すボタン型セル10内に封入し、以下の試験を行った。なお、このセル10は、容器11がアルミ製、蓋12が銅製である。
(1)負荷抵抗と発電電圧との関係
図3Bに示した発電装置を図4に示すボタン型セル10に代え、図3Bと同様と同様の試験回路を作製した。この試験回路において、電流計6の内部抵抗8(図3に示す負荷8に相当)を1分毎に図9に示す表のとおり変更し、そのときの発電電圧及び電流を読み取った。
その結果、負荷抵抗を変更しても、電圧はほとんど変化しないことが確認された。
(2)セルの表面温度と発電電圧との関係
試験回路のセル10の部分のみヒーター(不図示)の上に載せ、ヒーター出力を変更し、セル表面温度と発電電圧との関係を調べた。その結果を図10に示す。
この結果から、セルの表面温度(発電素子の温度に近似)と発電電圧との間に正の比例関係が認められることを確認した。
(3)ボタン型セルの発電電圧の経時変化
次に、上記(1)及び(2)の試験後に、同じ試験回路において、発電電圧の経時変化を調べた(216時間経過まで)。
その結果、わずかに減少傾向は示すものの、安定した電圧を示すことが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、ナノカーボンと、導電性材料と、グラフェンを主成分とする導電助剤との電解法による電着結合体を得て、これに金属水酸化物粉末などを加えることで、発電性能を有する新規な発電性組成物、並びに当該発電性組成物を用いた新規な発電素子、発電装置及び蓄発電装置が得られることが明らかである。
本発明の発電性組成物及び発電素子は、従来の熱電変換素子又は光電変換素子の代替物として使用可能であり、種々の形態をとり得るので、発電可能なインクや部材として利用可能である。また、本発明の発電装置及び蓄発電装置は、太陽光発電装置などを補完うものとして又は蓄電池の代替物として利用可能である。
1・・・発電性組成物(発電素子)、 2・・・発電装置、 3・・・樹脂シート、 4、5・・・電極板(集電極)、 6・・・電流計、 7・・・電圧計、 8・・・負荷、 10・・・ボタン型セル、 11・・・セル電極(容器)、 12・・・セル電極(蓋)、 13・・・不導体部、 15・・・本発明の蓄発電装置、 16・・・正極材(本発明の発電素子)、 17・・・セパレータ、 18・・・負極材、 20・・・蓄発電セル、 22・・・セル容器、 23・・・導電性容器(負極側集電極)、 21・・・キャップ材、 25・・・赤外線吸収膜、 27、28・・・正極側集電極、 30・・・4セル型蓄発電セルモジュール、 31・・・64セル型蓄発電セルモジュール

Claims (19)

  1. ナノカーボン、導電性材料及びグラフェンを含む導電助剤の電着結合体の粉末と、金属水酸化物の粉末及び/又は水素ガス発生抑制剤の粉末との混合物からなることを特徴とする発電性組成物。
  2. 前記結合体の粉末、前記金属水酸化物の粉末及び前記水素ガス発生抑制剤の粉末の最大粒径はそれぞれ0.1〜50μmの範囲にある請求項1に記載の発電性組成物。
  3. 前記混合物は、最大粒径が0.1〜50μmの範囲に収まるように粉砕されたものである請求項1に記載の発電性組成物。
  4. 前記結合体の粉末、前記金属水酸化物の粉末及び前記水素ガス発生抑制剤の粉末は、これらを混合して混合物とする場合、以下の混合比率の範囲に設定されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電性組成物。
    (1) 結合体の粉末 7〜30体積部
    (2) 金属水酸化物粉末 55〜90体積部
    (3) 水素ガス発生抑制剤粉末 3〜15体積部
  5. 前記金属水酸化物はオキシ水酸化ニッケルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の発電性組成物。
  6. 前記水素ガス発生抑制剤は二酸化マンガンである請求項1〜5のいずれか1項に記載の発電性組成物。
  7. 前記導電助剤は、グラファイトを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の発電性組成物。
  8. さらに純水、超純水又は電解液を加えて混合することによりペーストとされてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の発電性組成物。
  9. 純水、超純水又は電解液の混合比率は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉状混合物100体積部に対し、5〜20体積部の範囲に設定されてなる請求項8に記載の発電性組成物。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の発電性組成物を所定の外形形状に成形した成形体であることを特徴とする発電素子。
  11. 請求項8又は9に記載の発電性組成物を所定の外形形状に成形した成形体からなることを特徴とする発電素子。
  12. 前記成形体を乾燥させた乾燥体である請求項11に記載の発電素子。
  13. 請求項10〜12のいずれか1項に記載の発電素子が1対の電極板の間に、それぞれの電極板と接触させて配置されてなることを特徴とする発電装置。
  14. 請求項10〜12のいずれか1項に記載の発電素子からなる正極材と、蓄電用電極材料からなる負極材との積層体が電解液を含んだ状態で1組の集電極の間に形成されてなることを特徴とする蓄発電装置。
  15. さらに前記正極材と前記負極材との間にこれらを隔離するセパレータが設けられてなる請求項14に記載の蓄発電装置。
  16. 前記蓄電用電極材は、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金の群から選択される少なくとも1種の多孔質金属薄膜と導電助剤との混合物を含んでなる請求項13〜15のいずれか1項に記載の蓄発電装置。
  17. 前記1組の集電極は、一方が有底筒状の導電性容器であり、他方が当該導電性容器に嵌合可能な蓋材の少なくとも一部に内外に露出するように設けられており、前記導電性容器と前記蓋材とを組み合わせることでセル容器が形成されてなる請求項14〜16のいずれか1項に記載の蓄発電装置。
  18. 基板上に請求項16に記載の蓄発電装置を複数縦横に配列実装し、前記各蓄発電装置とともに外部に引出可能な1対の端子を互いに電気的に接続してセルモジュールが形成されてなることを特徴とする蓄発電装置。
  19. 煤を有機溶媒中に投入する工程と、さらに導電性材材料が溶解している水溶液を当該有機溶媒上に投入する工程と、この2層に分離する液相に超音波を所定時間印加し有機溶媒中の固形分の水溶液中への移動を促進する工程と、当該液相中から固形分が浮遊する水溶液の部分を分取する工程と、当該分取した水溶液中に1対の電極を設置し、直流電圧を印加して固形分に水溶液中の導電性材料を電着結合させる工程と、さらにグラフェンを投入する工程と、直流電圧をさらに所定時間印加して当該投入したグラフェンに前記固形分と導電性材料との電着したものを電着結合させる工程と、前記直流電圧印加時間経過後に湯洗、乾燥する工程とを含むことを特徴とする発電性組成物原料としての電着結合体の製造方法。
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