JP2018032968A - 平面アンテナ - Google Patents

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Abstract

【課題】2種類の円偏波からなる複数の異なるOAM波を同時に多重化して送受信することができる平面アンテナを提供すること。【解決手段】本発明は、円偏波を放射する複数の信号放射口Sが配列された第1の導体板2と、第1の導体板2との間に信号を導波する第1導波部Xを形成して複数の各信号放射口Sから信号を放射させる第2の導体板3とを有する信号放射部10と、第2の導体板3に設けられ、第1導波部Xに電力を供給するための複数の第1給電素子を有する第1給電部P1−P4と、複数の第1給電素子P1−P4のそれぞれに所定の位相差を与えて給電するための回路部20と、を有し、回路部20は、第1給電部Pから第1導波部Xにおいて外向きの電磁波を導波するよう給電し、信号放射部10から偏波方向が一定方向に回転する円偏波からなる複数の異なる螺旋ビームを放射させる、平面アンテナ1である。【選択図】図1

Description

本発明は、螺旋ビームを形成して多重送信する平面アンテナに関する。
現在、無線信号に軌道角運動量(OAM:Orbital Angular Momentum)を与え、信号を螺旋状ビームに形成して送受信する通信技術が研究されている。螺旋状ビームとして形成されるOAM波の信号は、等位相面が螺旋状に回転している。OAM波は、位相をずらすことによって多数の回転モードの信号を多重化することができる。
OAM波については、光通信から無線通信に適用することが研究されている。OAM波をミリ波・マイクロ波の無線通信に適用すると、同一の周波数で複数の信号を多重化することができ、通信を高速かつ大容量化することができる。
特開平6−90115号広報
J.Butler and R. Lowe, "Beam-forming matrix simplifies design of electronically scanned antennas," Electronic Design, vol.9, no.8, pp.170-173, April 1961. K Tekkouk, M Ettorre, R Sauleau and M Casaletti, "Folded Rotman lens multibeam antenna in SIW technology at 24 GHz" 6th European Conference on Antennas and Propagation (EUCAP), pp.2308-2310 March 2012
パラボラアンテナの代替として平面アンテナであるラジアルラインスロットアレイアンテナ(RLSA)が用いられる場合がある。特許文献1には、ラジアル導波路に設けられたスロットを用いた平面アンテナ(RLSA)が記載されている。この平面アンテナは、3枚の導体円板を平行に配置してなる2層構造のラジアル導波路を有し、ラジアル導波路に設けた多数の線状スロットによって送受信する。
この平面アンテナは、2層のラジアル導波路によって外向き及び内向きの電磁波を発生させる。これにより、この平面アンテナは、右旋の偏波と左旋の偏波を同時に放射するよう構成されている。しかし、この平面アンテナでは、回転モードのOAM波を多重して放射させることができない。
本発明は、複数の異なるOAM波を同時に多重化して送受信することができる平面アンテナを提供することを目的とする。
本発明に係る平面アンテナは、円偏波を放射する複数の信号放射口が配列された第1の導体板と、前記第1の導体板との間に信号を導波する第1導波部を形成して複数の各前記信号放射口から信号を放射させる第2の導体板とを有する信号放射部と、
前記第2の導体板に設けられ、前記第1導波部に電力を供給するための複数の第1給電素子を有する第1給電部と、
複数の前記第1給電素子のそれぞれに所定の位相差を与えて給電するための回路部と、を有し、
前記回路部は、前記第1給電部から前記第1導波部において外向きの電磁波を導波するよう給電し、前記信号放射部から偏波方向が一定方向に回転する円偏波からなる複数の異なる螺旋ビームを放射させる。
本発明は、平面アンテナにおいて回路部で位相差が付けられた回転モードの給電をすることにより前記信号放射部から等位相面が傾いた複数の異なる螺旋ビームを出力することができる。
平面アンテナの前記信号放射部は、第1導波部に信号を導波する第2導波部を形成する第3の導体板と、
前記第3の導体板に設けられ、前記第2導波部に電力を供給するための複数の第2給電素子を有する第2給電部と、
を更に有し、
前記回路部は、所定の位相差を付けるよう複数の前記第2給電素子にそれぞれ給電し、前記第2給電部から前記第2導波部を通じて前記第1導波部において内向きの電磁波を導波するよう給電し、
前記信号放射部から偏波方向が前記一定方向と逆方向に回転する円偏波からなる複数の異なる螺旋ビームを放射させる、よう構成されていてもよい。
本発明は、信号放射部に外向きの電磁波を導波させて一定方向に回転する円偏波を放射させることに加え、同時に信号放射部に内向きの電磁波を導波させることにより逆旋の円偏波を放射させることにより、多重度を2倍にすることができる。
平面アンテナの円板状に形成された前記第1の導体板において複数の前記信号放射口が螺旋状又は同心円状に配列され、ラジアルラインスロットアンテナとして構成されていてもよい。
平面アンテナの前記回路部は、4N個(Nは1以上の整数)分岐した複数の導波管からなる1層導波管回路で形成され、0度及び±360×N度以下の位相差の複数の回転モードを給電するよう構成され、
複数の前記導波管の出力側にそれぞれ接続された複数の前記第1給電素子は4N個設けられ、前記第2の導体板の軸線周りに同心円状に配置されていてもよい。
本発明は、このような構成により、円形の信号放射部から複数の異なる円偏波からなる回転モードの螺旋ビームを出力することができる。
平面アンテナは、複数の前記導波管にそれぞれ接続された複数の前記第2給電素子は4×N個設けられ、前記軸線周りに同心円状に配置されているよう構成されていてもよい。
本発明は、このような構成により、円形の信号放射部から複数の異なる逆旋の円偏波からなる回転モードの螺旋ビームを多重化して出力することができる。
平面アンテナは、方形に形成された前記第1の導体板を通る軸線を中心に複数の前記信号放射口がマトリクス状に配列されたアレーアンテナとして構成されていてもよい。
平面アンテナは、複数の前記回路部の出力側に接続された方向角制御回路部を更に有し、
前記方向角制御回路部は、前記回路部から給電された信号の回転モードに基づいて方向角が制御された複数のビームを生成すると共に、前記軸線について対称に選択される一対の前記ビームに対して直交する位相差を付けて前記給電部に入力するよう構成されていてもよい。
本発明は、このような構成により、信号放射部の幅方向に対して直交する信号を出力して多重度を増やすと共に、回転モードに基づいて広がる複数のビームの方向角を中心方向に集めることができる。
方形の平面アンテナにおいて、前記回路部は、4N個(Nは1以上の整数)分岐した複数の導波管からなる1層導波管回路で形成され、0度及び±360×N度以下の位相差の複数の回転モードを給電するよう構成され、
複数の前記導波管から出力された電磁波を導波する複数の前記第1給電素子は、前記軸線を通る前記第2の導体板の中心線に沿って給電するよう前記第2の導体板に配置されていてもよい。
本発明は、このような構成により、信号放射部から異なる複数の螺旋ビームを出力することができる。
方形の平面アンテナにおいて、複数の前記導波管から出力された電磁波を導波する複数の前記第2給電素子は、前記軸線を通る前記第3の導体板の中心線に沿って給電するよう配置されている、
本発明は、このような構成により、方形の信号放射部から逆旋の2種類の円偏波からなる複数の異なる回転モードの螺旋ビームを多重化して出力することができる。
方形の平面アンテナにおいて、前記方向角制御回路部は、信号の回転モードに基づいて1次元又は2次元方向に方向角が制御された複数のビームを生成するよう構成されていてもよい。
本発明は、このような構成により、回転モードに基づいて1次元方向又は2次元方向に広がる複数のビームの方向角を中心方向に集めることができる。
本発明にかかる平面アンテナによると、逆旋の2種類の円偏波からなる複数の異なるOAM波を多重化して同時に送受信することができる。
本発明の第1実施形態に係る平面アンテナの構成を示す平面図及び断面図である。 本発明の給電部の構成を示す平面図である。 本発明の回路部の構成を示すブロック図である。 回路部の構造を示す平面図である。 回路部を構成するショートスロット結合器の斜視図である。 スロットペアの原理を説明する図である。 平面アンテナを用いて送受信する状態を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る平面アンテナの構成を示す平面図及び断面図である。 本発明の第3実施形態に係る平面アンテナの構成を示す平面図及び断面図である。 平面アンテナの給電部の構成を示す平面図である。 平面アンテナの方向角制御回路部の構成を示す図である。 平面アンテナの180度ハイブリッド分配器の構成を示すブロック図である。 ロットマンレンズの原理を説明する図である。 方向角制御回路部により方向角が制御される状態を示す図である。 本発明の第4実施形態に係る平面アンテナの構成を示す平面図及び断面図である。 本発明の第5実施形態に係る平面アンテナの構成を示すブロック図である。 本発明の変形例における回路部の構成を示すブロック図である。
以下、図面を参照しつつ本発明にかかる平面アンテナの実施形態について説明する。なお、以下の説明では便宜上、送信用の平面アンテナについて記載するが、相反定理により受信用の平面アンテナについても適用できる。
[第1実施形態]
図1〜図4に示されるように、平面アンテナ1は、信号を放射するための信号放射部10と、信号放射部10に電気的に接続され信号電力を供給するための回路部20とを有する。信号放射部10は、複数のスロットペアSが配列された円板状の導体板(第1の導体板)2を有する。導体板2は、金属等で形成された導体円板である。スロットペア(信号放射口)Sは、長方形の貫通孔であるスロットS1,S2のペアからなる(図6参照)。
複数のスロットペアSは、導体板2において中心C1周りの螺旋に沿って螺旋状に配置され、ラジアル線路を形成している。この螺旋のピッチは、隣接するスロットペアS同士の間隔が1/2波長程度となるように設定する。スロットペアSにおいて、スロットS1,S2は、互いに直角をなすハの字状に配置されている(図6参照)。
スロットS2は、導体板2の中心C1から径方向に向かう線Rに対して45度に配置されている。スロットS1,S2の中心間の距離は、1/4波長である。矢印A方向の電磁波に対してスロットペアSから偏波方向が右旋の円偏波が出力される。矢印B方向の電磁波に対してスロットペアSから偏波方向が左旋の円偏波が導体板2の一面(放射面)2a側方向に放射される。即ち平面アンテナ1は、ラジアルラインスロットアレイアンテナ(RLSA)である。
複数のスロットペアSは、導体板2に同心円状に配置されていてもよい。導体板2の他面2b側には、円板状の導体板(第2の導体板)3が一面3a側を対向して配置されている。導体板3は、導体板2と同径である。導体板2と導体板3との側面には、外周に沿って円環状の側壁4が延在している。これにより、導体板2と導体板3との間には信号が導波される第1導波部Xが形成される。導体板2と導体板3との間には、誘電体材料などの適当な遅波構造(不図示)が設けられている。
第1導波部Xで外向きの電磁波が導波された場合には、スロットペアSから右旋の円偏波が出力される。また、第1導波部Xで内向きの電磁波が導波された場合には、スロットペアSから左旋の円偏波が導体板2の一面2a側方向に放射される。上記のスロットペアSは、第1導波部Xで導波される外向きの電磁波によって円偏波の偏波方向が逆方向に励振されるよう形成されていてもよい。
図2に示されるように、導体板3には、中心点C周りに給電部(第1給電部)Pが設けられている。給電部Pは、長方形の貫通孔である複数の給電スロットP1〜P4からなる。それぞれの給電スロット(第1給電素子)P1〜P4は、中心C2を通る軸線W(図1参照)に対して同心円状に配置されている。給電スロットP1〜P4の代替として、プローブを用いてもよい。
この給電スロットP1〜P4の配置によっては、給電スロットP1〜P4から出力される信号が互いに影響して相互結合が生じる場合がある。この相互結合は、信号放射部10から出力される信号の所望の回転モード励振を妨げる可能性がある。相互結合を抑圧するために、必要に応じて信号放射部10のラジアル線路の中心C1に短絡ピンを設けたり、給電スロットP1〜P4間に短絡壁を設けたりする。
導体板3の他面3b側において、それぞれの給電スロットP1〜P4は、後述する回路部20の複数の出力ポートF1〜F4(図3参照)がそれぞれ接続される。給電スロットP1〜P4のそれぞれと出力ポートF1〜F4のそれぞれとは位相差が生じないように等長の電気長の導波路(不図示)で接続される。
図3及び図4に示されるように、回路部20は、非特許文献1のバトラーマトリクス回路の原理が用いられる。回路部20は、第1導波部Xに回転モードで給電する。回路部20は、4分岐1層構造多重直交回転モード導波管回路として構成される。回路部20は、平行に配置された4本に分岐している導波路E1〜E4によって構成される。それぞれの導波路E1〜E4の一端側をそれぞれ入力ポートD1〜D4とし、他端側をそれぞれ出力ポートF1〜F4とする。
入力ポートD1〜D4と出力ポートF1〜F4との間には、信号電力を分配する複数のハイブリッド分配器21〜24が配置される。そして、信号電力を隣接する導波路に交差させて導波する複数の交差器25,26が配置される。さらに、導波される信号電力に位相を付ける複数の位相器27〜29が配置される。
ハイブリッド分配器21〜24及び交差器25,26は、既知のショートスロット結合器B(図5参照)によって形成される。ショートスロット結合器B内のスロットB1のスロット長lを調整することによりハイブリッド分配器21〜24又は交差器25,26として形成される。位相器27〜29は、導波路E1,E2の経路上で突起として形成される。
ハイブリッド分配器21〜24は、隣接する導波路に信号電力を分配して導波する。このとき、ハイブリッド分配器21〜24によって隣接する導波路に分配された方の信号電力には−90度の位相差が付けられる。位相器27〜29は、導波された信号電力に−90度の位相差を付ける。回路部20の上記構成により、入力される信号電力には、以下の散乱行列で与えられる位相差が付けられて出力される。
Figure 2018032968
この散乱行列において、各列が入力ポートD1〜D4のそれぞれの入力に対応し、各行における各行が出力ポートF1〜F4から出力される信号電力に付される位相差を表す。即ち、入力ポートD1から入力される信号電力は、出力ポートF1〜F4からそれぞれ−180度の位相差が付けられて出力される。
この場合、各出力ポートF1〜F4から出力される信号電力の位相差は0度である。従って入力ポートD1からの入力により、出力ポートF1〜F4からexp(0Φ)に対応する回転モードの位相差が付けられて信号電力が出力される(実際には位相差はない)。
入力ポートD3から入力される信号電力は、出力ポートF1〜F4からそれぞれ−180度、−270度、0度、−90度の位相差が付けられて出力される。この場合各出力ポートF1〜F4から出力される信号電力の位相差は−90度である。従って入力ポートD3からの入力により、出力ポートF1〜F4からexp(-jΦ)に対応する回転モードの位相差が付けられて信号電力が出力される。ここでexp(-jΦ)は、左回りに360度位相が遅れることを意味する。
入力ポートD4から入力される信号電力は、出力ポートF1〜F4からそれぞれ−270度、−180度、−90度、0度の位相差が付けられて出力される。この場合各出力ポートF1〜F4から出力される信号電力の位相差は+90度である。
従って入力ポートD4からの入力により、出力ポートF1〜F4からexp(+jΦ)に対応する回転モードの位相差が付けられて信号電力が出力される。ここでexp(+jΦ)は、左回りに360度位相が進むことを意味する。また、ここでは入力ポートD2は用いないものとする。
出力ポートF1〜F4は、上記の通り給電スロットP1〜P4に接続されている。そして、給電スロットP1〜P4のそれぞれから信号電力は出力ポートF1〜F4と同様の位相差が付けられて出力される。このそれぞれの回転モードの給電により、第1導波部Xではexp(0Φ)、exp(-jΦ)、exp(+jΦ)に対応するそれぞれの回転モードの外向きの電磁波が導波される。
ここで、信号放射部10には上記の通り複数のスロットペアSからなるラジアル導波路が形成されている。これにより、信号放射部10から放射される信号は、導体板2の周方向及び径方向の全体に渡って励振される。
exp(0Φ)で励振される信号は、導体板2の放射面2aから周方向に一様に放射される。この場合、導体板2の放射面2aからは、右旋の円偏波からなるペンシルビームが回転モードで放射される。exp(-jΦ)、exp(+jΦ)で励振される信号は、導体板2の放射面2aの中心C1で放射される電界の位相が反対となって打ち消し合い、導体板2の放射面2aから右旋の円偏波からなるコニカルビームがそれぞれの回転モードで放射される。
これにより、exp(0Φ)、exp(-jΦ)、exp(+jΦ)に対応するそれぞれの回転モードの信号は、周方向の電磁界分布が互いに直交性を有しているOAM波となる。従って、平面アンテナ1によると、これらの信号を同時に放射して通信することができる。
また、上記のように平面アンテナ1において、4分岐1層構造の回路部20によってexp(0Φ)、exp(-jΦ)、exp(+jΦ)のそれぞれの回転モードの信号を多重する例を記載したが、他の多重度の場合も同様に構成することができる。例えばexp(+2jΦ)、exp(+jΦ)、exp(+Φ)、exp(-jΦ)、exp(-2jΦ)の5つの直交回転モードを励振する場合には、8個の給電ポートと8分岐の導波管回路とを用いればよい。
この場合,ラジアル線路の中心付近の導体板3には8個の給電スロットを同心円状に設ければよい。即ち、nを整数として、exp(±jnΦ)のモードで多重する場合には、4×N個(Nは1以上の整数)の分岐の1層導波管回路を用いればよい。そして、複数の給電スロットは、4×N個設け、導体板2の中心C2を通る軸線Wの近傍に同心円状に配置すればよい。これにより、回路部20は、0度及び±360×N度以下の位相差の回転モードを給電するよう構成される。
また、上述した平面アンテナ1は受信用のアンテナとしても用いることができる。図7に示されるように、2個の平面アンテナ1を送受間で対向させて配置する。2個の平面アンテナ1により、ペンシルビームあるいはコニカルビームの形状をした主ビームが受信できる距離Lで送受信を行う。距離Lは信号放射部10の直径等により定まる。
上述したように平面アンテナ1によると、周方向の電磁界分布の直交性により、同じ周方向位相分布の間で独立した多重度の伝送が実現できる。即ち、平面アンテナ1によると、偏波方向が一定方向に回転する円偏波からなる複数の異なる螺旋ビームを送受信することができる。
[第2実施形態]
平面アンテナ1においては、給電部Pから給電して第1導波部Xに外向きの電磁波を導波することで一定方向に回転する円偏波からなる複数の異なる螺旋ビームを放射させている。本実施形態では、偏波方向が逆方向に回転する円偏波を放射させる。以下の説明では上記実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、同様の説明については適宜省略する。
図8に示されるように、平面アンテナ30は、信号放射部31において、第1導波部Xの下層に第2導波部Yを有している。信号放射部31において、導体板3の他面3b側に対向して円板状の導体板(第3の導体板)35が配置されている。導体板2と導体板35と側面には、外周に沿って円環状の側壁34が延在している。側壁34は外方に向かって断面が湾曲しており、導体板3の外周には接していない。これにより、導体板3の外周には導波路Uが形成されている。
導体板2と導体板3とによって第2導波部Yが形成されている。第2導波部Yは、第1導波部Xと同様に構成することができる。導体板35の中心近傍には給電部Pと同様の複数の給電スロット(第2給電素子:不図示)からなる給電部(第2給電部)Qが設けられている。複数の第2給電素子は、導体板3を通る軸線W回りに同心円状に配置されている。これにより、複数の第2給電素子は、軸線W周りに同心円状に給電することができる。
給電部Qには、給電部Pと同様に回路部20の出力ポートF1〜F4から複数の導波管が複数の第2給電素子にそれぞれ接続されている。回路部20は、別途設けてもよいし、電力分配器を用いて分配して共用してもよい。
これにより、給電部Qに回転モードの信号電力を給電すると、第2導波部Yで導波された電磁波は、第1導波部Xに対して内向きに導波される。そうすると、給電部Qから入力されることによって導体板2で放射される信号は、給電部Pから入力されて放射される信号とは偏波方向が逆方向の左旋の円偏波からなる信号として放射される(図6参照)。
従って平面アンテナ30において、exp(0Φ)、exp(-jΦ)、exp(+jΦ)のそれぞれの回転モードの信号を給電部Qから入力すると、左旋の円偏波からなる3つの異なる螺旋ビームを放射させることができる。これにより、平面アンテナ30は、複数のスロットペアSに対して外向き、内向きに複数の電磁波を同時に入射させることで、2種類の複数の偏波を回転モードで励振することができ、第1実施形態に比して多重度を2倍にすることができる。
[第3実施形態]
上記実施形態では、円形の平面アンテナについて記載しているが、上記の原理は方形の平面アンテナにも適用することができる。
図9に示されるように、平面アンテナ40は、方形の円偏波スロットペアアレーアンテナとして構成されている。平面アンテナ40は、信号を放射する信号放射部41と、信号放射部41に信号電力を供給する回路部20と、信号放射部41と回路部20の出力側に接続された方向角制御回路部50とを有する。
信号放射部41は、方形の導体板(第1の導体板)42と方形の導体板(第2の導体板)43を有する。対向して配置された導体板42と導体板43との外周には周壁45が延在している。これにより、導体板42と導体板43との間に第1導波部V1が形成されている。導体板2には、軸線Mを中心に複数のスロットペアSがマトリクス状に配列されている。導体板2の中心線K上にはスロットペアSは形成されていない。
図10に示されるように、導体板3において、中心線Kに沿うように給電部Jが列状に形成されている。給電部は、4個以上の複数の給電スロットJ1〜Jmからなる。給電スロットJmは矩形の貫通孔である。給電スロットJ1〜Jmの代わりにプローブを用いてもよい。給電スロットJ1〜Jmのそれぞれの間の相互結合が所望のモード励振を妨げる可能性がある。相互結合を抑圧するために、必要に応じて給電スロットJ1〜Jmのそれぞれの間に短絡壁を設けてもよい。
給電部Jは回路部に20によって給電される。給電部Jは、方向角制御回路部50を介して回路部20に接続されている。
図11に示されるように、方向角制御回路部50は、位相調整部51と、平面レンズ回路部55とを有する。位相調整部51は、回路部20から出力される信号電力の位相を調整する。位相調整部51は、回路部20の入力ポートD3と入力ポートD4に接続された180度ハイブリッド分配器52を有する(図12参照)。180度ハイブリッド分配器52は、入力された信号電力を分配し、分配された信号電力に対して−180度の位相差を与える。
180度ハイブリッド分配器52は、分配された信号電力に対して−90度の位相差を与えるハイブリッド分配器53と−90度の位相差を与える−90度位相器54とを有する。―90度位相器54は、90度ハイブリッド分配器53の出力ポートの1つ(出力ポートF4)に接続されている。180度ハイブリッド分配器52が接続された入力をそれぞれ入力ポートD3‘,D4’とする。
方形の平面アンテナ40の幅をaとすると、入力ポートD4’からの入力でcos(2πx/a)、入力ポートD1からの入力でcos(0πx/a)、入力ポートD3’からの入力でsin(2πx/a)に対応するモードがそれぞれ励振される。入力において多重度を増やす場合も同様に構成することができる。
例えば、cos(4πx/a)、cos(2πx/a)、cos(0πx/a)、sin(2πx/a)、sin(4πx/a)の5つの直交回転モードの励振には、8個の給電点と8分岐の導波管回路を用いればよい。この場合、給電部Jには8個あるいはそれ以上の給電スロットを列状に設ければよい。
方形円偏波スロットペアアレーアンテナの幅の両端で2nπの位相差を得る一対の角度を±Φとし,その2つの角度に入力を設ける。その2つの入力に対し,180度ハイブリッド分配器52を介して接続することで、cos(2nπx/a)、sin(2nπx/a)の直交する2つの分布が実現する。即ち、位相調整部51は、生成される複数のビームのうち、軸線Mについて対称に選択される一対のビームに対して直交する位相差を付ける。位相調整部51は、回路部20と一体に設けられていてもよい。
平面レンズ回路部55は、例えば非特許文献2に記載されたロットマンレンズ回路からなる。ロットマンレンズ回路は、アレー素子に所望の振幅及び位相を与えることにより、放射されるビームの方向角を変えるための給電回路である(図13参照)。平面レンズ回路部55の入力部56には、位相調整部51で位相調整された信号電力が入力される。
平面レンズ回路部55の出力部57からは方向角が変化したビームが出力される。出力部57には、給電部Jの幅aにビーム幅を広げるホーン等の構造が用いられる。平面レンズ回路部55から出力されたビームは、第1導波部V1に導波され、信号放射部41から円偏波のビームとして出力される。
図13に示されるように、ロットマンレンズ回路は、1の給電点から給電された信号電力を振幅が拡大され、方向角に変化が与えられたビームとして出力する。ここで、平面レンズ回路部55が無いとすると、図14(a)に示されるように、ビームは回転モードによって方向角が異なるビームとなる。
cos(2πx/a)及びsin(2πx/a)で励振されるビームの方向角は、cos(πx/a)及びsin(πx/a)で励振されるビームの方向角より広い。従って、図14(b)に示されるように、平面レンズ回路部55は、給電された信号の回転モードの周波数に基づいて励振されるビームの方向角を中心方向に向くように制御することができる。
即ち、方向角制御回路部50は、回路部20から給電された信号の回転モードに基づいて方向角が制御された複数のビームを生成すると共に、軸線について対称に選択される一対のビームに対して直交する位相差を付けて給電部Jに入力するよう構成されている。
上述した方形の平面アンテナ40は、受信用のアンテナとしても用いることができる。送受間で同じ平面アンテナ40を対向させると、ペンシルビームあるいは2つの斜めビーム形状の主ビームが受信できる距離で送受信を行うことができる。方形の平面アンテナ40によると、幅方向の電磁界分布に直交性があるため、同じ幅方向分布の間で独立した伝送が実現できる。
[第4実施形態]
上記の方形の平面アンテナ40においても信号放射部41に内向きの電磁波を導波することにより逆旋の円偏波を出力させることができる。
図15に示されるように、第2実施形態と同様に導体板43の下方に導体板46を対向して配置して第2導波部V2を設け、導体板43の両側面に形成された一対の導波路Hにより実現できる。即ち、給電部J2で給電された信号電力を第2導波部V2で導波し、導波路Hから第1導波部V1の両側から内向きに導波することにより、信号放射部41から逆旋の円偏波を出力させることができる。
一対の導波路Hからの入力は、導体板46以外に方向角制御回路部50から導波管やプローブ等を用いて導波してもよい。上記構成により、方形の平面アンテナ40でも2種類の複数の偏波を回転モードで励振することができ、第3実施形態に比して多重度を2倍にすることができる。
[第5実施形態]
第3及び第4実施形態に係る方形の平面アンテナよりも更に信号の多重度を増やす場合は、2次元に拡張された回路部を用いることができる。
図16に示されるように、方形の平面アンテナ100は、方形の信号放射部101と、2次元方向に回路が構成された2次元の回路部110と、2次元方向にビーム方向を制御するための方向角制御回路部120とを有する。信号放射部101は、上記と同様に外向き及び内向きに電磁波を導波するよう構成されている。2次元の回路部110は、上記の1次元の回路部20を4×4分岐の2次元多重の導波管回路に拡張したものである。方向角制御回路部120は、位相調整部125と、2次元レンズ回路部121とを有する。
位相調整部125は、1次元の位相調整部51を2次元に拡張したもので、180度ハイブリッド分配器52からなり、2次元の回路部110から出力される信号電力の位相を調整する。そして、位相調整部125は、1次元の場合と同様に軸線について対称に選択される一対の前記ビームに対して直交する位相差を付けることができる。これにより、方形の信号放射部101の全体の大きさをa×bとすると、4×4(=16分岐)の内、3×3(=9)の入力により、
Figure 2018032968
に対応する複数の異なるモードが励振される。
2次元レンズ回路部121は、例えばルーネベルグレンズ122を有する。ルーネベルグレンズ122は、2次元的に配置された1の給電点から給電された信号電力を振幅が拡大され、方向角に変化が与えられたビームとして出力する。ここで、2次元レンズ回路部121が無いとすると、信号放射部101から出力されるビームは回転モードによって2次元的に方向角が異なるペンシルビームあるいはコニカルビームとなる(図14参照)。
2次元レンズ回路部121は、給電された信号の回転モードの周波数に基づいて励振される2次元的なビームの方向角を中心方向に向くように制御することができる(図14参照)。
信号放射部101のスロットペアSからなる素子数が4×4素子よりも多い場合には、2次元の回路部110の各出力ポートの位相差分布を信号放射部101全体に広げる構造123を間に設ける。
方向角制御回路部120は、回路部110から給電された信号の回転モードに基づいて2次元的に方向角が制御された複数のビームを生成すると共に、軸線について2次元的に対称に選択される一対のビームに対して直交する位相差を付けて給電部に入力することができる。上記構成により、方形の平面アンテナ100によると、信号放射部101の長さ及び幅方向の電磁界分布に直交性があるため、同じ長さ及び幅方向分布の間で2次元的に独立した伝送が実現できる。
更に方形の平面アンテナ100は、上記実施形態と同様に信号放射部101に対して内向きに電磁波を導波することにより多重度を2倍にすることができる。上述した方形の平面アンテナ100は、受信用のアンテナとしても用いることができる。送受間で同じ平面アンテナ100を対向させると、ペンシルビームあるいは2次元的な複数の斜めビーム形状の主ビームが受信できる距離で送受信を行うことができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、第3及び第4実施形態に係る平面レンズ回路部55は、ロットマンレンズ回路のかわりに図17に示されるバトラーマトリクス回路で構成してもよい。バトラーマトリクス回路の散乱行列以下の式で表される。
Figure 2018032968
その他、第5実施形態に係る2次元レンズ回路部121も2次元のバトラーマトリクス回路として構成されていてもよい。
1 :平面アンテナ
2 :導体板
3 :導体板
4 :側壁
10 :信号放射部
20 :回路部
21−24:ハイブリッド分配器
25,26:交差器
27−29:位相器
30 :平面アンテナ
31 :信号放射部
34 :側壁
35 :導体板
40 :平面アンテナ
41 :信号放射部
42 :導体板
43 :導体板
45 :周壁
46 :導体板
50 :方向角制御回路部
51 :位相調整部
53 :ハイブリッド分配器
55 :平面レンズ回路部
56 :入力部
57 :出力部
100 :平面アンテナ
101 :信号放射部
110 :回路部
120 :方向角制御回路部
121 :2次元レンズ回路部
122 :ルーネベルグレンズ
123 :構造
125 :位相調整部
B :ショートスロット結合器
B1 :スロット
D1−D4:入力ポート
D3’,D4’:入力ポート
E1−E4:導波路
F1−F4:出力ポート
H :導波路
J :給電部
J1 :給電スロット
J2 :給電部
Jm :給電スロット
P :給電部
P1−P4:給電スロット
Q :給電部
S :スロットペア
S1 :スロット
S2 :スロット
U :導波路
V1 :第1導波部
V2 :第2導波部
X :第1導波部
Y :第2導波部

Claims (10)

  1. 円偏波を放射する複数の信号放射口が配列された第1の導体板と、前記第1の導体板との間に信号を導波する第1導波部を形成して複数の各前記信号放射口から信号を放射させる第2の導体板とを有する信号放射部と、
    前記第2の導体板に設けられ、前記第1導波部に電力を供給するための複数の第1給電素子を有する第1給電部と、
    複数の前記第1給電素子のそれぞれに所定の位相差を与えて給電するための回路部と、を有し、
    前記回路部は、前記第1給電部から前記第1導波部において外向きの電磁波を導波するよう給電し、前記信号放射部から偏波方向が一定方向に回転する円偏波からなる複数の異なる螺旋ビームを放射させる、平面アンテナ。
  2. 前記信号放射部は、第1導波部に信号を導波する第2導波部を形成する第3の導体板と、
    前記第3の導体板に設けられ、前記第2導波部に電力を供給するための複数の第2給電素子を有する第2給電部と、
    を更に有し、
    前記回路部は、所定の位相差を付けるよう複数の前記第2給電素子にそれぞれ給電し、前記第2給電部から前記第2導波部を通じて前記第1導波部において内向きの電磁波を導波するよう給電し、
    前記信号放射部から偏波方向が前記一定方向と逆方向に回転する円偏波からなる複数の異なる螺旋ビームを放射させる、
    請求項1に記載の平面アンテナ。
  3. 円板状に形成された前記第1の導体板において複数の前記信号放射口が螺旋状又は同心円状に配列され、ラジアルラインスロットアンテナとして構成される、
    請求項1又は2に記載の平面アンテナ。
  4. 前記回路部は、4N個(Nは1以上の整数)分岐した複数の導波管からなる1層導波管回路で形成され、0度及び±360×N度以下の位相差の複数の回転モードを給電するよう構成され、
    複数の前記導波管の出力側にそれぞれ接続された複数の前記第1給電素子は4N個設けられ、前記第2の導体板の軸線周りに同心円状に配置されている、
    請求項1から3のいずれかに記載の平面アンテナ。
  5. 複数の前記導波管にそれぞれ接続された複数の前記第2給電素子は4×N個設けられ、前記軸線周りに同心円状に配置されている、
    請求項4に記載の平面アンテナ。
  6. 方形に形成された前記第1の導体板を通る軸線を中心に複数の前記信号放射口がマトリクス状に配列されたアレーアンテナとして構成される、
    請求項1又は2に記載の平面アンテナ。
  7. 複数の前記回路部の出力側に接続された方向角制御回路部を更に有し、
    前記方向角制御回路部は、前記回路部から給電された信号の回転モードに基づいて方向角が制御された複数のビームを生成すると共に、前記軸線について対称に選択される一対の前記ビームに対して直交する位相差を付けて前記給電部に入力するよう構成されている、
    請求項6に記載の平面アンテナ。
  8. 前記回路部は、4N個(Nは1以上の整数)分岐した複数の導波管からなる1層導波管回路で形成され、0度及び±360×N度以下の位相差の複数の回転モードを給電するよう構成され、
    複数の前記導波管から出力された電磁波を導波する複数の前記第1給電素子は、前記軸線を通る前記第2の導体板の中心線に沿って給電するよう前記第2の導体板に配置されている、
    請求項6又は7に記載の平面アンテナ。
  9. 複数の前記導波管から出力された電磁波を導波する複数の前記第2給電素子は、前記軸線を通る前記第3の導体板の中心線に沿って給電するよう配置されている、
    請求項8に記載の平面アンテナ。
  10. 前記方向角制御回路部は、信号の回転モードに基づいて1次元又は2次元方向に方向角が制御された複数のビームを生成する
    請求項6又は7に記載の平面アンテナ。
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