JP2018031026A - 機械部品および押出材 - Google Patents

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Abstract

【課題】人工時効処理後の引張強さが800MPa以上かつ全伸びが5%以上である、7000系アルミニウム合金押出材からなる機械部品を提供すること、および人工時効処理後に引張強さが800MPa以上かつ全伸びが5%以上の高強度特性を発揮することができる7000系アルミニウム合金押出材を提供する。【解決手段】Zn:8.0〜14.0質量%、Mg:2.0〜4.0質量%、Cu:0.5〜2.0質量%、Mn:0.2〜1.5質量%、Zr:0.05〜0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなり、X線小角散乱で測定された結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径が2nm以上、7nm以下であり、粒度分布の規格化分散が45%以下であり、引張強さが800MPa以上、全伸びが5%以上であることを特徴とする機械部品、およびこのような機械部品を製造可能な押出材である。【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム合金からなる機械部品および押出材に関するものである。より詳細には、7000系アルミニウム合金からなる機械部品および押出材に関するものである。
従来から、ボルトおよびナットのねじ部品、ならびにばね(スプリング)などの様々な機械部品用の素材としては、強度、耐食性および軽量性に優れたAl−Zn−Mg−Cu系アルミニウム合金(以下において、7000系アルミニウム合金と言うことがある)からなる押出材が用いられている。
7000系アルミニウム合金からなる押出材は高強度であり、押出後にT6調質することで、引張強さが700MPa以上であるものも、従来から種々提案されている。
例えば、特許文献1では、Zn含有量が8質量%を超えるような7000系アルミニウム合金の線棒押出材につき、時効処理により容易に引張強さ720MPaを超える強度が付与できることが開示されている。しかし、同文献に係る押出材では、粗大な再結晶粒層が生じるので、押出材を大径ボルトに鍛造または転造などの塑性加工(成形加工)する際に、割れが発生する原因となる。このため、塑性加工前に押出材表面(表層部)の粗大な再結晶粒層を除去することを必須としている。
これに対して、このような再結晶粒層自体を抑制しようとする試みも、従来から種々提案されている。例えば、特許文献2では、押出温度を480〜500℃の比較的低温で行って、7000系アルミニウム合金押出材内部を繊維状組織とし、表層の再結晶層の肉厚を10%以下とし、その再結晶粒径を150μm以下に制御することが開示されている。
しかし、特許文献2のように、押出温度を480〜500℃の比較的低温で行っても、この温度域の押出では、やはり7000系アルミニウム合金は再結晶してしまうため、押出材の表層部および内部における再結晶化が避けがたく、再現性よく、引張強さで700MPa以上の強度を得ることができない可能性があった。
これに対して、特許文献3では、熱間静水圧押出によって7000系アルミニウム合金押出材を製造することが開示されている。当該押出材は、押出されたままの状態での、押出材の軸中心部を通る押出方向に平行な断面の組織として、押出材の表層部の再結晶粒の平均結晶粒径が100μm以下であるとともに、押出材軸中心部における結晶粒の半径方向の平均切片長さが35μm以下であり、かつ、押出方向の<111>方位の結晶粒の平均面積率が0.5以上1.0以下で、<001>方位の結晶粒の平均面積率と<111>方位の結晶粒の平均面積率との比、<001>/<111>が0.25以下であることが開示されている。
特許文献3では、これにより、熱間押出終了後、押出温度からの冷却以外には熱処理および加工処理を何も加えていない、押出されたまま(押出上がり)の押出材の組織状態として、表層部だけでなく押出材内部の再結晶(再結晶化)も抑制している。これにより、微細な押出加工組織(繊維状組織)を得て、人工時効処理後の引張強さで700MPa以上の高強度を得ることが開示されている。
しかし、特許文献3でも、その実施例の表3の記載の通り、得られる人工時効処理後の引張強さは700MPa以上ではあるが、800MPa未満程度でしかない。
特許文献4には、押出材では無く、フレームおよびピラーなどの自動車構造部材用の7000系アルミニウム合金圧延板が開示されている。同文献では、高強度化させるために、この圧延板の結晶方位組織として、平均結晶粒径が15μm以下であるとともに、傾角5〜15°の小傾角粒界の平均割合が15%以上で、かつ傾角15°を超える大傾角粒界の平均割合が15〜50%とすることも提案されている。
しかし、この特許文献4の場合、その実施例表2の通り、得られる人工時効処理後の引張強さは500MPa未満であり、圧延板でのこのような冶金的手法が、塑性加工方法および製造方法が異なる押出材および機械部品の800MPa以上の高強度化に果たして有効かどうかは、実際に試験して確かめてみないと分らない。
特開2010−236665号公報 特開平8−170139号公報 特開2014−125676号公報 特開2014−62287号公報
このように、従来の7000系アルミニウム合金押出材では、ある程度の高強度化が図れるものの、ボルトおよびバネ等の高強度が要求される機械部品の素材として十分な強度を安定的に得ることが難しい場合があった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、人工時効処理後の引張強さが800MPa以上かつ全伸びが5%以上である、7000系アルミニウム合金からなる機械部品を提供すること、およびそのような優れた機械的特性を有する機械部品を製造可能な7000系アルミニウム合金押出材を提供することである。
本発明の態様1は、Zn:8.0〜14.0質量%、Mg:2.0〜4.0質量%、Cu:0.5〜2.0質量%、Mn:0.2〜1.5質量%、Zr:0.05〜0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる機械部品であって、X線小角散乱で測定された結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径が2nm以上、7nm以下であり、粒度分布の規格化分散が45%以下であり、引張強さが800MPa以上、全伸びが5%以上であることを特徴とする機械部品である。
本発明の態様2は、Cr:0.05〜0.3質量%、Sc:0.05〜0.3質量%のうちの一種または二種を更に含有する態様1に記載の機械部品である。
本発明の態様3は、Ag:0.05〜0.5質量%、Sn:0.01〜0.2質量%のうちの一種または二種を更に含有する態様1または2に記載の機械部品である。
本発明の態様4は、Zn:8.0〜14.0質量%、Mg:2.0〜4.0質量%、Cu:0.5〜2.0質量%、Mn:0.2〜1.5質量%、Zr:0.05〜0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる機械部品用押出材であって、機械部品を模擬して、断面が円形な直径25mmの線棒押出材とした上で、減面率が84%で抽伸加工して10mmφの断面が円形な線棒材とし、この線棒材を480℃の温度で5時間保持する溶体化処理後に、50℃までの平均冷却速度を200℃/秒として焼入れ処理を行い、その後120℃で72時間保持する人工時効処理を施した場合、X線小角散乱で測定された結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径が2nm以上、7nm以下であり、粒度分布の規格化分散が45%以下であり、引張強さが800MPa以上、全伸びが5%以上であることを特徴とする押出材である。
本発明の態様5は、Cr:0.05〜0.3質量%、Sc:0.05〜0.3質量%のうちの一種または二種を更に含有する態様4に記載の押出材である。
本発明の態様6は、Ag:0.05〜0.5質量%、Sn:0.01〜0.2質量%のうちの一種または二種を更に含有する態様4または5に記載の押出材である。
本発明によれば、人工時効処理後の引張強さが800MPa以上かつ全伸びが5%以上である、7000系アルミニウム合金からなる機械部品を提供すること、およびそのような優れた機械的特性を有する機械部品を製造可能な7000系アルミニウム合金押出材を提供することができる。
本発明者らは、ボルトおよびバネ等の機械部品として十分に優れた機械的特性を有する7000系アルミニウム合金からなる機械部品、およびそのような優れた機械的特性を有する機械部品を製造可能な7000系アルミニウム合金押出材を実現すべく、様々な角度から検討した。
本発明者らは鋭意検討した結果、X線小角散乱で測定された結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径と、粒度分布の規格化分散とを制御することにより、結晶粒界に存在する析出物および結晶粒内に存在する粗大な析出物の析出を抑制することができ、それにより、人工時効処理後の引張強さが800MPa以上かつ全伸びが5%以上である、7000系アルミニウム合金からなる機械部品を提供することができることを見出した。
以下に、本発明の実施形態にかかる機械部品および押出材の詳細を示す。
なお、以下に説明するアルミニウム合金組成および組織は、本発明の実施形態に係る機械部品および押出材の、共通する意義にかかるものである。
本明細書でいう「機械部品」とは、押出材を素材とする、ボルトおよびナットのねじ部品、歯車(ギア)、軸(シャフト)、軸受け(ベアリング)、ならびにばね(スプリング)などの、様々な機械に共通して使われている最小単位の機能部品としての機械要素である。
本明細書で言う「人工時効処理後」とは、「溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施した後」という意味である。
1.組織
本発明の実施形態に係る機械的部品は、後述するように本発明の実施形態に係る押出材を素材として製造することができる。そのため、本発明の実施形態に係る機械的部品は、本発明の実施形態に係る押出材と同様に、微細なナノレベルのサイズの析出物(本明細書において、微細粒子と言うことがある)が結晶粒内に多数存在し、高強度を達成している。
この微細粒子とは、結晶粒内に生成する、MgとZnとの金属間化合物(組成はMgZn等)であり、これに他の合金組成に応じて更にCuおよびZrなどの含有元素が含まれる微細分散相である。なお、本発明の実施形態で言う微細粒子のサイズとは、不定形である微細粒子の円相当直径を意味する。
1−1.機械部品
本発明の実施形態に係る機械部品は、人工時効処理後の押出微細組織として、X線小角散乱で測定される結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径と、粒度分布の規格化分散とを制御することにより、優れた強度と伸びとを両立することができる。
具体的には、素材である7000系アルミニウム合金押出材を冷間加工して製造した機械部品の人工時効処理後の組織を、X線小角散乱法により結晶粒内で測定される微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が2nm以上7nm以下、かつ粒度分布の規格化分散が45%以下となるように制御する。
このように、X線小角散乱法で測定された微細粒子の平均粒子直径、および粒度分布の広がりを示す規格化分散を制御することによって、時効処理後の引張強さが800MPa以上であるような高強度化を達成できる。また同時に、粒界に存在する析出物および結晶粒内に存在する粗大な析出物の析出を抑制することが、これにより優れた強度および優れた伸びを達成することができる。
(1)平均粒子直径:2nm以上7nm以下
微細粒子の平均粒子直径が小さすぎると、変形中の転位の障害としての作用が小さいため、高強度化が達成できない。そのため、平均粒子直径は2nm以上であり、好ましくは、3nm以上である。
一方、微細粒子の平均粒子直径が大きすぎると、粒子間の距離が大きくなって転位の障害としての作用が小さくなるため、高強度化が達成できない。さらに、結晶粒界に存在する析出物および結晶粒内に存在する粗大な析出物の生成が多くなり、伸びが低下するおそれがある。そのため、平均粒子直径は7nm以下であり、好ましくは、6nm以下である。
(2)粒度分布の規格化分散
粒度分布の規格化分散は粒子分布の広がりを示す指標である。すなわち、規格化分散が大きい場合、小さい粒子から大きい粒子まで幅広く分布していることを意味する。逆に、規格分散が小さい場合、大きい粒子と小さい粒子の差が比較的小さいことを意味する。
粒度分布の規格化分散が大きすぎると、変形中の転位の障害としての粒子の作用が不均一となり、高強度が達成できない。そのため、粒度分布の規格化分散は45%以下であり、好ましくは40%以下である。
なお、粒度分布の規格化分散には、組成および熱処理の制御によっても製造限界があり、下限としては10%程度までしか小さくすることができない。
本発明の実施形態の粒子直径が2nm以上7nm以下であるような微細粒子、その粒度分布の平均粒子直径、および粒度分布の規格化分散は、従来技術で用いている光学顕微鏡などでは、微細すぎて観察および測定ができず、規定しているX線小角散乱法によって評価しうる。
1−2.アルミニウム合金押出材
前述した本発明の実施形態に係る機械部品は、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金押出材を素材として用いて製造することにより、優れた強度と伸びとを両立することができる。具体的には、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金押出材に対して、後述する条件で溶体化処理、焼入れ処理および人工時効処理を行うことにより、強度と伸びに優れた本発明の実施形態に係る機械部品を得ることができる。
このような本発明の実施形態に係るアルミニウム合金押出材の特性は、合金押出材を所定の条件で機械部品に模して加工し、当該被加工物に対して測定を行うことにより、とりわけ顕著に発現することができる。
そのため、本発明の実施形態では、合金押出材に対して所定の条件で機械部品に模して加工し、当該非加工部品について、組織の評価および機械的特性の評価を行うことにより、アルミニウム合金押出材を規定している。
以下に、具体的にアルミニウム合金押出材を評価するための具体的な加工条件を記載する。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金押出材は、断面が円形である線棒押出材に加工した後、抽伸加工して線棒材とし、当該線棒材に対して、溶体化処理、焼入れ処理および人工時効処理を施した後、X線小角散乱を用いて微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散を測定することにより、その特性を評価することができる。
具体的には、本発明の実施形態に係る合金押出材を、断面形状が円形な直径25mmの線棒押出材とした上で、減面率が84%で抽伸加工して断面が10mmφの円形である線棒材となるように加工する。そして、この線棒材に対して、480℃の温度で5時間保持する溶体化処理を行い、その後50℃までの平均冷却速度を200℃/秒として焼入れ処理を行い、その後120℃で72時間保持する人工時効処理を施す。このようにして、得られた非加工物に対して、後述するX線小角散乱法により組織を測定し、引張試験により機械的特性を測定することで、本発明の実施形態に係る合金押出材の特性を評価することができる。なお、「断面が円形」とは、真円、楕円形および略円形を含む。
本発明の実施形態に係る合金押出材は、上述のように加工した後、組織および機械的特性を評価した場合、X線小角散乱で測定された結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径が2nm以上、7nm以下であり、粒度分布の規格化分散が45%以下であり、引張強さが800MPa以上、全伸びが5%以上である。本発明の実施形態に係る合金押出材はこのような特性を有しているので、当該合金押出材を素材として機械部品を製造することで、強度と伸びの両方に優れた機械部品を得ることができる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金押出材は、このように加工および測定して得られる微細粒子の平均粒子直径と粒度分布の規格化分散とが所定の範囲に厳密に制御されているため、当該合金押出材を用いて機械部品を製造する場合に、優れた強度および伸びを有する機械部品を提供することができるのである。
2.組織の評価
(1)X線を用いた小角散乱法
X線を用いた小角散乱法自体は、ナノメートルオーダの構造情報を調べる代表的な手法として古くから知られている。物質にX線を照射すると、入射X線が物質内部の電子密度分布の情報を反映して、入射X線の周囲に散乱X線が発生する。例えば、物質中に粒子または電子密度の不均一な領域が存在すると、結晶・非晶質等にかかわらず、X線は干渉して密度揺らぎ起因の散乱が発生する。これがアルミニウム合金などの金属であれば、アルミニウム合金組織中にナノメートルオーダの微小な粒子が存在すると、粒子に由来する散乱が観測される。この散乱X線が発生する領域は、Cuターゲットを用いた波長1.54ÅのX線の場合、測定角度2θは0.1〜10度程度以下である。X線小角散乱法では、この散乱X線を解析することで、ナノメートルオーダの微細な粒子の形状、大きさおよび分布の情報等を得ることができる。
例えば、特開2011−38136号などでは、5000系のAl−Mg系アルミニウム合金板のプレス成形時のストレッチャーストレインマークの発生に関連する、微細粒子の粒度分布の平均粒子直径、およびこの粒度分布のピークサイズの数密度を測定するために用いられている。
アルミニウム合金組織の微細粒子の粒度分布の平均粒子直径、およびこの粒度分布のピークサイズの数密度を測定するためには、先ず、X線小角散乱法で測定された、アルミニウム合金板のX線の散乱強度プロファイルを求める。X線の散乱強度プロファイルは、例えば、縦軸がX線の散乱強度(散乱X線の散乱強度)、横軸が測定角度2θと波長λに依存する波数ベクトルq(nm−1)として求められる。
本発明の実施形態の2nm以上7nm以下であるような微細粒子の平均粒子直径、およびこの粒度分布の広がりを示す規格化分散は、X線の散乱強度プロファイルから求めることができる。すなわち、測定したX線の散乱強度と、粒子直径とサイズ分布の関数で示される理論式から計算したX線散乱強度が近くなるように、非線形最小2乗法によってフィッティングを行うことで、粒子直径と規格化分散値を求めることができる。
ちなみに、このようなX線の散乱強度プロファイルを解析して、微小析出物の粒度分布を求める解析方法(解析ソフト)は、例えばSchmidtらによる公知の解析方法を用いてよい(I.S.Fedorovaand P.Schmidt:J.Appl.Cryst.11、405、1978参照)。
(2)X線小角散乱法の測定装置
このようなX線小角散乱法の測定装置としては、例えば特開平9−119906号公報などに代表的な小角散乱装置が開示されており、試料に対してX線を微小角度(小角)で照射し、試料から散乱されるX線を2次元のマルチワイヤー型などの検出器を用いて測定する。
この散乱X線が発生する領域は、波長1.54ÅのX線の場合、測定角度は0.1〜10度以下程度の小角度である。この散乱X線を前述した通りに解析することで、粒度分布など、粒子の形状、大きさ、分布の情報を得ることができる。
2.化学成分組成:
次に、本発明の実施形態に係る機械部品および押出材の組成について説明する。本発明の実施形態に係る機械部品および押出材は7000系アルミニウム合金からなるものであり、その成分組成は、7000系アルミニウム合金として通常の化学成分組成を有していればよい。
(1)Zn:8.0〜14.0質量%
Znは、Mgとともに、後述する人工時効処理時に、MgとZnとの金属間化合物である時効析出物を形成して強度を向上させる元素である。
Zn含有量が8.0質量%未満では機械部品としての強度が不足する。そのため、Zn含有量は8.0質量%以上であり、好ましくは9.0質量%以上である。
一方、Zn含有量が14.0質量%を超えると、素材押出材用の鋳造ビレットの鋳造時に鋳塊割れが発生しやすくなり造塊が困難となる。そのため、Zn含有量は14.0質量%以下であり、好ましくは13.0質量%以下である。
なお、Zn含有量が高いと、SCC感受性が鋭くなるが、それを抑えるためには、後述するCuあるいはAgを添加することが望ましい。
(2)Mg:2.0〜4.0質量%
Mgは、Znとともに、後述する人工時効処理時に、本発明の実施形態で規定するMgとZnとの金属間化合物である時効析出物を形成して機械部品としての強度と伸びを向上させる元素である。
Mg含有量が2.0質量%未満では強度が不足する。そのためMg含有量は2.0質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以上である。
一方、Mg含有量が4.0質量%を超えると、素材押出材用の鋳造ビレットの未再結晶温度域(再結晶温度未満の温度域)の低温での押出性が低下し、SCC感受性が強くなる。そのため、Mg含有量は4.0質量%以下であり、好ましくは3.5質量%以下である。
(3)Cu:0.5〜2.0質量%
Cuは機械部品としての耐SCC性を向上させる作用がある。
Cu含有量が0.5質量%未満では、耐SCC性向上効果が小さい。そのため、Cu含有量は0.5質量%以上であり、好ましくは0.7質量%以上である。
一方、Cu含有量が2.0質量%を超えると、押出材用の鋳造ビレットの鋳造時に割れが生じやすくなり、鋳造ビレットの押出性を低下させる。そのため、Cu含有量は2.0質量%以下であり、好ましくは1.8質量%以下である。
(4)Mn:0.2〜1.5質量%
Mnは、結晶粒を微細化するほか、分散粒子を形成して、機械部品の強度向上に寄与する。
Mn含有量が0.2質量%未満では、含有量が不足して強度が低下する。そのため、Mn含有量は0.2質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上である。
一方、Mn含有量が1.5質量%を超えると、粗大晶出物を形成するため伸びが低下する。そのため、Mn含有量は1.5質量%以下であり、好ましくは1.2質量%以下である。
(5)Zr:0.05〜0.3質量%
Zrは、微細な析出物を形成し、再結晶も抑制して、機械部品の強度向上に寄与する。
Zrの含有量が0.05質量%未満では、含有量が不足して強度が低下する。そのため、Zr含有量は0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上である。
一方、Zrの含有量が上限を超えた場合には、粗大晶出物を形成するため、伸びが低下する。そのため、Zr含有量は0.3質量%以下であり、好ましくは0.25質量%以下である。
(6)残部
好ましい1つの実施形態では、残部は、Alおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれるFe、Si、TiおよびBなどの微量元素の混入が想定される。しかし、7000系合金のJIS規格で規定する範囲において、これら不可避不純物の各々の含有を許容する。例えば、Fe、Siは各0.5質量%以下(0質量%を含む)の範囲で、それぞれ含有してもよい。
本発明の実施形態に係る機械部品および押出材は、上述した組成に限定されるものではない。本発明の実施形態に係る機械部品および押出材の特性を維持できる限り、必要に応じてその他の元素を更に含んでよい。そのように選択的に含有させることができるその他の元素を以下に例示する。
(7)Cr:0.05〜0.3質量%、Sc:0.05〜0.3質量%のうちの一種または二種
CrおよびScは、Zrと同様、微細な析出物を形成し、再結晶も抑制して機械部品の強度向上に寄与する。
これらをいずれか一種または二種を選択的に含有させる場合、CrおよびScの含有量がいずれもが0.05未満では、強度向上効果が得られない可能性がある。そのため、Crの含有量は0.05質量以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。同様の理由で、Sc含有量は0.05質量以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。
一方、CrおよびScの含有量がそれぞれ0.3質量%を超えた場合には、粗大晶出物を形成するため、伸びが低下する可能性がある。そのため、Cr含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.25質量%以下がより好ましい。同様の理由から、Sc含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.25質量%以下がより好ましい。
(8)Ag:0.05〜0.5質量%、Sn:0.01〜0.2質量%のうちの一種または二種
AgおよびSnは、人工時効処理での結晶粒界近傍の無析出帯の形成を抑制して機械部品の強度向上に寄与する。
選択的に含有させる場合、Agの含有量が0.05質量%未満である場合や、Snの含有量が0.01質量%未満である場合は、微細化効果が小さい可能性がある。そのため、Ag含有量は0.05質量以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。同様の理由から、Sn含有量は0.01質量以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。
一方、Agの含有量が0.5質量%を超える場合や、Snの含有量が0.2質量%を超える場合は、素材押出材用の鋳造ビレットの鋳造時に粗大な初晶化合物を形成し、押出加工時の焼付や、製品としての機械部品の伸びの低下をもたらす可能性がある。そのため、Ag含有量は0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。同様の理由から、Sn含有量は0.2質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。
4.製造方法
本発明の実施形態に係る押出材および機械部品の製造方法について説明する。
4−1.押出材の製造方法
先ず、押出材(押出形材)の製造方法について、以下に工程順に説明する。
(1)溶解、鋳造
溶解、鋳造工程では、上記7000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造してビレットとする。
(2)均質化熱処理
後述する熱間押出に先立って、得られたアルミニウム合金ビレット(鋳塊)を均質化熱処理(均熱処理)して、組織の均質化(すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくす等)を行う。均質化熱処理により、Zr系化合物、ならびにMn、CrおよびScからなる化合物を微細に分散させ、押出後および溶体化後の結晶粒組織を微細化する。
均熱温度が400℃未満では十分な微細化効果が得られない。そのため、均熱温度は400℃以上であり、好ましくは410℃以上である。
一方、均熱温度が450℃を超えると、これらの化合物が粗大化するため、微細化効果が低下する。そのため、均熱温度は450℃以下であり、好ましくは440℃以下である。
また、均熱時の保持時間は1〜8時間程度が好ましい。
(3)熱間押出
熱間押出によって、最終の機械部品形状に応じた、この最終形状に近い押出材形状とする。熱間押出により、押出材の表層部だけでなく、押出材内部の再結晶化も抑制して、微細な押出加工組織とすることができる。
押出開始温度が400℃を超えると、押出時の温度が上昇し、高温で再結晶が起こりやすくなり、押出材の表層部および内部に粗大な再結晶組織が形成されるだけでなく、粗大粒子が析出し、強度の低下をもたらす。そのため、押出開始温度は400℃以下であり、好ましくは380℃以下である。
一方、押出開始温度は低いほど好ましいが、低すぎると、変形抵抗が増大して押出が困難になる。そのため、押出開始温度は300℃以上が好ましく、より好ましくは320℃以上である。
押出速度は、押出時の加工発熱を押さえ、押出時の前記再結晶を抑制するために10m/分以下とすることが好ましい。より好ましくは7m/分以下とする。
熱間押出後から50℃までの平均冷却速度を所定の範囲に設定することにより、この冷却中に生成するZnおよびMgを含む粒子の析出を抑制することができる。当該温度域での冷却速度が2℃/秒未満の場合、固溶Znおよび固溶Mg量が減少して、人工時効処理後の微細粒子の直径が7nmを超え、強度が低下する。そのため、50℃までの平均冷却速度は2℃/秒以上であり、4℃/秒以上が好ましい。
このような2℃/秒以上の平均冷却速度は、冷却手段を設けることにより達成することができる。冷却手段として、例えば、ファンなどを用いた空冷、および水冷などが挙げることができる。
押出方法としては、直接押出あるいは間接押出でもよいが、前記した未再結晶域の好ましい押出条件にて、焼き付きが多く発生する場合がある。そのため、押出加工が困難な場合には静水圧押出で行うことが好ましい。
直接押出および間接押出は、静水圧押出に比べて効率的ではあるが、押出材表層部(表面部)の再結晶粒層が、押出材内部の比較的細かい、押出方向に伸長した繊維状結晶粒(押出加工)組織に比して、粒状の粗大な結晶粒になりやすいという問題がある。また、本発明の実施形態のように、Zn含有量が8質量%を超えるような7000系アルミニウム合金を押出する場合には、直接押出あるいは間接押出の場合には、再結晶温度域未満の押出加工はかなり困難がある。
これは、たとえ、押出素材であるビレットを再結晶温度域未満の低い加熱温度としても、直接押出あるいは間接押出では、その押出機の構造上、ビレットがコンテナ壁面およびダイスと接触して押し出されるために摩擦熱が生じる。この結果、押出中の温度は再結晶温度域となる。このため、特許文献1で問題とするような粗大な再結晶(粒)層が押出材の表層部にできやすい。
これに対して、熱間静水圧押出は、コンテナとビレットの間に潤滑剤を入れ、この潤滑剤の中に、押出用のビレットが浮いている状態を作り、ステム(ダミーブロック付き)によって押し出す。このため、ビレットは、この潤滑剤の作用によって、直接押出および間接押出と違って、コンテナおよびダイスと直接接触しない。すなわち、ビレットが直接接触するのは、ダイスの厚みの約5mm程度を通過する間だけである。この結果、摩擦および摩擦熱も軽減され、メタルフローも均一に近くなる。この結果、Zn含有量が高い、本発明の実施形態のような7000系アルミニウム合金のビレットであっても、再結晶温度未満の低温でも押出加工が可能であり、押出材の表層部および内部の再結晶粒層を抑制(微細化)することが可能となる。
このため、熱間静水圧押出による押出材は、再結晶粒層を含めて、あるいは再結晶粒層が存在していても、表層部から内部までの組織の均一性が図れる。この結果、線棒あるいは線棒製品の素材としても、抽伸性、伸線性あるいは加工性および成形性が著しく向上する。また、本発明の実施形態のように再結晶粒層を抑制すれば、微細な押出加工組織であることによって、アルミニウム合金製ボルトなどの線棒製品に要求される耐へたり性などの基本特性も保証できる。
4−2.機械部品の製造方法
以上のようにして得られた熱間押出後の押出材は、更に前記各用途の機械部品の製品形状に冷間加工される。
ボルトなどの機械部品への一般的な加工工程は、押出材を焼鈍後細径化のために抽伸し、洗浄し、更に焼鈍した上で、転造または鍛造して機械部品の製品形状としてもよい。そして、このような製品加工の完了後に、溶体化および焼入れ処理を行い、更に人工時効処理を行って強度を向上させる。
なお、前述した焼鈍処理は選択的であり、抽伸または転造の途中で焼鈍処理を行ってもよい。また、前記抽伸または転造などの冷間加工は、当然ながら、ボルトおよびナットのねじ部品、歯車(ギア)、軸(シャフト)、軸受け(ベアリング)、ばね(スプリング)などの、具体的な用途および形状に応じて、その条件も含めて変更される。
(1)溶体化処理
機械部品の溶体化処理は、一般的な加熱および冷却方法でよく、特に限定はされない。しかし、保持温度が450℃未満、または保持時間が0.5時間未満であれば、MgおよびZnの固溶が不十分になって、強度が不足するおそれがある。一方、保持温度が505℃超、また保持時間が10時間超であれば、強度が不足するおそれがある。
そのため、溶体化処理は、450〜550℃の溶体化処理温度で、0.5〜10時間保持することが好ましい。
(2)焼入れ処理
溶体化処理後の焼入れ処理として、溶体化処理温度から50℃までの冷却(降温)速度は、平均で50℃/秒以上とすることが望ましい。平均冷却速度が50℃/秒未満と小さすぎては、粗大な再結晶が生じて、強度が不足する可能性がある。また、強度や伸びを低下させる粗大な粒界析出物も形成され、強度が不足する可能性がある。平均冷却速度の上限は、設備能力の限界から、およそ500℃/秒程度である。50℃から室温までの冷却速度は特に制限は無く、そのまま引き続き急冷しても、あるいは急冷を停止して放冷してもよい。
(3)人工時効処理
溶体化処理後の機械部品に対して人工時効処理を行うことにより、本発明の実施形態に係る機械部品が得られる。
人工時効処理温度が100℃未満であると、微細粒子の形成量が不足して強度が低くなる。したがって、人工時効処理温度は100℃以上であり、好ましくは120℃以上である。
一方、人工時効処理温度が200℃を超えると、微細粒子が粗大化し、その粒度分布も広がって強度が低下する。したがって、人工時効処理温度は200℃以下であり、好ましくは180℃以下である。
また、人工時効処理時間が2時間未満であると、微細粒子の形成量が不足して強度が低くなる。したがって、人工時効処理時間は2時間以上であり、好ましくは4時間以上である。
一方、人工時効処理時間が120時間を超えると、微細粒子が粗大化し、強度が低下する。したがって、人工時効時間時間は120時間以下であり、好ましくは110時間以下である。
以上に説明した本発明の実施形態に係る機械部品および押出材の製造方法に接した当業者であれば、試行錯誤により、上述した製造方法と異なる製造方法により本発明に係る機械部品および押出材を得ることができる可能性がある。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.サンプル作成
表1に示す組成の7000系アルミニウム合金鋳塊を鋳造後、表1に示す均質化処理温度で保持時間4時間の均質化処理を経て、熱間静水圧押出し、各例とも共通して、断面が円形な直径25mmの線棒押出材を製造した。
この線棒押出材の押出条件は、各例とも共通して、表1に示す開始温度で熱間静水圧押出を行った。熱間押出後、表1に示す平均冷却速度にて50℃以下まで冷却した。なお、押出後から50℃までの冷却では、比較例No.8以外のサンプルについて、ファンを用いた空冷により、冷却速度を制御した。
各例とも共通して、機械部品用途を模擬して、線棒押出材に減面率が84%の抽伸加工を施し、断面形状が円形である10mmφの線棒材とした上で、この線棒材に、480℃で5時間の溶体化処理を施した後、50℃までの平均冷却速度を200℃/秒として水冷し、表1に示す各条件で人工時効処理を行った。
更に、この人工時効処理後の機械部品を模擬した線棒材から、試験片を採取し、試験片組織の、結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散を測定した。また、この人工時効処理後の材料の機械的な特性を、測定した。これらの結果も表1に示す。
なお、表1において、下線を付した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。
人工時効処理後の線棒材から採取した前記試験片は、丸棒平滑引張試験片(3mmφ×12mmGL)とし、この試験片の表面と軸中心との中間(真ん中)位置(直径Dの1/4位置)における、押出加工方向に平行な面(断面)を観察面とできるように採取した。
2.組織の評価:
(X線小角散乱測定)
X線小角散乱測定は、各例とも共通して、(株)リガク製 水平型X線回折装置SmartLabを用い、波長1.54ÅのX線を用いて測定し、各例とも前記X線の散乱強度プロファイルを測定した。試験装置は、試験片表面に対して垂直にX線を入射し、入射X線に対して0.1〜10度の微小角度(小角)で、前記試験片から後方に散乱されるX線を検出器を用いて測定するものである。測定試料は、約80μmに薄片化し、測定を行った。
このX線の散乱強度プロファイルを、前記したSchmidtらによる公知の解析方法が組み込まれている、解析ソフト(株)リガク製粒径・空孔解析ソフトウェア NANO−Solver[Ver.3.5]を用いて、測定したX線散乱強度と解析ソフトで計算したX線散乱強度の値が近くなるように非線形最小2乗法によってフィッティングを行うことで、平均粒子径および規格化分散を求めた。
前記平均粒子径は、粒子としては完全な球状であると仮定して、理論式を用いて散乱強度を計算し、実験値とフィッティングして求めた。また、前記規格化分散は、粒子径に左右されず、粒子分布の広がりを比較できるようにするために用いた。
この規格化分散の式を以下に示す。
Figure 2018031026
ここでσが規格化分散、nは粒子数、xは粒子径、<x>は粒子径の相加平均である。
3.機械的性質の測定
前記丸棒平滑引張試験片の機械的性質は、引張試験機を用いて、12mm/分のクロスヘッド速度で、常温中で、破断まで引張試験を行った。応力―歪速度より、引張強さ(MPa)を測定した。全伸び(%)は前記引張試験時の引張試験前後のケガキ線の間隔(引張試験前の間隔10mm)より算出した。なお、これらの測定値は、各例とも前記5個の試験片の平均値とした。
4.まとめ
表1の発明例No.1〜6は、表1の通りアルミニウム合金組成は本発明の範囲内である。また、熱間静水圧押出を未再結晶領域にて行うなど、好ましい製造条件にて押出材が製造されている。更に、溶体化および焼入れ処理、人工時効処理も好ましい製造条件にて行なわれている。
この結果、発明例No.1〜6は、表1の通り、微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散が本発明の規定範囲内であり、引張強さが800MPa以上の高強度で、全伸びが5%以上である高い延性の特性を有する。
これに対して、表1の比較例No.1〜5は、表1の通りアルミニウム合金組成が本発明の範囲から外れている。このため、これら比較例No.1〜5は、押出材および模擬した機械部品が好ましい製造方法で製造されているものの、表1の通り、微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散が規定範囲から外れ、あるいはこれら組織が規定範囲内であっても、引張強さが800MPa未満と低いか、或いは全伸びが低い。
比較例1はZnが下限から外れる。
比較例2はMgが下限から外れる。
比較例3はMnが下限から外れる。
比較例4はMnが上限から外れる。
比較例5はZrが下限から外れる。
また、表1の比較例6〜11は、表1の通りアルミニウム合金組成は本発明の範囲内であるものの、機械部品を模擬した製造条件が上述した範囲から外れている。その結果、これら比較例は、微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散が、押しなべて規定範囲から外れ、引張強さが800MPa未満と低く、全伸びさえも低くなることもある。
比較例6は、均質化処理温度が高すぎる例である。そのため、微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散が過大になり、引張強さおよび全伸びが低下した。
比較例7は、押出開始温度が高すぎる例である。そのため、粒度分布の規格化分散が大きくなり、引張強さが低下した
比較例8は、押出後50℃までの平均冷却速度が遅すぎる例である。そのため、微細粒子の平均粒子直径が過大になり、引張強さが低下した。
比較例9は、人工時効処理の温度が高すぎる例である。そのため、微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散が過大になり、引張強さが低下した。
比較例10は、人工時効処理の時間が長すぎる例である。そのため、微細粒子の平均粒子直径が過大になり、引張強さが低下した。
比較例11は、均質化処理温度が低すぎる例である。そのため、微細粒子の平均粒子直径および粒度分布の規格化分散が過大になり、引張強さおよび全伸びが低下した。
Figure 2018031026
本発明によれば、人工時効処理後の引張強さが800MPa以上、全伸びが5%以上である高強度特性が得られる、7000系アルミニウム合金押出材からなる前記機械部品およびその製造方法、その素材である7000系アルミニウム合金押出材を提供できる。このため、本発明は、軽量化された前記機械部品として、好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. Zn:8.0〜14.0質量%、
    Mg:2.0〜4.0質量%、
    Cu:0.5〜2.0質量%、
    Mn:0.2〜1.5質量%、
    Zr:0.05〜0.3質量%を含有し、
    残部がAl及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなり、
    X線小角散乱で測定された結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径が2nm以上、7nm以下であり、
    粒度分布の規格化分散が45%以下であり、
    引張強さが800MPa以上、全伸びが5%以上であることを特徴とする機械部品。
  2. Cr:0.05〜0.3質量%、
    Sc:0.05〜0.3質量%
    のうちの一種または二種を更に含有する請求項1に記載の機械部品。
  3. Ag:0.05〜0.5質量%、
    Sn:0.01〜0.2質量%
    のうちの一種または二種を更に含有する請求項1または2に記載の機械部品。
  4. Zn:8.0〜14.0質量%、
    Mg:2.0〜4.0質量%、
    Cu:0.5〜2.0質量%、
    Mn:0.2〜1.5質量%、
    Zr:0.05〜0.3質量%を含有し、
    残部がAl及び不可避的不純物であるアルミニウム合金からなる機械部品用押出材であって、
    機械部品を模擬して、断面が円形な直径25mmの線棒押出材とした上で、減面率が84%で抽伸加工して断面が10mmφの円形である線棒材とし、この線棒材を480℃の温度で5時間保持する溶体化処理後に、50℃までの平均冷却速度を200℃/秒として焼入れ処理を行い、その後120℃で72時間保持する人工時効処理を施した場合、X線小角散乱で測定された結晶粒内の微細粒子の平均粒子直径が2nm以上、7nm以下であり、粒度分布の規格化分散が45%以下であり、引張強さが800MPa以上、全伸びが5%以上であることを特徴とする押出材。
  5. Cr:0.05〜0.3質量%、
    Sc:0.05〜0.3質量%
    のうちの一種または二種を更に含有する請求項4に記載の押出材。
  6. Ag:0.05〜0.5質量%、
    Sn:0.01〜0.2質量%
    のうちの一種または二種を更に含有する請求項4または5に記載の押出材。
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