JP2018029522A - 軟骨細胞の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軟骨細胞又はその前駆細胞を製造する方法の提供。【解決手段】本発明は、3 μM超の濃度のグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK-3β)阻害剤を含む培地で多能性幹細胞を培養する工程を含む、軟骨細胞又はその前駆細胞の製造方法、を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は広く、軟骨細胞又はその前駆細胞、例えば沿軸中胚葉由来細胞及び/又は側板中胚葉由来細胞を製造する方法、当該沿軸中胚葉及び/又は側板中胚葉細胞から軟骨細胞等を製造する方法等に関する。
軟骨疾患として高齢者の変形性関節症、外傷による関節軟骨欠損、小児の骨格形成異常、少耳症、口唇口蓋裂による鼻変形、離断性骨軟骨炎、外傷性損傷などが知られている。特に、変形性膝関節症の患者数は日本だけでも有病者数が2,530万人、そして有症状者数が780万人と極めて多いため、関節軟骨は再生医療のニーズが非常に大きい組織であると言える。しかしながら、軟骨細胞は増殖能に乏しいため、ヒトの場合、軟骨が一度損傷すると殆ど再生しないという問題もあり、軟骨疾患を治療するための確立された再生医療は現時点で存在していないというのが実情である。
外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎を治療するために、患部に自家培養した軟骨を移植することも試みられているが、軟骨組織を採取するための関節鏡手術が必要であること、培養できる軟骨の量に限界があること、あくまでも線維軟骨様の再生であり正常な硝子軟骨の再生ができている訳ではない等の欠点がある。
間葉系幹細胞を用いた軟骨再生医療も試みられているが、やはり培養できる細胞量には限界がある。このような量的な制限のため、従来の軟骨再生医療は膨大な細胞数を要する変形性関節症に応用できないものであった。
この点、多能性幹細胞は培養できる細胞量が無制限であることから、軟骨再生医療の有望な候補として考えられている。
これまで、多能性幹細胞を用いた軟骨細胞分化誘導法の主なものとして、ヒトES細胞を用いたOldershawらの報告(非特許文献1)やヒトiPS細胞を用いたYamashitaらの報告(非特許文献2)などがある。
Oldershawらの方法は、多種類のサイトカインを段階的に用いて、ヒトES細胞から中胚葉を経由して軟骨細胞に至るまで、約2週間かけて分化誘導している。最終的に軟骨系マーカーの上昇が示されているものの、その検証はin vitroでのものであり、その後の組織形成については言及されていない。本発明者らがOldershawらの方法をヒトiPS細胞に応用したところ、確かに軟骨細胞マーカーが良好に上昇したものの、その後に立体培養して免疫不全マウスの膝関節内に移植した結果、約7%に奇形腫の発生が見られた(Saito T et al. Biomed Res. 36:179-86,2015)。つまり、分化誘導後もごく一部の未分化細胞の残存があった可能性が考えられる。
いずれの方法もサイトカインを段階的に用いて、約2週間かけて多能性幹細胞を軟骨細胞にまで分化誘導しているが、使用するサイトカインの種類が多い。サイトカインは高額であるため、多くのサイトカインを必要とするこれらの方法は、臨床応用を見据えた場合、多額のコストがかかることが考えられる。また、サイトカインはタンパク質であることから、製造工程やその後の保存状態によって品質にばらつきが出やすく、分化誘導効率自体にも影響を与える可能性がある。
Nat Biotechnol. 28:1187-94, 2010 Stem Cell Rports. 4:404-18, 2015
この点、低分子化合物は大量生産を行った場合は非常に安価に製造可能であり、ロット間の品質のばらつきがほとんどない。またサイトカインを用いた分化誘導法と比較した場合、通常、低分子化合物はより短期間の培養でより良好な分化誘導効率で多能性幹細胞を分化誘導することができることが知られている。本発明は、かかる事情に鑑み、低分子化合物を用いて沿軸中胚葉細胞及び/又は側板中胚葉細胞を製造し、延いては軟骨細胞等に分化誘導する方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、Wnt/β-カテニンシグナルの活性化剤であるグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK-3β)阻害薬を所定の濃度培地に添加して多能性幹細胞を培養したところ、驚くべきことに、中内胚葉、沿軸中胚葉及び/又は側板中胚葉を経由して軟骨細胞へと分化誘導されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本願は以下の発明を包含する。
[1]3 μM超の濃度のグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK-3β)阻害剤を含む培地で多能性幹細胞を培養する工程を含む、軟骨細胞又はその前駆細胞の製造方法。
[2]GSK-3β阻害剤の培地への添加が中内胚葉マーカーの上昇を指標として中止される、[1]に記載の方法。
[3]前記培養工程の期間が1〜5日間、好ましくは2日間である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記培地が更にレチノイン酸受容体(RAR)アゴニストを含む、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]GSK-3β阻害剤とRARアゴニストを含む培地で1〜3日間、好ましくは2日間、RARアゴニストを含み、GSK-3β阻害剤を含まない培地で1日間以上、好ましくは2〜12日間培養する工程を含む、[4]に記載の方法。
[6]GSK-3β阻害剤がCHIR-99021、CHIR-98014、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、BIO-acetoxime、10Z-Hymenialdisine、Indirubin-3'-oxime、Kenpaullone、L803、L803-mts、MeBIO、NSC 693868、SB 216763、SB 415286、TC-G 24、TCS 2002、TCS 21311及びTWS 119から成る群から選択される化合物である、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]培地中のGSK-3β阻害剤の濃度が3〜20μM、好ましくは10μMである、[4]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]RARアゴニストがTTNPB、AM580、AM80、9-cis レチノイン酸、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)、LGD1550、E6060、AGN193312、AM555S、CD2314、AGN193174、LE540、CD437、CD666、CD2325、SR11254、SR11363、SR11364、AGN193078、TTNN(Ro19-0645)、CD270、CD271、CD2665、SR3985、AGN193273、Ch55、2AGN190521、CD2366、AGN193109及びRe80からなる群より選択される、[4]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]培地中のRARアゴニストの濃度が1 nM〜10 μM、好ましくは100 nMである、請求項[4]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記前駆細胞が沿軸中胚葉及び/又は側板中胚葉細胞である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]GSK-3β阻害剤と、任意にRARアゴニストとを含む、軟骨細胞又はその前駆細胞を製造するためのキット。
本発明によれば、サイトカインを用いた従来の分化誘導法と比較して、よりシンプルで且つ効率的に多能性幹細胞を軟骨細胞又はその前駆細胞、例えば沿軸中胚葉由来細胞及び/又は側板中胚葉へと分化誘導することができる。特に、本発明は、多能性幹細胞から、中内胚葉を経由して沿軸中胚葉及び/又は側板中胚葉、延いては軟骨細胞へと自律的且つ段階的な分化誘導を実現することができるため、再生医療への応用は勿論のこと、軟骨発生過程の基礎的研究、さらには軟骨疾患に対する創薬研究にも応用可能なものである。
特に、低分子化合物としてGSK-3β阻害剤とRARアゴニストを組み合わせた場合、多能性幹細胞から軟骨細胞又はその前駆細胞への分化誘導を更に促進することができるが、この結果は、レチノイン酸受容体γが軟骨分化の抑制に関与するとの報告(Shimono K et al. Nat Med 2011)を考慮すると驚くべきものである。
なお、特表2015-500630号公報には、GSK-3β阻害剤とレチノイン酸誘導体とを含む培地でヒト多能性幹細胞を培養する工程を含む、中間中胚葉細胞の製造方法が開示されている。同公報はGSK-3β阻害剤とレチノイン酸誘導体を使用する点で本発明と共通しているが、GSK-3β阻害剤として実施例で使用されたCHIR-99021の濃度の上限が「3 μM」であり、また、最終産物が「後腎細胞」であって、その途中で軟骨細胞の前駆細胞、例えば沿軸中胚葉等を経由しない点で本発明と相違する。
図1は、多能性幹細胞を分化誘導するのに適したCHIR99021の濃度及び投与期間について検討した結果を示す(RARアゴニストは不使用)。中内胚葉マーカーとしてT及びMIXL1を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図2は、多能性幹細胞を軟骨細胞へ分化誘導するのに適したTTNPBの濃度について検討した結果を示す(CHIRは10μM×2日間使用)。軟骨系マーカーとしてCOL2A1, COL11A2, SOX5,9を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図3は、多能性幹細胞を分化誘導するのに適したTTNPBの濃度について検討した結果を示す(CHIRは10μM×2日間使用)。中内胚葉マーカーとしてT及びMIXL1を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図4は、多能性幹細胞を軟骨細胞へ分化誘導するのに適したTTNPBの投与期間について検討した結果を示す(CHIRは10μM×2日間使用)。TTNPBの投与開始時期はday 0〜3で振り分けた。軟骨系マーカーとしてCOL2A1, COL11A2, SOX9を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図5は、CHIRを2日間10μM投与し、TTNPBは連日100 nM投与した場合の軟骨系マーカー(COL2A1, COL11A2, SOX5,9)の発現量の経時的な変化を示す。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。サンプルは連日回収したものが解析にかけられた。 図6は、CHIRを2日間10μM投与し、TTNPBは連日100 nM投与した場合の軟骨系マーカー(SOX6, ACAN)の発現量の経時的な変化を示す。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。サンプルは連日回収したものが解析にかけられた。 図7は、CHIRを2日間10μM投与し、TTNPBは連日100 nM投与した場合の肥大化マーカー(COL10A1)の発現量の経時的な変化を示す。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。サンプルは連日回収したものが解析にかけられた。 図8は、CHIRを2日間10μM投与し、TTNPBは連日100 nM投与した場合の中内胚葉マーカー(T及びMIXL1)の発現量の経時的な変化を示す。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。サンプルは連日回収したものが解析にかけられた。 図9は、CHIRを2日間10μM投与し、TTNPBは連日100 nM投与した場合の中胚葉マーカー(TBX6, MEOX1及びHAND1)の発現量の経時的な変化を示す。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。サンプルは連日回収したものが解析にかけられた。 図10は、多能性幹細胞を軟骨細胞へ分化誘導するのに適したCHIR99021の濃度について検討した結果を示す(TTNPBは連日100 nM投与)。軟骨系マーカーとしてCOL2A1, COL11A2, SOX5,9を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図11は、多能性幹細胞を軟骨細胞へ分化誘導するのに適したCHIR99021の濃度について検討した結果を示す(TTNPBは連日100 nM投与)。中内胚葉マーカーとしてT及びMIXL1を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図12は、多能性幹細胞を軟骨細胞へ分化誘導するのに適したCHIR99021の濃度について検討した結果を示す(TTNPBは連日1μM投与)。軟骨系マーカーとしてCOL2A1, COL11A2, SOX5,9を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図13は、CHIR99021の濃度とOSR1の発現量との関係を示す図である。CHIRは2日間所定の濃度で投与し、TTNPBは連日100 nM投与した。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。なお、OSR1は特表2015-500630号公報(上掲)で使用された中間中胚葉マーカーである。 図14は、多能性幹細胞を軟骨細胞へ分化誘導するのに適したCHIR99021の濃度について検討した結果を示す(TTNPBは連日100 nM投与)。軟骨系マーカーとしてCOL2A1, COL11A2, SOX5,9を用いた。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図15は、軟骨系マーカー(SOX6, ACAN)の発現量について本発明の分化誘導プロトコルと、非特許文献1(Oldershawら)及び非特許文献2(Yamashitaら)に記載のプロトコルとを比較した図である。いずれのプロトコルを用いた分化誘導群においても、同一クローン由来で、かつEssential 8(登録商標) Medium Kitを用いた同一のフィーダーフリー条件下で維持培養された同一継代数のiPS細胞を多能性幹細胞として使用した。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図16は、骨化マーカー(COL1A1, RUNX2)の発現量について本発明の分化誘導プロトコルと、非特許文献1(Oldershawら)及び非特許文献2(Yamashitaら)に記載のプロトコルとを比較した図である。いずれのプロトコルを用いた分化誘導群においても、同一クローン由来で、かつEssential 8(登録商標) Medium Kitを用いた同一のフィーダーフリー条件下で維持培養された同一継代数のiPS細胞を多能性幹細胞として使用した。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図17は、軟骨系マーカーと骨化マーカー以外の他系統のマーカーの発現量について本発明の分化誘導プロトコルと、非特許文献1(Oldershawら)及び非特許文献2(Yamashitaら)に記載のプロトコルとを比較した図である。いずれのプロトコルを用いた分化誘導群においても、同一クローン由来で、かつEssential 8(登録商標) Medium Kitを用いた同一のフィーダーフリー条件下で維持培養された同一継代数のiPS細胞を多能性幹細胞として使用した。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図18は、非特許文献1(Oldershawら)のプロトコルに従い得られた軟骨細胞のFACS解析結果を示す。いずれのプロトコルを用いた分化誘導群(分化誘導プロトコルを開始する前のiPS細胞)においても、またコントロール群においても、同一クローン由来で、かつEssential 8(登録商標) Medium Kitを用いた同一のフィーダーフリー条件下で維持培養された同一継代数のiPS細胞を多能性幹細胞として使用した。また、各抗体はAlexa Fluor(登録商標)647で標識したものを用いた。 図19は、非特許文献2(Yamashitaら)のプロトコルに従い得られた軟骨細胞のFACS解析結果を示す。いずれのプロトコルを用いた分化誘導群(分化誘導プロトコルを開始する前のiPS細胞)においても、またコントロール群においても、同一クローン由来で、かつEssential 8(登録商標) Medium Kitを用いた同一のフィーダーフリー条件下で維持培養された同一継代数のiPS細胞を多能性幹細胞として使用した。また、各抗体はAlexa Fluor(登録商標)647で標識したものを用いた。 図20は、非特許文献2(Yamashitaら)のプロトコルに従い得られた軟骨細胞のFACS解析結果を示す。いずれのプロトコルを用いた分化誘導群(分化誘導プロトコルを開始する前のiPS細胞)においても、またコントロール群においても、同一クローン由来で、かつEssential 8(登録商標) Medium Kitを用いた同一のフィーダーフリー条件下で維持培養された同一継代数のiPS細胞を多能性幹細胞として使用した。また、各抗体はAlexa Fluor(登録商標)647で標識したものを用いた。 図21は、軟骨系マーカー(COL2A1, COL11A2, SOX5,9)の発現量についてTTNPBとその他のレチノイン酸受容体(RAR)アゴニストとを比較した図である。CHIRは2日間10μM投与し、TTNPBは連日100 nM投与した。縦軸の発現量はβアクチンで標準化した値である。 図22は、本発明に従い得られた軟骨細胞が移植されたSCID(Sevefe Combined ImmunoDeficiency)マウス膝関節の免疫染色写真である。左側の写真では移植後 8週目の大腿骨膝蓋大腿関節面(矢状断)の硝子軟骨がサフラニンOで赤く染色されており(中央の四角で囲まれた部分)、これを拡大した右側の写真では、本発明により得られたと考えられるヒト由来の軟骨細胞がビメンチンで緑色に染色されている。なお、青く染まっているのはDAPIで染色された細胞核で、ヒト・マウスの細胞ともに染色されている。
本発明に係る軟骨細胞又はその前駆細胞の製造方法は、3μM超の濃度のGSK-3β阻害剤を含む培地で多能性幹細胞を培養する工程を含む。
軟骨細胞は、コラーゲンやプロテオグリカンなど軟骨を構成する細胞外マトリックスを産生する細胞である。別の態様において、軟骨細胞は、COL2A1(II型コラーゲン), COL11A2(XI型コラーゲン), SOX5,6,9及びACAN(アグリカン)から成る群から選択される軟骨系マーカーを発現する細胞としても定義される。本明細書で使用する場合、軟骨細胞の「前駆細胞」という用語は、多能性幹細胞から誘導される細胞であって、軟骨細胞に分化可能な細胞を意味する。このような前駆細胞の集団には中内胚葉由来の細胞、例えば中胚葉、特に沿軸中胚葉及び/又は側板中胚葉、好ましくは沿軸中胚葉に由来する細胞が含まれ得る。
沿軸中胚葉細胞は、骨格筋、骨、軟骨へと分化する、原条の両側に存在する中胚葉系細胞である。沿軸中胚葉は分節化して体節を形成した後、腹内側の椎板と背外側の皮筋板に分化する。軟骨は椎板が更に分化したものである。中胚葉は沿軸中胚葉の他、脊索中胚葉、中間中胚葉、側板中胚葉等に分類することができる。
本発明で製造される軟骨細胞又はその前駆細胞は多能性幹細胞を出発材料として調製することができる。本発明で使用する多能性幹細胞としては、iPS細胞やES細胞のみならず、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、体細胞由来ES(ntES)細胞などが例示される。しかしながら、GSK-3β阻害剤と、任意にRARアゴニストを含む培地において軟骨細胞又はその前駆細胞、例えば沿軸中胚葉に分化可能であるかぎり、どのような多能性幹細胞であっても本発明に使用することができる。
セリン・スレオニンキナーゼの一種であるグリコーゲン合成酵素 3には二種類のアイソフォーム、αとβが存在する。本明細書で使用する場合、「GSK-3β阻害剤」とはGSK-3βタンパク質のキナーゼ活性を阻害する物質を意味する。本発明の効果を損なわない限り、複数のGSK-3β阻害剤を使用してもよい。GSK-3β阻害剤として、例えば、CHIR(CHIR99021又はCHIR98014)、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、BIO-acetoxime、10Z-Hymenialdisine、Indirubin-3'-oxime、Kenpaullone、L803、L803-mts、MeBIO、NSC 693868、SB 216763、SB 415286、TC-G 24、TCS 2002、TCS 21311、TWS 119等が例示される。中でもCHIR99021が好ましい。
GSK-3β阻害剤は終濃度が3 μM超、例えば3〜20μM、好ましくは10μMとなるよう培地に添加される。20 μM以上でも多能性幹細胞を分化誘導することができるが、細胞の生存度が低下し得る。また、30 μM以上の濃度の場合、マーカーの種類によっては発現上昇が見られないこともある。
本発明で使用する培地は、本発明の効果を損なわないかぎり特に限定されないが、例えば、動物細胞の培養に用いられる基礎培地を用いることができる。基礎培地としては、例えばDulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)、あるいはこれらの混合培地などが包含される。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、β-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、GSK-3β阻害剤や RARアゴニスト以外の低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどの1つ以上の物質を含有してもよい。培地は適切な頻度で、例えば培養2日目以降毎日、GSK-3β阻害剤や RARアゴニストが所望の濃度となるよう調製された培地に交換され得る。その際、培養物をPBS等で洗浄してもよい。
本発明においては、培地を馴化するために、あるいは、培養中の多能性幹細胞の増殖をサポートするためにフィーダー細胞を使用することができる。別の態様において、本発明における培養はフィーダーフリー条件下で行ってもよい。培養は平面(単層)培養でも三次元培養でも行うことができるが、培養方法は目的とする細胞の種類によって適宜変更され得る。例えば、軟骨細胞は長期間平面培養することで細胞外マトリックス等の基質を産生する能力が低下したり、あるいは、脱分化型軟骨細胞になるため、途中で立体培養に変更することも考えられる。
多能性幹細胞は、GSK-3β阻害剤を含む培地において所定の期間培養することにより軟骨細胞又はその前駆細胞へと分化誘導される。培養条件によっても異なるが、培養を1〜5日間程度行うことで多能性幹細胞を中内胚葉、更には沿軸中胚葉および側板中胚葉へと分化誘導することができる。細胞培養における温度等の諸条件は特に限定されるものではなく、一般的な条件(例えば、37℃,5%CO2下)でもよいし、あるいは目的に応じて適宜変更されたものでもよい。限定することを意図するものではないが、多能性幹細胞からの分化誘導は以下に列記するようなマーカー遺伝子の発現を指標として確認することができる。
・未分化マーカー:OCT3/4, NANOG
・中内胚葉マーカー:T, MIXL1
・中胚葉マーカー:TBX6, MEOX1, HAND1, OSR1
・軟骨系マーカー:COL2A1, COL11A2, SOX5,6,9, ACAN
・肥大化マーカー:COL10A1
・骨化マーカー:COL1A1, RUNX2
・神経外胚葉マーカー:SOX1
・内胚葉マーカー:SOX17
・心筋マーカー:NKX2-5
・血球血管芽細胞マーカー:VEGFα
例えば、多能性幹細胞をGSK-3β阻害剤の存在下で培養する際、培養開始から所定期間経過後、例えば数日の間に中内胚葉マーカーや中胚葉マーカーの発現の変化をモニタリングすることで、軟骨前駆細胞への分化誘導が経時的に生じていることを確認することができる。例えば、培養条件等によっても異なるが、多能性幹細胞をGSK-3β阻害剤の存在下で培養すると、培養1〜2日目頃に中内胚葉マーカーの発現が上昇し、培養3〜4日目頃に中内胚葉マーカーの発現が低下して中胚葉マーカーの発現が上昇し得る。そのため、中胚葉由来の細胞、例えば軟骨細胞への分化誘導が所望とされる場合、培地へのGSK-3β阻害剤の添加は中内胚葉マーカーの上昇を指標として中止することができる。
上記の基礎培地は、GSK-3β阻害剤に加えて、所望の分化誘導等を実現するためのその他の低分子化合物、好ましくはレチノイン酸受容体(RAR)アゴニストを更に含んでもよい。培地中に含めるべきその他の成分は適宜当業者が決定することができる。
ここで、レチノイン酸(RA)は細胞内の核内受容体に結合して種々の生理作用に関与することが知られている。例えば、レチノイン酸の核内受容体には、レチノイン酸受容体(retinoic acid receptor: RAR)とレチノイドX受容体(retinoid X receptor: RXR)があり、それぞれα、β、γのサブタイプが存在するが、RARγ選択的アゴニストは間葉系幹細胞が軟骨細胞へ分化するのを抑制するとの報告がある(Shimono K et al. Nat Med 2011(上掲))。一方、本願発明においては、GSK-3β阻害剤とRARアゴニストを併用することで、多能性幹細胞から軟骨細胞又はその前駆細胞への分化誘導を更に促進することができる。RARアゴニストは終濃度が1 nM〜10 μM、好ましくは10〜100 nM、より好ましくは100 nMとなるよう培地に添加されうる。しかしながら、これらの濃度はあくまでも例示であって、低分子化合物の濃度は所望とする分化誘導レベルに応じて当業者によって適宜調節され得る。
GSK-3β阻害剤とRARアゴニストを併用する場合、いずれも培養当初から培地に添加されるのが好ましい。多能性幹細胞を軟骨細胞に分化する場合、GSK-3β阻害剤とRARアゴニストを含む培地で所定の期間、例えば1〜3日間、好ましくは2日間培養し、続いて、RARアゴニストを含み、GSK-3β阻害剤を含まない培地で更に所定の期間、例えば1日間以上、好ましくは2〜12日間、より好ましくは3〜7日間培養してもよい。
本明細書で使用する場合、「RARアゴニスト」はRARα、RARβ又はRARγのいずれか、あるいは、これら全てに対するアゴニスト活性を有する化合物を意味する。限定されることを意図するものではないが、RARアゴニストは、例えば、TTNPB、AM580、AM80、9-cis レチノイン酸、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)、LGD1550、E6060、、AGN193312、AM555S、CD2314、AGN193174、LE540、CD437、CD666、CD2325、SR11254、SR11363、SR11364、AGN193078、TTNN(Ro19-0645)、CD270、CD271、CD2665、SR3985、AGN193273、Ch55、2AGN190521、CD2366、AGN193109及びRe80からなる群より選択され得る。これらの低分子化合物の中でも、TTNPB、AM580、AM80、ATRA、9-cis-Retinoic AcidがRARアゴニストとして好ましい。
GSK-3β阻害剤等で分化誘導された細胞を追加の培養工程にかけてもよく、例えば更なる分化、増殖、成熟を促進するために、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させるような化合物の存在下で培養することも意図される。
本発明に従い製造される軟骨細胞は、軟骨組織の修復、再建に利用することができる。このような軟骨組織としては、例えば関節軟骨、肋軟骨、甲状軟骨、気管軟骨、関節半月、関節円板、椎間円板、恥骨結合、喉頭蓋軟骨、外耳道軟骨、耳介軟骨等がある。本発明により製造された軟骨細胞は、種々の軟骨疾患、例えば高齢者の変形性関節症、外傷による関節軟骨欠損、小児の骨格形成異常、少耳症、口唇口蓋裂による鼻変形、離断性骨軟骨炎、外傷性損傷の治療等に使用されることが意図される。また、患者由来の多能性幹細胞を用いることで、本発明により得られた軟骨細胞を患部に自家移植することもできる。
更に、得られた軟骨細胞は、軟骨形成を増強し、あるいは軟骨基質産生を増加させる医薬組成物中に含めてもよい。このような医薬組成物は、上記軟骨疾患の予防又は治療のために用いることができる。医薬組成物は、軟骨細胞に加え、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、細胞保護剤(例えばジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン)、抗生物質、pH調整剤、細胞の活性化や増殖又は分化誘導などを目的とした各種の成分(ビタミン類、サイトカイン、成長因子、ステロイド、骨誘導因子(BMP)等)を含んでもよい。対象となる被験動物はヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス等の哺乳動物である。
別の態様において、本発明は更に、3 μM超の濃度のグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK-3β)阻害剤を含む培地で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞を骨細胞又は筋細胞の製造方法を提供する。培地中に含めるべき成分は適宜当業者が決定することができる。
本発明は更に、軟骨細胞、骨細胞及び/又は筋肉細胞に関連する疾患の治療を必要とする被験者に対し、得られた細胞を投与することで当該疾患を治療する方法を提供する。標的部位への投与方法は特に限定されないが、例えば、組織欠損部等の患部に必要とされる細胞を注入等することが意図される。
更に別の態様において、本発明はGSK-3β阻害剤と、任意にRARアゴニストとを含む、軟骨細胞又はその前駆細胞を製造するためのキットを提供する。本発明のキットは更に、培地やその他の低分子化合物を含むこともできる。GSK-3β阻害剤と任意にRARアゴニストは、別々の容器に保存されていることが好ましいが、同一の容器中に保存されていてもよい。各容器は低分子化合物と一緒に予め培地を含んでいてもよい。本発明に係るキットは本開示にかかる分化誘導方法について記載した説明書又は表示を更に有していてもよい。このようなキットは主に試薬として提供されることが意図される。
本発明は更に、GSK-3β阻害剤と、任意にRARアゴニストとを含む、軟骨細胞又はその前駆細胞への分化誘導促進剤を提供する。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ヒトiPS細胞の樹立)
ヒトiPS細胞は、新生児表皮線維芽細胞(Lonza Japan社)にヒトOCT4, SOX2, KLF4, MYCの4遺伝子をpMXsレトロウイルスベクターを用いて導入し (Takahashi et al., Cell 2007)、樹立した(クローン名; 7F3955)。
(ヒトiPS細胞の維持およびフィーダーフリー培養への馴化)
前述の通りに樹立したヒトiPS細胞は、マウス胎仔由来線維芽細胞(MEF)にマイトマイシンC (Wako, 134-07911) による処理を行うことで作成したフィーダー細胞上で、StemSure(登録商標)D-MEM(High Glucose)with Phenol Red and Sodium Pyruvate (Wako, 197-16275) をベースとし、15% StemSure(登録商標) Serum Replacement (Wako, 197-16775), 2 mM L-Glutamine (Gibco, 25030-081), 1% Non-essential amino acid (Gibco, 11140-050), 50 U/ml Penicillinおよび50 ug/ml Streptomycin (Sigma, P4333), 0.1 mM β-mercaptoethanol (Gibco, 21985-023), 5 ng/ml ヒトFGF2 (オリエンタル酵母, 47079000) から成る培地で維持した。
これらのフィーダー上で維持されたヒトiPS細胞を、マトリゲル(登録商標)基底膜マトリックス (Corning, 356234)でコーティングした培養ディッシュに撒き、Essential 8(登録商標) Medium Kit (Gibco, A1517001)あるいはEssential 8(登録商標) Flex Medium Kit (Gibco, A2858501) に50 U/ml Penicillinおよび50 ug/ml Streptomycin (Sigma, P4333)を加えた培地でフィーダーフリー培養を行い、5-10継代を行うことで同条件下でのフィーダーフリー培養に十分に馴化させた。
(軟骨細胞への分化誘導プロトコル)
35 mmディッシュ上の細胞数が1.0-2.0×106 個に達した段階でプロトコルを開始した。
分化誘導プロトコルの基本培地は、DMEM/F-12, GlutaMAX(登録商標) supplement (Gibco, 10565-018)をベースとし、2% B27 supplement (Gibco, 17504-044), 1% ITS-X (Gibco, 51500-056), 1% Non-essential amino acid (Gibco, 11140-050), 50 ug/ml L(+)-Ascorbic Acid (ナカライテスク, 03420-52), 50 U/ml Penicillinおよび50 ug/ml Streptomycin (Sigma, P4333), 90 uM β-mercaptoethanol (Gibco, 21985-023)を含む組成から成った。
この基本培地に、CHIR99021 (Cayman, 13122), TTNPB (Santa Cruz, 203303), AM580 (Santa Cruz, 203505), AM80 (Cayman, 71770), ATRA (Cayman, 11017), 9-cis-Retinoic Acid (Cayman, 14587) の各低分子化合物を投与期間や投与濃度を振り分けて加えることで、沿軸中胚葉及び/又は側板中胚葉、および軟骨細胞への分化誘導能を検討した。
本実施例における各マーカーの解析にはリアルタイムRT-PCRやFluorescence Activated Cell Sorting (FACS)を用いた。リアルタイムRT-PCRにおける tRNAはTRI Reagent(コスモバイオ, TR118)を用いて回収し、Tissue Total RNA Mini Kit(チヨダサイエンス, FATRK 001)を用いて精製した。1.0 μgのtRNAをReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡, FSQ-301)により逆転写してsingle-stranded cDNAを得た。THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡, QPS-201)、各種プライマーを用いて定量PCRを行った。
FACSについては、対象の細胞サンプルをBD Pharmingen(登録商標) Transcription Factor Buffer Set (BD Pharmingen, 562574)を用いてプロトコル通りに処理し、Alexa Fluor 647 Mouse Anti-Sox9 (BD Pharmingen, 565493), Alexa Fluor 647 Mouse anti-Oct3/4 (BD Pharmingen, 560329), Alexa Fluor 647 Mouse anti-Human Nanog (BD Pharmingen, 561300)をメーカー推奨の濃度・反応時間で抗体処理を行った。続いてFACSAria(登録商標) Fusion cell sorter (BD Biosciences)を用いて各マーカーにつき10,000 cells×3セットのFACSを行い、陽性細胞率を算出した。
実施例1:GSK-3β阻害剤単独の至適濃度の検討
中内胚葉マーカーであるT及びMIXL1を用い、GSK-3β阻害剤が多能性幹細胞の分化能に及ぼす影響を検討した。上記分化誘導プロトコルの基本培地にGSK-3β阻害剤を所定の濃度となるように添加した培地で、フィーダーフリー培養に馴化したヒトiPS細胞 (7F3955)の平面培養を行った。以降、特に断らないかぎり、ヒトiPS細胞は7F3955を使用したものとする。培地は、上記基本培地2mlに対しGSK-3β阻害剤の終濃度が当初と同じ濃度となるように添加したものと毎日交換した。このような条件のもと、1-4日間培養したところ、CHIR99021 の濃度を5-10 μMとした場合には濃度依存的に中内胚葉マーカーが上昇した(図1)。しかしながら、CHIR99021 20 μM以上ではcell viabilityが低下し, 30 μMではマーカーの上昇が見られず、なおかつ細胞がほぼ死滅した(結果は示さず)。
実施例2:GSK-3β阻害剤とRARアゴニストの併用効果の検討
特表2015-500630号公報(上掲)には、GSK-3β阻害剤としてのCHIR99021(3 μM)とRARアゴニストとしてのTTNPB(1 μM)の存在下でヒトiPS細胞が中間中胚葉細胞に分化したことが記載されている。本実施例では、GSK-3β阻害剤とRARアゴニストの併用が多能性幹細胞の分化能に及ぼす影響について検討した。
2−1:RARアゴニストの至適濃度についての検討
CHIR99021の濃度を10 μMとし、また、低分子化合物として更に、異なる濃度のTTNPB(1nM〜10 μM)を添加した点を除き、実施例1と同様の方法によりヒトiPS細胞を培養した。培養から1日経過後、培地を各低分子化合物の終濃度が当初と同じ濃度となるように調製したものと交換した。培養から2日後、培養物をPBSで2回洗浄し、それ以降はCHIR99021を添加せずに、上記基本培地にTTNPBの終濃度が当初と同じ濃度となるように添加したものと毎日交換し、計5日間培養した。
培養物におけるマーカーの発現量を解析した。その結果、TTNPBはいずれの濃度でもCHIR99021との組み合わせで軟骨系のマーカーを上昇させることが明らかとなった(図2)。これらの低分子化合物の併用による軟骨系マーカーの上昇は特に、TTNPBの濃度が10〜100 nMの場合に最も顕著であった。しかしながら、それ以上の濃度では一部の軟骨系マーカーで値の減少が見られた。また培養2日後における中内胚葉マーカー値は、CHIR99021投与単独の場合と比較して、TTNPBを投与した場合、濃度依存的に低下が見られた(図3)。理論に拘束されることを意図するものではないが、この結果は、CHIR99021投与単独の場合と比較して、TTNPBを併用した場合、培養2日後の時点で細胞が中内胚葉よりもより先の段階に分化していることを示しているとも考えられる。
以上の結果から、軟骨細胞への分化誘導を確実にするためには、GSK-3β阻害剤と組み合わされるRARアゴニストの濃度を調節することが重要と考えられる。
2−2:RARアゴニストを投与するタイミングについての検討
CHIR99021を10 μMに、そしてTTNPBの濃度を100 nMに固定した条件でTTNPBを投与するタイミングについて検討した。サンプルは、2−1と同様に培養0日目から毎日同じ濃度のTTNPBを添加して得られた培養物と、培養2日目に初めてTTNPBを添加し、その後毎日同じ濃度で添加して得られた培養物と、培養3日目に初めてTTNPBを添加し、その後毎日同じ濃度で添加して得られた培養物の3種類を準備した。なお、CHIR99021はいずれの培養においても2−1と同様に培養2日目の培地交換のタイミングで投与を終了した。各サンプルを比較したところ、培養当初よりTTNPBを添加した方が軟骨系マーカーの上昇が良好であった(図4)。
培地中に10μMのCHIR99021を培養初日から培養2日目の培地の交換のタイミングまで、そして、100 nMのTTNPBを毎日添加した上記サンプルにおける軟骨系マーカーの経時的な変化を調べた。14日間培養したサンプルを毎日同じタイミングで回収し、それぞれについて種々のマーカーの変化を解析したところ、軟骨系マーカーの値は培養から4〜5日以降で急激な上昇が見られた(図5及び6)。一方、軟骨の肥大分化を示す肥大化マーカーは平面培養実施中に値の上昇は認めなかった(図7)。それ以前については、培養1〜2日にかけて中内胚葉マーカーが上昇し、培養2〜4日にかけて沿軸中胚葉および中胚葉マーカーが上昇した(それぞれ、図8及び図9)。この結果から、本発明の培養条件のもとでは継時的に段階的な分化誘導が進行していると考えられる。
2−3:GSK-3β阻害剤の至適濃度についての検討
異なる濃度のCHIR99021と100 nMのTTNPBを添加した点を除き、2−1と同様の方法によりヒトiPS細胞を培養した。培養から1日経過後、培地を各低分子化合物の終濃度が当初と同じ濃度となるように調製したものと交換した。培養から2日後、培養物をPBSで2回洗浄し、それ以降はCHIR99021を添加せずに、上記基本培地にTTNPBの終濃度が当初と同じ濃度となるように添加したものと毎日交換し、計5日間培養した。その結果、CHIR99021は3 μM超、特に5〜10 μMの濃度のときにTTNPBとの組み合わせで軟骨系のマーカーを上昇させることが明らかとなった。20 μMの濃度では一部の軟骨系マーカーで値の減少が見られた。5日間培養したときの結果を図10に示す。
また、CHIR99021は1 μMから20 μMにかけて濃度依存的に中内胚葉マーカーを上昇させた(図11)。
軟骨系のマーカーの上昇は特に5〜10μMの濃度のときに顕著であった(図12)。ここで、図12に示したCHIR99021が3μMの濃度であるときの条件は、特表2015-500630号公報(上掲)の実施例に記載の濃度と完全に一致している。また、3 μMのCHIR99021は、その前後の濃度と比較して中間中胚葉マーカーであるOSR1を顕著に上昇させた(図13)。これらの結果から、多能性幹細胞は、CHIR99021の濃度が3μM超の場合には軟骨系細胞へと分化誘導され、この濃度以下の場合には、特表2015-500630号公報(上掲)に記載のとおり、中間中胚葉へと分化誘導されるものと考えられる。
2−4:GSK-3β阻害剤を投与する至適期間についての検討
CHIR99021を10 μMに、そしてTTNPBの濃度を100 nMに固定した条件でCHIR99021を投与する至適期間について検討した。本実験では、CHIR99021の投与期間を0〜5日間で振り分けて、各細胞培地に投与された。CHIR99021投与終了時には培養物をPBSで2回洗浄し、それ以降はCHIR99021を添加せずに、上記基本培地にTTNPBの終濃度が100 nMとなるように添加したものを毎日交換し、計5日間培養した。結果を図14に示す。
図14に示した結果から明らかなとおり、CHIR99021を2日間投与したサンプルにおいて軟骨系マーカーの上昇が最も良好であった。
以上の結果から、CHIR 10 μMを培養から2日間、そしてTTNPB 100 nMを連日投与し、4日以上培養する条件がヒトiPS細胞を軟骨細胞へ分化誘導するのに最適な条件と考えられる。同様の傾向は、他のヒトiPS細胞クローンやマウスES細胞でも確認された。なお、確認を行った他のヒトiPS細胞クローンは、同意を得たボランティアより採取した成人末梢血にセンダイウイルスベクターを用いてヒトOCT4, SOX2, KLF4, MYCの4遺伝子を導入する (Masaki et al., Development 2015)ことで樹立したものである(クローン名; PB001, PB004)。マウスES細胞は以下の方法に従い維持され、フィーダーフリー培養への馴化が行われた。
マウス胎仔由来線維芽細胞(MEF)にマイトマイシンC処理を行うことで作成したフィーダー細胞上で、StemSure(登録商標) D-MEM (High Glucose) with Phenol Red and Sodium Pyruvate (Wako, 197-16275) をベースとし、15% StemSure(登録商標) Serum Replacement (Wako, 197-16775), 2 mM L-Glutamine (Gibco, 25030-081), 1% Non-essential amino acid (Gibco, 11140-050), 50 U/ml Penicillinおよび50 ug/ml Streptomycin (Sigma, P4333), 0.1 mM β-mercaptoethanol (Gibco, 21985-023), 103 units/ml マウスLIF (Wako, 199-16051) を含む培地で維持した。
これらのフィーダー上で維持されたマウスES細胞を、ゼラチンでコーティングした培養ディッシュに撒き、DMEM/F-12, GlutaMAX(登録商標) supplement (Gibco, 10565-018)とNeurobasal Medium (Gibco, 21103-049)の1:1混合培地をベースとし、0.5% N2 supplement (Gibco, 17502-048), 1% B27 supplement (Gibco, 17504-044), 25 ug/ml BSA fraction V (Wako, 015-23295), 50 U/ml Penicillinおよび50 ug/ml Streptomycin (Sigma, P4333), 103 units/ml マウスLIF (Wako, 199-16051), 1 uM PD0325901 (Wako, 163-24001), and 3 uM CHIR99021 (Cayman, 13122)を加えた培地でのフィーダーフリー培養を行い、5-10継代を行うことで同条件下でのフィーダーフリー培養に十分に馴化させた(Silva J et al., PLoS Biol 2008. and Ying QL et al., Nature 2008)。
実施例3:サイトカインを用いた分化誘導法との比較
3−1:リアルタイムRT-PCRによる比較
本発明に係る分化誘導方法と、非特許文献1(Oldershaw)及び非特許文献2(Yamashita)に記載されているようなサイトカインを用いた従来の分化誘導法とを比較した。本発明については実施例2で決定した最適な分化誘導条件を用いた。培養は最長9日間行った。一方、従来技術については、各非特許文献に記載のプロトコルに従い分化誘導を行った。Oldershawのサンプルについては13日間、そしてYamashitaのサンプルについては14日間それぞれ培養した。各群の条件をできるだけ同一にする為に、いずれのプロトコルにおいても、同一クローン由来で、かつEssential 8(登録商標) Medium Kitを用いた同一のフィーダーフリー条件下で維持培養された同一継代数のiPS細胞を使用して比較実験を行った。各サンプルをリアルタイムRT-PCRにかけた結果を図15及び16に示す。図15に示すとおり、本発明に係る分化誘導方法は従来のプロトコルよりも、軟骨系マーカーの上昇が良好であった。一方、Yamashitaらのプロトコルで得られたサンプルにおいては著明な骨化マーカーの上昇が確認された(図16)。また、その他のマーカーについても解析したところ、本発明の分化誘導法の方が従来技術よりも概して低値であった(図17)。
なお、軟骨細胞への分化にとって好ましくないマーカー、例えば肥大化マーカー、神経外胚葉マーカー、内胚葉マーカーは正常組織よりも十分に低値であった(結果は示さず)。
3−2:FACSによる比較
上記の各サンプルをFACSにかけた結果、従来技術のサンプルは平面培養終了の時点で、OCT3/4, NANOGといった未分化マーカー陽性細胞の残存が見られた(図18及び19)。これは、従来技術のサンプルでは均一な分化誘導が実現できていないことを示している。このような細胞をこのまま移植に用いた際には、腫瘍化のリスクを否定できない。但し、Yamashitaらは、平面培養終了後にさらに長期間浮遊培養を行ってから移植を行っており、その限りでは腫瘍化を生じた移植例はなかったと報告している。
一方、本発明の分化誘導プロトコルでは、9日間の平面培養終了の時点で、SOX9陽性細胞率が97.9%と非常に効率よく軟骨細胞に分化誘導できている上に、OCT3/4, NANOGといった未分化マーカー陽性細胞の残存は一切見られなかった(図20)。
実施例4:その他のRARアゴニストについての検討
TTNPB以外のRARアゴニストについてもGSK-3β阻害剤との併用効果を確認した。RARアゴニストとして、AM580 (Santa Cruz, 203505), AM80 (Cayman, 71770), ATRA (Cayman, 11017), 9-cis-Retinoic Acid (Cayman, 14587)を使用した。各RARアゴニストの濃度は100nMとし、その他の分化誘導条件は実施例2で決定した最適なものを用いた。その結果、いずれのRARアゴニストを用いた場合でもTTNPBに匹敵する軟骨系マーカーの上昇が認められた(図21)。
実施例5:SCID(Severe Combined ImmunoDeficiency)マウス膝関節への移植および移植後の組織学的検討
実施例2で最適であると決定されたプロトコルの9日目に細胞を解離し、75mm Transwell(登録商標) with 0.4um Pore Polycarbonate Membrane Insert, Sterile (Corning, 3419)上に置いた内径3.4 mmのクローニングリング(IWAKI, RING-05)内にプロトコル基本培地で1.7×106個の細胞を懸濁した懸濁液を入れた。このままプロトコル基本培地で1週間培養し、ディスクを形成した(Saito et al., Biomed Res 2015. を一部改変)。
形成したディスクをSCIDマウスの大腿骨膝蓋大腿関節に移植した。移植から8週後に関節面(矢状断)について、硝子軟骨を赤く染めるサフラニンOで染色した結果を図22の左側に示す。図22の右側は、抗ヒトビメンチン/DAPIで二重染色した移植部位(左側の図の四角で覆われた箇所)の拡大写真である。これらの結果は、サフラニンO染色陽性領域が綺麗にヒト細胞由来であり、また、移植したヒト細胞が生着したことを示している。移植実験を実施した個体に、奇形腫やその他の腫瘍形成は認めた例はなかった。要するに、本発明によれば、サイトカイン等を用いていた従来の分化誘導方法と比較して、より短期間の培養でより良好な分化誘導効率で多能性幹細胞を軟骨細胞又はその前駆細胞へと分化誘導することができるだけでなく、腫瘍化のリスクが極めて低く、また、生着性が高い軟骨細胞を提供することが可能になる。

Claims (10)

  1. 3 μM超の濃度のグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK-3β)阻害剤を含む培地で多能性幹細胞を培養する工程を含む、軟骨細胞又はその前駆細胞の製造方法。
  2. GSK-3β阻害剤の培地への添加が中内胚葉マーカーの上昇を指標として中止される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記培養工程の期間が1〜5日間、好ましくは2日間である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記培地が更にレチノイン酸受容体(RAR)アゴニストを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. GSK-3β阻害剤とRARアゴニストを含む培地で1〜3日間、好ましくは2日間、更にRARアゴニストを含む培地で所定の期間、例えば1日間以上、好ましくは2〜12日間培養する工程を含む、請求項4に記載の方法。
  6. GSK-3β阻害剤がCHIR-99021、CHIR-98014、3F8、A 1070722、AR-A 014418、BIO、BIO-acetoxime、10Z-Hymenialdisine、Indirubin-3'-oxime、Kenpaullone、L803、L803-mts、MeBIO、NSC 693868、SB 216763、SB 415286、TC-G 24、TCS 2002、TCS 21311及びTWS 119から成る群から選択される1又は複数の化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 培地中のGSK-3β阻害剤の濃度が3〜20μM、好ましくは10μMである、請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. RARアゴニストがTTNPB、AM580、AM80、9-cis レチノイン酸、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)、LGD1550、E6060、AGN193312、AM555S、CD2314、AGN193174、LE540、CD437、CD666、CD2325、SR11254、SR11363、SR11364、AGN193078、TTNN(Ro19-0645)、CD270、CD271、CD2665、SR3985、AGN193273、Ch55、2AGN190521、CD2366、AGN193109及びRe80からなる群より選択される、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 培地中のRARアゴニストの濃度が1 nM〜10 μM、好ましくは100 nMである、請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記前駆細胞が沿軸中胚葉及び/又は側板中胚葉細胞である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
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