しかしながら、特許文献1に開示の技術では、部品点数が多いため、製造コストの高騰を抑えながら高トルク化を図ることは難しく、また、大型化が避けられないと考えられる。即ち、特許文献1に開示の技術では、板状のステータベースに対し、回転軸を囲む外周部分に複数の第1ステータコアを配置し、その各々にコイルを巻回している。また、ステータベースにおける複数の第1ステータコアで囲繞された領域内側に、複数の第2ステータコアを配置し、その各々にコイルを巻回している。
よって、特許文献1で開示された技術では、ラジアルギャップ用の複数の第1ステータコア及びコイルと、アキシャルギャップ用の複数の第2ステータコア及びコイルと、をそれぞれ別々に備える構成を採用している。このため、部品点数が多くなり、大型化を避けることや、製造コストの高騰を抑えることが難しい。
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、製造コストの高騰を抑えるとともに、大型化を避けながら高トルク化を図ることができる回転電機を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る回転電機は、ステータとロータとを備える。
前記ステータは、互いに間隔をあけた状態で周方向に配置された複数のステータコアと、前記複数のステータコアの各々に巻回されてなる複数のコイルと、を有する。
ここで、前記複数のステータコアの各々は、複数の薄板材が軸方向及び径方向の双方向に直交する方向に積層されてなる積層体であって、これを周方向から側面視するとき、軸方向に沿った胴部と、当該胴部の一方から延伸し、径方向に曲折されてなる第1腕部と、を有し、前記第1腕部の端面である第1端面が径方向内側を向いている。
前記複数のコイルの各々は、前記複数のステータコアの各々における前記胴部に巻回されてなる。
前記ロータは、回転軸と、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第1端面に対して、径方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる複数の第1永久磁石と、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第1腕部の軸方向における外側面及び内側面の一方の面に対して、軸方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる第2永久磁石と、を有する。
本態様に係る回転電機では、ステータコアの第1端面に対してロータの第1永久磁石が対向し、同じステータコアにおける第1腕部の外側面又は内側面に対して第2永久磁石が対向する。即ち、本態様に係る回転電機では、各ステータコアの第1腕部に対して、径方向及び軸方向の2方向から永久磁石が対向している。
なお、このように2方向からロータの永久磁石が対向する構成は、ステータコアを、軸方向及び径方向の双方向に直交する方向に薄板材を積層してなることで実現されている。即ち、薄板材の積層方向を従来技術とは異なる方向としている。
また、本態様に係る回転電機では、複数のステータコアの各々において、第1腕部を径方向に曲折している。このため、軸方向の長さを小さなものとすることができる。
従って、本態様では、上記特許文献1に開示の技術に比べて、ステータコア及びコイルの配置数の増加を抑えることで製造コストの高騰を抑えることができるとともに、上記のように大型化を避けながら高トルク化を図ることが可能である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記ロータは、複数の第3永久磁石を更に有する。
前記複数の第3永久磁石は、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第1腕部の軸方向における外側面及び内側面の他方の面に対して、軸方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる。
本態様に係る回転電機では、各ステータコアの第1腕部に対して、径方向と、軸方向外側及び軸方向内側と、の3方向からロータの永久磁石が対向する構成としている。よって、本態様では、ステータコア及びコイルの数を増やすことなく、更に高トルク化を図ることができる。
本発明の一態様に係る回転電機は、ステータとロータとを備える。
前記ステータは、互いに間隔をあけた状態で周方向に配置された複数のステータコアと、前記複数のステータコアの各々に巻回されてなる複数のコイルと、を有する。
ここで、前記複数のステータコアの各々は、複数の薄板材が軸方向及び径方向の双方向に直交する方向に積層されてなる積層体であって、これを周方向から側面視するとき、軸方向に沿った胴部と、当該胴部の一方から延伸し、径方向に曲折されてなる第1腕部と、を有し、前記第1腕部の端面である第1端面が径方向内側を向いている。
前記複数のコイルの各々は、前記複数のステータコアの各々における前記胴部に巻回されてなる。
前記ロータは、回転軸と、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第1腕部の軸方向における外側面に対して、軸方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる複数の第2永久磁石と、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第1腕部の軸方向における内側面に対して、軸方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる複数の第3磁石と、を有する。
本態様に係る回転電機では、ステータコアにおける第1腕部の外側面に対してロータの第2永久磁石が対向し、同じステータコアにおける第1腕部の内側面に対してロータの第3永久磁石が対向する。即ち、本態様に係る回転電機では、各ステータコアの第1腕部に対して、軸方向外側及び軸方向内側の2方向からロータの永久磁石が対向している。
また、本態様においても、複数のステータコアの各々において、第1腕部を径方向に曲折している。
従って、本態様では、上記特許文献1に開示の技術に比べて、ステータコア及びコイルの数の増加を抑えることで製造コストの高騰を抑制できるとともに、上記のように大型化を避けながら高トルク化を図ることが可能である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記複数のステータコアの各々では、前記第1端面が、前記回転軸を中心とする曲面で構成されている。このように、ステータコアの第1端面を、上記のような形態での曲面で構成することにより、ロータの永久磁石とステータコアの第1端面との間隙を狭くすることができる。よって、高トルク化を図るのに優位である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記複数のステータコアの各々は、前記胴部の他方から軸方向に延伸し、径方向に曲折されてなる第2腕部、を更に有し、前記第2腕部の端面である第2端面が径方向内側を向いている。
前記ロータは、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第2端面に対して、径方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる複数の第4永久磁石と、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第2腕部の軸方向における外側面及び内側面の一方の面に対して、軸方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる第5永久磁石と、
を更に有する。
本態様に係る回転電機では、ステータコアにおける第2腕部に対しても、ロータの第4永久磁石及び第5永久磁石を対向させることとしている。即ち、本態様では、各ステータコアに対して、更に対向する永久磁石を増やすことができる。よって、本態様では、製造コストの高騰を抑えることができるとともに、大型化を避けながら更に高トルク化を図るのに優位である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記ロータは、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第2腕部の軸方向における外側面及び内側面の他方の面に対して、軸方向に間隙をあけて対向配置されてなる第6永久磁石を、更に有する。
本態様に係る回転電機では、各ステータコアの第2腕部に対しても、径方向と、軸方向外側及び軸方向内側と、の3方向からロータの永久磁石が対向する構成としている。よって、本態様では、ステータコア及びコイルの数の増加を抑えながら、更に高トルク化を図ることができる。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記複数のステータコアの各々は、前記胴部の他方から軸方向に延伸し、径方向に曲折されてなる第2腕部、を更に有し、前記第2腕部の端面である第2端面が径方向内側を向いている。
前記ロータは、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第2腕部の軸方向における外側面に対して、軸方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる複数の第5永久磁石と、前記回転軸と一体に回転し、前記複数のステータコアの前記第2腕部の軸方向における内側面に対して、軸方向に間隙をあけた状態で対向配置されてなる複数の第6永久磁石と、を更に有する。
本態様に係る回転電機では、各ステータコアの第2腕部に対して、軸方向外側及び軸方向内側の2方向からロータの永久磁石が対向している。よって、本態様では、上記特許文献1に開示の技術に比べて、ステータコア及びコイルの数の増加を抑えることで製造コストの高騰を抑制できるとともに、大型化を避けながら高トルク化を図ることが可能である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記複数のステータコアの各々では、前記第2端面が、前記回転軸を中心とする曲面で構成されている。このように、ステータコアにおける第2端面を、上記のような形態での曲面で構成することにより、ロータの永久磁石とステータコアの第2端面との間隙を狭くすることができる。よって、本態様では、高トルク化を図るのに優位である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記ステータは、前記回転軸を中心としたリング形状をなすバックヨークを、更に有する。
前記複数のステータコアの各々は、前記胴部の他方から軸方向に延伸し、前記バックヨークに接続された接続部を、更に有する。
本態様では、複数のステータコアの各々における接続部をバックヨークに接続することにより、回転電機の大型化を避けながら、磁束の流れを確保することができる。よって、大型化を避けながら高トルク化を図るのに優位である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記複数の薄板材の各々は、アモルファス軟磁性材料からなる。このように、ステータコアを構成する薄板材として、アモルファス軟磁性材料からなる薄板材を採用することにより、方向性電磁鋼板やケイ素鋼板を用いステータコアを構成する場合に比べて、鉄損(渦損)を大幅に小さくすることができる。よって、本態様では、高トルク化を図るのに優位である。
本発明の別態様に係る回転電機は、上記構成において、前記複数の薄板材の各板厚は、0.05mm以下である。このように、ステータコアを構成する薄板材の板厚を0.05mm以下と極薄にすることで、0.2mmが下限であったケイ素鋼板を用いる従来技術に比べて、渦損の低減を図ることができる。よって、本態様では、高トルク化を図るのに更に優位である。
本発明の別態様に係る回転電機では、上記構成において、前記コイルは、平角線のエッジワイズ巻きで構成されてなるコイルである。このように、ステータコアに巻回してなるコイルとして、平角線をエッジワイズ巻きして構成されたコイルを採用することにより、高いコイル占積率を実現することができ、高トルク化を図るのに優位である。
上記の各態様に係る回転電機では、製造コストの高騰を抑えることができるとともに、大型化を避けながら高トルク化を図ることができる。
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
[第1実施形態]
1.構成
本発明の第1実施形態に係るモータ1の構成について、図1及び図2を用い説明する。図1は、モータ1の外観を示す模式斜視図であり、図2は、モータ1の一部構成を示す模式斜視図である。
図1に示すように、モータ1の外観は、ステータユニット2の一部と、モータケース4,5と、から構成されている。
ステータユニット2の外周面からは、Z方向上側に向けて冷却液供給口2aが突出され、Z方向下側に向けて冷却液排出口2bが突出されている。
モータケース4,5のぞれぞれは、リング状をした周壁4b,5bと、円板状をした端壁4c,5cと、が一体形成されてなり、全体として円形皿状をしている。モータケース4,5における端壁4c,5cの中央部分には、挿通孔4a(モータケース5については、図示を省略。)が開けられている。この挿通孔4aは、後述するロータユニットにおける回転軸32を外部に挿通させるための孔である。モータケース4,5は、例えば、アルミニウム合金などの金属材料から形成されている。
図2に示すように、ロータユニット3は、2つのロータ30(図示の都合上、図2では、一方のロータだけを図示。)と、回転軸32と、を有する。ロータユニット3では、X方向(軸方向)において、第1ロータ30と第2ロータとがステータユニット2を挟むように配置されている。
また、ロータユニット3では、第1ロータ30及び第2ロータに対して回転軸32が係合されている。これにより、ロータユニット3では、第1ロータ30及び第2ロータが、回転軸32と一体として、回転軸32の軸芯周りに回転する。
図2に示すように、ステータユニット2は、周方向に配置された複数のコアコイルセット20と、外周リング21と、外径側固定プレート23,24と、固定リング25,26と、を有する。コアコイルセット20における各ステータコア200は、その一部が外径側固定プレート23,24からX方向(軸方向)外向きに延出されている。
固定リング25,26は、リング状をしており、径方向内側にロータユニット3の第1ロータ30及び第2ロータが収まっている。
2.ステータユニット2の構成
ステータユニット2の構成について、図3から図5を用い説明する。図3は、ステータユニット2の構成を示す模式斜視図であり、図4は、ステータユニット2の一部構成を示す模式展開図であり、図5は、ステータユニット2の一部構成を示す模式断面図である。
図3及び図4に示すように、ステータユニット2は、複数のコアコイルセット20と、外周リング21及び内周リング22と、一対の外径側固定プレート23,24と、固定リング25,26と、一対の内径側固定プレート27,28と、を有する。本実施形態においては、一例として、12個のコアコイルセット20を有する。
図4に示すように、12個のコアコイルセット20は、周方向に並ぶ状態で配置されている。各コアコイルセット20は、周方向からの側面視において、U字状又はコの字状をしたステータコア200と、そのX方向中央部分(胴部)に巻回されてなるコイル203とを有する。各ステータコア200は、胴部の両側からX方向に延伸し、径方向内側に向けて曲折されてなる腕部を有する。
図3に示すように、ステータコア200の腕部は、外径側固定プレート23,24から延出されている。
図4に示すように、内径側固定プレート27,28の各々は、リング状をした円環部27a,28aと、当該円環部27a,28aから径方向外側に突出した複数の歯部27b,28bと、が一体形成されてなるものである。本実施形態では、各歯部27b,28bの数は、コアコイルセット20の数と同じ12本である。内径側固定プレート27,28は、非磁性・非導電性の材料、例えば、セラミックス材料から構成されている。
また、外径側固定プレート23,24の各々は、リング状をした円環部23a,24aと、当該円環部23a,24aから径方向内側に突出した複数の歯部23b,24bと、が一体形成されてなるものである。本実施形態では、各歯部23b,24bの数も、コアコイルセット20の数と同じ12本である。また、外径側固定プレート23,24は、非磁性・非導電性の材料、例えば、セラミックス材料から構成されている。
ここで、図4の二点鎖線で囲んだ部分に示すように、外径側固定プレート23,24及び内径側固定プレート27,28の各歯部23b,24b,27b,28bの先端部分には、片胴付状に板厚が一部薄い部分(片胴付部23c,24c,27c,28c)が設けられている。外径側固定プレート23の片胴付部23cと内径側固定プレート27の片胴付部27cとは、液密状態で係合し、同様に、外径側固定プレート24の片胴付部24cと内径側固定プレート28の片胴付部28cとは、液密状態で係合する。
また、外径側固定プレート23,24の円環部23a,24aにおける内周辺、及び歯部23b,24bの側辺は、コアコイルセット20のステータコア200に液密状態で当接する。同様に、内径側固定プレート27,28の円環部27a,28aにおける外周辺、及び歯部27b,28bの側辺は、コアコイルセット20のステータコア200に液密状態で当接する。
図3に戻って、固定リング25,26は、リング状をした円環部25aと、当該円環部25aから径方向内側に突出し、ステータコア200間に介挿されたブロック部25bと、が一体形成されてなる。なお、固定リング25,26は、周方向に複数分割されてなる。本実施形態では、一例として、4つの固定リング部材250,251,252,253の組み合わせを以って構成されている。なお、図示の都合上、固定リング25についての詳細構成については示していないが、固定リング25と同様の分割構成を有する。このように、固定リング25,26を分割構成とすることにより、ステータユニット2の組み立て時において、作業性を向上させることができ製造コストの低減を図ることができる。
なお、固定リング25,26については、非磁性・非導電性の材料、例えば、セラミックス材料や樹脂材料から構成されている。
外周リング21及び内周リング22は、ともにリング状をしており、外周リング21に対して内周リング22が小径となっている。外周リング21及び内周リング22は、例えば、アルミニウム合金などの金属材料から構成されている。
冷却液供給口2a及び冷却液排出口2bは、外周リング21に設けられている。
図5に示すように、ステータユニット2においては、コアコイルセット20の各コイル203は、円環状管体に収納された構成となっている。具体的には、コアコイルセット20のコイル203は、X方向(軸方向)の両側が外径側固定プレート23,24と内径側固定プレート27,28とにより挟まれている。そして、外径側固定プレート23と外径側固定プレート24の外周縁同士が外周リング21で塞がれ、内径側固定プレート27と内径側固定プレート28の内周縁同士が内周リング22で塞がれている。これによって、コイル203と外周リング21との間に間隙2cが確保され、コイル203と内周リング22との間に間隙2dが確保される。
間隙2c,2dには、冷却液供給口2aから供給された冷却液が流通する。これにより、コアコイルセット20のコイル203やステータコア200の冷却がなされる。
3.コアコイルセット20の構成
コアコイルセット20の構成について、図6及び図7を用い説明する。図6は、コアコイルセット20の構成を示す模式斜視図であり、図7は、ステータコア200の形成過程における一工程を示す模式図である。
図6に示すように、コアコイルセット20は、ステータコア200と、支持部材201と、ボビン202と、コイル203と、を有する。
ステータコア200は、複数の薄板材がY方向に積層されてなる積層体である。換言すると、ステータコア200は、軸方向(X方向)及び径方向の双方向に直交する方向(Y方向)に、複数の薄板材が積層されてなる。本実施形態では、ステータコア200を構成する薄板材として、アモルファス軟磁性材料からなる薄板材を採用している。各薄板材の板厚は、0.05mm以下(例えば、0.025mm)である。これにより、ケイ素鋼板などを積層してなる従来のステータコアに対して、鉄損(渦損)を大幅に低減することができ、モータ1の高トルク化を図ることができる。
支持部材201は、ステータコア200のX方向中央部分である胴部200gに対し、Y方向両側面に接合されている。支持部材201は、非磁性・非導電性の材料、例えば、セラミックス材料から構成されており、ステータコア200に対して接着剤を用い接合されている。
ボビン202は、非導電性の材料、例えば、絶縁性の樹脂材料から構成されており、ステータコア200の胴部200gの周囲に形成されている。なお、ボビン202の形成は、インサート成形法を用いなされており、ステータコア200の露出面にもボビン202と同じ樹脂材料からなる皮膜が形成されている。この皮膜の形成により、ステータコア200と周辺部材との間での電気的絶縁性が確実に確保されている。
ボビン202の形成材料としては、放熱性及び機械的強度などを考慮して、ガラス繊維やフィラーを分散させた材料を使用することもできる。
コイル203は、ボビン202の周囲に巻回されてなる。本実施形態においては、平角線をエッジワイズ巻きして構成されたコイル203を採用している。ただし、円断面や長円断面のコイル線を用いたコイルを採用することも適宜可能である。
図6に示すように、ステータコア200は、コイル203が巻回された胴部203gと、その両側からX方向に延伸し、径方向内側に向けて曲折された腕部200h,200iとを有してなる。ステータコア200における腕部200h,200iの突端の端面200a,200bは、径方向内側を向いた状態になっている。
ステータコア200の端面200a,200bは、回転軸を中心とする曲率半径Rの曲面で構成されている。これは、図7に示すように、薄板材2000の積層時において、所定の曲率半径Rとなるように、Z方向に少しずつずらして薄板材2000を積層することにより、実現されている。このような方法で曲面の端面200a,200bを構成することにより、研削加工などの必要がなく、製造コストの低減を図ることが可能となる。
なお、各薄板材2000は、予めU字状又はコの字状に打ち抜き加工が施されたものである。
ただし、本実施形態では、薄板材2000を積層した後に、端面を研削加工して曲面構成の端面を形成することを排除するものではない。
図6に戻って、ステータコア200の腕部200h,200iの各曲折された先端部分では、端面200a,200bの他に、X方向の外側を向いた外側面200c,200d、及びX方向の内側を向いた内側面200e,200fに、薄板材同士の積層界面が現れている。
4.ロータユニット3の構成
ロータユニット3の構成について、図8及び図9を用い説明する。図8は、ロータユニット3の構成を示す模式斜視図であり、図9は、第1ロータ30の一部構成を示す模式断面図である。
図8に示すように、ロータユニット3は、2つのロータ30,31と、回転軸32と、を有する。第1ロータ30及び第2ロータ31は、それぞれ回転軸32を中心に周回する溝部30a,31aを有するボビン形状をしている。第1ロータ30及び第2ロータ31は、X方向に間隙をあけた状態で配され、回転軸32と一体に回転自在となっている。
図9に示すように、第1ロータ30は、ロータベース300と、バックヨーク301,303,304と、複数の永久磁石302,304,306と、を有する。バックヨーク301は、ロータベース300におけるリング状をしたリング部300aの外周面、換言すると、溝部30aの溝底部に接合されている。複数の永久磁石302は、バックヨーク301上に接合されてなり、周方向(紙面に垂直な方向)にS極磁石とN極磁石とが交互に配列され構成されている。
バックヨーク303は、ロータベース300におけるX方向の外側(左側)に配された外側鍔部300bの内側面に接合されている。複数の永久磁石304は、バックヨーク303上に接合されてなり、周方向(紙面に垂直な方向)にS極磁石とN極磁石とが交互に配列され構成されている。
バックヨーク305は、ロータベース300におけるX方向の内側(右側)に配された内側鍔部300cの内側面に接合されている。複数の永久磁石306は、バックヨーク305上に接合されてなり、周方向(紙面に垂直な方向)にS極磁石とN極磁石とが交互に配列され構成されている。
ここで、図9に示すような一の横断面を考えるとき、永久磁石302,304,306は、同じ磁極となっている。即ち、第1ロータ30の任意の横断面において、永久磁石302,304,306は、S極又はN極で揃えられている。
図9では、第1ロータ30だけを図示したが、第2ロータ31についても同様の構成を有する。ここで、図8において、回転軸32の中心軸を含む縦断面を考えるとき、該断面上における第1ロータ30の永久磁石302,304,306と第2ロータ31の永久磁石とは、磁極が反対となるように第1ロータ30と第2ロータ31とが配置されている。
5.磁束の流れ
上記のような構成を有するモータ1での磁束の流れについて、図10から図12を用い説明する。図10は、周方向から側面視でのステータユニット2の一部構成とロータユニット3の一部構成を示す模式図である。図11及び図12は、正面視におけるステータユニット2の一部構成とロータユニット3の一部構成を示す模式図である。
(1)磁束MF1
図10に示すように、磁束MF1は、ロータユニット3の第2ロータ31におけるバックヨーク311から永久磁石312を介して、対向する端面200bからステータコア200へと流れる。磁束MF1は、ステータコア200内を通り、端面200aから永久磁石302を介して、第1ロータ30のバックヨーク301へと流れる。
図11に示すように、ステータコア200(200A)の腕部200hから、永久磁石302(302A)を介してバックヨーク301に流れた磁束MF1は、バックヨーク301において、周方向の前後へと分岐する。分岐した磁束MF1の一方は、永久磁石302Bを介して、コアコイルセット20のステータコア200Bへと流れる。
一方、分岐した磁束MF1の他方は、永久磁石302Cを介して、コアコイルセット20のステータコア200Cへと流れる。
このように、磁束MF1は、ステータユニット2のステータコア200と、ロータユニット3のバックヨーク301,311とを循環するように流れる。
図10に戻って、磁束MF2は、ロータユニット3の第2ロータ31におけるバックヨーク313から永久磁石314を介して、対向する該側面200dからステータコア200へと流れる。磁束MF2は、ステータコア200を通り、外側面200cから永久磁石304を介して、第1ロータ30のバックヨーク303へと流れる。
図12に示すように、ステータコア200(200A)の腕部200hから、永久磁石304(304A)を介してバックヨーク303に流れた磁束MF2は、バックヨーク303において、周方向の前後へと分岐する。分岐した磁束MF2の一方は、永久磁石304Bを介して、コアコイルセット20のステータコア200Bへと流れる。
一方、分岐した磁束MF2の他方は、永久磁石304Cを介して、コアコイルセット20のステータコア200Cへと流れる。
このように、磁束MF2は、ステータユニット2のステータコア200と、ロータユニット3のバックヨーク303,313とを循環するように流れる。
なお、図10に示すように、磁束MF3は、ロータユニット3の第2ロータ31におけるバックヨーク315から永久磁石316を介して、対向する該側面200fからステータコア200へと流れる。磁束MF3は、ステータコア200内を通り、外側面200eから永久磁石306を介して、第1ロータ30のバックヨーク305へと流れる。そして、バックヨーク305において、磁束MF3も、周方向の前後に分岐し、上記磁束MF2と同様に、ステータコア200B,200Cへと流れる。
以上のように、本実施形態では、磁束MF1,MF2,MF3によりモータ1の回転駆動がなされる。しかも、周方向に配された12個のコアコイルセット20と、3方向に対向する永久磁石302,304,306,312,314,316と、により磁束MF1,MF2,MF3の流れが形成される。
6.ステータユニット2の固定
ステータユニット2の固定について、図13を用い補足説明する。図13は、ステータユニット2とモータケース4,5との係合関係を示す模式展開図である。
図13に示すように、モータケース4,5の各々は、内面側に凹部溝4e,5eを有する。凹部溝4e,5eは、周方向に連続し、ステータユニット2における固定リング25,26の形状に合致するよう設けられている。
モータケース4,5を、その各周端面4d,5dが、外径側固定プレート23,24の外縁部に当接するようにステータユニット2に組み付けたとき、ステータユニット2の固定リング25,26の各一部が凹部溝4e,5eに係合する。
このような凹部溝4e,5eへの固定リング25,26の係合構造を採用することにより、モータ1におけるステータユニット2のより確実な位置固定がなされる。
7.効果
本実施形態に係るモータ1では、コアコイルセット20のステータコア200の端面200a,200bが、ロータ30,31の永久磁石302,312に対して径方向に対向し、腕部200h,200iの曲折された先端部分における外側面200c,200dが、ロータ30,31の永久磁石304,314に対して軸方向に対向し、腕部200h,200iの曲折された先端部分における内側面200e,200fが、ロータ30,31の永久磁石306,316に対して、軸方向に対向する。このように、本実施形態に係るモータ1では、コアコイルセット20におけるステータコア200の腕部200h,200iの各々に対して、3方向でロータ30,31の永久磁石302,304,306,312,314,316が対向する。よって、製造コストの高騰を抑制できるとともに、大型化を抑えながら高トルク化を図ることができる。
また、本実施形態に係るモータ1では、ステータコア200の各々を、アモルファス軟磁性材料からなる薄板材2000の積層体としている。このような構成のステータコア200では、方向性電磁鋼板やケイ素鋼板を用いたステータコアに対して、鉄損(渦損)を大幅に小さくすることができる。よって、モータ1では、従来技術に比べて、大型化を避けながら高トルク化を図ることができる。
また、本実施形態に係るモータ1では、ステータコア200の各々を構成する薄板材2000の板厚を、0.05mm以下(例えば、0.025mm)と極薄にしている。これにより、0.2mmが板厚の下限であったケイ素鋼板を用いる従来技術に比べて、渦損の低減を図ることができ、大型化を避けながら高トルク化を図ることができる。
また、本実施形態に係るモータ1では、1つのステータユニット2に対して、2つのロータ30,31が組み付けられている。これにより、磁気飽和の発生を抑制し、ステータコア200の端面200a,200b及び内外側面200c,200d,200e,200fと、ロータ30,31の永久磁石302,304,306,312,314,316との対向面積を増やすことができる。よって、モータ1において、大型化を避けながら、更なる高トルク化を図ることができる。
また、本実施形態に係るモータ1では、コアコイルセット20の各々におけるコイル203として、平角線をエッジワイズ巻きしてなるコイルを採用した。このように平角線をエッジワイズ巻きしてなるコイル203を採用することにより、高いコイル占積率を実現することができ、高トルク化を図るのに好適である。
また、本実施形態では、各ステータコア200の端面200a,200bを曲面で構成することとしたので、当該端面200a,200bとロータ30,31の永久磁石302,312との間の間隙を小さく抑えることができ、モータ1の大型化を避けながら高トルク化を図ることができる。
また、本実施形態に係るモータ1では、ステータコア200の露出表面が、ボビン202を構成する材料と同じ樹脂材料からなる皮膜により被覆されていることとしたので、ステータコア200における薄板材2000同士の接着力を補強することができるとともに、周辺部材との電気的な絶縁性を確保することができる。
また、図13を用い説明したように、モータケース4,5の内面側に凹部溝4e,5eを設け、当該凹部溝4e,5eにステータユニット2の固定リング25,26を係合させることとしたので、モータ1におけるステータユニット2の位置固定が確実になされる。よって、高トルク化を図るのに優位である。
[第2実施形態]
1.構成
本発明の第2実施形態に係るモータの構成の内、ステータユニット6及びロータユニット7の構成について、図14及び図15を用い説明する。図14は、本実施形態に係るステータユニット6及びロータユニット7の各一部構成を示す模式斜視図であり、図15は、ステータユニット6及びロータユニット7の各一部構成を示す模式断面図である。
図14に示すように、ステータユニット6は、複数のコアコイルセット60と、バックヨーク69と、を備える。コアコイルセット60は、周方向に並んだ状態で配されている。本実施形態では、一例として、12個のコアコイルセット60を備える。
各コアコイルセット60は、ステータコア600と、支持部材601と、ボビン602と、コイル603と、から構成されている。図15に示すように、ステータコア600は、腕部600hが径方向に曲折され、周方向からの側面視において、全体としてL字状又はJ字状をしている、各ステータコア600では、端面600aが径方向内側を向いている。
コイル603は、ステータコア600における胴部600gに巻回されてなる。
また、ステータコア600において、胴部600gから腕部600hとは反対側に延伸した接続部600jは、その先端でバックヨーク69に接続されている。図14に示すように、バックヨーク69は、回転軸72を中心とした円環状をしており、12個のステータコア600全ての接続部600jが接続されている。
ここで、バックヨーク69は、アモルファス軟磁性材料からなる薄板材の積層体により構成されている。薄板材の板厚は、0.05mm以下(例えば、0.025mm)である。
なお、図15などでは、詳細な図示を省略しているが、ステータコア600の端面600aについても、上記第1実施形態と同様に、曲面となっている。これにより、ステータコア600の端面600aと、ロータユニット7の永久磁石702との間に間隙が小さく抑えられている。
ロータユニット7は、X方向に延伸する回転軸72と、回転軸72と一体に回転するロータ70と、を有する。図15に示すように、ロータ70は、転軸72を中心に周回する溝部70aを有するボビン形状をしている。
図15に示すように、ロータ70は、ロータベース700と、バックヨーク701,703,704と、複数の永久磁石702,704,706と、を有する。バックヨーク701は、ロータベース700におけるリング状をしたリング部700aの外周面、換言すると、溝部70aの溝底部に接合されている。複数の永久磁石702は、バックヨーク701上に接合されてなり、周方向(紙面に垂直な方向)にS極磁石とN極磁石とが交互に配列され構成されている。
バックヨーク703は、ロータベース700におけるX方向の外側(左側)に配された外側鍔部700bの内側面に接合されている。複数の永久磁石704は、バックヨーク703上に接合されてなり、周方向(紙面に垂直な方向)にS極磁石とN極磁石とが交互に配列され構成されている。
バックヨーク705は、ロータベース700におけるX方向の内側(右側)に配された内側鍔部700cの内側面に接合されている。複数の永久磁石706は、バックヨーク705上に接合されてなり、周方向(紙面に垂直な方向)にS極磁石とN極磁石とが交互に配列され構成されている。
ここで、図15に示すような一の横断面を考えるとき、永久磁石702,704,706は、上記第1実施形態に係る第1ロータ30及び第2ロータ31と同様に、同じ磁極となっている。即ち、ロータ70の任意の横断面において、永久磁石702,704,706は、S極又はN極の一方の磁極で揃えられている。
図15に示すように、本実施形態に係るモータでは、ステータコア600における腕部600hの端面600aに対して、径方向に永久磁石702が対向している。これにより、コアコイルセット60のステータコア600と永久磁石702とが径方向(ラジアル方向)に間隙をあけた状態で、磁界による吸引力と反発力とが作用する。
また、本実施形態に係るモータでは、ステータコア600における腕部600hの先端部分の外側面600cに対して、軸方向に永久磁石704が対向し、内側面600eに対して、軸方向に永久磁石706が対向している。これより、コアコイルセット60のステータコア600と永久磁石704,706とが軸方向(アキシャル方向)に間隙をあけた状態で、磁界による吸引力と反発力とが作用する。
なお、本実施形態に係るステータユニット6及びロータユニット7を含むモータについて、特に説明していない構成については、上記第1実施形態と同様の構成を有する。
本実施形態に係るモータの駆動時においては、上記第1実施形態で説明したのと同様の磁束の流れが形成される。本実施形態における相違点は、磁束の経路にバックヨーク69が含まれる点である。
2.効果
本実施形態に係るモータでは、ステータコア600の形状を周方向からの側面視でJ字状又はL字状とし、各ステータコア600の接続部600jをバックヨーク69に接続する点において、上記第1実施形態と差異を有する。このような差異により、本実施形態に係るモータでは、更なる小型化を図りながら、上記同様に、鉄損(渦損)の低減を図ることで高トルク化を図ることができる。
また、本実施形態では、ステータコア600における接続部600jをバックヨーク69に接続することとしており、これにより、モータの大型化を避けながら、良好な磁束の流れを形成することができる。
また、本実施形態では、ステータコア600の接続部600jをバックヨーク69に接続しているので、上記第1実施形態と比べて、軸方向(X方向)の長さを短くすることができ、小型化を図ることができる。
なお、説明を省略した他の構成については、上記第1実施形態と差異がないので、上記第1実施形態に係るモータ1の効果をそのまま得ることができる。
[変形例]
上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、回転電機の一例として、モータを採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、本発明は、発電機や発電機兼モータに対して適用することも可能である。
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、ステータコア200,600の横断面形状として内外周面が湾曲した形状を採用したが、必ずしも内外周面を曲面とする必要はない。これにより、ステータコアの形成に係る煩雑さを排除し、製造コストの低減を図ることが可能となる。
また、ステータコア200,600とボビン202,602との間に介挿される支持部材201,601の材料としてセラミックス材料を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、樹脂材料を採用することもできる。
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、ステータコア200,600をアモルファス軟磁性材料からなる薄板材2000の積層体としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ケイ素鋼板を積層することとしてもよい。
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、ステータコア200,600をアモルファス軟磁性材料からなる薄板材を複数積層して形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、アモルファス状態ではないナノ結晶化させた軟磁性材料からなる薄板材を複数積層してステータコアを構成することとしてもよい。
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、コアコイルセット20,60を、各12個配することとし、ロータ30,31,70のそれぞれの溝部30a,31a,70aを臨む各内面に永久磁石を各8極配する構成としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、6個のコアコイルセットに対して、溝部を臨む各内面に8極の永久磁石を配する形態や、18個のコアコイルセットに対して、溝部を臨む各内面に8極の永久磁石を配する形態や、21個のコアコイルセットに対して、溝部を臨む各内面に8極の永久磁石を配する形態、さらには12個のコアコイルセットに対して、溝部を臨む各内面に16極の永久磁石を配する形態など、種々の組み合わせに係る態様を採用することが可能である。
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、ステータコア200,600の端面200a,200b,700aに対して、ロータユニット3,7の永久磁石302,312,702を対向させる構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、図10及び図15に示す形態に対して、バックヨーク301,311,701及び永久磁石302,312,702を取り除いた構成を採用することもできる。即ち、本発明は、ラジアルギャップ型とアキシャルギャップ型との複合タイプの回転電機に限定されない。
また、ラジアルギャップ型と秋者らギャップ型との複合タイプの回転電機とする場合においても、図10及び図15に示す形態に対して、軸方向(X方向)の一方(外側面又は内側面)から永久磁石が対向する形態とすることもできる。このように、ステータコア200,600の腕部200h,200i、600hの各先端部及び端面200a,200b,700aに対して、2方向から永久磁石が対向する形態を採用することも可能である。このような形態を採用する場合にも、製造コストの高騰を抑制できるとともに、大型化を避けながら高トルク化を図ることができる。