JP2018027105A - ステントの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リコイル率を低減するステントの製造方法を提供する。
【解決手段】基材20にストラット41を形成して構成されるステント基体30を備え、拡張部材(バルーン91)に接した状態で生体内の標的部位まで移行され拡張部材の拡張のみによって拡径変形されるステント10を製造する方法であって、基材を加工して、外形形状が全体として筒形状を呈するステント基体を形成する形成工程S110と、形成工程の後であって拡張部材に保持される前のステント基体を拡径する拡径工程S140と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】基材20にストラット41を形成して構成されるステント基体30を備え、拡張部材(バルーン91)に接した状態で生体内の標的部位まで移行され拡張部材の拡張のみによって拡径変形されるステント10を製造する方法であって、基材を加工して、外形形状が全体として筒形状を呈するステント基体を形成する形成工程S110と、形成工程の後であって拡張部材に保持される前のステント基体を拡径する拡径工程S140と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、ステントの製造方法に関する。
ステントは、血管等の管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、内腔を確保するために使用される医療用具である。従来から使用されているステントの一例として、円筒形状の金属管を加工して製造したものや、高分子材料を主成分として成形等により製造されたものが知られている。また、ステントは、機能および留置方法によって、バルーンエクスパンダブルステント(下記特許文献1を参照)と、セルフエクスパンダブルステントとに区別される。
バルーンエクスパンダブルステントは、ステント自体に拡張機能が備えられていない。このため、バルーンエクスパンダブルステントを使用する際は、収縮した状態のバルーンの外表面にステントをクリンプ(縮径)してマウントし、バルーンとともに目的部位にステントをデリバリーした後、バルーンをステントの内側から拡張させることによりステントを拡径させる作業が行われる。拡径したステントは、管腔の内面に密着して内腔を押し広げる。その後、ステントは、内腔を一定の大きさに広げた状態で所定の期間に亘って留置される。
上記のように、バルーンエクスパンダブルステントは、製造後に一旦縮径した状態でバルーン上に保持され、生体内に導入された後にバルーンによって拡径される。このときバルーンを縮径して抜去すると、拡径変形されたステントの弾性変形分が元に戻って再度縮径する現象であるリコイルが発生することがある。このリコイルが顕著なものとなる場合(リコイル率が高い場合)、ステントから管腔内面に対して作用するラジアルフォースの低下が招かれるため、ステントを所望の位置において安定的に留置することが困難になってしまう。
従来のバルーンエクスパンダブルステントの製造においては、ストラットを加工する際の材料の歩留りの向上を図るために、ステントを構成する基材には比較的細径な部材を使用している。このため、拡径後のステントの外径、すなわち管腔内で留置される際のステントの外径は、適用対象となる管腔にも依るが、一般的には基材の外径よりも大きな寸法に設定される。拡径後のステントの外径が基材の外径よりも大きな寸法に設定されると、拡径後のステントに対して基材の外径に復元させるような収縮力(縮径力)が作用する。このため、従来のバルーンエクスパンダブルステントは、比較的大きなリコイル率での縮径変形が発生してしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、リコイル率を低減したステントの製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成する本発明に係るステントの製造方法は、基材にストラットを形成して構成されるステント基体を備え、拡張部材に接した状態で生体内の標的部位まで移行され前記拡張部材の拡張のみによって拡径変形されるステントを製造する方法であって、前記基材を加工して、外形形状が全体として筒形状を呈する前記ステント基体を形成する形成工程と、前記形成工程の後であって前記拡張部材に保持される前の前記ステント基体を拡径する拡径工程と、を有する。
本発明に係るステントの製造方法によれば、ストラットを備え外形形状が全体として筒形状を呈するステント基体を形成する形成工程と、形成工程の後であって拡張部材(バルーン)に保持される前のステント基体を拡径する拡径工程と、を有する構成によって、拡張部材に保持される前にステント基体を拡径しなかった場合と比較して、塑性変形を相対的に低い応力で発生させることができる。したがって、ステントは、除荷時に弾性変形分の戻りを相対的に小さくすることができ、リコイル率を低減することができる。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、実施形態に係るステントの製造方法の全体工程を示すフローチャートであり、図2〜図9は、実施形態に係る製造方法の各工程の説明に供する図であり、図10および図11は、実施形態に係るステントを示す図である。なお、明細書の説明においては、ステントの長手方向(図10(A)中の左右方向)を軸方向と称する。
図10に示すように、本実施形態に係るステント10は、一体的に連なるコイル形状のストラット(線状構成要素)41が形成されたステント基体30を有しており、全体として軸方向に所定の長さを有する略円筒形の外形形状で形成されている(図11を参照)。ステント10は、生体内の管腔(例えば、血管、胆管、気管、食道、その他消化管、尿道等)内に留置され、管腔の内腔を押し広げることにより、狭窄部および閉塞の治療を図るために使用される。また、ステント10は、バルーンカテーテルに備えられるバルーン(「拡張部材」に相当する)91により拡径変形されて留置される、いわゆるバルーンエクスパンダブルステント(バルーン拡張型ステント)である。
次に、ステント10の製造方法について、図1〜図9を参照しながら説明する。
図1を参照しながら、ステント10の製造方法について概説する。図1は、ステント10の製造方法を示すフローチャートである。
形成工程S110において、基材20を加工してステント基体30を形成する。次に、化学研磨工程S120において、ステント基体30に化学研磨を施す。次に、電解研磨工程S130において、ステント基体30に電解研磨を施す。次に、拡径工程S140において、ステント基体30の直径を拡大(拡径)する。次に、加熱工程S150において、ステント基体30を加熱する。次に、接続工程S160において、ステント基体30の隣り合うストラット41同士を接続する。次に、薬剤塗布工程S170において、ステント基体30に薬剤を塗布してステント10を形成する。次に、クリンプ工程S180において、ステント10をバルーン91にクリンプする。
図2を参照しながら、形成工程S110について説明する。図2は、基材20を加工してステント基体30を形成する形成工程S110を示す模式図である。
形成工程S110では、薄肉の円筒状の基材20にレーザ加工を施し、ストラット41を備え外形形状が全体として筒形状を呈するステント基体30を形成する。なお、形成工程S110は、機械研磨、放電加工、化学エッチングなどにより行ってもよい。
形成工程S110において加工する基材20の外径は、後述する拡径工程S140において拡径器具142によって推奨拡張圧よりも2atm低い圧力以上で拡径したときの軸直交断面におけるステント基体30の外径未満のものを使用する。基材20の構成材料としては、バルーンエクスパンダブルステントを構成し得る材料として公知のものを適宜選択することができ、例えば、セルフエクスパンダブルステントに使用される超弾性合金以外の金属を使用することができる。ここで言う「超弾性合金以外の金属」は、JIS Z 2241に準じて、35℃の温度環境で全伸びが3%に達するまで引張応力を負荷して除荷する引張試験を行った際に、永久伸びが2%以上である金属と定義することができる。このような金属の一例として、非生分解性の金属材料であるステンレス、CoCrWNi系合金、またはPtFeCrNi系合金を用いることができる。
ここで、図2(A)は基材20にレーザ加工を施す前の状態を示し、図2(B)は基材20にレーザ加工を施しステント基体30を形成している途中の状態を示している。支持部材111は、その回転部111aに対して、基材20を水平方向に沿って挿入して回転自在に支持している。レーザ発振器112は、基材20の上方であって、長尺な基材20の軸方向に沿って移動自在に配設している。
基材20は、支持部材111の回転部111aによって周方向に沿って回転されるとともに、軸方向に移動するレーザ発振器112から導出されたレーザ光L1によって外周面から内周面に向かって貫通され、複数のストラット41が形成される。基材20の外周面は、レーザ光L1が規則的に照射位置を変化させながら線状に照射される。したがって、複数のストラット41は、L1軸方向に沿って螺旋状に連なり、コイル状に構成される。レーザ発振器112の光源は、例えば、YAGレーザやエキシマレーザを用いるが、基材20の材料に応じて任意に選択する。なお、形成工程S110において形成するストラット41の詳細については後述する(図10(A)、(B)を参照)。
図3を参照しながら、化学研磨工程S120について説明する。図3は、形成工程S110に引き続き、ステント基体30に化学研磨を施す化学研磨工程S120を示す模式図である。
化学研磨工程S120では、形成工程S110によって形成されたステント基体30のストラット41を溶解して研磨する。容器121に満たされた化学研磨液122にステント基体30を浸漬して、化学研磨液の化学反応によってストラット41の表面を溶解する。ストラット41は、化学研磨液122によって、表面のバリが剥離し、かつ、断面が矩形状から円形状に変化するとともに、表面の凹凸が減少する。したがって、ストラット41は、後工程の拡径工程S140において径方向外方に拡張されたときに、亀裂が生じたり、破断したりすることを防止できる。
また、ストラット41は、化学研磨液122によって、形成工程S110で用いたレーザ発振器112によって表面に付着したスパッタ等の不純物が除去される。ストラット41は、化学研磨液122によって浸漬されることによって、研磨の度合いにムラが生じることなく、万遍なく研磨することができる。化学研磨液122は、基材20の材料に応じて任意に選択する。
図4を参照しながら、電解研磨工程S130について説明する。図4は、化学研磨工程S120に引き続き、ステント基体30に電解研磨を施す電解研磨工程S130を示す模式図である。
電解研磨工程S130では、化学研磨工程S120によって既に研磨されたステント基体30のストラット41を、さらに溶解して研磨する。容器131に満たされた電解研磨液132に、電極棒133の外周面に挿入したステント基体30を浸漬する。電極棒133は、アノード側の電極に相当する。容器131は、金属製であって、それ自体がカソード側の電極として機能する。電極棒133は、電源装置134に接続されたアノード側配線135が取り付けられている。容器131の外周縁には、電源装置134に接続されたカソード側配線136が接続されている。ストラット41は、電源装置134によって電極棒133と容器131の間が通電されると、表面が溶解して微小な凹凸が無くなることから、異物を付着させ難くすることができる。
さらに、ストラット41は、通電によって、表面に強固な不動態皮膜が形成されることから、耐腐食性が向上する。したがって、不動態皮膜が形成されたストラット41は、後工程の拡径工程S140において径方向外方に拡張されたときに、亀裂が生じたり、破断したりすることを防止できる。ストラット41は、電解研磨液132によって浸漬されることによって、研磨の度合いにムラが生じることなく、万遍なく研磨することができる。電解研磨液132は、基材20の材料に応じて任意に選択する。
図5を参照しながら、拡径工程S140について説明する。図5は、電解研磨工程S130に引き続き、ステント基体30の直径を拡大する拡径工程S140を示す模式図である。
拡径工程S140では、少なくとも形成工程S110によってステント基体30が形成された後であって、かつ、クリンプ工程S180によってステント10がバルーン91に保持される前に、ステント基体30を拡径する。拡径工程S140は、ステント基体30を拡径するときの亀裂や破断を避けるために、少なくとも化学研磨工程S120によってストラット41表面の凹凸が十分に低減された後に行うことが望ましい。
圧縮空気を吐出するコンプレッサ141の吐出部141aに、ステント基体30を挿通させた拡径器具142を取り付ける。拡径器具142は、拡張および収縮変形可能なバルーンにより構成している。拡径器具142は、軸方向に沿った全長がステント基体30の全長よりも長く、外径がステント基体30の内径よりも若干小さい。コンプレッサ141から拡径器具142に圧縮空気を導入して、拡径器具142を径方向外方に向かって拡張すると、ステント基体30が径方向外方に向かって拡径される。
ステント基体30を拡径する際の圧力は、例えば、9atmであって、生体内に導入された状態でバルーン91によって拡径されるステント10の推奨拡張圧(Nominal Pressure)と同程度か若干低く設定している。ステント基体30は、例えば、バルーン91を推奨拡張圧で拡径したときの外径の80%〜120%の範囲内で拡径させる。ステント基体30が十分に拡径された後、拡径器具142から空気を吐出させて縮小し、ステント基体30を拡径器具142から取り外す。ここでは、ステント基体30を拡径する際の圧力を9atmとした場合で説明をしたが、これに限らず、最終的にマウントされるバルーンの推奨拡張圧時の径まで拡張すれば特に限定されない。また、この時の拡張はバルーンで拡張しなくても良く、推奨拡張圧でなくても良い。
ステント基体30をステント10の製造工程において一度拡径しておくと、ステント10を生体内において拡径したときのリコイル率を軽減させることができる。すなわち、拡径工程S140においてステント基体30を一旦拡径した後、後述するクリンプ工程S180においてステント基体30を縮径することによって、ステント基体30を縮径しなかった場合と比較して、塑性変形が相対的に低い応力で発生する。したがって、ステント10は、除荷時に弾性変形分の戻りを相対的に小さくすることができ、リコイル率を低減することができる。
図6を参照しながら、加熱工程S150について説明する。図6は、拡径工程S140に引き続き、ステント基体30を加熱する加熱工程S150を示す模式図である。
加熱工程S150では、拡径工程S140によって拡径されたステント基体30を加熱する。ここで、加熱工程S150は、拡径工程S140によって拡径された径が維持された状態、または、拡径工程S140後のリコイルによって若干縮径するものの拡径工程S140によって拡径される前の径よりも大きい径の状態において、ステント基体30を加熱する。
保持部材151は、その保持軸151aにステント基体30を水平方向に沿って挿入して保持している。保持軸151aは、軸方向に沿った全長がステント基体30の全長よりも長く、外径がステント基体30の内径よりも若干小さい。ヒータ152は、保持軸151aに隣り合うようにして配設され、ステント基体30を加熱する。遮熱ボックス153は、開閉自在であって、保持部材151およびヒータ152を収納している。遮熱ボックス153を開け、内部から保持部材151を取り出してステント基体30を取り付けて、遮熱ボックス153に戻した後、遮熱ボックス153を閉める。ステント基体30の加熱が完了した後、ステント基体30を保持している保持部材151を取り出して、ステント基体30を回収する。
ここで、ステント基体30は、例えば、その材料の融点の1/3以上の温度によって加熱する。ステント基体30は、その材料の融点の1/2以上の温度によって加熱すると望ましい。加熱時間は、例えば、1分から10分程度とする。加熱工程S150において、ステント基体30を加熱することによって残留歪みが除去され、加熱時の径の状態でのステント基体30内部の空孔や転位等の欠陥のエネルギーが安定化することから、生体内において拡径したときのリコイル率を大幅に軽減させることができる。加熱工程S150では、加熱したステント基体30を例えば急冷している。
図7を参照しながら、接続工程S160について説明する。図7は、加熱工程S150に引き続き、ステント基体30の隣り合うストラット41同士を接続する接続工程S160を示す模式図である。
接続工程S160では、ステント基体30の軸方向において隣接する複数のストラット41を相互に接続する接続部60を形成する。接続部60は、ステント10を生体内に留置した状態において、ストラット41同士を接続する接続力を所定期間内の経過後に低減させるものである。ここで、接続工程S160において、図7(A)はステント基体30に予めレーザ加工を施す状態を示し、図7(B)はステント基体30に接続部60を形成する状態を示している。
接続工程S160において、図7(A)に示すように、支持部材161は、その回転軸161aにステント基体30を水平方向に沿って挿入して回転自在に支持している。レーザ発振器162は、ステント基体30の上方であって、長尺なステント基体30の軸方向に沿って移動自在に配設している。レーザ発振器162は、接続部60を形成する前に、隣接するストラット41同士を連結させる鉤状の接続構造部61(図10(B)を参照)を形成する。その後、レーザ照射によって発生したスパッタを洗浄によって除去する。
さらに、接続工程S160において、図7(B)に示すように、塗布装置163は、ステント基体30の上方であって、長尺なステント基体30の軸方向に沿って移動自在に配設している。ステント基体30は、支持部材161の回転軸161aによって周方向に沿って回転されるとともに、軸方向に移動する塗布装置163から吐出された高分子材料からなる接続部材71(図10(B)を参照)を複数のストラット41の接続部60に塗布して、接続部60に接続部材71を介在させる。塗布装置163は、コイル状に連なった複数のストラット41に対して、接続部材71を連続的に塗布する。なお、接続部60の詳細については後述する(図10(B)を参照)。
接続部材71は、生分解性高分子材料あるいは生分解性金属材料等の生分解性材料から形成される。生分解性高分子材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトン共重合体、グリコール酸−カプロラクトン共重合体、ポリ−γ―グルタミン酸等の生分解性合成高分子材料、あるいはセルロース、コラーゲン等の生分解性天然高分子材料を使用することが好ましい。また、生分解性金属材料としては、例えば、マグネシウム、亜鉛等を使用することが好ましい。
図8を参照しながら、薬剤塗布工程S170について説明する。図8は、接続工程S160に引き続き、ステント基体30に薬剤を塗布してステント10を形成する薬剤塗布工程S170を示す模式図である。
薬剤塗布工程S170では、ステント基体30のストラット41の外周面に対して、例えば、再狭窄の主な原因となる血管平滑筋細胞の遊走や増殖による内膜肥厚を防止する薬剤を塗布する。ステント基体30に塗布された薬剤は、一旦乾燥して固着した後、血管内においてステント基体30から溶出し続けて、その血管の再狭窄を防止する。なお、薬剤塗布工程S170では、ステント基体30に対して抗血栓薬剤を塗布してもよい。
支持部材171は、その回転軸171aにステント基体30を水平方向に沿って挿入して回転自在に支持している。薬剤塗布装置172は、ステント基体30の上方であって、長尺なステント基体30の軸方向に沿って移動自在に配設している。ステント基体30は、支持部材171の回転軸171aによって周方向に沿って回転されるとともに、軸方向に移動する薬剤塗布装置172から吐出された薬剤が複数のストラット41に塗布される。薬剤塗布装置172は、コイル状に連なった複数のストラット41に対して、薬剤を連続的に塗布する。
薬剤は、基材20の材料に応じて任意に選択することができる。一例として、薬剤には、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、インスリン抵抗性改善剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GP IIb/IIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、一酸化窒素産生促進物質を用いることができる。
図9を参照しながら、クリンプ工程S180について説明する。図9は、薬剤塗布工程S170に引き続き、ステント10をバルーンカテーテルのバルーン91にクリンプするクリンプ工程S180を示す模式図である。
クリンプ工程S180では、シャフト部材92の先端側に設けられたバルーン91の外周面に対して、ステント10を縮径しつつ保持させる。クリンプ装置181は、円弧状に複数設けられたバー181aを備えている。その複数のバー181aの先端側を径方向外方に向かって開き、その開口にステント10を挿入したバルーン91を挿入する。その後、複数設けられたバー181aの先端側を径方向内方に向かって絞るように閉じつつ、ステント10を径方向内方に圧縮して縮径する。ステント10が縮径された後、複数設けられたバー181aの先端側を径方向外方に向かって開き、ステント10がクリンプされたバルーン91を取り出す。なお、ステント10を生体内にデリバリーするためのバルーンカテーテルとしては、例えば、ラピッドエクスチェンジ型やオーバーザワイヤ型の公知のバルーンカテーテルを使用することができる。
次に、前述した製造方法により製造されたステント10を説明する。
図10および図11に示すように、ステント10は、一体的に連なるコイル形状のストラット(線状構成要素)41が形成されたステント基体30を有しており、全体として軸方向に所定の長さを有する略円筒形の外形形状で形成されている。
図10(A)に示すように、ストラット41は、ステント基体30の軸方向(長手方向)に波状に折り返えされつつ、ステント基体30の軸方向周り(周方向)に螺旋状に延在する複数の螺旋状部43と、ステント基体30の軸方向の両端部に配置された無端状の環状部51、52と、を有している。
螺旋状部43および環状部51、52は、ステント基体30の一部を構成するようにステント基体30に一体的に形成されている。隣接する各螺旋状部43同士は、接続部60を介して互いに接続されている。各環状部51、52は、リンク部53を介して隣接する螺旋状部43に接続されている。リンク部53は、螺旋状部43および環状部51、52とともにステント基体30に一体的に形成されている。
図10(B)に示すように、ストラット41が備える螺旋状部43には、ステント基体30の軸方向に対して所定の角度で傾斜して延びる一対の直線状部分45a、45bと、一対の直線状部分45a、45bの間に設けられる湾曲部分(折り返し部)48が形成されている。直線状部分45a、45bと湾曲部分48が所定の長さに亘って繰り返えすように形成されることで一つの螺旋状部43が構成されており、螺旋状部43がステント基体30の軸方向に直列的に並んで複数設けられることにより、ステント10全体が一つの螺旋体を構成している。なお、螺旋状部43の数や湾曲部分48の数等は特に限定されない。
図10(B)に示すように、接続部60は、ストラット41の螺旋状部43に一体的に形成された接続構造部61と、生分解性材料により構成された接続部材71と、を有している。
接続構造部61は、軸方向に互いに対向するように隣接して配置された一対の螺旋状部43a、43bに所定の形状を付加して形成している。図示例においては、隣接する一方の螺旋状部(以下、「第1螺旋状部」とする)43aに形成した第1係合部63と、他方の螺旋状部(以下、「第2螺旋状部」とする)43bに形成した第2係合部66とにより接続構造部61が構成されている。第1係合部63と第2係合部66とは、互いに係合(引っ掛かる)することにより、螺旋状部43a、43b同士を機械的に接続する機能を有している。
第1係合部63は、湾曲部分48から第2螺旋状部43b側へ突出して形成した第1突出部63aと、湾曲部分48を凹状に窪ませて形成した第1収容部63bと、を有している。また、第2係合部66は、湾曲部分48から第1螺旋状部43a側へ突出して形成した第2突出部66aと、湾曲部分48を凹状に窪ませて形成した第2収容部66bと、を有している。
第1係合部63が備える第1突出部63aは、先端部の形状が湾曲して形成されており、第2係合部66が備える第2収容部66bは、第1突出部63aを収容可能に形成されている。第2係合部66が備える第2突出部66aは、先端部の形状が湾曲して形成されており、第1係合部63が備える第1収容部63bは、第2突出部66aを収容可能に形成されている。第2収容部66b内に第1突出部63aを収容させて、第1収容部63b内に第2突出部66aを収容させると、第1係合部63および第2係合部66を介して、隣接する第1螺旋状部43aおよび第2螺旋状部43bが接続される。
各突出部63a、66aは、各収容部63b、66bとの間に隙間gを形成するように配置することが可能であるし、各収容部63b、66bと部分的に接するように配置することも可能である。また、各係合部63、66は、図示するようにステント10の周方向や軸方向に沿った領域において一部または全部が互いに重なるように配置することができる。このように配置することにより、各係合部63、66同士の引っ掛かりを強固にすることができ、第1係合部63と第2係合部66の接続状態を安定的に維持することが可能になる。また、図示するように、各突出部63a、66aを、軸方向に対して傾斜した方向に互いに向い合わせるように配置することができる。このように配置すると、第1螺旋状部43aおよび第2螺旋状部43bに対して離間させる方向の引っ張り力が例えば軸方向に沿って付与された際に、各突出部63a、66aの間の距離が狭まり、突出部63a、66a同士が当接することになる。これにより、第1係合部63と第2係合部66との間の引っ掛かりが強固になるため、螺旋状部43a、43bの接続状態をより確実に維持することが可能になる。
接続部材71は、接続構造部61の表面を覆うとともに、各突出部63a、66aと各収容部63b、66bとの間に充填されるように設けられる。なお、各係合部63、66の表面上に凹部を形成したり、表裏両面に貫通する貫通孔を形成したりして、これらの凹部や貫通孔内に接続部材71を充填するように構成することも可能である。このように構成することで接続構造部61に対する接続部材71の固着性(付着力)を高めることが可能になる。
本実施形態に係るステント10は、螺旋状部43が備えられることにより、柔軟性が付与される。このため、管腔の変形に対する追従性が向上する。また、螺旋状部43同士を接続する部分に比較的柔軟な物性を有する生分解性材料からなる接続部材71を設けているため、ステント基体30に適度な剛性を付与することができ、管腔の変形に対する高い追従性を確保しつつも、ステント10を管腔内に留置する際の拡張保持力を高めることができる。さらに、留置された接続部材71が所定の期間の経過後に分解して、接続部60の接続力が弱まると、ステント10の柔軟性がより一層高まることで、管腔の変形に対する追従性もより一層高まる。このため、留置期間の初期段階においては所望の拡張保持力を発揮し、留置後に所定の期間が経過した後には、高い柔軟性を発揮するものとなるため、侵襲性および治療効果の面において非常に優れたステント10となる。また、ステント基体30の両端部に設けられた環状部51、52は、接続部材71の分解に関わらず所定の拡張保持力を維持する。したがって、接続部材71の分解後においても、ステント基体30の両端部側から管腔に対して十分な拡張保持力を作用させることができるため、留置後のステント10に位置ずれが発生するのを好適に防止することができる。
接続部60は、一つの螺旋状部(周方向における一単位の螺旋状部)43ごとに1つ以上設けられることが好ましいが、設置数は特に限定されない。また、接続部60の構造や接続部60が備える接続構造部61および接続部材71の形態も上述した構成に限定されることはなく、適宜変更することが可能である。例えば、接続構造部61が備える各係合部63、66の形状は、機械的な接続が可能な限りにおいて変更することが可能であるし、接続部材71を介在させることなく接続力が変化するように接続部60を構成することも可能である。このような形態の一例として、接続構造部61の一部に他の部位よりも容易に破断等し易い脆弱部を形成しておき、留置した状態で所定期間経過した後に、脆弱部を破断させて、接続構造部61が揺動(可動)し得るような構造を採用することができる。
ここで、実施形態に係るステント10のリコイル率を計測した実施例について、説明する。
先ず、対比例として特別な処理を施さない従来のステントは、バルーン91を用いて拡径した後、バルーン91を抜去すると、直径が6.4%も縮んだ。一方、ステント10は、拡径工程S140において、ステント基体30の状態で一度拡径する処理を施しておくと、バルーン91を用いて拡径した後、バルーン91を抜去しても、直径が6.2%の縮小に留まり、リコイルを低減することができた。さらに、ステント10は、拡径工程S140に加えて、加熱工程S150において、拡径されている状態のステント基体30を加熱する処理を施しておくと、バルーン91を用いて拡径した後、バルーン91を抜去しても、直径が4.5%の縮小に留まり、リコイルを大幅に低減することができた。
以上、本実施形態に係るステント10の製造方法によれば、ストラット41を備え外形形状が全体として筒形状を呈するステント基体30を形成する形成工程S110と、形成工程S110の後であって拡張部材(バルーン91)に保持される前のステント基体30を拡径する拡径工程S140と、を有する構成によって、拡径変形させた際の塑性変形を相対的に低い応力で発生させることができる。したがって、ステント10は、除荷時に弾性変形分の戻りを相対的に小さくすることができ、リコイル率を低減することができる。
さらに、拡径工程S140によって拡径されたステント基体30を加熱する加熱工程S150を有する構成によって、残留歪みが除去され、加熱時の径の状態でのステント基体30内部の空孔や転位等の欠陥のエネルギーが安定化することから、生体内において拡径したときのリコイル率を大幅に軽減させることができる。
さらに、拡径工程S140の後に、ステント基体30の軸方向において互いに接続されるとともに、ステント10を生体内に留置した状態において接続力が所定期間の経過後に減少する接続部を形成する接続工程S160を有する構成によって、留置後に柔軟性が高まることで、管腔の変形に対する追従性が向上されたステントを提供することが可能になる。
さらに、接続工程S160が、接続部60に生分解性材料を介在させる工程を含むため、生分解性材料の分解に応じて経時的に接続力を減少させることができ、管腔内における高い追従性を発揮させることが可能なステントを提供することが可能になる。また、拡径工程S140の後に生分解性材料を接続部に介在させるため、加熱工程S150の有無に関わらず、接続部に工程に生分解性材料を介在させることが可能になる。
さらに、拡径工程S140の後に、ステント基体30に薬剤を塗布する薬剤塗布工程S170を有する構成によって、ステント基体30に好適に薬剤を塗布することが可能になる。
さらに、形成工程S110が、コイル形状のストラット41を形成する構成において、そのようなコイル形状からなるステント10は、コイル形状以外の形状からなるステントと比較してリコイルが大きいものの、拡径工程S140や加熱工程S150によってリコイルを低減することができる。
さらに、基材20として、JIS Z 2241に準じて、35℃の温度環境で全伸びが3%に達するまで引張応力を負荷して除荷する引張試験を行った際に、永久伸びが2%以上である金属(超弾性合金以外の金属)を使用することにより、バルーンエクスパンダブルステントを構成し得る材料として、幅広く材料を選択することができるため、種々の製品仕様に応じたステント10を提供することが可能になる。
さらに、ステンレス鋼、コバルト−クロム合金等のコバルト基合金、プラチナ−クロム合金等からなるステント基体30を用いることによって、上記材料が広く適用される拡張部材(バルーン91)によって拡径するステント10を構成することができる。
さらに、拡径工程S140の前に、ステント基体30を研磨する研磨工程(化学研磨工程S120または電解研磨工程S130)を有する構成によって、ステント基体30の表面の凹凸が減少することから、拡径工程S140においてステント基体30を拡径するときに、亀裂が生じたり、破断したりすることを防止できる。
以上、実施形態を通じて本発明に係るステントを説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
10 ステント、
20 基材、
30 ステント基体、
41 ストラット、
60 接続部、
91 バルーン(拡張部材)、
142 拡径器具、
152 ヒータ、
L1 レーザ光、
S110 形成工程、
S120 化学研磨工程、
S130 電解研磨工程、
S140 拡径工程、
S150 加熱工程、
S160 接続工程、
S170 薬剤塗布工程、
S180 クリンプ工程。
20 基材、
30 ステント基体、
41 ストラット、
60 接続部、
91 バルーン(拡張部材)、
142 拡径器具、
152 ヒータ、
L1 レーザ光、
S110 形成工程、
S120 化学研磨工程、
S130 電解研磨工程、
S140 拡径工程、
S150 加熱工程、
S160 接続工程、
S170 薬剤塗布工程、
S180 クリンプ工程。
Claims (9)
- 基材にストラットを形成して構成されるステント基体を備え、拡張部材に接した状態で生体内の標的部位まで移行され前記拡張部材の拡張のみによって拡径変形されるステントを製造する方法であって、
前記基材を加工して、外形形状が全体として筒形状を呈する前記ステント基体を形成する形成工程と、
前記形成工程の後であって前記拡張部材に保持される前の前記ステント基体を拡径する拡径工程と、を有するステントの製造方法。 - 前記拡径工程によって拡径された前記ステント基体を加熱する加熱工程を、さらに有する、請求項1に記載のステントの製造方法。
- 前記拡径工程の後に、
前記ステント基体の軸方向において互いに接続されるとともに、前記ステントを生体内に留置した状態において接続力が所定期間の経過後に減少する接続部を形成する接続工程をさらに有する、請求項1または請求項2に記載のステントの製造方法。 - 前記接続工程は、前記接続部に生分解性材料を介在させる工程を含む、請求項3に記載のステントの製造方法。
- 前記拡径工程の後に、
前記ステント基体に薬剤を塗布する薬剤塗布工程をさらに有する請求項2〜4のいずれか1項に記載のステントの製造方法。 - 前記形成工程は、コイル形状の前記ストラットを形成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
- 前記基材として、JIS Z 2241に準じて、35℃の温度環境で全伸びが3%に達するまで引張応力を負荷して除荷する引張試験を行った際に、永久伸びが2%以上である金属を用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
- ステンレス鋼、コバルト−クロム合金等のコバルト基合金、またはプラチナ−クロム合金からなる前記基材を用いる、請求項7に記載のステントの製造方法。
- 前記拡径工程の前に、前記ステント基体を研磨する研磨工程をさらに有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
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