この種の眼科検査装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、被検眼に呈示される検査用の映像のうち視標を形成するための視標光を生成する視標光生成手段と、当該映像のうち視標以外の領域である背景を形成するための背景光を生成する背景光生成手段と、これら視標光および背景光を互いに合成して被検眼に投射する合成手段と、が具備されている。なお、視標光および背景光は、いずれも無偏光の光である。そして、合成手段は、この無偏光の状態を維持したまま、視標光および背景光を互いに合成する。
ここで、合成手段としては、例えば無偏光ビームスプリッタがあり、とりわけハーフプリズムがある。具体的には、ハーフプリズムは、平面状の境界面を有しており、この境界面に対して、互いに反対の方向から互いに共役な角度で視標光および背景光が入射される。そして、境界面を透過した視標光と当該境界面によって反射された背景光との合成である第1合成光と、境界面によって反射された視標光と当該境界面を透過した背景光との合成である第2合成光と、のいずれか一方が、被検眼に投射される。これにより、被検眼に検査用の映像が呈示される。併せて、第1合成光と第2合成光との他方を監視する監視手段が、設けられることがある。この場合、被検眼に呈示されるのと同じ検査用の映像が、監視手段によって同時に、言わばリアルタイムで、監視される。
より具体的には、図6に示す視野計1を例に挙げると、この視野計1は、2つの光源12および14を備えている。これら2つの光源12および14は、互いに同じ仕様のものであり、詳しくは、多数の赤色発光ダイオード(LED)と、多数の緑色発光ダイオードと、多数の青色発光ダイオードと、が2次元状に配列された、いわゆるRGB−LED光源である。これら各光源12および14の明るさ(輝度)は、それぞれに共通の光源コントローラ16によって任意に制御可能とされている。また、これら各光源12および14の発光色も、当該光源コントローラ16によって任意に制御可能とされており、通常は、自然光と同様の白色とされる。
一方の光源12と光源コントローラ16との間には、当該一方の光源12を点滅させるための点滅コントローラ18が設けられている。この点滅コントローラ18は、一方の光源12を他方の光源14と同じ明るさで発光させる第1の状態と、当該一方の光源12を非発光とする第2の状態と、に正弦曲線的に交互に遷移させるように、当該一方の光源12を制御する。これによって、一方の光源12は、正弦曲線的に緩やかに点滅する。なお、この点滅コントローラ18による一方の光源12の点滅周期は、任意に制御可能とされており、例えば周波数換算で1[Hz]〜120[Hz]の範囲で任意に制御可能とされている。
この点滅する一方の光源12は、後述する検査用の映像100のうちの視標100aを呈示するためのものである。この視標呈示用の光源12から発せられた光、厳密には無偏光の光(図6における長破線の矢印参照)は、コリメータレンズ20によって平行光に整形された後、視標呈示用の液晶シャッタ22の入射面(図6における下側の面)に入射される。
液晶シャッタ22は、液晶コントローラ24から与えられる視標呈示用のシャッタ制御信号に従って、その入射面に、例えば図7に示すようなシャッタパターンを形成する。具体的には、直方形状の入射面の有効エリアのうち、当該有効エリアに比べて十分に小さい円形の領域22aのみが、透過領域とされ、これ以外の領域22bは、遮断領域とされる。ゆえに、このようなシャッタパターンが形成された入射面のうち、透過領域22aに入射された光のみが、液晶シャッタ22を透過して、当該液晶シャッタ22の出射面(図6における上側の面)から出射される。遮断領域22bに入射された光については、遮断されるため、出射されない。なお、透過領域22aの位置および大きさは、任意に変更可能とされている。また、この透過領域22aの形状や個数についても、任意に変更可能とされているが、視野計1においては、当該形状は円形とされ、個数は1つとされる。因みに、特許文献1には明示されていないが、液晶シャッタ22は、例えば液晶プロジェクタ用の透過型のモノクローム液晶パネルを利用したものであり、より詳しくはその入射面の水平方向の画素数(解像度)が1920であり、垂直方向の画素数が1080である、いわゆるFHD(Full High Definition)と呼ばれる仕様の画面解像度を有するものである。
この視標呈示用の液晶シャッタ22を透過した(液晶シャッタ22の出射面から出射された)光、言わば視標光は、合成手段としてのキューブ型のハーフプリズム26に入射される。具体的には、ハーフプリズム26は、その内部に境界面26aを有しており、この境界面26aに対して45度の入射角を成した状態で、当該境界面26aに視標光が入射される。そして、この境界面26aに入射された視標光は、その偏光状態を含めて透過光と反射光とに等分される。このうちの反射光は、境界面26aに対する視標光の入射方向に対して直角な方向に向かって進行し、拡大光学系28を通って、図示しない被検者の眼、つまり被検眼、に投射される。なお、詳しい図示は省略するが、拡大光学系28は、焦点調整用のレンズを含んでおり、この焦点調整用レンズによって、被検眼(網膜)と液晶シャッタ22の出射面とが互いに共役になるように、つまり当該被検眼の焦点が液晶シャッタ22の出射面に合うように、焦点調整が成される。
そして、ハーフプリズム26の境界面26aによって等分された視標光のうちの透過光は、当該境界面26aに対する視標光の入射方向と同じ方向に向かって真っ直ぐに進行し、監視手段としてのCCD(Charge Coupled Device)カメラ30に入射される。このCCDカメラ30のレンズ30aは、その焦点が液晶シャッタ22の出射面に合うように、厳密には当該CCDカメラ30内の図示しないCCD撮像素子の受光面と液晶シャッタ22の出射面とが互いに共役になるように、焦点調整される。
これに対して、他方の光源14は、検査用の映像100のうちの後述する背景100bを呈示するためのものである。この背景呈示用の光源14から発せられた光、厳密には無偏光の光(図6における短破線の矢印参照)は、上述とは別のコリメータレンズ32によって平行光に整形された後、背景呈示用の液晶シャッタ34の入射面(図6における左側の面)に入射される。
この背景呈示用の液晶シャッタ34は、視標呈示用の液晶シャッタ22と同じ仕様のものであり、液晶コントローラ24から与えられる背景呈示用のシャッタ制御信号に従って、その入射面に、当該視標呈示用の液晶シャッタ22とは全く正反対のシャッタパターンを形成する。具体的には、図8に示すように、直方形状の入射面の有効エリアのうち、視標呈示用の液晶シャッタ22における透過領域22aに対応する領域34aのみが、遮断領域とされ、これ以外の領域34bは、透過領域とされる。ゆえに、このようなシャッタパターンが形成された入射面のうちの透過領域34bに入射された光のみが、液晶シャッタ34を透過して、当該液晶シャッタ34の出射面(図6における右側の面)から出射される。遮断領域34aに入射された光については、出射されない。なお、遮断領域34aの位置および大きさは、視標呈示用の液晶シャッタ22における透過領域22aと連動して、任意に変更可能とされている。
この背景呈示用の液晶シャッタ34を透過した(液晶シャッタ34の出射面から出射された)光、言わば背景光もまた、ハーフプリズム26に入射される。具体的には、この背景光は、ハーフプリズム26の境界面26aに対して、上述の視標光が入射される側とは反対側から当該視標光の入射方向と直角を成すように、つまり当該境界面26aを挟んで視標光の入射角度と共役な角度で、入射される。そして、この境界面26aに入射された背景光もまた、その偏光状態を含めて透過光と反射光とに等分される。このうちの透過光は、境界面26aに対する背景光の入射方向と同じ方向に向かって真っ直ぐに進行し、当該境界面26aによって反射された視標光と合成された状態で、拡大光学系28を通って、被検眼に投射される。なお、背景呈示用の液晶シャッタ34の出射面からハーフプリズム26の境界面26aおよび拡大光学系28を介して被検眼に至るまでの距離(つまり背景呈示用の液晶シャッタ34の出射面から出射された背景光が被検眼に伝播するまでの当該背景光の伝播距離)と、視標呈示用の液晶シャッタ22の出射面から当該ハーフプリズム26の境界面26aおよび拡大光学系28を介して被検眼に至るまでの距離(つまり視標呈示用の液晶シャッタ22の出射面から出射された視標光が被検眼に伝播するまでの当該視標光の伝播距離)とは、互いに等しい。従って、上述の如く拡大光学系28の焦点調整用レンズによって被検眼の焦点が視標呈示用の液晶シャッタ22の出射面に合うように焦点調整が成されたときは当然に、当該被検眼の焦点は背景呈示用の液晶シャッタ34の出射面にも合うようになる。
そして、ハーフプリズム26の境界面26aによって等分された背景光のうちの反射光は、当該境界面26aに対する背景光の入射方向に対して直角な方向に向かって進行する。そして、この反射光は、境界面26aを透過した視標光と合成された状態で、CCDカメラ30に入射される。なお、このCCDカメラ30のレンズ30aの焦点が上述の如く視標呈示用の液晶シャッタ22の出射面に合うようにその焦点調整が成されたときも当然に、当該CCDカメラ30のレンズ30aの焦点は背景呈示用の液晶シャッタ34の出射面にも合うようになる。
このようにしてハーフプリズム26の境界面26aによって反射された視標光と当該境界面26aを透過した背景光とが互いに合成された状態で被検眼に投射されることによって、当該被検眼には、図9に示されるような検査用の映像100が呈示される。即ち、視標呈示用の光源12が背景呈示用の光源14と同じ明るさ(つまり最高の輝度)で発光しているときは、図9(a)に示すように、被検眼の視野の全体にわたって一様な明るさの映像100が呈示される。この映像100は、上述した視標呈示用の液晶シャッタ22の透過領域22aおよび背景呈示用の液晶シャッタ34の遮断領域34aに対応する同図に破線で示される円形の視標100aが、それ以外の領域である背景100bと同じ明るさで呈示されることによって形成される。そして、視標呈示用の光源12が非発光(最低の輝度)のときには、図9(b)に示すように、背景100bよりも暗い視標100aが現れる。言い換えれば、視標100aに対応する部分のみが抜け落ちたような映像100が呈示される。これら図9(a)および図9(b)に示す映像100は、視標呈示用の光源12の点滅周期に応じて交互に呈示される。この結果、点滅する視標100aと、一定の明るさとされた背景100bと、から成る映像100が、被検眼に呈示される。さらに上述したように、視標呈示用の光源12は、正弦曲線的に緩やかに点滅するので、これに応じて、視標100aもまた、当該正弦曲線的に緩やかに点滅する。従って、図9(a)および図9(b)の一方に示す状態から他方に示す状態に遷移する際に、図9(c)に示す如く指標100aが中途の明るさとなる。そして、この指標100aの明るさは、正弦曲線的に緩やかに変化する。
これと同時に、ハーフプリズム26の境界面26aを透過した視標光と当該境界面26aによって反射された背景光とが互いに合成された状態でCCDカメラ30に入射される。これによって、CCDカメラ30には、被検眼に呈示されるのと同じ映像100が取り込まれる。このCCDカメラ30による撮影映像100は、例えば図示しない表示装置の画面に映し出される。
なお、視標呈示用の光源12からコリメータレンズ20および液晶シャッタ22を介してハーフプリズム26の境界面26aに至るまでの主軸(光軸)と、背景呈示用の光源14からコリメータレンズ32および液晶シャッタ34を介して境界面26aに至るまでの主軸と、当該境界面26aから拡大光学系28を介して被検眼に至るまでの主軸と、当該境界面26aからCCDカメラ30に至るまでの主軸とは、互いに共通の仮想の平面(図6の紙面に沿う平面)上に位置する。言い換えれば、そうなるように、これら各要素12,14,20,22,26,28,30,32および34が設けられている。
このように構成された視野計1によれば、次の要領で視野検査が行われる。まず、拡大光学系28の出射面(図6における右側の面)側の所定位置に被検眼が置かれ、詳しくは図示しない接眼ピースに当該被検眼が置かれる。この状態で、被検眼に検査用の映像100が呈示される。なお、特許文献1には明示されていないが、この検査用の映像100の中央には、被検者の瞳の位置(向き)を固定させるための適当な印、いわゆる固視標、が設けられる。この固視標は、例えば背景呈示用の液晶シャッタ34の入射面の中央に概略十字状の遮断領域が形成されることによって、つまり当該入射面にそのようなシャッタパターンが形成されることによって、設けられる。被検者は、この固視標を注視しつつ、検査用の映像100に含まれる点滅する視標100aを視認し得たときに、その意思表示をし、例えば図示しない操作ボタンを操作する。検者であるオペレータは、この被検者による操作ボタンの操作状況から、当該被検者が視標100aを視認し得ているかどうかを認識する。この作業は、視標100aの位置および大きさが適宜に変更されながら、さらには当該視標100aの点滅周波数が適宜に変更されながら、繰り返される。これによって、被検眼の視野が測定され、つまり視野検査が行われる。
ここで、被検眼に呈示される検査用の映像100は、上述の如く点滅する視標100aと、この視標100a以外の領域であって一定の明るさとされた背景100bと、から成る。このような態様とされることによって、とりわけ背景100bが一定の明るさとされることによって、次のような利点がある。即ち、検査用の映像100に含まれる視標100aが点滅すると、この映像100が呈示されることによる被検眼への入射光量が変動するが、その変動量は、当該入射光量全体に比べるとかなり小さい。従ってその分、視標100aが点滅することによる被検眼への入射光量の変動が抑制され、ひいては当該被検眼(網膜)への刺激が抑制される。これに対して例えば、背景100bが真っ暗である、とすると、この場合は、視標100aの明るさが被検眼への入射光量に直接的に影響するため、当該視標100aが点滅することによって、被検眼への入射光量が大きく変動して、当該被検眼が大きな刺激を受ける。このような背景100bが真っ暗である映像100が、例えば視野の欠けている被検眼に呈示されると、とりわけ当該視野の欠けている部分に視標100aが呈示されると、被検者は、この視標100aを実際に視認し得ていないにも拘らず、当該視標100aが点滅することによる刺激を受けて、あたかも当該視標100aを視認し得ているものと勘違いする、言わば誤認識する、虞がある。この誤認識は、言うまでもなく検査精度の低下を招く。一方、上述の如く背景100bが一定の明るさとされることによって、視標100aが点滅することによる被検眼への刺激が抑制されるので、そのような誤認識が防止され、ひいては検査精度の向上が図られる。このことは、視野検査等の自覚的検査(被検者の自覚に依拠する検査)において、極めて有益である。
また、被検眼に呈示される映像100は、無偏光の視標光と無偏光の背景光との合成である無偏光の合成光によって形成される。従って、この合成光の被検眼に対する入射角度が変わったとしても、当該被検眼による映像100の見え方が変わることはなく、とりわけ視標100aの見え方が変わることはない。これに対して例えば、合成光が偏光光である、とすると、この合成光の被検眼に対する入射角度によっては、当該被検眼による映像100の見え方が変わり、とりわけ視標100aの見え方が変わる。このこともまた、検査精度の低下を招く。ゆえに、上述の如く無偏光の合成光によって検査用の映像100が形成されることで、このような偏光の影響が排除され、ひいては検査精度のより一層の向上が図られる。
加えて、上述の如く視標100aが正弦曲線的に緩やかに点滅することによって、つまり当該視標100aの明るさが緩やかに変化することによって、例えば視標100aが単に矩形波的(言わばON/OFF的)に点滅する場合に比べて、つまり当該視標100aの明るさが急激に変化する場合に比べて、当該視標100aが点滅することによる被検眼への刺激がさらに抑制される。このこともまた、検査精度の向上に大きく貢献し、とりわけ緑内障の早期発見に寄与することが期待される。
さらに、監視手段としてのCCDカメラ30には、上述の如く被検眼に呈示されるのと同じ映像100が取り込まれるので、オペレータは、このCCDカメラ30による撮影画像100から、被検眼に呈示されている検査用の当該映像100をリアルタイムで監視することができる。この言わばリアルタイム監視機能は、検査用の映像100の形成を担う各要素の調整、とりわけ各液晶シャッタ22および34の位置調整や、光源コントローラ16による各光源12および14の明るさ調整、さらには当該各光源12および14の発光色の調整、を行うときにも、極めて有益である。
ところで上述したように、視野検査においては被検眼の瞳の位置が固視標に固定されるが、これが適当に成されているかどうかを含め当該瞳の状態を監視するために、特許文献1には明示されていないものの、次のような構成がさらに設けられている。
即ち、図10に示すように、拡大光学系28が、対物レンズ群28aと接眼レンズ群28bとを備えており、これら対物レンズ群28aと接眼レンズ群28bとは、互いに直列に配置されている。そして、これら対物レンズ群28aと接眼レンズ群28bとの間に、可視光赤外光合成分離手段としての例えば平板状のホットミラー40が設けられている。なお、詳しい図示は省略するが、対物レンズ群28aは、複数のレンズが適宜に組み合わされたものであり、上述のハーフプリズム26寄り(図10における左側寄り)の位置に設けられている。そして、接眼レンズ群28bもまた、複数のレンズが適宜に組み合わされたものであり、この接眼レンズ群28bの出射側(図10における右側)に、上述の接眼ピースが設けられている。さらに、これら対物レンズ群28aと接眼レンズ群28bとのいずれかに、上述の焦点調整用レンズが組み込まれている。
ホットミラー40は、その両主面が拡大光学系28の主軸に対して直角以外の所定の角度を成すように、例えば40度〜60度(補角として140度〜120度)の範囲内の適当な角度を成すように、当該拡大光学系28の主軸上に設けられている。そして、このホットミラー40の一方主面、詳しくは拡大光学系28の接眼レンズ群28bが位置する側(図10において右上方を向いている側)の主面、が向いている側の空間において、当該一方主面に関して拡大光学系28の主軸と共役な方向に、赤外光照明手段としての赤外光照明器42が設けられている。さらに、この赤外光照明器42とホットミラー40との間に、赤外光分割手段としての例えば平板状の赤外光ハーフミラー44が設けられている。この赤外光ハーフミラー44は、その両主面が赤外光照明器42の主軸に対して直角以外の所定の角度を成すように、例えば40度〜60度(補角として140度〜120度)の範囲内の適当な角度を成すように、当該赤外光照明器42の主軸上に設けられている。そして、この赤外光ハーフミラー44の一方主面、詳しくはホットミラー40が位置する側(図10において左下方を向いている側)の主面、が向いている側の空間において、当該一方主面に関して赤外光照明器42の主軸と共役な方向に、上述の監視手段としてのCCDカメラ30とは別のCCDカメラ46が設けられている。
なお、CCDカメラ46のレンズ46aは、その焦点が被検眼(瞳)に合うように、厳密には当該CCDカメラ46内の図示しないCCD撮像素子の受光面と被検眼とが互いに共役になるように、焦点調整される。また、赤外光照明器42の主軸と、CCDカメラ46の主軸とは、拡大光学系28の主軸と同様、上述した仮想平面上に位置する。言い換えれば、そうなるように、ホットミラー40および赤外光ハーフミラー44を含む各要素28,40,42,44および46が設けられている。そして、ホットミラー40は、その両主面の形状が例えば円形状のものであっても直方形状のものであってもよいが、その上述の(拡大光学系28の接眼レンズ群28bが位置する側の)一方主面の中央を拡大光学系28の主軸が通ると共に、当該一方主面の中央を赤外光照明器42の主軸が通るように、設けられている。これと同様に、赤外光ハーフミラー44についても、その両主面の形状が例えば円形状のものであっても直方形状のものであってもよいが、その上述の(ホットミラー40が位置する側の)一方主面の中央を赤外光照明器42の主軸が通ると共に、当該一方主面の中央をCCDカメラ46の主軸が通るように、設けられている。
ここで、赤外光照明器42は、例えばピーク波長が850nmの赤外光を発する赤外発光ダイオードを有している。そして、赤外光ハーフミラー44は、この赤外光照明器42(赤外発光ダイオード)から発せられる赤外光の波長域を含む例えば800nm〜900nmの赤外域(近赤外域)において、透過率と反射率とが互いに略同等の光学特性、いわゆるハーフ特性、を示す。さらに、ホットミラー40は、当該800nm〜900nmの赤外域において、比較的に高い反射率を示し、いわゆる反射特性を示す。その一方で、このホットミラー40は、可視域において、例えば400nm〜700nmの波長域において、比較的に高い透過率を示し、いわゆる透過特性を示す。加えて、CCDカメラ46は、可視域用のものであるが、ここで言う800nm〜900nmの赤外域においても、所定以上の適当な感度を持つ。また、このCCDカメラ46のレンズ46aも当然に、可視域用のものであるが、当該800nm〜900nmの赤外域においても、適当な透過特性を示す。これと同様に、対物レンズ群28aと接眼レンズ群28bとから成る拡大光学系28もまた、可視域用のものであるが、800nm〜900nmの赤外域においても、適当な透過特性を示す。
この図10に示す構成によれば、赤外光照明器42から発せられた赤外光(図10における中破線の矢印参照)は、赤外光ハーフミラー44を透過した後、ホットミラー40によって反射されて、さらに拡大光学系28の接眼レンズ群28bを通って、被検眼に投射される。この被検眼に投射された言わば照明光としての赤外光は、当該被検眼の瞳を含む虹彩(いわゆる黒目)部分よって反射される。なお、被検眼の虹彩以外の部分、とりわけ強膜(いわゆる白目)部分は、当該赤外光を殆ど反射しない。そして、この被検眼(虹彩部分)による反射赤外光(図10における2点鎖線の矢印参照)は、拡大光学系28の接眼レンズ群28bを通って、ホットミラー40によって反射され、さらに赤外光ハーフミラー44によって反射された後、CCDカメラ46(レンズ46a)に入射される。このCCDカメラ46による撮影映像に基づいて、被検眼の瞳の位置を含む当該瞳の状態が監視され、言わば瞳監視機能が実現される。
なお、赤外光照明器42から発せられた赤外光は、上述の如く赤外光ハーフミラー44を透過するが、この赤外光ハーフミラー44を透過するのは、当該赤外光の一部(約半分)のみであり、残りは、当該赤外光ハーフミラー44によって反射される。ただし、この赤外光ハーフミラー44によって反射された赤外光は、特段には利用されず、また、特段な影響(悪影響)を与えることもない。そして、反射赤外光についても、上述の如く赤外光ハーフミラー44によって反射されるが、この赤外光ハーフミラー44によって反射されるのは、当該反射赤外光の一部(約半分)のみであり、残りは、当該赤外光ハーフミラー44を透過する。この赤外光ハーフミラー44を透過した反射赤外光も、特段には利用されず、また、特段な影響を与えることもない。
本発明の一実施形態について、視野計を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る視野計10は、図6に示した従来の視野計1における合成手段としてのハーフプリズム26に代えて、光整理手段としてのキューブ型のクロスダイクロイックプリズム50が設けられたものである。併せて、赤外光照明手段としての赤外光照明器60と、投射光選択手段としてのフィルタユニット70と、がさらに設けられている。これ以外の構成は、図6に示したのと同様であるので、これら同様の部分には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
クロスダイクロイックプリズム50は、その内部に第1〜第4の4つの境界面50a〜50dを有している。このうちの第1境界面50aと第3境界面50cとは、互いに連続する1つの平面51aを形成している。これと同様に、第2境界面50bと第4境界面50dとは、互いに連続する1つの平面51bを形成している。これら2つの平面51aおよび51bは、互いに直交している。このうちの第1境界面50aと第3境界面50cとから成る言わば第1の平面51aは、その表裏の一方側(図1における右下方側)の空間において、視標呈示用の光源12からコリメータレンズ20および液晶シャッタ22を介してこの第1平面51aに至るまでの主軸と、当該第1平面51aから拡大光学系28を介して被検眼に至るまでの主軸とが、互いに共役になるように、設けられている。言い換えれば、第1平面51aは、その表裏の他方側(図1における左上方側)の空間において、背景呈示用の光源14からコリメータレンズ32および液晶シャッタ34を介してこの第1平面51aに至るまでの主軸と、当該第1平面51aからCCDカメラ30に至るまでの主軸とが、互いに共役になるように、設けられている。そして、第2境界面50bと第4境界面50dとから成る言わば第2の平面51bは、その表裏の一方側(図1における左下方側)の空間において、視標呈示用の光源12からコリメータレンズ20および液晶シャッタ22を介してこの第2平面51bに至るまでの主軸と、背景呈示用の光源14からコリメータレンズ32および液晶シャッタ34を介して当該第2平面51bに至るまでの主軸とが、互いに共役になるように、設けられている。言い換えれば、第2平面51bは、その表裏の他方側(図1における右上方側)の空間において、当該第2平面51bから拡大光学系28を介して被検眼に至るまでの主軸と、当該第2平面51bからCCDカメラ30に至るまでの主軸とが、互いに共役になるように、設けられている。そして、これらの第1平面51aと第2平面51bとの交線、つまり第1〜第4の各境界面50a〜50dの相互の結合部分であるそれぞれの一側縁(後述する52a〜58aという符号が付された一側縁)は、その中央において、上述した仮想平面と直交している。
ここで、第1境界面50aと第3境界面50cとから成る第1平面51aは、例えば図2(a)に示すような光学特性を持つ。即ち、波長が400nm〜700nmの可視域において、透過率と反射率とが互いに略同等である、詳しくは当該透過率と反射率とのいずれもが約50%である、いわゆるハーフ特性を示す。そして、波長が800nm〜900nmの赤外域において、透過率が反射率よりも高い、詳しくは透過率が85%以上である、いわゆる透過特性を示す。一方、第2境界面50bと第4境界面50dとから成る第2平面51bは、例えば図2(b)に示すような光学特性を持つ。即ち、400nm〜700nmの可視域において、透過率が反射率よりも高い、詳しくは透過率が95%以上である、透過特性を示す。そして、800nm〜900nmの赤外域において、反射率が透過率よりも高い、詳しくは反射率が85%以上である、いわゆる反射特性を示す。
このような第1平面51aおよび第2平面51b(第1〜第4の各境界面50a〜50d)を有するクロスダイクロイックプリズム50は、図3に示すように、第1〜第4の4つの三角プリズム52〜58が互いに接着されることによって形成される。即ち、これら第1〜第4の各三角プリズム52〜58は、互いに同じ形状かつ同じ寸法のものであり、とりわけそれぞれの両端面が直角二等辺三角形状のものである。そして、これら各三角プリズム52〜58は、当該直角二等辺三角形の頂角に当たる部分を含む一側縁52a〜58aを互いに向き合わせると共に、当該直角二等辺三角形の底辺に当たる部分を含む一側面52b〜58bを外方に向けた状態で、互いに接着される。この結果、第1三角プリズム52の一方の接着面52cと、これに接着される第4三角プリズム58の接着面58dと、によって、第1境界面50aが形成される。そして、第1三角プリズム52の他方の接着面52dと、これに接着される第2三角プリズム54の一方の接着面54cと、によって、第2境界面50bが形成される。さらに、第2三角プリズム54の他方の接着面54dと、これに接着される第3三角プリズム56の一方の接着面56cと、によって、第3境界面50cが形成される。そして、第3三角プリズム56の他方の接着面56dと、これに接着される第4三角プリズム58の接着面58cと、によって、第4境界面50dが形成される。
なお、これら各三角プリズム52〜58が互いに接着される前に、第1境界面50aを形成する第1三角プリズム52の接着面52cに、図2(a)に示した光学特性を奏する被膜53aが、真空蒸着法等の適当な成膜法によって形成される。これと同様に、第3境界面50cを形成する第3三角プリズム56の接着面56cに、当該図2(a)に示した光学特性を奏する被膜53cが形成される。これにより、第1境界面50aと第3境界面50cとから成る第1平面51aが、上述の如く当該図2(a)に示した光学特性を持つようになる。この第1三角プリズム52の接着面52cへの被膜53aの形成と、第3三角プリズム56の接着面56cへの被膜53cの形成とは、互いに同じ(1回の)バッチで行われる。
併せて、第2境界面50bを形成する第2三角プリズム54の接着面54cに、図2(b)に示した光学特性を奏する被膜53bが形成されると共に、第4境界面50dを形成する第4三角プリズム58の接着面58cに、当該図2(b)に示した光学特性を奏する被膜53dが形成される。これにより、第2境界面50bと第4境界面50dとから成る第2平面51bが、上述の如く当該図2(b)に示した光学特性を持つようになる。この第2三角プリズム54の接着面54cへの被膜53bの形成と、第4三角プリズム58の接着面58cへの被膜53dの形成とについても、互いに同じバッチで行われる。
因みに、これら各三角プリズム52〜58の被膜53a〜53dが形成されない側の接着面52d〜58dについては、何らの処理も施されない。また、当該各三角プリズム52〜58の外方に向けられた側面52b〜58bについては、図示しない適当な反射防止膜が形成される。この反射防止膜の形成は、各三角プリズム52〜58に共通のバッチで行われる。
図1に戻って、赤外光照明器60は、CCDカメラ30のレンズ30a(筐体)の外周に取り付けられるいわゆるリング状のものであり、例えば850nmをピークとする波長域の赤外光を発光する複数の赤外発光ダイオードが当該リング状に配置されたものである。そして、フィルタユニット70は、CCDカメラ30とクロスダイクロイックプリズム50との間に設けられており、例えば当該CCDカメラ30のレンズ30aの直前に設けられている。詳しい図示は省略するが、このフィルタユニット70は、400nm〜700nmの可視域において透過特性を示す、例えば90%以上の透過率を示す、可視域バンドパスフィルタ70aと、800nm〜900nmの赤外域において透過特性を示す、例えば90%以上の透過率を示す、赤外域バンドパスフィルタ70bと、を有している。そして、このフィルタユニット70は、これら2つのバンドパスフィルタ70aおよび70bが選択的にCCDカメラ30のレンズ30aの直前に置かれるように、つまり当該CCDカメラ30の主軸上に置かれるように、構成されている。
このように構成された本実施形態に係る視野計10によれば、上述した従来の視野計1によるのと同じ要領で視野検査が行われる。
このとき、図4に示すように、視標呈示用の液晶シャッタ22を透過した視標光(図4における長破線の矢印参照)は、クロスダイクロイックプリズム50に入射される。このクロスダイクロイックプリズム50に入射された視標光は、いわゆる可視光であるので、可視域においてハーフ特性を示す第1境界面50aと第3境界面50cとから成る第1平面51aによって、透過光と反射光とに等分される。このうちの反射光は、第1平面51aに対する視標光の入射方向に対して直角な方向に向かって進行し、拡大光学系28を通って、被検者の被検眼に投射される。一方、透過光は、第1平面51aに対する視標光の入射方向と同じ方向に向かって真っ直ぐに進行し、フィルタユニット70へと向かう。なお、第2境界面50bと第4境界面50dとから成る第2平面51bは、可視域において透過特性を示すので、可視光である視標光の進行に対して特段な影響は及ぼさない。
そして、背景呈示用の液晶シャッタ34を透過した背景光(図4における短破線の矢印参照)もまた、クロスダイクロイックプリズム50に入射され、第1平面51aによって透過光と反射光とに等分される。このうちの透過光は、第1平面51aに対する背景光の入射方向と同じ方向に向かって真っ直ぐに進行し、当該第1平面51aによって反射された視標光と合成された状態で、拡大光学系28を通って、被検者の被検眼に投射される。一方、反射光は、第1平面51aに対する背景光の入射方向に対して直角な方向に向かって進行し、当該第1平面51aを透過した視標光と合成された状態で、フィルタユニット70へと向かう。なお、この背景光の進行に対しても、第2平面51bは特段な影響を及ぼさない。
このように、被検眼には、クロスダイクロイックプリズム50の第1平面51aによって反射された視標光と、当該第1平面51aを透過した背景光とが、互いに合成された状態で投射される。この結果、被検眼には、図4に示したのと同様の映像100が呈示される。併せて、第1平面51aを透過した視標光と、当該第1平面51aによって反射された背景光とが、互いに合成された状態でフィルタユニット70へと向かう。ここで例えば、フィルタユニット70が可視域バンドパスフィルタ70aをCCDカメラ30のレンズ30aの直前に置く状態とされる、言わば当該可視域バンドパスフィルタ70aを有効化する状態とされると、これら視標光と背景光との合成光は、当該可視域バンドパスフィルタ70aを透過して、CCDカメラ30に入射される。この結果、CCDカメラ30には、被検眼に呈示されるのと同じ映像100が取り込まれ、つまり上述したリアルタイム監視機能が実現される。
ところで、CCDカメラ30は、可視域用のものであるが、ここで言う800nm〜900nmの赤外域においても、適当な感度を持つ。また、このCCDカメラ30のレンズ30aも当然に、可視域用のものであるが、当該800nm〜900nmの赤外域においても、適当な透過特性を示す。そして、フィルタユニット70が赤外域バンドパスフィルタ70bをCCDカメラ30のレンズ30aの直前に置く状態とされる、つまり当該赤外域バンドパスフィルタ70bを有効化する状態とされると共に、赤外光照明器60が発光されることで、上述した瞳監視機能が実現される。
即ち、赤外光照明器60から発せられた瞳監視用照明光としての赤外光(図4における中破線の矢印参照)は、フィルタユニット70の赤外域バンドパスフィルタ70bを透過して、クロスダイクロイックプリズム50に入射される。このクロスダイクロイックプリズム50に入射された赤外光は、赤外域において反射特性を示す第2平面51bによって反射された後、拡大光学系28へと向かう。なお、第1平面51aは、赤外域において透過特性を示すので、この赤外光の進行に対して特段な影響は及ぼさない。
そして、拡大光学系28は、上述したように可視域用のものであるが、赤外域においても適当な透過特性を示す。従って、この拡大光学系28へと向かう赤外光は、当該拡大光学系28を透過して、被検眼に投射される。この被検眼に投射された赤外光は、当該被検眼の瞳を含む虹彩部分によって反射される、そして、この反射赤外光(図4における2点鎖線の矢印参照)は、再び拡大光学系28を透過して、クロスダイクロイックプリズム50に入射される。
クロスダイクロイックプリズム50に入射された反射赤外光は、改めて第2平面51bによって反射された後、フィルタユニット70へと向かう。なお、この反射赤外光の進行に対しても、第1平面51aは特段な影響を及ぼさない。そして、フィルタユニット70へと向かう反射赤外光は、このフィルタユニット70の赤外域バンドパスフィルタ70bを透過して、CCDカメラ30に入射される。この結果、CCDカメラ30による撮影映像に基づいて、被検眼の瞳の位置が監視され、つまり瞳監視機能が実現される。なお、この瞳監視機能の実現においては、CCDカメラ30のレンズ30aは、その焦点が被検眼(瞳)に合うように、焦点調整される。
このように、本実施形態に係る視野計10によれば、上述した従来の視野計1によるのと同じ要領で視野検査が行われると共に、リアルタイム監視機能および瞳監視機能が実現される。特に、従来の視野計1では、リアルタイム監視機能を担うCCDカメラ30と、瞳監視機能を担うCCDカメラ46と、の2台のCCDカメラ30および46が必要になるのに対して、本実施形態に係る視野計10によれば、1台のCCDカメラ30のみで足り、その分、視野計10全体の構成の簡素化かつ小型化が実現されると共に、その生産コストの低減が図られる。また、本実施形態に係る視野計10によれば、従来の視野計1において必要とされるホットミラー40が不要であるので、このこともまた、視野計10全体の構成の簡素化かつ小型化に大きく貢献すると共に、その生産コストの低減に大きく貢献する。さらに、当該ホットミラー40が不要であることから、拡大光学系28を成す対物レンズ群28aと接眼レンズ群28bとの距離の短縮化が図られ、この拡大光学系28の設計にとって好都合となる。このこともまた、視野計10全体の構成の簡素化かつ小型化に大きく貢献すると共に、その生産コストの低減に大きく貢献する。
なお、本実施形態で説明した内容は、飽くまでも本発明の一具体例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
例えば、赤外線照明器60については、そのピーク波長が850nmのものが採用されたが、これに限らない。当該ピーク波長が850nm以外のもの、例えば900nmや940nmのものが、採用されてもよい。また、ピーク波長が互いに異なる複数の赤外光を発するものが採用されてもよいし、そのような複数の赤外光を発する複数の赤外線照明器が設けられてもよい。被検眼の態様、よりわけ虹彩部分の色、によっては、赤外域における反射特性が異なるので、これに柔軟に対応するための方策である。
そして、この赤外線照明器60から発せられる赤外光のピーク波長に応じて当該赤外光の波長域の範囲が適宜に規定されてもよい。即ち、この赤外域について、ここでは上述の如く800nm〜900nmとされたが、例えば750nm〜1000nmの範囲で適宜に規定されてもよい。可視域についても同様に、ここでは上述の如く400nm〜700nmとされたが、例えば380nm〜750nmの範囲で適宜に規定されてもよい。
さらに、これら赤外域および可視域それぞれの範囲に応じてクロスダイクロイックプリズム50の第1平面51aおよび第2平面51bそれぞれの光学特性が適宜に設計されるのが、望ましい。言い換えれば、図2に示した光学特性は一例であって、当該光学特性は赤外域および可視域それぞれの範囲に応じて適宜に設計されるのが、望ましい。
加えて、図5に示すような構成が採用されてもよい。この図5に示す構成では、リング状の赤外光照明器60に代えて、図10に示した従来のものと同様の赤外光照明器80が採用される。この赤外光照明器80は、クロスダイクロイックプリズム50を挟んで視標呈示用の光源12が設けられている側とは反対側において、当該視標呈示用の光源12と対向すると共に、その主軸が当該視標呈示用の光源12の主軸と一致するように、設けられている。そして、この赤外光照明器80とクロスダイクロイックプリズム50との間に、光分割手段としての例えば平板状のハーフミラー90が設けられている。このハーフミラー90は、可視域から赤外域にわたって、詳しくは400nm〜900nmの波長域にわたって、透過率と反射率とが互いに略同等のハーフ特性を示す。そして、このハーフミラー90は、その両主面が赤外光照明器80の主軸に対して直角以外の所定の角度を成すように、例えば40度〜60度(補角として140度〜120度)の範囲内の角度を成すように、当該赤外光照明器80の主軸上に設けられている。さらに、このハーフミラー90の一方主面、詳しくはクロスダイクロイックプリズム50が位置する側(図5において左下方を向いている側)の主面、が向いている側の空間において、当該一方主面に関して赤外光照明器80の主軸と共役な方向に、CCDカメラ30が設けられている。そして、このCCDカメラ30とハーフミラー90との間、例えば当該CCDカメラ30のレンズ30aの直前に、フィルタユニット70が設けられている。なお、赤外光照明器80の主軸は、上述した仮想平面上に位置し、CCDカメラ30の主軸もまた、当該仮想平面上に位置する。そして、ハーフミラー90は、その上述の(クロスダイクロイックプリズム50が位置する側の)一方主面の中央を赤外光照明器80の主軸が通ると共に、当該一方主面の中央をCCDカメラ30の主軸が通るように、設けられている。
この図5に示す構成によれば、上述した従来の視野計1によるのと同じ要領で、つまり図1に示した構成によるのと同じ要領で、視野検査が行われる。
このとき、フィルタユニット70の可視域バンドパスフィルタ70aが有効化されることによって、リアルタイム監視機能が実現される。即ち、クロスダイクロイックプリズム50の第1平面51aを透過した視標光と、当該第1平面51aによって反射された背景光とが、互いに合成された状態で、クロスダイクロイックプリズム50から出射された後、ハーフミラー90によって反射され、さらに、フィルタユニット70の可視域バンドパスフィルタ70aを通って、CCDカメラ30に入射される。これにより、リアルタイム監視機能が実現される。
なお、クロスダイクロイックプリズム50から出射された視標光と背景光とは、上述の如くハーフミラー90によって反射されるが、このハーフミラー90によって反射されるのは、当該視標光と背景光とのそれぞれの一部(約半分)のみであり、それぞれの残りは、当該ハーフミラー90を透過する。ただし、このハーフミラー90を透過した視標光と背景光とは、特段には利用されず、また、特段な影響を及ぼすこともない。
そして、フィルタユニット70の赤外域バンドパスフィルタ70bが有効化されると共に、赤外光照明器80が発光されることによって、瞳監視機能が実現される。即ち、赤外光照明器80から発せられた赤外光は、ハーフミラー90を透過した後、クロスダイクロイックプリズム50に入射される。このクロスダイクロイックプリズム50に入射された赤外光は、図1に示した構成におけるのと同様、当該クロスダイクロイックプリズム50内の第2平面51bによって反射された後、当該クロスダイクロイックプリズム50から出射され、さらに拡大光学系28を透過して、被検眼に入射される。そして、この被検眼によって反射された反射赤外光は、再び拡大光学系28を透過して、クロスダイクロイックプリズム50に入射され、当該クロスダイクロイックプリズム50内の第2平面51bによって反射された後、当該クロスダイクロイックプリズム50から出射される。このクロスダイクロイックプリズム50から出射された反射赤外光は、ハーフミラー90によって反射された後、フィルタユニット70の赤外域バンドパスフィルタ70bを通って、CCDカメラ30に入力される。これにより、瞳監視機能が実現される。
なお、赤外光照明器80から発せられた赤外光は、上述の如くハーフミラー90を透過するが、このハーフミラー90を透過するのは、当該赤外光の一部(約半分)のみであり、その残りは、当該ハーフミラー90によって反射される。ただし、このハーフミラー90によって反射された赤外光は、特段には利用されず、また、特段な影響を及ぼすこともない。そして、クロスダイクロイックプリズム50から出射された反射赤外光は、上述の如くハーフミラー90によって反射されるが、このハーフミラー90によって反射されるのは、当該反射赤外光の一部(約半分)であり、その残りは、当該ハーフミラー90を透過する。このハーフミラー90を透過した反射赤外光も、特段には利用されず、また、特段な影響を及ぼすこともない。
このように、図5に示す構成によっても、図1に示した構成と同様、視野検査に付随して、リアルタイム監視機能および瞳監視機能が実現される。ただし、ハーフミラー90が設けられることによって、装置全体の構成の簡素化かつ小型化に不利になると共に、その生産コストの低減にも不利になることが懸念されるが、上述した(図10に示した)従来の視野計1に比べると、つまり赤外光ハーフミラー44とこれよりも大きなホットミラー40とが設けられる当該従来の視野計1に比べると、十分に装置全体の構成の簡素化かつ小型化が実現されると共に、その生産コストの低減が図られる。
その一方で、図5に示す構成においては、ハーフミラー90(およびフィルタユニット70の可視域バンドパスフィルタ70a)を介してCCDカメラ30に入射される視標光および背景光は、当該ハーフミラー90によって反射される際に損失を受ける。この損失は、リアルタイム監視機能にとって当然に不都合である。これを補填するために、例えばCCDカメラ30の感度が適当に上げられるのが、望ましい。また、赤外光照明器80から発せられた赤外光は、ハーフミラー90を透過する際に損失を受ける。さらに、ハーフミラー90(およびフィルタユニット70の赤外域バンドパスフィルタ70b)を介してCCDカメラ30に入射される反射赤外光もまた、当該ハーフミラー90によって反射される際に損失を受ける。これらの損失は、瞳監視機能にとって当然に不都合である。これを補填するためにも、例えばCCDカメラ30の感度が適当に上げられるか、若しくは、赤外光照明器80の明るさが適当に上げられるのが、望ましい。
なお、視標呈示用の光源12および背景呈示用の光源14については、互いに同じ仕様のRGB−LED光源とされたが、これに限らない。例えば、これらの光源12および14の一方については、その発光色が白色等の単色のLED光源とされ、他方については、その発光色が当該一方に適宜に合わせられるようにRGB−LED光源とされてもよい。或いは、いずれも互いに同じ仕様の単色のLED光源とされてもよい。
また、光源コントローラ16については、2つの光源12および14に共通のもの、つまり1台、とされたが、これに限らない。即ち、これら2つの光源12および14のそれぞれに専用の、つまり2台の、光源コントローラが設けられてもよい。
さらに、各光源12および14から発せられた光を平行光に整形するための言わば平行光整形手段として、コリメータレンズ20および32が設けられたが、これに代えて、同様の作用を奏する適当なフィルタが設けられてもよい。
加えて、液晶シャッタ22および32については、透過型のものに限らず、反射型のものが採用されてもよい。また、液晶シャッタ22および32に代えて、多数の微小ミラーが2次元状に配置されたマイクロミラーデバイスが採用されてもよい。
そして、図5に示した構成において、光分割手段としての平板状のハーフミラー90に代えて、キューブ型のハーフプリズムが採用されてもよい。
また、CCDカメラ30に代えて、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等のCCD以外の撮像素子を採用するカメラが瞳監視手段として採用されてもよい。
ここで説明した視野計10は、静的視野測定に供されるものであるが、これに限らず、動的視野測定に供されるものにも、本発明を適用することができる。そして、本発明は、視野計10に限らず、それ以外の眼科検査装置にも適用することができる。