JP2018023205A - 絶縁電線、コイル、および回転電機 - Google Patents

絶縁電線、コイル、および回転電機 Download PDF

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Akito Tamura
暁斗 田村
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優気 天野
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Kazuomi Hirai
一臣 平井
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匡寿 成田
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靖成 足田
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Abstract

【課題】耐振動性、耐衝撃性、出力特性等が良好な回転電機を製造することができる絶縁電線を提供する。【解決手段】実施形態の絶縁電線は、平角導体と、前記平角導体の周囲に設けられる絶縁皮膜とを有する。前記絶縁皮膜は、前記平角導体を挟持するように配置される少なくとも1対の辺を有する。前記1対の辺は、それぞれ、両端部に1対の凸部を有するとともに、この1対の凸部の頂点間における最厚部の厚み(d1)に対する最薄部の厚み(d2)の比(d2/d1)が0.50〜0.90である。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、絶縁電線、コイル、および回転電機に関する。
回転電機は、電動機、発電機として使用されており、ロータ軸に固定される回転子であるロータと、このようなロータの周囲に配置される固定子であるステータとから構成されている。ステータは、ロータに回転磁界を与えるものであり、周方向に複数のスロットが配置されたステータコアと、このステータコアのスロット内に少なくとも一部が配置されるステータコイルとから構成されている。
ステータコイルは、円形状の断面を有する絶縁電線(丸形エナメル線)、四角形状の断面を有する絶縁電線(平角エナメル線)から構成されている。平角エナメル線は、四角形状の断面を有する導体(平角導体)の周囲に絶縁塗料が塗布し焼き付けられて絶縁皮膜が設けられている。平角エナメル線によれば、高いコイル占積率が得られることから、ステータコイルの小型化、さらには回転電機の小型化を図ることができる。
近年、各種の車両に回転電機が使用されている。回転電機によれば、車両の運転エネルギーを回生電力として回収することができるとともに、車両の加速を補助することができる。また、エンジンと併用される場合、エンジンの始動を行うことができる。
車両に使用される回転電機については、耐振動性、耐衝撃性等が良好であることが求められる。耐振動性、耐衝撃性等を向上させるために、例えば、ステータコアのスロット内にステータコイルが装着されたコイル装着体にワニスを含浸させて硬化させるワニス処理が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
具体的には、ステータコアのスロットとステータコイルとの間にワニスを含浸させて硬化させるとともに、ステータコイルを構成する絶縁電線どうしの間にワニスを含浸させて硬化させる。これにより、スロットとステータコイルとが固定されるとともに、ステータコイルを構成する絶縁電線どうしが固定されて、耐振動性、耐衝撃性等が向上する。
特開2012−039719号公報
しかしながら、ステータコイルを構成する絶縁電線に平角エナメル線を使用した場合、ステータコアのスロットとステータコイルとの間、ステータコイルを構成する絶縁電線どうしの間にワニスが十分に含浸しないことがある。このため、スロットとステータコイルとの固定、および、ステータコイルを構成する絶縁電線どうしの固定が確実に行われず、耐振動性、耐衝撃性等が必ずしも十分に向上しないことがある。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、耐振動性、耐衝撃性等を向上させることができる絶縁電線を提供することを目的とする。また、本発明は、このような絶縁電線を有するものであって、耐振動性、耐衝撃性等が良好なコイルおよび回転電機を提供することを目的とする。
実施形態の絶縁電線は、平角導体と、前記平角導体の周囲に設けられる絶縁皮膜とを有する。前記絶縁皮膜は、前記平角導体を挟持するように配置される少なくとも1対の辺を有する。前記1対の辺は、それぞれ、両端部に1対の凸部を有するとともに、この1対の凸部の頂点間における最厚部の厚み(d)に対する最薄部の厚み(d)の比(d/d)が0.50〜0.90である。
本発明の絶縁電線は、特定形状の絶縁皮膜を有する。これにより、耐振動性、耐衝撃性等を向上させることができる。
実施形態の絶縁電線を示す断面図である。 図1に示す絶縁電線の積層状態を示す断面図である。 実施形態の他の絶縁電線を示す断面図である。 実施形態の回転電機を示す断面図である。 図4に示す回転電機のステータコアを示す平面図である。 図4に示す回転電機のステータコアおよびステータコイルを示す断面図である。 耐振動性の評価方法を説明する図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本発明は図面により何ら限定されるものではない。
<絶縁電線>
図1は、本発明の絶縁電線の一実施形態を示す断面図である。また、図2は、図1に示す絶縁電線の積層状態を示す断面図である。
図1に示されるように、絶縁電線10は、四角形状の断面を有する平角導体11と、この平角導体11の周囲に設けられた絶縁皮膜12とを備える。図2に示されるように、絶縁電線10は、例えば、積層されて使用され、回転電機のステータコイル等を形成する。以下、絶縁電線10が積層される方向(図中、上下方向)を積層方向と記して説明する。
[平角導体]
平角導体11は、四角形状の断面を有する。積層方向(図中、上下方向)の長さは0.7〜3.0mmが好ましく、これに垂直な方向(図中、左右方向)の長さは2.0〜7.0mmが好ましい。四隅の形状は、丸みを有してもよいし、有しなくてもよい。丸みを有する場合、その半径は0.4mm以下が好ましい。コイル占積率が高くなることから、四隅の形状は丸みを有しないことが好ましい。平角導体11は、銅、アルミニウム、または、これらの合金等からなる。機械的強度、導電率等の観点から、銅または銅合金からなることが好ましい。通常、平角導体11は伸線加工によって形成される。
[絶縁皮膜]
絶縁皮膜12は、四角形状の断面を有する平角導体11に合わせて四角形状の枠状の断面を有する。平角導体11を挟持するように配置される少なくとも1対の辺、例えば、積層方向(図中、上下方向)に配置される1対の辺は、それぞれ、両端部に凸部12aを有する。通常、凸部12aは、一方の側から他方の側に向けて厚さが徐々に厚くなり、再び厚さが徐々に薄くなるような弧状を有する。1つの辺の両端部に設けられる1対の凸部12aの間は、例えば、厚みがほぼ一定の平坦部12bとなっている。
上記した平角導体11を挟持するように配置される少なくとも1対の辺、例えば、積層方向(図中、上下方向)に配置される1対の辺は、それぞれ、両端部に設けられる1対の凸部12aの頂点間における最厚部の厚み(d)に対する最薄部の厚み(d)の比(d/d)が0.50〜0.90を満たしている。
上記構成を有する場合、具体的には、1対の凸部12aを有するとともに、比(d/d)が0.50〜0.90を満たす場合、例えば、図2に示されるように絶縁電線10どうしの間に空間部sが形成される。従って、このような空間部sにワニスが含浸されて硬化されることにより、絶縁電線10どうしが接着されて固定される。
特に、比(d/d)が0.50〜0.90である場合、絶縁電線10どうしが確実に固定されて、耐振動性、耐衝撃性等が向上するとともに、コイル占積率の低下が抑制されて、出力特性が良好になる。
すなわち、比(d/d)が0.90より大きい場合、空間部sが小さくなり、ワニスの含有量が少なくなるために、絶縁電線10どうしが確実に固定されないおそれがある。ワニスの含有量、絶縁電線10どうしの固定の観点から、比(d/d)は、0.85以下がより好ましい。
一方、比(d/d)が0.50より小さい場合、空間部sが大きくなるために、コイル占積率が低くなることから、出力特性が低下するおそれがある。コイル占積率、出力特性の観点から、比(d/d)は、0.7以上がより好ましい。
ここで、最厚部の厚み(d)、最薄部の厚み(d)は、1つの辺の両端部に配置される1対の凸部12aの頂点間において測定される。具体的には、一端に配置される凸部12aの頂点の位置から他端に配置される凸部12aの頂点の位置まで順次厚みが測定されることにより、最厚部の厚み(d)、最薄部の厚み(d)が求められる。
なお、1対の凸部12aは、同一の高さを有することが好ましいが、異なる高さを有するものでもよい。1対の凸部12aが異なる高さを有する場合、高い方の凸部12aについての測定値が最厚部の厚み(d)となる。
また、平坦部12bは、一端から他端まで同一の高さを有することが好ましいが、異なる高さを有するものでもよい。平坦部12bが異なる高さを有する場合、中央部が最も薄くなることが好ましい。すなわち、最薄部の厚み(d)は、中央付近のものであることが好ましい。
最薄部の厚み(d)は、60〜200μmが好ましい。最薄部の厚み(d)が60μm以上になると部分放電の開始電圧が高くなる。一方、最薄部の厚み(d)が200μm以下になると、絶縁皮膜12が薄くなり、小型化することができる。最薄部の厚み(d)は、60〜160μmがより好ましい。
絶縁皮膜12においては、積層方向に垂直な方向に配置される1対の辺についても、それぞれ、両端部に1対の凸部12aを有するとともに、最厚部の厚み(d)に対する最薄部の厚み(d)の比(d/d)が0.50〜0.90であることが好ましい。すなわち、絶縁皮膜12においては、4つの辺の全てについて、それぞれ、両端部に1対の凸部12aを有するとともに、最厚部の厚み(d)に対する最薄部の厚み(d)の比(d/d)が0.50〜0.90であることが好ましい。
このようなものによれば、積層方向については絶縁電線10どうしが確実に固定されるとともに、積層方向に垂直な方向については絶縁電線10と他の部材とが確実に固定される。他の部材としては、例えば、回転電機のステータコアに設けられるスロットが挙げられる。
絶縁皮膜12は、ポリイミドからなることが好ましい。ポリイミドは、一般に、油類に対する耐性を有する。油類として、例えば、絶縁油、機械油、エンジンオイル、トランスミッションオイル等が挙げられる。絶縁皮膜12にポリイミドを使用することにより、自動車の回転電機に好適なものとなる。
ポリイミドとしては、特に、以下に示す第1のポリイミドまたは第2のポリイミドが好ましい。第1のポリイミド、第2のポリイミドは、いずれを使用してもよいが、密着性等の観点から、第2のポリイミドを使用することが好ましい。
(第1のポリイミド)
第1のポリイミドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)50〜90モル%、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)5〜20モル%、および無水ピロメリット酸(PMDA)5〜40モル%からなる酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)を含むジアミン成分とを反応させて得られる。このような組成によれば、優れた密着性を得ることができる。
酸成分は、密着性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物60〜70モル%、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物10〜15モル%、無水ピロメリット酸25〜30モル%を含むことが好ましい。
ジアミン成分は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル以外の成分を併用することができる。このようなものとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等の芳香族ジアミン
が挙げられる。
ジアミン成分は、密着性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。ジアミン成分は、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみからなることが好ましい。
酸成分とジアミン成分とを反応させる溶剤としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)のような非プロトン系極性溶剤、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系溶剤等が挙げられる。
酸成分とジアミン成分とを反応させる際には、アミン類、イミダゾール類、イミダゾリン類等の反応触媒を使用してもよい。反応触媒は樹脂ワニスの安定性を阻害しないものが好ましい。
(第2のポリイミド)
第2のポリイミドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)5〜70モル%および無水ピロメリット酸(PMDA)30〜95モル%からなる酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)を含むジアミン成分とを反応させて得られる。このような組成によれば、優れた密着性を得ることができる。
なお、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が多く含有すると、イミド基率が低下するため、酸成分における割合が高くなると絶縁皮膜12を形成するための皮膜用ワニスの粘度が低くなりやすく、比(d/d)が小さくなりやすい。比(d/d)の調整の観点から、酸成分は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20〜70モル%、無水ピロメリット酸30〜80モル%を含むことが好ましく、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物55〜65モル%、無水ピロメリット酸35〜45モル%を含むことがより好ましい。
ジアミン成分は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル以外の成分を併用することができる。このようなものとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
ジアミン成分は、密着性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。ジアミン成分は、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみからなることが好ましい。
酸成分とジアミン成分とを反応させる溶剤としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)のような非プロトン系極性溶剤、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系溶剤等が挙げられる。
酸成分とジアミン成分とを反応させる際には、アミン類、イミダゾール類、イミダゾリン類等の反応触媒を使用してもよい。反応触媒は樹脂ワニスの安定性を阻害しないものが好ましい。
第1のポリイミド、第2のポリイミドは、密着性向上剤を含有することができる。密着性向上剤としては、例えば、チアジアゾール、チアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、チオフェノール、チオフォン、チオール、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ブチル化メラミン、ヘテロ環状メルカプタン等が挙げられる。なお、使用中の熱劣化による密着性の低下を抑制する観点からは、密着性向上剤を含有しないことが好ましい。
絶縁皮膜12は、上記したようなポリイミドを形成することができる皮膜用ワニスを平角導体11に塗布して焼き付けることにより形成される。塗布方法としては、皮膜用ワニスに平角導体11を浸漬する方法が好ましい。
この際、皮膜用ワニスの粘度を調整することにより、凸部12aを形成することができるとともに、その高さを調整することができる。すなわち、皮膜用ワニスの粘度を調整することにより、比(d/d)を調整することができる。例えば、粘度が低くなると、凸部12aが高くなり、比(d/d)が小さくなる。一方、粘度が高くなると、凸部12aが低くなり、比(d/d)が大きくなる。
比(d/d)を所定の範囲内にするために、皮膜用ワニスの粘度は、1500mPa・s以上が好ましく、2000mPa・s以上がより好ましく、3000mPa・s以上がさらに好ましい。また、10000mPa・s以下が好ましく、9000mPa・s以下がより好ましく、8000mPa・s以下がさらに好ましい。
なお、粘度は、B型回転粘度計を用いて温度30℃で測定される。また、粘度(Pa・s)は,次の式によって算出される。
粘度(Pa・s) =l・k・A/1000
A:装置の種類による係数(B形は2)
k:回転数及びスピンドルの組合せに基づく係数(単位:Pa・s/1000)
l:2回の測定の指針の指示値の平均
なお、絶縁皮膜12としては、ポリイミドとポリアミドイミドとが積層されたものでもよい。このようなものとして、例えば、平角導体11から順に、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドが順に積層されたものが挙げられる。
ポリアミドイミドの使用により、機械的特性が向上する。また、ポリアミドイミドを1対のポリイミドにより挟持することにより、オイル等によるポリアミドイミドの劣化も抑制することができる。ポリアミドイミドとしては、以下に示すものを使用することができる。また、ポリイミドとしては、それぞれ、既に説明したようなポリイミド、具体的には、第1のポリイミド、第2のポリイミドを使用することができる。
(ポリアミドイミド)
ポリアミドイミドとしては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)およびダイマー酸ジイソシアネート(DDI)を含むイソシアネート成分と、酸成分とを反応させて得られるものが好ましい。
イソシアネート成分として、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびダイマー酸ジイソシアネートを使用することにより、可とう性が良好になる。イソシアネート成分としては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびダイマー酸ジイソシアネートに加えて、これら以外の成分を併用することができる。
2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート以外の成分としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、3,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートの他、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、ジアニシジジイソシアネート、これらの異性体等が挙げられる。また、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、トリフェニルメタントリイソシアネート等の多官能イソシアネート、ポリメリックイソシアネート、あるいはトリレンジイソシアネート等の多量体等が挙げられる。
イソシアネート成分は、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびダイマー酸ジイソシアネートを合計して10〜70モル%含有することが好ましく、30〜60モル%含有することがより好ましい。
酸成分としては、トリメリット酸無水物(TMA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、オキシジフタル酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物およびその異性体、ブタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物類、トリメシン酸、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート(CIC酸)等のトリカルボン酸およびその異性体類等が挙げられる。これらのなかでも、安価で安全性にも優れるトリメリット酸無水物(TMA)が好ましい。
イソシアネート成分と酸成分との他にポリカルボン酸を加えてもよい。ポリカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類、トリメリット酸、へミメリット酸等の芳香族トリカルボン酸類、ダイマー酸等の脂肪族ポリカルボン酸類等が挙げられる。
イソシアネート成分と酸成分とを反応させる溶剤としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)のような非プロトン系極性溶剤、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系溶剤等が挙げられる。
イソシアネート成分と酸成分とを反応させる際には、アミン類、イミダゾール類、イミダゾリン類等の反応触媒を使用してもよい。反応触媒は安定性を阻害しないものが好ましい。
以上、絶縁電線10について説明したが、両端部に凸部12aが設けられるとともに、比(d/d)が0.50〜0.90を満たす少なくとも1対の辺としては、必ずしも積層方向におけるものに限られず、例えば、積層方向に垂直な方向におけるものでもよい。
また、図3に示されるように、平角導体11は、必ずしも正方形に近い断面を有する必要はなく、長方形状の断面を有するものでもよく、絶縁皮膜12も、必ずしも正方形に近い枠状の断面を有する必要はなく、長方形状の枠状の断面を有するものでもよい。また、1対の凸部12aの間は、必ずしも厚みがほぼ一定の平坦部12bである必要はなく、中央部の厚みが最も薄くなるような凹部12cでもよい。
<回転電機>
図4は、絶縁電線10を使用した回転電機の一実施形態を示す断面図である。図5は、図4に示される回転電機のステータコアを示す平面図である。図6は、図4に示される回転電機のステータコアおよびステータコイルの断面図である。なお、図6においては、図中左右方向が周方向であり、図中上下方向がステータコアの内外方向であり、図中上側がステータコアの内側、図中下側がステータコアの外側となる。
図4に示されるように、回転電機20は、ケース21の中央付近に出力軸であるロータ軸22が保持されている。ロータ軸22には、回転子であるロータ23が固定されている。ロータ23の周囲には、固定子であるステータ24が配置されている。
ロータ23は、例えば、電磁鋼板が積層されたロータコアと、このロータコアに設けられた複数の永久磁石とから構成されている。ロータ23は、ステータ24から受ける回転磁界により回転エネルギーを発生させる。
ステータ24は、例えば、電磁鋼板が積層されたステータコア25と、このステータコア25に設けられたステータコイル26とを有する。図5に示されるように、ステータコア25は、全体として円環状を有する。ステータコア25の内側には、周方向に複数のティース25aが設けられている。そして、これらのティース25aの間に空間部であるスロット25bが設けられている。
図6に示されるように、ステータコイル26は一部がスロット25bに収容されるようにして設けられている。ステータコイル26は、例えば、スロット25bの底部から絶縁電線10が順次積層されるようにして構成されている。ステータ24には、ワニス処理が行われることにより、スロット25bとステータコイル26との間にワニス27が含浸されて硬化されるとともに、ステータコイル26を構成する絶縁電線10どうしの間の空間部sにワニス27が含浸されて硬化されている。
ワニス27により、スロット25bとステータコイル26とが固定されるとともに、ステータコイル26を構成する絶縁電線10どうしが固定される。これにより、耐振動性、耐衝撃性が向上する。また、大気中の水分、塵、ほこり、ガス、その他の有害な物質の浸入が抑制される。さらに、金属部分の腐食が抑制される。 このようなワニス27としては、各種の合成樹脂を使用することができる。
既に説明したように、絶縁電線10は、平角導体11と、この平角導体11の周囲に設けられた絶縁皮膜12とを備える。また、絶縁皮膜12は、平角導体11を挟持するように配置される少なくとも1対の辺を有する。この1対の辺は、それぞれ、両端部に1対の凸部12aを有するとともに、この1対の凸部の頂点間における比(d/d)が0.50〜0.90である。このような1対の辺としては、例えば、絶縁電線10の積層方向(例えば、図中、上下方向)に配置される1対の辺が挙げられる。
回転電機20によれば、絶縁電線10どうしの間に形成された空間部sにワニス27が含浸されて硬化されることにより、絶縁電線10どうしが接着されて固定される。特に、比(d/d)が0.50〜0.90である場合、空間部sの大きさが最適、すなわちワニス27の含有量が最適となり、絶縁電線10どうしが確実に接着されて固定される。これにより、回転電機20の耐振動性、耐衝撃性等が向上する。また、コイル占積率が維持されることから出力特性も良好になる。
回転電機20は、耐振動性、耐衝撃性等に優れることから、車両、特に、自動車に使用されることが好ましい。自動車として、ハイブリッド自動車、電気自動車が挙げられる。回転電機20は、これらの自動車における発電機および電動機のいずれに使用されてもよいが、駆動用モータとして使用されることが好ましい。
回転電機20、特に、ステータ24は、以下のように製造することができる。まず、ステータコア25のスロット25bに絶縁電線10からなるステータコイル26を装着してコイル装着体を製造する。その後、コイル装着体に対してワニス処理を行う。
ワニス処理は、以下のようにして行うことができる。まず、コイル装着体を中心軸が水平となるように配置する。そして、コイル装着体を中心軸の周りに回転させながら、コイル装着体の内側に含浸用ワニスであるワニス27を供給する。これにより、重力と遠心力とにより、スロット25bとステータコイル26との間にワニス27が含浸されるとともに、ステータコイル26を構成する絶縁電線10どうしの間の空間部sにワニス27が含浸される。含浸後、加熱によりワニスを硬化させる。加熱は、ステータコイル26に通電してもよいし、加熱炉にコイル装着体を収容してもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
[皮膜用ワニス]
皮膜用ワニスとしてのポリイミド樹脂ワニスを以下のようにして製造した。なお、皮膜用ワニスは、絶縁電線における絶縁皮膜の形成に使用されるものである。まず、攪拌機、窒素流入管および加熱冷却装置を備えたフラスコ内に、酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)0.5モル、無水ピロメリット酸(PMDA)0.5モル、ジアミン成分として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)1.02モルを投入した。その後、必要に応じて、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン、増粘剤等を投入して、窒素雰囲気下で2時間反応させた。これにより、皮膜用ワニスとしてのポリイミド樹脂ワニスを製造した。
なお、皮膜用ワニスは、表1に示されるように粘度が異なる複数の種類を製造した。粘度は、溶媒、増粘剤等の添加量により調整した。また、粘度は、B型回転粘度計により30℃で測定した。
[実施例1〜3]
絶縁電線として、図1に示されるように、平角導体上に絶縁皮膜が形成されたものであって、絶縁皮膜の各辺の両端部に凸部を有するものを製造した。すなわち、絶縁皮膜は、4つの辺の全ての両端部に凸部を有するものである。
平角導体は、銅からなり、四角形状の断面を有する。また、積層方向(図中、上下方向)の長さは1.8mmであり、これに垂直な方向(図中、左右方向)の長さは2.6mmである。
絶縁皮膜は、積層方向に配置される1対の辺が、それぞれ、表1に示すような比(d/d)を有する。なお、積層方向に垂直な方向の1対の辺についても、それぞれ、表1に示すような比(d/d)とほぼ同様の比(d/d)を有する。
絶縁電線は、皮膜用ワニスに平角導体を浸漬させて塗布した後、この平角導体に塗布された皮膜用ワニスを焼き付けて製造した。また、比(d/d)は、皮膜用ワニスの粘度により調整した。
[比較例1]
比(d/d)を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。なお、比(d/d)は、皮膜用ワニスの粘度により調整した。
[比較例2]
平角導体上に平坦状の絶縁皮膜を有する絶縁電線を製造した。すなわち、絶縁皮膜は、凸部を有しないものとした。なお、平坦状の絶縁皮膜については、最厚部および最薄部が存在しないが、便宜上、表1においては最厚部の厚み(d)と最薄部の厚み(d)とが等しいとして比(d/d)を1.0とした。なお、平坦状の絶縁皮膜は、皮膜用ワニスの粘度を調整して形成した。
次に、実施例1〜3および比較例1〜2の絶縁電線を使用して回転電機のステータを製造した。具体的には、まず、ステータコアのスロットに実施例1〜3または比較例1〜2の絶縁電線からなるステータコイルを装着してコイル装着体を製造した。この際、図6に示されるように、スロットの底部から絶縁電線が順次積層されるように配置した。
その後、コイル装着体にワニス処理を行った。まず、中心軸が水平となるようにコイル装着体を配置した。そして、コイル装着体を中心軸の周りに回転させながらその内側に含浸用ワニスを供給し、重力と遠心力とにより、スロットとステータコイルとの間に含浸用ワニスを含浸させるとともに、ステータコイルを構成する絶縁電線どうしの間に含浸用ワニスを含浸させた。この際、含浸用ワニスとして、ポリイミド樹脂ワニスを使用した。含浸後、加熱によりワニスを硬化させた。
このようにして製造されたステータについて、以下の評価を行った。
(耐振動性)
耐振動性を以下のように評価した。まず、ステータに対して、冷熱サイクルおよび振動を印加して耐久試験を行った。耐久試験後、ステータコイルのうちステータコアのスロットから突出している部分を切断して除去した。
このようなステータコイルの突出部分が切断および除去されたステータについて、図7に示すように、ステータコア25のスロット25bに収容されているステータコイル26に対して、軸方向の外側より押出部材31を押し当てるようにして荷重を印加して押出荷重を計測した。そして、このときの押出荷重の最大値を固定強度とした。絶縁皮膜に凸部を有しない比較例2の固定強度を基準「b」とし、表中、固定強度が向上したものを耐振動性が良好であるとして「a」と示した。
(コイル占積率)
コイル占積率として、(スロット内の平角導体の断面積)/(スロットの断面積)×100[%]を求めた。なお、コイル占積率が50%以上になると、回転電機の出力特性が良好になる。
(総合評価)
総合評価として、耐振動性の評価が「a」であり、かつ、コイル占積率が50%以上であるものを信頼性かつ出力特性が良好であるとして「A」で示し、上記条件を満たさないものを信頼性または出力特性が不十分であるとして「B」で示した。
Figure 2018023205
実施例1〜3の絶縁電線のように比(d/d)が0.50〜0.90である場合、耐振動性およびコイル占積率が良好なものを製造することができる。一方、比較例2の絶縁電線のように比(d/d)が0.90を超える場合、十分な耐振動性を得ることができない。また、比較例1の絶縁電線のように比(d/d)が0.50未満である場合、コイル占積率が低くなるために出力特性が不十分となる。
10…絶縁電線、11…平角導体、12…絶縁皮膜、12a…凸部、12b…平坦部、12c…凹部、20…回転電機、21…ケース、22…ロータ軸、23…ロータ、24…ステータ、25…ステータコア、25a…ティース、25b…スロット、26…ステータコイル、27…ワニス、31…押出部材、s…空間部

Claims (9)

  1. 平角導体と、前記平角導体の周囲に設けられる絶縁皮膜とを有し、
    前記絶縁皮膜は、前記平角導体を挟持するように配置される少なくとも1対の辺を有し、
    前記1対の辺は、それぞれ、両端部に1対の凸部を有するとともに、前記1対の凸部の頂点間における最厚部の厚み(d)に対する最薄部の厚み(d)の比(d/d)が0.50〜0.90であることを特徴とする絶縁電線。
  2. 前記絶縁皮膜は、前記平角導体を囲むように配置される4つの辺を有し、
    前記4つの辺は、それぞれ、両端部に1対の凸部を有するとともに、前記1対の凸部の頂点間における最厚部の厚み(d)に対する最薄部の厚み(d)の比(d/d)が0.50〜0.90であることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
  3. 前記絶縁皮膜は、ビフェニルテトラカルボン酸無水物単位5〜70モル%およびピロメリット酸無水物単位30〜95モル%からなる酸成分と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリイミドからなることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁電線。
  4. 前記絶縁皮膜は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物5〜70モル%および無水ピロメリット酸30〜95モル%からなる酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるジアミン成分とを反応させて得られるポリイミドからなることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁電線。
  5. 前記絶縁皮膜は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物55〜65モル%および無水ピロメリット酸35〜45モル%からなる酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるジアミン成分とを反応させて得られるポリイミドからなることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁電線。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項記載の絶縁電線を有することを特徴とするコイル。
  7. 請求項1乃至5のいずれか1項記載の絶縁電線を有することを特徴とする回転電機。
  8. 前記回転電機は、ロータ軸に取り付けられるロータと、前記ロータの周囲に配置されるステータとを有し、
    前記ステータは、周方向に複数のスロットを有するステータコアと、前記スロット内に少なくとも一部が配置されるステータコイルと、前記スロット内に含浸されるワニスとを有し、
    前記ステータコイルは、請求項1乃至5のいずれか1項記載の絶縁電線からなり、前記絶縁電線どうしの間に前記凸部により形成される空間部を有するとともに、前記空間部に前記ワニスを有することを特徴とする請求項7記載の回転電機。
  9. 前記回転電機は、ハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用モータであることを特徴とする請求項8記載の回転電機。
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