以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の識別体の構成を実現する際の根拠となる作用について説明する。
図1は、本発明の識別体の基礎となる構成の一例を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。
本構成例は図1に示すように、ベース基材10の表面にアンテナ領域21が設けられ、このアンテナ領域21に導電性のアンテナ20が積層され、ベース基材10の裏面にアンテナ20と対向してグランドパターン30が積層され、それにより、アンテナ20とグランドパターン30とがベース基材10を介して対向配置されて構成されたIDタグ1である。
アンテナ20は、長方形の形状であり、グランドパターン30と対向することで、アンテナ20の形状に応じた周波数にて共振ピークを発現する。なお、グランドパターン30に対向した場合に共振ピークが発現するためには、アンテナ20単体、すなわち、アンテナ20がグランドパターン30に対向していない状態におけるQ値が30以下、好ましくは20以下であるか、あるいは、アンテナ単体では共振ピークが発現しないものである必要がある。これは、アンテナ単体のQ値が30を超えるものにおいては、グランドパターンと対向した場合、共振ピークが発現しなくなる一方、アンテナ単体のQ値が30以下のものにおいては、グランドパターンと対向した場合、Q値が30以上となる鋭い共振ピークが発現するためである。なお、Q値とは、共振ピークでの周波数をω0とし、その共振ピークよりも低周波側にて振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をω1とし、共振ピークよりも高周波側にて振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をω2とした場合、Q=ω0/(ω2−ω1)で表される値である。
グランドパターン30は、アンテナ20よりも大きく、平面視にてアンテナ20を覆う形状を有している。
ベース基材10は、本願発明における絶縁層となるものであって、200〜300μm程度の厚みを有する絶縁性材料からなる。絶縁性材料としては、樹脂フィルム等が考えられるが、誘電正接が小さなものが好ましい。なお、絶縁層として、ベース基材10を用いずに、絶縁性樹脂膜を塗布することで構成したものであってもよい。
上記のように構成されたIDタグ1においては、アンテナ20が、グランドパターン30と対向することでアンテナ20の形状に応じた周波数にて共振ピークを発現するため、電磁波を照射し、その反射波において、アンテナ20の形状に応じた周波数の近傍にて共振ピークが検出されるかどうかによって、IDタグ1に付与されたIDを認識することができる。
図2は、図1に示したIDタグ1においてグランドパターン30の大きさを変えた場合の周波数特性の変化を示す図である。
図1に示したIDタグ1において、アンテナ20として、11.5mm×2mmの大きさのものを用い、ベース基材10として、40mm×40mmの大きさのPETからなるものを用い、グランドパターン30の大きさを変えて、IDタグ1からの反射波の反射強度を測定した。
グランドパターン30の大きさが40mm×40mmの場合は、図2中Aで示すように、7.5GHz近傍に共振ピークが発現し、また、グランドパターン30の大きさが30mm×30mmの場合も、図2中Bで示すように、7.5GHz近傍に共振ピークが発現し、また、グランドパターン30の大きさが20mm×20mmの場合も、図2中Cで示すように、7.5GHz近傍に共振ピークが発現し、また、グランドパターン30の大きさが15mm×15mmの場合も、図2中Dで示すように、7.5GHz近傍に共振ピークが発現している。これは、アンテナ20が同じものであることで共振ピークの周波数も同じものとなるためであるが、反射強度においては、グランドパターン30の大きさによって互いに異なるものとなっている。具体的には、グランドパターン30の大きさが40mm×40mmの場合の反射強度が最も大きく、次いで、グランドパターン30の大きさが30mm×30mmの場合の反射強度、グランドパターン30の大きさが20mm×20mmの場合の反射強度、グランドパターン30の大きさが15mm×15mmの場合の反射強度の順番に小さくなっている。本発明は、アンテナ20の大きさによる共振ピークの周波数の違いのみならず、この反射強度の違いによってもIDタグに付与された識別情報となるIDを認識できるようにするものである。
また、グランドパターン30の大きさが11.5mm×15mmの場合は、図2中Eで示すように、共振ピークの周波数がシフトして7.6GHz近傍に共振ピークが発現し、また、グランドパターン30の大きさが11.5mm×7.5mmの場合も、図2中Fで示すように、7.6GHz近傍に共振ピークが発現し、また、グランドパターン30の大きさが11.5mm×4mmの場合も、図2中Hで示すように、7.6GHz近傍に共振ピークが発現している。また、グランドパターン30の大きさが11.5mm×2mmの場合や、10mm×1mmの場合は、それぞれ図2中I,Jで示すように、反射波の波形が大きく変化してしまっている。これは、グランドパターン30のアンテナ20の長尺方向の長さがアンテナ20と同等もしくはそれよりも短くなった場合、同一のアンテナ20を用いた場合でも周波数特性が変化してしまうためである。
図3は、図1に示した識別体においてアンテナを2つ設けるとともに、2つのアンテナに対向するグランドパターンの形状を異ならせた構成の一例を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。図4は、図3に示したIDタグ101においてグランドパターン130aの大きさを変えた場合の周波数特性の変化を示す図である。
図3に示すように、ベース基材110が2つのアンテナ領域121a,121bに分割され、ベース基材110の一方の面のアンテナ領域121a,121bのそれぞれに、長さが互いに異なる2つのアンテナ120a,120bが積層されるとともに、ベース基材110の他方の面に、アンテナ120a,120bにそれぞれ対向してグランドパターン130a,130bが積層されてなるIDタグ101について、グランドパターン130bの大きさを一定とし、グランドパターン130aの大きさを変えて周波数特性を測定した。具体的には、グランドパターン130bの大きさを20mm×10mmに一定とし、グランドパターン130aの大きさを、幅を5mmに固定して、長さ、つまりアンテナ120aの長尺方向の長さを変えて周波数特性を測定した。
グランドパターン130aの大きさが20mm×10mmの場合、すなわち、ベース基材110の裏面の全面にグランドパターン130a,130bが積層されている場合は、図4中実線で示すように、7.2GHz近傍と、7.8GHz近傍に共振ピークが発現した。これは、アンテナ120aの形状が、グランドパターン130aと対向することで7.2GHz近傍に共振ピークが発現するものであり、アンテナ120bの形状が、グランドパターン130bと対向することで7.8GHz近傍に共振ピークが発現するものであるためである。
これに対して、グランドパターン130aの大きさを20mm×5mmとした場合は、図4中破線で示すように、アンテナ120aによる共振ピークの周波数は7.2GHz近傍で変化しないものの、反射強度が低下する。この際、アンテナ120bにおいては、共振ピークの周波数も反射強度もほぼ変化しない。
また、グランドパターン130aの大きさを17mm×5mmとした場合や、15mm×5mmとした場合は、それぞれ図4中一点鎖線や二点鎖線で示すように、アンテナ120aによる反射波の波形が大きく変化してしまっている。これは、グランドパターン130aのアンテナ120aの長尺方向の長さがアンテナ120aに対して十分大きなものではなくなることで、同一のアンテナ120aを用いた場合でも周波数特性が変化してしまうためである。ここで、図2に示した特性においては、グランドパターン30のアンテナ20の長尺方向の長さが15mmでも周波数特性が変化しなかったのに対して、本例では、グランドパターン130aのアンテナ120aの長尺方向の長さが17mmで周波数特性が変化しているが、これは、本例におけるグランドパターン130aの幅が、図2に示した例におけるグランドパターン30の幅よりも狭いためである。
図5は、図1に示した識別体においてアンテナを2つ設けるとともに、2つのアンテナに対向するグランドパターンの形状を異ならせた構成の他の例を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。図6は、図5に示したIDタグ201においてグランドパターン230a,230bの大きさを変えた場合の周波数特性の変化を示す図である。
図5に示すように、ベース基材210が2つのアンテナ領域221a,221bに分割され、ベース基材210の一方の面のアンテナ領域221a,221bのそれぞれに、長さが互いに異なる2つのアンテナ220a,220bが積層されるとともに、ベース基材210の他方の面に、アンテナ220a,220bにそれぞれ対向してグランドパターン230a,230bが積層されてなるIDタグ201について、グランドパターン230a,230bの大きさを変えて周波数特性を測定した。
グランドパターン230a,230bの大きさが20mm×10mmの場合、すなわち、ベース基材210の裏面の全面にグランドパターン230a,230bが積層されている場合は、図6中実線で示すように、7.2GHz近傍と、7.8GHz近傍に共振ピークが発現した。これは、アンテナ220aの形状が、グランドパターン230aと対向することで7.2GHz近傍に共振ピークが発現するものであり、アンテナ220bの形状が、グランドパターン230bと対向することで7.8GHz近傍に共振ピークが発現するものであるためである。
これに対して、グランドパターン230bの大きさを20mm×10mmとしたままで、グランドパターン230aの大きさを15mm×10mmとした場合は、図4中破線で示すように、アンテナ220a,220bによる共振ピークの周波数はそれぞれ7.2GHz、7.8GHz近傍で変化しないものの、アンテナ220bによる反射強度のみが低下する。
また、グランドパターン230aの大きさを20mm×10mmとしたままで、グランドパターン230bの大きさを15mm×10mmとした場合は、図4中一点鎖線で示すように、アンテナ220a,220bによる共振ピークの周波数はそれぞれ7.2GHz、7.8GHz近傍で変化しないものの、アンテナ220aによる反射強度のみが低下する。
図7は、図5に示したIDタグ201においてグランドパターン230aの有無による周波数特性の変化を示す図である。
図5に示したIDタグ201において、グランドパターン230a,230bの大きさが20mm×10mmの場合、すなわち、ベース基材210の裏面の全面にグランドパターン230a,230bが積層されている場合は、図7中実線で示すように、7.2GHz近傍と、7.8GHz近傍に共振ピークが発現した。これは、アンテナ220aの形状が、グランドパターン230aと対向することで7.2GHz近傍に共振ピークが発現するものであり、アンテナ220bの形状が、グランドパターン230bと対向することで7.8GHz近傍に共振ピークが発現するものであるためである。
これに対して、グランドパターン230bの大きさを20mm×10mmとしたままで、グランドパターン230aを削除した場合は、図7中破線で示すように、グランドパターン230aに対向していたアンテナ220aによる共振ピークが消滅する。また、アンテナ220bによる共振ピークの周波数は7.8GHz近傍であまり変化しないものの、反射強度が低下する。
上述したように、グランドパターンに対向することで、その形状に応じた周波数にて共振ピークが発現するアンテナを用い、対向するグランドパターンの有無によって反射波における共振ピークを発現させるあるいはさせないことと、グランドパターンの大きさによって反射波の反射強度の大きさを異ならせることとにより、多くのIDを認識することができるようになる。以下に、その適用例について説明する。
図8は、本発明の識別体の実施の一形態を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。
本形態における識別体は図8に示すように、図1に示したベース基材10と同様のベース基材310の表面に5つのアンテナ領域321a〜321eを有するIDタグ301である。
アンテナ領域321a〜321eは、互いに異なる周波数が割り当てられている。本形態においては、アンテナ領域321aには、7.0GHzの周波数が割り当てられており、アンテナ領域321bには、8.0GHzの周波数が割り当てられており、アンテナ領域321cには、9.0GHzの周波数が割り当てられており、アンテナ領域321dには、10.0GHzの周波数が割り当てられており、アンテナ領域321eには、11.0GHzの周波数が割り当てられている。
ベース基材210の裏面には、アンテナ領域221a〜221eのそれぞれに対向してグランドパターン230a〜230eが積層されている。グランドパターン230a〜230eは、互いに大きさが異なり、グランドパターン330bが最も大きく、次いで、グランドパターン330a、グランドパターン330e、グランドパターン330dの順番で小さくなっていき、グランドパターン330cはグランドパターン330aと同じ大きさとなっている。
アンテナ領域321aには、グランドパターン330aと対向することで、アンテナ領域321aに割り当てられた7.0GHz近傍にて共振ピークが発現するアンテナ320aが形成されている。アンテナ領域321bには、グランドパターン330bと対向することで、アンテナ領域321bに割り当てられた8.0GHz近傍にて共振ピークが発現するアンテナ320bが形成されている。アンテナ領域321cには、グランドパターン330cと対向することで、アンテナ領域321cに割り当てられた9.0GHz近傍にて共振ピークが発現するアンテナ320cが形成されている。アンテナ領域321dには、グランドパターン330dと対向することで、アンテナ領域321dに割り当てられた10.0GHz近傍にて共振ピークが発現するアンテナ320dが形成されている。アンテナ領域321eには、グランドパターン330eと対向することで、アンテナ領域321eに割り当てられた11.0GHz近傍にて共振ピークが発現するアンテナ320eが形成されている。これらアンテナ領域321a〜321eに形成されたアンテナ320a〜320eは、同一の幅を有し、その長手方向の長さが異なることにより、グランドパターン330a〜330eと対向することで互いに異なる周波数にて共振ピークが発現するものとなっている。また、アンテナ領域321a〜321eのうち、アンテナ領域321a,321b,321d,321eに形成されたアンテナ320a,320b,320d,320eは、その長手方向が互いに同一方向となるのに対して、アンテナ領域321cに形成されたアンテナ320cは、その長手方向がこれらに対して直交しており、基準アンテナとなるものである。このように、アンテナ領域321a,321b,321d,321eに形成されたアンテナ320a,320b,320d,320eとアンテナ領域321cに形成されたアンテナ320cとは、長手方向が直交することにより、偏波方向が互いに異なっている。
このように、アンテナ320a〜320eが対向することで共振ピークを発現させるグランドパターン330a〜330eの大きさが、互いに同一ではなく、アンテナ320a〜320eとグランドパターン330a〜330eとが対向してなる複数の領域毎に独立して設定されることで、複数の領域のうち少なくとも2つの領域においてグランドパターンの大きさが互いに異なっている。なお、グランドパターン330a〜330eは、互いに大きさが異なるものの、対向するアンテナ320a〜320eを平面視にて覆う形状となっている。
図9は、図8に示したIDタグ101に付与されたIDを認識するID認識システムの一例を示す図である。
本例におけるID認識システムは図9に示すように、図8に示したIDタグ301と、IDタグ301に付与されたIDを認識する読取装置40とから構成され、読取装置40は、アンテナ41a,41bと、電磁波放射部42と、反射波受信部43と、処理部44と、制御部47とを有する。
電磁波放射部42は、アンテナ領域321a〜321eに割り当てられた周波数を含む電磁波を、アンテナ41aを介して送信する。
反射波受信部43は、電磁波放射部42からアンテナ41aを介して送信された電磁波に対するIDタグ301からの反射波を、アンテナ41bを介して受信する。
処理部44は、反射強度検知部45と、ID認識部46とを有する。
反射強度検知部45は、反射波受信部43にて受信された反射波における反射強度を検知する。
ID認識部46は、反射強度検知部43にて検知された反射強度によってIDタグ301における共振ピークの周波数及びその反射強度を検出し、共振ピークの有無及びその反射強度によって、アンテナ領域321a〜321eに付与された個別IDを認識し、これを周波数の順序に並べることで、IDタグ301に付与されたIDを認識する。この際、アンテナ領域321cに形成されたアンテナ320cが、上述したように、アンテナ領域321a,321b,321d,321eに形成されたアンテナ320a,320b,320d,320eに対して偏波方向が異なっているためアンテナ320cを基準アンテナとして利用する。
制御部47は、電磁波放射部42における電磁波の放射、及び処理部44における各処理を制御する。
上記のように構成された読取装置40を用いて、IDタグ301に付与されたIDを認識する場合は、電磁波放射部42において、アンテナ領域321a〜321eに割り当てられた7.0GHz〜11.0GHzを含む周波数帯をスイープしながら当該周波数帯の電磁波を、IDタグ301に対してアンテナ41aを介して放射する。
すると、IDタグ301からの反射波が、受信アンテナ41bを介して反射波受信部43にて受信され、反射強度検知部45において、反射波受信部43にて受信された反射波における反射強度が検知される。図8に示したIDタグ301においては、上述したように、アンテナ領域321aに、7.0GHz近傍にて共振ピークが発現したアンテナ320aが形成され、アンテナ領域321bに、8.0GHz近傍にて共振ピークが発現したアンテナ320bが形成され、アンテナ領域321cに、9.0GHz近傍にて共振ピークが発現したアンテナ320cが形成され、アンテナ領域321dに、10.0GHz近傍にて共振ピークが発現したアンテナ320dが形成され、アンテナ領域321eに、11.0GHz近傍にて共振ピークが発現したアンテナ320eが形成されているため、反射波受信部43にて受信された反射波は、7.0GHz、8.0GHz、9.0GHz、10GHz及び11.0GHzのそれぞれにて共振ピークを有するものとなる。さらに、グランドパターン230a〜230eについては、グランドパターン330bが最も大きく、次いで、グランドパターン330a、グランドパターン330e、グランドパターン330dの順番で小さくなっていき、グランドパターン330cはグランドパターン330aと同じ大きさとなっているため、アンテナ320a〜320eによる反射強度が、アンテナ320bによるものが最も強く、次いで、アンテナ320a,320cによるもの、アンテナ320eによるもの、アンテナ320dによるものの順番で弱くなっていく。
そして、アンテナ領域321a〜321eに割り当てられた周波数が1GHzずつの等間隔であることから、ID認識部46において、1GHzの間隔で、共振ピークが検出された周波数については、その共振ピークにおける反射強度に応じて個別IDを“1”〜“4”のいずれかとし、共振ピークが検出されなかった周波数についての個別IDを“0”とし、これらを、例えば周波数の低い順序に並べることで、IDタグ301に付与されたIDが認識される。なお、個別IDは、共振ピークの反射強度に応じて設定されており、共振ピークの反射強度と個別IDとは、ID認識部46にて対応づけられている。図8に示したIDタグ301においては、上述したように、アンテナ320aによる7.0GHz、アンテナ320bによる8.0GHz、アンテナ320cによる9.0GHz、アンテナ320dによる10GHz及びアンテナ320eによる11.0GHzの全てにて共振ピークが検出され、アンテナ320a〜320eによる反射強度が、アンテナ320bによるものが最も強く、次いで、アンテナ320a,320cによるもの、アンテナ320eによるもの、アンテナ320dによるものの順番で弱くなっていくため、周波数の低い順序で、“2”,“1”,“2”,“4”,“3”が並べられてなるID“21243”が認識される。すなわち、グランドパターン330a〜330eの大きさは、それぞれ対向するアンテナ領域321a〜321eに付与された個別IDに応じた反射強度の共振ピークを発現させるために十分なものに設定されていることになる。なおこの際、9.0GHzの共振ピークは、偏波方向が他のアンテナとは異なる基準アンテナ320cによるものであるため、他の共振ピークとは区別することができる。そのため、アンテナ領域321cには必ずアンテナ320cを形成しておくことにより、アンテナ320cの共振ピークの反射強度に応じた個別IDが中央にくるように個別IDを並べることで、最も低い周波数が割り当てられたアンテナ領域321aや、最も高い周波数が割り当てられたアンテナ領域321eにアンテナ320a,320eが形成されていない場合や、反射強度検知部45にて検知された反射強度における共振ピークが若干ずれた場合でも、IDタグ301に付与されたIDを正確に認識することができる。なお、基準アンテナ320cによる共振ピークを他のアンテナのものと区別可能とするためには、反射波の波形を他のアンテナからの反射波とは異なるものとすれば、偏波方向を異ならせるものに限らない。
上述したように本形態においては、アンテナ320a〜320eが対向することで共振ピークを発現させるグランドパターン330a〜330eの大きさを、グランドパターン330a〜330e毎に独立して設定することで、これに対向するアンテナ320a〜320eのそれぞれついて、共振ピークにおける反射強度を異ならせることができ、共振ピークが検出できるかどうかのみならず、反射強度の違いによっても個別IDを表現することができ、それにより、その大きさを大きくすることなく、IDの数を増やすことができるようになる。
なお、図8示したIDタグ301においては、ベース基材310の裏面に、アンテナ領域321a〜321eのそれぞれに対向してグランドパターン330a〜330eが積層されているが、グランドパターン330a〜330eが繋がっていてもよい。
また、図8に示したIDタグ301においては、グランドパターン330a〜330eのそれぞれが、対向するアンテナ320a〜320eよりも大きく、平面視にてアンテナ320a〜320eを覆う形状を有しているが、平面視にて対向するアンテナの極わずかの領域を覆わないものであってもよく、それも併せて、平面視にてアンテナを覆う形状を有すると定義する。
また、図8に示したものにおいては、アンテナ領域321a〜321eのそれぞれに、周波数が割り当てられており、アンテナ領域321a〜321eに、グランドパターン330a〜330eと対向することで、アンテナ領域321a〜321eに割り当てられた周波数近傍にて共振ピークが発現するアンテナ320a〜320eが形成されているが、共振ピークを検出するための周波数の範囲と、アンテナ領域321a〜321eに形成されるアンテナの共振ピークの間隔が決まっていれば、アンテナ領域321a〜321eのそれぞれに周波数が割り当てられていなくても、共振ピークが検出されるかどうかと、共振ピークの反射強度とによって決まる個別IDを並べることで、IDタグに付与されたIDを認識することができる。
また、本形態においては、アンテナ領域321a〜321eにそれぞれ付与される個別IDを“0”〜“4”の5種類としたが、1つのアンテナ領域に付与される個別IDの種類数は、グランドパターンの大きさの違いの数によって設定することができる。グランドパターンの大きさが4種類あれば、個別IDは例えば“0”〜“4”の5種類となるし、グランドパターンの大きさが2種類であれば、個別IDは例えば“0”〜“2”の3種類となる。