JP2018021864A - 標的物質を検出又は定量する方法及びキット - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、酵素を必要とせず、かつ高感度に標的物質を検出又は定量する方法及びキットを提供することを目的とする。【解決手段】試料中の標的物質を検出する方法であって、(i)標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程、(ii)洗浄する工程、(iii)過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、(iv)色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び(v)呈色反応に基づいて標的物質の存在を判定する工程を含む、方法を提供する。【選択図】なし
Description
本発明は、標的物質を検出又は定量する方法及びキットに関する。
抗原と抗体の反応を利用した測定法である免疫測定法は、高価な設備を必要としないことから、様々な分野で用いられている。例えば、医学分野では疾患の診断に利用されたり、食品分野では野菜の残留農薬の測定に使用されたりしている。免疫測定法の代表的なものとして、酵素結合免疫吸着法(ELISA法)があり、インフルエンザウイルスの検出等に利用されている(特許文献1)。
本発明は、ELISA法に代わる、新たな免疫測定法を提供することを目的とする。より具体的には、酵素を必要とせず、かつ高感度に標的物質を検出又は定量する方法及びキットを提供することを目的とする。
本発明者らは、標的物質に対する抗体を金ナノ粒子(AuNPs)に結合させた複合体を用いることで、金ナノ粒子が有するペルオキシダーゼ様活性による過酸化水素(H202)下での色原性基質の呈色反応に基づき、高感度に標的物質を検出又は定量することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、試料中の標的物質を検出する方法であって、
(i)標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程、
(ii)標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
(iii)洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
(iv)複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
(v)試料中の呈色反応が標的物質を含まない陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む、方法を提供する。
金ナノ粒子はカーボンナノチューブ(CNT)及びグラフェン(Gr)から選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。
(i)標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程、
(ii)標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
(iii)洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
(iv)複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
(v)試料中の呈色反応が標的物質を含まない陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む、方法を提供する。
金ナノ粒子はカーボンナノチューブ(CNT)及びグラフェン(Gr)から選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。
本発明は、試料中の標的物質を定量する方法であって、
(i)標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程、
(ii)標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
(iii)洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
(iv)複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
(v)試料中の呈色反応の強度を、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む、方法も提供する。
金ナノ粒子はカーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。
(i)標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程、
(ii)標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
(iii)洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
(iv)複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
(v)試料中の呈色反応の強度を、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む、方法も提供する。
金ナノ粒子はカーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。
本発明は、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体、
過酸化水素水、及び
色原性基質
を含む、標的物質を検出又は定量するためのキットも提供する。
金ナノ粒子はカーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。
過酸化水素水、及び
色原性基質
を含む、標的物質を検出又は定量するためのキットも提供する。
金ナノ粒子はカーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。
本発明は、テトラクロリド金(III)酸、
標的物質に対する抗体を金ナノ粒子に結合させる試薬、
過酸化水素水、及び
色原性基質
を含む、標的物質を検出又は定量するためのキットも提供する。
標的物質を検出又は定量するためのキットは、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体をさらに含んでもよい。標的物質を検出又は定量するためのキットは、マルチウォール型カーボンナノチューブをさらに含んでもよい。
標的物質に対する抗体を金ナノ粒子に結合させる試薬、
過酸化水素水、及び
色原性基質
を含む、標的物質を検出又は定量するためのキットも提供する。
標的物質を検出又は定量するためのキットは、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体をさらに含んでもよい。標的物質を検出又は定量するためのキットは、マルチウォール型カーボンナノチューブをさらに含んでもよい。
本発明によれば、酵素を必要とせず、かつ高感度に標的物質を検出又は定量する方法及びキットを提供することができる。
本発明の試料中の標的物質を検出又は定量する方法は、酵素標識した抗体に代えて抗体と金ナノ粒子を含む複合体を用いる点を除いて、既知のELISA法と同様の手法を利用することができる。例えば、ELISA法の直接吸着法、サンドイッチ法及び競合法のいずれも利用可能であり、高感度の点からサンドイッチ法が好ましい。以下に、直接吸着法及びサンドイッチ法について具体的に説明する。
直接吸着法では、標的物質を固相に接触させて吸着させる。次に、固相のブロッキング処理を行う。次に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加して、固相に吸着させた標的物質に複合体を結合させる。次に標的物質に結合していない複合体を洗い流す。次に、過酸化水素及び色原性基質を添加する。次に、複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する。
標的物質を検出する方法では、標的物質を含まない陰性対照に対して同様の処理を行い、試料中の呈色反応が陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定することができる。陰性対照に対する処理及び陰性対照の呈色反応の強度の測定は、試料中の呈色反応の強度の測定と同時に行ってもよく、先に行ってもよく、後に行ってもよい。
標的物質を定量する方法では、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料に対して同様の処理を行い、試料中の呈色反応の強度を、複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量することができる。標準試料に対する処理及び標準試料の呈色反応の強度の測定は、試料中の呈色反応の強度の測定と同時に行ってもよく、先に行ってもよく、後に行ってもよい。
標的物質を検出する方法では、標的物質を含まない陰性対照に対して同様の処理を行い、試料中の呈色反応が陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定することができる。陰性対照に対する処理及び陰性対照の呈色反応の強度の測定は、試料中の呈色反応の強度の測定と同時に行ってもよく、先に行ってもよく、後に行ってもよい。
標的物質を定量する方法では、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料に対して同様の処理を行い、試料中の呈色反応の強度を、複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量することができる。標準試料に対する処理及び標準試料の呈色反応の強度の測定は、試料中の呈色反応の強度の測定と同時に行ってもよく、先に行ってもよく、後に行ってもよい。
すなわち、一実施形態に係る、試料中の標的物質を検出する方法は、
試料を固相に接触させて吸着させる工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応が標的物質を含まない陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む。
また、一実施形態に係る、試料中の標的物質を定量する方法は、
試料を固相に接触させて吸着させる工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応の強度を、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む。
試料を固相に接触させて吸着させる工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応が標的物質を含まない陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む。
また、一実施形態に係る、試料中の標的物質を定量する方法は、
試料を固相に接触させて吸着させる工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応の強度を、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む。
サンドイッチ法では、標的物質に対する抗体(捕獲抗体)を固相に吸着させる。捕獲抗体が認識するエピトープは、複合体における抗体が認識するエピトープとは異なる。次に固相のブロッキング処理を行う。ブロッキングした固相に、試料を添加する。次に、捕獲抗体と結合していない標的物質を洗浄する。次に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加して、捕獲抗体を介して固相に吸着させた標的物質に複合体を結合させる。その後の工程は、直接吸着法と同様である。
すなわち、一実施形態に係る、試料中の標的物質を検出する方法は、
標的物質に対する捕獲抗体が吸着した固相を準備する工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、試料を添加する工程、
捕獲抗体と結合していない標的物質を洗浄する工程、
固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応が標的物質を含まない陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む。
また、一実施形態に係る、試料中の標的物質を定量する方法は、
標的物質に対する捕獲抗体が吸着した固相を準備する工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、試料を添加する工程、
捕獲抗体と結合していない標的物質を洗浄する工程、
固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応の強度を、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む。
標的物質に対する捕獲抗体が吸着した固相を準備する工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、試料を添加する工程、
捕獲抗体と結合していない標的物質を洗浄する工程、
固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応が標的物質を含まない陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む。
また、一実施形態に係る、試料中の標的物質を定量する方法は、
標的物質に対する捕獲抗体が吸着した固相を準備する工程、
固相をブロッキングする工程、
ブロッキングした固相に、試料を添加する工程、
捕獲抗体と結合していない標的物質を洗浄する工程、
固相に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
試料中の呈色反応の強度を、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む。
(標的物質及び標的物質に対する抗体)
標的物質としては、特に限定されず、抗原となる物質であればよい。例えば、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、糖、化学物質、ホルモン、ウイルス等が挙げられる。抗体は、これらの抗原と特異的に結合するものを用いる。
標的物質に対する抗体とは、標的物質を認識する抗体のみならず、標的物質を認識する抗体(一次抗体)を認識する抗体(二次抗体)も意味する。標的物質に対する抗体を二次抗体として用いる場合には、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程の前に、標的物質を認識する一次抗体を試料に添加する工程を行う。一次抗体を試料に添加する工程に続けて、標的物質に結合していない一次抗体を洗浄する工程を行ってもよい。
検出又は定量対象である標的物質は、液体中に存在していてもよく、固体、粉末、流動体、気体等の試料中に存在していてもよい。本実施形態に係る、試料中の標的物質を検出又は定量する方法は、液体中で実施することが好ましい。このため、試料が液体以外である場合には、適切なバッファー等に試料を溶解又は懸濁し、液体にすることが好ましい。
例えば、ヒトにおけるウイルス等の感染の診断に利用する場合には、感染が疑われるヒトから採取した血液及び粘膜等を試料とし、試料中の標的物質であるウイルス等を検出又は定量する方法とすることができる。特異的な抗体を用いて診断される代表的なウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、及び肝炎ウイルス等が挙げられる。ウイルスが標的物質である場合、ウイルスの表面抗原に対する抗体を標的物質に対する抗体として利用し得る。既知のウイルスの表面抗原を利用することができ、例えば、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)、ノロウイルスのGenogroup IおよびGenogroup II等が挙げられる。
標的物質としては、特に限定されず、抗原となる物質であればよい。例えば、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、糖、化学物質、ホルモン、ウイルス等が挙げられる。抗体は、これらの抗原と特異的に結合するものを用いる。
標的物質に対する抗体とは、標的物質を認識する抗体のみならず、標的物質を認識する抗体(一次抗体)を認識する抗体(二次抗体)も意味する。標的物質に対する抗体を二次抗体として用いる場合には、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程の前に、標的物質を認識する一次抗体を試料に添加する工程を行う。一次抗体を試料に添加する工程に続けて、標的物質に結合していない一次抗体を洗浄する工程を行ってもよい。
検出又は定量対象である標的物質は、液体中に存在していてもよく、固体、粉末、流動体、気体等の試料中に存在していてもよい。本実施形態に係る、試料中の標的物質を検出又は定量する方法は、液体中で実施することが好ましい。このため、試料が液体以外である場合には、適切なバッファー等に試料を溶解又は懸濁し、液体にすることが好ましい。
例えば、ヒトにおけるウイルス等の感染の診断に利用する場合には、感染が疑われるヒトから採取した血液及び粘膜等を試料とし、試料中の標的物質であるウイルス等を検出又は定量する方法とすることができる。特異的な抗体を用いて診断される代表的なウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、及び肝炎ウイルス等が挙げられる。ウイルスが標的物質である場合、ウイルスの表面抗原に対する抗体を標的物質に対する抗体として利用し得る。既知のウイルスの表面抗原を利用することができ、例えば、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)、ノロウイルスのGenogroup IおよびGenogroup II等が挙げられる。
(金ナノ粒子)
金ナノ粒子は、ナノオーダーの粒径を有する金粒子を意味する。
金ナノ粒子の粒径の下限値は、特に限定されないが、1nm、5nm、10nm及び20nmであってよい。金ナノ粒子の粒径の上限値は、特に限定されないが、10nm、20nm、40nm、50nm、70nm及び100nmであってよい。金ナノ粒子の粒径が小さい程、検出感度が高くなる傾向がある。
金ナノ粒子は、例えば、テトラクロリド金(III)酸を還元剤で還元して調製することができる。還元剤として、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、タンニン酸、没食子酸、イソフラボン等が挙げられる。
金ナノ粒子は、ナノオーダーの粒径を有する金粒子を意味する。
金ナノ粒子の粒径の下限値は、特に限定されないが、1nm、5nm、10nm及び20nmであってよい。金ナノ粒子の粒径の上限値は、特に限定されないが、10nm、20nm、40nm、50nm、70nm及び100nmであってよい。金ナノ粒子の粒径が小さい程、検出感度が高くなる傾向がある。
金ナノ粒子は、例えば、テトラクロリド金(III)酸を還元剤で還元して調製することができる。還元剤として、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、タンニン酸、没食子酸、イソフラボン等が挙げられる。
(金ナノ粒子の帯電)
一実施形態において、金ナノ粒子は、帯電させて用いることができる。帯電させることで、金ナノ粒子のペルオキシダーゼ様活性を向上させることができる。帯電は正電荷でも負電荷でもよいが、金ナノ粒子を担体と結合させず単体で用いる場合には、正電荷が好ましい。カーボンナノチューブ又はグラフェンを用いる場合には、正電荷でも負電荷でもよい。
正電荷を有する金ナノ粒子を作成する方法は、例えば、システアミン等のチオール基及びアミノ基を有する化合物の存在下でテトラクロリド金(III)酸を還元する方法(Jv et al.,2010, Chem Commun 46, 8017-8019)が挙げられる。負電荷を有する金ナノ粒子を作成する方法は、例えば、8−メルカプトオクタン酸等のチオール基及びカルボキシ基を有する化合物の存在下でテトラクロリド金(III)酸を還元する方法が挙げられる。これらの方法等により、化学的に構造を変化させることにより金ナノ粒子を帯電させた場合、金ナノ粒子は正電荷又は負電荷を有したまま安定的に保存できる。
一実施形態において、金ナノ粒子は、帯電させて用いることができる。帯電させることで、金ナノ粒子のペルオキシダーゼ様活性を向上させることができる。帯電は正電荷でも負電荷でもよいが、金ナノ粒子を担体と結合させず単体で用いる場合には、正電荷が好ましい。カーボンナノチューブ又はグラフェンを用いる場合には、正電荷でも負電荷でもよい。
正電荷を有する金ナノ粒子を作成する方法は、例えば、システアミン等のチオール基及びアミノ基を有する化合物の存在下でテトラクロリド金(III)酸を還元する方法(Jv et al.,2010, Chem Commun 46, 8017-8019)が挙げられる。負電荷を有する金ナノ粒子を作成する方法は、例えば、8−メルカプトオクタン酸等のチオール基及びカルボキシ基を有する化合物の存在下でテトラクロリド金(III)酸を還元する方法が挙げられる。これらの方法等により、化学的に構造を変化させることにより金ナノ粒子を帯電させた場合、金ナノ粒子は正電荷又は負電荷を有したまま安定的に保存できる。
(抗体と金ナノ粒子を含む複合体)
標的物質に対する抗体を金ナノ粒子又は担体に結合している金ナノ粒子に結合させる方法は、例えば、金ナノ粒子の表面にアミノ基、カルボキシ基、チオール基等の官能基を導入し、抗体を結合することができる。反応に際し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)等の縮合剤、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等のカルボン酸の活性化試薬、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)等の架橋剤を用いてもよい。金ナノ粒子の表面に官能基を導入する方法としては、例えば、上述したようなアミノ基又はカルボキシ基を有するチオール化合物の存在下でテトラクロリド金(III)酸を還元する方法が挙げられる。使用する抗体の種類に応じて、カルボキシ基、アミノ基、チオール基等の官能基を適宜選択することができる。また、金ナノ粒子が正電荷を有する場合には、静電気的作用により抗体と結合させることもできる。
標的物質に対する抗体を金ナノ粒子又は担体に結合している金ナノ粒子に結合させる方法は、例えば、金ナノ粒子の表面にアミノ基、カルボキシ基、チオール基等の官能基を導入し、抗体を結合することができる。反応に際し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)等の縮合剤、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等のカルボン酸の活性化試薬、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)等の架橋剤を用いてもよい。金ナノ粒子の表面に官能基を導入する方法としては、例えば、上述したようなアミノ基又はカルボキシ基を有するチオール化合物の存在下でテトラクロリド金(III)酸を還元する方法が挙げられる。使用する抗体の種類に応じて、カルボキシ基、アミノ基、チオール基等の官能基を適宜選択することができる。また、金ナノ粒子が正電荷を有する場合には、静電気的作用により抗体と結合させることもできる。
(担体に結合した金ナノ粒子)
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体において、金ナノ粒子は担体と結合していてもよい。担体に結合した金ナノ粒子は、金ナノ粒子単体よりもペルオキシダーゼ様活性が向上し、より高感度に標的物質を検出又は定量することができる。金ナノ粒子に結合させる担体は、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。カーボンナノチューブとして、シングルウォール型カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、マルチウォール型カーボンナノチューブ等のいずれの種類のカーボンナノチューブを用いることができ、マルチウォール型カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体において、金ナノ粒子は担体と結合していてもよい。担体に結合した金ナノ粒子は、金ナノ粒子単体よりもペルオキシダーゼ様活性が向上し、より高感度に標的物質を検出又は定量することができる。金ナノ粒子に結合させる担体は、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。カーボンナノチューブとして、シングルウォール型カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、マルチウォール型カーボンナノチューブ等のいずれの種類のカーボンナノチューブを用いることができ、マルチウォール型カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
金ナノ粒子を担体に結合させる方法は特に限定されず、従来の方法(Ahmed etal., 2015, Biosens Bioelectron. 75, 181-187)によって金ナノ粒子を担体に結合させることもできるが、還元剤を用いてワンステップで行うこともできる。還元剤としては、例えばギ酸ナトリウム、L−リンゴ酸ナトリウム、及びトリエタノールアミン等を用いることができるが、ギ酸ナトリウムを用いることが好ましい。還元剤としてギ酸ナトリウムを使用すると、特殊な処理をすることなく、担体表面に金ナノ粒子を結合させることができる。すなわち、従来の金ナノ粒子−担体ハイブリッドを作成するために必要とされていた、担体の酸による前処理、安定化剤の添加等が不要である。
ギ酸ナトリウムを用いてワンステップで金ナノ粒子を担体に結合させる方法は、例えば、テトラクロリド金(III)酸と担体を混合する工程、及び得られる混合物にギ酸ナトリウムを添加する工程を含むことができる。添加するギ酸ナトリウムの濃度の下限値は特に限定されないが、例えば100mM、200mM、300mM、400mM及び500mMとすることができる。また、添加するギ酸ナトリウムの濃度の上限値は特に限定されないが、例えば500mM、600mM、700mM、800mM及び1Mとすることができる。
ギ酸ナトリウムを用いてワンステップで金ナノ粒子を担体に結合させる方法は、例えば、テトラクロリド金(III)酸と担体を混合する工程、及び得られる混合物にギ酸ナトリウムを添加する工程を含むことができる。添加するギ酸ナトリウムの濃度の下限値は特に限定されないが、例えば100mM、200mM、300mM、400mM及び500mMとすることができる。また、添加するギ酸ナトリウムの濃度の上限値は特に限定されないが、例えば500mM、600mM、700mM、800mM及び1Mとすることができる。
(色原性基質)
本発明の標的物質を検出又は定量において、色原性基質の酸化による呈色反応が利用される。色原性基質は、酸化されて呈色性となる色素であれば特に限定されない。色原性基質として、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノビス[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸]−ジアンモニウム塩(ABTS)、及びo−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)が挙げられ、高感度の点からTMBが好ましい。例えば、TMBは酸化されることにより青色を呈する。
本発明の標的物質を検出又は定量において、色原性基質の酸化による呈色反応が利用される。色原性基質は、酸化されて呈色性となる色素であれば特に限定されない。色原性基質として、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノビス[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸]−ジアンモニウム塩(ABTS)、及びo−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)が挙げられ、高感度の点からTMBが好ましい。例えば、TMBは酸化されることにより青色を呈する。
(標的物質又は捕獲抗体の固相への固定化)
標的物質又は捕獲抗体を固定化させる固相は、通常のELISA法に用いられている固相、例えば、ポリスチレン製、ポリエチレン製、及びポリプロピレン製等のプレート等が利用可能である。また、通常のイムノクロマト法に用いられている固相、例えば、ニトロセルロース膜等のメンブレンも利用可能である。標的物質又は捕獲抗体を固相に固定化させる方法は、常法により行うことができる。例えば、標的物質又は捕獲抗体を含む溶液を固相に添加し、所定時間インキュベートすることにより固相に標的物質又は捕獲抗体を吸着させる方法、及び標的物質又は捕獲抗体を含む溶液を固相に塗布し、乾燥することにより固相に標的物質又は捕獲抗体を固定化する方法が挙げられる。
標的物質又は捕獲抗体を固定化させる固相は、通常のELISA法に用いられている固相、例えば、ポリスチレン製、ポリエチレン製、及びポリプロピレン製等のプレート等が利用可能である。また、通常のイムノクロマト法に用いられている固相、例えば、ニトロセルロース膜等のメンブレンも利用可能である。標的物質又は捕獲抗体を固相に固定化させる方法は、常法により行うことができる。例えば、標的物質又は捕獲抗体を含む溶液を固相に添加し、所定時間インキュベートすることにより固相に標的物質又は捕獲抗体を吸着させる方法、及び標的物質又は捕獲抗体を含む溶液を固相に塗布し、乾燥することにより固相に標的物質又は捕獲抗体を固定化する方法が挙げられる。
(ブロッキング)
固相のブロッキング処理は、スキムミルク、アルブミン又は動物血清などを用いて、室温にて30分〜2時間又は4℃にて24時間の条件下で行うことができる。ブロッキング処理により、標的物質に対する抗体の固相への非特異的な結合を抑えることができる。
固相のブロッキング処理は、スキムミルク、アルブミン又は動物血清などを用いて、室温にて30分〜2時間又は4℃にて24時間の条件下で行うことができる。ブロッキング処理により、標的物質に対する抗体の固相への非特異的な結合を抑えることができる。
(インキュベーション)
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程の後、洗浄工程の前に、適宜インキュベーションを行ってよい。インキュベーションにより、試料中に標的物質が存在する場合には、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体と、標的物質が結合する。インキュベーションは、例えば、4〜37℃で30分〜24時間行うことができる。
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程の後、洗浄工程の前に、適宜インキュベーションを行ってよい。インキュベーションにより、試料中に標的物質が存在する場合には、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体と、標的物質が結合する。インキュベーションは、例えば、4〜37℃で30分〜24時間行うことができる。
(洗浄工程)
標的物質に結合していない複合体を洗浄することで、標的物質に結合していない複合体による呈色反応への影響を減少させ、測定工程におけるバックグラウンドの上昇を抑えることができる。洗浄工程に用いる洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)と非イオン性界面活性剤(ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルポリソルベート、又はポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルなど)を含むバッファーが挙げられる。また、洗浄は複数回行ってもよい。
標的物質に結合していない複合体を洗浄することで、標的物質に結合していない複合体による呈色反応への影響を減少させ、測定工程におけるバックグラウンドの上昇を抑えることができる。洗浄工程に用いる洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)と非イオン性界面活性剤(ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルポリソルベート、又はポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルなど)を含むバッファーが挙げられる。また、洗浄は複数回行ってもよい。
(呈色反応)
色原性基質の呈色反応は、例えば、室温にて5〜30分間反応させればよい。所定の反応時間経過後に反応停止液を添加して、反応を確実に停止させ、それにより再現性よく測定を行うこともできる。反応停止液は、塩酸、硫酸等の酸が挙げられる。反応停止液の添加により、色原性基質の色がさらに変化することもあり、その場合、変化後の呈色反応を測定する。例えば、TMBは酸化により青色を呈するが、反応停止液として硫酸を添加すると、黄色に変化する。この場合、黄色への呈色反応を測定する。
色原性基質の呈色反応は、例えば、室温にて5〜30分間反応させればよい。所定の反応時間経過後に反応停止液を添加して、反応を確実に停止させ、それにより再現性よく測定を行うこともできる。反応停止液は、塩酸、硫酸等の酸が挙げられる。反応停止液の添加により、色原性基質の色がさらに変化することもあり、その場合、変化後の呈色反応を測定する。例えば、TMBは酸化により青色を呈するが、反応停止液として硫酸を添加すると、黄色に変化する。この場合、黄色への呈色反応を測定する。
(判定工程)
本発明の試料中の標的物質を検出する方法において、試料中の呈色反応が陰性対象の呈色反応よりも強いか否かの判断は、肉眼で観察することにより行っても、機器を用いて行ってもよい。肉眼で観察する場合には、例えば、試料及び陰性対象の色を比較し、試料の色が陰性対象の色強度が強い場合に試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。また、例えば、標的物質が存在する試料及び陰性対象の色見本を予め準備し、陰性対象の色見本よりも標的物質が存在する試料の色見本に近い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。機器を用いる場合には、例えば、分光光度計等により吸光度を測定し、陰性対象の呈色反応との吸光度の値の差が一定以上の場合に、試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。また、例えば、陰性対象の吸光度に基づき予め設定しておいた吸光度以上の場合に、試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。
本発明の試料中の標的物質を検出する方法において、試料中の呈色反応が陰性対象の呈色反応よりも強いか否かの判断は、肉眼で観察することにより行っても、機器を用いて行ってもよい。肉眼で観察する場合には、例えば、試料及び陰性対象の色を比較し、試料の色が陰性対象の色強度が強い場合に試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。また、例えば、標的物質が存在する試料及び陰性対象の色見本を予め準備し、陰性対象の色見本よりも標的物質が存在する試料の色見本に近い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。機器を用いる場合には、例えば、分光光度計等により吸光度を測定し、陰性対象の呈色反応との吸光度の値の差が一定以上の場合に、試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。また、例えば、陰性対象の吸光度に基づき予め設定しておいた吸光度以上の場合に、試料中に標的物質が存在すると判定してもよい。
(定量工程)
本発明の試料中の標的物質を定量する方法において、複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する方法は、特に限定されず、肉眼で観察することにより行ってもよいが、分光光度計等の機器により吸光度を測定することによる方法が一般的である。
試料中の標的物質を定量は、複数の標準試料中の呈色反応の吸光度と比較することにより、試料中の標的物質の存在量を求めることにより行われる。例えば、異なる濃度の標的物質を有する複数の標準試料中の呈色反応の吸光度を測定し、予め検量線を作成しておき、測定した試料の呈色反応の吸光度をこの検量線にあてはめることにより、試料中の標的物質の濃度を求めることができる。
本発明の試料中の標的物質を定量する方法において、複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する方法は、特に限定されず、肉眼で観察することにより行ってもよいが、分光光度計等の機器により吸光度を測定することによる方法が一般的である。
試料中の標的物質を定量は、複数の標準試料中の呈色反応の吸光度と比較することにより、試料中の標的物質の存在量を求めることにより行われる。例えば、異なる濃度の標的物質を有する複数の標準試料中の呈色反応の吸光度を測定し、予め検量線を作成しておき、測定した試料の呈色反応の吸光度をこの検量線にあてはめることにより、試料中の標的物質の濃度を求めることができる。
一実施形態において、標的物質を検出又は定量するためのキットは、以下の要素を含む:
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体、
過酸化水素水、及び
色原性基質。
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体が既に用意されているため、使用者は自ら複合体を作製することなく、標的物質を検出又は定量することができるため便利である。金ナノ粒子は、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。キットは、ブロッキング剤、洗浄剤、反応停止剤等をさらに含んでいてもよい。直接吸着法用のキットは、標的物質を吸着させる固相をさらに含んでいてもよく、サンドイッチ法用のキットは、捕獲抗体を吸着させた固相をさらに含んでいてもよい。
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体、
過酸化水素水、及び
色原性基質。
標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体が既に用意されているため、使用者は自ら複合体を作製することなく、標的物質を検出又は定量することができるため便利である。金ナノ粒子は、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合していてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブに結合していてもよい。キットは、ブロッキング剤、洗浄剤、反応停止剤等をさらに含んでいてもよい。直接吸着法用のキットは、標的物質を吸着させる固相をさらに含んでいてもよく、サンドイッチ法用のキットは、捕獲抗体を吸着させた固相をさらに含んでいてもよい。
別の実施形態において、標的物質を検出又は定量するためのキットは、以下の要素を含む:
テトラクロリド金(III)酸、
標的物質に対する抗体を金ナノ粒子に結合させる試薬、
過酸化水素水、及び
色原性基質。
標的物質を検出又は定量する際に、使用者は、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を結合させて複合体を自ら作製する。この場合、標的物質に対する抗体を自由に選択することができるという利点がある。標的物質に対する抗体を金ナノ粒子に結合させる試薬には、還元剤、縮合剤、カルボン酸の活性化試薬、架橋剤及びアミノ基又はカルボキシ基を有するチオール化合物等が含まれる。キットは、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体をさらに含んでいてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブをさらに含んでいてもよい。使用者は、標的物質に対する抗体、金ナノ粒子及び担体を含む複合体を自ら作製する。キットは、ブロッキング剤、洗浄剤、反応停止剤等をさらに含んでいてもよい。直接吸着法用のキットは、標的物質を吸着させる固相をさらに含んでいてもよく、サンドイッチ法用のキットは、捕獲抗体を吸着させる固相をさらに含んでいてもよい。
テトラクロリド金(III)酸、
標的物質に対する抗体を金ナノ粒子に結合させる試薬、
過酸化水素水、及び
色原性基質。
標的物質を検出又は定量する際に、使用者は、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を結合させて複合体を自ら作製する。この場合、標的物質に対する抗体を自由に選択することができるという利点がある。標的物質に対する抗体を金ナノ粒子に結合させる試薬には、還元剤、縮合剤、カルボン酸の活性化試薬、架橋剤及びアミノ基又はカルボキシ基を有するチオール化合物等が含まれる。キットは、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体をさらに含んでいてもよく、マルチウォール型カーボンナノチューブをさらに含んでいてもよい。使用者は、標的物質に対する抗体、金ナノ粒子及び担体を含む複合体を自ら作製する。キットは、ブロッキング剤、洗浄剤、反応停止剤等をさらに含んでいてもよい。直接吸着法用のキットは、標的物質を吸着させる固相をさらに含んでいてもよく、サンドイッチ法用のキットは、捕獲抗体を吸着させる固相をさらに含んでいてもよい。
本発明の試料中の標的物質を検出又は定量する方法は、酵素標識した抗体に代えて抗体と金ナノ粒子を含む複合体を用いて、既知のイムノブロッティング法を利用することもできる。
イムノブロッティング法では、標的物質を電気泳動により分離する。次に、分離した標的物質を膜に転写する。次に、膜のブロッキング処理を行う。次に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加して、膜に転写させた標的物質に複合体を結合させる。次に、標的物質に結合していない複合体を洗い流す。次に、過酸化水素及び色原性基質を添加する。複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応により、膜に転写された標的物質周辺が呈色する。次に、標的物質周辺の呈色反応の強度を測定する。
標的物質を検出する方法では、標的物質を含まない陰性対照に対して同様の処理を行い、試料の呈色反応が陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定することができる。
標的物質を定量する方法では、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料に対して同様の処理を行い、試料の呈色反応の強度を、複数の標準試料の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量することができる。
イムノブロッティング法では、標的物質を電気泳動により分離する。次に、分離した標的物質を膜に転写する。次に、膜のブロッキング処理を行う。次に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加して、膜に転写させた標的物質に複合体を結合させる。次に、標的物質に結合していない複合体を洗い流す。次に、過酸化水素及び色原性基質を添加する。複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応により、膜に転写された標的物質周辺が呈色する。次に、標的物質周辺の呈色反応の強度を測定する。
標的物質を検出する方法では、標的物質を含まない陰性対照に対して同様の処理を行い、試料の呈色反応が陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定することができる。
標的物質を定量する方法では、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料に対して同様の処理を行い、試料の呈色反応の強度を、複数の標準試料の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量することができる。
すなわち、一実施形態に係る、試料中の標的物質を検出する方法は、
試料及び標的物質を含まない陰性対照を電気泳動により分離する工程、
分離した試料及び標的物質を含まない陰性対照を膜に転写する工程、
膜をブロッキングする工程、
ブロッキングした膜に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の膜に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を、試料及び陰性対照のそれぞれで測定する工程、及び
試料の呈色反応が陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む。
また、一実施形態に係る、試料中の標的物質を定量する方法は、
試料及び標的物質を含まない陰性対照を電気泳動により分離する工程、
分離した試料及び標的物質を含まない陰性対照を膜に転写する工程、
膜をブロッキングする工程、
ブロッキングした膜に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の膜に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を、試料及び標準試料のそれぞれで測定する工程、及び
試料の呈色反応の強度を、複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む。
試料及び標的物質を含まない陰性対照を電気泳動により分離する工程、
分離した試料及び標的物質を含まない陰性対照を膜に転写する工程、
膜をブロッキングする工程、
ブロッキングした膜に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の膜に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を、試料及び陰性対照のそれぞれで測定する工程、及び
試料の呈色反応が陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む。
また、一実施形態に係る、試料中の標的物質を定量する方法は、
試料及び標的物質を含まない陰性対照を電気泳動により分離する工程、
分離した試料及び標的物質を含まない陰性対照を膜に転写する工程、
膜をブロッキングする工程、
ブロッキングした膜に、標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を添加する工程、
標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
洗浄後の膜に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を、試料及び標準試料のそれぞれで測定する工程、及び
試料の呈色反応の強度を、複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む。
以下、実施例を用いて、本発明について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1 正電荷を有する金ナノ粒子を用いたインフルエンザウイルスの検出)
1.正電荷を有する金ナノ粒子((+)AuNPs)の合成
システアミン溶液(400μL,213mM,シグマ アルドリッチ社)をテトラクロリド金(III)酸・3水和物(HAuCl4・3H2O,40mL,1.42mM,Sigma−Aldrich社)に加えた。25℃で20分間撹拌した後、NaBH4溶液(10μL,10mM,和光純薬社)を加え、暗条件下において25℃で10分間激しく撹拌した。その後混合物をさらに15分間撹拌し、得られたワインレッド色の溶液を4℃で保存した。
1.正電荷を有する金ナノ粒子((+)AuNPs)の合成
システアミン溶液(400μL,213mM,シグマ アルドリッチ社)をテトラクロリド金(III)酸・3水和物(HAuCl4・3H2O,40mL,1.42mM,Sigma−Aldrich社)に加えた。25℃で20分間撹拌した後、NaBH4溶液(10μL,10mM,和光純薬社)を加え、暗条件下において25℃で10分間激しく撹拌した。その後混合物をさらに15分間撹拌し、得られたワインレッド色の溶液を4℃で保存した。
2.(+)AuNPsの特性評価
紫外可視光分光光度計(Infinite(登録商標)F500,Tecan社)を用いて、合成した(+)AuNPsのUV/vis吸収測定を行ったところ、(+)AuNPs溶液の吸光度は、526nmでピークが得られた。また、AuNPsの濃度をHaiss法(Haiss et al., 2007, Anal Chem 79: 4215-5221)により算出したところ、3.5×10−10Mであった。透過電子顕微鏡(TEM)像は、TEM JEM−2100F(JEOL社)を100kVで操作して生成した。透過電子顕微鏡像により、(+)AuNPsの平均粒子径が35nmであることが分かった。
紫外可視光分光光度計(Infinite(登録商標)F500,Tecan社)を用いて、合成した(+)AuNPsのUV/vis吸収測定を行ったところ、(+)AuNPs溶液の吸光度は、526nmでピークが得られた。また、AuNPsの濃度をHaiss法(Haiss et al., 2007, Anal Chem 79: 4215-5221)により算出したところ、3.5×10−10Mであった。透過電子顕微鏡(TEM)像は、TEM JEM−2100F(JEOL社)を100kVで操作して生成した。透過電子顕微鏡像により、(+)AuNPsの平均粒子径が35nmであることが分かった。
3.HA(H1N1)抗体結合(+)AuNPsの作製
合成した(+)AuNPs溶液を5,000rpmで30分間超遠心(Kubota6200,久保田商事(株))して、上清を分離した。その後、(+)AuNPsを超純水で分散させた。1mLの合成した(+)AuNPs溶液及び1mLのHA抗体(Ab66189,Abcam社,最終濃度5ngmL−1)を、30分間インキュベートし、4℃で24時間維持した。この段階で、静電気的相互作用によりAuNPsは抗体と結合していた。結合した(+)AuNPs及び抗体を、5,000rpmで30分間の遠心分離し、1mLの超純水に再分散させた。
合成した(+)AuNPs溶液を5,000rpmで30分間超遠心(Kubota6200,久保田商事(株))して、上清を分離した。その後、(+)AuNPsを超純水で分散させた。1mLの合成した(+)AuNPs溶液及び1mLのHA抗体(Ab66189,Abcam社,最終濃度5ngmL−1)を、30分間インキュベートし、4℃で24時間維持した。この段階で、静電気的相互作用によりAuNPsは抗体と結合していた。結合した(+)AuNPs及び抗体を、5,000rpmで30分間の遠心分離し、1mLの超純水に再分散させた。
抗体(HA Ab 66189)が(+)AuNPsに結合していることを金ナノビーズベースELISA試験により確認した。サンプルを100μlの2%BSA(Sigma−Aldrich社)を用いて25℃で2時間ブロッキングした。1ng/mLの抗マウスIgG−HRP抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を各サンプルに添加した。25℃で1時間インキュベートした後、サンプルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で三回洗浄した。HRPを100μLのTMB基質溶液(10μg/mL TMB,100mM NaOAc中の10%H2O2,pH6.0,Dojindo社)と25℃で5〜30分間反応させた。この段階では青色の溶液となった。100μLの10%H2SO4を加えて反応を停止させると、溶液の色は黄色となった。マイクロプレートリーダー(Model 680,Bio−Rad社)を用いてその溶液の450nmの吸光度を測定した。抗体と結合させた(+)AuNPsの方が、(+)AuNPs単体よりも約10倍高い吸光度がUVスペクトルにおいて観察されたことから、(+)AuNPsが抗体に結合していることが確認された。
抗体が(+)AuNPsに結合していることをゼータ電位分析により確認した。表面の電荷をZetasizer(Nano−ZS,Malvern社)を用いて測定した。抗体と結合させた(+)AuNPsの表面のゼータ電位(mV)(+29.3)が、(+)AuNPs単体の表面のゼータ電位(+34.5)から変化したことからも、(+)AuNPsが抗体に結合していることが示された。
以下、HA(H1N1)抗体に結合した(+)AuNPsを、「(+)AuNPs−H1N1抗体複合体」とも表す。
以下、HA(H1N1)抗体に結合した(+)AuNPsを、「(+)AuNPs−H1N1抗体複合体」とも表す。
4.(+)AuNPs−H1N1抗体複合体の活性の確認
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体の含まれる溶液の色は、TMB−H2O2溶液を添加した数秒後に濃い青色に呈色した。一方、H1N1抗体のみが含まれる溶液では、TMB−H2O2溶液を添加してもすぐに色は変化せず、最終的に非常に薄い青色となった。このことから、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体のペルオキシダーゼ様活性が確認された。
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体の含まれる溶液の色は、TMB−H2O2溶液を添加した数秒後に濃い青色に呈色した。一方、H1N1抗体のみが含まれる溶液では、TMB−H2O2溶液を添加してもすぐに色は変化せず、最終的に非常に薄い青色となった。このことから、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体のペルオキシダーゼ様活性が確認された。
5.抗原−抗体反応によるインフルエンザウイルスの検出
ウイルスストック溶液(インフルエンザウイルスA,New Caledonia/20/1999,H1N1型,Sino Biological社)を、センシング実験のためにpH7.5のPBSで段階的に希釈した。100μLのウイルス溶液を96ウェルマイクロタイタープレート(ポリスチレン製,平底,非滅菌,Beckton Dickinson Labware社)の各ウェルに添加し、4℃にてオーバーナイトでインキュベートして、ウイルスをプレートに吸着させた。その後プレートをpH7.5のPBSでリンスし、100μLの2%スキムミルクを用いて25℃で2時間ブロッキングした。1ng/mLの抗体(HA Ab 66189)に結合した(+)AuNPsを、血清で吸着済みのウェルに添加し、プレートを25℃で1時間インキュベートした。100μLのBSA(1ng/mL)をネガティブコントロールとして、100μLのインフルエンザウイルスA(1ng/mL,Yokohama/110/2009,H3N2型)を選択性を証明するためのコントロールとして用いた。3回の洗浄後、TMB(2nM)及びH2O2(5nM)の混合溶液100μLを各ウェルに添加した。その後プレートを25℃で1分間インキュベートした。100μLの10%H2SO4を各ウェルに添加し、反応を停止させた。その溶液のマイクロプレートリーダー(Model 680,Bio−Rad社)を用いて450nmの吸光度を測定した。異なる濃度のインフルエンザウイルスA(New Caledonia/20/1999,H1N1型)に対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。検出限界(LOD)は標準偏差法(Apostol et al., 2009, Anal Biochem 385: 101-106)に基づいて算出した。なお、上記で用いた抗HA(H1N1)抗体(HA Ab 66189)のインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対する特異性は、ELISA法により確認済である。
ウイルスストック溶液(インフルエンザウイルスA,New Caledonia/20/1999,H1N1型,Sino Biological社)を、センシング実験のためにpH7.5のPBSで段階的に希釈した。100μLのウイルス溶液を96ウェルマイクロタイタープレート(ポリスチレン製,平底,非滅菌,Beckton Dickinson Labware社)の各ウェルに添加し、4℃にてオーバーナイトでインキュベートして、ウイルスをプレートに吸着させた。その後プレートをpH7.5のPBSでリンスし、100μLの2%スキムミルクを用いて25℃で2時間ブロッキングした。1ng/mLの抗体(HA Ab 66189)に結合した(+)AuNPsを、血清で吸着済みのウェルに添加し、プレートを25℃で1時間インキュベートした。100μLのBSA(1ng/mL)をネガティブコントロールとして、100μLのインフルエンザウイルスA(1ng/mL,Yokohama/110/2009,H3N2型)を選択性を証明するためのコントロールとして用いた。3回の洗浄後、TMB(2nM)及びH2O2(5nM)の混合溶液100μLを各ウェルに添加した。その後プレートを25℃で1分間インキュベートした。100μLの10%H2SO4を各ウェルに添加し、反応を停止させた。その溶液のマイクロプレートリーダー(Model 680,Bio−Rad社)を用いて450nmの吸光度を測定した。異なる濃度のインフルエンザウイルスA(New Caledonia/20/1999,H1N1型)に対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。検出限界(LOD)は標準偏差法(Apostol et al., 2009, Anal Biochem 385: 101-106)に基づいて算出した。なお、上記で用いた抗HA(H1N1)抗体(HA Ab 66189)のインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対する特異性は、ELISA法により確認済である。
6.(+)AuNPs−H1N1抗体複合体によるウイルス(H1N1型)の検出
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体のペルオキシダーゼ様活性を利用した、インフルエンザウイルス(H1N1型)の検出を検討した。検出システムの選択性を、以下の4つの異なる混合成分を用いて評価した。
a)標的ウイルス/特異的抗体(H1N1抗体)結合(+)AuNPs/TMB−H2O2、
b)標的ウイルス/非特異的抗体(H3N2 MAb抗体,Sino Biological社)結合(+)AuNPs/TMB−H2O2、
c)標的ウイルス/特異的抗体(H1N1抗体)結合(+)AuNPs/H2O2、
d)標的ウイルス/特異的抗体(H1N1抗体)結合(+)AuNPs/TMB。
a)の溶液は、標的ウイルス及び特異的抗体結合(+)AuNPsの存在下で、TMB−H2O2溶液を添加すると、濃い青色を呈し、655nmで吸光度のピークが得られた(図1(a))。b)〜d)の溶液では、特徴的なピークは観察されなかった。これにより、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体を用いたインフルエンザウイルスの検出方法が、非常に高い特異性を示し、TMB及びH2O2存在下で呈色反応を示すことが確認された。
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体のペルオキシダーゼ様活性を利用した、インフルエンザウイルス(H1N1型)の検出を検討した。検出システムの選択性を、以下の4つの異なる混合成分を用いて評価した。
a)標的ウイルス/特異的抗体(H1N1抗体)結合(+)AuNPs/TMB−H2O2、
b)標的ウイルス/非特異的抗体(H3N2 MAb抗体,Sino Biological社)結合(+)AuNPs/TMB−H2O2、
c)標的ウイルス/特異的抗体(H1N1抗体)結合(+)AuNPs/H2O2、
d)標的ウイルス/特異的抗体(H1N1抗体)結合(+)AuNPs/TMB。
a)の溶液は、標的ウイルス及び特異的抗体結合(+)AuNPsの存在下で、TMB−H2O2溶液を添加すると、濃い青色を呈し、655nmで吸光度のピークが得られた(図1(a))。b)〜d)の溶液では、特徴的なピークは観察されなかった。これにより、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体を用いたインフルエンザウイルスの検出方法が、非常に高い特異性を示し、TMB及びH2O2存在下で呈色反応を示すことが確認された。
7.ウイルス(H1N1型)濃度と(+)AuNPs−H1N1抗体複合体による検出の関係
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体のペルオキシダーゼ様活性による特徴的な呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H1N1型)の濃度との関係について調べた。その結果、ウイルス濃度が10pg/mLから10μg/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図1(b))。なお、検出限界は10.79pg/mLと算出された。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H3N2)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体のペルオキシダーゼ様活性による特徴的な呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H1N1型)の濃度との関係について調べた。その結果、ウイルス濃度が10pg/mLから10μg/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図1(b))。なお、検出限界は10.79pg/mLと算出された。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H3N2)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。
8.H3N2抗体結合(+)AuNPsの作製
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様の方法により、(+)AuNPs−HAH3N2抗体複合体を作製した。H3N2抗体(H3N2 MAb抗体)と(+)AuNPsの結合を金ナノビーズベースELISA試験により確認したところ、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体は、(+)AuNPs単体と比較して約6倍高い吸光度を示し、H3N2抗体と(+)AuNPsの結合が確認された。なお、抗HA(H3N2)抗体(H3N2 MAb抗体)のインフルエンザウイルスA(H3N2型)に対する特異性は、ELISA法により確認済である。
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様の方法により、(+)AuNPs−HAH3N2抗体複合体を作製した。H3N2抗体(H3N2 MAb抗体)と(+)AuNPsの結合を金ナノビーズベースELISA試験により確認したところ、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体は、(+)AuNPs単体と比較して約6倍高い吸光度を示し、H3N2抗体と(+)AuNPsの結合が確認された。なお、抗HA(H3N2)抗体(H3N2 MAb抗体)のインフルエンザウイルスA(H3N2型)に対する特異性は、ELISA法により確認済である。
9.ウイルス(H3N2型)濃度と(+)AuNPs−H3N2抗体複合体による検出の関係
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様に、呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H3N2型)の濃度との関係について調べた。インフルエンザウイルス(H1N1型)をインフルエンザウイルス(H3N2型)、H1N1型に対する特異的抗体(HA Ab 66189)をH3N2型に対する特異的抗体(H3N2 MAb抗体)に変更し、H1N1抗体(HA Ab 66189)はコントロールとして用いた。
その結果、ウイルス濃度が10から50,000PFU/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図2(a))。なお、検出限界は11.62PFU/mLと算出された。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H1N1)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様に、呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H3N2型)の濃度との関係について調べた。インフルエンザウイルス(H1N1型)をインフルエンザウイルス(H3N2型)、H1N1型に対する特異的抗体(HA Ab 66189)をH3N2型に対する特異的抗体(H3N2 MAb抗体)に変更し、H1N1抗体(HA Ab 66189)はコントロールとして用いた。
その結果、ウイルス濃度が10から50,000PFU/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図2(a))。なお、検出限界は11.62PFU/mLと算出された。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H1N1)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。
また、上記結果を、従来のELISA法及び市販のインフルエンザ診断キット(ImmunoAce Flu,TAUNS Lab社)の結果と比較した。従来のELISA法では、ウイルス濃度が1000PFU/mLとなる付近から、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図2(b))。市販のインフルエンザ診断キットを用いた場合には、ウイルス濃度が5000PFUmL−1となる付近から、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(Ahmed et al., 2014, Biosens Bioelectron 58: 33-39)。これにより、(+)AuNPs−H3N2抗体複合体を用いた場合の検出感度が、従来のELISA法よりも100倍以上感度が高く、市販のインフルエンザ診断キットよりも500倍以上感度が高いことが示された。
さらに、インフルエンザウイルス(H3N2型)がヒト血清中(1dL中に鉄 35−180g,コレステロール 110−210mg,トリグリセリド 30−175mg,グルコース 60−140mg,エンドトキシンレベル<10EU及びヘモグロビン<20mgを含む,Sigma−Aldrich社)にある場合にも、検出が確認されるウイルス濃度が高くなる以外は、同様の結果が示された(図2(c))。検出が確認されたウイルス濃度の吸光度は50PFU/mLと顕著に低く、(+)AuNPs−H3N2抗体複合体を用いた検出方法の信頼性の高さが示された。
10.(+)AuNPs−NA抗体複合体のウイルス(H1N1型)のサンドイッチ法への応用
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様の方法により、(+)AuNPsとインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対するNA抗体(New Caledonia/20/1999,Immuno Technologies社)の複合体を調製した。
インフルエンザウイルスのH1N1抗体(HA Ab 66189)を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、4℃でオーバーナイトでインキュベートして、抗体をプレートに吸着させた。PBSで3回洗浄した後、100μLのスキムミルクを用いて25℃で1時間ブロッキングした。50μLのインフルエンザウイルスA(New Caledonia/20/1999,H1N1型)を、ウェルに添加し、プレートを25℃で1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、50μLの抗体(NA抗体)に結合した(+)AuNPsを、ウェルに添加し、プレートを25℃で1時間インキュベートした。50μLのBSA(1ngmL−1)をネガティブコントロールとして、50μLのインフルエンザウイルスA(H3N2型)を選択性を証明するためのコントロールとして用いた。3回の洗浄後、TMB(2nM)及びH2O2(5nM)の混合溶液50μLを各ウェルに添加した。その後プレートを25℃で10分間インキュベートした。50μLの10%H2SO4を各ウェルに添加し、反応を停止させた。その溶液のマイクロプレートリーダー(Model 680,Bio−Rad社)を用いて450nmの吸光度を測定した。異なる濃度のインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。比較対象として、従来のサンドイッチELISA法による検出、すなわち、NA抗体と(+)AuNPsの複合体に代えて、HRP標識NA抗体(GE Healthcare社)を用いて、インフルエンザウイルスA(H1N1型)の検出も行った。なお、上記で用いた抗NA抗体のインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対する特異性は、ELISA法により確認済である。また、抗NA抗体と(+)AuNPsの結合も、金ナノビーズベースELISA試験及びゼータ電位分析により確認済である。
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様の方法により、(+)AuNPsとインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対するNA抗体(New Caledonia/20/1999,Immuno Technologies社)の複合体を調製した。
インフルエンザウイルスのH1N1抗体(HA Ab 66189)を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、4℃でオーバーナイトでインキュベートして、抗体をプレートに吸着させた。PBSで3回洗浄した後、100μLのスキムミルクを用いて25℃で1時間ブロッキングした。50μLのインフルエンザウイルスA(New Caledonia/20/1999,H1N1型)を、ウェルに添加し、プレートを25℃で1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、50μLの抗体(NA抗体)に結合した(+)AuNPsを、ウェルに添加し、プレートを25℃で1時間インキュベートした。50μLのBSA(1ngmL−1)をネガティブコントロールとして、50μLのインフルエンザウイルスA(H3N2型)を選択性を証明するためのコントロールとして用いた。3回の洗浄後、TMB(2nM)及びH2O2(5nM)の混合溶液50μLを各ウェルに添加した。その後プレートを25℃で10分間インキュベートした。50μLの10%H2SO4を各ウェルに添加し、反応を停止させた。その溶液のマイクロプレートリーダー(Model 680,Bio−Rad社)を用いて450nmの吸光度を測定した。異なる濃度のインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。比較対象として、従来のサンドイッチELISA法による検出、すなわち、NA抗体と(+)AuNPsの複合体に代えて、HRP標識NA抗体(GE Healthcare社)を用いて、インフルエンザウイルスA(H1N1型)の検出も行った。なお、上記で用いた抗NA抗体のインフルエンザウイルスA(H1N1型)に対する特異性は、ELISA法により確認済である。また、抗NA抗体と(+)AuNPsの結合も、金ナノビーズベースELISA試験及びゼータ電位分析により確認済である。
(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様の方法により、呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H1N1型)の濃度との関係について調べた。その結果、ウイルス濃度が10pg/mLから10μg/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図3(b))。なお、検出限界は10.79pg/mLと算出された。
また、上記の結果を、従来のサンドイッチELISAの結果と比較した。従来のELISA法では、ウイルス濃度が10ng/mLとなる付近から、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図3(a))。これにより、(+)AuNPs−のH1N1抗体複合体を用いた場合の検出感度が、従来のサンドイッチELISA法よりも1000倍以上高いことが示された。
(実施例2 金ナノ粒子−カーボンナノチューブ複合体を用いたインフルエンザウイルスの検出)
1.金ナノ粒子−カーボンナノチューブ複合体(AuNPs−CNT複合体)の合成
AuNPs−CNT複合体は、ワンステップ調製により以下のように調製した。
1mLの20mMテトラクロリド金(III)酸・3水和物(HAuCl4・3H2O,Sigma−Aldrich社)及び2mgのマルチウォール型カーボンナノチューブ(MWCNTs,Sigma−Aldrich社)を5分間混合した。続いて混合液に2mLの200−500mM ギ酸ナトリウム(和光純薬(株))を加え、室温で維持した。表面のエッチングにより、HAuCl4が水性媒体中のMWCNTsの分散を促進し、ギ酸ナトリウムがCNT表面に付着した金イオンを還元させ、ナノ構造の形成が促進された。
1.金ナノ粒子−カーボンナノチューブ複合体(AuNPs−CNT複合体)の合成
AuNPs−CNT複合体は、ワンステップ調製により以下のように調製した。
1mLの20mMテトラクロリド金(III)酸・3水和物(HAuCl4・3H2O,Sigma−Aldrich社)及び2mgのマルチウォール型カーボンナノチューブ(MWCNTs,Sigma−Aldrich社)を5分間混合した。続いて混合液に2mLの200−500mM ギ酸ナトリウム(和光純薬(株))を加え、室温で維持した。表面のエッチングにより、HAuCl4が水性媒体中のMWCNTsの分散を促進し、ギ酸ナトリウムがCNT表面に付着した金イオンを還元させ、ナノ構造の形成が促進された。
2.AuNPs−CNT複合体の特性評価
合成したAuNPs−CNT複合体の形態を観察した。TEM像の生成及びナノ構造フィルムのUV/vis吸収測定は、実施例1と同様の方法により行った。図4(A)はCNT単体の形態を示す。合成に用いられたギ酸ナトリウムの濃度により、異なるサイズの金ナノ粒子及びナノクラスターが、CNT表面に分布していた。ギ酸ナトリウムの濃度が200mMの場合には、約60nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(B))、ギ酸ナトリウムの濃度が300mMの場合には、約40nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(C))、ギ酸ナトリウムの濃度が400mMの場合には、約25nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(D))、ギ酸ナトリウムの濃度が500mMの場合には、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(E))がそれぞれ付着していた。これは、合成に用いるギ酸ナトリウムの濃度によって、付着する金ナノ粒子の粒子径を調整し得ることを意味する。また、この方法により精製したCNTは、表面の広いエリアにおいて、金ナノ粒子及びナノクラスターが分布していた(図4(F))。この実施例2においては、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子を用いて以下実験を行った。
合成したAuNPs−CNT複合体の形態を観察した。TEM像の生成及びナノ構造フィルムのUV/vis吸収測定は、実施例1と同様の方法により行った。図4(A)はCNT単体の形態を示す。合成に用いられたギ酸ナトリウムの濃度により、異なるサイズの金ナノ粒子及びナノクラスターが、CNT表面に分布していた。ギ酸ナトリウムの濃度が200mMの場合には、約60nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(B))、ギ酸ナトリウムの濃度が300mMの場合には、約40nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(C))、ギ酸ナトリウムの濃度が400mMの場合には、約25nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(D))、ギ酸ナトリウムの濃度が500mMの場合には、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子(図4(E))がそれぞれ付着していた。これは、合成に用いるギ酸ナトリウムの濃度によって、付着する金ナノ粒子の粒子径を調整し得ることを意味する。また、この方法により精製したCNTは、表面の広いエリアにおいて、金ナノ粒子及びナノクラスターが分布していた(図4(F))。この実施例2においては、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子を用いて以下実験を行った。
3.HA抗体(H3N2)結合AuNPs−CNTの作製
合成したAuNPs−CNT溶液(1μg/mL)1mL、4mMの1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC,Sigma−Aldrich社)、10mMのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS,Sigma−Aldrich社)を混合し、10分間インキュベートした。その後、1μLのH3N2 MAb抗体(最終濃度5μg/mL)を添加した。溶液を4℃で8時間撹拌した。遠心分離により上清及び結合していない抗体を除去し、H3N2抗体と結合したAuNPs−CNT複合体(以下、「H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体」とも表す)を1mLの超純水に再分散させた。H3N2抗体とAuNPs−CNT複合体は、アミド結合により結合する。AuNPs−CNTとH3N2抗体が結合していることを、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR分光光度計,FT/IR6300,JASCO(株))を用いて確認した。
合成したAuNPs−CNT溶液(1μg/mL)1mL、4mMの1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC,Sigma−Aldrich社)、10mMのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS,Sigma−Aldrich社)を混合し、10分間インキュベートした。その後、1μLのH3N2 MAb抗体(最終濃度5μg/mL)を添加した。溶液を4℃で8時間撹拌した。遠心分離により上清及び結合していない抗体を除去し、H3N2抗体と結合したAuNPs−CNT複合体(以下、「H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体」とも表す)を1mLの超純水に再分散させた。H3N2抗体とAuNPs−CNT複合体は、アミド結合により結合する。AuNPs−CNTとH3N2抗体が結合していることを、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR分光光度計,FT/IR6300,JASCO(株))を用いて確認した。
4.AuNPs−CNT複合体の分散性及び酵素活性
CNTの表面に金ナノ粒子が蓄積したことで、CNTの水性溶媒における分散性は顕著に向上した。AuNPs−CNT複合体は、安定かつ1分以内に水によく分散した懸濁液を形成し、フロックも形成した。一方、CNT単体は、水性溶媒への分散性は劣っていた。
また、AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様の活性を調べた。AuNPs−CNT複合体の含まれる溶液の色は、TMB−H2O2溶液を添加した数秒後に濃い青色に呈色し、AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性が確認された。一方、CNT単体を含む溶液及び金ナノ粒子単体を含む溶液は、長時間経過しても薄い青色のままであった。TMB−H2O2を添加した後のAuNPs−CNT複合体を含む溶液の吸光度は、CNT単体を含む溶液の吸光度の約6倍、金ナノ粒子単体を含む溶液の吸光度の約3倍高かった。これにより、金ナノ粒子をCNTのハイブリッド構造に加えることで、H2O2によるTMBの触媒による酸化を高めることが示された。
CNTの表面に金ナノ粒子が蓄積したことで、CNTの水性溶媒における分散性は顕著に向上した。AuNPs−CNT複合体は、安定かつ1分以内に水によく分散した懸濁液を形成し、フロックも形成した。一方、CNT単体は、水性溶媒への分散性は劣っていた。
また、AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様の活性を調べた。AuNPs−CNT複合体の含まれる溶液の色は、TMB−H2O2溶液を添加した数秒後に濃い青色に呈色し、AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性が確認された。一方、CNT単体を含む溶液及び金ナノ粒子単体を含む溶液は、長時間経過しても薄い青色のままであった。TMB−H2O2を添加した後のAuNPs−CNT複合体を含む溶液の吸光度は、CNT単体を含む溶液の吸光度の約6倍、金ナノ粒子単体を含む溶液の吸光度の約3倍高かった。これにより、金ナノ粒子をCNTのハイブリッド構造に加えることで、H2O2によるTMBの触媒による酸化を高めることが示された。
AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性を最大とする最適な条件について検討したところ、最適な溶媒はPBSであり、最適なpHはpH7.5であり、最適な反応濃度は25℃であり、5分以内に最大のペルオキシダーゼ様活性が確認されることが分かった。また、AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性を最大にするには、H2O2とTMBの比率は2:1が好ましいことが分かった。
4.抗原−抗体反応によるインフルエンザウイルスの検出
インフルエンザウイルスA(Yokohama/110/2009,H3N2型)のウイルスストック溶液(8×106PFU/mL)をヒト血清で希釈したものを用いた点、血清吸着済みウェルに添加したのが50μLのH3N2抗体−AuNPs−CNT複合体(1ng/mL)である点、BSA(100μL,1ng/mL)及びインフルエンザA(H1N1型,100μL,1μg/mL)をネガティブコントロールとして用いた点、TMB(5mM)及びH2O2(10mM)の混合溶液100μLを添加した後、室温で10分間インキュベートした点、並びに450nmの吸光度を測定した点を除き、実施例1と同じ方法でインフルエンザウイルスの検出を行った。異なる濃度のインフルエンザウイルスA(H3N2型)に対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。
インフルエンザウイルスA(Yokohama/110/2009,H3N2型)のウイルスストック溶液(8×106PFU/mL)をヒト血清で希釈したものを用いた点、血清吸着済みウェルに添加したのが50μLのH3N2抗体−AuNPs−CNT複合体(1ng/mL)である点、BSA(100μL,1ng/mL)及びインフルエンザA(H1N1型,100μL,1μg/mL)をネガティブコントロールとして用いた点、TMB(5mM)及びH2O2(10mM)の混合溶液100μLを添加した後、室温で10分間インキュベートした点、並びに450nmの吸光度を測定した点を除き、実施例1と同じ方法でインフルエンザウイルスの検出を行った。異なる濃度のインフルエンザウイルスA(H3N2型)に対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。
5.H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体によるウイルス(H3N2型)の検出
H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性を利用した、インフルエンザウイルス(H3N2型)の検出を検討した。検出システムの選択性を、以下の4つの異なる混合成分を用いて評価した。
a)標的ウイルス/特異的抗体(H3N2 MAb抗体)結合AuNPs−CNT/TMB−H2O2、
b)標的ウイルス/非特異的抗体(HA Ab 66189)結合AuNPs−CNT/TMB−H2O2、
c)標的ウイルス/特異的抗体(H3N2 MAb抗体)結合AuNPs−CNT/H2O2、
d)標的ウイルス/特異的抗体(H3N2 MAb抗体)結合AuNPs−CNT/TMB。
a)の溶液は、標的ウイルス及び特異的抗体結合AuNPs−CNTの存在下で、TMB−H2O2溶液を添加すると、濃い青色を呈し、655nmで吸光度のピークが得られた(図5(a))。b)〜d)の溶液では、特徴的なピークは観察されなかった。これにより、H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体を用いたインフルエンザウイルス(H3N2型)の検出方法が、非常に高い特異性を示し、TMB及びH2O2存在下で呈色反応を示すことが確認された。
H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性を利用した、インフルエンザウイルス(H3N2型)の検出を検討した。検出システムの選択性を、以下の4つの異なる混合成分を用いて評価した。
a)標的ウイルス/特異的抗体(H3N2 MAb抗体)結合AuNPs−CNT/TMB−H2O2、
b)標的ウイルス/非特異的抗体(HA Ab 66189)結合AuNPs−CNT/TMB−H2O2、
c)標的ウイルス/特異的抗体(H3N2 MAb抗体)結合AuNPs−CNT/H2O2、
d)標的ウイルス/特異的抗体(H3N2 MAb抗体)結合AuNPs−CNT/TMB。
a)の溶液は、標的ウイルス及び特異的抗体結合AuNPs−CNTの存在下で、TMB−H2O2溶液を添加すると、濃い青色を呈し、655nmで吸光度のピークが得られた(図5(a))。b)〜d)の溶液では、特徴的なピークは観察されなかった。これにより、H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体を用いたインフルエンザウイルス(H3N2型)の検出方法が、非常に高い特異性を示し、TMB及びH2O2存在下で呈色反応を示すことが確認された。
6.ウイルス(H3N2型)濃度とH3N2抗体−AuNPs−CNT複合体による検出の関係
H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性による特徴的な呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H3N2型)の濃度との関係について調べた。その結果、ウイルス濃度が10から50,000PFU/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図5(b))。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H1N1)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。なお、H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体によるウイルスの検出限界は3.4PFU/mLと算出された。一方、従来のELISA法の検出限界は1312PFU/mLであった。
H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体のペルオキシダーゼ様活性による特徴的な呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H3N2型)の濃度との関係について調べた。その結果、ウイルス濃度が10から50,000PFU/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図5(b))。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H1N1)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。なお、H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体によるウイルスの検出限界は3.4PFU/mLと算出された。一方、従来のELISA法の検出限界は1312PFU/mLであった。
また、上記結果を、従来のELISA法及び市販のインフルエンザ診断キット(ImmunoAce Flu,TAUNS Lab社)の結果と比較した。従来のELISA法では、ウイルス濃度が1000PFU/mLとなる付近から、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図5(b))。市販のインフルエンザ診断キットを用いた場合には、ウイルス濃度が5000PFU/mLとなる付近から、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(Ahmed et al., 2014, Biosens Bioelectron 58: 33-39)。これにより、H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体を用いた場合の検出感度が、従来のELISA法よりも100倍以上高く、市販のインフルエンザ診断キットよりも500倍以上高いことが示された(表1)。
また、IgG(ヤギ 抗ウシ IgG,Jackson Immuno Research Laboratories社)及びBSAを用いて阻害物質の影響も調べた。その結果、H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体を用いた比色免疫測定法は、たとえ複雑な生物学マトリックスにおいても他の物質によって阻害されることはなく、信頼性の高い検出方法であることが示された。
7.H1N1抗体−AuNPs−CNT複合体のウイルス(H1N1型)のサンドイッチ法への応用
H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体と同様の方法により、インフルエンザウイルスA(H1N1型)に対するNA抗体とAuNPs−CNTの複合体を調製した。
NA抗体に結合した(+)AuNPsに代えて、NA抗体に結合したAuNPs−CNTを用いた点を除き、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様の方法により、サンドイッチ法へ適用した。なお、抗NA抗体とAuNPs−CNTの結合は、金ナノビーズベースELISA試験及びゼータ電位分析により確認済である。
H3N2抗体−AuNPs−CNT複合体と同様の方法により、インフルエンザウイルスA(H1N1型)に対するNA抗体とAuNPs−CNTの複合体を調製した。
NA抗体に結合した(+)AuNPsに代えて、NA抗体に結合したAuNPs−CNTを用いた点を除き、(+)AuNPs−H1N1抗体複合体と同様の方法により、サンドイッチ法へ適用した。なお、抗NA抗体とAuNPs−CNTの結合は、金ナノビーズベースELISA試験及びゼータ電位分析により確認済である。
実施例1と同様に、呈色反応の吸光度と、標的ウイルスであるインフルエンザウイルス(H1N1型)の濃度との関係について調べた。その結果、ウイルス濃度が10pg/mLから10μg/mLの範囲において、ウイルス濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図6(b))。なお、検出限界は5.12pg/mLと算出された。
また、上記の結果を、従来のサンドイッチELISAの結果(図6(a))と比較すると、H1N1抗体−AuNPs−CNTのH1N1抗体複合体を用いた場合の検出感度が、従来のサンドイッチELISA法よりも1000倍以上高いことが示された。
(実施例3 金ナノ粒子−グラフェン複合体を用いたノロウイルスの検出)
1.金ナノ粒子−グラフェン複合体(AuNPs−Gr複合体)の合成
AuNPs−Gr複合体は、ワンステップ調製により以下のように調製された。
1mLの20mMテトラクロリド金(III)酸・3水和物及び2mgのグラフェンフレーク(Model AO−3,Graphene Supermarket社)を5分間混合した。続いて混合液に2mLの200−500mM ギ酸ナトリウムを加え、室温で1時間維持した。金イオンが静電気的作用によりグラフェンフレークに付着し、ギ酸ナトリウムによりグラフェン表面に付着した金イオンが還元され、グラフェン表面に安定化した。
1.金ナノ粒子−グラフェン複合体(AuNPs−Gr複合体)の合成
AuNPs−Gr複合体は、ワンステップ調製により以下のように調製された。
1mLの20mMテトラクロリド金(III)酸・3水和物及び2mgのグラフェンフレーク(Model AO−3,Graphene Supermarket社)を5分間混合した。続いて混合液に2mLの200−500mM ギ酸ナトリウムを加え、室温で1時間維持した。金イオンが静電気的作用によりグラフェンフレークに付着し、ギ酸ナトリウムによりグラフェン表面に付着した金イオンが還元され、グラフェン表面に安定化した。
2.AuNPs−Gr複合体の特性評価
合成したAuNPs−Gr複合体の形態を観察した。透過電子顕微鏡(TEM)像の生成及びナノ構造フィルムのUV/vis吸収測定は、実施例1と同様の方法により行った。合成に用いられたギ酸ナトリウムの濃度により、異なるサイズの金ナノ粒子及びナノクラスターが、Gr表面に分布していた。ギ酸ナトリウムの濃度が200mMの場合には、約500nmの粒子径を有する金ナノ粒子、ギ酸ナトリウムの濃度が300mMの場合には、約200nmの粒子径を有する金ナノ粒子、ギ酸ナトリウムの濃度が400mMの場合には、約80nmの粒子径を有する金ナノ粒子、ギ酸ナトリウムの濃度が500mMの場合には、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子がそれぞれ付着していた。これは、合成に用いるギ酸ナトリウムの濃度によって、吸光度の範囲を調整し得ることを意味する。驚くべきことに、約500nmの粒子径を有する金ナノ粒子は非球状の構造をしていた。この実施例3においては、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子を用いて以下実験を行った。
合成したAuNPs−Gr複合体の形態を観察した。透過電子顕微鏡(TEM)像の生成及びナノ構造フィルムのUV/vis吸収測定は、実施例1と同様の方法により行った。合成に用いられたギ酸ナトリウムの濃度により、異なるサイズの金ナノ粒子及びナノクラスターが、Gr表面に分布していた。ギ酸ナトリウムの濃度が200mMの場合には、約500nmの粒子径を有する金ナノ粒子、ギ酸ナトリウムの濃度が300mMの場合には、約200nmの粒子径を有する金ナノ粒子、ギ酸ナトリウムの濃度が400mMの場合には、約80nmの粒子径を有する金ナノ粒子、ギ酸ナトリウムの濃度が500mMの場合には、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子がそれぞれ付着していた。これは、合成に用いるギ酸ナトリウムの濃度によって、吸光度の範囲を調整し得ることを意味する。驚くべきことに、約500nmの粒子径を有する金ナノ粒子は非球状の構造をしていた。この実施例3においては、約10nmの粒子径を有する金ナノ粒子を用いて以下実験を行った。
3.AuNPs−Gr複合体の活性の確認
AuNPs−Gr複合体の含まれる溶液の色は、TMB−H2O2溶液を添加した数秒後に濃い青色に呈色し、AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性が確認された。AuNPs−Gr複合体は、Gr単体よりも高いペルオキシダーゼ様活性を示した。また、金ナノ粒子の粒径が10nmであるAuNPs−Gr複合体は、Gr単体の約8倍、金ナノ粒子の粒径が500nmであるAuNPs−Gr複合体の、約6倍の吸光度を示した。これにより、複合体に含まれるAuNPsの粒子径を小さくすることで、H2O2によるTMBの触媒による酸化を高められることが示された。
AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性を最大とする最適な条件について検討したところ、最適なpHはpH7.5であり、最適な反応時間は5分であることが分かった。また、AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性を最大にするには、H2O2とTMBの比率は2:1が好ましいことが分かった。
AuNPs−Gr複合体の含まれる溶液の色は、TMB−H2O2溶液を添加した数秒後に濃い青色に呈色し、AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性が確認された。AuNPs−Gr複合体は、Gr単体よりも高いペルオキシダーゼ様活性を示した。また、金ナノ粒子の粒径が10nmであるAuNPs−Gr複合体は、Gr単体の約8倍、金ナノ粒子の粒径が500nmであるAuNPs−Gr複合体の、約6倍の吸光度を示した。これにより、複合体に含まれるAuNPsの粒子径を小さくすることで、H2O2によるTMBの触媒による酸化を高められることが示された。
AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性を最大とする最適な条件について検討したところ、最適なpHはpH7.5であり、最適な反応時間は5分であることが分かった。また、AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性を最大にするには、H2O2とTMBの比率は2:1が好ましいことが分かった。
4.抗ノロウイルス抗体(NS14)結合AuNPs−Grの作製
AuNPs−CNT溶液に代えて、上記1で作成したAuNPs−Gr溶液を用いた点、及びH3N2 MAb抗体に代えて、抗ノロウイルス抗体(NS14)を用いた点を除き、AuNPs−CNTとH3N2抗体の結合と同様の方法により、抗ノロウイルス抗体と結合したAuNPs−Gr複合体(以下、「NS14抗体−AuNPs−Gr複合体」とも表す)を得て、1mLの超純水に再分散させた。NS14抗体とAuNPs−Gr複合体は、アミド結合により結合する。AuNPs−Grと抗ノロウイルス抗体が結合していることを、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて確認した。
AuNPs−CNT溶液に代えて、上記1で作成したAuNPs−Gr溶液を用いた点、及びH3N2 MAb抗体に代えて、抗ノロウイルス抗体(NS14)を用いた点を除き、AuNPs−CNTとH3N2抗体の結合と同様の方法により、抗ノロウイルス抗体と結合したAuNPs−Gr複合体(以下、「NS14抗体−AuNPs−Gr複合体」とも表す)を得て、1mLの超純水に再分散させた。NS14抗体とAuNPs−Gr複合体は、アミド結合により結合する。AuNPs−Grと抗ノロウイルス抗体が結合していることを、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて確認した。
5.組換えバキュロウイルスを用いたノロウイルス様粒子(NoV−LPs)の発現及び精製
2010年に、ヒトノロウイルスゲノムcDNA(GII.4 strain,GenBank accession no:LC153749)を、ヒトの便試料から単離した。プライマーTCNF(5’−AGGATCCATGAAGATGGCGTCGAAT−3’)及びTCNR(5’−CTCTAGATTATAAAGCACGTCTACG−3’)を用いてcDNAの全長ORF2をRT−PCTにより増幅し、開始コドンの前にBamHI部位、終始コドンの後にXbaI部位を付加した。PCR産物をBamHI及びXbaIにより分解し、バキュロウイルストランスファーベクターpVL1393(Pharmingen社)の対応する部位にクローニングし、トランスファープラスミドpVL1393−TCN−VP1を得た。pVL1393−TCN−VP1をBaculoGold(Pharmingen社)及びリポフェクチン(GIBCO−BRL社)と混合して組換えバキュロウイルスを作製し、Sf−9昆虫細胞(Riken Cell Bank)に感染させた。その昆虫細胞を、10%ウシ胎児血清(シグマ アルドリッチ社)及び0.26%トリプトースホスフェートブロス(Difco Laboratories社)を追加したTC−100培地(GIBCO−BRL社)中で、26.5℃でインキュベートした。Sf−9昆虫細胞における三回のプラークアッセイにより、組換えウイルスを純化し、Ac[TCN−VP1]と命名した。
2010年に、ヒトノロウイルスゲノムcDNA(GII.4 strain,GenBank accession no:LC153749)を、ヒトの便試料から単離した。プライマーTCNF(5’−AGGATCCATGAAGATGGCGTCGAAT−3’)及びTCNR(5’−CTCTAGATTATAAAGCACGTCTACG−3’)を用いてcDNAの全長ORF2をRT−PCTにより増幅し、開始コドンの前にBamHI部位、終始コドンの後にXbaI部位を付加した。PCR産物をBamHI及びXbaIにより分解し、バキュロウイルストランスファーベクターpVL1393(Pharmingen社)の対応する部位にクローニングし、トランスファープラスミドpVL1393−TCN−VP1を得た。pVL1393−TCN−VP1をBaculoGold(Pharmingen社)及びリポフェクチン(GIBCO−BRL社)と混合して組換えバキュロウイルスを作製し、Sf−9昆虫細胞(Riken Cell Bank)に感染させた。その昆虫細胞を、10%ウシ胎児血清(シグマ アルドリッチ社)及び0.26%トリプトースホスフェートブロス(Difco Laboratories社)を追加したTC−100培地(GIBCO−BRL社)中で、26.5℃でインキュベートした。Sf−9昆虫細胞における三回のプラークアッセイにより、組換えウイルスを純化し、Ac[TCN−VP1]と命名した。
Trichoplusia niの昆虫細胞ラインであるBTL−Tn 5B1−4(Tn5)(Invitrogen社)を用いて大量発現を行った。Tn5細胞を、10の感染多重度(Multiplicity of Infection(MOI))でAc[TCN−VP1]に感染させ、EX−CELL(商標)405培地(JRH Biosciences社)中で、26.5℃で培養した。感染細胞培養液を10,000xgで60分間遠心分離することにより上清を得て、その上清をさらにBeckman SW55Tiローターにおいて32,000rpmで3時間回転した。
得られたペレットを再懸濁し、Beckman SW55Tiローターにおいて35,000rpm(10℃)で24時間CsCl勾配遠心分離した。
得られたペレットを再懸濁し、Beckman SW55Tiローターにおいて35,000rpm(10℃)で24時間CsCl勾配遠心分離した。
感染7日後にAc[TCN−VP1]に感染したTn5細胞から細胞培養上清を採取した。CsCl勾配遠心分離の画分中のNoV−LPsタンパク質をウェスタンブロットにより検出した。2本の主要タンパク質バンドが画分10〜14で58kDa及び55kDaにおいて観察された。58kDaのバンドは全長VPsであり、55kDaは部分的に加工されたVPsであった。NoV−LPsのTEM像から、画分11において、天然ノロウイルスと同様の約38nmの直径を有する単分散した球状の粒子が確認された。
6.抗原−抗体反応によるNoV−LPsの検出
NoV−LPsストック溶液をヒト血清で段階的に希釈したものを用いた点、血清吸着済みウェルに添加したのが50μLのNS14抗体−AuNPs−Gr複合体(1ng/mL)である点、BSA(100μL,1ng/mL)及びインフルエンザA(H1N1型,100μL,1μg/mL)をネガティブコントロールとして用いた点、TMB(5mM)及びH2O2(10mM)の混合溶液100μLを添加した後、室温で10分間インキュベートした点、並びに450nmの吸光度を測定した点を除き、実施例1と同じ方法でNoV−LPsの検出を行った。異なる濃度のNoV−LPsに対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。なお、NS14抗体のNoV−LPsに対する特異性は、ELISA法により確認済である。
NoV−LPsストック溶液をヒト血清で段階的に希釈したものを用いた点、血清吸着済みウェルに添加したのが50μLのNS14抗体−AuNPs−Gr複合体(1ng/mL)である点、BSA(100μL,1ng/mL)及びインフルエンザA(H1N1型,100μL,1μg/mL)をネガティブコントロールとして用いた点、TMB(5mM)及びH2O2(10mM)の混合溶液100μLを添加した後、室温で10分間インキュベートした点、並びに450nmの吸光度を測定した点を除き、実施例1と同じ方法でNoV−LPsの検出を行った。異なる濃度のNoV−LPsに対する吸光度値に基づき、用量依存曲線を構築した。なお、NS14抗体のNoV−LPsに対する特異性は、ELISA法により確認済である。
7.NS14抗体−AuNPs−Gr複合体のNoV−LPsの検出への適用
NS14抗体−AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性を利用した、NoV−LPsの検出を検討した。検出システムの選択性を、以下の4つの異なる混合成分を用いて評価した。
a)NoV−LPs/特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Gr/TMB−H2O2、
b)NoV−LPs/非特異的抗体(HA Ab 66189)結合−Gr/TMB−H2O2、
c)NoV−LPs/特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Gr/H2O2、
d)NoV−LPs/特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Gr/TMB。
a)の溶液は、NoV−LPs及び特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Grの存在下で、TMB−H2O2溶液を添加すると、濃い青色を呈し、655nmで吸光度のピークが得られた(図7(a))。b)〜d)の溶液では、特徴的なピークは観察されなかった。これにより、特異的抗体結合AuNPs−Gr複合体を用いたNoV−LPsの検出方法が、非常に高い特異性を示し、TMB及びH2O2存在下で呈色反応を示すことが確認された。
NS14抗体−AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性を利用した、NoV−LPsの検出を検討した。検出システムの選択性を、以下の4つの異なる混合成分を用いて評価した。
a)NoV−LPs/特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Gr/TMB−H2O2、
b)NoV−LPs/非特異的抗体(HA Ab 66189)結合−Gr/TMB−H2O2、
c)NoV−LPs/特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Gr/H2O2、
d)NoV−LPs/特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Gr/TMB。
a)の溶液は、NoV−LPs及び特異的抗体(NS14)結合AuNPs−Grの存在下で、TMB−H2O2溶液を添加すると、濃い青色を呈し、655nmで吸光度のピークが得られた(図7(a))。b)〜d)の溶液では、特徴的なピークは観察されなかった。これにより、特異的抗体結合AuNPs−Gr複合体を用いたNoV−LPsの検出方法が、非常に高い特異性を示し、TMB及びH2O2存在下で呈色反応を示すことが確認された。
8.NoV−LPs濃度とNS14抗体−AuNPs−Gr複合体による検出の関係
NS14抗体−AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性による特徴的な呈色反応の吸光度と、NoV−LPsの濃度との関係について調べた。その結果、NoV−LPs濃度が100pg/mLから10μL/mLの範囲において、NoV−LPs濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図7(b))。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H1N1)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。なお、NS14抗体−AuNPs−Gr複合体によるNoV−LPsの検出限界は93.5pg/mLと算出された。一方、従来のELISA法の検出限界は10,416pg/mLであった。
NS14抗体−AuNPs−Gr複合体のペルオキシダーゼ様活性による特徴的な呈色反応の吸光度と、NoV−LPsの濃度との関係について調べた。その結果、NoV−LPs濃度が100pg/mLから10μL/mLの範囲において、NoV−LPs濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図7(b))。一方、BSAを用いた場合及び特異的な関係にないインフルエンザウイルス(H1N1)を用いた場合には、顕著な呈色反応は確認されなかった。なお、NS14抗体−AuNPs−Gr複合体によるNoV−LPsの検出限界は93.5pg/mLと算出された。一方、従来のELISA法の検出限界は10,416pg/mLであった。
また、上記の結果を、従来のELISA法及び市販のノロウイルス診断キット(NV−AD(III),デンカ生研社)の結果と比較した。従来のELISA法では、NoV−LPs濃度が100ng/mLとなる付近から、NoV−LPs濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した(図7(b))。市販のノロウイルス診断キットを用いた場合には、NoV−LPs濃度が1ng/mLとなる付近から、NoV−LPs濃度の増加に伴い呈色反応の吸光度が上昇した。なお、市販のノロウイルス診断キットの検出限界は、3.8ng/mLであった。これにより、NS14抗体−AuNPs−Gr複合体を用いた場合の検出感度が、従来のELISA法よりも1000倍以上高く、市販のノロウイルス診断キットよりも10倍以上高いことが示された(表2)。
Claims (12)
- 試料中の標的物質を検出する方法であって、
(i)標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程、
(ii)標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
(iii)洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
(iv)複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
(v)試料中の呈色反応が標的物質を含まない陰性対照の呈色反応よりも強い場合に、試料中に標的物質が存在すると判定する工程
を含む、方法。 - 金ナノ粒子がカーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合している、請求項1に記載の方法。
- 金ナノ粒子がマルチウォール型カーボンナノチューブに結合している、請求項1に記載の方法。
- 試料中の標的物質を定量する方法であって、
(i)標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体を試料に添加する工程、
(ii)標的物質に結合していない複合体を洗浄する工程、
(iii)洗浄後の試料に、過酸化水素及び色原性基質を添加する工程、
(iv)複合体及び過酸化水素によって酸化される色原性基質の呈色反応の強度を測定する工程、及び
(v)試料中の呈色反応の強度を、既知濃度の標的物質を含む複数の標準試料中の呈色反応の強度と比較して、試料中の標的物質を定量する工程
を含む、方法。 - 金ナノ粒子がカーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合している、請求項4に記載の方法。
- 金ナノ粒子がマルチウォール型カーボンナノチューブに結合している、請求項4に記載の方法。
- 標的物質に対する抗体と金ナノ粒子を含む複合体、
過酸化水素水、及び
色原性基質
を含む、標的物質を検出又は定量するためのキット。 - 金ナノ粒子がカーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体に結合している、請求項7に記載のキット。
- 金ナノ粒子がマルチウォール型カーボンナノチューブに結合している、請求項7に記載のキット。
- テトラクロリド金(III)酸、
標的物質に対する抗体を金ナノ粒子に結合させる試薬、
過酸化水素水、及び
色原性基質
を含む、標的物質を検出又は定量するためのキット。 - カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択される担体をさらに含む、請求項10に記載のキット。
- マルチウォール型カーボンナノチューブをさらに含む、請求項10に記載のキット。
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---|---|---|---|
JP2016154343A JP2018021864A (ja) | 2016-08-05 | 2016-08-05 | 標的物質を検出又は定量する方法及びキット |
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CN110567953A (zh) * | 2019-10-12 | 2019-12-13 | 山西师范大学 | 用于检测环境水样和血清中Fe2+含量的可视化检测试剂盒及其检测方法 |
JP2020187103A (ja) * | 2019-05-17 | 2020-11-19 | 国立大学法人静岡大学 | 試料中の標的物質を検出又は定量する方法 |
US11519876B2 (en) | 2019-10-07 | 2022-12-06 | National University Corporation Shizuoka University | Electrode for electrochemical measurement |
-
2016
- 2016-08-05 JP JP2016154343A patent/JP2018021864A/ja active Pending
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