JP2018021157A - 乾式摩擦材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分に高い摩擦係数を長期間にわたり維持でき、相手材に対する攻撃性が低く、かつ耐摩耗性に優れる乾式摩擦材及びその製造方法を提供すること。【解決手段】摩擦部材及び相手材を含むトルク伝達部材の前記摩擦部材に用いられる乾式摩擦材であって、結合材、繊維基材、有機充填材、無機充填材及び研削材を含み、有機充填材を50〜80体積%含有し、研削材がモース硬度が8以下の無機物であり、有機充填材が前記相手材に凝着することによりトルクを発生する乾式摩擦材とする。【選択図】なし

Description

本発明は乾式摩擦材及びその製造方法に関し、特に、自動車及び産業機械等のトルク伝達用クラッチフェーシング、ブレーキライニング等に用いられる乾式摩擦材及びその製造方法に関する。
例えば、カーエアコン用コンプレッサに使用されるコンプレッサクラッチは、エンジン動力の伝達装置としての役割があり、乾式単板電磁クラッチが広く使用されている。電磁クラッチは、内蔵されている電磁コイルへ通電することにより磁束が発生して磁気回路が形成され、アーマチュア摩擦板がプーリ摩擦面に吸引され、エンジン動力がコンプレッサへ伝達される。
電磁クラッチ等のトルク伝達部材に使用されるクラッチフェーシング、ブレーキライニング等の摩擦材は、補強作用をする繊維基材、摩擦作用を与えかつその摩擦性能を調整する摩擦調整材、これらの成分を一体化する結合材などの原材料からなっている。
例えば、特許文献1には、補強用繊維材料、有機充填材、無機充填材及び摩擦摩耗調整剤を熱硬化性結合剤で結合してなり、補強用繊維材料として繊維長150μm以下の短繊維セルロースパルプを25〜35容量%、有機充填材として最大粒子径840μm以下の有機充填材を30〜40容量%、摩擦摩耗調整剤として最大粒子径250μm以下の酸化アルミニウム及び/又は酸化マグネシウムを0.5〜5容量%含み、かつ、気孔率が15〜30容量%である、トルク伝達用の摩擦材組成物が開示されている。
特公平6−19197号公報
近年、省エネルギー化のために自動車及び産業機械等は小型化・軽量化が望まれており、電磁クラッチの一部を構成するトルク伝達部材についても、その要求性能を維持しながら小型化・軽量化することが求められている。
特に、トルク伝達部材には、高いトルクを発生するために十分に高い摩擦係数を長期間にわたり維持できること、相手材に対する攻撃性が低いこと、耐摩耗性に優れていること等が当業界で強く求められている。
前記特許文献1で開示された摩擦材組成物は、初期状態における摩擦係数は改善されるものの、その摩擦係数を長期にわたり維持することができないという問題点があった。
そこで本発明は、十分に高い摩擦係数を長期間にわたり維持でき、相手材に対する攻撃性が低く、かつ耐摩耗性に優れる乾式摩擦材及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、摩擦材に有機充填材を特定量以上配合することにより、制動時の温度上昇に伴って有機充填材が相手材に凝着し、これにより高いトルクを継続して発生させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(12)を特徴とする。
(1)摩擦部材及び相手材を含むトルク伝達部材の前記摩擦部材に用いられる乾式摩擦材であって、結合材、繊維基材、有機充填材、無機充填材及び研削材を含み、前記有機充填材を50〜80体積%含有し、前記研削材がモース硬度が8以下の無機物であり、前記有機充填材が前記相手材に凝着することによりトルクを発生することを特徴とする乾式摩擦材。
(2)前記有機充填材として、カシューダストを30体積%以上含有することを特徴とする前記(1)に記載の乾式摩擦材。
(3)前記有機充填材として、コルク粉末を10体積%以上含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の乾式摩擦材。
(4)前記結合材が熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の乾式摩擦材。
(5)前記繊維基材がセルロース繊維を含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の乾式摩擦材。
(6)前記無機充填材がチタン酸カリウムを含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の乾式摩擦材。
(7)トルク伝達部材を構成する摩擦部材に用いられる乾式摩擦材の製造方法であって、乾式摩擦材原料を混合して摩擦材組成物を得る工程と、前記摩擦材組成物を熱成形する工程と、熱成形された摩擦材組成物を加熱する工程と、を少なくとも備え、前記摩擦材組成物が、結合材、繊維基材、有機充填材、無機充填材及び研削材を含み、前記有機充填材を摩擦材組成物中50〜80体積%含有し、前記研削材がモース硬度が8以下の無機物であることを特徴とする乾式摩擦材の製造方法。
(8)前記有機充填材として、カシューダストを摩擦材組成物中30体積%以上含有することを特徴とする前記(7)に記載の乾式摩擦材の製造方法。
(9)前記有機充填材として、コルク粉末を摩擦材組成物中10体積%以上含有することを特徴とする前記(7)又は(8)に記載の乾式摩擦材の製造方法。
(10)前記結合材が熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の乾式摩擦材の製造方法。
(11)前記繊維基材がセルロース繊維を含むことを特徴とする前記(7)〜(10)のいずれか1つに記載の乾式摩擦材の製造方法。
(12)前記無機充填材がチタン酸カリウムを含むことを特徴とする前記(7)〜(11)のいずれか1つに記載の乾式摩擦材の製造方法。
本発明の乾式摩擦材は、制動時の温度上昇に伴って有機充填材が相手材に凝着し、静μが0.50以上という高い摩擦係数を示すとともに、それを長期間にわたり維持することが可能となる。そのメカニズムは明らかではないが、トルク発生時、乾式摩擦材の表面温度が上昇し、これにより有機充填材における有機成分によって相手材に凝着膜が形成され、この凝着膜と摩擦材との間で凝着摩擦が発生し、高い摩擦係数が生じるものと推測される。また本発明の乾式摩擦材は、相手材に対する攻撃性が低く、かつ耐摩耗性にも優れる。
また、本発明の乾式摩擦材の製造方法は、十分に高い摩擦係数を長期間にわたり維持でき、相手材に対する攻撃性が低く、かつ耐摩耗性に優れる乾式摩擦材を成形性よく製造することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の乾式摩擦材は、摩擦部材及び相手材を含む電磁クラッチ等のトルク伝達部材の前記摩擦部材に用いられる。乾式摩擦材は、結合材、繊維基材、有機充填材、無機充填材及び研削材を含む。
本発明で使用される結合材としては、乾式摩擦材に通常用いられるものであることができ、特に制限されないが、例えばフェノール樹脂(ストレートフェノール樹脂、ゴム等による各種変性フェノール樹脂を含む)、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結合材の含有量は、乾式摩擦材としての機械的強度、成形性、耐摩耗性を確保するために、摩擦材中、10〜20体積%とすることが好ましい。
繊維基材としては、乾式摩擦材に通常用いられるものであることができ、特に制限されないが、例えば、有機繊維、無機繊維、金属繊維が使用される。有機繊維としては、例えば芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、耐炎性アクリル繊維、セルロース繊維等が使用され、無機繊維としては、例えばチタン酸カリウム繊維やアルミナ繊維等のセラミック繊維、生体溶解性無機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール等が使用され、また、金属繊維としては、例えば銅繊維やスチール繊維が使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、摩擦材マトリクスの補強効果を高めるという点でセルロース繊維を用いることが好ましい。
繊維基材の含有量は、乾式摩擦材としての機械的強度、成形性を確保するために、摩擦材中、1〜40体積%とすることが好ましく、1〜30体積%がより好ましい。
本発明で使用される有機充填材としては、カシューナッツシェルオイルの硬化物を粉砕して得られるカシューダスト;コルク粉末;ゴムダスト、タイヤ粉末等の各種ゴム粉末;メラミンダスト、各種エラストマー等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、本発明の効果が向上するという観点、また安定して高い摩擦係数を提供できるという観点からカシューダストを用いることが好ましく、耐摩耗性に特に優れるという観点からコルク粉末を用いることが好ましく、これらカシュ−ダストとコルク粉末を併用することがより好ましい。
カシューダストは、カシューナッツの殻から採った油分を炭化し硬化させたものが挙げられる。カシューダストは、カシューダスト(ストレート)又は変性カシューダストであることができる。変性カシューダストは、カシューダストに対して、ニトリルゴム(NBR)、フルフラール樹脂、リン酸、フラン樹脂、オイル、亜麻仁油等の変性剤を加えて調製できる。カシュ−ダストには、茶色の外観を呈する比較的軟質な茶系ダストと、黒色の外観を呈する比較的硬質な黒系ダストが代表的であり、相手材への有機凝着膜の形成しやすさの点から、茶系ダストを使用することが好ましい。
コルク粉末は、コルクガシの樹皮のコルク組織を剥離、加工した弾力性に富む素材であり、天然又は合成コルク粉末のいずれであってもよい。
ゴムダストは、具体的には加硫もしくは未加硫の天然もしくは合成ゴムからなる粒子である。また、合成ゴムダストとしては、例えば、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)やNBR(ニトリル・ブタジエンゴム)等を代表的に挙げることができ、タイヤトレッドゴムを粉砕したゴムダストも含まれる。
メラミンダストとは、メラミン樹脂を完全に硬化させ、粉砕、分級したものである。メラミンダストは、熱分解によりタール状の粘性物質を生成せず、約330℃から急激に昇華・ガス化する特性を持つ。
本発明で使用される有機充填材は、本発明の効果が向上するという観点から、粒径が10〜500μmであるものが好ましく、100〜300μmであるものがさらに好ましい。
特に、有機充填材としてカシューダストを使用する場合は、粒径が10〜500μmであるものが好ましく、100〜300μmがより好ましい。またコルク粉末を使用する場合は、粒径が50〜500μmであるものが好ましく、200〜500μmであるものがより好ましい。
本願明細書中では、粒径は、レーザー回折式粒子径測定装置により測定された粒度分布から求めることができる。
なお、本発明で言う有機充填材は、ラテックス等の液状ゴムやCNSL(カシューナッツシェルリキッド)等の液状樹脂でコーティングされていてもよい。
本発明において、有機充填材は、摩擦材中、50〜80体積%含有することが必要である。有機充填材を50体積%以上含有することで、制動時の温度上昇に伴って有機充填材が相手材に凝着し、静μ0.50以上という高い摩擦係数を示すことができ、高いトルクを発生させることができる。有機充填材の含有量が50体積%未満であると、十分に高い摩擦係数を継続して維持することができなくなる場合がある。また、80体積%を超えて配合すると、成形性が問題となる場合がある。
有機充填材の含有量は、60〜80体積%がより好ましく、70〜80体積%がさらに好ましい。
また、有機充填材としてカシューダストを使用する場合、乾式摩擦材におけるカシューダストの含有量は30体積%以上が好ましく、30〜50体積%がより好ましい。摩擦材中にカシュ−ダストを30体積%以上含有することで、高いトルクを発生させることができる。
また、有機充填材としてコルク粉末を使用する場合、乾式摩擦材におけるコルク粉末の含有量は10体積%以上が好ましく、20〜40体積%がより好ましい。摩擦材中にコルク粉末を20体積%以上含有することで、相手材に対する攻撃性を抑制し、耐摩耗性を向上させることができる。
無機充填材としては、乾式摩擦材に通常用いられるものであることができ、特に制限されないが、例えば、チタン酸カリウム、チタン酸リチウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸マグネシウムカリウム等のチタン酸化合物;硫酸バリウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等の無機化合物;バーミキュライト、マイカ等の鱗片状無機物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、チタン酸カリウムは、モース硬度が4程度であるため、弱研削材としての作用も備えており、これにより強研削材を用いた場合に比べ、相手材に対する攻撃性を緩和する作用を有するため、チタン酸カリウムを使用すること好ましい。チタン酸カリウムの形状としては、例えば、繊維状、板状、球状、柱状、鱗片状、不定形等を用いることができる。
無機充填材の含有量は、摩擦特性の調整のために、摩擦材中、3〜15体積%とすることが好ましい。
研削材としては、乾式摩擦材に通常用いられるものであることができ、特に制限されないが、有機充填材の有機成分により相手材に形成された有機凝着膜が制動時に削られてしまい、本発明の所望の効果を得ることができなくなるのを防止するために、モース硬度が8以下の無機物を用いる。モース硬度が8以下の無機物としては、例えば、酸化マグネシウム(モース硬度6)、二酸化ケイ素(モース硬度7)、クロマイト(モース硬度5.5)、酸化ジルコニウム(モース硬度7)、ケイ酸ジルコニウム(モース硬度7.5)、四三酸化鉄(Fe)(モース硬度5.5)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、モース硬度が5〜8の無機物が、有機凝着膜を損なうことなく十分な研削効果を発揮できるためより好ましい。
研削材の含有量は、有機凝着膜を損なうことなく十分な研削効果を発揮できるために、摩擦材中、1〜5体積%とすることが好ましく、1〜3体積%がより好ましい。
本発明の乾式摩擦材には、前記の各成分以外にも公知の添加剤を配合することもできる。例えば、亜鉛、錫、銅、鉄、アルミニウム等の金属粉末、黒鉛(グラファイト)、二硫化モリブデン、硫化錫、硫化亜鉛、硫化鉄等の潤滑材等が挙げられる。
本発明の乾式摩擦材の製造方法は、上記した乾式摩擦材原料を混合して摩擦材組成物を得る工程と、得られた摩擦材組成物を熱成形する工程と、熱成形された摩擦材組成物を加熱する工程と、を少なくとも備える。前記摩擦材組成物としては、上記した乾式摩擦材原料及びその配合割合が適用される。以下、各工程について具体的に説明する。
摩擦材組成物を得る工程では、まず、前記の乾式摩擦材原料を、所定の配合割合でもって混合し、摩擦材組成物を調製し、さらに乾式混合でもって十分に均質化する。摩擦材組成物には、有機充填材を50〜80容量%含有し、その他に前記した結合材、繊維基材、無機充填材及び研削材を含む。また、研削材はモース硬度8以下の無機物を含む。
続いて、均質化された摩擦材組成物を、常温にて仮押しして予備成形体を作製する。
次に、摩擦材組成物を熱成形する工程では、予備成形体を熱成形型に投入して加熱圧縮成形を行い、摩擦材成形体を得る。加熱圧縮成形の条件としては、成形温度120〜160℃、面圧2〜15MPa、成形時間3〜15分間の条件下で行うことが好ましい。
そして、加熱工程では、熱成形された摩擦材組成物、即ち摩擦材成形体に対してアフターキュアを行い、乾式摩擦材を得る。アフターキュアの条件としては、120〜160℃、30分〜3時間の条件下で行うことが好ましい。
その後、必要に応じて、研摩等の仕上げ処理をさらに施してもよい。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜3)
<乾式摩擦材の作製>
表1に示した配合処方(体積%)に従い、各原料をヘンシェルミキサーで3〜5分間混合し、一定量を取り出した後、治具にて仮押しし、予備成形体を作製した。次いで、予備成形体をプレスに投入し、温度120〜160℃、面圧2〜15MPa、3〜15分間で熱成形を行った。その後、120〜160℃で30分間のアフターキュアを行い、研摩工程を経て乾式摩擦材を得た。得られた乾式摩擦材の形状は、外径φ95mm、内径φ80mm、厚さ2mmのドーナツ状であった。
なお、有機充填材であるコルク粉末、カシューダストおよびゴムダストの合計量が83体積%である比較例2は、摩擦材組成物中の有機成分が多すぎて加熱成形時に膨れてしまい、成形できなかった。
Figure 2018021157
<試験例1:成形性の評価>
乾式摩擦材の成形性について以下の評価基準により評価した。結果を表2に示す。
○:成形・加熱時に膨れが目視にて確認されなかった。
×:成形・加熱時に膨れが目視にて確認された。
<試験例2:静摩擦係数の測定>
得られた乾式摩擦材について、以下の条件にて静摩擦係数μ(静μ)を測定した。
〔試験条件〕
試験機:コンパクトテスター
相手材:炭素鋼
初期静μ:回転数0.2rpm、荷重1000N、回数30回
摺り合せ:回転数250rpm、荷重1000N、回数5000回
断続後静μ:回転数0.2rpm、荷重1000N、回数30回
まず、作製した乾式摩擦材に対し、初期静μを上記の条件で測定し、続いて摺り合せ(制動)を行った。その後、摺り合せを行った乾式摩擦材に対し、初期静μと同じ条件で断続後静μを測定した。結果を表2に示す。
<試験例3:摩耗量の測定>
試験例2で断続後静μを測定した乾式摩擦材に対し、表面の摩耗量をマイクロメーターにて測定した。結果を表2に示す。
<試験例4:相手材攻撃性の評価>
試験例2で断続後静μを測定した乾式摩擦材に対し、相手材攻撃性を以下の評価条件で評価した。結果を表2に示す。
○:相手材摩耗量が10μm未満。
×:相手材摩耗量が10μm以上。
Figure 2018021157
表2の結果から、実施例1〜5の乾式摩擦材は、有機充填材が相手材に凝着することにより、初期静μ、断続後静μ共に0.50以上の高い値を示していた。これは有機充填材における有機成分によって相手材に有機凝着膜が形成され凝着摩擦が発生したことに起因すると推測される。また、断続後静μが高い値を示しているため、十分に高い摩擦係数を継続して維持できる。そして、実施例1〜5の乾式摩擦材は、成形性、耐摩耗性、相手材に対する攻撃性も優れることがわかった。なお、総合評価は成形性、静μ、摩耗量、相手材攻撃性の全ての評価項目において評価基準を満たした実施例1〜5を○として表記した。
これに対し、有機充填材であるコルク粉末、カシューダストおよびゴムダストの合計量が41体積%である比較例1の乾式摩擦材は、所定の高い初期静μ0.5が得られず、安定した摩擦係数を得ることができなかった。また、比較例3は有機充填材の合計量が57体積%であるものの、モース硬度9の強研削材である酸化アルミニウムを含有しているため、相手材表面を強く研削してしまい相手材攻撃性の評価が悪い結果となった。なお、総合評価は先述した全ての評価項目のうち、ひとつでも評価基準を満たさない比較例1〜3を×として表記した。
本発明の乾式摩擦材は、摩擦部材及び相手材を含むトルク伝達部材の前記摩擦部材に用いられ、相手材に対する攻撃性が低く、かつ耐摩耗性に優れることから、特に自動車及び産業機械等のトルク伝達用クラッチフェーシング、ブレーキライニング等に有用である。例えば、自動車用としては、カーエアコンのコンプレッサ用電磁クラッチ等に、産業機械用としては建設機械のポンプ駆動用電磁クラッチ等に用いることができる。

Claims (12)

  1. 摩擦部材及び相手材を含むトルク伝達部材の前記摩擦部材に用いられる乾式摩擦材であって、
    結合材、繊維基材、有機充填材、無機充填材及び研削材を含み、前記有機充填材を50〜80体積%含有し、前記研削材がモース硬度が8以下の無機物であり、
    前記有機充填材が前記相手材に凝着することによりトルクを発生することを特徴とする乾式摩擦材。
  2. 前記有機充填材として、カシューダストを30体積%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の乾式摩擦材。
  3. 前記有機充填材として、コルク粉末を10体積%以上含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の乾式摩擦材。
  4. 前記結合材が熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の乾式摩擦材。
  5. 前記繊維基材がセルロース繊維を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の乾式摩擦材。
  6. 前記無機充填材がチタン酸カリウムを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の乾式摩擦材。
  7. トルク伝達部材を構成する摩擦部材に用いられる乾式摩擦材の製造方法であって、
    乾式摩擦材原料を混合して摩擦材組成物を得る工程と、前記摩擦材組成物を熱成形する工程と、熱成形された摩擦材組成物を加熱する工程と、を少なくとも備え、
    前記摩擦材組成物が、結合材、繊維基材、有機充填材、無機充填材及び研削材を含み、前記有機充填材を摩擦材組成物中50〜80体積%含有し、前記研削材がモース硬度が8以下の無機物であることを特徴とする乾式摩擦材の製造方法。
  8. 前記有機充填材として、カシューダストを摩擦材組成物中30体積%以上含有することを特徴とする請求項7に記載の乾式摩擦材の製造方法。
  9. 前記有機充填材として、コルク粉末を摩擦材組成物中10体積%以上含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の乾式摩擦材の製造方法。
  10. 前記結合材が熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の乾式摩擦材の製造方法。
  11. 前記繊維基材がセルロース繊維を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の乾式摩擦材の製造方法。
  12. 前記無機充填材がチタン酸カリウムを含むことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の乾式摩擦材の製造方法。
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