JP2018021125A - 潤滑被膜組成物及び湿式摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、良好な密着性を維持しながら、流体潤滑領域から境界潤滑領域までの領域にわたって十分に摩擦係数を低減する潤滑被膜組成物及び湿式摺動部材を提供する。【解決手段】本発明の湿式摺動部材は、基材2と、前記基材2上に形成される下記組成からなる潤滑被膜3と、を有することを特徴とする。組成:ポリアミドイミド20〜50質量%及びポリテトラフルオロエチレン50〜80質量%本発明の湿式摺動部材は、内燃機関のピストン1に限らず、潤滑油が介在する摺動部に広く使用される。【選択図】図3
Description
本発明は、潤滑被膜組成物及び湿式摺動部材に関する。
従来、耐熱性樹脂としてのポリアミドイミドを主材とし、これに固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンと無機充填剤とを含む潤滑被膜組成物が知られている。例えば、特許文献1には、ポリアミドイミド90〜95重量部に対してポリテトラフルオロエチレンを5〜10重量部の割合で含む樹脂混合物100重量部に、アルミナ粒子5〜10重量部又は窒化ケイ素ウィスカ1〜10重量部を配合した潤滑被膜組成物が記載されている。また、特許文献2には、ポリアミドイミド71〜78重量%、ポリテトラフルオロエチレン3〜5重量%、及び二硫化モリブデン19〜24重量%からなる潤滑被膜組成物が記載されている。
この潤滑被膜組成物は、内燃機関のピストンのスカート表面に施されて、密着性に優れた潤滑被膜を形成する。このような潤滑被膜によれば、シリンダボアに対するピストンの摩擦係数を低減することができ、この内燃機関を備える車両の燃費を低減することができる。
この潤滑被膜組成物は、内燃機関のピストンのスカート表面に施されて、密着性に優れた潤滑被膜を形成する。このような潤滑被膜によれば、シリンダボアに対するピストンの摩擦係数を低減することができ、この内燃機関を備える車両の燃費を低減することができる。
昨今、エネルギ使用量及びCO2排出量の削減を目的に車両の低燃費化の要請が高まっており、ピストンをはじめとして車両の湿式摺動部における摩擦係数のさらなる低減化が望まれている。
ところで、湿式摺動部における摩擦係数は、ストライベック線図で示されるように、潤滑油の粘度、摺動速度及び荷重に応じた流体潤滑領域、弾性流体潤滑領域、混合潤滑領域、及び境界潤滑領域において変化する。
しかし、従来の潤滑被膜組成物から得られる潤滑被膜は、流体潤滑領域から境界潤滑領域の全ての領域において十分に摩擦係数を低減することができない課題があった。
ところで、湿式摺動部における摩擦係数は、ストライベック線図で示されるように、潤滑油の粘度、摺動速度及び荷重に応じた流体潤滑領域、弾性流体潤滑領域、混合潤滑領域、及び境界潤滑領域において変化する。
しかし、従来の潤滑被膜組成物から得られる潤滑被膜は、流体潤滑領域から境界潤滑領域の全ての領域において十分に摩擦係数を低減することができない課題があった。
そこで、本発明の課題は、良好な密着性を維持しながら、流体潤滑領域から境界潤滑領域までの領域にわたって十分に摩擦係数を低減する潤滑被膜組成物及び湿式摺動部材を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の潤滑被膜組成物は、下記組成からなることを特徴とする潤滑被膜組成物。
組成:ポリアミドイミド 20〜50質量%
ポリテトラフルオロエチレン 50〜80質量%
組成:ポリアミドイミド 20〜50質量%
ポリテトラフルオロエチレン 50〜80質量%
また、前記課題を解決する本発明の湿式摺動部材は、基材と、前記基材上に形成される下記組成からなる潤滑被膜と、を有することを特徴とする。
組成:ポリアミドイミド 20〜50質量%
ポリテトラフルオロエチレン 50〜80質量%
組成:ポリアミドイミド 20〜50質量%
ポリテトラフルオロエチレン 50〜80質量%
本発明によれば、良好な密着性を維持しながら、流体潤滑領域から境界潤滑領域までの領域にわたって十分に摩擦係数を低減する潤滑被膜組成物及び湿式摺動部材を提供することができる。
次に、本発明の実施形態における内燃機関のピストン(湿式摺動部材)について説明する。
本実施形態のピストンは、基材と、この基材上に形成される後記の所定の組成からなる潤滑被膜と、を有することを主な特徴とする。
本実施形態のピストンは、基材と、この基材上に形成される後記の所定の組成からなる潤滑被膜と、を有することを主な特徴とする。
本実施形態でのピストンは、自動車用エンジンに使用されるものを想定しており、シリンダブロックに形成される円柱空間からなるシリンダボア内に往復運動可能に配置されている。ちなみに、ピストンが配置されるシリンダブロックは、上側に吸気ポート及び排気ポートが配置されるシリンダヘッドを備え、下側にクランクシャフトを回転自在に支持するクランクケースを備えている。ピストンは、このクランクシャフトにコネクティングロッド(コンロッド)を介して取り付けられている。ピストンには、クランクケースの下側に配置されるオイルパンから所定の経路を介してオイル(潤滑油)が供給される。以下では、まずピストン(湿式摺動部材)の全体構成について説明した後に、ピストンの潤滑被膜及びピストンの製造方法について説明する。
<ピストンの全体構成>
図1は、本実施形態のピストン1の斜視図である。図2は、図1のII−II線におけるピストン1の縦断面図である。なお、以下の説明における上下の方向は、シリンダボア内に配置されたピストンのシリンダヘッド側を上方向とし、クランクケース側を下方向とした図1に示す上下の矢印方向を基準とする。
図1は、本実施形態のピストン1の斜視図である。図2は、図1のII−II線におけるピストン1の縦断面図である。なお、以下の説明における上下の方向は、シリンダボア内に配置されたピストンのシリンダヘッド側を上方向とし、クランクケース側を下方向とした図1に示す上下の矢印方向を基準とする。
図1に示すように、ピストン1は、円柱状のピストンヘッド6と、このピストンヘッド6と一体に形成されるサイドウォール7とスカート8と、を備えている。
ピストンヘッド6には、前記のシリンダボア(図示を省略)内で燃焼空間を画成する上面9が規定されている。
上面9の中央部には、この上面9が下方に部分的に窪んで形成される燃焼室10が形成されている。
ピストンヘッド6には、前記のシリンダボア(図示を省略)内で燃焼空間を画成する上面9が規定されている。
上面9の中央部には、この上面9が下方に部分的に窪んで形成される燃焼室10が形成されている。
ピストンヘッド6の外周面には、上方から順番に第1リング溝12a、第2リング溝12b、及び第3リング溝12cが所定の間隔を開けて並ぶように形成されている。なお、第1リング溝12aにはトップリング(図示を省略)が取り付けられる。第2リング溝12bにはセカンドリング(図示を省略)が取り付けられる。第3リング溝12cには、オイルリング(図示を省略)が取り付けられる。
サイドウォール7は、図1及び図2に示すように、ピストンヘッド6の下方で相互に対向するように一対配置され、前記のようにピストンヘッド6と一体に形成されている。ちなみに、図1には対向し合うサイドウォール7のうちの一方のサイドウォール7aの外面が示され、図2には、対向し合うサイドウォール7のうちの一方のサイドウォール7bの内面が示されている。
図1に示すように、サイドウォール7aには、ピン挿通孔13aが形成されるピンボス14aが一体に形成されている。図2に示すように、サイドウォール7bには、ピン挿通孔13bが形成されるピンボス14bが一体に形成されている。これらピン挿通孔13a(図1参照)及びピン挿通孔13b(図2参照)には、前記のコネクティングロッドと連結するピストンピン(図示を省略)が挿通される。
本実施形態でのスカート8aとスカート8bとは、図2に示すように、ピストンヘッド6の下方で相互に対向するように一対配置されている。これらのスカート8a,8bは、一対のサイドウォール7a,7b(7aは図1参照)を連結するように配置され、前記のようにピストンヘッド6と一体に形成されている。本実施形態でのサイドウォール7a,7bとスカート8a,8bとは、一体に形成されることで、図2に示すように、内側に中空部15を有している。この中空部15は、下方に開放され、上方がピストンヘッド6で閉じられている。
スカート8a,8bは、シリンダボア(図示を省略)の内周面に摺接する断面視で円弧の外周面Sを有している。
この外周面Sは、図2に示す潤滑被膜3の外表面で形成されている。本実施形態でのスカート8a,8bの外周面Sは、略全面が潤滑被膜3の外表面で形成されているものを想定している。しかし、スカート8a,8bの外周面Sは、図示しないが、スカート8a,8bの基材2が部分的に露出するように、潤滑被膜3の外表面と基材2の表面とが海島状に形成される構成とすることもできる。
図2中、符号10は燃焼室であり、符号12aは第1リング溝であり、符号12bは第2リング溝であり、符号12cは第3リング溝である。
この外周面Sは、図2に示す潤滑被膜3の外表面で形成されている。本実施形態でのスカート8a,8bの外周面Sは、略全面が潤滑被膜3の外表面で形成されているものを想定している。しかし、スカート8a,8bの外周面Sは、図示しないが、スカート8a,8bの基材2が部分的に露出するように、潤滑被膜3の外表面と基材2の表面とが海島状に形成される構成とすることもできる。
図2中、符号10は燃焼室であり、符号12aは第1リング溝であり、符号12bは第2リング溝であり、符号12cは第3リング溝である。
<潤滑被膜>
図3は、図2における潤滑被膜3の部分拡大断面図である。
図3に示すように、本実施形態での潤滑被膜3は、後に詳しく説明するように、ピストン1の製造用の基材2に潤滑被膜組成物を含む塗料を塗布し、これを加熱乾燥させて形成したものである。
図3は、図2における潤滑被膜3の部分拡大断面図である。
図3に示すように、本実施形態での潤滑被膜3は、後に詳しく説明するように、ピストン1の製造用の基材2に潤滑被膜組成物を含む塗料を塗布し、これを加熱乾燥させて形成したものである。
本実施形態での基材2は、ピストン1と略同形状を呈している。この基材2は、アルミニウム合金で形成されているものを想定している。なお、基材2の材質は、これに限定されずにピストン材料に使用される鉄等の他の金属であっても構わない。
また、内燃機関のピストン以外の後記する湿式摺動部材に本発明が適用される場合には、基材2の材質は、当該湿式摺動部材として使用される公知の金属から選択して設定することができる。
また、内燃機関のピストン以外の後記する湿式摺動部材に本発明が適用される場合には、基材2の材質は、当該湿式摺動部材として使用される公知の金属から選択して設定することができる。
潤滑被膜3を形成する潤滑被膜組成物は、耐熱性樹脂としてのポリアミドイミド20〜50質量%、望ましくは20〜40質量%、さらに望ましくは23〜40質量%と、固体潤滑剤としての粒子状のポリテトラフルオロエチレン50〜80質量%、望ましくは60〜80質量%、さらに望ましくは60質量%〜77質量%とからなる。
本実施形態での潤滑被膜3の厚さとしては、4〜15μm、望ましくは4〜12μm程度を想定しているが、これに限定されるものではなくピストン1が使用される内燃機関の仕様に応じて適宜に設定することができる。
図3に示すように、本実施形態での潤滑被膜3においては、粒子状のポリテトラフルオロエチレンPTFEがポリアミドイミドPAIの媒体中に含まれるように構成されている。ただし、図3は、潤滑被膜3を模式的に表したものであり、潤滑被膜3に含まれるポリテトラフルオロエチレンPTFEの実際の粒径、数量等を正確に反映して示すものではない。
ポリアミドイミド(以下、符号PAIを省略することがある)としては、公知のものを使用することができ、例えば、無水トリメリット酸等の1分子中にカルボキシル基と酸無水物基とを有する酸とジイソシアネートとを反応させて得られるもの、無水トリメリット酸クロライド等の酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマ(ポリアミドイミド前駆体)をイミド化して得られるもの等が挙げられる。また、本実施形態でのポリアミドイミドは、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基や、架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
また、分子量については特に限定されるものではないが、DSC法による融点で320℃以上のものが望ましい。また、後記する潤滑被膜組成物の製造工程において、例えば所定の溶剤を使用する場合には当該溶剤に可溶なものが望ましい。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、符号PTFEを省略することがある)としては、例えば、低分子量ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン・パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でも、乳化重合により製造された球形又は球形に近い形状のものが特に望ましい。
ポリテトラフルオロエチレンとしては、一次粒径200nm以下、望ましくは120nm以下のもので、二次粒径6μm以下、望ましくは4μm以下のものを好適に使用することができる。なお、本実施形態でのポリテトラフルオロエチレンの粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定法により測定した体積累積平均粒径D50(メジアン径)である。
また、ポリテトラフルオロエチレンは、ダイキン工業社製のルブロン(登録商標)L−5、L−2、L−7、旭アイシーアイフロロポリマーズ社製のフルオン(登録商標)L−150J、L−169J、L−170J、L−172J、三井・デュポンフロロケミカル社製のTLP−10F−1、ヘキストジャパン社製のホスタフロンTF9202、TF9205等の市販品を使用することもできる。
<ピストンの製造方法>
次に、本実施形態のピストン1(図1参照)の製造方法について説明する。
この製造方法では、まず前記の基材2(図2参照)が製造される。
基材2の製造工程では、ピストン1(図1参照)の形状を略模ったキャビティを内側に有する金型内に溶湯(本実施形態では溶融アルミニウム合金)が注入される。
次に、本実施形態のピストン1(図1参照)の製造方法について説明する。
この製造方法では、まず前記の基材2(図2参照)が製造される。
基材2の製造工程では、ピストン1(図1参照)の形状を略模ったキャビティを内側に有する金型内に溶湯(本実施形態では溶融アルミニウム合金)が注入される。
金型は、水平方向に移動可能な一対の側型と、上方から側型に組み合わせられる上型と、下方から側型に組み合わせられる下型と、を主に備えて構成されている。
閉じられた金型内には、倒立状態のピストン1の形状を模った前記のキャビティが形成される。側型には、溶湯が流れるランナが形成されている。このランナは、キャビティ周りの所定箇所に複数形成されたゲートを介してキャビティに連通している。
閉じられた金型内には、倒立状態のピストン1の形状を模った前記のキャビティが形成される。側型には、溶湯が流れるランナが形成されている。このランナは、キャビティ周りの所定箇所に複数形成されたゲートを介してキャビティに連通している。
金型内の溶湯が冷却された後、型開きされた金型内からピストン1の基材2が取り出される。その後、切削、研磨等による基材2の仕上げ加工が行われて一連の基材2の製造工程は終了する。
なお、ここでは基材2を鋳造法にて製造する工程について説明したが、基材2は鍛造法にて製造することもできる。
そして、基材2におけるスカート8a,8b(図2参照)の外周面S(図2参照)に対応する部分に、前記組成の潤滑被膜組成物からなる潤滑被膜3(図2参照)が形成される。
なお、ここでは基材2を鋳造法にて製造する工程について説明したが、基材2は鍛造法にて製造することもできる。
そして、基材2におけるスカート8a,8b(図2参照)の外周面S(図2参照)に対応する部分に、前記組成の潤滑被膜組成物からなる潤滑被膜3(図2参照)が形成される。
<潤滑被膜の形成方法>
本実施形態での潤滑被膜3は、次に説明する潤滑被膜形成用塗料がスカート8a,8b(図2参照)の外周面S(図2参照)に塗布され、加熱乾燥されることで形成される。
本実施形態での潤滑被膜3は、次に説明する潤滑被膜形成用塗料がスカート8a,8b(図2参照)の外周面S(図2参照)に塗布され、加熱乾燥されることで形成される。
本実施形態での潤滑被膜形成用塗料は、前記潤滑被膜組成物の組成割合で含むポリアミドイミドPAIと粒子状のポリテトラフルオロエチレンPTFEとの樹脂混合物と、所定の有機溶媒とを均一に攪拌、混合することにより得られる。
前記の有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルクロロホルム、トリクロロエチレン、トリクロロトリフルオエタン等の有機ハロゲン化合物類、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、メチルイソピロリドン(MIP)、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、ジメチルアセトアルデヒド(DMAC)等が挙げられる。
なお、この有機溶媒は、潤滑被膜形成用塗料を基材2に塗布する際の粘度調整のために使用され、後の加熱・乾燥工程において揮発する。これにより基材2の表面で塗布・乾燥した潤滑被膜形成用塗料は、前記組成の潤滑被膜組成物となる。
有機溶媒の配合量は、基材2に対する後記の塗布方法に応じて好適な粘度となるように適宜設定することができる。
なお、この有機溶媒は、潤滑被膜形成用塗料を基材2に塗布する際の粘度調整のために使用され、後の加熱・乾燥工程において揮発する。これにより基材2の表面で塗布・乾燥した潤滑被膜形成用塗料は、前記組成の潤滑被膜組成物となる。
有機溶媒の配合量は、基材2に対する後記の塗布方法に応じて好適な粘度となるように適宜設定することができる。
基材2に対する潤滑被膜形成用塗料の塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗布、ロール塗布、スクリーン印刷、ナイフコーティング、パッド塗布、浸漬塗布等が挙げられる。
基材2に塗布した潤滑被膜形成用塗料の加熱・乾燥工程としては、例えば、有機溶媒の揮発工程と、この揮発工程後に行われる潤滑被膜の硬化工程との2工程を有するものが望ましい。
揮発工程は、例えば、60〜100℃で5〜120分間の加熱条件で行われることが望ましい。また、硬化工程は、100〜280℃で5〜240分間の加熱条件で行われることが望ましい。
揮発工程は、例えば、60〜100℃で5〜120分間の加熱条件で行われることが望ましい。また、硬化工程は、100〜280℃で5〜240分間の加熱条件で行われることが望ましい。
次に、本実施形態の潤滑被膜組成物からなる潤滑被膜を有するピストン1(湿式摺動部材)の奏する作用効果について説明する。
ポリアミドイミド(耐熱性樹脂)と、ポリテトラフルオロエチレン(固体潤滑剤)とを含む従来の潤滑被膜組成物(例えば、特許文献1、2参照)では、ポリテトラフルオロエチレンがポリアミドイミドの結合力を低下させるため、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)が低く抑えられている。例えば、具体的には特許文献1、2においては、アルミニウム合金基材に対する潤滑被膜の密着性、耐摩耗性を維持するために、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)を前記の範囲とすることが開示されている。また、従来の潤滑被膜組成物においては、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)を低減した代わりに、二硫化モリブデン、窒化ケイ素等の他の固体潤滑剤(無機固体潤滑剤)を配合している。しかし、二硫化モリブデン、窒化ケイ素等の他の固体潤滑剤(無機固体潤滑剤)は、低減したポリテトラフルオロエチレンの固体潤滑性能を十分に補填することができないために、従来の潤滑被膜組成物では、流体潤滑領域から境界潤滑領域の全ての領域において十分に摩擦係数を低減することができない課題があった。
ポリアミドイミド(耐熱性樹脂)と、ポリテトラフルオロエチレン(固体潤滑剤)とを含む従来の潤滑被膜組成物(例えば、特許文献1、2参照)では、ポリテトラフルオロエチレンがポリアミドイミドの結合力を低下させるため、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)が低く抑えられている。例えば、具体的には特許文献1、2においては、アルミニウム合金基材に対する潤滑被膜の密着性、耐摩耗性を維持するために、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)を前記の範囲とすることが開示されている。また、従来の潤滑被膜組成物においては、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)を低減した代わりに、二硫化モリブデン、窒化ケイ素等の他の固体潤滑剤(無機固体潤滑剤)を配合している。しかし、二硫化モリブデン、窒化ケイ素等の他の固体潤滑剤(無機固体潤滑剤)は、低減したポリテトラフルオロエチレンの固体潤滑性能を十分に補填することができないために、従来の潤滑被膜組成物では、流体潤滑領域から境界潤滑領域の全ての領域において十分に摩擦係数を低減することができない課題があった。
これに対して、本実施形態の潤滑被膜組成物は、従来の潤滑被膜組成物(例えば、特許文献1、2参照)とは異なって、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)を、前記のようにポリアミドイミドと同等以上に設定するとともに、他の固体潤滑剤を含まない構成となっている。
これにより本実施形態の潤滑被膜組成物は、従来の潤滑被膜組成物(例えば、特許文献1、2参照)と比べて格段に多くのポリテトラフルオロエチレンを含むことによって、流体潤滑領域から境界潤滑領域までの領域にわたって十分に摩擦係数を低減することができる。
また、本実施形態の潤滑被膜組成物は、ポリテトラフルオロエチレン以外の他の固体潤滑剤を含まずに、前記のようにポリテトラフルオロエチレンを比較的多く含むことによって、ポリアミドイミドとの結合性が向上する。具体的には、基材2と潤滑被膜3との密着性、潤滑被膜3の耐摩耗性等が向上する。ただし、ポリアミドイミドの含有率が20質量%未満になると(ポリテトラフルオロエチレンの含有量が80質量%を超えると)、ポリアミドイミド自体の結合力が十分に発揮されないことがある。
この作用効果は、ポリテトラフルオロエチレンの含有量(配合量)を低く抑えた特許文献1、2に開示される構成及びその作用効果に反するが、前記の硬化工程における加熱によって、近接するポリテトラフルオロエチレン微粒子同士の部分的かつ微視的なフィブリル化に起因して奏する作用効果であると考えられる。本実施形態の奏するこのような作用効果は、2次粒径で6μm以下のポリテトラフルオロエチレンを使用することでより顕著に現われる。また、前記したように、一次粒径で200nm以下、望ましくは120nm以下のもので、二次粒径6μm以下、望ましくは4μm以下のポリテトラフルオロエチレンは、特に好適となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
図4は、図3における潤滑被膜3の変形例を示す部分拡大断面図である。なお、図4中、前記実施形態と同様の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
図4に示すように、変形例に係る潤滑被膜3は、基材2側から順番に第1層3aと、第2層3bの2層で構成されている。
第1層3aの組成は、ポリアミドイミド20〜50質量%、ポリテトラフルオロエチレン50〜80質量%となっている。第2層3bの組成は、ポリアミドイミド7〜15質量%、ポリテトラフルオロエチレン85〜93質量%となっている。
図4は、図3における潤滑被膜3の変形例を示す部分拡大断面図である。なお、図4中、前記実施形態と同様の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
図4に示すように、変形例に係る潤滑被膜3は、基材2側から順番に第1層3aと、第2層3bの2層で構成されている。
第1層3aの組成は、ポリアミドイミド20〜50質量%、ポリテトラフルオロエチレン50〜80質量%となっている。第2層3bの組成は、ポリアミドイミド7〜15質量%、ポリテトラフルオロエチレン85〜93質量%となっている。
このような潤滑被膜3を有するピストン1によれば、第2層3bに高濃度のポリテトラフルオロエチレンを含有させることで、初期摺動のなじみ後、第1層3aに第2層3bの高濃度のポリテトラフルオロエチレンが移行する。これにより基材2上には、前記実施形態の潤滑被膜3と比べて、さらに高い含有率でポリテトラフルオロエチレンを含むこととなる。これにより第1層3aと基材2との良好な密着性が維持された状態で、第1層3aの潤滑性能をさらに向上させることができる。ちなみに、このピストン1は、初期摺動のなじみ後の第2層3bを除去してから供せられる。
また、前記実施形態では、湿式摺動部材としてのピストン1について説明したが、本発明の湿式摺動部材としては、ピストン1に限定されずに、カム、タペット、メタル、ピストンリング、シリンダライナ等の他の湿式摺動部材に適用することもできる。
以下では、本発明の潤滑被膜組成物からなる潤滑被膜を有する湿式摺動部材の奏する作用効果を検証した実施例について説明する。
(実施例1〜4、比較例1、2)
実施例1〜4、比較例1、2では、本発明の湿式摺動部材を模擬した試験片を作製した。試験片は、アルミニウム合金AC8Bの板体を基材とし、この基材の表面に潤滑被膜を形成したものである。
潤滑被膜は、基材上に潤滑被膜形成用塗料を塗布した後、これを加熱乾燥させて形成した。
潤滑被膜形成用塗料は、表1に示す割合でポリアミドイミド(PAI)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを含むものを、有機溶媒で粘度調整して得た。
実施例1〜4、比較例1、2では、本発明の湿式摺動部材を模擬した試験片を作製した。試験片は、アルミニウム合金AC8Bの板体を基材とし、この基材の表面に潤滑被膜を形成したものである。
潤滑被膜は、基材上に潤滑被膜形成用塗料を塗布した後、これを加熱乾燥させて形成した。
潤滑被膜形成用塗料は、表1に示す割合でポリアミドイミド(PAI)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを含むものを、有機溶媒で粘度調整して得た。
表1中、1次粒径及び2次粒径は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の1次粒径及び2次粒径である。これらの粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定法により測定した体積累積平均粒径D50(メジアン径)である。また、有機溶媒には、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)を使用した。基材表面に対する潤滑被膜形成用塗料の塗布方法は、ロール塗布法を採用した。
加熱・乾燥工程としては、有機溶媒の揮発工程と、この揮発工程後に潤滑被膜の硬化工程の2工程を行った。
揮発工程は、80℃で10分間の加熱条件で行った。硬化工程は、190℃で20分間の加熱条件で行った。
作製した実施例1〜4、比較例1、2のそれぞれの試験片について、次の密着性評価試験と、せん断応力試験と、摩擦係数測定試験とを行った。
加熱・乾燥工程としては、有機溶媒の揮発工程と、この揮発工程後に潤滑被膜の硬化工程の2工程を行った。
揮発工程は、80℃で10分間の加熱条件で行った。硬化工程は、190℃で20分間の加熱条件で行った。
作製した実施例1〜4、比較例1、2のそれぞれの試験片について、次の密着性評価試験と、せん断応力試験と、摩擦係数測定試験とを行った。
[密着性評価試験]
JIS K5600に規定するクロスカット法によって、基材の表面に対する潤滑被膜の密着性について評価した。評価は、JIS K5600−5−6:1999に準拠した0分類から5分類の6段階にて行った。
JIS K5600に規定するクロスカット法によって、基材の表面に対する潤滑被膜の密着性について評価した。評価は、JIS K5600−5−6:1999に準拠した0分類から5分類の6段階にて行った。
[せん断応力試験]
試験片を固定し、相手材アルミニウム合金をクリアランス20μmとなるように保ち、回転させることによって、相手材と試験片との間に介在する潤滑油のせん断応力(Pa)を測定した。
試験片を固定し、相手材アルミニウム合金をクリアランス20μmとなるように保ち、回転させることによって、相手材と試験片との間に介在する潤滑油のせん断応力(Pa)を測定した。
[摩擦係数測定試験]
すべり速度0.5m/秒、相手材アルミニウム合金AC8A、すべり距離1800m、面圧3.78MPa、潤滑油(PAO−4)0.3mLの潤滑環境下に、潤滑油を介して相手材と摺接する湿式摺動部材(試験片)の摩擦係数を試験機にて測定した。
すべり速度0.5m/秒、相手材アルミニウム合金AC8A、すべり距離1800m、面圧3.78MPa、潤滑油(PAO−4)0.3mLの潤滑環境下に、潤滑油を介して相手材と摺接する湿式摺動部材(試験片)の摩擦係数を試験機にて測定した。
これらの試験結果を表1、並びに図5、図6及び図7に示す。
なお、表1、並びに図5、図6及び図7には、せん断応力及び摩擦係数の試験結果として、実施例1のそれぞれの測定結果を「100」とした相対値(せん断応力比及び摩擦係数比)を記載した。
図5は、実施例1〜4、比較例1、2の湿式摺動部材における基材に対する潤滑被膜の密着性評価試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、密着性の分類である。
図6は、実施例1〜4、比較例1、2の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、相手材と間に介在する潤滑油の前記したせん断応力比である。
図7は、実施例1〜4、比較例1、2の湿式摺動部材(試験片)における摩擦係数測定試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、潤滑油を介して相手材と接する湿式摺動部材(試験片)の前記した摩擦係数比である。
なお、表1、並びに図5、図6及び図7には、せん断応力及び摩擦係数の試験結果として、実施例1のそれぞれの測定結果を「100」とした相対値(せん断応力比及び摩擦係数比)を記載した。
図5は、実施例1〜4、比較例1、2の湿式摺動部材における基材に対する潤滑被膜の密着性評価試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、密着性の分類である。
図6は、実施例1〜4、比較例1、2の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、相手材と間に介在する潤滑油の前記したせん断応力比である。
図7は、実施例1〜4、比較例1、2の湿式摺動部材(試験片)における摩擦係数測定試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、潤滑油を介して相手材と接する湿式摺動部材(試験片)の前記した摩擦係数比である。
また、参考例として、次の組成からなる潤滑被膜を基材の表面に有する湿式摺動部材を前記と同様にして作製した。この参考例について、前記と同様のせん断応力試験及び摩擦係数測定試験を行った。せん断応力試験の結果(前記したせん断応力比)を図6に記載し、摩擦係数測定試験の結果(前記した摩擦係数比)を図7に記載した。
[参考例の潤滑被膜の組成]
ポリアミドイミド(PAI) 63.7質量%
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 22.0質量%
二硫化モリブデン 14.3質量%
ポリアミドイミド(PAI) 63.7質量%
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 22.0質量%
二硫化モリブデン 14.3質量%
表1、並びに図5、図6及び図7から明らかなように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率が50質量%以上の潤滑被膜を有する試験片は、密着性評価が0分類であり、かつ、せん断応力の試験結果及び摩擦係数の試験結果が参考例のものよりも優れていた。つまり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率が50質量%以上の潤滑被膜を有する湿式摺動部材は、潤滑被膜の密着性、潤滑油のせん断応力、及び相手材に対する摩擦係数の全てに優れることが判明した。
なお、図5中、密着性(分類)において、実施例1〜4の「0分類」とは、「カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない」である。比較例1の「分類1」とは、「カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない」である。比較例2の「分類3」とは、「塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない」である。
(実施例5、6)
実施例5、6では、表2に示す割合でポリアミドイミド(PAI)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを含む潤滑被膜を基材上に有する湿式摺動部材(試験片)を、前記の実施例1〜4と同様に作製した。
実施例5、6では、表2に示す割合でポリアミドイミド(PAI)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを含む潤滑被膜を基材上に有する湿式摺動部材(試験片)を、前記の実施例1〜4と同様に作製した。
密着性評価試験の結果は、実施例5、6の湿式摺動部材(試験片)のいずれもが分類0であった。
また、これらの湿式摺動部材(試験片)について、実施例1〜4と同様に密着性評価試験と、せん断応力試験と、摩擦係数測定試験とを行った。
図8は、実施例5、6の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果(前記したせん断応力比)を表すグラフである。図9は、実施例5、6の湿式摺動部材(試験片)における摩擦係数測定試験の結果(前記した摩擦係数比)を表すグラフである。
図8及び図9には、前記実施例3の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果(前記したせん断応力比)と、摩擦係数測定試験の結果(前記した摩擦係数比)を併記する。
また、これらの湿式摺動部材(試験片)について、実施例1〜4と同様に密着性評価試験と、せん断応力試験と、摩擦係数測定試験とを行った。
図8は、実施例5、6の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果(前記したせん断応力比)を表すグラフである。図9は、実施例5、6の湿式摺動部材(試験片)における摩擦係数測定試験の結果(前記した摩擦係数比)を表すグラフである。
図8及び図9には、前記実施例3の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果(前記したせん断応力比)と、摩擦係数測定試験の結果(前記した摩擦係数比)を併記する。
なお、実施例5、6のせん断応力(図8参照)及び摩擦係数(図9参照)については、実施例3のせん断応力(図8参照)及び摩擦係数(図9参照)よりも増加している。これはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の2次粒子径が4μmに対して、実施例5では6μm、実施例6では8μmと、それぞれ増大したことによるものと考えられる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の2次粒径が大きくなることで、潤滑被膜の表面粗さが増大したことによるものと考えられる。
(実施例7〜11)
実施例7〜11では、図4に示した2層構成(第1層3a、第2層3b)の潤滑被膜3を有する湿式摺動部材(ピストン1)を模擬した試験片を作製した。試験片は、アルミニウム合金AC8Bの板体を基材とし、この基材の表面に、表3に記載の第1層及び第2層の組成からなる潤滑被膜を形成したものである。
潤滑被膜を2層構成にした以外は、実施例1〜4と同様にして湿式摺動部材(試験片)を作製した。
実施例7〜11では、図4に示した2層構成(第1層3a、第2層3b)の潤滑被膜3を有する湿式摺動部材(ピストン1)を模擬した試験片を作製した。試験片は、アルミニウム合金AC8Bの板体を基材とし、この基材の表面に、表3に記載の第1層及び第2層の組成からなる潤滑被膜を形成したものである。
潤滑被膜を2層構成にした以外は、実施例1〜4と同様にして湿式摺動部材(試験片)を作製した。
密着性評価試験の結果は、実施例7〜11の湿式摺動部材(試験片)のいずれもが分類0であった。
また、これらの湿式摺動部材(試験片)について、実施例1〜4と同様に密着性評価試験と、せん断応力試験と、摩擦係数測定試験とを行った。
図10は、実施例7〜11の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、相手材と間に介在する潤滑油の前記したせん断応力比である。
図11は、実施例7〜11の湿式摺動部材(試験片)における摩擦係数測定試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、潤滑油を介して相手材と接する湿式摺動部材(試験片)の前記した摩擦係数比である。
図10及び図11には、前記実施例3の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果(前記したせん断応力比)と、摩擦係数測定試験の結果(前記した摩擦係数比)を併記する。
また、これらの湿式摺動部材(試験片)について、実施例1〜4と同様に密着性評価試験と、せん断応力試験と、摩擦係数測定試験とを行った。
図10は、実施例7〜11の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、相手材と間に介在する潤滑油の前記したせん断応力比である。
図11は、実施例7〜11の湿式摺動部材(試験片)における摩擦係数測定試験の結果を表すグラフである。グラフの横軸は、潤滑被膜におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の含有率(質量%)であり、グラフの縦軸は、潤滑油を介して相手材と接する湿式摺動部材(試験片)の前記した摩擦係数比である。
図10及び図11には、前記実施例3の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力試験の結果(前記したせん断応力比)と、摩擦係数測定試験の結果(前記した摩擦係数比)を併記する。
図10に示すように、実施例7〜10の湿式摺動部材(試験片)におけるせん断応力比は、実施例3のせん断応力比(42.4)と略同等か、それよりも下回っており、流体潤滑領域においても優れた潤滑性能を発揮している。また、実施例11の湿式摺動部材(試験片)のせん断応力比は、実施例3のせん断応力比(42.4)を超えているが、実施例1の湿式摺動部材(試験片)のせん断応力比(100)よりも小さい60.1となっている。
また、図11に示すように、実施例7〜11の湿式摺動部材(試験片)における摩擦係数比は、実施例3の摩擦係数比(89.3)と略同等か、実施例3よりも下回っている。
1 ピストン
2 基材
3 潤滑被膜
5 アルミナ粒子
6 ピストンヘッド
7 サイドウォール
7a サイドウォール
7b サイドウォール
8 スカート
8a スカート
8b スカート
10 燃焼室
12a 第1リング溝
12b 第2リング溝
12c 第3リング溝
13a ピン挿通孔
13b ピン挿通孔
14a ピンボス
14b ピンボス
15 中空部
PAI ポリアミドイミド
PTFE ポリテトラフルオロエチレン
S 外周面
2 基材
3 潤滑被膜
5 アルミナ粒子
6 ピストンヘッド
7 サイドウォール
7a サイドウォール
7b サイドウォール
8 スカート
8a スカート
8b スカート
10 燃焼室
12a 第1リング溝
12b 第2リング溝
12c 第3リング溝
13a ピン挿通孔
13b ピン挿通孔
14a ピンボス
14b ピンボス
15 中空部
PAI ポリアミドイミド
PTFE ポリテトラフルオロエチレン
S 外周面
Claims (6)
- 下記組成からなることを特徴とする潤滑被膜組成物。
組成:ポリアミドイミド 20〜50質量%
ポリテトラフルオロエチレン 50〜80質量% - 基材と、前記基材上に形成される下記組成からなる潤滑被膜と、を有することを特徴とする湿式摺動部材。
組成:ポリアミドイミド 20〜50質量%
ポリテトラフルオロエチレン 50〜80質量% - 請求項2に記載の湿式摺動部材において、
前記潤滑被膜に含まれるポリテトラフルオロエチレンは、60〜80質量%であることを特徴とする湿式摺動部材。 - 請求項2に記載の湿式摺動部材において、
前記ポリテトラフルオロエチレンは粒子状であり、2次粒径で6μm以下であることを特徴とする湿式摺動部材。 - 請求項2に記載の湿式摺動部材において、
前記潤滑被膜は、前記基材側から順番に第1層と第2層とを備え、
前記第2層は前記第1層と比べて、ポリテトラフルオロエチレンの含有率が大きいことを特徴とする湿式摺動部材。 - 請求項5に記載の湿式摺動部材において、
下記組成の前記第1層と、下記組成の前記第2層とを有する前記潤滑被膜を備えることを特徴とする湿式摺動部材。
第1層の組成:ポリアミドイミド 20〜50質量%
ポリテトラフルオロエチレン 50〜80質量%
第2層の組成:ポリアミドイミド 7〜15質量%
ポリテトラフルオロエチレン 85〜93質量%
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-
2016
- 2016-08-04 JP JP2016153351A patent/JP2018021125A/ja active Pending
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