JP2018020449A - 液体吐出装置及びその制御方法 - Google Patents

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公治 井上
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岡本 英明
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英明 岡本
山本 隆二
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【課題】静電吸引式の液体吐出装置において、吐出電極間での電流リークとを招くことなく簡単な構成で吐出部の配列密度よりも高解像度な画像を得る。【解決手段】それぞれ吐出電極が設けられている複数の吐出部を、1回の吐出タイミングごとに、液体を吐出する第1の吐出部と、複数の吐出部の配列において第1の吐出部の少なくとも両隣に位置する第2の吐出部とに組み分けする。吐出を行う場合に、第1の吐出部の吐出電極には、対向電極との間の電界によって液体が吐出する吐出しきい値電圧よりも大きい電圧を印加し、第1の吐出部の両隣となる第2の吐出部の吐出電極には、吐出しきい値電圧よりも小さい電圧であって、対応する第1の吐出部の位置において吐出部の配列方向において非対称な電界が形成される電圧を印加する。【選択図】図5

Description

本発明は、静電吸引式の液体吐出装置及びその制御方法に関する。
液体吐出装置は、被記録媒体に対して液体吐出ヘッドを相対的に移動させながら液体吐出ヘッドから例えば記録液などの液体を吐出することにより、被記録媒体に例えば画像などの記録を形成する。一般に液体吐出ヘッドには、液体を液滴として吐出する際にその吐出の起点となる複数の吐出部が配列して形成されている。液体吐出装置は、吐出部から液体を吐出するための機構により、ピエゾ素子の変形による圧力を利用する電気機械変換式、発熱素子によって液体の一部を加熱気化させそのときに生ずる気泡の圧力を利用する電気熱変換式などに分けられる。さらに、吐出部またはその近傍に備えられた吐出電極と吐出部に対向して配置された対向電極との間に電圧を印加し、この電圧によって生じた電界によって液体を吸引して液滴を吐出部から吐出させる静電吸引式の液体吐出装置がある。
液体吐出装置は、被記録媒体に対して非接触で記録を行うことができるため、駆動時の騒音が低いという利点がある。特に、画像記録用の液体吐出装置では、複数種類の記録液を用いるカラー記録を安価かつ小型で簡単な構成によって比較的容易に実現できる。このため液体吐出装置は、種々の記録用途に使用されている。特に、静電吸引式においては、電気機械変換式でのピエゾ素子組み込みによる装置の複雑化や、電気熱変換式での発熱素子の熱劣化といった問題を回避した、堅牢なシステムを実現することができる。記録の品質を高めるために、液体吐出装置においては、吐出した液滴を被記録媒体上の所望の位置に高精度で着弾させること、および高解像度で液滴を吐出できることが重要である。
特許文献1に示されるように、静電吸引式の液体吐出装置においては、隣接する吐出部間の電界相互作用により、液滴の飛翔軌道が理想的な方向からずれてしまう静電クロストークという現象が知られている。静電クロストークは、隣接する吐出部の電圧印加状態により液滴飛翔空間の電位分布状況が変わってしまうことに起因する。静電ストロークが発生すると、記録しようとする画像パターンによっては部分的な着弾位置ずれが発生し、結果として白スジを有する画像のような記録不良を生じる。静電クロストークによるこのような課題を解決するために、特許文献1では、隣接する吐出電極の電界影響が軽減するように、吐出電極間に仕切板を設ける構成が開示されている。しかし、例えば画像を記録する場合に記録密度を高めた高解像度画像を得ようとすると、吐出部を高密度で配置する必要があるが、吐出電極間に仕切板を設ける複雑な構成では吐出部の高密度化に限界がある。また、仕切板を設けて隣接する吐出電極からの電界の影響を低減する場合であっても、特許文献1に開示されている方法では、仕切板より吐出電極の先端が突出しているため、隣接する吐出電極からの電界影響を完全には排除しきれない。また高解像度画像を得るためには、吐出部を高密度で配列し、高精度な着弾位置制御を行う必要があるが、吐出部の高密度に配列することで吐出部間の距離が短くなってしまう。つまり、隣接する吐出電極からの電界影響がより大きくなり、着弾位置が所望の位置からずれやすくなって、記録品質の劣化を招いてしまう。また、吐出部間の距離を小さくすることは、隣接する吐出電極間での電流リークの発生確率を高くすることにつながり、液体吐出ヘッドの故障要因ともなってしまう。
特許文献2には、静電吸引式の液体吐出装置に関するものではないが、吐出後の液滴の飛翔方向を制御するとの観点で、液体吐出ヘッドに配列された吐出部の両側に加速用電極を設けてこの加速用電極間に電圧を印加することが開示されている。加速用電極に印加された電圧によって液滴の飛翔軌道を意図的に曲げることにより、吐出部の配列密度よりも高解像度な画像を得ることができる。しかしながら特許文献2に示された方法を静電吸引式の液体吐出装置に適用した場合、吐出部以外に加速用電極を別途配置する必要があるため構成が複雑となり、また高密度で吐出部と加速用電極を配置するのが難しいという課題がある。
特開平10−086390号公報 特開平08−332724号公報
静電吸引式の液体吐出装置では、静電クロストークによる記録品質の劣化という課題があり、この課題は、記録密度を高めたときに顕著になる。また、記録密度を高めた場合には、吐出電極間での電流リークが発生するおそれもある。
本発明の目的は、静電クロストークによる記録品質劣化と吐出電極間での電流リークとを招くことなく簡単な構成で吐出部の配列密度よりも高解像度な画像を得ることができる静電吸引方式の液体吐出装置と、その制御方法とを提供することにある。
本発明の液体吐出装置は、液体が供給される複数の吐出部が配列し、吐出部の各々には吐出電極が設けられている液体吐出ヘッドと、吐出電極に印加される電圧を制御する電圧制御部と、複数の吐出部に対向して液体吐出ヘッドとは間隔をあけて設けられた対向電極と、を備え、1回の吐出タイミングごとに、複数の吐出部は、液体を吐出する第1の吐出部と、複数の吐出部の配列において第1の吐出部の少なくとも両隣に位置する第2の吐出部とに組み分けされ、電圧制御部は、各吐出タイミングごとに、その吐出タイミングで吐出を行う場合に、第1の吐出部の吐出電極には、対向電極との間の電界によって液体が吐出する吐出しきい値電圧よりも大きい電圧を印加し、第1の吐出部の両隣となる第2の吐出部の吐出電極には、吐出しきい値電圧よりも小さい電圧であって、その両隣となる第2の吐出部の間で異なる電圧を印加し、液体吐出ヘッドと対向電極との間に位置する被記録媒体に対し、第1の吐出部から吐出した液体によって記録を形成することを特徴とする。
本発明の液体吐出装置の制御方法は、液体が供給される複数の吐出部が配列し、吐出部の各々には吐出電極が設けられている液体吐出ヘッドと、複数の吐出部に対向して液体吐出ヘッドとは間隔をあけて設けられた対向電極と、を有し、液体吐出ヘッドと対向電極との間に位置する被記録媒体に対して液体の吐出による記録を形成する液体吐出装置の制御方法であって、1回の吐出タイミングごとに、複数の吐出部を、液体を吐出する第1の吐出部と、複数の吐出部の配列において第1の吐出部の少なくとも両隣に位置する第2の吐出部とに組み分けし、その吐出タイミングにおいて吐出を行う場合に、第1の吐出部の吐出電極には、対向電極との間の電界によって液体が吐出する吐出しきい値電圧よりも大きい電圧を印加し、第1の吐出部の両隣となる第2の吐出部の吐出電極には、吐出しきい値電圧よりも小さい電圧であって、その第1の吐出部の位置において複数の吐出部が配列する方向において非対称な電界が形成される電圧を印加することを特徴とする。
本発明では、第2の吐出部の吐出電極に印加される電圧によって、第1の吐出部から吐出される液滴の飛翔方向を制御する。これにより、電流リークの問題を起こすことなく、簡便な構成で高解像度な画像を得ることができるようになる。
液体吐出装置の記録部の概略構成を示す斜視図である。 第1の実施形態の液体吐出ヘッドの吐出部付近を示す斜視図である。 図1に示す液体吐出装置の制御構成を示すブロック図である。 図2に示す液体吐出ヘッドの吐出部を示す断面図である。 図2に示す液体吐出ヘッドからの液体の吐出を説明する断面図である。 図2に示す液体吐出ヘッドの吐出部での電界をシミュレーションした結果を示す図である。 印加電圧と静電クロストークによるずれ量との関係を示すグラフである。 図2に示す液体吐出ヘッドに電圧を印加する構成を示す図である。 図2に示す液体吐出ヘッドにおける時分割駆動を示す断面図である。 時分割駆動時の電圧印加を示すタイミングチャートである。 第2の実施形態の液体吐出ヘッドの吐出部付近を示す斜視図である。 図11に示す液体吐出ヘッドの吐出部を示す断面図である。 図11に示す液体吐出ヘッドからの液体の吐出を説明する断面図である。 図11に示す液体吐出ヘッドの吐出部での電界をシミュレーションした結果を示す図である。 印加電圧と静電クロストークによるずれ量との関係を示すグラフである。 図11に示す液体吐出ヘッドに電圧を印加する構成を示す図である。 図11に示す液体吐出ヘッドにおける時分割駆動を示す断面図である。 時分割駆動時の電圧印加を示すタイミングチャートである。 第2の実施形態の液体吐出ヘッドの別の例を示す斜視図である。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。一例として、以下の説明では、液体吐出装置が、液体として記録液を吐出するインクジェット記録装置である場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、「記録」とは、文字、図形などの有意の情報を形成する場合のみならず、何らかのパターンで被記録媒体上に液体を吐出することを意味する。したがって「記録」には、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く被記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も含まれる。「被記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革など、吐出される液体を受容可能なものも表すものとする。さらに「記録液」あるいは「液体」とは、上記の「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、被記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成に供され得る液体を表すものとする。
最初に、以下の各実施形態に共通な液体吐出装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように液体吐出装置100は、図示Y方向に搬送される被記録媒体103に対してカラー記録が可能なインクジェット記録装置として構成されている。したがって液体吐出装置100は、図示X方向に細長い形状を有してブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各色の記録液をそれぞれ吐出する液体吐出ヘッド101K,101C,101M,101Yを備えている。液体吐出ヘッド101K,101C,101M,101Yは相互に図示Y方向に沿って配置しており、被記録媒体103を挟んで平板状の対向電極102と対向している。被記録媒体103を搬送する搬送手段として、送りローラ104、送り補助ローラ105、補給ローラ106及び補給補助ローラ107が設けられている。送りローラ104は、補助ローラ105とともに被記録媒体103を狭持しつつ図の矢印の方向に回転する。補給ローラ106及び補給補助ローラ107は、被記録媒体103を積載する不図示のトレーから被記録媒体103の補給を行うとともに、送りローラ104及び送り補助ローラ105と同様に被記録媒体103を狭持する役割を果たす。本明細書では、被記録媒体103の搬送方向をY方向とし、被記録媒体103に対する記録位置において被記録媒体103の面内にあってY方向と直交する方向をX方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。したがって、対向電極102の表面に垂直な方向がZ方向となる。
液体吐出ヘッド101K,101C,101M,101Yの各々の被記録媒体103に対応する面を吐出面と呼ぶと、吐出面には、多数の吐出部が図示X方向に配列している。吐出部の相互間の間隔の逆数が吐出部の配列密度ということになる。液体吐出ヘッド101K,101C,101M,101Yの違いは、その吐出すべき記録液の色の違いだけであり、構造上の違いはない。そこで以下では、液体吐出ヘッド101K,101C,101M,101Yをまとめて液体吐出ヘッド101と表記し、液体吐出ヘッド101の構成を説明する。
図2は、液体吐出ヘッド101の一部を示しており、ここには5個の吐出部204が示されている。電気絶縁体で形成された吐出基板202の先端に、櫛歯状に吐出部204が設けられている。各吐出部204には、それぞれ吐出電極203が形成されている。鋸歯状の吐出部204における先端に対応して、吐出電極203の先端が配置している。吐出部204に対して記録液を供給する溝部207が形成された流路部材201が設けられている。流路部材201は不図示の記録液供給手段に接続されており、記録液供給手段から供給された記録液は流路部材201の溝部207を矢印205に沿って流れ、吐出部204の先端へと導かれる。吐出部204からの記録液の吐出については後述する。
図3は、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドを制御するための構成を示している。ホストコンピュータ300は、液体吐出装置100に対して記録命令などの制御データと記録すべき画像データを送信するととともに、液体吐出装置100からステータス情報などを受信する。ホストコンピュータ300と接続するために、液体吐出装置100には、入出力インターフェー/ス301が設けられている。入出力インターフェース301は、ホストコンピュータ300から送信された制御データ及び画像データを受信するとともに、ステータス情報などをホストコンピュータ300に対して出力する。入出力インターフェース301に対してCPU(中央処理プロセッサ)302が接続しており、CPU302は、ホストコンピュータ300の命令に従い液体吐出装置100の全体の動作を制御する。CPU302には、制御プログラムやフォントなどのデータが格納されたROM(読出し専用メモリ)303、記録データを一時的に格納する記録バッファやCPU302のワークエリアとして使用されるRAM(ランダムアクセスメモリ)304が接続している。さらにCPU302には、駆動用モータ306を駆動するモータドライバ305と、液体吐出ヘッド101を駆動するヘッドドライバ307が接続している。駆動用モータ306は、上述した送りローラ104や補給ローラ106などを回転駆動するものであり、モータドライバ305は、CPU302の指令に従い駆動用モータ306の駆動を制御する。ヘッドドライバ307であり、CPU302から出力される指令に従い、液体吐出ヘッド101を駆動する。
ホストコンピュータ300から送信された画像データは、入出力インターフェース301内の受信バッファに一時的に格納され、液体吐出装置100で処理可能な記録データに変換されてCPU302に供給される。CPU302は、ROM303に格納されている制御プログラムに基づき、CPU302に供給された記録データを各色の記録液単位に分割し、RAM304の記録バッファに一旦格納する。RAM304の記録バッファに格納された記録データは、各記録液を吐出するための吐出電極列の駆動順序に合わせてCPU302に再度読み出さる。これにより、実際の吐出タイミングに合わせてヘッドドライバ307に記録データが出力され、対応する液体吐出ヘッド101が駆動されて記録液が吐出される。被記録媒体103への記録は、被記録媒体103を図示Y方向に搬送しつつ、この方向と交差する方向に延びる液体記録ヘッド101から記録データに応じて液体を吐出することによって行われる。
図4は、図2に示すX方向及びZ方向に平行な面での液体吐出ヘッド101の断面を示す図であって、吐出状態にある液体吐出ヘッド101を説明している。櫛歯状の吐出部204の間に記録液401が満たされている。この状態で吐出電極203と対向電極102との間に電圧を印加すると、静電気力により記録液401中のイオンが対向電極102に引き寄せられる。静電気力が記録液の表面張力を上回ると、記録液401が液滴402として分裂し、被記録媒体103へ向けて飛翔し、被記録媒体103に着弾する。記録液は、電気抵抗率が高い溶媒中に電荷を保持した粒子を分散させたものでもよく、この場合も静電気力により記録液が対向電極102に引き寄せられ、同様に被記録媒体103に着弾する。
ここでまず、記録液401が液滴402として吐出される電圧値について調べた。吐出部204の先端と被記録媒体103との距離は600μmであり、また被記録媒体103としては導電性のものを用いることとした。具体的には被記録媒体103として金属シートを使用した。対向電極102の電位は接地電位とし、被記録媒体103の電位も接地電位となるようにした。この状態で吐出電極203に電圧を印加したところ、1200Vを上回った時点で液滴402の吐出が生じた。つまり、吐出部204と被記録媒体103との間で1200V/600μm=2.0×106V/m以上の電界がかかると、液滴402が生成して吐出することが分かった。記録液401から液滴402が分裂して吐出を開始する電圧のことを吐出しきい値電圧Vtと呼ぶ。吐出しきい値電圧Vtは、吐出部204の形状や記録液の物性、記録液の帯電量、吐出電極間距離など諸々の条件により変わるため、実施する構成ごとにあらかじめ検討しておくとよい。
吐出電極203に対してパルス状に電圧を印加した場合の吐出状態について調べた。吐出電極203に1300Vの電圧を20kHzの吐出周波数で印加したところ、吐出量約2plの液滴402が吐出された。液滴402は正に帯電しており、その飛翔速度と静電場計算から、約3×10-13Cの電荷量を保持していることが分かった。前記の条件以外での電圧(ただし、吐出しきい値電圧Vtより大きい電圧)や吐出周波数においても、ほぼ同じ吐出量、帯電量であった。なお吐出量や液滴の帯電量は、吐出部204の形状や記録液の物性、吐出電極間距離など諸々の条件により変わるため、実施する構成ごとにあらかじめ検討しておくとよい。
続いて、非対称電界による液滴の着弾位置の変位量について調べた。ここでいう非対称電界とは、記録液を吐出する吐出部204からみてXZ面内での電界分布がX方向に関して対称になっていないことを指す。ここでは、25.4mmあたり150個(ドット)の吐出部204が配置されているものとする。このとき吐出部204の相互間の間隔は170μmとなる。また、吐出電極203の幅(先端部を除いた部分での幅)は20μmとなっている。図5は、非対称電界が発生しているときの図4の拡大図であり、それぞれ吐出電極203−1〜203−3を有する連続する3個の吐出部204−1〜204−3が示されている。吐出電極203−2には吐出周波数20kHzで1300Vの電圧が印加されており、吐出電極203−1には電圧1150V、吐出電極203−3には電圧900Vが印加されている。ここで注意すべきは、吐出電極203−2に印加される電圧は吐出しきい値電圧Vtよりも大きい電圧であるのに対し、吐出電極203−1,203−3に印加される電圧は、吐出しきい値電圧Vt未満であることである。隣接する吐出部204の間の非対称な電界によって、吐出部204−2から吐出された液滴402は、電位の低い吐出電極203−3側へと曲がり、図中矢印の軌跡をたどって被記録媒体103へ着弾する。図では、電界が対称であるときの着弾位置(吐出部204−2に正対する位置)と非対称電界の下での着弾位置との差がΔxで表わされている。図6は、このように吐出電極203−1〜203−3に電圧を印加したとしたときに発生する電界をシミュレーションした結果を示している。図6には、吐出電極203−1〜203−3により形成された等電位面と、飛翔する液滴402の軌道のスナップショットとが示されている。このときの液滴402の着弾位置ずれ量Δxは約67μmであった。
図5及び図6を用いて示したものと同様の方法で、吐出を行う吐出部204−2に隣接する2つの吐出電極203−1、203−3に印加される電圧値と、非対称電界による液滴402の着弾位置ずれ量Δxとの関係について調べた結果を図7に示す。吐出電極203−2の電圧は1300Vとして、図7の横軸は、吐出電極203−1の電圧値V1と吐出電極203−3の電圧値V3との差ΔV=V1−V3であり、図7の縦軸は着弾位置ずれ量Δxである。このように、吐出部204−2を挟んでX方向での左右の電界の非対称性が強いほど、着弾位置ずれ量Δxが大きくなる。なお着弾位置ずれ量Δxは、吐出部の形状や記録液の物性、記録液帯電量、吐出電極間距離など諸々の条件により変わるため、実施する構成ごとにあらかじめ検討しておくとよい。
本実施形態では、上記の着弾位置ずれ量Δxを制御することによって、吐出部の配列密度よりも高い密度で液滴を被記録媒体103上に配置し、高解像度での記録を達成するものである。言い換えれば、従来は抑制すべきものとされていた静電クロストークを活用し、例えば複数の吐出部204の相互の間隔よりも小さい距離だけ液滴の着弾位置をずらして、高解像度で高品質の記録を達成しようとするものである。そのため、液体吐出ヘッド101において配列された複数の吐出部204を、吐出タイミングごとに、液体の吐出を行わせる第1の吐出部と、非対称電界を生成するための第2の第2の吐出部として使い分け、飛翔方向を制御する。第1の吐出部のことを吐出用の吐出部とも呼び、第2の吐出部のことを電界形成用の吐出部とも呼ぶ。このとき吐出用の吐出部の両隣は必ず電界形成用の吐出部となるようにする。好ましくは、吐出用の吐出部と電界形成用の吐出部とが交互に配置するとともに、これらが時分割形態で入れ替わるようにする。ただし、所望の着弾位置制御を実現するためには、以下の2点についての条件を満たす必要がある。
(a)第1に、吐出性能維持のために、吐出電極の間での電流リークを防止する必要がある。液体を吐出するための吐出電極203−2と非対称電界生成用の隣接する吐出電極203−1,203−3との間の電位差が大きいと電流リークが生じてしまうため、この電位差を絶縁破壊電圧Vd以下に抑える必要がある。隣接電極間距離ΔLと空気の絶縁破壊電圧強度3kV/mmとから、絶縁破壊電圧Vdは3ΔL[kV]となり、少なくとも隣接する吐出電極間ではこの電位差をVd以下に抑えなければならない。
(b)第2に、制御された静電クロストークを発生するために、吐出用の吐出部の周りに制御された非対称電界を生成する必要があるが、電界形成用の吐出部への印加電圧は吐出しきい値電圧Vtよりも低く設定する必要がある。電界形成用の吐出部の吐出電極に吐出しきい値Vt以上の電圧が印加されると、電界形成用の吐出部からも意図しない液体吐出が生じてしまうため、記録された画像に乱れが生じてしまう。
以下では、上記の原理を利用した本発明の具体的な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
上述した液体吐出装置を使用し、本発明を適用した第1の実施形態を説明する。本実施形態では、図2〜図7を用いて説明した液体吐出ヘッド101を使用する。ここで液体吐出ヘッド101における吐出部204の配置密度は、一例として、25.4mmあたり150個(ドット)であり、先端部を除いた吐出電極203の幅は、一例として20μmである。上述と同様に、被記録媒体103としては導電性のもの、例えば金属フィルムが使用され、対向電極102は接地されてその電位は0Vとなっている。吐出部204と被記録媒体103との距離は600μmである。
本実施形態では、液体吐出ヘッド101での吐出部204の配置密度に比べて2倍となる記録密度を達成するために、4種類の駆動フェーズT1〜T4を使用し、これら4種類の駆動フェーズは時分割形態で切り替えられる。駆動フェーズの各々は、1回の吐出タイミングに対応するものである。図8は、本実施形態での液体吐出ヘッド101において吐出電極203に電圧を印加するための構成を示している。液体吐出ヘッド101には多数の吐出部204が配列して設けられるが、図8では、このうちの連続する5個の吐出部204−1〜204−5が示されている。吐出部204−1〜204−5にはそれぞれ吐出電極203−1〜203−5が設けられている。吐出電極203−1〜203−5に印加する電圧を発生する電源251と、電源251を制御する電圧制御部250とが設けられている。電源251の一端は接地され、電源251の非接地端には4本の電源線241〜244が接続している。電圧制御部250は、ヘッドドライバ307からの信号に基づき、電源線241〜244の電圧波形を個別に制御できるようになっている。電源線241には、吐出電極203−1,203−5が接続している。電源線242〜244には、それぞれ、吐出電極203−2〜203−4が接続している。吐出電極203−1〜203−5の電圧をそれぞれV1〜V5で表すものとする。ここでは、吐出しきい値電圧Vtは1200Vである。
図9は、図4と同様に液体吐出ヘッド101の断面図であるが、4個の駆動フェーズT1〜T4による時分割駆動によって吐出する液滴を示している。なお図8と同様に図9も液体吐出ヘッド101の一部のみを示している。液体吐出ヘッド101には、図示されていないさらに複数の吐出部204が同様の関係で並んでおり、以下の液滴飛翔が実現されるような電圧印加関係が液体吐出ヘッド101の長さ方向で周期的に与えられているものとする。
駆動フェーズT1,T2では、吐出部204−2,204−4を吐出用の吐出部とし、吐出部204−1,204−3,204−5を液滴の飛翔方向を制御するための電界形成用の吐出部として利用する。
駆動フェーズT1では、吐出電極203−2,203−4に1300Vの電圧を印加し、吐出電極203−1,203−5には電圧1078V、吐出電極203−3には電圧922Vを印加する。これにより吐出用の吐出部204−2,204−4の周囲に非対称な電界が生じ、吐出部204−2からの正帯電である液滴402は吐出部204−3側へ、吐出部204−4からの液滴402は吐出部204−3側へとずれて飛翔・着弾する。図9(a)はこのような駆動フェーズT1による着弾位置を示している。ここで示した例では、図7から明らかになっているように、着弾位置ずれ量Δxは約42μmである。
駆動フェーズT2では、駆動フェーズT1と比べ、電界形成用の吐出部に印加される電圧を相互に入れ替える。すなわち、吐出電極203−3へは電圧1078V、吐出電極203−1,203−5には電圧922Vを印加する。これにより、吐出部204−2からの液滴は吐出部204−1側へ、吐出部204−4からの液滴は吐出部204−5側へとそれぞれ約42μmずれた位置に着弾する。図9(b)は駆動フェーズT2での着弾位置を示している。
続く駆動フェーズT3,T4では、吐出用の吐出部と電界形成用の吐出部との関係を駆動フェーズT1,T2ときから入れ替えた関係に設定する。すなわち、吐出部204−2,204−4を電界形成用の吐出部とし、吐出部204−1,204−3,204−5を吐出用の吐出部として利用する。
駆動フェーズT3では、吐出電極203−1、203−3、203−5に1300Vの電圧を印加する。また、図示されていないが吐出電極203−1の左側にある吐出電極及び吐出電極203−4に電圧1078Vを印加し、図示されていないが吐出電極203−5の右側にある吐出電極と、吐出電極203−2には電圧922Vを印加する。これにより吐出部204−1,204−3からの液滴は吐出部204−2側へ、吐出部204−5からの液滴は吐出部204−5の図示右側へとそれぞれ約42μmずれた位置に着弾する。図9(c)は駆動フェーズT3での着弾位置を示している。
駆動フェーズT4では、駆動フェーズT3と比べ、電界形成用の吐出部に印加される電圧を相互に入れ替える。すなわち、吐出電極203−1、203−3、203−5に対して1300Vの電圧を印加する。また、吐出電極203−1の左側にあって図示されていない吐出電極と、吐出電極203−4とに電圧922Vを印加し、吐出電極203−5の右側にあって図示されていない吐出電極と吐出電極203−2とには電圧1078Vを印加する。これにより吐出部204−1からの液滴は吐出部204−1の図示左側へ、吐出部204−3,204−5からの液滴は吐出部204−4側へとそれぞれ約42μmずれた位置に着弾する。図9(d)は駆動フェーズT4での着弾位置を示している。
駆動フェーズT1〜T4は、例えばこの順番で、時分割形態で繰り返して実行される。各駆動フェーズでの着弾位置ずれ量は約42μmであるから、駆動フェーズT1〜T4の全体を通して考えると、被記録媒体103上に約85μm間隔で液滴が着弾することになる。この間隔は、吐出部間の間隔である170μmの半分であるから、結果として、吐出部の配列密度よりも高い密度、すなわち高解像度での記録がなされたことになる。
図10は、駆動フェーズT1〜T4による時分割駆動を行ったときの各吐出電極203−1〜203−5への電圧印加を示すタイミングチャートである。横軸は、時間経過を、1回の吐出タイミングを含む吐出サイクルに相当する時間を100%としたときの割合で示している。縦軸は電圧であり、図中の線は、吐出電極203−1〜203−5にそれぞれ印加される電圧V1〜V5の変化を吐出しきい値電圧Vtとともに示している。図10(a)は駆動フェーズT1,T2における吐出電極203−1〜203−5の電圧V1〜V5の関係を示している。図示されるように、吐出電極203−2へ印加される電圧V2は吐出しきい値電圧Vtよりも高く設定され、これにより記録液が液滴として吐出される。これに対して吐出電極203−1,203−3,203−5へそれぞれ印加される電圧V1,V3,V5は、吐出しきい値電圧Vtよりも小さく、かつ、吐出部204−2に対して非対称な電界を発生する。同様に図10(b)は、駆動フェーズT3,T4における吐出電極203−1〜203−5の電圧V1〜V5の関係を示したものであり、吐出用であるか電界形成用であるかを入れ替えたこと以外は、図10(a)に示したものと同様の電圧関係を示している。
各駆動フェーズごとに1回の駆動フェーズにおいて吐出用の吐出部の吐出電極へ印加される電圧は、液滴の吐出が終了すると、吐出しきい値電圧Vt未満であって、電界形成用の吐出部の吐出電極との電位差が絶縁破壊電圧Vd未満になるように制御される。具体的には、吐出用の吐出部の吐出電極は、吐出時の1300Vの電圧印加が終了し次の吐出タイミングが到来するまでは、1000Vに維持される。また、被記録媒体103上に形成する記録の内容によっては、いずれかの駆動フェーズにおいて、吐出用の吐出部から記録液の吐出を行わないこともある。そのような場合には、吐出用の吐出部の吐出電極の電圧は、1300Vまで上げることなく、上述した1000Vに維持される。ここで示した例では吐出電極間の最近接距離は約150μm、空気の絶縁破壊電圧強度は3kV/mmなので、絶縁破壊電圧Vdは3kV/mm×150μm=450Vとなる。そこで本実施形態では、吐出用の吐出部の吐出電極と電界形成用の吐出部の吐出電極との電位差が、常に絶縁破壊電圧Vd未満に保たれるようにする。図10に示した電圧関係では、吐出用の吐出部の吐出電極と電界形成用の吐出部の吐出電極との電位差は、ここでの絶縁破壊電圧Vdである450V以下となっている。これにより、吐出電極間での電流リークが生じることなく、所望のタイミングで所望の方向に記録液の液滴を飛翔させ、被記録媒体103上に形成される記録あるいは画像の解像度を向上させることができる。
第1の実施形態では、吐出用の吐出部と電界形成用の吐出部とを交互に配置しかつ時分割形態でこれらが入れ替わるようにして電界を用いた液滴の飛翔方向制御を行い、被記録媒体上の記録解像度を2倍に向上させている。電界形成用の吐出部の吐出電極に印加される電圧のレベル数を増やして時分割駆動での駆動フェーズの数をさらに増加させることにより、さらなる高解像度記録を行うことも可能である。吐出部の配置密度のn倍の高解像度記録を実現するためには、図7の関係に従って電界形成用の吐出部の吐出電極への印加電圧が異なる2n通りの駆動フェーズを用意して2n時分割駆動を行えばよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図11は第2の実施形態で用いられる液体吐出ヘッド101の吐出部近傍を示している。第2の実施形態の液体吐出ヘッド101は、吐出部204と被記録媒体103との間に液滴402が通過しうるスリット状の中間電極206が付加された点で第1の実施形態での液体吐出ヘッドとは異なっている。以下の説明において、第1の実施形態における構成要素と同一の構成要素には、同じ参照番号が付与されている。中間電極206は、中間電極電源252(図16参照)に接続され、ヘッドドライバ307からの信号によりその電位が制御されるようになっている。
図12は、図11に示すX方向及びZ方向に平行な面での液体吐出ヘッド101の断面を示す図であって、吐出状態にある第2の実施形態の液体吐出ヘッド101を説明している。中間電極206が設けられている点を除けば、図12は図4と同様のものである。中間電極206は、厚さ100μm、スリット幅100μmの板状の導体から構成されており、スリットは、複数の吐出部204が配列する方向に延びている。具体的には、中間電極206は、例えばステンレス鋼により形成されて、吐出部204から被記録媒体103の方向に向けて約200μmの距離にある。スリットの中央線に合わせて吐出部204が配置するようになっている。中間電極206と被記録媒体103との距離は500μmである。この中間電極206は、電圧が印加されることにより静電気力により液滴402を吸引するものであり、これによって吐出しきい値電圧Vtを低くする効果を有する。
本実施形態においても、記録液401が液滴402として吐出される吐出しきい値電圧Vtを調べた。吐出部204の先端と被記録媒体103との距離は800μmであり、また被記録媒体103には金属製のものを使用し、被記録媒体103の電位は接地された対向電極102と同電位となっている。中間電極206に500Vの一定電圧を印加し、この状態で吐出電極203に電圧を印加したところ、900Vを上回った時点で液滴402の吐出が生じた。なお吐出しきい値電圧Vtは、吐出部204の形状や記録液の物性、っ記録帯電量、吐出電極間距離など諸々の条件により変わるため、実施する構成ごとにあらかじめ検討しておくとよい。
次に、パルス状の電圧を吐出電極203に印加した場合の吐出状態についても確認した。本実施形態では、吐出電極203に950Vの電圧を20kHzの吐出周波数で印加したところ、吐出量約2plの液滴402が吐出された。液滴402は正に帯電しており、その飛翔速度と静電場計算から、約3×10-13Cの電荷量を保持していることが分かった。前記の条件以外での電圧(ただし、吐出しきい値電圧Vtより大きい電圧)や吐出周波数においても、ほぼ同じ吐出量、帯電量であった。なお吐出量や液滴の帯電量は、吐出部204の形状や記録液の物性、吐出電極間距離など諸々の条件により変わるため、実施する構成ごとにあらかじめ検討しておくとよい。
続いて、非対称電界による液滴の着弾位置の変位量について調べた。図13は、非対称電界が発生しているときの図12の拡大図であり、第1の実施形態での図5に対応する図である。吐出部204は25.4mmあたり150個(ドット)の密度(すなわち170μm間隔)で配置されており、先端部を除いた吐出電極203の幅は20μmとなっている。吐出電極203−2には吐出周波数20kHzで950Vの電圧が印加されており、吐出電極203−1には電圧775V、吐出電極203−3には電圧625Vが印加されている。吐出電極203−1,203−3に印加される電圧は、吐出しきい値電圧Vt未満の電圧である。この例でも、隣接する吐出部204間の非対称な電界によって静電クロストークが生じ、吐出部204−2から吐出された液滴402は、電位の低い吐出電極203−3側へと曲がり、図中矢印の軌跡をたどって被記録媒体103へ着弾する。図14は、このように吐出電極203−1〜203−3に電圧を印加したとしたときに発生する電界をシミュレーションした結果を示している。図14には、吐出電極203−1〜203−3により形成された等電位面と、飛翔する液滴402の軌道のスナップショットとが示されている。このときの液滴402の着弾位置ずれ量Δxは約67μmであった。
図13及び図14を用いて示したものと同様の方法で、吐出を行う吐出部204−2に隣接する2つの吐出電極203−1、203−3に印加される電圧値と、非対称電界による液滴402の着弾位置ずれ量Δxとの関係について調べた結果を図15に示す。吐出電極203−2の電圧は950Vとして、図の横軸は、吐出電極203−1の電圧値V1と吐出電極203−3の電圧値V3との差ΔV=V1−V3であり、縦軸は着弾位置ずれ量Δxである。中間電極206を設けた場合であっても、吐出部204−2を挟んでX方向での左右の電界の非対称性が強いほど、着弾位置ずれ量Δxが大きくなる。なお着弾位置ずれ量Δxは、吐出部の形状や記録液の物性、記録液帯電量、吐出電極間距離など諸々の条件により変わるため、実施する構成ごとにあらかじめ検討しておくとよい。
本実施形態においても、液体吐出ヘッド101での吐出部204の配置密度に比べて2倍となる記録密度を達成するために、4種類の駆動フェーズT1〜T4を使用し、これら4種類の駆動フェーズを時分割形態で切り替える。図16は、本実施形態での液体吐出ヘッド101において吐出電極203に電圧を印加するための構成を示している。液体吐出ヘッド101には多数の吐出部204が配列して設けられるが、図16では、このうちの連続する5個の吐出部204−1〜204−5が示されている。本実施形態において電圧を印加するための構成は、図8に示した第1の実施形態における構成と同様のものであるが、中間電極206に対して電圧を印加する中間電極電源252が設けられている点で、図8に示したものと異なっている。中間電極電源252は、ヘッドドライバ307からの信号により、中間電極206の電位を制御する。
図17は、図12と同様に液体吐出ヘッド101の断面図であるが、4個の駆動フェーズT1〜T4による時分割駆動によって吐出する液滴を示している。図16と同様に図17も液体吐出ヘッド101の一部を示すものであり、図示されていないさらに複数の吐出部204が同様の関係で並んでおり、以下の液滴飛翔が実現されるような電圧印加関係が液体吐出ヘッド101の長さ方向で周期的に与えられている。
駆動フェーズT1,T2では、吐出部204−2,204−4を吐出用の吐出部とし、吐出部204−1,204−3,204−5を液滴の飛翔方向を制御するための電界形成用の吐出部として利用する。
駆動フェーズT1では、吐出電極203−2,203−4に950Vの電圧を印加し、吐出電極203−1,203−5には電圧791V、吐出電極203−3には電圧709Vを印加する。これにより吐出用の吐出部204−2,204−4の周囲に非対称な電界が生じ、吐出部204−2からの正帯電である液滴402は吐出部204−3側へ、吐出部204−4からの液滴402は吐出部204−3側へとずれて飛翔・着弾する。図17(a)はこのような駆動フェーズT1による着弾位置を示している。ここで示した例では、図15から明らかになっているように、着弾位置ずれ量Δxは約42μmである。
駆動フェーズT2では、駆動フェーズT1と比べ、電界形成用の吐出部に印加される電圧を相互に入れ替える。すなわち、吐出電極203−3へは電圧791V、吐出電極203−1,203−5には電圧709Vを印加する。これにより、吐出部204−2からの液滴は吐出部204−1側へ、吐出部204−4からの液滴は吐出部204−5側へとそれぞれ約42μmずれた位置に着弾する。図17(b)は駆動フェーズT2での着弾位置を示している。
続く駆動フェーズT3,T4では、吐出用の吐出部と電界形成用の吐出部との関係を駆動フェーズT1,T2ときから入れ替えた関係に設定する。すなわち、吐出部204−2,204−4を電界形成用の吐出部とし、吐出部204−1,204−3,204−5を吐出用の吐出部として利用する。
駆動フェーズT3では、吐出電極203−1、203−3、203−5に950Vの電圧を印加する。また、図示されていないが吐出電極203−1の左側にある吐出電極及び吐出電極203−4に電圧791Vを印加し、図示されていないが吐出電極203−5の右側にある吐出電極と、吐出電極203−2には電圧709Vを印加する。これにより吐出部204−1,204−3からの液滴は吐出部204−2側へ、吐出部204−5からの液滴は吐出部204−5の図示右側へとそれぞれ約42μmずれた位置に着弾する。図17(c)は駆動フェーズT3での着弾位置を示している。
駆動フェーズT4では、駆動フェーズT3と比べ、電界形成用の吐出部に印加される電圧を相互に入れ替える。すなわち、吐出電極203−1、203−3、203−5に対して950Vの電圧を印加する。また、吐出電極203−1の左側にあって図示されていない吐出電極と、吐出電極203−4とに電圧709Vを印加し、吐出電極203−5の右側にあって図示されていない吐出電極と吐出電極203−2とには電圧791Vを印加する。これにより吐出部204−1からの液滴は吐出部204−1の図示左側へ、吐出部204−3,204−5からの液滴は吐出部204−4側へとそれぞれ約42μmずれた位置に着弾する。図17(d)は駆動フェーズT4での着弾位置を示している。
図18は、駆動フェーズT1〜T4による時分割駆動を行ったときの各吐出電極203−1〜203−5への電圧印加を示すタイミングチャートである。図18の縦軸及び横軸は、図10の縦軸及び横軸と同じである。駆動フェーズT1〜T4における各電圧V1〜V5の変化は、電圧の大きさが異なること以外は第1の実施形態の場合と同様であるから、ここでは、図18に示される電圧関係の要点だけ説明する。図18(a)は、駆動フェーズT1,T2における吐出電極203−1〜203−3の電圧V1〜V3の関係を示している。吐出電極203−2へ印加される電圧V2は、吐出しきい値電圧Vtよりも高く設定され、吐出部204−2から記録液が液滴として吐出される。電極203−1、203−3へ印加される電圧V1,V3は吐出しきい値電圧Vt未満であって、かつ吐出部204−2に対して非対称な電界を発生する。図18(b)は、駆動フェーズT3,T4における吐出電極203−1〜203−5の電圧V1〜V5の関係を示したものであり、吐出用であるか電界形成用であるかを入れ替えたこと以外は、図18(a)に示したものと同様の電圧関係を示している。
中間電極206を設ける場合においても、液滴の吐出が終了すると、吐出用の吐出部の吐出電極へ印加される電圧は、吐出しきい値電圧Vt未満であって、電界形成用の吐出部の吐出電極との電位差が絶縁破壊電圧Vd未満になるように制御される。具体的には、吐出用の吐出部の吐出電極は、吐出時の950Vの電圧印加が終了し次の吐出タイミングが到来するまでは、750Vに維持される。また、被記録媒体103上に形成する記録の内容によっては、いずれかの駆動フェーズにおいて、吐出用の吐出部から記録液の吐出を行わないこともある。そのような場合には、吐出用の吐出部の吐出電極の電圧は、950Vまで上げることなく、上述した750Vに維持される。ここで示した例でも吐出電極間の最近接距離は約150μm、空気の絶縁破壊電圧強度は3kV/mmなので、絶縁破壊電圧Vdは3kV/mm×150μm=450Vとなる。そこで本実施形態では、吐出用の吐出部の吐出電極と電界形成用の吐出部の吐出電極との電位差が、常に絶縁破壊電圧Vd未満に保たれるようにする。図18に示した電圧関係では、吐出用の吐出部の吐出電極と電界形成用の吐出部の吐出電極との電位差は、ここでの絶縁破壊電圧Vdである450V以下となっている。これにより、吐出電極間での電流リークが生じることなく、所望のタイミングで所望の方向に記録液の液滴を飛翔させ、被記録媒体103上に形成される記録あるいは画像の解像度を向上させることができる。
第1の実施形態と同様に第2の実施形態においても、電界形成用の吐出部の吐出電極に印加される電圧のレベル数を増やして時分割駆動での駆動フェーズの数をさらに増加させることにより、さらなる高解像度記録を行うことも可能である。吐出部の配置密度のn倍の高解像度記録を実現するためには、図15の関係に従って電界形成用の吐出部の吐出電極への印加電圧が異なる2n通りの駆動フェーズを用意して2n時分割駆動を行えばよい。また中間電極206の形状は、図11に示したような導体板にスリットを設けた形状に限定されるものではない。液滴を静電気力で吸引できる作用を有するものであれば中間電極206の構成は限定されるものであく、例えば図19に示すように、2本の金属ワイヤーを平行に配置してワイヤー間をスリットとするような形状のものであってもよい。
100 液体吐出装置
101 液体吐出ヘッド
102 対向電極
103 被記録媒体
203 吐出電極
204 吐出部
250 電圧制御部

Claims (9)

  1. 液体が供給される複数の吐出部が配列し、前記吐出部の各々には吐出電極が設けられている液体吐出ヘッドと、
    前記吐出電極に印加される電圧を制御する電圧制御部と、
    前記複数の吐出部に対向して前記液体吐出ヘッドとは間隔をあけて設けられた対向電極と、
    を備え、
    1回の吐出タイミングごとに、前記複数の吐出部は、前記液体を吐出する第1の吐出部と、前記複数の吐出部の配列において前記第1の吐出部の少なくとも両隣に位置する第2の吐出部とに組み分けされ、
    前記電圧制御部は、各吐出タイミングごとに、当該吐出タイミングで吐出を行う場合に、前記第1の吐出部の前記吐出電極には、前記対向電極との間の電界によって前記液体が吐出する吐出しきい値電圧よりも大きい電圧を印加し、前記第1の吐出部の両隣となる第2の吐出部の前記吐出電極には、前記吐出しきい値電圧よりも小さい電圧であって、当該両隣となる第2の吐出部の間で異なる電圧を印加し、
    前記液体吐出ヘッドと前記対向電極との間に位置する被記録媒体に対し、前記第1の吐出部から吐出した前記液体によって記録を形成することを特徴とする、液体吐出装置。
  2. 前記液体吐出ヘッドと前記対向電極との間に設けられた中間電極と、
    前記中間電極に印加される電圧を制御する中間電極電源と、
    を備え、前記液体吐出ヘッドから吐出し前記中間電極の位置を通過した前記液体が前記被記録媒体に着弾する、請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記液体吐出ヘッドにおける前記複数の吐出部が配列する方向に対して交差する方向に前記被記録媒体に搬送する搬送手段を備える、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記第1の吐出部と前記第2の吐出部とが交互に配置する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  5. 前記両隣となる第2の吐出部の間での前記異なる電圧は、対応する前記第1の吐出部から吐出された前記液体が前記被記録媒体に着弾する位置を、前記複数の吐出部が配列する方向において、前記複数の吐出部の相互の間隔よりも小さい距離だけずらす電圧である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  6. 液体が供給される複数の吐出部が配列し、前記吐出部の各々には吐出電極が設けられている液体吐出ヘッドと、前記複数の吐出部に対向して前記液体吐出ヘッドとは間隔をあけて設けられた対向電極と、を有し、前記液体吐出ヘッドと前記対向電極との間に位置する被記録媒体に対して前記液体の吐出による記録を形成する液体吐出装置の制御方法であって、
    1回の吐出タイミングごとに、前記複数の吐出部を、前記液体を吐出する第1の吐出部と、前記複数の吐出部の配列において前記第1の吐出部の少なくとも両隣に位置する第2の吐出部とに組み分けし、当該吐出タイミングにおいて吐出を行う場合に、前記第1の吐出部の前記吐出電極には、前記対向電極との間の電界によって前記液体が吐出する吐出しきい値電圧よりも大きい電圧を印加し、前記第1の吐出部の両隣となる第2の吐出部の前記吐出電極には、前記吐出しきい値電圧よりも小さい電圧であって、当該第1の吐出部の位置において前記複数の吐出部が配列する方向において非対称な電界が形成される電圧を印加することを特徴とする制御方法。
  7. 前記第1の吐出部と前記第2の吐出部とが交互に配置するように前記組み分けを行う、請求項6に記載の制御方法。
  8. 各々が1回の吐出タイミングに対応する複数の駆動フェーズが設定されて前記複数の駆動フェーズを時分割形態で繰り返し、前記複数の駆動フェーズの間に前記第1の吐出部と前記第2の吐出部を入れ替える、請求項7に記載の制御方法。
  9. 前記液体吐出ヘッドにおける前記複数の吐出部が配列する方向に対して交差する方向に前記被記録媒体に搬送しつつ前記被記録媒体に記録を行う、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の制御方法。
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