以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る撮像装置500の構成を示すブロック図である。撮像装置500は、被写体の光学像を撮像領域に結像させる光学レンズ520を備える。また、撮像装置500は、異なる種類の光学レンズ520を装着することができる装着部(不図示)を備える。他の構成要素として、撮像装置500は、撮像素子100、システム制御部501、制御部502、ワークメモリ504、記録部505、および表示部506を主に備える。図1における座標軸に示すように、被写体光束が進む方向をZ軸プラス方向、Z軸に直交する紙面上方向をY軸プラス方向、Z軸およびY軸に直交する紙面手前方向をX軸プラス方向とする。本明細書のいくつかの図においては、図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
光学レンズ520は、複数の光学レンズ群から構成され、シーンからの被写体光束をその焦点面近傍に結像させる。また、光学レンズ520はレンズ鏡筒に設けられる。装着部は、複数種類のレンズ鏡筒が装着可能である。また、装着部または撮像装置500は、いずれの種類のレンズ鏡筒または光学レンズ520が装着されたかを識別する。
撮像素子100は、光学レンズ520の焦点面近傍に配置され、複数の画素を有する撮像領域に入射する入射光に応じた画素信号を出力する。撮像素子100は、例えばCCDまたはCMOSセンサである。また、撮像素子100には、複数の温度センサ640が設けられる。制御部502は、撮像素子100のタイミング制御、後述する領域制御等の電荷蓄積制御を実行する。
システム制御部501は、読出部510、画像処理部511、補正部512を備える。読出部510は、撮像素子100から画素信号を読み出す。読出部510は、撮像素子100における撮像領域内の異なる領域を指定する複数の読出モードを有する。読出部510は、複数の読出モードのそれぞれに応じた領域に含まれる画素から画素信号を読み出す。読出モードは、例えば装着部に装着された光学レンズ520の種類に応じて定まる。読出部510は、複数の読出モードのそれぞれに応じた領域の画素の画素信号をグローバルリセットローリング読み出し方式で読み出す。グローバルリセットローリング読み出し方式では、撮像素子100に含まれる全画素が同時にリセットされる。また、画素信号を読み出す場合、撮像領域の各行が順次指定され、指定された行に含まれる画素の画素信号が行方向に順次読み出される。つまり、画素がリセットされてから画素信号が読み出されるまでの時間が、画素毎に異なる。また、制御部502は、システム制御部501からの指示に従って、複数の温度センサ640のうち、読出モードに応じた1又は複数の温度センサ640を選択する。
画像処理部511は、ワークメモリ504をワークスペースとして種々の画像処理を施し、画像データを生成する。例えば、JPEGファイル形式の画像データを生成する場合は、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を施した後に圧縮処理を実行する。
補正部512は、読出部510が読み出した画素信号を、複数の温度センサ640がそれぞれ検知した温度に基づいて補正する。具体的には、補正部512は、読出部510が読み出した画素信号を、制御部502が読出モードに応じて選択した温度センサ640が検知した温度に基づいて補正する。
なお、本例においては、補正部512を画像処理部511と独立であるとして説明したが、補正部512は画像処理部511の一部であってもよい。生成され、補正された画像データは、記録部505に記録されるとともに、表示信号に変換されて予め設定された時間の間、表示部506に表示される。
表示部506は、補正部512により補正された画素信号に応じた画像を表示する。表示部506は、例えば、ファインダ、背面パネル、外部ディスプレイ等である。システム制御部501は、表示部506に表示する画像のアスペクト比に応じて、読出モードを選択してもよい。補正部512は、読出モードに応じて、補正係数を含むルックアップテーブルを、ワークメモリ504から選択する。
図2は、撮像素子100を実装したパッケージ600の斜視図である。図1に示した撮像装置500において、撮像素子100はパッケージ600の状態で設けられる。パッケージ600は、パッケージ本体610と、撮像素子100をパッケージ本体610に固定した後、撮像素子100を密閉するための封止部630と、撮像素子100の周囲に設けられた複数の温度センサ640と、パッケージ本体610の側面または裏面に設けられた金属製の端子部620を備える。パッケージ本体610は、上面に撮像素子100用の開口部を有する直方体形状の筐体である。
パッケージ本体610の側面または裏面には、複数の端子部620が互いに離隔され、電気的に絶縁されて設けられている。パッケージ本体610は、例えばセラミック等からなる。封止部630は、石英ガラス等の光学ガラスからなり、表面に光学コーティングが施されている。温度センサ640は、例えば、サーミスタである。サーミスタは、電気抵抗が温度により変化する金属酸化物、シリコン単結晶、薄膜等からなる。本例の温度センサ640は、撮像素子100と同一の基板上に形成される。また、温度センサ640は、撮像素子100の周囲のパッケージ本体610に設けられてもよい。
図3は、撮像素子100の撮像領域180の外周における温度センサ640の配列を説明する図である。撮像素子100は、被写体の画像を撮像する撮像領域180に配置された複数の画素を含む。
本例の撮像素子100において、複数の読出モードに対応して、画素信号を読み出す読出領域の位置および大きさが変化する。ここで、読出モードとは、撮像素子100の撮像領域180において各画素に蓄積された電荷を電圧値として読み出すべき領域を指定するモードである。一例として、読出モードは、撮像装置500に装着する光学レンズ520の種類に応じて変化する。本明細書において、読出領域が互いに異なる光学レンズ520をFXレンズ、DXレンズと称する。FXレンズを使用する読出モードにおいて、読出領域は撮像領域180に一致する。一方、DXレンズを使用する読出モードにおいて、読出領域は撮像領域180よりも狭い。
撮像素子100は、複数の読出モードに応じて、撮像領域180における異なる領域が指定される。ここで、異なる領域とは、一つの読出モードに対応する領域が他の読出モードに対応する領域を包含する関係、または、一つの読出モードに対応する領域の一部が、他の読出モードに対応する領域の一部と重複する関係にある領域を指す。図1に示した読出部510は、複数の読出モードのそれぞれに応じた領域に含まれる画素から画素信号を読み出す。
本例において読出モードは、FXレンズを装着した場合のFXモード、および、DXレンズを装着した場合のDXモードを含む。FXモードにおいては、撮像領域180のすべての画素から被写体の画像信号を取得する。FXモードにおいては、撮像領域180と読出領域650は同一となる。DXモードにおいては、FXモードより面積の小さい読出領域660の画素から被写体の画像信号を取得する。
他の例において読出モードは、図1に示した表示部506に表示する画像のアスペクト比に応じて変化する。ここで、表示部506とは、例えば、ファインダ内の表示パネル、背面パネル、外部ディスプレイである。読出モードは、表示部506に表示される画像のアスペクト比が16:9のHD画像である場合のHDモードを含む。HDモードにおいては、HD画像に応じた読出領域650の画素から被写体の画像信号を取得する。読出モードは、HDモード以外に、画像のアスペクト比が21:9のシネマ画像である場合のシネマモードを含んでよい。シネマモードにおいては、アスペクト比が21:9の読出領域670の画素から被写体の画像信号を取得する。
温度センサ640は、撮像領域180の外周において、複数の読出モードのそれぞれで指定される領域の頂点と対向する位置に設けられる。撮像領域180の外周とは、撮像素子100と同一のシリコン基板上における撮像領域180の外側を指す。また、読出領域の外周とは、パッケージ本体610の開口部における撮像素子100の外縁近傍であってもよい。読出モードで指定される領域の頂点とは、撮像領域180における読出モードに応じた読出領域を構成する4辺のうち、長辺方向に沿った直線と、短辺方向に沿った直線とが互いに垂直に交わる点を指す。頂点と対向する位置とは、撮像領域180と同一面において、各頂点から長辺方向(X軸方向)、および、短辺方向(Y軸方向)に延長した延長線上の位置を指す。
つまり、読出モードに応じて指定された読出領域の頂点と、X軸方向およびY軸方向において対向する位置に予め温度センサ640を作成しておく。一例として、温度センサ640がサーミスタの場合、CMOSセンサと同じプロセスで同じシリコン基板上に作り込むことができるので好ましい。複数の温度センサ640のうち、複数の読出モードのそれぞれに応じた温度センサ640が選択される。
具体的には、読出モードがFXモードの場合、読出領域650の4隅の位置に予め設けられた4つの温度センサ640−1が選択される。読出モードがDXモードの場合、読出領域660の4つの頂点のそれぞれにおいて、X軸方向およびY軸方向に対向する位置に予め設けられた8つの温度センサ640−2が選択される。読出モードがHDモードの場合、読出領域670の4隅の位置に予め設けられた4つの温度センサ640−3が選択される。
撮像素子100は、選択した温度センサ640が検出した温度に基づいて、各画素の画素値(画素データ)を補正する。例えば撮像素子100は、選択した温度センサ640が検出した温度に基づいて各画素の温度を推定する。画素の温度は、例えば画素と各温度センサ640との距離に応じた重み付け係数を用いて、それぞれの温度センサ640が検出した温度を重み付け加算することで算出できる。図1に示した補正部512は、こうして推定した画素の温度に基づいて、画素データを補正する。本例の撮像素子100には、各温度に対応する暗電流値のテーブルが予め与えられており、当該テーブルを用いて各画素の画素データを補正する。
また、補正係数のルックアップテーブルは、読出モードごとに異なることが好ましい。これは、読出モードごとに読出領域が異なるので、読出開始から読出終了までにかかる時間が異なることに由来する。例えば、FXモードの場合とDXモードの場合とを比較すると、FXモードの読出領域650は、DXモードの読出領域660に比べ、読み出す画素の行数が多い。したがって、グローバルリセットローリング読み出し方式では、FXモードの方がDXモードに比べ、読出開始から読出終了までの読み出し時間が長くなる。つまり、読出しモードに応じて、例えば最後に読み出される画素の待ち時間が変化する。待ち時間が変化すると、電荷蓄積時間が変化するので暗電流が変化する。補正係数テーブルは、読出しモード毎の電荷蓄積時間の変化による暗電流の変化を補償すべく、読出しモード毎に設けられる。例えば補正係数テーブルは、各画素(または各画素ブロック)に対する補償係数として、電荷蓄積時間に応じた係数を有する。図1に示した補正部512は、静止画を補正するときに、読出しモードに応じた補正係数テーブルを用いてよい。また、補正部512は、動画を補正するときにも、読出しモードに応じた補正係数テーブルを用いてよい。
本例によれば、読出モードに応じて配置される温度センサ640を使用することにより、画素ブロックごとに画素データの補正を行うことができる。また、読出モードに応じた補正係数のテーブルを用いることで、読出モードに応じて電荷蓄積時間が変化する画素における暗電流を精度よく補正することができる。
図4は、撮像領域180に含まれる複数の画素150のうち、一つの画素150の等価回路図を示す。複数の画素150の各々は、PD(フォトダイオード)104、転送トランジスタ152、リセットトランジスタ154、増幅トランジスタ156および選択トランジスタ158を有する。さらに、画素150には、リセットトランジスタ154のオン信号が供給されるリセット配線300、転送トランジスタ152のオン信号が供給される転送配線302、電源Vddから電力の供給を受ける電源配線304、選択トランジスタ158のオン信号が供給される選択配線306、および、画素信号を出力する出力配線308が配される。
転送トランジスタ152のソース、ゲート、ドレインはそれぞれ、PD104の一端、転送配線302、増幅トランジスタ156のゲートに接続される。また、リセットトランジスタ154のドレインは電源配線304に接続され、ソースは増幅トランジスタ156のゲートに接続される。増幅トランジスタ156のドレインは電源配線304に接続され、ソースは選択トランジスタ158のドレインに接続される。
選択トランジスタ158のゲートは選択配線306に接続され、ソースは出力配線308に接続されている。負荷電流源309は、出力配線308に電流を供給する。すなわち、選択トランジスタ158に対する出力配線308は、ソースフォロアにより形成される。
図5は、撮像領域180を、複数の画素ブロックに分割する例を示す。撮像領域180を複数の画素ブロックに分割し、それぞれのブロックごとに温度を測定することで画像処理の負荷を低減させることができるので正確かつ高速な温度補正を行うことができる。読出モードのそれぞれに応じた読出領域が、複数の画素ブロックに分割される。本例では、読出モードがFXモードの場合について説明する。なお、撮像領域180は、他の読出モードにおいても同様に分割されてよい。FXモードの読出領域650は、4つの画素ブロック(650−1、650−2、650−3、650−4)を含む。各画素ブロックは、同数の画素を含んでよい。画素ブロック(650−1、650−2、650−3、650−4)のそれぞれの頂点に対応する位置には温度センサ640―1、640−5が設けられている。
例えば、画素ブロック650−1の頂点に対向する位置には、温度センサ640−5および温度センサ640―1が設けられている。ここで、温度センサ640−1は、FXモードにおける読出領域650の頂点に対向する位置に設けられた温度センサである。つまり、本例においては、読出モードによって指定された位置に設けられた温度センサが画素ブロックの複数の温度センサのひとつとして機能する。
画素ブロック650−2の頂点に対向する位置には、温度センサ640−5、温度センサ640−1が設けられている。画素ブロック650−1と画素ブロック650−2との境界に位置する温度センサ640−5は、両方の画素ブロックの温度センサとして機能する。画素ブロック650−3の頂点に対向する位置には、温度センサ640−5および温度センサ640−1が設けられている。画素ブロック650−1と画素ブロック650−3との境界に位置する温度センサ640−5は、両方の画素ブロックの温度センサとして機能する。
画素ブロック650−4の頂点に対向する位置には、温度センサ640−5および温度センサ640−1が設けられている。画素ブロック650−3と画素ブロック650−4との境界に位置する温度センサ640−5は、両方のブロックの温度センサとして機能する。また、画素ブロック650−2と画素ブロック650−4との境界に位置する温度センサ640−5は、両方のブロックの温度センサとして機能する。4つの画素ブロック(650−1、650−2、650−3、650−4)の温度は、画素ブロックのそれぞれに対応する温度センサ640が選択されて測定される。
本例において、図1に示した補正部512は、温度センサ640が検知した複数の画素ブロックのそれぞれの温度に基づいて、画素ブロック毎の画素信号を補正する。一例として、読出モードがFXモードの場合、画素ブロック650―1の温度を測定するために、制御部502は、画素ブロック650−1の頂点の位置に対向して配置された温度センサ640−1、640−5を選択する。温度センサ640−1、640−5が測定したそれぞれの頂点での温度から、画素ブロック650−1の面内における温度分布を推測する。
温度分布は、シミュレーション等により予め求められてワークメモリ504に格納されている。補正部512は、読出部510が読み出しを開始する時刻における画素ブロック650−1の平均温度を、実測値およびシミュレーションから推定する。図3において説明したように、撮像装置500は、温度センサ640が検知した画素ブロックの温度に対する補正係数を含む補正係数テーブルを、読出しモードごとに有する。
補正係数テーブルはルックアップテーブルであってよく、ワークメモリ504に予め格納されている。補正部512は、読出モードに応じた補正係数テーブルを検索し、画素ブロック650―1の温度に基づいて、画素ブロック650−1に含まれる画素の画素データを補正する。
本例によれば、画素ブロックに応じて配置される温度センサ640を使用することにより、画素ブロックごとに画素データの補正を行うことができる。したがって、暗電流の影響を画素ブロックごとに相殺することができるので、画像の1フレーム内で輝度ムラを十分に抑制できる。
図6は、撮像領域180を、複数の画素ブロックに分割する他の例を示す。図5に示した画素ブロック650−4が、4つのサブブロック(660−1、660−2、660−3、660−4)にさらに分割されている点で、図5に示す例と異なる。他は、図5と同様なので説明を省略する。画素ブロック660−2の頂点に対向する位置には、温度センサ640−6、温度センサ640−5が設けられている。画素ブロック660−2と画素ブロック650−2との境界に位置する温度センサ640−5は、両方の画素ブロックの温度センサとして機能する。
画素ブロック660−3の頂点に対向する位置には、温度センサ640−6および温度センサ640―5が設けられている。画素ブロック660−3と画素ブロック650−3との境界に位置する温度センサ640−5は、両方の画素ブロックの温度センサとして機能する。画素ブロック660−4の頂点に対向する位置には、温度センサ640−6および温度センサ640−1が設けられている。画素ブロック660−3と画素ブロック660−4との境界に位置する温度センサ640−6は、両方のブロックの温度センサとして機能する。また、画素ブロック660−2と画素ブロック660−4との境界に位置する温度センサ640−6は、両方の画素ブロックの温度センサとして機能する。
図6に示すように、画素ブロック650−1の周囲に配置される温度センサ(640−1、640−2、640−5)に比べ、図5の画素ブロック650−4を分割した画素ブロック(660−1、660−2、660−3、660−4)の周囲に配置される温度センサ(640−1、640−2、640−3、640−5、640−6)の方が、数が多い。本例において、画素ブロック650−1の周囲に配置される温度センサの個数は6個であるのに対して、画素ブロック(660−1、660−2、660−3、660−4)の周囲に配置される温度センサの個数は8個である。つまり、画素ブロック650−1と、画素ブロック(660−1、660−2、660−3、660−4)とでは隣接する温度センサの間隔が一部異なる。換言すれば、画素ブロック(660−1、660−2、660−3、660−4)の温度センサは、画素ブロック650−1の温度センサよりも密に配置された部分を含む。
図1に示した補正部512は、図5の例と同様に、温度センサ640が検知した複数の画素ブロックのそれぞれの温度に基づいて、画素ブロック毎の画素信号を補正する。本例によれば、読出開始領域よりも読出終了領域の画素ブロックの面積を小さくすることにより、発熱の大きな領域の画素データを細かく補正することができる。ここで、読出開始領域とは、被写体を撮像素子100により撮像した1フレーム分の画素信号をグローバルリセットローリング読み出し方式で読み出すときの読出モードに応じた読出領域における最初の画素ブロックの一行目の画素をさす。一方、読出終了領域とは、被写体を撮像素子100により撮像した1フレーム分の画素信号をグローバルリセットローリング読み出し方式で読み出すときの読出モードに応じた読出領域における最後の画素ブロックの最終行の画素をさす。
したがって、より精度の高い暗電流補正を行うことができる。さらに、読出モードに応じた位置に配置された温度センサおよび画素ブロックの頂点に対向する位置に配置された温度センサを使用して画素ブロックの平均温度を測定するため、撮像領域180の周囲全体に温度センサを敷き詰めるよりも補正部512での処理負荷が小さくてすむので好ましい。
図7は、実施形態にかかる画素信号補正方法を示すフローチャートである。本例の画素信号補正方法は、被写体の画像を撮像する段階と、複数の読出モードのそれぞれに応じた領域の画素信号を読出す段階と、複数の読出モードのそれぞれに応じた領域の温度を複数の温度センサにより測定する段階と、測定した温度に基づいて画素信号を補正する段階とを備える。
被写体を撮像する前に、ステップS100において、読出モードを選択する。上述したように、読出モードは使用するレンズの種類、表示部に表示する画像領域のアスペクト比に応じて、選択される。選択は、ユーザ自身が行ってもよいし、撮像装置500が自動的に行ってもよい。例えば、FXレンズが装着されたことをシステム制御部501が検知したときに自動的に読出モードがFXモードに変化する。
ステップS110において、被写体を撮像する。その後、ステップS120において、システム制御部501は、制御部502を介して撮像素子100の読出モードに応じた撮像領域を複数の画素ブロックに分割する。続いて、システム制御部501は、読出モードおよび画素ブロックの頂点に応じた位置に設けられている温度センサ640を選択する。次にステップS140において、読出部510が画素ブロックの画素の行毎に画素信号をグローバルシャッタローリング読み出し方式で読み出す。
続いて、ステップS150において、制御部502は、画素ブロックごとに読出時刻tにおける平均温度を測定する。制御部502は、選択した温度センサ640から得られる実測値およびワークメモリ504に格納された温度勾配のシミュレーション結果から平均温度を推定する。ステップS160において、画素信号がA/D変換されて画素データが得られる。
ステップS170において、複数の画素ブロックのそれぞれの画素ブロックの温度に基づいて、画素ブロックに含まれる画素の画素信号を補正する。補正部512は、読出モードに応じた補正係数テーブルをワークメモリ504から検索し、画素ブロックごとの画素データを当該補正係数テーブルの補正係数を使って補正する。なお、画素データの補正は、A/D変換するステップS160の前に行ってもよい。
次にステップS180において、補正後の画素データを記録部505に格納する。続いて、ステップS190において、記録部505に格納した画素データを読み出し、表示部506に表示する。
図8は、本実施形態に係る撮像素子100の断面図である。図8では、裏面照射型の撮像素子100を示すが、撮像素子100は裏面照射型に限定されない。撮像素子100は、入射光に対応した画素信号を出力する撮像チップ113と、画素信号を処理する信号処理チップ111と、画素信号を記憶するメモリチップ112とを備える。これら撮像チップ113、信号処理チップ111およびメモリチップ112は積層されており、Cu等の導電性を有するバンプ109により互いに電気的に接続される。
なお、図示するように、入射光は主に白抜き矢印で示すZ軸プラス方向へ向かって入射する。本実施形態においては、撮像チップ113において、入射光が入射する側の面を裏面と称する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面右方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。
撮像チップ113の一例は、裏面照射型のMOSイメージセンサである。PD層106は、配線層108の裏面側に配されている。PD層106は、二次元的に配された複数のPD104、および、PD104に対応して設けられたトランジスタ105を有する。トランジスタ105は、図4に示した転送トランジスタ152、リセットトランジスタ154、増幅トランジスタ156および選択トランジスタ158に対応する。なお、図4に示した定電流源311は、撮像チップ113側に設けても良いし、信号処理チップ111側に設けても良い。
PD層106における入射光の入射側にはパッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有しており、PD104のそれぞれに対応して特定の配列を有している。カラーフィルタ102の配列については後述する。カラーフィルタ102、PD104およびトランジスタ105の組が一つの画素を形成する。
カラーフィルタ102における入射光の入射側には、それぞれの画素に対応して、マイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、対応するPD104へ向けて入射光を集光する。
配線層108は、PD層106からの画素信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は多層であってもよく、また、受動素子および能動素子が設けられてもよい。
配線層108の表面には複数のバンプ109が配される。当該複数のバンプ109が信号処理チップ111の対向する面に設けられた複数のバンプ109と位置合わせされて、撮像チップ113と信号処理チップ111とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
同様に、信号処理チップ111およびメモリチップ112の互いに対向する面には、複数のバンプ109が配される。これらのバンプ109が互いに位置合わせされて、信号処理チップ111とメモリチップ112とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
なお、バンプ109間の接合には、固相拡散によるCuバンプ接合に限らず、はんだ溶融によるマイクロバンプ結合を採用しても良い。また、バンプ109は、例えば後述する一つの出力配線に対して一つ程度設ければ良い。したがって、バンプ109の大きさは、PD104のピッチよりも大きくても良い。また、画素が配列された撮像領域以外の周辺領域において、撮像領域に対応するバンプ109よりも大きなバンプを併せて設けても良い。
信号処理チップ111は、表裏面にそれぞれ設けられた回路を互いに接続するTSV(シリコン貫通電極)110を有する。TSV110は、周辺領域に設けられることが好ましい。また、TSV110は、撮像チップ113の周辺領域、メモリチップ112にも設けられて良い。
図9は、撮像チップ113の画素配列を説明する図である。本例において画素はマトリクス状に配置された単位グループ131を構成する。単位グループ131は、緑色画素Gb、Gr、青色画素Bおよび赤色画素Rの4画素から成るいわゆるベイヤー配列を、上下左右に4つ内包する。緑色画素Gb、Grは、カラーフィルタ102として緑色フィルタを有し、入射光のうち緑色波長帯の光を受光する。同様に、青色画素Bは、カラーフィルタ102として青色フィルタを有し、青色波長帯の光を受光し、赤色画素Rは、カラーフィルタ102として赤色フィルタを有し、赤色波長帯の光を受光する。
図10は、図5に示す画素ブロックのうち第1の画素ブロック650―1の回路構成図である。回路構成は、他の画素ブロックでも同様である。なお、図10は、説明をわかりやすくするために、画素ブロック650−1は4画素×4画素の16個の画素を有するが、回路構成はこれに限定されない。各画素の各トランジスタは、図4の画素150における対応する位置に配された各トランジスタと同じ構成および機能を有する。
行が同一の画素の転送トランジスタの転送ゲートは行毎に共通の転送配線310に接続されている。行が同一の画素の選択トランジスタの選択ゲートは行毎に共通の選択配線314に接続されている。行が同一の各画素の選択トランジスタのソースは共通の信号配線315に接続されている。行毎の信号配線315は、Y軸方向に延びる共通の出力配線322に接続される。
列が同一の画素のリセットトランジスタのリセットゲートは、列ごとに共通のリセット配線318に接続されている。列ごとのリセット配線318は、X軸方向に延びる共通のリセット配線326に接続される。出力配線322には負荷電流源313が接続される。なお、リセット配線326および電源配線312は画素ブロック650−1で共通である。
本実施形態においては、複数の読出モードのそれぞれに応じた領域の画素の画素信号がグローバルリセットローリング読み出し方式で読み出される。つまり、図10に示す回路構成において、それぞれの画素ブロックを構成する画素の画素信号はグローバルリセットローリング読み出し方式で行毎に順次読み出される。複数の読出モードのそれぞれに応じた読出領域は、グローバルリセットローリング読み出し方式で、1フレーム分の画素信号を読み始めるときの読出開始領域、および、1フレーム分の画素信号の読み出しを終了するときの読出終了領域を含む。
図6で説明したように、本例において温度センサ640は、画素ブロックごとに同じ密度で配置されていない。つまり、複数の温度センサ640は、少なくとも一つの複数の読出モードに対応する読出領域について、読出開始領域に対向する位置に比べ、読出終了領域に対向する位置の方が密に配置されている。また、図6に示したように、読出終了領域における画素ブロック(660−1、660−2、660−3、660−4)は、読出開始領域における画素ブロック650−1に比べ、面積が小さい。
一般に、グローバルリセットローリング読み出し方式で画素信号の読み出しを行う場合、読出終了領域の画素は、読出開始領域の画素に比べ、発熱量が大きい。これは、上述したように、両者の画素がリセットされてから、画素信号を読み出すまでの時間に差が生じるためである。この時間差によって、電荷の蓄積時間が長い分、PDの発熱量が大きくなる。さらに、出力配線322を流れる電流による配線抵抗からの発熱の影響が大きくなる。この熱に起因して転送トランジスタを通じてPDに暗電流が流れる。
結果として、転送トランジスタの閾値が変化し、設計値以上の電圧が出力配線322に印加され、輝度の上昇を招く。前述したように、回路および素子の発熱によって生じる暗電流ノイズは、後段の補正部512によって補正することができる。読出終了領域近傍の画素の温度を詳細かつ正確に知ることで、補正の精度が向上する。結果として、フレーム内で輝度の高低が少ない高品質な画像を得ることができる。
図11は、撮像素子100の機能的構成を示すブロック図である。アナログのマルチプレクサ411は、上述した画素ブロックの各行の画素を順番に選択して、それぞれの画素信号を出力配線320へ出力させる。マルチプレクサ411を介して出力された画素信号は、出力配線320を介して、信号処理回路412に引き渡される。信号処理回路412は、相関二重サンプリング(CDS)・アナログ/デジタル(A/D)変換を行う。A/D変換された画素信号は、出力配線321を介してデマルチプレクサ413に引き渡され、それぞれの画素に対応する画素メモリ414に格納される。
マルチプレクサ411は、撮像チップ113に形成される。信号処理回路412は、信号処理チップ111に形成される。デマルチプレクサ413および画素メモリ414は、メモリチップ112に形成される。
演算回路415は、画素メモリ414に格納された画素信号を処理して後段の画像処理部に引き渡す。演算回路415は、信号処理チップ111に設けられても良いし、メモリチップ112に設けられても良い。なお、本例では、1画素ブロック分の接続を示すが、実際にはこれらが画素ブロックごとに存在して、並列で動作する。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。