JP2018016063A - マーキング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】インキを吸蔵するインキパッドに当接して印面にインキを供給する反転スタンプ式のマーキング装置において、インキパッドの漏液を効率的に溜める技術を提供すること。【解決手段】マーキング装置は、マーク対象面に位置合わせされる内筒体と、内筒体を摺動可能に収容する外筒体と、外筒体と内筒体の間に圧縮状態のコイルばねを介して嵌装されるインキカートリッジとを備える。インキを吸蔵するインキパッドが、インキカートリッジの下部の収容部材54に収容される。この収容部材において、インキパッドの周縁部に接するスリット状の溝543aからなるインキ溜り544を形成する。収容部材の内壁から一の中心軸に向けて放射状に延びる複数の襞状体543を形成し、互いに隣接する各襞状体の間隙によりインキ溜り544が形成される。【選択図】図11

Description

本発明は、対象表面に所定のマークを転写するマーキング装置に関し、特に自動車用タイヤの側面にマーキングを行う反転スタンプ式のマーキング装置に関する。
一般に、製造された車両用タイヤの検査工程においては、アンバランス測定やユニフォミティ測定が行われている。検査の結果、例えばタイヤの周方向において重量が最も軽い位置(軽点)やタイヤの外径が最も大きい部分には任意の色のマークが施される。このようなマークをタイヤのサイドウォールに塗布するにあたっては、スタンプ方式により所定形状のマークを転写する方法が採用されてきた。例えば特許文献1には、ペン芯の先端をマークと同じ印面形状としたマーカペンが開示されている。
しかし、ペン芯にインキを直接浸透させる従来の方式では、繰り返しの使用により芯先のインキが過多となって印面に滲み出たり、逆に長期の不使用により印面のインキが乾燥して、マーク品質に悪影響を与えるおそれがある。そこで、良好なマーク品質を長期にわたり維持するため、例えば特許文献2に記載されるような反転式構造を応用することにより、スタンプに供給するインキの量を常に最適に保つことが検討された。
特開2006−150899号公報 特開2013−256031号公報
上述した反転式スタンプは、タンクに貯留されている液状のインキを吸蔵する多孔質のインキパッドを備え、非吸水性の印面をインキパッドに当接させることで、インキが印面に供給される。印体の印面がインキパッドに押し付けられる構成により、インキパッドからのインキの漏れや乾燥を効果的に防ぐことができる。しかし、インキを貯留するタンクの内圧が急激な温度変化等により高まると、押印時に印面がインキパッドから離れたときにインキが噴き出し、インキ漏れを起こす場合があった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、インキを吸蔵するインキパッドに当接して印面にインキを供給する反転スタンプ式のマーキング装置において、インキパッドの漏液を効率的に溜める技術を提供することを目的としている。
上述した課題を解決するため、本発明は、インキを貯留するタンクと、前記タンクのインキを吸蔵するインキパッドと、前記インキパッドに印面を臨ませて印体を支承する内筒体と、前記印体を枢支し弾性体を介して前記内筒体を摺動可能に収容する外筒体とを備え、前記弾性体の反発力に抗して前記外筒体を押圧することにより前記内筒体内で前記印体を反転させてマーキングを行なえるようにした反転式のマーキング装置であって、前記インキパッドを収容する収容部材において、当該インキパッドの周縁部に接するスリット状の溝からなるインキ溜りを形成したことを特徴とするマーキング装置である。
上記構成において、前記収容部材の内壁から一の中心軸に向けて放射状に延びる複数の襞状体を形成し、互いに隣接する各襞状体の間隙により前記スリット状の溝が形成されることが好ましい。
また、前記インキパッドの下面のうち前記印面が望む面を除く面領域に、前記スリット状の溝からなるインキ溜りが接していることが好ましい。
また、前記インキパッドの外周側面に、前記スリット状の溝からなるインキ溜りが接しているものでもよい。
本発明のマーキング装置によれば、タンクの内圧が高まり、インキパッドからインキが漏液した場合でも、インキ溜りが吸収し、かつ、ある程度の量のインキを保持することができる。また、インキ溜りよりもインキパッドの毛細管力のほうが強いので、タンクの内圧が正常に戻ると、インキ溜りに溜めた漏液インキをインキパッドに迅速に戻すことができる。
第1の実施形態によるマーキング装置の外観斜視図である。 図1のマーキング装置の断面図である。 印体および反転片の平面図(a)と側面図(b)である。 内筒体を構成する内枠部材の外側面図(a)と内側面図(b)である。 外筒体の側面図(a)とその断面図(b)である。 インキカートリッジの断面図である。 第1の実施形態によるインキカートリッジの着脱方法を説明するための図である。 仕切り部材の側面図(a)とその底面図(b)である。 仕切り部材の断面図である。 仕切り部材に形成される貫通孔の一実施例を説明するための図である。 一実施例による収容部材の平面図(a)とその断面図(b)である。 他の実施例による収容部材の断面図である。 図1のマーキング装置による動作を説明するための断面図である。 印体の反転動作を説明するための図である。 印体の反転動作を更に説明するための図である。 印体の反転動作を更に説明するための図である。 印体の反転動作を更に説明するための図である。 実施例による円弧状の内筒体の場合と比較例による場合の効果を対比して説明するための図である。 第2の実施形態によるマーキング装置の側面図である。 図16のマーキング装置の断面図である。 外筒体の分離構造を説明するための分解側面図である。 インキカートリッジの構造を説明するための分解側面図である。
以下、本発明の好適な実施形態として、車両用タイヤのサイドウォールにマークを転写するためのマーキング装置を、図面を参照しながら例示的に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるマーキング装置10の外観斜視図である。図2は、マーキング装置10の縦断面図である。マーキング装置10は、軽点など所定のマーク形状である例えば円形の印面を有する印体20と、印体20を内部で回転可能に支承する内筒体30と、内筒体30を上下に摺動可能に収容する外筒体40とを備えている。
図3に、印体20と印体20を反転させる反転片21の平面図および側面図を示す。先ず、印体20は、マーク対象物に当接する印面を有する円柱状の弾性体で形成され、気泡が無いノンポーラス体や、独立気泡のスポンジ体(多孔質体)を用いることができる。インキのベタ付き(過剰塗布)を防止するため、連続気泡のスポンジ体ではなく非吸収性の素材からなることが好ましい。またマーク対象面への押印時の変形に伴う追従性を良好とし、かつ、適度な反発力を得るために、独立気泡のスポンジ体であることが好ましい。
印体20は、ゴム、加硫剤、充填剤、軟化剤、着色剤、老化防止剤、その他の添加剤等を混練した後、これを加硫して得ることができる。素材としては、通常のゴムであれば特に問題なく使用でき、天然ゴム、NBR、SBR、BR、IR、EPDM、ACM、IIR、シリコーンゴム、ポリウレタンゴムなどのゴムを単独又は混合して使用することができる。加硫剤も前記ゴムを加硫するのに通常用いるものであれば特に問題なく使用でき、硫黄、硫黄化合物、過酸化物などを用いることができる。また、一般のゴム成形物と同様に充填剤、軟化剤、着色剤、老化防止剤などの添加剤を配合することが好ましい。充填剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、珪酸、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム等をあげることができ、軟化剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等をあげることができ、着色剤としては、カーボンブラック、チタンホワイト、群青、フタロシアニン、ベンガラ、クロム酸鉛等をあげることができ、老化防止剤としては、フェノール、ワックス等をあげることができる。また、他に加硫助剤として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、亜鉛華、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等や、加硫促進剤として、チアゾール類、チラウム類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類等の添加剤を配合してもよい。独立気泡のスポンジ体とする場合は、発泡剤・発泡助剤等と混練し、これを加硫して得ることができる。
印面を形成する方法としては、彫刻加工・レーザ加工・プレス加工などで片側の表面に印面を加工して作成される。
印面が全て塗りつぶされたベタ印の場合は、独立気泡のスポンジ体が好ましく、この場合、マーク対象面がフラットな平坦面でも、凹凸のある変形面でも、鮮明捺印が可能となる。
また、独立気泡のスポンジ体は柔らかく印影が潰れやすいため、印面が文字(数字やアルファベット等)・絵柄等の場合は、印影が潰れ難いノンポーラス体が好ましい。
印体20は、印面の反対側面が反転片21の上面にネジ部を介して固定されている。印体20を反転させる反転片21は、例えばアルミ合金のダイカストにより形成することができる。反転片21の左右両側部には、後述する外筒体40の軸受部46に枢支される軸部22がそれぞれ突出形成されている。また、軸部22を中心にしてその左右両側に、半円溝23a、23bが形成されるとともに、軸部22の直下に円頭突起24が形成されている。これら、半円溝23a、23bおよび円頭突起24は、後述する内筒体30の反転ガイド36と係合して、反転片21とともに印体20を反転させる反転機構を形成している。また、反転片21の周囲には、後述するインキパッド55との間でシール性を確保するためのOリング25が設けられる(図2参照)。
次に、内筒体30は、図4に示すように相互に対称形の関係にある2つの内枠部材34F、34Rが対向し、これらがネジ止めされて組み立てられている。なお、図2では、マーキング装置10の構造の理解を助けるため、紙面前側の内枠部材34Fを取り外した状態が図示されている。
図2および図4に示されるように、内筒体30の内部を上下に貫通するようにして、印体20および反転片21の移動ならびに回転を許容する空間である印体可動部31が形成されている。印体可動部31に連通する内筒体30の上部には、後述するインキカートリッジ50のニプル52を着脱可能に嵌合させるためのカートリッジ嵌合部32が形成されている。インキパッド55を収容するニプル52がカートリッジ嵌合部32に嵌合することで、内筒体30内の印体20が、その印面とインキパッド55とが対向当接するようにして支承される。
他方、内筒体30の下部には、印体可動部31に連通し、マーキング時に印体20を下方に露出させるための印面開口部33が形成されている。なお、内筒体30の下端縁33aである印面開口部33周辺が、マーク対象面であるタイヤのサイドウォールに当接する部分である。詳細は後述するが、内筒体30の下端縁33aが曲線状であることが、本マーキング装置10のひとつの特徴としてある。
内枠部材34F、34Rは、外筒体40内における摺動方向である上下に沿って長い長孔35を有している。この長孔35には、反転片21の軸部22が挿通される。すなわち、内筒体30内では、外筒体40の押圧操作に連動して、反転片21の軸部22が長孔35に案内されることで、反転片21が上下に移動する。また、反転片21は、内筒体30の印体可動部31内での軸部22周りの回転も許容されている。なお、当然ながら、反転片21が上下に移動できるストローク範囲は、長孔35の長さによって制限されている。
また、内枠部材34F、34Rの内壁部には、長孔35に沿って反転ガイド36が形成されている。本実施形態の反転ガイド36は、円柱状の上下2つの小突起36a、36bの間に略半円形の中溝36cを有して形成されている。ただし、印体20を有する反転片21の上下移動に伴い、当該反転片21を反転させるように噛み合うギア体またはカム機構であれば、反転ガイドは、ここで説明される態様に限定されるものではない。
内筒体30は、印体20を有する反転片21を内部に収容した状態で、その上部が外筒体40の下側開放部に、摺動可能に挿入されている。
次に、その外筒体40の構造を詳細に説明する。図5(a)は外筒体40の側面図、図5(b)は外筒体40の縦断面図である。外筒体40は、インキを貯留するインキカートリッジ50を収容する収容体であるとともに、手動でマーキングをする際にはその持ち手部分としての機能をも担う部材である。マーキング装置10が自動化したラインに組み込まれる場合には、例えば多関節型ロボットアームの先端に外筒体40を固定するか、またはマニュピレータに外筒体40を把持するような態様で取り付けられる。
外筒体40は、相互に対称形の関係にある2つの外枠部材41が対向し、これらの外枠部材41がネジ止めされて略四角筒状に組み立てられている。外筒体40の内部には、インキカートリッジ50のタンク51の一部を収容する空間であるタンク収容部42と、弾性体であるコイルばね60を収容する空間であるばね収容部43と、内筒体30を摺動可能に収容する内筒体摺動部44とがそれぞれ連通して形成されている。内筒体摺動部44には、反転片21の軸部22を回転可能に枢支する軸受部46が設けられている。
次に、外筒体40の中に装着されるインキカートリッジ50の断面図を図6に示す。インキカートリッジ50は、インキを貯留するタンク51と、インキパッド55などを保持するニプル52とを備え構成されている。本実施形態によるタンク51は、正面視略V字形状ないしは略U字状を有している。タンク51の最下部にはニプル52が取り付けられている。インキカートリッジ50は、ニプル52が内筒体30のカートリッジ嵌合部32に挿嵌され、タンク51の例えば右側の部分がタンク収容部42に収容される。外筒体40の一方側(例えば図2では左側)には開口部45が形成されており、そこからインキカートリッジ50のタンク51の左側の一部が外部に露出している。
そして、インキカートリッジ50は、外筒体40内で、圧縮状態のコイルばね60および内筒体30との間で挟持される。コイルばね60の弾性反発力が、タンク51中央の凹部を作用点として、インキカートリッジ50を下方に押圧する方向に作用している。そのため、内筒体30は、インキカートリッジ50のニプル52で押圧され、外筒体40から常時突出する方向に付勢された状態で保持されている。
本マーキング装置10においては、外筒体40の一方の開口部45を介して、インキカートリッジ50が着脱可能とされている。すなわち、図7に示すように、開口部45から露出するタンク51の左部を端緒として、インキカートリッジ50をコイルばね60の弾性反発力に抗する方向に若干移動させることにより、ニプル52をカートリッジ嵌合部32から離脱させることができる。そして、その移動させた位置で、タンク51の左部を左上方に引き出すことで、インキカートリッジ50を外筒体40の開口部45から容易に取り出すことができる。
逆に、タンク51の右部を先にタンク収容部42に入れながら、タンク51中央の凹部にコイルばね60を設置することで、コイルばね60の弾性反発力によりニプル52がカートリッジ嵌合部32に自動的に移動して嵌合する。これにより、マーキング装置10内にインキカートリッジ50を簡単に装着することができる。
このように、本実施形態のマーキング装置10によれば、インキカートリッジ50に対して一連の移動操作をするだけで、外筒体40からインキカートリッジ50を容易に着脱することができる。大量生産されるタイヤそれぞれにマーキングする工程では、マーキング装置10におけるインキの消費量も多く、インキの量の点検や補充を頻繁に行なう必要がある。しかしながら、本マーキング装置10によれば、インキが消費され空になったインキカートリッジ50を、インキを補充したものに容易に交換できるので、マーキングの作業効率を低下させることはない。また、一連の移動操作だけでインキカートリッジ50をマーキング装置10から着脱できるので、インキカートリッジ50の交換を自動化することも容易であり、マーキング作業の更なる効率向上も図ることができる。
本マーキング装置10で使用されるインキは、顔料系、染料系、油性系、水性系を問わず適宜使用可能である。例えば、自動車用タイヤにマーキングを行うためのインキとしては、速乾性溶剤に着色剤や樹脂等を溶解混合した油性インキを用いることができる。
この場合、速乾性溶剤としては、既存の揮発性有機溶剤を用いることができ、例えば、アルコール系溶剤、脂環族炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、グリコールエーテルなどを用いることができる。
着色剤として、染料は油溶性染料であればよく、ニグロシン系、アジン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系等の油溶性染料、油溶性造塩染料、油溶性含金染料を用いることができ、顔料は、縮合アゾ、イソインドリノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、アントラキノン、ジオキサジン、フタロシアニン、チオインジコ等の有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料、マイカやガラスを酸化チタンや酸化鉄で被覆した光輝性顔料、アルミ粉や真鍮粉等の金属顔料などを用いることができる。また、既存の紫外線硬化インキ等も用いることができる。
インキカートリッジ50の最下部に設けられるニプル52について更に詳細に説明する。
図6に示したように、ニプル52は、有底中空円筒状の仕切り部材53と、インキパッド55を収容する無底中空円筒状の収容部材54の2つのパーツから構成される。仕切り部材53と収容部材54の外径は略同一である。ニプル52は、収容部材54の被嵌合部541(図11(b)参照)に仕切り部材53の嵌合部533(図8(a)参照)を嵌合させて、両部材を結合してなる部材である。
このようにニプル52は、インキパッド55を収容する収容部材54と仕切り部材53とを一体化したものであるが、インキパッド55が経時劣化等によりインキの吸蔵性能が落ちてしまった場合には、収容部材54を仕切り部材53から分離することで、中のインキパッド55を容易に交換することができる。
図6に示したように、タンク51のインキ排出口511と、収容部材54が収容するインキパッド55との間には、仕切り部材53が介装されている。ここで、図8(a)は仕切り部材53の側面図であり、図8(b)は仕切り部材53の底面図である。また、図9は、仕切り部材53の縦断面図である。
仕切り部材53の内壁には、雌ネジ部534が形成されている。タンク51最下部のインキ排出口511に形成された雄ネジ部512に、仕切り部材53の雌ネジ部534を螺合させることで、ニプル52がタンク51に着脱可能に取り付けられている。
図8および図9を参照し、仕切り部材53は、その底板部分(以下、単に「仕切り板部」という)530を貫通する複数の貫通孔(インキ供給孔531、空気抜き孔532)を有している。これらの貫通孔(531、532)により、インキパッド55内に気泡の形で残存する空気と、タンク51から供給されるインキとの置換を円滑にすることができる。
仕切り板部530に形成される貫通孔531、532の実施例を図10に示す。本実施例によれば、仕切り板部530は円盤状を有している。貫通孔は、少なくとも1つのインキ供給孔531と、複数の空気抜き孔532とからなり、仕切り板部530においてインキ供給孔531を中心にして、その周囲に複数の空気抜き孔532が放射状に配置して形成されている。
ここで、インキ供給孔531のインキパッド側(下側)の開口径をaとし、タンク側(上側)の開口径をa1と定義する。また、空気抜き孔532のタンク側(上側)の開口径をbとし、インキパッド側(下側)の開口径をb1と定義する。なお、複数の空気抜き孔532は、放射状の向きの違いがあるのみで、形状においてはどれも同じとする。更に、「開口径」とは、貫通孔の最大開口径をいう。つまり、円形のインキ供給孔531の開口径はその孔の直径が該当し、空気抜き孔532の開口径は仕切り板部530の半径方向における開口長が該当する。
この場合において、インキ供給孔531の開口径aは、空気抜き孔532の開口径bよりも大きいことが好ましい(条件式(1))。
a>b ・・・(1)
また、条件式(1)に加え、インキ供給孔531のタンク側の開口径a1は、インキパッド側の開口径aよりも大きいことが好ましい(条件式(2))。
a1>a ・・・(2)
また、条件式(1)に加え、空気抜き孔532のインキパッド側の開口径b1は、タンク側の開口径bよりも大きいことが好ましい(条件式(3))。
b1>b ・・・(3)
インキ供給孔531および空気抜き孔532を上記のように形成した仕切り部材53により、インキパッド55内で空気とインキとの置換を円滑にすることができる。したがって、インキパッド55への初期インキ供給はもちろんのこと、1回のスタンプ工程の短期間内に、タンク51からのインキをインキパッド55に過不足なく吸蔵させることができる。
インキパッド55は収容部材54に収容保持される。インキパッド55は、非粘性液体のインキを吸蔵可能な毛細間隙を有するものであれば、例えば合成樹脂繊維からなる不織布、フェルト加工体とすることができる。その素材として、例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)を素材とするポリオレフィン系繊維を採用することができる。また、インキパッド55は、ポリビニルアルコール(PVA)等を素材としたスポンジ等の多孔質体で形成することができる。
また、連続捺印性を良好とするために、インキパッド55を目付量(繊維密度)の異なる多層構造とすることもできる。例えばインキパッドが2層構造の場合、印面に接触する側層の目付量をインキ供給側層の目付量より大きくすることができる。これらの層は、例えば熱融着加工により接着することができる。このような多層構造とすることで、毛細管力に差を生じさせ、インキパッド55への初期インキ供給性を損なわずにインキの流れを調節することができるため、印面を文字・絵柄等とした印体20がノンポーラス体の場合、特に好ましい。
ここで、図11(a)は収容部材54の平面図であり、図11(b)は収容部材54の縦断面図である。収容部材54において、その円筒体の内壁上部に形成される被嵌合部541の下方部が、インキパッド55を収容するための収容空間542となっている。
更に収容空間542の下方には、インキパッド55からのインキの漏液を吸収するインキ溜り544が形成されている。図11の実施例において、インキ溜り544は、スリット状の間隙を利用して液体のインキを吸着させる溝543a、543a、・・・により形成される。すなわち、収容部材54においては、その内壁から中心軸に向けて放射状に延びる複数の襞状体543、543、・・・が形成されている。各襞状体543、543、・・・は、収容部材54の周方向においては同一間隔で配置され、径方向においては同一長さに形成される。このような襞状体543は、液体のインキをある程度保持できるようにするため、使用されるインキとの親和性を有していることが好ましい。
本実施例において、インキ溜り544は、インキパッド55の下面のうち、印体20に接する面を除く面領域に、スリット状の溝543a、543a、・・・からなるインキ溜り544が接触している。各襞状体543、543、・・・は、互いに短い距離で隣接しており、それらの各間隙であるスリット状の溝543a、543a、・・・は、インキパッド55よりも弱い毛細管力を有している。そして、インキ溜り544の毛細管力は、放射状の溝543a、543a、・・・の間隔が狭くなる中心側、つまり印体20が存在する側にいく程大きい。
タンク51の内圧が急激な温度変化等により高まると、インキパッド55が吸蔵するインキが外部に漏液する場合がある。しかし、本実施例によれば、インキパッド55から漏液したインキをインキ溜り544が吸収し、かつ、ある程度の量を保持することができる。したがって、タンク51の内圧が高い状態でも、スタンプ時に印体20がインキパッド55から離れた際にインキが噴き出すような事態を回避することができる。
特に、放射状のインキ溜り544においては、中心に向かう程、溝543a、543a、・・・の間隔が狭くなり、毛細管力が大きくなっている。そのため、インキパッド55の中心にある印体20側に漏れ出すインキを優先的に吸収し、印面に余分なインキが付着しないようにしている。
また、インキ溜り544よりもインキパッド55の毛細管力のほうが強いので、タンク51の内圧が正常に戻ると、インキ溜り544に溜めた漏液インキをインキパッド55の周縁部が迅速に吸収して戻すことができる。
なお、他の実施例として、図12に示すように、インキパッド55の外周側面に接触するインキ溜り545を、収容部材54に形成してもよい。本実施例においても、中心軸に向けて放射状に延びる複数の襞状体546、546、・・・により、スリット状の溝546a、546a、・・・が形成される。このような態様のインキ溜り545によっても、インキパッド55からのインキの漏液を効率的に溜めることができる。更に漏液インキの容量を確保するため、図12に示すように、印体20の周囲まで襞状体546、546、・・・を延長して形成してもよい。
図11および図12で示した何れの実施例においても、インキ溜り544、545で画成される収容部材54の内部空間に印体20が入り込み、その印面がインキパッド55に対向して当接する構造となっている。そして、コイルばね60で付勢された反転片21が、印体20周囲のOリング25を介して収容部材54の下端を押し付ける。このような収容部材54の密閉構造により、インキパッド55のインキの揮発や乾燥を効果的に防止することができる。更に、Oリング25がインキパッド55と印体20との接触圧力を緩和するため、インキパッド55の経時的な変形やへたり等の発生を防ぐこともできる。
次に、上述した構成のマーキング装置10によるマーキング動作を説明する。ここでは、図13に示すように、タイヤTのサイドウォールに軽点マークを転写する例で説明する。
マーキング装置10は、不使用時においては、コイルばね60の弾性反発力の作用により、外筒体40から内筒体30が突出し、全体が伸長した状態にある。この初期状態では、上述したように印体20が収容部材54の内部にあり、転写のためのインキを印面に付着させるために、印体20がインキパッド55に当接している。
次に、マーキングを開始する際には、予め測定したタイヤTのアンバランスピーク位置(軽点)を目標にして、その位置に内筒体30の下端縁33aの最下点を位置合せして接触させる。そして、外筒体40をコイルばね60の反発力に抗して押し下げると、外筒体40の中に内筒体30が入り込むように全体が縮退する。このとき、外筒体40に枢支される反転片21が内筒体30の縦長の長孔35に案内されて、内筒体30の中を下方に移動する。
外筒体40の押圧操作に連動して、印体20を設置する反転片21が下降すると、最初に反転片21の右の第一半円溝23aが、内筒体30の反転ガイド36を構成する上小突起36aに接触する(図14A)。このとき、小突起36aに反転片21の右側が押し上げられて、反転片21が軸部22を中心に回転が開始する(図14B)。
反転片21の回転角が90°になると、中央の円頭突起24が中溝36c内に入り込むようにして反転ガイド36に係合する(図14C)。更に反転片21の回転が進むと、今度は下小突起36bが円頭突起24を押し上げる。これにより、最終的に内筒体30の下端位置で反転片21が180°反転し、印体20の印面がマーク対象面側を向く(図14D)。更に外筒体40を押し下げれば、その押圧力が印体20に加えられる。これにより印体20の印面がタイヤTに押し付けられ、そこにインキが転写される。
マーキングが完了した後、外筒体40の押圧を開放すると、圧縮されたコイルばね60の反発力により、内筒体30が初期の位置に戻る。それに連動して反転片21も内筒体30の中を上に移動して初期位置に戻る。このとき、反転ガイド36との上述した係合動作とは逆の動作で印面が上向きに反転する。
本実施形態のマーキング装置10では、マーク対象面であるタイヤ面に当接する内筒体30の下端縁33aが円弧状に形成されている。更には、円弧状に曲がる下端縁33aの曲率中心が、反転片21の軸部22(印体の枢支軸)を通る、外筒体40および内筒体30の摺動方向延長線上にあることが好ましい。
このように、内筒体30が円弧状の下端縁33aを有することにより、マーク対象面に対向して接近する印面の追従性を良好にすることができる。
図15には、内筒体が実施例による円弧状の下端縁33aを有する場合と、比較例による直線状の下端縁(破線で示される)を有する場合の効果を対比した図が示される。図15によれば、実施例の場合、マーキング装置10のマーク対象面に対する傾きが片側で最大許容角度Ra以下であれば、印体20の印面全体を対象面に転写できる良好な追従性を有している。一方、比較例の場合、内筒体の角がマーク対象面に干渉するため、印面全体の転写を許容するマーキング装置の片側最大許容角度Roは、本実施例の最大許容角度Raよりも小さいことが分かる(Ra>Ro)。
マーキング装置10をマーク対象面の法線方向に対し多少傾けて押圧操作をしても、その傾きが最大許容角度Ra以下であれば、マークの一部に欠落を生じさせることなく鮮明なマークをタイヤ面に転写することができる。このことは、タイヤのサイドウォールのような曲面や傾斜面を有する平坦でない対象面にマーキングする場合でも、マーキング装置本体の姿勢をあまり考慮しなくて済むことを意味する。つまり、マーキング作業を自動化する際、マーキング装置10の姿勢制御を正確にする必要がないので、作業効率を向上させることができる。
また、反転片21の軸部22を通る内筒体30の摺動方向延長線上に、内筒体下端縁33aの曲率中心を設けたことにより、外筒体40に印可する押圧操作力を分散させずに印体20に集中させることができる。これにより、内筒体下端縁33aの最下点をタイヤの軽点位置に位置合わせすれば、当該軽点位置に鮮明なマークを確実に転写することができる。
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態によるマーキング装置70を説明する。なお、以下参照される図面において、第1の実施形態と共通または対応する構成要素には同一の符号を付しており、その詳細な説明は、上述した第1の実施形態においてした説明が参照される。
図16に第2の実施形態によるマーキング装置70の側面図を示す。図17にマーキング装置70の縦断面図を示す。本実施形態によるマーキング装置70は、第1の実施形態と同様に、インキを貯留するタンク91と、タンク91からのインキを吸蔵するインキパッド55と、インキパッド55に印面を臨ませて印体20を支承する内筒体30と、印体20を枢支しコイルばね60を介して内筒体30を摺動可能に収容する外筒体80とを備えている。コイルばね60の反発力に抗して外筒体80を押圧することにより、内筒体30内で印体20を反転させてマーキングを行うことができる。
外筒体80は、インキカートリッジ90の交換を容易に行えるようにするために、図18に示すように、「上枠部」である中空の円筒状部81と、「下枠部」である同じく中空の角筒状部82とが結合および分離する構造を有している。例えば、角筒状部82の上部には雄ネジ部82aが形成され、円筒状部81下部の雌ネジ部81aに螺合させることにより、円筒状部81および角筒状部82が着脱可能に結合している。
内筒体30は、第1の実施形態と同様に円弧状の下端縁33aを有している。これにより、タイヤのサイドウォールのような曲面や傾斜面を有する平坦でない対象面にマーキングする場合でも、正確な姿勢制御をしなくて済む。
また、内筒体30の上部は、外筒体80の下枠部を構成する角筒状部82に摺動可能に挿入される。角筒状部82には軸受部46が形成され、内筒体30の内部で反転移動する反転片21(印体20)の軸部22が、この軸受部46に回転可能に枢支される。また、内筒体30には、上述した第1の実施形態と同様、反転片21の軸部22を上下方向に案内する長孔35や、反転片21を反転させる反転ガイド36などが形成されている。
図19に示すように、インキカートリッジ90は、インキを貯留する円筒形のタンク91と、第1の実施形態同様にタンク91の下部に取り付けられるニプル52とを備えている。タンク91は、外筒体80の上枠部を構成する円筒状部81に収容される。ニプル52は、第1の実施形態と同様に、インキと空気との置換を円滑にする仕切り部材53と、インキパッド55を収容する収容部材54とから構成することができる。収容部材54には、第1の実施形態同様のインキ溜り544(または545)を形成することができる。
外筒体80において、インキカートリッジ90のニプル52が角筒状部82を貫通し、収容部材54の先端が内筒体30の上部に当接している。円筒状部81には圧縮状態のコイルばね60が挿入され、インキカートリッジ90のニプル52を常時押圧している。つまり、インキカートリッジ90は、外筒体80内で、コイルばね60および内筒体30との間で弾性的に挟持されている。
不使用時(初期状態)においては、コイルばね60の弾性反発力がインキカートリッジ90に作用することにより、内筒体30が外筒体80から押し出され、全体が伸長した状態にある。この初期状態では、内筒体30内の印体20が収容部材54の内部でインキパッド55に当接し、印面にインキが供給される。
外筒体80は、上述したように角筒状部82(下枠体)から円筒状部81(上枠体)を分離することができ、その状態でインキカートリッジ90を容易に取り出すことが可能である。このように、本マーキング装置70によれば、インキが消費され空になったインキカートリッジ90を、インキを補充したものに容易に交換できるので、マーキングの作業効率を低下させることはない。また、インキカートリッジ90の交換を自動化することも容易であり、マーキング作業の更なる効率向上も図ることができる。
10 マーキング装置(第1の実施形態)
20 印体
21 反転片
22 軸部
23a、23b 半円溝
24 円頭突起
25 Oリング
30 内筒体
32 カートリッジ嵌合部
33a 下端縁
34F、34R 内枠部材
35 長孔
36 反転ガイド
40 外筒体
45 開口部
46 軸受部
50 インキカートリッジ
51 タンク
52 ニプル
53 仕切り部材
531 インキ供給孔
532 空気抜き孔
54 インキパッドの収容部材
543 襞状体
543a スリット状の溝
544 インキ溜り
55 インキパッド
60 コイルばね
70 マーキング装置(第2の実施形態)
80 外筒体
81 円筒状部
82 角筒状部
90 インキカートリッジ
91 タンク

Claims (4)

  1. インキを貯留するタンクと、前記タンクのインキを吸蔵するインキパッドと、前記インキパッドに印面を臨ませて印体を支承する内筒体と、前記印体を枢支し弾性体を介して前記内筒体を摺動可能に収容する外筒体とを備え、前記弾性体の反発力に抗して前記外筒体を押圧することにより前記内筒体内で前記印体を反転させてマーキングを行なえるようにした反転式のマーキング装置であって、
    前記インキパッドを収容する収容部材において、当該インキパッドの周縁部に接するスリット状の溝からなるインキ溜りを形成したことを特徴とするマーキング装置。
  2. 前記収容部材の内壁から一の中心軸に向けて放射状に延びる複数の襞状体を形成し、互いに隣接する各襞状体の間隙により前記スリット状の溝が形成される、請求項1に記載のマーキング装置。
  3. 前記インキパッドの下面のうち前記印面が望む面を除く面領域に、前記スリット状の溝からなるインキ溜りが接している、請求項1または2に記載のマーキング装置。
  4. 前記インキパッドの外周側面に、前記スリット状の溝からなるインキ溜りが接している、請求項1または2に記載のマーキング装置。
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