JP2018015706A - 積層構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空装置を用いることなく、ポリマーと金属膜又は金属酸化膜とを工業的有利に成膜できる積層構造体の製造方法を提供する。【解決手段】第1及び第2の原料溶液をそれぞれ霧化し、得られた第1及び第2のミストをそれぞれ第1及び第2のキャリアガスをそれぞれ用いて基体近傍まで搬送し、ついで前記基体近傍で第1及び第2のミストをそれぞれ熱反応させることにより、前記基体上に直接又は他の層を介して第1及び第2の膜をそれぞれ形成し、積層構造体を得る。なお、第1及び第2のキャリアガスはそれぞれ互いに同一又は異なるガスであり、第1及び第2の原料溶液のうちいずれか一方はモノマーを含み、他方は金属を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な積層構造体の製造方法及びその製造方法により得られた積層構造体に関する。
従来より、高分子薄膜は、機能性に優れた材料として、種々の用途に用いられている。高分子薄膜は、塗布後、延伸等により100μm以下にすることによって得られており、近年においては、高分子薄膜をより薄くすることが求められている。高分子薄膜をより薄くすることで、製品のさらなる小型化が可能になったり、製造コストの削減が可能になったり、さらなる機能性の付与等を行ったりすることが可能になってくるからである。
近年においては、高分子薄膜が、金属や金属酸化物と組み合わせて機能性材料として用いられている。特に最近求められているのは、数ミクロン単位(10μm以下)での機能性の発現であり、例えば、このような高分子薄膜を、金属膜や金属酸化膜と積層した後でも、その積層体がフレキシビリティを維持すること等が求められている。しかしながら、金属膜や金属酸化膜は、成膜温度が高く、例えば、1000℃前後である。一方、高分子薄膜は、耐熱性があまりなく、融点が400℃を超える耐熱性高分子であっても、金属膜や金属酸化膜と組み合わせて成膜できないといった問題があった。
最近では、低い温度で各層を成膜する手法も検討されており、例えば、特許文献1には、ポリマーフィルム上に金属酸化物からなる層を1μm以下となるように真空中で設け、この上に導電体金属を蒸発源としてこの金属薄膜の膜厚が1μm以下となるように蒸着させた後、電気めっきで膜厚1μm以上30μm以下の金属膜を形成し、加熱乾燥するフレキシブルプリント基板の製造方法が記載されている。しかしながら、真空装置が必要であったり、それぞれの成膜工程毎に異なる成膜設備が必要になったりして必ずしも満足のいくものではなかった。
また、特許文献2には、膜−電極接合体及び膜−触媒層接合体が記載されており、高分子電解質膜の一方の面にPt触媒担持カーボンを、他方の面にPt−Ru触媒担持カーボンをそれぞれスプレー法によって塗布することが開示されている。しかしながら、スプレー法では、密着性が悪く、各層の厚みにバラツキがあり、膜厚も測定困難である等、まだまだ克服すべき課題があった。
また、特許文献3には、可撓性を有するプラスチック基板と金属膜と酸化金属膜の積層体を用いた半導体装置が記載されている。しかしながら、プラスチック基板を張り合わせて作製されているため、密着性が悪く、また、金属膜や金属酸化膜の成膜に真空設備が必要になったりして、必ずしも満足のいくものではなかった。
ところで、高分子薄膜の形成方法の1種として、真空蒸着重合法が知られている(例えば特許文献4等)。真空蒸着重合法は、2種以上のモノマーの蒸気を気化し、真空中で、例えば基板において重合させることにより、高分子薄膜を形成するものである。このような真空蒸着重合法によって形成される高分子薄膜は、ナノオーダーでの膜厚制御が可能である。しかしながら、真空蒸着法に使用可能な原料は限られており、複数の原料を用いた場合、反応性の制御が困難であるなどの課題があった。また、真空蒸着重合法に用いられる重合装置は、真空設備を必要としたり、重合反応時における管理が複雑になったりするなどの課題があった。
以上のとおりであるので、ポリマーフィルムやプラスチック基板等のポリマー膜と、金属膜または金属酸化膜とを積層した積層構造体は、高機能性材料として、公知の手段を用いて、フレキシブルプリント基板、燃料電池等の膜−電極接合体や触媒層接合体、半導体装置などの種々の用途に用いることができるが、まだまだ課題が残されており、早期の解決策が待ち望まれていた。
特開2010−192861号公報 特許第5214602号 特開2011−211208号公報 特開昭61−78463号公報
本発明は、真空装置を用いることなく、ポリマーと金属膜又は金属酸化膜とを工業的有利に成膜できる積層構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ミストCVD法を用いて、重合反応を生じさせると、驚くべきことに、容易に高分子薄膜が得られること、さらに、ミストCVD法を用いて、高分子薄膜と金属膜及び金属酸化膜とをそれぞれ成膜すると、得られた積層構造体の各層間の密着性が良好であること、高分子薄膜の成膜と金属膜及び金属酸化膜の成膜とを真空装置を用いずに実施できること、得られた積層構造体がフレキシビリティを有していること等を知見し、ミストCVD法を用いて高分子薄膜と金属膜又は金属酸化膜とを成膜する方法によれば、上記した従来の問題を一挙に解決できることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 第1及び第2の原料溶液をそれぞれ霧化し、得られた第1及び第2のミストをそれぞれ第1及び第2のキャリアガスをそれぞれ用いて基体近傍まで搬送し、ついで前記基体近傍で第1及び第2のミストをそれぞれ熱反応させることにより、前記基体上に直接又は他の層を介して第1及び第2の膜をそれぞれ形成する積層構造体の製造方法であって、第1及び第2のキャリアガスはそれぞれ互いに同一又は異なるガスであり、第1及び第2の原料溶液のうちいずれか一方はモノマーを含み、他方は金属を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
[2] 第1及び第2のミストの熱反応を、いずれも非酸素雰囲気下で行う前記[1]記載の製造方法。
[3] 第1及び第2のミストのいずれかの熱反応後、得られた膜を酸化処理に付す前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 第1及び第2の原料溶液のうちいずれかの原料溶液が有機錯体を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 第1及び第2の原料溶液のうちいずれかの原料溶液が水を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 第1、第2及び第3の原料溶液をそれぞれ霧化し、得られた第1、第2及び第3のミストをそれぞれ第1、第2及び第3のキャリアガスをそれぞれ用いて基体近傍まで搬送し、ついで前記基体近傍で第1、第2及び第3のミストをそれぞれ熱反応させることにより、前記基体上に直接又は他の層を介して第1、第2及び第3の膜をそれぞれ形成する積層構造体の製造方法であって、第1、第2及び第3のキャリアガスはそれぞれ互いに同一又は異なるガスであり、第1、第2及び第3の原料溶液のうちいずれかはモノマーを含み、他の原料溶液はそれぞれ互いに同一又は異なる金属を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
[7] 第3の原料溶液が金属を含み、第3のミストの熱反応を酸素雰囲気下で行う前記[6]記載の製造方法。
[8] 第1の原料溶液がモノマーを含み、第1のミストの熱反応を350℃以下の温度で行う前記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法により得られた積層構造体。
[10] 前記[9]記載の積層構造体が用いられていることを特徴とする装置。
本発明の製造方法は、真空装置を用いることなく、ポリマーと金属膜又は金属酸化膜とを工業的有利に成膜できる。
本発明に用いられる成膜装置の一例を示す概略構成図である。 成膜装置に用いられる第1の手段の一態様を説明する図である。 図2における超音波振動子の一態様を示す図である。 本発明に用いられる第3の手段の一態様を示す図である。 本発明において好適に用いられるトラップ手段の一態様を示す図である。 実施例におけるGPC測定結果を示す図である。 実施例におけるXPS分析結果を示す図である。
本発明の製造方法は、第1及び第2の原料溶液をそれぞれ霧化し、得られた第1及び第2のミストをそれぞれ第1及び第2のキャリアガスをそれぞれ用いて基体近傍まで搬送し、ついで前記基体近傍で第1及び第2のミストをそれぞれ熱反応させることにより、前記基体上に直接又は他の層を介して第1及び第2の膜をそれぞれ形成する積層構造体の製造方法であって、第1及び第2のキャリアガスはそれぞれ互いに同一又は異なるガスであり、第1及び第2の原料溶液のうちいずれか一方はモノマーを含み、他方は金属を含むことを特長とする。
本発明においては、第1及び第2の原料溶液のうちいずれか一方はモノマーを含み、他方は金属を含む。第1の原料溶液にモノマーを用いる場合には、ポリマーが成膜され(ポリマー成膜工程)、第2の原料溶液には金属が用いられて金属膜又は金属酸化膜が成膜される(金属膜又は金属酸化膜成膜工程)。また、第1の原料溶液に金属を用いる場合には、金属膜又は金属酸化膜が成膜され(金属膜又は金属酸化膜成膜工程)、第2の原料溶液にはモノマーが用いられてポリマーが成膜される(ポリマー成膜工程)。
(ポリマー成膜工程)
ポリマー成膜工程は、モノマーから重合によりポリマーを製造する。より具体的には、モノマーを含む原料溶液(a1)を霧化または液滴化して生成されるミストまたは液滴を、キャリアガス(a2)でもって基体(a3)まで搬送し、ついで該基体上で該ミストまたは該液滴を加熱により熱反応させてポリマーを成膜する。
前記重合は、公知の重合反応であってよく、このような重合反応としては、例えば、逐次重合(例えば重縮合もしくは重付加等)または連鎖重合(例えば付加重合もしくは会館重合等)などが挙げられるが、本工程においては、前記重合がラジカル重合であるのが好ましい。
前記原料溶液(a1)は、前記モノマーを含んでおり、霧化または液滴化できれば特に限定されない。溶媒も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、無溶媒であってもよい。前記溶媒としては、公知の無機溶媒や有機溶媒などが挙げられ、具体的には例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グリセリン等の多価アルコール及びその誘導体;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤等の有機溶媒の1種類又は2種類以上を適宜選択して用いることができる。
本工程においては、前記原料溶液(a1)が水を含むのが好ましく、モノマーが水に分散している水分散体であるのがより好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられ、これらの水に、例えば精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、電解、浸透圧の調整、緩衝化等の処理をした水(例えば、オゾン水、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等)も例として含まれる。
また、本工程においては、前記原料溶液(a1)が有機溶媒を含むのも好ましく、前記原料溶液(a1)が溶媒を含まないのも好ましい。なお、本工程においては、原料溶液(a1)に水または有機溶媒を用いて成膜すると、反応性の制御や膜厚制御が容易なだけでなく、さらに、密着性に優れたポリマー薄膜を容易に得ることができる。また、本工程では、無溶媒で成膜すると、密着性に優れたポリマー薄膜を容易に得ることができるだけでなく、さらに、高分子量のポリマー膜を短時間で得ることができる。
前記モノマーは、重合可能なモノマーであれば特に限定されず、公知のモノマーであってよい。例えば、前記原料溶液(a1)が、水分散体である場合には、前記モノマーが疎水性モノマーであるのが好ましい。
前記モノマーとしては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子及び金属原子の中から選ばれる少なくとも一種を含む官能基や置換されていてもよいビニル基を分子内に少なくとも一つ有する重合性の化合物などが挙げられる。前記官能基としては、例えば、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アミノ基、イミノ基、スルホン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオカルボキシ基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホルミル基、チオホルミル基、シラノール基、ヒドロカルビルオキシ基、ニトリル基、ピリジル基、アミド基、イミド基、イミダゾリル基、アンモニウム基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ケチミン基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキシカルボニル基(エステル結合)、カルボニルチオ基(チオエステル結合)、オキシ基(エーテル結合)、グリシドキシ基、スルフィド基(チオエーテル結合)、ジスルフィド基、メルカプト基、ヒドロカルビルチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、イミン残基、他の含窒素複素環式基、含酸素複素環式基、含硫黄複素環式基、ヒドロカルビルオキシシリル基、有機スズ基、塩素原子及び臭素原子などが挙げられる。これらの官能基は、モノマーの中に一種だけ含まれていてもよいし、二種以上含まれていてもよい。
本工程においては、前記モノマーが、置換されていてもよいビニル基を含むビニルモノマーであるのが好ましい。前記ビニルモノマーは、置換されていてもよいビニル基を1または2以上含むモノマーであれば特に限定されない。前記ビニル基は、重合可能な範囲で且つ化学的に許容される範囲で置換基を有していてもよく、前記置換基としては、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C2−6アルケニルチオ基、C2−6アルキニルチオ基、C1−6ハロアルコキシ基、C2−6ハロアルケニルオキシ基、C1−6ハロアルキルチオ基、C2−6ハロアルケニルチオ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、シアノ基、エポキシ基またはグリシジル基などが挙げられる。また、置換基の数も置換可能な数であれば特に限定されず、好ましくは1から6、より好ましくは1から3である。
前記ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するビニルモノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類等が挙げられる。これらのモノマーは単独で重合させても、2種以上を併用して共重合させてもよい。本工程においては、前記ビニルモノマーが、芳香族ビニルモノマー、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類及びカルボキシル基を有するビニルモノマーから選ばれる1種または2種以上であるのが好ましい。
前記ラジカル重合開始剤は従来塩化ビニル系の重合に使用されているものを使用でき、具体的にはt−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルネオヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシ−2−ネオデカネート等のパーエステル化合物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;デカノイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、p−メタンハイドロパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物;α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、α,α’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、α,α’−アゾビス(4−メトシキ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などの油溶性の重合開始剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、更には過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性重合開始剤と併用することもできる。
また、本工程においては、分散剤や連鎖移動剤などを使用してもよい。前記分散剤としては、公知の分散剤等が挙げられ、具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)や変性PVA樹脂、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロースエーテル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等の水溶性ポリマー、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックポリマーなどの油溶性乳化物、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤などが挙げられる。これらの他の分散剤は、それらのうちの1種類を用いてもよく、2種類以上を同時に用いてもよい。
また、連鎖移動剤としては、具体的には2−メルカプト−2−チアゾリン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド等の有機リン化合物などが使用される。その他の重合条件は通常の条件とすることができ、例えば、単量体の重合体成分を分散させるために使用する水性媒体の仕込み量は、単量体との仕込み比(水/単量体)が、重量比で、通常、1〜1000程度であり、好ましくは5〜500程度であり、より好ましくは10〜100程度である。なお、必要に応じて重合の途中で水を追加することができる他、重合調整剤、pH調整剤、ゲル化改良剤、帯電防止剤、架橋剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤、緩衝剤、スケール防止剤等を添加することも任意である。
前記基体(a3)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記基体(a3)の形状としては、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられる。また、前記基体(a3)の種類としては、例えば、半導体材料、ガラス板、ガラスクロス、ガラスシート、金属板等の膜状、多層体状、板状もしくはシート状の無機材料、上質紙、中質紙、コート紙等の紙、合成紙、布、木材、またはポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネートもしくはポリイミド等のプラスチックフィルムもしくはシート、フィルムラミネート紙または織布シート、または半導体装置等が挙げられるが、これらに限らない。
本発明においては、前記基体(a3)表面の一部または全部に金属膜または金属酸化膜が形成されていてもよく、前記基体(a3)表面の一部または全部に形成された金属膜または金属酸化膜上にポリマーを好適に成膜することができる。
ポリマー成膜工程では、原料溶液(a1)を調整し、前記原料溶液(a1)を霧化または液滴化してミストを発生させる。霧化または液滴化手段は、前記原料溶液(a1)を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段または液滴化手段であってよいが、本工程においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段であるのが好ましい。
ポリマー成膜工程においては、原料溶液(a1)を霧化または液滴化した後、キャリアガス(a2)を用いてミストまたは液滴を基体(a3)まで搬送する。キャリアガス(a2)の種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガス(a2)の種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガス(a2’)としてさらに用いてもよい。また、キャリアガス(a2)の供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガス(a2)の流量は、特に限定されないが、例えば30mm角基板上に成膜する場合には、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。本工程においては、前記キャリアガス(a2)が不活性ガスであるのが好ましく、窒素ガスであるのがより好ましい。
ポリマー成膜工程では、キャリアガス(a2)による前記ミストまたは前記液滴の搬送後、前記ミストまたは前記液滴を熱反応させて、前記基体(a3)表面の一部または全部に成膜する。前記反応は、前記ミストまたは前記液滴から膜が形成される反応であれば特に限定されないが、本工程においては、加熱による熱反応が好ましい。前記熱反応は、加熱でもって前記ミストまたは前記液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程において、熱反応を行う際の条件等については特に制限はないが、通常、加熱温度は80℃〜600℃であるが、前記原料溶液(a1)が水を含む場合には、好ましくは120〜600℃の範囲であり、より好ましくは120℃〜350℃の範囲であり、最も好ましくは130℃〜300℃の範囲である。また、前記原料溶液(a1)に有機溶媒が含まれる場合または前記原料溶液(a1)に溶媒が含まれない場合には、前記加熱温度は、80℃〜150℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本工程においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、熱反応は、通常、重合反応を伴うが、本工程においては、特に限定されず、基体(a3)上で重合反応が生じてもよいし、ミストまたは液滴内で重合反応が生じてもよい。また、重合は、非酸素雰囲気下で行われるのが好ましく、不活性ガス雰囲気下で行われるのがより好ましく、窒素雰囲気下で行われるのが最も好ましい。
上記のようにして重合を行うことにより、基体との密着性に優れたポリマーを得ることができ、また、反応時間を調節することにより、ポリマーの膜厚をナノオーダーで制御することができる。また、本工程によれば、従来では、薄膜化が困難であった高分子フィルム複合材料の薄膜化にも有用である。
(金属膜又は金属酸化膜成膜工程)
金属膜又は金属酸化膜成膜工程は、金属を含む原料溶液から、前記ポリマー成膜工程と同様にして金属膜または金属酸化膜を得る。以下、本発明において好適な金属膜成膜工程について説明する。
(金属膜成膜工程)
金属膜成膜工程は、金属を含む原料溶液(b1)を霧化し、得られたミストを、キャリアガス(b2)を用いて基体(b3)近傍まで搬送し、ついで前記基体(b3)近傍でミストを非酸素雰囲気下にて熱反応させることにより、前記基体(b3)上に直接又は他の層を介して金属膜を形成する。
金属膜成膜工程は、好適には、酸化剤、アミン化合物またはプロトン酸を含む有機溶媒中に、金属を溶解または分散させてなる原料溶液(b1)を霧化してミストを発生させる霧化工程(B1)と、キャリアガス(b2)を前記ミストに供給し、前記キャリアガス(b2)によって前記ミストを前記基体(b3)へ供給するミスト供給工程(B2)と、前記ミストを熱反応させて、前記基体(b3)表面の一部または全部に前記金属膜を積層する金属膜形成工程(B3)とを含む。
前記霧化工程(B1)は、酸化剤、アミン化合物またはプロトン酸を含む有機溶媒中に、金属を溶解または分散させて原料溶液(b1)を調整し、前記原料溶液(b1)を霧化してミストを発生させる。
前記霧化工程(B1)で用いられる酸化剤を含む有機溶媒(以下、「酸化剤含有有機溶媒」ともいう)は、有機溶媒中に酸化剤を含んでいれば特に限定されず、例えば、公知の有機溶媒と酸化剤とを混合することにより得られる。前記酸化剤と前記有機溶媒との体積比は、1:99〜50:50の範囲内であるのが好ましく、1:99〜40:60の範囲内であるのがより好ましく、1:99〜10:90の範囲内であるのがさらにより好ましく、1:99〜5:95の範囲内であるのが最も好ましい。このような好ましい範囲とすることで、ミストが成膜により適したものになり、かつ膜質もより良好なものとすることができる。
前記酸化剤としては、例えば、水、水溶性または非水溶性の公知の酸化剤などが挙げられるが、本発明においては、前記酸化剤が水または水溶性の酸化剤であるのが好ましく、水または過酸化水素であるのがより好ましく、水であるのが最も好ましい。また、前記酸化剤として、水溶性の酸化剤を用いる場合には、水と混合して水溶液の形態(例えば過酸化水素水等)で用いるのが好ましい。
前記酸化剤としては、より具体的には、例えば、水、過酸化水素(H)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化ベンゾイル(CCO)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられ、これらの水に、例えば精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、電解、浸透圧の調整、緩衝化等の処理をした水(例えば、オゾン水、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等)も例として含まれる。
前記有機溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、このような溶媒としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール等)、エーテル(例、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル等)、エステル(例、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等)、カルボン酸(例、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、炭化水素(例、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン等)、アミド(例、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、スルホラン、ヘキサメチルホスホルアミド等の単独またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。本発明においては、前記有機溶媒が、アルコール、ケトンまたはこれらの混合溶媒であるのが好ましく、アルコールであるのがより好ましく、低級アルコール(好ましくはC1〜3)であるのが最も好ましい。
前記霧化工程(B1)で用いられるアミン化合物を含む有機溶媒(以下、「アミン化合物含有有機溶媒」ともいう)は、有機溶媒中にアミン化合物を含んでいれば特に限定されず、例えば、公知の有機溶媒とアミン化合物とを混合することにより得られる。前記アミン化合物と前記有機溶媒との配合割合は、前記有機溶媒中、前記アミン化合物が0.001モル/L〜10モル/Lの範囲内であるのが好ましく、0.005モル/L〜1モル/Lの範囲内であるのがより好ましく、0.01モル/L〜0.1モル/Lの範囲内であるのが最も好ましい。このような好ましい範囲とすることで、ミストが成膜により適したものになり、かつ膜質もより良好なものとすることができる。
前記アミン化合物は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含んだ化合物であってもよい。前記アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−メチルチオプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ラウリルイミノビスプロピルアミン、N,N’−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、N,N’−ビスアミノプロピル−1,3−ブチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、N−ラウリルプロピレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、アリルアミン等のC1〜C16の炭素数を有する脂肪族化合物;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、4−メチルシクロヘキシルアミン、1−シクロヘキシルエチルアミン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルシクロへキサン等のC1〜C16の炭素数を有する脂環式化合物;ベンジルアミン、フェネチルアミン、4−メチルベンジルアミン、N−アミノプロピルアニリン、2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、9−アミノフルオレン、ベンズヒドリルアミン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、N−ベンジルエチレンジアミン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,3,6−トリアミノピリジン、N−アミノプロピルアニリン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、2−アミノ−3−エチルピリジン、2−アミノ−3−プロピルピリジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、3−アミノ−6−イソプロピルピリジン、2,6−ジアミノピリジン等のC1〜C16の炭素数を有する芳香族化合物;ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、3−メチルアミノピペリジン、2−アミノメチルピペラジン、3−アミノピロリジン、ホモピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、1,4−(ビスアミノプロピル)ピペラジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、フルフリルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、3−(メチルアミノ)ピロリジン、5−メチルフルフリルアミン、2−(フルフリルチオ)エチルアミン、2−ピコリルアミン、3−ピコリルアミン、4−ピコリルアミン等のC1〜C16の炭素数を有する複素環式化合物;2−ヒドロキシエチルアミン、メチル(2−ヒドロキシエチル)アミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、ジエタノールアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール等の水酸基を1個以上有する化合物等が挙げられる。本発明においては、前記アミン化合物がポリアミンであるのが好ましく、ジアミンであるのがより好ましい。なお、前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、メシチレン−2,6−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン;ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン;2−アミノプロピルイミダゾール等のイミダゾール等が挙げられる。
アミン化合物含有有機溶媒に用いられる有機溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、このような溶媒としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール等)、エーテル(例、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル等)、エステル(例、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等)、カルボン酸(例、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、炭化水素(例、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン等)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)等の単独またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。本発明においては、前記有機溶媒が、アルコール、ケトンまたはこれらの混合溶媒であるのが好ましく、アルコールであるのがより好ましく、低級アルコール(好ましくはC1〜3)であるのが最も好ましい。
前記霧化工程(B1)で用いられるプロトン酸を含む有機溶媒(以下、「プロトン酸含有有機溶媒」ともいう)は、有機溶媒中にプロトン酸を含んでいれば特に限定されず、例えば、公知の有機溶媒とプロトン酸とを混合することにより得られる。前記プロトン酸と前記有機溶媒との配合割合は、前記有機溶媒中、前記プロトン酸が0.001モル/L〜10モル/Lの範囲内であるのが好ましく、0.005モル/L〜1モル/Lの範囲内であるのがより好ましく、0.01モル/L〜0.1モル/Lの範囲内であるのが最も好ましい。このような好ましい範囲とすることで、ミストが成膜により適したものになり、かつ膜質もより良好なものとすることができる。
前記プロトン酸は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知のものであってよい。前記プロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸や、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。さらに、有機カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ショウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。有機スルホン酸としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。本発明においては、前記プロトン酸が、無機酸であるのが好ましく、ハロゲン化水素酸であるのがより好ましい。ハロゲン化水素酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸などが挙げられる。
プロトン酸含有有機溶媒に用いられる有機溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、このような溶媒としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール等)、エーテル(例、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル等)、エステル(例、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)等の単独またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。本発明においては、前記有機溶媒が、アルコール、ケトンまたはこれらの混合溶媒であるのが好ましく、アルコールであるのがより好ましく、低級アルコール(好ましくはC1〜3)であるのが最も好ましい。
前記霧化工程(B1)で用いられる金属は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびアルミニウム(Al)から選ばれる1種または2種以上の金属であるのが好ましい。
前記霧化工程(B1)では、前記の酸化剤含有有機溶媒中、アミン化合物含有有機溶媒中またはプロトン酸含有有機溶媒中に、前記金属を溶解または分散させて、原料溶液(b1)を調整する。前記原料溶液(b1)は、前記金属が、酸化剤含有有機溶媒中、アミン化合物含有有機溶媒中またはプロトン酸含有有機溶媒中に溶解または分散していれば特に限定されないが、本発明においては、酸化剤、アミン化合物またはプロトン酸を含む有機溶媒と、前記金属を含む金属錯体溶液または金属塩溶液との混合溶液であるのが好ましい。
前記金属の配合割合は、特に限定されないが、原料溶液(b1)全体に対して、0.01〜70質量%であるのが好ましく、0.1〜50質量であるのがより好ましい。
酸化剤、アミン化合物またはプロトン酸を含む有機溶媒中に、金属を溶解または分散させてなる前記原料溶液(b1)は、金属膜形成用ミストの前駆体溶液として、特に有用である。
前記霧化工程(B1)では、前記原料溶液(b1)を霧化してミストを発生させる。霧化手段は、前記原料溶液(b1)を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段であるのが好ましい。
前記ミスト供給工程(B2)では、まず、キャリアガス(b2)を前記ミストに供給する。キャリアガス(b2)の種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガス(b2)の種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガス(b2)としてさらに用いてもよい。また、キャリアガス(b2)の供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。
また、前記ミスト供給工程(B2)では、前記キャリアガス(b2)によって前記ミストを基体(b3)へ供給する。キャリアガス(b2)の流量は、特に限定されないが、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。
なお、本発明においては、前記キャリアガス(b2)がポリマー成膜工程において用いられるキャリアガス(a2)と同じガスであってもよいし、異なるガスであってもよい。
前記基体(b3)は、金属膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体(b3)の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体(b3)の形状としては、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。
前記基板は、板状であって、膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいが、前記基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。本発明においては、前記基板が、コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板、またはβ−ガリア構造を有する結晶物を主成分として含む基板であるのも好ましい。コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板は、基板中の組成比で、コランダム構造を有する結晶物を50%以上含むものであれば、特に限定されないが、本発明においては、70%以上含むものであるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。コランダム構造を有する結晶を主成分とする基板としては、例えば、サファイア基板(例:c面サファイア基板)や、α型酸化ガリウム基板などが挙げられる。β−ガリア構造を有する結晶物を主成分とする基板は、基板中の組成比で、β−ガリア構造を有する結晶物を50%以上含むものであれば、特に限定されないが、本発明においては、70%以上含むものであるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。β−ガリア構造を有する結晶物を主成分とする基板としては、例えばβ−Ga基板、又はGaとAlとを含みAlが0wt%より多くかつ60wt%以下である混晶体基板などが挙げられる。その他の下地基板の例としては、六方晶構造を有する基板(例:SiC基板、ZnO基板、GaN基板)などが挙げられる。六方晶構造を有する基板上には、直接または別の層(例:緩衝層)を介して、膜を形成するのが好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されないが、好ましくは、50〜2000μmであり、より好ましくは200〜800μmである。
金属膜形成工程(B3)では、前記ミストを熱反応させて、前記基体(b3)表面の一部または全部に前記金属膜を積層する。前記熱反応は、熱でもって前記ミストが反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程(B3)においては、前記熱反応を、200℃〜650℃の温度で行うのが好ましく、300℃〜600℃の温度で行うのがより好ましく、400℃〜550℃の温度で行うのが最も好ましい。また、前記熱反応を、非酸素雰囲気下で行うのも好ましく、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス、またはフォーミングガスや水素ガス等の還元ガスの雰囲気下で行うのがより好ましく、不活性ガスの雰囲気下で行うのが最も好ましい。また、加圧下、減圧下、常圧下および大気圧下のいずれの条件で反応を行ってもよいが、本発明においては、常圧下または大気圧下で行うのが好ましい。なお、膜厚は成膜時間を調整することにより、設定することができるが、本発明においては、膜を厚くしても密着性に優れているので、成膜時間を長く設定するのが好ましい。好ましい成膜時間は10分間以上であり、より好ましくは30分間以上であり、最も好ましくは1時間以上である。
本発明によれば、断続的に結晶成長できるためなのかどうか等は不明であるが、いずれにせよ、密着性に優れた金属膜を形成することができる。また、本発明によれば、密着性に優れたままで、膜厚200nm以上の金属膜(好ましくは膜厚300nm以上、より好ましくは500nm以上、さらにより好ましくは1μm以上、最も好ましくは10μm以上の金属膜)を容易に形成することができる。
(金属酸化膜成膜工程)
金属酸化膜成膜工程は、金属を含む原料溶液から、前記ポリマー成膜工程と同様にして金属酸化膜を得る。より具体的には、金属を含む原料溶液(c1)を霧化し、得られたミストを、キャリアガス(c2)を用いて基体(c3)近傍まで搬送し、ついで前記基体(c3)近傍でミストを熱反応させることにより、前記基体(c3)上に直接又は他の層を介して金属酸化膜を形成する。
金属酸化膜成膜工程は、好適には、金属を溶解または分散させてなる原料溶液(c1)を霧化してミストを発生させる霧化工程(C1)と、キャリアガス(c2)を前記ミストに供給し、ついで前記キャリアガス(c2)によって前記ミストを前記基体(c3)へ供給するミスト供給工程(C2)と、前記ミストを熱反応させて、前記基体(c3)表面の一部または全部に前記金属膜を積層する金属膜形成工程(C3)とを含む。
前記霧化工程(C1)は、金属を溶解または分散させて原料溶液(c1)を調整し、前記原料溶液(c1)を霧化してミストを発生させる。
前記霧化工程(C1)で用いられる金属は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびアルミニウム(Al)から選ばれる1種または2種以上の金属であるのが好ましい。
前記霧化工程(C1)においては、前記金属を錯体又は塩の形態で溶媒(例えば有機溶媒または水等)に溶解又は分散させたものを原料溶液(c1)として好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
前記原料溶液(c1)の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒の混合溶液であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水と酸の混合溶媒であるのも好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられるが、本発明においては、超純水が好ましい。また、前記酸としては、より具体的には、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等の有機酸などが挙げられる。
前記金属の配合割合は、特に限定されないが、原料溶液(b1)全体に対して、0.01〜70質量%であるのが好ましく、0.1〜50質量であるのがより好ましい。
前記霧化工程(C1)では、前記原料溶液(c1)を霧化してミストを発生させる。霧化手段は、前記原料溶液(c1)を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段であるのが好ましい。
前記ミスト供給工程では、まず、キャリアガス(c2)を前記ミストに供給する。キャリアガス(c2)の種類としては、例えば、酸素などが好適な例として挙げられ、本発明の目的を阻害しない限り、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガス等を用いてもよい。また、キャリアガス(c2)の種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガス(c2)としてさらに用いてもよい。また、キャリアガス(c2)の供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。
ミスト供給工程では、前記キャリアガス(c2)によって前記ミストを基体(c3)へ供給する。キャリアガス(c2)の流量は、特に限定されないが、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。
なお、本発明においては、前記キャリアガス(c2)がポリマー成膜工程において用いられるキャリアガス(c2)と同じガスであってもよいし、異なるガスであってもよい。
前記基体(c3)は、金属酸化膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体(c3)の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体(c3)の形状としては、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。なお、前記基板は、前記基体(b3)における基板と同様であってよい。
金属酸化膜形成工程(C3)では、前記ミストを熱反応させて、前記基体(c3)表面の一部または全部に前記金属酸化膜を積層する。前記熱反応は、熱でもって前記ミストが反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、200℃〜950℃の温度で行うのが好ましく、300℃〜700℃の温度で行うのがより好ましく、400℃〜650℃の温度で行うのが最も好ましい。また、前記熱反応を酸素雰囲気下で行うのも好ましく、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスをキャリアガスとして用いる場合には、例えばオゾンや酸素等を供給して反応雰囲気を酸素雰囲気とするのが好ましい。また、加圧下、減圧下、常圧下および大気圧下のいずれの条件で反応を行ってもよいが、本発明においては、常圧下または大気圧下で行うのが好ましい。なお、膜厚は成膜時間を調整することにより、設定することができるが、本発明においては、膜を厚くしても密着性に優れているので、成膜時間を長く設定するのが好ましい。好ましい成膜時間は10分間以上であり、より好ましくは30分間以上であり、最も好ましくは1時間以上である。
なお、金属酸化膜成膜工程においては、前記金属膜成膜工程で得られた金属膜を酸化して金属酸化膜を得てもよい。酸化処理としては、例えば、酸素雰囲気下でアニール処理することなどが挙げられる。
また、本発明に用いられる製造装置は、通常、原料溶液を霧化または液滴化する第1の手段、ミストまたは液滴を、キャリアガスでもって基体まで搬送する第2手段、および基体上で該ミストまたは該液滴を、加熱により熱反応させる第3の手段を含む。
以下、本発明に用いられる製造装置について、図面を用いて説明するが、本発明は、これら図面に限定されるものではない。
図1は、本発明に用いられる製造装置の一例を示している。製造装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、トラップ槽11とを備えている。ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
製造装置1は、原料溶液を霧化する第1の手段を含んでいる。図2は、第1の手段の一態様を示している。原料溶液4aが収容されている容器からなるミスト発生源4が、水5aが収容されている容器5に、支持体(図示せず)を用いて収納されている。容器5の底部には、超音波振動子6が備え付けられており、超音波振動子6と発振器16とが接続されている。そして、発振器16を作動させると、超音波振動子6が振動し、水5aを介して、ミスト発生源4内に超音波が伝播し、原料溶液4aが霧化するように構成されている。
図3は、図2に示されている超音波振動子6の一態様を示している。図2の超音波振動子は、支持体6e上の円筒状の弾性体6d内に、円板状の圧電体素子6bが備え付けられており、圧電体素子6bの両面に電極6a、6cが設けられている。そして、電極に発振器を接続して発振周波数を変更すると、圧電振動子の厚さ方向の共振周波数及び径方向の共振周波数を持つ超音波が発生されるように構成されている。
上記したとおり、第1の手段では、原料溶液を調整し、前記原料溶液を霧化してミストを発生させる。霧化手段は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本工程においては、超音波振動により行う霧化手段であるのが好ましい。
第2の手段では、キャリアガスを用いて前記ミストを基体まで搬送する。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。例えば、図2に示すように、キャリアガスの供給箇所を2カ所設けてもよい。
第3の手段では、前記ミストを熱反応させて、前記基体表面の一部または全部に成膜する。なお、前記基体表面の一部又は全部に前記ポリマー膜又は前記金属膜もしくは前記金属酸化膜が成膜されていてもよい。
図4は、第3の手段の一態様を示している。図4の成膜室7は、円筒状であり、ホットプレート8上に設けられている。そして、成膜室7は、ミスト発生源4と供給管9を介して接続されており、ミスト発生源4で発生したミストまたは液滴4bが、キャリアガスによって供給管9を通って成膜室7内に流れ込み、ホットプレート上に載置された基板10上で、熱反応するように構成されている。また、成膜室7は、排気管19aとも接続されており、熱反応後のミスト、液滴もしくはガスが、排気管19aへと運ばれるように構成されている。本発明においては、熱反応後のミスト、液滴もしくはガスがトラップ処理に付されるように、トラップ手段をさらに備えているのが好ましい。
図5は、前記トラップ手段の一態様を示している。図5のトラップ槽11は、例えば図4の排気管19aと接続されており、熱反応後のミスト、液滴もしくはガスがトラップ槽11内に流れ込むように構成されている。トラップ槽11は、トラップ液(例えば対象物質が溶解する溶媒等)が収納されており、トラップ槽11内に流れ込んだ熱反応後のミスト、液滴もしくはガス等がトラップ液に接触し、対象物質が捕集され、残りは排気管19bに流れていくように構成されている。このように構成することで、ミスト内でのより安全かつ簡便な重合を実現することが可能となる。
以下、図1を用いて、本発明の好適な態様をより具体的に説明するが、本発明はこれら具体的な態様に限定されるものではない。
まず、モノマーを含む原料溶液4aをミスト発生源4内に収容し、基板10をホットプレート8上に設置させ、ホットプレート8を作動させる。次に、流量調節弁3(3a、3b)を開いてキャリアガス源2(2a、2b)からキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量とキャリアガス(希釈)の流量をそれぞれ調節する。次に、超音波振動子6を振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化または液滴化させてミストまたは液滴4bを生成する。ついで、ミストまたは液滴4bが、キャリアガスによって成膜室7内に導入され、成膜室7内でホットプレート8の加熱により熱反応して、基板10上にポリマーが形成される。また、ポリマー形成後、熱反応後または未反応のミスト、液滴もしくはガス等は、所定の溶媒が入れられているトラップ槽11に運ばれ、重合開始剤等の化学物質(例えば大気中で引火や爆発の恐れがある化学物質等)が捕集され、ついで、排気処理に付される。
次いで、金属を含む原料溶液4aをミスト発生源4内に収容し、基板10をホットプレート8上に設置させ、ホットプレート8を作動させる。次に、流量調節弁3(3a、3b)を開いてキャリアガス源2(2a、2b)からキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量とキャリアガス(希釈)の流量をそれぞれ調節する。次に、超音波振動子6を振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化または液滴化させてミストまたは液滴4bを生成する。ついで、ミストまたは液滴4bが、キャリアガスによって成膜室7内に導入され、成膜室7内でホットプレート8の加熱により熱反応して、基板10のポリマー膜上に金属膜又は金属酸化膜が形成される。なお、金属膜を形成する場合には、好適には、不活性ガスがキャリアガスとして用いられ、成膜室7内は非酸素雰囲気となる。また、金属酸化膜を形成する場合には、好適には酸素ガスがキャリアガスとして用いられ、成膜室7内は酸素雰囲気となる。また、金属膜又は金属酸化膜を成膜した後、熱反応後または未反応のミスト、液滴もしくはガス等は、所定の溶媒が入れられているトラップ槽11に運ばれ、化学物質(例えば大気中で引火や爆発の恐れがある化学物質等)が捕集され、ついで、排気処理に付される。
上記のようにして積層構造体を得ることにより、基体とポリマー膜と金属膜又は金属酸化膜との密着性に優れたものにすることができ、また、反応時間を調節することにより、各膜厚をナノオーダーで容易に制御することができる。また、本発明によれば、従来では、薄膜化が困難であった高分子フィルム複合材料の薄膜化にも有用であり、例えば基体として半導体装置に用いる場合には、デバイスパッケージ向けに利用することもできる。
また、本発明においては、ポリマー膜、金属膜及び金属酸化膜の3層全てを上記方法により成膜するのが好ましい。このように3層全て性質の異なる薄膜を積層することにより、より高機能な積層構造体とすることができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
A.金属膜の成膜
1.製造装置
まず、図1を用いて、本実施例で用いた製造装置1を説明する。製造装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、アルコールトラップ槽11とを備えている。ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
2.原料溶液の作製
メタノールと超純水とをモル比で95:5となるように混合して得られた混合溶媒を用いて、0.01Mロジウムアセチルアセトナートに、塩酸を体積比で1.5%含有させ、これを原料溶液とした。
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10としてc面サファイアを用いて、基板10をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて成膜室7内の温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3(3a、3b)を開いてキャリアガス源2(2a、2b)からキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5L/minに、キャリアガス(希釈)の流量を1L/minにそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
4.膜形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを微粒子化させて原料微粒子4bを生成した。この原料微粒子4bが、キャリアガスによって成膜室7内に導入され、大気圧下、500℃にて、成膜室7内で反応して、基板10上に薄膜を形成した。なお、成膜時間は30分であった。
5.評価
上記4.にて得られたロジウム膜につき、膜厚を測定したところ、300nmであった。また、ロジウム膜の表面を観察したが、剥離等は一切生じていなかった。なお、ロジウム膜の電気抵抗率は1.5Ωであった。
B.金属酸化膜の成膜
前記「2.原料溶液の作製」において、0.01Mロジウムアセチルアセトナートの代わりに0.05Mビス(2,4−ペンタンジオナト)チタン(IV)オキシドを用いたこと、前記「4.膜形成」において、成膜時間を60分としたこと以外は、上記A.と同様にして、上記A.にて得られたロジウム膜上にチタン膜を成膜した。そして、得られたチタン膜を酸素雰囲気下500℃でアニール処理して透明な酸化チタン膜を得た。
C.ポリマー成膜
原料溶液として、表1に示す各成分を混合して得られた溶液を用いたこと、キャリアガスの流量を1L/minとしたこと、成膜温度を100℃としたことおよび成膜時間を77分としたこと以外は、上記A.と同様にして、上記B.で得られた酸化チタン膜上にポリマー膜を得た。
得られたポリマー膜の重量平均分子量は25170であった。なお、GPCチャートを図6に示す。
また、得られた積層構造体のXPS分析結果を図7に示す。得られた積層構造体は、サファイア基板を剥離すると、フレキシブルに曲げることができ、また、各層間の密着性が非常に良好であった。
本発明の製造方法は、高分子材料と金属材料または金属酸化物材料とを組み合わせて用いられる機能性材料のあらゆる分野に適用することができ、特に、フレキシブルプリント基板、燃料電池等の膜−電極接合体や触媒層接合体、半導体装置などの種々の工業的用途に有用である。また、高分子産業において、金属膜または金属酸化膜とともに高分子薄膜を成膜する場合には、本発明の製造方法を好適に利用することができる。
1 成膜装置
2a キャリアガス源
2b キャリアガス(希釈)源
3a 流量調節弁
3b 流量調節弁
4 ミスト発生源
4a 原料溶液
4b 原料微粒子
5 容器
5a 水
6 超音波振動子
6a 電極
6b 圧電体素子
6c 電極
6d 弾性体
6e 支持体
7 成膜室
8 ホットプレート
9 供給管
10 基板
11 トラップ槽
11a トラップ液
16 発振器
19a 排気管
19b 排気管

Claims (10)

  1. 第1及び第2の原料溶液をそれぞれ霧化し、得られた第1及び第2のミストをそれぞれ第1及び第2のキャリアガスをそれぞれ用いて基体近傍まで搬送し、ついで前記基体近傍で第1及び第2のミストをそれぞれ熱反応させることにより、前記基体上に直接又は他の層を介して第1及び第2の膜をそれぞれ形成する積層構造体の製造方法であって、第1及び第2のキャリアガスはそれぞれ互いに同一又は異なるガスであり、第1及び第2の原料溶液のうちいずれか一方はモノマーを含み、他方は金属を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
  2. 第1及び第2のミストの熱反応を、いずれも非酸素雰囲気下で行う請求項1記載の製造方法。
  3. 第1及び第2のミストのいずれかの熱反応後、得られた膜を酸化処理に付す請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 第1及び第2の原料溶液のうちいずれかの原料溶液が有機錯体を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 第1及び第2の原料溶液のうちいずれかの原料溶液が水を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 第1、第2及び第3の原料溶液をそれぞれ霧化し、得られた第1、第2及び第3のミストをそれぞれ第1、第2及び第3のキャリアガスをそれぞれ用いて基体近傍まで搬送し、ついで前記基体近傍で第1、第2及び第3のミストをそれぞれ熱反応させることにより、前記基体上に直接又は他の層を介して第1、第2及び第3の膜をそれぞれ形成する積層構造体の製造方法であって、第1、第2及び第3のキャリアガスはそれぞれ互いに同一又は異なるガスであり、第1、第2及び第3の原料溶液のうちいずれかはモノマーを含み、他の原料溶液はそれぞれ互いに同一又は異なる金属を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
  7. 第3の原料溶液が金属を含み、第3のミストの熱反応を酸素雰囲気下で行う請求項6記載の製造方法。
  8. 第1の原料溶液がモノマーを含み、第1のミストの熱反応を350℃以下の温度で行う請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られた積層構造体。
  10. 請求項9記載の積層構造体が用いられていることを特徴とする装置。

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