JP2018013092A - エンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】過給機とブローバイガス還元装置とを備えるエンジンにおいて、外気温度が高い場合であっても過給機のコンプレッサの内部にデポジットが付着することを適切に抑制する。
【解決手段】過給機とブローバイガス還元装置とを備えるエンジンは、外気温が高いほど過給機のコンプレッサのデフューザ部にデポジット(ブローバイガスに含まれるオイルミストの濃縮物)が付着し易くなる傾向にあることに鑑み、吸気管に冷却装置を備える。冷却装置は、吸気管におけるブローバイガス配管との接続箇所よりも上流の部分に設けられ、当該部分を流れる吸気を冷却する。
【選択図】図1

Description

本発明は、過給機とPCV(Positive Crankcase Ventilation)装置とを備えるエンジンに関する。
過給機を備えるエンジンにおいては、過給機のコンプレッサの内部にデポジットが付着し得ることが知られている。コンプレッサの内部にデポジットが付着すると、コンプレッサの過給効率が低下する。そのため、デポジットの付着を抑制することが望まれる。
特開2014−15876号公報(特許文献1)には、過給機を備えるエンジンにおいて、コンプレッサへのデポジットの付着を抑制する技術が開示されている。このエンジンは、過給機に加えて、吸気通路におけるコンプレッサの上流に設けられた吸気絞り弁と、吸気通路における吸気絞り弁とコンプレッサとの間の部分にオイルミストを含んだブローバイガスを流入させるPCV装置(ブローバイガス還元装置)と、吸気絞り弁の開度を制御する制御装置とを備える。制御装置は、コンプレッサへのデポジットの付着の程度を表す指標値を算出し、この指標値が所定値よりも大きい場合に吸気絞り弁の開度を閉じ側に調整する。吸気絞り弁が閉じ側に調整されることで、吸気通路内の負圧が増大し、吸気通路内に流入するブローバイガスの流量が増大する。これにより、オイルミストを含んだ空気がコンプレッサにより多く供給されるため、コンプレッサに付着したデポジットはオイルミストによって洗われて流動性が増し、空気によって吹き飛ばされ易くなる。その結果、コンプレッサへのデポジットの付着が抑制される。
特開2014−15876号公報
しかしながら、過給機とPCV装置とを備えるエンジンにおいて特許文献1に開示されたように吸気通路内に流入するブローバイガスの流量を増大させると、外気温によっては、デポジットの付着をかえって促進させてしてしまうことが懸念される。
本願の発明者等がコンプレッサの内部に付着するデポジットを解析したところ、デポジットは、特にコンプレッサのデフューザ部に多く付着し、その主な成分はブローバイガスに含まれるオイルミストの濃縮物であることが確認された。オイルミストの濃縮物とは、オイルミストの水分の蒸発が進行することによって、オイル粘性が増加したものである。
さらに、本願の発明者等は、コンプレッサのデフューザ部へのデポジットの付着は、外気温度(圧縮前の吸気温度)に対して感度があること、具体的には外気温度が高いほどデポジット(オイルミストの濃縮物)が付着し易くなることを実験等によって新たに見出した。この現象の主な要因としては、外気温度が高いほど、吸気口から取り込まれた圧縮前の吸気によってブローバイガス中のオイルミストが多くの熱量を受けているために、オイルミストの濃縮化(水分の蒸発)が進行し易くなることが考えられる。しかしながら、特許文献1には、このような特性およびその特性を考慮したデポジットの抑制手法について何ら開示されていない。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、過給機とPCV装置(ブローバイガス還元装置)とを備えるエンジンにおいて、外気温度が高い場合であっても過給機のコンプレッサの内部にデポジットが付着することを適切に抑制することである。
(1) 本開示によるエンジンは、エンジンの排気通路に設けられたタービンと、エンジンの吸気通路に設けられ、吸気通路を流れる吸気を圧縮してエンジンに供給するコンプレッサとを備える過給機と、エンジンから流出するブローバイガスを吸気通路におけるコンプレッサよりも上流の部分に流入させてエンジンへ還元させるブローバイガス還元装置と、吸気通路におけるコンプレッサよりも上流の部分を流れる吸気を冷却する冷却装置とを備える。
既に述べたように、本願の発明者等は、過給機とPCV装置とを備えるエンジンにおいては、外気温度が高いほど、オイルミストの濃縮化が進行し易くなり、コンプレッサのデフューザ部にデポジットが付着し易くなることを実験等によって新たに見出した。
上記の問題に鑑み、本開示によるエンジンは、吸気通路における過給機よりも上流の部分を流れる吸気を冷却する冷却装置を備える。そのため、たとえ外気温度が高い場合であっても、冷却装置を作動させることによって圧縮前吸気の温度を低下させることができる。その結果、外気温度が高い場合であっても過給機のコンプレッサの内部にデポジットが付着することを適切に抑制することができる。
(2) ある実施の形態においては、ブローバイガス還元装置は、吸気通路におけるコンプレッサよりも上流の部分に接続されるブローバイガス配管を有する。冷却装置は、吸気通路におけるブローバイガス配管との接続箇所よりも上流の部分に設けられる。
上記構成によれば、たとえ外気温度が高い場合であっても、冷却装置によって、オイルミストと合流する前の吸気の温度を予め低下させておくことができる。そのため、オイルミストが吸気から受ける熱量を低下させることができる。そのため、デポジットの要因となるオイルミストの濃縮化を効果的に抑制することができる。
(3) ある実施の形態においては、エンジンは、切替バルブと、制御部とをさらに備える。切替バルブは、上流の部分の吸気経路を冷却装置を経由する第1経路と冷却装置を経由しない第2経路とのどちらかに切替可能である。制御装置は、外気温度がしきい温度よりも低い場合に上流の部分の吸気経路を第1経路にし、外気温度がしきい温度よりも高い場合に上流の部分の吸気経路を第2経路にするように、切替バルブを制御する。
上記構成によれば、外気温度がしきい温度よりも高い場合に、過給機よりも上流の部分の吸気経路が冷却用の第1経路に切り替えられる。これにより、過給機よりも上流の部分を流れる吸気を効率よく冷却することができる。
(4) ある実施の形態においては、エンジンは、冷却装置の作動および停止を制御する制御部をさらに備える。制御部は、外気温度がしきい温度よりも低い場合に冷却装置を停止し、外気温度がしきい温度よりも高い場合に冷却装置を作動する。
上記構成によれば、外気温度がしきい温度よりも低い場合には冷却装置を停止するため、冷却装置を不必要に作動させることを抑制することができる。
(5) ある実施の形態においては、制御部は、エンジンの負荷が高いほど、しきい温度を低い値に設定する。
一般的に、エンジンの負荷が高いほど、過給圧が高くなり、コンプレッサの内部を通過する吸気の温度も高くなるため、コンプレッサの内部にデポジットが付着し易くなり得る。この点に鑑み、上記構成においては、エンジンの負荷が高いほど、しきい温度が低い値に設定される。これにより、エンジンの負荷が高いほど、冷却装置による吸気の冷却を早期に開始することができる。そのため、デポジットの付着をより適切に抑制することができる。
本発明によれば、過給機とブローバイガス還元装置とを備えるエンジンにおいて、外気温度が高い場合であっても過給機のコンプレッサの内部にデポジットが付着することを適切に抑制することができる。
エンジンのシステム構成を模式的に示す図(その1)である。 コンプレッサの内部構造およびコンプレッサ周辺の吸気経路を模式的に示す図である。 冷却装置を停止させた場合の圧縮過程における吸気許容温度曲線L1,L2のイメージを示す図である。 外気温TOUTと圧縮後許容温度TAmaxとの対応関係の一例を模式的に示す図である。 外気温TOUTが高い温度Thiであるときに冷却装置を作動させた場合の吸気許容温度曲線L3のイメージを示す図である。 制御装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。 エンジンの負荷としきい温度Tthとの対応関係の一例を模式的に示す図である。 エンジンのシステム構成を模式的に示す図(その2)である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
<エンジンのシステム構成>
図1は、本実施の形態によるエンジン1のシステム構成を模式的に示す図である。このシステムは、エンジン1と、エンジン1を制御する制御装置100とを備える。
エンジン1は、たとえばディーゼルエンジンである。なお、エンジン1は、その他の形式のエンジン(たとえばガソリンエンジン等)であってもよい。エンジン1は、エンジン本体10と、インタークーラ26と、過給機30と、PCV(Positive Crankcase Ventilation)装置40と、冷却装置50とを備える。過給機30は、コンプレッサ31と、タービン35と、可変ノズル機構37と、連結軸38とを含む。
エンジン本体10は、複数の気筒を有し、各気筒内で燃料を燃焼させることによって動力を発生する内燃機関である。
過給機30のコンプレッサ31の入口は、第1吸気管22の一方端に接続される。コンプレッサ31の出口は、第2吸気管24の一方端に接続される。第2吸気管24の他方端は、インタークーラ26の入口に接続される。インタークーラ26は、第2吸気管24を流通する空気を冷却する空冷式あるいは水冷式の熱交換器である。インタークーラ26の出口は、第3吸気管27の一方端に接続される。第3吸気管27の他方端は、図示しない吸気マニホールドを介してエンジン本体10の各気筒に連結される。
エンジン本体10の各気筒の排気ポートは、図示しない排気マニホールドを介して第1排気管28の一方端に接続される。第1排気管28の他方端は、過給機30のタービン35の入口に接続される。タービン35の出口は、第2排気管29の一方端に接続される。タービン35から排出された排気ガスは第2排気管29に排出される。
タービン35のハウジング内には、タービンホイール36および可変ノズル機構37が収納される。タービンホイール36は、第1排気管28から供給される排気ガスの排気エネルギによって回転駆動される。可変ノズル機構37は、タービンホイール36の回転軸を中心とした周囲の排気流入部に配置される。可変ノズル機構37は、制御装置100からの制御信号によって作動してその開度を変更することで、第1排気管28からタービンホイール36に供給される排気ガスの流路幅を調整してタービンホイール36に供給される排気ガスの流速を変化させる。
コンプレッサ31のハウジング内には、コンプレッサホイール(インペラ)32が収納される。インペラ32は、連結軸38によってタービンホイール36に連結される。そのため、インペラ32は、タービンホイール36と一体的に回転駆動される。インペラ32は、タービンホイール36によって回転駆動されることによって、コンプレッサ31よりも上流側(入口側)の吸気(以下「圧縮前吸気」という)を過給して第2吸気管24に供給する。これにより、コンプレッサ31よりも下流側(出口側)の吸気(以下「圧縮後吸気」という)の圧力は、圧縮前吸気の圧力よりも高められる。
PCV装置40は、PCV通路(ブローバイガス配管)41と、PCVバルブ42とを含む。PCV通路41は、エンジン本体10のクランクケース内と第1吸気管22(吸気通路におけるコンプレッサ31よりも上流の部分)とを接続する。エンジン本体10のクランクケース内のオイルミストを含んだブローバイガスは、PCV通路41を通って第1吸気管22に流入する(一点鎖線矢印参照)。PCVバルブ42は、PCV通路41上に設けられ、ブローバイガスの逆流を防止する。
冷却装置50は、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも上流の部分に設けられ、この部分を流れる吸気を冷媒によって冷却する。冷却装置50は、切替バルブ51,52と、接続管53,55と、熱交換器54と、冷媒通路56,57とを含む。
切替バルブ51,52は、制御装置100からの制御信号に応じて、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも上流の部分の吸気経路を、冷却装置50の熱交換器54を経由する冷却用経路と、冷却装置50の熱交換器54を経由しない通常経路とのどちらかに切り替える。通常経路が形成される場合、第1吸気管22を流れる吸気は、冷却装置50の熱交換器54を経由することなく過給機30のコンプレッサ31に供給される。冷却用経路が形成される場合、第1吸気管22を流れる吸気は、接続管53を通って熱交換器54の内部に供給され、熱交換器54の内部の冷媒で冷却された後、接続管55を通って第1吸気管22に戻される。
エンジン1には、吸気温センサ110,111,120,130と、過給圧センサ140とが備えられる。吸気温センサ110は、第1吸気管22における冷却装置50よりも上流側の部分を流れる吸気の温度を、外気温TOUTとして検出する。吸気温センサ110は、第1吸気管22における冷却装置50よりも下流側かつコンプレッサ31よりも上流側の部分を流れる吸気の温度を、圧縮前吸気温TBとして検出する。吸気温センサ120は、コンプレッサ31よりも下流側かつインタークーラ26よりも上流側の第2吸気管24を流れる吸気の温度を、圧縮後吸気温TAとして検出する。吸気温センサ130は、インタークーラ26よりも下流側の第3吸気管27を流れる吸気の温度を、インタークーラ後吸気温として検出する。過給圧センサ140は、第3吸気管27を流れる吸気の圧力を、過給圧として検出する。これらのセンサは、検出結果を制御装置100に送信する。
制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵した電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成される。制御装置100は、エンジン1の運転状態(回転速度、燃料噴射量、点火時期など)およびユーザの要求駆動力などに応じて目標過給圧を設定し、過給圧が目標過給圧となるように過給機30の可変ノズル機構37の開度をフィードバック制御する。これにより、過給圧が目標過給圧となるようにコンプレッサ31およびタービンホイール36の回転速度がフィードバック制御される。
<デポジットの付着およびその抑制>
上記のような過給機30とPCV装置40とを備えるエンジン1においては、過給機30のコンプレッサ31の内部にデポジットが付着し、過給機30の過給効率が低下し得る。本願の発明者等がコンプレッサ31の内部に付着するデポジットを解析したところ、デポジットは、コンプレッサ31のデフューザ部33(後述の図2参照)に特に多く付着し、その主な成分はブローバイガス中に含まれるオイルミストの濃縮物であることが確認された。オイルミストの濃縮物とは、オイルミストの水分の蒸発が進行することによって、オイル粘性が増加したものである。
さらに、本願の発明者等は、デポジットの付着が外気温TOUT(圧縮前の吸気温度)に対して感度があること、具体的には外気温TOUTが高いほどデポジットが付着し易くなることを実験等によって新たに見出した。この現象の主な要因としては、外気温TOUTが高いほど、吸気口から取り込まれた圧縮前の吸気によってブローバイガス中のオイルミストが多くの熱量を受けるために、デフューザ部33でのオイルミストの濃縮化が進行し易いことが考えられる。また、他の要因としては、外気温TOUTが高いほど、吸気中のオイルミストのミキシング性が良く粒径が小さくなることによって、デフューザ部33でのオイルミストの濃縮化がより促進されることが考えられる。
図2は、コンプレッサ31の内部構造およびコンプレッサ31周辺の吸気経路を模式的に示す図である。コンプレッサ31のハウジング内には、インペラ32に加えて、デフューザ部33と、スクロール部34とが設けられる。
インペラ32が回転駆動されると、第1吸気管22内の吸気はPCV通路41から還元されるブローバイガスと合流した後、インペラ32に吸入されて圧縮および増速される。インペラ32で圧縮および増速された吸気はデフューザ部33に供給されてデフューザ部33で減速および昇圧された後、スクロール部34に供給される。スクロール部34に供給された吸気は、第2吸気管24を通ってインタークーラ26へ供給される。
以下では、説明の便宜上、第1吸気管22における冷却装置50よりも上流の部分を「第1通過経路P1」、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも下流の部分を「第2通過経路P2」、インペラ32周辺を「第3通過経路P3」、デフューザ部33の入口33a付近を「第4通過経路P4」、デフューザ部33の中間付近を「第5通過経路P5」、デフューザ部33の出口33b付近を「第6通過経路P6」、スクロール部34を「第7通過経路P7」、スクロール部34からインタークーラ26までの経路を「第8通過経路P8」とも記載する。
吸入口から吸入通路に流入した吸気は各通過経路P1〜P8を順に通って圧縮されていく。この圧縮過程で吸気温度が上昇していくことによって、吸気中に含まれるオイルミストの濃縮化が進行していくと考えられる。そして、圧縮過程でオイルミストが受ける総熱量(以下「オイルミスト総受熱量」という)がある許容量を超えると、濃縮化されたオイルミストがデフューザ部33に付着してデポジットとなることが実験等によって新たに見出された。
図3は、冷却装置50を停止させた場合の圧縮過程における吸気許容温度曲線のイメージを示す図である。吸気許容温度曲線とは、デフューザ部33へのデポジットの付着を抑制可能な各通過経路P1〜P8の吸気温度の上限値を繋ぎ合わせた曲線である。
図3において、横軸は圧縮過程の各通過経路P1〜P8(図2参照)を表わし、縦軸は吸気温度を表わす。図3において、破線で示す曲線L1は外気温TOUT(第1通過経路P1の吸気温度)が低い温度Tlowであるときの吸気許容温度曲線を示し、実線で示す曲線L2は外気温TOUTが高い温度Thiであるときの吸気許容温度曲線を示す。
吸気許容温度曲線L1より低温側の領域(斜線を付した領域)の面積Slowが、外気温TOUTが低い温度Tlowである場合におけるオイルミスト総受熱量の許容量に相当する。吸気許容温度曲線L2より低温側の領域(ドットを付した領域)の面積Shiが、外気温TOUTが高い温度Thiである場合におけるオイルミスト総受熱量の許容量に相当する。オイルミスト総受熱量の許容量そのものは、外気温TOUTの影響を大きくは受けないため、面積Slowと面積Shiとは概ね同じ面積である。なお、図3に示すように実際には面積Shiが面積Slowよりも僅かに小さいが、これは、外気温TOUTが高いほど、オイルミストのミキシング性が良くオイルミストの濃縮化が促進され易いために、外気温TOUTが高いほど、オイルミスト総受熱量の許容量が僅かに低下していると考えられる。
外気温TOUTが低い温度Tlowである場合の吸気許容温度曲線L1は、図3に示すように、圧縮過程が進むにつれて増加し、通過経路P8で所定値TAmax_Tlowに達している。これは、外気温TOUTが低い温度Tlowである場合には、通過経路P8の吸気温度すなわち圧縮後吸気温TAを所定値TAmax_Tlow未満にすれば、デポジットの付着を抑制可能であることを意味する。
外気温TOUTが高い温度Thiである場合の吸気許容温度曲線L2も、図3に示すように、圧縮過程が進むにつれて増加する。しかしながら、外気温TOUTが高い場合は、吸気口から取り込まれた圧縮前の吸気によってブローバイガス中のオイルミストが多くの熱量を吸気から受ける影響により、吸気許容温度曲線L2は、通過経路P4以前の経路で吸気許容温度曲線L1よりも高くなり、その分、通過経路P5以降の経路で吸気許容温度曲線L1よりも低くなってしまう。その結果、通過経路P8における吸気許容温度曲線L2の値TAmax_Thiは、所定値TAmax_Tlowよりも低くなってしまう。すなわち、外気温TOUTが高い温度Thiである場合にデポジットの付着を抑制するためには、圧縮後吸気温TAを所定値TAmax_Tlowよりも低い値TAmax_Thi未満にする必要がある。これは、外気温TOUTが高いほど、デポジットが付着し易くなることを意味する。
このように、デフューザ部33へのデポジットの付着は、外気温TOUTに対して感度がある。すなわち、外気温TOUTが高いほど、圧縮後吸気温度TAの許容温度(以下、単に「圧縮後許容温度TAmax」ともいう)が低下し、デポジットが付着し易くなる傾向にある。
図4は、外気温TOUTと圧縮後許容温度TAmaxとの対応関係の一例を模式的に示す図である。図4に示すように、外気温TOUTが高いほど、圧縮後許容温度TAmaxは低下する。図4において、圧縮後吸気温TAが圧縮後許容温度TAmax以下の領域が、オイルミスト総受熱量が許容量未満となり、デポジットの付着が発生しない領域である。圧縮後吸気温TAが圧縮後許容温度TAmaxを超える領域が、オイルミスト総受熱量が許容量を超えてデポジットの付着が発生する領域である。
従来より、デポジット対策として圧縮後吸気温TAを制御上限値TAth未満に制限するように可変ノズル機構37の開度が制御されるが、この制御上限値TAthは外気温TOUTに関わらず一定値に固定されている。したがって、従来の対策のみでは、外気温TOUTが制御上限値TAthに対応するしきい温度Tthよりも高い場合(たとえば図4に示す温度Thiである場合)、圧縮後許容温度TAmaxが制御上限値TAthよりも低くなる。そのため、圧縮後吸気温TAが圧縮後許容温度TAmaxを超えてしまい、デポジットの付着が発生してしまう可能性がある。
上記の問題に鑑み、本実施の形態によるエンジン1には、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも上流の部分を流れる吸気を冷却する冷却装置50が設けられる。そのため、たとえ外気温TOUTがしきい温度Tthを超えている場合であっても、冷却装置50を作動させることによって、外気温TOUTがしきい温度Tth未満である場合と同等のレベルまで圧縮前吸気温TBを低下させることができる。その結果、外気温TOUTが高い場合であってもコンプレッサ31のデフューザ部33にデポジットが付着することを適切に抑制することができる。
図5は、図3に示した吸気許容温度曲線L1(破線),L2(実線)に加えて、外気温TOUTが高い温度Thiであるときに冷却装置50を作動させた場合の吸気許容温度曲線L3(一点鎖線)のイメージを追加した図である。
外気温TOUTが高い温度Thiであると、第1通過経路P1の吸気温も高い温度Thiであるため、第1通過経路P1においては、吸気許容温度曲線L3は吸気許容温度曲線L2とほぼ一致する。
しかしながら、冷却装置50を作動させることによって圧縮前吸気温TBが低下するため、第2通過経路P2および第3通過経路P3を通過する吸気に含まれるオイルミストの受熱量が軽減される。この影響により、吸気許容温度曲線L3は、図5に示すように、第2通過経路P2および第3通過経路P3で吸気許容温度曲線L2よりも低い値(吸気許容温度曲線L1と同等のレベル)まで低下しており、その分、通過経路P4以降の経路で吸気許容温度曲線L2よりも高くなる。その結果、通過経路P8において、吸気許容温度曲線L3の値TAmax_Thicは、吸気許容温度曲線L2の値TAmax_Thiよりも高い値となる。すなわち、外気温TOUTが高い温度Thiであっても、冷却装置50を作動させて圧縮前吸気温TBを低下させることによって、外気温TOUTが低い温度Tlowである場合に近いレベルまでオイルミストの受熱量が軽減される。そのため、圧縮後許容温度TAmaxが上昇し、デポジットの付着が発生し難くなる。
このように、本実施の形態によるエンジン1においては、外気温TOUTが高い温度Thiであっても、冷却装置50を作動させることによって、圧縮後許容温度TAmaxを上昇させてデポジットが付着することを抑制することができる。
なお、冷却装置50を常時作動させることも技術的には可能ではあるが、本実施の形態による制御装置100は、外気温TOUTが低い場合には冷却装置50を停止することによって、冷却装置50を不必要に作動させることを抑制する。
図6は、制御装置100が冷却装置50を制御する際に行なう処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定周期で繰り返し実行される。
ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10にて、制御装置100は、吸気温センサ110から外気温TOUTを取得する。
S11にて、制御装置100は、外気温TOUTがしきい温度Tth(図4参照)よりも高いか否かを判定する。なお、本実施の形態において、しきい温度Tthは予め定められた固定値である。
外気温TOUTがしきい温度Tthよりも高い場合(S11にてYES)、制御装置100は、S12にて、冷却装置50を作動させる。具体的には、制御装置100は、冷却装置50の切替バルブ51,52を制御することによって、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも上流の部分の吸気経路を、熱交換器54を経由する冷却用経路に切り替える。
外気温TOUTがしきい温度Tthよりも低い場合(S11にてNO)、制御装置100は、S13にて、冷却装置50を停止させる。具体的には、制御装置100は、冷却装置50の切替バルブ51,52を制御することによって、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも上流の部分の吸気経路を、熱交換器54を経由しない通常経路に切り替える。
以上のように、本実施の形態によるエンジン1は、第1吸気管22におけるコンプレッサ31よりも上流の部分を流れる吸気を冷却する冷却装置50を備える。そのため、たとえ外気温TOUTが高い場合(しきい温度Tthを超える場合)であっても、冷却装置50を作動させることによって、外気温TOUTが低い場合(しきい温度Tth未満である場合)と同等のレベルまで圧縮前吸気温TBを低下させることができる。その結果、外気温TOUTが高い場合であってもコンプレッサ31のデフューザ部33にデポジットが付着することを適切に抑制することができる。
特に、本実施の形態による冷却装置50は、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも上流の部分を流れる吸気を冷却する。そのため、たとえ外気温TOUTが高い場合であっても、冷却装置50によって、オイルミストと合流する前の吸気の温度を予め低下させておくことができる。そのため、外気温TOUTがしきい温度Tth未満である場合と近いレベルまでオイルミストが受ける総熱量を低下させることができる。そのため、デポジットの要因となるオイルミストの濃縮化(蒸発および酸化劣化)を効果的に抑制することができる。
さらに、本実施の形態による制御装置100は、外気温TOUTがしきい温度Tthよりも高い場合に、冷却装置50の切替バルブ51,52を制御することによって、第1吸気管22におけるコンプレッサ31よりも上流の部分の吸気経路を通常経路から冷却専用の経路に切り替える。これにより、コンプレッサ31よりも上流の部分を流れる吸気を効率よく冷却することができる。
<変形例1>
上述の実施の形態においては、図6のS11にて外気温TOUTと比較される「しきい温度Tth」を、制御上限値TAthに対応する固定値とする例を説明した。
しかしながら、一般的に、エンジン1の負荷が高いほど、過給圧も高くコンプレッサ31の内部を通過する吸気の温度も高くなるため、コンプレッサ31の内部にデポジットが付着し易くなり得る。この点に鑑み、「しきい温度Tth」を、エンジン1の負荷が高いほど低い値に設定するようにしてもよい。
図7は、本変形例1によるエンジン1の負荷としきい温度Tthとの対応関係の一例を模式的に示す図である。図7に示すように、エンジン1の負荷が高いほどしきい温度Tthを低い値に設定することによって、エンジン1の負荷が高いほど、冷却装置50による吸気の冷却を早期に開始することができる。そのため、エンジン1の負荷が高い場合であっても、デポジット付着をより適切に抑制することができる。
なお、エンジン1の負荷に応じてしきい温度Tthを変化させた場合であっても、圧縮後吸気温TAの制御上限値TAthについてはそのまま維持することができる。そのため、圧縮後吸気温TAとほぼ比例関係にある過給圧を過剰に制限することを回避することができる。
<変形例2>
上述の実施の形態による冷却装置50は、通常経路とは別の箇所に熱交換器54を設け、切替バルブ51,52で吸気経路を通常経路から冷却用経路に切り替えることによって、冷却装置50の作動(冷却装置50による冷却)を行なっていた。
しかしながら、冷却装置50の構成はこのような構成に限定されない。たとえば、通常経路に接するように熱交換器を設け、この熱交換器に冷媒を循環させることによって、冷却装置の作動(冷却装置による冷却)を行なうようにしてもよい。
図8は、本変形例2によるエンジン1Aのシステム構成を模式的に示す図である。このエンジン1Aは、上述の図1に示すエンジン1に対して、冷却装置50に代えて、冷却装置60を備えるものである。その他の構造は同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
冷却装置60は、熱交換器61と、冷媒通路62,63と、切替バルブ64とを含む。
熱交換器61は、第1吸気管22におけるPCV通路41との接続箇所よりも上流の部分に接するように設けられ、この部分を流れる吸気を冷媒によって冷却する。
切替バルブ64は、冷媒通路62上に設けられ、制御装置100からの制御信号に応じて開閉される。切替バルブ64が開かれると、冷媒が冷媒通路62を通って熱交換器61へ供給される。熱交換器61の内部に供給された冷媒は、吸気の熱を吸収した後、冷媒通路63に排出される(二点鎖線矢印参照)。切替バルブ64が閉じられると、熱交換器61への冷媒の供給が遮断される。
このような構成においては、切替バルブ64を開閉することで、冷却装置60の作動(冷却実行)および停止(冷却停止)を行なうことができる。また、冷却専用の吸気経路を別途設ける必要がないため、簡素な構成で吸気を冷却できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,1A エンジン、10 エンジン本体、22 第1吸気管、24 第2吸気管、26 インタークーラ、27 第3吸気管、28 第1排気管、29 第2排気管、30 過給機、31 コンプレッサ、32 インペラ、33 デフューザ部、33a 入口、33b 出口、34 スクロール部、35 タービン、36 タービンホイール、37 可変ノズル機構、38 連結軸、40 PVC装置、41 PVC通路、42 PVCバルブ、50,60 冷却装置、51,52,64 切替バルブ、53,55 接続管、54,61 熱交換器、56,57,62,63 冷媒通路、100 制御装置、110,111,120,130 吸気温センサ、140 過給圧センサ。

Claims (5)

  1. エンジンの排気通路に設けられたタービンと、前記エンジンの吸気通路に設けられ、前記吸気通路を流れる吸気を圧縮して前記エンジンに供給するコンプレッサとを備える過給機と、
    前記エンジンから流出するブローバイガスを前記吸気通路における前記コンプレッサよりも上流の部分に流入させて前記エンジンへ還元させるブローバイガス還元装置と、
    前記吸気通路における前記コンプレッサよりも上流の部分を流れる吸気を冷却する冷却装置とを備える、エンジン。
  2. 前記ブローバイガス還元装置は、前記吸気通路における前記コンプレッサよりも上流の部分に接続されるブローバイガス配管を有し、
    前記冷却装置は、前記吸気通路における前記ブローバイガス配管との接続箇所よりも上流の部分に設けられる、請求項1に記載のエンジン。
  3. 前記エンジンは、
    前記上流の部分の吸気経路を前記冷却装置を経由する第1経路と前記冷却装置を経由しない第2経路とのどちらかに切替可能な切替バルブと、
    外気温度がしきい温度よりも低い場合に前記上流の部分の吸気経路を前記第1経路にし、前記外気温度が前記しきい温度よりも高い場合に前記上流の部分の吸気経路を前記第2経路にするように、前記切替バルブを制御する制御部とをさらに備える、請求項1または2に記載のエンジン。
  4. 前記エンジンは、前記冷却装置の作動および停止を制御する制御部をさらに備え、
    前記制御部は、外気温度がしきい温度よりも低い場合に前記冷却装置を停止し、前記外気温度が前記しきい温度よりも高い場合に前記冷却装置を作動する、請求項1または2に記載のエンジン。
  5. 前記制御部は、前記エンジンの負荷が高いほど、前記しきい温度を低い値に設定する、請求項3または4に記載のエンジン。
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