次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン21及び2系統の燃料供給経路30,31を概略的に示す説明図である。図2は、エンジン21の背面図である。図3は、燃焼室110の周辺の構成を詳細に示す背面一部断面図である。図4は、エンジン21の正面図である。図5は、エンジン21の平面図である。図6は、エンジン21の右側面図である。図7は、液体燃料供給経路を示す模式的な前方斜視図である。図8は、エンジン21の左側面図である。図9は、サイドカバー43の一部及び遮熱カバー45を取り外したときの様子を示すエンジン21の斜視図である。
図1に示す本実施形態のエンジン(多気筒エンジン)21は、気体燃料を空気と混合させてから燃焼室に流入させる予混合燃焼方式と、液体燃料を燃焼室内に噴射して燃焼する拡散燃焼方式と、の何れにも対応可能な、いわゆるデュアルフューエルエンジンである。本実施形態のエンジン21は、図示しない船舶の推進兼発電機構の駆動源として、船舶の機関室の内底板上に、ベース台を介して据え付けられる。
エンジン21の後端部からは、エンジン出力軸としてのクランク軸24が後方に向かって突出している。クランク軸24の一端には、図示しない減速機が動力伝達可能に連結される。この減速機を間に挟んで、船舶の図示しない推進軸が、クランク軸24と軸線を一致させるように配置される。推進軸の端部には、船舶の推進力を発生させるプロペラが取り付けられる。前記減速機はPTO軸を有しており、このPTO軸に、図示しない軸駆動発電機が動力伝達可能に連結される。
この構成により、エンジン21の動力が減速機を介して、推進軸と軸駆動発電機とに分岐して伝達される。これにより、船舶の推進力を発生させるとともに、軸駆動発電機の駆動にて生じた電力が船舶内の電気系統に供給される。
次に、エンジン21について、図面を参照して詳細に説明する。エンジン21は、上述したようにデュアルフューエルエンジンであり、天然ガス等の燃料ガスを空気に混合させて燃焼させる予混合燃焼方式と、重油等の液体燃料(燃料油)を拡散させて燃焼させる拡散燃焼方式と、の何れかを選択して駆動させることができる。
なお、以下では、減速機と接続される側(フライホイールが配置される側)を後側として、エンジン21の前面に向かって右側を右、エンジン21の前面に向かって左側を左として、エンジン21の構成における前後左右の位置関係を説明する。従って、前後方向は、クランク軸24の軸線に平行な方向と言い換えることができ、左右方向は、クランク軸24の軸線に垂直な方向と言い換えることができる。ただし、この説明はエンジン21の向きを限定するものではなく、エンジン21は用途等に応じて様々な向きで設置することができる。
エンジン21には、図1に示すように、2系統の燃料供給経路30,31が接続されている。一方の燃料供給経路30には、液化天然ガス(LNG)を貯留するガス燃料タンク32が接続されるとともに、他方の燃料供給経路31には、船舶用ディーゼルオイル(MDO)を貯留する液体燃料タンク33が接続される。この構成で、一方の燃料供給経路30はエンジン21に燃料ガスを供給し、他方の燃料供給経路31はエンジン21に燃料油を供給する。
燃料供給経路30には、上流側から順に、液化状態の気体燃料を貯蔵するガス燃料タンク32と、ガス燃料タンク32の液化燃料を気化させる気化装置34と、気化装置34からエンジン21への燃料ガスの供給量を調整するガスバルブユニット35と、が配置されている。
エンジン21は、図2から図4までに示すように、シリンダブロック25の上にシリンダヘッド26を組み付けて構成される直列多気筒エンジンである。図2及び図4に示すように、シリンダブロック25の下部には、前記クランク軸24が、軸線24cを前後方向に向けた状態で回転可能に支持されている。
シリンダブロック25には、複数(本実施形態では、6つ)の気筒がクランク軸24の軸線に沿うように一列(直列)に並べて形成される。各気筒には、図3に示すように、ピストン78が上下方向にスライド可能に収容される。このピストン78は、図示しないロッドを介して前記クランク軸24に連結される。
図5及び図6に示すように、それぞれの気筒を上側から覆うように、シリンダブロック25には複数(本実施形態では6つ)のシリンダヘッド26が取り付けられる。シリンダヘッド26はそれぞれの気筒に対して設けられ、ヘッドボルト99を用いてシリンダブロック25に固定される。図3に示すように、それぞれの気筒において、ピストン78の上面とシリンダヘッド26で取り囲まれた空間に燃焼室110が形成される。
複数のヘッドカバー40は、図5に示すように、各気筒に対応するように、クランク軸24の軸線24cの方向(前後方向)に沿って一列に並んでシリンダヘッド26上に配置されている。図3に示すように、それぞれのヘッドカバー40の内部には、吸気弁及び排気弁を動作させるためのプッシュロッド及びロッカーアーム等からなる動弁機構が収容されている。前記吸気弁を開いた状態では、燃焼室110に吸気マニホールド67からの吸気を取り込むことができる。前記排気弁を開いた状態では、燃焼室110からの排気を排気マニホールド44に排出することができる。
図3に示すように、ヘッドカバー40の左側の近傍には、後述するパイロット燃料噴射弁82の上端部が配置されている。このパイロット燃料噴射弁82は、クランク軸24の軸線24cを含む仮想鉛直平面P1(図7を参照)を考えたときに、当該仮想鉛直平面P1に対して一側(本実施形態では左側)からシリンダヘッド26の内部に挿入され、燃焼室110に向かって斜下方に延びている。
なお、以後の説明では、クランク軸24の軸線24cを含む仮想鉛直平面P1に対して一側/他側に位置することを、クランク軸24に対して一側/他側と表現することがある。仮想鉛直平面P1は、クランク軸24の軸線24cの方向にも上下方向にも無限に広い平面であると考えることができるが、図7では、斜視図での表現の都合により、エンジン21の近傍の一部のみの仮想鉛直平面P1が示されている。
図2、図3及び図8に示すように、シリンダヘッド26の左側には、予混合燃焼方式での燃焼時に各気筒の燃焼室110にガス燃料を分配して供給するためのガスマニホールド41が設けられる。ガスマニホールド41は、シリンダヘッド26の左側面に沿って前後方向に延びるように配置される。ガスマニホールド41には、各気筒の燃焼室110に対応する複数(本実施形態では6つ)のガス枝管41aが接続され、当該ガス枝管41aの先端部には、図3に示すように、ガス燃料を噴射するためのガスインジェクタ98が設けられる。ガスインジェクタ98の先端部は、気筒に対応してシリンダヘッド26の内部に形成される吸気枝管67aに臨んでいる。ガスインジェクタ98からガス燃料を噴射することにより、吸気マニホールド67の吸気枝管67aにガス燃料を供給することができる。
図3、図7及び図9に示すように、シリンダブロック25の右側には、拡散燃焼方式での燃焼時に各気筒の燃焼室110に液体燃料を分配して供給するための液体燃料供給用レール配管42が設けられる。液体燃料供給用レール配管42は、シリンダブロック25の右側面に沿って前後方向に延びるように配置されている。液体燃料供給用レール配管42に供給された液体燃料は、各気筒に対応して設けられた燃料噴射ポンプ89に分配して供給される。それぞれの気筒には、図3に示すように、燃料噴射ポンプ89から供給された液体燃料を噴射するメイン燃料噴射弁79が配置されている。メイン燃料噴射弁79はシリンダヘッド26に上方から垂直に差し込まれるように配置され、その上端部はヘッドカバー40の内部に配置され、下端部は気筒の燃焼室110に臨んでいる。燃料噴射ポンプ89とメイン燃料噴射弁79とは、シリンダヘッド26に形成された液体燃料供給路106を介して接続される。
液体燃料供給用レール配管42の下方近傍の位置に、それぞれの燃料噴射ポンプ89から戻された余分な燃料を集めるための液体燃料戻し集約管48が設けられる。液体燃料戻し集約管48は、液体燃料供給用レール配管42と平行に配置され、燃料噴射ポンプ89に接続される。液体燃料戻し集約管48の端部には、液体燃料を液体燃料タンク33まで戻すための燃料戻し管115が接続される。
図3、図7及び図9に示すように、シリンダブロック25の右側であって、液体燃料供給用レール配管42よりも上方の位置には、予混合燃焼方式での燃焼時にガス燃料着火を目的として各気筒の燃焼室110にパイロット燃料を分配して供給するためのパイロット燃料供給用レール配管(パイロット燃料供給用コモンレール配管)47が設けられる。パイロット燃料供給用レール配管47は、シリンダブロック25の右側面に沿って前後方向に延びるように配置されている。それぞれの気筒には、図3及び図7に示すように、パイロット燃料供給用レール配管47から供給された液体燃料(パイロット燃料)を噴射するパイロット燃料噴射弁82が配置されている。パイロット燃料噴射弁82はシリンダヘッド26に上方から斜めに差し込まれるように配置され、その上端部はヘッドカバー40のすぐ左脇の位置に配置され、下端部は気筒の燃焼室110に臨んでいる。図7に示すように、それぞれの気筒に対応して、パイロット燃料枝管109がパイロット燃料供給用レール配管47から分岐するように設けられている。パイロット燃料枝管109は、並べて配置されたヘッドカバー40の間を通過するように配置され、パイロット燃料噴射弁82の上端部に接続される。パイロット燃料枝管109は、漏れた燃料の飛散を防止するための枝管カバー105によって覆われている。
図3、図7及び図9に示すように、シリンダブロック25及びシリンダヘッド26で構成されるエンジン21の右側面の上部には段差が形成されており、この段差の部分に、パイロット燃料供給用レール配管47と液体燃料供給用レール配管42と燃料噴射ポンプ89とが配置されている。シリンダブロック25及びシリンダヘッド26には、この段差部分を覆うようにサイドカバー43が取り付けられている。パイロット燃料供給用レール配管47、液体燃料供給用レール配管42、及び燃料噴射ポンプ89は、サイドカバー43で被覆されている。なお、図9には、サイドカバー43の一部が取り外された状態が描かれている。
図2、図3及び図9に示すように、シリンダヘッド26の左上方であって、ガスマニホールド41よりも上方の位置には、各気筒の燃焼室110での燃焼により発生した排気を集めて外部に排出するための排気マニホールド44が、ガスマニホールド41と平行に配置される。排気マニホールド44の外周は、遮熱カバー45で覆われている(ただし、図9においては遮熱カバー45が取り外されている)。図3に示すように、排気マニホールド44には各気筒に対応する排気枝管44aが接続されている。この排気枝管44aは、各気筒の燃焼室110に通じている。
シリンダブロック25の内部の左側寄りには、外部からの空気(吸気)を各気筒の燃焼室110に分配して供給するための吸気マニホールド67が、ガスマニホールド41と平行に配置される。図3に示すように、吸気マニホールド67から分岐するように6つの吸気枝管67aがシリンダヘッド26の内部に形成され、それぞれの吸気枝管67aは燃焼室110に通じている。
この構成により、拡散燃焼方式での燃焼時には、各気筒に吸気マニホールド67から供給された空気がピストン78のスライドにより圧縮された適宜のタイミングで、メイン燃料噴射弁79から燃焼室110内に適宜の量の液体燃料が噴射されるようになっている。液体燃料を燃焼室110内に噴射することにより、ピストン78は、燃焼室110で生じる爆発から得られる推進力によって気筒内を往復運動し、ピストン78の往復運動がロッドを介してクランク軸24の回転運動に変換されて動力が得られる。
一方、予混合燃焼方式での燃焼時には、ガスマニホールド41からのガス燃料がガスインジェクタ98から吸気枝管67a内で噴射されることにより、吸気マニホールド67から供給された空気と、ガス燃料とが混合される。気筒に導入された空気とガス燃料の混合気がピストン78のスライドにより圧縮された適宜のタイミングで、パイロット燃料噴射弁82から燃焼室110内に少量のパイロット燃料が噴射されることにより、ガス燃料に着火される。ピストン78は、燃焼室110での爆発により得られる推進力によって気筒内を往復運動し、ピストン78の往復運動がロッドを介してクランク軸24の回転運動に変換されて動力が得られる。
拡散燃焼方式で燃焼した場合にも、予混合燃焼方式で燃焼した場合にも、燃焼により生じた排気はピストン78の運動により気筒から押し出され、排気マニホールド44に集められた後、外部に排出される。
図4に示すように、エンジン21の前端面(正面)には、クランク軸24の前端部分を取り囲むようにして、冷却水ポンプ53、潤滑油ポンプ55、及び燃料高圧ポンプ56がそれぞれ設けられている。燃料高圧ポンプ56は、クランク軸24の右側寄りに配置される。また、エンジン21の前端部分には、クランク軸24の回転動力を伝達する図略の回転伝達機構が設けられている。これにより、クランク軸24からの回転動力が前記回転伝達機構を介して伝達されることで、クランク軸24の外周側に設けられた冷却水ポンプ53、潤滑油ポンプ55、及び燃料高圧ポンプ56がそれぞれ駆動される。
図8に示すように、シリンダブロック25の左側面には、潤滑油クーラ58と、潤滑油漉し器59と、が取り付けられている。潤滑油ポンプ55から供給された潤滑油は、潤滑油クーラ58で冷却された後、潤滑油漉し器59で浄化されて、エンジン21の各部に供給される。
図4に示す冷却水ポンプ53から送られてくる冷却水は、エンジン21の各気筒を冷却した後、図5等に示すシリンダヘッド上冷却水配管46に集められる。
インタークーラ51は、エンジン21の前端面に沿って配置され、過給機49のコンプレッサで圧縮された空気を冷却する。シリンダブロック左冷却水配管60は、図8に示すように、シリンダブロック25の前方からガスマニホールド41に沿うようにして、潤滑油クーラ58及び潤滑油漉し器59の間となる位置まで後方に向かって延びており、潤滑油クーラ58に冷却水を供給する。
図5及び図9に示すように、シリンダヘッド上冷却水配管46は、それぞれがシリンダヘッド26の上方に配置された複数のヘッドカバー40と、排気マニホールド44と、の間の位置に、当該排気マニホールド44と平行に配置されている。シリンダヘッド上冷却水配管46は、各気筒に対応して設けられた冷却水枝管と連結されて、この冷却水枝管を介して各気筒の冷却水路(シリンダヘッド26に形成された冷却水路)と接続している。
図4に示す燃料高圧ポンプ56は、回転駆動されることにより、図1の液体燃料タンク33から燃料フィードポンプ166を介して供給される燃料油(液体燃料)を昇圧して、図7等に示すパイロット燃料供給用主管107を経由して、パイロット燃料供給用レール配管47に送る。液体燃料タンク33から燃料高圧ポンプ56への燃料経路の中途部には、燃料油を濾過するパイロット燃料用フィルタ141が設けられている。
また、図1に示す燃料フィードポンプ165が電動で駆動されることにより、当該燃料フィードポンプ165は液体燃料タンク33からの燃料油を吸い込んで、図7等に示す液体燃料供給用主管108を経由して液体燃料供給用レール配管42に送る。液体燃料タンク33から液体燃料供給用レール配管42への燃料油の供給経路の中途部には、燃料油を濾過するメイン燃料用フィルタ131が設けられている。
図7に示すように、パイロット燃料供給用主管107、液体燃料供給用主管108及び燃料戻し管115は、シリンダブロック25の右側面に沿うように、シリンダブロック25のすぐ前方に配置されている。パイロット燃料供給用主管107、液体燃料供給用主管108及び燃料戻し管115は、シリンダブロック25の前端面から右方に突出するように設けられた複数のクランプ部材111を介して、シリンダブロック25の右側面に沿って上下方向に延びるように配置される。
シリンダヘッド26の前方の右側寄り、より具体的には、インタークーラ51の右側面には、ステーを介して、エンジン21の始動・停止等の制御を行う機側操作用制御装置71が設けられている(図6及び図9を参照)。機側操作用制御装置71には、オペレータによるエンジン21の始動・停止を受け付けるスイッチ等の操作部と、エンジン21の運転状態を表示するディスプレイと、が設けられている。オペレータが機側操作用制御装置71を操作することにより、エンジン21を、予混合燃焼方式又は拡散燃焼方式の何れかで駆動させることができるようになっている。
次に、メイン燃料用フィルタ131、パイロット燃料用フィルタ141、及びその周辺の構成について、図10及び図11を参照しながらより具体的に説明する。図10は、エンジン21に燃料油を供給する燃料供給経路31を説明する模式図である。図11は、メイン燃料用フィルタ131及びパイロット燃料用フィルタ141の配置を示すエンジン21の前方斜視図である。
図10に示すように、本実施形態において燃料油を供給する燃料供給経路31は、メイン燃料噴射弁79を供給の対象とするメイン供給経路31aと、パイロット燃料噴射弁82を供給の対象とするパイロット供給経路31bと、の2つに分けることができる。
メイン供給経路31aにおいて、液体燃料タンク33の燃料油は、エア抜きを行うためのエアセパレータ163を介して、エンジン21に設置されたメイン燃料ポンプ161によって吸い込まれる(なお、メイン燃料ポンプ161は、図1から図9までには示されていない)。メイン燃料ポンプ161が吐出した燃料油は、メイン燃料供給用経路130を介して、メイン燃料噴射弁79に供給される。メイン燃料供給用経路130には、前述の液体燃料供給用主管108、液体燃料供給用レール配管42及び液体燃料供給路106が含まれる。図10に示すように、燃料噴射ポンプ89から戻された余剰の燃料油は、液体燃料戻し集約管48及び燃料戻し管115を経由して、エアセパレータ163に戻される。燃料戻し管115とエアセパレータ163の間には、戻り燃料の圧力を保持するための圧力保持弁162が設けられている。
メイン燃料用フィルタ131は、液体燃料に含まれる異物を取り除くためにメイン燃料供給用経路130の中途部に設けられるものである。具体的には、メイン燃料用フィルタ131は、メイン燃料噴射弁79に供給される前の液体燃料を濾過して、液体燃料に含まれるゴミや汚れ等を切換洗浄式のフィルタに捕捉する。図10及び図11に示すように、メイン燃料用フィルタ131は、一方がメンテナンス中のときに他方を使用することができるように、対で設けられる。これにより、エンジン21が稼動している間、連続的にメイン燃料用フィルタ131を用いることができる。
図10に示すように、パイロット供給経路31bには、特にパイロット燃料として用いられる燃料油を貯留するパイロット燃料タンク171が、液体燃料タンク33とは別に設けられる。パイロット燃料タンク171と液体燃料タンク33の間は適宜の配管によって接続されている。当該配管には電磁弁172が設置されており、この電磁弁172を開閉することで、必要に応じて液体燃料タンク33からパイロット燃料タンク171に燃料油が供給され、パイロット燃料タンク171の燃料油が一定量以上に維持される。
パイロット燃料タンク171の下流側には、パイロット燃料供給ポンプ173が配置されている。このパイロット燃料供給ポンプ173は、図示しない電動モータによって駆動されてパイロット燃料タンク171の燃料油を吸い込み、自動逆洗型フィルタ174に向けて吐出する。自動逆洗型フィルタ174によって異物が取り除かれた燃料油の一部は、パイロット燃料供給用経路140を介して、パイロット燃料噴射弁82に供給される。パイロット燃料供給用経路140に供給されなかった燃料油は、パイロット燃料タンク171に戻される。パイロット燃料供給用経路140には、前述のパイロット燃料供給用主管107、パイロット燃料供給用レール配管47及びパイロット燃料枝管109が含まれる。また、パイロット燃料供給用経路140の中途には、前述の燃料高圧ポンプ56が配置されている。
パイロット燃料供給用主管107、パイロット燃料供給用レール配管47及びパイロット燃料枝管109は、何れも2重管構造となっており、燃料高圧ポンプ56側からの燃料油をパイロット燃料噴射弁82に供給するとともに、パイロット燃料噴射弁82からリークした燃料油を燃料高圧ポンプ56へ戻すこともできる。パイロット燃料噴射弁82から燃料高圧ポンプ56に戻された燃料油、及び燃料高圧ポンプ56において余剰となった燃料油は、適宜の配管を介してパイロット燃料タンク171に戻される。
パイロット燃料用フィルタ141は、パイロット燃料として供給される液体燃料に含まれる異物を取り除くためにパイロット燃料供給用経路140の中途部に設けられるものである。具体的には、パイロット燃料用フィルタ141は、パイロット燃料噴射弁82に供給される前の液体燃料を濾過して、液体燃料に含まれるゴミや汚れ等を交換式のペーパーフィルタに捕捉する。パイロット燃料用フィルタ141は、一方がメンテナンス中のときに他方を使用することができるように、対で設けられる。これにより、エンジン21が稼動している間、連続的にパイロット燃料用フィルタ141を用いることができる。
パイロット燃料用フィルタ141の前記ペーパーフィルタとしては、メイン燃料用フィルタ131の切換洗浄式のフィルタよりも濾過効率が高いものが用いられる。言い換えれば、パイロット燃料用フィルタ141の前記ペーパーフィルタの目の細かさは、メイン燃料用フィルタ131のそれよりも細かく設定されている。
なお、パイロット供給経路31bにおいてパイロット燃料噴射弁82に供給するための燃料油は、パイロット燃料タンク171、パイロット燃料供給ポンプ173、自動逆洗型フィルタ174、圧力保持弁164を含むループ状の経路、更にパイロット燃料用フィルタ141及び燃料高圧ポンプ56を含むループ状の経路を循環することになり、この経路は、メイン供給経路31aにおいてメイン燃料噴射弁79に供給するための燃料油の経路と実質的に独立している。従って、元となる液体燃料タンク33は共通としつつ、メイン燃料用フィルタ131及びパイロット燃料用フィルタ141のそれぞれの濾過性能を独立的に発揮させることができる。また、パイロット用の燃料油は、上記のループ状の経路を循環することに伴って、目の細かい自動逆洗型フィルタ174及びパイロット燃料用フィルタ141を何度も通過することになる。従って、パイロット用の燃料油について極めて良好な清浄度を実現することができる。
図11に示すように、パイロット燃料用フィルタ141は、エンジン21の前端面の前方に、若干右方に突出するように配置される。メイン燃料用フィルタ131は、パイロット燃料用フィルタ141の下方に配置される。詳細には、平面視においてメイン燃料用フィルタ131の一部とパイロット燃料用フィルタ141の一部とが重なるように配置されている。
図4及び図11に示すように、メイン燃料用フィルタ131の下方かつパイロット燃料用フィルタ141の下方には、これらのフィルタをメンテナンスする際にこぼれ落ちる液体燃料を受け止めるための受け部材150が配置される。詳細には、受け部材150は、平面視において、メイン燃料用フィルタ131の真下及びパイロット燃料用フィルタ141の真下のエリアをカバーするように配置されている。受け部材150は、上方を開放したトレー状の形状を有し、底部に孔が形成されている。この孔はドレン配管151の一端部に接続されている。当該ドレン配管151の他端部は、排油を貯留する図略のタンクに接続されている。
このように、エンジン21では、メイン燃料用フィルタ131と、パイロット燃料用フィルタ141とが個別に設けられている。そのため、拡散燃焼方式及び予混合燃焼方式のそれぞれでの使用頻度に応じて、メイン燃料用フィルタ131のエレメントを洗浄したり、パイロット燃料用フィルタ141のカートリッジを新しいものに交換したりすることができる。従って、全体としてみたときの(燃料)フィルタのメンテナンスの頻度を抑えることができる。
また、上述したように、パイロット燃料用フィルタ141には、メイン燃料用フィルタ131よりも濾過効率が高いペーパーフィルタが用いられている。パイロット燃料は、パイロット燃料供給用レール配管(コモンレール配管)47に供給されて、パイロット燃料噴射弁82に高圧の状態で供給されて燃焼室110に微量で噴射されるため、一般的に、径の小さい配管を通ることとなる。そのため、従来、パイロット燃料を供給するための配管では、メイン燃料を供給するための配管と比べて、とりわけ詰まりが生じ易いという問題があった。この点、本実施形態においては、パイロット燃料用フィルタ141のフィルタとして、メイン燃料用フィルタ131のフィルタよりも濾過効率が高いペーパーフィルタが用いられているため、パイロット燃料の詰まりを効果的に防止することができ、ガス燃料への着火を着実に実現することができる。
濾過効率の高いフィルタほど一般的に高価であるが、本実施形態では、濾過効率の高いパイロット燃料用フィルタ141が、メイン供給経路31aに対して実質的に独立した経路であるパイロット供給経路31bに設置されている。従って、メイン供給経路31aの燃料油がパイロット燃料用フィルタ141に流入することを防止できるので、高価なフィルタが目詰まりしにくくなり、メンテナンスにかかるコストを抑制することができる。
また、図4に示すように、メイン燃料用フィルタ131とパイロット燃料用フィルタ141は何れも、エンジン21のクランク軸24の軸線24cを含む仮想鉛直平面P1に対し、一側(具体的には、機側操作用制御装置71と同じ側である右側)に配置されている。このように、メイン燃料用フィルタ131及びパイロット燃料用フィルタ141は両方ともエンジン21の右側面側からアクセスし易い位置に配置されているため、フィルタのメンテナンスを行うことが容易である。とりわけ、エンジン21の右側面は、従来より機側操作用制御装置71が配置されている側であり、もともとオペレータがアクセスし易いように構成されている側であるということができる。
また、パイロット燃料用フィルタ141とメイン燃料用フィルタ131とは上下に配置され、これらのフィルタの下方の領域をカバーするように受け部材150が配置されている。よって、メンテナンス時にパイロット燃料用フィルタ141又はメイン燃料用フィルタ131からこぼれる燃料を、共通の受け部材150で受けることができ、少ない部品点数で排油を回収することができる。また、パイロット燃料用フィルタ141とメイン燃料用フィルタ131と受け部材150とを省スペースで合理的に配置することができる。
以上に説明したように、本実施形態のエンジン21は、気体燃料を空気と混合させてから燃焼室110に流入させる予混合燃焼方式と、液体燃料を燃焼室110内に噴射して燃焼する拡散燃焼方式と、に対応可能である。このエンジン21は、メイン燃料噴射弁79と、パイロット燃料噴射弁82と、メイン燃料供給用経路130と、パイロット燃料供給用経路140と、メイン燃料用フィルタ131と、パイロット燃料用フィルタ141と、を備える。メイン燃料噴射弁79は、拡散燃焼方式での燃焼時に燃焼室110に液体燃料を供給する。パイロット燃料噴射弁82は、予混合燃焼方式での燃焼時にガス燃料着火を目的として燃焼室110にパイロット燃料を供給する。メイン燃料供給用経路130は、メイン燃料噴射弁79に液体燃料を供給する。パイロット燃料供給用経路140は、パイロット燃料噴射弁82にパイロット燃料を供給する。メイン燃料用フィルタ131は、メイン燃料供給用経路130の中途部に設けられる。パイロット燃料用フィルタ141は、パイロット燃料供給用経路140の中途部に設けられる。
これにより、拡散燃焼方式及び予混合燃焼方式のそれぞれでの使用頻度に応じて、メイン燃料用フィルタ131のエレメントを洗浄したり、パイロット燃料用フィルタ141のカートリッジを新しいものに交換したりすることができ、これらのフィルタのメンテナンスの頻度を抑えることができる。
また、本実施形態のエンジン21は、パイロット燃料供給用経路140の中途部に設けられ、メイン燃料噴射弁79に供給される液体燃料よりも高圧でパイロット燃料噴射弁82にパイロット燃料を供給するためのパイロット燃料供給用レール配管47を更に備える。パイロット燃料用フィルタ141は、メイン燃料用フィルタ131よりも濾過効率が高い。
これにより、高圧で噴射されるパイロット燃料の詰まりを効果的に防止することができ、ガス燃料への着火を確実に実現することができる。
また、本実施形態のエンジン21においては、メイン燃料用フィルタ131及びパイロット燃料用フィルタ141は、エンジン21のクランク軸24を含む仮想鉛直平面P1に対して同じ側(本実施形態では、右側)に配置される。
これにより、エンジン21のクランク軸24に対して一側から、メイン燃料用フィルタ131とパイロット燃料用フィルタ141の両方のメンテナンスを行うことができ、メンテナンスが行い易くなる。
また、本実施形態のエンジン21においては、仮想鉛直平面P1に対してメイン燃料用フィルタ131及びパイロット燃料用フィルタ141と同じ側に、エンジン21の始動及び停止の操作を行うための機側操作用制御装置71が配置される。
これにより、一般的にオペレータにとってアクセスし易い側に配置される機側操作用制御装置71と同じ側に、メイン燃料用フィルタ131とパイロット燃料用フィルタ141とを配置することができ、メンテナンスが一層行い易くなる。
また、本実施形態のエンジン21においては、メイン燃料用フィルタ131はパイロット燃料用フィルタ141の下に配置される。パイロット燃料用フィルタ141の下方かつメイン燃料用フィルタ131の下方に、燃料を受けるための受け部材150が備えられる。
これにより、メイン燃料用フィルタ131とパイロット燃料用フィルタ141とを省スペースで配置することができ、またメンテナンス時にこれらのフィルタからこぼれる燃料を共通の受け部材150で受けることができるので、部品点数を削減することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、エンジン21は、船舶の推進兼発電機構の駆動源として用いられるものとしたが、これに限るものではなく、他の用途に用いられる駆動源であってもよい。
上記の実施形態では、メイン燃料用フィルタ131及びパイロット燃料用フィルタ141は、エンジン21のクランク軸24に対して右側に配置されるものとしたが、これに限るものではなく、例えばこれに代えて、エンジン21のクランク軸24に対して左側に集中的に配置するものとしてもよい。あるいは、エンジン21のクランク軸24に対して上側に集中的に配置するものとしてもよい。
上記の実施形態では、パイロット燃料用フィルタ141の下方にメイン燃料用フィルタ131が設けられるものとしたが、これらのフィルタの上下の位置関係は逆であってもよい。
メイン燃料供給用経路130内において液体燃料(燃料油)を圧送するための前記の燃料フィードポンプ165は、メイン燃料用フィルタ131の下流側に配置されていても、メイン燃料用フィルタ131の上流側に配置されていても、何れであってもよい。
上記の実施形態では、パイロット燃料用フィルタ141の下流側に燃料高圧ポンプ56が配置されるものとしたが、必ずしもこれに限るものではなく、パイロット燃料用フィルタ141の上流側に燃料高圧ポンプ56が配置されるものとしてもよい。
上記の実施形態では、受け部材150で受け止めた、メンテナンス時にメイン燃料用フィルタ131又はパイロット燃料用フィルタ141からこぼれ落ちてきた燃料油は、ドレン配管151を経由して前記の図略のタンクに貯留されて排油として取り扱われるものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、ドレン配管151の他端部を液体燃料タンク33に接続し、メンテナンス時に受け部材150にこぼれ落ちてきた燃料油を液体燃料タンク33に還流するものとしてもよい。