上記課題を解決するために本発明者らは、誘導電界を介した無線通信が可能な第1無線通信部と第2無線通信部とを、RFコイル装置側と、MRI装置の制御側とにそれぞれ配置する構成を捻出した。この場合、例えば第1無線通信部と第2無線通信部とが近接距離内で互いに固定され、デジタル化されたMR信号が誘導電界を介して第1無線通信部から第2無線通信部に無線送信される。
以下、上記構成を適用したMRI装置、RFコイル装置及びMRI方法の実施形態の例について、添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
<本実施形態の構成>
図1は、本実施形態におけるMRI装置20の全体構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置20は、ガントリ21と、寝台32と、寝台32上の天板34とを有する。また、MRI装置20は、例えば円筒状に形成されるガントリ21内において、静磁場磁石22と、シムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、送信用RFコイル28とを有する。ガントリ21は、図中に太線で示す部分に対応する。
天板34上には被検体Pが載置される。静磁場磁石22及びシムコイル24は、例えば円筒状であり、シムコイル24は、静磁場磁石22の内側において静磁場磁石22と軸を同じにして配置されている。
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場磁石22及びシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場磁石22及びシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、天板34は、その載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
MRI装置20は、その制御側において、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、天板駆動装置50と、システム制御部52と、システムバス54と、画像再構成部56と、画像データベース58と、画像処理部60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とを有する。
静磁場磁石22は、静磁場電源40から供給される電流により撮像空間に静磁場を形成させる。上記撮像空間とは、例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ21内の空間を意味する。
静磁場磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場磁石22を永久磁石で構成してもよい。
シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により静磁場を均一化する。
傾斜磁場コイル26は、例えば、静磁場磁石22の内側で筒状に形成されている。傾斜磁場コイル26は、傾斜磁場電源44から供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを撮像領域にそれぞれ形成する。即ち、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成し、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。
なお、上記撮像領域とは、例えば、1画像又は1セットの画像の生成に用いるMR信号の収集範囲であって、撮像空間の一部として設定される領域を意味する。「1セットの画像」とは、例えばマルチスライス撮像などのように、1のパルスシーケンス内で複数画像のMR信号が一括的に収集される場合の「複数画像」である。撮像領域は、例えば装置座標系で3次元的に規定される。
RF送信器46は、システム制御部52から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成し、これを送信用RFコイル28に送信する。送信用RFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて、このRFパルスを被検体Pに送信する。なお、送信用RFコイル28には、ガントリ21に内蔵されており、RFパルスの送信だけではなく受信も兼用する全身用コイルも含まれる(図示せず)。
天板34の内部には、受信用RFコイル29が配置されている。受信用RFコイル29は、被検体P内の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を検出し、検出されたMR信号をRF受信器48に送信する。
RFコイル装置100は、例えば、MR信号の受信用の装着型局所コイルである。ここではRFコイル装置100として、被検体Pの胸部に装着され、胸部からのMR信号を受信するものを図示しているが、これは一例にすぎない。MRI装置20では、RFコイル装置100以外にも、肩用RFコイル装置、腰用RFコイル装置など、各種の装着型RFコイル装置をMR信号の受信用に使用可能である。
これらの受信用RFコイル装置(100)は、ここでは一例としてMRI装置20の一部とするが、MRI装置20とは別個のものとして捉えてもよい。RFコイル装置100は、ケーブル102によってコイル側無線通信装置200に接続されている。
天板34の内部には、複数の制御側無線通信装置300が配置されている。コイル側無線通信装置200と、いずれか1つの制御側無線通信装置300との間で、前述したデジタル化されたMR信号の無線通信が行われる。
無線通信の動作については後述する。
なお、図1では煩雑となるので、制御側無線通信装置300を2つのみ図示しているが、制御側無線通信装置300は3つ以上でもよく、1つのみでもよい。但し、制御側無線通信装置300が離散して多数配置されている方が、1つのみの配置の場合よりも望ましい。その方が、コイル側無線通信装置200を制御側無線通信装置300に対して近接固定する際の選択の余地が多いからである。
換言すれば、固定箇所の選択の余地が多い方が、RFコイル装置100に最も近い制御側無線通信装置300に対して、コイル側無線通信装置200を近接固定できるからである。そのようにすれば、RFコイル装置100−コイル側無線通信装置200間のケーブル102を短くすることができる。なお、上記の「近接固定」とは、例えば、誘導電界を介した無線通信が可能となる程度に、互いに電磁的に結合された範囲(近さ)において、互いに物理的に動かないように固定する意味である。
本実施形態では一例として、MRI装置20内における送信用RFコイル28までのRFパルスの送信や、被検体Pから検出したMR信号の伝達は、コイル側無線通信装置200−制御側無線通信装置300間を除いて有線で行われる。
RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理を施すことで、デジタル化されたMR信号の複素データ(以下、MR信号の生データという)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データを画像再構成部56に入力する。
システム制御部52は、撮像動作及び撮像後の画像表示において、システムバス54等の配線を介してMRI装置20全体のシステム制御を行う。
そのために、システム制御部52は、傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48の駆動に必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加するパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
システム制御部52は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させることで、傾斜磁場Gx、Gy、Gz及びRFパルスを発生させる。
また、システム制御部52は、天板駆動装置50を制御することで天板34をZ軸方向に移動させ、ガントリ21内部の撮像空間に対して天板34を出し入れさせる。また、システム制御部52は、天板駆動装置50を制御することで天板34をY軸方向に昇降させることも可能である。システム制御部52は、このように天板34の位置を制御することで、天板34上の被検体Pの撮像部位を撮像空間内の磁場中心近辺に位置させる。
また、システム制御部52は、撮像条件設定部としても機能する。即ち、システム制御部52は、操作者が入力装置62に対して入力した被検体Pの情報や一部の撮像条件に基づいて、本スキャンの撮像条件を設定する。そのために、システム制御部52は、撮像条件の設定画面情報を表示装置64に表示させる。
入力装置62は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能を操作者に提供する。
上記撮像条件とは、例えば、どの種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRFパルス等を送信して、どのような条件で被検体からMR信号を収集するかを意味する。撮像条件の例としては、撮像空間内での位置的情報としての撮像領域、撮像部位、パラレルイメージングなどのパルスシーケンスの種類、使用するRFコイル装置の種類、スライス数、スライス間の間隔等が挙げられる。
上記撮像部位とは、例えば、頭部、胸部、腹部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するかを意味する。
上記「本スキャン」は、プロトン密度強調画像などの、目的とする診断画像の撮像のためのスキャンであって、位置決め画像用のMR信号収集のスキャンや、較正用スキャンを含まないものとする。スキャンとは、MR信号の収集動作を指し、画像再構成を含まないものとする。較正用スキャンとは例えば、本スキャンの撮像条件の内の未確定のものや、本スキャン後の画像再構成時に用いる条件やデータなどを決定するために、本スキャンとは別に行われるスキャンを指す。後述のプレスキャンは、較正用スキャンの内、本スキャン前に行われるものを指す。
画像再構成部56は、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数に基づいて、RF受信器48から入力されるMR信号の生データを例えばマトリクスデータに変換し、これをk空間データとして保存する。k空間とは、周波数空間(フーリエ空間)の意味である。画像再構成部56は、k空間データに2次元フーリエ変換などを含む画像再構成処理を施すことで、被検体Pの画像データを生成する。画像再構成部56は、生成した画像データを画像データベース58に保存する。
画像処理部60は、画像データベース58から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置66に記憶させる。
記憶装置66は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Pの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
表示装置64は、システム制御部52の制御に従って、本スキャンの撮像条件の設定用画面や、撮像により生成された画像データが示す画像などを表示する。
図2は、RFコイル装置100の構成、及び、制御側無線通信装置300の配置の一例を示す模式図である。図2に示すように、RFコイル装置100は、ケーブル102と、カバー部材104とを有する。カバー部材104は、可撓性を有する材料によって折り曲げ等の変形が可能に形成されている。このように変形可能な材料としては、例えば特開2007−229004号公報に記載の可撓性を有する回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)などを用いることができる。
カバー部材104内には、被検体PからのMR信号を検出するアンテナとして機能する複数のコイル素子(表面コイル)106が配置されている。ここでは一例として、6個のコイル素子106を図示しているが、コイル素子106の数や形状については、図示したものに限定されるものではない。
また、RFコイル装置100は、制御回路108と、RFコイル装置100の識別情報を記憶した記憶素子(図示せず)とをカバー部材104内に有する。
ここでは一例として、RFコイル装置100とコイル側無線通信装置200とを別々の構成要素として説明するが、これは解釈の一例にすぎない。コイル側無線通信装置200がRFコイル装置100の一部である構成としてもよい。コイル側無線通信装置200がRFコイル装置100の一部である場合、制御回路108及び上記識別情報を記憶した記憶素子は、コイル側無線通信装置200内に配置されてもよい。
ケーブル102は、一端側がMRI装置20のコイル側無線通信装置200に接続されている。RFコイル装置100の識別情報は、コイル側無線通信装置200−制御側無線通信装置300間での無線通信の後、MRI装置20内の配線を介してシステム制御部52に入力される。
また、RFコイル装置100のカバー部材104内には、コイル素子106で検出されたMR信号を増幅するプリアンプPMP(後述の図4参照)や、フィルタリングのための帯域通過フィルタ等が設けられていてもよい。
制御側無線通信装置300は、ここでは一例として、天板34における被検体Pの載置面側において、8つ配置されている。被検体Pは例えば、天板34の幅方向(図1のX軸方向)において中央に載置される。従って、この例では制御側無線通信装置300は、天板34の幅方向の両端側においてそれぞれ、天板34の長手方向(Z軸方向)に沿った列状に離散して4つずつ配置されている。
なお、制御側無線通信装置300の数や配置箇所は、図2の態様(天板34内部)に限定されるものではない。制御側無線通信装置300は、例えば天板34上やガントリ21上に露出して配置してもよいし、ガントリ21内部に配置してもよいし、寝台32に対して配置してもよい(後述の図7や図8を参照)。
図3は、コイル側無線通信装置200と制御側無線通信装置300とが近接固定される場合の一例を示す断面模式図である。図3に示すように、コイル側無線通信装置200は、筐体202と、固定部204と、アンテナ206a、206b、206c、206dとを有する。筐体202内の制御回路(図示せず)は、ケーブル102を介してRFコイル装置100に接続される。筐体202内にはA/D変換器(analog to digital converter)などの他の構成要素もあるが、その詳細については図4を用いて後述する。
アンテナ206a〜206dは、筐体202内において、その裏面(図3では下側の面)側に配置される。固定部204は、図中左下がりの斜線で示す3つの長方形領域であるが、3領域に分割する必要はなく、例えば一体的にしてもよい。固定部204は、筐体202の裏面上に固定されている。固定部204は、例えば、マジックテープ(登録商標)やVELCRO(登録商標)などの面ファスナーのオス側である。
制御側無線通信装置300は、筐体302と、固定部304と、アンテナ306a、306b、306c、306dとを有する。筐体302内には参照信号送信部などの他の構成要素もあるが、その詳細については図4を用いて後述する。アンテナ306a〜306dは、筐体302内において、その上面側に配置される。
アンテナ306a〜306dは、上記アンテナ206a〜206dとそれぞれ一対となるものである(計4対)。アンテナ206a〜206d、306a〜306dの内、少なくともアンテナ206a−306a間は、例えば後述の誘導電界結合型カプラである。
固定部304は、例えば、上記面ファスナーのメス側である。固定部304は、図中右下がりの斜線で示す3つの長方形領域であるが、固定部204と同様に3領域に分割する必要はなく、例えば一体的にしてもよい。固定部304は、筐体302の上面の上に固定されている。この例では、固定部304が天板34の表面に並行になるように、且つ、固定部304が天板34の表面で露出するように、制御側無線通信装置300は配置されている。
但し、上記は配置の一例にすぎない。例えば、固定部304のみを露出させるのではなく、制御側無線通信装置300が天板34上でほぼ全体的に露出するようにしてもよい。即ち、制御側無線通信装置300における固定部304とは反対側の面を天板34の載置面に対して固定してもよい。
固定部204、304により、コイル側無線通信装置200は、制御側無線通信装置300に対して離脱自在に固定される。なお、この例では、制御側無線通信装置300は、天板34内に固定的に配置されているので、動くことはない。また、固定部204、304のオス側とメス側とを逆にしてもよい。
また、固定部204、304によりコイル側無線通信装置200と制御側無線通信装置300とが互いに対向するように固定された場合に、アンテナ206a〜206dは、アンテナ306a〜306dにそれぞれ互いに対向する位置に配置される。
ここで、制御側無線通信装置300は、天板34の複数個所に離散して配置されている。従って、RFコイル装置100が天板34上の被検体Pのどの部分に装着されても、コイル側無線通信装置200を最も近くの制御側無線通信装置300に対して近接固定すればよいため、ケーブル102の長さを短くできる。
コイル側無線通信装置200と制御側無線通信装置300との間では、誘導電界を介した近接無線通信が実行される。誘導電界とは、磁束密度の時間変化によって生じる電界である。誘導電界を介した近接無線通信としては、例えば、誘導電界結合型カプラをアンテナとして用いるトランスファージェット(TransferJet(登録商標))などを用いればよい(例えば特開2010−147922号公報参照)。
より詳細には、誘導電界結合型カプラは、結合電極、共振スタブ、グランドなどを有する(図示せず)。誘導電界結合型カプラの送信側の共振スタブに電気信号が入力されると、結合電極に電荷が蓄積され、その電荷と同等の仮想電荷がグランドに発生する。それらの電荷によって微小電気双極子が構成され、この微小電気双極子が送信側アンテナとして機能する。即ち、微小電気双極子が発生する縦波の誘導電界により、受信側にデータが転送される。進行方向と平行に振動する縦波は、アンテナの向きに依存しないため、安定したデータ転送を実現できる。
但し、送信側と受信側とを離しすぎると、両者が電磁的に結合されないため、データ送信ができない。誘導電界結合型カプラにより形成される誘導電界は、離れると急激に減衰するからである。
図3では各構成要素を区別するために、アンテナ206a〜206dを互いに離間して配置すると共に、アンテナ306a〜306dを互いに離間して配置しているが、離間して配置しなくとも、4つの無線通信経路同士の干渉を避けることができる。即ち、アンテナ206a−306a間、アンテナ206b−306b間、アンテナ206c−306c間、アンテナ206d−306d間で、無線周波数を分離すればよい(周波数値を大きく離せばよい)。このとき、各無線通信経路では、被検体Pに送信されるRFパルスの中心周波数の整数分の一となる周波数を避けることが望ましい。
制御側無線通信装置300の設置箇所は、天板34の露出面から深すぎないことが望ましい。天板34における制御側無線通信装置300のアンテナ306a〜306dの位置が深すぎると、送信側及び受信側のアンテナ206a〜206d、306a〜306dが互いに電磁的に結合される程度に、両者の間隔D(図3参照)を近接させることができない。その場合、誘導電界を介した無線通信が困難となる。即ち、制御側無線通信装置300は、電磁的に結合される程度にコイル側無線通信装置200に対して近接固定することが可能な位置に配置することが望ましい。
誘導電界を介した近接無線通信が実行されるので、固定部304は、制御側無線通信装置300の筐体302に連結している必要はない。従って、制御側無線通信装置300の筐体302が天板34の表面に露出していない(天板34の内部に配置されている)場合、例えば、天板34の表面において、鉛直方向に制御側無線通信装置300の上方に当たる位置に固定部304を配置すればよい。これにより、天板34内部における制御側無線通信装置300の取り付け位置を判断可能となり、コイル側無線通信装置200を制御側無線通信装置300に最も近い位置に固定できるからである。
なお、コイル側無線通信装置200側の電気双極子自体(アンテナ)と、制御側無線通信装置300側の電気双極子自体(アンテナ)とを直接接触させない限り、コイル側無線通信装置200側のアンテナを覆う筐体と、制御側無線通信装置300側のアンテナを覆う筐体とを接触させても構わない。送信側のアンテナと、受信側のアンテナとの間に誘導電界が生じる間隔Dを確保できればよいからである。
また、撮像時間が例えば10分、20分、30分のように長い期間であれば、MR信号の送信期間も長くなる。その間、送信側と受信側とがずれないように固定することが望まれる。従って、本実施形態のように、送信側と受信側とを互いに動かないように固定する手段を有する構成が望ましい。撮像中の被検体Pの動きによって、被検体Pに装着されているRFコイル装置100も動き、それに伴って無線通信装置も動かされ、被検体Pから検出したMR信号を無線送信できないといったおそれは、固定によりなくなる。
なお、コイル側無線通信装置200及び制御側無線通信装置300を固定する手段については、上述の面ファスナーに限定されるものではなく、他の固定手段でもよい。例えば、後述の図9のようにコイル側無線通信装置200αが固定機構に差し込まれる構成でもよい。
図4は、RFコイル装置100のコイル素子106で検出されたMR信号の送信に関わる各部の機能を模式的に示すブロック図である。
図4に示すように、コイル側無線通信装置200は、複数のA/D変換器212と、P/S変換器(Parallel/Serial Converter)214と、データ送信部216と、参照信号受信部218と、電力受給部220と、ID送信部(Identification Information Transmitting Unit)222と、ゲート信号受信部224とをさらに有する。また、電力受給部220は、充電池BAと、コイルL2とを有する。
制御側無線通信装置300は、データ受信部316と、参照信号送信部318と、電力供給部320と、ID受信部(Identification Information Receiving Unit)322と、ゲート信号送信部324とをさらに有する。また、電力供給部320は、コイルL1を有する。
また、MRI装置20の制御系は、図1に示した構成要素に加えて、周波数アップコンバージョン部402、パルス波形生成部404、固定周波数生成部406、可変周波数生成部408をさらに有する。また、RF受信器48は、周波数ダウンコンバージョン部410と、信号処理部412とを有する。
本実施形態では一例として、コイル側無線通信装置200と制御側無線通信装置300との間には、充電用の誘導磁界が発生する領域と、4つの無線通信経路とが存在する。以下、これらについて順に説明する。
電力受給部220のコイルL2が電力供給部320のコイルL1と電磁的に結合される程度に近接した範囲内にある場合、即ち、コイル側無線通信装置200が制御側無線通信装置300に対して近接固定された場合を考える。この場合、電力供給部320がコイルL1に1次側電流を流すことで生じる誘導磁界により、コイルL2には起電力が発生する。この起電力によりコイルL2に2次側電流が流れ、充電池BAが充電される。
電力受給部220は、不図示の配線を介して、上記のように充電された電力をコイル側無線通信装置200内の各部に供給する。また、電力受給部220は、制御回路108などのRFコイル装置100の各部に対して、ケーブル102経由で上記電力を供給する。ここで、コイルL1に流す1次側電流の周波数については、4つの無線通信経路の通信周波数から分離することが望ましい。これは、アンテナ206a〜206d、306a〜306d間の4つの無線通信経路の信号と、上記1次側電流との干渉を避けるためである。
RFコイル装置100の電力確保の方法としては、電力受給部220や電力供給部320の代わりに、RFコイル装置100に充電池を内蔵し、RFコイル装置100の未使用期間中に充電池を充電してもよい。或いは、RFコイル装置100の未使用期間中に充電される充電池と、上記電力受給部220及び電力供給部320による電力供給とを併用してもよい。
次に、4つの無線通信経路について説明する。誘導電界を介した無線通信は、少なくともアンテナ206a−306a間で行われるが、アンテナ206b−306b間やアンテナ206d−306d間で行われてもよい。
第1に、アンテナ206c−306c間では、RFコイル装置100の識別情報がコイル側無線通信装置200から制御側無線通信装置300に無線送信される。
具体的には、例えば、上記識別情報がID送信部222に予め記憶されている。ID受信部322がID送信部222に近づくと、ID送信部222に記憶されていた識別情報は、デジタル信号として、アンテナ206cからアンテナ306cに自動的に無線送信される。この識別情報の無線通信は、例えばICタグ(Integrated Circuit Tag)などに代表されるRFID(Radio Frequency Identification)と同様の手段でよい。
ID受信部322は、アンテナ306cで受信したRFコイル装置100の識別情報をシステム制御部52に入力する。これにより、胸部用RFコイル装置、肩用RFコイル装置などの各種RFコイル装置のどれが現在接続されているか等の情報がシステム制御部52に認識される。
第2に、アンテナ306d−206d間では、制御側無線通信装置300のゲート信号送信部324からコイル側無線通信装置200のゲート信号受信部224に対して、ゲート信号が撮像中において継続的に無線送信される。より詳細には、RFコイル装置100内の各コイル素子106のオンオフを切り替えるスイッチとして、例えばPINダイオード(p-intrinsic-n Diode)を含むトラップ回路などが用いられる。ゲート信号は、上記スイッチの制御信号である。なお、ゲート信号送信部324からゲート信号受信部224にトリガ信号が送信され、ゲート信号受信部224内でトリガ信号に基づいてゲート信号が生成される構成でもよい。
RFパルスが被検体Pに送信される期間では、ゲート信号送信部324、アンテナ306d、206d、ゲート信号受信部224を介してRFコイル装置100に入力されるゲート信号は、通常、オンレベルにされる。ゲート信号がオンレベルの期間では、上記スイッチはオフ状態となり、各コイル素子106は、ループが途切れた状態となり、MR信号を検出できない。
RFパルスが被検体Pに送信される期間を除く期間では、オフレベルのゲート信号が無線送信される。ゲート信号がオフレベルの期間では、上記スイッチはオン状態となり、各コイル素子106は、MR信号を検出できる。このようなコイル素子106のオンオフの切り替えにより、被検体PへのMR信号の送信を行う送信用RFコイル28と、被検体PからMR信号を受信するコイル素子106との間のカップリングが防止される。
第3に、アンテナ306b−206b間では、制御側無線通信装置300の参照信号送信部318からコイル側無線通信装置200の参照信号受信部218に対して、デジタルの参照信号が撮像中において継続的に無線送信される。
具体的には、参照信号は、MR信号の送信側であるコイル側無線通信装置200と、固定周波数生成部406をベースとしたシステムの基準周波数とを同期させるための信号である。参照信号送信部318は、固定周波数生成部406から入力される基準クロック信号に対して変調、周波数変換、増幅、フィルタリング等の処理を施すことで、参照信号を生成する。
固定周波数生成部406は、一定周波数の基準クロック信号を生成するものである。固定周波数生成部406は、基準クロック信号を生成するために、例えば安定度の高い水晶発振器などを有する。固定周波数生成部406は、参照信号送信部318及び可変周波数生成部408に基準クロック信号を入力する。また、固定周波数生成部406は、画像再構成部56やパルス波形生成部404などのMRI装置20内でクロック同期が行われる箇所にも基準クロック信号を入力する。
可変周波数生成部408は、PLL(Phase-Locked Loop:位相同期回路)、DDS(Direct Digital Synthesizer:デジタル直接合成発振器)、ミキサなどを有する。可変周波数生成部408は、上記の基準クロック信号に基づいて動作する。可変周波数生成部408は、RFパルスの中心周波数としてシステム制御部52から入力される設定値に一致する可変周波数のローカル信号(クロック信号)を生成する。
そのために、システム制御部52は、プレスキャンの前にRFパルスの中心周波数の初期値を可変周波数生成部408に入力する。また、システム制御部52は、プレスキャン後にはRFパルスの中心周波数の補正値を可変周波数生成部408に入力する。
可変周波数生成部408は、周波数ダウンコンバージョン部410及び周波数アップコンバージョン部402に対して、上記の可変周波数のローカル信号を入力する。
また、コイル側無線通信装置200のA/D変換器212におけるサンプリングのタイミングを決めるトリガ信号(A/D変換開始信号)が、システム制御部52から参照信号送信部318に入力される。ここでのサンプリングとは、例えば、アナログ信号の強さを一定時間ごとに採取し、デジタル記録が可能な形にすることである。ここでは一例として、参照信号送信部318は、トリガ信号を参照信号に重畳することで、参照信号及びトリガ信号の双方を参照信号受信部218に無線送信する。
第4に、アンテナ206a−306a間では、コイル側無線通信装置200のデータ送信部216から制御側無線通信装置300のデータ受信部316に対して、デジタルのMR信号が誘導電界を介して無線送信される。
具体的には、RFコイル装置100内には、各コイル素子106にそれぞれ対応する複数のプリアンプPMPが各A/D変換器212の前段に配置される。RFコイル装置100のコイル素子106で検出されたMR信号は、各プリアンプPMPで増幅された後、アナログ信号としてコイル側無線通信装置200の各A/D変換器212に入力され、デジタル信号に変換される。このとき、各A/D変換器212には、参照信号受信部218から参照信号及びトリガ信号が入力される。従って、各A/D変換器212は、トリガ信号が送信されたタイミングに同期して、参照信号(サンプリングクロック信号)に基づいてサンプリング及び量子化を開始する。
各A/D変換器212は、デジタルのMR信号をP/S変換器214に入力する。複数のコイル素子106で検出され、それぞれA/D変換されたMR信号は複数である。このため、P/S変換器214は、これら複数のMR信号を無線送信用にパラレル信号からシリアル信号に変換し、当該シリアル信号をデータ送信部216に入力する。本実施形態の例では、MR信号の送信用のアンテナは、アンテナ206aの1つだけだからである。
但し、本実施形態はシリアル信号として無線送信する態様に限定されるものではない。例えばMR信号の送信用及び受信用のアンテナ数を増やす等により、パラレル信号のまま無線送信する構成にしてもよい。
データ送信部216は、入力されたシリアルのMR信号に対し、誤り訂正符号化、インタリーブ、変調、周波数変換、増幅、フィルタリングなどの処理を施すことで、(シリアル信号かつデジタル信号である)無線送信用のMR信号を生成する。データ送信部216は、無線送信用のMR信号をアンテナ206aからアンテナ306aに無線送信する。
データ受信部316は、アンテナ306aにより受信したMR信号に対して、増幅、周波数変換、復調、逆インタリーブ、誤り訂正復号等の処理を施す。これにより、データ受信部316は、無線送信用のMR信号から元のデジタルのMR信号を抽出し、抽出したMR信号をRF受信器48の周波数ダウンコンバージョン部410に入力する。
周波数ダウンコンバージョン部410は、可変周波数生成部408から入力されるローカル信号を、データ受信部316から入力されるMR信号に乗算し、さらにフィルタリングによって所望の信号帯域のみを通過させる。これにより、周波数ダウンコンバージョン部410は、MR信号を周波数変換(ダウンコンバージョン)し、周波数が低くされたMR信号を信号処理部412に入力する。
信号処理部412は、上記「周波数が低くされたMR信号」に所定の信号処理を施すことで、MR信号の生データを生成する。MR信号の生データは、画像再構成部56に入力され、画像再構成部56において、前述のようにk空間データに変換されて保存される。
なお、上記構成では、RF受信器48と、制御側無線通信装置300とを別々の構成要素として説明したが、これは一例にすぎない。例えば、RF受信器48が制御側無線通信装置300の一部である構成でもよい。
また、上記のゲート信号については、トリガ信号と同様に参照信号に重畳してもよい。この場合、アンテナ206d、306dなどの構成を省くことで無線通信経路数を1つ減らせるので、コイル側無線通信装置200及び制御側無線通信装置300の構成を簡素化できる。
以上が4つの無線通信経路に関する説明である。
図4においてシステム制御部52は、入力装置62を介して操作者が入力した撮像条件に基づいて、パルスシーケンスにおける繰り返し時間(RFパルス周期)、RFパルスの種別、RFパルスの中心周波数、及び、RFパルスの帯域幅などの撮像条件を決定する。システム制御部52は、このように決定した撮像条件をパルス波形生成部404に入力する。
パルス波形生成部404は、上記のようにシステム制御部52から入力される撮像条件に応じて、固定周波数生成部406から入力される基準クロック信号を用いてベースバンドのパルス波形信号を生成する。パルス波形生成部404は、ベースバンドのパルス波形信号を周波数アップコンバージョン部402に入力する。
周波数アップコンバージョン部402は、ベースバンドのパルス波形信号に対して、可変周波数生成部408から入力されるローカル信号を乗算し、さらにフィルタリングによって所望の信号帯域のみを通過させることで、周波数変換(アップコンバージョン)を実施する。周波数アップコンバージョン部402は、このようして周波数が上げられたベースバンドのパルス波形信号をRF送信器46に入力する。RF送信器46は、入力されたパルス波形信号に基づいて、RFパルスを生成する。
<本実施形態の動作>
図5は、本実施形態におけるMRI装置20による撮像動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、前述した各図を適宜参照しながら、図5に示すステップ番号に従って、MRI装置20の動作を説明する。
なお、ここでは一例として上記RFコイル装置100を用いる例を説明するが、肩用や頭部用などの他のRFコイル装置を用いる場合も、コイル無線通信装置200と同様の構成を設けることで本実施形態と同様の効果が得られる。
[ステップS1]天板34上の被検体PにRFコイル装置100が装着され、例えば最も近い位置の制御側無線通信装置300に対してコイル側無線通信装置200が離脱自在に固定される。即ち、コイル側無線通信装置200が例えば天板34上において、いずれか1つの制御側無線通信装置300に対して離脱自在に近接固定される(図2、図3参照)。
上記近接固定により、コイル側無線通信装置200が制御側無線通信装置300の通信可能範囲内に入る。コイル側無線通信装置200と制御側無線通信装置300とが互いに通信可能範囲内に入ると、両者間において上述した電力供給及び通信が開始される。
具体的には、ID送信部222は、ID受信部322から無線で供給される電力に基づいて動作することで、RFコイル装置100の識別情報をID受信部322に無線送信する。
システム制御部52は、この識別情報を取得し、RFコイル装置100が現在接続されていることを認識する。これにより、システム制御部52は、コイル側無線通信装置200と制御側無線通信装置300との間のさらなる通信を許可すると共に、電力供給部320から電力受給部220への電力供給を実行させる。このため、電力供給部320及び電力受給部220は、前述のように誘導磁界を介して、コイル側無線通信装置200の各部や、制御回路108などのRFコイル装置100の各部に対して、電力供給を開始する。
また、参照信号送信部318は、システム制御部52による通信許可に従って、アンテナ306b−206b間の例えば誘導電界を介した無線通信経路により、参照信号受信部218に対して、デジタルの参照信号の入力を開始する(参照信号は継続的に無線送信される)。なお、送信される参照信号には、サンプリングのタイミングを決めるためのトリガ信号も重畳(付加)される。
また、天板駆動装置50(図1参照)は、システム制御部52の制御に従って、ガントリ21内に天板34を移動させる。この後、ステップS2に進む。
[ステップS2]システム制御部52は、入力装置62を介してMRI装置20に対して入力された撮像条件や、ステップS1で取得した使用コイルの情報(この例ではRFコイル装置100を用いること)に基づいて、本スキャンの撮像条件の一部を設定する。この後、ステップS3に進む。
[ステップS3]システム制御部52は、MRI装置20の各部を制御することで、プレスキャンを実行させる。プレスキャンでは、例えば、RFパルスの中心周波数の補正値が算出され、RFコイル装置100内の各コイル素子106の感度分布マップが生成される。この後、ステップS4に進む。
[ステップS4]システム制御部52は、プレスキャンの実行結果に基づいて、本スキャンの残りの撮像条件を設定する。この後、ステップS5に進む。
[ステップS5]システム制御部52は、MRI装置20の各部を制御することで、本スキャンを実行させる。具体的には、静磁場電源40により励磁された静磁場磁石22によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源42からシムコイル24に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。なお、本スキャンの実行中において、アンテナ306d−206d間では、ゲート信号送信部324からゲート信号受信部224に前述のゲート信号が継続的に無線送信されている。
この後、入力装置62からシステム制御部52に撮像開始指示が入力されると、以下の<1>〜<4>の処理が順次繰り返されることで、被検体PからのMR信号が収集される。
<1>システム制御部52は、パルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させることで、被検体Pの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、送信用RFコイル28から被検体PにRFパルスを送信する。RFパルスが被検体Pに送信される期間のみ、ゲート信号は例えばオンレベルにされ、RFコイル装置100の各コイル素子106はオフ状態となり、前述のカップリングが防止される。
<2>RFパルスの送信後、ゲート信号は例えばオフレベルに切り替えられ、各コイル素子106は、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号を検出する。検出されたアナログのMR信号は、各コイル素子106から各プリアンプPMPに入力されて増幅された後、各A/D変換器212(図4参照)にそれぞれ入力される。
<3>各A/D変換器212は、トリガ信号が無線送信されたタイミングに同期して、参照信号に基づいてMR信号のサンプリング及び量子化を開始する。各A/D変換器212は、デジタルのMR信号をP/S変換器214にそれぞれ入力する。
P/S変換器214は、入力された複数のMR信号をシリアル信号に変換し、これをデータ送信部216に入力する。データ送信部216は、シリアルのMR信号に所定の処理を施すことで無線送信用のMR信号を生成し、これをアンテナ206aからアンテナ306aに向けて、誘導電界を介して無線送信する。
<4>データ受信部316は、アンテナ306aで受信した無線送信用のMR信号に所定の処理を施すことで元のデジタルのMR信号を抽出し、抽出したMR信号を周波数ダウンコンバージョン部410に入力する。周波数ダウンコンバージョン部410は、入力されるMR信号の周波数ダウンコンバージョンを施し、周波数が落とされたMR信号を信号処理部412に入力する。信号処理部412は、所定の信号処理を施すことで、MR信号の生データを生成する。MR信号の生データは、画像再構成部56に入力され、画像再構成部56においてk空間データに変換されて保存される。
以上の<1>〜<4>の処理が繰り返されることで、MR信号の収集が終了後、ステップS6に進む。
[ステップS6]画像再構成部56は、フーリエ変換等を含む画像再構成処理をk空間データに施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース58(図1参照)に保存する。この後、ステップS7に進む。
[ステップS7]画像処理部60は、画像データベース58から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。システム制御部52は、表示用画像データを表示装置64に転送し、表示用画像データが示す画像を表示装置64に表示させる。
撮像の終了後、コイル側無線通信装置200が制御側無線通信装置300から離脱され、両者が通信可能範囲外となると、両者間の通信及び電力供給は終了する。
なお、図5では一例として、ステップS1において参照信号の入力が開始されるが、これは一例にすぎない。例えば、ステップS3のプレスキャンの直前(即ち、ステップS2での撮像条件の設定後)に、参照信号の入力が開始されてもよい。
以上が本実施形態のMRI装置20の動作説明である。
<本実施形態の効果>
このように本実施形態では、無線通信時において送信側及び受信側が互いに近接固定され、誘導電界を介した無線通信が行われる。このため、従来のデジタル無線通信よりも無線の出力を低く抑えることができるから、種々の国の法規制に対応し易い。
送信側と受信側とが近接していることに加えて、無線の出力を低くできる。このため、送信電波が周りで反射して自身の送信データが劣化する、という問題も生じない。従って、RFコイル装置100側からMRI装置20の本体側(RF受信器48側)にデジタルのMR信号を良好に無線送信できる。
また、複数のコイル素子106でそれぞれ検出された複数のMR信号は、シリアル信号に変換されて、無線送信される。従って、MR信号の送信用のアンテナ(無線通信経路)を1組で済ませることができる上、MR信号同士の間では、干渉を防止するための周波数分離を行う必要はない。
これに対し、従来のデジタル無線通信では、送信側の遠方界に受信側が存在するので、MR信号の受信用の複数のコイル素子が同時に接続された場合にはクロストークなどの干渉が生じるため、周波数分離や時分割の通信を行っている。本実施形態のように近距離の無線通信では、時分割にする必要はない。
また、制御側無線通信装置300を複数の箇所に設け、いずれか1つの制御側無線通信装置300に対してコイル側無線通信装置200を固定すればよい構成である。従って、被検体Pのどの位置に装着されるRFコイル装置であっても、即ち、天板34上のどの位置にRFコイル装置100が存在しても、コイル側無線通信装置200と制御側無線通信装置300とを近接固定し、MR信号を良好に無線送信できる。
また、RFコイル装置100への電力供給やゲート信号の送信、トリガ信号の送信についても無線で行うので、MRI装置の構成を簡単化することができる。この結果、MRI装置の製造コストを低減しうる。
以上説明した実施形態によれば、MRIにおいて、デジタル化されたMR信号をRFコイル装置からMRI装置に対して良好に無線送信することができる。
<本実施形態の補足事項>
以下、上記実施形態の変形例や補足事項について説明する。
[1]上記実施形態では、RFコイル装置100とコイル側無線通信装置200とを別々の構成要素として説明したが、前述のように、コイル側無線通信装置200はRFコイル装置100の一部であってもよい。その場合について、第1変形例として説明する。
図6は、第1変形例として、上記のRFコイル装置100とコイル側無線通信装置200とを一体的に構成した場合、即ち、コイル側無線通信装置200がRFコイル装置100の一部である場合の一例を示す模式的斜視図である。図6のRFコイル装置100’の構成は、ケーブル102の代わりに、コイル側無線通信装置200を包含する羽根部材105をカバー部材104’の端側に一体形成した点を除き、図2のRFコイル装置100と同様である。
RFコイル装置100’のカバー部材104’内には、制御回路(図示せず)と、RFコイル装置100’の識別情報を記憶した記憶素子(図示せず)と、複数のコイル素子106がRFコイル装置100と同様に配置されている。なお、上記識別情報を記憶した記憶素子については、コイル側無線通信装置200内に配置してもよい。
羽根部材105は、図6ではL字状に折曲されているが、他の形状にも折り曲げ可能である。羽根部材105は、カバー部材104’と同様に、例えば前述のFPCなどによって折り曲げ等の変形が可能に形成されている。
図6では煩雑となるので示していないが、羽根部材105の裏面側には、コイル側無線通信装置200の固定部204(前述の図3参照)が露出している。この固定部204により、羽根部材105内のコイル側無線通信装置200が制御側無線通信装置300に対して前述同様に離脱自在に近接固定され、無線通信が可能となる。かかるRFコイル装置100’の構成では、コイル側無線通信装置200に接続されるケーブル102がない点では、構造を簡単化できる。
なお、制御側無線通信装置300に対して離脱自在に固定するための別の固定手段を羽根部材105自体に設けることで、コイル側無線通信装置200の一部を露出させずに、羽根部材105内にコイル側無線通信装置200を完全に埋め込んでもよい。この場合、(上記固定手段側の)羽根部材105の露出面と、コイル側無線通信装置200内部のアンテナとの間隔は、制御側無線通信装置300との間で誘導電界を介した無線通信ができる程度に狭くすることが望ましい。
[2]制御側無線通信装置300の配置について、第2変形例として図7及び図8を用いて説明する。
図7は、ガントリ21の入口側及び奥側に制御側無線通信装置300を配置する一例を示すブロック図である。制御側無線通信装置300は、図2のように天板34に設ける態様に限定されるものではなく、例えば、図7のようにガントリ21の任意の位置に配置してもよい。従って、制御側無線通信装置300は、例えば、撮像空間であるガントリ21の空洞部分を形成する内壁上に配置されていてもよいし、この内壁の内側に埋め込まれていてもよい。
図8は、図7のガントリ21の入口側における複数の制御側無線通信装置300の配置の詳細の一例を示す模式的斜視図である。図8に示すように、制御側無線通信装置300は、ガントリ21の入口側の面において環状に離散して配置されている。ここでは一例として、各制御側無線通信装置300は、その固定部304の表面がガントリ21の入口の表面に合致するように(固定部304の表面に露出するように)、ガントリ21の入口に埋め込まれているものとする。
なお、コイル側無線通信装置200を離脱自在に固定するための別の手段をガントリ21上に設けることで、制御側無線通信装置300の一部を露出させずに、ガントリ21の入口側の内部に制御側無線通信装置300を完全に埋め込んでもよい。この場合、ガントリ21の入口の表面と、制御側無線通信装置300内のアンテナとの間隔は、コイル側無線通信装置200との間で誘導電界を介した無線通信ができる程度に狭くすることが望ましい。
或いは、固定部304のみを露出させるのではなく、制御側無線通信装置300が全体的に露出するようにしてもよい。即ち、制御側無線通信装置300における固定部304とは反対側の面をガントリ21に対して固定してもよい。
このように、ガントリ21の入口側や奥側などに制御側無線通信装置300を多数配置することで、RFコイル装置100を被検体Pのどの位置に装着しても、コイル側無線通信装置200を制御側無線通信装置300に対して近接固定できる。これにより、取り扱いの自由度が向上する。
また、このようにガントリ21に制御側無線通信装置300を配置する場合、制御側無線通信装置300からRF受信器48への信号経路が可動部(寝台32と天板34との間)を経由しない。この場合、MRI装置20の本体側(RF受信器48側)と、RFコイル装置100との間では、従来技術で用いられているケーブル及びその折り畳み機構が不要になる。
より詳細には、従来技術では、天板上で被検体に装着されたRFコイル装置と、寝台の所定箇所に設置されたコネクタとを繋ぐケーブルが例えば寝台と天板との間に存在する。従って、天板がガントリ奥側にスライド移動する場合、当該ケーブルを伸びた状態にし、天板がガントリ奥側から寝台上に戻る場合、ケーブルを折畳んだ状態にしている。
図7や図8のようにガントリ21に対して制御側無線通信装置300を配置すれば、上記ケーブルや、その折り畳みに関わる機構を省略できる点で、MRI装置の構造を簡単化することができる。この結果、MRI装置の製造コストを低減できる。
[3]コイル側無線通信装置及び制御側無線通信装置の固定方法の別の例について、第3変形例として説明する。
図9は、第3変形例として、コイル側無線通信装置及び制御側無線通信装置の固定方法の別の一例を示す断面模式図である。前述の実施形態では、コイル側無線通信装置200及び制御側無線通信装置300が例えば面ファスナーの固定部204、304をそれぞれ有する構造である(図3参照)。
一方、図9の例では、コイル側無線通信装置200αが制御側無線通信装置300α上に離脱自在に差し込まれることで固定される。即ち、以下の例では、制御側無線通信装置300αが固定部としての固定板321を有し、コイル側無線通信装置200αが固定部としての突起221を有する。
以下、上記第3変形例について具体的に説明する。
図9の上段に示すように、コイル側無線通信装置200αは、固定部204の代わりに、その筐体202α上に例えば2つの突起221が形成されている点を除き、図3のコイル側無線通信装置200と同様の構成である。
突起221は、コイル側無線通信装置200αの差し込み及び取り外しを容易にするため、例えば横断面が半円状に形成されている。一般に、突起221の表面の起伏が激しい構造よりも、滑らかに面取りされている方がコイル側無線通信装置200αの差し込みが容易だからである。突起221は、例えば球面状であってもよいし、円筒をその軸方向にそって半分に分割した形状でもよい。
ここでは一例として、突起221を含む筐体202αは、変形しない非磁性体の材料で形成されているものとする。非磁性体の材料で形成することで、誘導電界を介した無線通信への影響を回避できる。
制御側無線通信装置300αは、固定部304の代わりに、例えば2つの固定板321を有する点を除き、図3の制御側無線通信装置300と同様の構成である。各固定板321は、制御側無線通信装置300αの筐体302の両側の側面に対して、例えば接着などにより固定されている。
2つの固定板321は、例えば略平板状であり、互いに対向するように配置されている。各固定板321は、図9の下段に示すように、コイル側無線通信装置200αを嵌合させる形状に形成されている。即ち、2つの固定板321において、互いに対向する面には、突起221に対応する位置に、突起221を嵌合させる形状の窪み部321aがそれぞれ面取りされている(図9の上段参照)。
また、各固定板321において、その先端側(筐体302とは反対側)は、コイル側無線通信装置200αを差し込み易くするために、斜めに面取りされている。固定板321については、図9の中段に示す程度の湾曲が可能な非磁性体の弾性材料で形成することが望ましい。かかる材料としては、例えば、プラスチックや合成樹脂などが挙げられる。非磁性体の材料で形成する理由は、前述同様である。
制御側無線通信装置300αは、天板34の載置用の面から、例えば図3と同様の間隔D(誘導電界を介した無線通信が可能な間隔)だけ奥に埋設されている。天板34の載置用の面には、固定板321を挿通させる溝が形成されており、この溝を介して、固定板321が天板34の載置用の面から突出している。
上記構成では、図9の上段の状態から、コイル側無線通信装置200αが制御側無線通信装置300α側に差し込まれる。このとき、図9の中段に示すように、各固定板321は一時的に互いに離れる方向に曲がる。これは、コイル側無線通信装置200αの両側の突起221間の最長幅が、両固定板321の最短幅よりも、大きいためである。
そして、コイル側無線通信装置200αの筺体202αの底面が天板34の載置面に接する位置において、両側の突起221がそれぞれ窪み部321aに嵌合され、各固定板321は、形状復元力により元の形状(差し込み前である図9の上段の形状)に戻る。これにより、コイル側無線通信装置200αは、天板34上で制御側無線通信装置300αに対して離脱自在に固定される。
このようにコイル側無線通信装置200αと制御側無線通信装置300αとが互いに近接固定された状態において、アンテナ206a〜206dは、アンテナ306a〜306dにそれぞれ対向する位置に配置される。
撮像が終了した場合には、コイル側無線通信装置200αを天板34から離すように固定板321から抜き外せばよい。
[4]上記実施形態では、コイル側無線通信装置200内にA/D変換器212、P/S変換器214及び充電池BAが配置される例を述べた(図4参照)。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
例えば、充電池BAがRFコイル装置100のカバー部材104内に配置されていてもよい。或いは、A/D変換器212がRFコイル装置100のカバー部材104内に配置されていてもよい。或いは、A/D変換器212及びP/S変換器214がRFコイル装置100のカバー部材104内に配置されていてもよい。
図10は、第4変形例として、コイル側無線通信装置側と、MR信号の受信用のコイル素子側とにおける、構成要素の配置の別の一例を示すブロック図である。
図10の例では、コイル側無線通信装置200βは、データ送信部216と、参照信号受信部218と、コイルL2と、ID送信部222と、ゲート信号受信部224と、アンテナ206a〜206dとを有する。
一方、RFコイル装置100βのカバー部材104β内には、制御回路108βと、複数のコイル素子106と、複数のコイル素子106にそれぞれ対応する複数のプリアンプPMP及び複数のA/D変換器212と、P/S変換器214と、充電池BAとが配置される。
図2及び図3で説明したRFコイル装置100及びコイル側無線通信装置200との違いは、以下の通りである。
具体的には、図10の構成では、複数のコイル素子106でそれぞれ検出された複数のMR信号をシリアル信号に変換に変換するところまでは、プリアンプPMP、A/D変換器212及びP/S変換器214により、カバー部材104β内で実行される。
このシリアル信号は、ケーブルを介して、カバー部材104β側のP/S変換器214から、コイル側無線通信装置200β側のデータ送信部216に入力される。ここでのケーブルは、図3のケーブル102に相当し、カバー部材104β及びコイル側無線通信装置200βを電気的に接続するものであるが、図10では煩雑となるので省略している。
このケーブル内には、少なくとも、P/S変換器214−データ送信部216間の信号配線と、コイルL2から充電池BAへの充電電流の供給配線と、ゲート信号受信部224−制御回路108β間の信号配線とが収納される。
また、図10の構成では、図4の電力受給部220に相当する構成は、(図10の電力受給部220βとして)コイル側無線通信装置200β内のコイルL2と、カバー部材104β内の充電池BAとに分離して配置される。従って、制御側無線通信装置300のコイルL1に流れる励磁電流によって、誘導磁界を介してコイル側無線通信装置200β内のコイルL2に生じる誘導電流は、充電電流として、不図示のケーブル内の配線を介してカバー部材104β内の充電池BAを充電する。
カバー部材104βのその他の構成は、図2で説明したカバー部材104と同様である。コイル側無線通信装置200βのその他の構成も、図5までで説明した実施形態と同様である。コイル側無線通信装置200β−制御側無線通信装置300間の固定手段については、例えば図9で述べた固定機構でもよいし、図3の固定機構でもよい。磁気共鳴イメージングの実行時における信号処理の流れも、図4、図5で説明したものと同様である。
また、図10では一例として、コイル側無線通信装置200βと、カバー部材104βと、これらを接続する不図示のケーブルとを合わせてRFコイル装置100βとして表記している。前述のように、これは解釈の一例にすぎない。コイル側無線通信装置200βは、RFコイル装置100βの一部ではなく、RFコイル装置100βから独立した構成として捉えてもよい。
図10のように、A/D変換器212、P/S変換器214及び充電池BAがRFコイル装置100のカバー部材104側に配置される構成では、コイル側無線通信装置200βを軽量化できる。この場合、制御側無線通信装置300に対する固定時などにおいて、コイル側無線通信装置200βがさらに取り扱い易くなる。
ただし、図10は実施の一例であり、充電池BAやA/D変換器212、P/S変換器214は、図4のようにコイル側無線通信装置(200)に含まれていてもよい。
[5]図2の実施形態では、制御側無線通信装置300の位置が固定的であり、コイル側無線通信装置200の位置がRFコイル装置100のカバー部材104に対してケーブル102により可変である例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
第5変形例として、図11に示すように、コイル側無線通信装置200γがRFコイル装置100γのカバー部材104に固定され、制御側無線通信装置300γの位置が可変であってもよい。
図11は、第5変形例に係るRFコイル装置100γ及び天板34’の模式的斜視図である。図11において、RFコイル装置100γは、以下の2点を除いて図2のRFコイル装置100と同様の構成である。
第1に、RFコイル装置100γのカバー部材104γ内には、コイル側無線通信装置200γが埋設されている。第2に、RFコイル装置側のケーブル102が省略される代わりに、制御側無線通信装置300γを離脱自在に固定する固定板321が(コイル側無線通信装置200γの一部として)カバー部材104γに固定されている。なお、コイル素子106や制御回路108γの構成はRFコイル装置100と同様である。
また、天板34’上には、図2の制御側無線通信装置300γの配置箇所に対応する位置からそれぞれケーブル600が出ており、各ケーブル600の先端には制御側無線通信装置300γが接続されている。
この構成では、RFコイル装置100γが被検体Pに装着され、例えばその装着位置に最も近い各制御側無線通信装置300γが、ケーブル600によってRFコイル装置100γのカバー部材104γ上で当接され、固定板321により固定される。
従って、各ケーブル600の長さは、各制御側無線通信装置300γの位置をRFコイル装置100γに近づけやすくするために、例えば30cm以上にすることができる。
なお、図11では、コイル側無線通信装置200γと、コイル素子106との干渉を極力避けるために、コイル側無線通信装置200γの設置箇所を避けてコイル素子106を配置しているが、これは一例にすぎない。
例えば、コイル側無線通信装置200γを細長く形成することで、コイル側無線通信装置200γと、周辺のコイル素子106との干渉を小さくできる。そのように両者の干渉を小さく構成すれば、例えば、カバー部材104γの厚さ方向に、下側にコイル素子106、その上側にコイル側無線通信装置200γを配置することも可能である。同様に、コイル素子106と、コイル素子106との間にコイル側無線通信装置200γを配置することもできる。
図12は、図11の第5変形例における、コイル側無線通信装置200γ及び制御側無線通信装置300γの固定方法の一例を示す断面模式図である。
2つの固定板321は、図9と同じ構成であり、違いは配置のみである。即ち、2つの固定板321は、RFコイル装置100γのカバー部材104γ内に一端側が埋め込まれて固定されている。
図12の上段に示すように、制御側無線通信装置300γは、その筐体302γ上に例えば2つの突起380が形成されている点を除き、図3の制御側無線通信装置300と同様の構成である。
突起380は、図9の突起221と同じ形状及びサイズであり、変形しない非磁性体の材料で形成されている。
2つの固定板321は、図12の下段に示すように、制御側無線通信装置300γを嵌合させるように配置される。即ち、2つの固定板321において、互いに対向する面には、突起380に対応する位置に、突起380を嵌合させる形状の窪み部321aがそれぞれ面取りされている(図12の上段参照)。
上記構成では、図12の上段の状態から、制御側無線通信装置300γが2つの固定板321間に差し込まれる。このとき、図12の中段に示すように、各固定板321は一時的に互いに離れる方向に曲がる(図9の場合と同様)。そして、制御側無線通信装置300γの両側の突起380がそれぞれ窪み部321aに嵌合され、各固定板321は、形状復元力により元の形状(図12の上段の形状)に戻る。これにより、制御側無線通信装置300γは、カバー部材104γ上でコイル側無線通信装置200γに対して離脱自在に固定される。
このようにコイル側無線通信装置200γと制御側無線通信装置300γとが互いに近接固定された状態において、コイル側無線通信装置200γと制御側無線通信装置300γとの間隔は、前述の誘導電界を介した無線通信が可能な間隔Dとなる。また、この状態では、アンテナ206a〜206dは、アンテナ306a〜306dにそれぞれ対向する位置に配置される。
[6]上記第5変形例の補足として、図2のようにRFコイル装置100と、コイル側無線通信装置200との間にケーブル102があり、且つ、図11のように天板34’と、制御側無線通信装置300との間にケーブル600がある構成でもよい。この構成では、コイル側無線通信装置200と、制御側無線通信装置300とは、例えば前述の面ファスナーなどの固定機構により離脱自在に互いに固定される。
[7]RFコイル装置100、100’、100β、100γ(図2、6、10、11参照)は、プレスキャン、本スキャンなどのスキャンの期間を除いて、A/D変換器212への電力供給を遮断(停止)してもよい。
具体的には例えば、継続送信されるゲート信号において、特殊波形が表れた場合に、RFコイル装置100、100’、100β、100γの制御回路(108、108β、108γ)は、スキャンの開始のタイミングを認識する。ここでの特殊波形とは、例えば、オンレベルのゲート信号とオフレベルのゲート信号とが短い時間間隔で6回や7回交互に繰り返されるものである。
同様に、継続送信されるゲート信号において、特殊波形が表れた場合に、制御回路(108、108β、108γ)は、スキャンの終了のタイミングを認識する。従って、RFコイル装置(100、100’、100β、100γ)の制御回路(108、108β、108γ)は、ゲート信号に基づいて、スキャン期間を判定し、スキャン期間のみ電力受給部220からの電力をA/D変換器212に供給させる。
上記スキャン期間は、図5の例では、ステップS3のプレスキャン、S5の本スキャンの実行期間である。この構成では、RFコイル装置の消費電力を低減できる。
[8]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
コイル側無線通信装置200、200α、200β、200γは、請求項記載の第1無線通信部の一例である。
制御側無線通信装置300、300α、300γは、請求項記載の第2無線通信部の一例である。
A/D変換器212は、請求項記載のA/D変換部の一例である。
ケーブル102及び羽根部材105は、請求項記載の信号伝導部材の一例である。
コイル素子106は、請求項記載の検出部の一例である。
図11及び図12のRFコイル装置100γの固定板321は、請求項記載の固定機構の一例である。
[9]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。