JP2018007671A - 真核細胞の形質導入に有用なウイルスベースのベクター組成物 - Google Patents

真核細胞の形質導入に有用なウイルスベースのベクター組成物 Download PDF

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    • C12N2740/15051Methods of production or purification of viral material

Abstract

【課題】真核細胞の形質導入に有用な高力価と高純度のウイルスベクター組成物の提供。【解決手段】細胞無血清培地に存在する粗RNAベースのウイルスベクター組成物に比べ、初期のタンパク質混入物の2%未満、及び初期のDNA混入物の70から90%未満を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物であって、前記組成物は細胞の生存に影響することなく真核細胞の形質導入を可能にする精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物であって、粗RNAベースのウイルスベクターは物理的粒子/形質導入単位(PP/TU)が100:1から900:1の間で構成されるものであり、30%未満のLDH活性を有する精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2011年7月27日に出願された米国仮特許出願第61/512、289号の優先権を主張し、その全体を参照することにより本明細書に援用する。
本発明は、高力価と高純度のウイルスベクター組成物、並びに上記組成物の製造方法および真核細胞を形質導入するための上記ウイルスベクター組成物の使用を提供する。本発明の方法は、無血清培地中でウイルスベクター粒子を製造し、それが上記ウイルスベクターの生産量増加をもたらすといった複数の特徴を包含する。本発明のウイルスベクター組成物は、高力価と高純度であるため、典型的には標的細胞の形質導入後に起こる有害な表現型の変化、例えば、形質導入した細胞亜群の消滅、並びに形質導入した細胞の増殖、生存、及び分化への影響等、を最小限に抑える。
ウイルスベースのベクターを使用することは、創薬におけるインビトロでの用途、インビボ及びエクスビボでの臨床分析、並びに遺伝子治療用のいずれにおいても重要な導入方法となっている。ウイルスベクターは2つの主なカテゴリーに分類される:受け手のゲノムにウイルスベクター自体を挿入する組み込み型ベクター;及び、典型的には染色体外に遺伝因子を形成する非組み込み型ベクター;である。ガンマレトロウイルスベクター(RV)及びレンチウイルスベクター(LV)等の組み込み型ベクターは安定して受け継がれる。アデノウイルスベクター(ADV)及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター等の非組み込み型ベクターは急速に分裂する細胞からすぐに消滅する。ある特定のベクターを選択するのに影響する要因としては、そのパッケージング能、宿主の範囲、遺伝子発現プロフィール、形質導入効率、及び免疫反応誘発能等が挙げられる。免疫反応誘発能は、投与または形質導入を繰り返し行うことが必要な場合に特に問題となる。これらのパラメーターのうちのいくつかは調整又は制御することができる。一つパラメーターとして、高濃度でありながら高純度のベクターを使用することがあり、これにより細胞形質導入の効率を上げ、ベクター自体以外の他の含有物に起因する特異的な細胞反応を防止する。
ウイルスベースのベクターを生産し濃縮するために用いられる現在の方法は、ベクターの完全性およびバッチの品質を保つのには最適ではない。実際に、小規模の実験用バッチは、通常、超遠心または即使用可の中央ユニットによる遠心分離に基づく簡便な方法によって濃縮される。このようなバッチを本明細書ではA−血清(A−S)およびB−血清(B−S)バッチと呼び、このようなバッチを生産するために用いられるプロセスを図4Aに示す。また、これらの方法は、産生細胞から分泌され血清を含有する培養培地から生じる細胞堆積物、膜断片、及びタンパク質をも濃縮し、製造管理および品質管理に関する基準(good manufacturing practice、GMP)下でのベクターバッチの製造には適切でない。これらのバッチの主な短所の一つは、感染多重度(M.O.I.)が低度又は中程度の培地を使用する場合、ニューロン、マクロファージ、又は造血幹細胞といったいくつかの非増殖性細胞を再現可能な方法で高い形質導入効率を許容できないことである。より高いM.O.I.の使用が、高い形質導入レベルに達成するための手掛かりであるにも関わらず、通常、科学者らは、形質導入効率を向上させるためにベクターの偽型化または形質導入プロトコルの最適化に焦点を当ててきた(Janssensら、2003年)。しかしながら、このようなB−Sバッチは細胞毒性を誘発するので(Selvaggi.,1997;Reiser,2000;Baekelandtら、2003年)、この種のB−S生成物を用いた場合の形質導入効率の結果は、常に形質導入のレベルおよび結果として生ずる標的細胞に対する毒性との間のバランスである。さらに、従来技術により濃縮された公開レトロウイルス又はレンチウイルスベクターの他の短所としては、形質導入した幹細胞、特に造血幹細胞、が形質導入後に分化経路を下流へ進むことができないことである。
Mertenら(2010)は、いくつかの膜ベース及びクロマトグラフィーによる工程に基づく下流プロセスを用いたが、10%の血清を含有する培地を使用する生産プロセスを有するものであって、これがMertenらのプロセスと本発明により開発されたプロセスとの間の重大な違いである。本発明は、高い純度レベルを示すレトロウイルス又はレンチウイルスベクターを用いた組成物および細胞の形質導入方法を提供する。このような組成物および方法は、幹細胞が特殊化した細胞へと分化するのに有害な影響を及ぼさない。
この生産工程では、出発物質が続けて濃縮および精製工程を施されることになるので、最終的に濃縮された生成物に大きく影響する。生産は、血清の有無、酪酸ナトリウム誘導の有無にかかわらず実施してよく、上清は、例えば、形質移入48時間後に1回採取、または形質移入64時間および88時間後に2回採取することができる(Cooperら、2011年)。このような採取回数の主な不都合は、ベクター粒子の半減期を考慮に入れていないことである。これらの条件は、初期の混入物(DNA及び/又はタンパク質混入物)の含有量及び粗上清の毒性含有レベルに大きく影響する。これらの要素は、ある特定の生産、精製、および濃縮のプロセスに応じて各バッチ毎に、すなわち、本発明のバッチA、B、CおよびD、の特性を解析するために測定しなければならない。Cooperらは、本発明とは対照的に、初期の混入物量を測定することにより初期の生成物および精製された最終生成物のいずれの特性も解析してはおらず、そして、濃縮/精製プロセス後のそれらの除去率を測定することもしなかった(表1参照)。
本発明は、細胞無血清培地に存在する粗RNAベースのウイルスベクター組成物に比べ、初期のタンパク質混入物の2%未満、及び初期のDNA混入物の70から90%未満を含む最終精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物であって、上記組成物は有意に細胞の生存に影響することなく真核細胞の形質導入を可能にする最終精製したRNAベースのウイルスベクター組成物を提供する。
本発明は、細胞無血清培地に存在する粗RNAベースのウイルスベクター組成物に比べ、初期のタンパク質混入物の2%未満、及び初期のDNA混入物の30%未満を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物であって、上記組成物は細胞の生存に影響することなく真核細胞の形質導入を可能にする精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物を提供する。
出願人らは、本明細書において、これらのパラメーター(血清、酪酸ナトリウム誘導、およびベクターの採取回数)の各々が初期の粗ベクター上清組成物を改質し、それが標的細胞に対する毒性レベルの違いを引き起こすことを示す。
本発明は、高力価と高純度のウイルスベクター組成物(ウイルスベクター粒子とも呼ぶ)および上記組成物の製造方法を提供する。本発明のウイルスベクター組成物は、高力価と高純度であるため、典型的には標的細胞の形質導入後に起こる有害な標的細胞の表現型の変化を最小限に抑える。
本発明は、無血清培地に存在する粗RNAベースのウイルスベクター組成物に比べ、初期のタンパク質混入物の2%未満、及びDNA混入物の70から98.8%未満を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物、粗バッチAを提供する。上記組成物は細胞の生存に影響することなく真核細胞の形質導入を可能にする、又は上記組成物は細胞の生存に影響することなく真核細胞を形質導入する。
本発明の一の実施態様では、DNA混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ60から99%の間にあり、タンパク質混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ55から100%の間にある、精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物が提供される。つまり、本発明は、粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ40%未満のDNA混入物および粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ45%未満のタンパク質混入物を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物を提供する。
本発明の別の実施態様では、本発明は、DNA混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ60から75%の間にあり、タンパク質混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ55から65%の間にある、精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物(バッチB)を提供する。つまり、本発明は、粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ25%から40%のDNA混入物および粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ35%から45%のタンパク質混入物を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物を提供する。この精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物は、不死化細胞株をそれらの生存に影響することなく形質導入するのにも用いることができる。
本発明の別の実施態様では、本発明は、DNA混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ70から90%の間にあり、タンパク質混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ98%までにある、精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物(バッチC)を提供する。つまり、本発明は、粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ10%から30%のDNA混入物および粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ2%未満のタンパク質混入物を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物を提供する。この精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物は、真核細胞、初代細胞、及び幹細胞をそれらの生存に影響することなく形質導入するのに用いることができる。
本発明の別の実施態様では、本発明は、DNA混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ98.8%までであり、タンパク質混入物の除去率が粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ99.9%までである、精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物(バッチD)を提供する。つまり、本発明は、粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ2%未満、好ましくは1.2%の混入物および粗RNAベースのウイルスベクター組成物に存在する初期の混入物に比べ1%未満、好ましくは0.1%のタンパク質混入物を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物を提供する。この精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物はインビボ注入にも用いることができる。
本発明の特定の実施態様では、粗RNAベースのウイルスベクターは、物理的粒子/形質導入単位(PP/TU)が100:1から900:1の間、好ましくは200:1から900:1の間で構成されるものである。本発明のさらに別の実施態様では、濃縮されたRNAベースのウイルスベクターは、超遠心又は即使用可の中央ユニットを用いた遠心分離に基づく簡便な方法により濃縮されたものであり、物理的粒子/形質導入単位(PP/TU)が100:1から600:1の間、好ましくは200:1から600:1の間で構成されるものである。さらに、RNAベースのベクターは、物理的粒子/形質導入単位(PP/TU)が100:1から400:1の間で構成される、濃縮および精製されたRNAベースのベクターである。上記RNAベースのベクターは高力価と高純度であるので、細胞の増殖、生存、及び/又は細胞の能力、例えば分化する幹細胞の能力、にほとんど又は全く影響を及ぼさない。本明細書に記載の方法は、粗バッチAからバッチCおよびDへとPP/TU比が進行し、そして(PP/TU比を)減少または安定させることを確保するための手段を提供する。この比率の上昇は、おそらく濃縮プロセスがベクター粒子にダメージを与えていることを示している。
本発明は、更に、ある寄託された細菌宿主および受託番号CNCM I−4487(pEnv)、CNCM I−4488(pHIV−Gag/Pol)、又はCNCM I−4489(pLV、Efl、およびGFP)でCNCMコレクションに寄託された細菌宿主に含まれるウイルスDNA構築物を提供するが、これらに限定されない。本発明は、また、本発明にかかるRNAベースのベクターを製造するためにベクターに挿入されたウイルス由来の精製された塩基配列であって、受託番号CNCM I−4487、CNCM I−4488、又はCNCM I−4489でCNCMコレクションに寄託された三種の組み換え宿主のうちのいずれかに含まれる挿入物である塩基配列も提供する。
本発明によって製造されたこのようなRNAベースのウイルスベクターは、対象の核酸(導入遺伝子)を真核生物の標的細胞に導入して上記細胞を形質導入することができる。本発明は、また、細胞が、それらの生存が影響されることなく、本発明にかかる精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物によって形質導入されている、改変された真核細胞の調製方法も提供する。このような形質導入方法は、例えば、創薬におけるインビトロでの用途、インビボ及びエクスビボでの臨床分析、並びに遺伝子治療用にも用いてもよい。本発明の組成物は特に、高いM.O.I.(感染多重度)を必要とする細胞の形質導入に適している。
本発明の方法は、無血清培地中でRNAベースのウイルスベクター粒子を製造し、それが上記ウイルスベクターの生産量増加をもたらすといった複数の特徴を包含する。本発明の一の実施態様では、本発明の方法は、
(i)ウイルスベクターの基となるRNAウイルスゲノムの欠損を補完するように産生細胞を形質転換して改変し、該産生細胞をRNAベースのウイルスベクター粒子が産生できるような適切な条件下で培養し、ここで、該形質転換後の上記培養を無血清培地中で行い;及び
(ii)上記RNAベースのウイルスベクター粒子を含む上清を回収することを含む。
好ましくは、本発明にかかる製造方法は酪酸ナトリウムによる誘導工程を含まない。
本発明の一の実施態様では、このRNAベースのウイルスベクター粒子を含む上清は、形質転換後、特定の時間間隔をあけて回収してもよく、この特定の時間間隔は37℃でのベクター粒子の半減期により異なるが、典型的には、産生細胞の種類や使用される培養培地により約8〜10時間である(Le Douxら、1999年)。好ましくは、上記上清の回収は、3から6、例えば4、の工程を含む複数の工程を特定の時間間隔をあけて行う。この時間間隔は37℃でのベクター粒子の半減期と同等ないし約2倍であると有利である。この工程は、生産工程の間にベクター粒子が細胞培地中で分解され、その結果上清中でのベクター粒子の無駄に放出されるのを防ぐ。
本発明の方法は、更に任意で、上清の透析ろ過工程を含む接線限外ろ過を行う工程を含んでもよい。本発明のさらに別の実施態様では、本発明の方法は、この接線限外ろ過・透析ろ過工程に続けて、該ウイルスベクター粒子をより濃縮し精製するために実施するイオン交換クロマトグラフィーを行う工程を更に含んでもよい。
本発明の特定の実施態様では、該限外ろ過はポリスルホン製中空糸カートリッジを使用して操作される。上清の回収後で、もし実施するならば限外ろ過工程の前に、遠心分離による清澄化を行ってもよく、そうすると有利である。この遠心分離後に得られる残渣はさらに、混入している核酸を分解可能であるヌクレアーゼ等の酵素で処理してもよい。このような酵素としては、ベンゾナーゼ又はディーエヌアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。生成物の回収に続けて、ウイルスベクター粒子は、例えば、DMEMの添加および塩勾配の形成による分離によるイオン交換カラムを用いて更に精製することができる。
本発明の方法は、DNA混入物の除去率が初期の無血清培養培地に存在するDNA混入物の70から99%の間にあり、細胞性タンパク質混入物の除去率が初期の無血清培養培地に含まれる細胞性タンパク質の50から99.9%の間にあり、ここで、PP/TU比が100から900の間にある、精製されたRNAベースのウイルスベクター粒子の調製物を提供する。PP/TU比が低いほどバッチの品質は高くなる。これは、有効粒子に対し過剰量の物理的粒子があると、形質導入の効率や形質導入した細胞の表現型に悪影響があるということを意味する。本明細書中の材料と方法に記載した方法での計算で1000を超えるPP/TU比が許容上限であると考えられる。
本発明の方法は、更に、DNA混入物の除去率が初期の無血清培養培地に存在するDNA混入物の71%までにあり、細胞性タンパク質混入物の除去率が初期の無血清培養培地に存在する細胞性タンパク質の56%までにあり、ここで、PP/TU比が100から600の間にある、精製されたRNAベースのウイルスベクター粒子の調製物を提供する。
本発明は、細胞の生存、それらのインビトロで増殖する能力、又はそれらの分化経路を下流へ進んでいく能力(例えば、幹細胞を形質導入する場合)に影響することなく標的真核細胞の形質導入を可能にする精製されたRNAベースのウイルスベクター粒子が製造されるという結果をもたらす。このような精製されたRNAベースのウイルスベクター粒子は細胞無血清系で製造され、そしてこれらは標的真核細胞にインビトロで形質導入するのに使用でき、このような細胞は宿主にインビボで注入するのに適している。このような真核細胞として、例えば、不死化細胞、初代細胞、幹細胞、又は人工多能性幹細胞等が挙げられる。
従って、本発明は、真核細胞を本発明にかかるRNAベースのウイルスベクター組成物に接触させる工程を含むことを特徴とする、遺伝子改変された真核細胞の調製方法を提供する。この方法は、更に、上記遺伝子改変された真核細胞を無血清培養細胞培地の上清から分離することを含んでもよい。この無血清培地は、ウイルスベクター粒子の製造するときのみならず、例えば、特殊な培地及び/又は血清を必要とするかもしれない幹細胞又は初代細胞のような細胞を形質導入するときにも重要である。実際に、血清の有無、酪酸ナトリウム誘導、またはベクターの採取回数のうちの各パラメーターが初期の粗ベクター上清組成物に影響することがあり、その結果、形質移入後の細胞に対する毒性レベルが異なることがある。本発明は、更に、細胞が、その生存が影響されることなく、本発明にかかる精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物によって形質導入されている、改変された真核細胞を提供する。
ベクター生産の概略。産生細胞は、パッケージング及び発現プラスミドで形質移入され、細胞上清中で非複製型レンチウイルスベクターを産生する。
受託番号CNCM I−4487、CNCM I−4488、又はCNCM I−4489でCNCMに寄託された細菌宿主に含まれるウイルスDNA構築物。gag及びpol遺伝子を含むプラスミド。 受託番号CNCM I−4487、CNCM I−4488、又はCNCM I−4489でCNCMに寄託された細菌宿主に含まれるウイルスDNA構築物。エンベロープ発現ヘルパープラスミド。 受託番号CNCM I−4487、CNCM I−4488、又はCNCM I−4489でCNCMに寄託された細菌宿主に含まれるウイルスDNA構築物。導入遺伝子発現プラスミド。
不死化細胞株の細胞形質導入アッセイ。24ウェルマイクロプレート(Corning社、CellBind 24ウェルマイクロプレート)にウェル当たり50、000個の細胞を播種しGFP発現レンチウイルスベクターと混合する。最適な形質導入条件は、M.O.I.の範囲を10から100とし、1mLの全容量中4μg/mLのポリブレンの存在下、37℃/5%CO2で一晩おいて決定する。上清は一晩インキュベーションした後で新鮮な培養培地に換える。形質導入から3日後に、形質導入した細胞をフローサイトメトリーで解析する。 初代細胞の細胞形質導入アッセイ。24ウェルマイクロプレート(Corning社、CellBind 24ウェルマイクロプレート)にウェル当たり50、000個の細胞を播種しGFP発現レンチウイルスベクターと混合する。最適な形質導入条件は、M.O.I.の範囲を10から100とし、1mLの全容量中4μg/mLのポリブレンの存在下、37℃/5%CO2で一晩おいて決定する。上清は一晩インキュベーションした後で新鮮な培養培地に換える。形質導入から3日後に、形質導入した細胞をフローサイトメトリーで解析する。
血清を用いた従来のプロセスによる一般的なベクター生産方法。 SDS−pageゲルにより解析したFCSの割合によるタンパク質プロフィールの評価。ウイルス上清の全タンパク質の15μgをSDS−PAGEゲルに載せた。全タンパク質は、280nmにおける分光光度法により定量した。 タンパク質プロフィールの評価に用いるバッチ力価のまとめ。(1)形質導入単位(TU)はフラックスサイトメトリーにより決定した。(2)物理的粒子(PP)をHIV−p24 ELISAにより定量し、PP/TU比を決定した。(3)全タンパク質は、280nmにおける分光光度法により定量した。
本発明のウイルスベクター濃縮および精製プロセス。それぞれのプロセスは、標的細胞の濃縮および精製の要件:不死化細胞(A)、初代幹細胞(C)、およびインビボ注入(D)に沿うように順次(バッチAからDの取得に相当するAからDまで)行われる。 無血清で生産し、超遠心及び中央ユニットを用いて遠心分離したベクターについてのSDS−pageゲル(B)。レーン1:超遠心したバッチの3×l05TU。レーン2及び3:中央ユニットを用いて遠心分離したものの、それぞれ3×l05TU及び3×l06TU。 SDS−PAGEゲル解析による精製プロセスの性能。レーン1:即使用可の遠心分離ユニットを用いて限外ろ過したバッチ(方略B)の3×l05TU。レーン2:即使用可の遠心分離ユニットを用いて限外ろ過したバッチ(方略B)の3×l06TU。レーン3:中空糸を用いて限外ろ過したバッチ(方略C)の3×l05TU。レーン4:中空糸を用いて限外ろ過し、続けてさらに即使用可の遠心分離ユニットを用いて濃縮工程を行ったバッチの3×105TU。レーン5:中空糸を用いて限外ろ過し、続けてさらに即使用可の遠心分離ユニットを用いて濃縮工程を行ったバッチの3×l06TU。レーン6:クロマトグラフィーを行ったバッチ(方略D)の3×105TU。レーン7:クロマトグラフィーを行い、続けてさらに即使用可の遠心分離ユニットを用いて濃縮工程を行ったバッチの3×106TU。レーン8:クロマトグラフィーを行い、続けてさらに即使用可の遠心分離ユニットを用いて濃縮工程を行ったバッチの15×l06TU。
本発明の精製方略による残存不純物。濃縮および精製方略が示す不純物除去のプロフィールは、使用した濃縮および精製技術により異なる。AからDに従い、残存不純物(タンパク質、DNA、及び非生物学的ウイルスベクター(PP))は減少し、インビボ注入用のFDA精製要件を達成する(D)。
不純物との比較による、各精製方略により精製された生物学的に活性なレトロウイルスベクターの比活性。ウイルス粒子およびこれらの混入物の環境は比活性により表される。比活性は、全タンパク質ミリグラム当たりのベクターの生物学的活性(TU/mgで表される)又は残存DNAマイクログラム当たりのベクターの生物学的活性であり(TU/μgで表される)、つまり、ベクター環境内でのこれらウイルスベクターの活性の測定値を与えるものである。ベクター環境中での混入物が減少するにつれて、この比活性は上昇する。
本発明の精製方略による物理的粒子/形質導入単位の比(PP/TU)。いくつかの欠損は、ベクター生産段階の後期に生じ、非感染性ウイルスベクターの産生につながることがある。ある生物学的活性を欠くこれらの物理的粒子は、生物学的に活性な粒子とほぼ同様の物理化学的特性を有し、これが原因で濃縮−精製プロセス中にそれらを除去することが困難になる。
不純物との比較による、本発明の各精製方略により精製された生物学的に活性なレトロウイルスベクターの精製レベル。精製レベルは、ウイルスベクターと、タンパク質またはDNAといったウイルスベクター環境中に存在する不純物との間の精製率を表す。4つのバッチの精製レベルは、バッチAからバッチDへと最終回収生成物中の残存不純物が減少するにつれて上昇する。
非組み込み型レンチウイルスベクター(NILV)及び組み込み型レンチウイルスベクター(ILV)で形質導入されたIMR90細胞。24ウェルマイクロプレートに、ウェル当たり50、000個の細胞を播種し、M.O.I.5から200として、1mLの全容量中4μg/mLのポリブレンの存在下、37℃/5%CO2で一晩レンチウイルスベクターと混合する。上清は一晩インキュベーションした後で新鮮な培養培地に換える。形質導入から6日後、GFP発現をFACS解析で決定した。M.O.I.の上昇に伴うGFP発現ILV及びNILVで形質導入したIMR90細胞の割合。 M.O.I.の上昇に伴うGFP発現ILV及びNILVで形質導入したIMR90細胞の蛍光強度。
レンチウイルス生産に使用した3つのプラスミドで形質移入した293T細胞及び293T細胞におけるLDHアッセイ。
GFP発現レンチウイルスベクター(ILV)による形質導入から5日後の包皮細胞におけるGFP発現。バッチはA、B、C及びDの文字として関連づけた。24ウェルマイクロプレートに、ウェル当たり50000個の細胞を播種し、M.O.I.40および150として、1mLの全容量中4μg/mLのポリブレンの存在下、37℃/5%CO2で一晩レンチウイルスベクターと混合する。上清は一晩インキュベーションした後で新鮮な培養培地に換える。形質導入から5日後、細胞を固定した。 GFP発現レンチウイルスベクター(ILV)による形質導入から11日後の包皮細胞におけるGFP発現。バッチはA、B、C及びDの文字として関連づけた。24ウェルマイクロプレートに、ウェル当たり50、000個の細胞を播種し、M.O.I.40および150として、1mLの全容量中4μg/mLのポリブレンの存在下、37℃/5%CO2で一晩、レンチウイルスベクターと混合する。上清は一晩インキュベーションした後で新鮮な培養培地に換える。形質導入から11日後、細胞を固定した。 GFP発現レンチウイルスベクター(ILV)による形質導入から11日後にFACSにより測定された包皮細胞におけるGFP発現。バッチはA、B、C及びDの文字として関連づけた。包皮細胞を96ウェルプレートに移し、1日後に形質導入する。11日後、全ての標的細胞におけるGFP強度をFACSにより測定する。
形質導入から11日後における細胞の生存。包皮細胞を96ウェルプレートに移し、1日後に形質導入する。
Bバッチを用いた形質導入から11日後にMTTアッセイにより測定した細胞増殖。包皮細胞を96ウェルプレートに移し、1日後にバッチBを用いて形質導入する。細胞は全てのウェルにおいて5日後に3回目まで植え継ぎ、11日後にMTTアッセイを実施する。 全バッチA、B、C及びDを用いた形質導入から11日後にMTTアッセイにより測定した細胞増殖。包皮細胞を96ウェルプレートに移し、1日後にバッチBを用いて形質導入する。11日後にMTTアッセイを実施する。 他のバッチを用いた形質導入から11日後にMTTアッセイにより測定した細胞増殖のバッチBとの比較。包皮細胞を96ウェルプレートに移し、1日後にバッチBを用いて形質導入する。11日後にMTTアッセイを実施する。
M.O.I.40又はM.O.I.150とし、cDNAを含まないレンチウイルスベクター(rLV−EFl)を保有する空のカセットで形質導入してから48時間後の包皮細胞の生育。rLV−EF1のバッチB及びCは同一の粗採取物からの由来であった。 トランスクリプトミクス解析に使用したrLV−EFlB及びCバッチの特性。(1)形質導入単位(TU)は、qPCRにより決定した。(2)残存DNAは、Quant−iTキットPicoGreen dsDNAキット(Life Technologies社)を用いて定量した。(3)全タンパク質は、280nmにおける分光光度法により定量した。(4)物理的粒子(PP)をHIV−p24 ELISAにより定量し、PP/TU比を決定した。
M.O.I.150としrLV−EF1バッチBで形質導入した細胞においては非形質導入細胞に対して差分を持って発現し、M.O.I.150としrLV−EFlバッチCで形質導入した細胞においては非形質導入細胞とは異なる影響がないプローブのセットを表す散布図。X軸は非形質導入(NT)細胞の正規化強度を表し、Y軸は形質導入(T)細胞の正規化強度を表す。非常に薄い灰色の色調の線は−1.5、1、および1.5の倍率変化値を表す倍数変化線である。 図16Aで示したものと同じプローブのセットについて強度値をベースライン変換した後のものを表すプロフィールプロット。 M.O.I.40としrLV−EFlバッチBで形質導入した細胞においては非形質導入細胞に対して差分を持って発現し、M.O.I.40としrLV−EFlバッチCで形質導入した細胞においては非形質導入細胞とは異なる影響がないプローブのセットを表す散布図。X軸は非形質導入(NT)細胞の正規化強度を表し、Y軸は形質導入(T)細胞の正規化強度を表す。非常に薄い灰色の色調の線は−1.5、1、および1.5の倍率変化値を表す倍数変化線である。 図16Cで示したものと同じプローブのセットについて強度値をベースライン変換した後のものを表すプロフィールプロット。
M.O.I.40又はM.O.I.150とし、血清の存在下で製造されたレンチウイルスベクター(rLV−EFl)を保有する空のカセットで形質導入してから48時間後の包皮細胞。 トランスクリプトミクス試験に使用したrLV−EFlのバッチB−Sの特性。(1)形質導入単位(TU)は、qPCRにより決定した。(2)残存DNAは、Quant−iTキットPicoGreen dsDNAキット(Life Technologies社)を用いて定量した。(3)全タンパク質は、280nmにおける分光光度法により定量した。(4)物理的粒子(PP)をHIV−p24 ELISAにより定量し、PP/TU比を決定した。
rLV−EFlバッチB−Sでは、非形質導入(NT)と比べ特異的な差分を生じ、rLV−EFlバッチBおよびCではNTとは異なる影響がないプローブのセットを表すプロフィールプロット(M.O.I.40および150)。強度値をベースライン変換してからデータに表した。バッチB−SでM.O.I.150の条件における正規化強度についての線を色づけした。
表1:従来の濃縮プロセス(バッチBの取得に相当)及び本発明に記載のプロセス(A、C、およびD)により取得した本発明に関連する生成物の性能を一目でわかるよう表した。この表は、濃縮および精製プロセスによる、本発明に記載のバッチ特性をまとめたものである。プロセスB(バッチBの取得に相当)は、従来のプロセスを表す。このプロセスから得たベクターを用いた形質導入は、細胞の生存および増殖についての問題を引き起こす。C及びDは、プロセスB(バッチBの取得に相当)から得たベクターによる形質導入後に観察された細胞生存についての欠点を解決するために、本発明で開発されたプロセスである(バッチC及びDの取得に相当)。バッチAを、この表内のすべてのパーセンテージデータ(プロセス回収率、タンパク質およびDNAの除去率)についての基準とした。バッチAは、無血清培地中で酪酸ナトリウム誘導を行わず製造し、対象のウイルス粒子に特有の半減期に基づく異なる時期に採取したので、最適化されたバッチと考えられる。
Figure 2018007671
表2:全バッチA、B、CおよびDにおける混入物および力価、並びに有効性の測定値。
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表3:採取時期および酪酸ナトリウム誘導が形質移入された産生細胞およびその結果の粗ベクター組成物に与える影響
Figure 2018007671
本発明は、高力価と高純度のウイルスベクター組成物(本明細書ではウイルスベクター粒子とも呼ぶ)を製造するための新規なプロセスを提供する。本明細書に記載されるように、ベクターの生産および濃縮の両者のために新しいプロセスが開発された(図5A)。このプロセスは、第一に、無血清培地における真核細胞の一過性の形質移入に基づいており、その結果、バッチAと呼ばれる粗バッチが製造され(図5A)、このバッチAは、血清で製造されたバッチと比べ高い品質性能を示す(図4に記載のバッチA−S)。この粗上清(バッチA)は酪酸ナトリウム誘導を行わずに血清の不存在下で製造され、形質移入後、37℃でのベクター粒子の半減期に応じた特定の時間、これは産生細胞の種類や培養培地によるが約8時間、に回収されたものであるため最適化されている(Le Douxら、1999年)。この生産工程に続いて、限外ろ過による濃縮およびイオン交換クロマトグラフィーによるベクター粒子の精製が行われ、それぞれ本明細書ではバッチCまたはDと呼ばれるバッチになり、これらは高いタンパク質及びDNA除去率を示す(表1及び2)。これらの生成物、バッチCおよびDは、小規模および大規模の用途のために取得可能で、現在利用可能な方法で測定されるような細胞の生存および増殖に重大な影響を与えることなく、効率的な形質導入を可能にする。このような効率的な形質導入には、本明細書で提供されているような、標的細胞の分裂および代謝を阻害するおそれのある細胞や培地含有物を導入することなくベクター効力を維持しつつ、効率的なベクターの生産、濃縮、および精製をするための方法が必要である(図5A)。
RNAベースのウイルスベクターを製造するための本発明の方法は、
(i)ベクターの基となるRNAベースのウイルスゲノムの欠損を補完するように産生細胞を形質転換して改変し、RNAベースのウイルスベクター粒子が産生できるような適切な条件下で培養し、ここで、該形質転換後の上記培養を無血清培地中で行い;及び
(ii)上記RNAベースのウイルスベクター粒子を含む上清を回収することを含む。
上記回収は、37℃でのベクター粒子の半減期に応じて順次実施でき、ここで中間的な採取が実施される。これは、従来から2つの工程により実施されてきた先行技術のベクター採取、例えば、Cooperら(2011)およびMertenら(2010)のような形質移入後に実施されるものとは対照的である。本発明の一の実施態様では、何回かの採取は産生細胞の形質移入後72時間中に行ってもよい。本発明の非限定の実施態様では、形質移入の方法および産生細胞株に応じ、形質移入後に3から6回のベクター採取を行ってもよい。本発明の特定の実施態様では、産生細胞の形質移入後に特定の時間間隔をあけて4回の採取が実施される。この採取と採取との時間間隔は、産生細胞株の培地中における37℃でのベクターの半減期に基づく。結果として得られる定期的な時間間隔は、必要とする粗ベクターの機能的力価(>106TU/ml)と、形質移入された細胞において毒性を誘発しうる混入物の存在とのバランスである。
本発明のプロセスでは、産生細胞は対象のウイルスベクターで形質移入される。このウイルスベクターは、インビボ又はインビトロのいずれかで、標的宿主細胞への導入においてウイルス核酸に挿入された対象核酸(本明細書では導入遺伝子とも呼ぶ)を発現するように設計される。標的宿主細胞へのこのような導入は、例えば、創薬や遺伝子治療での用途に用いてもよい。
形質移入は、意図的に核酸を細胞に導入するためのプロセスと定義される。この用語は、厳格に真核細胞においてウイルスを用いない方法に対して使用される。形質移入は、ウイルスベクターの生産プロセスにおいて使用され、この時、上清中にウイルスベクターを得るようにgag−polおよびenvを発現するプラスミドを産生細胞に形質移入する。形質導入は、意図的に核酸を細胞に導入するためのプロセスである。この用語は、真核細胞におけるウイルスベースの方法に対し使用される。最終的に形質導入した細胞を得るために、ウイルスベクターを産生細胞から採取し、真核細胞と接触させる。
本発明の好ましい実施態様では、ウイルスベクターは、例えば、レンチウイルス(LV)およびガンマレトロウイルス(RV)ベクター等のエンベロープRNAウイルスを含むRetroviridiae科に属するウイルスを基とする。精製プロセスの開発には、ベクターの物理的、化学的、および生物学的特性についての鋭い知識が要求される。レトロウイルスベクターは、約150nmの流体力学的直径を有する複雑な巨大分子構造で包まれたエンベロープRNAウイルスを含むRetroviridiae科に属するウイルスに由来する(Salmeenら、1975年)。サイズが大きいため、ウイルス粒子は低い拡散率(10〜8cm2/s)を有し、それらの密度はショ糖勾配超遠心分離による決定では約1.15〜1.16g/cm3である(Coffinら、1997年)。これらは、60〜70%のタンパク質、30〜40%の脂質(産生細胞の原形質膜に由来する)、2〜4%の炭水化物、および1%のRNAによって構成される(Andreadisら、1999年)。レトロウイルス粒子は、2本の一本鎖プラス鎖RNAの同一コピーに加え、インテグラーゼおよび逆転写酵素で構成され、これらは脂質二重膜に囲まれたタンパク質カプシド内に包含される。脂質二重層は、糖タンパク質の突起により鋲止めされている。レトロウイルスベクターは、それらの等電点が非常に低いpH値で起こるので、広いpH域において負に帯電した粒子である。おそらく、エンベロープタンパク質と脂質二重層が、ウイルス表面の負の電荷に主に寄与している(Rimaiら、1975年)。
形質移入される産生細胞の種類は、本発明の実施において使用するために選択されたウイルスベクターに依存するであろう。そのような細胞として、例えば、293TまたはHeLa細胞といった容易に形質移入可能な任意の哺乳動物細胞が挙げられる。本発明の好ましい実施態様では、例えば、ガンマレトロウイルスベクター(RV)およびレンチウイルスベクター(LV)といったレトロウイルス科に由来するウイルスベクターを使用する場合、293T細胞を用いてもよい。対象のウイルスベクターと組み合わせて使用される細胞の種類は、当業者に周知である。
産生細胞は、任意のウイルスタンパク質を、一過性または安定的に発現するように遺伝子操作されており、その発現はウイルス粒子へのウイルスベクターの組み立ておよびパッケージングのために必要である。本発明の一の実施態様では、レンチウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターは、図1に記載の通り、(導入遺伝子をコードする)ベクターおよび(ウイルスタンパク質をコードする)ヘルパー構築物を発現するように遺伝子操作された細胞株によって産生される。組換え事象及び複製コンピテントレトロウイルスの産生を最小限に抑えるために、レトロウイルスゲノム配列は、3つの異なる構築物に分けてもよい(図2A〜C)。
第一の構築物、gag−polベクターは、構造タンパク質およびウイルス酵素をコードする。それぞれ、gagはマトリックスタンパク質(MA)、カプシド(CA)、および核タンパク質(NC)の構造をコードし、polは逆転写酵素(RT)およびインテグラーゼ(IN)酵素をコードする。最も好ましくは、ウイルスのgagおよびpol遺伝子が、レトロウイルス、好ましくは、レンチウイルス、そして最も好ましくはHIV、に由来する。
第二の構築物、envベクターは、ジスルフィド結合による表面(SU)及び膜貫通(TM)成分の由来となるエンベロープタンパク質をコードする。TM成分は、膜貫通セグメントによって固定され、それらを破壊することなしにはベクターから除去することはできない(Coffinら、1997年)。このenv遺伝子は、レトロウイルスを含む、任意のウイルス由来とすることができる。envは、ヒトおよび他の種の細胞に形質導入可能な両種指向性のエンベロープタンパク質であってもよいし、マウスおよびラット細胞のみに形質導入可能な同種指向性のエンベロープタンパク質であってもよい。さらに、エンベロープタンパク質に、抗体または特定の細胞種の受容体を標的にするための特定のリガンドを結合することによって、組換えウイルスを標的とすることが望ましい場合がある。ウイルスベクターに、対象とする配列(調節領域を含む)を、例えば、特定の標的細胞上の受容体に対するリガンドをコードする別の遺伝子と共に、挿入することによって、ベクターは今や標的特異性となる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖脂質またはタンパク質を挿入することによって標的特異的にすることができる。標的化は、多くの場合、レトロウイルスベクターを標的とする抗体を使用することによって達成される。当業者は、特定の標的へのレトロウイルスベクターの導入を達成するための具体的な方法を知ることになるであろう、または過度の実験を行うことなく容易に確認することが可能である。レトロウイルス由来のenv遺伝子の例としては、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)等が挙げられるがこれらに限定されない。また、水疱性口内炎ウイルス(VSV)(プロテインG)のような他のenv遺伝子を使用することもできる。
ウイルスenv核酸配列を提供するベクターは、調節配列、例えば、プロモーターまたはエンハンサーに関連する。好ましくは、調節配列は、ウイルスプロモーターである。調節配列としては、例えば、(説明のための実施例で用いられるような)モロニーマウス白血病ウイルスのプロモーター−エンハンサーエレメント、ヒトサイトメガロウイルスエンハンサー、を含む任意の真核生物プロモーターまたはエンハンサーとすることができる。例えばモロニーマウス白血病ウイルスのプロモーター−エンハンサーエレメントといったいくつかのケースでは、これらのプロモーター−エンハンサーエレメントはLTR配列内に位置する又は隣接する。
第三の構築物、ベクター導入遺伝子は、ウイルスのライフサイクルに必要なシス作用性ウイルス配列を提供する(図2C)。このような配列として、psiパッケージング配列、逆転写シグナル、組み込みシグナル、ウイルスプロモーター、エンハンサー、およびポリアデニル化配列等が挙げられる。この第三のベクターもまた、標的細胞へ移入する非相同の核酸配列用のクローニング部位を含む。適切なベクターの略図が、導入遺伝子としてGFPとともに図2Cに示されているが、これは任意の遺伝子またはshRNA(ショートヘアピンRNA)若しくはmiRNA(マイクロRNA)等の対象配列に置換できる。
この構築物は、野生型WPRE配列(Zuffereyら、1999年)やcPPT/CTSエレメント(Manganiniら、2002年)のような他の発現エレメントを含んでもよい。ベータラクタマーゼをコードする遺伝子が、プラスミドを生成するためにこれらのプラスミドで形質転換した細菌を選択するのに用いられる。これらのプラスミドによる産生細胞の形質移入後、真核生物プロモーター(RSV U3)からポリアデニル化部位(HIVl R)までの転写が開始され、この転写はベータラクタマーゼをコードする遺伝子を含まない。ベータラクタマーゼタンパク質および対応するRNAのいずれも、産生細胞株において発現されず、ベクター粒子中にカプシド化もされない。
ウイルスの病原性は、レトロウイルス複製に必要なゲノム領域を導入遺伝子に置換することによって取り除かれる。このことは、レトロウイルスベクターにパッケージされたゲノムが導入遺伝子並びにパッケージング及び逆転写に必要な配列のみをコードしていることを立証する。
3つのレトロウイルス構築物の分離により、他のウイルスからの表面タンパク質でのレトロウイルスベクターの偽型化が可能になり、これによりウイルス親和性が拡大する。本明細書に記載されるように、レトロウイルスベクターは、非限定的な実施形態では、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV−G)で偽型化される(Clapham P.ら、1984年)。VSV−Gタンパク質により偽型化されたレトロウイルスベクターは、広く分布する原形質膜の脂質成分との相互作用を介して細胞に侵入するので、非常に広い範囲の形質導入を可能にする(Verhoeyenら2004年、およびYeeら1994年)。偽型化は、エンベロープ構造の変化、よって下流のプロセス中で用いられるレトロウイルスベクターの物理化学的膜特性へ影響することによりレトロウイルスベクターの生産および精製に大きな影響を与えることができる。
産生細胞は、当業者に周知の標準的な技術により、ベクター構築物で形質移入することができる。このような技術として、例えば、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、電気穿孔法、浸透圧衝撃に基づく方法、顕微注入法、またはリポソームの使用に基づく方法等が挙げられる。本発明の好ましい実施態様では、細胞はカルシウム沈殿法を用いて形質移入してもよい。このような方法は、293T細胞が産生細胞として選択された場合に好ましいが、同様の細胞についても使用してもよい。
形質移入後、細胞を、ウイルス粒子の効率的な生産を可能にするのに十分な時間、無血清培地中でインキュベートする。無血清培地は、動物由来の血清を実質的に含まない哺乳動物細胞培養用の増殖培地として定義される。無血清培地は当技術分野で周知である(Brunerら、2010年)。形質移入後のインキュベーション時間は、例えば、使用されるウイルスベクターの種類及び選択された産生細胞株を含む要因の組み合わせに依存するであろう。形質移入後の時間、すなわち、インキュベーション時間中に、複数のベクター採取を行ってもよい。本発明の好ましい実施形態では、4回のベクター採取を行ってもよい。最も生産的なインキュベーション条件を決定するために、小バッチ実験を実施して、最も高い力価および最も高い純度のウイルス粒子のバッチを生産するための最適化条件を決定してもよい。
ウイルスベクター粒子を含む初期の培養上清を本明細書ではバッチAと呼ぶ。本発明の方法は、更に、ウイルスベクター粒子のさらなる精製のため、バッチA生成物を接線限外ろ過・透析ろ過する工程を含んでもよい。このような限外ろ過・透析ろ過工程は、静水圧で液体を半透膜に通過させる一種の膜ろ過である。膜のカットオフよりも大きい分子量の懸濁された固体および溶質は留まるが、水および膜のカットオフよりも小さい分子量の溶質は膜を通過する。本発明の好ましい実施態様では、限外ろ過技術は、ポリスルホン製中空糸のカートリッジを用いて接線流限外ろ過により行われる。このような技術では、ベクターの完全性および生存を確実に維持するために圧力をモニターし調節することができる。このような工程は、ベクター粒子を濃縮するのに加えて、初期の混入物、例えば、宿主細胞タンパク質および核酸など、を回収バッチから除去するための精製工程としても作用する。このようなバッチは本明細書ではバッチCと呼ばれる。
本発明のさらに別の実施態様では、該接線限外ろ過及び/又は透析ろ過工程の後に、本発明の方法は更にイオン交換クロマトグラフィーを行う工程を含んでもよく、これはウイルスベクター粒子をさらに濃縮および精製するために実施してもよい。このようなバッチは本明細書ではバッチDと呼ばれる。
本発明は、許容不死化細胞株、例えば、HCT116、に対するバッチAの組成物の使用に関する。更に、本発明は、遺伝子治療用途におけるバッチC又はDの組成物の使用に関し、これらのバッチは、図4に記載のバッチB−Sの先行技術の生成物と比較して、ベクターの調製の条件または細胞培養の条件による細胞表現型の変化を誘導しない又はマイナーな変化しか誘導しないことが示されている。本明細書に前述のとおり、血清を含まない粗バッチに限外ろ過を施すと、そのバッチのベクター粒子を濃縮するのみでなく、回収されたバッチから初期の混入物、例えば、形質移入に使用される宿主細胞のタンパク質およびDNA、の70%を超える量を除去することにより、それらを精製することができる(表2および3)。下流の濃縮および精製工程は、ベクター生産中における細胞培養方法の変更の影響を直接受けるので、細胞培養および濃縮/精製工程の両者は並行して行われることが好ましい。初期のタンパク質およびDNAの含量は、血清あり又はなしで製造された粗バッチにより全く異なるため、産生細胞の培養培地から血清を除去すると、限外ろ過およびクロマトグラフィーの工程に強い影響を与える。Mertenら(2010)は、いくつかの膜ベース及びクロマトグラフィー工程に基づいた下流プロセスを用いたが、生産プロセスに10%血清を含有する培地を用いており、このことが本発明により開発されたプロセスとMertenら(2010)による従来技術のプロセスとの間の重大な違いである。Mertenら(2010)の粗上清中では、初期の全タンパク質濃度は約6mg/mlであったが、血清を含まない本発明においては0.14mg/mlであり、40倍の差である。本明細書に記載されるように、バッチC及びD中のタンパク質の最終濃度は、それぞれ限外ろ過およびクロマトグラフィー後で0.061mg/mlおよび0.01mg/ml未満であるが、血清を含んで製造された粗バッチについてはいくつかの膜ベース及びクロマトグラフィー工程後で平均1.5mg/mlに達し、それぞれ25倍および150倍の差である。
粗バッチ中に血清を含まないことが、本発明と、ウイルスまたはベクター精製をするためのこれらの方法による予備実験(Grzeniaら、2008年)で得られるベクター濃度および混入物の除去率の違いとなることの説明となるかもしれない。Grzeniaらは、いくつかの損傷したウイルス粒子およびウイルスフラグメントは、小さいほど膜表面上に堆積しがちであるので、困難であると考えた。精製の効率は、膜の分子量カットオフ、イオン強度、膜貫通圧(TMP)、およびベクターの大きさとのバランスにあると思われる。本発明は、精製プロセスを妨げる可能性のある他のパラメーターは、粗バッチから宿主DNAおよびタンパク質の除去に影響を与える可能性のある初期培地の含有物に基づくことを示している。本明細書に記載されるように、細胞培養と濃縮および精製工程とを組み合わせると、レンチウイルスまたはレトロウイルスベースの粒子などのウイルス粒子の高回収を可能にし、これらは高い純度と関連する。本発明によって製造されたベクターは、高い品質レベルであるので、国際公開第2007/09666号および国際公開第2009/13971号に開示されているように、血清含有物または培地混入物に起因する再プログラミングのプロセス中における細胞増殖に対する影響なく、iPS(人工多能性幹細胞)の生成を可能にする。
本発明は、通常使用される先行技術の濃縮方法(バッチBの取得に相当)と比較して、本発明のプロセスの各工程(バッチA、C、及びDの取得に相当)の後に、物理的粒子(PP)、または細胞を形質導入(TU)することが可能な生物学的粒子の粒子定量に関連するタンパク質およびDNA含有物の研究に基づく。並行して、細胞の濃縮及び精製方法がもたらす表現型の結果を決定するために、形質導入された細胞における毒性および増殖を評価した。
本発明は、細胞を形質導入するのに使用できる高い力価および高精製のウイルス粒子を含む組成物を提供する。本発明の組成物は、大容量の培地の使用または高い感染多重度(M.O.I.)が要求される場合、繊細または壊れやすい細胞、例えば、初代細胞および幹細胞、を形質導入するための手段を提供する。よって、かかる組成物は、通常、高いM.O.I.での形質導入を必要とする繊細で壊れやすい細胞に対し、非組み込み型のレンチウイルスベクター(NILV)を使用するのに適している。
本発明は、創薬や遺伝子治療用途のウイルスベース粒子の効率的な生産には、着実な濃縮操作および精製工程に加え、細胞を培養するため、および細胞を形質導入するのに用いられる予定のベクターバッチの再懸濁に適した培地の使用の両者の開発が必要であることを示す。本明細書で示されるように、標的細胞の形質導入効率は細胞の種類(不死化、初代、及び幹細胞)またはその由来となる組織のみでなく、ベクターの特性(力価、純度レベル、タンパク質およびDNAの含有量)にも依存する。
レトロウイルスベクター調製物は、ウイルス粒子自体に決定されるのみではなく、ウイルス粒子の閉鎖環境によっても決定され、これは最終的なウイルスベクター調製物の品質レベルに影響し、また、本明細書で示されているように、形質導入レベルおよび細胞の生存にも影響する。
レトロウイルスベクターは、タンパク質およびDNA混入物を含む細胞培養培地中において、タンパク質、脂質、およびRNAの複雑な高分子集合体である。従って、このような環境の評価が困難な場合がある。その困難のほとんどは、脂質二重層内およびウイルス粒子内部の両者における出芽プロセスの間に起こる産生細胞の成分、主にタンパク質、の組み込みに起因する。これらの特性の全てが、どの試料成分がベクターに関連し、どの試料成分が上清中の実際の混入物であるかを決定することを大きく困難にさせている。最も関連する上清混入物は、(i)非感染性の物理的粒子(PP)、(ii)細胞またはウイルスタンパク質、および(iii)DNAである。
タンパク質不純物は、レトロウイルスベクター上清中で最も多くみられる混入物である。それらは主に産生細胞のタンパク質の分泌によるものであり、ストレスタンパク質の割合は無血清プロセスを実施している間に上昇する。レトロウイルスベクターは出芽間に宿主細胞タンパク質を組み込むが、これが混入物とベクター関連タンパク質との間の区別を複雑にしている。本研究では、ウイルス粒子およびそれらのタンパク質環境は、それらの比活性によって表される。具体的には、このような活性として、全タンパク質ミリグラム当たりのベクターの生物学的活性(TU/mgで表される)があり、これにより細胞培地組成物中のウイルスベクターの活性を計測することができる。比活性は、本発明に記載の精製プロセスの間に混入物が減少するにつれて増加する。
DNA混入物もまた、レトロウイルスベクター上清中に見られる。この核酸の混入に関する問題は、標的細胞中で細胞の形質転換が起こりうる可能性に加えて、インビボ処理における細胞の炎症に起因する。DNAの混入の限界は、通常、形質導入の標的およびその用途に依存する。混入DNAの様々な由来としては、レトロウイルスベクターの製造に使用される一過性の形質移入からの宿主産生細胞およびプラスミドがある。従って、DNAの混入を減少させるために精製プロセスにおいてディーエヌアーゼ(例えばドイツのMerck社のベンゾナーゼ(Benzonase)(登録商標))を導入することができる。細胞培地中のウイルス粒子およびそれらのDNAは、それらの比活性によって表される。比活性は、残存DNAマイクログラム当たりのベクターの生物学的活性である(TU/μgで表される)。前述の通り、比活性は、本発明に記載の精製プロセスの間に混入物が減少するにつれて増加する。
野生型ウイルスと同様に、調製物中の製造されたウイルス粒子の全てが感染性であるわけではない。事実、いくつかの欠損はベクター生産段階の後期に生ずる。典型的には、粒子の集合、カプシド化、ウイルスRNAパッケージング、または出芽が、いくつかの物理的な異常を引き起こすことがある。従って、鎖状RNAを有さず、キャプシドタンパク質が破壊され又は存在せず、またはエンベロープタンパク質が欠落しているウイルス粒子が、典型的に、感染性ベクターと共に製造される。いずれかの生物学的活性を欠くこれらの物理的粒子は、生物学的に活性な粒子とほぼ同様の物理化学的特性を有し、このことがそれらを除去することを困難にする原因となる。本発明によれば、感染性または形質導入性の粒子に対する物理的粒子の割合(PP/TU)は、この比率が:
粗バッチAについては900:1から200:1、好ましくは600未満;
バッチCについては600:1から200:1、好ましくは300:1以下;
バッチDについては400:1から100:1、好ましくは300:1未満;
の間に含まれる場合に最適であると考えられている。
濃縮工程の前後におけるPP/TU比の増加は、(バッチBの取得に相当する)プロセスBにおいて観察されるように、このプロセスがベクター粒子にダメージを与えていることを意味する。この比率は、いくつかの理由により純度に関する指標を表している。まず、この指標は、粗上清中のベクターの状態を示し、この指標の進行度は、ベクターを濃縮および精製するために用いられるプロセスが、ベクターの完全性に与える影響を示す。この比率が上昇するほど、プロセスが粒子にダメージを与えることになる。本発明に記載のプロセスにおいて、粗力価は、500から900の間で構成されるPP/TU比を示すが、多くの研究では1000を超える高い比率が得られた。Mertenら(2010)は、10%血清を含み形質移入後24時間毎に2回採取したバッチで2333の比率を示した。この数値は、以下に示す式に従って計算される:
Mertenら2010に従って計算すると、PP/TU=(4.9×l04ng P24/ml×l07PP/ngP24)/4.3×l03IG/mlである。P24の1ナノグラムは107PPを表し、Mertenらにより、1ml当たりの組み込みゲノムについて算出した有効力価が与えられる。この比率が大きいほど、37℃での生産段階中にいくつかのベクターが分解されること、及び血清含有物がこのベクターの分解を増大することが示される。この違いは、血清および採取回数が、900:1未満のPP/TU比を示す簡便バッチを用いた濃縮および精製工程を開始するための鍵となるポイントであることを強調している。本発明の好ましい実施態様では、第一採取時は形質転換後24時間と36時間の間である。その後の採取は、前回の採取から12時間後に行ってよい。これより高比率の粗バッチだと、濃縮および精製工程の後に必要な最終生成物とならない。
先行技術に記載のベクターを含む組成物は、混入物を含有し、それらの混入物は標的細胞の表現型に対し有害な影響を有し、そして、対象の導入遺伝子を発現または高度に発現するようにレトロウイルスベクター調製物で形質導入される標的細胞の能力に影響を及ぼしうる。このような表現型の変化は形質導入後に起こることがあり、形質導入した細胞における細胞増殖または細胞生存が影響されることがある。本発明は、混入タンパク質およびDNA濃度、並びに繊細で難溶性の標的細胞およびインビボにおける前臨床実験で求められる要件に適合するように物理的粒子に対する感染性粒子の比を顕著に減少させることを可能にするいくつかの着実で規模の拡大や縮小が可能な精製プロセスを提供する。
以下の実施例は、本発明をより良く理解する助けとなるために提供されるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
材料と方法
プラスミドの構築
組換えビリオン又は組換えレトロウイルスを生産するために3つのベクターを使用した。第一のベクターはウイルスのgagおよびpol遺伝子をコードする核酸を提供する(図2A)。これらの配列は、上述したように、それぞれ、基特異的抗原および逆転写酵素(加えて、成熟および逆転写に必要なインテグラーゼおよびプロテアーゼ酵素)をコードする。第二のベクターはウイルスエンベロープ(env)をコードする核酸を提供する(図2B)。第三のベクターは、ウイルスのライフサイクルに必要なcis作用ウイルス配列を提供する(図2C)。また、この第三のベクターは、標的細胞へ移入する非相同の核酸配列のためのクローニング部位も含む。適切なベクターの概略図をGFPとともに導入遺伝子として図2Cに示すが、任意の遺伝子、またはshRNA若しくはmiRNAといった対象配列に置換することもできる。
ウイルスベクター製造プロセス 細胞株および培養条件
ウイルスベクターを、ヒト胎児腎臓(HEK293T)細胞株を用いて製造した。ヒト結腸癌(HCT116;ATCC番号CCL−247)接着細胞株が感染性粒子の定量用に使用される。全ての細胞は、ATTC(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関)により提供され、10%FCS(ウシ胎仔血清またはウシ胎児血清FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および1%ウルトラグルタミン(PAA)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco社、英国ペイズリー)中で、37℃、空気中5%CO2を含む加湿雰囲気中で培養した。ウイルスベクター上清の生産用には、DMEMに対し、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%ウルトラグルタミン(PAA)のみを添加した。
ウイルスベクターの生産
ウイルスベクターの生産を10層のCell STACK(6320cm2、Corning社)を用いて行った。HEK293T細胞を、9.5×103生細胞/cm2で、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および1%ウルトラグルタミン(PAA)を添加したDMEM中に播種し、37℃、空気中5%CO2を含む加湿雰囲気中に置いた。播種から4日後、細胞の形質移入前に、上清を捨て、FCSを添加せず1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%ウルトラグルタミン(PAA)を添加した新鮮なDMEMに交換した。
3種形質移入混合物は、次の3つのプラスミドから成る:pENV、pGagPol、及びpLV−EFl−GFP。最終濃度を滅菌水を用いて40mg/mlに調整した。その後、CaCl2(2.5M)を、500mMの最終濃度に達するよう緩やかにチェックしながらプラスミド−水混合物に滴下した。得られた混合物を、次に、等容量のHepes緩衝生理食塩水(HBS 2X)に滴下し、室温で20分間インキュベートした。インキュベーション後、この形質移入混合物を細胞培養培地に添加し、37℃、空気中5%CO2を含む加湿雰囲気中で24時間インキュベートした。
形質移入から24時間後、上清を捨て、新鮮な無添加のDMEMに交換し、細胞を37℃、空気中5%CO2を含む加湿雰囲気中でインキュベートした。培地の交換後、上清を数回(形質移入から32時間、48時間、56時間、及び72時間後)回収した。新鮮な無添加培地を何回か加え、更なる採取の前に、細胞を37℃、空気中5%CO2を含む加湿雰囲気中でインキュベートした。
各採取物は、0.45μm孔サイズの滅菌フィルターユニット(Stericup、Millipore社)で精密ろ過する前に、5分間3000gの遠心分離により清澄化した。全採取物のセットは、その後、粗採取物に供するために溜めておいた。
LDH細胞毒性アッセイ
また、LDH細胞毒性アッセイキットII(PromoKine社)も使用し、レンチベクター粒子をコードするプラスミドによる形質移入後に293T産生細胞から放出されたLDH酵素(乳酸脱水素酵素)を測定した。293T細胞の上清を「低対照」として用い、一方、293T細胞を細胞溶解液で溶解し、「高レベル対照」として表した。その後、LDHアッセイを、製造業者のプロトコルに従って、各粗上清の回収物について実施し、異なるレンチベクターの生産プロセス間における293T細胞の死亡率を評価するための試料として使用した。LDH細胞毒性アッセイキットIIは、WST試薬(水溶性テトラゾリウム)を利用して、損傷を受けた細胞から放出されるLDHを検出する。このアッセイは、LDHが乳酸を酸化してNADHを生成し、これが次にWSTと反応して黄色を呈する酵素カップリング反応を利用する。その後、LDH活性は、分光光度計(Glomax MultiDetection System、Promega 基準)を用いて450nmの光学密度で定量した。アッセイは、各検査済ウイルスベクターについて三重に繰り返した。
ウイルスベクターの濃縮および精製
粗採取物の濃縮および精製は、まず、ポリスルホン製中空糸のカートリッジを用いた接線流限外ろ過により行った。その後、上清を、DMEMまたはTSSM緩衝液に対する連続的透析ろ過で、20ダイア容積(diavolume)となるように透析ろ過した。透析ろ過を一度行った後、残余分を回収し、さらに使い捨ての限外ろ過ユニットで濃縮した。
中空糸ろ過(HFF)の残余分は、その後、ベンゾナーゼ(250U/μ1)を最終濃度(72U/ml)になるまで、およびMgCl2(l.0mM)を最終濃度が1μΜになるまで添加することによりベンゾナーゼ処理を施してから、37℃20分間のインキュベーションを行った。
HFF後の材料は、その後さらに、AKTA清浄システム(GE Healthcare社)を用いた使い捨てSartobind Q75(Sartorius社)膜によるイオン交換クロマトグラフィー(IEX)によって精製された。このイオン交換膜は、5カラム容量の無添加DMEM(又はTSSM)を用い、2ml/minで平衡化した。このウイルス上清は次にサンプリングループを用いて膜上に2ml/minで載せた。このフロースルーを回収した。次の段階勾配:0M、0.5M、1.2M、および2M NaClをAKTAシステムに適用した(1.2M NaClの段階勾配で回収した)。溶出のピークはすぐに20mM Tris、1.0%w/vショ糖、および1.0%w/vマンニトールを含むpH7.3の緩衝液で10倍に希釈し、さらに使い捨て限外ろ過ユニットで濃縮した。
qPCRを用いた機能的粒子の定量
形質導入単位の滴定アッセイを以下のように行った。HCT116細胞を、10%FCS、1%ペニシリンストレプトマイシン、および1%ウルトラグルタミンを添加した250μlのDMEM(完全培地)で96ウェルプレートにウェル当たり12500細胞で播種する。24時間後に、各ベクターのサンプル用およびrLV−EFL−GFP内部標準について完全培地を用いて5段階希釈を実施する。細胞は、8μg/mL ポリブレン(Polybrene)(登録商標)(Sigma社)の存在下でこれらの連続希釈液により形質導入される。各サンプル系列に対し、1ウェルの非形質導入細胞を対照として加える。形質導入から3日後、細胞をトリプシン処理し、各細胞のペレットを250μlのPBSと一緒に取り出す。その後、100μlの細胞懸濁液をキュベットに入れ、その蛍光強度を、Versafluor(Biorad社)を用いてRFU(相対蛍光単位)で測定する。力価は、前もってFACSにより力価を決定した内部標準を用いて、形質導入単位/ml(TU/mL)で決定する。
p24 ELISA アッセイによる物理的粒子の定量
P24コア抗原は、Perkin Elmer社が提供する、HIV−1 p24 ELISAキットでウイルス上清に直接検出される。このキットは、供給元の指定通りに使用する。捕捉された抗原は、HIV−1 p24に対するビオチン化ポリクローナル抗体と複合体を形成し、その後、ストレプトアビジン−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)と結合する。結果得られた複合体は、捕捉されたp24の量に直接比例して黄色を呈するオルト−フェニレンジアミン−塩酸(OPD)とインキュベーションすることによって検出される。各マイクロプレートウェルの吸光度はマイクロプレートリーダーを用いて決定し、HIV−1 p24抗原の標準曲線の吸光度に対しキャリブレーションを行う。1pgのp24が104の物理的粒子に相当することがわかっているので、1ml当たりの物理的粒子中に発現したウイルス力価をp24の量から算出する。
残留DNAの定量
各サンプル中のDNAの残存量は、Quant−iTキットPicoGreenのdsDNA試薬及びキット(Life Technologies社)を供給元の指定通りに用いることで決定した。検量線は、サンプル希釈緩衝液(DMEMまたはTSSM)で希釈したプラスミドを用いて作成される。反応自体は、25μlのサンプルを、25μlのTE緩衝液および50μlのピコグリーン(PicoGreen)(登録商標)染料の希釈標準溶液を96ウェルプレート中で混合することからなる。その後、反応物を暗所で5分間インキュベートし、染料を二本鎖DNAに結合させる。その後、サンプルの蛍光をプレートリーダー上で435/535nmの励起/発光において測定する。
全タンパク質定量
各サンプル中のタンパク質の総量は、Lowry法から派生したDCTMタンパク質キット(Biorad社)を用いて決定した。このキットは供給元の指定通りに用いる。検量線は、サンプル希釈緩衝液(DMEMまたはTSSM)で希釈したBSAを用いて作成される。このアッセイは、タンパク質とアルカリ性酒石酸銅溶液及びフォリン試薬との反応に基づく。Lowryのアッセイと同様に、発色をもたらす2つの工程:アルカリ性培地中のタンパク質と銅との反応、およびそれに続く銅処理タンパク質によるフォリン試薬の還元、がある。
SDS−PAGEゲル電気泳動
サンプルは、「Sample Buffer 4X」(Biorad社)および「Reducing Agent 20X」(Biorad社)で5分間95℃で変性させる。変性後、サンプルを、「Criterion XT Bis−Tris 4−12% gel」(Biorad社)のウェルに載せる。分子量マーカー「Precision Plus Protein Dual Color Standard」を、サンプルの横に配置する。泳動は「XT MOPS buffer」(Biorad社)中で行われる。泳動後、ゲルを「Biosafe Coomassie Stain」(Biorad社)で染色する前に、水で数回洗浄する。所望のコントラストを得るために、最終的に数回の水洗浄を行う。
細胞形質導入細胞培養
ヒト胎児肺線維芽細胞株(IMR90)を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関より入手し(番号CCL−186)、10%ウシ胎仔血清(FCS;Gibco社)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco社、米国カリフォルニア州カールスバッド)中で、37℃、5%CO2を含む加湿雰囲気のインキュベーター内で培養した。
ウイルスベクターを使用したIMR90細胞の形質導入
IMR90細胞を、形質導入の24時間前に、6ウェルのプレートに50000細胞/ウェルで播種する。その後、細胞を、5から200までの様々なM.O.I.を有する、TUで正規化したeGFP保有レンチウイルスベクターで形質導入した。形質導入した上清は5時間後に除去する。形質導入後6日目に、細胞を採取し、eGFP発現をフローサイトメトリーによって分析した。
細胞増殖アッセイ
細胞増殖を3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT;Sigma社)比色色素還元法を用いて測定した。IMRR90細胞を、96ウェルプレートに、ウェル当たり10%FCSを含有するDMEM中1.5×103の細胞数の密度で播種した。これらの細胞を24時間培養してから、各ウイルスベクターにつきM.O.I.40および150の異なる精製レベルのウイルスベクターを用いて形質導入した。形質導入から5または14日後に、20μ1の3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT;5mg/ml;Sigma社)含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を各ウェルに添加し、さらに2.5時間37℃で培養した。その後、培養培地を廃棄し、暗青色の結晶を各ウェル中で100μlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。その後、ウェルを均質化してから、分光光度プレートリーダー(Glomax MultiDetection System、Promega社)を用いて560nmの光学密度(OD)を測定した。増殖アッセイは、各検査済ウイルスベクターについて三重に繰り返した。
LDH細胞毒性アッセイ
LDH細胞毒性アッセイキットII(PromoKine社)を使用して、形質導入後の細胞から放出されたLDH酵素(乳酸脱水素酵素)を測定した。ヒト線維芽細胞を、96ウェルプレートに、ウェル当たり10%FCSを含有するDMEM中1.5×103の細胞数の密度で播種し、その後24時間で血清を2%FCSまで減少させた。その後、これらの細胞を、各ウイルスベクターにつきM.O.I.40および150の異なる精製レベルのウイルスベクターで形質導入した。形質導入から6日後に、LDHアッセイを製造業者のプロトコル通りに実施した。LDH細胞毒性アッセイキットIIは、損傷を受けた細胞から放出されるLDHを検出するためWST試薬(水溶性テトラゾリウム)を利用する。このアッセイは、LDHが乳酸を酸化してNADHを生成し、これが次にWSTと反応して黄色を呈する酵素カップリング反応を利用する。その後、LDH活性は、分光光度計(Glomax MultiDetection System、Promega基準)を用いて450nmの光学密度で定量した。アッセイは、各検査済ウイルスベクターについて三重に繰り返した。
マイクロアレイ解析のための空のカセットベクターの製造
cDNAを有さないレンチウイルスベクターを保有する空のカセット(rLV−EFl)をマイクロアレイ試験のために様々な純度で製造した。rLV−EF1ベクターのバッチBおよびCは、同一の粗採取物から精製した。10%ウシ胎児血清(BIO WEST社)の存在下でBバッチを製造するような追加的な製造を行い、これを本明細書ではB−Sバッチと呼ぶ。
包皮細胞の培養
ヒト包皮繊維芽細胞を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関より入手し(番号CRL−2097)、10%ウシ胎児血清(BIO WEST社)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PAA)、および2mMグルタミン(PAA)を添加したEMEM(イーグル最小必須培地;Gibco社)中で培養した。細胞は、37℃、5%CO2の存在下で保持し、週に二回、5000細胞/cm2で継代した。本発明は、初代細胞、例えばヒト包皮線維芽細胞、に限定されない。
トランスクリプトミクス解析のための包皮細胞の形質導入
ヒト包皮線維芽細胞をT25−フラスコ中に5000細胞/cm2で形質導入の24時間前に播種した。細胞は、最終容積が5mLのrLV−EFLベクターのバッチB、CおよびBSを用い、4μg/mLのポリブレン(Polybrene)(登録商標)(Sigma社)の存在下、M.O.I.40および150として、形質導入を四重に行った。形質導入を行わない対照には、4μg/mLのポリブレン(Polybrene)(登録商標)しか与えなかった。形質導入上清を約16時間後に除去する。細胞を形質導入から54時間後にトリプシン処理、1×PBSで洗浄、及び遠心分離し、ペレットを−80℃で保存した。写真は、形質導入から48時間後に撮ったものである。
RNA抽出
全RNAサンプルは、TRIZol(登録商標)Plus RNA Purification System(Life Technologies社)を用い、製造業者の説明書通りに細胞ペレットから抽出した。全RNA濃度および純度は、Nanodrop1000分光光度計(Nanodrop Technologies社)を用いて決定した。RNAの品質と完全性を、Agilent 2100 Bioanalyzer(米国Agilent Technologies社)で確認したところ、Agilentマイクロアレイの要件に沿ったものであった。
DNAマイクロアレイ実験
マイクロアレイ実験は、Genopole、トゥールーズ大学、INSA、UPS、IΝΡ、CNRS&INRAのBiochips Platform(フランス、トゥールーズ)で、製造業者のプロトコル通りに実施した。簡潔にいうと、品質管理チェック用に、one color RNA Spikeキット(Agilent Technologies社)の外因性RNAの希釈物を添加した後、100ngの全RNAをcRNAに変換し、Agilent Low Input Quick Ampキットを用いて増幅し、シアニン3で標識した。1650ngのシアニン3標識cRNAは、27,958遺伝子を標的とした44,000プローブを含むAgilent Whole Human Genome Oligo Microarrays 4×44K version2に対し、65℃、17時間、10rpmでハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたアレイを洗浄し、Agilent高解像スキャナG2505Cでスキャンし、その画像をFeature Extraction 10.10(Agilent Technologies社)を用いて解析した。Feature Extraction QC reportsに基づいた品質管理後に、3または4の複製物を条件に従って保持した。
マイクロアレイデータの統計的解析
Feature Extractionからの生データセットをGeneSpring(登録商標)GX12ソフトウエア(Agilent Technologies社)にインポートし、第3四分位数法(75th percentile method)を用いて正規化した。プローブはその後、Feature Extractionデータ(各プローブに対し、次のフラグのうちの一つが付される:「検出」、「非検出」、または「欠損(compromised)」)をインポートする際に、GeneSpring(登録商標)に帰属するフラグ値によってフィルタリングされた。少なくとも一の条件下において、複製物の60%超が検出され又は欠損を生じていないプローブを確保した(非検出又は欠損を生じたスポットは除かれた)。全てサンプルの中央値に対する強度値のベースライン変換を、プロファイルプロットの表現に適用した。これは、各プローブについて、すべての試料からのログの集計値の中央値が計算され、サンプルの各々から減算されることを意味する。各条件と対照条件間で差分を持って発現したプローブを同定するために、独立したt検定を、Benjamini−Hochbergの多重検定による補正及び補正p値<0.05を用いて実施した。倍率変化(FC)の絶対値が≧1.5のプローブを、上方及び下方制御プローブの両者について差分を持って発現したものとして確保した。倍率変化の絶対値が<1.3のプローブは、差分なしとした。
結果
様々な細胞種に対する細胞形質導入効率
発現またはサイレンシングにわたり安定した遺伝子が必要な場合に実施する第一のアッセイは、最適な遺伝子調節を達成するのに必要な感染多重度(M.O.I.)を選択することである。すべての細胞が、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターに対し同一の許容度を示すわけではない。標的細胞を、GFP発現レンチウイルスベクターの量を増加しながら形質導入して、細胞が完全に形質導入するような条件を決定し、対応する遺伝子発現のレベルを同定する。図3A及び図3Bにおいて、M.O.I.の増加に伴い、第一に、形質導入細胞の数が標的細胞の95〜100%まで上昇し、第二に、GFP発現のレベルが増大したことが観察された。この現象は、不死化細胞株、初代細胞、および幹細胞において観察される。この結果は、検査した全細胞についてレンチウイルスベクターを用いた遺伝子移入の用量の効果を示すのみでなく、ある細胞種について使用したM.O.I.を、他の細胞種に転用することができないことを示している。細胞種ごとに特有のM.O.I.を必要とする。
レンチウイルスベクターの力価の定量
一般的にウイルス、特にレンチウイルスベースのベクターの力価は、滴定に使用した方法および細胞に依存する。細胞侵入から遺伝子組み込みおよび遺伝子発現までの形質導入経路の段階を達成することができるベクター粒子の定量は、ベクター自体及び細胞の特性に依存する。
ベクター滴定に使用した細胞について、図3A及び図3Bに示すように、標的細胞が容易に許容可能であることを確認することが重要である、というのは、全ての細胞種の許容度は同等ではないと示されたからである。もう一つのポイントは、いかなる導入遺伝子及びベクターについても継時的に信頼性のある定量をするために、形質導入効率は簡便にモニターすべきであるということである。ここで、各滴定実験において、基準GFP発現レンチウイルスベクターは、HCT116の形質導入後、前述の材料と方法に従って、ベクターの連続希釈を用いたFACS(1ml当たりの形質導入単位数TU/mlによって表される)およびqPCR(1ml当たりの組み込みゲノム数IG/mlによって表される)の両者による効率単位で定量される。両者の結果は、形質導入に有効な粒子の相対数を与えるが、それらの絶対数は、それぞれ増幅に使用したPCR自体および標的配列に依存し、同一の力価を与えない。これらのデータは、既知の力価および定義された標的細胞種を有する基準バッチを含んでいなくてはならない標準化方法の存在がなくては、これらの異なるアプローチを機能的力価に基づいて正確に比較することは困難であることを示している。
並行して、全粒子についての決定は、P24ELISAキットを使用して定量し、いずれかのゲノムRNAを含まず、および/またはエンベロープタンパク質を欠いているものであっても、全てのベクター粒子について評価する。双方の力価は、全粒子数を反映する物理的粒子PPと実際の形質導入能を与える生物学的力価との間の比を決定するのに有用である。この比率は、ベクターの純度と完全性の推定値を与える。もう一つの比率を、ベクターの完全性または感染性を反映するために使用し、P24の1ngあたりのIG数(P24の1ngは107PPに相当する)として表現する。
ウイルスベクター生産プロセス
本発明にかかるレトロウイルス及びレンチウイルスベースのベクターは、標準的なリン酸カルシウム法を用いた293T細胞への三種形質移入(tritransfection)によって生産される。形質移入から24時間後(Sena−estevesら、2004年)、細胞を、無血清培地で洗浄し、ウイルス上清を24時間後に回収しろ過する。先行技術のベクターは通常、血清含有培地で生産され、超遠心または様々な供給先から提供される中央ユニットを用いた遠心分離によって濃縮される。本発明において、図5AのバッチAと呼ばれる粗バッチは、発現プラスミド構築物によるが約106TU/mlの平均力価を示す。本明細書に記載の濃縮工程後、この力価は例えば107〜108TU/mlまで達する。これらの標準的な方法により生産されたこれらの小規模バッチはいくつかの欠点を示す。第一に、これらの簡単な方法だと容量の制限があるので、規模の拡大が難しい。第二に、これらの方法は濃縮に限定されており、培地含有物の大幅な除去を可能にするわけではない。タンパク質及び血清成分の存在を避けるために、本発明にかかるプロセスでは、無血清培地中の上清を採取してからバッチAを限外ろ過及び/又はクロマトグラフィーに供し、ベクターバッチを濃縮および精製する。これは、例えば、ベクターがインビトロおよびインビボにおいて高いM.O.I.で使用されることが必要な場合、特に非組み込み型レンチウイルスベクターの場合に重要である(図10A及び10B)。
ベクター力価に対する血清の影響
本発明は、無血清培地における高力価ウイルス上清の生産のために最適化された着実なプロセスを提供する。レンチウイルスベクターrLV−EFl−GFPを、標準的なリン酸カルシウム法を用いて0、5、および10%FCS(ウシ胎仔血清)中で、293T細胞における一過性の三種形質移入によって生産した。EF1 alpha(ヒト伸長因子1 alpha)プロモーターは、遍在性の強力なプロモーターである。ウイルス上清を採取し、全タンパク質の15μgをSDS−Pageゲルに載せ、全タンパク質含有物を解析した。その結果、無血清で生産された粗上清は、血清の不存在に直接結びつくタンパク質をより低量含有するということが示された。並行して、PPおよびTUとの間の比率を血清の有無において決定した。力価(TU/mL)およびPP/TU比は全ての条件において安定したままであったことが示された。結論としては、無血清でレトロウイルスベクターを生産すると、ベクター生産効率は低下しないが(図4C)、サンプルの全タンパク質含量は減少する(図4B及び表1)。
細胞形質移入後のベクター粒子の順次的な採取
本発明は、形質移入産生細胞に対する誘導毒性について、酪酸ナトリウム誘導(形質移入後18時間)の有無、及び形質転換後72時間の間の採取回数の違いによる比較を説明する。これらの実験は、どの粗上清採取物についても機能的力価が106TU/mlより高いことを示し、上清の採取回数および酪酸ナトリウム誘導が結果として得られる産生細胞の毒性に対し強い影響を及ぼすことを強調する。一方で、出願人らは回収の回数および酪酸ナトリウムの誘導の有無は、粗上清の力価に対しての影響は小さいことに気付いており、酪酸ナトリウム誘導なしでウイルスベクターを生産し、採取工程が5回の場合は形質導入単位での生産増大は2倍であった(表3のTU/生産を参照)。他方、酪酸ナトリウム誘導および血清の不存在下で製造し、ベクター粒子の半減期に応じて調整した回数の複数の工程により採取した粗上清から放出された全DNAの濃度は最も低く、酪酸ナトリウム誘導をして生産し、採取時間を形質移入後64時間および88時間に固定した場合と比較して7倍であった。これらの結果は、粗上清について直接LDH細胞毒性アッセイをすることにより確認され、粗上清が、酪酸ナトリウム誘導および血清の不存在下で製造され、ベクター粒子の半減期に応じて調整した回数の複数の工程により採取されたときには、形質移入細胞の溶解が制限されることを示している。同時に、粗上清中の全DNAの濃度および細胞毒性のレベルは、酪酸ナトリウム誘導を行い、採取時間を形質移入後64時間および88時間に固定することによって増加しており、このことは細胞の溶解がこれらの生産条件によって増強されることを示している。粗上清を、酪酸ナトリウム誘導なしで細胞洗浄後40時間および64時間の2回の採取工程のみにより採取する場合、誘導毒性は82%及び48%に達するが、中間採取物については形質移入した細胞に対する毒性は、最初の3つの採取物については平均して13.3%、最後の採取物については16.4%と、30%を超えない(表3)。したがって、一定の間隔で3回から6回の間を含む複数の工程によってなされる粗上清の回収物は、請求される精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物を得るための出発点となる。様々な採取が、産生細胞の種類や培養培地により約8時間である37℃でのベクター粒子の半減期(Le Douxら、1999年)に関連させながら、形質転換後特定の時期に実施された。酪酸ナトリウム誘導および血清なしで、ベクター半減期に関連させた複数の工程により採取することが、粗上清、すなわち本発明にかかるバッチAを製造するのにもっとも良い条件である。これらの結果は、初期の粗上清組成物は生産プロセス自体により大きく影響され、この出発組成物は形質導入した標的細胞に対し毒性の点において劇的な効果を有することを強調している。
ベクターの濃縮および精製
本発明にかかる方法は、無血清生産プロセス(バッチAの取得に相当)に関連する2種類の濃縮及び/又は精製バッチ(CおよびD)を含む。これらの方法を、超遠心又は中央ユニットを用いた遠心分離に基づいた標準的で通常用いられる濃縮プロセス(バッチBの取得に相当)と比較した。異なるバッチは、精製無しから限外ろ過およびクロマトグラフィーに基づくいくつかの精製工程にわたる異なる精製方略に相当する。これら4つの精製プロセスが、混入物の除去の点で品質を向上させる(図6及び7)。
バッチAの取得に相当するプロセスA
この種類のバッチは、いかなる精製工程も含まない清澄化後の採取物に相当する。この種類のバッチは通常、次の特性の一つ以上を示す:(i)発現プラスミド構築物による平均最終力価が、約106TU/ml(表1);平均最終DNA混入物濃度が650ng/mlまで;(iii)平均最終タンパク質混入物濃度が20(μg/ml)まで;及び(iv)平均最終PP/TU比が500から900の間又はそれ以下で構成される(表1及び2)。
このプロセスを用いて製造されたウイルスベクターは、必要とされる有効M.O.I.が低くてもよいときに、ある種の許容不死化細胞株を形質導入するのに適切である。このバッチは、他のバッチについての混入物除去特性試験における基準として使用される(すなわち、このバッチの混入物は、生産プロセス不純物の100%を表す)(表1及び図6)。次に続く全データは、この基準粗バッチに関連させる。バッチAは、血清及び酪酸ナトリウム誘導の不存在、及びウイルス粒子に特異的な半減期に基づく異なる採取時期の選択により、最適化されたバッチである。
バッチBの取得に相当するプロセスB。
このプロセスは、即使用可の遠心分離ユニットを用いた限外ろ過による濃縮工程を経た清澄化後の採取物(無血清培養培地)に相当する。この濃縮バッチは、図4Aに記載のものと同じプロセスだが血清を用いないことによる結果生ずるものである。この種類のバッチは通常次の特性の一つ以上を示す:(i)最終ベクター力価が1×l07〜1×l08TU/mlの間;(ii)本発明にかかる有効ベクターのプロセス回収率がバッチAと比較して約47%;(iii)濃度がバッチAと比較して95倍(表2);(iv)DNA除去率がバッチAと比較して初期の混入物の約71%;(v)タンパク質除去率がバッチAと比較して初期の混入物の約56%(図6);及び(vi)平均最終PP/TU比が約500以上(図8)。この比率は、粗バッチについて得られたものと比較すると上昇しており、これらの濃縮方法が、血清がなくともプロセスそれ自体の間においてウイルス粒子に対しダメージを与えることを示している。この現象は血清の存在下で増大する。
この生成物は、先に公開された血清を含む粗バッチによるウイルスベースのベクターと比較して有利に製造される。これは、超遠心を用いた該文献に記載のものと同様の特性を示す(図5B)。このようなプロセスの利点は、プロセスAにより供されるものよりも高い力価が細胞の形質導入に必要な場合、レトロウイルスベクター粒子を濃縮することである。このプロセスは、即使用可の遠心分離ユニットを用いた限外ろ過技術又は超遠心のいずれかによる粗採取物の濃縮に基づく。粗上清において血清なしで製造された両者の生成物はいずれも、SDSpageゲル上に載置後、同様のタンパク質プロフィールを示す(図5B)。例えば、ウシ胎仔血清(FCS)を用い、このような技術で濃縮したベクターのタンパク質プロフィールを図4Bに示すが、バンドスメアがみられ、特定のウイルスタンパク質がそれらのサイズまたはそれらの低強度のいずれかについて判別不能である。この結果は、我々に、血清の存在とは独立して、ベクター粒子自体について下流の濃縮および精製方法の結果を比較することを可能にするため、このプロセスBを、無血清で製造したベクターバッチの濃縮について使用することを促す。
中央ユニットを使用した遠心分離を行うために、操作モードを、圧力設定に遠心力を用いたフローろ過によるものとする。よって、このような技術だと、ベクターの完全性および生存にとって重大なポイントである圧力のモニタリングができない。この技術で使用する膜の種類だと、他の種類の膜に比べて非特異的吸着量が増加する。従って、ベクターのみならず不純物もまた濃縮される。事実、低い精製レベル(DNA及びタンパク質についてそれぞれ1と3の間及び1と2の間)(例として図9参照)となってしまう。同時に、プロセスAから(図8の実験において200から350の間)からプロセスB(図8の実験において650まで)にわたり増加するPP/TU比により示されるように、このプロセスは生物学的に活性なレトロウイルスベクターに対し非常にダメージを与えるものである。このようなPP/TU比の増加にかかわらず、超遠心または中央ユニットを用いた限外ろ過に基づくこのような従来のプロセスは文献において多く使用されている。このプロセスBは、必要とされる有効M.O.I.が高いことが必要とされるときに不死化細胞株を形質導入するのに適切であるが、機能的表現型の要件をもって分化又は再プログラミングの過程を進む可能性のある壊れやすい初代又は幹細胞を形質導入するのに適していない。
ここで、イオン強度、pH、及び圧力に基づく操作条件を制御せずに限外ろ過を行うと、一桁未満程の大きさの違いを有するタンパク質であっても、効率的な分離ができないと考えられた。レンチウイルスベクターのサイズは大きいので(120nm)、この最後の点は重要であり、理想的な限外ろ過工程は、ベクター粒子を濃縮するだけでなく、宿主細胞タンパク質およびDNA等の混入物を除去することによりそれらの粒子を精製することであろうことが強調される。よって、Cと呼ばれる次のプロセスは、バッチの品質および純度を維持しながら、バッチAの力価を増加させるために開発された。
バッチCの取得に相当するプロセスC
このプロセスは、中空糸を用いた限外ろ過による濃縮および透析ろ過工程を経た清澄化後の採取物(無血清培養培地)に相当する。この種類のバッチは通常次の特性の一つ以上を示す:(i)最終力価が1×l07〜1×l08TU/mlの間;(ii)本発明にかかる有効ベクターのプロセス回収率がバッチAと比較して約69%;(iii)濃度が約25倍であるが、通常は20から40の間(表2及び3);(iv)DNA除去率がバッチAと比較して初期の混入物の約82%(70%から90%);(v)タンパク質除去率がバッチAと比較して初期の混入物の約98%(図9);及び(vi)平均最終PP/TU比が200から600の間(図8)。
ここで、PP/TU比は、バッチA及びCの間で安定しており、バッチCを取得するためのプロセスは、ウイルス粒子に対し、バッチBの取得に相当するプロセスBの結果得られるバッチのようなダメージを与えないことを示している(図8)。
このようなプロセスの利点は、清澄化された粗採取物からのレトロウイルスベクター粒子の濃縮と精製とを組み合わせることである。この技術は、バッチBについて使用した濃縮技術よりもレトロウイルスベクターに対するダメージが少ない。バッチCを得るためのプロセスにおいて使用される限外ろ過技術は、バッチBを得るために使用されるものと非常に異なる。事実、バッチCを得るためのプロセスにおいて使用する方法は、中空糸を使用した限外ろ過技術を用いた粗採取物の濃縮に基づく。この技術の操作モードを、圧力設定にポンプ力を用いた接線流ろ過によるものとする。当業者の教示するところによると、このような技術だと、ベクターの完全性および生存を維持するための圧力のモニタリング及び調整が可能である。例えば、入口でのベクター上清の流束は低いレベルに維持されなければならず、膜貫通圧は、すべてのプロセスの間中、低く完全に安定なものとしなければならない。この技術で使用される膜の種類は、バッチBを取得するプロセスに使用されるものに比べ非特異的吸着量を増加させないものである。従って、より柔軟なこのプロセスは、高いベクター回収率を可能とし、これが高い不純物除去率に関連する。また、この技術を用いて達成された低剪断応力により、PP/TU比を、清澄化した粗採取物(バッチA)について得られたものより、約300またはそれ以下に減少させることが可能になる(例として、図8を参照)。よりダメージが少ないこの技術は、大部分の不純物の強力な除去を可能にし(バッチAと比較して、それぞれ初期のDNA及びタンパク質の82%及び98%)、精製レベルをバッチBと比較してそれぞれDNA及びタンパク質について1.7から4及び1.1から32へと増加させることを可能にする(図9)。従って、回収率、不純物の除去率、及び有益な濃縮倍数(20)の間でうまく妥協させると、このプロセスにより製造されたレトロウイルスベクターが、例え高い有効M.O.I.が要求されるときでさえ、初代または幹細胞のような繊細な細胞に形質導入するための理想的なツールとなる。
バッチDの取得に相当するプロセスD
バッチDを取得するためのこのプロセスは、バッチCを取得するために使用されるプロセスの工程を濃縮工程により増強し、その後任意で遠心分離即使用可の遠心分離ユニットを用いた限外ろ過により濃縮し、加えてベンゾナーゼ処理及びクロマトグラフィーベースの精製をすることを含む。この種類のバッチは通常次の特性の一つ以上を示す:(i)最終力価が1×l07〜1×l08TU/mlの間;(ii)(本発明にかかる精製されたウイルスDNAベクターの)プロセス回収率がバッチAと比較して約12%;(iii)濃度が約7倍(5から10の間)(表2);(iv)DNA除去率がバッチAと比較して初期の混入物の約98.8%(80から99%);(v)タンパク質除去率がバッチAと比較して初期の混入物の約99.9%(図6);及び(vi)平均最終PP/TU比が100から400の間(図8)。
このようなプロセスDの利点は、インビボ注入の要件に達することであり、タンパク質の除去率が少なくとも90%から99.9%まで、およびDNAの除去率が少なくとも90%から99.9%までであり、初期の混入物の98.7%であった(図6)。IEX(イオン交換)クロマトグラフィー工程は、生物学的に活性及び非活性な粒子間を分離することにより最低PP/TU比に到達することを可能にし、これまでに示されたものでは300未満であった(例として、図8を参照)。この高精製指向のプロセスは、精製レベルをタンパク質の場合20〜40から120〜160へ上げることを可能にする(例として、図9を参照)。このプロセスは、本明細書に記載されるすべてのプロセスのうち最も高い比活性を示しており、これは、不純物の除去には、この精製法を用いると最も効率的であることを意味している(例として、図7を参照)。プロセスDにより製造されたレトロウイルスベクターは、従って、哺乳動物または動物へのインビボ注入に適している。
即使用可のユニットを使用した追加の遠心分離(工程Bで使用される)を、最終力価を高めるために、C及びDプロセスの最後に追加してもよい。しかしながら、この追加の濃縮工程は、PP/TU比の増加につながることがある、というのは、即使用可の遠心分離ユニットの化学的性質に起因して、支持体への非特異的吸着が起こり、該ユニットがベクターにダメージをあたえるものとなるからである。
本明細書に記載されるように、レトロウイルスベクターが、バッチAからDを取得するために用いられるプロセスに従って製造された。これらのバッチ調製物は、形質導入による細胞の毒性、生存、及び増殖に及ぼす結果を評価するために比較される。このような比較は、レトロウイルスベクターが不死化細胞株の形質導入のため、又は動物のインビボ注入のために使用される場合に、重要である(表2および図6〜9)。
様々なレベルの濃度及び純度を示すベクターによる細胞形質導入
例えレンチウイルスベクターが、動物または哺乳動物細胞への遺伝子またはshRNAを導入する最も効率的な手段であったとしても、このようなベクターの使用に対する障壁としていくつかの問題が残っており、そのような障壁としては例えば、遺伝子導入の再現性、細胞の生存または毒性、用量効果の監視、または不死化、初代、及び幹細胞で得られた結果間での同種性(homogeneity)等が挙げられる。事実、図3に記載の通り、効率的な遺伝子導入には、実験の目的及び標的細胞に適したM.O.I.を決定するための特別な開発が必要である。いくつかの細胞(U937、初代リンパ球、造血幹細胞、THPl)では、他の細胞(293T、DAOY、HCT116)より高いM.O.I.が必要である。非常に多くの場合、初代細胞は不死化細胞よりも許容性が小さいが、THPl、Jurkat、またはU937のようないくつかの確立された細胞では50より高いM.O.I.が必要である。レンチウイルスベクターによる誘導毒性のため、これらのM.O.I.では、適用することが困難と考えられている(山田ら、2003)。図10に示すように標的細胞を効率的に形質導入するためには高いM.O.I.が必要であるという事実のために、非組込み型レンチウイルスベクター(NILV)を用いた形質導入では、この問題が浮き彫りになる。事実、ILVはM.O.I.が10のとき100%の標的細胞を形質導入するが、NILVベクターは63%の標的細胞を形質導入するのに40のM.O.I.を必要とする。また、ILVがM.O.I.5で発現するレベルと同等に達するために、NILVでは150のM.O.I.を用いなくてはならない。ヒトまたは動物の造血幹細胞を効率的に形質導入するには、高いM.O.I.が必要であり、これは遺伝子治療または動物モデル開発用に、ヒトまたは動物へその後再移植するためである。初代細胞を形質導入するのにもまた高いM.O.I.が必要であり、これは、簡便に表現型または疾患を転換するよう標的遺伝子を発現するためである。本発明の目的は、標的細胞における発現レベル、及びその結果である細胞生存との間の最適なバランスを見出すことである。ここに示したように、濃縮されたベクター上清中のタンパク質およびDNAの含有量を減らすことは細胞の停止及び死亡から細胞を保護するための方法である。これもまた、ILVおよびNILVを用いてiPS細胞へ細胞の再プログラミングを行い、再プログラミングプロセスにおける混入物の干渉を避けるための重要な検討事項である。
本発明は、これらの問題に対する解決策を提供し、この明らかな毒性に関する補足情報をもたらす。レンチウイルスベクターは、追加の精製工程の有無により異なる濃度のグレードで製造されている。ベクター濃度は、一般的に使用される技術のいずれか(図4Aに示す超遠心もしくは中央ユニットを用いた濃縮、または図5Aに示す接線流ろ過)に基づいて使用する様々なアプローチにより得られる。超遠心または中央ユニットでの遠心分離により、レンチウイルスベクターが濃縮されるが、ウイルス産生細胞の培養液由来の細胞堆積物、膜断片、及びタンパク質もまた濃縮される。以下に示すデータは、濃縮されたバッチBおよびCのいずれも同じ形質導入効率をもたらすが、非常に異なる細胞表現型についての結果を導くことを示している。
粗ベクター組成物
293T細胞を血清の不存在下で組換えレトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを産生するために三種形質移入する場合、これらの細胞が増殖を停止して上清中にストレスタンパク質および毒性元素を分泌することがある。図11Aは、ウイルス産生細胞が、三種形質移入後に高いLDH生成率を示すことを示す。この結果により、ベクター生産の間に産生細胞株により分泌された毒性タンパク質が培養培地中に存在することが強調される。粗調製物のみならず、濃縮されたバッチ中にも含有されるこの望ましくない物質は、標的細胞、特に繊細な初代細胞を形質導入するのに使用する場合、細胞摂動を誘発し、インビボでの投与後の実験動物モデルにおいて免疫原性反応を引き起こすことがある。表3に示すように、明らかにこの粗ベクター組成物は、形質移入後のベクター採取の回数及び時期の両方により影響を受ける。ベクター上清を、ベクター半減期を考慮せずに24時間間隔で採取すると、ベクター採取物のLDH効が上昇する。LDH効は、例えば表3に記載されるように4回の採取を12から16時間の間隔で繰り返すと、30%未満であるが、ベクターの採取を24時間間隔で繰り返したときは、それぞれ80%および48%に達する。よって、3から6回の回収を含む複数の回収工程を特定の時間間隔をあけて行うことにより粗上清を回収すると、精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物、すわわち、回収された粗上清を得るための方法が得られる。複数の回収工程が、産生細胞の種類や培養培地によるが約8時間である37℃でのベクター粒子の半減期(Le Douxら、1999年)に応じて、形質転換後特定の時間に選択される。よって、ベクター生産中における血清の不存在に加え、ベクター生産中の採取時期及び回数に基づくこの第二のパラメーターにより、高品質の粗出発物質を生成することが可能になり、これはタンパク質の濃度のみならず、細胞毒性をも最小限に抑えるものである。ここで、図5Aにまとめた工程を組み合わせると、標的細胞に望ましくない効果が低減できることが実証される。このプロセスは、無血清培地、順次的な採取、および限外ろ過を含む。
細胞の形質導入効率に対する純度の影響
初代細胞および包皮細胞(ATCC−CRL−2097)に対するベクター形質導入の影響を、形質導入から数日後に検討した。バッチA、B、CおよびDと称する、上述の4つのバッチを製造し、標的細胞を形質導入するのに使用して中程度及び高度のM.O.I.、それぞれ40および150における、ベクター自体及びベクター環境による段階的な効果を評価した。まず、細胞がレポーター遺伝子GFPを発現可能かどうか判断するためにチェックを行い、様々なバッチでのGFP発現の結果を図12A及び12Bにそれぞれ形質導入から5および11日後について示す。これらのデータは、全バッチにおいて、すべての形質導入細胞がGFPレポーター遺伝子を高レベルに発現することを示す。そして、GFP発現レベルは、精製グレードとは無関係であると思われる。一旦ベクターが標的生細胞に侵入すると、形質導入の経路は制限を受けないので、導入遺伝子の発現は効率が良い。並行して、これらの写真は、形質導入の2日前に同数の細胞を播種した場合であっても、すべてのウェルにおける細胞数は非常に異なることを示している。
細胞増殖および生存に対する純度の影響
形質導入から6日および11日後、すべてのベクター種で形質導入した細胞を観察した。各条件で得られる細胞の量を評価するために、同一の実験をM.O.I.40および150で包皮細胞について実施した。図13に示すように、Bバッチで形質導入した細胞の数は同じ条件でCバッチで形質導入した細胞の数の6%のみであり、細胞の生存に対するベクター純度の効果が見られた。この結果は、形質導入後の標的細胞の生存および増殖速度を評価するために、比色MTTアッセイを用いて確認した。図14Aは、Bバッチを用いた細胞の形質導入により、使用したM.O.I.に比例して成長遅延が誘導されることを示す。40%および70%の成長停止がそれぞれM.O.I.40及び150で観察される。この成長停止が、先に観察されたBバッチによる形質導入後の細胞量の低さを説明するのかもしれない。事実、一の継代を含む形質導入後に細胞培養してから11日後の結果は、Bバッチを使用すると、M.O.I.40及び150の両者において細胞数の多くの割合が影響を受けるが、細胞をCまたはDのバッチで形質導入すると、M.O.I.40での細胞量が安定していることを示す。Bバッチほどではないが、M.O.I.が高くなると、細胞量が影響を受ける。CおよびDバッチ間で有意差は観察されず、限外ろ過後に得られる精製レベルは、インビトロ実験用に細胞が成長停止しないよう細胞を保護するには十分であることを示唆している。図14Bおよび図14Cにおいて、A、B、C、及びDバッチで形質導入した細胞の増殖速度を決定したところ、Cバッチは、先に観察された成長停止から細胞を保護することが確認された。バッチB−Sを用いた細胞の形質導入は、細胞がBバッチで形質導入したときのものと比較して、細胞停止が増幅されていることを示しており、血清の不存在および限外ろ過の組み合わせが不可欠であることが強調される。
細胞トランスクリプトームに対する純度の影響
いかなる導入遺伝子からも独立して純度レベルによるベクター形質導入の効果を評価するために、包皮線維芽細胞を、M.O.I.40および150において、同じ粗採取物由来のrLV−EFl(cDNAを含まない)バッチBおよびCで形質導入し、それらの特性を図15Bにまとめる。図15Aに示すように、形質導入から48時間後の細胞を観察した。非形質導入細胞に比べバッチBで形質導入した細胞では、わずかな成長遅延がM.O.I.40にてみられたが、同じM.O.I.のバッチCで形質導入した後では顕著な成長差はみられなかった。M.O.I.150では、非形質導入細胞に比べバッチBで強い成長停止が見られたものの、バッチCでは緩やかな成長遅延が観察されたのみであった。転写レベルでの根本的な変化を調べるために、これらの細胞を形質導入から54時間後に回収した。RNAを抽出し、ほぼすべてのヒト転写物の定量を可能にするAgilentヒト全ゲノムマイクロアレイを実施するために使用した。M.O.I.40をおよび150としたrLV−EF1バッチBおよびCで形質導入した細胞からのRNAレベルを、非形質導入細胞からのRNAと比較した。統計的解析後、1.5倍以上に上方制御又は下方制御したプローブを、各比較のために保持した。これらのデータを交差させることにより、バッチCでは非形質導入とは異なる影響がなかったが、バッチBでは非形質導入に対し差分を持って発現した遺伝子のセットを各M.O.I.について同定できた。これらの2セットの遺伝子を、M.O.I.150については図16A及びB、およびM.O.I.40については図16C及びDにおいて散布プロットおよびプロフィールプロット上に表す。実証されたように、非形質導入細胞対バッチBでの形質導入細胞において、選択された遺伝子の転写レベルの変動は、M.O.I.40に比べM.O.I.150でより顕著であり、M.O.I.40では変動がわずかである。これらのデータは、異なる純度レベルのベクターを使用すると、形質導入細胞のトランスクリプトームに対し異なる影響があることを示している。
細胞トランスクリプトームに対する血清の影響
血清を用いて製造したベクター培地組成物の効果を評価するために、rLV−EF1ベクター(cDNAを含まない)をプロセスBを用いて10%血清の存在下で製造して濃縮すると、その結果としてバッチB−Sを得たが、この特性を図17Bにまとめる。このバッチは、M.O.I.40及びM.O.I.150において包皮細胞を形質導入するのに使用した。図17Aに示すように、形質導入から48時間後の細胞を観察した。バッチB−Sでの形質導入後、非形質導入細胞と比較して成長停止がみられる。この成長停止は、M.O.I.40よりも高いM.O.I.ではより強力である。注目すべきことに、バッチB−Sでの形質導入後、凝集体が観察されることがあり、それらの容量はM.O.I.に伴い上昇する。これらの細胞を形質導入から54時間後に回収し、RNA抽出およびマイクロアレイハイブリダイゼーションを行った。驚くべきことに、トリプシン処理中に、バッチB−Sで形質導入した細胞は、バッチB若しくはCで形質導入した細胞、又は非形質導入細胞よりも分離困難であった。Agilentヒト全ゲノムマイクロアレイを使用して、中程度又は高度のM.O.I.においてバッチB−Sで形質導入した細胞からのRNAレベルを、非形質導入細胞からのRNAと比較した。統計的解析後、1.5倍以上に上方制御又は下方制御したプローブを、各比較のために保持した。血清を用いて製造されたベクターに関するプローブを同定するために、我々は非形質導入条件に対しバッチB−S(M.O.I.40および150)では差分を持って発現するが、バッチBおよびC(M.O.I.40および150)では影響がなかったプローブを選択した。対応する遺伝子のセットを、図18に示すプロフィールプロットに表す。これらのデータは、血清を用いて製造したバッチによる形質導入が存在すると、形質導入細胞のトランスクリプトームは、明らかに影響されるということの裏付となる。
細胞トランスクリプトームに対する純度の影響
いかなる導入遺伝子からも独立して純度レベルによるベクター形質導入の効果を評価するために、包皮線維芽細胞を、M.O.I.40および150において、同じ粗採取物由来のcDNAを含まないウイルスベクター(rLV−EFl)バッチBおよびCで形質導入した。図15Aに示すように、形質導入から48時間後の細胞を観察した。バッチBでは、わずかな成長遅延がM.O.I.40にてみられたが、同じM.O.I.のバッチCでは顕著な成長差はみられなかった。M.O.I.150では、バッチBで強い成長停止が見られたものの、バッチCでは緩やかな成長遅延を観察したのみであった。転写レベルでの根本的な変化を調べるために、これらの細胞を形質導入から54時間後に回収した。RNAを抽出し、ほぼすべてのヒト転写物の定量を可能にするAgilentヒト全ゲノムマイクロアレイを実施するために使用した。M.O.I.150としたcDNAを含まないウイルスベクター(rLV−EF1)バッチBおよびCで形質導入した細胞からのRNAレベルを、非形質導入細胞からのRNAと比較した。統計的解析後、1.5倍以上に上方制御又は下方制御したプローブを、各比較のために保持した。これらのデータを交差させることにより、図16A〜16D(散布図M.O.I.40及び散布図M.O.I.150)において示されるように、バッチCでは影響なかったが、バッチBでは差分を持って発現した遺伝子のセットを各M.O.I.について同定できた。
ウイルス及びベクターのような複雑な高分子構造の下流プロセシングは、現在、当該分野において、特に、耐性細胞に高いM.O.I.が必要な場合、または非組み込み型レンチウイルスベクターを使用する場合に、主要な課題の一つである。これらの場合、ある標的細胞数に対し高いM.O.I.を達成する可能性は二つだけある:可能なら標的細胞に添加する粗上清の量を増加する、又はベクター上清を濃縮する、のうちいずれである。非常に多くの場合、科学者らは、高いM.O.I.の使用を避けるが、その主な理由は、標的ゲノムDNA中にあまりにも多くの数のベクターコピーが組み込まれるのを恐れるからである。産生細胞によって供される混入物が標的細胞に与える影響については、本当に予測可能というわけではなく、標的細胞に依存している。通常、ユーザーは、観察された毒性を、ベクター含有培地中に存在する混入物よりもむしろベクター自身によるものと考える。
高品質のレトロウイルス及びレンチウイルスベクターを得るための工程の組み合わせについての適性を検討した。初めに適切な操作条件を検査して、ベクターの回収という目標、加えて標的細胞への影響の観点からみた生成物の品質を持ちつつ最適化した。無血清でのベクターの生産は、力価を害することなく同レベルの粗生産を示すが、図11に示すように、産生細胞中にある程度の毒性をもたらす。限外ろ過もまた、レトロウイルス上清の濃縮および部分精製のための良好なプロセスとして実証された。示されるように、中央ユニットを用いた限外ろ過又は超遠心は、粗ベクター上清の濃縮のみならず、限外ろ過または陰イオン交換クロマトグラフィー工程後の精製ベクターの濃縮にとっても、効率の良くないプロセスである。事実、ベクター力価を増加させるために、バッチC及びDの両者を中央ユニットを用いた遠心分離に供し、PP/TUの比の増加を観察したとことろ、PP/TUの比が増加すると、レトロウイルスの感染性が影響されることが示され、これはおそらくベクターによる膜への非特異的吸着に起因していると思われる。ここで選択されプロセスCとして記載される限外ろ過プロセスは、中空糸を用いた限外ろ過技術を利用した粗採取物の濃縮に基づく。この技術の操作モードを、圧力設定にポンプ力を用いた接線流ろ過によるものとする。このような技術だと、ベクターの完全性および生存を維持するための重要なポイントである圧力のモニタリング及び制御が可能である。この技術で使用される膜の種類は、プロセスBに使用されるものと比較して非特異的吸着量を増加させない。驚くべきことに、有効な圧力、温度、及び流量が、限外ろ過プロセスの成功の鍵となるなポイントであると決定された。本発明の一実施形態では、流量は400から600ml/分の間で構成され、TMP(膜間差圧)は6から9psiの間である。
従って、標的細胞を形質導入するためのレンチウイルスベクターの濃縮および精製には、規模の拡大および安全性以外の重要なパラメーター:細胞形質導入後の生存および細胞の状態、が含まれる。ベクター上清は、ベクター自身と、標的細胞へのダメージ効を誘発するおそれのある宿主細胞タンパク質およびDNAといった細胞混入物との、混合物として考えなくてはならない。本明細書では、細胞の生存及び増殖に影響なく標的細胞を形質導入できるベクターを定義するための他のパラメーター:
(i)粗バッチの平均PP/TU比が、300から900の間;
この比率が濃縮工程の間に上昇するとベクターがダメージを受けているという指標となり、形質導入および標的細胞の生存を害するおそれのあるベクター堆積物の存在が予測される;
(ii)濃縮後のDNA除去率が、バッチAと比較して初期の混入物の約82%であり常に70%から99%の間;および
(iii)濃縮後のタンパク質除去率が、無血清培地中で生産したバッチAと比較して初期混入物の90%まで;
が含まれる。
臨床用途に要求される特徴を示すベクターとして同定された生成物(Mertenら、2010)と、生成物A、C、及びDとは異なり、この違いは、産生細胞の培養培地中における血清の使用に基づくもので、この血清の使用が生成物の組成についてプロセスAとの違いを引き起こす。事実、タンパク質の組成およびPP/TU比は、バッチAよりも、それぞれ濃縮前の条件下で、25および5倍高い。最終タンパク質濃縮は、濃縮後の条件下で、我々のバッチCおよびDよりも150倍高いので、これらのパラメーターは両方とも、下流の濃縮/精製プロセスに対して影響を有する。臨床での遺伝子治療試験専用のバッチについてその他の分析が文献に記載されているが、PP/TUと、混入物の含量と、それらの標的細胞に対する生存および増殖の点についての影響との間での関連性が確立されてはいなかった。
バッチCおよびDの生成物は、形質導入した細胞の100%において高い発現効率を達成することが可能で、中程度のM.O.I.で30%未満、及び高度のM.O.I.で40%未満の毒性を有するが、生成物Bは同一の培養条件においてバッチCに比べ二分の一の細胞増殖となる(図13及び14)。バッチAで細胞増殖して得られた結果は、バッチBで得られたものと同程度であり、これはおそらく粗バッチでこれらのM.O.I.に達するには大容量が必要なためと思われる。
タンパク質およびDNAの除去率は、本明細書では、DNA及びタンパク質それぞれの比活性により表し、標的細胞の生存または増殖の低減を防止するため理想的には、DNAについては107TU/μgおよびタンパク質については109TU/mg超である。よって、宿主細胞タンパク質の除去に焦点を当てるべきである。BプロセスはバッチBの取得に相当し、わずか56%の宿主タンパク質の除去を可能にするが、Cプロセスは、例えば初期のタンパク質の98%を除去する。よって、宿主細胞タンパク質がすべての膜を通過するようにみえる場合であっても、タンパク質除去率が低いのは、膜汚染につながる膜への非特異的吸着によるものなのかもしれない。このような汚染タンパク質は、その後、ベクターの回収画分で見られる。
本明細書中に記載された結果により、科学者らが通常のベクターバッチBについて高いM.O.I.を使用したがらないのは、特に初代または幹細胞を使用する場合、頻繁に観察される細胞毒性によるものであると説明できる。しかし、時として、例えば、図3Aおよび3Bにおいて造血幹細胞について示されているように、低度または中程度のM.O.I.では、高レベルの形質導入効率をもたらすのに十分でないことがある。形質導入経路の初期の段階は、ある種の標的細胞において制限されることがあり、これが組み込みベクターのコピー数の低減につながるので、高いM.O.I.及び適合バッチCまたはDが必要となることがある。
この毒性は、細胞形質導入後に、標的細胞の亜群を消失させ、または細胞分化を阻害する。本発明は、濃縮のみでなく精製もされたベクターを使用すると、これらの重大な欠点を回避できることを示す。超遠心および即使用可のユニットを用いた遠心分離(Bバッチ)は、標的細胞に対してダメージ効を誘発するので、明らかに不都合である。限外ろ過に基づくプロセス(Cバッチ)を使用すると、予備的な技術開発が必要であるが、細胞の完全性と増殖に適した高品質のバッチが可能になる。また、この技術は、大規模生産用に容易に拡大可能である。本明細書で実証するように、培地からの混入物は、繊細な初代細胞に対し影響を及ぼす。この側面は、バッチCベクターを遺伝子ターゲットバリデーションまたは薬剤スクリーニングのための機能的アッセイにおいて使用する場合、不死化細胞株についても同様に考えることができる。濃縮はされているが十分に精製されていなベクターバッチに対し耐性であるよう選択された形質導入細胞は、生理的または代謝の面において正常な細胞集団を代表してはいない。結果として生じる他の実際上の問題は、たとえ形質導入を同じレンチウイルスツールで行ったとしても、遺伝子改変された不死化細胞および初代モデルで観察される遺伝子機能または薬物効果についての再現性が欠如することである。
従って、本発明の生成物は、形質導入単位及び物理的粒子についてのベクター間の比、並びに、初代および幹細胞の増殖および生存、またはかかる細胞の代謝に対する影響を抑える培地組成物の重要性より検証され、よって、遺伝子機能および細胞分化の再現性試験が可能になる。
本発明によるこれらの結果は、遺伝子治療、インビトロ及びインビボでの遺伝子ターゲットバリデーション、薬物スクリーニング、又はセラノスティックのため、並びに遺伝子若しくは分子の影響、又はその両方、の調査のため細胞の完全性を考慮に入れた各分野において、標的細胞におけるベクター及びその培地の重要な効果を示す。
参考文献
Figure 2018007671
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Claims (16)

  1. 細胞無血清培地に存在する粗RNAベースのウイルスベクター組成物に比べ、初期のタンパク質混入物の2%未満、及び初期のDNA混入物の70から90%未満、好ましくは30%未満を含む精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物であって、前記組成物は細胞の生存に影響することなく真核細胞の形質導入を可能にする精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物。
  2. 粗RNAベースのウイルスベクターは、物理的粒子/形質導入単位(PP/TU)が100:1から900:1の間、好ましくは100:1から600:1の間、より好ましくは100:1から400:1の間で構成されるものである、請求項1に記載のRNAベースのウイルスベクター組成物。
  3. 前記ウイルスベクターが細胞の増殖、生存、及び/又は細胞の能力、例えば分化する幹細胞の能力若しくは多能性細胞に再プログラムされる初代細胞の能力にほとんど又は全く影響を及ぼさない、請求項1又は2に記載のRNAベースのウイルスベクター。
  4. 受託番号CNCM I−4487、CNCM I−4488、又はCNCM I−4489でCNCMコレクションに寄託された細菌宿主に含まれるウイルスDNA構築物。
  5. 対象の核酸(導入遺伝子)を真核生物の標的細胞に導入して前記細胞を形質導入するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRNAベースのウイルスベクターの使用。
  6. 細胞が、それらの生存が影響されることなく、請求項1〜3のいずれか一項に記載の精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物によって形質導入されている、改変された真核細胞の調製方法。
  7. (i)ウイルスベクターの基となるRNAウイルスゲノムの欠損を補完するように産生細胞を形質転換して改変し、該産生細胞をウイルスベクター粒子が産生できるような適切な条件下で培養し、ここで、該形質転換後の前記培養を無血清培地中で行い;及び
    (ii)前記RNAベースのウイルスベクター粒子を含む上清を回収する
    ことを含む、RNAベースのレトロウイルス粒子の製造方法。
  8. 酪酸ナトリウムによる誘導工程を含まない、請求項7に記載の方法。
  9. 前記上清の回収は、3から6の工程を含む複数の工程を特定の時間間隔をあけて行う、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 前記上清の回収に続いて遠心分離による清澄化を行う、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 接線限外ろ過及び透析ろ過を行う工程を更に含み、該限外ろ過は好ましくはポリスルホン製中空糸カートリッジを使用して操作される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. イオン交換クロマトグラフィーを行う工程を更に含む、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法により得ることが可能な精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物。
  14. DNA混入物の除去率が初期の無血清培養培地に存在するDNA混入物の70から99%の間、好ましくは71%までにあり、細胞性タンパク質混入物の除去率が初期の無血清培養培地に含まれる細胞性タンパク質の50から99.9%の間、好ましくは56%までにあり、ここで、PP/TU比が100:1から900:1の間、好ましくは100:1から600:1の間にある、請求項13に記載のRNAベースのウイルスベクター組成物。
  15. 真核細胞を、請求項1〜3、13又は14のいずれか一項に記載のRNAベースのウイルスベクター組成物に接触させることを含む、遺伝子改変された真核細胞の調製方法。
  16. 細胞が、その生存が影響されることなく、請求項1〜3、13又は14のいずれか一項に記載の精製されたRNAベースのウイルスベクター組成物によって形質導入されている、改変された真核細胞。
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