<第1実施形態>
従来のサーボバルブに関して、ノズルは、回転軸を中心に予め定められた所定角度の範囲内でその先端が双方向に旋回(揺動)運動(以下、「揺振運動」または「揺振」ともいう。)するように設計される。本発明者等は、ノズルから吐出される作動流体が、ノズルの内壁面に与える圧力が左右の揺振運動に対する抗力として作用するという課題を見出した。揺振運動に対する大きな抗力は、作動流体の流れを切り替える動きを阻害することとなり、その結果、サーボバルブ及びサーボバルブに連結されたアクチュエータの応答性能を低下させる。第1実施形態において、ノズルの揺振運動に対する抗力を低減することができる例示的なサーボバルブが説明される。
図1は、第1実施形態のサーボバルブ100の概念図である。図1を参照して、サーボバルブ100が説明される。本実施形態において、「上」、「下」、「左」、「右」、「時計回り」、「反時計回り」、「鉛直」や「水平」といった方向を表す用語は、説明の明瞭化のみを目的として用いられる。本実施形態の原理は、これらの方向を表す用語によっては何ら限定されない。
サーボバルブ100は、ノズル200と、レシーバ300と、を備える。ノズル200は、ノズル200の上部に規定された回転軸RAX周りに時計回り及び反時計回りに揺振することができる。図1に示されるノズル200は、「中立位置」にある。中立位置において、ノズル200の中心線は、鉛直線VLに一致する。
ノズル200は、上面210と下面220とを含む。下面220は、レシーバ300に対向する。上面210は、下面220の上方に位置する。上面210には、流入口211が形成される。流入口211は、ポンプや作動流体を供給する他の流体供給源に接続される。作動流体(たとえば、作動油が挙げられるが、これに限られない。以下、単に「流体」ともいう。)は、流入口211を通じて、ノズル200に流入する。
下面220(先端面)には、流入口211から流入した作動流体が吐出される吐出口221が形成される。ノズル200の中心線は、流入口211の中心と吐出口221の中心とを通過する直線として定義されてもよい。
下面220は、吐出口221の輪郭を形成する吐出縁222を含む。吐出縁222は、円形輪郭を描いてもよいし、非円形の輪郭を描いてもよい。本実施形態の原理は、吐出縁222によって描かれる特定の輪郭形状に限定されない。
ノズル200には、流入口211から下方に延び、吐出口221に繋がるノズル流路230が形成される。ノズル流路230は、直管部231と、直管部231から下方に延びるテーパ管部232と、を含む。直管部231は、略一定の断面積でノズル200の中心線に沿って延びる。テーパ管部232は、吐出縁222に向けて狭まる。作動流体の吐出圧力は、テーパ管部232によって高められる。高圧の作動流体は、吐出口221から吐出される。ノズル200が中立位置にあるとき、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、鉛直線VLの延設方向に略一致する。ノズル200が時計回りに揺振すると、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、左下方となる。ノズル200が反時計回りに揺振すると、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、右下方となる。本実施形態において、第1方向は、中立位置にあるノズル200の吐出口221からの作動流体の吐出方向によって例示される。
ノズル200は、テーパ管部232の輪郭を形成するテーパ内壁240を含む。吐出縁222は、テーパ内壁240と下面220との間の境界に位置する。
レシーバ300は、ノズル200の下面220に対向する上面310を含む。上面310には、左流入口311及び右流入口312が形成される。左流入口311は、右流入口312の左方に位置する。左流入口311及び右流入口312の整列方向は、中立位置にあるノズル200の吐出口221から吐出される作動流体の吐出方向に対して略直角である。左流入口311及び右流入口312の整列方向は、回転軸RAX周りのノズル200の回転に伴う吐出口221の移動方向に一致する。本実施形態において、第2方向は、左流入口311及び右流入口312の整列方向及び/又は回転軸RAX周りのノズル200の回転に伴う吐出口221の移動方向によって例示される。
レシーバ300には、左流路313及び右流路314が形成される。左流路313は、左流入口311から左下方に延び、左流出口315で終端する。右流路314は、右流入口312から右下方に延び、右流出口316で終端する。左流路313は、右流路314に対して、鉛直線VL周りに点対称の関係を有する。左流出口315及び右流出口316は、レシーバ300の外面に形成され、スプールバルブ(図示せず)やアクチュエータ(図示せず)に連結される。
ノズル200が中立位置にあるとき、吐出口221から吐出された作動流体は、左流入口311と右流入口312とに略均等に流入する。本実施形態において、第1流路は、左流路313及び右流路314のうち一方によって例示される。第2流路は、左流路313及び右流路314のうち他方によって例示される。第1流入口は、左流入口311及び右流入口312のうち一方によって例示される。第2流入口は、左流入口311及び右流入口312のうち他方によって例示される。流入面は、レシーバ300の上面によって例示される。
図1は、左流路313の中心線CLを示す。中心線CLの延設方向は、左流路313の延設方向に一致する。図1は、鉛直線VLからの中心線CLの傾斜角α(<90°)を更に示す。上述の如く、右流路314は、左流路313と点対称の関係を有するので、鉛直線VLからの右流路314の中心線(図示せず)の傾斜角は、左流路313の傾斜角αに一致する。本実施形態において、延長線は、鉛直線VLによって例示される。
図1は、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPとを示す。鉛直線VL及び中心点LCP,RCPが、共通の仮想平面上に位置するように、ノズル200とレシーバ300との間の相対的な位置関係は設定される。図1は、共通の仮想平面上でのノズル200及びレシーバ300の断面を概念的に表す。本実施形態において、整列線は、中心点LCP,RCPを通過する直線によって例示される。
図1は、上述の仮想平面とテーパ内壁240とによって形成される2つの交線LIS,RISを示す。交線LISは、鉛直線VLの左方に形成される。交線RISは、鉛直線VLの右方に形成される。2つの交線LIS,RISは、鉛直線VL周りに点対称の関係を有する真っ直ぐな線分である。図1は、テーパ管部232のテーパ角βを更に示す。テーパ角βは、2つの交線LIS,RISの延長線の間の挟角(交線LIS,RISによって定められる交差角)として定義されてもよい。テーパ角βは、以下の式(1)に示される関係が成立するように決定される。以下の式(1)中の「2α」は、左流路313と右流路314との間の挟角に相当する。本実施形態において、第1交線は、交線LIS,RISのうち一方によって例示される。第2交線は、交線LIS,RISのうち他方によって例示される。
<第2実施形態>
第1実施形態に関連して説明された角度関係は、ノズルの移動方向の抗力の低減に貢献する。第2実施形態において、抗力の低減原理が説明される。
図2は、従来のサーボバルブ中の流線データを表す。図2を参照して、従来のサーボバルブ内で発生する流線が説明される。
図2は、ノズルNZLと、ノズルNZLの下方に配置されたレシーバRCVと、を示す。図2には、レシーバRCV中に形成された左流路LFP及び右流路RFPが描かれている。図2には、ノズルNZLのテーパ内壁TIW及びテーパ内壁TIWに囲まれたテーパ流路TFPが更に描かれている。左流路LFP、右流路RFP、テーパ流路TFP及びノズルNZLとレシーバRCVとの間で水平方向に延びる空隙内に描かれる多数の曲線は、作動流体の流線を表す。
図2は、左流路LFPと右流路RFPとの間の分岐点を通過する鉛直線VLを示す。図2に示されるノズルNZLは、中立位置から左方に移動しており、テーパ流路TFPを通じてノズルNZLから吐出された作動流体は、左流路LFPに主に流入する。このとき、テーパ流路TFPから左流路LFPに向かう作動流体の流線は、左方に湾曲する。左方への流線の湾曲は、テーパ内壁TIWに対して右方に作用する遠心力の発生を意味する。以下の式(2)は、遠心力によって発生する圧力(左辺)と湾曲した流線の半径との関係とを表す。
図3Aは、交線RISに作用する遠心力CF1を示す。図3Bは、交線RISよりも大きな勾配を有する線分SGLに作用する遠心力CF2を示す。図1、図3A及び図3Bを参照して、テーパ角と遠心力との間の関係が説明される。
上述の如く、ノズル200が左方へ移動するとき、流線の湾曲によって、遠心力CF1がテーパ内壁240上の交線RISに作用する。図3Aに示される遠心力CF1のスカラは、図3Bに示される遠心力CF2のスカラと等しい。遠心力CF1は、交線RISに対して直角である。遠心力CF2は、線分SGLに対して直角である。
図3Aは、遠心力CF1の水平分力HF1と、遠心力CF1の垂直分力VF1と、を示す。水平分力HF1は、ノズル200の移動方向(左方)とは反対向きである。したがって、水平分力HF1は、ノズル200の左方の移動に対して、抗力として作用する。
図3Bは、遠心力CF2の水平分力HF2と、遠心力CF2の垂直分力VF2と、を示す。水平分力HF2は、水平分力HF1よりも大きい。このことは、テーパ角βが大きな値であるならば、ノズル200の移動方向の抗力が小さくなることを意味する。本発明者等によれば、第1実施形態に関連して説明された不等式によって表される関係が成立するように、テーパ角βが設定されるならば、サーボバルブ100は、従来のサーボバルブよりも高い応答性能を有することができる。例えば、テーパ角βは、90°以上に設定されてもよい。
<第3実施形態>
ノズルのテーパ角は、レシーバに形成された一対の流入口に基づいて決定されてもよい。第3実施形態において、レシーバに形成された一対の流入口に基づくテーパ角の決定方法が説明される。
図4は、第3実施形態のサーボバルブ100Aの概念図である。図4を参照して、サーボバルブ100Aが説明される。第1実施形態の説明は、第1実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。本実施形態において、「上」、「下」、「左」、「右」、「時計回り」、「反時計回り」、「鉛直」や「水平」といった方向を表す用語は、説明の明瞭化のみを目的として用いられる。本実施形態の原理は、これらの方向を表す用語によっては何ら限定されない。
第1実施形態と同様に、サーボバルブ100Aは、ノズル200と、レシーバ300と、を備える。第1実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
サーボバルブ100Aは、駆動部400を更に備える。駆動部400は、回転軸RAX周りに、ノズル200を揺振させる。駆動部400は、電磁力を用いて、ノズル200に回転力を与える一般的なトルクモータであってもよいし、他の駆動装置であってもよい。本実施形態の原理は、駆動部400として用いられる特定の装置に限定されない。
図4に示されるノズル200は、中立位置にある。図4は、中立位置にあるノズル200の中心線とレシーバ300の上面310との間の交点ISPを示す。交点ISPは、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPとを通過する直線上に位置する。
ノズル200が、駆動部400によって、中立位置から時計回りに揺振されると、吐出口221は、左方に移動する。この間、交点ISPは、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPとを通過する直線に沿って移動し、左流入口311の中心点LCPに近づく。この結果、作動流体は、左流入口311に主に流入する。第2実施形態に関連して説明された如く、作動流体が、左流入口311に主に流入している間、交線RIS上に作用する作動流体の遠心力の水平分力は、交線LISに作用する作動流体の遠心力の水平分力よりも大きくなる。
ノズル200が、駆動部400によって、中立位置から反時計回りに揺振されると、吐出口221は、右方に移動する。この間、交点ISPは、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPとを通過する直線に沿って移動し、右流入口312の中心点RCPに近づく。この結果、作動流体は、右流入口312に主に流入する。第2実施形態に関連して説明された如く、作動流体が、右流入口312に主に流入している間、交線LIS上に作用する作動流体の遠心力の水平分力は、交線RISに作用する作動流体の遠心力の水平分力よりも大きくなる。本実施形態において、フローフォースは、作動流体の遠心力の水平分力によって例示される。
図4は、交線LIS,RISの下端からレシーバ300に向けて延びる延長線LEX,REXを示す。延長線LEXが、右流入口312内に延び、且つ、延長線REXが、左流入口311内に延びるように、テーパ角βが決定されてもよい。テーパ角βは、従来のノズルのテーパ角よりも大きくなるので、従来のノズルと比べて、交線LIS,RISに加わる水平分力は小さくなる。
<第4実施形態>
上述の実施形態に関して、テーパ管部の形状は、真っ直ぐな母線を有する円錐台である。代替的に、テーパ管部の形状は、球状或いは楕円球であってもよい。この場合、テーパ内壁は、左流入口の中心、右流入口の中心及び吐出口の中心を包摂する仮想平面上で湾曲した輪郭を描く。第3実施形態に関連して説明された設計原理は、仮想平面上で湾曲した輪郭を描くテーパ内壁を有するノズルに対しても適用可能である。第4実施形態において、仮想平面上で湾曲した輪郭を描くテーパ内壁を有するノズルを備える例示的なサーボバルブが説明される。
図5は、第4実施形態のサーボバルブ100Bの概念図である。図5を参照して、サーボバルブ100Bが説明される。第3実施形態の説明は、第3実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。本実施形態において、「上」、「下」、「左」、「右」、「時計回り」、「反時計回り」、「鉛直」や「水平」といった方向を表す用語は、説明の明瞭化のみを目的として用いられる。本実施形態の原理は、これらの方向を表す用語によっては何ら限定されない。
第3実施形態と同様に、サーボバルブ100Bは、レシーバ300と、駆動部400と、を備える。第3実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
サーボバルブ100Bは、ノズル200Bを更に備える。第3実施形態と同様に、ノズル200Bは、上面210と下面220とを含む。第3実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
ノズル200B内には、ノズル流路230Bが形成される。ノズル流路230Bは、上面210に形成された流入口211から下方に延び、下面220に形成された吐出口221に繋がる。第3実施形態と同様に、ノズル流路230Bは、直管部231を含む。第3実施形態の説明は、直管部231に援用される。
ノズル流路230Bは、テーパ管部232Bを更に含む。テーパ管部232Bは、直管部231から下方に延び、吐出口221で開口する。テーパ管部232Bは、吐出口221に向けて狭まる半楕円球状である。作動流体の吐出圧力は、テーパ管部232Bによって高められる。高圧の作動流体は、吐出口221から吐出される。ノズル200Bが中立位置にあるとき、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、鉛直線VLに略一致する。ノズル200Bが時計回りに揺振すると、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、左下方となる。ノズル200Bが反時計回りに揺振すると、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、右下方となる。
ノズル200Bは、テーパ管部232Bの輪郭を形成するテーパ内壁240Bを含む。吐出縁222は、テーパ内壁240Bと下面220との間の境界に位置する。
図5は、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPとを示す。鉛直線VL及び中心点LCP,RCPが、共通の仮想平面上に位置するように、ノズル200Bとレシーバ300との間の相対的な位置関係は設定される。図5は、共通の仮想平面上でのノズル200B及びレシーバ300の断面を概念的に表す。
図5は、上述の仮想平面とテーパ内壁240Bとによって形成される2つの交線LIC,RICを示す。交線LICは、鉛直線VLの左方に形成される。交線RICは、鉛直線VLの右方に形成される。2つの交線LIC,RICは、鉛直線VL周りに点対称の関係を有する曲線である。本実施形態において、第1交線は、交線LIC,RICのうち一方によって例示される。第2交線は、交線LIC,RICのうち他方によって例示される。
図5は、交線LIC,RICに対する接線LTG,RTGを示す。接線LTGは、交線LICの上端(すなわち、テーパ管部232と直管部231との間の境界に位置する端部)と、交線LICの下端に相当する吐出縁222と、の間の中点において、交線LICに接する。接線RTGは、交線RICの上端(すなわち、テーパ管部232と直管部231との間の境界に位置する端部)と、交線RICの下端に相当する吐出縁222と、の間の中点において、交線RICに接する。テーパ角βは、接線LTG,RTGの交差角として定義されてもよい。
ノズル200Bが中立位置にあるとき、接線LTGが、右流入口312内に延び、且つ、接線RTGが、左流入口311内に延びるように、テーパ角βが決定されてもよい。テーパ角βは、従来のノズルのテーパ角よりも大きくなるので、従来のノズルと比べて、交線LIC,RICに加わる水平分力は小さくなる。
<第5実施形態>
上述の実施形態に関して、テーパ管部は、ノズルの下端に形成されている。しかしながら、テーパ管部は、他の位置に形成されてもよい。第5実施形態において、テーパ管部の下に直管部が形成されたノズルを備える例示的なサーボバルブが説明される。
図6は、第5実施形態のサーボバルブ100Cの概念図である。図6を参照して、サーボバルブ100Cが説明される。上述の実施形態の説明は、上述の実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。本実施形態において、「上」、「下」、「左」、「右」、「時計回り」、「反時計回り」、「鉛直」や「水平」といった方向を表す用語は、説明の明瞭化のみを目的として用いられる。本実施形態の原理は、これらの方向を表す用語によっては何ら限定されない。
第4実施形態と同様に、サーボバルブ100Cは、レシーバ300と、駆動部400と、を備える。第4実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
サーボバルブ100Cは、ノズル200Cを更に備える。第4実施形態と同様に、ノズル200Cは、上面210と下面220とを含む。第4実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
ノズル200C内には、ノズル流路230Cが形成される。ノズル流路230Cは、上面210に形成された流入口211から下方に延び、下面220に形成された吐出口221に繋がる。第4実施形態と同様に、ノズル流路230Cは、直管部231を含む。第4実施形態の説明は、直管部231に援用される。
ノズル流路230Cは、テーパ管部232Cと、下管部233と、を更に含む。テーパ管部232Cは、直管部231から下方に狭まり、下管部233へ繋がる。下管部233は、テーパ管部232Cから下方に延び、吐出口221で開口する。テーパ管部232Cとは異なり、下管部233は、直管である。作動流体の吐出圧力は、テーパ管部232Cによって高められる。作動流体は、その後、下管部233で若干整流され、吐出口221から吐出される。ノズル200Cが中立位置にあるとき、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、鉛直線VLに略一致する。ノズル200Cが時計回りに揺振すると、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、左下方となる。ノズル200Cが反時計回りに揺振すると、吐出口221からの作動流体の吐出方向は、右下方となる。
ノズル200Cは、テーパ内壁240Cと下管壁250とを含む。テーパ内壁240Cは、テーパ管部232Cの輪郭を形成する。下管壁250は、テーパ内壁240Cから下方に延び、吐出縁222で終端する。下管壁250は、下管部233の輪郭を形成する。
図6は、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPとを示す。鉛直線VL及び中心点LCP,RCPが、共通の仮想平面上に位置するように、ノズル200Cとレシーバ300との間の相対的な位置関係は設定される。図6は、共通の仮想平面上でのノズル200C及びレシーバ300の断面を概念的に表す。
図6は、上述の仮想平面とテーパ内壁240Cとによって形成される2つの交線LIS,RISを示す。交線LISは、鉛直線VLの左方に形成される。交線RISは、鉛直線VLの右方に形成される。2つの交線LIS,RISは、鉛直線VL周りに点対称の関係を有する曲線である。
図4は、交線LIS,RISの下端からレシーバ300に向けて延びる延長線LEX,REXを示す。延長線LEXが、右流入口312内に延び、且つ、延長線REXが、左流入口311内に延びるように、テーパ角βが決定されてもよい。テーパ角βは、従来のノズルのテーパ角よりも大きくなるので、従来のノズルと比べて、交線LIS,RISに加わる水平分力は小さくなる。
ノズル200Cの移動方向とは反対向きの力が、下管壁250に作用する。したがって、下管部233の軸長寸法は、ノズル200Cの移動方向とは反対向きの力が過度に大きくならないように決定される。下管部233の軸長寸法は、テーパ管部232Cよりも短くてもよい。
<第6実施形態>
上述の実施形態の実施形態の設計原理の下では、吐出口の周囲において、作動流体に対して、過度に高い抵抗が加わることもある。第6実施形態において、吐出口周囲において、抵抗を低減する管路構造を有するノズルを備える例示的なサーボバルブが説明される。
図7は、第6実施形態のサーボバルブ100Dの概念図である。図7を参照して、サーボバルブ100Dが説明される。上述の実施形態の説明は、上述の実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。本実施形態において、「上」、「下」、「左」、「右」、「時計回り」、「反時計回り」、「鉛直」や「水平」といった方向を表す用語は、説明の明瞭化のみを目的として用いられる。本実施形態の原理は、これらの方向を表す用語によっては何ら限定されない。
第5実施形態と同様に、サーボバルブ100Dは、レシーバ300と、駆動部400と、を備える。第5実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
サーボバルブ100Dは、ノズル200Dを更に備える。第5実施形態と同様に、ノズル200Dは、上面210と下面220とを含む。第5実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
ノズル200D内には、ノズル流路230Dが形成される。ノズル流路230Dは、上面210に形成された流入口211から下方に延び、下面220に形成された吐出口221に繋がる。第5実施形態と同様に、ノズル流路230Dは、直管部231とテーパ管部232Cとを含む。第5実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
ノズル流路230Dは、下管部233Dを更に含む。下管部233Dは、吐出口221から上方に狭まり、テーパ管部232Cの下端に繋がる。第5実施形態とは異なり、下管部233Dの断面は、下方に向けて大きくなる。したがって、吐出口221の周囲において、作動流体に作用する抵抗は、過度に大きくならない。
ノズル200Dは、下管壁250Dを含む。テーパ内壁240Cは、テーパ管部232Cの輪郭を形成する。下管壁250Dは、テーパ内壁240Cから下方に延び、吐出縁222で終端する。下管壁250Dは、下管部233Dの輪郭を形成する。
ノズル200Dの移動方向とは反対向きの力が、下管壁250Dに作用する。したがって、下管部233Dの軸長寸法は、ノズル200Dの移動方向とは反対向きの力が過度に大きくならないように決定される。下管部233Dの軸長寸法は、テーパ管部232Cよりも短くてもよい。
<第7実施形態>
上述の実施形態に関連して説明されたサーボバルブは、作動流体によって駆動される様々な流体装置に組み込まれ得る。第7実施形態において、例示的な流体装置が説明される。
図8は、第7実施形態の流体装置500の概略図である。図4及び図8を参照して、流体装置500が説明される。第3実施形態の説明は、第3実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。
流体装置500は、サーボバルブ100Eと、アクチュエータ600と、2つのポンプ510,520と、タンク530と、を備える。第3実施形態と同様に、サーボバルブ100Eは、レシーバ300を含む。第3実施形態の説明は、レシーバ300に援用される。レシーバ300に形成された左流路313及び右流路314の傾斜角は、上述の実施形態に関連して説明された設計原理に基づき決定される。
サーボバルブ100Eは、トルクモータ400Eを含む。トルクモータ400Eは、図4を参照して説明された駆動部400に対応する。駆動部400に関する説明は、トルクモータ400Eに援用される。
トルクモータ400Eは、下コイル411と、上コイル412と、下磁極片421と、上磁極片422と、磁性ロッド430と、を含む。上コイル412は、下コイル411の上方に配置される。下磁極片421は、略円筒状に形成されてもよい。下コイル411は、下磁極片421内に収容される。下磁極片421と同様に、上磁極片422は、略円筒状に形成されてもよい。上コイル412は、上磁極片422内に配置される。上磁極片422の下縁は、下磁極片421の上縁に対向する。磁性ロッド430は、略水平に延びる。磁性ロッド430の左端及び右端は、下磁極片421の上縁と上磁極片422の下縁との間の空隙内に位置する。
下コイル411及び上コイル412には、電流が供給される。この結果、下磁極片421及び上磁極片422は、磁石として機能する。磁性ロッド430の右端が、下磁極片421に引きつけられる一方で、磁性ロッド430の左端が、上磁極片422に引きつけられるように、電流が、下コイル411及び上コイル412に供給されると、磁性ロッド430は、時計回りに回転する。磁性ロッド430の左端が、下磁極片421に引きつけられる一方で、磁性ロッド430の右端が、上磁極片422に引きつけられるように、電流が、下コイル411及び上コイル412に供給されると、磁性ロッド430は、反時計回りに回転する。
サーボバルブ100Eは、ノズル部200Eを含む。ノズル部200Eは、図4を参照して説明されたノズル200に相当する。ノズル200に関する説明は、ノズル部200Eに援用されてもよい。
ノズル部200Eは、ノズル片260と、フレキシブルチューブ270と、連結シャフト280と、を含む。フレキシブルチューブ270は、鉛直に延び、トルクモータ400Eを貫通する。ノズル片260は、フレキシブルチューブ270の下端に取り付けられる。高圧の作動流体は、フレキシブルチューブ270に供給される。作動流体は、フレキシブルチューブ270によって案内され、ノズル片260に到達する。
ノズル片260は、レシーバ300の上面310に対向する下面261を含む。下面261には、吐出口262が形成される。吐出口262へ向けて延びるテーパ管部のテーパ角は、第3実施形態に関連して説明された設計原理に基づいて決定される。ノズル片260に供給された高圧の作動流体は、吐出口262から吐出される。その後、作動流体は、レシーバ300に流入する。
連結シャフト280は、フレキシブルチューブ270を、磁性ロッド430の中間部に連結する。フレキシブルチューブ270及びノズル片260は、時計回り及び反時計回りの磁性ロッド430の回転に応じて、左右に往復移動することができる。
磁性ロッド430が連結シャフト280周りに時計回りの回転をすると、ノズル片260の吐出口262は、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPを結ぶ直線に沿って左方に移動する。ノズル片260の内壁部のテーパ角は、第3実施形態に関連して説明された設計原理に基づいて決定されているので、作動流体がノズル片260の内壁に与える右向きの力は小さい。したがって、ノズル片260は、左方へ素早く移動することができる。ノズル片260が左方へ移動すると、吐出口262と左流入口311との間の重畳面積は増加する一方で、吐出口262と右流入口312との間の重畳面積は減少する。この場合、レシーバ300内に形成された左流路313への作動流体の流入量は、右流路314へ流入する作動流体の流量を上回る。
磁性ロッド430が連結シャフト280周りに反時計回りの回転をすると、ノズル片260の吐出口262は、左流入口311の中心点LCPと右流入口312の中心点RCPを結ぶ直線に沿って右方に移動する。ノズル片260の内壁部のテーパ角は、第3実施形態に関連して説明された設計原理に基づいて決定されているので、作動流体がノズル片260の内壁に与える左向きの力は小さい。したがって、ノズル片260は、右方へ素早く移動することができる。ノズル片260が右方へ移動すると、吐出口262と右流入口312との間の重畳面積は増加する一方で、吐出口262と左流入口311との間の重畳面積は減少する。この場合、レシーバ300内に形成された右流路314への作動流体の流入量は、左流路313へ流入する作動流体の流量を上回る。
サーボバルブ100Eは、スプールバルブ700を含む。スプールバルブ700は、筐体710と、スプール720と、カンチレバースプリング730と、を含む。スプール720は、筐体710内に配置される。この結果、筐体710内に、作動流体が流動する流動経路が形成される。カンチレバースプリング730は、筐体710とスプール720とを連結する。カンチレバースプリング730は、スプール720を閉止位置に留まらせようとする力をスプール720に加える。スプール720が閉止位置にあるとき、スプールバルブ700は、ポンプ510,520からアクチュエータ600への作動流体の供給経路を遮断する。スプール720が閉止位置から左方或いは右方へ移動すると、スプールバルブ700は、ポンプ510,520からアクチュエータ600への作動流体の供給経路を開く。
筐体710には、7つのポート711〜717が形成される。ポート711は、レシーバ300の左流出口315に流体流通可能に接続される。ポート712は、レシーバ300の右流出口316に流体流通可能に接続される。ポンプ510,520は、ポート713,714にそれぞれ取り付けられる。ポート715,716は、アクチュエータ600に流体流通可能に接続される。タンク530は、ポート717に取り付けられる。
スプール720は、4つの隔壁721,722,723,724と、これらの隔壁721,722,723,724を連結する連結シャフト725と、を含む。連結シャフト725は、略水平に延びる。隔壁721は、連結シャフト725の左端に形成される。隔壁722は、連結シャフト725の右端に形成される。隔壁723は、隔壁721,722の間に位置する。隔壁724は、隔壁722,723の間に位置する。
隔壁721,722,723,724は、筐体710の内部空間を5つのチャンバ741,742,743,744,745に仕切る。チャンバ741は、最も左に形成される。チャンバ742は、最も右に形成される。チャンバ743は、隔壁721,723間に形成される。チャンバ744は、隔壁722,724間に形成される。チャンバ745は、隔壁723,724間に形成される。
ノズル片260が左方に移動すると、作動流体は、ノズル片260の吐出口262からレシーバ300の左流入口311に主に流入する。左流入口311に流入した作動流体は、その後、レシーバ300の左流路313、レシーバ300の左流出口315及びスプールバルブ700のポート711を通じて、チャンバ741に流入する。この結果、チャンバ741の内圧は増加し、スプール720は、閉止位置から右方に移動する。この間、チャンバ742内に存在していた作動流体は、スプールバルブ700のポート712、レシーバ300の右流出口316及びレシーバ300の右流路314を通じて、右流入口312から噴出される。その後、ノズル片260が中立位置に復帰すると、ノズル片260の吐出口262から吐出された作動流体は、レシーバ300の左流入口311と右流入口312とに略均等に流入する。この間、スプール720に左方に作用する力は、スプール720に右方に作用する力よりもカンチレバースプリング730の復元力の分だけ大きくなる。したがって、スプール720は、左方へ移動し、閉止位置に復帰する。
ノズル片260が右方に移動すると、作動流体は、ノズル片260の吐出口262からレシーバ300の右流入口312に主に流入する。右流入口312に流入した作動流体は、その後、レシーバ300の右流路314、レシーバ300の右流出口316及びスプールバルブ700のポート712を通じて、チャンバ742に流入する。この結果、チャンバ742の内圧は増加し、スプール720は、閉止位置から左方に移動する。この間、チャンバ741内に存在していた作動流体は、スプールバルブ700のポート711、レシーバ300の左流出口315及びレシーバ300の左流路313を通じて、左流入口311から噴出される。その後、ノズル片260が中立位置に復帰すると、ノズル片260の吐出口262から吐出された作動流体は、レシーバ300の左流入口311と右流入口312とに略均等に流入する。この間、スプール720に右方に作用する力は、スプール720に左方に作用する力よりもカンチレバースプリング730の復元力の分だけ大きくなる。したがって、スプール720は、右方へ移動し、閉止位置に復帰する。
スプール720が閉止位置にあるとき、隔壁723は、ポート715を閉じる。このとき、隔壁724は、ポート716を閉じる。ポンプ510は、ポート713を通じて、高圧の作動流体をチャンバ743に供給する。ポンプ520は、ポート714を通じて、高圧の作動流体をチャンバ744へ供給する。スプール720が閉止位置から右方に移動すると、チャンバ743からアクチュエータ600への作動流体の供給経路及びアクチュエータ600からチャンバ745への作動流体の排出経路が開かれる。スプール720が閉止位置から左方に移動すると、チャンバ744からアクチュエータ600への作動流体の供給経路及びアクチュエータ600からチャンバ745への作動流体の排出経路が開かれる。したがって、ポート715,716からアクチュエータ600への作動流体の流出量は、ノズル片260の左右の移動によって調整される。本実施形態において、第1流出口は、ポート715,716のうち一方によって例示される。第2流出口は、ポート715,716のうち他方によって例示される。
アクチュエータ600は、筐体610と、可動片620と、を含む。筐体610には、2つのポート611,612が形成される。アクチュエータ600のポート611は、スプールバルブ700のポート715に流体流通可能に接続される。アクチュエータ600のポート612は、スプールバルブ700のポート716に流体流通可能に接続される。
可動片620は、隔壁621と、ロッド622と、を含む。隔壁621は、筐体610の内部空間を左チャンバ631と右チャンバ632とに仕切る。ポート611は、左チャンバ631に繋がる。ポート612は、右チャンバ632に繋がる。ロッド622は、隔壁621から右方に延び、筐体610の外に突出する。ロッド622は、筐体610の外に配置された他の外部装置(図示せず)に接続される。本実施形態において、空房部は、筐体610の内部空間によって例示される。
スプール720が、閉止位置から右方に移動すると、ポンプ510からポート713を通じてチャンバ743に供給された作動流体は、ポート715,611を通じて、左チャンバ631に流入する。左チャンバ631の内圧は増加するので、可動片620は右方に移動する。この間、右チャンバ632は、ポート612,716を介して、チャンバ745に連通する。右チャンバ632内に存在していた作動流体は、右方に移動する可動片620によって、右チャンバ632から押し出され、チャンバ745に流入する。チャンバ745に流入した作動流体は、その後、タンク530に貯留される。
スプール720が、閉止位置から左方に移動すると、ポンプ520からポート714を通じてチャンバ744に供給された作動流体は、ポート716,612を通じて、右チャンバ632に流入する。右チャンバ632の内圧は増加するので、可動片620は左方に移動する。この間、左チャンバ631は、ポート611,715を介して、チャンバ745に連通する。左チャンバ631内に存在していた作動流体は、左方に移動する可動片620によって、左チャンバ631から押し出され、チャンバ745に流入する。チャンバ745に流入した作動流体は、その後、タンク530に貯留される。
図8において、レシーバ300は、スプールバルブ700の筐体710とは別体に描かれている。しかしながら、レシーバ300は、スプールバルブ700の筐体710と一体的に形成されてもよい。
本実施形態において、カンチレバースプリング730は、スプール720と筐体710とに連結されている。カンチレバースプリング730に代えて、スプール720とノズル部200Eとを連結する弾性部材が用いられてもよい。
本実施形態において、アクチュエータ600は、スプールバルブ700に連結されている。しかしながら、アクチュエータ600は、レシーバ300に直接的に連結されてもよい。
<第8実施形態>
本発明者等は、テーパ角において異なる複数のモデルを用いて、テーパ角とノズル内の圧力分布との間の関係を解析した。第8実施形態において、解析結果が説明される。
図9A乃至図9Cは、吐出口周囲の作動流体の圧力分布を表す等高線図である。図9A乃至図9Cを参照して、テーパ角とノズル内の圧力分布との間の関係が説明される。
図9Aは、ノズル201と、レシーバ301と、を示す。ノズル201には、ノズル流路202が形成されている。レシーバ301には、左流路302及び右流路303が形成されている。ノズル201の下面とレシーバ301の上面との間には、間隙203が形成されている。ノズル201のテーパ角βは、「0°」である。ノズル201は、中立位置から右方に移動している。
図9Aは、ノズル流路202、間隙203、左流路302及び右流路303内の圧力分布を表す複数の等高線を示す。図9Aに示される如く、圧力分布中において最も高い圧力Pmaxを表す領域は、ノズル流路202の上部に表される。圧力分布中において最も高い圧力Pminを表す領域は、間隙203の左側部分に現れる。
1つの等高線が、吐出口付近のノズル流路202の領域を鉛直方向に延びている。当該等高線の左側の領域は、圧力P1の領域である。当該等高線の右側の領域は、圧力P1より小さな圧力P2の領域である。圧力P1の領域の上の領域は、圧力P1より大きな圧力P3の領域である。圧力P3の領域は、水平に延びる等高線によって、圧力P1の領域から仕切られる。図9Aに示される如く、ノズル流路202を形成する内壁の左部分は、高い圧力P1に曝されるのに対して、ノズル流路202を形成する内壁の右部分は、低い圧力P2に曝される。したがって、ノズル201は、左方に作用する力を作動流体から受ける。ノズル201が作動流体から受ける力は、ノズル201の移動方向(すなわち、右方)とは反対向きであるので、ノズル201の応答性は悪い。
図9Aと同様に、図9Bは、レシーバ301を示す。図9Bは、ノズル204を更に示す。ノズル204には、ノズル流路205が形成されている。ノズル204の下面とレシーバ301の上面との間には、間隙206が形成されている。ノズル204のテーパ角βは、「β1(>0°)」である。レシーバ301に対するノズル204の相対位置は、ノズル201と同じである。
圧力Pmax,Pminは、図9Aと略同様の位置に現れる。圧力P1,P3間の境界を表す略水平な等高線は、吐出口に近づく。このことは、ノズル流路205の左部分の圧力とノズル流路205の右部分の圧力との差は、ノズル流路202内の圧力の左右バランスと比べて小さいことを意味する。したがって、ノズル204は、ノズル201よりも高い応答性を有する。しかしながら、ノズル流路205を形成する内壁の左部分は、ノズル流路205を形成する内壁の右部分よりも高い圧力に曝されているので、ノズル204の右方への変位は、作動流体の圧力によって若干阻害される。
図9Aと同様に、図9Cは、レシーバ301を示す。図9Bは、ノズル207を更に示す。ノズル207には、ノズル流路208が形成されている。ノズル207の下面とレシーバ301の上面との間には、間隙209が形成されている。ノズル207のテーパ角βは、「β2(>β1)」である。レシーバ301に対するノズル207の相対位置は、ノズル201と同じである。
圧力Pmax,Pminは、図9Aと略同様の位置に現れる。圧力P1,P3間の境界を表す等高線は、図9Bの等高線と比べて、水平に更に近づく。したがって、ノズル207は、ノズル204よりも高い応答性を有する。ノズル流路205を形成する内壁の左部分が曝される圧力は、ノズル流路205を形成する内壁の右部分が曝される圧力に略等しいので、作動流体の圧力は、ノズル204の右方への変位をほとんど阻害しない。
図10Aは、レシーバ301に対するノズル201の相対位置、ノズル201から吐出される作動流体の流量及びノズル201が作動流体から受ける力の関係を表すグラフである。図10Bは、レシーバ301に対するノズル204の相対位置、ノズル204から吐出される作動流体の流量及びノズル204が作動流体から受ける力の関係を表すグラフである。図10Cは、レシーバ301に対するノズル207の相対位置、ノズル207から吐出される作動流体の流量及びノズル207が作動流体から受ける力の関係を表すグラフである。図3A、図3B、図9乃至図10Cを参照して、テーパ角βとノズル201,204,207内の圧力との間の関係が説明される。
図10A,図10B及び図10Cのグラフの横軸は、レシーバ301に対するノズル201,204,207の相対位置をそれぞれ表す。図10A,図10B及び図10Cのグラフそれぞれの原点は、中立位置を表す。図10A,図10B及び図10Cのグラフの縦軸は、作動流体の吐出量と、ノズル201,204,207の内壁が作動流体から受ける力と、ノズル201,204,207の下面(すなわち、レシーバ301に対向する面)が、作動流体から受ける力と、ノズル201,204,207の外周面が作動流体から受ける力と、これらの力の総和と、を示す。
図10A、図10B及び図10Cのグラフから、テーパ角βが0°に近づくと、ノズルの内壁が作動流体から受ける力が、ノズルが作動流体から受ける力全体のうち大きな部分を占めることが分かる。テーパ角βが0°から離れるにつれて、ノズルの内壁が作動流体から受ける力の影響は小さくなる。図9乃至図10Cに示される解析結果は、第2実施形態に関連して説明された力学モデル(図3A及び図3Bを参照)に合致しており、ノズルの応答性能に対するテーパ角βの有効性を実証している。ノズルを設計する設計者は、作動流体がノズルの内壁に与える水平方向の圧力と、ノズルの吐出口における抵抗と、を考慮して、テーパ角βを決定してもよい。したがって、上述の実施形態の原理は、テーパ角βの特定の値に限定されない。
以上、本発明の実施形態を説明した。本実施形態では、ノズルの吐出口につながるテーパ内壁によって定められるテーパ角βを、流路の延設方向と流入面に直交する方向とがなす角度αの2倍より大きくした。これにより、テーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力(ノズルの変位を阻害する力)が小さくなってノズルが素早く変位できるので、アクチュエータの応答速度が向上する。
ノズルが受けるフローフォースは、上式(2)で表される圧力勾配に比例して大きくなる。図11に示すように、ノズルNZLが左流路LFPに向かって矢印D方向に移動した場合を考える。図11の下部には、吐出口近傍での作動流体の圧力勾配のグラフを例示する。図11のグラフに一点鎖線で示すように、吐出口近傍で左流路LFP側から右流路RFP側に向かって作動流体の圧力が上昇し、圧力勾配が右肩上がりの場合、矢印Dとは逆方向に作用するフローフォースが発生する。これにより、ノズルNZLの動きが阻害される。一方で、図11のグラフに実線で示すように、作動流体の圧力を一定、もしくは圧力勾配を左肩下がりにできれば、ノズルNZLの動きを阻害するフローフォースを抑制できる。
ここで、以下の式(3)で示すように、ノズルNZLの移動方向とは反対方向に作用するフローフォースFFは、上式(2)に示した圧力勾配に比例すると仮定する。
作動流体の流線の半径rは、ノズルNZLの対向面とレシーバRCVの流入面との間隔Lngを用いて、以下の式(4)で表される。
下式(5)に示すように、フローフォースFFは、作動流体の流線の半径rに反比例するので、下式(6)が成り立つ。また、式(6)から式(7)が導かれる。
図12は、上述の関係式から得られる圧力勾配と角度比β/αとの関係を例示する図である。図12には、ノズルNZLが左流路LFP側に移動した場合の左流路LFP側から右流路RFP側に向かう作動流体の圧力勾配であって、流路の傾斜角αが30度、40度、50度、60度の場合を示した。圧力勾配が0より大きいと、フローフォースFFが増加する。また、圧力勾配がゼロ以下では、フローフォースFFが低減する。図12に示す関係から、角度比β/αを2より大きく、すなわちノズルのテーパ角βを流路の傾斜角αの2倍より大きくすれば、圧力勾配がゼロ以下になるので、フローフォースFFを抑制できる。こうした構成により、フローフォースを抑制できるので、ノズルが移動しやすくなってアクチュエータの応答速度が向上する。
上述の実施形態の原理は、中立位置にあるノズル上に描かれた鉛直線について対称的な構造に基づいて説明されている。しかしながら、サーボバルブは、鉛直線について非対称的な構造を有してもよい。たとえば、鉛直線に対する左流路の傾斜角は、鉛直線に対する右流路の傾斜角と相違してもよい。
上述の様々な実施形態に関連して説明された設計原理は、様々なサーボバルブ及び流体装置に適用可能である。上述の様々な実施形態のうち1つに関連して説明された様々な特徴のうち一部が、他のもう1つの実施形態に関連して説明されたサーボバルブ及び流体装置に適用されてもよい。
本発明の一局面の概要は、次の通りである。本発明の一局面のサーボバルブは、流体を用いてアクチュエータを駆動する。このサーボバルブは、前記流体が吐出される吐出口の輪郭を形成する吐出縁と、前記吐出縁に向けて狭まるテーパ内壁と、を含むノズルと、前記吐出口から吐出された前記流体が流入する流路が形成されたレシーバと、を備える。前記ノズルは、前記流体を吐出する吐出方向とは異なる第2方向に変位される。前記流路の延設方向は、前記ノズルに対向する流入面に直交する方向に対して、角度αで傾斜する。前記テーパ内壁によって定められるテーパ角は、前記角度αの2倍よりも大きい。
上記構成によれば、テーパ内壁によって定められるテーパ角は、角度αの2倍よりも大きいので、ノズルの変位方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、前記流路は、前記ノズルの変位方向に並ぶ第1流路及び第2流路を含んでもよい。前記第1流路と前記第2流路とは、延設方向が異なってもよい。前記テーパ角は、前記第1流路と前記第2流路との間の挟角よりも大きくてもよい。
上記構成によれば、テーパ角は、第1流路と第2流路との間の挟角よりも大きいので、ノズルの変位方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、サーボバルブは、前記第1流路の端部として形成された第1流入口及び前記第2流路の端部として形成された第2流入口が整列する整列線に沿う方向に、前記ノズルを駆動する駆動部を更に備えてもよい。前記駆動部は、前記吐出口の中心から前記流体の吐出方向に延びる延長線が前記第1流入口と前記第2流入口との間で前記整列線に交差する中立位置から前記整列線上で変位するように、前記ノズルを駆動してもよい。
上記構成によれば、テーパ角は、第1流路と第2流路との間の挟角よりも大きいので、整列線に沿う方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、整列線上で、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、前記延長線と前記整列線とを包摂する仮想平面及び前記テーパ内壁は、真っ直ぐな第1交線及び真っ直ぐな第2交線を形成してもよい。前記ノズルが前記中立位置にあるとき、前記第1交線の延長線は、前記第1流入口内に延び、且つ、前記第2交線の延長線は、前記第2流入口内に延びてもよい。
上記構成によれば、第1交線の延長線は、第1流入口内に延び、且つ、第2交線の延長線は、第2流入口内に延びるので、テーパ内壁のテーパ角は、大きくなる。したがって、整列線に沿う方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、前記テーパ角は、前記第1交線と前記第2交線とによって定められる交差角であってもよい。
上記構成によれば、第1交線の延長線は、第1流入口内に延び、且つ、第2交線の延長線は、第2流入口内に延びるので、第1交線と第2交線とによって定められる交差角として定義されるテーパ角は、大きくなる。したがって、整列線に沿う方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、前記駆動部が、前記延長線を前記中立位置から前記第1流入口の中心に近づけると、前記流体からもたらされるフローフォースは、前記第2交線上よりも前記第1交線上において強くなってもよい。前記駆動部が、前記延長線を前記中立位置から前記第2流入口の中心に近づけると、前記フローフォースは、前記第1交線上よりも前記第2交線上において強くなってもよい。
上記構成によれば、駆動部が、前記延長線を前記中立位置から第1流入口の中心に近づけると、流体からもたらされるフローフォースは、第2交線上よりも前記第1交線上において強くなる。しかしながら、テーパ内壁のテーパ角は、大きいので、整列線に沿う方向におけるフローフォースの分力は小さくなる。駆動部が、吐出方向を第2流入口の中心に近づけると、フローフォースは、第1交線上よりも第2交線上において強くなる。しかしながら、テーパ内壁のテーパ角は、大きいので、整列線に沿う方向におけるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、前記延長線及び前記整列線を包摂する仮想平面と、前記テーパ内壁とは、第1交線及び第2交線を形成してもよい。前記テーパ内壁は、前記第1交線及び前記第2交線が湾曲するように形成された曲面であってもよい。前記ノズルが前記中立位置にあるとき、前記第1交線の中点における接線は、前記第1流入口内に延び、且つ、前記第2交線の中点における接線は、前記第2流入口内に延びてもよい。
上記構成によれば、第1交線の中点における接線は、第1流入口内に延び、且つ、第2交線の中点における接線は、第2流入口内に延びるので、作動流体は、第1流入口及び/又は第2流入口に適切に案内される。加えて、テーパ内壁のテーパ角は、大きくなるので、整列線に沿う方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、前記テーパ角は、前記2つの接線の交差角であってもよい。
上記構成によれば、第1交線の延長線は、第1流入口内に延び、且つ、第2交線の延長線は、第2流入口内に延びるので、2つの接線の交差角として定義されるテーパ角は、大きくなる。したがって、整列線に沿う方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
本発明の他の局面に係るサーボバルブは、流体を用いてアクチュエータを駆動するサーボバルブであって、前記流体が吐出される吐出口の輪郭を形成する吐出縁と、前記吐出縁に向けて狭まるテーパ内壁と、を含むノズルと、前記吐出口から吐出された前記流体の一部が流入する第1流入口及び前記吐出口から吐出された前記流体の他の一部が流入する第2流入口が形成された流入面を含むレシーバと、前記第1流入口及び前記第2流入口が整列する整列線に沿って、前記ノズルを駆動する駆動部と、を備える。前記駆動部は、前記吐出口の中心から前記流体の吐出方向に延びる延長線が前記第1流入口と前記第2流入口との間で前記整列線に交差する中立位置から前記整列線上で変位するように、前記ノズルを駆動する。前記延長線と前記整列線とを包摂する仮想平面及び前記テーパ内壁は、真っ直ぐな第1交線及び真っ直ぐな第2交線を形成する。前記ノズルが前記中立位置にあるとき、前記第1交線の延長線は、前記第1流入口内に延び、且つ、前記第2交線の延長線は、前記第2流入口内に延びる。
上記構成によれば、ノズルが中立位置にあるとき、第1交線の延長線は、第1流入口内に延び、且つ、第2交線の延長線は、第2流入口内に延びるので、テーパ内壁のテーパ角は、大きくなる。したがって、整列線に沿う方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、前記テーパ角は、90°以上であってもよい。
上記構成によれば、テーパ角は、90°以上であるので、ノズルの変位方向におけるテーパ内壁が流体から受けるフローフォースの分力は小さくなる。ノズルは、流体から影響をほとんど受けることなく、素早く変位することができるので、サーボバルブは、高い応答速度で動作し、アクチュエータを素早く駆動することができる。
上記構成において、サーボバルブは、前記流体が流動する流動経路が形成された筐体を更に備えてもよい。前記筐体には、第1流出口及び第2流出口が形成されてもよい。前記駆動部は、前記ノズルを前記整列線に沿って変位させ、前記第1流出口からの前記流体の流出量と前記第2流出口からの前記流体の流出量とを調整してもよい。
上記構成によれば、駆動部は、整列線に沿って、ノズルを変位させ、第1流出口からの流体の流出量と第2流出口からの流体の流出量とを調整するので、設計者は、第1流出口及び第2流出口からの流出量の比率の変動を利用して、サーボバルブに接続されたアクチュエータを動作させることができる。
本発明の更に他の局面に係る流体装置は、上述のサーボバルブと、前記第1流出口及び前記第2流出口に連通する空房部内で前記流体によって変位される可動片と、を備える。
上記構成によれば、流体装置は、上述のサーボバルブを有するので、高い応答速度で動
作することができる。