JP2018003968A - ブレーキピストン、ブレーキピストンの製造方法およびディスクブレーキ - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂製ピストン由来の利点を活かしつつ、操作感覚が良好なディスクブレーキを実現可能なブレーキピストン、かかるブレーキピストンを製造可能なブレーキピストンの製造方法、および、軽量でかつ操作感覚が良好なディスクブレーキを提供すること。
【解決手段】ブレーキピストン4は、ディスクブレーキ1に用いられるものであって、樹脂材料を含むピストン本体と、ピストン本体の側面を覆うように設けられ、無機材料を含む被覆層と、を有する。また、無機材料は、金属系材料またはセラミックス系材料を含むことが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】ブレーキピストン4は、ディスクブレーキ1に用いられるものであって、樹脂材料を含むピストン本体と、ピストン本体の側面を覆うように設けられ、無機材料を含む被覆層と、を有する。また、無機材料は、金属系材料またはセラミックス系材料を含むことが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、ブレーキピストン、ブレーキピストンの製造方法およびディスクブレーキに関するものである。
近年、自動車の軽量化を図るため、金属製部品を樹脂製部品に置き換える動きが進んでいる。ディスクブレーキに使用されるブレーキピストンにおいても、樹脂製ピストンの採用が検討されている。
例えば、特許文献1には、樹脂製ピストンに起因する課題を解消することによって、樹脂製ピストンを使用した場合でも良好なブレーキ性能を実現する方法が提案されている。具体的には、樹脂製ピストンの外周面に微小凹凸を形成することにより、樹脂製ピストンとシールリングとの間の摺動抵抗の低減を図り、それによってペダルストロークが長くならないようにすることが提案されている。
しかしながら、検討を続けた結果、樹脂製ピストンとシールリングとの相互作用がディスクブレーキを操作する者の感覚により大きな影響を及ぼすことがわかってきた。そして、樹脂製ピストンに係る相互作用が、従来普及している金属製ピストンに係る相互作用から大きくずれた場合、ディスクブレーキを操作する者にとって違和感が生じるおそれがある。このため、樹脂製ピストンの側面の状態をより厳密に検討することが求められている。
本発明の目的は、樹脂製ピストン由来の利点を活かしつつ、操作感覚が良好なディスクブレーキを実現可能なブレーキピストン、かかるブレーキピストンを製造可能なブレーキピストンの製造方法、および、軽量でかつ操作感覚が良好なディスクブレーキを提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1) ディスクブレーキに用いられるブレーキピストンであって、
樹脂材料を含むピストン本体と、
前記ピストン本体の側面を覆うように設けられ、無機材料を含む被覆層と、
を有することを特徴とするブレーキピストン。
(1) ディスクブレーキに用いられるブレーキピストンであって、
樹脂材料を含むピストン本体と、
前記ピストン本体の側面を覆うように設けられ、無機材料を含む被覆層と、
を有することを特徴とするブレーキピストン。
(2) 前記被覆層の平均厚さは、0.1μm〜5mmである上記(1)に記載のブレーキピストン。
(3) 前記無機材料は、金属系材料またはセラミックス系材料を含む上記(1)または(2)に記載のブレーキピストン。
(4) 前記金属系材料は、鉄系合金である上記(3)に記載のブレーキピストン。
(5) 前記被覆層は、前記ピストン本体の前記側面に直接接合されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のブレーキピストン。
(6) 前記樹脂材料は、熱硬化性樹脂の硬化物である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のブレーキピストン。
(7) ディスクブレーキに用いられるブレーキピストンの製造方法であって、
樹脂材料を含むピストン本体を用意する工程と、
前記ピストン本体の側面に対し、気相成膜法、液相成膜法またはめっき法により無機材料を供給し、前記側面を覆う被覆層を形成する工程と、
を有することを特徴とするブレーキピストンの製造方法。
樹脂材料を含むピストン本体を用意する工程と、
前記ピストン本体の側面に対し、気相成膜法、液相成膜法またはめっき法により無機材料を供給し、前記側面を覆う被覆層を形成する工程と、
を有することを特徴とするブレーキピストンの製造方法。
(8) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のブレーキピストンを備えることを特徴とするディスクブレーキ。
本発明によれば、樹脂製ピストン由来の利点を活かしつつ、操作感覚が良好なディスクブレーキを実現可能なブレーキピストンが得られる。
また、本発明によれば、かかるブレーキピストンを製造することができる。
また、本発明によれば、軽量でかつ操作感覚が良好なディスクブレーキが得られる。
また、本発明によれば、軽量でかつ操作感覚が良好なディスクブレーキが得られる。
以下、本発明のブレーキピストン、ブレーキピストンの製造方法およびディスクブレーキについて添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
≪ディスクブレーキ≫
まず、本発明のディスクブレーキの実施形態について説明する。
まず、本発明のディスクブレーキの実施形態について説明する。
図1は、本発明のディスクブレーキの実施形態を示す断面図である。なお、図1では、一例としてフローティング型ディスクブレーキの断面を図示している。
図1に示すディスクブレーキ1は、ディスクローター3と、ブレーキパッド21、22と、油圧シリンダー71を含むキャリパー7と、ブレーキピストン4(本発明のブレーキピストンの実施形態)と、シールリング5と、を有している。このようなディスクブレーキ1は、例えば、自動車等の各種車両に搭載される。
ディスクローター3は、車両の車輪を回転させる図示しない回転軸に接続されており、例えば円板状をなしている。
ブレーキパッド21は、裏板81を介してブレーキピストン4に固定されている。一方、ブレーキパッド22は、裏板82を介してキャリパー7に固定されている。
ブレーキピストン4およびキャリパー7は、それぞれ車両のフレーム(車台)に対して相対的に移動可能に設けられている。このため、ブレーキパッド21、22も、ブレーキ操作に応じて、フレームに対して相対的に移動することとなる。これにより、ディスクローター3をブレーキパッド21、22によって両側から挟み込むことができ、ディスクローター3に摩擦力を付与することができる。
キャリパー7は、油圧シリンダー71を含んでいる。油圧シリンダー71にはブレーキピストン4が摺動可能に設けられている。そして、摺動面には、シールリング5が設けられており、油圧シリンダー71とブレーキピストン4との間を液密封止している。
ブレーキ操作をしたときには、図示しないマスターシリンダーによって液圧が発生し、これにより油圧シリンダー71内に充填されているブレーキフルード6の液圧が上昇する。そして、ブレーキピストン4が図1の左方向へ移動する。その結果、ブレーキパッド21がディスクローター3を押圧する。一方、ブレーキフルード6の液圧が上昇すると、キャリパー7が図1の右方向へ移動する。これにより、ブレーキパッド22がディスクローター3を押圧する。その結果、ディスクローター3がブレーキパッド21、22によって両側から挟み込まれることとなり、ディスクローター3が接続されている回転軸の回転を制動することができる。
<ブレーキピストン>
次に、本発明のブレーキピストンの実施形態について説明する。
次に、本発明のブレーキピストンの実施形態について説明する。
図2は、本発明のブレーキピストンの実施形態を示す断面図である。
図2に示すブレーキピストン4は、ピストン本体41と、ピストン本体41の側面を覆うように設けられた、無機材料を含む被覆層42と、を有している。
図2に示すブレーキピストン4は、ピストン本体41と、ピストン本体41の側面を覆うように設けられた、無機材料を含む被覆層42と、を有している。
(ピストン本体)
図2に示すピストン本体41は、有底の円筒状をなしている。なお、ピストン本体41の形状はこれに限定されず、例えば円柱状、楕円筒状、楕円柱状等であってもよい。
図2に示すピストン本体41は、有底の円筒状をなしている。なお、ピストン本体41の形状はこれに限定されず、例えば円柱状、楕円筒状、楕円柱状等であってもよい。
本実施形態に係るピストン本体41は、樹脂材料と充填材とを含む。このため、ピストン本体41は十分な軽量化が図られることとなり、ひいてはディスクブレーキ1や車両の軽量化が図られる。これにより、例えば車両の走行時のエネルギー消費率の削減に寄与することができる。
また、樹脂材料は、金属材料に比べて耐食性が良好である。このため、長期にわたってピストン本体41の状態(摺動抵抗等)が維持されることとなり、ディスクブレーキ1の性能や操作感覚を長期にわたって良好に維持することができる。
以下、ピストン本体41についてさらに詳述する。
−熱硬化性樹脂−
本実施形態に係る樹脂材料は、熱硬化性樹脂を含む組成物の硬化物である。このような熱硬化性樹脂の硬化物を含むことにより、ピストン本体41の軽量化を図りつつも機械的特性および耐熱性を特に高めることができる。
−熱硬化性樹脂−
本実施形態に係る樹脂材料は、熱硬化性樹脂を含む組成物の硬化物である。このような熱硬化性樹脂の硬化物を含むことにより、ピストン本体41の軽量化を図りつつも機械的特性および耐熱性を特に高めることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも熱硬化性樹脂としては、特にフェノール樹脂が好ましく用いられる。これにより、ブレーキピストン4の耐食性、耐摩耗性、機械的特性等をより高めることができる。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂のようなノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で溶融した油溶融レゾールフェノール樹脂のようなレゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でもフェノール樹脂としては、特にノボラック型フェノール樹脂が好ましく用いられる。ノボラック型フェノール樹脂は、入手容易性、混練時の作業性等の観点から有用である。
また、熱硬化性樹脂を含む組成物には、必要に応じて硬化剤が添加される。硬化剤としては、例えばヘキサメチレンテトラミン等が用いられる。硬化剤の添加量は、特に限定されないものの、例えば熱硬化性樹脂100質量部に対して10〜25質量部程度に設定される。
ピストン本体41における熱硬化性樹脂の含有率は、特に限定されないが、5〜50質量%程度であるのが好ましく、10〜40質量%程度であるのがより好ましい。これにより、ピストン本体41の耐食性、耐摩耗性、機械的特性等をバランスよく高めることができる。
なお、熱硬化性樹脂を含む組成物には、必要に応じて熱可塑性樹脂が添加されてもよい。
−充填材−
充填材は、主にピストン本体41の機械的特性を高める。
充填材は、主にピストン本体41の機械的特性を高める。
充填材としては、例えば、繊維状充填材、粒状充填材、板状充填材等が挙げられる。
このうち、繊維状充填材は、その形状が繊維状である充填材である。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、金属繊維、ガラスビーズ、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、ロックウール、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウム繊維、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、セラミック繊維のような無機系繊維状充填材、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維のような有機系繊維状充填材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、繊維状充填材は、その形状が繊維状である充填材である。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、金属繊維、ガラスビーズ、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、ロックウール、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウム繊維、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、セラミック繊維のような無機系繊維状充填材、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維のような有機系繊維状充填材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、板状充填材は、その形状が板状である充填材であり、粒状充填材は、不定形状を含む繊維状・板状以外の形状をなす充填材のことをいう。また、このような板状充填材または粒状充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ワラストナイト、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズおよび炭酸カルシウムから選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。このような充填材を用いると、ピストン本体41の機械的特性を特に向上させることができる。
ピストン本体41における充填材の含有率は、特に限定されないが、50〜90質量%程度であるのが好ましく、60〜80質量%程度であるのがより好ましい。これにより、ピストン本体41の機械的特性をより高めることができる。なお、充填材の種類や含有率を調整することにより、ピストン本体41の線膨張係数等の物性値を制御することができる。
また、充填材の平均粒径は、0.1〜20μm程度であるのが好ましく、0.5〜15μm程度であるのがより好ましい。これにより、充填材がピストン本体41の表面性状に大きな影響を及ぼし難くなる一方、機械的特性の向上という機能を十分に発揮させることができる。
なお、充填材の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された質量基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%になるときの粒径のことをいう。
また、充填材は、平均長径が5μm以上50mm以下で、平均アスペクト比が1以上1000以下である繊維状充填材または板状充填材を含むことが好ましい。これにより、ピストン本体41の機械的特性を特に高めることができる。
なお、平均長径および平均アスペクト比は、例えば、ピストン本体41を撮影した画像から算出することができる。具体的には、まず、走査型電子顕微鏡により、ピストン本体41の表面を撮影する。次いで、得られた画像において50個の繊維状充填材または板状充填材を任意に選択し、長径および短径を測定する。このとき繊維状充填材における長径とは、繊維長のことをいい、短径とは、繊維径のことをいう。また、板状充填材における長径とは、板状充填材の主面における最大長さのことをいい、短径とは、板状充填材の厚さのことをいう。そして、長径の測定値の平均値を「平均長径」とする。また、短径の測定値の平均値を「平均短径」とし、平均短径に対する平均長径の比率を「平均アスペクト比」とする。
充填材の平均長径は、0.1〜100μm程度であるのが好ましく、0.2〜50μm程度であるのがより好ましい。また、充填材の平均アスペクト比は、1〜50程度であるのが好ましく、1〜40程度であるのがより好ましい。
また、充填材は、シランカップリング剤等のカップリング剤による表面処理が行われたものであってもよい。
一方、これらのカップリング剤は、熱硬化性樹脂を含む組成物に添加されていてもよい。これにより、例えば、樹脂材料と充填材との密着性、および、ピストン本体41と被覆層42との密着性を、より高めることができる。その結果、ピストン本体41の機械的特性およびピストン本体41と被覆層42との密着力をより高めることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランのようなウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランのようなイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランのような水酸基含有アルコキシシラン化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
シランカップリング剤の添加量は、特に限定されないが、充填材100質量部に対して0.01〜4質量部程度であるのが好ましく、0.1〜1質量部程度であるのがより好ましい。
なお、熱硬化性樹脂を含む組成物には、その他に、エラストマー、硬化助剤、離型剤、顔料、難燃剤、耐候剤、酸化防止剤、可塑剤、潤滑剤、摺動剤、発泡等が添加されていてもよい。
また、本実施形態のようにピストン本体41がその少なくとも一部において円筒状をなしている場合、その厚さは、外径の半分(半径)において5〜80%程度であるのが好ましく、10〜70%程度であるのがより好ましい。これにより、ピストン本体41の機械的特性と軽量化とのバランスを良好にとることができる。特に、ピストン本体41の側面に被覆層42を設けたとき、両者の線膨張係数の違い等に基づいて発生する応力によってピストン本体41が意図せず変形してしまうのを抑制することができる。
(被覆層)
ピストン本体41の側面は被覆層42で覆われている。なお、ピストン本体41の側面とは、ブレーキピストン4が摺動するときのピストン本体41の摺動面にあたる面のことをいう。本実施形態では、円筒状をなすピストン本体41の表面のうち、両端面以外の面のことをいう。
ピストン本体41の側面は被覆層42で覆われている。なお、ピストン本体41の側面とは、ブレーキピストン4が摺動するときのピストン本体41の摺動面にあたる面のことをいう。本実施形態では、円筒状をなすピストン本体41の表面のうち、両端面以外の面のことをいう。
被覆層42は、側面の全面を覆っていてもよいが、覆われていない領域が含まれていてもよい。この場合、被覆層42による被覆率、すなわちピストン本体41の側面のうち被覆層42で覆われている面積の割合は、特に限定されないが、50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。これにより、被覆層42がもたらす機能がより確実に発揮されることとなる。
本実施形態に係る被覆層42は、無機材料で構成されている。このため、ブレーキピストン4は、その摺動面において無機材料に由来する適度な摺動抵抗を有するものとなる。すなわち、無機材料で構成された被覆層42がシールリング5に対して摺動することにより、従来普及している金属製ピストンを用いた場合の摺動抵抗と同程度の抵抗値を実現することができる。これにより、ブレーキピストン4は、金属製ピストンを容易に代替し得るものとなり、違和感の少ない良好なブレーキ性能(操作感覚)を発揮するディスクブレーキ1を得ることができる。
また、ブレーキピストン4を用いた場合、樹脂材料を含むピストン本体41がもたらす軽量化、高耐食性等の利点がディスクブレーキ1に付加されることとなる。すなわち、被覆層42を用いても、これらの利点はほとんど変わらないため、ディスクブレーキ1の軽量化や高耐久化を図ることができる。その結果、車両等の省エネルギーおよび長寿命に寄与することができる。
なお、被覆層42は、無機材料を含んでいればよく、無機材料の他に例えばバインダー等の目的で有機材料等が含まれていてもよい。この場合、有機材料の含有率は、特に限定されないが、50質量%以下程度であるのが好ましく、40質量%以下程度であるのがより好ましく、20質量%以下程度であるのがさらに好ましい。これにより、無機材料に由来する適度な摺動抵抗が得られるとともに、無機材料に由来する十分な表面硬度が確保される。かかる表面硬度は、被覆層42にキズ付き難さを付与するため、長期にわたって摺動抵抗が変動し難いという安定性を高めることに寄与する。
無機材料としては、例えばリチウム、ケイ素、ホウ素、炭素、窒素、ナトリウム、カルシウム、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、タンタル、タングステン、白金、金、鉛、ビスマス等の単体、これらの元素の少なくとも1種を含む合金もしくは化合物、またはこれらを含む混合物が挙げられる。また、これらのうちの1種または2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
また、無機材料の種類としては、例えば金属系材料、セラミックス系材料、ガラス系材料、炭素系材料等が挙げられるが、このうち金属系材料およびセラミックス系材料が好ましく用いられる。これにより、従来普及している金属製ピストンを用いた場合と同程度の摺動抵抗を有するブレーキピストン4を実現することができる。また、これらの種類を複数混在させた複合材料であってもよい。
また、金属系材料としては、特に鉄系合金が好ましく用いられる。鉄系合金を用いることにより、従来普及している金属製ピストンを用いた場合と同程度の摺動抵抗を有するブレーキピストン4をより確実に実現することができる。鉄系合金としては、例えばステンレス鋼、合金鋼、炭素鋼、耐熱鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金等が挙げられる。
ここで、無機材料を含む被覆層42が上述したような効果を示す理由は明確ではないものの、シールリング5と被覆層42との間に塗布される潤滑用のグリースが、被覆層42との間で何らかの相互作用を引き起こしていることが理由の1つとして挙げられると推察される。すなわち、グリースには一般的に油性のものが用いられるため、被覆層42が有機材料を多く含むかあるいは無機材料を多く含むかによって、グリースと被覆層42との間で潤滑性が異なると考えられる。その結果、グリースと接触する表面の構成材料が、摺動抵抗に大きな影響を及ぼしていることが推察される。
セラミックス系材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、イットリア、フォルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ムライト、コージライト、フェライト、サイアロン、酸化セリウムのような酸化物系セラミックス材料、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのような非酸化物系セラミックス材料等が挙げられる。
また、ガラス系材料としては、例えば、シリカガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
また、炭素系材料としては、例えば、黒鉛、グラファイト等が挙げられる。
また、炭素系材料としては、例えば、黒鉛、グラファイト等が挙げられる。
被覆層42の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm〜5mm程度であるのが好ましく、1μm〜3mm程度であるのがより好ましく、10μm〜1mm程度であるのがさらに好ましく、50μm〜500μm程度であるのが特に好ましい。被覆層42の厚さをこのような範囲内に設定することにより、ブレーキピストン4の摺動抵抗を従来の値に十分近づけることができるとともに、被覆層42の剥離を十分に抑制することができる。また、ブレーキピストン4の軽量化を十分に図ることができる。すなわち、被覆層42の厚さが前記下限値を下回ると、被覆層42の摺動抵抗が従来の値からかい離したり、極めて過酷な条件下において被覆層42が剥離し易くなったりするおそれがある。一方、被覆層42の厚さが前記上限値を上回ると、極めて過酷な条件下において応力のバランスが崩れて被覆層42が剥離し易くなったり、ブレーキピストン4の軽量化が十分に図られなかったりするおそれがある。
なお、被覆層42の平均厚さとは、摺動面に対して直交するようにブレーキピストン4を切断したとき、その切断面における被覆層42の厚さの平均値のことをいう。このとき、被覆層42の厚さを任意に10か所以上測定し、その平均値を求めることとする。
また、被覆層42の平均厚さは、ピストン本体41の平均半径の0.001〜30%程度であるのが好ましく、0.005〜20%程度であるのがより好ましく、0.02〜5%程度であるのがさらに好ましい。ピストン本体41の平均半径に対する被覆層42の平均厚さの割合を前記範囲内に設定することにより、ピストン本体41の形状に対する被覆層42の厚さのバランスが図られるので、両者の間に応力が発生してもピストン本体41が変形し難くなる。これにより、例えばブレーキピストン4の温度が変化しても、摺動抵抗が大きく変化したり、液密性が低下したりするのを抑制することができる。
なお、ピストン本体41の平均半径とは、例えばピストン本体41の円筒部分の厚さを任意の10か所以上測定したとき、その平均値である。また、ピストン本体41が円柱状をなしている場合、その半径を任意の10か所以上で測定したとき、その平均値である。
また、被覆層42の表面粗さRaは、0.05〜1μmであるのが好ましく、0.1〜0.5μmであるのがより好ましく、0.14〜0.4μmであるのがさらに好ましい。被覆層42の表面粗さRaを前記範囲内に設定することにより、ブレーキピストン4の摺動抵抗を従来の値に十分に近づけることができる。その結果、違和感の少ない良好なブレーキ性能を発揮するディスクブレーキ1を得ることができる。
なお、被覆層42の表面粗さRaが前記下限値を下回ると、表面粗さRaが小さくなり過ぎて被覆層42の表面とシールリング5との間が貼り付くような現象が生じ易くなる。この現象は、かえって摩擦抵抗を増大させる原因となるため、ブレーキピストン4の摺動抵抗を高めてしまうおそれがある。一方、被覆層42の表面粗さRaが前記上限値を上回ると、被覆層42の表面に比較的大きな凹凸が生じるため、この凹凸にシールリング5が引っ掛かり易くなり、ブレーキピストン4の摺動抵抗を高めてしまうおそれがある。
被覆層42の表面粗さRaは、JIS B 0601:2013に規定されている測定方法に準じて測定される。
また、ピストン本体41の側面には、必要に応じて粗面化処理を施すようにしてもよい。これにより、被覆層42とピストン本体41との間にアンカー効果が発現し、被覆層42の密着性をより高めることができる。
粗面化処理としては、例えば、切削処理、研削処理のような機械加工法、サンドブラスト、ショットブラストのような研磨剤噴射法、プラズマ処理、コロナ放電処理、アーク放電処理、オゾン処理、スパッタリング等の表面改質法、側面を溶解させる化学処理法、型を転写する転写法等が挙げられる。
粗面化処理の結果、ピストン本体41の側面は粗面化されるが、このときの表面粗さRzは、特に限定されないものの1〜100μm程度であるのが好ましく、2〜80μm程度であるのがより好ましい。このような表面粗さの粗面化領域を設けることにより、十分な強さのアンカー効果が得られるとともに、粗面化領域の形状的な影響が被覆層42の表面にまで及んでしまうのを抑制することができる。
なお、ピストン本体41の側面の表面粗さRzは、JIS B 0601:2013に規定されている測定方法に準じて測定される。
一方、被覆層42の表面には、必要に応じて研磨処理、表面改質処理等が施されてもよい。
このうち、研磨処理としては、例えば円筒研磨処理、センターレス研磨処理、引き抜き加工処理、バフ研磨処理等が挙げられる。
また、表面改質処理としては、例えばプラズマ処理、コロナ放電処理、アーク放電処理、オゾン処理、スパッタリング、エッチング、露光処理等が挙げられる。
また、被覆層42は、単層である必要はなく、複数層であってもよい。その場合の層数は、特に限定されないが、2〜10層程度であるのが好ましく、2〜5層程度であるのがより好ましい。
また、複数層にする場合には、ピストン本体41側に弾性率が小さい材料からなる内層を形成し、ピストン本体41側とは反対側に内層よりも弾性率が大きい外層を形成するようにしてもよい。これにより、被覆層42は、耐摩耗性と密着性とを高度に両立したものとなる。すなわち、弾性率が相対的に小さい内層によって被覆層42の密着性を高めるとともに、弾性率が相対的に大きい外層によって被覆層42の耐摩耗性を高めることができる。
この場合、両者の弾性率の差は、特に限定されないが、外層の弾性率が内層の弾性率の1.1倍以上10倍以下であるのが好ましく、1.2倍以上8倍以下であるのがより好ましい。これにより、耐摩耗性と密着性との両立をより高度に図ることができる。すなわち、この比率が前記下限値を下回ると、外層と内層とで弾性率がほとんど変わらなくなるため、両者の間に弾性率の差を設けることによる効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、この比率が前記上限値を上回ると、弾性率の差が大きくなり過ぎるため、内層と外層との密着性が低下するおそれがある。
なお、この弾性率には、例えばJIS K 7162等に規定されている試験方法によりヤング率として求められた値を用いることができる。
また、被覆層42の線膨張係数α42とピストン本体41の線膨張係数α41との差は、特に限定されないが、(α42−α41)の絶対値が15ppm/℃以下であるのが好ましく、10ppm/℃以下であるのがより好ましく、5ppm/℃以下であるのがさらに好ましい。線膨張係数の差をこの程度に抑えることにより、ブレーキピストン4に急激な温度変化が生じた場合でも、被覆層42に剥離等が生じるのを抑制することができる。
なお、線膨張係数α41、α42は、例えば熱機械分析装置TMA(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、EXSTAR6000)を用い、5℃/分の圧縮条件で、25℃から250℃までの間において測定される値である。
≪ブレーキピストンの製造方法≫
次に、本発明のブレーキピストンの製造方法の実施形態について説明する。
次に、本発明のブレーキピストンの製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態に係るブレーキピストン4の製造方法は、ピストン本体41を用意する工程と、ピストン本体41の側面に無機材料を供給し被覆層を形成する工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
まず、ピストン本体41を用意する。ピストン本体41は、例えば、圧縮成形機を用い、予備加熱させた樹脂含有組成物を型内投入し、成形することにより得られる。
次いで、ピストン本体41の側面に無機材料を供給し、被覆層42を形成する。
被覆層42の形成方法は、特に限定されない。例えば、CVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法のような気相成膜法、ゾルゲル法、リン酸塩法、クロメート法、溶液塗布法、浸漬法、印刷法のような液相成膜法、電解めっき法、無電解めっき法、溶融めっき法のようなめっき法、溶射法、シート状の被覆層42を貼り付ける方法、筒状の被覆層42の内側にピストン本体41を挿入する方法等が挙げられる。また、これらのうちの2種以上を組み合わせた方法を用いるようにしてもよい。
被覆層42の形成方法は、特に限定されない。例えば、CVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法のような気相成膜法、ゾルゲル法、リン酸塩法、クロメート法、溶液塗布法、浸漬法、印刷法のような液相成膜法、電解めっき法、無電解めっき法、溶融めっき法のようなめっき法、溶射法、シート状の被覆層42を貼り付ける方法、筒状の被覆層42の内側にピストン本体41を挿入する方法等が挙げられる。また、これらのうちの2種以上を組み合わせた方法を用いるようにしてもよい。
このうち、気相成膜法、液相成膜法またはめっき法が好ましく用いられる。これらの方法は、ピストン本体41との間で高い密着性を確保しつつ、比較的厚い被覆層42であっても効率よく形成することができる。その結果、ピストン本体41が有する樹脂製ピストン由来の利点を活かしつつ、ブレーキ性能(操作感覚)が良好なディスクブレーキ1を実現可能なブレーキピストン4が得られる。
また、これらの方法は、ピストン本体41の側面に対して被覆層42を直接成膜(接合)することができる。このように直接接合することにより、何らかの部材を介在させる場合に比べてブレーキピストン4の信頼性をより高めることができる。すなわち、ピストン本体41と被覆層42との間に何らかの介在物が存在する場合、それだけ界面が多くなるため剥離する確率も高くなり易いのに対し、両者が直接接合されていることにより、剥離する確率を下げることができる。その結果、ブレーキピストン4の信頼性の向上が図られる。
なお、被覆層42を形成するときには、必要に応じてピストン本体41の円筒軸を回転軸としてピストン本体41を回転させつつ形成するようにしてもよい。これにより、被覆層42の厚さの均一化を図りつつ成膜することができる。
また、ピストン本体41の側面に無機材料を供給する代わりに、ピストン本体41を形成するための成形型内に被覆層42を配置した状態で樹脂含有組成物を射出するようにしてもよい。これにより、被覆層42と接合された状態で組成物が成形される。その結果、離型するだけでブレーキピストン4が得られる。
以上のようにしてブレーキピストン4を効率よく製造することができる。
以上のようにしてブレーキピストン4を効率よく製造することができる。
以上、本発明のブレーキピストン、ブレーキピストンの製造方法およびディスクブレーキを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明のブレーキピストンおよびディスクブレーキは、前記実施形態に任意の要素が付加されたものであってもよい。
また、本発明のブレーキピストンの製造方法は、前記実施形態に任意の工程が追加されたものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.ブレーキピストンの製造
(実施例1)
(1)ピストン本体の作製
まず、フェノール樹脂成形材料(住友ベークライト社製、スミコンPM−3088)をタブレットにしたのち、プレヒーターで100℃に予熱したものを用いて、成形温度175℃、成形圧力40MPa、硬化時間3分の条件で、外径57mm、内径33mm、高さ45mmの有底円筒状に圧縮成形した。その後、温度230℃で6時間ベーキング処理し、ピストン本体を作製した。
1.ブレーキピストンの製造
(実施例1)
(1)ピストン本体の作製
まず、フェノール樹脂成形材料(住友ベークライト社製、スミコンPM−3088)をタブレットにしたのち、プレヒーターで100℃に予熱したものを用いて、成形温度175℃、成形圧力40MPa、硬化時間3分の条件で、外径57mm、内径33mm、高さ45mmの有底円筒状に圧縮成形した。その後、温度230℃で6時間ベーキング処理し、ピストン本体を作製した。
(2)ピストン本体に対する粗面化処理
次に、得られたピストン本体の側面にセンターレス研磨処理(粗面化処理)を施した。その後、ピストン本体の側面について表面粗さRzを測定したところ、4.0μmであった。
次に、得られたピストン本体の側面にセンターレス研磨処理(粗面化処理)を施した。その後、ピストン本体の側面について表面粗さRzを測定したところ、4.0μmであった。
(3)被覆層の作製
次に、ピストン本体の側面に無電解めっき法によりニッケルめっき膜(被覆層)を形成した。これにより、ブレーキピストンを得た。なお、ニッケルめっき膜の平均厚さは、30μmであった。
次に、ピストン本体の側面に無電解めっき法によりニッケルめっき膜(被覆層)を形成した。これにより、ブレーキピストンを得た。なお、ニッケルめっき膜の平均厚さは、30μmであった。
(実施例2)
被覆層として、真空蒸着法によりクロム被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、クロム被膜の平均厚さは、50μmであった。また、被覆層の厚さの分だけ、ピストン本体に対する粗面化処理における研磨量を調整し、ブレーキピストンの外径が実施例1と同じになるようにした。なお、この操作は、他の実施例でも同様である。
被覆層として、真空蒸着法によりクロム被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、クロム被膜の平均厚さは、50μmであった。また、被覆層の厚さの分だけ、ピストン本体に対する粗面化処理における研磨量を調整し、ブレーキピストンの外径が実施例1と同じになるようにした。なお、この操作は、他の実施例でも同様である。
(実施例3)
被覆層として、真空蒸着法によりアルミニウム被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、アルミニウム被膜の平均厚さは、150μmであった。
被覆層として、真空蒸着法によりアルミニウム被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、アルミニウム被膜の平均厚さは、150μmであった。
(実施例4)
被覆層として、プラズマCVD法により酸化ケイ素被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、酸化ケイ素被膜の平均厚さは、0.3μmであった。
被覆層として、プラズマCVD法により酸化ケイ素被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、酸化ケイ素被膜の平均厚さは、0.3μmであった。
(実施例5)
被覆層として、プラズマCVD法により窒化ケイ素被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、窒化ケイ素被膜の平均厚さは、0.2μmであった。
被覆層として、プラズマCVD法により窒化ケイ素被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、窒化ケイ素被膜の平均厚さは、0.2μmであった。
(実施例6)
被覆層として、スパッタリング法によりアルミナ被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、アルミナ被膜の平均厚さは、1μmであった。
被覆層として、スパッタリング法によりアルミナ被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、アルミナ被膜の平均厚さは、1μmであった。
(実施例7)
被覆層として、スパッタリング法によりジルコニア被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、ジルコニア被膜の平均厚さは、0.5μmであった。
被覆層として、スパッタリング法によりジルコニア被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、ジルコニア被膜の平均厚さは、0.5μmであった。
(実施例8)
被覆層として、ゾルゲル法によりアルミナ被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、アルミナ被膜の平均厚さは、500μmであった。
被覆層として、ゾルゲル法によりアルミナ被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、アルミナ被膜の平均厚さは、500μmであった。
(実施例9)
被覆層として、ゾルゲル法により酸化チタン被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、酸化チタン被膜の平均厚さは、700μmであった。
被覆層として、ゾルゲル法により酸化チタン被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、酸化チタン被膜の平均厚さは、700μmであった。
(実施例10〜13)
被覆層として、溶射法によりステンレス鋼被膜を形成した後、その表面に再びセンターレス研磨処理とバフ研磨処理を施すようにした以外は、それぞれ、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、ステンレス鋼の鋼種はSUS316L、ステンレス鋼被膜の平均厚さは、250μm、500μm、1500μmおよび3500μmであった。
被覆層として、溶射法によりステンレス鋼被膜を形成した後、その表面に再びセンターレス研磨処理とバフ研磨処理を施すようにした以外は、それぞれ、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、ステンレス鋼の鋼種はSUS316L、ステンレス鋼被膜の平均厚さは、250μm、500μm、1500μmおよび3500μmであった。
(実施例14)
実施例1と同様にしてニッケルめっき膜を形成した後、続いて金めっき膜を積層して多層からなる被覆層を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、ニッケルめっき膜の平均厚さは30μm、金めっき膜の平均厚さは5μmであった。
実施例1と同様にしてニッケルめっき膜を形成した後、続いて金めっき膜を積層して多層からなる被覆層を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、ニッケルめっき膜の平均厚さは30μm、金めっき膜の平均厚さは5μmであった。
(比較例1)
被覆層の作製を省略した以外は、実施例1と同様にしてピストン本体(ブレーキピストン)を得た。
被覆層の作製を省略した以外は、実施例1と同様にしてピストン本体(ブレーキピストン)を得た。
(比較例2)
被覆層として有機材料からなる被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、有機材料からなる被膜は、次のようにして形成した。
被覆層として有機材料からなる被膜を形成するようにした以外は、実施例1と同様にしてブレーキピストンを得た。なお、有機材料からなる被膜は、次のようにして形成した。
まず、液状フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、PR−26827ZH)をピストン本体の側面に塗布した。
次に、ピストン本体を、温度100℃で4時間加熱し、塗布した液状フェノール樹脂を硬化させた。これにより、有機材料からなる被膜を得た。
なお、有機材料からなる被膜の平均厚さは、300μmであった。
なお、有機材料からなる被膜の平均厚さは、300μmであった。
(比較例3)
一般に使用される鉄製ブレーキピストンを、比較例3のブレーキピストンとした。
一般に使用される鉄製ブレーキピストンを、比較例3のブレーキピストンとした。
2.ブレーキピストンの評価
2.1 動摩擦係数
まず、各実施例および各比較例のブレーキピストンを図1に示すキャリパーと同形状のシリンダーに挿入した。このとき、シールリングには潤滑用のグリース0.1gを全体に塗布しておき、ブレーキピストンも事前にブレーキ液で表面を濡らした上で挿入した。また、シールリングとブレーキピストンとの接触点には潤滑用のグリースを塗布した。
2.1 動摩擦係数
まず、各実施例および各比較例のブレーキピストンを図1に示すキャリパーと同形状のシリンダーに挿入した。このとき、シールリングには潤滑用のグリース0.1gを全体に塗布しておき、ブレーキピストンも事前にブレーキ液で表面を濡らした上で挿入した。また、シールリングとブレーキピストンとの接触点には潤滑用のグリースを塗布した。
次いで、ブレーキピストンとシリンダーとで画成される空間内にブレーキフルードを充填した。そして、このブレーキフルードの液圧を変化させられるようにマスターシリンダーを接続した。
次いで、液圧を徐々に高め、ブレーキピストンが移動しているときの液圧を求めた。そして、この液圧から動摩擦係数を算出し、以下の評価基準に照らして評価した。なお、評価基準における相対値とは、比較例3のブレーキピストン(鉄製ピストン)についての動摩擦係数を1としたときの相対値のことをいう。
また、動摩擦係数は、高温時(100℃)と低温時(0℃)の双方において求めた。
また、動摩擦係数は、高温時(100℃)と低温時(0℃)の双方において求めた。
<動摩擦係数の評価基準>
◎:動摩擦係数が鉄製ピストンに最も近い(相対値が0.5以上1.5未満である)
○:動摩擦係数が鉄製ピストンにやや近い(相対値が0.3以上0.5未満または1.5以上1.7未満である)
△:動摩擦係数が鉄製ピストンからやや遠い(相対値が0.1以上0.3未満または1.7以上1.9未満である)
×:動摩擦係数が鉄製ピストンから遠い(相対値が0.1未満または1.9以上である)
以上の評価結果を表1に示す。
◎:動摩擦係数が鉄製ピストンに最も近い(相対値が0.5以上1.5未満である)
○:動摩擦係数が鉄製ピストンにやや近い(相対値が0.3以上0.5未満または1.5以上1.7未満である)
△:動摩擦係数が鉄製ピストンからやや遠い(相対値が0.1以上0.3未満または1.7以上1.9未満である)
×:動摩擦係数が鉄製ピストンから遠い(相対値が0.1未満または1.9以上である)
以上の評価結果を表1に示す。
2.2 塩水噴霧試験(耐食性試験)
まず、各実施例および各比較例のブレーキピストンから切り出された試験片を用意した。
まず、各実施例および各比較例のブレーキピストンから切り出された試験片を用意した。
次いで、JIS Z 2371:2000に規定されている塩水噴霧試験方法に準じて、試験片に対する塩水噴霧試験を行った。なお、試験時間は96時間とした。
そして、以下の評価基準に照らして試験後の試験片を評価した。
そして、以下の評価基準に照らして試験後の試験片を評価した。
<塩水噴霧試験の評価基準>
◎:腐食がほとんど認められない
〇:腐食が少ない
△:腐食がやや多い
×:腐食が最も著しい
以上の評価結果を表1に示す。
◎:腐食がほとんど認められない
〇:腐食が少ない
△:腐食がやや多い
×:腐食が最も著しい
以上の評価結果を表1に示す。
2.3 キズ付き難さの試験
まず、各実施例および各比較例のブレーキピストンの表面(被覆層の表面)に同じ荷重でスチールウールをこすりつけた。
まず、各実施例および各比較例のブレーキピストンの表面(被覆層の表面)に同じ荷重でスチールウールをこすりつけた。
次いで、被覆層の断面を観察し、最も深いキズの深さを測定した。
そして、キズの深さに基づき、キズ付き難さを以下の評価基準に照らして評価した。
そして、キズの深さに基づき、キズ付き難さを以下の評価基準に照らして評価した。
<キズ付き難さの評価基準>
◎:最もキズ付き難い(キズの深さが最も浅い)
○:ややキズ付き難い(キズの深さがやや浅い)
△:ややキズ付き易い(キズの深さがやや深い)
×:特にキズ付き易い(キズの深さが特に深い)
以上の評価結果を表1に示す。
◎:最もキズ付き難い(キズの深さが最も浅い)
○:ややキズ付き難い(キズの深さがやや浅い)
△:ややキズ付き易い(キズの深さがやや深い)
×:特にキズ付き易い(キズの深さが特に深い)
以上の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例で得られたブレーキピストンは、動摩擦係数において鉄製ピストンと同程度であった。このことから、本発明に係るブレーキピストンは、樹脂製ピストン由来の利点を活かしつつ、操作感覚が良好な、すなわち従来の鉄製ピストンと同様の操作感覚を得られるディスクブレーキを実現可能なものであるといえる。
また、各実施例で得られたブレーキピストンは、塩水噴霧試験やキズ付き難さの試験においても良好な結果を示した。
1 ディスクブレーキ
3 ディスクローター
4 ブレーキピストン
5 シールリング
6 ブレーキフルード
7 キャリパー
21 ブレーキパッド
22 ブレーキパッド
41 ピストン本体
42 被覆層
71 油圧シリンダー
81 裏板
82 裏板
3 ディスクローター
4 ブレーキピストン
5 シールリング
6 ブレーキフルード
7 キャリパー
21 ブレーキパッド
22 ブレーキパッド
41 ピストン本体
42 被覆層
71 油圧シリンダー
81 裏板
82 裏板
Claims (8)
- ディスクブレーキに用いられるブレーキピストンであって、
樹脂材料を含むピストン本体と、
前記ピストン本体の側面を覆うように設けられ、無機材料を含む被覆層と、
を有することを特徴とするブレーキピストン。 - 前記被覆層の平均厚さは、0.1μm〜5mmである請求項1に記載のブレーキピストン。
- 前記無機材料は、金属系材料またはセラミックス系材料を含む請求項1または2に記載のブレーキピストン。
- 前記金属系材料は、鉄系合金である請求項3に記載のブレーキピストン。
- 前記被覆層は、前記ピストン本体の前記側面に直接接合されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のブレーキピストン。
- 前記樹脂材料は、熱硬化性樹脂の硬化物である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のブレーキピストン。
- ディスクブレーキに用いられるブレーキピストンの製造方法であって、
樹脂材料を含むピストン本体を用意する工程と、
前記ピストン本体の側面に対し、気相成膜法、液相成膜法またはめっき法により無機材料を供給し、前記側面を覆う被覆層を形成する工程と、
を有することを特徴とするブレーキピストンの製造方法。 - 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のブレーキピストンを備えることを特徴とするディスクブレーキ。
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