JP2018002758A - インク組成物、インクセット及び捺染方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク組成物のpHの経時変化を起こしにくく、布帛対応性が良好で、かつ、耐光性が良好で、記録装置を大型化せずにガマットの範囲が良好なインク組成物を提供すること。【解決手段】第1染料(C.I.リアクティブレッド(番号)(C.I.ReactiveRed##)の系統)と、第2染料(C.I.リアクティブバイオレット(番号)(C.I.ReactiveViolet##)の系統)とを含む、インクジェット捺染用のインク組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、インク組成物、インクセット及び捺染方法に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して、記録媒体に付着させて記録を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で記録できるという特徴を有する。インクジェット記録方法においては、用いるインクの性質、記録における安定性、得られる画像の品質をはじめとして、非常に多くの検討要素があり、インクジェット記録装置のみならず、用いるインク組成物に対する研究も盛んである。
例えば、インクジェットインク組成物を用いて得られる印刷物(記録物)における画像の耐候性や経時安定性を高めることも検討されている。特許文献1に記載の技術では、ダークイエローインクに対して、イエロー染料、マゼンタ染料及びシアン染料を配合することにより、画像の経時安定性を向上させることが試みられている。
また、インクジェット記録方法を用いて、布帛等を染色(捺染)することも行われている。従来、布帛(織布や不織布)に対する捺染方法としては、スクリーン捺染法、ローラー捺染法等が用いられてきたが、多種少量生産性ならびに即時プリント性等の観点から、インクジェット記録方法を適用することが有利であるため種々検討されている。例えば、特許文献2には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、墨色(K)の各インク組成物のセットに、バイオレット(V)のインク組成物を組み合わせることにより、得られる画像の色相範囲を拡大する試みが開示されている。
捺染用のインク組成物に配合される色材は、例えば染料であり、非常に多くの種類が存在している。しかしながら、例えば、布帛の種類、インク組成物の液性(水性、油性等)に応じたり、所望の色となるように種類を選ぶ場合、染料の選択の幅は必ずしも広くはない。例えば、捺染する布帛が綿及び絹である場合、これらの布帛の両者を捺染可能で、かつ、水性インク組成物として好適な染料として選択される一種として、C.I.リアクティブレッド(Reactive Red)31がある。
ところが、発明者らの検討によると、C.I.リアクティブレッド31は、水性捺染インクに用いられた場合、経時変化によりインクのpHの低下を生じることが分かってきた。このような経時変化によりインクのpHの変化が生じたインクで布帛を印捺すると、変化前のインクで印捺した部分と色相が変化し、布帛をデザイン通りの色で印刷することが難しくなる場合があった。さらに、係るインクを用いて布帛を染色する場合、特にポリアミド系である絹(シルク)や羊毛(ウール)等を染色すると、布帛の製造ロット違いによる色相のバラツキを生じ易く、即ち布帛対応性(布帛の種類や製造ロット違いによる繊維の性質のズレに対する適応性)が不十分であることも分かってきた。
また、色再現性(ガマット)は、異なる色の複数のインク組成物の組み合わせによって特定の範囲とすることができるが、記録装置の大型化が課題となる。一方、各色のインク組成物の数が少ないと、装置は小型化できるが、ガマットの拡大は不十分となる。特に、マゼンタ系のインク組成物において、複数の染料を組み合わせてガマットを拡大しようとする場合には、染料間の相性を考慮しないで単純に複数色の染料を混合するだけでは、色相、pHの安定性、耐候性等の各種の性能をバランスよく向上させることが難しい。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、インク組成物のpHの経時変化を起こしにくく、布帛対応性が良好で、かつ、耐光性が良好で、記録装置を大型化せずにガマットの範囲が良好なインク組成物、インクセット及び捺染方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明に係るインク組成物の一態様は、
下記式(I)で表される第1染料と、
下記式(I)で表される第1染料と、
(但し、式(I)において、
R1は、
R2は、H、CH3、又は、C2H5を表し、
R3は、H、又は、
Xは、H、Li、Na、又は、Kを表し、
アスタリスクは、結合してもよい位置を表す。)
下記式(II)で表される第2染料と、
(但し、式(II)において、
R1は、SO3X、又は、
R2、R3、R4は、それぞれ独立に、H、SO3X、又は、
Xは、H、Li、Na、又は、Kを表し、
アスタリスクは、結合してもよい位置を表す。)
を含む。
このようなインク組成物によれば、第1染料及び第2染料の化学構造が、インク組成物のpHの経時変化を起こしにくい構造であるので、インク組成物の発色性や色相の変化を生じにくい。また、係るインク組成物によれば、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)のいずれであっても、布帛の製造ロット違いによる色相のバラツキが小さく、布帛対応性が良好である。また、係る二種を併用することにより、ガマットの範囲が良好な捺染を行うことができる。
本発明に係るインク組成物において、
pHが、6.0以上、8.5以下であってもよい。
pHが、6.0以上、8.5以下であってもよい。
このようなインク組成物によれば、インク組成物のpHの範囲が良好であり、印捺物の色相の変化を生じにくいので、所定のデザイン通りの色を良好に再現することができる。また、インク組成物のpHがこの範囲であれば、例えば、インクジェット記録装置の記録ヘッドの腐食等を十分に抑制することができる。
本発明に係るインク組成物において、
pH調整剤を含有してもよい。
pH調整剤を含有してもよい。
このようなインク組成物によれば、保存時間が長い場合など、インク組成物のpHの変化を生じやすい環境に放置されても、インク組成物のpHを所望の範囲により安定かつ良好に保たれるため、印捺物の色相の変化を生じにくく、より容易に所定のデザイン通りの色を良好に再現することができる。また、インク組成物のpHがこの範囲であれば、例えば、インクジェット記録装置の記録ヘッドの腐食等を十分に抑制することができる。
本発明に係るインク組成物において、
沸点が260℃を越える多価アルコールの含有量がインク全量に対して5質量%以下であってもよい。
沸点が260℃を越える多価アルコールの含有量がインク全量に対して5質量%以下であってもよい。
このようなインク組成物によれば、染色における染着の阻害要因となる、アルコール性水酸基の数が低減され、従来よりも濃く染めることができる。詳しくは、染料の反応基と、植物性繊維などが有する水酸基とが反応して染着が進行する。アルコール性水酸基は、植物性繊維などの水酸基と同様に染料の反応基と反応することがあり、インク組成物中に多く存在すると、染着が阻害される場合がある。アルコール性水酸基を複数有する多価アルコールであっても、沸点が260℃以下であれば、インク組成物を布帛に付着させた後に、速やかに蒸発が進んで残留しにくくなる。そのため、布帛に付着させたインク組成物中のアルコール性水酸基の数が低減され、植物性繊維などの水酸基と、染料の反応基との反応が阻害されにくくなる。これにより、染着の状態が安定となり、ムラなどの発生を抑えて濃く染めることが可能となる。
本発明に係るインク組成物において、
前記第1染料は、C.I.リアクティブレッド141、C.I.リアクティブレッド24:1、及び、C.I.リアクティブレッド245の少なくとも一種であり、前記第2染料は、C.I.リアクティブバイオレット1、及び、C.I.リアクティブバイオレット33の少なくとも一種であってもよい。
前記第1染料は、C.I.リアクティブレッド141、C.I.リアクティブレッド24:1、及び、C.I.リアクティブレッド245の少なくとも一種であり、前記第2染料は、C.I.リアクティブバイオレット1、及び、C.I.リアクティブバイオレット33の少なくとも一種であってもよい。
このようなインク組成物によれば、第1染料及び第2染料の化学構造がインク組成物のpHの経時変化をさらに起こしにくい構造であるので印捺物の色相の変化を生じにくい。
また、係るインク組成物によれば、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)のいずれであっても、布帛の製造ロット違いによる色相のバラツキがさらに小さく、布帛対応性がさらに良好となる。また、係る二種を併用することにより、ガマットの範囲がより良好な捺染を行うことができる。
また、係るインク組成物によれば、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)のいずれであっても、布帛の製造ロット違いによる色相のバラツキがさらに小さく、布帛対応性がさらに良好となる。また、係る二種を併用することにより、ガマットの範囲がより良好な捺染を行うことができる。
本発明に係るインクセットの一態様は、
マゼンタインク組成物として、上述のインク組成物と、
C.I.リアクティブイエロー95又はC.I.リアクティブイエロー2を含むイエローインク組成物、C.I.リアクティブブルー72又はC.I.リアクティブブルー15:1を含むシアンインク組成物、C.I.リアクティブブラック39を含むブラックインク組成物、の中から選ばれる少なくとも一種のインク組成物と、
を含む。
マゼンタインク組成物として、上述のインク組成物と、
C.I.リアクティブイエロー95又はC.I.リアクティブイエロー2を含むイエローインク組成物、C.I.リアクティブブルー72又はC.I.リアクティブブルー15:1を含むシアンインク組成物、C.I.リアクティブブラック39を含むブラックインク組成物、の中から選ばれる少なくとも一種のインク組成物と、
を含む。
このようなインクセットによれば、マゼンタインク組成物と併用している場合、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)のいずれであっても、布帛の製造ロット違いによる各インクの色相のバラツキを小さくすることができる。さらに、ガマットの範囲がより良好な捺染を行うことができる。即ち布帛対応性に優れた記録物(印捺物)を得ることができる。
本発明に係る捺染方法の一態様は、
上述のインク組成物を、上述のインク組成物又は上述のインクセットに含まれるインク組成物を、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、かつ、前記ノズルプレートの表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有するインクジェット記録ヘッドから吐出させることを含む。
上述のインク組成物を、上述のインク組成物又は上述のインクセットに含まれるインク組成物を、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、かつ、前記ノズルプレートの表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有するインクジェット記録ヘッドから吐出させることを含む。
このような捺染方法によれば、インクジェット記録ヘッドにおいて、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、かつ、ノズルプレートの表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有することから、インク組成物がこれらにはじかれやすくなる。そのため、上記インク組成物に対して、長時間にわたって良好な耐腐食性が保たれる。これにより、ノズルプレート表面の撥液性が維持され、インクジェット記録ヘッドから、インク組成物を安定的に吐出する捺染方法を提供することができる。さらに、pH6.5〜8.5に調整されたインク組成物を、前記の記録ヘッドで利用することで、より長期間の放置でも安定した吐出を実現できるため好ましい。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インク組成物
本実施形態に係るインク組成物は、特定の第1染料と、特定の第2染料と、を含む。また、本実施形態のインク組成物は、インクジェット法により布帛に付着させて行う捺染方法に用いられる。
本実施形態に係るインク組成物は、特定の第1染料と、特定の第2染料と、を含む。また、本実施形態のインク組成物は、インクジェット法により布帛に付着させて行う捺染方法に用いられる。
1.1.第1染料
本実施形態のインク組成物に含まれる第1染料は、下記式(I)で表される。
本実施形態のインク組成物に含まれる第1染料は、下記式(I)で表される。
(但し、式(I)において、
R1は、
R2は、H、CH3、又は、C2H5を表し、
R3は、H、又は、
Xは、H、Li、Na、又は、Kを表し、
アスタリスクは、結合してもよい位置を表す。)
すなわち、第1染料は、C.I.リアクティブレッド(番号)(C.I.Reactive Red ##)の系統の幾つかの態様に該当する。ここで、本明細書では、染料を略記することがあり、例えば、「C.I.リアクティブレッド24」、「C.I.リアクティブバイオレット1」等を略記して、「RR24」、「RV1」等と記載することがある。なお、「C.I.」は、カラーインデックスの略である。
このような第1染料の具体例としては、下記式で表されるC.I.リアクティブレッド24(CHEMICAL ABSTRACTS SERVICE REGISTRY NUMBER(CAS):70210−20−7又はCAS:12238−00−5)、
下記式で表されるC.I.リアクティブレッド24:1(CAS:72829−25−5)、
下記式で表されるC.I.リアクティブレッド141(CAS:61931−52−0)、及び
下記式で表されるC.I.リアクティブレッド245(CAS:130210−57−9)、
等を挙げることができる。
なお、式(I)におけるR1が、一つのSO3Xによって置換された構造を有する、下記式で表されるC.I.リアクティブレッド31(CAS:12237−00−2)は、本実施形態の第1染料には含まれない。しかし、本実施形態のインク組成物には、第1染料以外の染料として、C.I.リアクティブレッド31は含まれてもよい。
第1染料が、式(I)で表される骨格を有することにより、インク組成物におけるpHの経時変化が抑制される。また、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)のいずれであっても、布帛の製造ロット違いによる色相のバラツキが小さく、布帛対応性を良好にすることができる。さらに、後述の第2染料と併用することにより、ガマットの範囲が良好な捺染を行うことができる。また、これらの効果は、第1染料と第2染料との相互作用に基づくものと考えられる。
第1染料は、上記例示した中でも、C.I.リアクティブレッド141、C.I.リアクティブレッド24:1、及び、C.I.リアクティブレッド245の少なくとも一種であることが特に好ましい。このような第1染料を選択すると、第2染料の選択に依存するものの、全体としてのpHの経時変化をさらに起こしにくい。そのため、インク組成物の色相の変化をさらに生じにくくすることができる。
インク組成物における第1染料の配合量は、所定の色相を得るために適宜に調節され得るが、いわゆるマゼンタ色のインク組成物とする場合には、インク組成物の全量に対して合計で、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは2質量%以上12質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上12質量%以下である。第1染料の配合量をこの範囲程度とすれば、ガマットの十分に広いインク組成物とすることができる。
1.2.第2染料
本実施形態のインク組成物に含まれる第2染料は、下記式(II)で表される。
・・・(II)
(但し、式(II)において、
R1は、SO3X、又は、
を表し、
R2、R3、R4は、それぞれ独立に、H、SO3X、又は、
を表し、
Xは、H、Li、Na、又は、Kを表し、
アスタリスクは、結合してもよい位置を表す。)
本実施形態のインク組成物に含まれる第2染料は、下記式(II)で表される。
(但し、式(II)において、
R1は、SO3X、又は、
R2、R3、R4は、それぞれ独立に、H、SO3X、又は、
Xは、H、Li、Na、又は、Kを表し、
アスタリスクは、結合してもよい位置を表す。)
すなわち、第2染料は、C.I.リアクティブバイオレット(番号)(C.I.Reactive Violet ##)の系統の幾つかの態様に該当する。
このような第2染料の具体例としては、下記式で表されるC.I.リアクティブバイオレット1(CAS:12239−45−1、CAS:69721−07−9又はCAS:70880−03−4)、及び
下記式で表されるC.I.リアクティブバイオレット33(CAS:66456−81−3又はCAS:69121−25−1)、
等を挙げることができる。
第2染料が、式(II)で表される骨格を有することにより、インク組成物におけるpHの経時変化が抑制される。また、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹、羊毛(ウール)のいずれであっても、布帛の製造ロット違いによる色相のバラツキが小さく、布帛対応性を良好にすることができる。さらに、第1染料と併用することにより、ガマットの範囲が良好な捺染を行うことができる。なお、これらの効果は、第1染料と第2染料との相互作用に基づくものと考えられる。
第2染料は、上記例示した中でも、C.I.リアクティブバイオレット1、及び、C.I.リアクティブバイオレット33の少なくとも一種であることが特に好ましい。このような第2染料を選択すると、第1染料の選択に依存するものの、全体としてのpHの経時変化をさらに起こしにくい。そのため、インク組成物の色相の変化をさらに生じにくくすることができる。
インク組成物における第2染料の配合量は、所定の色相を得るために適宜に調節され得るが、いわゆるマゼンタ色のインク組成物とする場合には、インク組成物の全量に対して合計で、0.1質量%以上10質量%以下、好ましくは0.5質量%以上8質量%以下、より好ましくは1質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上3質量%以下である。第2染料の配合量をこの範囲程度とすれば、ガマットの十分に広いインク組成物とすることができる。
1.3.その他の成分
1.3.1.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含んでもよい。水は本発明のインク組成物における主たる液媒体である。インク組成物を布帛に記録した後で布帛を乾燥する工程では、インク組成物中の揮発成分は布帛から大気中に蒸発飛散するが、水を主な媒体とすること
で、蒸発飛散物による人体に対する危害の恐れを抑えることができ、また、布帛の乾燥を早くすることができるため、好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
1.3.1.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含んでもよい。水は本発明のインク組成物における主たる液媒体である。インク組成物を布帛に記録した後で布帛を乾燥する工程では、インク組成物中の揮発成分は布帛から大気中に蒸発飛散するが、水を主な媒体とすること
で、蒸発飛散物による人体に対する危害の恐れを抑えることができ、また、布帛の乾燥を早くすることができるため、好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
水の含有量は、インク組成物の総量に対して、50質量%以上、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上である。水の含有量が50質量%以上であることにより、インク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、インク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。なお、本明細書において「水系インク」という場合には、インクの全質量(100質量%)に対して、水を50質量%以上含有するインクのことを指す。
1.3.2.有機溶剤
本実施形態のインク組成物は、有機溶媒を含んでもよい。有機溶剤を添加することにより、粘度、表面張力などのインク組成物の物性や、布帛上での乾燥、浸透などのインク組成物の挙動を制御することができる。また、水との相溶性から水溶性の有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、グリコール系やグリコールエーテル系の化合物が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、有機溶媒を含んでもよい。有機溶剤を添加することにより、粘度、表面張力などのインク組成物の物性や、布帛上での乾燥、浸透などのインク組成物の挙動を制御することができる。また、水との相溶性から水溶性の有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、グリコール系やグリコールエーテル系の化合物が挙げられる。
水溶性有機溶剤の例としては、1,2−ペンタンジオール、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコ−ルモノプロピルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2−メチル−3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール、3−(3−メチルフェノキシ)−1,2−プロパンジオール、3−ヘキシルオキシ−1,2−プロパンジオール、及び、2−ヒドロキシメチル−2−フェノキシメチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類が挙げられる。また、水溶性有機溶剤は、複数種を混合して用いてもよい。
水溶性有機溶剤の配合量は、インク組成物の全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
1.3.3.表面張力調整剤
本実施形態のインク組成物は、表面張力調整剤を含有してもよい。表面張力調整剤を添加することにより、インク組成物の表面張力を低くすることができる。これによって、布帛に対するインク組成物の濡れ性が向上し、ムラなどの発生を抑えて染色を施すことができる。表面張力調整剤としては、低い表面張力を有する水溶性の有機溶剤や、界面活性剤が挙げられる。低い表面張力を有する水溶性の有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、ブチレングリコール、1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチル
エーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールモノエーテル類が挙げられ、これらを少なくとも1種用いることができる。
本実施形態のインク組成物は、表面張力調整剤を含有してもよい。表面張力調整剤を添加することにより、インク組成物の表面張力を低くすることができる。これによって、布帛に対するインク組成物の濡れ性が向上し、ムラなどの発生を抑えて染色を施すことができる。表面張力調整剤としては、低い表面張力を有する水溶性の有機溶剤や、界面活性剤が挙げられる。低い表面張力を有する水溶性の有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、ブチレングリコール、1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチル
エーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールモノエーテル類が挙げられ、これらを少なくとも1種用いることができる。
<界面活性剤>
本実施形態に係るインク組成物は、布帛への濡れ性を高めてインクの浸透性を高める観点から、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えばノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤から適宜選択できる。またこれらのうち界面活性が高く気泡性の少ないアセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
本実施形態に係るインク組成物は、布帛への濡れ性を高めてインクの浸透性を高める観点から、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えばノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤から適宜選択できる。またこれらのうち界面活性が高く気泡性の少ないアセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD−001、PD−002W、PD−004、PD−005、EXP.4200、EXP.4123、EXP.4300(以上商品名:日信化学工業株式会社製)、サーフィノール440、465、485、CT111、CT121、TG、GA、ダイノール604、607(以上商品名:エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製)、アセチレノールE40、E60、E100(以上商品名:川研ファインケミカル株式会社製)、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(商品名:エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製)、サーフィノール465(商品名:日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製)などが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名:ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、(以上商品名:信越化学株式会社製)、シルフェイスSAG002、005、503A、008(以上商品名:日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
表面張力調整剤の配合量は、インク組成物の全量に対して、0.01質量%以上2質量%以下、好ましくは0.03質量%以上2.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上2質量%以下である。表面張力調整剤の含有量を上記の範囲とすることにより、インク組成物の泡立ち(起泡)を抑えて、布帛に対する濡れ性を向上させることができる。
1.3.4.保湿剤
本実施形態のインク組成物は、保湿剤を含有してもよい。保湿剤としては、一般にインクジェットインク組成物に用いられるものであれば特に限定されず使用可能である。保湿剤の沸点は、好ましくは180℃以上であり、200℃以上がより好ましい。沸点が上記範囲内であることにより、インク組成物に良好な保水性及び湿潤性を付与することができる。
本実施形態のインク組成物は、保湿剤を含有してもよい。保湿剤としては、一般にインクジェットインク組成物に用いられるものであれば特に限定されず使用可能である。保湿剤の沸点は、好ましくは180℃以上であり、200℃以上がより好ましい。沸点が上記範囲内であることにより、インク組成物に良好な保水性及び湿潤性を付与することができる。
保湿剤の具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、メソエリスリトール、トリ
メチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ヒドロキシエチルピロリドン等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類及びこれらの糖類の誘導体、グリシン、トリメチルグリシンのベタイン類などが挙げられる。なお、上記に列挙した保湿剤のうち、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどは、上述した水溶性の有機溶剤にも挙げられた化合物であり、双方の機能を有している。なお、本明細書における沸点とは、1気圧下での沸点をいう。
メチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ヒドロキシエチルピロリドン等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類及びこれらの糖類の誘導体、グリシン、トリメチルグリシンのベタイン類などが挙げられる。なお、上記に列挙した保湿剤のうち、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどは、上述した水溶性の有機溶剤にも挙げられた化合物であり、双方の機能を有している。なお、本明細書における沸点とは、1気圧下での沸点をいう。
本実施形態のインク組成物に保湿剤を配合する場合の配合量としては、インク組成物の全量に対して、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
1.3.5.pH調整剤
本実施形態のインク組成物は、pHを調整する目的で、pH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、pH緩衝液等から選択できる。特に限定されないが、例えば、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、有機酸として、カルボキシル基を有する化合物が好ましく、例えば、モノカルボン酸としてギ酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸等、ジカルボン酸としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸等、トリカルボン酸としてプロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、トリカルボン酸としてクエン酸、コハク酸、フマル酸等が挙げられる。また、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。有機塩基としてトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンが挙げられる。また、pH緩衝液として、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、pHを調整する目的で、pH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、pH緩衝液等から選択できる。特に限定されないが、例えば、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、有機酸として、カルボキシル基を有する化合物が好ましく、例えば、モノカルボン酸としてギ酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸等、ジカルボン酸としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸等、トリカルボン酸としてプロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、トリカルボン酸としてクエン酸、コハク酸、フマル酸等が挙げられる。また、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。有機塩基としてトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンが挙げられる。また、pH緩衝液として、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。
これらは単独でも併用でもよいが、併用が好ましく、例えば、有機酸と有機塩基の併用は、インク組成物のpHを所望の値に調整しやすいため好ましい。pH調整剤は、インク組成物の全量に対して、0.01質量%以上1.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上0.6質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上0.5質量%である。
このようなpH調整剤を用いることで、保存時間が長い場合など、インクのpHの変化を生じやすい環境に放置されても、インクのpHの低下を抑制でき、インクのpHを所望の範囲により安定かつ良好に保たれるため、印捺物の色相の変化を生じにくいので、所定のデザイン通りの色を良好に再現することができる。また、インク組成物のpHがこの範囲であれば、例えば、インクジェット記録装置の記録ヘッドの腐食等を十分に抑制することができる。
1.3.6.その他の成分
本実施形態に係るインク組成物は、さらに必要に応じて、その他の染料、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤及び樹脂粒子などの種々の添加剤を適宜添加することができる。
本実施形態に係るインク組成物は、さらに必要に応じて、その他の染料、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤及び樹脂粒子などの種々の添加剤を適宜添加することができる。
なお、上述の水溶性有機溶剤及び保湿剤の項において、多価アルコール類を複数例示し
たが、本実施形態のインク組成物においては、沸点が260℃以上の多価アルコール類がインク全量に対して5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。染色における染着の阻害要因となるアルコール性水酸基の数が低減され、従来よりも濃く染めることができる。詳しくは、染料の反応基と、植物性繊維などが有する水酸基とが反応して染着が進行する。アルコール性水酸基は、植物性繊維などの水酸基と同様に染料の反応基と反応することがあり、インク組成物中に多く存在すると、染着が阻害される場合がある。アルコール性水酸基を複数有する多価アルコールであっても、沸点が260℃以下であれば、インク組成物を布帛に付着させた後に、速やかに蒸発が進んで残留しにくくなる。そのため、布帛に付着させたインク組成物中のアルコール性水酸基の数が低減され、植物性繊維などの水酸基と、染料の反応基との反応が阻害されにくくなる。これにより、染着の状態が安定となり、ムラなどの発生を抑えて濃く染めることが可能となる。
たが、本実施形態のインク組成物においては、沸点が260℃以上の多価アルコール類がインク全量に対して5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。染色における染着の阻害要因となるアルコール性水酸基の数が低減され、従来よりも濃く染めることができる。詳しくは、染料の反応基と、植物性繊維などが有する水酸基とが反応して染着が進行する。アルコール性水酸基は、植物性繊維などの水酸基と同様に染料の反応基と反応することがあり、インク組成物中に多く存在すると、染着が阻害される場合がある。アルコール性水酸基を複数有する多価アルコールであっても、沸点が260℃以下であれば、インク組成物を布帛に付着させた後に、速やかに蒸発が進んで残留しにくくなる。そのため、布帛に付着させたインク組成物中のアルコール性水酸基の数が低減され、植物性繊維などの水酸基と、染料の反応基との反応が阻害されにくくなる。これにより、染着の状態が安定となり、ムラなどの発生を抑えて濃く染めることが可能となる。
1.4.インク組成物の物性
本実施形態に係るインク組成物は、上記した各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
本実施形態に係るインク組成物は、上記した各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
本実施形態に係るインク組成物は、記録品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。25℃におけるインク組成物の表面張力を、上記の範囲とすることにより、インクジェット法によって捺染を行う際に、インク組成物の吐出安定性が向上する。また、布帛に、画像などを染色して形成する場合に、高精細な画像を形成することができる。なお、インク組成物の表面張力は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社)を用いて測定することができる。具体的には、25℃の環境下にて、白金プレートの一部をインク組成物に浸漬させて測定し、求めることが可能である。
また、同様の観点から、インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上5mPa・s以下であることがより好ましく、2mPa・s以上4.5mPa・s以下であることがより好ましい。なお、インク組成物の粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
また、本実施形態のインク組成物のpHは、6.0以上、8.5以下であることが好ましい。より好ましくは、6.5以上、8.5以下であり、さらに好ましくは、7.0以上、8.0以下である。インク組成物の製造直後から貯蔵時に至るまで、上記pH範囲にあることが好ましい。ここで、製造直後とは、インク組成物の成分の調合後24時間以内のことを指し、貯蔵時とは、インクカートリッジなどのインク容器に充填した後から、インクジェット記録ヘッドから吐出されるまでの期間中を指す。例えば、貯蔵期間は、インクカートリッジの製品保証期間を指すことがある。なお、60℃程度の高温放置により加速評価を行って、貯蔵時のpH値を推定してもよい。
インク組成物のpHを上記の範囲とすることにより、インク組成物の経時安定性が向上し、得られる画像の色相が従来よりも変化しにくくなる。そのため、所定のデザインを、意図した色調で色再現性良く、布帛に捺染することができる。上記のpHの範囲は、上述したpH調整剤を添加することにより、調整することが可能である。
1.5.作用効果
本実施形態に係るインク組成物は、第1染料及び第2染料の化学構造がpHの経時変化を起こしにくい構造であるのでインク組成物の色相の変化を生じにくい。また、係るインク組成物によれば、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)等、植物性繊維や動物性繊維などの異なる種類の布帛において、従来よりも、得られる画像の色相差を低減することができ、布帛対応性が良好となる。また、係る二種を併用することにより、得られる画像の色域を拡大することができる。特に、バイオレットの色相範囲において、所望の色相が得られやすくなる。
本実施形態に係るインク組成物は、第1染料及び第2染料の化学構造がpHの経時変化を起こしにくい構造であるのでインク組成物の色相の変化を生じにくい。また、係るインク組成物によれば、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)等、植物性繊維や動物性繊維などの異なる種類の布帛において、従来よりも、得られる画像の色相差を低減することができ、布帛対応性が良好となる。また、係る二種を併用することにより、得られる画像の色域を拡大することができる。特に、バイオレットの色相範囲において、所望の色相が得られやすくなる。
また、インク組成物の保存期間が長い場合など、pHの変化が生じやすい環境におかれても、得られる画像の色相が従来よりも変化しにくくなり、意図した色調やデザインで染色を施すことができる。さらに、布帛に付着させたインク組成物中のアルコール性水酸基の数が低減されるため、染着阻害が抑えられて、より濃く染めることができる
これらにより、従来よりも色域を拡大し、種類の異なる布帛間や保管後における色再現性が向上した、産業または商業用途に適するインクジェット捺染用のインク組成物を提供することができる。
これらにより、従来よりも色域を拡大し、種類の異なる布帛間や保管後における色再現性が向上した、産業または商業用途に適するインクジェット捺染用のインク組成物を提供することができる。
2.インクセット
本実施形態のインクセットは、上述のインク組成物(マゼンタインク組成物)と、C.I.リアクティブイエロー95、またはC.I.リアクティブイエロー2を含むイエローインク組成物、C.I.リアクティブブルー72、またはC.I.リアクティブブルー15:1を含むシアンインク組成物、C.I.リアクティブブラック39を含むブラックインク組成物、の中から選ばれる少なくとも一種のインク組成物と、を含む。
本実施形態のインクセットは、上述のインク組成物(マゼンタインク組成物)と、C.I.リアクティブイエロー95、またはC.I.リアクティブイエロー2を含むイエローインク組成物、C.I.リアクティブブルー72、またはC.I.リアクティブブルー15:1を含むシアンインク組成物、C.I.リアクティブブラック39を含むブラックインク組成物、の中から選ばれる少なくとも一種のインク組成物と、を含む。
イエローインク組成物は、その他の染料、水、有機溶剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤及び樹脂粒子などの種々の成分を含んでもよい。水、有機溶剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤及び樹脂粒子については、上述のインク組成物の項で述べたと同様である。イエローインク組成物に使用可能な染料としては、C.I.リアクティブイエロー2、7、15、22、37、42、57、69、76、81、95、102、125、135等が挙げられ、本発明のマゼンタインクと併用する場合において、布帛対応性や色再現性に優れることから、C.I.リアクティブイエロー95が好ましい。
シアンインク組成物は、その他の染料、水、有機溶剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤及び樹脂粒子などの種々の成分を含んでもよい。水、有機溶剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤及び樹脂粒子については、上述のインク組成物の項で述べたと同様である。シアンインク組成物に使用可能な染料としては、C.I.リアクティブブルー2、13、15:1、21、38、41、50、69、72、109、120、143等が挙げられ、本発明のマゼンタインクと併用する場合において、布帛対応性や色再現性に優れることから、C.I.リアクティブブルー72、15:1が好ましい。
ブラックインク組成物は、その他の染料、水、有機溶剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤及び樹脂粒子などの種々の成分を含んでもよい。水、有機溶剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤、キレート化剤及び樹脂粒子については、上述のインク組成物の項で述べたと同様である。ブラックインク組成物に使用可能な染料としては、C.I.リアクティブブラック3、4、5、8、13、14、31、34、35、
39等が挙げられ、本発明のマゼンタインクと併用する場合において、布帛対応性や色再現性に優れることから、C.I.リアクティブブラック39が好ましい。
39等が挙げられ、本発明のマゼンタインクと併用する場合において、布帛対応性や色再現性に優れることから、C.I.リアクティブブラック39が好ましい。
各インク組成物における染料の含有量は、用途に応じて適宜調整することができるが、好ましくは0.10質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは0.20質量%以上15.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下である。
このようなインクセットによれば、マゼンタインク組成物と併用している場合、布帛が、セルロース系である綿(コットン)、ビスコース、ポリアミド系である絹(シルク)、羊毛(ウール)のいずれであっても、布帛の製造ロット違いによる各インクの色相のバラツキを小さくすることができ、さらに、ガマットの範囲がより良好な捺染を行うことができる。即ち、布帛対応性に優れた記録物を得ることができる。
3.インクジェット記録装置
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置について、図1を参照して説明する。インクジェット記録装置は、インク組成物の微小な液滴を吐出するインクジェット法によって、布帛の捺染部に液滴を着弾させて捺染を行う装置である。図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置を示す概略斜視図である。本実施形態では、インクジェット記録装置として、インクカートリッジがキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのプリンターを例に挙げて説明する。なお、図1においては、各部材を認識可能な程度の大きさとするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置について、図1を参照して説明する。インクジェット記録装置は、インク組成物の微小な液滴を吐出するインクジェット法によって、布帛の捺染部に液滴を着弾させて捺染を行う装置である。図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置を示す概略斜視図である。本実施形態では、インクジェット記録装置として、インクカートリッジがキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのプリンターを例に挙げて説明する。なお、図1においては、各部材を認識可能な程度の大きさとするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
本実施形態のインクジェット記録装置としてのプリンター1は、いわゆるシリアルプリンターと呼ばれているものである。シリアルプリンターとは、所定の方向に移動するキャリッジにヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動しながら印刷を行うプリンターをいう。なお、シリアルプリンターに代えて、ラインプリンターを用いてもよい。
プリンター1は、図1に示すように、インクジェット記録ヘッドとしてのヘッド3、キャリッジ4、主走査機構5、プラテンローラー6、プリンター1全体の動作を制御する制御部(図示せず)などを有している。キャリッジ4は、ヘッド3を搭載すると共に、ヘッド3に供給されるインクを収納するインクカートリッジ7a,7b,7c,7dが着脱可能である。
主走査機構5は、キャリッジ4に接続されたタイミングベルト8、タイミングベルト8を駆動するモーター9、ガイド軸10を有している。ガイド軸10は、キャリッジ4の支持部材として、キャリッジ4の走査方向(主走査方向)に架設されている。キャリッジ4は、タイミングベルト8を介してモーター9によって駆動され、ガイド軸10に沿って往復移動が可能である。これにより、主走査機構5は、キャリッジ4を主走査方向に往復移動させる機能を有している。
プラテンローラー6は、捺染を施す布帛としての記録媒体2を、上記主走査方向と直交する副走査方向(記録媒体2の長さ方向)に、搬送する機能を有している。そのため、記録媒体2は副走査方向に搬送される。また、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4は、記録媒体2の幅方向と略一致する主走査方向に往復移動が可能であり、ヘッド3は記録媒体2に対して、主走査方向および副走査方向へ、相対的に走査が可能となっている。
インクカートリッジ7a,7b,7c,7dは、独立した4つのインクカートリッジである。インクカートリッジ7a,7b,7c,7dには、上述したインク組成物を収納す
ることができる。これらのインクカートリッジには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの色を呈するインク組成物が個別に収納され、任意に組み合わせて用いることが可能である。図1では、インクカートリッジの数を4個としているが、これに限定されるものではない。インクカートリッジ7a,7b,7c,7dの底部には、各インクカートリッジに収納されたインク組成物をヘッド3へ供給するための供給口(図示せず)が設けられている。
ることができる。これらのインクカートリッジには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの色を呈するインク組成物が個別に収納され、任意に組み合わせて用いることが可能である。図1では、インクカートリッジの数を4個としているが、これに限定されるものではない。インクカートリッジ7a,7b,7c,7dの底部には、各インクカートリッジに収納されたインク組成物をヘッド3へ供給するための供給口(図示せず)が設けられている。
次に、ヘッド3の構成について、図2を参照して説明する。図2は、インクジェット記録ヘッドを示す概略斜視図である。
ヘッド3は、図2に示すように、導入部53、ヘッド基板55、ヘッド本体56などを有している。導入部53は、ヘッド3におけるインク組成物導入部の機能を有している。この導入部53には、接続針54が設置されている。接続針54は、上述した供給口と接続され、インク組成物をヘッド3内部へ供給する機能を有している。
ヘッド基板55は、一方の面が導入部53に隣接して設置され、他方の面がヘッド本体56に面して設置されている。また、このヘッド基板55には2連のコネクター58が設けられている。コネクター58は、フレキシブルフラットケーブル(図示せず)を介して、回路基板(図示せず)とヘッド3とを電気的に接続するための端子を構成している。
ヘッド本体56はヘッド基板55と隣接して設置され、その内部には接続針54から導入されたインク組成物の流路が形成されている。ヘッド本体56は、加圧部57、ノズルプレート51などを有している。加圧部57には、ヘッド3の駆動手段(アクチュエーター)としての圧電素子がキャビティ部(図示せず)に設置されている。ノズルプレート51の形成材料としては、特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUSなど)、ポリイミドなどを用いることができる。
ノズルプレート51の、ヘッド3が上記インク組成物を吐出する面には、ノズル面51aが形成されている。ノズル面51aには、複数のノズル52が一定間隔で整列した、2つのノズル列52a,52bが平行に配置されている。これらノズル列52a,52bが2列配置されていることから、ヘッド3は所謂2連型の構成となっている。また、ノズル52は円形であって、その直径は約30μmとしている。このノズル52ごとにキャビティ部が設置されている。なお、ノズル面51aには、後述するプラズマ重合膜126およびフッ素樹脂膜128が形成されている。
上述した構成により、インク組成物がインク供給機構からヘッド3に供給され、充填される。次いで、ヘッドドライバー(図示せず)からヘッド3の圧電素子に駆動信号(電気信号)が印加されると、圧電素子の変形によって加圧部57のキャビティに体積変化が生じる。この体積変化によるポンプ作用で、キャビティ内に充填されたインク組成物が加圧され、ノズル52から吐出される構成となっている。
ここで、ヘッド3のノズル52ごとに設置される駆動手段(アクチュエーター)は、圧電素子に限定されない。例えば、アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、加熱によって生じる気泡によってインク組成物をインク滴として吐出させる電気熱変換素子を用いてもよい。
<ノズルプレート>
ノズルプレート51の表面(ノズル面51a)の少なくとも一部はフッ素を含有し、かつ、ノズルプレート51の表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有している。なお、ノズルプレート51の表面とは、ノズルプレート51の少なくとも一部の面の性質を
変化させるために、物理的または化学的に処理された膜を含む。
ノズルプレート51の表面(ノズル面51a)の少なくとも一部はフッ素を含有し、かつ、ノズルプレート51の表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有している。なお、ノズルプレート51の表面とは、ノズルプレート51の少なくとも一部の面の性質を
変化させるために、物理的または化学的に処理された膜を含む。
ノズルプレート51の形成材料がステンレス鋼の場合には、ノズルプレート51の表面およびノズル52の内表面に、シリコーン材料をプラズマ重合することによって、プラズマ重合膜126(図3参照)を形成することができる。プラズマ重合膜126の形成材料としては、シリコーン油、ジメチルポリシロキサンなどのアルコキシランが挙げられる。具体的な商品名としては、TSF451(ジーイー東芝シリコーン社)、SH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン社)などが挙げられる。
また、プラズマ重合膜126の表面には、撥液性を有するフッ素樹脂膜128(図3参照)が形成されている。フッ素樹脂膜128は、フッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシランの単分子膜であることが好ましい。フッ素を含む長鎖高分子鎖としては、分子量が1000以上の、パーフルオロアルキル鎖、パーフルオロポリエーテル鎖などが挙げられる。長鎖高分子鎖を有するアルコキシランとしては、例えば、長鎖高分子鎖を有するシランカップリング剤などが挙げられる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、ヘプタトリアコンタフルオロイコシルトリメトキシシランなどが挙げられ、市販品としては、オプツールDSX(商品名、ダイキン工業社)、KY−130(商品名、信越化学工業社)などが挙げられる。なお、ノズルプレート51の形成材料がポリイミドの場合には、プラズマ重合膜126を形成せずに、ノズルプレート51の表面に直接フッ素樹脂膜128を形成してもよい。
次に、ノズルプレート51の表面状態について、図3を参照して説明する。図3は、ノズルプレート表面の状態を示す概念図である。
図3に示した、ノズルプレート51の表面(ノズル面51a)には、プラズマ重合膜126、およびプラズマ重合膜126を介して、フッ素を含む長鎖高分子鎖128aを含むフッ素樹脂膜128が形成されている。プラズマ重合膜126を形成したノズルプレート51を、フッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシラン溶液に浸漬させると、プラズマ重合膜126の表面に、フッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシランが重合したフッ素樹脂膜128が形成される。フッ素樹脂膜128に含まれるケイ素原子は、酸素原子を介してプラズマ重合膜126と結合(いわゆるシロキサン結合)する。そして、フッ素を含む長鎖高分子鎖128aは、表面側に配列された状態となる。このように、ヘッド3は、ノズルプレート51の表面(ノズル面51a)の少なくとも一部に、単分子膜のフッ素樹脂膜128に由来するフッ素を含有している。
これにより、ノズルプレート51の最表面から1μm未満の領域に、シロキサン結合を有していることになる。上述した構成により、フッ素樹脂膜128の状態は、ケイ素原子が3次元的に結合し、フッ素を含む長鎖高分子鎖同士が複雑に絡み合った状態となっている。そのため、フッ素樹脂膜128は高密度な状態となって、フッ素樹脂膜128にインク組成物がはじかれて浸透しにくくなり、インク組成物に対するフッ素樹脂膜128およびプラズマ重合膜126の耐腐食性を向上させることができる。
また、ノズルプレート51の表面にニッケルイオンとフッ素樹脂との共析メッキ膜を形成することで、ノズルプレート51の表面の少なくとも一部にフッ素を有するようにしてもよい。このような共析メッキ膜を形成する方法は、電解法あるいは無電解法を用いることが可能である。具体的には、特に限定されないが、例えば、ニッケルイオンと撥液性高分子樹脂粒子を電荷により分散させた電解液中に浸漬し、電解液を撹拌しながら浸漬されているノズルプレート表面に共析メッキを施す方法が好ましい。上記の共析メッキに使用する撥液性高分子樹脂粒子の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルコキシブタジエン、ポリフルオロビニリデン、ポリフルオロビニル
、ポリジパーフルオロアルキルフマレートなどの樹脂を、単独あるいは混合して用いることが好ましい。また、共析メッキに用いる金属材料は、ニッケルに限定されず、例えば、銅、銀、錫、亜鉛などを適宜選択できる。共析メッキに用いる金属材料は、ニッケル、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−ホウ素合金などの表面硬度が大きく、耐摩耗性に優れる材料がより好ましい。
、ポリジパーフルオロアルキルフマレートなどの樹脂を、単独あるいは混合して用いることが好ましい。また、共析メッキに用いる金属材料は、ニッケルに限定されず、例えば、銅、銀、錫、亜鉛などを適宜選択できる。共析メッキに用いる金属材料は、ニッケル、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−ホウ素合金などの表面硬度が大きく、耐摩耗性に優れる材料がより好ましい。
4.捺染方法
本実施形態に係る捺染方法について説明する。本実施形態の捺染方法は、一般に用いられるインクジェット記録ヘッドから上記インク組成物を吐出させることを含んでもよい。好ましくは、ノズルプレート51表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、かつ、ノズルプレート51の表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有するヘッド3、から吐出させることを含んでもよい。また、少なくとも、上述したインク組成物をインクジェット記録装置(インクジェットプリンター)のインクジェット記録ヘッド(以降、単に「ヘッド」ともいう。)に導入し、インクジェット法にて布帛にインク組成物を付着させる工程を含んでいる。また、ヘッドには、上述したインクセットの各インク組成物が、それぞれ導入されていてもよい。例えば、ヘッドが備えるノズル列に対して、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、イエローインク組成物、ブラックインク組成物が割り当てられてもよい。
本実施形態に係る捺染方法について説明する。本実施形態の捺染方法は、一般に用いられるインクジェット記録ヘッドから上記インク組成物を吐出させることを含んでもよい。好ましくは、ノズルプレート51表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、かつ、ノズルプレート51の表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有するヘッド3、から吐出させることを含んでもよい。また、少なくとも、上述したインク組成物をインクジェット記録装置(インクジェットプリンター)のインクジェット記録ヘッド(以降、単に「ヘッド」ともいう。)に導入し、インクジェット法にて布帛にインク組成物を付着させる工程を含んでいる。また、ヘッドには、上述したインクセットの各インク組成物が、それぞれ導入されていてもよい。例えば、ヘッドが備えるノズル列に対して、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、イエローインク組成物、ブラックインク組成物が割り当てられてもよい。
インク組成物を布帛にインクジェット法によって付着させる工程は、ヘッドのノズルからインク組成物の液滴を吐出させて布帛に付着させ、布帛に画像、テキスト、模様、色彩などのデザインを形成(捺染)するものである。これにより、布帛にインク組成物によるデザインが捺染された印捺物が得られる。
本実施形態で用いるインクジェット記録装置においては、ヘッド3(図2参照)からインク組成物が液滴として吐出される。このとき、上記液滴を、所定のタイミングで間欠的に、かつ所定の体積(質量)で吐出させることにより、布帛にインク組成物の液滴を付着させ、所定の画像などが捺染される。
布帛に対して、インク組成物は、1.5mg/cm2以上6mg/cm2以下となるように布帛に付与することが好ましく、2mg/cm2以上5mg/cm2以下となるように布帛に付与することがより好ましい。インク組成物の付着量が1.5mg/cm2であることで、記録される画像の発色性が良好になる傾向にあり、インク組成物の付着量が6mg/cm2以下であることで、布帛常でインク組成物の液滴の乾燥性が向上し、捺染された画像などで滲みの発生が抑えられる。
また、本実施形態に係る捺染方法は、布帛に付与したインク組成物(画像)を加熱する加熱工程を含んでいてもよい。
布帛に付着されたインク組成物を加熱する際の加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、特に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。
布帛に付着されたインク組成物を加熱する際の加熱温度としては、特に限定されないが、150℃以上200℃以下であることが好ましく、160℃以上180℃以下であることがより好ましい。加熱温度が上記範囲内にあることで、布帛への熱ダメージを抑え、インク組成物の乾燥や定着を促進することができる。なお、上記加熱温度とは、布帛に形成された画像などのデザインの表面温度のことをいい、例えば非接触温度計(商品名「IT2−80」、株式会社キーエンス製)を用いて測定することができる。また、加熱温度を
印加する加熱時間は、特に限定されないが、例えば、30秒以上20分以下とすることができる。
印加する加熱時間は、特に限定されないが、例えば、30秒以上20分以下とすることができる。
本実施形態の捺染方法によって捺染される布帛としては、上述したインク組成物によって染色可能なものが挙げられる。そのような布帛としては、特に限定されないが、例えば、綿、麻などの植物性繊維、絹、羊毛などの動物性繊維、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタンなどの合成繊維、ポリ乳酸などの生分解性繊維、およびこれらの混紡繊維で形成されたものが挙げられる。すなわち、布帛とは、上記の繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものである。本実施形態に用いる布帛は、綿、麻などのセルロースを含む植物性繊維で形成されたものが、より好ましい。このような布帛を用いることにより、染色性(堅牢性)を向上させることができる。また、本実施形態で用いる布帛の目付については、特に限定されないが、1.0oz(オンス)以上、10.0oz以下、好ましくは2.0oz以上、9.0oz以下、より好ましくは3.0oz以上、8.0oz以下、さらに好ましくは4.0oz以上、7.0oz以下の範囲である。
5.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
5.1.インク組成物の調製
各成分(材料)を下記の表1及び表2に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各材料を均一に混合し、メンブレンフィルタ(孔径1μm)で濾過することにより、各インク組成物を調製した。なお、下記の表1、表2中、数値の単位は質量%であり、合計は100質量%である。
各成分(材料)を下記の表1及び表2に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各材料を均一に混合し、メンブレンフィルタ(孔径1μm)で濾過することにより、各インク組成物を調製した。なお、下記の表1、表2中、数値の単位は質量%であり、合計は100質量%である。
れているものを用いた。
5.2.保存安定性評価
上記のようにして得られた各インク組成物をサンプル瓶に充填し、60℃で7日間放置して、放置前(調製直後)及び放置後のpHを測定して、以下の基準で評価して、結果を表1及び表2に記載した。
A:pHの変化量が1未満で、かつ放置後のpHの測定値が6以上
B:pHの変化量が1以上2未満で、かつ放置後のpHの測定値が6以上
C:pHの変化量が2以上で、かつ放置後のpHの測定値が6以上
D:放置後のpHの測定値が6未満。
上記のようにして得られた各インク組成物をサンプル瓶に充填し、60℃で7日間放置して、放置前(調製直後)及び放置後のpHを測定して、以下の基準で評価して、結果を表1及び表2に記載した。
A:pHの変化量が1未満で、かつ放置後のpHの測定値が6以上
B:pHの変化量が1以上2未満で、かつ放置後のpHの測定値が6以上
C:pHの変化量が2以上で、かつ放置後のpHの測定値が6以上
D:放置後のpHの測定値が6未満。
5.3.発色性評価
上記のようにして得られた各インク組成物をインクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のイエローカートリッジに充填し、それぞれ前処理を行った布帛1(綿100%;坪量130g/m2)、布帛2(絹100%;坪量90g/m2)をプリンタにセットし、インク吐出量を5%duty〜100%dutyまで段階的に調整したベタパターンを印字した。尚、画像解像度は1440×720dpiとした。ここで、%dutyとは、%duty=1平方インチ当たりの記録ドット数/(縦記録解像度×横記録解像度)×100を示す。
上記のようにして得られた各インク組成物をインクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)のイエローカートリッジに充填し、それぞれ前処理を行った布帛1(綿100%;坪量130g/m2)、布帛2(絹100%;坪量90g/m2)をプリンタにセットし、インク吐出量を5%duty〜100%dutyまで段階的に調整したベタパターンを印字した。尚、画像解像度は1440×720dpiとした。ここで、%dutyとは、%duty=1平方インチ当たりの記録ドット数/(縦記録解像度×横記録解像度)×100を示す。
インク組成物を印字した布帛に対して102℃で10分間スチーミングを行った後、ラッコールSTA(明成化学株式会社製、界面活性剤)を0.2質量%含む水溶液を用いて90℃で10分間洗浄し、乾燥させて評価サンプルとした。
得られた評価サンプルの色相を、分光濃度計(商品名「Spectrolino」、X−RITE社製)を用い、光源:D65、ステータス:DIN_NB、視野角:2度、フィルタ:UVの条件で画像のL*、a*、b*値を測定し、下記計算式に基づいて各サンプルの発色性(C*)を算出し、各布帛の最大値(C*max)を下記評価基準に基づいて評価した。
C*=((a*)^2+(b*)^2)^0.5・・・(数式1)
A:C*maxが60以上
B:C*maxが55以上60未満
C:C*maxが50以上55未満
D:C*maxが50未満。
A:C*maxが60以上
B:C*maxが55以上60未満
C:C*maxが50以上55未満
D:C*maxが50未満。
5.4.色相評価
上記の「5.3.発色性評価」で得られた評価サンプルを用いて、同様に分光濃度計(商品名「Spectrolino」、X−RITE社製)、光源:D65、ステータス:DIN_NB、視野角:2度、フィルタ:UVの条件で画像のL*、a*、b*値を測定し、下記計算式に基づいて布帛1(綿100%;坪量130g/m2)、布帛2(絹100%;坪量90g/m2)に印捺した場合の色相差(ΔE*)算出し、得られた値に基づいて、色相の判定を行った。
上記の「5.3.発色性評価」で得られた評価サンプルを用いて、同様に分光濃度計(商品名「Spectrolino」、X−RITE社製)、光源:D65、ステータス:DIN_NB、視野角:2度、フィルタ:UVの条件で画像のL*、a*、b*値を測定し、下記計算式に基づいて布帛1(綿100%;坪量130g/m2)、布帛2(絹100%;坪量90g/m2)に印捺した場合の色相差(ΔE*)算出し、得られた値に基づいて、色相の判定を行った。
ΔE*={(ΔL*)^2+(Δa*^2)+(Δb*^2)}^0.5・・・(数式2)
ΔL*=L*1−L*2・・・(数式3)
Δa*=a*1−a*2・・・(数式4)
Δb*=b*1−b*2・・・(数式)
但し、L*1、a*1、b*1は布帛1(綿100%;坪量130g/m2)のC*m
axとなる部分のL*、a*、b*値を示し、L*2、a*2、b*2は布帛2(絹100%;坪量90g/m2)のC*maxとなる部分のL*、a*、b*値を示す。
ΔL*=L*1−L*2・・・(数式3)
Δa*=a*1−a*2・・・(数式4)
Δb*=b*1−b*2・・・(数式)
但し、L*1、a*1、b*1は布帛1(綿100%;坪量130g/m2)のC*m
axとなる部分のL*、a*、b*値を示し、L*2、a*2、b*2は布帛2(絹100%;坪量90g/m2)のC*maxとなる部分のL*、a*、b*値を示す。
5.5.耐光性評価
Xenon耐光性試験機(商品名「XL−75s」、株式会社 スガ試験機製)を用い、23℃、相対湿度50%R.H、照度75000luxの条件のもと、上記布帛1(綿100%;坪量130g/m2)、布帛2(絹100%;坪量90g/m2)のC*maxの部分を10日間暴露した。上記、「5.4.色相評価」と同様にして初期と10日目と色相差(ΔE*)算出し、以下の基準に基づき耐光性を評価した。
Xenon耐光性試験機(商品名「XL−75s」、株式会社 スガ試験機製)を用い、23℃、相対湿度50%R.H、照度75000luxの条件のもと、上記布帛1(綿100%;坪量130g/m2)、布帛2(絹100%;坪量90g/m2)のC*maxの部分を10日間暴露した。上記、「5.4.色相評価」と同様にして初期と10日目と色相差(ΔE*)算出し、以下の基準に基づき耐光性を評価した。
A:ΔE*が10未満
B:ΔE*が10以上12.5未満
C:ΔE*が12.5以上15未満
D:ΔE*が15以上。
B:ΔE*が10以上12.5未満
C:ΔE*が12.5以上15未満
D:ΔE*が15以上。
5.6.ノズルプレート撥水性評価
5.6.1.ノズルプレートの作製
表面に撥液膜を形成したノズルプレートとして、表面に共析メッキを施したノズルプレート、および、表面にプラズマ重合膜およびフッ素樹脂膜を形成したノズルプレートの2種類をそれぞれ複数枚準備した。
5.6.1.ノズルプレートの作製
表面に撥液膜を形成したノズルプレートとして、表面に共析メッキを施したノズルプレート、および、表面にプラズマ重合膜およびフッ素樹脂膜を形成したノズルプレートの2種類をそれぞれ複数枚準備した。
共析メッキが施されたノズルプレートは、SUS316製のノズルプレートを、メッキ液(硫酸ニッケル:240g/L、塩化ニッケル:45g/L、ホウ酸:35g/L、PTFE:50g/L)に浸漬し、pH=4.0〜4.5、メッキ温度60℃、陰極電流密度を3A/dm2の条件で、緩やかに撹拌しながら共析メッキしたものを用いた。
一方、プラズマ重合膜およびフッ素樹脂膜が形成されたノズルプレートは、SUS316製のノズルプレートに、ジメチルポリシロキサン(SH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製))をプラズマ重合することによりプラズマ重合膜を成膜し、さらにヘプタトリアコンタフルオロイコシルトリメトキシシラン(オプツールDSX(商標、ダイキン工業社製))の単分子膜を成膜したものを用いた。より具体的には、以下のように形成した。
プラズマ重合チャンバーに成膜前のノズルプレートを導入し、40℃に保持し、チャンバーにアルゴンガスを供給して、7Paに保持した。100Wの高周波電力を印加して、アルゴンプラズマを生成させ、ジメチルポリシロキサンをチャンバーに導入して、重合反応を生じさせてノズルプレート表面にプラズマ重合膜を成膜した。次にプラズマ重合膜を窒素雰囲気中200℃でアニールした。次に、プラズマ重合膜の表面をアルゴンプラズマに1分曝した。その後、プラズマ重合膜を大気に曝し、プラズマ重合膜の表面を終端する酸素原子に水素原子を結合させてOH基化させた。あらかじめ、ヘプタトリアコンタフルオロイコシルトリメトキシシランを溶媒(製品名HFE−7200(住友スリーエム社製)を用いた)と混合して、例えば0.1wt%の濃度の溶液を作成し、プラズマ重合膜が成膜されたノズルプレートを、300℃に加熱して当該溶液に浸漬して、プラズマ重合膜およびフッ素樹脂膜が形成されたノズルプレートとした。
5.6.2.撥水性評価試験
実施例3、6、15、及び比較例1のインク組成物を、個々のテフロン(登録商標)容器に20g秤量し、共析メッキを施したノズルプレートと、プラズマ重合膜およびフッ素樹脂膜を形成されたノズルプレートを個々に浸漬させ、蓋をして密閉した。この状態で、容器ごと60℃で、1、3、7、14日間放置し、ノズルプレート表面の撥液膜の状況を
目視にて観察した。また、インク組成物をはじく時間(撥液時間)を、初期および放置後で比較した。これらの結果を、以下の評価基準に従って、各インク組成物に対する耐腐食性の指標として評価し、表2に示した。なお、撥液性が悪くなると、インク組成物をはじきにくくなるため、撥液時間は増大することになる。
A:初期状態(放置前)と同等で外観に変化がなく、撥液時間の増大なし
B:撥液膜に外観上の変化はないが、撥液時間が増大した
C:撥液膜に外観上の変化が有り、撥液時間が増大した
D:撥液膜が剥離しSUSプレートが露出しており、撥液作用がみられない。
実施例3、6、15、及び比較例1のインク組成物を、個々のテフロン(登録商標)容器に20g秤量し、共析メッキを施したノズルプレートと、プラズマ重合膜およびフッ素樹脂膜を形成されたノズルプレートを個々に浸漬させ、蓋をして密閉した。この状態で、容器ごと60℃で、1、3、7、14日間放置し、ノズルプレート表面の撥液膜の状況を
目視にて観察した。また、インク組成物をはじく時間(撥液時間)を、初期および放置後で比較した。これらの結果を、以下の評価基準に従って、各インク組成物に対する耐腐食性の指標として評価し、表2に示した。なお、撥液性が悪くなると、インク組成物をはじきにくくなるため、撥液時間は増大することになる。
A:初期状態(放置前)と同等で外観に変化がなく、撥液時間の増大なし
B:撥液膜に外観上の変化はないが、撥液時間が増大した
C:撥液膜に外観上の変化が有り、撥液時間が増大した
D:撥液膜が剥離しSUSプレートが露出しており、撥液作用がみられない。
5.7.色再現範囲評価
プリンタPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)に表3のインクセット1〜3をそれぞれ充填し、布帛1(綿100%;坪量130g/m2)に、RGB=(0,0,0)から(255,255,255)の入力に対応するルックアップテーブルを印捺し、上記「色相評価」と同様な条件で、評価サンプルを測定し、得られたL*値、a*値、b*値から、CIEで規定するL*値、a*値、b*値が全て1であるときのガマット体積を1として、インクセット1〜3で印捺した場合の色再現範囲体積(ガマット体積)を算出した。インクセット3のガマット体積を100%とした場合の、各インクセットのガマット体積率を算出し、下記判定基準により、色再現性を評価した。
A:ガマット体積率が、110%を超える
B:ガマット体積率が、100%超、110%以下である
C:ガマット体積率が、100%以下である。
プリンタPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)に表3のインクセット1〜3をそれぞれ充填し、布帛1(綿100%;坪量130g/m2)に、RGB=(0,0,0)から(255,255,255)の入力に対応するルックアップテーブルを印捺し、上記「色相評価」と同様な条件で、評価サンプルを測定し、得られたL*値、a*値、b*値から、CIEで規定するL*値、a*値、b*値が全て1であるときのガマット体積を1として、インクセット1〜3で印捺した場合の色再現範囲体積(ガマット体積)を算出した。インクセット3のガマット体積を100%とした場合の、各インクセットのガマット体積率を算出し、下記判定基準により、色再現性を評価した。
A:ガマット体積率が、110%を超える
B:ガマット体積率が、100%超、110%以下である
C:ガマット体積率が、100%以下である。
5.8.評価結果
評価結果から、第1染料として、式(I)で表される構造に含まれるRR24:1、RR141又はRR245、並びに、第2染料として、式(II)で表される構造に含まれるRV1又はRV33、を含む、各実施例のインク組成物は、pHの経時変化を起こしにくく、発色、色相の安定性が良好であることが判明した。また、綿と絹との両者に対して色相の近い捺染を行うことができ、布帛対応性も良好であることが分かった。
評価結果から、第1染料として、式(I)で表される構造に含まれるRR24:1、RR141又はRR245、並びに、第2染料として、式(II)で表される構造に含まれるRV1又はRV33、を含む、各実施例のインク組成物は、pHの経時変化を起こしにくく、発色、色相の安定性が良好であることが判明した。また、綿と絹との両者に対して色相の近い捺染を行うことができ、布帛対応性も良好であることが分かった。
これに対して、式(I)で表される構造に含まれないRV31を用いた比較例1、2、及び、式(I)又は式(II)で表される構造に含まれないAR138及びAV97を用いた比較例3のインク組成物では、いずれの評価においても劣っていた。
また、実施例10〜12をみると、耐光性に関しては、RV1に代えて、RV33を用いた場合であって、かつ、比較的多く用いた場合に、若干劣っていた。これは、RV1のほうが、RV33よりも耐光性が良いことを表している。しかしさらに、実施例12をみると、第1染料がRR245である場合には、RV1に代えて、RV33を用いても耐光性の低下はわずかであった。これらのことは、第1染料と第2染料との間には、相性が存在し、適した種類の組み合わせが存在することを示唆していると考えられる。
表3をみると、共析メッキを施したノズルプレートでは、インク15に浸漬した場合に、3日で外観上の変化が認められた。一方、インク3及びインク6では、それぞれ7日及び14日で外観上の変化が認められた。したがって、ノズルプレートに共析メッキを施した場合には、インクの種類によって、表面の外観が変化する日数が異なり、使用可能な期間が異なることが予想される。また、ノズルプレートに共析メッキを施した場合には、インクのpHが大きいほど、表面の外観が変化するまでの日数が長く、共析メッキの劣化は、インクのpHに対して一次関数的な相関を有することが分かった。
一方、プラズマ重合膜およびフッ素樹脂膜が形成されたノズルプレートは、本発明のいずれのインクに対しても、14日間外観上の変化が認められず、非常に良好な耐腐食性を示すことが分かった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…プリンター、2…記録媒体、3…ヘッド、4…キャリッジ、5…主走査機構、6…プラテンローラー、7a,7b,7c,7d…インクカートリッジ、8…タイミングベルト、9…モーター、10…ガイド軸、51…ノズルプレート、51a…ノズル面、52…ノズル、52a,52b…ノズル列、53…導入部、55…ヘッド基板、56…ヘッド本体、54…接続針、57…加圧部、58…コネクター、126…プラズマ重合膜、128…フッ素樹脂膜、128a…フッ素を含む長鎖高分子鎖
Claims (7)
- 請求項1において、
pHが、6.0以上、8.5以下である、インク組成物。 - 請求項1又は請求項2において、
pH調整剤を含有する、インク組成物。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
沸点が260℃を越える多価アルコールの含有量がインク全量に対して5質量%以下である、インク組成物。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記第1染料は、C.I.リアクティブレッド141、C.I.リアクティブレッド24:1、及び、C.I.リアクティブレッド245の少なくとも一種であり、前記第2染
料は、C.I.リアクティブバイオレット1、及び、C.I.リアクティブバイオレット33の少なくとも一種である、インク組成物。 - マゼンタインク組成物として、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインク組成物と、
C.I.リアクティブイエロー95又はC.I.リアクティブイエロー2を含むイエローインク組成物、C.I.リアクティブブルー72又はC.I.リアクティブブルー15:1を含むシアンインク組成物、C.I.リアクティブブラック39を含むブラックインク組成物、の中から選ばれる少なくとも一種のインク組成物と、
を含む、インクセット。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインク組成物又は請求項6に記載のインクセットに含まれるインク組成物を、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、かつ、前記ノズルプレートの表面から1μm未満の領域にシロキサン結合を有するインクジェット記録ヘッドから吐出させることを含む、捺染方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2018203801A (ja) * | 2017-05-30 | 2018-12-27 | セイコーエプソン株式会社 | インク組成物、インクセット及び記録方法 |
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