JP2018002613A - 含フッ素オレフィンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い反応効率でオレフィンメタセシスにより含フッ素オレフィンを製造する方法を提供すること。【解決手段】金属−カルベン錯体化合物触媒の存在下、常温常圧で気体である第1の含フッ素オレフィン化合物を加圧により液化した状態でオレフィンメタセシス反応を行い、第2の含フッ素オレフィン化合物を製造する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、オレフィンメタセシスにより含フッ素オレフィンを製造する新規な方法に関する。
オレフィン中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換された化合物、すなわち含フッ素オレフィンには、産業上有用な化合物が知られている。当該含フッ素オレフィンの製造方法としてオレフィンメタセシス反応が知られている(例えば特許文献1参照。)。
国際公開第2015/033927号
しかし特許文献1に記載された実施例では触媒回転数がいずれも充分には高くなく、実用上少しでも高い反応効率が求められている。
したがって本発明は、高い反応効率でオレフィンメタセシスにより含フッ素オレフィンを製造する方法を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明では、その反応条件に着目し、高効率で反応を進められる条件を見出した。すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]に関するものである。
[1]金属−カルベン錯体化合物触媒の存在下、常温常圧で気体である第1の含フッ素オレフィン化合物を加圧により液化した状態でオレフィンメタセシス反応を行い、第2の含フッ素オレフィン化合物を製造する方法。
[2]前記第1の含フッ素オレフィン化合物が、1,1−ジフルオロオレフィンまたは1,2−ジフルオロオレフィンである[1]に記載の製造方法。
[3]溶媒を用いない[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]オレフィンメタセシス反応がクロスメタセシス反応である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]下記式(31)で表されるオレフィン化合物を原料として用いる[4]に記載の製造方法。
(ただし式(31)において、R11〜R14はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基である。)
Figure 2018002613
[6]式(31)で表される化合物が反応条件において液体である[5]に記載の製造方法。
[7]式(31)で表される化合物がビニル位にヘテロ原子を有する化合物である[5]または[6]に記載の製造方法。
本発明の含フッ素オレフィン化合物の製造方法によれば、高い反応効率が得られる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、本発明は金属触媒によるオレフィンメタセシスに関するものであり、従来技術と共通する一般的特徴については記載を省略することがある。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。
ペルハロゲン化アルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基とは、アルコキシ基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基及びペルハロゲン化アリール基についても同様である。
また(ペル)ハロゲン化アルキル基とは、ハロゲン化アルキル基とペルハロゲン化アルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のハロゲン原子を有するアルキル基である。(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、(ペル)ハロゲン化アリール基、及び(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基についても同様である。
アリール基とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
炭化水素基の炭素数とは、ある炭化水素基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数を、該基が置換基を有する場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。有機基の炭素数についても同様である。
ヘテロ原子とは、炭素原子と水素原子以外の原子を意味し、好ましくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種以上の原子であり、より好ましくは、酸素原子または窒素原子である。
またメタセシス反応は可逆である。しかしこの点についての詳細は説明を省略する。また生成した含フッ素オレフィンは幾何異性体が存在する可能性がある。しかしこの点の詳細については、個々の反応に強く依存するので、説明を省略する。
本明細書において、式中の記号は以下の意味を表す。
[L]は配位子である。
Mはルテニウム、モリブデン又はタングステンである。
及びAはそれぞれ独立して下記基(i)、基(ii)、基(iii)、及び基(iv)からなる群から選ばれる基である。A及びAは互いに結合して環を形成してもよい。
11、X12及びX13はそれぞれ独立して、下記基(i)、基(ii)、及び基(v)からなる群から選ばれる基である。
11〜R14はそれぞれ独立して、下記基(i)、基(iia)、基(iii)、及び基(iv)からなる群から選ばれる基である。R11〜R14のうち任意の2つは互いに結合して環を形成してもよい。
基(i):水素原子。
基(ii):ハロゲン原子。
基(iia):塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子。
基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基。
基(v):炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3の(ペル)ハロゲン化アルキル基、及び炭素数1〜3の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基からなる群から選ばれる基。
<金属−カルベン錯体化合物触媒>
本発明では、金属−カルベン錯体化合物(10)をオレフィンメタセシス反応の触媒として用いる。
Figure 2018002613
金属−カルベン錯体化合物(10)として、化合物(11)を例に説明する。化合物(11)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(11)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、オレフィンメタセシスは触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。また、金属−カルベン錯体化合物(10)における金属はルテニウム、モリブデン、又はタングステンであることが好ましい。
本発明においては、化合物(11)、化合物(12)、化合物(13)、化合物(14)、及び化合物(15)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属−カルベン錯体化合物の存在下に反応を行うことが好ましい。金属−カルベン錯体化合物としては、入手容易性及び反応効率の観点から反応開始時には化合物(11)が好ましい。
Figure 2018002613
以下具体的な化合物(11)について説明する。
化合物(11)におけるA及びAはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基である。A及びAは、A及びAのそれぞれから水素原子またはハロゲン原子がひとつ取れた2価の基として、互いに結合して環を形成してもよい。
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が入手容易性の点から好ましい。
炭素数1〜20の一価炭化水素基としては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基が好ましく、直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基としては、好ましくは、当該原子を含む炭素数1〜20のアルキル基、当該原子を含む炭素数1〜20のアルコキシ基、当該原子を含む炭素数5〜20のアリール基、当該原子を含む炭素数5〜20のアリールオキシ基が例示できる。該一価有機基は、直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。これらの好ましい基は少なくとも一部の炭素原子にハロゲン原子が結合していてもよい。すなわち例えば(ペル)フルオロアルキル基、(ペル)フルオロアルコキシ基であってもよい。またこれらの好ましい基は、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有していてもよい。またこれらの好ましい基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む置換基を有していてもよい。該置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アミド基(カルボニルアミノ基)、カルバメート基(オキシカルボニルアミノ基)、ニトロ基、カルボキシル基、エステル基(アシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基)、チオエーテル基、及びシリル基等が例示できる。これらの基は更にアルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。例えばアミノ基(−NH)はモノアルキルアミノ基(−NHR)、モノアリールアミノ基(−NHAr)、ジアルキルアミノ基(−NR)、又はジアリールアミノ基(−NAr)であってもよい。ただしRは炭素数1〜12のアルキル基または炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12のアルキル基であり、Arは炭素数5〜12のアリール基である。
これらのA及びAの組み合わせを有する化合物(11)としては、入手容易性の点で、下記式に示すものが好ましく例示できる。なお、下記式中、Cyとはシクロヘキシル基を意味する。
Figure 2018002613
本発明においては、金属カルベン錯体化合物の金属がルテニウムであることが好ましい。
具体的には、化合物(11)においてMがルテニウムの場合、下記式(11−A)で表すことができる。式(11)における配位子[L]は式(11−A)においてL、L、L、Z11及びZ12で表される。L、L、L、Z11及びZ12の位置に限定はなく、式(11−A)において互いに入れ替わっていてもよい。すなわち例えばZ11及びZ12はトランス位にあっても、シス位にあってもよい。
Figure 2018002613
式(11−A)中、L、L及びLはそれぞれ独立して、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子(中性の電子供与性配位子)である。具体的には、カルボニル基、アミン類、イミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、スルホキシド類、スルホン類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類、ヘテロ原子含有カルベン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、ピリジン類、ヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましく、トリアルキルホスフィンやN−ヘテロ環状カルベン化合物がより好ましい。
ただし前記配位子の組み合わせによっては、立体的要因及び/又は電子的要因により、すべての配位子が中心金属に配位できず、結果としていくつかの配位座が空になる場合もある。例えば、L、L及びLとしては下記組合せが挙げられる。
:ヘテロ原子含有カルベン化合物、L:ホスフィン類、L:なし(空配位)。
:ヘテロ原子含有カルベン化合物、L:ピリジン類、L:ピリジン類
式(11−A)中、Z11及びZ12はそれぞれ独立して、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子(アニオン性配位子)である。具体的には、ハロゲン原子、水素原子、置換ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が5〜20のアリール基、炭素数が1〜20の置換アルコキシ基、炭素数が5〜20の置換アリールオキシ基、炭素数が1〜20の置換カルボキシレート基、炭素数が6〜20の置換アリールカルボキシレート基、炭素数が1〜20の置換アルキルチオレート基、炭素数炭素数が6〜20の置換アリールチオレート基及びナイトレート基等が挙げられる。中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
式(11−A)中、A及びAは式(11)におけるA及びAとそれぞれ同様である。
また、L、L、L、Z11、Z12、A及びAのうち2〜6個で互いに結合し、多座配位子を形成してもよい。
上記触媒は一般的に「ルテニウム−カルベン錯体」と称されるものであり、例えばVougioukalakis,G.C.et al.Chem.Rev.,2010,110,1746−1787.に記載されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。また、例えばAldrich社やUmicore社から市販されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。
ルテニウム−カルベン錯体の具体例としては、ビス(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)−3−メチル−2−ブテニリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2−メチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジシクロヘキシル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[ビス(3−ブロモピリジン)]ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPr等が挙げられ、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPrが特に好ましい。なお上記錯体のうち、「Umicore」で始まる名称は、Umicore社の製品の商品名である。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
本発明においては、金属カルベン錯体化合物の金属がモリブデンまたはタングステンであることが触媒の入手容易性の点で好ましい。
化合物(11)においてMがモリブデン又はタングステンの場合、下記式(11−B)又は式(11−C)で表すことができる。また化合物(11)としては、これらにさらに配位性溶媒(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等)が配位していてもよい。
金属触媒の金属がモリブデンまたはタングステンである場合、金属触媒の配位子[L]としては、イミド配位子(R−N=M)を有することが好ましい。ただし、Rとしては、アルキル基、アリール基等が例示できる。またさらに金属触媒の配位子[L]としては酸素原子が二座配位した配位子を有することが好ましい。ただし酸素原子が二座配位した配位子とは、酸素原子を2個以上有する配位子において該酸素原子のうちの2個で配位している配位子である場合、および、酸素原子を有する単座配位子が2個配位している場合(この場合に単座配位子は同一であっても異なっていてもよい)の双方の場合を含む。
Figure 2018002613
式(11)における配位子[L]は式(11−B)において=NR、−R、−Rで表される。=NR、−R、−Rの位置に限定はなく、式(11−B)において互いに入れ替わっていてもよい。Mは、モリブデン又はタングステンであり、Rとしては、アルキル基、アリール基等が例示できる。R、Rとしては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホネート基、アミノ基(アルキルアミノ基、η−ピロリド、η−ピロリド等)等が例示できる。RとRは連結して二座配位子となっていてもよい。
また式(11−C)は、式(11−B)で表わされる化合物の金属−炭素二重結合部分に、オレフィン(C(R)が環化付加([2+2] cycloaddition)して、メタラシクロブタン環を形成した化合物である。ただし4個のRは互いに同じでも異なっていてもよい一価の基であり、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基等が例示できる。式(11−C)で表わされる化合物は、式(11−B)で表わされる化合物と等価と考える。
式(11−B)及び式(11−C)中、A及びAは式(11)におけるA及びAとそれぞれ同様である。
上記触媒は一般的に「モリブデン−カルベン錯体」「タングステン−カルベン錯体」と称されるものであり、例えばGrela,K.(Ed)Olefin Metathesis:Theory and Practice,Wiley,2014.に記載されているモリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体を利用することができる。また、例えばAldrich社やStrem社、Ximo社から市販されているモリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体を利用することができる。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
化合物(11−B)の具体例を下記に示す。なお、Meとはメチル基を、i−Prとはイソプロピル基を、t−Buとはターシャリーブチル基を、Phとはフェニル基を、それぞれ意味する。
Figure 2018002613
Figure 2018002613
化合物(11−C)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2018002613
<化合物(12)〜(15)>
化合物(12)〜(15)は、上記化合物(11)と同様に本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。
<第1の含フッ素オレフィン:化合物(21)>
本発明において、第1の含フッ素オレフィン化合物は常温常圧で気体である。ここで常温常圧とは、30℃、1気圧を意味する。
下記式(21)で表されるオレフィン化合物は原料として用いる第1の含フッ素オレフィン化合物であり、化合物(21)におけるX11、X12及びX13は、前記定義と同様である。
Figure 2018002613
すなわち化合物(21)におけるX11、X12及びX13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3の(ペル)ハロゲン化アルキル基、及び炭素数1〜3の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基からなる群より選ばれる基である。X11及びX12は、水素原子及びハロゲン原子が入手容易性の点から好ましい。またX13はハロゲン原子又は炭素数1〜3のペルハロゲン化アルキル基が好ましい。X11、X12及びX13のうちの任意の2つは、該2つの基のそれぞれから水素原子又はハロゲン原子がひとつ取れた二価の基として、互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(21)としては1,1−ジフルオロオレフィン又は1,2−ジフルオロオレフィンが好ましく、1,1−ジフルオロオレフィン又は炭素数3以上の1,2−ジフルオロオレフィンがより好ましく、特にX13がフッ素原子である化合物、すなわち1,1−ジフルオロオレフィンが好ましい。化合物(21)の炭素数は2以上5以下が好ましい。
化合物(21)として好ましくは、具体的には、下記化合物等が挙げられる。ただしE/Zの異性体がある場合にはどちらであってもよい。化合物(21)としては1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。ただし副生成物が多くなりやすいことから1種のみが好ましい。
Figure 2018002613
化合物(21)の具体例としては、より好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
Figure 2018002613
<化合物(31)>
下記式(31)で表されるオレフィン化合物は原料として用いてもよい化合物であり、化合物(31)におけるR11、R12、R13及びR14は、前記定義と同様である。なおオレフィンメタセシス反応がクロスメタセシス反応である場合には、化合物(21)と化合物(31)とを原料として用いる。
Figure 2018002613
化合物(31)におけるR11〜R14は、前記定義と同様である。すなわちR11〜R14はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基である。
11〜R14中の任意の2つは互いに結合して環を形成してもよい。環としては、骨格が、炭素原子のみからなる、または、炭素原子とヘテロ原子とからなる環が好ましい。環の大きさは3員環〜10員環が例示できる。環の部分構造としては、下式の構造が例示できる。
Figure 2018002613
炭素数1〜20の一価炭化水素基としては炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数5〜20のアリール基が好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、またはフェニル基が入手容易性の点から好ましい。また、有機基骨格としては直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基としては、好ましくは、当該原子を含む炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、当該原子を含む炭素数1〜20のアルコキシ基、当該原子を含む炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜20のアリールオキシ基、または、当該原子を含む炭素数5〜20のアリールオキシ基が例示できる。
炭素数1〜20のアルコキシ基として好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、(2−エチル)ヘキシルオキシ基、またはドデシルオキシ基が例示できる。
これらの好ましい基は少なくとも一部の炭素原子にハロゲン原子が結合していてもよい。すなわち例えば(ペル)フルオロアルキル基、(ペル)フルオロアルコキシ基であってもよい。またこれらの好ましい基は、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有していてもよい。またこれらの好ましい基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、またはケイ素原子を有する置換基を有していてもよい。該置換基としては、アミノ基、ニトリル基、カルボキシル基、エステル基(アシルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、チオアルキル基、及びシリル基が例示できる。
中でも、R11〜R14はそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、(2−エチル)ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、アセチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基であることが入手容易性の点から好ましい。なお化合物(31)のうち、ビニル位にヘテロ原子を有する化合物(オレフィンの炭素原子の隣に炭素原子または水素原子以外の原子が存在する化合物)は反応中に生じる中間体を安定化する効果があり、オレフィンメタセシスが進行しやすいと考えられる。このため化合物(31)としては、ビニル位にヘテロ原子を有する化合物が好ましい。前記オレフィンの炭素原子の隣に存在することが好ましいヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ハロゲン原子、リン原子又はケイ素原子が好ましく、酸素原子、窒素原子、又はハロゲン原子がより好ましく、酸素原子又は窒素原子が特に好ましい。
化合物(31)としては、末端及び内部オレフィンのどちらも利用することができる。二重結合上の置換基の数に特に限定はないが、エチレン、一置換オレフィン、1,2−二置換オレフィンが高い反応性を有する点で好ましい。また二重結合上の幾何異性も特に限定はない。
化合物(31)の具体例としては、より好ましくは、下記に示すオレフィン化合物が挙げられる。
Figure 2018002613
上記式におけるRは炭素数1〜12のアルキル基または炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12のアルキル基である。同一分子内にRが複数存在する場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。またArは炭素数5〜12のアリール基である。同一分子内にArが複数存在する場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。
これらのうち化合物(31)として、特に好ましい具体例としては、下記に示すオレフィン化合物が挙げられる。
Figure 2018002613
<第2の含フッ素オレフィン:化合物(51)及び化合物(52)>
上記化合物(21)と化合物(31)との反応により、下記式(51)で表される含フッ素オレフィン化合物及び下記式(52)で表される含フッ素オレフィン化合物の少なくともいずれか一方が製造される。化合物(51)及び化合物(52)におけるR11、R12、R13、R14及びX13は、前記定義と同様であり、好ましい基も化合物(21)又は化合物(22)におけるR11、R12、R13、R14及びX13の好ましい基とそれぞれ同様である。
化合物(51)及び/又は化合物(52)は炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子に直接フッ素原子が結合した含フッ素オレフィン化合物である。
なお、化合物(21)と化合物(31)との反応により、下記式(53)で表されるオレフィン化合物や下記式(54)で表されるオレフィン化合物も生成する場合があるが、本発明では化合物(51)及び化合物(52)の少なくともいずれか一方の含フッ素オレフィン化合物を製造することを目的とすることから、化合物(53)及び化合物(54)についての記載は省略する。
Figure 2018002613
<製造方法>
本発明はオレフィンメタセシスによる含フッ素オレフィン化合物の製造方法に関するものであり、例えば、第1の含フッ素オレフィン(化合物(21))と別のオレフィン(化合物(31))とを原料化合物とし、金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、当該原料化合物を接触させることによってオレフィンメタセシスを行い、2種の原料化合物の部分構造を有する第2の含フッ素オレフィン(化合物(51)及び/又は化合物(52))を得るものである。この場合、オレフィンメタセシスはクロスメタセシス反応となる。
また本発明の他の例としては、第1の含フッ素オレフィン(化合物(21))を原料化合物とし、金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、当該原料化合物を接触させることによってオレフィンメタセシスを行い、第2の含フッ素オレフィン(重合体)を得るものであってもよい。この場合、オレフィンメタセシスはメタセシス重合反応となる。
原料化合物である化合物(21)及び化合物(31)は共に、末端及び内部オレフィンのどちらも利用することができる。目的物収率向上の点で、原料化合物は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。原料化合物について、前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体化合物(10)と接触させる前に行う。
また原料となるオレフィンは微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
原料化合物である化合物(21)及び化合物(31)は、あらかじめ混合してから反応容器に投入しても、別々に投入しても構わない。原料化合物として化合物(21)又は化合物(31)を金属−カルベン錯体化合物と接触させて得られた混合物に、他方の原料化合物を接触させる場合もある。原料となる化合物(21)及び化合物(31)のモル比に特に限定はないが、通常基準となるオレフィン化合物1モルに対して、もう一方のオレフィンを0.01〜100モル程度用い、好ましくは0.1〜10モル程度用いる。
本発明においては、常温常圧で気体である第1の含フッ素オレフィン化合物(21)を加圧により液化した状態でオレフィンメタセシス反応を行う。化合物(21)を加圧により液化させることにより、反応効率が向上する。この場合、反応に溶媒を用いないことが好ましい。また液化したオレフィン化合物(21)に金属−カルベン錯体化合物が溶解することが好ましい。なお加圧により液化させるとは、反応温度において反応系の圧力が化合物(21)の蒸気圧を超える状態をいう。このうち反応系内の化合物(21)の分圧が化合物(21)の蒸気圧を超える状態が好ましい。
また化合物(31)が反応条件において液体である場合(加熱して液化する場合も含む)は、メタセシス反応に溶媒を用いないことが好ましい。この場合オレフィン化合物に金属−カルベン錯体化合物が溶解することが好ましい。なお、化合物(21)と化合物(31)が相溶しない場合は、双方に親和性のある溶媒を用いてもよい。かかる溶媒としては、トリフルオロメチルベンゼン等の含フッ素溶媒が挙げられる。
金属−カルベン錯体化合物は試薬として投入しても、系内で発生させてもよい。試薬として投入する場合、市販の金属−カルベン錯体化合物をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属−カルベン錯体を用いてもよい。系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属−カルベン錯体化合物を本発明に用いることができる。用いる金属−カルベン錯体化合物の量としては、特に制限はないが、基準となるオレフィン化合物1モルに対して、通常0.0001〜1モル程度用い、好ましくは0.001〜0.2モル程度用いる。
用いる金属−カルベン錯体化合物は、通常固体のまま反応容器に投入するが、溶媒に溶解又は懸濁させて投入してもよい。この時用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない範囲で特に制限はなく、有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体、水等を単独又は混合して用いることができる。なお、これらの溶媒分子中、一部又はすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒等を使用することができる。含フッ素有機溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン等を使用することができる。イオン液体としては、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩等を用いることができる。上記溶媒の中でも、金属−カルベン錯体の溶解性等の点で、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルエーテル、ジオキサン、THF(テトラヒドロフラン)、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン等、及びこれらの混合物が好ましい。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体化合物と接触させる前に行う。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させる雰囲気としては、特に限定はないが、触媒の長寿命化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、中でも窒素又はアルゴン雰囲気下が好ましい。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させる相は、液相である。原料化合物(21)は反応条件下で液体であるため、無溶媒で実施できることがあるが、必要に応じて溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体化合物の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させる容器としては、反応に悪影響を与えない範囲で特に制限はなく、例えば金属製容器又はガラス製容器等を用いることができる。具体例としては高気密が可能な金属製耐圧容器が好ましい。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させる温度としては、特に制限はないが、通常30〜200℃の範囲で実施することができ、反応速度の点で、30〜150℃が好ましい。なお、低温では反応が開始せず、高温では錯体の速やかな分解が生じることがあるので適宜温度の下限と上限を設定する必要がある。溶媒を用いる場合は溶媒の沸点以下の温度で実施されることが好ましい。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下で行う。通常0.1〜100MPa程度、好ましくは0.1〜10MPa程度である。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させる際に、反応に悪影響を及ぼさない範囲で無機塩や有機化合物、金属錯体等を共存させてもよい。
また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、原料化合物と金属−カルベン錯体化合物の混合物を攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法としては、メカニカルスターラーやマグネティックスターラー等を用いることができる。
原料化合物と金属−カルベン錯体化合物を接触させた後、目的物は通常複数の含フッ素オレフィンの混合物として得られるため、公知の方法で単離してもよい。単離方法としては、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLC等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
本反応で得られた目的物は通常の有機化合物と同様の公知の方法で同定することができる。例えば、H−、19F−、13C−NMRやGC−MS等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<市販試薬>
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いた。溶媒(ベンゼン−d)及び内部標準物質(p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)は、市販品をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300)により19F−NMR測定を行うことで同定した。
<実施例1>
UmicoreM73SIPr触媒によるドデシルビニルエーテルと液化ヘキサフルオロプロピレンのメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(5mol%、0.05mmol、41.3mg)、ベンゼン(10.0mL)及びあらかじめ水酸化カリウムで乾燥したドデシルビニルエーテル(1.0mmol、212.4mg)を125mL耐圧反応容器に量り入れた。アセトン−ドライアイス浴で冷却して内溶液を凍結させ、内部を約1mmHgまで減圧した。その後0℃でヘキサフルオロプロピレン(15g、100mmol)を導入した。
前記反応容器を60℃で加熱し、その温度で1時間反応させた。なお、本反応条件において、原料であるヘキサフルオロプロピレンは液化しており、反応容器内で液体として存在した。反応終了後、得られた粗生成物にp−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(内部標準物質、1.0mmol、214.1mg)を加えてから0.1mLを抜き取った。抜き取った溶液をCで希釈してNMRを測定することで、ドデシル(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン−1−イル)エーテル(E/Z混合物)生成を確認した。
これら一連の反応を以下に示す。また19F−NMRスペクトル(内部標準物質p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)から算出した触媒回転数(1時間あたりの触媒回転頻度)は4.3であった。
Figure 2018002613
<比較例1>
UmicoreM73SIPr触媒によるドデシルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンのメタセシス
窒素雰囲気下、UmicoreM73SIPr触媒(10mol%、0.10mmol、82.6mg)、ベンゼン(10.0mL)及びあらかじめ水酸化カリウムで乾燥したドデシルビニルエーテル(1.0mmol、212.4mg)を125mL耐圧反応容器に量り入れた。アセトン−ドライアイス浴で冷却して内溶液を凍結させ、内部を約1mmHgまで減圧した。その後室温でヘキサフルオロプロピレン(1.5g、10mmol)を導入した。
前記反応容器を60℃で加熱し、その温度で1時間反応させた。なお、本反応条件において、原料であるヘキサフルオロプロピレンは液化しておらず、反応容器内で気体として存在した。反応終了後、得られた粗生成物にp−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(内部標準物質、1.0mmol、214.1mg)を加えてから0.1mLを抜き取った。抜き取った溶液をCで希釈してNMRを測定することで、ドデシル(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン−1−イル)エーテル(E/Z混合物)生成を確認した。
これら一連の反応を以下に示す。また19F−NMRスペクトル(内部標準物質p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)から算出した触媒回転数(1時間あたりの触媒回転頻度)は2.4であった。
Figure 2018002613

Claims (7)

  1. 金属−カルベン錯体化合物触媒の存在下、常温常圧で気体である第1の含フッ素オレフィン化合物を加圧により液化した状態でオレフィンメタセシス反応を行い、第2の含フッ素オレフィン化合物を製造する方法。
  2. 前記第1の含フッ素オレフィン化合物が、1,1−ジフルオロオレフィンまたは1,2−ジフルオロオレフィンである請求項1に記載の製造方法。
  3. 溶媒を用いない請求項1または2に記載の製造方法。
  4. オレフィンメタセシス反応がクロスメタセシス反応である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 下記式(31)で表されるオレフィン化合物を原料として用いる請求項4に記載の製造方法。
    (ただし式(31)において、R11〜R14はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基である。)
    Figure 2018002613
  6. 式(31)で表される化合物が反応条件において液体である請求項5に記載の製造方法。
  7. 式(31)で表される化合物がビニル位にヘテロ原子を有する化合物である請求項5または6に記載の製造方法。
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