以下、実施形態の造影剤管理装置について図面を参照して説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
(1)構成
図1は、第1の実施形態に係る造影剤管理装置の一例を示す概念的な構成図である。図1に示すように、造影剤管理装置100Aは、記憶回路10、処理回路20a、入力回路30、ディスプレイ40、及び通信制御装置50を有する。造影剤管理装置100Aは、通信制御装置50を介して電子ネットワーク70経由でインジェクタ200、外部データベース300、及びモダリティ400に接続される。
インジェクタ200は、被検体に造影剤を投与するための装置である。インジェクタ200は、被検体に投与する造影剤を充填するためのシリンジや、シリンジに充填された造影剤を一定量かつ一定速度で被検体に注入するためのピストンなどの構成要素を有する。加えて、インジェクタ200は、被検体に注入される造影剤の量を管理し、ディスプレイに表示する構成要素を含む。
外部データベース300は、例えば、不図示の放射線科情報システム(RIS:Radiology Information Systems)や、不図示の病院情報システム(HIS:Hospital Information Systems)など、病院で運用されているシステムの一部である。外部データベース300は、RISやHISに搭載されたデータ管理プログラムに従って、造影剤の管理情報、患者情報、又は診断画像などの医療情報を記憶する。
モダリティ実施済手続ステップ(MPPS:Modality Performed Procedure Step)は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した情報通知方法である。RISなどの外部データベース300は、例えば、MPPSに従って、インジェクタ200から造影剤検査の実施状況を取得し、記憶する。造影剤検査の実施状況には、例えばアンプルの使用前後の重量差分や、検査で実際に使用された造影剤の量などの医療情報が含まれる。
モダリティ400は、例えば、X線CT装置、磁気共鳴イメージング(MRI:magnetic resonance imaging)装置、X線アンギオ装置(XA:X-ray-Angiography)、及び超音波診断装置などの医用画像診断装置を含む。
通信制御装置50は、ネットワーク形態に応じた種々の通信プロトコルを実装する。ここで、電子ネットワーク70とは、電気通信技術を利用した情報通信網全体を意味し、病院基幹LAN、無線/有線LANやインターネット網、電話通信回線網、光ファイバー通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク、及び衛星通信ネットワークなどを含む。
造影剤管理装置100Aは、インジェクタ200、外部データベース300、及びモダリティ400などから、検査情報や造影剤情報などの医療情報を電子ネットワーク70経由で取得するよう構成されてもよい。
造影剤管理装置100Aの記憶回路10は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどによって構成される。記憶回路10は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)などの可搬型メディアによって構成されてもよい。記憶回路10は、処理回路20aにおいて実行される各種プログラム(アプリケーションプログラムのほか、OS(Operating System)等も含まれる)、プログラムの実行に必要なデータ、及び画像データを記憶する。また、記憶回路10には、OSを制御するための各種コマンドや、入力回路30からの入力を支援するGUI(Graphical User Interface)のプログラムを記憶してもよい。
処理回路20aは、共通信号伝送路としてのシステムバス60を介して、造影剤管理装置100Aを構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。
処理回路20aは、専用のハードウェアで構成してもよいし、内蔵のプロセッサによるソフトウェア処理で後述する各種機能を実現するように構成してもよい。ここでは一例として、処理回路20aがプロセッサによるソフトウェア処理によって各種機能を実現する場合について説明する。
なお、上記説明におけるプロセッサとは、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)などの回路を意味する。上記プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)などが挙げられる。処理回路20aは、記憶回路10に記憶されたプログラム又は処理回路20aのプロセッサ内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで各機能を実現する。
また、処理回路20aは、単一のプロセッサによって構成されてもよいし、複数の独立したプロセッサの組合せによって構成されてもよい。後者の場合、複数のプロセッサにそれぞれ対応する複数の記憶回路が設けられると共に、各プロセッサにより実行されるプログラムが当該プロセッサに対応する記憶回路に記憶される構成でもよい。別の例としては、1個の記憶回路が複数のプロセッサの各機能に対応するプログラムを一括的に記憶する構成でもよい。
入力回路30は、例えば、キーボード、マウス、ジョイスティック、又はトラックボール等の入力デバイスからの信号を入力する回路である。ここでは、入力デバイス自体も入力回路30に含まれるものとする。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路30は、その操作に応じた入力信号を生成し、この入力信号を処理回路20aに出力する。
ディスプレイ40は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。ディスプレイ40は、処理回路20aの制御に従って、造影剤管理装置100Aが推奨するアンプルの組合せや被検体情報などの医療情報を表示する。
図2は、第1の実施形態に係る造影剤管理装置100Aの機能構成例を示す機能ブロック図である。図2に示すように、造影剤管理装置100Aの処理回路20aは、算出機能21a及び選択機能22aを有する。算出機能21a及び選択機能22aは、記憶回路10に格納されているプログラムを処理回路20aのプロセッサが実行することによって実現される機能である。
算出機能21aは、被検体の検査において使用される造影剤の必要量を推定し、造影剤の必要量に基づいて造影剤の推奨準備量を算出する機能である。造影剤の必要量は、例えば、被検体の体重又は過去の検査において実際に使用された造影剤の量に基づいて推定される。ここでは一例として、上記「造影剤の推奨準備量」とは、被検体の体重などの検査条件に基づいて算出される「造影剤の必要量」に対して、所定の余裕量を加算した量である。造影剤の必要量の推定方法については後述する。
過去の検査において実際に使用された造影剤の量の記憶先は、外部データベース300、インジェクタ200、造影剤管理装置100の記憶回路10のいずれでもよい。
検査種別や被検体の体重などの検査関連情報も、HISやRISなどの外部データベース300に記憶されていてもよいし、造影剤管理装置100Aの記憶回路10に記憶されていてもよい。また、算出機能21aに基づく造影剤の必要量の算出に必要な情報が入力回路30から入力されるように、造影剤管理装置100Aは構成されてもよい。或いは、推定機能21aによる造影時の必要量の算出に必要な情報が、外部データベース300などから電子ネットワーク70経由でダウンロードされるように、造影剤管理装置100Aは構成されてもよい。
以下、造影剤の必要量を推定するために必要な情報が、造影剤管理装置100Aの記憶回路10に記憶されている場合を例として説明する。図2に示すように、造影剤管理装置100Aの記憶回路10には、検査実績情報IA1、検査情報IB1、及び造影剤情報IC1が記憶されている。
検査実績情報IA1は、過去に実施された検査に関する検査情報と、当該過去に実施された検査で使用された造影剤情報とを含む。ここで、過去に実施された検査には、造影剤管理装置100Aが設置された病院において、これから実施される検査よりも前に実施されたすべての検査が含まれる。
検査実績情報IA1は、過去に実施された検査毎に、検査種別、検査部位、検査対象となった被検体情報、及び使用された造影剤情報を含む。検査種別は、モダリティの種類又はモダリティ毎に実施される検査の種類である。X線CT装置を用いた場合、例えば、単純CT検査、造影CT検査、又は血管造影CT検査などの検査種別がある。検査部位は、検査対象となる解剖学的部位や臓器の名称であり、例えば、頭部や胸部、心臓、腎臓などである。被検体情報は、被検体の年齢、性別、及び体重を含む情報である。使用した造影剤情報は、造影剤の種類、及び使用量を含む。造影剤は、同じ薬剤であっても濃度やメーカーが異なる場合には別の種類の造影剤として扱われる。造影剤の種類は、例えば造影剤の薬剤名や商品名など、造影剤アンプルの名称により区別される。
検査情報IB1は、これから実施される検査に関する検査情報である。検査情報IB1は、これから実施される検査について、検査種別、検査部位、及び検査対象の被検体情報を含む。
造影剤情報IC1は、造影剤の種類、造影剤の濃度、造影剤のアンプルの容量、及び造影剤のアンプルの価格を含む。
算出機能21aは、これから実施される検査と同一の条件の検査実績情報、即ち、検査情報IB1と同一の条件の検査実績情報を検査実績情報IA1の中から検索する機能を有する。これから実施される検査と同一の条件の検査実績情報が検査実績情報IA1に含まれない場合、算出機能21aにより単位重量当たりに必要な造影剤の量が算出され、当該算出量に被検体の体重を乗ずることで、造影剤の必要量が推定される。算出機能21aに基づく造影剤の必要量の推定方法については、後述の図4を用いて詳細に説明する。
選択機能22aは、造影剤の必要量に基づいて算出される推奨準備量に応じて、複数種類の異なる容量のアンプルを組み合わせて、被検体の検査において使用されるアンプルの最適な組合せを選択する機能である。例えば、複数のアンプルの組合せのうち合計価格が最低になる組合せが推奨の組合せとして選択機能22aにより選択される。選択機能22aに基づくアンプルの組合せの選択方法については、後述の図5を用いて詳細に説明する。
(2)動作
図3は、第1の実施形態に係る造影剤管理装置100Aの動作の一例を示すフローチャートである。以下、図4及び図5を適宜参照しつつ、図3のフローチャートのステップ番号に従って、第1の実施形態に係る造影剤管理装置100Aの動作を説明する。
図3のフローチャートの各ステップにおける処理は、処理回路20aが記憶回路10から算出機能21a及び推定機能22aに対応する所定のプログラムを呼出し、実行することにより実現される。以下、処理回路20aにより実現される算出機能21a及び推定機能22aにより実行される処理について、対応するステップ毎に説明する。
ステップS101では、これから実施される検査の検査情報が算出機能21aにより取得される。
ステップS103では、これから実施される検査で使用される造影剤の推奨準備量が算出機能21aにより算出される。推奨準備量は、検査対象である被検体の体重から推定された必要量に所定の余裕量を加算した量である。以下、図4を用いて、必要量の算出処理について詳細に説明する。
図4は、第1の実施形態における造影剤の必要量の算出方法を説明する模式図である。図4の上段は、これから実施される検査の検査情報IB1を示す表である。図4の中段は、検査実績情報IA1を示す表である。
図4の上段の検査情報IB1は、検査IDが「000X」、検査種別が「CT」、検査部位が「胸部」、性別が「男性」、年齢が「40」歳、体重が「75」kgの検査情報の例を示している。従って、図4は、検査情報IB1に記録された検査ID「000X」の検査で使用される造影剤の必要量の算出方法を示す。
より詳細には、算出機能21aにより、検査情報IB1と同じ条件の検査が検査実績情報IA1から検索される。即ち、検査ID「000X」の、検査種別が「CT」、検査部位が「胸部」、性別が「男性」、年齢が「40」歳、体重が「75」kgの条件と合致する検査が検査実績情報IA1から検索される。図4の中段に示した検査実績情報IA1は、上述の検査ID「000X」と条件が一致する検査がない例を示している。
なお、検索の結果、検査情報IB1の条件に合致する条件の検査が検査実績情報IA1に含まれる場合、検索された情報は、算出機能21aにより活用される。即ち、検査実績情報IA1に含まれる検査情報IB1の条件に合致する条件の検査における「使用された造影剤」の項目の記録内容が、検査において使用すべき造影剤の種類及び造影剤の必要量として、算出機能21aにおける推奨準備量の算出処理に利用される。
一方、図4の中段に示すように、上述の検査ID「000X」と条件が一致する検査がない場合、検査ID「000X」の条件に類似する検査が算出機能21aにより検査実績情報IA1から抽出される。検査ID「000X」の条件に類似する検査は、例えば、「000X」の全条件から一部の条件を除いた検索により抽出できる。このようにして抽出される検査情報に基づいて、造影剤の必要量が算出される。
具体的には、検査種別が「CT」、検査部位が「胸部」、性別が「男性」に限定された検索条件で検索が算出機能21aにより実行され、当該検索条件に一致する検査実績情報が検査実績情報IA1から抽出される。図4の上段の検査情報IB1に対応する破線枠は、上記検索条件を示す。
図4の中段の検査実績情報IA1に対して破線枠で示すように、検査ID「0001」及び「0002」が上記検索の条件に合致する検査実績情報として抽出される。算出機能21aにより、検査実績情報IA1の検査ID「0001」及び「0002」の「被検体情報」の項目から被検体の体重が抽出される。同様に、「使用された造影剤」の項目から、造影剤アンプル名及び使用された造影剤の使用量が抽出される。
図4の上段に示した検査実績情報IA1の検査ID「0001」及び「0002」において使用された造影剤の種類は「造影剤A」である。また、検査ID「0001」は、被検体の体重が80kg、造影剤の使用量は200mlであり、検査ID「0002」は、被検体の体重が65kg、造影剤の使用量は150mlである。
検査実績情報IA1から検索された検査実績情報に基づいて、検査で使用すべき造影剤は「造影剤A」であると算出機能21aにより判定される。検査実績情報IA1から抽出された被検体の体重と、使用された造影剤の量とから、人体の単位重量当たりの造影剤Aの使用量が算出機能21aにより算出される。以下、単位重量当たりの造影剤の使用量を造影剤推定係数と呼ぶこととする。
造影剤推定係数は、例えば、被検体に対して使用された造影剤の量をその被検体の体重で除した値である。具体的には、検査ID「0001」の造影剤推定係数は、使用された造影剤200mlを被検体の体重80kgで割った値(200ml÷80kg=2.50ml/kg)である。同様に、検査ID「0002」の造影剤推定係数は、使用された造影剤150mlを被検体の体重65kgで割った値(150ml÷65kg≒2.31ml/kg)である。なお、図4の下段の左側に示した造影剤推定係数は演算結果をわかりやすく表記するため、小数第3位を四捨五入した値を示しているが、実際の端数処理は図4の態様には限定されない。
図4の下段の左側に示すように、造影剤推定係数は、検査ID「0001」の場合には2.50ml/kg、検査ID「0002」の場合には2.31ml/kgとして算出される。例えば、検査ID「000X」における造影剤の必要量は、上述の方法により算出された造影剤推定係数のうち数値が大きい方の2.50ml/kgを使用して推定される。検査ID「000X」における被検体の体重は75kgであるため、検査ID「000X」における造影剤の必要量は、被検体の体重75kgに造影剤推定係数2.50ml/kgを乗じた値(75kg×2.50ml/kg=187.5ml)となる。
なお、算出機能21aにおける造影剤の必要量の推定方法は図4で説明した態様には限定されない。例えば、病院や診療科によって、検査種別及び検査部位毎、又は曜日毎に使用される造影剤の種類が決まっている場合がある。そのような場合、造影剤の種類毎に造影剤推定係数を記憶回路10に記憶しておいてもよい。また、同じ薬剤から成る造影剤であっても、造影剤の種類によっては濃度が違う場合がある。検査実績情報IA1が有する造影剤の濃度と、これからの検査で使用される造影剤の濃度とが異なる場合であっても、濃度を換算して造影剤推定係数を求めることで、造影剤の必要量を推定することができる。上述するように造影剤の必要量は様々な方法で推定できる。
図4で述べた方法により推定された造影剤の必要量に、所定の余裕量を追加した量が造影剤の推奨準備量として算出される。具体的には、例えば余裕量を50mlとしたとき、検査ID「000X」における造影剤の推奨準備量は、体重から算出された必要量187.5mlに、余裕量50mlを加算した値(187.5ml+50ml=237.5ml)となる。
なお、余裕量は、検査種別や検査部位毎に固定量として決められていてもよいし、例えば造影剤の必要量の10%といった必要量に対する割合として決められてもよい。
以上が造影剤の推奨準備量を算出するステップST103の処理の説明である。図3に戻ってフローチャートの説明を続ける。
ステップS105では、選択機能22aによりアンプルの組合せが選択される。ステップST103の処理で算出された造影剤の推奨準備量に基づいて、選択機能22aによりアンプルの組合せが選択される。造影剤には、複数の異なる容量のアンプルが存在し、それぞれのアンプルは価格が異なる。組み合わされたアンプルの合計価格が最低となるアンプルの組合せが選択機能22aにより選択される。
図5は、第1の実施形態に係るアンプルの組合せの選択方法を説明する模式図である。図5の上段は記憶回路10に記憶された造影剤情報IC1の例を示している。造影剤情報IC1は、造影剤のアンプル名、濃度(mgI/ml)、容量(ml)、及び価格(円)を含む。
アンプル名は、例えば、造影剤の商品名や薬剤名であり、図5の上段の表では、「造影剤A」、「造影剤B」のように例示されている。図5の上段に示すように、「造影剤A」は、濃度が300mgI/mlであり、異なる容量のアンプルが複数存在し、容量毎に価格が異なる。
造影剤Aのアンプルの価格は、容量が200mlの場合には3,000円、容量が150mlの場合には2,500円、容量が100mlの場合には2,000円、容量が50mlの場合には1,200円である。
図5に示した例では、アンプルの価格は、容量に比例しておらず、同じ容量を使用する場合であってもアンプルの組合せによっては合計価格が変動する。
図5の例では、図4において検査ID「000X」について算出された余裕量50mlを含む造影剤の推奨準備量237.5mlに対するアンプルの組合せの選択方法について説明する。
検査ID「000X」で使用される造影剤の種類は図4の例と同様に、「造影剤A」である。造影剤の推奨準備量237.5ml以上の容量となる造影剤Aのアンプルの組合せが選択機能22aによりすべて算出さる。算出されたすべての組合せの中から、アンプルの合計価格が最低価格となる組合せが選択機能22aにより選択される。図5の下段は、紙面の都合上、造影剤必要量が237.5ml以上となるアンプルの組合せの一部を示している。
図5の下段に示した造影剤Aについてのアンプルの組合せ番号1に示すように、容量が200mlのアンプルを2個組み合わせた場合、合計容量は400mlとなり、造影剤必要量の237.5ml以上となる。この場合のアンプルの合計価格は6,000円となる。以下同様であり、組合せ番号Nは、容量が200mlのアンプルを1本と、容量が50mlのアンプルを1本とを組みわせた場合を示し、合計容量は250ml、合計価格は4,200円である。
図5の下段に示したアンプルの組合せ表に示す通り、合計容量が同じでもアンプルの組合せによって価格に大きな違いが生じる。例えば、組合せ番号3、組合せ番号6、及び組合せ番号Nは、それぞれ合計容量が250mlで同じだが、合計価格は順に5,200円、4,500円、及び4,200円である。
図5の下段に示した組合せの中から、合計価格が最低価格である組合せ番号Nのアンプルの組合せが推奨の組合せとして選択機能22aにより選択される。即ち、容量が200mlのアンプル1本と、容量が50mlのアンプル1本との組合せが推奨の組合せとして選択される。
以上がアンプルの組合せの選択処理を実行するステップST105の処理についての説明である。図3のフローチャートに戻って説明を続ける。
ステップS107において、ディスプレイ40は、ステップS105で選択されたアンプルの組合せを表示する。ステップS105で選択されたアンプルの組合せは、外部データベース300に記憶されるように構成されてもよいし、造影剤管理装置100Aの記憶回路10に記憶されるよう構成されてもよい。
以上が図3のフローチャートの説明である。
このように第1の実施形態に係る造影剤管理装置100Aは、被検体に使用される造影剤の必要量を適正に推定し、この必要量に余裕を持たせた推奨準備量を算出する。従って、第1の実施形態の造影剤管理装置100Aは、造影剤の推奨準備量に応じて最も安い価格のアンプルの組合せを容易に選択できる。アンプルは、封入された薬剤が同じであっても複数の異なる容量の製品が存在する。
第1の実施形態に係る造影剤管理装置100Aによれば、このように複数の異なる容量のアンプルの中から、検査において必要な量に応じたアンプルの組合せを効率的に選択することができる。また、第1の実施形態に係る造影剤管理装置100Aは、価格が最低となるアンプルの組合せをユーザに推奨することができる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、アンプルの合計価格が最低価格になる組合せを選択する方法について説明した。以下、第2〜第5の実施形態は、アンプルの合計価格に加えて、アンプルの在庫状況など、その他の条件に基づいてアンプルの組合せを選択する方法について説明する。なお、第2の実施形態以降は、アンプルの組合せの選択方法を除き、第1の実施形態と同様であるので違いのみを説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態に加えて造影剤の在庫状況に応じて提供可能なアンプルの組合せを選択する方法に関する。第2の実施形態は、ハードウェアとしては図2で示した第1の実施形態と同じ構成を備えるため、構成図を省略する。但し、第2の実施形態の造影剤管理装置では、各構成要素により実現される機能や、記憶回路10に記憶された各情報の内容が第1の実施形態とは若干異なる。そこで、第2の実施形態において第1の実施形態と異なる部分には、以下のように第1の実施形態とは異なる符号を付す。この点は、第3〜第6の実施形態に関しても同様である。
第2の実施形態では、造影剤管理装置の符号を100Bとし、処理回路の符号を20bとし、選択機能の符号を22bとし、造影剤情報の符号をIC2とする。
図6は、第2の実施形態に係るアンプルの組合せの選択方法を説明する模式図である。図6の上段は、造影剤情報IC2を示す。図6の下段は、図5と同様に造影剤の推奨準備量237.5ml以上の容量となるアンプルの組合せを示す。
図6の上段の造影剤情報IC2は、第1の実施形態において図5の上段に示した造影剤情報IC1に、アンプルの在庫数の列が追加された例を示している。図6の下段に示したアンプルの組合せは、図5と同様にアンプルの組合せの一部を示している。
図6の上段の造影剤情報IC2の最右列に示したアンプルの在庫数を参照すると、容量が50mlの造影剤Aの在庫数が「0」となっている。在庫がゼロの場合、その容量のアンプルを組み合わせることができない。従って、選択機能22bは、在庫がない容量50mlのアンプルが含まれないように、アンプルの価格が最低となるように組合せを選択する。
図6の下段に示した組合せ一覧では、容量50mlのアンプルが含まれる組合せ番号3及び組合せ番号Nを、選択できない組合せとしてハッチングで示している。組合せ番号3及び組合せ番号Nを除外した組合せ番号のうち、アンプルの合計価格が最低となる組合せは、組合せ番号6である。
従って、容量が150mlのアンプル1本と、容量が100mlのアンプル1本とで、合計価格が4,500円となる組合せ番号6が、選択機能22bにより推奨の組合せとして選択される。
なお、在庫数を条件とした組合せの選択方法は、図6の態様には限定されない。例えば、在庫数がゼロである容量が50mlのアンプルを除外して、造影剤の推奨準備量が237.5ml以上となるアンプルの組合せを求めるように選択機能22bを構成してもよい。即ち、容量50mlのアンプルを含まない組合せをすべて求め、その中から合計価格が最低となる組合せを選択するよう選択機能22bが構成されてもよい。
また、在庫が存在するアンプルの組合せであって、合計価格が最低となる組合せが複数ある場合は、在庫数が多い容量のアンプルを含む組合せを推奨するように選択機能22bを構成してもよい。
上述の例では、在庫数がゼロとなるアンプルを含まない組合せを選択する方法を説明したが、在庫数が予め設定された閾値未満のアンプルを含まない組合せを選択するように選択機能22bを構成してもよい。なお、上記「予め」は、選択機能22bにより推奨の組合せが選択されるよりも以前のことであり、例えば、造影剤管理装置100Bの据付調整時である。
例えば、在庫数が5未満のアンプルを含まない組合せを選択する場合について具体的に説明する。図6の上段に示した造影剤情報IC2において、在庫数が5未満となるアンプルは容量が100mlと50mlである。従って、合計容量が237.5ml以上となり、かつ、容量100mlと容量50mlの各アンプルが含まれない組合せが選択される。図6の例では、合計価格5000円の組合せ番号4が選択される。
このように、在庫数が閾値未満となるアンプルを組み合わせないようにすることで、在庫を使い切らないようにアンプルを使用することができる。
また、検査予定日においてアンプルの使用期限が近いものを優先して選択するように選択機能22bを構成してもよい。具体的には、記憶回路10に在庫として保有している個々のアンプルについて使用期限に関する情報を記憶させておく。さらに、検査情報IB2に各検査の検査予定日を含ませることで、検査予定日から起算して使用期限の近いアンプルを含む組合せが選択されるように選択機能22bを構成することができる。
このように、第2の実施形態の造影剤管理装置100Bにおいても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。第2の実施形態では、さらに、在庫状況に応じて提供可能なアンプルの組合せを推奨することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1又は第2の実施形態に加えて造影剤の余裕量に対するアンプルが、必要量に対するアンプルとは別のアンプルとなるように、アンプルの組合せを選択する方法に関する。以下、その理由について、本発明者らの着眼点も含めて説明する。
造影剤を用いて血管を観察する場合、観察領域に存在する造影剤は、時間経過と共に血流によって洗い流される。血管観察のタイミングで観察領域に造影剤が存在しない場合、造影剤を追加することがある。また、造影剤を用いて被検体内を観察しつつカテーテルなどで治療を行うインターベンション手術では、造影剤の必要量は、手術毎に異なり、手術の進行状況に応じて変動する。仮に、余裕量を加味せず、検査中に造影剤が足りなくなった場合、造影剤を準備するために検査が中断されてしまう。そのようなリスクを回避するために、必要量に対して余裕量が加味された量を準備することが望ましい。
必要量に余裕量が加算された量のアンプルが準備された検査において、余裕量が使用されなかった場合でも、開封されたすべてのアンプルの合計価格が検査費用に盛り込まれる。開封されたすべてのアンプルは、廃棄対象となるからである。
例えば、造影剤の必要量が187.5mlであり、余裕量が50mlであり、推奨準備量がこれらの合計の237.5mlであり、価格4,000円で容量250mlのアンプルが1本選択された場合を考える。この場合、検査で使用された造影剤の量に拘らず、用意された1本のアンプルが開封されるので、このアンプルの価格4,000円が検査費用に盛り込まれる。
しかしながら、実際に検査で使用された造影剤の量が必要量である187.5mlであった場合、容量200mlのアンプルで足りる。仮に、余裕量を加味せず、価格3,000円で容量200mlのアンプル1本のみを準備し、準備された量で検査を実施できた場合、余裕量を加味した場合と比較して、検査費用が1,000円安くなる。一方、前述のように、検査で実際に使用される造影剤の量は、必要量だけでは足りない場合がある。
そこで本発明者らは、必要量に対応するアンプルと、余裕量に対応するアンプルとに分けられるように、アンプルの組合せを選択する構成を捻出した。この画期的な構成では、必要量に余裕量が加算された量が準備されたが、必要量のみで検査が終了した場合に、余裕量に対応するアンプルを開封しないで済む。この場合、余裕量に対応するアンプルは開封されない以上、廃棄対象とはならないので、当該アンプルの価格は検査費用には盛り込まれない。即ち、推奨準備量を準備したが、検査での造影剤の使用量が必要量以下で済んだ場合に、用意したアンプルすべてが開封される場合よりも検査費用が安くなる。
以下、図7を用いて第3の実施形態におけるアンプルの組合せの選択方法を説明するが、第3の実施形態では、造影剤管理装置の符号を100Cとし、処理回路の符号を20cとし、算出機能の符号を21cとし、選択機能の符号を22cとする。
図7は、第3の実施形態に係るアンプルの組合せの選択方法を説明する模式図である。図7の上段は、算出機能21cにより算出された造影剤の推奨準備量を示している。例えば、被検体の体重に基づいて算出された必要量は187.5mlである。体重から推定された必要量に、余裕量として50mlが追加された237.5mlが推奨準備量として準備される。
第3の実施形態では、選択機能22cにより必要量及び余裕量に対して夫々アンプルの組合せが算出され、夫々の組合せの中から合計価格が最低となる組合せが選択される。
図7の中段左側の表は、必要量187.5mlに対するアンプルの組合せを示し、図7の中段右側の表は、余裕量50mlに対するアンプルの組合せを示している。
図7の中段左側の必要量に対応するアンプルの組合せを示す表に対して破線枠で示すように、必要量187.5mlに対するアンプルの組合せとして、組合せ番号1が選択される。組合せ番号1は、容量200mlのアンプル1本、合計価格3,000円となる組合せである。
同様に、図7の中段右側の余裕量に対するアンプルの組合せを示す表に対して破線枠で示すように、余裕量50mlに対するアンプルの組合せとして、組合せ番号4が選択される。組合せ番号4は、容量50mlのアンプル1本、合計価格1,200円となる組合せである。
図7の下段に示すように、余裕量を使用した場合の合計価格は、容量200mlのアンプル1本及び容量50mlのアンプル1本の合計となるため、4,200円となる。それに対して、余裕量を使用しなかった場合の合計価格は、容量200mlのアンプル1本で済むため3,000円となる。
このように、第3の実施形態においても、第1又は第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第3の実施形態では、必要量に対応するアンプルと、余裕量に対応するアンプルとが別々となるように、準備するアンプルの組合せを選択する。第3の実施形態の選択方法によれば、検査において必要量で足りた場合に、余裕量が使用された場合よりも検査費用が安くなる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第1〜第3の実施形態に加えて所定の期間内に実施される複数の検査に対して夫々最適なアンプルの組合せを選択する方法に関する。上記所定の期間とは、例えば1日又は1ヶ月であってもよいし、造影剤が入荷された直後から次に造影剤が入荷される直前までの期間であってもよい。
第4の実施形態では、造影剤管理装置の符号を100Dとし、処理回路の符号を20dとし、選択機能の符号を22dとし、検査情報の符号をIB4とし、造影剤情報の符号をIC4として説明する。
図8は、第4の実施形態における検査情報IB4及び造影剤情報IC4を示す表である。図8の上段の表は、所定の期間内に実施される検査情報IB4を示している。図8の検査情報IB4は3つの検査情報を含み、所定の期間内に3つの検査が実施されることを示している。なお、所定の期間内に実施される検査種別や検査部位は異なっていてもよい。即ち、所定の期間内に使用される造影剤の種類は複数あってもよく、夫々の検査で使用される造影剤の種類毎に必要量に応じたアンプルの組合せが選択される。
図8の検査情報IB4に示すように、検査ID「0011」及び「0012」は、検査種別「CT」、検査部位「胸部」であるのに対して、検査ID「0013」は、検査種別「CT」、検査部位「腹部」となっている。以下の説明では、「胸部」及び「腹部」の検査で同じ造影剤Aを使用する場合を例として説明する。なお、図8の検査情報IB4に示した各検査は、検査ID「0011」、「0012」、「0013」の順に実施されてもよいし、同時に実施される検査があってもよい。
図8の上段に示した検査情報IB4の最右列には、夫々の検査毎に造影剤の推奨準備量が示されている。上から順に、造影剤の推奨準備量は、237.5ml、260.5ml、及び220.0mlである。
図8の下段の造影剤情報IC4は、同一濃度の造影剤Aについて3つの容量のアンプルの価格及び在庫数を示している。各容量のアンプルの価格及び在庫数は、上から順に、容量が200mlの価格3,000円のアンプルの在庫数は5、容量が100mlの価格2,000円のアンプルの在庫数は2、容量が50mlの価格1,200円のアンプルの在庫数は4である。
所定の期間内に実施される検査毎に造影剤の推奨準備量以上となるアンプル組合せが選択機能22dにより算出される。これらすべての組合せの中から所定の期間内に実施される検査で使用されるアンプルの合計価格が最低価格となる組合せが選択機能22dにより選択される。
以下、図9及び図10を参照して、所定の期間内に実施される検査毎のアンプル組合せ一覧を説明する。なお、図9及び図10は、紙面の都合上、所定の期間内に実施される検査毎のアンプル組合せの一部(組合せ番号1から18)を示している。
図9は、第4の実施形態に係るアンプルの組合せ番号1〜9を示す表である。
図10は、第4の実施形態に係るアンプルの組合せ番号10〜18を示す表である。
ここでは説明の簡単化のため、各々の検査ID「0011」〜「0013」に対するアンプル組合せは、合計容量が推奨準備量以上となる2つのアンプルからなるものとする。図9、図10の左から3列目、4列目は、各検査IDに対応する2つのアンプルの一方及び他方の容量を示す。
図9の組合せ番号1では、項目名を示す行を除く1行目の検査ID「0011」(造影剤の推奨準備量237.5ml)に対するアンプル組合せは、容量200mlのアンプル2本である。同様に、組合せ番号1では、2行目の検査ID「0012」対するアンプル組合せは容量200mlのアンプル2本であり、3行目の検査ID「0013」対するアンプル組合せも容量200mlのアンプル2本である。
容量200mlのアンプル在庫数の初期値は、図8の下段の造影剤情報IC4に示すように、5である。仮に組合せ番号1が選択された場合の在庫数を考える。この場合、検査ID「0011」の検査の終了後には容量200mlのアンプル在庫数は、初期値5から2本減少して3となる(図9の左から5列目、上から1行目)。その後、検査ID「0012」の検査の終了後には2本減少して1となり(図9の左から5列目、上から2行目)、さらに検査ID「0013」の検査の終了後には2本減少して−1となる(図9の左から5列目、上から3行目)。
このように在庫数がマイナスとなるアンプル組合せは、検査に必要なアンプルを用意できないと想定される。従って、組合せ番号1は推奨の組合せの選択から除外される。
一方、図9の組合せ番号2は、検査ID「0011」及び「0012」については組合せ番号1と同じである。一方、組合せ番号2における検査ID「0013」に対するアンプル組合せは、組合せ番号1の場合とは異なり、容量200mlのアンプル1本、容量100mlのアンプル1本である。容量100mlのアンプル在庫数の初期値は、図8の下段の造影剤情報IC4に示すように「2」である。仮に組合せ番号2が選択された場合の在庫数を考える。この場合、検査ID「0012」の検査の終了後までは組合せ番号1と同じである(図9の左から5〜7列目、上から5行目)。その後、検査ID「0013」の検査の終了後には、容量200mlのアンプルの在庫数が1本減少して0となり、100mlのアンプル在庫数が1本減少して1本となる(左から5〜7列目、図9の上から6行目)。
組合せ番号2は、在庫数がマイナスにならないため、推奨の組合せとして選択可能である。以下、図9、図10に示す組合せ番号3〜18も同様である。
在庫数がマイナスとはならないという最優先条件を満たす組合せ番号2〜10、12〜18の中から、合計価格が最低の組合せが選択機能22dにより選択される。図9及び図10に示す例では、上記条件を満たす組合せ番号18が選択される。
なお、上記最優先条件を満たすアンプル組合せの中で、合計価格が最低のアンプル組合せが複数存在する場合、これら合計価格が最低の複数のアンプル組合せの中から、最小在庫数に基づいて組合せが選択されてもよい。最小在庫数とは、選択したアンプル組合せに従ってすべての検査に対してアンプルを割り当てた後の各容量のアンプル在庫数のうち、最も在庫数が少ない組合せのことである。
例えば、最優先条件を満たし、合計価格が最低となる複数のアンプル組合せの中から、最小在庫数が最小となるアンプル組合せを選択してもよい。この場合、最小在庫数に対応するアンプルの発注を促すことで、古いアンプルを積極的に消費できるため、保管中のアンプルの新鮮さを維持し易い。
或いは、最優先条件を満たし、合計価格が最低となる複数のアンプル組合せの中から、最小在庫数が最大となるアンプル組合せを選択してもよい。この場合、最小在庫数に対応するアンプルの在庫がゼロとなるリスクを回避できる。
なお、最優先条件として在庫数がマイナスにならないアンプル組合せを選択する例を説明したが、在庫数が予め設定された閾値を下回らない組合せを選択するよう選択機能22dを構成してもよい。ここでの「予め」とは、前述同様である。
例えば、アンプル在庫数の閾値として1を設定しておけば、選択機能22dは、アンプル在庫数が1を下回らない組合せを選択する。このように、常に各容量の在庫数が1個ある状態が保たれれば、所定の期間内に緊急の検査が発生し、特定の容量の造影剤が必要となった場合にも対処できる。
このように、第4の実施形態においても、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第4の実施形態では、所定の期間内に実施される複数の検査についてまとめてアンプルの組合せを決定でき、期間内のアンプルの使用数を予測できる。実際に検査が実施される前にアンプルの在庫数を予測できるため、想定される使用数に応じて前もって新しいアンプルを発注することができ、アンプルの効率的な在庫管理が可能となる。
[第5の実施形態]
第5の実施形態は、第4の実施形態に加えて、所定の期間の途中に設けられた入荷予定日に入荷されるアンプルの数に基づいてアンプル在庫数を更新した上で、所定の期間内に実施される複数の検査に対して、夫々の検査毎に最適なアンプルの組合せを選択する方法に関する。ここで、第5の実施形態における所定の期間は、第4の実施形態とは異なり、その期間内にアンプルの入荷予定が1回以上ある期間のことである。
第5の実施形態では、造影剤管理装置の符号を100Eとし、処理回路の符号を20eとし、選択機能の符号を22eとし、検査情報の符号をIB5とし、造影剤情報の符号をIC5として説明する。
第5の実施形態において、所定の期間内に実施される複数の検査夫々について算出された造影剤の推奨準備量に基づいて求められた複数の組合せの中から、在庫状況が適切な組合せであって、アンプルの合計価格が最低となる組合せが選択機能22eにより選択される。
図11は、第5の実施形態における検査情報、造影剤情報、及びアンプルの組合せ1を示す表である。図11の上段左側は検査情報IB5を示し、図11の上段右側は検査情報IB5に示された推奨準備量に基づいて求められたある1つの組合せを示し、図11の下段は、造影剤情報IC5を示している。
図11の上段左側の検査情報IB5は、2016年3月1日から2016年3月3日までの3日間に実施が予定されている7つの検査情報を一覧で示している。検査種別及び検査部位は検査毎に異なり、図11の上段左側の検査情報IB5は、検査種別がCT装置又はXA(X-ray-Angiography:X線アンギオ)装置である例を示している。図11では説明を簡略化するため、検査情報IB5に示したすべての検査において造影剤Aが使用される場合を例として説明するが、実際には、所定の期間内に実施される検査毎に使用される造影剤の種類は異なる場合がある。
2016年3月1日には、検査ID「0014」、「0015」、及び「0016」の3つの検査が予定されており、2016年3月2日には、検査ID「0017」、「0018」の2つの検査が予定されており、2016年3月3日には、検査ID「0019」、「0020」の2つの検査が予定されている。
図11の上段左側の検査情報IB5における推奨準備量に基づいて、各検査に必要なアンプルの組合せが選択機能22eにより夫々算出される。ここでは一例として、在庫数を加味せずに、前述同様にして合計価格が最低となるアンプルの組合せが選択される。図11の上段側は、選択機能22eにより算出された合計価格が最低のアンプルの組合せの一例を示している。
図11の上段右側のアンプル組合せ1の表の最右欄に示すように、この組合せにおける全体の合計価格は31,000円である。以下、図11の上段右側に示したアンプル組合せ1が他の組合せと比較して合計価格が最低となる場合を例として説明する。
図11の下段に示した造影剤情報IC5の在庫数に基づいて組合せ1の在庫変動情報が選択機能22eにより生成され、組合せ1が提供可能な組合せかどうかが判定される。
図11の下段に示した造影剤情報IC5は、在庫数に加えて、入荷予定日と入荷数に関する情報とを含む。造影剤情報IC5に示すように、容量200ml、容量100ml、容量50mlのアンプルの在庫数の初期値は、夫々「5」、「2」、「4」である。入荷予定日は2016年3月3日であり、容量200ml、容量100ml、容量50mlのアンプルの入荷数は、夫々「10」、「8」、「15」である。
入荷予定日である2016年3月3日に実施される検査後の在庫数は、2016年3月2日の検査実施後の在庫数に入荷数を加算した上で計算される。以下、図12を用いて選択機能22eにより生成される組合せ1の在庫変動情報について具体的に説明する。
図12は、第5の実施形態に係るアンプルの組合せ1における在庫変動情報を示す表である。在庫変動情報は、検査ID毎に使用される各容量のアンプル使用数と、各検査が実施された後に想定される各容量のアンプル在庫数とを示している。
図11の造影剤情報IC5において、入荷予定日は2016年3月3日である。その場合、入荷予定日の前日である2016年3月2日の検査ID「0018」の検査で使用が予定されているアンプル数が割り当てられた後の在庫数に入荷数が加算される。
図12においてタイトル行を除いた上から5行目に示すように、入荷予定日の前日である2016年3月2日の検査ID「0018」の検査では、容量が200mlのアンプル1本と、容量が50mlのアンプル1本とが使用予定である(図12の左から3〜5列目)。検査ID「0018」の検査で使用が想定されるアンプル数を使用予定のアンプルとして割り当てた後の在庫数は、容量が200ml、100ml、50mlの順に、「0」、「1」、「0」となる(図12の左から6〜8列目)。
2016年3月3日の検査で使用されるアンプルが割り当てられる前に、前日の検査において使用が想定されるアンプルが割り当てられた後の在庫数に入荷数が加算され、在庫数が更新される。具体的には、2016年3月2日の検査ID「0018」の検査で使用が想定されるアンプルを割り当てた後の各容量のアンプル在庫数は、容量が200ml、100ml、50mlの順に、「0」、「1」、「0」である。入荷数は容量が200ml、100ml、50mlの順に、「10」、「8」、「15」である。この入荷数が、検査ID「0018」の検査で使用が想定されるアンプルを割り当てた後の在庫数に加算され、加算後の造影剤の在庫数は容量200ml、100ml、50mlの順に、「10」、「9」、「15」となる。
更新された在庫数に基づいて、2016年3月3日に予定されている検査において使用が想定されるアンプルが割り当てられる。具体的には、2016年3月3日に予定されている検査ID「0019」では容量が200mlのアンプルを1本と、容量が100mlのアンプルを1本とを使用する予定である(図12の左から3〜5列目、上から6行目)。入荷数で更新後の在庫数は容量が200ml、100ml、50mlの順に、「10」、「9」「15」であるため、検査ID「0019」の検査で使用が予定されているアンプル数を差し引くと、在庫数は容量200ml、100ml、50mlの順に、「9」、「8」、「15」となる(図12の左から6〜8列目、上から6行目)。
同様に、検査ID「0020」では容量が200mlのアンプルを1本と、容量が50mlのアンプルを1本とが使用される予定であり(図12の左から3〜5列目、上から7行目)、これらのアンプル数を差し引くと在庫数は容量200ml、100ml、50mlの順に、「8」、「8」、「14」となる(図12の左から5〜8列目、上から7行目)。
図12に示した在庫変動情報によれば、図11で求めたアンプルの組合せ1は、合計価格が最低であり、かつ、在庫数がマイナスにならない組合せであると選択機能22eにより判定され、推奨の組合せとしてユーザに提示される。
アンプルの組合せ1が在庫条件を満たさない場合、アンプル組合せ1の次に価格が低いアンプル組合せに対して、上記同様に、在庫条件を満たすか否かが判定される。ここでの在庫条件とは、現時点よりも先の時点での入荷予定数を加味すれば、在庫数がマイナスとなることがないことである。このようにして、在庫条件を満たすアンプル組合せの中で、合計価格が最も低いアンプル組合せが選択される。
なお、選択のアルゴリズムについては、上記手法とは逆に、在庫条件を満たすか否かを先に判定してもよい。即ち、推奨準備量に基づくすべてのアンプル組合せに対して、在庫条件を満たすか否かが選択機能22eにより判定される。選択機能22eは、在庫条件を満たすアンプル組合せの中から、合計価格が最低のアンプル組合せを最終選択する。
このように、第5の実施形態においても第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第5の実施形態では、入荷予定日における入荷数で在庫数を更新しつつ、更新後の在庫数に基づいて入荷予定日以降も在庫数を求めることができる。
上述のように、第1〜第5の実施形態に係る造影剤管理装置によれば、容量の異なるアンプルから造影剤の推奨準備量に応じて最適なアンプルの組合せを選択できる。アンプルの組合せは、造影剤の推奨準備量に応じて決定されるため、より正確に推奨準備量が算出されることが望ましい。以下、第6の実施形態において、造影剤の推奨準備量を正確に算出する方法について説明する。
[第6の実施形態]
第6の実施形態は、第1〜第5の実施形態に加えて、蓄積された検査実績情報に基づいて、アンプルの余裕量を機械学習及び統計法により算出する方法に関する。なお、第6の実施形態はアンプルの推奨準備量の算出方法を除き、第1の実施形態と同様であるので、違いのみを説明する。
第6の実施形態では、造影剤管理装置の符号を100Fとし、処理回路の符号を20fとし、算出機能の符号を21fとし、選択機能の符号を22fとし、検査実績情報の符号をIA6とし、検査情報の符号をIB6として説明する。
被検体の個体差や検査の進行度合いなどに応じて、使用される造影剤の量は検査毎に異なる。従って、検査で用意される推奨準備量は、被検体の体重などから算出した必要量に所定の余裕量が加算された量となる。第1〜第5の実施形態では、余裕量を必要量が算出される前にユーザなどによって入力された固定量、又は、必要量に対する割合により求める例を説明した。
ユーザなどによって予め設定された値は、実際よりも過剰に余裕を持たせた量である場合が多い。なぜなら、どれだけの量を準備すべきかを検査を実施する前に正確に予測することは困難であり、かつ、準備した造影剤の量が不足することが原因で検査が中断されることを避けなければならないからである。
しかしながら、推奨準備量が実際に検査で使用された造影剤の量と比較して過剰に余分であった場合、余分にアンプルが開封されるため検査費用は高くなる。
そこで、第6の実施形態は、過去の検査において実際に使用された造影剤の量や、廃棄された造影剤の量などの造影剤の使用実績を蓄積し、蓄積された造影剤の使用実績に基づいて余裕量を推定し、推定精度の高い造影剤の推奨準備量を算出する方法に関する。
造影剤の使用実績情報は、例えば、記憶回路10に検査実績情報IA6として蓄積されてもよいし、検査実績情報IA6とは別のデータとして記憶回路10に記憶されてもよい。以下、造影剤の使用実績を検査実績情報IA6として蓄積する場合を例として説明する。
検査実績情報IA6は、図4に示した検査実績情報IA1と同様に、検査ID毎に、被検体情報に加えて、当該検査で実際に使用された造影剤の種類や使用量の情報を有する。インジェクタ200によりRISなどに送信されるMPPSには、アンプルの使用前後の重量差分や、検査で実際に使用された造影剤の容量などの情報が含まれる。
第6の実施形態に係る造影剤管理装置100Fは、インジェクタ200で収集される検査で実際に使用された造影剤の使用量及び造影剤の残量と、算出機能21fにより推定された造影剤の必要量及び余裕量とを、検査実績情報IA6に自動的に蓄積するよう構成してもよい。
次に、蓄積された検査実績情報1A6に基づいて、造影剤の推奨準備量を算出する方法を説明する。算出機能21fは、これから実施される検査の検査情報IB6に基づいて、造影剤必要量を算出する。この際、蓄積された検査実績情報IA6に基づいて余裕量を推定する。以下、検査実績情報IA6に蓄積された余裕量と区別するため、検査実施前に推定された余裕量を「推定余裕量」と呼ぶこととする。なお、算出機能21fにより算出される推定余裕量は、検査が実施された後、余裕量として検査実績情報IA6に蓄積される。
推定余裕量は、検査実績情報IA6に蓄積された造影剤の必要量、検査で実際に使用された造影剤の使用量、及び造影剤の残量に基づいて、機械学習法や統計法を用いて算出される。以下、機械学習法の1つである強化学習法のバックプロバケーション法を用いて推定余裕量を求める方法を例として説明する。
余裕量をVm、造影剤の必要量をVe、検査で実際に使用された造影剤の使用量をVu、造影剤の残量をVdとすると、造影剤の残量Vdは、以下の式(1)で表せる。
[数1]
Vd=Ve+Vm−Vu (1)
Vm、Ve、Vu、及びVdのすべてを学習対象として、学習後の余裕量をEm、学習後の造影剤の必要量をEe、学習後の検査で実際に使用された造影剤の使用量をEu、及び学習後の造影剤の残量をEdとし、Em、Ee、Eu、及びEdを機械学習により求める。学習前の値から学習後の値を引いたときに限りなく0となるように、学習重み変数を求める。具体的には、Ee、Eu、及びEdの学習重み変数を夫々k1、k2、k3として、式(2)〜式(4)が成立するときのk1、k2、k3を夫々求める。
[数2]
Ve=k1×Ee (2)
Vu=k2×Eu (3)
Vd=k3×Ed (4)
学習重み変数k1、k2、k3は、例えば、実績データである学習前のデータ(Ve、Vu、Vd)と、学習後のデータ(Ee、Eu、Ed)との差が最小となるように残差平方和を用いて求められる。
上述の手順で求めた学習重み変数k1、k2、k3を用いると、学習後の余裕量Em、即ち、推定余裕量は以下の式(5)により求められる。なお、学習重み変数k1、k2、k3はマイナスの値となる場合がある。
[数3]
Em=k1Ve+k2Vu+k3Vd (5)
上述の方法により算出された推定余裕量を、被検体の体重などから推定した必要量に加算して造影剤の推奨準備量が算出される。なお、推定余裕量が予め設定された余裕量よりも大きい場合は、予め設定された余裕量を用いて造影剤の必要量を算出するように算出機能21fを構成してもよい。
例えば、予め設定された余裕量が50mlであった場合、推定余裕量が50mlを下回る量となった場合は推定余裕量を採用し、50ml以上となった場合は予め設定されていた余裕量を採用する。
或いは、推定余裕量がユーザにより予め設定された精度に達したら推定余裕量を使用するように算出機能21fを構成してもよい。なお、「予め」とは、算出機能21fにより推定余裕量が算出されるより以前のことである。また、「予め設定された精度」とは、例えば、算出された推定余裕量がユーザにより予め設定された余裕量50mlに対して±10mlの範囲に含まれる場合、「予め設定された精度」に達したと判断するようにしてもよい。
算出機能21fにおいて算出された推定余裕量に基づいて実際に検査が実施された場合、推定余裕量を余裕量として検査実績情報IA6に蓄積する。上述の方法により推定余裕量は検査毎に算出され、検査の度に更新されていく。また、更新された検査実績情報IA6に基づいて推定余裕量が算出されるため、算出される推定余裕量の推定精度は徐々に向上してゆく。
このように、第6の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第6の実施形態では、算出機能21fにより高い精度で推定余裕量を算出できるため、使用する造影剤の量を全体的に減らすことができる。従って、精度よく造影剤の推奨準備量を算出でき、造影剤の残量を減らすことができるため、検査費用をさらに削減することができる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態の造影剤管理装置によれば、造影剤を効率よく使用することが可能となる。
請求項の用語と実施形態との対応関係は、例えば以下の通りである。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
算出機能は、請求項記載の算出部の一例である。また、選択機能は、請求項記載の選択部の一例である。造影剤の推奨準備量は、請求項記載の造影剤の準備量の一例である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。