1.概説
遺伝子改変動物(例えばトランスジェニックまたは他の遺伝子改変哺乳動物)を生成する背景において、マイクロインジェクションに関連する生得的な限界を克服するため、本出願者は、方法を、高い生存率を有する遺伝子改変動物の高効率ハイスループット生成に受け入れられるものにする特定の条件下で、生物学的/遺伝子材料を動物(例えば哺乳動物)配偶子または接合子を含む移植前の胚内に送達する、エレクトロポレーションに基づく方法論を開発した。生じた遺伝子修飾は、生殖系列を通じて容易に伝達可能である。
具体的には、例示的な態様において、本発明の方法を用いて、マウス胚(例えば接合子)にCRISPR/Cas系を送達して、こうして生じる遺伝子修飾/トランスジェニックマウスのゲノムにおいて、ターゲティング化遺伝子修飾を達成した。本明細書で最適化された態様またはプロトコルを含む本発明の方法は、商業的に入手可能なエレクトロポレーターを用いて実施可能であり、一方、最小限の訓練または以前の経験しか必要とせず、そしてしたがって、多数の胚および複数の遺伝子ターゲティングプロジェクトを、平行して、単一の工程でプロセシング可能である。本明細書に記載する本発明の方法を用いて、限定されるわけではないが、CRISPR/Cas、TALEN、およびZFN、またはその組み合わせ等を含む、任意の多様な生物学的、遺伝子、または他の材料を、配偶子および初期胚(例えば接合子を含む哺乳動物移植前胚)に送達可能である。したがって、本明細書記載の技術は、前例のない容易さおよび規模で、動物ゲノム操作を可能にする。
本明細書記載の発明は、部分的に、エレクトロポレーションを用いて、比較的高濃度(例えば以前は毒性レベルと考えられていた濃度)の生物学的/遺伝子材料を配偶子および接合子を含む移植前の胚に送達可能であり、こうした高濃度は、エレクトロポレーションした配偶子および初期段階の胚の核において、望ましい最終結果、例えば配偶子または胚のゲノムの遺伝子修飾を達成するために必要である可能性があり、こうした修飾が生殖系列伝達を通じて伝達されうるという発見に基づく。
具体的には、比較的低濃度のCas9 mRNA(50または100ng/μL)およびsgRNA(25または50ng/μL)が前核または細胞質マイクロインジェクション実験において成功裡に用いられた、先のマイクロインジェクション実験に基づき、本出願者は、報告される遺伝子コードプラスミドを用いて、接合子にエレクトロポレーションを試みた(実施例1を参照されたい)。驚くべきことに、エレクトロポレーションした接合子から発生した3.5日胚において、蛍光はまったく観察されなかった。透明帯を弱める前処理を伴う;あるいは他のレポーターまたはフルオレセイン標識オリゴヌクレオチドを伴う、他の濃度のDNAを用いた類似の実験もまた失敗した。実施例1に言及する実験2〜6を参照されたい。
Cas9 mRNAおよびガイドRNAを含む、エレクトロポレーション実験に用いる試薬は、より高い濃度で用いた際、胚に対して毒性でありうると広く考えられている。
本出願者は、本明細書において、接合子などの初期段階の胚に、比較的高濃度の生物学的材料(例えばCRISPR/Cas mRNAおよびガイドRNAを含むポリヌクレオチド)を用いてエレクトロポレーションして、胚またはエレクトロポレーションした胚から発生した動物において、望ましい遺伝子修飾を達成することも可能であることを立証した。実施例2を参照されたい。
本明細書記載の発明は、エレクトロポレーションした配偶子および接合子を含む移植前の胚が生理学的溶液または培地内に放出されない限り、エレクトロポレーションした配偶子および接合子を含む移植前の胚が、通常、発生遅延または抑止を示すか、あるいは生産動物になるまで生き延びないという発見に、さらに部分的に基づく。例えば、溶液または培地は、とりわけ、等張性である。さらに、エレクトロポレーションした配偶子および接合子を含む移植前の胚を、生理学的溶液または培地に放出することによって、通常のエレクトロポレーション培地を除去し(例えばポリヌクレオチドを溶解するために用いる緩衝液、例えばTE)、こうして、該培地中の何らかの有害物質が、続く胚発生を遅延させる可能性をさらに減じる。
例えば、エレクトロポレーションに用いる緩衝液または培地が生理学的溶液または培地でない場合、例えばエレクトロポレーションしようとする材料を溶解するために用いた過剰な(例えば40%または50%を超える)緩衝液を含有する場合、こうした緩衝液をエレクトロポレーション後、速やかに除去することが有用でありうる。
特定の態様において、一般的に核酸試薬を溶解するために用いるTEまたは他の類似の緩衝液が、エレクトロポレーション培地中にかなりの量(例えば>40%または50%)存在する場合、いくつかの手段を用いて、いかなる潜在的に有害な影響を軽減することも可能である。例えば、1つの態様において、エレクトロポレーションした配偶子または胚を、エレクトロポレーション後、生理学的溶液中で直ちに洗浄することによって、配偶子または胚をTE緩衝液中に浸す時間を最小限にすることも可能である。他の態様において、全体のモル浸透圧濃度が生理学的なものにより近くなるように、TE緩衝液中に溶解した核酸試薬(例えばCRISPR/Cas試薬)を生理学的溶液と適切な比率で混合してもよい。さらに別の態様において、核酸試薬(例えばCRISPR/Cas試薬)を生理学的溶液中で直接再構成して、いかなる合併症も回避するかまたは最小限にしてもよい。すなわち、配偶子および接合子を含む移植前の胚を、生理学的溶液または培地、例えば等張性である溶液中でエレクトロポレーションしてもよい。生理学的溶液または培地は、塩組成および浸透圧が血漿と類似である、人工的に調製した溶液であってもよい。
エレクトロポレーションは、実際に、生物学的材料を、本明細書記載の条件下で接合子内に導入可能であるが、生産動物を生成するには、続く発生において接合子が生存する必要がある。エレクトロポレーションした接合子を培養する際の最初の失敗は、望ましい遺伝子修飾がエレクトロポレーションした接合子において起こるかどうかに関わらず、接合子がエレクトロポレーションプロセスを生き延びて、そして生産動物に発生し続けることが不可能であることを示唆するようである。AT処理が接合子に過剰に損傷を与えて、胚発生を遅延させる可能性があり、そしてCas9 mRNAおよびガイドRNAなどの送達される試薬が接合子および続く発生に対して毒性である可能性もあるという認識は、さらに、動物において、生殖系列に伝達可能な遺伝子修飾を永続的に導入する有望な手段として、エレクトロポレーションを用いることを支持しない。
本出願者は、本明細書において、例えば、胚盤胞段階の胚への発生成功によって評価されるように、エレクトロポレーションした接合子の生存率は、本発明の方法を用いて、驚くほど高レベル(例えば100%に近いかまたはさらに100%に達する)に劇的に改善されうることを立証した。
したがって、本発明の1つの側面は、遺伝子改変動物(例えば哺乳動物)を生成する方法であって、動物(例えば哺乳動物)の配偶子または移植前段階の胚内に、エレクトロポレーションを通じて材料を導入して、動物(例えば哺乳動物)のゲノムを修飾する工程を含む、前記方法を提供する。
関連する側面において、本発明はまた、遺伝子改変動物(例えば哺乳動物)を生成する方法であって、エレクトロポレーションを通じて、動物(例えば哺乳動物)の除核した卵母細胞に材料を導入して、動物(例えば哺乳動物)のゲノムを修飾する工程を含み、エレクトロポレーションショックによって、体細胞を除核卵母細胞と同時に融合させる、前記方法を提供する。体細胞と除核卵母細胞の融合は、ブタクローニングに用いられた方法である。
特定の態様において、材料を配偶子内に導入する。例えば、配偶子は、精子(例えば成熟精子)、極体、あるいは卵子または卵であってもよい。成熟精子を用いる場合、精子をまず誘導して、脱凝縮を経させることも可能である。精子脱凝縮のための技術は、当該技術分野に知られる。例えば、Mahiら, J. Reprod. Fert., 44:293−296(1975); Hendricksら, Exptl. Cell Res., 40:402−412(1965);およびWagnerら, Archives of Andrology, 1:31−41(1978)(すべて本明細書に援用される)を参照されたい。ジスルフィド還元剤の使用を通じた脱凝縮が好ましい。卵を用いる場合、卵は受精していても、または例えば単為生殖によって生じた活性化状態にあってもよい。エレクトロポレーションした極体もまた、半数体の卵を二倍体化するために使用可能である。
配偶子を用いる場合、本発明の方法は、エレクトロポレーションした配偶子を別の配偶子、例えば反対の性別の配偶子と融合させ(例えばエレクトロポレーションした卵を精子と融合させ)、そして融合した配偶子を生産遺伝子改変動物(例えば哺乳動物)に発生させる工程をさらに含む。例えば、精子にエレクトロポレーションした場合、遺伝子修飾が達成された精子細胞を、その後、卵の中に入れて、接合子の形成を可能にする。そしてその逆を行うことも可能である。精子および卵は、どちらも、接合子の形成前にエレクトロポレーションすることが可能である。
反対の性別の配偶子と融合させた後のエレクトロポレーションした配偶子、またはエレクトロポレーション後の移植前の胚を、胚を出産するまで保持することが可能な動物(例えば哺乳動物)である、好ましくは同じ種または系統の偽妊娠宿主動物/哺乳動物内に移植することも可能である。特定の態様において、発生の桑実胚または胚盤胞段階で、偽妊娠宿主動物/哺乳動物への移植を行う。他の態様において、胚のエレクトロポレーション直後に、またはエレクトロポレーションした配偶子を別の配偶子と融合させた直後に、移植を行う。
他の態様において、材料を初期段階の胚、例えば移植前段階の胚に導入する。移植前段階の胚は、一細胞胚(すなわち接合子)、二細胞胚、四細胞胚、八細胞胚、初期桑実胚、または後期桑実胚であってもよい。胚発生はときに、非対称分裂を伴うため、少なくとも一過性に、初期段階の胚が三、五、六、七細胞胚、または対称的胚分裂の結果ではない他の胚であることが可能である。本発明の方法はまた、こうした初期段階の胚にも当てはまる。特定の態様において、方法は、(エレクトロポレーションした)移植前段階の胚を、生産遺伝子改変動物(例えば哺乳動物)に発生させることを可能にすることをさらに含む。例えば、エレクトロポレーション後の移植前の胚を、胚を出産するまで保持することが可能な動物(例えば哺乳動物)である、好ましくは同じ種または系統の偽妊娠宿主動物(例えば哺乳動物)内に移植することも可能である。
特定の態様において、偽妊娠宿主動物(例えば哺乳動物)内に移植する前に、配偶子(反対の性別の配偶子と融合させた後)または移植前の胚を、まず、エレクトロポレーションを行った培地から取り除く。例えば、エレクトロポレーションした配偶子または移植前の胚を、胚発生に適したまたはこれと適合する培地(例えば等張性生理学的溶液または培地)中で1回またはそれより多く、洗浄することも可能である。こうした洗浄はまた、有害でありうるかまたはそうでなければin vitroまたはin vivoのさらなる胚発生を促さない、エレクトロポレーション培地または緩衝液中のいかなる物質も除去する。
この目的のために適した培地には、限定されるわけではないが、M2培地またはOPTI−MEM(登録商標)または任意の他の生理学的溶液(適切なイオン強度およびpHを持つもの)が含まれる。特定の態様において、洗浄に用いる培地または緩衝液を、動物(例えば哺乳動物)の胚発生に最適な温度(例えば約37℃)にあらかじめ温めて、いかなる潜在的な温度ショックも減少させるかまたは最小限にする。
特定の態様において、エレクトロポレーション培地は等張性である。
特定の態様において、エレクトロポレーションした配偶子または移植前の胚を洗浄して、ポリヌクレオチドを溶解するために用いた1またはそれより多い緩衝液、例えばTE緩衝液、または金属キレート、例えばEDTAを含有する同等の緩衝液を取り除く。
特定の態様において、エレクトロポレーションした配偶子または移植前の胚を洗浄して、基礎または減少血清培地、例えばOPTI−MEM(登録商標)培地(INVITROGEN、カリフォルニア州カールスバッド)、siPORTTM(AM8990またはAM8990G;Ambion、テキサス州オースティン)あるいはエレクトロポレーション培地として使用可能な、その混合物または同等物を除去する。
生殖系列を通じて伝播可能な遺伝子修飾を達成するため、本発明の方法を用いて、配偶子または移植前の胚内に多くの試薬または材料を導入可能である。
特定の態様において、材料は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または両方を含んでもよい。他の態様において、さらなる材料、例えばNHEJ、HDRまたはHRプロセスを促進するかまたは阻害するように、性質が化学的であるかまたは合成である、さらなる材料もまた、エレクトロポレーションを通じて導入可能である。例えば、CRISPR/Cas系の機能を促進するかまたは増進するために、特定の化学的試薬が含まれてもよい(以下を参照されたい)。
特定の態様において、ポリヌクレオチドは、II型Cas9タンパク質のコード配列を含む。例示的な態様において、Cas9タンパク質のコード配列は、mRNA、例えば真核生物における発現に適したコドン最適化mRNAである。
特定の態様において、ポリヌクレオチドは、哺乳動物ゲノム中のターゲット配列にハイブリダイズ可能である、クラスタード・レギュラリー・インタースペースド・ショート・パリンドロミック・リピーツ(CRISPR)−CRISPR関連(Cas)(CRISPR−Cas)システム・ガイドRNAを含んでもよい。ガイドRNAは、細胞内生理学的条件下でハイブリダイズ可能であるように、ターゲット配列に配列が十分に類似であればよい。しかし、特定の態様において、ガイドRNAは、ターゲット配列に完全に相補的(または100%同一)である。
特定の態様において、ガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列に融合したガイド配列であってもよい。
特定の態様において、II型Cas9タンパク質のコード配列およびCRISPR−Casシステム・ガイドRNAの濃度比は多様であってもよい。例えば、適切な比は、少なくとも約1:1、少なくとも約1.5:1、少なくとも約2:1、少なくとも約2.5:1、少なくとも約3:1またはそれより高くてもよい。
他の態様において、II型Cas9タンパク質のコード配列およびCRISPR−Casシステム・ガイドRNAの濃度比は、最大約1:1、最大約1:2、最大約1:4、最大約1:5、最大約1:10またはそれより低くてもよい。
特定の態様において、II型Cas9タンパク質のコード配列の濃度は、少なくとも約40ng/μL、少なくとも50ng/μL、少なくとも100ng/μL、少なくとも150ng/μL、少なくとも200ng/μL、少なくとも300ng/μL、少なくとも400ng/μL、少なくとも500ng/μL、少なくとも600ng/μL、少なくとも800ng/μL、または少なくとも1000ng/μLあるいはそれより高い。
特定の態様において、材料はドナーポリヌクレオチド(例えばCRISPR仲介NHEJ、HDRまたはHRを容易にするため)をさらに含む。例えば、ドナーポリヌクレオチドは直鎖または環状二本鎖または一本鎖DNA分子であってもよい。こうしたドナーポリヌクレオチドは、導入されるCRISPR−Cas系のターゲットでありうるターゲット配列のまたはその周囲の部位特異的修飾を促進するために、含まれてもよい。
CRISPR/Cas系以外の、他の材料もまた、本発明の方法を用いて、配偶子または移植前の胚に導入可能である。例えば、特定の態様において、ポリヌクレオチドは、動物(例えば哺乳動物)ゲノム中のターゲット配列に特異的な転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)のコード配列を含んでもよい。他の態様において、ポリヌクレオチドは、動物(例えば哺乳動物)ゲノム中のターゲット配列に特異的なジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)のコード配列を含んでもよい。さらに他の態様において、ポリヌクレオチドは、動物(例えば哺乳動物)ゲノム中のターゲット配列に特異的なBuD由来ヌクレアーゼ(BuDN)、またはモジュラー塩基対塩基特異的核酸結合ドメイン(MBBBD)由来ヌクレアーゼのコード配列を含んでもよい。さらに別の態様において、ポリヌクレオチドは、動物(例えば哺乳動物)ゲノム内にランダムに組み込まれるDNAを含んでもよい。
ポリヌクレオチドは、DNAベクター、またはRNA(例えばmRNA、および/またはCRISPRガイドRNA)を含んでもよい。
特定の態様において、ポリヌクレオチドは、DNA断片をランダムにまたは特異的に哺乳動物ゲノム内に組み込むトランスポザーゼを含む。
本発明は、配偶子細胞の合体(union)によって、異型配偶子融合、すなわち有性生殖を経る、多細胞真核動物の遺伝子修飾において、適用を有する。こうした動物の例には、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物、硬骨魚、軟骨魚、円口類、節足動物、昆虫、軟体動物、および葉状植物が含まれる。例示的な動物には、哺乳動物、鳥類および魚類が含まれる。
特定の態様において、動物は哺乳動物である(以下を参照されたい)。例えば、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類(例えばマーモセット、アカゲザル、チンパンジー)、齧歯類(例えばマウス、ラット、スナネズミ、モルモット、ハムスター、コットンラット、ハダカデバネズミ)、ウサギ、家畜哺乳動物(例えばヤギ、ヒツジ、ブタ、雌ウシ、ウシ、ウマ、ラクダ科)、ペット哺乳動物(例えばイヌ、ネコ)、動物園哺乳動物、有袋類、絶滅危惧哺乳動物、あるいはその非近交系または任意交配集団である。
本発明の方法を用いて、限定されるわけではないが:小さい挿入または欠失(例えば1またはそれより多い塩基対のもの)、異種DNA断片の挿入、内因性DNA断片の欠失、内因性DNA断片の反転または転位置、あるいはその組み合わせを含めて、関与する動物種のゲノムに対して、多くの生殖系列伝達可能修飾を導入することも可能である。同様に、限定されるわけではないが、非相同端連結(NHEJ)、相同組換え修復(HDR)または相同組換え(HR)を含む修飾を達成する際に、多くの異なる機構が関与することも可能である。
相同組換え修飾(HDR)は、細胞において、二本鎖DNA損傷を修復する機構である。この修復機構は、核に存在するDNAの相同片がある際、大部分は細胞周期のG2およびS期にある細胞によってのみ使用可能である。
相同DNA片が存在しない場合、非相同端連結(NHEJ)と呼ばれる別のプロセスを行ってもよい。非相同端連結(NHEJ)は、DNA中の二本鎖切断を修復する別の経路である。NHEJは、修復をガイドするために相同配列を必要とする相同組換えとは対照的に、相同テンプレートの必要性を伴わずに、切断端を直接連結するため、「非相同」と称される。NHEJは、典型的には、短い相同DNA配列(例えばマイクロホモロジー)を利用して修復をガイドする。これらのマイクロホモロジーは、しばしば、二本鎖切断端上の一本鎖オーバーハング中に存在する。オーバーハングが完全に適合性である場合、NHEJは、通常、切断を正確に修復する。ヌクレオチドの喪失を導く、不正確な修復もまた起こりうるが、オーバーハングが適合性でない場合にはるかにより一般的である。不適切なNHEJは転位置およびテロメア融合を導きうる。NHEJは、生物界全体で進化的に保存され、そして哺乳動物細胞において、支配的な二本鎖切断修復経路である。
NHEJ経路が不活性化されている場合、二本鎖切断は、マイクロホモロジー仲介性末端連結(MMEJ)として知られる、よりエラーが起こりやすい経路によって修復されてもよい。この経路において、末端切除によって、切断のいずれかの側での短いマイクロホモロジーが明らかになり、これらは次いで整列されて修復をガイドする。これは、典型的にはDSB端の一本鎖オーバーハング中ですでに曝露されているマイクロホモロジーを使用する古典的なNHEJとは対称的である。したがって、MMEJによる修復は、マイクロホモロジー間のDNA配列の欠失を導く。
相同組換えは、相同DNAの2つの類似のまたは同一の分子間でヌクレオチド配列が交換される遺伝子組換えの一種である。これは、二本鎖切断(DSB)として知られる、DNAの両鎖上で起こる有害な切断を正確に修復するために、細胞によって最も広く用いられる。相同組換えはまた、真核生物が、動物における精子および卵細胞のように、配偶子細胞を作製するプロセスである減数分裂中、DNA配列の新たな組み合わせを生じるプロセスでもある。相同組換えは、生命の3つすべてのドメインに渡って、ならびにウイルスにおいて保存される。
本発明の方法は、単一の配偶子または移植前の胚に適しており、そしてまた、約2、3、5、10、20、30、40、50、100、125、150、200、250、300またはそれより多い配偶子または移植前段階の胚に関して、多重化し、そして同時に使用するためにも適しており、例えば、同じエレクトロポレーションキュベット、あるいは多数の類似のまたは同一のキュベット中のいずれかで、同じまたは異なる条件下で、すべて同時にエレクトロポレーションしてもよい。
本発明の方法は、多くの観点でマイクロインジェクションよりも優れている。マイクロインジェクションに比較して、本方法は、はるかにより効率が高く、そしてはるかにより技術的に要求が少なく、そして標準化を受け入れやすいだけでなく、胚の生存率および生殖系列伝達率がどちらもはるかにより高い。例えば、マイクロインジェクションは、典型的には、注入されたマウス胚の約20〜25%の生存率を達成する(例えば約20〜25%の注入マウス胚が生き延びて、生産仔マウスを生じる)。比較して、エレクトロポレーションした移植前段階の胚(またはエレクトロポレーションし、次いで融合させた配偶子)の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれより多くが、好ましくはマッチした対照に匹敵する速度で、例えば接合子に関してはエレクトロポレーションの約3.5日後に、胚盤胞段階の胚に発生するか、または生産トランスジェニック哺乳動物に発生する。例えば、マッチした対照は、空のベクター、スクランブル化mRNAおよび/またはCRISPR/Casのガイド配列、または緩衝液のみによってエレクトロポレーションされていてもよい、偽エレクトロポレーション配偶子または胚であってもよい。
特定の態様において、エレクトロポレーションした移植前段階の胚(またはエレクトロポレーションし、次いで融合させた配偶子)の少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%またはそれより多くが、生産トランスジェニック哺乳動物に発生する。
特定の態様において、設計したような遺伝子修飾を含有する生産哺乳動物の割合によって推測される宿主ゲノムのターゲティング効率は、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%、または100%に近い。
いかなる特定の理論によっても束縛されることは望ましくないが、本方法の高ターゲティング効率は、胚を相同性CRISPR/Cas溶液に浸し、そしてエレクトロポレーションに際して、CRISPR/Cas試薬への類似の曝露を行うという事実による可能性もある。これは、特定の実験を取り巻く技術的能力および要因のレベルが、ターゲティング効率における比較的大きな変動にすべて寄与しうる、対応するマイクロインジェクション実験とはまったく対照的である。
特定の態様において、エレクトロポレーション前に、配偶子または移植前段階の胚を前処理して、透明帯を弱める。例えば、配偶子または移植前段階の胚を、この目的のため、酸性タイロード溶液(AT)中で前処理することも可能である。
タイロード溶液は、アメリカ人薬理学者Maurice Vejux Tyrodeによって発明され、そしてリンゲル・ロック溶液の修飾である。これはおおよそ間質液と等張であり、そして主に、生理学的実験および組織培養に用いられる。該溶液は、マグネシウム、糖(通常グルコース)をエネルギー供給源として含有し、そして緩衝剤として重炭酸および/またはHEPESを用いる。いくつかの変動にはまたリン酸および硫酸イオンも含まれる。典型的には、細胞培養適用および生理学的実験に用いる際、95%酸素5%二酸化炭素で通気する。
酸性タイロード溶液は、典型的には、室温で、以下のものを100mLの水に溶解し、そしてAnalar HCl(BDH)でpH2.5に調整することによって、調製可能である:NaCl、0.8g;KCl、0.02g;CaCl2・2H2O、0.024g;MgCl2・6H2O、0.01g;グルコース、0.1g;ポリビニルピロリドン(PVP)、0.4g。PVPを添加して、粘性を増加させ、そして胚粘着性を減少させる。溶液をフィルター滅菌して、そしてアリコットで−20℃で保存してもよい。ATは、Sigma−Aldrichなどの業者から商業的に入手可能である(例えば100mLパッケージに関してはSKU T1788)。
特定の態様において、配偶子または移植前の胚をAT中で約5〜30秒間、約5〜20秒間、または約5〜10秒間、前処理する。ATが希釈されている場合、より長い処理時間もまた使用可能である。適切なAT処理時間は、異なる期間に渡って、配偶子または移植前の胚を処理した後、生存度、処理後の損傷を受けたまたはアポトーシス性の配偶子/胚の割合、あるいは続く発生中の胚の生存率を測定することによって、実験的に決定可能である。
わずかに異なるエレクトロポレーション条件が使用可能であるが、特定の態様において、本発明におけるエレクトロポレーションは:20〜30ボルト(例えば25、26、または27ボルト)、パルス期間1〜2ms(例えば1.5ms)、1〜3回パルス、パルス間隔100〜1000ms(例えば約125〜130ms)のセッティングを用いて、1mmエレクトロポレーションキュベット中で行う。特定の態様において、類似のパラメータで、適切な調整を伴い、2mmキュベットもまた使用可能である。
特定の実験において、エレクトロポレーション配偶子または胚を、エレクトロポレーション直後に、例えばそれぞれ、別の配偶子と融合させるか、または偽妊娠雌に移植することも可能である。他の態様において、配偶子または移植前段階の胚を、エレクトロポレーション後、保存のために凍結し、そして次いで、次の工程、例えばそれぞれ、別の配偶子との融合または偽妊娠雌への移植のために融解する。さらに別の態様において、エレクトロポレーションした配偶子または胚をまず、凍結保存の前に、(エレクトロポレーションした配偶子の場合、最初に別の配偶子とまず融合させた後)より後期の胚、例えば初期または後期桑実胚、あるいは胚盤胞段階の胚まで発生させてもよい。
標準的技術を用いて、例えばガラス化または緩慢プログラム可能凍結(SPF)によって、凍結保存を行ってもよい。
特定の態様において、エレクトロポレーションに用いる移植前の胚、接合子、または配偶子は、in vitro受精(IVF)によって得られ、凍結保存から回収される。
本発明の別の側面は、本発明の方法のいずれか1つによって生成される、遺伝子改変動物(例えば哺乳動物)を提供する。
本発明を一般的に上述したが、以下のセクションは、組み合わせて、そして一般的な説明の背景で読まれるべきである、本発明の特定の側面に関するさらなる詳細を提供する。
本明細書記載の特定の態様のいずれか1つは、実施例セクションにのみ記載するものを含めて、本発明の任意の1またはそれより多い他の態様と組み合わせ可能であることが意図される。
2.エレクトロポレーションおよびエレクトロポレーター
エレクトロポレーションは、細胞膜上の各ポイントの局所膜内外電位差(transmembrane voltage)に依存する、動力学的現象である。所定のパルス期間および形状に関して、エレクトロポレーション現象の出現には、特定の膜内外電位差閾値が存在する(例えば0.5V〜1V)。これは、エレクトロポレーション電場規模(magnitude)の閾値の定義につながる(Eth)。E≧Ethの領域内にある細胞のみがエレクトロポレーションされる。第二の閾値(Eir)に到達するかまたはこれを超えると、エレクトロポレーションは細胞の生存性を損ない、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を生じる。
エレクトロポレーションは、疎水性二重層コアを受動的に通過して拡散しない可能性がある、大きな高荷電分子、例えばDNA、RNAまたはタンパク質の細胞誘導を可能にする。何らかの特定の理論によって束縛されることは望ましくないが、エレクトロポレーションの機構は、細胞膜中にnm規模の水が充填された穴の生成を伴うと考えられる。エレクトロポレーション中、膜中の脂質分子は化学的に改変されず、単に位置をシフトし、水が充填されているために二重層を通じて伝導経路として作用する孔を開放する。
エレクトロポレーションは、通常、いくつかの別個の期を持つ多段階プロセスである。まず、短い電気パルスを適用しなければならない。典型的なパラメータは、膜を渡る、300〜400mV、<1msであろう。細胞実験において用いる電位は、これらが長い距離に渡って大量の溶液に適用され、したがって実際の膜に渡って生じる電場は適用したバイアスのわずかな割合でしかないため、典型的にはより大きい。この電位の適用に際して、膜は、周囲の溶液からのイオンの移動を通じて、コンデンサーのように荷電する。臨界場が達成されたら、脂質形態に迅速な局所再編成が起こる。生じる構造は、電気的には伝導性でないが、伝導性の孔の生成を迅速に導くため、「プレ孔」と考えられる。こうしたプレ孔の存在に関する証拠は、大部分、孔の「ちらつき(flickering)」から来ており、これは、伝導状態および絶縁状態の間の遷移であることを示唆する。これらのプレ孔が小さい(〜3Å)疎水性欠損であることが示唆されてきている。この理論が正しければ、伝導状態への遷移は、孔の縁での再編成によって説明可能であり、ここで、脂質頭部が折りたたまれて、親水性界面が生成される。最後に、これらの伝導性の孔は、直って二重層を再密封するか、または拡大して最終的に破裂するかいずれかである可能性がある。生じる運命は、臨界欠損サイズを超えるかどうかに依存し、これは次いで、適用される場、局所機械ストレス、および二重層の縁のエネルギーに依存する。
本発明にしたがって、配偶子および移植前の胚のエレクトロポレーションは、細胞溶液中に電磁場を生成するアプライアンスである、商業的に入手可能なエレクトロポレーターを用いて実行可能である。エレクトロポレーターの例示的であるが限定しない商業的モデルには:BTX(カリフォルニア州サンディエゴ)のECMTM830 Square Wave Electroporator、または2001 Electro Cell Manipulator(ECM 2001)が含まれる。
典型的なセッティングにおいて、配偶子または移植前の胚の懸濁物を、側面に2つのアルミニウム電極を有する、ガラスまたはプラスチックキュベット内にピペッティングする。エレクトロポレーション前に、配偶子または移植前の胚を、配偶子または移植前の胚内に導入しようとする(生物学的)材料(例えばDNA、RNA、またはタンパク質、あるいはその混合物)と穏やかに混合する。混合物は、キュベット(例えば1mmまたは2mm幅キュベット)内にピペッティングする前に作製しても、またはキュベット中で作製しても、いずれでもよい。典型的には、全部でほぼ20μL体積の懸濁混合物を用いるが、10〜200μL、20〜100μL、25〜75μLの総体積もまた使用可能である。次いで、電位および電気容量を設定し(以下を参照されたい)、そしてキュベットをエレクトロポレーター内に挿入する。エレクトロポレーション直後、所定の量(例えば全キュベット内容と等体積、約20〜200μL、または約100μL)の、胚生存に最適な液体培地をキュベットに添加して、エレクトロポレーションした混合物を洗い流し、そして全内容物を適切な容器(例えば組織培養プレート)中に収集する。
エレクトロポレーションした配偶子または移植前の胚の生存、および培養でのまたは生産動物へのその発生は、エレクトロポレーション培地が生理学的溶液でない場合は、ある程度、その注意深い洗浄および除去に依存する。生理学的溶液は、胚発生に適した等張環境を提供するだけではなく、胚発生/生存を行うことが不可能であるいかなる潜在的に有害な物質も除去しうる。
配偶子または移植前の胚を、好ましくは洗浄後、偽妊娠雌にトランスファーするか、または最適な温度および/または大気条件(例えば37℃、5%CO2または5%O2/5%CO2/窒素)で必要な期間インキュベーションした後、発生中の胚、例えば3.5日胚盤胞段階の胚を代理母/偽妊娠雌にトランスファーして、満期まで発生させ、そして生存動物として出産させることも可能である。
ECM 830またはECM 2001モデルにおいて使用可能であるような典型的なエレクトロポレーション条件には:20〜30ボルト(例えば25、26、または27ボルト)、パルス期間1〜2ms(例えば1.5ms)、1〜3回パルス、パルス間隔100〜1000ms(例えば約125〜130ms)のセッティングを用いた、1mmエレクトロポレーションキュベット中でのエレクトロポレーションの実行が含まれうる。しかし、本明細書に開示する条件は例示目的のものであり、そしてこれに限定されないことが理解されなければならない。当業者は、例えば、導入しようとする分子のサイズおよび量、配偶子または胚のタイプなどに基づいて、パラメータを容易に調節可能である。
エレクトロポレーションは、商業的に入手可能なベンチトップエレクトロポレーター、例えばBTXのECM830またはECM2001モデル、およびNUCLEOFECTOR(登録商標)デバイス(Lonza Group Ltd)で実行可能である。いくつかの装置は、マルチウェル細胞培養プレートに適合する特別な電極アセンブリを備えて、同時に多数の試料をエレクトロポレーションする可能性を提供する。ベンチトップエレクトロポレーターは、また異なる操作パラメータを設定し、作業者が特定のパラメータ、例えば電場強度を調べるかまたは最適化することを可能にしうる。
3.哺乳動物
上述のように、異性配偶子融合を経る多細胞真核動物以外に、本発明の方法は、ヒト、非ヒト霊長類(例えばマーモセット、アカゲザル、チンパンジー)、齧歯類(例えばマウス、ラット、スナネズミ、モルモット、ハムスター、コットンラット、ハダカデバネズミ)、ウサギ、家畜哺乳動物(例えばヤギ、ヒツジ、ブタ、雌ウシ、ウシ、ウマ、ラクダ科)、ペット哺乳動物(例えばイヌ、ネコ)、動物園哺乳動物、有袋類、絶滅危惧哺乳動物、およびその非近交系または任意交配集団を含む、任意の哺乳動物に特に適している。
特定の態様において、哺乳動物は、マウス、例えば近交系マウスである。
例示的な近交系マウス系統には、限定なしに、近交系マウス系統C3H、例えばCBA、DBA、FVB、NOD、BALB/c、129、C57BL、およびC57BL/6J、C57BL/6NTac、C57BL/6NCrl、C57BL/10を含むC57BLマウス等が含まれる。
組換え近交系系統を含む他の近交系マウス系統には(限定なしに):129S1/SvImJ、129T2/SvEmsJ、129X1/SvJ、129P3/J、A/J、AKR/J、BALB/cBy、BALB/cByJ、BALB/c BALB/cJ、C3H/HeJ、C3H/HeOuJ、C3HeB/FeJ、C57BL/10J、C58、CBA/CaHN−Btkxid/J、CBA/J、DBA/1J、DBA/1LacJ、DBA/2J、FVB/NJ、MRL/MpJ、NOD/LtJ、SJL/J、SWR/J、NOR/LtJ、NZB/BlNJ、NZW/LacJ、RBF/DnJ、129S6/SvEvTac、AJTAC、BALB/cAnNTac、BALB/cJBomTac、BALB/cABomTac、C57BL/6NTac、C57BL/6JBomTac、C57BL/10SgAiTac、C3H/HeNTac、CBA/JBomTac、DBA/1JBomTac、DBA/2NTac、DBA/2JBomTac、FVB/NTac、NOD/MrkTac、NZM/AegTac、SJL/JcrNTac、BALB/cAnNCrlBR、C3H/HeNCrlBR、C57BL/6NCrlBR、DBA/2NCrlBR、FVB/NCrlBR、C.B−17/IcrCrlBR、129/SvPasIcoCrlBR、SJL/JorlIcoCrlBR、A/JolaHsd、BALB/cAnNHsd、C3H/HeNHsd、C57BL/10ScNHsd、C57BL/6NHsd、CBA/JCrHsd、DBA/2NHsd、FVB/NHsd、SAMP1/KaHsd、SAMP6/TaHsd、SAMP8/TaHsd、SAMP10/TaHsd、SJL/JCrHsd、AKR/OlaHsd、BiozziABH/RijHsd、C57BL/6JOlaHsd、FVB/NhanHsd、MRL/MpOlaHsd、NZB/OlaHsd、NZW/OlaHsd、SWR/OlaHsd、129P2/OlaHsd、and 129S2/SvHsd、B6.129P2−Apoetm1Unc/J、NOD.CB17−Prkdcscid/J、129S1/SvImJ、129X1/SvJ、B10.A−H2a H2−T18a/SgSnJ、B10.D2−Hc0 H2d H2−T18c/oSnJ、B10.D2−Hc1 H2d H2−T18c/nSnJ、B10.RIII−H2r H2−T18b/(71NS)SnJ、B6(C)−H2−Ab1bm12/KhEgJ、B6.129P2−Il10tm1Cgn/J、B6.129P2−Nos2tm1Lau/J、B6.129P2−Nos3tm1Unc/J、B6.129S2−Cd8atm1Mak/J、B6.129S2−Igh−6tm1Cgn/J、B6.129S7−Ifngtm1Ts/J、B6.129S7−Rag1tm1Mom/J、B6.CB17−Prkdcscid/SzJ、B6.MRL−Faslpr/J、B6.V−Lepob/J、BKS.Cg−m +/+ Leprdb/J、C3HeB/FeJ、C57BL/10J C57BL/10SnJ、C57BL/6−Tg(APOA1)1Rub/J、C57BL/6J−Tyrc−2J/J、CBA/CaHN−Btkxid/J、CBA/CaJ、CBySmn.CB17−Prkdcscid/J、FVB/N−Tg(MMTVneu)202Mul/J、KK.Cg−Ay/J、MRL/MpJ、MRL/MpJ−Faslpr/J、SJL/J、SWR/J、B10.PL−H2u H2−T18a/(73NS)SnJ、NONcNZO5/LtJ、WR、BPH/2、BPL/1、FS、P/J、P/A、およびPROが含まれる。
特定の態様において、マウスにはまた、すべての遺伝子操作(例えばトランスジェニック、ノックアウト、ノックイン、ノックダウン、レトロウイルス、ウイルス)または化学的誘導突然変異(例えば突然変異体のアーカイブもまた含むENU、EMS);放射線誘導突然変異;自発的突然変異/マウス系統上に維持される修飾、特に、例えば、類遺伝子性系統および組換え類遺伝子性系統を含む、C57BL/6、129、FVB、C3H、NOD、DBA/2、BALB/c、およびCD−1由来の突然変異体も含まれる。特定の例には:B6.129P2−Apoetm1Unc/J、B6.129S4−Pdyntm1Ute/J、B6;129P2−Pemttm1J/J、NOD.Cg Prkdcscid−B2mb/Dvs等が含まれる。
特定の態様において、マウスは、混合近交系系統を含む、2つの近交系系統の交配によって産生されるマウスハイブリッド系統である。例示的なハイブリッド系統には:NZBWF1/J、B6CBAF1/J、B6SJLF1/J、CB6F1/J、CByB6F1/J、PLSJLF1/J、WBB6F1/J−KitW/KitW−v、B6129PF1/J、CAF1/J、B6129PF2/J、B6129SF1/J、B6129SF2/J、B6AF1/J、B6C3F1/J、B6CBAF1/J、およびB6SJLF1/Jが含まれる。
任意のハイブリッド系統において、比率は、50:50 F1から99:1 F1まで多様でありうる。
特定の態様において、マウスは、非近交系マウス、例えばCD−1;ICR;ブラック・スイス;スイス・ウェブスター;NIHスイス;CF−1、およびヌードマウスである。
特定の態様において、ラットは近交系ラット、例えばACI、ブラウン・ノルウェイ(BN)、BCIX、コペンハーゲン(COP)、MWF、Dアグーチ(DA)、Goto−Kakizaki(GK)、Lewis、Fischer 344(F344)、Wistar Furth(WF)、Wistar Kyoto(WKY;WKYN1)、またはZDFである。
特定の態様において、ラットにはまた、すべての遺伝子操作(例えばトランスジェニック、ノックアウト、ノックイン、ノックダウン、レトロウイルス、ウイルス)または化学的誘導突然変異(例えば突然変異体のアーカイブもまた含むENU);放射線誘導突然変異;類遺伝子性系統を含む自発的突然変異/ラット系統上に維持される修飾も含まれる。特定の例には:F344/NTac−Tg(HLA−B27)−Tg(2M)33−3Trg;HsdAmc:TR−Abcc2;HsdHlr:ZUCKER−Leprfa;およびNIHヌードが含まれる。
特定の態様において、ラットは、2つの近交系系統を交配することによって産生されるラットハイブリッド系統である。例示的なハイブリッド系統には:BHR、FBNF1/Hsd、およびLBNF1/Hsdが含まれる。
特定の態様において、ラットは、非近交系ラット、例えば:Holtzman、Sprague Dawley、Long Evans、Wistar、Wistar Han、WH、WKY、Zucker、JCR(Russel Rat)、およびOFAである。
4.CRISPER/Cas、TALEN、ZFN、またはBuDを用いたゲノム修飾または編集
本明細書記載の発明は、関心対象の動物のゲノムを修飾するかまたは「編集」して、動物の修飾または編集されたゲノムが、生殖系列伝達を通じて伝えられうるように、強力なツールを提供する。
より具体的には、ゲノム修飾または編集を用いて、関心対象の動物(例えば哺乳動物)のゲノム配列を、例えば異種導入遺伝子を導入するかまたはターゲット内因性遺伝子の発現を阻害することによって、変化させることも可能である。こうした遺伝子改変動物を用いて、例えば、特定の遺伝子疾患または障害に対応する適切な動物モデルを確立することも可能である。こうした動物モデルを用いて、疾患機構、進行、予防、および治療(例えば薬剤スクリーニングおよび臨床前試験)を探究するかまたは研究することも可能である。
動物モデルにおいて示されうる例示的(限定されない)ヒト疾患または障害には:多様なタイプの癌、心臓疾患、高血圧、代謝およびホルモン障害、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、緑内障、皮膚色素沈着疾患、盲目、聴覚消失、神経変性障害(例えばハンチントン病またはアルツハイマー病)、精神性障害(不安および抑鬱を含む)、および先天性欠損(例えば口蓋裂および無脳症)が含まれる。
現在最も利用可能である動物モデルは、マウスにおいて作製され、そしてこれらは任意の特定のヒト疾患の側面をある程度再現するが、すべては再現しない可能性もある。マウスモデルを用いて模倣することが困難でありうる特定の疾患、例えば多くの神経変性疾患(その大部分が認知欠損を伴うもの)に関して、本発明の方法を用いて、非ヒト霊長類において、動物モデルを生成することも可能である。例えば、障害の特徴的な病理のある程度を、ヒトで生じるように複製したハンチントン病のトランスジェニックモデルが、最近、アカゲザルで開発された(Yangら、2008)。
任意の当該技術分野に認識される技術、例えばZFN/TALENまたはCRISPR技術を用いて、ゲノム編集を行ってもよい(その全テキストおよびすべての引用される参考文献が本明細書に援用される、Gajら, Trends in Biotech., 31(7):397−405(2013)を参照されたい)。こうした技術は、多様な範囲の細胞タイプおよび生物中の、実質的にいかなる遺伝子も操作することを可能にし、したがって、エラーが起こりやすい非相同端連結(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)を特定のゲノム位置で刺激する、DNA二本鎖(DSB)切断を誘導することによって、広い範囲の遺伝子修飾を可能にする。
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、非特異的DNA切断ドメインに連結されたプログラム可能配列特異的DNA結合モジュールで構成されるキメラヌクレアーゼである。これらは、ジンクフィンガーまたはTALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることによって生成される人工的な制限酵素(RE)である。ジンクフィンガー(ZF)または転写活性化因子様エフェクター(TALE)を、任意の所望のターゲットDNA配列に結合するように操作して、そしてREのDNA切断ドメインに融合させて、こうして、所望のターゲットDNA配列に特異的である、操作制限酵素(ZFNまたはTALEN)を生成することも可能である。ZFN/TALENを細胞、例えば移植前の胚の細胞(例えば接合子)内に導入した際、in situのゲノム編集に用いることも可能である。実際、ZFNおよびTALENの多用途性をヌクレアーゼ以外のエフェクタードメイン、例えば転写活性化因子および抑制因子、レコンビナーゼ、トランスポザーゼ、DNAおよびヒストンメチルトランスフェラーゼ、ならびにヒストンアセチルトランスフェラーゼに拡大して、ゲノム構造および機能に影響を及ぼすことも可能である。
Cys2−His2ジンクフィンガードメインは、真核生物で見られるDNA結合モチーフの最も一般的なタイプの1つであり、そしてヒトゲノムにおいて、二番目に最も頻繁にコードされるタンパク質ドメインに相当する。個々のジンクフィンガーは、保存されるββα立体配置中に約30アミノ酸を有する。特異的DNA認識のためのジンクフィンガータンパク質の適用に重要なのは、3より多いジンクフィンガードメインを含有する非天然アレイの開発であった。この進歩は、長さ9〜18bpのDNA配列を認識する合成ジンクフィンガータンパク質の構築を可能にする、非常に保存されたリンカー配列の構造に基づく発見によって容易になった。この設計は、複雑なゲノムにおいて、特異的な連続DNA配列を認識するジンクフィンガータンパク質を構築するための最適な戦略であることが立証されている。適切なジンクフィンガーは、モジュラー組み立てアプローチによって得られうる(例えば、巨大なコンビナトリアルライブラリーの選択によって、または合理的設計によって生成された、ジンクフィンガーモジュールのあらかじめ選択されたライブラリーを用いる)。64のありうるヌクレオチド3つ組のほぼすべてを認識するジンクフィンガードメインが開発されてきており、あらかじめ選択されたジンクフィンガーモジュールをタンデムに一緒に連結して、これらの一連のDNA3つ組を含有するDNA配列をターゲティングすることも可能である。あるいは、選択に基づくアプローチ、例えばオリゴマー化プール操作(OPEN)を用いて、隣接フィンガー間の背景依存性相互作用を考慮に入れて、ランダム化ライブラリーから新規ジンクフィンガーアレイを選択することも可能である。2つのアプローチの組み合わせもまた用いる。
操作ジンクフィンガーは、商業的に入手可能である。Sangamo Biosciences(米国カリフォルニア州リッチモンド)は、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)と協同で、ジンクフィンガー構築のための自社プラットホーム(CompoZr)を開発しており、このプラットホームは、研究者がジンクフィンガー構築および検証をまったくバイパスすることを可能にし、そして数千のタンパク質がすでに入手可能である。広く、ジンクフィンガータンパク質技術は、実質的に任意の配列をターゲティングすることを可能にする。
TALエフェクターは、植物病原性ザントモナス属(Xanthomonas)細菌によって分泌されるタンパク質であり、12番目および13番目のアミノ酸を例外として、反復される非常に保存された33〜34アミノ酸配列を含有するDNA結合ドメインを含む。これらの2つの位置は、非常に可変性であり(リピート可変2残基、またはRVD)そして特異的ヌクレオチド認識と強い相関を示す。アミノ酸配列およびDNA認識の間のこの単純な関係は、適切なRVDを含有するリピートセグメントの組み合わせを選択することによって、特異的DNA結合ドメインの操作を可能にしてきている。ジンクフィンガー同様、モジュラーTALEリピートを一緒に連結して、連続DNA配列を認識させる。多くのエフェクタードメインが、ターゲティング化遺伝子修飾のため、TALEリピートに融合させるために利用可能であり、これらには、ヌクレアーゼ、転写活性化因子、および部位特異的レコンビナーゼが含まれる。カスタムTALEアレイの迅速な組み立ては、「ゴールデンゲート」分子クローニング、ハイスループット固相組み立て、および連結独立性クローニング技術を含む戦略を用いることによって達成可能であり、これらの戦略はすべて、クローニングされた幹細胞のゲノム編集のため、本発明において使用可能である。
TALEリピートは、当該技術分野で利用可能な多くのツール、例えば18,740のヒトタンパク質コード遺伝子をターゲティングするTALENのライブラリー(Kimら, Nat. Biotechnol., 31:251−258(2013))を用いて容易に組み立て可能である。カスタム設計TALEアレイもまた、Cellectis Bioresearch(フランス・パリ)、Transposagen Biopharmaceuticals(米国ケンタッキー州レキシントン)、およびLife Technologies(米国ニューヨーク州グランドアイランド)を通じて商業的に入手可能である。
RE、例えばFokIエンドヌクレアーゼ(または切断特異性および/または切断活性を改善するように設計された突然変異を含むFokI切断ドメイン変異体、例えばSharkey)の末端からの非特異的DNA切断ドメインを用いて、酵母アッセイにおいて活性である(また植物細胞においておよび動物細胞においても活性である)ハイブリッドヌクレアーゼを構築してもよい。ZFN活性を改善するため、一過性低温培養条件を用いてヌクレアーゼ発現レベルを増加させることも可能であり;DNA末端プロセシング酵素を伴う部位特異的ヌクレアーゼの同時送達、ならびにZFNおよびTALEN修飾細胞の濃縮を可能にする蛍光代理レポーターベクターの使用もまた使用可能である。ZFN仲介性ゲノム編集の特異性はまた、ニック化DNAの導入が、エラーが起こりやすいNHEJ修復経路を活性化することなく、HDRを刺激するという発見を利用した、ジンクフィンガーニッカーゼ(ZFNickase)を用いることによって改良されうる。
アミノ酸配列およびTALE結合ドメインのDNA認識の間の単純な関係によって、タンパク質が設計可能となる。公的に入手可能なソフトウェアプログラム(DNA Works)を用いて、2工程PCRにおいて組み立てに適したオリゴヌクレオチドを計算することも可能である。操作TALE構築物を生成するための多くのモジュラー組み立てスキームもまた報告されてきており、そして当該技術分野に知られる。どちらの方法もジンクフィンガーDNA認識ドメインを生成するためのモジュラーアセンブリ法と概念的に類似である、DNA結合ドメインを操作するための合成アプローチを提供する。
TALEN遺伝子が組み立てられたら、当該技術分野に知られる任意の方法、例えばエレクトロポレーションまたは陽イオン性脂質に基づく試薬を用いたトランスフェクションを用いて、プラスミドベクター、多様なウイルスベクター、例えばアデノウイルス、AAV、およびインテグラーゼ欠損レンチウイルスベクター(IDLV)を用いて、ベクター上で、これらをターゲット細胞内に導入する。あるいは、TALENを、TALEN発現タンパク質のゲノム組込みの可能性を除去するmRNAとして細胞に送達してもよい。これはまた、相同組換え修復(HDR)のレベルおよび遺伝子編集中の遺伝子移入の成功も劇的に増加させうる。最後に、精製ZFN/TALENタンパク質の細胞内への直接送達もまた使用可能である。このアプローチは、挿入突然変異誘発のリスクを持たず、そして核酸からの発現に頼る送達系よりも、より少ないオフターゲット効果を導き、そしてしたがって、細胞、例えば本幹細胞において、正確なゲノム操作を必要とする研究のために最適に使用可能である。本明細書記載の態様のいずれにおいても、本発明のエレクトロポレーション法にしたがって、mRNAまたはタンパク質を配偶子および移植前の胚内に導入可能である。
TALENを用いて、細胞が修復機構で反応する、二本鎖切断(DSB)を導入することによって、ゲノムを編集可能である。非相同端連結(NHEJ)は、アニーリングのための配列重複をほとんどまたはまったく含まない、二本鎖切断のいずれかの側から、DNAを再連結する。PCRによって増幅された2つのアレル間のいかなる相違も検出する、単純なヘテロ二重鎖切断アッセイを行ってもよい。単純なアガロースゲルまたはスラブゲル系上で、切断産物を視覚化することも可能である。あるいは、DNAを、外因性二本鎖DNA断片の存在下で、NHEJを通じてゲノム内に導入してもよい。相同組換え修復もまた、トランスフェクションされた二本鎖配列を修復酵素のテンプレートとして用いる際に、DSBで外来DNAを導入可能である。TALENは、安定修飾ヒト胚性幹細胞および人工多能性幹細胞(iPSC)クローンを生成して、ノックアウト線虫(C. elegans)、ラットおよびゼブラフィッシュを生成するために用いられてきている。
ZFNおよびTALENは、疾患の根底にある原因を正し、したがって、正確なゲノム修飾で症状を永続的に取り除くことが可能である。例えば、ZFN誘導性HDRは、X連鎖重症複合免疫不全(SCID)、血友病B、鎌形細胞疾患、α1−アンチトリプシン欠損および多くの他の遺伝病に関連する遺伝子誘因突然変異を、欠損ターゲット遺伝子を修復することによるか、またはターゲット遺伝子をノックアウトするかいずれかによって、直接修正するために使用されてきている。さらに、これらの部位特異的ヌクレアーゼはまた、被験体配偶子または移植前の胚内で、ターゲット動物ゲノムにおける特定の「安全ハーバー」部位に、療法導入遺伝子を安全に挿入するためにも使用可能である。こうした技術を遺伝子療法で用いて、動物の所定のゲノムにおいて、特定の遺伝子欠損を「修正する」ことも可能である。
あるいは、CRISPR/Cas系を用いて、主題の配偶子および移植前の胚内にターゲット化遺伝子改変を効率的に誘導することも可能である。CRISPR/Cas(CRISPR関連)系または「クラスタード・レギュラリー・インタースペースド・ショート・パリンドロミック・リピーツ」は、多数の短い直列リピートを含有し、そして細菌および古細菌に対して獲得免疫を提供する遺伝子座である。CRISPR系は、侵入する外来DNAの配列特異的サイレンシングのためのcrRNAおよびtracrRNAに頼る。用語「tracrRNA」は、crRNAプロセシングを促進する非コードRNAであり、そしてCas9によるRNAガイド切断を活性化するために必要とされる、トランス活性化キメラRNAを表す。CRISPR RNAまたはcrRNAはtracrRNAと塩基対を形成して、Cas9エンドヌクレアーゼを切断のため相補的DNA部位にガイドする2−RNA構造を形成する。
3タイプのCRISPR/Cas系が存在する:II型系において、Cas9は、crRNA−tracrRNAターゲット認識の際にDNAを切断するRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼとして働く。細菌において、CRISPR系は、RNAガイドDNA切断を通じて、外来DNAへの侵入に対して獲得免疫を提供する。crRNAを再設計することによって、CRISPR/Cas系を再ターゲティング化して、実質的に任意のDNA配列を切断することも可能である。実際、CRISPR/Cas系は、Cas9エンドヌクレアーゼおよび必要なcrRNA構成要素を発現するプラスミドを同時送達することによって、ヒト細胞に対して直接移植可能(portable)であることが示されてきている。これらのプログラム可能RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼは、iPS細胞において、多重化遺伝子破壊能およびターゲット化組込みを示し、そしてしたがって、本方法において同様に使用可能である。
関連するCasタンパク質およびRNAガイド配列、ならびにそのコード配列(例えばCas9のmRNAまたはガイドRNAのコード配列)またはこうしたコード配列を含むベクターを含む、任意のCRISPR/Cas系を本発明の方法で使用してもよい。US 2014−0068797 A1および米国特許第8,697,359号に記載されるものを参照されたい(すべて本明細書に援用される)。
以下に続く説明において、RNAガイド配列はまた、「DNAターゲティングRNA」とも称され、ターゲティング配列を、修飾ポリペプチド(例えばCas9)とともに含み、ターゲットDNAの部位特異的修飾および/またはターゲットDNAと関連するポリペプチドを提供する。
以下に続く説明において、CRISPR/Cas系におけるタンパク質のCas9型はまた、「部位特異的修飾ポリペプチド」とも称される。
DNAターゲティングRNAは、関連ポリペプチド(例えば部位特異的修飾ポリペプチド)の活性をターゲットDNA内の特異的ターゲット配列に向ける。主題のDNAターゲティングRNAは:第一のセグメント(本明細書において、「DNAターゲティングセグメント」または「DNAターゲティング配列」とも称される)および第二のセグメント(本明細書において、「タンパク質結合セグメント」または「タンパク質結合配列」とも称される)を含む。
DNAターゲティングRNAのDNAターゲティングセグメントは、ターゲットDNA中の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。主題のDNAターゲティングRNAのDNAターゲティングセグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち塩基対形成)を通じて、配列特異的方式で、ターゲットDNAと相互作用する。こうしたものとして、DNAターゲティングセグメントのヌクレオチド配列は、多様であることが可能であり、そしてDNAターゲティングRNAおよびターゲットDNAが相互作用するであろうターゲットDNA内の位置を決定する。DNAターゲティングRNAのDNAターゲティングセグメントを修飾して(例えば遺伝子操作によって)、ターゲットDNA内の任意の望ましい配列にハイブリダイズさせることも可能である。
DNAターゲティングセグメントは、約12ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することも可能である。例えば、DNAターゲティングセグメントは、約12ヌクレオチド(nt)〜約80nt、約12nt〜約50nt、約12nt〜約40nt、約12nt〜約30nt、約12nt〜約25nt、約12nt〜約20nt、または約12nt〜約19ntの長さを有することも可能である。例えば、DNAターゲティングセグメントは、約19nt〜約20nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約19nt〜約70nt、約19nt〜約80nt、約19nt〜約90nt、約19nt〜約100nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、約20nt〜約60nt、約20nt〜約70nt、約20nt〜約80nt、約20nt〜約90nt、または約20nt〜約100ntの長さを有することも可能である。ターゲットDNAのヌクレオチド配列(ターゲット配列)に相補的であるDNAターゲティングセグメントのヌクレオチド配列(DNAターゲティング配列)は、少なくとも約12ntの長さを有することも可能である。例えば、ターゲットDNAのターゲット配列に相補的であるDNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列は、少なくとも約12nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35ntまたは少なくとも約40ntの長さを有することも可能である。例えば、ターゲットDNAのターゲット配列に相補的であるDNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列は、約12ヌクレオチド(nt)〜約80nt、約12nt〜約50nt、約12nt〜約45nt、約12nt〜約40nt、約12nt〜約35nt、約12nt〜約30nt、約12nt〜約25nt、約12nt〜約20nt、または約12nt〜約19nt、約19nt〜約20nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、または約20nt〜約60ntの長さを有することも可能である。ターゲットDNAのヌクレオチド配列(ターゲット配列)に相補的であるDNAターゲティングセグメントのヌクレオチド配列(DNAターゲティング配列)は、少なくとも約12ntの長さを有することも可能である。
いくつかの態様において、ターゲットDNAのターゲット配列に相補的であるDNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列は、長さ20ヌクレオチドである。いくつかの態様において、ターゲットDNAのターゲット配列に相補的であるDNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列は、長さ19ヌクレオチドである。
DNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列およびターゲットDNAのターゲット配列の間の相補性パーセントは、少なくとも60%(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)であることも可能である。いくつかの態様において、DNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列およびターゲットDNAのターゲット配列の間の相補性パーセントは、ターゲットDNAの相補鎖のターゲット配列の最も5’の7つの連続ヌクレオチドに渡って100%である。いくつかの態様において、DNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列およびターゲットDNAのターゲット配列の間の相補性パーセントは、約20連続ヌクレオチドに渡って少なくとも60%である。いくつかの態様において、DNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列およびターゲットDNAのターゲット配列の間の相補性パーセントは、ターゲットDNAの相補鎖のターゲット配列の最も5’の14の連続ヌクレオチドに渡って100%であり、そして残りに渡っては0%と同程度に低い。こうした態様において、DNAターゲティング配列は、長さ14ヌクレオチドであると見なされうる。いくつかの態様において、DNAターゲティングセグメントのDNAターゲティング配列およびターゲットDNAのターゲット配列の間の相補性パーセントは、ターゲットDNAの相補鎖のターゲット配列の最も5’の7つの連続ヌクレオチドに渡って100%であり、そして残りに渡っては0%と同程度に低い。こうした場合、DNAターゲティング配列は、長さ7ヌクレオチドと見なされうる。
主題のDNAターゲティングRNAのタンパク質結合セグメントは、部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する。主題のDNAターゲティングRNAは、上述のDNAターゲティングセグメントを通じて、結合したポリペプチドをターゲットDNA内の特異的ヌクレオチド配列にガイドする。主題のDNAターゲティングRNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的であるヌクレオチドの2つのストレッチを含む。タンパク質結合セグメントの相補的ヌクレオチドは、ハイブリダイズして、二本鎖RNA二重鎖(dsRNA)を形成する。
主題の二重分子DNAターゲティングRNAは、2つの別個のRNA分子を含む。主題の二重分子DNAターゲティングRNAの2つのRNA分子は、2つのRNA分子の相補的ヌクレオチドがハイブリダイズしてタンパク質結合セグメントの二重鎖RNA二重鎖を形成するように、各々、互いに相補的であるヌクレオチドストレッチを含む。
いくつかの態様において、活性化因子RNAの二重鎖形成セグメントは、活性化因子RNA(tracrRNA)分子の1つ(例えば本明細書に援用されるUS 2014−0068797 A1の配列番号431〜562に示されるものなど)、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%同一である。例えば、活性化因子RNAの二重鎖形成セグメント(または活性化因子RNAの二重鎖形成セグメントをコードするDNA)は、US 2014−0068797 A1の配列番号431〜562に示されるtracrRNA配列、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%同一、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、または100%同一である。
いくつかの態様において、ターゲッター(targeter)−RNAの二重鎖形成セグメントは、US 2014−0068797 A1(本明細書に援用される)の配列番号563〜679に示されるターゲッターRNA(crRNA)配列、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%同一である。例えば、ターゲッターRNAの二重鎖形成セグメント(またはターゲッターRNAの二重鎖形成セグメントをコードするDNA)は、US 2014−0068797 A1の配列番号563〜679に示されるcrRNA配列、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一または100%同一である。
二分子DNAターゲティングRNAを、活性化因子RNAとターゲッターRNAの制御された(例えば条件付き)結合を可能にするように設計することも可能である。二分子DNAターゲティングRNAは、活性化因子RNAおよびターゲッターRNAの両方がdCas9と機能する複合体において結合されない限り機能しないため、二分子DNAターゲティングRNAは、活性化因子RNAおよびターゲッターRNAの間の結合を誘導可能にすることによって誘導性(例えば薬剤誘導性)になりうる。1つの限定されない例として、RNAアプタマーを用いて、活性化因子RNAとターゲッターRNAの結合を制御(すなわち調節)することも可能である。したがって、活性化因子RNAおよび/またはターゲッターRNAは、RNAアプタマー配列を含んでもよい。
RNAアプタマーは当該技術分野に知られ、そして一般的にリボスイッチの合成型である。用語「RNAアプタマー」および「リボスイッチ」は、本明細書において、交換可能に用いられ、これらがその一部であるRNA分子の構造(そしてしたがって特異的配列の利用可能性)の誘導性の制御を提供する、合成および天然両方の核酸配列を含む。RNAアプタマーは、通常、特定の薬剤(例えば小分子)に特異的に結合する、特定の構造(例えばヘアピン)に折りたたまれる配列を含む。薬剤が結合すると、RNAのフォールディングに構造的変化が引き起こされ、これは、アプタマーがその一部である核酸の特徴を変化させる。限定されない例として:(i)アプタマーを伴う活性化因子RNAは、アプタマーが適切な薬剤に結合されない限り、同族(cognate)ターゲッターRNAに結合不能である可能性もあり;(ii)アプタマーを伴うターゲッターRNAは、アプタマーが適切な薬剤に結合されない限り、同族活性化因子RNAに結合不能である可能性もあり;そして(iii)各々、異なる薬剤に結合する異なるアプタマーを含む、ターゲッターRNAおよび活性化因子RNAは、両方の薬剤が存在しない限り、互いに結合不能である可能性もある。これらの例によって例示されるように、二分子DNAターゲティングRNAが誘導性であるように設計してもよい。
アプタマーおよびリボスイッチの例は、例えば:すべて本明細書にその全体が援用される、Nakamuraら, Genes Cells, 2012 May, 17(5):344−364; Vavalleら, Future Cardiol., 2012 May, 8(3):371−382; Citartanら, Biosens. Bioelectron., 2012 Apr. 15, 34(1):1−11;およびLibermanら, Wiley Interdiscip. Rev. RNA, 2012 May−June, 3(3):369−384に見出されうる。
二分子DNAターゲティングRNA中に含まれてもよいヌクレオチド配列の限定されない例には、US 2014−0068797 A1の配列番号431〜562に示される配列、またはUS 2014−0068797 A1の配列番号563〜679に示される任意の配列と対形成するその相補体、またはタンパク質結合セグメントを形成するようにハイブリダイズ可能なその相補体のいずれかが含まれる。
一分子DNAターゲティングRNAは、互いに相補的であり、介在ヌクレオチド(「リンカー」または「リンカーヌクレオチド」)によって共有結合され、そしてハイブリダイズしてタンパク質結合セグメントの二本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成し、したがって、ステム−ループ構造を生じる、ヌクレオチドの2つのストレッチ(ターゲッターRNAおよび活性化因子RNA)を含む。ターゲッターRNAおよび活性化因子RNAは、ターゲッターRNAの3’端および活性化因子RNAの5’端を通じて共有結合されていてもよい。あるいは、ターゲッターRNAおよび活性化因子RNAは、ターゲッターRNAの5’端および活性化因子RNAの3’端を通じて共有結合されていてもよい。
一分子DNAターゲティングRNAのリンカーは、約3ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することも可能である。例えば、リンカーは、約3ヌクレオチド(nt)〜約90nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約80nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約70nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約60nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約40nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約30nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約20ntまたは約3ヌクレオチド(nt)〜約10ntの長さを有することも可能である。例えば、リンカーは、約3nt〜約5nt、約5nt〜約10nt、約10nt〜約15nt、約15nt〜約20nt、約20nt〜約25nt、約25nt〜約30nt、約30nt〜約35nt、約35nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約100ntの長さを有することも可能である。いくつかの態様において、一分子DNAターゲティングRNAのリンカーは、4ntである。
例示的な一分子DNAターゲティングRNAは、ハイブリダイズしてdsRNA二重鎖を形成する、ヌクレオチドの2つの相補的なストレッチを含む。いくつかの態様において、一分子DNAターゲティングRNAのヌクレオチドの2つの相補的なストレッチ(または該ストレッチをコードするDNA)の1つは、US 2014−0068797 A1の配列番号431〜562に示される活性化因子RNA(tracrRNA配列)、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%同一である。例えば、一分子DNAターゲティングRNAのヌクレオチドの2つの相補的ストレッチ(または該ストレッチをコードするDNA)の1つは、US 2014−0068797 A1の配列番号431〜562に示されるtracrRNA配列、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一または100%同一である。
いくつかの態様において、一分子DNAターゲティングRNAのヌクレオチドの2つの相補的ストレッチ(または該ストレッチをコードするDNA)の1つは、US 2014−0068797 A1(本明細書に援用される)の配列番号563〜679に示されるターゲッターRNA(crRNA)配列、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%同一である。例えば、一分子DNAターゲティングRNAのヌクレオチドの2つの相補的ストレッチ(または該ストレッチをコードするDNA)の1つは、US 2014−0068797 A1の配列番号563〜679に示されるcrRNA配列、またはその相補体の1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一または100%同一である。
crRNAおよびtracrRNAの適切な天然存在同族対は、適切な同族対を決定する際に、種の名称および塩基対形成(タンパク質結合ドメインのdsRNA二重鎖に関して)を考慮に入れることによって、US 2014−0068797 A1の配列番号431〜679に関してルーチンに決定可能である。
一分子DNAターゲティングRNAおよび二重分子DNAターゲティングRNAの両方に関して、天然存在tracrRNAおよびcrRNAと非常にわずか(およそ50%同一性)しか共有しない人工的配列は、DNAターゲティングRNAのタンパク質結合ドメインの構造が保存されている限り、Cas9とともに機能して、ターゲットDNAを切断可能である。したがって、(二分子または一分子型のいずれでも)人工タンパク質結合ドメインを設計するために、DNAターゲティングRNAの天然存在タンパク質結合ドメインのRNAフォールディング構造を考慮に入れてもよい。限定されない例として、天然存在DNAターゲティングのタンパク質結合セグメントの構造に基づいて、機能する人工DNAターゲティングRNAを設計してもよい(例えばRNA二重鎖に沿って同じ数の塩基対を含み、そして天然存在RNA中に存在するものと同じ「バルジ」領域を含む)。任意の種由来の任意の天然存在crRNA:tracrRNA対(非常に多様な種由来のcrRNAおよびtracrRNA配列に関しては、US 2014−0068797 A1の配列番号431〜679を参照されたい)に関して、一般の当業者は容易に構造を産生可能であるため、所定の種由来のCas9(または関連Cas9)を用いる際には、その種に関する天然構造を模倣するように、人工的DNAターゲティングRNAを設計してもよい。したがって、適切なDNAターゲティングRNAは、天然存在DNAターゲティングRNAのタンパク質結合ドメインの構造を模倣するように設計されたタンパク質結合ドメインを含む、人工設計RNA(非天然存在)であってもよい(適切な同族対を決定する際、種の名前を考慮に入れて、US 2014−0068797 A1の配列番号431〜679を参照されたい)。
タンパク質結合セグメントは、約10ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することも可能である。例えば、タンパク質結合セグメントは、約15ヌクレオチド(nt)〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30ntまたは約15nt〜約25ntの長さを有することも可能である。
やはり一分子DNAターゲティングRNAおよび二重分子DNAターゲティングRNAの両方に関して、タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖は、約6塩基対(bp)〜約50bpの長さを有することも可能である。例えば、タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖は、約6bp〜約40bp、約6bp〜約30bp、約6bp〜約25bp、約6bp〜約20bp、約6bp〜約15bp、約8bp〜約40bp、約8bp〜約30bp、約8bp〜約25bp、約8bp〜約20bpまたは約8bp〜約15bpの長さを有することも可能である。例えば、タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖は、約8bp〜約10bp、約10bp〜約15bp、約15bp〜約18bp、約18bp〜約20bp、約20bp〜約25bp、約25bp〜約30bp、約30bp〜約35bp、約35bp〜約40bp、または約40bp〜約50bpの長さを有することも可能である。いくつかの態様において、タンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖は、36塩基対の長さを有する。ハイブリダイズしてタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パーセントは、少なくとも約60%であることも可能である。例えば、ハイブリダイズしてタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パーセントは、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%であることも可能である。いくつかの場合、ハイブリダイズしてタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パーセントは100%である。
DNAターゲティングRNAおよび部位特異的修飾ポリペプチドは複合体を形成する。DNAターゲティングRNAは、ターゲットDNAの配列に相補的であるヌクレオチド配列を含むことによって、複合体にターゲット特異性を提供する(上述の通り)。複合体の部位特異的修飾ポリペプチドは、部位特異的活性を提供する。言い換えると、部位特異的修飾ポリペプチドは、DNAターゲティングRNAの少なくともタンパク質結合セグメントとの会合によって、DNA配列(例えば染色体配列または染色体外配列、例えばエピソーム配列、小環状配列、ミトコンドリア配列、葉緑体配列等)にガイドされる。
部位特異的修飾ポリペプチドは、ターゲットDNA(例えばターゲットDNAの切断またはメチル化)および/またはターゲットDNAに会合するポリペプチド(例えばヒストンテールのメチル化またはアセチル化)を修飾する。部位特異的修飾ポリペプチドはまた、本明細書において、「部位特異的ポリペプチド」または「RNA結合部位特異的修飾ポリペプチド」と称される。
いくつかの態様において、部位特異的修飾ポリペプチドは、天然存在修飾ポリペプチドである。他の場合、部位特異的修飾ポリペプチドは、天然存在ポリペプチドではない(例えば以下に論じるようなキメラポリペプチド、または修飾されている、例えば突然変異、欠失、挿入されている天然存在ポリペプチド)。
例示的な天然存在部位特異的修飾ポリペプチドは、天然存在Cas9/Csn1エンドヌクレアーゼの限定されないそして包括的でないリストとして、US 2014−0068797 A1(本明細書に援用される)の配列番号1〜255に示される。これらの天然存在ポリペプチドは、本明細書に開示するように、DNAターゲティングRNAに結合し、それによって、ターゲットDNA内の特異的配列に導き、そしてターゲットDNAを切断して、二重鎖切断を生じる。
部位特異的修飾ポリペプチドは、2つの部分、RNA結合部分および活性部分を含む。いくつかの態様において、部位特異的修飾ポリペプチドは:(i)DNAターゲティングRNAと相互作用するRNA結合部分であって、DNAターゲティングRNAがターゲットDNA中の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む、前記RNA結合部分;および(ii)部位特異的酵素活性(例えばDNAメチル化のための活性、DNA切断のための活性、ヒストンアセチル化のための活性、ヒストンメチル化のための活性等)を示す活性部分であって、酵素活性部位がDNAターゲティングRNAによって決定される、前記活性部分を含む。
他の態様において、部位特異的修飾ポリペプチドは:(i)DNAターゲティングRNAと相互作用するRNA結合部分であって、DNAターゲティングRNAがターゲットDNA中の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む、前記RNA結合部分;および(ii)ターゲットDNA内の転写を調節する(例えば転写を増加させるかまたは減少させる)活性部分であって、ターゲットDNA内の調節される転写の部位が、DNAターゲティングRNAによって決定される、前記活性部分を含む。
いくつかの態様において、部位特異的修飾ポリペプチドは、ターゲットDNAを修飾する酵素活性(例えばヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミン化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン化活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、レコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリラーゼ活性またはグリコシラーゼ活性)を有する。
他の場合、主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、ターゲットDNAと関連するポリペプチド(例えばヒストン)を修飾する酵素活性(例えばメチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性)を有する。
例示的な部位特異的修飾ポリペプチドをさらに以下に提供する。
具体的には、いくつかの態様において、部位特異的修飾ポリペプチドは、US 2014−0068797 A1の図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に、あるいはUS 2014−0068797 A1の配列番号1〜256および795〜1346に示されるアミノ酸配列いずれかの対応する部分(すべて本明細書に援用される)に、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、核酸(例えばDNAターゲティングRNA)は、1またはそれより多い修飾、例えば塩基修飾、主鎖修飾等を含み、新規のまたは増進された特徴(例えば改善された安定性)を有する核酸を提供する。当該技術分野に知られるように、ヌクレオシドは塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環塩基である。こうした複素環塩基の2つの最も一般的なクラスはプリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドはヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドに関しては、リン酸基が、糖の2’、3’、または5’ヒドロキシル部分に連結されていることも可能である。オリゴヌクレオチドを形成する際、リン酸基は、互いに隣接するヌクレオシドに共有結合して、直鎖ポリマー性化合物を形成する。次に、この直鎖ポリマー性化合物のそれぞれの端がさらに連結されて、環状化合物を形成することも可能であるが、直鎖化合物が一般的には適切である。さらに、直鎖化合物は、内部ヌクレオチド塩基相補性を有してもよく、そしてしたがって、完全または部分的二本鎖化合物を産生する方式でフォールディングしていてもよい。オリゴヌクレオチド内で、リン酸基は、一般的に、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成すると称される。RNAおよびDNAの通常の連結または主鎖は、3’から5’のホスホジエステル連結である。
修飾を含有する適切な核酸の例には、修飾主鎖または非天然ヌクレオシド間連結を含有する核酸が含まれる。核酸(修飾主鎖を有するもの)には、主鎖中にリン原子を保持するものおよび主鎖中にリン原子を持たないものが含まれる。
中にリン原子を含有する適切な修飾オリゴヌクレオチド主鎖には、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、ホスホロジアミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、通常の3’−5’連結を有するセレノホスフェートおよびボラノホスフェート、これらの2’−5’連結類似体、ならびに1またはそれより多いヌクレオチド間連結が3’から3’、5’から5’または2’から2’連結である反転極性を有するものが含まれる。反転極性を有する適切なオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド間連結の最も3’で単一の3’から3’連結、すなわち塩基性であってもよい単一の反転ヌクレオシド残基を含む(核酸塩基は欠けているかまたはその代わりにヒドロキシル基を有する)。多様な塩(例えばカリウムまたはナトリウム)、混合塩および遊離酸型もまた含まれる。
いくつかの態様において、主題の核酸は、1またはそれより多いホスホロチオエートおよび/またはヘテロ原子ヌクレオシド間連結、特に、−CH2−NH−O−CH2−、−CH2−N(CH3)−O−CH2−(メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖)、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2−および−O−N(CH3)−CH2−CH2−(天然ホスホジエステルヌクレオチド間連結は−O−P(=O)(OH)−O−CH2−と示される)を含む。MMI型ヌクレオシド間連結は、上記に引用される米国特許第5,489,677号に開示される。適切なアミドヌクレオシド間連結は、米国特許第5,602,240号に開示される。どちらも本明細書に援用される。
やはり適切であるのは、例えば米国特許第5,034,506号(本明細書に援用される)に記載されるようなモルホリノ主鎖構造を有する核酸である。例えば、いくつかの態様において、主題の核酸は、リボース環の代わりに6員モルホリノ環を含む。これらの態様のいくつかにおいて、ホスホロジアミデートまたは他の非ホスホジエステルヌクレオシド間連結が、ホスホジエステル連結を置換する。
リン原子を含まない適切な修飾ポリヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間連結、あるいは1またはそれより多い短鎖ヘテロ原子または複素環ヌクレオシド間連結によって形成される主鎖を有する。これらには、モルホリノ連結(部分的にヌクレオシドの糖部分から形成される)を有するもの;シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;リボアセチル主鎖;アルキレン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合N、O、SおよびCH2構成要素部分を有する他のものが含まれる。
主題の核酸はまた、核酸模倣体であってもよい。用語「模倣体」は、ポリヌクレオチドに適用される際、フラノース環のみまたはフラノース環およびヌクレオチド間連結の両方が非フラノース基で置換されるポリヌクレオチドを含むよう意図され、フラノース環のみの置換はまた、当該技術分野において、糖代替物とも称される。複素環塩基部分または修飾複素環塩基部分は、適切なターゲット核酸とのハイブリダイゼーションのために維持される。こうした核酸の1つであり、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているポリヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物中の主鎖は、PNAにアミド含有主鎖を与える、2またはそれより多い連結アミノエチルグリシン単位である。複素環塩基部分は、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合する。PNA化合物の調製を記載する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが:米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号が含まれる。すべて本明細書に援用される。
研究されてきている別のクラスのポリヌクレオチド模倣体は、モルホリノ環に付着した複素環塩基を有する連結モルホリノ単位に基づく(モルホリノ核酸)。モルホリノ核酸中のモルホリノ単量体単位を連結する、いくつかの連結基が報告されてきている。非イオン性オリゴマー化合物を生じるために、連結基の1つのクラスが選択されてきている。非イオン性モルホリノに基づくオリゴマー化合物が、細胞タンパク質と望ましくない相互作用を有する可能性はより低い。モルホリノに基づくポリヌクレオチドは、細胞タンパク質と望ましくない相互作用を形成する可能性がより低い、オリゴヌクレオチドの非イオン性模倣体である(Dwaine A. BraaschおよびDavid R. Corey, Biochemistry, 41(14):4503−4510(2002))。モルホリノに基づくポリヌクレオチドは、米国特許第5,034,506号(本明細書に援用される)に開示される。単量体サブユニットを連結する多様な異なる連結基を有する、ポリヌクレオチドのモルホリノクラス内の多様な化合物が調製されてきている。
ポリヌクレオチド模倣体のさらなるクラスは、シクロヘキセニル核酸(CeNA)と称される。DNA/RNA分子中に通常存在するフラノース環は、シクロヘキセニル環で置換される。古典的ホスホラミダイト化学反応にしたがった、オリゴマー化合物合成のために、CeNA DMTに保護されたホスホラミダイト単量体が調製され、そして用いられてきている。完全修飾CeNAオリゴマー化合物およびCeNAで修飾された特定の位を有するオリゴヌクレオチドが調製され、そして研究されてきている(本明細書に援用されるWangら, J. Am. Chem. Soc., 122:8595−8602(2000)を参照されたい)。一般的に、CeNA単量体のDNA鎖への取り込みは、DNA/RNAハイブリッドの安定性を増加させる。CeNAオリゴアデニレートは、天然複合体と類似の安定性を持つ、RNAおよびDNA相補体との複合体を形成した。天然核酸構造内にCeNA構造を取り込む研究は、容易なコンホメーション適応を進めるため、NMRおよび円二色性によって示された。
さらなる修飾には、2’−ヒドロキシル基が糖環の4’炭素原子に連結されて、それによって2’−C、4’−C−オキシメチレン連結を形成し、それによって二環糖部分を形成する、ロック化核酸(LNA)が含まれる。連結は、2’酸素原子および4’炭素原子を架橋するメチレン(−CH2−)基であってもよく、式中、nは1または2である(Singhら, Chem. Commun., 4:455−456(1998))。LNAおよびLNA類似体は、相補的DNAおよびRNAと、非常に高い二重鎖熱安定性(Tm=+3〜+10°C)、3’−エキソヌクレアーゼ分解に対する安定性、および優れた可溶性特性を有する。LNAを含有する強力でそして非毒性のアンチセンスオリゴヌクレオチドが記載されてきている(本明細書に援用されるWahlestedtら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97:5633−5638(2000))。
LNA単量体、アデニン、シトシン、グアニン、5−メチル−シトシン、チミンおよびウラシルの合成および調製とともに、そのオリゴマー化、および核酸認識特性が記載されてきている(本明細書に援用されるKoshkinら, Tetrahedron, 54:3607−3630(1998))。LNAおよびその調製はまた、どちらも本明細書に援用される、WO 98/39352およびWO 99/14226にも記載される。
核酸にはまた、1またはそれより多い置換糖部分も含まれうる。適切なポリヌクレオチドは:OH;F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−またはN−アルキニル;あるいはO−アルキル−O−アルキルより選択される糖置換基を含み、式中、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換C1−10アルキルまたはC2−10アルケニルおよびアルキニルであってもよい。特に適切であるのは、O((CH2)nO)mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON((CH2)nCH3)2であり、式中、nおよびmは1〜約10である。他の適切なポリヌクレオチドは:C1−10低次アルキル、置換低次アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入剤、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基より選択される糖置換基を含む。適切な修飾には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られる)(Martinら, Helv. Chim. Acta, 78:486−504(1995))、すなわちアルコキシアルコキシ基が含まれる。さらに適切な修飾には、以下の実施例にも記載するような、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち2’−DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基が含まれ、2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において、2’−O−ジメチル−アミノ−エトキシ−エチルまたは2’−DMAEOEとしても知られる)、すなわち2’−O−CH2−O−CH2−N(CH3)2が含まれる。
他の適切な糖置換基には、メトキシ(−O−CH3)、アミノプロポキシ(−OCH2CH2CH2NH2)、アリル(−CH2−CH=CH2)、−O−アリル(−O−CH2CH=CH2)およびフルオロ(F)が含まれる。2’−糖置換基は、アラビノ(上)位またはリボ(下)位にあってもよい。適切な2’−アラビノ修飾は2’−Fである。類似の修飾もまた、オリゴマー化合物上の他の位で作製してもよく、特に、3’末端ヌクレオシド上または2’−5’連結オリゴヌクレオチド中の糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位であってもよい。オリゴマー化合物はまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有してもよい。
主題の核酸にはまた、核酸塩基(当該技術分野において、しばしば単に「塩基」と称される)修飾または置換も含まれてもよい。本明細書において、「非修飾」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、他の合成および天然核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニル(−C=C−CH3)ウラシルおよびシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが含まれる。さらなる修飾核酸塩基には、三環ピリミジン、例えばフェノキサジンシチジン(1H−ピリミド(5,4−b)(1,4)ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド(5,4−b)(1,4)ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G−クランプ、例えば置換フェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド(5,4−(b)(1,4)ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド(4,5−b)インドル−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド(3’,’:4,5)ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)が含まれる。
複素環塩基部分には、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環、例えば、7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンおよび2−ピリドンで置換されているものもまた含まれてもよい。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号(本明細書に援用される)に開示されるもの、The Concise Encyclopedia of polymer Science and Engineering, 858−859ページ, Kroschwitz, J. I.監修, John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの;Englischら, Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30:613に開示されるもの;ならびにSanghvi, Y. S., 第15章, Antisense Research and Applications, 289−302ページ, Crooke, S. T.およびLebleu, B.監修, CRC Press, 1993に開示されるものが含まれる。これらの核酸塩基の特定のものは、オリゴマー化合物の結合アフィニティを増加させるために有用である。これらには、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む、5置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびにN−2、N−6およびO−6置換プリンが含まれる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されてきており(Sanghviら監修, Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276−278)、そして例えば2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせた際に、適切な塩基置換である。
主題の核酸の別のありうる修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを増進させる、ポリヌクレオチドへの、1またはそれより多い部分またはコンジュゲートの化学的連結を含む。これらの部分またはコンジュゲートには、一次または二次ヒドロキシル基などの官能基に共有結合したコンジュゲート基が含まれうる。コンジュゲート基には、限定されるわけではないが、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増進させる基、およびオリゴマーの薬物動態学的特性を増進させる基が含まれる。適切なコンジュゲート基には、限定されるわけではないが、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素が含まれる。薬力学的特性を増進させる基には、取り込みを改善する基、分解に対する耐性を増進させる基、および/またはターゲット核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が含まれる。薬物動態学的特性を増進させる基には、主題の核酸の取り込み、分布、代謝または排出を改善する基が含まれる。
コンジュゲート部分には、限定されるわけではないが、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553−6556(1989));コール酸(Manoharanら, Bioorg. Med. Chem. Let., 4:1053−1060(1994));チオエーテル、例えばヘキシル−5−トリチルチオール(Manoharanら, Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:306−309(1992));Manoharanら, Bioorg. Med. Chem. Let., 3:2765−2770(1993));チオコレステロール(Oberhauserら, Nucl. Acids Res., 20:533−538(1992));脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoarasら, EMBO J., 10:1111−1118(1991));Kabanovら, FEBS Lett., 259:327−330(1990));Svinarchukら, Biochimie, 75:49−54(1993));リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharanら, Tetrahedron Lett., 36:3651−3654(1995));Sheaら, Nucl. Acids Res., 18:3777−3783(1990));ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら, Nucleosides & Nucleotides, 14:969−973(1995));またはアダマンタン酢酸(Manoharanら, Tetrahedron Lett., 36:3651−3654(1995));パルミトイル部分(Mishraら, Biochim. Biophys. Acta, 1264:229−237(1995));あるいはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crookeら, J. Pharmacol. Exp. Ther., 277:923−937(1996))が含まれ;これらの文献はすべて本明細書に援用される。
コンジュゲートには、「タンパク質形質導入ドメイン」またはPTD(CPP−細胞浸透ペプチドとしても知られる)が含まれてもよく、該ドメインは、脂質二重層、ミセル、細胞膜、細胞内小器官膜、または小胞膜を横断することを促進する、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、あるいは有機または無機化合物を指すことも可能である。別の分子に付着するPTDは、小さい極性分子から大きな巨大分子および/またはナノ粒子に渡る可能性もあり、分子が膜を横断し、例えば細胞外空間から細胞内空間、または細胞質ゾルから細胞内小器官内に移動することを促進する。いくつかの態様において、PTDは、外因性ポリペプチド(例えば部位特異的修飾ポリペプチド)のアミノ末端に共有結合する。いくつかの態様において、PTDは、外因性ポリペプチド(例えば部位特異的修飾ポリペプチド)のカルボキシル末端に共有結合する。いくつかの態様において、PTDは、核酸(例えばDNAターゲティングRNA、DNAターゲティングRNAをコードするポリヌクレオチド、部位特異的修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド等)に共有結合する。例示的なPTDには、限定されるわけではないが、最小ウンデカペプチドタンパク質形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRRを含むHIV−1 TATの残基47〜57に対応する);細胞内への進入を導くために十分な数のアルギニンを含むポリアルギニン残基(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、または10〜50アルギニン);VP22ドメイン(Zenderら, Cancer Gene Ther., 9(6):489−496(2002));ショウジョウバエ属(Drosophila)アンテナペディアタンパク質形質導入ドメイン(Noguchiら, Diabetes, 52(7):1732−1737(2003));一部切除ヒト・カルシトニンペプチド(Trehinら, Pharm. Research, 21:1248−1256(2004));ポリリジン(Wenderら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:13003−13008(2000));RRQRRTSKLMKR;トランスポータンGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL;KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA;およびRQIKIWFQNRRMKWKKが含まれる。例示的なPTDには、限定されるわけではないが、YGRKKRRQRRR、RKKRRQRRR;3アルギニン残基から50アルギニン残基のアルギニンホモポリマーが含まれる。例示的なPTDドメインアミノ酸配列には、限定されるわけではないが、以下のいずれかが含まれる:YGRKKRRQRRR;RKKRRQRR;YARAAARQARA;THRLPRRRRRR;およびGGRRARRRRRR。いくつかの態様において、PTDは活性化可能CPP(ACPP)である(Aguileraら, Integr. Biol. (Camb), 1(5−6):371−381(June, 2009))。ACPPは、純電荷をほぼゼロにまで減少させ、そしてそれによって細胞への接着および取り込みを阻害する、マッチポリアニオン(例えばGlu9または「E9」)に切断可能リンカーを通じて連結された、ポリカチオンCPP(例えばArg9または「R9」)を含む。リンカーの切断に際して、ポリアニオンが放出されて、ポリアルギニンおよびその生得的な接着性がアンマスクされ、したがって、ACCPを「活性化」して膜を横断する。
例示的なDNAターゲティングRNAを以下にさらに記載する:
いくつかの態様において、適切なDNAターゲティングRNAは、2つの別個のRNAポリヌクレオチド分子を含む。2つの別個のRNAポリヌクレオチド分子の第一のもの(活性化因子RNA)は、配列番号431〜562に示されるヌクレオチド配列またはその相補体のいずれか1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%ヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。2つの別個のRNAポリヌクレオチド分子の第二のもの(ターゲッターRNA)は、US 2014−0068797の配列番号563〜679に示されるヌクレオチド配列またはその相補体のいずれか1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%ヌクレオチド配列同一性を示す。
いくつかの態様において、適切なDNAターゲティングRNAは、単一RNAポリヌクレオチドであり、そしてUS 2014−0068797の配列番号431〜562に示されるヌクレオチド配列のいずれか1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%ヌクレオチド配列同一性を有する第一のヌクレオチド配列、およびUS 2014−0068797の配列番号463〜679に示されるヌクレオチド配列のいずれか1つに、少なくとも8つの連続ヌクレオチドのストレッチに渡って、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%ヌクレオチド配列同一性を有する第二のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの態様において、DNAターゲティングRNAは、二重分子DNAターゲティングRNAであり、そしてターゲッターRNAは、その5’端でターゲットDNAに相補的なヌクレオチドのストレッチに連結した配列5’GUUUUAGAGCUA−3’を含む。いくつかの態様において、DNAターゲティングRNAは、二重分子DNAターゲティングRNAであり、そして活性化因子RNAは、配列5’UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCG−3’を含む。
いくつかの態様において、DNAターゲティングRNAは、単一分子DNAターゲティングRNAであり、そしてその5’端でターゲットDNAに相補的なヌクレオチドのストレッチに連結した配列5’−GUUUUAGAGCUA−リンカー−UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCG−3’を含む(ここで「リンカー」は、任意のヌクレオチド配列を含みうる任意のリンカーヌクレオチド配列を示す)。他の例示的な単一分子DNAターゲティングRNAには、US 2014−0068797(本明細書に援用される)の配列番号680〜682に示されるものが含まれる。
特定の態様において、配偶子または移植前の胚において、機能するCRISPR/Cas系を提供するには、DNAターゲティングRNAまたはガイド配列が、関心対象の動物、例えばマウスまたはラットから得られる配偶子または移植前の胚内に導入されればよいように、部位特異的修飾ポリペプチド(例えばCas9)が、恒常的にまたは条件的に(例えば組織または細胞タイプ特異的にまたは誘導性に)こうした動物における導入遺伝子として発現されてもよい。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、または粒子仲介送達法によって送達されるガイドRNAを用いて、ニューロン、免疫細胞、および内皮細胞における成功したゲノム編集を示す、Plattら, RISPR−Cas9 Knockin Mice for Genome Editing and Cancer Modeling, Cell http://dx dot doi dot org slash 10.1016 slash j dot cell dot 2014.09.014(本明細書に援用される)を参照されたい。導入遺伝子のCas9タイプは、例えば遍在性のプロモーター(例えばCAGプロモーター)によって駆動可能であり、そしてCre−loxP系(例えば細胞タイプまたは組織特異的Creドライバー)あるいは当該技術分野に周知のその同等物または変異体を用いることによって誘導性になりうる。
特定の態様において、Cas9発現動物は繁殖性であり、正常な同腹仔サイズを有し、形態学的異常を提示せず、そして/またはホモ接合体に繁殖可能である。
本発明の高効率ハイスループットエレクトロポレーション法と組み合わせて、こうした部位特異的修飾ポリペプチド発現動物(例えばマウスまたはラット)をin vivoハイスループット遺伝子スクリーンに用いて、例えば腫瘍抑制、幹細胞再生、ウイルス複製の宿主決定要因、および発癌性増殖の制御因子など多くの重要な生物学的プロセスのいずれかに関与する遺伝子を同定することも可能であるし、そしてこれをゲノム規模のまたはターゲティング化sgRNAライブラリーと直接組み合わせて、新規生物学を明らかにすることも可能である。
本明細書に記載する実施例は、例示目的のみのためのものであり、そして限定されない。しかし、実施例に記載する条件は、一般的な適用可能性を有し、そして本明細書に記載する発明の任意の1またはそれより多い他の態様と組み合わせうると意図される、記載する発明の特定の態様を構成することも可能である。
遺伝子修飾マウスは、遺伝子機能およびヒト疾患を研究するための重要なモデルとして働き、そして主に、慣用的な遺伝子ターゲティングまたは導入遺伝子技術を用いて生成されてきている。典型的な慣用的遺伝子ターゲティング実験において、所望の遺伝子修飾をまず、相同組換えを通じて、マウス胚性幹(ES)細胞内に導入し、そして意図される突然変異を所持するクローン性に得られたES細胞クローンを単離する(Capecchi、2005)。続いて、ターゲティング化ES細胞を野生型胚盤胞内に注入する。ターゲティング化ES細胞のいくつかは、生じるキメラ動物の生殖系列に寄与し、したがって、ターゲティング化遺伝子修飾を含有するマウスが生成される(Capecchi、2005)。
有効ではあるが、遺伝子ターゲティングはコストが掛かりそして時間が掛かり、そして生殖系列適格性ES細胞株の入手可能性および性能に非常に依存する。
生殖系列適格性ES細胞株の必要性を回避するため、特異的遺伝子破壊を含む動物を生成するために、一細胞胚内に直接注入可能なジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(Urnovら、2010)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)(BogdanoveおよびVoytas、2011)を含む、部位特異的DNAエンドヌクレアーゼを用いた代替方法論が開発されてきている(Carberyら、2010;Geurtsら、2009;Sungら、2013;Tessonら、2011)。二本鎖切断部位(DSB)に隣接する相同性を含む一本鎖DNA(ssDNA)またはプラスミドが提供される場合、相同組換え(HR)によって、ゲノム内に、定義される修飾を導入することも可能である(Brownら、2013;Cuiら、2011;Meyerら、2010)。
最近、RNAがガイドするクラスタード・レギュラリー・インタースペースド・ショート・パリンドロミック・リピーツ(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ系(Hsuら、2014)を用いて、単一および多数の遺伝子において突然変異を所持するマウス、ならびにレポーターおよび条件付アレルを所持するマウスを、一工程で生成するための方法(Wangら、2013;Yangら、2013)が確立されてきている。
類似のアプローチを用いて、遺伝子改変動物が多様な種から生成されてきている(Changら、2013;Haiら、2014;Hwangら、2013;Liら、2013a;Liら、2013b;Niuら、2014)。トランスジェニックマウスを生成する伝統的なアプローチと同様、これらの研究はすべて、一細胞接合子内にヌクレアーゼ構成要素を送達するために、マイクロインジェクションを使用する。
本明細書記載の方法論は、生物学的/遺伝子材料、例えばCRISPR/Cas系を哺乳動物(例えばマウス)接合子に送達するためにエレクトロポレーションを使用し、そしてターゲティング化遺伝子修飾を所持する生存トランスジェニック動物(例えばマウス)を生成することに成功している。
実施例1 マウス接合子および推定上の接合子への、レポーターコードポリヌクレオチドのエレクトロポレーション
本実験は、マウス接合子または推定上の接合子(省略して「接合子」)にレポーター遺伝子コードプラスミドをエレクトロポレーションした結果を記載する。
遍在性の発現を支持するCMVプロモーターおよびSV40ポリアデニル化シグナルを所持するpMAXGFPベクター(Lonza、米国)を本実験のために選択した。B6D2F2マウス胚を収集し、そして酸性タイロード溶液(AT)(P/N T1788、Sigma Aldrich)で5秒間処理し、KOSMaa/BSA(P/N Zeks−050、Zenith Biotech)で2回洗浄し、そして25μLのOpti−MEM(P/N 31985、Life Technologies)内に入れた。次いで、25μL中の胚を等体積(25μL)のTE緩衝液(10mM Tris、0.1mM EDTA、pH7.5)中の80ng/μLのpMAXGFPと混合して、最終DNA濃度を約40ng/μLとし、そして混合物を1mmエレクトロポレーションキュベット内に装填し、そして:30ボルト、パルス期間1ms、2回パルス、パルス間隔100ms(ECM830、BTX)のセッティングを用いてエレクトロポレーションした。
エレクトロポレーション後、胚を100μLのあらかじめ平衡化したKOSMaa/BSAで回復させ、そして続いて組織培養インキュベーター(37℃、5%CO2)中で3.5日間培養した。培養3.5日後、胚を、GFP発現に関して、蛍光顕微鏡下で観察した。調べた3つの胚では、蛍光は観察されなかった(実験1)。
透明帯層は、接合子内へのプラスミド進入に対して物理的バリアを提示しうるため、実験2および3において、出願者は、透明帯に穴を空けることによって、透明帯を除去することによって、またはAT中で胚を10秒間処理することによって、透明帯層を弱めるかまたは破壊することを試みる一方、同時に、pMAXGFPの濃度を20ng/μLから40ng/μL、100ng/μLに変化させた。再び、調べた胚の中では蛍光はまったく観察されなかった。
6−フルオレセインアミダイト(6−FAM)(40、100、および500ng/μL)、Turbo GFP mRNA(40ng/μL)、eGFP mRNA(25ng/μL)またはmCherry mRNA(40および100ng/μL)で標識したオリゴヌクレオチドを含む他のレポーター系において、調べた胚の中では蛍光は観察されなかった(実験4、5、および6)。GFPシグナルを持つ唯一の胚が1つの場合で観察されたが、胚は死亡しているかまたは発生が遅れていた。
実施例2 マウス接合子および推定上の接合子への、CRISPR/Cas系のエレクトロポレーション
本実験は、CRISPR/Cas仲介ターゲティング化遺伝子破壊のための、本発明の方法を用いた、CRISPR/Cas系のマウス接合子または推定上の接合子(省略して「接合子」)への送達を示す。
この目的のため、Tet1エクソン4およびTet2エクソン3をターゲットとして選択し、先に記載されたガイドRNAを用いた(本明細書に援用されるWangら、2013)。Tet1およびTet2系の好適さは、Sac1(Tet1)またはEcoRV(Tet2)制限部位がPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)近位配列と重複することである。こうしたものとして、制限断片長多型(RFLP)分析を用い、ターゲット部位を含む胚から増幅されるPCR産物を用いて、突然変異体アレルを検出することも可能である(Wangら、2013)。
実験6において、マウスB6D2F2接合子をまず、ATで10秒間処理し、Cas9 mRNA/Tet1 sgRNAと40/20ng/μLまたは100/50ng/μLで混合し、そして記載するようにエレクトロポレーションした。次いで、胚が胚盤胞に発生するまで、3.5日間培養した。次いで、全ゲノム増幅およびPCR分析のため、胚を採取した。
Sac1制限酵素を用いて、ターゲット部位を含むPCR産物をRFLPによって分析した。Cas9 mRNA(40ng/μL)およびTet1 sgRNA(20ng/μL)の混合物を用いた場合、エレクトロポレーションした接合子から発生させた胚に突然変異は検出されなかった。Cas9 mRNA(100ng/μL)およびTet1 sgRNA(50ng/μL)の混合物を用いた場合、16のAT処理胚のうちの3つ、そしてAT処理を行わなかった16の胚のうち1つが、RFLP分析に基づいて、Tet1遺伝子座で突然変異体アレルを所持することが見出された(図1A)。突然変異を、サンガー配列決定によってさらに確認した(図1A)。
次に、実験7において、さらにより高い濃度のCas9 mRNA(400ng/μL)+Tet2 sgRNA(200ng/μL)をマウス接合子内にエレクトロポレーションし、そして9つのAT処理胚のうち4つが、Tet2遺伝子座に二重アレル突然変異を所持することが見出された(図1B)。
したがって、Tet1およびTet2遺伝子はどちらも、エレクトロポレーションが送達するCRISPR/Cas系(例えばCas9 mRNA+sgRNA)を用いて、マウス接合子において、効率的にターゲティング可能である。
その一方、異なるプラスミド濃度、すなわち200ng/μL、400ng/μL、および800ng/μLプラスミドDNAを用いて、CRISPR/Casコードプラスミド(Cas mRNAおよびガイドRNAの形でCRISPR試薬の送達に対する代替物として)のエレクトロポレーションを試みた。200ng/μL群において、スクリーニングした総数12のうち、1つの突然変異体胚が同定された。したがって、接合子内へのDNAのエレクトロポレーションもまた達成可能であるが、CRISPR/Cas系の場合、mRNA/ガイドRNAの組み合わせは、DNAよりもより効率的であるようであった。
本実験およびCRISPR/Cas系を用いた他の実験において、以下の方法を用いて、Cas9 mRNAおよびsgRNAを産生した。
簡潔には、野生型Cas9遺伝子(Congら、2013)を所持するpx330プラスミドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、Cas9コード配列の増幅のためのDNAテンプレートとして働いた。順方向プライマーにT7プロモーター配列を付加し、そしてCas9野生型遺伝子のコード配列に隣接する逆方向プライマーと対形成させた。Qiagenカラム(Qiagen)を用いて、PCR産物を精製し、そしてmMESSAGE mMACHINE T7 ULTRA転写キット(Life Technologies)を用いて、in vitro転写(IVT)を行った。sgRNA合成のため、T7プロモーター配列をsgRNAテンプレート/順方向プライマーに付加し、そしてIVTテンプレートをPCR増幅によって生成した。T7−sgRNA PCR産物をカラム精製し、そしてMEGAshortscript T7キット(Life Technologies)を用いて、IVTのためのテンプレートとして用いた。Cas9 mRNAおよびsgRNAの両方をMEGAclearキット(Life Technologies)を用いて精製し、そしてキットとともに提供される溶出緩衝液で溶出させた。IVT反応からのアリコットをアガロースゲル上で分離して、反応からの品質を評価した。
Surveyorアッセイを、記載されるように行った(Guschinら、2010)。マウスまたは胚由来のゲノムDNAを抽出し、そして以下の条件下で、遺伝子特異的プライマーを用いてPCRを行った:95℃5分間;35x(95℃30s、60℃30s、68℃40s);68℃2分間;4℃で保持。次いで、PCR産物を変性させ、アニーリングし、Surveyorヌクレアーゼ(Transgenomic)で処理した。次いで、産物を10%アクリルアミドCriterion TBEゲル(BioRad)上で分離し、エチジウムブロミドで染色し、そして視覚化した。RFLP分析のため、10μlのTet1またはTet2 PCR産物を、Sac1(Tet1)またはEcoRV(Tet2)で消化し、そしてGelRed(Biotium)染色アガロースゲル(2%)上で分離した。配列決定のため、PCR産物を直接配列決定するか、またはTopoクローニングキット(Invitrogen)内にクローニングし、そして個々のクローンをサンガー配列決定によって配列決定した。
実施例3 エレクトロポレーションしたマウス接合子の発生
接合子のin vitro培養および分析は、遺伝子編集技術に関連する多数のパラメータが、迅速なターンアラウンド時間でそして好ましくはより低い操作費用で試験および分析可能であることに基づいて、重要なアプローチである。しかし、慣用的なin vitro培養系を用いてエレクトロポレーションした接合子を培養した際、続く胚発生は、遅延するかまたは中止されるようであった。しばしば、例えば50/25ng/μLから1000/500ng/μLまでの多様な濃度範囲での、Cas9 mRNA/sgRNAのエレクトロポレーション後、胚は、3.5日間の培養期間終了時に、一細胞、二細胞、または四細胞段階、桑実胚段階、そして場合によって胚盤胞段階のものを含む、異なる発生段階に進行した(実験8)。対照的に、エレクトロポレーションしていない対照胚は、同じ期間終了時、ATで前処理したかまたはしないかに関わらず、胚盤胞段階に達した。いくつかの実験において(実験10および11)、実験中のすべての群の胚は、胚盤胞段階に到達できなかった。
エレクトロポレーションした接合子を培養した際のこうした最初の失敗は、所望の遺伝子修飾がエレクトロポレーションした接合子で起こるかどうかに関わらず、接合子がエレクトロポレーションプロセスを生き延びて、そして生産動物に発生し続けることが不可能でありうることを示唆するようである。AT処理が接合子に過剰に損傷を与えて、胚発生を遅延させる可能性があり、そして送達する試薬、例えばCas9 mRNAおよびガイドRNAが接合子およびその続く発生に対して毒性でありうるという認識は、さらに、動物において生殖系列伝達可能遺伝子修飾を永続的に導入する有望な手段としてエレクトロポレーションを用いることに疑いを投げかける。
エレクトロポレーションした接合子のin vitro発生が劣っている問題を解決する試みの中で、出願者は、驚くべきことに、in vitro培養条件を変化させることによる(表1)、より具体的には、典型的にはポリヌクレオチド緩衝液(例えばTE緩衝液)および減少血清培地(例えばOPTI−MEM(登録商標)培地)を含むエレクトロポレーション培地中のいかなる潜在的に有害な物質も洗い流すことによる、解決策を同定した。エレクトロポレーションした接合子の生存および発生に対するこの劇的な効果は、本明細書に記載する実験において立証される。
特に、B6D2F1/Jドナー雌マウスを過排卵させて、胚収率を最大限にした。各ドナー雌に、5IU(i.p.注射)の妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG)を投与し、そして約47時間後、5IU(i.p.注射)のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を投与した。
hCG投与直後、雌を1:1でB6D2F1/J繁殖用雄と交尾させた。24時間後、交尾プラグの存在に関して、雌をチェックした。交尾プラグを示す雌を安楽死させ、そして卵管を切除して、そしてM2培地に入れた。次いで、約0.3mg/mLの濃度でヒアルロニダーゼを含むM2培地に、卵管を入れた。膨大部を溶解させ、そしてヒアルロニダーゼを含有するM2培地中で、卵丘細胞が剥がれ落ちるまでインキュベーションすることによって、卵母細胞の塊を取り除いた。接合子を収集し、そして新鮮なM2培地で2回洗浄した後、COOK MINCベンチトップインキュベーター中、24時間、オイル下で平衡化しておいたRCVL培地小滴に入れた。
酸性タイロード溶液を融解し、そして100μLの滴をペトリ皿に入れ、1滴で50接合子を処理するものとした。EP(エレクトロポレーション)と同定された接合子をRCVL培地から取り除き、そして100μL滴の(あらかじめ温めた)M2培地中に入れた。50の群で、接合子を酸性タイロード溶液に10秒間入れ、そして次いで取り除き、そして3つの100μL滴のあらかじめ温めたM2培地を通じて洗浄した。次いで、処理した接合子をエレクトロポレーションに備えてOPTI−MEM(登録商標)培地の5〜10μL滴に入れた。OPTI−MEM(登録商標)培地滴あたりの接合子の数および滴の数は、実行している実験のパラメータにしたがって多様であった。
実験14および15の両方に関して、CRISPR混合物はCas9 mRNA/Tet2 sgRNAを含有し、200/100、400/200、および600/300ng/μLで用いた。さらに、実験15に関して、EcoRV部位(GATATC)をEcoRI部位(GAATTC)に変換するための突然変異を所持するドナーオリゴヌクレオチドもまた、200、400、または200ng/μLで提供した。混合物を、TE緩衝液(10mM Tris、0.1mM EDTA、pH7.5)で、実験群あたり10μLにして、そして10μL OPTI−MEM(登録商標)中の胚に添加した。次いで、総内容物20μLを1mmキュベット内に装填し、そしてエレクトロポレーションを送達した(30ボルト、パルス期間1ms、2回パルス、パルス間隔100〜1000ms)。
エレクトロポレーション完了時、次の工程(例えばin vitro培養および/または偽妊娠雌へのトランスファー)の前に、エレクトロポレーションした配偶子または移植前の胚を洗浄することが望ましい場合、胚をキュベットから100μLのあらかじめ温めたKSOMaa/BSA培地中に回収し、そして連続して3つの100μL滴のあらかじめ温めたM2培地を通過させて、いかなる残渣エレクトロポレーション溶液(1:1のTE緩衝液およびOPTI−MEM(登録商標)培地)も洗い落とした。次いで、接合子を生存性に関して評価した。健康であると判断されたものを、特定病原体不含(SPF)手術室に輸送するため、950μLのあらかじめ温めたM2培地を含有するクライオバイアル内にトランスファーした。
SPF施設において、p1000ピペットを用いて、クライオバイアルから接合子を取り除き、そしてCOOK MINCベンチトップインキュベーター中、24時間、オイル下で平衡化させておいたRCVL培地の培養小滴に入れた。トランスファーする際、胚をRCVL小滴から取り除き、そしてあらかじめ温めた100μL滴のM2培地に入れて、そしてJackson Laboratories LAH(動物実験健康)ルーチン法94−09などの標準的なプロトコルにしたがって、CBYB6F1/J偽妊娠雌内にトランスファーした。
マウスサブセットを誕生時に分析した。これらのため、マウスが誕生した際に尾の生検試料を採取し、そしてEcoRV消化を伴うRFLPによって分析した(図2Aおよび2B)。Cas9 mRNA 400ng/μLおよびsgRNA 200ng/μLの群からスクリーニングした13匹のうち2匹のマウス由来のPCR産物は、EcoRV消化に対して耐性である(創始者85C3)か、または部分的に耐性であった(85C10)(図2、パネルA)。
それぞれ、600ng/μLおよび300ng/μLのより高い濃度のCas9 mRNAおよびsgRNAを用いた場合、5匹のマウスがRFLPアッセイによって分析した際、陽性であり(創始者86C3、86C5、86C7、86C8および86C9)、このうち2つ(86C3および86C9)がEcoRV消化に対して完全に耐性である一方、3つ(86C5、86C7および86C8)が部分的に耐性であった。PCR産物のサンガー配列決定によって、7匹のマウスのうち6匹に関して突然変異体アレルの存在が確認された(図2C、85C3、85C10、86C3、86C7、86C8および86C9)一方、1つは低存在量の突然変異アレルを所持する可能性もある(86C5)。さらに、創始者85C3、86C3および86C9をpCR2.1−Topoベクターにクローニングし、そして個々のクローンを配列決定した際、Tet2ターゲット部位のPAM近傍領域に正確に位置するINDEL突然変異が、予期されるように、検出された(図2D)。
1週齢になった際、これらの2つの実験からの残りのマウスを分析した。尾の生検試料を採取し、そして先に記載されるようにRFLPによって分析し、そしてその結果を、これらのマウスから増幅されるPCR産物のサンガー配列決定によって確認した。表1に要約するように、これらの2つの実験間の創始者効率において、濃度依存性の改善が観察された。Cas9 mRNAを200ng/μLで、そしてsgRNAを100ng/μLで用いた際、スクリーニングした34匹のうち、1匹の創始者が同定された(3.2%)。Cas9 mRNA 400ng/μLおよびsgRNA 200ng/μLに濃度を増加させた際、創始者効率は48.3%に増加した(スクリーニングした29匹のうち、14匹の創始者マウス)。Cas9 mRNA 600ng/μLおよびsgRNA 300ng/μLに濃度をさらに増加させた際、効率は45.5%であった(スクリーニングした33匹のうち、15匹の創始者マウス)。驚くべきことに、実験15に関して、100%の創始者効率が達成され、スクリーニングした11匹のマウスすべてが、突然変異体アレルを所持した(図3)。
CRISPR仲介HDRもまた、実験15で試験し、ここで、ドナーオリゴヌクレオチドを実験設計に取り込んだ。
具体的には、接合子にエレクトロポレーションし、そしてマウスを誕生させ、そして遺伝子型決定した。466bpのPCR産物を増幅し、この増幅産物はターゲット部位を含み、EcoRV消化に曝露して、NHEJ突然変異を所持するアレルを検出し、そしてEcoRI消化に曝露して、HDRアレルを検出した。成功したHDRアレルは他の実験群では検出されなかったが、EcoRIによって切断されたアレルを所持する2匹の創始者マウス(図3、パネルA、86EP11および86EP14)が検出され、そしてこれらは、400ng/μLのCas9 mRNA、200ng/μLのTet2遺伝子座の3’UTRをターゲティングするsgRNA、および400ng/μLのssDNAドナーでエレクトロポレーションした群から得られた。この群の中で、11匹のマウスすべてが、EcoRV消化に対して耐性であるアレルを所持する。創始者86EP11〜86EP15は、EcoRVによって切断可能なアレルを検出可能なレベルで所持しないようであり、11匹すべての創始者マウスにNHEJ突然変異が存在することが示唆される。11の試料をEcoR1に曝露すると、試料86EP11および86EP14由来のアレルのいくつかは部分的にEcoRIによって消化されることが示され、これらの2つの試料由来のHDRアレルの存在が示唆された。
次いで、創始者86EP11および86EP14からPCR産物をpCR2.1−TOPOベクターにクローニングし、そして個々のクローンを配列決定した。図3、パネルBに示すように、試料86EP11−4および86EP14−4は、EcoRI部位を所持し、CRISPR/Casに仲介されたドナーssDNAからのこの部位の取り込みが成功したことが示唆される。
多様な異なるエレクトロポレーション・セットアップ・パラメータを、一連の実験でさらに試験し、そしてその結果を以下に要約した:
1. 20V、2回パルス、100ms間隔、0回洗浄
a. Cas9 mRNA 200ng/μL+Tet2 sgRNA 100ng/μL
b. 結果:12%が胚盤胞段階に到達(2/17)、遺伝子ターゲティングは観察されない
2. 20V、2回パルス、100ms間隔、3回洗浄
a. Cas9/Tet2:500/250、400/200、200/100ng/μL
b. 結果:平均91%が胚盤胞(50/55)
3. 20V、2回パルス、1s間隔、3回洗浄
a. Cas9/Tet2:800、600、400、300、200、100ng/μL
b. 200ng/μLでの結果(バッチ1):100%胚盤胞(16/16)、14.3%ターゲティング(1/7)
c. 200、300、400ng/μLでの結果(バッチ2):95.8%胚盤胞(46/48)、結果未決定
d. 結果(バッチ3):多数回洗浄、胚を偽妊娠雌マウスにトランスファー、誕生未決定
4. 20V、3回パルス、1s間隔、1回洗浄
a. Cas9/Tet2:400、200ng/μL
b. 200ng/μLでの結果(バッチ1):82.3%胚盤胞(14/17)、ターゲティングなし
c. 400および200ng/μLでの結果(バッチ2):93.8%胚盤胞(30/32)、結果未決定
5. 20V、3回パルス、1s間隔、3回洗浄
a. Cas9/Tet2:200ng/μL
b. 結果:88.9%胚盤胞(16/18)、ターゲティングなし
6. 30V、2回パルス、1s間隔、3回洗浄
a. Cas9/Tet2:400、300、200ng/μL
b. 200ng/μLでの結果:94%胚盤胞(15/18)、ターゲティングなし
c. 300ng/μLでの結果:84%胚盤胞(16/19)、16%ターゲティング(3/19)、400ng/μLでのターゲティングなし
要約すると、結果は、エレクトロポレーションしたCRISPR/Cas系を用いた遺伝子修飾成功が、用いるCRISPR/Cas試薬の濃度に依存することを示唆する。エレクトロポレーション実験において、伝統的なマイクロインジェクション実験と比較して、試薬濃度は限定要因であることをやめ、そしてより高い濃度の試薬(例えばCas9 mRNAでは400ng/μLを、そしてsgRNAでは200ng/μLを超えて)を用いて遺伝子編集マウスが生成されることが見出された。
データはまた、透明帯を、例えばAT処理によって弱めると、接合子エレクトロポレーションに有益でありうることもまた示唆する。しかし、長期の処理は回避すべきである。
最後に、だが最小ではなく、本方法を用いたCRISPR仲介遺伝子ターゲティングは、実験セットアップ中のパラメータの特定の変動で成功裡に行われうる。エレクトロポレーションした接合子の発生の成功を確実にするため、エレクトロポレーションした接合子を、エレクトロポレーション完了時に、胚発生に最適な生理学的溶液または培地で1回または複数回(例えば2、3、4回)リンスする必要がありうる。例えば、エレクトロポレーションした接合子を、あらかじめ温めたM2培地の滴(100μL)に連続して通過させて、接合子を培養に入れるかまたは子宮環境にトランスファーする前に、残渣エレクトロポレーション溶液(例えば1:1のTE緩衝液およびOPTI−MEM(登録商標))を洗い流してもよい。
表1 実験14および15の要約
本発明の方法の詳細な例示的(限定されない)態様を以下に提供する:
1. 1mg/mlのBSA(P/N A2153、Sigma−Aldrich)を補充した100μL KSOMaa Evolve(P/N Zeks−050、Zenith Biotech)のアリコットを、96ウェル平底組織培養プレート上にデポジットし、そして一細胞接合子を受け入れるまで、HeraCellインキュベーター中、37℃/5%CO2で平衡化した。
2. B6D2F1雌マウスに、5国際単位(IU)の妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG、P/N HOR−272、ProSpec、イスラエル・レホヴォト)を腹腔内(i.p.)注射し、そして約48時間後、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG、P/N HOR−250、ProSpec、イスラエル・レホヴォト)をi.p.注射した。次いで、雌マウスをB6D2F1雄マウスと交尾させた。交尾プラグに関して陽性であったものを、頸椎脱臼(CD)によって安楽死させた。切除した生殖管から、受精胚をフラッシュした。
3. B6D2F2マウスから一細胞接合子を収集し、酸性タイロード溶液(例えば、Sigma−Aldrich、カタログ番号T1788;またはEMBRYOMAX(登録商標)P/N MR−004−D、EMD Milliporeなどの同等物)中で10秒間処理し、KSOMaa Evolveで2回洗浄し、そして組織培養ディッシュまたはプレート(35mm、P60、96ウェル)中で、10μL滴のあらかじめ温めたOPTI−MEM(登録商標)培地(P/N 31985、Gibco)に入れた。
4. 「生物学的材料」(CRISPRに関しては、Cas9 mRNA、sgRNA、および場合によってドナーオリゴヌクレオチド;または代替物として同じものをコードするDNAから本質的になる)を10mM Tris、pH7.5、および0.1mM EDTAを含む10μL体積に再構成し、そしてOPTI−MEM(登録商標)培地中の接合子の10μL滴に添加する。
5. 「生物学的材料」に浸した接合子を取り除き、そしてBTXモデル610(P/N 450124、Harvard Apparatus)の2mmキュベットのチャンバーにデポジットした。キュベットを軽く叩いて、ポリヌクレオチド/接合子溶液または懸濁物が、キュベットの2つのコンダクターの間に移動し、気泡が混合物中にトラップされないことを確実にした。
6. キュベットをBTXキュベットチャンバー(ECM830)内に入れ、そして以下のセッティング(またはその変動、例えば本明細書に開示するもの)を用いてエレクトロポレーションする:
a. 電位:30V
b. パルス間隔:125〜130ms
c. パルス期間:1ms
d. パルス数:2回
7. キュベットパッケージから供給されているプラスチックピペットを用いて、96ウェルプレートのそれぞれのウェルから、80〜100μLのあらかじめ温めた培地(例えばKSOMaa/BSA培地)を取り除き、そしてキュベットに培地を穏やかに添加する。キュベットからすべての内容物を取り除き、そして混合物をウェルに排出する。
8. あらかじめ温めたM2培地の2〜3の100μL滴に、エレクトロポレーションした接合子を連続して通過させ、いかなる残渣エレクトロポレーション溶液も洗い流す。
9. 洗浄した接合子を所持する96ウェルプレートを直ちにインキュベーターに戻す。
10. 37℃/5%CO2で3.5日間胚を培養し、発生の胚盤胞段階に到達させ、そして次いで分析のため採取した。
11. GENOMEPLEX(登録商標)一細胞全ゲノム増幅キット(P/N GA4、Sigma−Aldrich)を用いて、胚ゲノムを増幅した。次いで、増幅したゲノムを、ターゲット部位を含むプライマー対を用いた、PCR反応(ACCUPRIMETM Taq DNAポリメラーゼ系、P/N 12339−016、Life Technologies;またはPrimeStar GXL、P/N R050B、Clontech)中のテンプレートとして用いた。PCR産物を清浄化し、そしてサンガー配列決定によって、ヌクレオチド配列を分析した。
12. Cas9 mRNA、sgRNAおよび場合によるDNAドナーを合成し、そして注射混合物を先に記載されるように調製した(Wangら、2013;Yangら、2013)。
参考文献
本明細書記載のすべての参考文献は、本明細書に援用される。