JP2017526575A - 航空機タイヤのクラウン補強体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、航空機のタイヤに関し、特にトレッド部(1)と、ワーキング補強体(2)と、カーカス補強体(3)と、フープ補強体とを含む、航空機タイヤのクラウンに関する。ワーキング補強体(2)の半径方向内側ワーキング層(21)は凹部を含む。フープ補強体(41)は、円周方向(XX’)に対して+10°〜−10°の角度で傾斜した、平均直径Dを有する互いに平行な補強要素で構成された、ワーキング層(21)の半径方向内側の少なくとも1つのフープ層(41)を含む。本発明によれば、フープ層(41)が、フープ層(41)の補強要素の平均直径Dの3倍に少なくとも等しい軸方向幅(L411)を有する少なくとも1つの軸方向不連続部(411)を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、航空機のタイヤに関し、特に航空機タイヤのクラウンに関する。
タイヤは、トレッド面を介して地面に接するように意図されたトレッド部を含むクラウンと、リムに接するように意図された2つのビード部と、クラウンをビード部に接続する2つのサイドウォール部とを備える。さらに詳細には、例えば欧州特許第1381525号に記載されているように、航空機に一般に使用されるようなラジアルタイヤは、ラジアルカーカス補強体と、クラウン補強体とを備える。
タイヤは、回転軸を中心に回転対称を示す形状を有しているので、タイヤの形状は、一般にタイヤの回転軸を含む子午面で説明される。所与の子午面では、半径方向、軸方向、円周方向は、それぞれタイヤの回転軸に垂直な方向、タイヤの回転軸に平行な方向、及び子午面に垂直な方向を示す。
以下の文章では、「〜の半径方向内側に」及び「〜の半径方向外側に」という表現は、それぞれ「半径方向において〜よりもタイヤの回転軸の近くに」、「半径方向において〜よりもタイヤの回転軸から離れて」を意味する。「〜の軸方向内側に」及び「〜の軸方向外側に」という表現は、それぞれ「軸方向において〜よりも赤道面の近くに」及び「軸方向において〜よりも赤道面から離れて」を意味する。「半径方向距離」は、タイヤの回転軸に対する距離であり、「軸方向距離」は、タイヤの赤道面に対する距離である。「半径方向厚さ」は、半径方向で測定され、「軸方向幅」は、軸方向で測定される。
ラジアルカーカス補強体は、タイヤの2つのビード部を接続するタイヤ補強構造である。航空機タイヤのラジアルカーカス補強体は、一般にカーカス層と呼ばれる少なくとも1つのカーカス補強層を含む。各カーカス層は、ポリマー材料で被覆された、互いに平行な、円周方向との間に80°〜100°の角度を成す補強要素で構成される。各カーカス層は単体構造であり、すなわちその厚みに1つの補強要素しか含まない。
クラウン補強体は、トレッド部の半径方向内側であって通常はラジアルカーカス補強体の半径方向外側のタイヤ補強構造である。航空機タイヤのクラウン補強体は、一般にクラウン層と呼ばれる少なくとも1つのクラウン補強層を含む。各クラウン層は、ポリマー材料で被覆された、互いに平行な、円周方向との間に+20°〜−20°の角度を成す補強要素で構成される。各クラウン層は単体構造であり、すなわちその厚みに1つの補強要素しか含まない。
クラウン層では、ワーキング補強体を構成し、通常は繊維補強要素で構成されるワーキング層と、保護補強体を構成し、金属又は繊維補強要素で構成され、ワーキング補強体の半径方向外側に配置される保護層とが区別される。ワーキング層は、クラウンの機械的挙動を左右する。保護層は、基本的に、トレッド部内をタイヤの内側に向かって半径方向に広がる可能性のある侵食からワーキング層を保護する。クラウン層、特にワーキング層は、多くの場合軸方向に幅広い層であり、すなわち、例えばタイヤの最大軸方向幅の2/3に少なくとも等しい軸方向幅を有する層である。タイヤの最大軸方向幅は、タイヤをリム上に取り付けて軽く膨張させた、すなわち、例えばタイヤリム協会又はTRAによって推奨される公称圧力の10%に等しい圧力に膨張させたサイドウォール部において測定される。
タイヤは、クラウン補強体の半径方向内側又は半径方向外側に、或いは2つのクラウン層間にフープ補強体を備えることもできる。航空機タイヤのフープ補強体は、一般にフープ層と呼ばれる少なくとも1つのフープ補強層を含む。各フープ層は、ポリマー材料で被覆された、互いに平行な、円周方向との間に+10°〜−10°の角度を成す補強要素で構成される。通常、フープ層は、軸方向に狭いワーキング層であり、すなわちクラウン層の軸方向幅よりも実質的に小さな、例えばタイヤの最大軸方向幅の最大で80%に等しい軸方向幅を有する層である。軸方向幅は、各補強要素間の距離が軸方向に一定であるか否かに関わらず、フープ層の最も軸方向外側の補強要素間の軸方向距離として理解される。
通常、航空機タイヤのカーカス層、ワーキング層及びフープ層の補強要素は、好ましくは脂肪族ポリアミド又は芳香族ポリアミド製の紡織フィラメントで構成されたコードである。保護層の補強要素は、金属スレッドで構成されたコード、又は紡織フィラメントで構成されたコードとすることができる。層内の2つの連続する補強要素の中心間の軸方向距離は、補強体ピッチとして知られている。クラウン補強体及びフープ補強体では、通常、このピッチが軸方向に一定である。
繊維補強要素に関する限り、引張下における繊維補強要素の機械的特性(弾性係数、伸び率及び破断荷重)は、事前調整後に測定される。「事前調整」とは、欧州規格DIN EN 20139(20±2°Cの温度、65±2%の相対湿度)に従う標準大気において測定前に少なくとも24時間にわたって繊維補強要素を保管することを意味する。この測定は、Zwick社(Zwick GmbH&Co)(ドイツ)のタイプ1435又はタイプ1445の引張試験機を用いて既知の方法で行われる。繊維補強要素に、400mmの初期長さにわたって200mm/minの公称率で張力を加える。10回の測定の全ての結果を平均する。
多くの場合、航空機タイヤは、離陸中、地上走行中及び着陸中といったタイヤの様々な生命段階中に発生する応力に起因する、偏摩耗として知られている不均一なトレッド部の摩耗を示す。トレッド部の偏摩耗は、トレッド部の中間部分と、中間部分の軸方向外側の2つの外側部分との間にとりわけ認められている。通常は、中間部分の摩耗が大きく、これによってタイヤの寿命が左右されることが望ましい。場合によっては、上述した偏摩耗によってトレッド部の外側部分の摩耗がひどくなり、これが中間部分の摩耗よりも顕著になり、結果的にタイヤの撤去が早まるという経済的に不利な状況を招いてしまう。
当業者は、タイヤのトレッド部の摩耗がタイヤの使用及び設計に関連する複数の要素に依存するという事実を熟知している。具体的には、摩耗は、タイヤのトレッド部が地面に接する接地面の幾何学的形状、及びこの接地面における機械的応力の分布に依存する。これらの2つのパラメータは、トレッド面の膨張子午線プロファイルに依存する。トレッド面の膨張子午線プロファイルとは、公称圧力に膨張させた無負荷状態のタイヤの子午面におけるトレッド面の断面のことである。
当業者は、トレッド部の中間部分の偏摩耗に関してタイヤの寿命を延ばすために、トレッド面の膨張子午線プロファイルの幾何学的形状の最適化に努めてきた。
欧州特許第1163120号には、航空機タイヤのクラウン補強体において、タイヤがその公称圧力に膨張した時の半径方向の変形を制限しようと試みることによってトレッド面の膨張子午線プロファイルの半径方向の変形を制限できたことが開示されている。通常は脂肪族ポリアミド製であるクラウン層補強要素を芳香族ポリアミド製の補強要素に置き替えることによってクラウン層の円周方向引張剛性を高めることにより、タイヤがその公称圧力に膨張した時のクラウン補強体の半径方向の変形が上手く制限される。芳香族ポリアミド製の補強要素の弾性係数は、脂肪族ポリアミド製の補強要素の弾性係数よりも高いので、所与の引張荷重では、前者の伸び率の方が後者の伸び率よりも低い。
上述した欧州特許第1381525号には、クラウン層及び/又はカーカス層の引張剛性を変化させることによってトレッド面の膨張子午線プロファイルの幾何学的形状を変化させる1つの方法が提案されている。この文献には、通常の脂肪族ポリアミド製の補強要素よりも、むしろハイブリッド補強要素、すなわち脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドの両方で作製した補強要素を使用することが提案されている。これらのハイブリッド補強要素は、脂肪族ポリアミド製の補強要素の弾性係数よりも高い弾性係数を有し、従って所与の引張荷重での伸び率がさらに低くなる。ハイブリッド補強要素は、円周方向引張剛性を高めるようにクラウン層で、及び/又は子午面の引張剛性を高めるようにカーカス層で使用される。
欧州特許第1477333号には、クラウン補強体の最も軸方向外側部分の全円周方向引張剛性と、クラウン補強体の中間部分の全円周方向引張剛性との比率が規定の範囲内に収まるようにクラウン補強体の全円周方向引張剛性を軸方向に変化させることによってトレッド面の膨張子午線プロファイルの幾何学的形状を変化させる別の方法が提案されている。クラウン補強体の全円周方向引張剛性は、クラウン層の円周方向引張剛性を組み合わせた結果である。クラウン補強体の全円周方向引張剛性は、重なり合うクラウン層の数の変化に従って軸方向に変化する。提案されている解決策は、クラウン補強体の最も軸方向外側部分よりも剛性の高いクラウン補強体の中間部分の全円周方向引張剛性と、最も軸方向外側部分の全円周方向引張剛性との間の軸方向分布に基づく。クラウン層又はカーカス層において使用される補強要素は、脂肪族ポリアミド製、芳香族ポリアミド製、又はハイブリッドである。
国際公開第2010/000747号には、公称圧力が9バールよりも高く、定格負荷での撓みが30%よりも大きな航空機タイヤが、トレッド面を有するトレッド部と、少なくとも1つのクラウン層を含むクラウン補強体と、少なくとも1つのカーカス層を含むカーカス補強体とを備え、これらのトレッド面、クラウン補強体及びカーカス補強体が、初期子午線プロファイルによってそれぞれ幾何学的に定められることが記載されている。本発明によれば、クラウン補強体の初期子午線プロファイルは、クラウン補強体の軸方向幅の0.25倍に少なくとも等しい軸方向幅を有する中間部分にわたって局所的に凹状である。国際公開第2010/000747号に記載されている技術的解決策では、トレッド部の偏摩耗を中間部分とその軸方向外側部分との間に制限することによって航空機タイヤの摩耗寿命を延ばすことが可能である。
タイヤは、トレッド部の幅全体にわたって摩耗を均一化させることによって長持ちするが、この改善された摩耗パターンによって延びる寿命を通じてその耐久性を保証する必要がある。具体的には、タイヤのクラウンの耐久性、すなわちタイヤに課される大きな機械的要求に耐える能力を向上させる必要がある。大きな機械的要求とは、例えば、限定ではないが、民間旅客機タイヤの場合、15バールを超える公称圧力、20トンを超える定格負荷、及び360km/hの最高速度を意味する。
国際公開第2013/079351号には、局所的に凹状のクラウン補強体の初期子午線プロファイルを用いた、国際公開第2010/000747号に記載されている解決策の改善が提案されている。この改善は、赤道面から連続的に減少する、最も半径方向外側のカーカス層と最も半径方向内側のワーキング層との間の距離の選択を通じて、ラジアルカーカス補強体及びワーキング補強体の形状を最適化することである。
欧州特許第1381525号に記載されているようなカーカス補強体及びワーキング補強体の従来の子午線プロファイルを、国際公開第2013/079351号に記載されているような凹状プロファイルにそれぞれ変更すると、カーカス層とワーキング層の半径方向スタックが全く同じものであってトレッド部の半径方向外側の子午線プロファイルの平均半径も全く同じものである場合に、ワーキング層の補強要素の張力が赤道面において約+15%と大幅に増加する。他の全ての要素が同じ状態でも、タイヤの破裂圧力が同じ量だけ低下し、これでは規制試験による市販のためのタイヤの認証が危うくなる可能性がある。さらに、最も半径方向外側のカーカス層と最も半径方向内側のクラウン層との間の距離が赤道面から凹部の軸方向境界まで連続的に減少することによって示唆されるようにフープ層の幅全体にわたって一定ピッチのフープを使用することは、タイヤの重量、従ってそのコスト面から見て最適でない。
欧州特許第1381525号明細書 欧州特許第1163120号明細書 欧州特許第1381525号明細書 欧州特許第1477333号明細書 国際公開第2010/000747号 国際公開第2013/079351号
本発明者らは、航空機タイヤの寿命がトレッド部の摩耗に関して延びた際のワーキング補強体の耐久性を高めると同時に、タイヤの重量を減少させることによって工業的製造コストを削減するという目的を定めた。
この目的は、航空機タイヤであって、
− トレッド部と、
− トレッド部の半径方向内側の、少なくとも1つのワーキング層を含むワーキング補強体と、
を備え、
− 半径方向内側ワーキング層が、タイヤの最大軸方向幅の2/3に少なくとも等しい軸方向幅を有して凹状の中間部分を含み、航空機タイヤが、
− ワーキング補強体の半径方向内側の、少なくとも1つのカーカス層を含むカーカス補強体と、
− カーカス補強体の半径方向外側の、少なくとも1つのフープ層を含むフープ補強体と、
をさらに備え、
− フープ層が、最も幅の広いワーキング層の幅の最大で0.8倍に等しい軸方向幅を有するとともに、円周方向に対して+10°〜−10°の角度で傾斜する互いに平行な補強要素を含み、
− フープ層の補強要素が、平均直径Dを有し、
− フープ層が、補強要素の平均直径Dの3倍に少なくとも等しい軸方向幅を有する少なくとも1つの軸方向不連続部を含む、
航空機タイヤによって達成される。
一般に、タイヤのワーキング補強体は、クラウン層の軸端をずらして配置するために、タイヤの子午面において一般に層毎に異なる軸方向幅を有する複数の半径方向に重なり合ったワーキング層で構成される。一般に、ワーキング補強体は、幅広と呼ばれる、すなわちタイヤの最大軸方向幅の2/3に少なくとも等しい軸方向幅を有する少なくとも1つのワーキング層を含む。タイヤの最大軸方向幅は、タイヤをリムに取り付けて軽く膨張させ、すなわち推奨公称圧力の10%に等しい圧力に膨張させた状態でサイドウォール部において測定される。通常、排他的な意味ではないが、半径方向内側ワーキング層、すなわち最も半径方向内側のワーキング層は、最も幅の広いワーキング層である。
ワーキング層の軸方向幅は、ワーキング層の終点間の軸方向距離である。通常、ワーキング層の軸方向幅は、2つの子午面上でタイヤを切断することによって得られるタイヤの子午断面上で測定される。一例として、タイヤの子午断面は、トレッド部において約60mmの円周方向厚さを有する。この測定は、2つのビード部間の距離を、リム上に取り付けて軽く膨張させたタイヤのビード部間の距離と同一に保った状態で行われる。
さらに、半径方向内側ワーキング層は凹部を含み、その赤道面の両側における軸方向境界は、上記クラウン層の半径方向外側の地点である。一般に、これらの軸方向境界は、赤道面から実質的に等距離にあり、すなわち製造公差はあるとしても赤道面を中心に実質的に対称であるが、赤道面の両側の距離が異なることを除外するものではない。有意な軸方向幅の凹部を有するには、幅広のワーキング層が必要である。
凹部は、子午面において、赤道面内の半径方向内側地点と、赤道面の両側に1つずつ存在する、凹部の軸方向境界である2つの半径方向外側地点とを含む。従って、これらの凹部の地点は、全て赤道面内に位置する地点の半径方向外側であって、凹部の軸方向境界である地点の半径方向内側に存在する。
本発明の意味における凹部は、この用語の数学的な意味での凹部ではない。具体的には、凹部は、数学的な意味で凹状の中心部分と、この凹状の中心部分の両側の数学的な意味で凸状の外側部分とを含み、凹状の中心部分の全ての地点では、凹状の中心部分の半径方向外側に曲率中心が存在し、凸状の外側部分の全ての地点では、凸状の外側部分の半径方向内側に曲率中心が存在する。凹状の中心部分は、赤道面の両側に1つずつ存在する2つの変曲点によって軸方向に区切られる。各凸状の外側部分は、変曲点によって軸方向内側が区切られ、凹部の軸方向境界によって軸方向外側が区切られる。
内側ワーキング層の半径方向外側の他のワーキング層は、しばしば半径方向内側ワーキング層の凹部の軸方向幅に実質的に等しい軸方向幅の凹部を含む。このことは、特にワーキング層が対の形で隣接し、例えばエラストマ材料製の層間要素によって分離されていない時に生じる。この時、上記ワーキング層のそれぞれの子午線プロファイルは対間で平行であり、すなわちそれぞれの軸方向幅全体にわたって等距離である。
ワーキング層の応力の増加を制限するために、最も半径方向外側のカーカス層と最も半径方向内側のワーキング層との間に、少なくとも1つのフープ層で構成されたフープ補強体が挿入される。このような中間ゾーンに位置するフープ補強体は、タイヤの膨張中にこの中間ゾーンにおいてワーキング補強体が半径方向に動くのを制限し、従ってトレッド面の軸方向幅全体にわたってほぼ平坦なトレッドプロファイルを取得する機能を有する。これにより、赤道面におけるワーキング層の過剰張力を制限することもできる。
意外にも、耐久性と原料コストに関する最善の妥協を可能にするフープ層の構成は、できるだけ狭い幅にわたって配置された連続フープ層ではなく、少なくとも1つの軸方向不連続部を含む不連続フープ層であり、これによってフープ層の重量を減少させることもできる。
軸方向不連続部とは、2つの連続する補強要素間のピッチの局所的増加を意味する。この軸方向不連続部は、その軸方向幅、すなわちこの軸方向不連続部を区切る補強要素間の軸方向距離によって特徴付けられる。本発明によれば、フープ層が、最小値が補強要素の平均直径Dの3倍に等しい軸方向幅を有する少なくとも1つのこのような軸方向不連続部を含む。具体的には、フープ層の補強要素を軸方向に不連続的に配置すると、タイヤの肩部又は中心部におけるワーキング補強層の応力の分布を最適化することができる。また、補強要素の平均直径Dの3倍に少なくとも等しい幅を有するこれらの各不連続部によってフープ層の補強要素の数が減少し、従ってフープ層のコストが削減される。
軸方向不連続部の軸方向幅がフープ層の補強要素の平均直径Dの10倍に少なくとも等しいと、フープ層の補強要素の数が減少し、工業的製造コストを節約できるので特に有利である。
また、フープ層が、補強要素の平均直径Dの3倍に少なくとも等しい軸方向幅を有する軸方向不連続部を少なくとも2つ含むことも有利である。具体的には、これにより、ワーキング層の補強要素の張力が最適化されるようにフープ層の補強要素を最適に分布させることができる。
また、1つの軸方向不連続部がタイヤの赤道面に中心を置くことも有利である。具体的には、タイヤの赤道面に中心を置く1つの軸方向不連続部を有することにより、中心におけるワーキング補強体の補強要素の張力を増加させることによって肩部におけるワーキング補強体の補強要素の張力を低下させることができる。
2つの軸方向不連続部が赤道面に関して対称に位置することが有利である。このような実施形態では、回転するタイヤの振動現象が最適化される。
1つの特定の実施形態によれば、フープ補強体が2つのフープ層を含む。航空機タイヤは、その使用に基づき、荷重を支えるのに必要な圧力に応じて、2つのフープ層で構成されたフープ補強体を必要とする場合もある。
好ましい実施形態によれば、フープ層の補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの組み合わせで構成される。このような補強要素は、その軽量性及び破壊強度を理由として特に有利である。換言すれば、フープ層の補強要素を構成する材料は、一般にナイロン又はアラミドである。補強要素は、単一の材料で構成することも、或いは異なる材料の組み合わせで構成することもできる。例えば、補強要素は、ハイブリッド補強要素と呼ばれるものを形成するように、紡績ナイロンフィラメントと紡績アラミドフィラメントとを組み合わせることができる。これらのハイブリッド補強要素は、ナイロンの伸縮特性とアラミドの伸縮特性とを有利に組み合わせることができる。この種の材料は、航空分野において極めて重要な軽量化を可能にするその低密度を理由に航空機タイヤの分野で有利に使用されている。
ワーキング補強体の張力に対応するために、この補強体の補強要素は、互いに平行に円周方向(XX’)に対して+20°〜−20°の角度で傾斜させて配置することが特に有利である。
また、ワーキング層の補強要素も、その軽量性及び破壊強度レベルのために、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの組み合わせで構成されることが有利である。ここでも、ワーキング層の補強要素を構成する材料は、ナイロン、アラミド又はハイブリッドである。これらの材料は、軽量という利点を有するので、航空機タイヤの分野では一般的な材料である。
好ましい実施形態によれば、カーカス補強体は、円周方向との間に80°〜100°の角度を成す互いに平行な補強要素を含む少なくとも1つのカーカス層を有する。カーカス層の補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの組み合わせで構成される。ここでも、軽量性及び破壊強度のために、このような補強要素を使用することが特に有利である。
ワーキング補強体の半径方向外側には、障害物を乗り越える際にワーキング層の機械的完成性を保つために、金属又は繊維補強要素で構成された少なくとも1つの保護層を含む保護補強体を配置することが好ましい。
本発明を理解しやすくするように縮尺通りではなく単純化して示す図1及び図2を参照すれば、本発明の特徴及びその他の利点がさらに理解されるであろう。
赤道面を中心とする1つの軸方向不連続部をフープ補強体に有するフープ層を示す図である。 赤道面に関して対称的な2つの軸方向不連続部をフープ補強体に有するフープ層を示す図である。 フープ補強体の軸方向不連続部の細部を示す図である。
図1に、本発明の第1の実施形態による、トレッド部1と、トレッド部1の半径方向内側のワーキング補強体2と、ワーキング補強体2の半径方向内側のラジアルカーカス補強体3と、ワーキング補強体2とラジアルカーカス補強体3との半径方向中間に位置する、赤道面XZに軸方向不連続部を有するフープ層41を含むフープ補強体4とを備えたタイヤのクラウンの子午断面、すなわち子午面での断面を示す。
それぞれの半径方向、軸方向及び円周方向は、方向ZZ’、YY’及びXX’である。赤道面XZは、半径方向ZZ’及び円周方向XX’によって定められる。
ワーキング補強体2は、複数のワーキング層で構成される。半径方向内側ワーキング層21の、軸端E2とE’2との間の軸方向距離である軸方向幅L2は、タイヤの最大軸方向幅L1の2/3に少なくとも等しい。タイヤの最大軸方向幅L1は、タイヤをリムに取り付けて軽く膨張させ、すなわちその推奨公称圧力の10%に等しい圧力に膨張させた状態でサイドウォール部において測定される。
半径方向内側ワーキング層21は凹部を含み、その赤道面XZの両側の軸方向境界M2及びM’2は、半径方向距離R2に位置する上記ワーキング層の半径方向外側地点である。半径方向内側ワーキング層21は、上記凹部の軸方向外側にさらに2つの凹部を含む。これらの凹部は、軸方向内側を凹部の軸方向境界M2及びM’2によって境界され、軸方向外側をワーキング層の端部E2及びE’2によって境界される。
半径方向内側ワーキング層21の凹部は、変曲点I2及びI’2によって軸方向に区切られた数学的意味での凹状部分と、この凹状部分の両側に、上記凹部の軸方向境界M2又はM’2によって軸方向外側を境界された数学的意味での凸状部分とを含む。凹所の振幅a2は、軸方向境界M2及びM’2の半径方向距離R2と、赤道面XZ内に位置する地点C2の半径方向距離r2との差分である。
カーカス補強体3は、複数のカーカス層で構成される。ワーキング補強体2の半径方向内側のクラウン領域では、半径方向外側カーカス層31が、最も半径方向内側のワーキング層の半径方向外側の地点(M2、M’2)と半径方向に一致する軸方向境界M3及びM’3を赤道面の両側に有する部分を含み、この部分では、製造誤差はあるとしても、半径方向距離R3に位置するそれぞれの端部(M3、M’3)の半径方向内側の赤道面の両側にカーカス層が存在する。
さらに、図1には、半径方向内側ワーキング層21と半径方向外側カーカス層31との半径方向中間に位置するフープ層41を含むフープ補強体4も示しており、このフープ層41は、赤道面XZを中心とする軸方向不連続部411を有する。
図2に、本発明の第2の実施形態によるタイヤのクラウンの子午断面を示しており、ここでは、フープ補強体が、赤道面XZに関して対称な同じ軸方向幅の2つの軸方向不連続部を有するフープ層41を含む。図2のアーキテクチャの他の要素は、図1のものと同一である。
図2Bには、平均直径Dを有する補強要素で構成されたフープ層41を示しており、この図には、本発明によれば平均直径Dの3倍よりも大きな幅L411の不連続部411を示している。
本発明者らは、15.9バールの公称圧力、20473daNの公称静荷重、及び225km/hの最大基準速度での使用を特徴とする46×17R20のサイズの航空機タイヤについて、フープ補強体が赤道面に関して対称な2つの軸方向不連続部を有するこれらの2つの実施形態に従って本発明を実施した。
検討したタイヤでは、ワーキング補強体が6つのワーキング層で構成され、その補強要素はハイブリッドタイプである。半径方向内側ワーキング層は、300mmの、すなわちタイヤの最大軸方向幅の0.75倍の軸方向幅を有する。この半径方向内側ワーキング層の凹所の幅は160mmであり、振幅は6mmである。カーカス補強体は3つのカーカス層で構成され、その補強要素はハイブリッドである。
フープ補強体はフープ層で構成され、その補強要素は平均直径が1.11mmのハイブリッドタイプである。フープ補強体の軸方向幅は80mm、すなわちタイヤの最大軸方向幅の0.20倍である。ワーキング層及びフープ層では、使用するハイブリッド補強要素が、それぞれ330テックスの2つの紡績アラミド糸と、188テックスの1つの紡績ナイロン糸とで構成される。得られるハイブリッド補強要素は、直径が1.11mmであり、タイターが950テックスであり、撚数が230tpmであり、50daNの力を受けた際の伸び率が5.5%であり、破断荷重が110daNである。
カーカス層では、使用するハイブリッド補強要素が、それぞれ330テックスの2つの紡績アラミド糸と、188テックスの1つの紡績ナイロン糸とで構成される。得られるハイブリッド補強要素は、直径が1.11mmであり、タイターが980テックスであり、撚数が270tpmであり、50daNの力を受けた際の伸び率が5.5%であり、破断荷重が110daNである。さらなるハイブリッド補強体を使用することもできる。とりわけ、異なる撚数の補強体、さらには異なるタイター又は異なる数の各紡績糸を有する補強体を使用することが考えられる。
国際公開第2013/079351号に記載されているようにワーキング層を平面プロファイルから凹状プロファイルに変更すると、クラウン層の補強要素のスタックが同じものであって、トレッド部の半径方向外側の子午線プロファイルの平均半径も同じものである場合に、ワーキング層の中心の補強要素の張力が約+15%と大幅に増加する。
フープ層の軸方向幅を50mm増加させて軸方向幅を80mmから130mmに変更すると、過剰張力をワーキング補強層の中心において約20%、ワーキング補強体の縁部において約18%低減することができるが、フープ補強要素のコストが65%増加してしまう。軸方向幅が80mmの中間部分と、20mmの軸方向幅を有する不連続部によって中間部分から分離された、赤道面に対して対称なそれぞれの軸方向幅が10mmの2つの外側部分とを含む、全体的な軸方向幅が130mmの不連続フープ層を使用すると、過剰張力をワーキング層の中心において約6%、ワーキング補強体の縁部において約26%低減することができるとともに、フープ補強要素のコストの増加も25%に制限される。
不連続部を導入することによってフープ層の幅が赤道面に対して広くなればなるほど、ワーキング補強体の端部における補強要素の張力に対する影響も好ましいものになる。フープ層内の不連続部の最適な位置は、ワーキング層の配置及び幅に依存する。
例えばアラミド製の異なる性質の補強要素をフープ層に使用すると、上記と同じ構成で過剰張力をワーキング層の中心において約36%、ワーキング補強体の縁部において約49%低減することができる。
アラミド製のフープ補強体では、10〜20mmの軸方向幅を有する不連続部によって分離された、130mmの全幅にわたって赤道面に関して対称に分布する6つの部分に5〜10個の補強要素のストリップを使用することによって好ましい変形例の1つが実現される。この配置を伴うフープ補強体にハイブリッドではなくアラミドを使用すると、過剰張力をワーキング層の中心において約25%、ワーキング補強体の縁部において約15%低減することができ、上述したような不連続なハイブリッドフープ層を有する解決策の過剰張力レベルに近い過剰張力レベルを達成することができ、従って上述の解決策に比べてフープ層のコストを30%削減しながら耐久性基準を満たすことができる。
1 トレッド部
2 ワーキング補強体
3 ラジアルカーカス補強体
4 フープ補強体
21 半径方向内側ワーキング層
31 半径方向外側カーカス層
41 フープ層41
a2 凹所の振幅
C2 地点
E2、E’2 半径方向内側ワーキング層の軸端
I2、I’2 変曲点
L1 タイヤの最大軸方向幅
L2 半径方向内側ワーキング層の軸方向幅
L4 フープ層の軸方向幅
M2、M’2 凹部の軸方向境界
M3、M’3 カーカス層の軸方向境界
R2 凹部の軸方向境界の半径方向距離
r2 地点C2の半径方向距離

Claims (11)

  1. 航空機タイヤであって、
    − トレッド部(1)と、
    − 前記トレッド部(1)の半径方向内側に位置し、少なくとも1つのワーキング層を含むワーキング補強体(2)と、
    を備え、
    − 前記半径方向内側ワーキング層(21)は、前記タイヤの最大軸方向幅(L1)の2/3以上の軸方向幅(L2)を有し、かつ、凹部を含み、
    前記航空機タイヤは、
    − 前記ワーキング補強体(2)の半径方向内側に位置し、少なくとも1つのカーカス層(31)を含むカーカス補強体(3)と、
    − 前記カーカス補強体の半径方向外側に位置し、少なくとも1つのフープ層(41)を含むフープ補強体(4)と、
    をさらに備え、
    − 前記フープ層(41)は、最も幅の広いワーキング層の幅の0.8倍以下の軸方向幅(L4)を有するとともに、円周方向(XX’)に対して+10°〜−10°の角度で傾斜する互いに平行な補強要素を含み、
    − 前記フープ層(41)の前記補強要素は、平均直径Dを有し、
    前記フープ層(41)は、前記補強要素の前記平均直径Dの3倍以上の軸方向幅(L411)を有する少なくとも1つの軸方向不連続部(411)を含む、
    ことを特徴とする航空機タイヤ。
  2. 前記軸方向不連続部の前記軸方向幅(L411)は、前記フープ層(41)の前記補強要素の前記平均直径Dの10倍以上である、
    請求項1に記載の航空機タイヤ。
  3. 前記フープ層(41)は、該フープ層の前記補強要素の前記平均直径Dの3倍以上である軸方向幅(L411)を有する少なくとも2つの軸方向不連続部(411)を含む、
    請求項1又は2に記載の航空機タイヤ。
  4. 1つの軸方向不連続部(411)が、前記タイヤの赤道面(XZ)に中心を置く、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機タイヤ。
  5. 2つの軸方向不連続部(411)が、赤道面(XZ)に関して対称に位置する、
    請求項3に記載の航空機タイヤ。
  6. 前記フープ補強体(4)は、2つのフープ層を含む、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の航空機タイヤ。
  7. 前記フープ層(41)の前記補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの組み合わせで構成される、
    請求項1から6のいずれか1項に記載の航空機タイヤ。
  8. 前記ワーキング層(21)は、前記円周方向(XX’)に対して+20°〜−20°の角度で傾斜する互いに平行な補強要素を含む、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機タイヤ。
  9. 前記ワーキング層(21)の前記補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの組み合わせで構成される、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の航空機タイヤ。
  10. 前記円周方向との間に80°〜100°の角度を成す互いに平行な補強要素を含む少なくとも1つのカーカス層(31)を備え、該カーカス層の前記補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの組み合わせで構成される、
    請求項1から9のいずれか1項に記載の航空機タイヤ。
  11. 前記ワーキング補強体の半径方向外側に、金属又は繊維補強要素で構成された少なくとも1つの保護層を含む保護補強体が配置される、
    請求項1から10のいずれか1項に記載の航空機タイヤ。
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