本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片、ならびに有効量の該抗体またはその抗原結合断片と少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。
驚くべきことに本発明は、HSV感染後の口唇組織の急性感染症において、ヒト化抗HSV抗体の外用投与が、細胞間伝播によるヘルペス感染の局所的伝播を防止しつつ、感染症を24時間以内に排除し、それによって病変の生成を回避することを証明する。口唇単純ヘルペスのようなウイルス感染症の治療に使用される上述のウイルス抑制剤とは対照的に、本発明の抗HSV抗体は、ウイルス複製には依存しない機序によって、ウイルスを迅速に中和することができる。有益なことに、本発明の抗体は、ウイルスの溶解経路を抑制し、それによって皮膚病変を防止することが証明される。
先行技術を考慮した場合、本発明の根底にある技術的課題は、急性単純ヘルペス感染症を治療するための改良された手段および方法であって、当技術分野において公知の投与レジメンを容易にし、感染の局所的伝播を防止する手段および方法の提供である。
この技術的課題は、添付の特許請求の範囲に特徴づけられる態様の提供によって解決される。
本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片に関する。
上述したように、驚くべきことに、HSV感染後の口唇組織の急性感染症において、ヒト化抗HSV抗体の外用投与は、細胞間伝播によるヘルペス感染の局所的伝播を防止しつつ、感染症を24時間以内に迅速に排除し、それによって病変の生成を回避することが、末尾の実施例において証明された。
この発見は、Eis-Huebinger et al., Intervirology 32:351-360(1991); Eis-Huebinger et al., Journal of General Virology 74:379-385(1993); WO2011/038933 A2; Krawczyk A, et al., Journal of virology(2011);85(4):1793-1803; Krawczyk A, et al., Proc Natl Acad Sci U S A(2013);110(17):6760-6765に記載の全身性投与、Sherwood et al., Nat. Biotechnol. 14(4):468-471(1996); Zeitlin et al., Virology 225(1):213-215(1996); Zeitlin et al., Contraception 56(5):329-335(1997); Zeitlin et al., J. Reprod. Immunol. 40(1):93-101(1998)、およびZeitlin et al., Nat. Biotechnol. 16(13):1361-1364(1998)に記載の予防的治療、およびYu et al., Eye Science 12(3):145-150(1996)(およびClement et al., ARVO, Abstract/Poster 6155/D1015;ならびにWO 2010/128053)に記載の急性単純ヘルペス性角膜炎感染症における抗HSV糖タンパク質抗体による外用治療に関する上述の先行技術を考慮すれば、以下に述べる理由から、特に驚くべきであり、予想外でもある。
先行技術とは対照的に、HSV感染後の口唇組織の急性感染症におけるヒト化抗HSV抗体の外用投与は、細胞間伝播によるヘルペス感染の局所的伝播を防止しつつ、感染症を24時間以内に迅速に排除し、それによって病変の生成を回避することが証明された。
この発見、すなわち、粘膜上皮または皮膚上皮の回帰性HSV感染症の外用療法においてヒト化抗HSV抗体またはその断片を使用することができるという発見の驚くべき性質は、表皮構造に関する基礎知識を考慮に入れると、特に驚くべきであり、予想外でもある。
ヒトの皮膚上皮および粘膜上皮の層は、生物をその環境から物理的に隔離しており、脱水、化学物質、物理的損傷および微生物に対するその構造的かつ機能的防御の最前線として役立っている。極性の高い上皮細胞は、表皮の頂端層と、それより分化度の低い基底領域とを形成し、後者には表皮前駆細胞が存在する。最も表面に近い生きた層である顆粒層の側細胞膜(lateral plasma membrane)に位置する閉鎖結合、いわゆるタイトジャンクション(TJ)(Brandner, et al., 2002 Eur J Cell Biol 81, 253-263; Furuse et al., 2002, J Cell Biol 156, 1099-1111)は、頂端層(角質層)と側底層(有棘層、基底層および基底膜)との間で、表皮のバリア機能を保証している。
皮膚におけるHSV複製および子孫ウイルス産生の主要部位は、基底領域(基底層)の分化度が低い増殖性ケラチノサイトである(Mingo et al., 2012, J Virol 86, 7084-7097; Schelhaas et al., 2003, J Gen Virol 84, 2473-2484)。
一次感染の病理発生過程は、HSVが、例えば性交によって生じる表皮中の微視的亀裂を通って、中間〜基底表皮中の許容有核細胞にアクセスすることを必要とする。
HSVゲノムが神経節内で潜伏感染状態から再活性化されると、新たに形成されたビリオンが軸索微小管を下流に向かって輸送され、真皮表皮接合部または表皮の中間層内にあるシナプス終末において放出されることになる(Diefenbach et al., 2008, Rev Med Virol 18, 35-51)。HSVは、引き続いて表皮の基底領域中で複製するために、軸索-上皮間隙を横切る必要がある。
体液性免疫はHSV感染の管理に重要な役割を果たす。ウイルス侵入に必要なウイルスのエンベロープ糖タンパク質に結合することができる循環血清抗体が、感染中に発生する(Cohen et al., 1984, Journal of virology 49, 102-108)。HSVに特異的な移行血清抗体の存在はHSV-2の新生児伝染を低減することが示されている(Brown et al., 1991 , N Engl J Med 324, 1247-1252)。中和血清抗体は、ニューロン終末と上皮細胞との間の間隙中でウイルスに結合することができ、これらの組織間の双方向性ウイルス伝達を制限する(Mikloska et al., 1999, Journal of virology 73, 5934-5944)。血清抗体または全身に適用された抗体はHSV感染の程度を制限するようである。
しかし、顆粒層に限定されるタイトジャンクション(TJ)は、大きな分子に対するバリアを形成している(Helfrich et al., 2007, J Invest Dermatol 127, 782-791; Mertens et al., 2005, J Cell Biol 170, 1029-1037; Yuki et al., 2007, Exp Dermatol 16, 324-330)。それゆえに、抗体のような大きな分子の外皮への外用適用によって、回帰性HSV感染症を効果的に根絶することができ、病変の形成が防止されることは、極めて驚くべきことであった。したがってこの理由から、実施例で例示するように局所外用投与が感染症を迅速に排除することは、全身性投与との対比で驚くべきことであった。
さらにまた、抗HSV抗体の外用予防的適用による性行為伝染一次HSV-2感染の防御は先行技術に記載されているが、急性感染症の治療は驚くべきことである。なぜなら、上述した先行技術の実験設定では、ウイルス接種材料を送達する前に、抗HSV抗体が腟に外用適用されたからである。ウイルス負荷は、二次元インビトロ中和アッセイの場合のように中和されていく。ここでは、中和抗体が標的細胞への遊離ウイルス粒子の付着を防止し、ウイルス複製は、実際には起こらない。これは、実施例において例示するように、本発明の抗体の外用投与によって驚くべきことに感染症が迅速に排除されることが示された急性感染症の治療とは、全く対照的である。
さらにまた、急性単純ヘルペス性角膜炎における抗HSV糖タンパク質抗体による外用治療は先行技術に記載されているが、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、以下に挙げる理由から驚くべきことである。皮膚におけるHSV複製および子孫ウイルス産生の主要部位は、基底領域の分化度が低い増殖性ケラチノサイトである(Mingo et al., 2012, J Virol 86, 7084-7097; Schelhaas et al., 2003, J Gen Virol 84, 2473-2484)。顆粒層に限定されるタイトジャンクション(TJ)は、大きな分子に対するバリアを形成することが示されている(Helfrich et al., 2007, J Invest Dermatol 127, 782-791; Mertens et al., 2005, J Cell Biol 170, 1029-1037; Yuki et al., 2007, Exp Dermatol 16, 324-330)。それゆえに、抗体のような大きな分子の外皮への外用適用によって、回帰性HSV感染症を効果的に根絶することができ、病変の形成が防止されることは、極めて驚くべきことであった。
皮膚上皮および粘膜上皮とは対照的に眼の角膜は、急速に成長し容易に再生する細胞からなる非常に薄い非角化重層扁平上皮である。眼上皮のすべての層は絶えず有糸分裂を起こしている。角膜上皮は、涙液から酸素および細胞栄養素を吸収する滑らかな表面を与え、次にそれらの栄養素を角膜の残りの部分に分配する。皮膚上皮および粘膜上皮とのもう一つの大きな相違は、栄養素の拡散にとって不可欠な角膜内皮のある程度の漏出性である。角膜内皮の超微細構造研究により、特殊なタイトジャンクション中の間隙にはタンパク質が存在すること、および角膜のタイトジャンクションは「漏出性」ジャンクションであることが確認された(Barry et al., 1995, Invest Ophthalmol Vis Sci 36, 1115-1124; Noske et al., 1994, Ger J Ophthalmol 3, 253-257; Petroll et al., 1999, Curr Eye Res 18, 10-19)。眼の角膜は免疫学的特権部位である。眼の表面は涙液薄膜によって絶えず覆われており、この涙液薄膜は大部分が水からなるものの、抗ウイルス活性を有するいくつかのタンパク質、例えば免疫グロブリンA抗体、リゾチーム、補体およびアミラーゼなども含有している。涙液では抗HSV抗体の存在が証明されている(Centifanto et al., 1970, Ann NY Acad Sci 173, 649-656; Fox et al., 1986, The British journal of ophthalmology 70, 584-588; Shani et al., 1985, Curr Eye Res 4, 103-111)。それゆえに、組換え抗体の外用適用は、眼ヘルペス感染症の治療にとって有益でありうる。しかし、上記の理由から、抗体のような大きな分子の外皮への外用適用によって回帰性HSV感染症を効果的に根絶することができ、病変の形成が防止されることは、予想外であった。
抗HSV抗体または抗原結合断片によって治療される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす粘膜組織または表皮組織の感染症、すなわち口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される感染症は、当業者には周知であり、明確に定義された疾患である。既に上述したように、口唇単純ヘルペス(単純疱疹、口唇単純ヘルペス、回帰性口唇ヘルペス、または口腔口唇ヘルペスともいう)は、口唇に生じるタイプの単純ヘルペス、すなわち単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症である。突発は、典型的には、一般に単純疱疹または熱性疱疹として知られる小さな水疱またはびらんを口またはその周辺に引き起こす。びらんは典型的には2〜3週間以内に治癒するが、ヘルペスウイルスは顔面神経に潜伏して留まり、口腔顔面感染後は(症候性の人々では)周期的に再活性化して、口または顔面の同じ箇所で初回感染の部位にびらんを生じさせる。単純疱疹は、稀なエピソードから1年に12回以上の再発まで、さまざまな発生頻度を有する。この症状を有する人々は、典型的には、年間1〜3回の発病を経験する。突発の頻度および重症度は一般に時間と共に減少する。
外陰部単純ヘルペス(すなわち性器ヘルペス)は、単純ヘルペスウイルスが引き起こす性器感染である。1998年の研究では、これが症例数で最も一般的な性行為伝染による感染症であることが示された。ヘルペスを保因する大半の個体は、自分が感染していることに気づいておらず、単純疱疹に似た水疱を伴う突発は、多くの人が一度も起こさないであろう。ヘルペスの治療法はないが、時間の経過と共に、症状は次第に軽度になり、突発の頻度は減少していく。前述のように、HSVは、2つの別個のカテゴリーであるHSV-1とHSV-2とに分類されている。性器ヘルペスは、以前は主としてHSV-2によって引き起こされていたが、性器HSV-1感染症が増加しつつあり、現在では感染症の80%までの原因になっている。症候性である場合、HSV-1またはHSV-2の一次性器感染症の典型的な症状は、単純疱疹に似ている、性器の外表面上の炎症性丘疹および小水疱からなる性器びらんのクラスターである。これらは通常、初めてのHSVへの性器ばく露の4〜7日後に現れる。性器HSV-1感染症は性器HSV-2感染症の場合の約6分の1の率で再発する。
口唇または生殖管に限定されない慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症が知られている。例えば低ガンマグロブリン血症患者または皮膚T細胞性リンパ腫患者のような免疫不全患者は、ほとんどの場合、この疾患に冒されている。慢性皮膚単純ヘルペスは、易感染性宿主における単純ヘルペスウイルス(HSV)の独特な臨床症状である。この感染症は、潜在的に播種性(全身性)型へと進行しうる慢性的に活動性の破壊的皮膚病変と定義することができる。大半のHSV感染症は1週間または2週間での治癒を示すエピソードを呈するが、慢性皮膚単純ヘルペスの病変は、数ヶ月間持続しうる緩徐進行型の経過を有する。免疫抑制患者において一般的な慢性皮膚単純ヘルペスは、非定型的な慢性持続性病変を特徴とし、それが診断を複雑にして、診断を遅らせる。これは関連合併症を原因とする死亡につながりうる。長期間持続する慢性潰瘍、とりわけ小児におけるものを評価する時には、慢性単純ヘルペスウイルス感染の可能性を考慮することが極めて重要である。
剣状ヘルペスは、レスリング選手の間で思春期に生じるヘルペス皮膚感染症を指すが、他の接触スポーツでも一般的である。これは通常、頭部上に生じ、最も一般的には顎部、首、胸、顔、胃、および脚上に生じる。
ウイルス感染(通常は単純ヘルペスウイルス(HSV)によるもの)が引き起こすヘルペス性湿疹(カポジ水痘様発疹としても公知である)は、既存の皮膚疾患(通常はアトピー性皮膚炎(AD))から起こる広範な皮膚小水疱性皮疹である。ADを有する小児は、ヘルペス性湿疹を発症するリスクが高く、この場合、HSV1型(HSV-1)が最も一般的病原体である。ヘルペス性湿疹は重症となって、治療しなければ播種性感染および死亡に進行する場合がある。
HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、本発明との関連において使用される抗体またはその断片は、それが「抗HSV抗体またはその抗原結合断片」である限り、特には限定されない。したがって抗体は、HSV、すなわちHSVのドメインまたは抗原に特異的に結合するか、HSV、すなわちHSVのドメインまたは抗原を特異的に認識するか、HSV、すなわちHSVのドメインまたは抗原と特異的に相互作用する任意の抗体でありうる。
本発明との関連において使用される「に結合する」という用語は、少なくとも2つの「抗原相互作用部位」の相互の結合(相互作用)を規定する。「抗原相互作用部位」という用語は、本発明によれば、ポリペプチドのモチーフ、すなわち本発明の抗体または抗原結合断片の構成部分であって、HSVの特定の抗原またはHSVの抗原の特定の基と特異的に相互作用する能力を示すものを規定する。該結合/相互作用は「特異的認識」を規定するとも理解される。「特異的に認識する」という用語は、本発明によれば、抗体が、本明細書において規定するHSVのそれぞれの少なくとも2つのアミノ酸と特異的に相互作用しかつ/またはそれら少なくとも2つのアミノ酸に特異的に結合することができることを意味する。各抗体は、HSV上の異なるエピトープを認識し、そのエピトープと相互作用し、かつ/またはそのエピトープに結合することができる。この用語は、抗体分子の特異性に、すなわちHSVの特定の領域間を識別するその能力に、関係する。
本発明に従って使用される「特異的相互作用」という用語は、本発明の抗体またはその抗原結合断片が、類似する構造の(ポリ)ペプチドと交差反応しないまたは本質的に交差反応しないことを意味する。したがって本発明の抗体またはその抗原結合断片は、HSV、好ましくはHSV-1またはHSV-2の構造に特異的に結合/と相互作用する。第1および第2のIg由来ドメインが指向する上述の分子の具体例は、本明細書において、以下に記載する。
調査対象である抗体またはその抗原結合断片のパネルの交差反応性は、例えば、関心対象の(ポリ)ペプチドおよびいくつかの多少とも(構造的および/または機能的に)近縁の(ポリ)ペプチドへの、抗体またはその抗原結合断片の該パネルの結合を、通常の条件下(例えばHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1988)およびUsing Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1999)を参照されたい)でアッセイすることによって試験しうる。HSVのある構造、例えばHSVの特定のエピトープまたは(ポリ)ペプチド/タンパク質には結合するが、同じHSVの他のエピトープまたは(ポリ)ペプチドのいずれにも結合しないか本質的に結合しないコンストラクト(すなわち抗体、その抗原結合断片など)は、関心対象のエピトープまたは(ポリ)ペプチドに対して特異的であるとみなされ、本明細書に掲載する方法によるさらなる研究のために選択される。これらの方法は、特に、構造的および/または機能的に近縁の分子を使った、結合研究、ブロッキングおよび競合研究を含みうる。これらの結合研究には、FACS解析、表面プラズモン共鳴(SPR、例えばBIAcore(登録商標)によるもの)、分析用超遠心法、等温滴定熱量測定、蛍光異方性、蛍光分光法、または放射標識リガンド結合アッセイによる研究も含まれる。
「に結合する」という用語は、線状エピトープに関係するだけでなく、ヒト標的分子またはその構成部分の2つの領域からなる立体構造エピトープ、構造エピトープ、または不連続エピトープにも関係しうる。本発明との関連において、立体構造エピトープは、一次配列中で離れている2つ以上の離散したアミノ酸配列であって、ポリペプチドがネイティブタンパク質にフォールディングした時に分子の表面上に集まるものによって規定される(Sela, Science 166(1969), 1365 and Laver, Cell 61(1990), 553-536)。さらにまた、「に結合する」という用語は、本発明との関連においては、「と相互作用する」または「を認識する」という用語と互換的に使用される。
したがって特異性は、当技術分野において公知の方法および本明細書に記載する方法によって、実験的に決定することができる。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験、およびペプチドスキャンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
本発明の治療は急性感染症の治療に関係する。この点に関して「急性」とは、対象が疾患の症状を示すことを意味する。言い換えると、治療される対象は実際に治療を必要としており、本発明との関連において「急性期治療」という用語は、疾患の開始または勃発後に実際に疾患を治療するためにとられる措置に関する。本発明との関連において言及される「急性」という用語は、予防的治療または防止的治療、すなわち疾患防止のためにとられる措置、例えば感染症および/または疾患の開始/突発を防止するためにとられる措置とは対照的である。さらに具体的に述べると、予防的治療とは、標的細胞への(体外からの)遊離ウイルス粒子の付着を防止し、その結果、ウイルス複製を防止するというように理解しうる。対照的に、急性感染症(これは一次感染症である場合も回帰感染症である場合もありうる)では、HSV複製後に子孫ウイルスが産生されている。したがって、本発明にいう「急性期治療」は、HSV-1またはHSV-2が引き起こす感染症の予防的治療または防止的治療には明示的に関係しない。
急性感染症を呈しうる粘膜組織は、上皮に覆われた、主として内胚葉由来の裏打ちである粘膜を指し、これは吸収および分泌に関与する。粘膜組織は外部環境に晒される空洞および内臓を覆う。粘膜組織は、例えば鼻腔、口唇、眼瞼、耳、外陰部、および肛門などの数カ所で、皮膚とつながっている。
急性感染症を呈しうる表皮組織は、表皮、すなわち皮膚における最も外側の細胞層であって、真皮と共に皮膚を形成している組織を指す。表皮は、増殖性基底ケラチノサイトおよび分化基底上ケラチノサイトで構成された重層扁平上皮であり、病原体の侵入を防止することによって苛酷な環境に対する身体の主たるバリアとして作用し、皮膚を感染に対する天然のバリアにしている。また表皮組織は、経表皮水分喪失によって身体から大気中に放出される水の量も調節している。
上述のように、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、外用投与される。
本発明によれば「外用投与」という用語は、限定するわけではないがクリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、および軟膏を含む多種多様な投与形態による、上述した感染症を治療するための、皮膚または粘膜などの体表に適用される投薬、適用、または投与に関する。好ましい一態様において、外用投与は皮膚上への投与である、つまり抗HSV抗体またはその抗原結合断片は皮膚に直接的に適用されると理解される。理論に束縛されるものではないが、非限定的な例をさらにいくつか挙げると、外用適用は、喘息薬などの吸入による適用、または結膜に適用される点眼剤もしくは耳に入れる点耳剤などといった皮膚以外の組織の表面への適用、または歯の表面に適用される投薬であってもよい。投与経路として、外用投与は、経腸(消化管における)投与および血管内/静脈内投与(循環系への注射)とは大きく異なる。最も広義において、外用の効果は、薬力学的な意味で、全身性ではなく局所的な投薬の標的に関係するというように理解しうる。
好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。さらにもう一つの好ましい態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化抗体または完全ヒト抗体である。さらにもう一つの好ましい態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、マウス抗体である。
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、微量に存在しうる考えられる自然突然変異を除けば、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を指向する。モノクローナル抗体は、それらを、他の免疫グロブリンによる汚染が本質的にないハイブリドーマ培養によって合成しうる点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団に含まれるという抗体の特徴を示しているのであって、何らかの特定の方法による抗体の産生を要求していると解釈してはならない。上述のように、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler, Nature 256(1975), 495に記載されたハイブリドーマ法によって作製しうる。
本明細書において使用する「ポリクローナル抗体」という用語は、1種または複数種の他の同一でない抗体に混じってまたはそれらの存在下で産生された抗体を指す。一般に、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を産生する他のいくつかのBリンパ球の存在下で、あるBリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は免疫した動物から直接得られる。
本明細書において使用する「完全ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列だけを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞またはマウス細胞由来のハイブリドーマ中で産生された場合には、マウス糖質鎖を含有しうる。同様に、「マウス(mouse)抗体」または「マウス(murine)抗体」は、マウス(mouse)/マウス(murine)免疫グロブリンタンパク質配列だけを含む抗体を指す。あるいは、「完全ヒト抗体」は、ラット、ラット細胞、ラット細胞由来のハイブリドーマ中で産生された場合には、ラット糖質鎖を含有しうる。同様に、「ラット抗体」という用語は、ラット免疫グロブリン配列だけを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、例えば、完全ヒト抗体の作製およびスクリーニングを可能にする幅広く使用されているスクリーニング技術であるファージディスプレイによって作製することもできる。ファージ抗体も本発明との関連において使用することができる。ファージディスプレイ法は、例えばUS 5,403,484、US 5,969,108およびUS 5,885,793に記載されている。完全ヒト抗体の開発を可能にするもう一つの技術は、マウスハイブリドーマ技術の変法を含む。マウスを、自らのマウス遺伝子の代わりにヒト免疫グロブリン座を含有するようにトランスジェニックにする(例えばUS 5,877,397を参照されたい)。
「キメラ抗体」という用語は、もう一つのヒトまたは非ヒト種(例えばマウス、ウマ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリ)からの抗体領域(例えば定常領域)と融合またはキメラ化された本発明の可変領域を含む抗体を指す。
抗体という用語は、組換えヒト抗体、異種抗体およびヘテロハイブリッド抗体にも関係する。「組換えヒト抗体」という用語には、組換え手段によって調製、発現、作出または単離される、あらゆるヒト配列抗体、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使って発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプラインシングを伴う他の任意の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体が包含される。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および(もしあれば)定常領域を有する。ただしそのような抗体は、インビトロ突然変異導入(またはヒトIg配列に関してトランスジェニックな動物を使用する場合にはインビボ体細胞突然変異導入)に付すことができるので、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH配列およびVL配列に由来し関連するものの、インビボではヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に自然には存在しないこともありうる配列である。
「異種抗体」は、そのような抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物に関連して規定される。この用語は、当該トランスジェニック非ヒト動物からなるものではなくかつ一般に当該トランスジェニック非ヒト動物とは異なる種に由来する生物中に見いだされるものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
「ヘテロハイブリッド抗体」という用語は、異なる生物起源の軽鎖および重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖と会合したヒト重鎖を有する抗体はヘテロハイブリッド抗体である。ヘテロハイブリッド抗体の例にはキメラ抗体およびヒト化抗体がある。
抗体という用語はヒト化抗体にも関係する。非ヒト(例えばマウスまたはウサギ)抗体の「ヒト化」型は、最小限の非ヒト免疫グロブリン由来配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合部分配列)である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、アフィニティー、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらにまた、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見いだされない残基を含みうる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに洗練し最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、そして典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう。このうち、すべてのまたは実質的にすべてのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、すべてのまたは実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の、少なくとも一部分も含みうる。さらなる詳細については、Jones, Nature 321(1986), 522-525; Reichmann, Nature 332(1998), 323-327およびPresta, Curr Op Struct Biol 2(1992), 593-596を参照されたい。
抗体をヒト化するためによく使用される方法では、「ドナー」非ヒト抗体からの機能的抗原結合部位を「アクセプター」ヒト抗体上に移植するCDR移植が行われる。CDR移植法は当技術分野において公知であり、例えばUS 5,225,539、US 5,693,761およびUS 6,407,213に記載されている。もう一つの関連する方法は、遺伝子再編成および遺伝子変換を起こすことができる1つまたは複数のヒト化免疫グロブリン遺伝子座を含有する様に遺伝子操作されたトランスジェニック動物からのヒト化抗体の産生である(例えばUS 7,129,084を参照されたい)。
したがって、本発明との関連において、用語「抗体」は完全免疫グロブリン分子およびそのような免疫グロブリン分子の構成部分(すなわち「その抗原結合断片」)に関する。さらにまた、この用語は、上述のように、修飾および/または改変抗体分子に関する。この用語は組換えまたは合成により作製/合成された抗体にも関係する。この用語は、インタクトな抗体ならびに分離された軽鎖および重鎖、Fab、Fv、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2のような抗体断片にも関係する。抗体という用語は、完全ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、および一本鎖Fv(scFv)または抗体融合タンパク質のような抗体コンストラクトも包含するが、それらに限定されるわけではない。
好ましい一態様において、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体は、完全長抗体、すなわち完全な免疫グロブリン分子であり、これは完全抗体と呼ばれることも多い。
「一本鎖Fv」、すなわち「scFv」抗体断片は、本発明との関連において、抗体のVHドメインおよびVLドメインを有し、これらのドメインが一本のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを、VHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。一本鎖抗体の産生に関して記載された技法は、例えばPlueckthun「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, N.Y.(1994), 269-315に記載されている。
本明細書にいう「Fab断片」は、1本の軽鎖ならびに1本の重鎖のCH1領域および可変領域で構成される。Fab分子の重鎖はもう一つの重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
「Fc」領域は、抗体のCH2ドメインとCH3ドメインとを含む2本の重鎖断片を含有する。前記2本の重鎖断片は2つ以上のジスルフィド結合とCH3ドメイン同士の疎水性相互作用によって、一体となっている。
「Fab'断片」は、1本の軽鎖と、1本の重鎖の一部分であって、VHドメインおよびCH1ドメインを含有し、かつF(ab')2分子を形成させるために2つのFab'断片の2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成させることができるように、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域をも含有する重鎖の一部分とを含有する。
「F(ab')2断片」は、2本の軽鎖と、2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成されるように定常領域のうちのCH1ドメインとCH2ドメインとの間の部分を含有する2本の重鎖とを含有する。したがってF(ab')2断片は、2本の重鎖間のジスルフィド結合によって一体となった2つのFab'断片で構成される。
「Fv領域」は、重鎖と軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域を欠く。
本発明に従って使用される抗体、抗体コンストラクト、抗体断片、抗体誘導体(いずれもIg由来)またはそれらの対応する免疫グロブリン鎖は、当技術分野において公知の従来技法を使って、例えばアミノ酸の欠失、挿入、置換、付加、および/もしくは組換えならびに/または当技術分野において公知の他の任意の修飾を単独で、または組み合わせて使用することによって、さらに修飾することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基となるDNA配列中にそのような修飾を導入するための方法は、当業者には周知である。例えば上記Sambrook(1989)を参照されたい。用語「Ig由来ドメイン」は特に、少なくとも1つのCDRを含む(ポリ)ペプチドコンストラクトに関する。列記したIg由来ドメインの断片または誘導体は、上記抗体分子の構成部分であり、かつ/または化学的/生化学的もしくは分子生物学的方法によって修飾された、(ポリ)ペプチドを規定する。対応する方法は当技術分野において公知であり、特に実験書に記載されている(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd edition(1989)および3rd edition(2001); Gerhardt et al., Methods for General and Molecular Bacteriology ASM Press(1994); Lefkovits, Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques; Academic Press(1997); Golemis, Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press(2002)参照)。
口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、本発明との関連において使用される、外用投与される抗体またはその断片は、それが「抗HSV抗体またはその抗原結合断片」である限り、特には限定されない。したがって本抗体は、HSV、すなわちHSVのドメイン、抗原、好ましくは表面抗原に特異的に結合するか、それを特異的に認識しまたはそれと特異的に相互作用する、任意の抗体であってよい。当業者は、当業者に共通の一般知識および上述の方法に基づいて、所与のドメイン(すなわちHSVの抗原、好ましくは表面抗原)に対するそのような抗体を容易に作製し、各抗体がHSV、好ましくはHSV-1および/またはHSV-2の所与のドメイン、抗原、好ましくは表面抗原を検出/に結合することができるかどうかを決定することができる立場にある。
好ましい一態様において、本発明の抗体は、ウイルス抗原糖タンパク質D、B、C、H、L、E、またはI(すなわちgD、gB、gC、gH、gL、gE、gI)に結合/を認識する。糖タンパク質D、B、C、H、L、E、およびIはHSV-1および/またはHSV-2の表面タンパク質またはエンベロープタンパク質である。これらのタンパク質は、HSV-1および/またはHSV-2の表面上またはエンベロープ構造中に、すなわち放出された感染性粒子の表面(すなわち遊離ビリオンのエンベロープ)上に見いだしうるだけでなく、感染細胞の表面上、すなわち細胞の表面上にも存在しうる。ただし、より好ましい一態様において、本発明の抗体は、HSV-1および/またはHSV-2エンベロープのウイルス表面抗原糖タンパク質D、B、C、H、L、E、またはI(すなわちgD、gB、gC、gH、gL、gE、またはgI)に結合/を認識する。好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、HSV-1および/またはHSV-2エンベロープの表面糖タンパク質B(gB)、好ましくはそのエピトープを認識する。HSV-1および/またはHSV-2の糖タンパク質Bは詳しく特徴づけられており、特定の配列に限定されるわけではないが、さまざまなHSV-1およびHSV-2株の配列例を、それぞれSEQ ID NO:11〜16に示す。SEQ ID NO:11はHSV-1 F株の糖タンパク質Bの配列を示し、SEQ ID NO:12は、HSV-1 KOS株の糖タンパク質Bの配列を示し、SEQ ID NO:13はHSV-1 gC-39-R6株の糖タンパク質Bの配列を示し、SEQ ID NO:14はHSV-2 HG52株の糖タンパク質Bの配列を示し、SEQ ID NO:15はHSV-2 333株の糖タンパク質Bの配列を示し、SEQ ID NO:16はHSV-2 MMA株の糖タンパク質Bの配列を示す。これらの糖タンパク質Bアミノ酸配列の配列アライメントから、HSV-1およびHSV-2のgBの全体的アミノ酸ホモロジーは85%であり、タンパク質のN末端領域およびC末端領域は最も保存されていないことがわかる。
好ましい一態様において、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、感染細胞から隣接する第2の非感染細胞へのHSVの伝播(細胞間伝播)を阻害することができる。
細胞間伝播とは、無細胞粒子を放出することなく隣接する第2の非感染細胞に伝播するヘルペスウイルスの能力をいう。隣接する細胞に伝播するヘルペスウイルスの能力を低減または排除することには、病変の生成が回避されるという有益な効果がある。抗体が、感染細胞から隣接する第2の非感染細胞へのHSVの伝播(細胞間伝播)を阻害することができるかどうかを調べるには、当業者に周知の方法を使用することができる。一例として、以下のアッセイを使用することができる。24ウェル組織培養プレート中のガラスカバースリップ上でコンフルエントになるまで成長させたVero細胞を、37℃で4時間、400 TCID50/ウェルの一定ウイルス量に感染させた。1の50%組織培養感染量(1 TCID50)は、接種された細胞培養の50%に細胞変性効果をもたらすウイルスなどの細胞変性作用物質の量である。次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞をPBSで2回洗浄し、さらに、上清によるウイルス伝播を防止するために過剰量のさまざまな抗HSV抗体またはポリクローナル抗HSV対照血清を含有する1mlのDMEM、2%FCS、Pen/Strep中、37℃で2日間インキュベートする。HSV感染細胞のウイルス抗原を蛍光標識ポリクローナルヤギ抗HSV血清(BETHYL Laboratories、米国テキサス州モントゴメリー、カタログ番号A190-136F、ロット番号A190-136F-2)で検出する。好ましくは、隣接する細胞のうち、感染するものが20%未満であれば、抗体は細胞間伝播を阻害しており、好ましくは、上記のアッセイにおいて感染するのは、隣接する細胞のうちの15%未満、10%未満、5%未満、より好ましくは3%未満、最も好ましくは1%未満である。
細胞間伝播は、次に述べるようにアッセイすることもできる。中和抗体の存在は必ずしもヘルペスウイルス科の細胞間伝播を防止しない。HSV-1およびHSV-2の細胞間伝播の破壊に関して抗体を比較するために、標準的な試験方法を使ってこの特定の播種様式をインビトロで模倣することができる。例えば個々の細胞を感染させるために、コンフルエントなVero細胞単層を、まずHSV-1またはHSV-2のいずれかと共に、それぞれ低いMOI(例えば100 TCID50)でインキュベートする。37℃で4時間の吸着後に、ウイルス接種材料を除去する必要がある。個々の感染細胞からの直接的な細胞間伝染は促進するが、細胞培養上清越しのウイルス粒子によるウイルス伝播を防止するために、Vero細胞単層を過剰量の中和抗gB抗体、対照、または培地のみで処理する。48時間後に、HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質D上の共通するエピトープに特異的なマウスモノクローナル抗体(例えばAcris Antibodies、米国カリフォルニア州サンディエゴ)と蛍光がコンジュゲートした二次抗体とによる免疫染色によって、ウイルス伝播を検出することができる。免疫蛍光像は、蛍光顕微鏡により、倍率100倍または400倍で取得することができる。
さらにまた、好ましい一態様において、本発明の抗HSV抗体はHSVを中和することができる。本明細書にいう「中和」とは、抗体がウイルスを、これ以上どの細胞にも感染できないように、オプソニン化することを意味する。例えば濃度がせいぜい20nMの抗体が、例えば100 TCID50という所定量のHSVを中和できるかどうかを試験するためのアッセイは、Eis-Huebinger et al., Intervirology 32:351-360(1991); Eis-Huebinger et al., Journal of General Virology 74:379-385(1993)ならびにWO2011/038933 A2の実施例1および実施例2に記載されている。したがって、好ましい一態様において、本発明の抗体は、最大でも20nMの濃度で、好ましくは最大でも16nM、より好ましくは最大でも12nM、例えば最大でも10nm、例えば最大でも8nMまたは最大でも6nM、最も好ましくは最大でも4nMの濃度で、100 TCID50という所定量のHSVを、80%超、好ましくは90%超、例えば95%超、より好ましくは96%超、例えば97%超、最も好ましくは98%超、例えば99%超、さらには100%、中和することができる。
したがって、好ましい一態様において、本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)に依存せずに細胞間伝播を阻害することができる、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片に関する。
上述のように、抗体が細胞間伝播を阻害することができるかどうかの能力を試験するためのアッセイは、補体および/または細胞傷害性エフェクター細胞を含有しないので、抗体が抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)に依存せずに細胞間伝播を阻害することができるかどうかを決定するために、同じアッセイを使用することができる。
好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:1を含むVHCDR1、SEQ ID NO:2を含むVHCDR2、SEQ ID NO:3を含むVHCDR3、SEQ ID NO:4を含むVLCDR1、SEQ ID NO:5を含むVLCDR2、およびSEQ ID NO:6を含むVLCDR3の相補性決定領域を含む。
本明細書において使用する用語「CDR」は、当技術分野において周知の「相補性決定領域」に関する。CDRは、免疫グロブリンのうち、該分子の特異性を決定し、特定のリガンドと接触する構成部分である。CDRは、当該分子の最も可変的な構成部分であり、これらの分子の多様性の一因になっている。各Vドメインには3つのCDR領域CDR1、CDR2、およびCDR3がある。CDR-Hは可変重鎖のCDR領域を表し、CDR-Lは可変軽鎖のCDR領域に関する。VHは可変重鎖を意味し、VLは可変軽鎖を意味する。Ig由来領域のCDR領域は、Kabat「Sequences of Proteins of Immunological Interest」5th edit. NIH Publication no. 91-3242 U.S. Department of Health and Human Services(1991); Chothia J. Mol. Biol. 196(1987), 901-917、またはChothia, Nature 342(1989), 877-883に記載されているように決定しうる。
したがって本発明との関連において、本明細書に上述した抗体分子は、完全抗体(IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgA1、IgGA2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、またはIgEのような免疫グロブリン)、F(ab)断片、Fab'-SH断片、Fv断片、Fab'断片、F(ab')2断片、キメラ抗体、CDR移植抗体、完全ヒト抗体、二価抗体コンストラクト、抗体融合タンパク質、合成抗体、二価一本鎖抗体、三価一本鎖抗体および多価一本鎖抗体からなる群より選択される。
「ヒト化アプローチ」は当技術分野において周知であり、特に、抗体分子、例えばIg由来分子については記載されている。用語「ヒト化」は、非ヒト抗体に由来する配列の一部を含有する、ヒト化型の非ヒト(例えばマウス)抗体またはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')、scFv、または抗体の他の抗原結合部分配列)を指す。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の結合特異性、アフィニティーおよび能力を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種のCDR由来の残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリンを含む。一般にヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう。このうち、すべてのまたは実質的にすべてのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、すべてのまたは実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の、少なくとも一部分も含むであろう。特にJones et al., Nature 321(1986),522-525、Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2(1992), 593-596を参照されたい。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体には、1つまたは複数のアミノ酸が非ヒト供給源から導入されており、抗体の元の結合活性を依然として保っている。抗体/抗体分子をヒト化するための方法は、Jones et al., Nature 321(1986),522-525; Reichmann et al., Nature 332(1988),323-327;およびVerhoeyen et al., Science 239(1988), 1534-1536にさらに詳しく記されている。ヒト化抗体、例えばEpCAMに対する抗体の具体例は、当技術分野において公知である。例えば(LoBuglio, Proceedings of the American Society of Clinical Oncology Abstract(1997), 1562およびKhor, Proceedings of the American Society of Clinical Oncology Abstract(1997), 847)を参照されたい。
したがって本発明との関連において、ヒト化されていて薬学的組成物中にうまく使用することができる抗体分子またはその抗原結合断片が提供される。
さらにまた、好ましい一態様において、本発明の抗体は、VHドメイン(重鎖可変領域)およびVLドメイン(軽鎖可変領域)、すなわちSEQ ID NO:9に示す抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列およびSEQ ID NO:10に示す抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を含む、またはそれらからなる、HSV-1および/またはHSV-2の糖タンパク質B(gB)に結合する抗体またはその抗原結合断片である。
しかし、本発明において使用される抗体またはその抗原結合断片は、上述の可変重鎖領域および軽鎖可変領域に特には限定されず、当該抗体または抗原結合断片が、本明細書において上述し後述するように、本発明の観点からみて、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療に効果を有する能力を持つか、または感染細胞から隣接する第2の非感染細胞へのHSVの伝播(細胞間伝播)を阻害することができるか、または抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)に依存せずに細胞間伝播を阻害することができる限り、それぞれSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10の配列と少なくとも95%、90%、85%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%の配列ホモロジーを有するVHドメインおよびVLドメインを含む、またはそれらからなる、HSV-1および/またはHSV-2エンベロープの糖タンパク質B(gB)に結合する抗体またはその抗原結合断片であってもよい。さらにまた、本抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10の配列に対して最大0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有するVHドメインおよびVLドメインを含む分子である。さらにまた、本抗体またはその抗原結合断片は、Fab、Fab'、Fab'-SH、FV、scFV、F(ab')2、およびダイアボディからなる群より選択される抗体断片である。
あるアミノ酸配列がSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10の配列と一定程度の同一性を有するかどうかを決定するために、当業者は当技術分野において周知の手段および方法、例えば手作業による、または当業者に公知のコンピュータプログラムを使用することによる、アライメントなどを使用することができる。そのようなアライメントは、例えば当業者に公知の手段および方法で、例えばLipman-Pearson法(Science 227(1985), 1435)またはCLUSTALアルゴリズムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを使用することによって行うことができる。そのようなアライメントではアミノ酸配列中に存在する保存されたアミノ酸残基に最大のホモロジーを割り当てることが好ましい。好ましい一態様では、アミノ酸配列の比較にClustalW2を使用する。ペアワイズ比較/アライメントの場合は、好ましくは、以下の設定を選ぶ:タンパク質重み行列: BLOSUM 62;ギャップ開始(gap open): 10;ギャップ伸長(gap extension): 0.1。多重比較/アライメントの場合は、好ましくは、以下の設定を選ぶ:タンパク質重み行列: BLOSUM 62;ギャップ開始: 10;ギャップ伸長 0.2;ギャップ間距離(gap distance): 5;末端ギャップペナルティなし(no end gap)。
本発明によれば、2つ以上の核酸配列またはアミノ酸配列との関連において、「同一」または「同一性パーセント」という用語は、当技術分野において公知の配列比較アルゴリズムを使った測定で、または手作業によるアライメントと目視検査による測定で、比較ウインドウ全体にわたってまたは指定された領域全体にわたって最大の一致が得られるように比較しアライメントした場合に、同じである2つ以上の配列もしくは部分配列、または指定されたパーセンテージの同じアミノ酸残基もしくは同じヌクレオチド(例えば、HSV-1またはHSV-2のgBに結合することができ、かつ本明細書において上述し後述するように、本発明の観点からみて、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症を治療する能力を有するか、または感染細胞から隣接する第2の非感染細胞へのHSVの伝播(細胞間伝播)を阻害することができるか、または抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)に依存せずに細胞間伝播を阻害することができる、上述の核酸配列またはアミノ酸配列と、60%または65%の同一性、好ましくは、70〜95%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性)を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。例えば60%〜95%またはそれ以上の配列同一性を有する配列は実質的に同一であるとみなされる。そのような規定は被験配列の相補鎖にも適用される。好ましくは、長さが少なくとも約15〜25個のアミノ酸またはヌクレオチドである領域全体、より好ましくは長さが約50〜100個のアミノ酸またはヌクレオチドである領域全体にわたって、上記の同一性が存在する。例えば、当技術分野において公知のCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson Nucl. Acids Res. 2(1994), 4673-4680)またはFASTDB(Brutlag, Comp. App. Biosci. 6(1990), 237-245)に基づくアルゴリズムなどといったアルゴリズムを使用して、2つ/3つ以上の配列間の同一性パーセントを決定するための方法が、当業者には公知であろう。
FASTDBアルゴリズムは、典型的には、配列中の内部の非マッチ欠失または付加、すなわちギャップを、その計算において考慮しないが、これは、同一性%の過剰評価を回避するために、手作業によって補正することができる。しかしCLUSTALWはその同一性計算において配列ギャップを考慮に入れる。当業者はBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムも利用することができる(Altschul,(1997)Nucl. Acids Res. 25:3389-3402; Altschul(1993)J. Mol. Evol. 36:290-300; Altschul(1990)J. Mol. Biol. 215:403-410)。核酸配列用のBLASTNプログラムでは、デフォルト値として、ワード長(word length)(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルト値として、ワード長(W)3、期待値(E)10を使用する。BLOSUM62スコアリング行列(Henikoff(1989)PNAS 89:10915)は、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
好ましくは、アミノ酸置換は「保存的置換」であり、これは、多くの場合、当該タンパク質の生物学的活性を改変することなく、変化を加えることができるように、タンパク質中のアミノ酸を類似する特徴(例えば電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖コンフォメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換することを指す。一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物学的活性を実質的に改変しないと、当業者には認識されている(例えばWatson, Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co. 4th Ed.(1987), 224参照)。加えて、構造的または機能的に類似するアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。本発明との関連では、本発明の結合性化合物/抗体は、本明細書において開示する具体的アミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:9(抗体の抗体重鎖の可変領域を指す)およびSEQ ID NO:10(抗体の軽鎖の可変部を指す)と比較した場合に、最大で0(変化なし)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20個またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を含む配列を有するポリペプチド鎖を含む。本明細書において使用する「最大でX個」の保存的アミノ酸置換という語句には、0個の置換、および最大10個で、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の置換を含む、任意の数の置換が含まれる。
そのような例示的置換は、好ましくは、以下の表1に示すものに従って行われる。
さらにまた、好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:7の位置1〜30、38〜51、68〜99、および112〜122、ならびにSEQ ID NO:8の位置1〜23、41〜55、63〜94、および104〜114に示されるアミノ酸残基に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
さらにもう一つの好ましい態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:7の位置1〜30、38〜51、68〜99、および112〜122、ならびにSEQ ID NO:8の位置1〜23、41〜55、63〜94、および104〜114に示されるアミノ酸残基と比較して、フレームワーク領域において、少なくとも75%、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%の全体的配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。そのような抗体は、その抗体または抗原結合断片がHSV-1またはHSV-2のgBに結合し、かつ本明細書において上述し後述するように、本発明の観点からみて、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療に効果を奏する能力を持つか、または感染細胞から隣接する第2の非感染細胞へのHSVの伝播(細胞間伝播)を阻害することができるか、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)に依存せずに細胞間伝播を阻害することができる限り、本発明の医学的用途に適している。
したがって、好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖および重鎖の上記可変領域(すなわち上に規定したCDR、すなわちSEQ ID NO:1を含むVHCDR1、SEQ ID NO:2を含むVHCDR2、SEQ ID NO:3を含むVHCDR3、SEQ ID NO:4を含むVLCDR1、SEQ ID NO:5を含むVLCDR2、およびSEQ ID NO:6を含むVLCDR3)を有するアミノ酸配列を含むと共に、前記アミノ酸配列は、SEQ ID NO:7の位置1〜30、38〜51、68〜99、および112〜122、ならびにSEQ ID NO:8の位置1〜23、41〜55、63〜94、および104〜114に示されるアミノ酸残基と比較して、フレームワーク領域において、少なくとも75%、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%の全体的配列同一性を有する、フレームワーク領域における可変性を有する。
この文脈において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8を、関心対象のポリペプチドの配列が最大限一致するようにアライメントし、アライメントした2つの配列間のアミノ酸同一性が、SEQ ID NO:7の位置1〜30、38〜51、68〜99、および112〜122、ならびにSEQ ID NO:8の位置1〜23、41〜55、63〜94、および104〜114において、少なくともX%であるならば、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8に対してフレームワーク領域において「少なくともX%の配列同一性」を有する。上述のように、そのようなアミノ酸配列のアライメントは、例えば、National Centre for Biotechnology Information(NCBI)ホームページで提供されている「BLAST」プログラムなどの公に利用できるコンピュータホモロジープログラムを使用し、そこに提供されているデフォルト設定を使って行うことができる。アミノ酸配列セットまたは核酸配列セットの配列同一性パーセンテージを算出する他の方法も、当技術分野において公知である。
さらにまた、好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:9のVHおよびSEQ ID NO:10のVLを含む。
本発明の抗体または抗原結合断片の特異性は、上に規定した抗体または抗原結合断片のアミノ酸配列の性質によって表されるだけでなく、抗体が結合することのできるエピトープによっても表されうる。したがって本発明は、好ましい一態様において、上に規定した抗体、好ましくはmAbhu2cと同じエピトープを認識する、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片を利用する。実施例の項に示すように、また、WO2011/038933A2の図13Aおよび図13Bに図解されているように、このエピトープは、HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質Bのアミノ酸172〜195およびアミノ酸295〜313に位置して、変性に対してある程度耐性な、不連続エピトープ、というよりむしろ擬似連続(pseudocontinuous)エピトープである。本願との関連において、mAb 2c抗体のエピトープは、gBタンパク質の最初の487アミノ末端残基内に位置しうる。好ましくは、エピトープは、gBタンパク質の172位と307位の間のアミノ酸配列内に位置する少なくとも1つのアミノ酸配列を含みうる。
エピトープは、gBタンパク質の連続アミノ酸配列301YGYRE305、好ましくは連続アミノ酸配列301YGYREG306または300FYGYRE305を含みうる。より好ましくは、配列は末端をさらに伸ばしうる(すなわち299PFYGYRE305または300FYGYREGS307)。本発明の抗体のエピトープは、gBの連続アミノ酸配列298〜313(298SPFYGYREGSHTEHTS313)を含みうる。
あるいは、エピトープは、連続アミノ酸配列172QVWFGHRYSQFMGIFED188中に位置しうる。エピトープは連続アミノ酸配列172QVWFGHRYSQFMG184を含みうる。
好ましくは、エピトープは2つ以上の連続アミノ酸配列からなりうる。エピトープは部分的に不連続エピトープでありうる。より好ましくは、エピトープは、2つの連続アミノ酸配列を含みうる。2つのアミノ酸配列からなるそのようなエピトープは「デュオトープ(duotope)」と呼ぶことができる。抗体は両方のアミノ酸配列に結合しうる。
より好ましくは、デュオトープのアミノ酸配列は、アミノ酸配列300FYGYRE305およびアミノ酸172位と188位との間にあるアミノ酸配列を含みうる。さらに好ましくは、エピトープは、gBタンパク質のアミノ酸配列300FYGYRE305およびアミノ酸配列179YSQFMG184を含みうる。あるいはエピトープまたはデュオトープを化学的に合成することもできる。配列YSQFMG-βA-FYGYREを有するエピトープを化学的に合成しうる。本明細書において使用する略号βAはベータ-アラニンを指す。
最も好ましくは、エピトープはgBタンパク質のアミノ酸配列FYGYREおよびアミノ酸配列FEDを含みうる。配列FED-βA-βA-FYGYREまたはPFYGYREGFEDFを有するエピトープを化学的に合成しうる。
エピトープはgBタンパク質に含まれうるが、その分解産物にも含まれうるし、あるいは化学合成ペプチドであってもよいことは、当業者には理解されるだろう。アミノ酸位置は、gBタンパク質の配列中の対応するアミノ酸配列の位置を明示するために示されているに過ぎない。本発明はエピトープを含むすべてのペプチドを包含する。ペプチドは、長さが100アミノ酸超であるポリペプチドの構成部分であるか、100アミノ酸未満、好ましくは50アミノ酸未満、より好ましくは25アミノ酸未満、さらに好ましくは16アミノ酸未満の小さなペプチドでありうる。そのようなペプチドのアミノ酸は天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸(例えばβ-アミノ酸、γ-アミノ酸、D-アミノ酸)またはそれらの組み合わせでありうる。さらに本発明は、前記エピトープの各レトロインベルソペプチドを包含しうる。ペプチドは結合されていなくても結合されていてもよい。ペプチドは、小分子(例えば薬物またはフルオロフォア)、高分子量ポリマー(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)など)またはタンパク質、脂肪酸、糖部分に結合されているか、膜内に挿入されていてもよい。
問題の抗体と本発明の抗体が同じエピトープを認識するかどうかを試験するために、以下の競合研究を実行することができる。3moi(感染多重度)で感染させたVero細胞を20時間後に競合剤としてのさまざまな濃度の問題の抗体と共に1時間インキュベートする。第2のインキュベーション工程では、本発明の抗体を100nMの一定濃度で適用し、その結合を、本発明の抗体の定常ドメインに対する蛍光標識抗体を使って、フローサイトメトリーで検出する。問題の抗体の濃度に逆比例する結合は、両抗体が同じエピトープを認識することを示す。ただし、当技術分野では、使用しうるアッセイが他にも数多く知られている。
したがって、好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片はmAb 2cと同じエピトープを認識し、ここで、該エピトープは、HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質Bのアミノ酸172〜195および295〜315に位置する。Daeumer et al., Med Microbiol Immunol 2011(200):85-97は、アミノ酸31〜505のgB領域にまたがるオーバーラップした複数の15-merペプチドを使って、mAb 2cは、HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質Bのアミノ酸175〜195およびアミノ酸298〜315に位置するエピトープを認識することができると記載している。Krawczyk et al., Journal of Virology 2011(85):1793-1803は、高分解能13-merペプチドマイクロアレイを使って、mAb 2cが認識するエピトープを、HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質Bのアミノ酸172〜195およびアミノ酸295〜313にマッピングした。
HSV-1および/またはHSV-2の糖タンパク質Bの配列は、詳しく特徴づけられており、上に規定したように、特別な配列に限定されるわけではないが、さまざまなHSV-1株およびHSV-2株の配列の例をそれぞれSEQ ID NO:11〜16に示す。mAb 2c抗体によって認識されるエピトープは、さまざまなHSV株間で、そしてHSV-1とHSV-2との間で、高度に保存されている。
本発明に開示する治療に使用することができるこの抗体またはその抗原結合断片は、HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質Bの上記エピトープを検出する抗体に限定されない。実際、糖タンパク質Bの別のエピトープ、さらにはHSV-1およびHSV-2の別のタンパク質またはポリペプチドのエピトープを検出する他の抗体も、そのような抗体が、本明細書において上述し後述するように、本発明の観点からみて、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療において効果を奏することができるか、または感染細胞から隣接する第2の非感染細胞へのHSVの伝播(細胞間伝播)を阻害することができるか、または抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)に依存せずに細胞間伝播を阻害することができる限り、本発明の治療に使用することができる。
当業者の通常の技量があれば、当業者は、常法により、本明細書において提供する配列から、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のような抗体の作製に有用なHSVのポリペプチドの関連エピトープ(そして機能的断片)を容易に推定することができる。しかし、当業者は、CDR移植抗体のような、あるいはヒト化抗体および完全ヒト抗体などのような改変抗体も、容易に得ることができる立場にある。
本発明との関連において特に好ましいのはモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の調製には、連続継代性細胞株培養によって産生される抗体を与える任意の技法を使用することができる。そのような技法の例には、ハイブリドーマ技法、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技法がある(Shepherd and Dean(2000), Monoclonal Antibodies: A Practical Approach, Oxford University Press, Goding and Goding(1996)、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice - Production and Application of Monoclonal Antibodies in Cell Biology, Biochemistry and Immunology, Academic Pr Inc, USA)。
ペプチドミメティックによって抗体誘導体も作製することができる。さらに、一本鎖抗体の作製に関して記載された技法(特に米国特許第4,946,778号を参照されたい)を、HSVの抗原を特異的に認識する一本鎖抗体を作製するために適合させることができる。また、トランスジェニック動物は、HSVのポリペプチドに対するヒト化抗体を発現させるために使用することができる。
本発明では、HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質Bおよび他の任意のタンパク質またはポリペプチドのネイティブポリペプチドおよび組換えポリペプチドに対する特異的抗体の産生も考えられる。この産生は、例えばマウスのような動物の免疫に基づく。ただし本発明では、抗体/抗血清を産生するために、他の動物も考えられる。例えば、ウサギ、マウス、ヤギ、ロバなどによって、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を産生することができる。相応に選ばれたHSV-1またはHSV-2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、適当なベクターにサブクローニングすることができ、発現能を有する生物中で、例えば細菌中で、組換えポリペプチドを発現させる。こうして、発現された組換えタンパク質をマウスに腹腔内注射することができ、その結果生じる特異的抗体は、例えば、心臓内血液穿刺によってもたらされるマウス血清から得ることができる。本発明では、末尾の実施例に例示するDNAワクチン戦略を使ったネイティブポリペプチドおよび組換えポリペプチドに対する特異的抗体の産生も考えられる。DNAワクチン戦略は当技術分野において周知であり、リポソームによる送達、遺伝子銃またはジェット注入によるもの、および筋肉内または皮内注射によるものを包含する。したがって、HSV-1およびHSV-2のポリペプチドまたはタンパク質またはエピトープに対する抗体は、HSV-1およびHSV-2の所望のポリペプチドまたはタンパク質またはエピトープ、特にgBのエピトープを発現するベクターを筋肉内に直接注射することで動物を直接免疫することによって得ることができる。得られた特異的抗体の量はELISAを使って定量することができ、これについても本明細書において後述する。抗体を産生するためのさらなる方法は当技術分野において周知である。例えばHarlow and Lane,「Antibodies, A Laboratory Manual」CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988を参照されたい。
本明細書において使用する「特異的に結合する」という用語は、タンパク質および他の生体物質の不均一な集団の存在下で、HSV-1およびHSV-2の所望のポリペプチドまたはタンパク質またはエピトープ、特にgBのエピトープと、抗体の存在を決定づける、結合反応を指す。
したがって、指定されたアッセイ条件下で、指定された抗体と、HSV-1およびHSV-2の対応するポリペプチドまたはタンパク質またはエピトープ、特にgBのエピトープは、互いに結合し、試料中に存在する他の構成要素とは有意な量では結合しない。そのような条件下での標的分析物への特異的結合は、特定の標的分析物に対するその特異性ゆえに選択された結合部分を必要としうる。特定の抗原と特異的に反応する抗体を選択するには、さまざまなイムノアッセイフォーマットを使用することができる。例えば固相ELISAイムノアッセイは、分析物と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用されている。特異的免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイのフォーマットおよび条件の説明については、Shepherd and Dean(2000), Monoclonal Antibodies: A Practical Approach, Oxford University Pressおよび/またはHoward and Bethell(2000)Basic Methods in Antibody Production and Characterization, Crc. Pr. Inc.を参照されたい。典型的には、特異的または選択的反応は、バックグラウンドの少なくとも2倍のシグナル・ノイズ比があり、より典型的には、バックグラウンドの10〜100倍以上であろう。当業者は、新規ポリペプチドに対する特異的結合分子を提供し、作製することができる立場にある。特異的結合アッセイでは、望ましくない交差反応性を回避するために、特異的結合分子を容易に使用することができ、例えばポリクローナル抗体を公知の方法によって容易に精製し、選択することができる(前記Shepherd and Dean参照)。
「抗HSV抗体またはその抗原結合断片」という用語は、本発明によれば、当該抗体分子またはその抗原結合断片が、HSV-1およびHSV-2の所望のポリペプチドまたはタンパク質またはエピトープ、特にgBのエピトープの、少なくとも2つのアミノ酸を特異的に認識しまたはそれら少なくとも2つのアミノ酸と特異的に相互作用しおよび/またはそれらに結合することができることを意味する。該用語は、抗体分子の特異性、すなわち、HSV-1およびHSV-2の所望のポリペプチドまたはタンパク質またはエピトープ、特にgBのエピトープの、特定領域同士を識別するその能力に関する。したがって特異性は、当技術分野において公知の方法および本明細書に開示し記載する方法によって、実験的に決定することができる。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験、およびペプチドスキャンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような方法には、特に末尾の実施例に例証するような、KD値の決定も含まれる。ペプチドスキャン(ペプスポット(pepspot)アッセイ)は、ポリペプチド抗原中の線状エピトープをマッピングするために日常的に使用されている。互いにオーバーラップするペプチドを使って、ポリペプチドの一次配列を、活性化セルロース上で逐次的に合成する。特定の抗原/エピトープを検出または認識するその能力に関して試験される抗体によるあるペプチドの認識を、ルーチンの発色(西洋ワサビペルオキシダーゼを持つ二次抗体と4-クロロナフトールおよび過酸化水素)、化学発光反応、または当技術分野において公知の類似する手段によってスコア化する。特に化学発光反応の場合は、反応を定量することができる。抗体があるセットのオーバラップペプチドと反応すれば、反応に必要な最小限のアミノ酸配列を推定することができる。同じアッセイによって、2つの離れた反応性ペプチドのクラスターが明らかになる場合があるが、それは、抗原ポリペプチド中の不連続エピトープ、すなわち立体構造エピトープの認識を示す(Geysen(1986), Mol. Immunol. 23, 709-715)。
上記にそして下記に規定される抗HSV抗体またはその抗原結合断片の好ましいエピトープは、mAb2cによって認識されるのと同一のエピトープである。
好ましい一態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体(またはその抗原結合断片)は、mAb 2c抗体(またはその抗原結合断片)である。このモノクローナル抗体MAb 2cは他の文献に記載があり、HSV-1/2が体液性免疫監視機構を免れる重要な機序であるウイルスの細胞間伝播を、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)に依存せずに抑止することによって、ウイルスを中和することが証明されている; Eis-Huebinger et al., Intervirology 32:351-360(1991); Eis-Huebinger et al., Journal of General Virology 74:379-385(1993); WO2011/038933 A2; Krawczyk A, et al., Journal of virology(2011);85(4):1793-1803; Krawczyk A, et al., Proc Natl Acad Sci U S A(2013);110(17):6760-6765。
上に規定した抗体およびその抗原結合断片は、外用投与を伴う医学的状況では、特に有用である。したがって上述のように、本発明は、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片の医学的使用に関する。したがって本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片に関する。
「治療」などの用語は、本明細書では、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを広く意味するために使用される。既に上述したように、本発明の治療は急性感染症の治療に関する。したがって本発明の治療では、その効果が、疾患またはその症状の完全なまたは部分的な防止という観点からみて予防的でありうることは考慮されていない。むしろ「治療」という用語は、上に規定した急性HSV感染症の疾患および/またはその疾患に起因する有害作用および/または症状を部分的または完全に治癒させるという観点からみて治療的であると理解されるべきである。したがって本発明の治療は、急性感染症の治療に関する。この点に関して「急性」とは、対象が疾患の症状を示していることを意味する。言い換えると、治療される対象は実際に治療を必要としており、本発明との関連において「急性期治療」という用語は、疾患の開始または疾患の勃発後に疾患を実際に治療するためにとられる措置に関する。本発明との関連において言及される用語「急性」は、予防的治療または防止的治療、すなわち、例えば感染の防止および/または疾患の開始を防止する目的で、疾患予防のためにとられる措置とは対照的である。より具体的に述べると、予防的治療とは、遊離のウイルス粒子(体外からのもの)が標的細胞に付着することを防止し、その結果としてウイルス複製を防止することというように理解することができる。これに対し、急性感染症(これは一次感染症である場合も回帰感染症である場合もありうる)では、HSV複製後に子孫ウイルスが産生されている。したがって、本発明にいう「急性期治療」は、HSV-1またはHSV-2が引き起こす感染症の予防的治療または防止的治療には明示的に関係しない。
本発明による外用投与は、上述の感染症を治療するために、例えば限定するわけではないが、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤および軟膏などといった多種多様な投与形態によって皮膚または粘膜などの体表に適用される、投薬または適用または投与に関する。好ましい一態様において、外用投与は皮膚上への投与である、つまり抗HSV抗体またはその抗原結合断片は皮膚に直接的に適用されると理解される。理論に束縛されるものではないが、非限定的な例をさらにいくつか挙げると、外用適用は、喘息薬などの吸入による適用、または結膜に適用される点眼剤もしくは耳に入れる点耳剤などといった皮膚以外の組織の表面への適用、または歯の表面に適用される投薬であってもよい。投与経路として、外用投与は、経腸(消化管における)投与および血管内/静脈内投与(循環系への注射)とは大きく異なる。最も広義において、外用の効果は、薬力学的な意味で、全身性ではなく局所的な投薬の標的に関係するというように理解しうる。
本発明による外用投与の様式、すなわち、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染の感染症を治療するために、皮膚または粘膜などの体表に適用される投薬、薬学的組成物、または適用もしくは投与は、特に限定されることはなく、当業者には、外用投与に適しうる形態および調製物が知られている。理論に束縛されるものではなく、限定するわけでもないが、以下に例を挙げる。多くの一般分類があるが、外用投薬に適した類似する製剤間に明確な境界線があるわけではない。一例として、外用溶液剤を使用することができる。外用溶液剤は一般に低粘度であり、基剤に水またはアルコールを使用していることが多い。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、ローション剤を使用することができる。ローション剤は溶液剤と似ているが、溶液剤より濃厚であり、溶液剤よりも皮膚軟化性が高い傾向を示す。ローション剤は通常、水と混合された油であり、通例、アルコール分は溶液剤よりも少ない。
一例として、抗HSV抗体を外用投与するために、クリーム剤を使用することができる。クリーム剤は通常、ほぼ等しい比率の油と水とのエマルジョンである。クリーム剤は皮膚の角質層外層によく浸透する。クリーム剤はローション剤より濃厚であり、容器から取り出してもその形状を維持する。クリーム剤は中程度の保湿傾向を示す傾向がある。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、軟膏を使用することができる。軟膏は、皮膚または粘膜への外からの適用を意図した、一般に均一で粘稠な半固形調製物であり、最も一般的には高い粘度を持つグリース状の濃厚な油状物(油80%-水20%)である。軟膏は、それが含有することのできる水の最大量を規定する水数を有する。軟膏は、皮膚軟化剤として使用するか、保護目的、治療目的または予防目的である程度の閉塞が望ましい部分の皮膚への本発明による抗HSV抗体の適用に使用することができる。軟膏の媒体は軟膏基剤として知られている。基剤の選択は、軟膏の臨床的適応に依存し、当業者の知識に基づいて適切に選ばれる。タイプの異なる軟膏基剤として、炭化水素基剤、例えば固形パラフィン、軟パラフィン、微結晶ワックス、およびセレシン;吸収性基剤、例えば羊毛脂、ミツロウ;水溶性基剤、例えばマクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400;乳化基剤、例えば乳化ワックス、セトリミド;植物油、例えばオリーブ油、ヤシ油、ゴマ油、アーモンド油およびラッカセイ油が挙げられる。一般に、医薬、すなわち本発明における抗HSV抗体は、基剤中に分散され、後に、それらは皮膚の生きた細胞への薬物浸透後に分割される。軟膏は一般に、皮膚分泌物と混和しない、混和する、または乳化する調製物が得られるように、疎水性、親水性、または水乳化基剤を使って製剤化される。軟膏は、炭化水素(脂肪性)基剤、吸収性基剤、水洗可能な基剤、または水溶性基剤から得ることもできる。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、ゲル剤を使用することができる。ゲル剤は通常は溶液剤より濃厚である。ゲル剤はアルコール基剤中の半固形エマルジョンであることが多い。体温で溶けるものもある。ゲル剤はアルコールまたはアセトンと混合されたセルロースであることが多い。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、フォーム剤を使用することができる。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、経皮貼付剤を使用することができる。経皮貼付剤は非常に正確な持効性薬物送達法になりうる。経皮送達システム(貼付剤)からの活性構成要素の放出は、貼付剤全体を覆う粘着性物質を通した拡散または貼付剤の縁部にのみ粘着性物質を有しうる膜を通した拡散によって制御するか、薬物放出をポリマーマトリックスからの放出によって制御することができる。
一例として、抗HSV抗体を外用投与するために、散剤を使用することができる。散剤は、純粋な薬物だけであるか(タルカムパウダー)、トウモロコシデンプンまたはトウモロコシ穂軸粉末などの担体中に混合された薬物で形成される(Zeosorb AF-ミコナゾール散剤)。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、固形剤を使用することができる。したがって抗HSV抗体は固形剤中に含めることができる。防臭剤、制汗剤、収斂剤、および止血剤がその例である。好ましい一態様では、特に、外陰部単純ヘルペスのHSV-1またはHSV-2が引き起こす粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における抗HSV抗体の外用投与との関連において、抗HSV抗体は坐剤の形態で投与することができる。坐剤は、外陰部単純ヘルペスの治療との関連においては抗HSV抗体を含む薬物送達システムであり、腟に(すなわち腟坐剤の形態で)挿入することができ、そこで溶解または融解して抗HSV抗体を放出し、よって抗HSV抗体を局所的に送達するのに役立つ。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、気化デバイスを使用することができる。したがって、抗HSV抗体は軟膏剤またはゲル剤として適用され、気化によって粘膜に到達しうる。
もう一つの例として、抗HSV抗体を外用投与するために、ペースト剤を使用することができる。ペースト剤には、3つの作用物質、すなわち油、水、および粉末が含まれている。ペースト剤は、内部に粉末が懸濁されている軟膏である。
最後の非限定的な一例として、抗HSV抗体を外用投与するために、チンキ剤を使用することができる。チンキ剤は、アルコールのパーセンテージが高い皮膚調製物である。
もう一つの態様において、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、感染粘膜組織または感染表皮組織に外用適用される。抗HSV抗体またはその抗原結合断片が適用される箇所は特には限定されない。好ましくは、HSV-1またはHSV-2が引き起こす感染症の急性症状を呈する粘膜組織または表皮組織の箇所が選ばれる。好ましくは、対象の身体のこれらの箇所または構成部分は、口唇、外陰部、鼻、耳、眼、手指、足指および/または身体全体の皮膚部、好ましくは頭、顎部、首、胸、顔、胃および/または脚上の皮膚部である。特に、上述の皮膚単純ヘルペス感染症では、一般に身体全体の皮膚部が(広く)冒されうるのに対し、上述の剣状ヘルペスでは、通常は、頭上、最も一般的には顎部、首、胸、顔、胃、および脚上に生じる。したがってこれらの疾患では、本発明による外用投与は、これら粘膜組織または表皮組織の身体構成部分または身体箇所に対して行われることが好ましい。
さらにもう一つの好ましい態様において、本発明による使用のための抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、感染粘膜組織または感染表皮組織の周辺部に外用適用される。感染粘膜組織または感染表皮組織の周辺部とは、組織の所与の感染場所の周りにある箇所と理解すべきである。周辺部の範囲は特には限定されないが、例えば、感染部のサイズの約0.5倍のサイズ、感染部と同じサイズ、感染部のサイズの1.5倍、好ましくは2倍、さらに好ましくは3、4、または5倍のサイズを有する、感染組織に隣接する/を取り囲む箇所を覆いうる。
口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用適用される抗HSV抗体またはその抗原結合断片は、ウイルス抑制剤(virostatics)と組み合わせて投与することができ、好ましくは、そのような併用療法は、本発明による治療に対して相乗効果を発揮する。
本明細書において使用する用語「組み合わせ」は、上に概説した抗HSV抗体またはその抗原結合断片と本明細書において後述するウイルス抑制剤との組み合わせに関する。好ましい一態様において、同時適用が考えられる。さらに、組み合わせは、2つの構成要素の、すなわち、上に概説した抗HSV抗体またはその抗原結合断片と本明細書において後述するウイルス抑制剤との、逐次的適用も包含する。したがって、これらの構成要素のうちの一方は、当該組み合わせのうちの他方の前に投与するか、他方と同時に投与するか、または他方の後に投与することができ、あるいは逆もまた同じである。したがって本明細書にいう「組み合わせて」とは、上に概説した抗HSV抗体またはその抗原結合断片の投与と本明細書において後述するウイルス抑制剤の投与との間のタイミングに制約を課さない。したがって、2つの構成要素を同時に/並行して投与しない場合、投与の時間差は1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、または72時間であるか、当業者によって容易に決定されかつ/または本明細書に記載する任意の適切な時間差でありうる。
ウイルス抑制剤は当業者には周知であり、一般に抗ウイルス薬とも呼ばれ、これは、特にウイルス感染症の治療に使用される薬物クラスである。特定のウイルスには特定の抗ウイルス剤が使用される。大半の抗生物質とは異なり、抗ウイルス薬はその標的病原体を破壊するのではなく、それらの発生を阻害する。
HSV感染症の場合、当業者は、本発明に従ってウイルスの発生を阻害するのに適した適当なウイルス抑制剤を選択できる立場にある。例として、ウイルス抑制剤は、ヌクレオシド類似体、ピロホスフェート類似体、ヌクレオチド類似体、アマンタジン誘導体、およびヘリカーゼ-プライマーゼ阻害剤の各薬物クラスからなる群より選択しうる。したがって本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、ヌクレオシド類似体、ピロホスフェート類似体、ヌクレオチド類似体、およびヘリカーゼ-プライマーゼ阻害剤の各薬物クラスからなる群より選択されるウイルス抑制剤と組み合わせて外用適用される抗HSV抗体またはその抗原結合断片に関する。
ヌクレオシド類似体は当技術分野において公知であり、DNA合成においてヌクレオシドのように作用する分子に関する。ヌクレオシド類似体には、感染細胞におけるウイルス複製を防止するために使用される一連の抗ウイルス製品が含まれる。ヌクレオシド類似体がリン酸化されると、それらは伸長するDNA鎖に組み込まれるのに十分なほどヌクレオチドに類似しているので代謝拮抗物質として働くが、ヌクレオシド類似体は連鎖停止剤として作用し、ウイルスDNAポリメラーゼを停止させる。ヌクレオシド類似体、ヌクレオチド類似体、およびピロホスフェート類似体は一般に、ウイルスの核酸合成を阻害してウイルス複製をブロックすることが知られている。ヌクレオシド類似体、ヌクレオチド類似体は代謝拮抗薬である。ピロホスフェート類似体(例えばフォスカーネット)はピロホスフェートアニオンを構造的に模倣し、細胞DNAポリメラーゼに影響を及ぼさない濃度で、ウイルス特異的DNAポリメラーゼ上のピロホスフェート結合部位を選択的に阻害することによって、抗ウイルス活性を発揮する。ヌクレオチド類似体およびピロホスフェート類似体は、細胞中に取り込まれる前に、チミジンキナーゼまたは他のキナーゼによる初期活性化(リン酸化)を必要としない。ヘリカーゼ-プライマーゼ阻害剤はウイルスのヘリカーゼ-プライマーゼを標的とする非ヌクレオシド阻害剤である。
好ましくは、以下に要約するように、広く公知の認可されたウイルス抑制剤を使用しうる。ヌクレオシド類似体としては、アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビルおよびファムシクロビル(Famaciclovir)からなる群より選択される化合物を例示することができ、上述の併用療法に使用しうる。ピロホスフェート類似体としては、フォスカーネットを使用しうる。ヌクレオチド類似体としては、シドフォビルを使用しうる。ヘリカーゼ-プライマーゼ阻害剤としては、プリテリビル(Pritelivir)が例示される。アマンタジン誘導体としては、トロマンタジン(Tromantandin)を使用しうる。
アシクロビルは、シクログアノシン(ACV)または2-アミノ-9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)-3H-プリン-6-オンとも呼ばれ、ACERPES(登録商標)、Acic(登録商標)、Aciclobeta(登録商標)、AcicloCT(登録商標)、Aciclostad(登録商標)、Aciclovir、Acic(登録商標)、Ophtal(登録商標)、Acivir(登録商標)、AciVision、Acyclovir(登録商標)、Aviral(登録商標)、Cyclovir、Helvevir(登録商標)、Herpex、Supraviran(登録商標)、Virucalm(登録商標)、Virupos(登録商標)Virzin、Zoliparin(登録商標)、Zovir、およびZovirax(登録商標)などの商品名で販売されているグアノシン類似体抗ウイルス薬である。
ペンシクロビル(2-アミノ-9-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]-6,9-ジヒドロ-3H-プリン-6-オン)は、DenavirおよびFenistilなどの商品名で販売されているグアニン類似体抗ウイルス薬である。
ファムシクロビル(2-[(アセチルオキシ)メチル]-4-(2-アミノ-9H-プリン-9-イル)ブチルアセテート)は、改良された経口バイオアベイラビリティを持つペンシクロビルのプロドラッグである。
フォスカーネットは、式HO2CPO3H2を持つ化学化合物の共役塩基であり、Foscavir(登録商標)およびTriapten(登録商標)という商品名で販売されている。
バラシクロビルは、(S)-2-[(2-アミノ-6-オキソ-6,9-ジヒドロ-3H-プリン-9-イル)メトキシ]エチル-2-アミノ-3-メチルブタノエートとも呼ばれ、例えばValtrex(登録商標)という名称で販売されている、グアノシン類似体抗ウイルス薬ACVのプロドラッグである。
シドフォビル(Cidovovir)(CDV)は、(S)-1-[3-ヒドロキシ-2-(ホスホニルメトキシプロピル)]シトシンとも呼ばれ、Visitde(登録商標)という名称で販売されているヌクレオチド類似体抗ウイルス薬である。
プリテリビルは、AIC-316またはBAY57-1293とも呼ばれるチアゾリルアミドであり、性器HSV-2感染症の治療に関して現在、第II相臨床治験中のヘリカーゼ-プライマーゼ阻害剤である。
局所治療薬トロマンタジン(Viru-Merz Serolゲル)はHSV皮膚感染症の局所治療に明示的に使用されている。トロマンタジンはアマンタジン誘導体である。Griffinの米国特許第4,351,847号は、アマンタジン誘導体が単純ヘルペスウイルスに対して有効であることを開示している。
さらにまた、本発明は、有効量の上記の抗体またはその抗原結合断片と少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物に関する。
賦形剤は、強力な活性成分を含有する製剤をかさ高くする目的で活性成分、すなわち上記の抗HSV抗体またはその抗原結合断片と一緒に製剤化される不活性物質である。賦形剤は「増量剤」、「充填剤」または「希釈剤」と呼ばれることも多い。かさ高くすることにより、剤形を製造する際に、簡便かつ正確に原薬を調合することが可能になる。賦形剤は、薬物の吸収性もしくは溶解性または他の薬物動態要件を高めるなどといった、さまざまな治療強化目的にも役立つことができる。賦形剤は、予想される貯蔵寿命中の変性の防止などといったインビトロ安定性を助けることに加えて、粉末流動性または非粘着性を促進することなどによって当該活性物質の取り扱いを助けるために、製造工程においても役立ちうる。適当な賦形剤の選択は、活性成分および他の因子に加えて、投与経路および剤形にも依存する。
したがって上記に沿って、有効量の抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物は、固体、液体または気体の形態にあることができ、特に、散剤、錠剤、溶液剤またはエアロゾル剤の形態をとりうる。薬学的組成物は、任意で、薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含むことが好ましい。
好適な薬学的担体、賦形剤、および/または希釈剤の例は当技術分野において周知であり、リン酸緩衝食塩溶液、水、水中油型エマルジョンなどのエマルジョン、さまざまなタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。そのような担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化することができる。これらの薬学的組成物は、対象に適切な用量で、すなわち当業者が当技術分野において公知の方法によって容易に決定することのできる「有効量」で、投与することができる。適切な薬学的組成物の投与は、本発明に従って、外用投与により達成される。投薬レジメンは担当医および臨床的因子によって決定されるであろう。医学分野では周知であるとおり、ある任意の患者に関する投薬量は、その患者または対象のサイズ、体表面積、年齢、投与される個々の化合物、性別、投与時間および投与経路、全身の健康状態、および同時に投与される他の薬物を含む多くの因子に依存する。タンパク質性の薬学的活性物は、投与1回あたり0.1〜10μg/kg体重の量で存在しうるが、この例示的範囲を下回るまたは上回る用量も、特に上述の因子を考慮すれば想定される。本発明との関連において特に好ましい外用投与については、0.1〜10mg/ml、好ましくは0.5〜5mg/mlの抗体濃度を持つ、本明細書において上記におよび下記に規定する外用投与に適した薬学的活性物が特に想定される。これは、溶液(PBS)中の、またはクリームと1:2に混合した溶液中の、濃度0.5〜5mg/ml(これはPBS中またはPBSと同じ密度のクリーム中の0.5〜5mg/gに対応する)の抗体を使用した以下に例示する実施例で使用した範囲に対応する。
このように、好ましくは、抗体もしくはその抗原結合断片および/またはウイルス抑制剤が有効量で含まれる。用語「有効量」とは、薬学的組成物が投与される対象において検出可能な治療的応答を誘発するのに十分な量を指す。上記によれば、薬学的組成物中の抗体の含有量は、それが上述の治療に有用である限り、限定されないが、好ましくは全組成物に対して0.0000001〜10重量%を含有する。さらに、本明細書に記載する抗体は、好ましくは担体中で使用される。一般に、組成物を等張性にするために、適当な量の薬学的に許容される塩が担体中に使用される。担体の例には、食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液があるが、それらに限定されるわけではない。好ましくは、許容される賦形剤、担体、または安定剤は、クエン酸塩、リン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;塩形成対イオン、例えばナトリウムおよびカリウム;低分子量(>10アミノ酸残基)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミンまたはゼラチン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;ヒスチジン、グルタミン、リジン、アスパラギン、アルギニン、またはグリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む糖質;単糖;二糖;他の糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;キレート剤、例えばEDTA;非イオン界面活性剤、例えばTween、Pluronic、またはポリエチレングリコール;メチオニン、アスコルビン酸、およびトコフェロールを含む酸化防止剤;および/または保存剤、例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール; 3-ペンタノール;およびm-クレゾール)など、使用される投薬量および濃度において非毒性である。適切な担体およびそれらの製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985, Mack Publishing Co.に詳述されている。
進行は定期的評価によって監視することができる。本発明の抗体、その抗原結合断片または薬学的組成物は、上に規定したように、全身投与ではなく局所的に投与される。外用投与のための調製物については既に上述したが、それには、特に、滅菌された水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、および乳剤、ならびにクリーム剤および坐剤が含まれる。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば食塩水および緩衝媒体が含まれる。例えば抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガスなどの保存剤ならびに他の添加剤が存在してもよい。さらにまた、本発明の薬学的組成物は、その薬学的組成物の用途に応じてさらなる作用物質を含みうる。該作用物質は、例えばTween、EDTA、クエン酸塩、スクロース、ならびに薬学的組成物の用途に適した当業者に周知の他の作用物質でありうる。
本発明によれば、用語「薬学的組成物」は、患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物に関する。本発明との関連において、この医薬/薬学的組成物は、HSV-1またはHSV-2が引き起こす粘膜組織または表皮組織の急性感染症を患っている患者に、本発明に従って外用投与される。本発明との関連において、対象、すなわち患者とは、ヒト患者を指す。したがって本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、有効量の抗体またはその抗原結合断片と、少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物にも関係する。薬学的組成物の好ましい態様については、上記に規定した、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体またはその抗原結合断片、および薬学的組成物との関連において、上記に説明したのと同じことが、必要な変更を加えれば当てはまる。
本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症を治療するための方法であって、上に規定した抗体または抗原結合断片を外用投与する工程を含む方法にも関係する。したがって本発明は、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症を対象において治療する方法であって、抗体またはその抗原結合断片が治療有効量で対象に外用投与される方法に関する。治療方法の好ましい態様については、上記に規定した、口唇単純ヘルペス、外陰部単純ヘルペス、慢性または播種性皮膚単純ヘルペス感染症、剣状ヘルペス、およびヘルペス性湿疹からなる群より選択される、HSV-1またはHSV-2が引き起こす対象における粘膜組織または表皮組織の急性感染症の治療における使用のための、外用投与される抗HSV抗体もしくはその抗原結合断片または薬学的組成物および薬学的組成物との関連において上記に説明したのと同じことが、必要な変更を加えれば当てはまる。
本発明において、対象は、好ましい一態様では、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、齧歯類、例えばラット、マウス、およびモルモット、または霊長類、例えばゴリラ、チンパンジー、およびヒトなどの哺乳動物である。最も好ましい一態様では、対象はヒトである。
本発明の他の局面および利点を以下の実施例において述べるが、以下の実施例は例示のために提供するものであって、限定のために提供するものではない。本願において言及する刊行物、特許、特許出願または他の文書は、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。