JP2017520554A - 炎症性腸疾患の処置のための方法及び医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、炎症性腸疾患の処置のための方法及び医薬組成物に関する。本方法は、炎症性腸疾患を、それが必要な対象者において処置する方法に関し、当該方法は、その対象者に少なくとも一つのOX1Rアゴニストの治療的有効量を投与することを含む。

Description

本発明は、炎症性腸疾患の処置のための方法及び医薬組成物に関する。
クローン病(CD)及びUC(潰瘍性大腸炎)を含む炎症性腸疾患(IBD)は、およそ150万のヨーロッパ人を冒し、及びその発症ピーク(peak onset)は15〜30歳の年齢の人にある。IBD発生率は、発展途上国でなおも増加している。フランスでは、2008年の医療保障機関の記録からUC患者は64,399名と見積もられた。UCは直腸に関わり、結腸の一部又は結腸全体(汎大腸炎(pancolitis))を連続して冒し得る。食事の変化、抗生物質使用、環境危険因子、及び腸内ミクロフローラがIBDの病変形成に関わり、過去100年に及ぶIBDの罹患率増加に寄与している。
IBDの病理の我々の理解のめざましい進歩にもかかわらず、現行の処置は、長期にわたり疾患を制御するのに効率的なものではない。実際に、UCの患者の15〜25%は、依然として手術(結腸全摘除術)を受けており、またほとんどの強力な処置(抗TNF抗体)で与えられるのは、1年の処置で、臨床試験に参加した患者においてわずか30%での完全寛解に過ぎない。さらに、UCは結腸直腸ガンのリスクを高める(30年で18%)。近年、患者あたり年間の直接的なUCの医療費の概算は、米国で6217ドルから11477ドル、欧州で8949ユーロから10395ユーロの範囲にある。入院費が、直接的な医療費の41〜55%に相当する。間接的な費用は、米国で総費用のおよそ3分の1、そして欧州では54〜68%に相当する。UCの経済的負荷の総額は年間、米国で81億〜149億ドル、及び欧州で125億〜291億ユーロと見積もられる。直接費用の総額は,米国で34億〜86億ドル、そして欧州で54億〜126億ユーロである。直接費用、入院費及び手術は、疾患重症度の悪化に伴って増大した。UCは費用のかかる疾患であり、入院は直接的な医療費に有意に寄与し、及び間接的費用は相当なものである。疾患のより良好な制御が必要とされる。今までのところ、現行の処置がUCにおいて経験的に用いられている。それらは主に、免疫系及び炎症をターゲティングするものであり(アミノサリチル酸、ステロイド、及び免疫刺激剤)、一方で新しい上皮の異常(すなわちERストレス、酸化的ストレス)をターゲティングする処置が、おそらくは長期の寛解維持、さらにはUCの治癒にも、より有効(耐容性も、より良好)であるらしい。このように、一次的な上皮の欠陥を防ぐ薬物が、UCをより良好に管理する、患者の生活の質を向上させ、末期合併症を回避し、且つUCのケアの費用をかなり低減するために不可欠である。
オレキシン類(オレキシン−A及びオレキシン−B)は、2つのクラスA GPCRサブタイプである、OX1R及びOX2Rと相互作用する、睡眠/覚醒制御に関わる視床下部ペプチドである。オレキシン類によるこれらの受容体の活性化は、Gq依存性及びGq非依存性経路を介し、細胞の一過性カルシウム濃度上昇を典型的に誘発した。オレキシン類が、1)強いミトコンドリアのアポトーシスを誘導し;2)ガン細胞で異種移植されたヌードマウスにおける腫瘍成長の強い阻害を誘導する、結腸、膵臓及び肝ガンに由来する消化器ガン細胞系において、OX1Rは、高度に異所的に発現されていたことが最近立証された。これらの効果は、i)オレキシン類の存在下でチロシンリン酸化されるOX1Rにおける、2ITIM(イムノレセプターチロシン阻害性モチーフ)配列の存在;ii)ミトコンドリアからサイトゾルへのチトクロムc遊離、及びカスパーゼ−3及びカスパーゼ−7活性化に関わるミトコンドリアのアポトーシスの原因であるチロシンホスファターゼ SHP−2の動員及び活性化が関わる元来の機構により媒介されていた。しかしながら、IBDの処置におけるオレキシン類の関与は、全く詳査されていない。
本発明は、炎症性腸疾患の処置のための方法及び医薬組成物に関する。
本発明者らは、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)を含む炎症性腸疾患(IBD)のヒト上皮においてOX1Rが検出されたことを立証している。これらの観察に基づき、本発明者らはデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)で処理されたマウスにおける急性炎症に対するオレキシンA(OxA)の効果を詳査して、DSS処理マウスのOxA処置が、疾患活動指数(DAI)、及び結腸上皮の組織学的観点も改善することを示している。さらに、OxAは、DSSで誘発された大腸炎のマウスの結腸抽出物中のTNFα、IL6、IL8相同体及びIL1Bなどの「炎症性の」サイトカインの分泌を低下させる。新しい突発性UC様マウスモデル(EXCY2マウス、国際公開公報第2012/140516号)の最近の開発は、突発性大腸炎(spontaneous colitis)に対するOxA効果を研究するうえで理想的に好適なものである。本発明者らは、10週齡EXCY2マウスにおける重篤な大腸炎をOxA処置が保護したことを明らかにしている。事実、OxA処置EXCY2マウスは、媒質処理EXCY2マウスと比較して正常な結腸粘膜を呈していた。さらに、OxA/OX1R系は、大腸炎の発症に関わる2つの主要調節解除経路、すなわちEXCY2マウス及びCaco2細胞の双方における酸化的ストレス及びERストレスを誘導した。これらの結果は、OX1Rアゴニストが炎症性腸疾患の処置に好適であることを示している。
したがって、本発明の目的は、炎症性腸疾患を、それが必要な対象者において処置する方法に関し、当該方法は、その対象者に少なくとも一つのOX1Rアゴニストの治療的有効量を投与することを含む。
本願明細書で使用する場合、「対象者」の用語は、齧歯動物、ネコ科の動物、イヌ科の動物、及び霊長類などの哺乳動物を称する。好ましくは、本発明に係る対象者はヒトである。
本願明細書で使用する場合、「炎症性腸疾患」の用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、腸を冒す任意の炎症性疾患を称する。この用語は、潰瘍性大腸炎、クローン病、とりわけ、回腸炎、微視的大腸炎(リンパ球性大腸炎及びコラーゲン形成大腸炎)、細菌若しくはウイルスにより引き起こされる感染性大腸炎、放射線性大腸炎、虚血性大腸炎、小児大腸炎、原因不明の大腸炎、及び機能性腸障害(明白な解剖学的異常のない、報告された症候)を伴って又は伴わずに、結腸を特異的に冒す状態にあるクローン病を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、潰瘍性大腸炎の処置に特に好適である。
本願明細書で使用する場合、「処置」又は「処置すること」とは、臨床結果を含め有益又は望ましい結果を得るための手法である。本発明の目的のために、有益又は望ましい臨床結果は、以下の一以上を含むが、これらに限定されない:その疾患に起因する一以上の症候を緩和すること、その疾患の程度を低減すること、その疾患を安定化すること(たとえば、疾患の悪化を予防すること又は遅延すること)、その疾患の蔓延を予防すること又は遅延すること、その疾患の再発を予防すること又は遅延すること、その疾患の進行の遅延又は緩慢化すること、その病状を改善すること、その疾患の寛解(部分的又は全体的)をもたらすこと、その疾患を処置するのに必要な一以上の他の薬物の用量を低減すること、その疾患の進行を遅延すること、生活の質を高めること、及び/又は延命すること。「処置」の用語には、予防的処置も含まれる。本願明細書で使用する場合、「予防する」の用語は、所与の状態を得ること若しくは患うことのリスクの低減、又は病気ではないがその疾患に近づいている若しくは近付き得る対象者における当該状態若しくは再発の低減若しくは阻害を称する。
本願明細書で使用する場合、「OX1R」の用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、オレキシン類に対する7回膜貫通型のレセプターOX1Rを称する。OX1Rの例示的なアミノ酸配列を、配列番号1として示す。
配列番号1:ヒトオレキシンレセプター−1 OX1R
1 mepsatpgaq mgvppgsrep spvppdyede flrylwrdyl ypkqyewvli aayvavfvva
61 lvgntlvcla vwrnhhmrtv tnyfivnlsl advlvtaicl pasllvdite swlfghalck
121 vipylqavsv svavltlsfi aldrwyaich pllfkstarr argsilgiwa vslaimvpqa
181 avmecssvlp elanrtrlfs vcderwaddl ypkiyhscff ivtylaplgl mamayfqifr
241 klwgrqipgt tsalvrnwkr psdqlgdleq glsgepqprg raflaevkqm rarrktakml
301 mvvllvfalc ylpisvlnvl krvfgmfrqa sdreavyacf tfshwlvyan saanpiiynf
361 lsgkfreqfk aafscclpgl gpcgslkaps prssashksl slqsrcsisk isehvvltsv
421 ttvlp
したがって、本願明細書で使用する場合、「OX1Rアゴニスト」の用語とは、OX1Rに結合できてOX1R活性を促進する、天然又は非天然の任意の化合物を称する。とりわけ、ある化合物がOX1Rアゴニストであるかどうかを判定するための簡単な方法は、OX1Rを発現している細胞において、候補物質が一過性のカルシウム遊離を誘導することができるかどうかを判定することにある。いくつかの他の態様において、化合物は、OX1Rを発現しているガン細胞系(たとえば、結腸直腸ガン細胞系)のアポトーシスを誘導する場合に、OX1Rアゴニストである。実際に、OX1RはGq媒介性のホスホリパーゼC活性化及び細胞の一過性カルシウム濃度上昇に関連しない機構により、ガン細胞系におけるアポトーシスを促進する。オレキシン類は、OX1Rの2つのチロシンベースのモチーフ、ITIM及びITSMのチロシンリン酸化を実際に誘導し、この結果ホスホチロシンホスファターゼSHP−2の動員を起こし、その活性化はミトコンドリアのアポトーシスの原因となる(Voisin T, El Firar A, Rouyer-Fessard C, Gratio V, Laburthe M. A hallmark of immunoreceptor, the tyrosine-based inhibitory motif ITIM, is present in the G protein-coupled receptor OX1R for orexins and drives apoptosis: a novel mechanism(イムノレセプター、チロシンベースの阻害性モチーフITIMの顕著な特徴は、オレキシン類に対する、Gタンパク質にカップリングしたレセプターOX1Rに存在し、アポトーシスを駆動する:新規な機構)FASEB J. 2008 Jun;22(6):1993-2002.;El Firar A, Voisin T, Rouyer-Fessard C, Ostuni MA, Couvineau A, Laburthe M. Discovery of a functional immunoreceptor tyrosine-based switch motif in a 7-transmembrane-spanning receptor: role in the orexin receptor OX1R-driven apoptosis.(7回膜貫通型のレセプターにおける機能性イムノレセプターチロシンベーススイッチモチーフの発見:オレキシンレセプターOX1R駆動性のアポトーシスにおける役割).FASEB J. 2009 Dec;23(12):4069-80. doi: 10.1096/fj.09-131367. Epub 2009 Aug 6.)。一過性のカルシウム遊離と独立して、SHP−2の動員及び細胞のアポトーシスの誘導に関わるシグナル伝達経路が活性化される。
いくつかの実施形態では、OX1Rアゴニストは小有機分子である。「小有機分子」の用語は、医薬で一般的に使用される有機分子のものと同等のサイズの分子を称する。この用語では、生物学的高分子(たとえば、タンパク質、核酸など)を除く。好ましい小有機分子は、約5000Daまで、より具体的には2000Daまで、最も具体的には約1000Daまでのサイズの範囲にある。
いくつかの実施形態では、OX1Rアゴニストは、OX1R抗体又はその一部分である。
本願明細書で使用する場合、「抗体」は、天然に存在する抗体、及び天然に存在しない抗体の双方を含む。具体的には、「抗体」には、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、並びにそれらの一価及び二価のフラグメントが含まれる。さらに、「抗体」には、キメラ抗体、全合成抗体、単鎖抗体、及びそれらのフラグメントが含まれる。抗体は、ヒト抗体又は非ヒト抗体であり得る。非ヒト抗体は、ヒトにおける免疫原性を低減するよう、リコンビナント方法によりヒト化され得る。
本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体はモノクローナル抗体である。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体はポリクローナル抗体である。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体はヒト化抗体である。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体はキメラ抗体である。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は、抗体の軽鎖を含む本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は抗体の重鎖を含む。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は、その抗体のFab部分を含む。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は、その抗体のF(ab’)2部分を含む。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は、その抗体のFc部分を含む。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は、その抗体のFv部分を含む。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は、その抗体の可変ドメインを含む。本願明細書に記載される抗体又はその部分の一つの実施形態では、その抗体の部分は、その抗体の一以上のCDRドメインを含む。
抗体は、従来の方法論に従って調製される。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilsteinの方法を用いて生成され得る。本発明において有用なモノクローナル抗体を調製するために、マウス又は他の適切なホスト動物に、OX1Rの抗原性フォームで、好適な間隔にて免疫付与を行う(たとえば、週2回、毎週、月2回又は毎月)。動物には、殺処分の1週間以内に抗原の最終「追加免疫」が行われてもよい。免疫化の間、免疫性アジュバントを使用することが望ましい場合が多い。好適な免疫性アジュバントとして、フロインド不完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、リビアジュバント、Hunter's Titermax、QS21若しくはQuil Aなどのサポニンアジュバント,又はCpG含有免疫促進性オリゴヌクレオチドが挙げられる。他の好適なアジュバントは、当該分野で周知である。動物は、皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、鼻腔内又は他の経路により免疫付与され得る。所与の動物は、複数経路により複数フォームの抗原で免疫付与されてよい。手短に説明すると、リコンビナントOX1Rは、リコンビナント細胞系での発現により提供され得る。特に、OX1Rは、OX1Rをそれらの表面に発現しているヒト細胞の形態で提供され得る。免疫化レジメンの後、動物の脾臓、リンパ節又は他の器官からリンパ球を単離し、ポリエチレングリコールなどの試薬を用いて好適な骨髄腫細胞系と融合してハイブリドーマを形成する。融合後、記載のような標準方法を用いて(Coding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice: Production and Application of Monoclonal Antibodies in Cell Biology, Biochemistry and Immunology, 3rd edition, Academic Press, New York, 1996)、ハイブリドーマの成長を許容するが融合パートナーの成長は許容しない培地に細胞を入れる。ハイブリドーマの培養後、細胞上清を、所望の特異性の(すなわち、選択的に抗原と結合する)抗体の存在について分析する。好適な分析技法としては、ELISA、フローサイトメトリ、免疫沈降,及びウエスタンブロット法が挙げられる。他のスクリーニング技術は当該分野で周知である。好ましい技術は、非変性ELISA、フローサイトメトリ及び免疫沈降など、立体配置的にインタクトで、ネイティブに折り畳まれた抗原への抗体の結合を確認するものである。
意義深いことには、当技術分野において周知のとおり、抗体分子の小さい部分のみ(パラトープ)が、抗体の、そのエピトープへの結合に関わる(概して、Clark, W. R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley & Sons, Inc., New York; Roitt, I. (1991) Essential Immunology, 7th Ed., Blackwell Scientific Publications, Oxfordを参照されたい)。Fc’及びFc領域は、たとえば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与しない。そのpFc’領域が酵素により切断されている抗体、又はpFc’領域なしで生成されている抗体は、F(ab’)2フラグメントと命名されており、インタクトな抗体の抗原結合部位の両者を保持している。同様に、そのFc領域が酵素により切断されている抗体、又はFc領域なしで生成されている抗体は、Fabフラグメントと命名されており、インタクトな抗体分子の抗原結合部位の一方を保持している。さらに進んで、Fabフラグメントは、共有結合された抗体軽鎖、及びFdと示される抗体重鎖の一部からなる。Fdフラグメントは、抗体特異性の主要な決定因子であり(単一Fdフラグメントは、抗体特異性を変化させることなく、10までの異なる軽鎖と会合され得る)、Fdフラグメントは単離の際のエピトープ結合能を保持している。
抗体の抗原−結合部分の中には、当技術分野において周知のとおり、抗原のエピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)、及びパラトープの三次構造を保有する骨格領域(FR)がある。重鎖Fdフラグメントと、IgG免疫グロブリンの軽鎖との双方に、3つの相補性決定領域(CDR1〜CDRS)によってそれぞれ分かたれる4つの骨格領域(FR1〜FR4)がある。CDR、特にCDRS領域、そしてより具体的には重鎖CDRSは、大いに抗体特異性を担っている。哺乳動物の抗体の非CDR領域は、元の抗体のエピトープの特異性を保持しつつ、同種又はヘテロ特異性抗体の類似領域で置換され得ることが、当技術分野において充分に確立されている。これは、非ヒトCDRがヒトFR及び/又はFc/pFc’領域に共有結合により連結されて機能的抗体を生成する、「ヒト化」抗体の開発及び使用において最も明らかに顕示される。
本発明は、特定の実施態様において、抗体のヒト化フォームを含む組成物及び方法を提供する。本願明細書で用いる場合、「ヒト化」は、CDR領域外のいくつか、ほとんど、又は全てのアミノ酸が、ヒト免疫グロブリン分子由来の対応するアミノ酸で置換された抗体を示す。ヒト化の方法として、米国特許第4,816,567号、5,225,539号、5,585,089号、5,693,761号、5,693,762号及び5,859,205号(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。前記米国特許第5,585,089及び5,693,761,及び国際公開公報第90/07861号は、ヒト化抗体を設計する際に使用され得る4つの実行可能な基準も提案している。第1の提案は、アクセプターには、ヒト化されるべきドナー免疫グロブリンに著しく相同な特定のヒト免疫グロブリンからの骨格を使用するか、又は多くのヒト抗体からのコンセンサス骨格を使用することであった。第2の提案は、ヒト免疫グロブリンの骨格におけるアミノ酸が異常であり、且つその位置のドナーアミノ酸がヒト配列に典型的であれば、アクセプターでなくドナーアミノ酸が選択され得ることであった。第3の提案は、ヒト化免疫グロブリン鎖の3つのCDRの直ぐ隣の位置に、アクセプターアミノ酸でなくドナーアミノ酸が選択され得ることであった。第4の提案は、抗体の3次元モデルにおけるCDRの3A内でドナーアミノ酸が側鎖原子を有することが予測され、且つCDRと相互作用することができることが予測される骨格位置で前記ドナーアミノ酸残基を用いることであった。以上の方法は、ヒト化抗体を生産するために当業者が採用できるであろう方法のいくつかの例示に過ぎない。当業者は、抗体ヒト化のための他の方法に精通しているであろう。
抗体のヒト化フォームの一つの実施形態では、CDR領域外のいくつか、ほとんど、又は全てのアミノ酸がヒト免疫グロブリン分子からのアミノ酸で置換されているが、一以上のCDR領域内のいくつか、ほとんど、又は全てのアミノ酸は変更されない。アミノ酸の僅かな付加、欠失、挿入、置換又は改変は、それらが所与の抗原に抗体が結合する能力を抑止するようなことのない限り許容され得る。好適なヒト免疫グロブリン分子には、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgM分子が含まれるであろう。「ヒト化」抗体は、元の抗体と類似の抗原特異性を保持する。しかしながら、特定のヒト化の方法を用いて、抗体の結合の親和性及び/又は特異性は、Wu et al., /. Mol. Biol. 294:151, 1999(この内容を参照により本明細書に組み入れられる)により記載のような「指向性進化」の方法を用いて増加され得る。
完全ヒトモノクローナル抗体も、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖ローカスの大部分につき遺伝子導入マウスを免疫することによって調製することができる。たとえば、米国特許第5,591,669号、5,598,369号、5,545,806号、5,545,807号、6,150,584号、及びそれらに引用される参照文献(これらの内容を参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい。これらの動物は、内在性の(たとえば、マウス)抗体の生成において機能的欠失があるように、遺伝的に改変されている。それら動物はさらに改変され、これらの動物の免疫化の結果、対象抗原に対する完全ヒト抗体の生成が引き起こされるように、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子ローカスの全体又は一部を含有する。これらのマウス(たとえば、Xenoマウス(Abgenix)、HuMAbマウス(Medarex/GenPharm))の免疫化の後、標準のハイブリドーマ技術に従ってモノクローナル抗体を調製できる。これらのモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を有することとなり。それゆえヒトに投与された場合のヒト抗マウス抗体(KAMA)応答を惹起しないであろう。
ヒト抗体を生成するために、インビトロの方法も存在している。これらには、ファージディスプレイ技術(米国特許第5,565,332号及び5,573,905号)及びヒトB細胞のインビトロ刺激(米国特許第5,229,275号及び5,567,610号)が含まれる。これらの特許の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
したがって、当業者にとって明らかであろうように、本発明は、F(ab’)2Fab、Fv及びFdフラグメント;Fc及び/又はFR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同なヒト又は非ヒト配列により置換されているキメラ抗体;FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同なヒト又は非ヒト配列により置換されているキメラF(ab’)2フラグメント抗体;FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同なヒト又は非ヒト配列により置換されているキメラFabフラグメント抗体;並びにFR及び/又はCDR1及び/又はCDR2領域が相同なヒト又は非ヒト配列により置換されているキメラFdフラグメント抗体も提供する。本発明にはまた、いわゆる単鎖抗体も含まれる。
種々の抗体分子及びフラグメントは、一般に公知の、IgA、分泌性IgA、IgE、IgG及びIgMを非限定的に含む免疫グロブリンクラスのいずれより由来するものでもよい。IgGサブクラスもまた、当業者に周知であり、ヒトIgGl、IgG2、IgG3及びIgG4を含むが、これらに限定されない。
別の実施形態では、本発明に係る抗体は単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「VHH」の用語は、天然で軽鎖を欠く、ラクダ科哺乳動物において見出すことのできる型の抗体の単一重鎖可変ドメインをいう。このようなVHHは、「nanobody(登録商標)」とも呼ばれる。本発明によれば、sdAbは特に、ラマのsdAbであることができる。
本願明細書に記載される作用物質(agent)の一つの実施形態では、作用物質はポリペプチドである。特定の実施形態では、ポリペプチドはオレキシン−A又はオレキシン−Bの機能的等価物である。
本願明細書で使用する場合、「オレキシン−A」の用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、配列番号2に示すアミノ酸配列を称する。
オレキシン−A:eplpdccrqk tcscrlyell hgagnhaagi ltlx(配列番号2)
eは、2−ピロリドン−5−カルボン酸(Xaa:ピロリドンカルボン酸)を意味する。
本願明細書で使用する場合、「オレキシン−B」の用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、配列番号3に示すアミノ酸配列を称する。
オレキシン−B:fsgppglqgr lqrllqasgn haagiltm(配列番号3)又はglqgr lqrllqasgn haagiltm(配列番号4)。
本願明細書で使用する場合、「オレキシンの機能的等価物」は、OX1Rに結合し、これにより本発明に係るOX1R活性を促進することができるポリペプチドである。「機能的等価物」の用語には、オレキシン−A及びオレキシン−Bのフラグメント、突然変異体、及びムテインが含まれる。「機能的に等価な」の用語はしたがって、タンパク質類似体がOX1Rに結合し、本発明に係るOX1R活性(たとえば、ガン細胞のアポトーシス)を促進する能力を保持するように、たとえば一以上のアミノ酸欠失、置換又は付加によってアミノ酸配列を変更することにより得られるオレキシン類(すなわち、オレキシン−A又はオレキシン−B)の任意の等価物を包含する。アミノ酸置換は、たとえば、アミノ酸配列をエンコードするDNAの点突然変異によって行われ得る。
いくつかの実施形態では、機能的等価物は、対応するタンパク質との同一性が少なくとも70%である。本発明によれば、第二のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する第一のアミノ酸配列は、第一配列が、第二アミノ酸配列と70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一性を有し、前記第二アミノ酸配列の生物学的特性を保存していることを意味する。アミノ酸配列同一性は、好ましくは、BLAST P(Karlin and Altschul, 1990)などの好適な配列アライメントアルゴリズム及びデフォルトパラメータを用いて求められる。
「機能的に等価なフラグメント」の用語は本願明細書で使用する場合、OX1Rに結合し、本発明に係るOX1R活性を促進するオレキシンの任意のフラグメント又はフラグメントのアセンブリも意味し得る。したがって、本発明は、オレキシン−A又はオレキシン−Bの少なくとも一部の配列に対応する配列を有する連続アミノ酸を含む、この一部がOX1Rに結合し、本発明に係るOX1R活性を促進するものであるポリペプチドを提供する。
本発明のポリペプチドは、当業者に明らかであろう好適な手段のいずれによっても生成され得る。本発明に係る使用に十分な量のポリペプチド又はその機能的等価物を生成するために、本発明のポリペプチドを含むリコンビナントホスト細胞を適切な条件下に培養することによって、好都合に発現が成し遂げられ得る。とりわけ、ポリペプチドは、エンコードする核酸分子からの発現によって、リコンビナント手段により生成される。様々な異なるホスト細胞におけるポリペプチドのクローニング及び発現のための系は、周知である。リコンビナントフォームで発現される場合、典型的にはとりわけ、エンコードする核酸からのホスト細胞にける発現によって、ポリペプチドが生成される。特定の系の個々の要件に応じ、いずれのホスト細胞が使用されてもよい。好適なホスト細胞には、細菌、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母及びバキュロウイルス系が含まれる。当技術分野において異種のポリペプチドの発現に利用可能な哺乳動物細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞及び多くの他の細胞が挙げられる。細菌もまた、それが操作及び成育され得る場合の容易さのため、リコンビナントタンパク質の生成に好ましいホストである。一般の好ましい細菌ホストは、E coliである。
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドはイムノアドヘシンである。
本願明細書で使用する場合、「イムノアドヘシン」の用語は、異種タンパク質(OX1Rに結合できる「アドヘシン」)の結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とが組み合わせた抗体様分子を示す。構造的には、イムノアドヘシンは、OX1Rへの所望の結合特異性を有する(すなわち「異種」である)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合体を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的には少なくともOX1Rに対する結合部位を含む連続アミノ酸配列である。一つの実施形態では、アドヘシンは、配列番号2、配列番号3又は配列番号4により特徴付けられるポリペプチドを含む。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG−1、IgG−2、IgG−3、又はIgG−4亜型、IgA(IgA−1及びIgA−2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得てもよい。
免疫グロブリン配列は、典型的には免疫グロブリン定常ドメイン(Fc領域)であるが、必ずしもそうである必要はない。イムノアドヘシンは、ヒト抗体の有益な化学的及び生物学的特性の多くを保有できる。イムノアドヘシンは、適切なヒト免疫グロブリンヒンジ及び定常ドメイン(Fc)配列に連結された所望の特異性を有するヒトタンパク質配列から構築されることができるので、全体的にヒト成分を用いて関心対象の結合特異性を成し遂げることができる。このようなイムノアドヘシンは、患者への免疫原性が最小限となり、慢性又は反復での使用のために安全である。
一つの実施形態では、Fc領域は、ネイティブな配列Fc領域である。一つの実施形態では、Fc領域は、異種Fc領域である。さらに別の実施形態では、Fc領域は機能性Fc領域である。本願明細書で使用する場合、「Fc領域」の用語は、ネイティブな配列のFc領域及び異種Fc領域を含め、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに用いられる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であるかもしれないが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から、又はPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びるものと定義される。イムノアドヘシンの接着部分及び免疫グロブリン配列部分は、最小リンカーによって連結され得る。免疫グロブリン配列は、典型的には免疫グロブリン定常ドメインであるが、必ずしもそうである必要はない。本発明のキメラにおける免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4亜型、IgA、IgE、IgD又はIgMから得てもよいが、典型的にはIgG1又はIgG3から得るとよい。
本発明のポリペプチド、本発明に係るそのフラグメント及び融合タンパク質(たとえば イムノアドヘシン)は、翻訳後修飾を呈することができ、翻訳後修飾としてはグリコシル化、(たとえば、N結合型又はO結合型グリコシル化)、ミリスチル化、パルミチル化、アセチル化及びリン酸化(たとえば、セリン/トレオニン又はチロシン)が挙げられるがこれらに限定されない。
具体的な実施形態では、本発明の治療方法で使用されるポリペプチドは、それらの治療効力を向上するために改変され得るということが企図される。治療化合物のこのような改変は、毒性の低減、循環時間の延長、又は体内分布の改変に使用されてもよい。たとえば、潜在的に重要な治療化合物の毒性を、体内分布を改変する様々な薬物担体媒質と組み合わせることによって有意に低減できる。たとえば、ジペプチドの添加は、内在性の運搬装置を用いることにより血液レチナールバリアを通過して眼内を循環する薬剤の浸透を向上させることができる。
薬物バイアビリティを向上させるための手法は、水溶性ポリマーの利用である。種々の 水溶性ポリマーが、体内分布を改変し、細胞内取り込みの態様を向上させ、生理的バリアの透過性を変化させ、そして身体からのクリアランスの速度を改変することが示されている。ターゲティング又は持続放出効果のいずれかを成し遂げるために、末端基として、骨格の一部として、又はポリマー鎖上のペンダント(pendent)基として薬物部分を含有する水溶性ポリマーが合成されている。
ポリエチレングリコール(PEG)は、その生体適合性の高さ、及び改変の容易さから、薬物担体として広く使用されている。種々の薬物、タンパク質、及びリポソームへの付着は、滞留時間を向上させて、毒性を低減することが示されている。PEGは、鎖の端部のヒドロキシル基によって、及び他の化学的な方法を介して活性薬剤とカップリングされることができるが、PEG自体は多くても1分子あたり2の活性薬剤に限定される。異なる手法において、PEGとアミノ酸とのコポリマーが、PEGの生体適合性特性を保持するであろうが、1分子あたり多くの付着点の付加的利点を有するであろう(薬物ローディングの増加をもたらす)、また様々な適用に合うように合成的に設計され得る新規な生体材料として検討された。
当業者は、薬物の有効な改変のためのペグ(PEG)化技術を承知している。たとえば、PEGとリシンなどの三官能性単量体との交互重合体からなる薬物送達ポリマーが、VectraMed(Plainsboro, N.J.)によって使用されている。PEG鎖(典型的には、2000ダルトン以下)は、安定なウレタン結合によってリシンのa−及びe−アミノ基に連結される。このようなコポリマーは、PEGの望ましい特性を保持する一方で、ポリマー鎖に沿って厳密に制御された所定の間隔で、反応性ペンダント基(リシンのカルボン酸基)を提供する。反応性ペンダント基は、誘導体化、架橋、又は他の分子との接合のために使用され得る。ポリマーの分子量、PEGセグメントの分子量、及び薬物とポリマーとの間の切断可能な連結を変化させることにより、安定な、長期間循環するプロドラッグを生成するのに、これらのポリマーは有用である。PEGセグメントの分子量は、薬物/連結基複合体の間隔、及び接合体の分子量当たりの薬物の量に影響を及ぼす(小さなPEGセグメントは薬物ローディングの増加をもたらす)。一般的に、ブロックコポリマー接合体の全体の分子量が増えると、その接合体の循環半減期は増加することになる。それでも接合体は、容易に分解可能であるか、又は糸球体(glomular)濾過限界閾値に満たない分子量(たとえば、60kDa未満)を有しなければならない。
加えて、プロドラッグ形態の治療薬が、特異的なトリガーにより、典型的にはターゲティングされた組織における酵素活性により骨格ポリマーから放出されるまで保持すべく、循環半減期、及び体内分布を保持するのに重要であるポリマー骨格にリンカーを使用してもよい。たとえば、このタイプの組織で活性化される薬物送達は、体内分布の特定部位への送達が必要とされ、また治療薬が病理部位で又はその近傍で放出される場合に特に有用である。活性化薬物送達において使用するための連結基ライブラリーは当業者に公知であり、酵素反応速度、活性酵素の蔓延、及び選択された疾患特異的酵素の切断特異性に基づき得る。このようなリンカーを、本願明細書に記載されるタンパク質又はタンパク質のフラグメントを治療送達のために改変するのに使用してもよい。
一つの実施形態では、OX1Rアゴニストはアプタマーである。アプタマーは、分子認識という点で抗体の代替に相当する分子のクラスである。アプタマーは、高親和性及び特異性を持つターゲット分子の事実上いずれのクラスでも認識する潜在能力を備えたオリゴヌクレオチド又はオリゴペプチド配列である。このようなリガンドは、ランダム配列ライブラリーのSystematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEX)によって単離され得る。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成によって得られる。このライブラリーでは、各メンバーが、最終的に化学的に改変される、唯一の配列の鎖状オリゴマーである。ペプチドアプタマーは、ツーハイブリッド法によってコンビナトリアルライブラリーから選択される、E coliチオレドキシンAなどのプラットフォームタンパク質によって呈示される立体構造規制抗体可変領域からなる。
「投与する」又は「投与」の用語は、体外に存在する物質(たとえば、本発明のOX1Rアゴニスト)を対象者内へ、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達及び/又は本願明細書に記載される又は当技術分野において公知の、物理的な送達の任意の他の方法によるなどして、その物質を注射するか又は別の方法で物理的に送達する行為を称する。疾患、又はその症候が処理される際、その物質の投与は典型的には、疾患又はその症候の発症後に行なわれる。疾患又はその症候が予防される際、その物質の投与は典型的には、疾患又はその症候の発症前に行なわれる。
いくつかの実施形態では、本発明のOX1Rアゴニストは、治療的有効量で対象者に投与される。
「治療上有効量」で意味されるのは、いずれの医療処置にも適用可能な、妥当な効果/リスク比で炎症性腸疾患を処置するのに十分なOX1Rの量である。本発明の化合物及び組成物の1日の合計使用量は、信頼できる医学的判断の範囲内で担当医により決定されるであろうことは理解されるであろう。任意の具体的な対象者に対しての、具体的な治療上有効な服用量レベルは、処置されるべき障害及びその障害の重症度;採用される具体的化合物の活性;採用される具体的組成物、年齢、体重、全身の健康状態、性別及び対象者の食生活;投与の時間、投与経路、及び採用される具体的化合物の排泄の速度;処置の継続期間;採用される具体的ペプチドと組み合わせて又は同時に用いられる薬物;並びに医学分野で周知の類似因子を含め、様々な因子に依存するであろう。たとえば、所望の治療効果を達成するために必要な容量よりも低いレベルの化合物用量で開始し、所望の効果が成し遂げられるまで徐々に投薬量を増やすのは、充分に当技術分野の技術の範囲内である。しかしながら、製品の1日の投薬量は、成人に対し1日あたり、0.01〜1,000mgの広い範囲にわたって変動し得る。とりわけ、組成物は、処置すべき対象者への投薬量の対症調整のため、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの有効成分を含有する。医薬は、典型的には約0.01mgから約500mgまでの有効成分、とりわけ1mgから約100mgまでの有効成分を含有する。有効量の薬物は通常、1日あたり0.0002mg/kgから約20mg/kg体重まで、とりわけ、1日あたり約0.001mg/kgから7mg/kg体重までの投薬量レベルで供給される。
いくつかの実施形態では、本発明のOX1Rアゴニストは標準処置と組み合わせて対象者に投与される。典型的には、この標準処置は、コルチコステロイド、免疫抑制性薬物、メサラジン(5−アミノサリチル酸、メサラミン、又は5−ASAとしても公知。製剤商標名としてApriso、Asacol、Pentasa、Mezavant、Lialda、Fivasa、Rovasa及びSalofalkが挙げられる)、スルファサラジン(Azulfidineとしても公知)、バルサラジド(Colazal又はColazide(連合王国)としても公知)、オルサラジン(Dipentumとしても公知)などのアミノサリチル酸スルファサラジン、免疫抑制剤(アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ラパマイシン、シクロスポリン及びタクロリムス)又はインフリキシマブ、ビジリズマブ、アダリムマブ、又はベドリズマブ、ゴリムマブ、トファシチニブなどの生物学的処置からなる群より選択される。
本発明のOX1Rアゴニストは、医薬組成物の形態で投与されるべく、典型的には薬学的に許容し得る賦形剤、及び場合により、生分解性ポリマーなどの持続放出マトリクスと組み合わせられる。「薬学的に」又は「薬学的に許容し得る」という用語は、哺乳動物に、とりわけヒトに適宜投与された場合に、有害な、アレルギー性の又はその他の副作用を生成しない、分子実体及び組成物をいう。薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とは、無毒な固体、半固体又は液体充填剤、希釈剤、封入材料又は製剤助剤のあらゆるタイプのものをいう。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与用の本発明の医薬組成物では、有効成分は、単独か又は別の有効成分と組み合わせて、従来の薬学的支援物との混合物にて、単位投与形態として動物及びヒトに投与可能である。好適な単位投与形態としては、錠剤、ジェルカプセル剤、粉末剤、顆粒剤及び経口懸濁剤又は液剤などの経口経路形態、舌下及び口腔内投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、髄腔内及び鼻腔内投与形態並びに直腸投与形態が挙げられる。典型的には、医薬組成物は、注射が可能な製剤用の、薬学的に許容し得る媒質を含有する。これらは特に、等張、無菌の生理食塩水溶液(一ナトリウム又は二ナトリウムリン酸塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、又は乾燥、とりわけ凍結乾燥された組成物(場合によって、滅菌された水又は生理食塩水の添加に際し、注射液剤の構成が可能になるもの)であってよい。注射用途に好適な医薬形態には、無菌の水溶液剤又は懸濁剤;ゴマ油、落花生油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び無菌の注射液剤又は懸濁剤の即時調製用の無菌粉末が含まれる。全ての場合で、前記形態は無菌でなければならず、また容易な注射可能性がある程度に流動性でなければならない。前記形態は、製造及び保存の条件下に安定でなければならず、また細菌及び真菌などの微生物の混入に対して保全されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容できる塩として本発明の化合物を含む液剤は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中にて調製可能である。懸濁剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びこれらの混合物中、並びに油中にても調製可能である。保存及び使用の通常条件下では、微生物の成長を防ぐべく、これらの調製剤は防腐剤を含有する。抗体は、中性又は塩の形態にて組成物へと製剤化されることができる。薬学的に許容し得る塩として、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成)であって、たとえば塩化水素酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成されるもの、などが挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩は、たとえば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から由来することもできる。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であることもできる。適度な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングの使用によって、懸濁剤の場合は必要とされる粒度の保持によって、また界面活性剤の使用によって保持可能である。微生物の活動の防止は、種々の抗細菌薬及び抗真菌薬、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサルなどによってもたらされることができる。多くの場合に、等張剤、たとえば、砂糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長期の吸収は、吸収を遅延する作用物質、たとえば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンを組成物中に使用することにより、もたらされることができる。無菌の注射液剤は、必要に応じて前掲の他の成分のいくつかと共に適切な溶媒中に、必要量の活性抗体を取り込ませ、その後濾過滅菌することによって調製される。一般的に、懸濁剤は、基本分散媒体及び前掲のもの以外の必要成分を含有する無菌の媒質中に、種々の滅菌された有効成分を取り込ませすることによって調製される。無菌の注射液剤の調製用の無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、有効成分の粉末プラス任意の付加的な所望の成分を、予め無菌濾過されたその溶液から生成する、真空乾燥及び凍結乾燥技術である。製剤につき、液剤は、剤形に適合するように、且つ治療上有効であるような量にて投与されることになる。製剤は、前記注射液剤のタイプなどの様々な剤形にて容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどを採用することもできる。水溶液での非経口投与のために、たとえば、溶液は必要に応じて好適に緩衝化されるべきであり、また液体希釈剤が先ず、十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与にとりわけ好適である。これに関し、採用可能な無菌の水系媒体は、本開示を考慮すれば当業者に公知となるであろう。たとえば、一の調剤を、1mLの等張なNaCl溶液に溶解させて、1000mLの皮下注入液に添加するか、又は点滴の提案部位に注射されることが可能であろう。調剤にはある程度の変動がつきものであり、これは処置を受ける対象者の状態による。投与の責任者が、いずれにせよ個々の対象者にとって適切な服用量を判定することになる。
本発明のさらなる目的は、炎症性腸疾患の処置のための薬物をスクリーニングする方法であって、i)複数の被検物質を用意し、ii)その被検物質がOX1Rアゴニストであるかどうかを判定し、及びiii)OX1Rアゴニストである被検物質を陽性として選択する工程を含む方法に関する。
典型的には、本発明のスクリーニング方法は、その表面でオレキシン−1レセプターを発現する適切な細胞を用意することを含む。このような細胞として、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ又はE coliからの細胞が挙げられる。とりわけ、オレキシン−1レセプターをエンコードするポリヌクレオチドが、そのレセプターを発現するように細胞をトランスフェクトするために使用される。発現されたレセプターを次いで、被検物質及び適宜のオレキシン−1レセプターリガンド(たとえばオレキシン類)と接触させ、その細胞の、細胞アポトーシスの誘導及びSHP−2の動員などの機能性応答の活性化を観察する。機能アッセイは、El Firar A, Voisin T, Rouyer-Fessard C, Ostuni MA, Couvineau A, Laburthe M. Discovery of a functional immunoreceptor tyrosine-based switch motif in a 7-transmembrane-spanning receptor: role in the orexin receptor OX1R-driven apoptosis(7回膜貫通型のレセプターにおける機能性イムノレセプターチロシンベーススイッチモチーフの発見:オレキシンレセプターOX1R駆動性のアポトーシスにおける役割). FASEB J. 2009 Dec;23(12):4069-80. doi: 10.1096/fj.09-131367. Epub 2009 Aug 6に記載のとおりに実施され得る。とりわけ、比較工程は、被検物質により誘導される活性と、オレキシンなどの周知OX1Rアゴニストにより誘導される活性とを比較することを含み得る。とりわけ、周知OX1Rアゴニストと類似又は一層良好な活性を有することができる物質が、陽性として選択される。
典型的には、本発明のスクリーニング方法は、細胞表面に存在するオレキシン−1レセプターに結合することができる被検物質についてスクリーニングすることを含み得る。典型的には、被検物質は(たとえば放射性標識で)ラベルされ、その結合がオレキシンなどの周知OX1Rアゴニストと比較される。調製物を、ラベルされたOX1Rとインキュベーションし、OX1Rに結合された被検物質の複合体を単離して、当技術分野において公知の常法に従って特徴付けする。あるいは、細胞から可溶化された結合分子がカラムに結合され、次いで常法により溶出及び特徴付けされるように、OX1Rを固体支持体に結合させてもよい。別の実施形態では、OX1Rによりモジュレーションされる調節経路又はシグナリングの分子などのOX1Rに結合する分子を発現する細胞から、細胞区画を調製してもよい。調製物は、候補化合物の存在下又は非存在下に、ラベルされたOX1Rとインキュベーションされる。候補化合物が結合分子に結合する能力は、ラベルされたリガンドの結合の減少に反映される。
典型的には、候補化合物は、小有機分子、ペプチド、ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドからなる群より選択される。
陽性として選択されている被検物質は、炎症性腸疾患の処置に対するその特性をさらにアッセイすることを考慮して、さらなる選択工程に付してもよい。たとえば、陽性として選択されている候補化合物は、実施例に記載のような炎症性腸疾患の動物モデルへのその特性をさらにアッセイすることを考慮して、さらなる選択工程に付してもよい。
前記アッセイは、炎症性腸疾患の処置に有効であり得る薬物を開発するための被検物質を同定するため、ハイスループットスクリーニング技術を用いて実施され得る。ハイスループットスクリーニング技術は、自動化されたロボットシステムを用いる多重アッセイを行うために、マルチウェルプレート(たとえば、96−、389−、又は1536−ウェルプレート)を用いて実施され得る。したがって、被検物質の大規模なライブラリーが、高い効率でアッセイされ得る。より具体的には、マイクロタイタープレート(96ウェル又は384ウェル)のウェルにおいて成長している、安定にトランスフェクトされた細胞が化合物のライブラリーのハイスループットスクリーニングに適用可能である。ライブラリー中の化合物は、前記の遺伝子導入細胞を含むマイクロタイターディッシュのウェルに一つずつ自動的に適用されることになろう。アポトーシスのシグナルを活性化する被検物質が一旦同定されれば、それらがさらなる特性解析につき陽性に選択可能である。これらのアッセイは、いくつかの利点をもたらす。被検物質を細胞全体に曝すことで、被検物質が作用し得る自然状況におけるその活性の評価が可能になる。本アッセイはマイクロタイタープレート形式にて容易に実施できるので、記載されたアッセイを自動化されたロボットシステムにより実施でき、合理的に短い時間内で多数の試験片の試験が可能になる。本発明のアッセイは、単一濃度を試験して対照と比較する場合、それまでに試験されていない化合物又は抽出物の活性を評価するためのスクリーニングとして使用できる。これらのアッセイは、化合物の相対的な効力を、ある濃度の範囲、たとえば100μM〜1μMの範囲で試験し、アポトーシスが最高になる濃度を計算することによって評価するのにも使用できる。
本発明はさらに、以下の図面及び実施例によって例証される。しかしながら、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではない。
OX1Rは、IBD患者の炎症性領域で高度に発現されるが、対照からの結腸粘膜では高度に発現されない。 OXAは、DSSで誘発された大腸炎のマウスのDAI(体重及び大腸炎スコア)を改善する。マウスに、5%DSSで7日間、経口処置を行った。 OXAは、DSSで誘発された大腸炎のマウスにおけるサイトカイン分泌に対して影響する。 OxA処置マウス(右)及び未処置マウス(左)における結腸粘膜の組織学的観点。 OXAは、DSSで誘発された大腸炎のマウスのDAI(体重及び大腸炎スコア)を改善する。マウスに、毎日OxA(0.22μmoles/kg)の腹腔内注射を伴って又は伴わずに、5%DSSで7日間、経口処置を行った。体重減少、下痢の重症度、糞便中の血液の存在、炎症及び浮腫を含むDAIスコアを0(症候なし)〜4(重篤な大腸炎)の範囲のスケールを用いて評価した。DSS、デキストラン硫酸ナトリウム;WT、野生型マウス。 OXAは、EXCY2マウスにおけるサイトカイン分泌に対して影響する未処置マウス(白抜き)及びOxA(0.22μmoles/kg)処置マウス(黒塗り)からの。EXCY2マウスの結腸を、動物の殺処分後に摘除した。その後、組織破壊によりタンパク質抽出を実施した。サイトカインは、サイトカインCBAキットを用いて定量した(材料及び方法を参照のこと)。 OXAは、至適基準5−アミノサリチル酸(5−ASA)処置のEXCY2マウスのDAI(体重及び大腸炎スコア)をより良好に向上させる。マウスに、OxA(0.22μmoles/kg)を腹腔内注射するか若しくはせずに、又は5−ASA(0.053g/kg)で経口処置を行った。体重減少、下痢の重症度、糞便中の血液の存在、炎症及び浮腫を含むDAIスコアを0(症候なし)〜4(重篤な大腸炎)の範囲のスケールを用いて評価した。
実施例1
本発明者らは、クローン病及びUCを含むヒト炎症性腸疾患(IBD)においてOX1Rが発現されたことを立証している。事実、約40の炎症性結腸試料の免疫組織化学(IHC)実験における、OX1Rに対して惹起された特異抗体の使用で、上皮細胞及び免疫細胞の双方においてOX1Rの異所的存在が明らかになった(図1)。対照的に、正常な結腸粘膜では、OX1Rは発現されていなかった(図1)。
これらの観察に基づき、本発明者らは、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)で処理されたマウスにおける急性炎症に対するオレキシンA(OxA)の効果を詳査している。これらの実験でOxAを優先的に選択したのは、2つのジスルフィド架橋の存在でより安定性が与えられているからである。DSSは、体重減少、血性下痢、腸内潰瘍及び顆粒球の浸潤により特徴付けられる急性大腸炎を誘発する。本発明者らの結果は、経口的にDSSで処理したマウスにおけるOxAでの処置は、体重、結腸の長さ、下痢及び糞便中の血液の存在の測定による疾患活動指数(DAI)スコアを改善することを示している(図2)。
これらの観察は、結腸上皮の組織学的観点(病理学者による組織学的採点)によって確認されている。したがって、OxAはおそらく、DSSで誘発された大腸炎に対して抗炎症性の効果を有する。この仮説を確認するために、本発明者らは、DSS処理マウスからの結腸抽出物における、サイトカイン分泌に対するOxA処置の抗炎症性の効果を詳査している。サイトカインのプロファイルの分析で、DSSで誘発された大腸炎のマウスの結腸抽出物におけるTNFα、IL6、IL8相同体及びIL1Bなどの「炎症促進性の」サイトカインの分泌をOxAが低減することが明らかになった(図3)。対照的に、結腸抽出物におけるINFγ、IL10、及びIL12サイトカイン分泌に対してOxAの効果はない(図3)。
DSSマウスモデルは、IBD、UC病変形成、及び前臨床研究における粘膜の炎症を読み取るのに広く使用されている。しかしながら、マウスは、DSSで誘発された大腸炎において、それらの遺伝的背景、性別に応じ差動的な感受性及び応答性を示す。DSSモデルは、炎症の忠実なモデルであるが、UCで通常観察される直腸から近位結腸までの炎症勾配の欠如、UCの初期病因学的因子であることが公知な杯細胞におけるERストレスの任意の調節解除、並びにそれぞれ胆管炎及び結腸直腸ガンなどのUCの非消化器官又は消化器官外の合併症のため、潰瘍性大腸炎から部分的に逸脱する。遺伝子組み換えマウスモデルの使用は、化学的に誘発された大腸炎のマウスモデルの良好な選択肢を表す。IL10及びNox1の二重KO(IL10−/−;Nox1−/−)からなる、近年の新しい突発性UC様マウスモデルの開発(EXCY2マウス、国際公開公報第2012/140516号)は、突発性大腸炎に対するOxA効果を研究するのに観念的に好適である。事実、EXCY2マウスは、1)直腸からの上行勾配を伴い6/7週齢で突発性大腸炎を患い、そして杯細胞の喪失、ERストレスの調節解除、タバコの保護効果を含め、UCで認められる分子特徴をすべて再現する;2)8月齢で突発的結腸ガン(マウスの35〜40%);3)穏やかな胆管炎を患う。
10週齡EXCY2マウスにおいて、OxA処置(1μM OxA、3週の間に腹腔内2回/週)が重篤な大腸炎を軽減したこと、OxA処置EXCY2マウスは媒質処理EXCY2マウスと比べて正常な結腸粘膜を呈したこと(一般的な陰窩の態様、陰窩サイズ、杯細胞の存在、免疫細胞浸潤の非存在)が示される(図4)。興味深いことに、本発明者らは、EXCY2マウス及びCaco2細胞の双方においてOxA/OX1Rが大腸炎の発症に関わる二つの主要調節解除経路(酸化的ストレス及びERストレス)を誘導したことを立証している。
結論としてこれらのデータは、1)OxAがDSS処理マウスモデルにおける元来の抗炎症性の特性を発揮することができたこと;2)OxAはEXCY2マウスモデルが患う突発性大腸炎から強く保護し、そしてUCの発症に関わる異なる経路を制御することにより粘膜の治癒を確実にトリガーすることを示す。この概念実証を考慮に入れると、オレキシン類/OX1R系は、炎症性腸疾患、とりわけ潰瘍性大腸炎の処置における画期的且つ有効なターゲットを表すものである。
実施例2
OXAは、DSSで誘発された大腸炎のマウスのDAI(体重及び大腸炎スコア)を改善する。図5に示すように、DSSで誘発された大腸炎のマウスがOxAで処置されると、DAIスコアが改善された(約1.5)。
OXAは、EXCY2マウスにおけるサイトカイン分泌に影響する。本発明者らのデータは、10週齡EXCY2マウスにおいて、OxA処置(0.22μmoles/kg OxA、3週の間に腹腔内2回/週)で重篤な大腸炎が軽減されることを示す。OxA処置EXCY2マウスのサイトカインのパターンは、TNFα、IL6、IFNγ、MCP1及びIL12を含む炎症性サイトカインの分泌の強力な低減を呈した(図6)。対照的に、抗炎症性サイトカインIL10の分泌に変化はなかった(図6)。これらの結果は、OxAが炎症反応に対して強い効果を有することを示すものであった。
OXAは、至適基準5−アミノサリチル酸(5−ASA)処置のEXCY2マウスのDAI(体重及び大腸炎スコア)をより良好に向上させる。図7に示すように、重篤な大腸炎に対応する4のDAIスコアを有していた未処置のEXCY2マウスと比べて、EXCY2マウスのOxA処置は、1.5のDAIスコアを表した。5−ASAでのEXCY2マウスの処置は、未処置マウスと比べてDAIスコアを低下させ、すなわちそれぞれ3対4となった。これらのデータは、EXCY2マウスが患う症候に対して、至適基準5−ASA処置よりもOxAがさらに効率的であることを明らかに立証した。
参照
本願の全般を通して、種々の引用文献により本発明の属する技術分野の状態が説明されている。これらの引用文献の本開示は、参照により本明細書の開示に組み入れられる。

Claims (7)

  1. 炎症性腸疾患を、それが必要な対象者において処置する方法であって、該対象者に少なくとも一つのOX1Rアゴニストの治療的有効量を投与することを含む方法。
  2. 前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、とりわけ、回腸炎、微視的大腸炎、細菌若しくはウイルスにより引き起こされる感染性大腸炎、放射線性大腸炎、虚血性大腸炎、小児大腸炎、原因不明の大腸炎、及び明白な解剖学的異常のない機能性腸障害を伴って又は伴わずに、結腸を特異的に冒す状態にあるクローン病である請求項1記載の方法。
  3. 前記OX1Rアゴニストが、小有機分子、抗体、アプタマー及びポリペプチドからなる群より選択される請求項1記載の方法。
  4. 前記OX1Rアゴニストが、配列番号2、配列番号3又は配列番号4と少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドである請求項1記載の方法。
  5. 前記OX1Rアゴニストが、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるポリペプチドである請求項1記載の方法。
  6. 前記OX1Rアゴニストが、Fcドメインに融合された、配列番号2、配列番号3又は配列番号4により特徴付けられるポリペプチドを含むイムノアドヘシンである請求項1記載の方法。
  7. 前記OX1Rアゴニストが、コルチコステロイド;免疫抑制性薬物;メサラジン、スルファサラジン、バルサラジド、オルサラジンなどのアミノサリチル酸スルファサラジン;アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ラパマイシン、シクロスポリン、タクロリムスなどの免疫抑制剤、又はインフリキシマブ、ビジリズマブ、アダリムマブ、ベドリズマブ、ゴリムマブ、トファシチニブなどの生物学的処置からなる群より選択される標準処置と組み合わせて対象者に投与される請求項1記載の方法。
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