JP2017517633A5 - - Google Patents

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チタン合金、それから製造される部品および使用方法
技術分野は、チタン合金、それから形成される構成要素およびそのような構成要素を使用する方法に関する。
エネルギーに対する世界的な需要の増大は、エネルギー源の抽出または回収を、しばしば工学用材料の限界を伴う一層努力を必要とする領域へと動かし続けている。このことは、地熱エネルギーと炭化水素類(すなわち、石油またはガス)の抽出で例示され、陸地およびより深い沖合の海においてますます深い地面や井戸を求める必要があり、それに相応して、高温で高圧、かつ、より攻撃性で腐食性の環境に遭遇することになる。炭化水素の貯蔵器または井戸は、坑底の温度が約300°F(149℃)を超え、そして10000ポンド/平方インチ(psi)(70MPa)の圧力を超えると、高圧高温(HPHT)として分類されてきた。極HPHT(XHPHT)貯蔵器は、約400°F(204℃)および20000psi(140MPa)の坑底圧を超えるものである。これらの高温で時には深い貯蔵器においては典型的に、炭化水素類と水性の溜め流体との混合物が生産され、溜め流体は二酸化炭素(CO)および/または硫化水素(HS)などの酸性ガスで加圧された塩化物含有ブライン(塩性溶液)を含む。現在、井戸は50000フィート(15000m)の総深さまで掘削されていて、それを超えると温度および/または圧力はますます上昇する。エネルギーの抽出と発電のために用いられる地熱井は一般にもっと浅く、それに相応して坑底圧も低いが、しかし、一般的な金属材料に対してかなり腐食性の高い、極めて高温(例えば、625°F(329℃)程度)で硫黄化合物を含まない(あるいは硫黄化合物を含む)高塩分のブラインを産出することがある。
生産用の管状ストリング(管状線材)やケーシング、坑口装置の弁、井戸底ライナー、および検層用ハウジングや流体試料採取容器などの様々な井戸構成要素のための高強度で十分に耐食性の合金は、これらのしばしば酸性の(HSを含む)HPHTまたはXHPHTの井戸流体に首尾よく対処する必要がある。これらの掘削穴の井戸構成要素に加えて、沖合で炭化水素を生産する場合、これらの攻撃性のHPHTの井戸流体を海底から沖合のプラットホームまで運ぶために、適切な生産物引揚げ用の管状ストリングおよび構成部品について考慮しなければならない。高い耐食性に加えて、深海および(5000フィート(1500m)を超える深さの)超深海における資源開発での傾向はまた、生産、輸出および再注入用の沖合でのライザー(引揚げ管)のための高強度で軽量の管状ストリングならびに井戸の改修作業用および/または陸揚げ用のストリングも必要とする。慣用の工学用耐食性合金またはCRA(例えば、ステンレス鋼およびニッケル基合金)は、それらの比較的低い強度と高い密度(すなわち、低い強度/密度比)のために、これらの場所における有用性が限定されている。高強度の鋼(例えば、150〜160ksi(キロポンド/平方インチ)(1034〜1100MPa)までの最低降伏強さを有する高強度の低合金鋼(HSLA))の管状ストリングであっても、極めて深い沖合の水中における特定の状況において、あるいは深い油井およびガス井においては、吊るすのには重過ぎることがある。
近年、幾つかの高強度のチタン合金が、高い強度と低い密度、その結果としての高い強度/密度比(すなわち、軽量構造)、水性塩化物流体(海水、井戸流体のブライン)およびHSやCO酸性ガスに対する高い耐食性、低い弾性率(高い可撓性)、および優れた対空気・対塩水耐疲労性(これは、動的な沖合ライザー(海底ライザー)構成要素のために望ましい)などの様々な望ましい特性の故に、過去の15年にわたってこれらのエネルギー産業分野において好ましい用途を見いだしている。これらのことには、炭化水素井や地熱井における様々な掘削穴用管状ストリングやウェルジュエリー(well jewelry)におけるTi-38644(ASTMグレード19)ベータ型チタン合金、沖合での穿孔用ライザーにおけるTi-64ELI(ASTMグレード23Ti)、およびカテナリー吊り線におけるチタンの応力ジョイントおよび上部懸垂鋼の沖合ライザーの上下末端部材およびソルトン湖における超高塩分ブラインの地熱井生産ケーシングとしてのTi-64-Ru(ASTMグレード29Ti)の使用が含まれる。さらに最近では、Ti-6246合金が、高温で酸性の井戸での使用のための油井管(OCTG)生産用管材に対して、シェブロン(Chevron)によって試験され、適切なものとされた。
従来の市販されているチタン合金は次のいずれかである:1)化学物質、発電、および工業プロセスのために一般的に用いられる比較的低い強度(25〜100ksi(172〜689MPa)の降伏強さ(YS))のもの;2)軽量で構造上効率的な航空宇宙用機体およびエンジン部品を得るために主に高い強度/重量比を求めて設計される高強度(110〜180ksi(758〜1241MPa)のYS)の合金。あいにくと、ハロゲン化物含有化学物質、海水および様々な低温または高温のブラインに対する高い耐性の必要性が過去には限定されていたために、これら従来の高強度の航空宇宙用チタン合金は、水性塩化物媒体中、特に高温および/または低pHの環境における媒体中での局所的な腐食の攻撃または応力腐食割れ(SCC)に耐えられるようには設計されておらず、あるいは、そのように意図されてもいなかった。従って、これらの合金の大部分は、塩水およびその他の水性塩化物流体の中では許容できないほどに低い塩水破壊靭性(KSCC)の値を示し、高い応力を受ける構成要素のための破壊力学的要件を満たすことができない。
表1は、一部において、これらのエネルギー抽出用途のために考慮および/または使用される高強度(110ksi(758MPa)以上のYS)の市販のチタン合金の有益な特徴点と不利な点との外観的な比較を示す。酸性での使用のためにANSI/NACE MR0175/ISO1515の標準規格の下で認可された三つの合金(Ti-64-Ru、Ti-6246、Ti-38644)は程度が変化する高温水性塩化物またはブライン耐性を示すが、それらは、特に温度が上昇したときに強度において(Ti-64-Ru)、あるいは融接性において(Ti-6246およびTi-38644)、その他の重大な限界を示すことがわかる。Ti-6246合金の構成部品は比較的低い破壊靭性値を示し(これは、沖合でのライザーまたは井戸の改修作業用および/または陸揚げ用のストリングにおけるそれらの使用を不可能にする)、それらの値は水性塩化物媒体の中ではさらに低下する。他の4つの合金は、特に温度が上昇したときに、ハロゲン化物の(例えば、塩化物を含む)ブラインの中で局所的な攻撃とSCCに対してかなり感受性が高く、そして/または、それらの溶接性に限界がある。融接性の必要性(例えば、ガスタングステンアーク(すなわち、GTA)溶接、ガス金属アーク(すなわち、GMA)溶接、およびプラズマ溶接)は、主として沖合ライザーおよび場合によっては穿孔部品を製造するための要件であり、継ぎ目無し製品が一般に必要な場合には、掘削井部品またはOCTG部品については適切なことではない。
高温酸性の塩化物で富化した石油またはガスの井戸で使用するために少量のPGM(白金族金属)の合金化元素(すなわち、PdまたはRu)を添加することによって様々な市販の高強度アルファ・ベータ型チタン合金およびベータ型チタン合金の耐食性を改善することが研究され、そして例えば、Shida等に認可された米国特許4859415号に記録されている。Ti-6Al-4V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo、Ti-6Al-6V-2Sn、Ti-6246、およびTi-38644などの様々な高強度の市販合金に少量(0.15重量%以下)のPdおよびRuを添加することによって、高温において脱気した酸性の深海井戸のブライン流体における塩化物すき間腐食の攻撃およびSCCに対するしきい(閾)温度をある程度上げることができることが証明された。この利益は、陽極の酸塩化物腐食機構を受けるすき間および亀裂の中で形成される高温還元性の酸塩化物媒体の中でのこれらのPGMによる局所的な貴金属化と再不動態化に由来する。
あいにくと、このPGMによる貴金属化の効果によっては、水性塩化物媒体(これにおいては、混合した陰極脆化または水素脆化および/または陽極塩化物機構が優勢になりうる)の中で低温において(例えば、室温(約77°F(25℃))において)SCCに対して有効に対抗または防御することはできない。実際には、チタン合金は比較的高いアルミニウム当量(すなわち、Al+Oの含有量)を有していて、かなりのアルファ-2型(TiAl)化合物の析出を生じさせる場合には、RuまたはPd合金を添加すると、塩化物によるSCCをさらに悪化させて、KSCCの値を低くするに過ぎない。前に挙げたTi-38644(ベータ型)合金を除いては、言及した残りの市販のアルファ・ベータ型合金は全て、広い温度範囲にわたって曝気または脱気した塩水およびブラインの中で低い破壊靭性(KSCC値)を示すと予想することができる。PGMの添加によるこの有害な影響は、Ti-3Al-2.5V(グレード9Ti)またはTi-6Al-4V ELI(グレード23Ti)などの低アルミニウム当量(低いAl+Oの含有量)のチタン合金に少量のRuまたはPdを添加して、それぞれASTMグレード28Tiおよび29Tiを生成させることによって避けることができ、これによって実際に、好ましい塩水破壊靭性(すなわち、高いKSCC値)がもたらされる。あいにくと、アルファ-2型の析出を最小限にするか、または回避するためにAl+O合金の含有量を十分に低下させると、比較的低い強度(110ksi(758MPa)以下のYS)を有するアルファ型合金またはアルファ・ベータ型合金をもたらすことにもなる。
表1に示すように、Ti-6Al-4V-Ru(ASTMグレード29)合金は溶接性と耐破壊性が高く、600°F(316℃)までの高温のブラインに対して並はずれた耐食性を示すが、この合金の110ksi(758MPa)の低い設計降伏強さ(YS)と温度の上昇に伴うYSのかなりの低下(例えば、500°F(260℃)において78ksi(538MPa))は、特にHPHTまたはXHPHTの使用温度が約300°F(150℃)を超えるときに、管壁の厚さのかなりの増大と重量での不利益につながる。表1は、完全に変態したベータ+STAの条件で130ksi(896MPa)の最小YSを提供するとともに、限定された融接性を示す様々な(合金化の程度が高い)高強度の市販のアルファ・ベータ型チタン合金を示している。表1は、Ti-662合金は幾つかの望ましい特性を有することを示しているが、この典型的な航空宇宙用合金は、特に温度が上昇したときに、水性塩化物媒体中での局所的な腐食の攻撃と応力腐食割れに対して極めて低い(限定された)耐性(すなわち、低いKSCC)を示す。加えて、Ti-662は名目上(時効強度を増大させるために)0.6重量%のFeと0.6重量%のCuを含有し、このことにより、エネルギー産業での構成部品のために必要な大きなインゴットを溶解する際に元素のかなりの微視的および巨視的な偏析または不均質さが生じる可能性がある。表1を概観すると、先行する市販の高強度チタン合金で、エネルギーの抽出の分野において首尾よく使用するために望ましい様々な基準を満たすものは、本発明者らには何ら見当たらない。
一つの側面において、チタン合金は、重量で5.0〜6.0%のアルミニウム、重量で3.75〜4.75%のジルコニウム、重量で5.2〜6.2%のバナジウム、重量で1.0〜1.7%のモリブデン、重量で0.04〜0.20%のパラジウムと重量で0.06〜0.20%のルテニウムのうちの一つ、および残部のチタンから本質的に成ることができる。
別の側面において、方法は、重量で5.0〜6.0%のアルミニウム、3.75〜4.75%のジルコニウム、5.2〜6.2%のバナジウム、1.0〜1.7%のモリブデン、0.04〜0.20%のパラジウムと0.06〜0.20%のルテニウムのうちの一つ、および残部のチタンから本質的に成るチタン合金で形成された構成部品を用意し、そしてこの構成部品であって水性塩化物媒体と接触する構成部品を含む生産システムおよび/または抽出システムを操作または維持する工程を含むことができる。
以下の説明において1つ以上のサンプルの実施態様が示され、また図面においても示され、そして特に、また明確に、添付する特許請求の範囲において指摘され、示されるだろう。
図1は、(以下で定義する)Ti合金Xおよび比較するその他の市販のチタン合金について相対的なアルファ(アルミニウム当量)対ベータ(モリブデン当量)合金化含有量を示すグラフである。 図2は、BA-SCおよびBA-AC+STAの状態における0.5インチ(13mm)のプレート合金のシリーズ#1〜5(これについては以下でさらに詳しく述べる)の室温降伏強さを示すグラフである。 図3は、空気中および海水中でのシリーズ#1〜4のプレートの破壊靭性対降伏強さを示すグラフである。 図4は、比較的高温で還元性の酸塩化物に対する耐性について最初に検査するための、シリーズ#1〜5のTi合金をボタン溶解したシート母材金属を沸騰した2重量%のHCl溶液に曝露したときの腐食速度を示すグラフである。 図5は、沸騰した2重量%のHCl溶液の中でのシリーズ#1〜4の合金の母材金属と溶接金属の腐食速度をグレード29のチタンと比較して示すグラフである。 図6は、溶接に続いて熱処理した後の、シリーズ#1〜4の合金プレートの溶接金属の破壊靭性を示すグラフである。 図7は、Ti合金X-Pd、Ti合金X-Ru、グレード29のチタン、およびTi-6246について、沸騰した希釈HCl溶液の中で比較した腐食速度の分布を示すグラフである。 図8は、沖合での掘削および生産のシステムを概略的に示す図解である。 図9は、陸地での掘削および生産のシステムを概略的に示す図解である。 図10は、掘削装置を概略的に示す図解である。 図11Aは、ねじを切っていないパイプセグメント(パイプ部分)または管状セグメント(管状部分)の概略的な等大の図面であり、図解の目的で一定の縮尺では描かれていないかもしれない。図11Bは、図11Aのねじを切っていないパイプセグメントの2個からなるひと組の概略的な等大の図面であり、溶接によって接合されていて、図解の目的で一定の縮尺では描かれていないかもしれない。図11Cは、ねじを切ったパイプセグメントまたは管状セグメントの概略的な等大の図面であり、図解の目的で一定の縮尺では描かれていないかもしれない。
全ての図面を通して、同様の数字は同様の部分を指している。
概して言えば、本合金の態様は、重量で5.0〜6.0%のアルミニウム(Al)、重量で3.75〜4.75%のジルコニウム(Zr)、重量で5.2〜6.2%のバナジウム(V)、重量で1.0〜1.7%のモリブデン(Mo)、重量で0.04〜0.20%のパラジウム(Pd)と重量で0.06〜0.20%のルテニウム(Ru)のうちの一つ、および残部のチタン(Ti)と付随的不純物を含むか、あるいは本質的にこれらから成ることができる。本合金の様々な態様に含まれうるその他の様々な元素のパーセントについては、以下でさらに詳しく説明する。特に言及しない限り、本明細書における全てのパーセントは重量によって、または重量%(wt.%)によって示される。
このチタン合金は、重量で5.0〜6.0%、重量で5.1〜5.9%、重量で5.2〜5.8%、重量で5.3〜5.7%、重量で5.4〜5.6%のアルミニウム(Al)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約5.5%とすることができる。より包括的には、この合金は、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9および6.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でアルミニウムを含むことができる。非限定的な例として、この合金は、重量で5.1〜5.8%、または重量で5.3〜5.7%、または重量で5.0〜5.5%、または重量で5.0〜5.4%、または重量で5.6〜5.9%などの範囲でアルミニウムを含むことができる。
このチタン合金は、重量で3.75〜4.75%、または重量で3.8〜4.7%、または重量で3.9〜4.6%、または重量で4.0〜4.5%、または重量で4.1〜4.4%、または重量で4.1〜4.3%のジルコニウム(Zr)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約4.25%とすることができる。より包括的には、この合金は、3.75、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.25、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7および4.75の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でジルコニウムを含むことができる。非限定的な例として、この合金は、重量で3.8〜4.6%、または重量で3.9〜4.5%、または重量で4.25〜4.7%、または重量で3.75〜4.4%、または重量で4.3〜4.6%などの範囲でジルコニウムを含むことができる。
このチタン合金は、重量で5.2〜6.2%、または重量で5.3〜6.1%、または重量で5.4〜6.0%、または重量で5.5〜5.9%、または重量で5.6〜5.8%のバナジウム(V)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約5.7%とすることができる。より包括的には、この合金は、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1および6.2の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でバナジウムを含むことができ、従って、具体的な例はアルミニウムとジルコニウムに関して上で示した非限定的な例から理解されるだろう。
このチタン合金は、重量で1.0〜1.7%、または重量で1.1%から1.5%または1.6%または1.7%まで、または重量で1.2%から1.3%または1.4%までのモリブデン(Mo)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約1.25%とすることができる。より包括的には、この合金は、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6および1.7の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でモリブデンを含むことができ、従って、具体的な例はアルミニウムとジルコニウムに関して上で示した非限定的な例から理解されるだろう。
このチタン合金は、重量で0.04〜0.20%のパラジウム(Pd)と重量で0.06〜0.20%のルテニウム(Ru)のうちの一つを含むことができる。このチタン合金は、重量で0.04または0.05%から0.07または0.08または0.09または0.10または0.11または0.12または0.13または0.14または0.15または0.16または0.17または0.18または0.19または0.20%までのパラジウム(Pd)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約0.06%とすることができる。より包括的には、この合金は、重量で0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19および0.20%の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でパラジウムを含むことができ、これは上の非限定的な例から理解されるだろう。
このチタン合金は、重量で0.06または0.07または0.08%から0.10または0.11または0.12または0.13または0.14または0.15または0.16または0.17または0.18または0.19または0.20%までのルテニウム(Ru)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約0.09%とすることができる。より包括的には、この合金は、重量で0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19および0.20%の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でルテニウムを含むことができ、これは上の非限定的な例から理解されるだろう。
このチタン合金は、重量で0.25%以下の鉄(Fe)を含むことができ、そして重量で0.0または0.01または0.02%から0.25%までの鉄を含むことができ、あるいは重量で0.03または0.04または0.05%から0.24%まで、あるいは重量で0.06または0.07または0.08%から0.23%まで、あるいは重量で0.09または0.10%から0.20または0.21または0.22%まで、あるいは重量で0.11%から0.19%まで、あるいは重量で0.12%から0.18%まで、あるいは重量で0.13%から0.17%まで、あるいは重量で0.14%から0.16%までの鉄を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約0.15%とすることができる。より包括的には、この合金は、0.0、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24および0.25%の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲で鉄を含むことができ、これは上の例から理解されるだろう。
酸素、窒素、炭素、水素およびホウ素は、この合金の格子間元素でありうる。このチタン合金は、重量で0.13%以下の酸素(O)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約0.10%とすることができる。このチタン合金は、重量で0.05%以下の窒素(N)を含むことができる。このチタン合金は、重量で0.03%以下の炭素(C)を含むことができる。このチタン合金は、重量で0.015%以下の水素(H)を含むことができる。このチタン合金は、0.015重量%以下のホウ素(B)を含むことができ、そして重量で0.010、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.0045、0.004、0.0035、0.003、0.0025、0.002、0.0015、0.001、0.0005、0.0004、0.0003、0.0002または0.0001%以下のホウ素を含むことができる。
このチタン合金は、重量で約75.0または76.0または77.0または78.0または79.0または80.0または81.0%から約83.0または84.0または85.0%までの範囲内のチタン(Ti)を含むことができ、そして一つの態様においては、重量で約80.5%から約84.8%までの範囲内とすることができ、また重量で約82.9%とすることができる。より包括的には、この合金は、この段落における上記の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でチタンを含むことができる。
このチタン合金は、0.20重量%以下のイットリウム(Y)を含むことができ、そして重量で0.15、0.10、0.05、0.04、0.03、0.02、0.015、0.01、0.005または0.001%以下のイットリウムを含むことができる。この合金は、0.20、0.15、0.10、0.05、0.04、0.03、0.02、0.015、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でイットリウムを含むことができる。
このチタン合金は、0.10重量%以下のケイ素(Si)を含むことができ、そして重量で0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のケイ素を含むことができる。この合金は、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でケイ素を含むことができる。
このチタン合金は、1.0重量%以下のスズ(Sn)を含むことができ、そして重量で0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01%以下のスズを含むことができる。この合金は、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でスズを含むことができる。合金が上記の量でパラジウムを含むとき、この合金は、重量で0.25、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のスズを含むことができ、そして0.25、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でスズを含むことができる。
このチタン合金は、0.25重量%以下のクロム(Cr)を含むことができ、そして重量で0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のクロムを含むことができる。この合金は、0.25、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でクロムを含むことができる。
このチタン合金は、0.25重量%以下のマンガン(Mn)を含むことができ、そして重量で0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のマンガンを含むことができる。この合金は、0.25、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でマンガンを含むことができる。
このチタン合金は、0.20重量%以下の亜鉛(Zn)を含むことができ、そして重量で0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下の亜鉛を含むことができる。この合金は、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲で亜鉛を含むことができる。
このチタン合金は、0.20重量%以下の銅(Cu)を含むことができ、そして重量で0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下の銅を含むことができる。この合金は、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲で銅を含むことができる。
このチタン合金は、0.20重量%以下のニッケル(Ni)を含むことができ、そして重量で0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のニッケルを含むことができる。この合金は、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でニッケルを含むことができる。
このチタン合金は、0.20重量%以下のコバルト(Co)を含むことができ、そして重量で0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のコバルトを含むことができる。この合金は、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でコバルトを含むことができる。
このチタン合金は、0.5重量%以下のタングステン(W)を含むことができ、そして重量で0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のタングステンを含むことができる。この合金は、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でタングステンを含むことができる。
このチタン合金は、1.0重量%以下のハフニウム(Hf)を含むことができ、そして重量で0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01%以下のハフニウムを含むことができる。この合金は、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でハフニウムを含むことができる。
このチタン合金は、2.0重量%以下のタンタル(Ta)を含むことができ、そして重量で1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01%以下のタンタルを含むことができる。この合金は、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でタンタルを含むことができる。
このチタン合金は、2.0重量%以下のニオブ(Nb)を含むことができ、そして重量で1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01%以下のニオブを含むことができる。この合金は、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でニオブを含むことができる。
このチタン合金は、0.20重量%以下のセリウム(Ce)を含むことができ、そして重量で0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005または0.001%以下のセリウムを含むことができる。この合金は、0.2、0.15、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0の数値のうちのいずれか二つの間で限定される重量パーセントの範囲でセリウムを含むことができる。
このチタン合金は、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、鉄、酸素、窒素、炭素、水素、パラジウムおよびルテニウム(または、これらの元素の任意の部分集合)以外のいずれかの単一の元素の合計量を、重量で1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01%以下の量で含むことができる。このチタン合金はまた、ここで具体的に列挙している元素以外に周期表に載っているいずれかの元素の合計量を、重量で1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01%以下の量で含むこともできる。
このチタン合金はまた、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、鉄、酸素、窒素、炭素、水素、パラジウムおよびルテニウム(または、これらの元素の任意の部分集合)以外のこの合金中の全ての元素の組み合わせの合計量を、重量で1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01%以下の量で含むことができる。このチタン合金はまた、ここで具体的に列挙している元素以外に周期表に載っているこの合金中の全ての元素の組み合わせの合計量を、重量で1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01%以下の量で含むこともできる。簡潔にするために、周期表は引用文献として本明細書に取り込まれることとし、それにより、それに載っている各々の元素はここで具体的に列挙されていることとする。
本合金の態様(これを、本出願の様々な箇所において「Ti合金X」と呼ぶだろう)は、熱処理が可能なアルファ・ベータ型チタン合金とすることができ、これは、HPHTまたはXHPHTエネルギーの抽出での使用に適した高強度、高耐食性、および耐破壊性の、融接が可能なチタン合金を提供する。組成については上でもっと広く記述しているが、Ti合金Xの一つのサンプルの態様の組成を表2に示す。Ti合金Xは表3に挙げる基本的な特性を有するとともに、表4に挙げる具体的な性能基準を満足することができ、それらの性能基準は、エネルギー抽出関連の様々な用途に関して様々な望ましい合金の属性を反映している。
アルファ・ベータ合金化元素のバランスに関して、Ti合金Xは、図2に例示する標準的なグレードのTi-6Al-4Vよりも(高い強度を得るための)ベータ含有量が多く、(改善されたKSCCを得るための)アルファ含有量が少ないだろう。本合金組成物はまた、真空溶解する際に元素がミクロ偏析およびマクロ偏析する傾向が最小限であり、それにより、エネルギー抽出の領域のための構成部品を製造する際にしばしば用いられる極めて大きくて比較的均質なインゴットの製造を可能にする。
本チタン合金の態様は、破壊靭性を最適にするための(ベータ変態した状態のような)ミクロ組織の選択肢を提供する2相アルファ・ベータ型チタン合金とすることができ、これは、特定のエネルギー抽出用途において有用な耐破壊性を与えるのに望ましいだろう。
本合金の態様は、特定のアルミニウム当量とモリブデン当量を有することができる。アルミニウム当量(Al当量)は、チタン合金における正味のアルファ安定化元素の有効性を意味し、式(1)に従う。
(1)Al当量=1(重量%Al)+0.33(重量%Sn)+0.17(重量%Zr)
+10(重量%O)
モリブデン当量(Mo当量)は、この合金における「ベータ当量」、すなわち、ベータ相安定化元素の正味の有効性を意味し、式(2)に従う。
(2)Mo当量=1(重量%Mo)+0.67(重量%V)+2.5(重量%Fe)
式(1)は次のように記述することもできる:アルミニウム当量=合金中のアルミニウムの重量%+(0.33)(合金中のスズの重量%)+(0.17)(合金中のジルコニウムの重量%)+(10.0)(合金中の酸素の重量%)。式(2)は次のように記述することもできる:モリブデン当量=合金中のモリブデンの重量%+(0.67)(合金中のバナジウムの重量%)+(2.5)(合金中の鉄の重量%)。本合金の態様は、7.5以上であって、そして少なくとも6.5のアルミニウム当量、および5.9以下または6.0以下であって、そして少なくとも5.0のモリブデン当量を有することができる。
本チタン合金の態様は、(鍛錬して溶接した金属について)少なくとも550°F(288℃)までに完全な高温酸性塩化物のブラインに対する耐食性を有し、そして曝気または脱気した非酸性(sweet)または酸性(sour)のブラインの中で550°F(288℃)までにすき間腐食に対して十分に耐性であることができる。概して言えば、本合金は、融接法を用いるときに良好な溶接性を与え、溶接した状態で溶接部の十分な延性と耐損傷性を有し、そしてPWHTの後に溶接金属の工学的特性の有用なバランスを与えることができる。
幾つかの態様において、本合金は、室温で0.165ポンド/in (4.57g/cm 以下の密度、室温で17.0×100万psi(117GPa)以下の弾性率、室温で少なくとも125、130、135、140または145ksi(862、896、931、965または1000Mpa)の、あるいは125または130ksi(862または896Mpa)から145または150ksi(1000または1034Mpa)までの範囲の降伏強さ、500°F(260℃)の温度において少なくとも90、95、100または105ksi(621、655、689または724MPa)の、あるいは90または95ksi(621または655MPa)から105または110ksi(724または758MPa)までの範囲の降伏強さ、および沸騰した2.0重量%のHClの中での20mpy(0.51mm/年)以下の腐食速度を有することができる。
幾つかの態様において、本合金は、3のpHを有していて60、70、80または90日間にわたって約500°F(260℃)または550°F(288℃)の温度において保持される自然に曝気した海水の中に合金を60、70、80または90日間にわたって沈めた後に局所的なすき間腐食を示さないだろう。
幾つかの態様において、本合金は、空気中および塩水または海水の中で室温において少なくとも50、55または60ksi√in(√インチ)(55、60または66MPa√m)の破壊靭性を有することができ、また幾つかの態様において、本合金の溶接後に熱処理した溶接部は、空気中で室温において少なくとも50または55ksi√in(55または60MPa√m)の破壊靭性を有することができる。破壊靭性は、ASTME399-12(金属材料の線形弾性平面ひずみ破壊靭性KIcのための標準試験方法)およびASTME1820-13(破壊靭性の測定のための標準試験方法)に従って測定することができる。
幾つかの態様において、本合金の溶接後の溶接部(すなわち、溶接部のその後の熱処理をしていないもの)は、空気中で室温において少なくとも2.0%の伸びを有し、そして本合金の溶接後に熱処理した溶接部は、空気中で室温において少なくとも4.0%の伸びを有することができる。
試験
本合金とその他のチタン合金について様々な試験を行った。この目的のために、21個の小さな(250グラム)プラズマボタンのヒート(ヒート:溶解材)の母材と、続いて、Ti-Al-V-(Snおよび/またはZr)-(Moあり、または無し)-(RuまたはPd) の17個の60ポンド(27kg)および120ポンド(54kg)の二重VARインゴットのヒートを、評価を行うために用意した。これらの合金の異なるヒートについての公称組成とそれぞれのAl当量およびMo当量を、表5および表6に示す。これらのプラズマボタンのヒートおよびVARインゴットのヒートを、下記の五つの合金シリーズに下位区分する:
シリーズ#1:Ti-Al-V-Sn-(Ru)
シリーズ#2:Ti-Al-V-Sn-Mo-(Ru)
シリーズ#3:Ti-Al-V-Zr-(Pd)
シリーズ#4:Ti-Al-V-Zr-Mo-(PdまたはRu)
シリーズ#5:Ti-Al-V-Zr-Sn-Mo-(Ru)。
250グラムのボタンヒートをベータ+アルファ・ベータ熱間圧延して0.11インチ(2.8mm)の厚さのシートとし、そしてベータ焼鈍と最終のアルファ・ベータ焼鈍(1400°F(760℃)、2時間の徐冷)を行い、それにより、試験を行うための十分に変態したベータ+溶体化処理+半時効(STA)状態の合金シートを用意した。二重VARインゴットはベータ+アルファ・ベータ鍛造して1.25インチ(32mm)のスラブとし、続いて、アルファ・ベータ熱間圧延して、それにより、熱処理と試験を行うための0.25〜1.0インチ(6〜25mm)のプレートパネル(板状パネル)とした。プレートの熱処理は典型的に次の三つの工程からなる:
1.1800°F(982℃)で20分間のベータ焼鈍(BA)、続いて、空冷(AC冷却速度は約13°F(7℃)/秒)または二つの0.5インチ(13mm)の鋼板の間での空気中の徐冷(SC冷却速度は約1.8°F(1.0℃)/秒)。
2.1〜4時間の中間のアルファ・ベータ焼鈍(すなわち、1300〜1600°F(704〜871℃)での溶体化処理)、続いて、空気中での冷却(AC冷却速度は約12°F(7℃)/秒)または二つの0.5インチ(13mm)の鋼板の間での空気中の徐冷(SC)(SC冷却速度は約1.2°F(0.7℃)/秒)。
3.1000°F(538℃)で4〜12時間の最終の時効、次いで、空冷(AC)。
最終の熱処理の後に、全ての鍛錬したシートおよびプレートの材料について適切に表面状態の調整を行い、そして公称の組成の目標値を確認するために化学的に分析した。
シートおよびプレートの溶接.溶接金属と溶接接合部を適切に評価するために、0.11”(0.11インチ(2.8mm))のシートパネルと0.375”(9.5mm)のプレート片の幾つかを機械GTA溶接した。シートパネルは、パネルの両面に適用される完全溶込み溶接した。適用した溶接後の熱処理(PWHT)は、1400°F(760℃)で2時間、次いで、二つの0.5インチ(13mm)の鋼板の間での空気中の徐冷(SC)であった。プレートの溶接は機械GTA装置によって行われるマルチパス突合せ溶接であり、溶加金属の薄い金属ストリップを接合部に手動で連続して供給した。トータルで4回のパスによって、0.375インチ(9.5mm)のプレートの溶接接合部を埋めた。次いで、これらの突合せ溶接したパネルについて、1400°F(760℃)または1450°F(788℃)で1.5時間の溶接後の熱処理を行い、1000°F(538℃)まで徐冷し、次いで、1000°F(538℃)で4時間のAC(空冷)の時効を行い、溶接金属の試験に供した。
特定の試験.下に記載した機械的試験および腐食試験を行った。
上記の沸騰希釈HCl腐食速度試験は、高温の水性塩化物媒体中でのすき間腐食と応力腐食の両方に対するチタン合金の相対的な耐性を評価するための方法を示している。希釈HCl腐食速度の基準は実験的に誘導されたものであり、公知のチタン合金の高温ブライン耐性と相関性がある。
特性試験の結果
全ての5種の一連の合金を、表4に明示する合金特性について試験した。
ミクロ組織:これらの十分に変態したベータミクロ組織は、主として、BA-AC+STAの条件の場合は、微細な小板でかご状織物の組織で、徐冷したBA-SC+STAの条件の場合は、かご状織物とコロニー構造の混合組織であった。1.2%以上のMoを添加することによってGBAと小板のサイズは低下し、そしてBA-SC(ベータ焼鈍+徐冷)の条件においてかご状織物の組織の体積分率が増大し、それにより合金の強度は増大し、破壊靭性がわずかに低下した。
降伏強さ
a.シート:全ての合金の変種において、YSの最小値である130ksi(896MPa)およびUTSの最小値である145ksi(1000MPa)(の目標値を満足し、シリーズ#1〜4の合金において最小限の差異を示した。これは、時効によって強度が向上するST焼鈍によって達成される、比較的高いシート空冷速度に由来する。
b.シート:全てのシリーズについて、YSRT/YS500°F(260℃) は約0.78で、UTSRT/UTS500°F(260℃) は約0.82であり、従って、最小限の高温強度の目標値を満足した。
c.プレート:表7に挙げる室温での引張り特性と図2においてグラフで比較した降伏強さの値について、以下の重要な所見がなされた:
図2にプロットした全ての3つの最終の熱処理条件(BA-ACおよびBA-SC+時効)において、シリーズ#4と#5の合金だけが、130ksi(896MPa)の最小限のYS基準を満足した。他のシリーズ(#1〜3)は、BA-AC+1400°F(760℃)のAC+時効の条件およびBA-SC+1400°F(760℃)のAC+時効の条件(すなわち、1400°F(760℃)のST焼鈍から8度F(4℃)/秒超で空冷したとき)において最小限のYS基準を満足したが、シリーズ#1〜3のプレートにおける徐冷BA-SC+1400°F(760℃)のSC+時効の条件では、この降伏強さの目標値を達成できなかった。このことは、シリーズ#4の組成物は他のシリーズの合金よりも幾分深く硬化することができて、これは、比較的重い部分の構成部品において最小限の強度を達成するのに必要なことであることを意味するだろう。
d.プレート:ベータ合金の含有量(すなわち、Mo当量)が増大すると、強度は最も劇的に増大した。5.0超のMo当量は最小限の強度を満足した(2A、3A)。しかし、5.9以上または6.0以上のMo当量は、高い強度とともに、急冷BA-AC+STA処理の後にずっと低い延性をもたらし(4D、4F)、このことから、各々の溶接パスの急冷が典型的に起こるような溶接においては、許容できないほどに低い延性と靭性が生じると予想される、と推論することができる。
e.プレート:5.2重量%超のアルミニウム含有量は、最小限のYS強度の目標値を満足した(1A対1B、2A対2C、4B対4C、4G、4H、4J、4K、4N)。
f.プレート:Zr含有量が3.7%から4.5%に増大すると、強度はかなり増大し(3C対3B)、等量(2:1のZr:Sn)のSn含有量(4C対2C、3C対2C)または等量のSn/Zrの組み合わせ(4E対5A)を上回る優れた強度をもたらした。
g.プレート:0.7%のMoは強度にほとんど影響しないが、1.2%以上のMo含有量は強度をかなり増大させた(3C、4A対4C、4G、4E、4K、4N、4O)。
h.プレート:シリーズ#2の合金において、0.7〜2.0%のMoを添加すると、伸びがかなり改善した(2B対1B)。
i.プレート:全てのシリーズについて、YSRT/YS500°F(260℃) は約0.72で、UTSRT/UTS500°F(260℃) は約0.81であり、このことは、Zr、SnまたはMoの変化がほとんど影響しないことを示している。従って、130ksi(896MPa)以上のYSの最小値が達成されたときに、高温強度の目標値を満足した。
延性
プレート:全てのシリーズの合金において、YSが約145ksi未満となる熱処理条件で、延性が6%の最小伸びの目標値を超えた。シリーズ#2の合金と比較して、シリーズ#4の合金は容易に熱処理が可能であり、BA-AC(空冷)+STA処理の後に、比較的低いが、しかし望ましい強度の範囲と高い延性が得られた(4C対2C)。
破壊靭性.図2において強度に対してプロットし、また室温の空気と自然に曝気した海水の中で実施した、完全に変態したベータ+溶体化処理および時効(STA)の条件(BA-SC+STAまたはBA-AC+STA)、におけるプレート:
a.図3に示すように、5つの全てのシリーズの合金の変種は、空気および海水中で室温において60ksi√in(66Mpa√m)の最小K値の目標と約140ksi(965MPa)以下の降伏強さを満足した。
b.(Zr-Moを含有する)シリーズ#4の合金は、近似する強度のレベルにおいて、空気および海水中でシリーズ#1〜3の合金よりも幾分高いK値を有するようである。
c.Al当量が7.5以上であるとき、海水中での最小K値(KSCC)を満足しなかった(すなわち、許容できないほどに高い塩化物SCC感受性)(2D)。
d.降伏強さが135ksi(931MPa)を超えるとき、5.9以上または6.0以上のMo当量では、海水中での最小KSCCを満足しなかった(4D)。Mo当量が5.9以上または6.0以上に増大するとSCC感受性が悪化し(4D、4F)、そして靭性の低下と粒界破壊のモードが促進した。
e.1.7%未満のMo含有量によってはKSCCは比較的に影響されなかったが、しかし1.7%のMoにおいて幾分低下した(2D、4E)。
f.シリーズ#4の合金においてMo含有量が0.7%以上であると、空気および海水中での粒界破壊モード/粒内破壊モードの比率が増大し、破壊靭性が低下する傾向があった。この影響は、多くの場合において時効時間を長くする(4時間→12時間)ことによって幾分軽減した。
g.5つの全てのシリーズの合金の変種について、同様の低い程度の塩化物SCC感受性が示され、それにより、KSCC(seawater)/Kairの比率は、142ksi(979MPa)以下の降伏強さにおいて0.8〜1.0の範囲内に入った(典型的には0.87)。
沸騰する希釈HCl溶液の中での腐食速度
シート.沸騰する2%のHClの中での20ミル(すなわち、ミリインチ)/年(mpy)(0.51mm/年)の最大限に許容できる腐食速度を用いて、この条件についてのシリーズ#1〜5のプラズマボタン溶解したシート状クーポンの腐食速度から、以下の見地が得られた(図4にプロットする)。
a.許容できる合金の変種
− Pdを含むシリーズ#3および4
− Ruを含むシリーズ#1、3および4
− Ruを含むシリーズ#2(Moが0.5%以下の場合のみ)
− Ruを含むシリーズ#5(ただし、Moを含まない場合)
b.許容できない合金の変種
− Pdを含むシリーズ#1および2
− Ruを含むシリーズ#2(Moが1.0%以上の場合)
c.最も低い腐食速度はPdを含むシリーズ#3および4の合金で達成され、ASTMグレード24(23P)および29Ti(Ti-29)に近い速度を示した。
d.許容できない高い腐食速度は、チタン合金中に0.5%以上のSnとPdが共存するときに生じる。
e.Mo含有量が増大すると、この高度に有害な腐食を悪化させるSn+Pdの相互作用が打ち消される傾向がある。しかし、20mpy(0.51mm/y)以下の目標値を満足するためには、1.2%よりもずっと大きなMoのレベルは必要ないだろう。
f.Moが存在しないとき、Ruを含むシリーズ#1の合金は、Ruを含むシリーズ#3の合金よりも幾分低い速度を示した。
g.Mo含有量が増大すると、Ruを含むシリーズ#2(Sn-Mo)の合金とRuを含むシリーズ#4(Zr-Mo)の合金のいずれかにおいて速度が増大する傾向があった。
h.Mo含有量が1.2%まで増大するとき、Pdを含むシリーズ#4(Zr-Mo)の合金における速度に顕著な影響は及ぼさなかった。
プレート.これらのシートのクーポンの結果に基づいて、高度に有害なSn+Pdの組み合わせを避けるために、以下のシリーズ#5の二重VARヒートのプレートの組成物(表6)を設計した。全てのシリーズの合金プレートのクーポンについての対応する腐食速度を、図5においてグラフで比較する。これにより、20mpy(0.51mm/y)以下の目標値に関して、以下の見地が明らかになった:
a.許容できる合金の変種
− Pdを含むシリーズ#3および4
− Ruを含むシリーズ#1および4
b.許容できない合金の変種
− Ruを含むシリーズ#2
− Mo当量が5.9超のときのRuを含むシリーズ#4(4D)
− Ruを含むシリーズ#5(Moが1.7%以上の場合)(5A)
c.シートについて、最も低い腐食速度はPdを含むシリーズ#3および4の合金で達成され、グレード29Tiに近い速度を示した。
d.Mo含有量が1.7%まで増大するとき、Pdを含むシリーズ#4の合金についての速度にはほとんど影響を及ぼさなかった。
e.シリーズ#1〜4の合金の腐食速度は、BA-SCに対するBA-ACのような、最終の熱処理の変化によって著しくは影響されず、あるいは後続のSTA最終熱処理のパラメーターの変化によっても影響されなかった。
プレートの溶接金属.同様の沸騰する2重量%HClによる腐食速度の試験を、溶接後に熱処理したプレートの溶接部について行った。対応する母材金属と比較した結果を図5に示す。以下の見地が得られた:
a.溶接金属の腐食速度はプレートの母材金属の傾向に匹敵したが、しかし、多くの場合において幾つかのmpyは対応する母材金属よりも高い傾向があった。従って、Pdを含むシリーズ#3および#4の溶接部は終始一貫して最も低い速度を示し、それはグレード29Tiの溶接部よりもほんのわずかに高かった。
b.2つの例外に含まれるのは、溶接部が母材金属の速度の2倍以上であったRuを含むシリーズ#1の合金(1A)、および母材よりも溶接部の腐食速度の限定された低下を示したRuを含むシリーズ#4(4D)であった。
すき間腐食の耐性
Ruを含むシリーズ#1〜4の合金の変種のプレートおよびPdを含むシリーズ#3および#4の合金について、自然に曝気したpH3の海水中で、高温の60日間のすき間試験を行った。これら500°F(260℃)のすき間試験のクーポンの全てが、すき間のある表面またはすき間のない表面において顕著な金属損失または局所的な攻撃を示さなかった。それに続いて、RuまたはPdを含むシリーズ#4の合金のプラズマボタン溶解したシートについての550°F(288℃)でのpH3の海水中の60日間のすき間試験によって、0.04重量%以上のRuまたは0.03重量%以上のPdを含む合金について、局所的なすき間の攻撃が防がれたことが示された。
高温酸性ブライン応力腐食割れ(SCC)に対する耐性.
表8で詳細に記述しているように、HSガスおよびCOガス(元素状硫黄も含む)で加圧された高温酸性で曝気された25〜33%NaClブラインの中でのSCC感受性について、NACETM0198-2011(酸性の油田での使用における応力腐食割れについて耐食性合金を検査するための低ひずみ速度試験法)に従って、シリーズ#1〜4の合金のプレートを試験した。この表では、各々の合金についての絞り(RA)および破壊時間(TTF)の環境対不活性参照比を挙げていて、これらは、低ひずみ(4×10−6/秒)の丸みをつけた(または滑らかな)引張り試料が破壊するまでのSCC感受性の度合いを示している。シリーズ#1〜4の大部分は0.90以上の比率の目標値を満足するが、試料の破壊実験によって、シリーズ#1、2および3の合金試料の全てについて塩化物によるSCCによる脆性破壊領域が生じるかなりの証拠が明らかになった。7.0という高いMo当量を有する4F合金を除いて、シリーズ#4の合金でPdを含むもの(4A〜4E、4G)またはRuを含むもの(4Dおよび4N)の全てについて、SCCの顕著な兆候は認められなかった(すなわち、全てが0.90以上の比率で、脆性破壊領域はなかった)。これらシリーズ#4の合金は、比較のために試験したNACE酸性規格標準によって認可されたTi-6246合金とは異なって、550°F(288℃)の高温酸性ブラインSCCに対する耐性の要件を満足した。
従って、本合金(またはそのプレートあるいはその他の構成部品)は、高温の脱気された25〜33%NaClブラインの中で、少なくとも160°F(71℃)、170°F(77℃)、200°F(93℃)、300°F(149℃)、400°F(204℃)、500°F(260℃)、550°F(288℃)以上の温度において、この高温のブラインの中に合金または構成部品を沈めた後に、これらのSCC耐性の要件を満足する(あるいは、十分にSCC耐性である)。これらの条件の下で、本合金はSCCの顕著な兆候を示さず、従って、RA比とTTF比は少なくとも0.90であり、またこの合金は脆性破壊する領域を示さないか、あるいは脆性破壊領域は高温のブラインに晒された合金の全表面積の1.0%以下または2.0%以下である。表8に示すように、様々な合金は、250ポンド/平方インチの絶対圧(psia)(1720kPa)のHS、250psia(1720kPa)のCO、0.5%の酢酸(HAc)および1グラム/リットル(gpl)の硫黄(S)を含む脱気した25%塩化ナトリウム(NaCl)の高温のブラインの中で、あるいは、脱気した33%NaCl、145psia(1000kPa)のHS、1000psia(6900kPa)のCOおよび1gplのSの高温のブラインの中で、あるいは、500psia(3450kPa)のHS、500psia(3450kPa)のCOおよび1gplのSを含む脱気した33%NaClの高温のブラインの中で試験された。
溶接性.
溶接性の評価には通常、溶接したままの状態および溶接後に熱処理(PWHT)した状態の両方における溶接金属の性質と強靭性の考察が含まれる。従って、マルチパス融合突合せ溶接した構成部品は、溶接した接合部の研削、切削、操作などの処理を行うために、PWHTの前と後に、適切な延性、靭性、および耐損傷性を備えていなければならない。PWHTの後に、構成部品の溶接金属と熱影響部(HAZ)の金属は、対応するTi合金Xの鍛錬した金属または母材金属の最小降伏強さを満足し、そして好ましくはそれを上回っているはずであり、その一方で、表4に挙げた最小の延性と破壊靭性(K)の目標値を十分に満足するはずである。
プレートの溶接部の機械的特性
マルチパス機械GTA溶接した0.375”(9.5mm)のプレート片の溶接部全体の引張り特性と破壊靭性を、シリーズ#1〜4の合金の変種の大部分について測定した。1400°F(760℃)または1450°F(788℃)のPWHT+時効の後に、4つのシリーズの全てにおいて、136〜150ksi(938〜1034MPa)のYSと4%以上の伸びを示す溶接部が形成された。表9は、PWHTの後の、シリーズ#2および#4の溶接金属の特性についての幾つかの典型的な非限定的な例を示し、これにより、これらの引張り特性が確認される。しかし、延性の値を精査すると、Snを含むシリーズ#1および#2の溶接部と比較して、シリーズ#4の溶接部について伸びの値、特に絞り率(%RA)の値がかなり高いことが判明した。同様の比較は溶接部のK破壊靭性の値についても認められ、それらの値は、シリーズ#1および#2の溶接部と比較してシリーズ#4(4Dを除く)の溶接部については終始一貫して高かった(表9と図6を参照されたい)。他のZrを含むシリーズ#3の溶接部も、良好な延性と、最小で60ksi√in(66MPa√m)の望ましい基準を上回る高いKの値を示した。
溶接したままの状態でのシリーズ#1〜4の溶接金属の引張り試験によって、Snを含むシリーズ#1および#2の合金において、変化しやすくて低い(2%未満の)伸びと%RAの値が判明した。一方、シリーズ#3および#4の両方の合金の溶接部は終始一貫して、2%以上の伸びと%RAの要件を満足した。従って、Zrを含むシリーズ#3および#4の溶接部は、溶接したままの状態とPWHTの状態の両方において、Snを含むシリーズ#1および#2の合金の溶接部を上回る、適度な強度と改善された延性および靭性のより望ましい組み合わせを示した。
耐食性(高温酸性の塩化物ブラインの中で)
耐酸性にする適切な合金を得ることに関して、SnとPdの合金成分の間で、これまでに知られておらず予想できなかったが、しかし極めて重大な相反性があることが、希釈した沸騰HCl試験によって判明した。この相反性に対しては、本合金において、合金がPdを上述した量で含むときに、合金中のSnの量を比較的低く維持することによって対処することができる。
Ti合金Xの特性についての非限定的な例
Ti合金Xの幾つかの鍛錬した製品の形で達成可能な引張り特性と破壊特性についての様々な非限定的な例を、表11に示す。表11に挙げる引張り特性は、ベータ変態した状態の製品について、125ksi(862MPa)または130ksi(896MPa)の最小の室温降伏強さが達成可能であり、それはプレートまたはパイプの断面積と最終の熱処理(STA)に依存することを証明している。500°F(260℃)における対応する高温降伏強さの値も、90ksi(621MPa)の最小の目標値を満足する。そこに示されたプレートのような、アルファ・ベータ処理(+STA)した製品は、良好な延性を伴ったかなり高い強度を達成可能であるが(表11)、しかし空気中で幾分低い破壊靭性を有する。
表12は、これらのベータ変態(+STA)したプレートおよびパイプの製品の形で、高い破壊靭性(K、KSCC)が終始一貫して達成されることを証明している。Kairの値と塩水でのKSCCの値の両方とも60ksi√in(66MPa√m)の最小目標値を上回り、15%未満の塩水Kの低下(ノックダウン)を示すことに注目されたい。
(PdとRuのいずれかを添加した)Ti合金Xの高温還元性の酸塩化物に対する優れた耐性についての確認は、図7にプロットする腐食速度の分布において例証されている。Pd合金のものはグレード29Ti合金に近似する耐酸性を有し、一方、Ru合金のものは耐酸性がわずかに低いが、しかしTi-6246合金よりも依然としてかなり上回っている。高温の希釈HCl中での合金の耐食性についてのこの比較は、高温の水性塩化物媒体中でのすき間腐食と応力腐食(SCC)に対する合金の耐性と直接的な相関性がある。
非限定的な例として、本合金は特に、エネルギー供給分野における様々な構成要素を構築するために用いることができる。幾つかの非限定的で典型的な構成要素としては、沖合の配管や海中のフローライン;掘削管;沖合の生産、輸出および再注入用のライザー(引揚げ機)および構成部品;油井管(OCTG)生産用管材および井戸のケーシングやライナー;沖合の深海での陸揚げ用のストリング;沖合の井戸の改修作業用のストリング;海底または海洋の締結具および構造用構成部品;坑口構成要素;ウェルジュエリー(well jewelry)(包装機械、安全弁、研磨した穿孔ソケット);検層用構成要素および掘削穴設備または工具;海洋潜航用構成要素(ROV遠隔操作車両)があり、これらは特に、Ti合金Xが提供する特性から利益を受けるだろう。
図面は、本合金で形成することができる製品または構成部品の幾つかのもの、およびそれらの製品または構成部品を用いることができる幾つかの状況を例示している。図8は、油およびガス(例えば、石油や天然ガス)、水、ブライン、またはその他の海中の流体または気体の生産および/または抽出において用いることができる、沖合での生産および/または抽出のシステム1を概略的に例示している。システム1は、沖合での油およびガスの生産および/または抽出のシステム、沖合での掘削および/または生産のシステム1、またはその種の他のものと言うことができる。システム1は、海洋、海または海水3の表面に設置することができる沖合の浮きプラットホーム2、重力に基づくシステムまたはプラットホーム4、および1つ以上の海中の坑口装置6を含むことができる。
システム1はさらに、海中の収集マニホールド8、およびケーシングと、このケーシングの中にあって海水3の下の海底13の中の各々の坑井12の中で下に延びる採油管を含んでいる掘削穴装置10を含むことができて、坑井12は、海底の上から炭化水素または油およびガスの溜り14へ向かって(または溜り14の中に)下へ延びている。システム1はさらに、各々の坑口装置6からマニホールド8へ延びている1つ以上の海中採油パイプラインまたはフローライン16を含むことができる。システム1はさらに、採油ライザー(引揚げ管)18、再注入ライザー20、輸出ライザー22、および1つ以上の海中パイプライン24を含むことができる。ライザー18、20および22は海水3の表面よりも上に延びていてもよいが、これらのライザーのそれぞれの大部分は海中にあるか、あるいは塩水または海水3の中にある。追加の採油パイプラインまたはフローライン16が、マニホールド8からライザー18および20の下部まで延びていてもよい。ライザー18、20および22の各々は上に延びていて、これらライザーの上端部に隣接するプラットホーム2に接続されている。各々のライザー18、20および22はカテナリー吊り線ライザーであってもよい。輸出パイプラインまたはフローライン24の一端は輸出ライザー22の下端部に結合または隣接していてもよく、それによりライザー22とパイプライン24は流体が通じるようになっている。採油ライザー18と再注入ライザー20の各々は、マニホールド8およびフローライン16、坑口装置6、掘削穴装置10および溜り14の各々と流体が通じている。
システム1はまた、実質的にプラットホーム2の真下にある海中の坑口装置26を有するように構成されていてもよい。システム1は、坑口装置26に隣接する防噴装置28と、プラットホーム2から坑口装置26と防噴装置28を介して海底13の中へ向けて下に延びている掘削ライザーまたはライザー集成体30を含むことができ、掘削穴装置10は溜り14に向かって(または溜り14の中へ)下に延びている海底13の中の坑井12を形成している。ライザー集成体30は、掘削ストリングを伴ったライザーまたはこのライザーの中の掘削管を含むことができる。あるいは、ライザー集成体30は、採油管を伴ったケーシングまたはこのケーシングの中のランディングストリングを含むことができる。
図9は、油およびガス(例えば、石油や天然ガス)、水、ブライン、またはその他の地下の流体または気体の生産および/または抽出において用いることができる、陸地または沿岸での生産および/または抽出のシステム32を概略的に例示している。システム32は、陸地または沿岸での油およびガスの生産および/または抽出のシステム、陸地または沿岸での掘削および/または生産のシステム32、またはその種の他のものと言うことができる。システム32は、沿岸または陸地のプラットホームまたは掘削リグ(滑車装置)34と掘削穴装置またはケーシングおよび穿孔ストリングまたは掘削管36を含むことができて、掘削管36は、坑口装置35および地面37の表面から地下の炭化水素または油およびガスの溜り14(これは、高温のブラインの溜りなどであってもよい)まで延びている坑井12を形成するために土壌、陸地または地面37の中に向かって下に延びている。掘削管36またはその一部はランディングストリングとして用いることもできる。図8および図9の坑井12および溜り14は、HPHTまたはXHPHT炭化水素の坑井または溜りであってもよい。
図10は生産用の構成要素または生産に関係する構成要素とすることができる様々な管状の構成要素を例示し、これらには、図8および図9に関して説明した状況において用いられるような掘削穴装置が含まれる。これらの管状の構成要素は、表面ケーシング38、ケーシング38の内径よりも小さな外径を有する中間ケーシング40(ケーシング40はケーシング38の中を延びている)、中間ケーシング40の内径よりも小さな外径を有する採油ケーシング42(採油ケーシング42はケーシング40とケーシング38の中を延びている)、および採油ケーシング42の内径よりも小さな外径を有する採油管44(採油管44はケーシング42、40および38の中を延びている)を含むことができる。採油ケーシング42の中にパッカー48を配置することができて、パッカーはケーシング42の内表面から採油管44の外表面まで延びている。
図11A〜11Cは、本発明の合金で形成することができる管状セグメントまたはパイプセグメント50Aおよび50Bを例示している。セグメント50は一般に、図8〜10に関して説明した様々な管状の構成要素を形成するために用いることができる管状セグメントまたはパイプセグメントを例示することを意図していて、例えば、掘削穴装置、ケーシング、ランディングストリング、掘削管、掘削ストリング10、採油パイプラインまたはフローライン16、採油ライザー18、再注入ライザー20、輸出ライザー22、輸出パイプラインまたはフローライン24、ライザー集成体30、掘削穴設備または工具、ドリルストリング36、採油ケーシング42、および採油管44である。図11Aは第一および第二の端部52および54を有する単一のパイプセグメント50Aを示し、パイプセグメント50Aの内表面は第一の端部52から第二の端部54まで延びる通し通路56を画定している。第一および第二の端部52および54は、それらの間でセグメント50Aの長さL1を限定している。セグメント50Aは円筒形のパイプセグメントとすることができて、ねじを切っていない端部52および54を有する。図11Bは、突合せ溶接部58において溶接された2つのパイプセグメント50Aを示していて、上で説明した様々な管状の構成要素を形成するのに用いることができるような長いパイプセグメントを形成している。図11Cは、パイプセグメント50Bが第一および第二の端部52および54を有していて、それによりパイプセグメント50Bの内表面が端部52から端部54まで延びる通し通路56を画定している点でパイプセグメント50Aに類似していることを示している。セグメント50Bは、一方の端部54に隣接する内側にねじを切った部分60と、他方の端部52に隣接する外側にねじを切った部分62を含むことができる。図11Aおよび図11Cは、上で説明した様々な管状の構成要素において用いることができる幾つかの簡単な管状セグメントを例示している。しかしながら、パイプセグメントの多くの他の形態のものを用いることができることを、当業者であれば理解するであろう。例えば、パイプセグメントの異なる部分が異なる外径を有するように、概ね類似するパイプセグメントを形成することができる。さらに、パイプ50Bに類似するパイプセグメントであって、両方の端部52および54に隣接する内側にねじを切った部分を有するものや、あるいは、両方の端部52および54に隣接する外側にねじを切った部分62を有するものを形成することができる。従って、例えば、1つのセグメント50Bの外側にねじを切った部分62と別のセグメント50Bの内側にねじを切った部分60をねじ式に係合するようにして、2つのパイプセグメント50Bを係合することができる。一方、ねじを切った連結具を様々なパイプセグメントの間に用いることもでき、例えば、パイプセグメントの外側にねじを切った部分を連結具の内側にねじを切った部分とねじ式に係合させ、別のパイプセグメントの外側にねじを切った部分も同様に連結具の内側にねじを切った部分とねじ式に係合させることにより、連結具のねじを切った結合部を介して2つのパイプセグメントを互いに結合させることができる。同様に、様々な管状の構成要素において用いられるパイプセグメントの幾つかのものは、所定のパイプセグメントの端部から外側に放射状に延びる環状のフランジ(突縁)を有し、それらのフランジが(例えば、ボルトまたはその他の締結具とともに)パイプセグメントを互いに結合させるように用いることもできる。従って、図11A〜11Cに示すようなパイプセグメントは、当分野で知られていて上で説明した様々な管状の構成要素またはそれらの構成要素の管状の部分を形成するために用いられる様々なタイプのパイプセグメントを含むことを意図している。例えば、パイプセグメント50Aおよび50Bは、掘削パイプセグメント、ランディングストリングセグメント、改修作業用ストリングセグメント、ライザーセグメント、井戸用ケーシングセグメント、採油管セグメント、および海中パイプラインまたはフローラインセグメントとすることができる。
本発明の合金は、様々な状況において用いられる(上で説明したような)構成要素として形成することができる。そのような構成要素は、海水またはその他の様々な水性塩化物媒体(例えば、塩化物含有ブライン)、硫化水素含有流体および/または二酸化炭素含有流体の中に沈められるか、あるいはそれらと接触するような作業位置または作業状況に置かれるだろう。そのような作業位置または作業状況における構成要素は、少なくとも120°F(49℃)、150°F(66℃)、200°F(93℃)、300°F(149℃)、400°F(204℃)、500°F(260℃)または600°F(316℃)の温度において少なくとも1200psi(8MPa)、1500psi(10MPa)、2000psi(14MPa)、3000psi(21MPa)、4000psi(28MPa)、5000psi(34MPa)、10000psi(69MPa)、15000psi(103MPa)または20000psi(138MPa)の圧力下にあるだろう。そのような構成要素は、上記の流体の中に、および/または上記の圧力において、および/または上記の温度において、例えば1時間、12時間、24時間、一週間、一ヶ月、1年以上といった長期間にわたって連続して沈められるか、あるいはそれらと接触するだろう。同様に、構成要素は、例えば室温(約77°F(25℃))、または周囲温度、あるいは温度が約28°F(−2℃)から約100°F(38℃)の範囲になる海洋水または海水の中におけるような、比較的低い温度において連続して用いられるだろう。
1つ以上の方法は、上述した様々な作業状況に置かれる構成要素を含む(上で説明したもののような)生産および/または抽出のシステムを操作または維持することを含むことができる。そのようなシステムは、井戸または坑井(例えば、図8および図9の井戸または坑井12)を掘削するための掘削ストリングまたは掘削管(例えば、掘削ストリングまたは掘削管30(図8)または36(図9))を回転させる掘削リグまたは掘削システム(例えば、プラットホーム2または34の一部)を含むことができる。そのようなシステムはまた、ライザー18、20、22および30、採油パイプラインまたはフローライン16、輸出パイプラインまたはフローライン24、掘削ストリングまたは掘削管30、36または44、またはケーシング42のような管状の構成要素を通して様々な流体(および固体)を吸い出すための1つ以上のポンプを含むこともできる。
従って、方法は、構成要素を含む生産および/または抽出のシステムを操作または維持することを含むことができて、生産および/または抽出のシステムを操作する工程を行う間に、構成要素は水性塩化物媒体、海水、硫化水素含有流体(例えば、掘削流体)、二酸化炭素含有流体(例えば、掘削流体)、の中に沈められるか、あるいはそれらと接触し、そして/または、構成要素は少なくとも1200psi(8MPa)、1500psi(10MPa)、2000psi(14MPa)、3000psi(21MPa)、4000psi(28MPa)、5000psi(34MPa)、10000psi(69MPa)、15000psi(103MPa)または20000psi(138MPa)の圧力において、および/または少なくとも120°F(49℃)、150°F(66℃)、200°F(93℃)、300°F(149℃)、400°F(204℃)、500°F(260℃)または600°F(316℃)の温度において、連続して(例えば1時間、12時間、24時間、一週間、またはそれ以上にわたって)維持される。このような構成要素は、HPHTまたはXHPHTの炭化水素の溜りまたは井戸において用いることができ、それらの溜りまたは井戸は、(HPHTの場合)少なくとも約300°F(149℃)の坑底温度と少なくとも約10000psi(69MPa)の坑底圧を有し、あるいは(XHPHTの場合)少なくとも約400°F(204℃)の坑底温度と少なくとも約20000psi(138MPa)の坑底圧を有するだろう。このような構成要素は、高温のブラインの井戸または溜りまたはその他の井戸または溜りにおいて用いることもできる。
上記の水性塩化物媒体は広範囲の塩化物イオン濃度、例えば、約1部/100万部(ppm)から完全な飽和状態までの濃度を有することができる、ということに留意されたい。極めて低い塩化物イオン濃度であっても、多くの公知のチタン合金にかなりの有害な影響を及ぼしうる。従って、水性塩化物媒体は海水および様々なブライン(例えば、井戸の流体)を含むことができる。海水は1リットル当り約18000ミリグラム(mg/L)ないし約23000または約24000ミリグラムの範囲の塩化物イオン濃度を有するだろう。ここでの水性塩化物媒体は、少なくとも1ppmまたはそれよりもかなり高い塩化物イオン濃度、例えば、少なくとも10mg/L、100mg/L、500mg/L、1000mg/L、5000mg/L、10000mg/L、15000mg/L以上の塩化物イオン濃度を有する水性塩化物溶液でありうる。だろう。
以上の説明において、簡潔さ、明快さ、および理解を目的として特定の用語が用いられた。それらには、先行技術が要求していること以外の不必要な限定は含まれるべきではない。何故ならば、そのような用語は説明の目的で用いられているのであって、広く解釈されるべきであることが意図されているからである。さらに、本発明の記述と例示は例としてのものであり、本発明は例示または記述された細目そのものには限定されない。
1 沖合での生産および/または抽出のシステム、 2 浮きプラットホーム、 3 海水、 4 重力に基づくプラットホーム、 6 坑口装置、 8 収集マニホールド、 10 掘削穴装置、 12 坑井、 13 海底、 14 炭化水素または油およびガスの溜り、 16 海中の採油パイプラインまたはフローライン、 18 採油ライザー、 20 再注入ライザー、 22 輸出ライザー、 24 輸出パイプラインまたはフローライン、 26 坑口装置、 28 防噴装置、 30 ライザー集成体、 32 陸地での生産および/または抽出のシステム、 34 掘削リグ、 35 坑口装置、 36 掘削管、 37 地面、 38 表面ケーシング、 40 中間ケーシング、 42 採油ケーシング、 44 採油管、 48 パッカー、 50A パイプセグメント、 52 第一の端部、 54 第二の端部、 56 通し通路、 58 突合せ溶接部、 60、62 ねじを切った部分、 L1 セグメントの長さ。
以下に、出願時の特許請求の範囲の内容を記載する。
[1]
重量で5.0〜6.0%のアルミニウム、
重量で3.75〜4.75%のジルコニウム、
重量で5.2〜6.2%のバナジウム、
重量で1.0〜1.7%のモリブデン、
重量で0.04〜0.20%のパラジウムと重量で0.06〜0.20%のルテニウムのうちの一つ、および
残部のチタン、から本質的に成るチタン合金。
[2]
チタン合金は重量で0.13%以下の酸素、0.05%以下の窒素、0.03%以下の炭素、0.015%以下の水素、0.015%以下のホウ素および0.25%以下の鉄を含み、
チタン合金は5.0〜6.0の範囲のモリブデン当量を有し、ここで、モリブデン当量=合金中のモリブデンの重量%+(0.67)(合金中のバナジウムの重量%)+(2.5)(合金中の鉄の重量%) であり、
チタン合金は6.5〜7.5の範囲のアルミニウム当量を有し、ここで、アルミニウム当量=合金中のアルミニウムの重量%+(0.33)(合金中のスズの重量%)+(0.17)(合金中のジルコニウムの重量%)+(10.0)(合金中の酸素の重量%) であり、
チタン合金は室温において少なくとも125ksi(862MPa)の降伏強さを有し、
チタン合金は室温において空気中および海水中で少なくとも50ksi√in(55Mpa√m)の破壊靭性を有し、
チタン合金は少なくとも160°F(71℃)の室温において25〜33%NaClブライン中で十分に応力腐食割れ耐性があり、そして
溶接後の熱処理を行った後のチタン合金の溶接部は、室温において空気中で少なくとも50ksi√in(55Mpa√m)の破壊靭性と室温において少なくとも4.0%の伸びを有する、前記1に記載のチタン合金。
[3]
チタン合金は6.0以下のモリブデン当量を有し、ここで、モリブデン当量=合金中のモリブデンの重量%+(0.67)(合金中のバナジウムの重量%)+(2.5)(合金中の鉄の重量%) である、前記1に記載のチタン合金。
[4]
モリブデン当量は少なくとも5.0である、前記3に記載のチタン合金。
[5]
チタン合金は7.5以下のアルミニウム当量を有し、ここで、アルミニウム当量=合金中のアルミニウムの重量%+(0.33)(合金中のスズの重量%)+(0.17)(合金中のジルコニウムの重量%)+(10.0)(合金中の酸素の重量%) である、前記4に記載のチタン合金。
[6]
チタン合金は7.5以下のアルミニウム当量を有し、ここで、アルミニウム当量=合金中のアルミニウムの重量%+(0.33)(合金中のスズの重量%)+(0.17)(合金中のジルコニウムの重量%)+(10.0)(合金中の酸素の重量%) である、前記1に記載のチタン合金。
[7]
チタン合金は重量で0.13%以下の酸素、0.05%以下の窒素、0.03%以下の炭素、0.015%以下の水素、0.015%以下のホウ素および0.25%以下の鉄を含む、前記1に記載のチタン合金。
[8]
チタン、アルミニウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、およびパラジウムとルテニウムとのうちの一つ、以外のチタン合金中のいずれかの単一の元素の合計量は重量で1.0%以下である、前記1に記載のチタン合金。
[9]
チタン合金は、3のpHを有していて60日間にわたって約500°F(260℃)の温度において保持される自然に曝気した海水の中に合金を60日間にわたって沈めた後に局所的なすき間腐食を示さない、前記1に記載のチタン合金。
[10]
チタン合金は室温において少なくとも125ksi(862MPa)の降伏強さと室温において空気中および海水中で少なくとも50ksi√in(55Mpa√m)の破壊靭性を有する、前記1に記載のチタン合金。
[11]
溶接後の熱処理を行った後のチタン合金の溶接部は、室温において空気中で少なくとも50ksi√in(55Mpa√m)の破壊靭性を有する、前記10に記載のチタン合金。
[12]
チタン合金は500°F(260℃)の温度において少なくとも90ksi(621MPa)の降伏強さを有する、前記10に記載のチタン合金。
[13]
チタン合金は6.0以下のモリブデン当量を有し、ここで、モリブデン当量=合金中のモリブデンの重量%+(0.67)(合金中のバナジウムの重量%)+(2.5)(合金中の鉄の重量%) であり、そしてチタン合金は7.5以下のアルミニウム当量を有し、ここで、アルミニウム当量=合金中のアルミニウムの重量%+(0.33)(合金中のスズの重量%)+(0.17)(合金中のジルコニウムの重量%)+(10.0)(合金中の酸素の重量%) である、前記10に記載のチタン合金。
[14]
チタン合金の溶接したままの溶接部は、室温において少なくとも2.0%の伸びを有する、前記1に記載のチタン合金。
[15]
溶接後の熱処理を行った後のチタン合金の溶接部は、室温において少なくとも4.0%の伸びを有する、前記1に記載のチタン合金。
[16]
チタン合金は管状の構成要素として形成される、前記1に記載のチタン合金。
[17]
チタン合金は、沖合の配管、海中のフローライン、掘削管、沖合のライザー、油井管(OCTG)生産用管材、OCTGの井戸のケーシング、沖合の陸揚げ用ストリング、沖合の井戸の改修作業用のストリング、および掘削穴設備のうちの一つの少なくとも一部を含む構成要素として形成される、前記1に記載のチタン合金。
[18]
チタン合金は作業位置を有する構成要素として形成され、その構成要素は水性塩化物媒体と接触する、前記1に記載のチタン合金。
[19]
チタン合金は作業位置を有する構成要素として形成され、その構成要素は少なくとも1200psi(8.3mPa)の圧力下に置かれる、前記1に記載のチタン合金。
[20]
重量で5.0〜6.0%のアルミニウム、3.75〜4.75%のジルコニウム、5.2〜6.2%のバナジウム、1.0〜1.7%のモリブデン、0.04〜0.20%のパラジウムと0.06〜0.20%のルテニウムとのうちの一つ、および残部のチタンから本質的に成るチタン合金で形成された構成部品を用意する工程、および
この構成部品であって水性塩化物媒体と接触する構成部品を含む生産システムおよび/または抽出システムを操作または維持する工程、を含む方法。

Claims (8)

  1. 重量で5.0〜6.0%のアルミニウム、
    重量で3.75〜4.75%のジルコニウム、
    重量で5.2〜6.2%のバナジウム、
    重量で1.0〜1.5%のモリブデン、
    重量で0.10〜0.25%の鉄、
    重量で0.04〜0.20%のパラジウムと重量で0.06〜0.20%のルテニウムのうちの一つ、
    重量で0.13%以下の酸素、0.05%以下の窒素、0.03%以下の炭素、0.015%以下の水素、0.015%以下のホウ素および0.1%以下のスズ、ならびに
    残部のチタンおよび不可避不純物
    から成るチタン合金であって、
    ここで、チタン合金は5.0〜5.9の範囲のモリブデン当量を有し、ここで、モリブデン当量=合金中のモリブデンの重量%+(0.67)(合金中のバナジウムの重量%)+(2.5)(合金中の鉄の重量%) であり、
    チタン合金は6.5〜7.5の範囲のアルミニウム当量を有し、ここで、アルミニウム当量=合金中のアルミニウムの重量%+(0.33)(合金中のスズの重量%)+(0.17)(合金中のジルコニウムの重量%)+(10.0)(合金中の酸素の重量%) であり、そして
    溶液熱処理およびエージングした0.5インチ(13mm)プレートの形体のとき、チタン合金は室温において少なくとも130ksi(896MPa)の降伏強さを有し、
    チタン合金は0.165ポンド/in (4.57g/cm 以下の密度有し、
    チタン合金は室温において空気中および海水中で少なくとも50ksi√in(55MPa√m)の破壊靭性を有し、
    25〜33%NaClブラインの中で、少なくとも550°F(288℃)の温度において、チタン合金は
    (i) NACE TM0198-2011に従って、
    0.90以上の絞り(RA)の環境対不活性参照比
    (ii) NACE TM0198-2011に従って、
    0.90以上の破壊時間(TTF)の環境対不活性参照比、および
    (iii) 全面積の2%未満の脆性破壊面積、
    を達成し、
    室温において、チタン合金の溶接後に熱処理した溶接部は、
    (i) 少なくとも55ksi√in(60MPa√m)の破壊靭性、および
    (ii) 少なくとも4.0%の伸長を
    有し、そして、
    沸騰2wt%HCl中の24時間後のチタン合金の腐食速度が1年当たり20ミル(0.51mm)以下である、前記チタン合金。
  2. チタン、アルミニウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、およびパラジウムとルテニウムとのうちの一つ、以外のチタン合金中のいずれかの単一の元素の合計量は重量で1.0%以下である、請求項1に記載のチタン合金。
  3. チタン合金は、3のpHを有していて60日間にわたって約500°F(260℃)の温度において保持される自然に曝気した海水の中に合金を60日間にわたって沈めた後に局所的なすき間腐食を示さない、請求項1に記載のチタン合金。
  4. チタン合金は500°F(260℃)の温度において少なくとも90ksi(621kPa)の降伏強さを有する、請求項1に記載のチタン合金。
  5. チタン合金は管状の構成要素として形成される、請求項1に記載のチタン合金。
  6. チタン合金は、沖合の配管、海中のフローライン、掘削管、沖合のライザー、油井管(OCTG)生産用管材、OCTGの井戸のケーシング、沖合の陸揚げ用ストリング、沖合の井戸の改修作業用のストリング、および掘削穴設備のうちの一つの少なくとも一部を含む構成要素として形成される、請求項1に記載のチタン合金。
  7. 水性塩化物媒体と接触する構成要素として形成され、請求項1に記載のチタン合金。
  8. 少なくとも1200psi(8300kPa)の圧力下に置かれる構成要素として形成され、請求項1に記載のチタン合金。
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